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第 三 章 設 計 ガイドライン編
3.
はじめに
この章では,白色 LED を用いた応用製品の設計に関する事柄を解説する。応用製品にも多くの種類があるが、白
色 LED を使って照明器具を構成することを中心に扱う。照明器具は、光を発生する「光源部」、光源に電力を供給す
る「電源回路部」、光源からの光を利用形態に合わせて適切な方向に制御する「配光制御部」、各部を保持して包み
込む「筐体部」などから構成される。
光源部については、第1章で詳細解説されているので参照願いたい。この章ではまず、LED 照明器具を設計する
際のアウトラインを説明する。ここでは、照明器具として必要とされる機能や性能を、どのように各部の設計に割り当
てるかというような内容、言い換えれば照明器具を一つのシステムと見立てたときのシステム設計について紹介する。
これに続き、各構成部の具体的な技術内容を紹介していく。
具体的な技術内容の最初は、「配光制御」を行うための技術 =「光学設計」について記述する。続いて、LED に電
力を供給するための技術=「回路設計」について述べる。LED は、「長寿命」という優れた特徴があるが、その特徴を
現実のものとする技術=「信頼性設計」について扱う。最後に、安心して使っていただくための様々な留意事項を、
「安全性設計」としてまとめている。
LED 照明実現の指標として、従来光源と比較して、LED の効率(lm/W)の上昇が注目されているが、この値は光源
部の効率を表すものである。実際に人の生活する部屋を照明する場合は、電源回路を通して電力が供給され、照明
器具の光学系を介して光を利用することになる。従って、電源回路の変換効率と照明器具の光学的な効率に光源の
効率を掛け合わせた値が、照明システムとしての効率になる。光学系や回路部も LED 素子自体と同様に重要な役
割を果たしていることをこの章から読みとって頂きたい。
3.1.
照明器具の設計フロー .........................- 2 -
3.2.
光学設計 .....................................- 5 -
3.3.
回路設計 .....................................- 7 -
3.4.
信頼性設計 ..................................- 18 -
3.5.
安全設計 ....................................- 24 -
- 1 -
3.1. 照明器具の設計フロー
LED 照明器具は、「光源部」「電源回路部」「配光制御部」「筐体部」などから構成されている。照明器具は、工業
製品としてみた場合比較的単純な構成であるが、電気エネルギーを基にして、人間が暮らしたり作業したりする場
所に対して所要の光を与えるシステムとして捕らえることができる。設計の第一歩は、照明器具として必要とする
事項を、各部の設計に割り当てるシステム設計からスタートする。
3.1.1 照明器具の仕様
照明器具は、屋内用と屋外用、建築物などに固定して使うものと移動が可能なもの、装飾的な要素が強いものと
機能的な面が重要なものなどいくつかの側面で分類することができる。スポットライト、ダウンライト、ベースライト、
スタンド・・・など、用途によってさまざまな名前の照明器具に分類できる。当然、設計法も照明器具の種類によって
バリエーションがあり、常に一定の設計フローがあるわけではないが、機能的な面が重要な器具では、光の量を
基点とした設計の進め方を行うことが一般的である。また、この考え方を通じて、LED 照明器具のシステム設計と
はどのようなことを表しているのかを理解していただけると思う。
光の量という表現を使ったが、技術用語でいうと光束という言葉に対応する。設計しようとする照明器具について、
器具から放射される光束のほか、照明器具設計の基点となる情報を「設計仕様」あるいは「要求仕様」というような
言葉で表す。設計仕様には通常次に示すような項目が含まれる。
・ 器具光束(器具から放射される光量)
・ 光の質に関する事柄(相関色温度、演色評価数など)
・ 配光に関する事柄(配光特性、ビーム角など 必要あればグレアの規制などを含める)
・ 供給される電源の条件(AC100V、DC12V など)(接続法:平行プラグ、端子台など)
・ 消費電力や総合効率(lm/W)などの目標値
・ 所要とする寿命
・ 器具が使われる周囲の環境条件(温度範囲、防水性能(屋内用/屋外用)など)
・ 外形の寸法、形状、質量の制約、取付方法など
・ 従わなければならない法律、規格など
・ 目標価格/販売目標数量
など
3.1.2 総合効率
前節で、設計仕様には総合効率(lm/W)の目標が含まれることを示した。LED 照明は、従来光源よりも長寿命で
効率がよいことが特徴なので、照明器具の総合効率は設計仕様の中でも重要度の高い項目である。まず、総合
効率がどのように決まるかを正しく理解しておくことが重要である。
LED 照明器具を、電気エネルギーから光エネルギーへの変換装置としてみたとき、「電源回路部」と「配光制御
部」、「光源部」に分けて考えることができる。LED 照明器具の総合効率は、電源部の電気的効率を ηe と配光制
御部の光学的効率を ηo と光源部の発光効率を ηs とおくと、各部の効率の積で表すことができる。
LED 照明器具の総合効率(lm/W)= ηe × ηo × ηs (lm/W)
LED 照明器具の総合効率を高めようとする場合は、ηe、ηo、ηs の各効率をバランスよく高めることが重要であ
る。今ここで、総合効率 65lm/W の照明器具を設計しようと考えた場合、過去の設計例を参考にして電源回路の効
率 ηe が 85%、配光制御部の光学的効率 ηo が 90%と仮定すると、65lm/W÷85%÷90%=85lm/W の効率を有する
- 2 -
LED 素子を選定する必要があるということがわかる。
なお、光源部の発光効率 ηs は LED メーカーが発表している値とは差異があるので注意が必要である。LED メ
ーカーが発表する効率(lm/W)は、半導体の特性表記の習慣に従って 25℃の温度条件で、ごく短い時間通電して
温度上昇が無視できる程度で測定した値である。これに対して、照明器具の中で連続的に通電した場合は温度上
昇によって効率が 10~20%程度低下するので、この分を見込む必要がある。上で求めた LED の所要効率 85lm/W
は、LED メーカーが発表する効率に換算すると、94~106lm/W 程度に相当する。
3.1.3 LED 素子の選定と動作点の設定
前節では、LED 照明器具として必要とされる効率から、LED に求められる効率の導き方を示した。照明器具全体
を設計するには、前記のように LED 素子に必要とされる効率を基準に LED 素子を選定する。LED 素子は、他の光
源に比べて1素子あたりの光束が尐ないので、照明器具を構成するには複数個の素子を配列して使うことが一般
的である。照明器具に搭載する素子の数量は、一般的な動作条件で LED から取り出すことのできる光束(例えば
1素子あたり 100lm)と必要とする器具光束の関係から決定する手順となる。なお、LED 素子の効率は一定値では
なく、動作条件によって変動する。動作電流を減らして投入電力を尐なくすれば効率が向上する方向に変化する。
詳しくは LED 素子メーカーの公表しているデータシートを参照願いたい。
また、素子数は所要の器具光束と素子光束の割り算だけではではなく、素子の配列などによる制約もあるので、
効率、光束以外の制約条件も配慮しながら、総合的に決定することになる。
LED 素子には特性ばらつきが伴う。このため、LED メーカーは光束、色度、順方向電圧などによって選別を行い、
ランクを分けて供給している。特定のランクだけを使用できれば、製品のばらつきを小さく管理できるので、LED 照
明器具設計の立場は楽になるが、LED 素子の購入価格や安定供給に課題が生じる場合もある。このような場合
は、製品仕様の許容範囲を広く設定するとか、特性の異なる LED 素子を適切な割合で混ぜて実装してばらつきを
平均化するなどの対応をすることになる。
3.1.4 配光制御方式の選定
配光制御方式は、基本的には、所要の配光特性と光学的効率の要求仕様から決定する。スポットライトのよう
にビーム角を絞る必要があれば、レンズあるいは反射板を使って配光制御を行う。このような光学系では、LED か
ら各方向に放射される光束をどれだけ所定の範囲内に取り込むことができているかの指標としてビーム効率とい
う考え方で光学系の性能を評価することができ、方式選定の指標となる。
一方、全般照明用の照明器具などでは、グレアを所要の範囲に抑えながら、光源の光束を如何にロスなく照明
器具から放出することができるかという光学的な効率が重要な指標になり、方式選定の判断基準になる。
青色チップに黄色蛍光体を組み合わせた LED 素子の場合、光の放射方向によって色度が異なる性質がある。
特にレンズなどでビームを絞った場合には、ビームの中心部と周囲で色度の差が顕著になる場合もあるので、色
度の差が出にくい光学方式を選んだり、適切に拡散させたりするなどの方法も考慮して方式を選定する。
なお安全規格の観点で、プリント基板に実装した LED 素子は通常充電部として扱うことが必要となる。配光制御
部は、本来の光学的機能以外に感電に対する保護部材としての機能が求められるので留意しておく必要がある。
3.1.5 回路方式の選定
電源の回路方式は、主として、所要の電気的効率と供給される電源の条件から決定される。例えば、電源電圧
100V から 240V までの対応が必要な場合は、入力電圧範囲が広く出力のレギュレーションが保たれるスイッチング
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電源方式が必須である。また、電気的な効率の目標値が高い場合も、スイッチング電源方式が適当である。電気
的な効率の目標値があまり高くない場合は、回路方式選択の自由度が高くなる。
LED 照明器具では、複数の LED 素子を使うことが一般的だが、複数の素子を直列接続するか、並列接続する
か、直並列に接続するかは、回路設計上自由である。LED 素子の総消費電力は接続を変えても変化しないが、
LED 群に供給する電圧は接続方法により大きく変化する。例えば、順方向電圧 3V、動作電流 350mA の動作条件
で 20 個の素子を使用する場合、全部を並列接続すれば、電源から見て 3V×7A の負荷となり、全部直列接続すれ
ば 60V×0.35A の負荷となる。一般に、電源回路は、入力電圧と出力電圧の電圧比が1に近いほど効率を高くしや
すい性質がある。このような電源回路の一般的な性質と、複数の照明器具に対して1種類の電源回路で対応でき
るかどうかといった汎用性(標準化)を考慮して電源回路方式の選択を行う。また、安全上の観点で、電源の1次
側と LED 側をトランスで電位を分離する必要がある場合と、分離することなく共通電位が許される場合では回路方
式が異なる。
電気的な設計については、電源電圧や周囲温度の変化に対して LED の動作点をどの程度安定に保つかといっ
た指標も考慮する必要がある。詳細は「3.3 回路設計」を参照願いたい。
3.1.6 放熱設計
照明器具に入力された電力のうち、(可視)放射として器具の外に出て行くエネルギーを差し引いた部分は、熱と
して照明器具の温度上昇をもたらし、照明器具表面から放射と対流によって熱が奪われていくことでバランスが保
たれる。照明器具表面からの放熱量は、表面積と温度上昇によって決まる。LED は、信頼性を保つために動作温
度をある一定値以下に抑える必要があるから、照明器具表面の温度は LED の許容値より低い値にしか設計でき
ない。このため、入力電力、環境温度の上限、LED の許容動作温度が決まると、放熱に有効な表面積の最小値は
決まってしまう。LED 照明の応用分野としてハロゲンランプの代替が期待されているが、現状の LED の許容動作
温度では、ハロゲンランプと同等の表面積からハロゲンランプと同等の光束を取り出すことは不可能である。
LED 照明器具の放熱設計は、まず消費電力に見合った放熱表面積を確保し、次に LED と器具表面までの熱伝
導経路が如何に熱を伝えやすくするかという2面を考慮することになる。詳細は、3.4.1 放熱設計を参照願いたい。
- 4 -
3.2. 光学設計
3.2.1 はじめに
LED 素子は、他の光源に比べてサイズが小さく、配光制御がそれらに比べると容易であるという特徴がある。現
時点では、1 個の素子から得られる光束(光量)は必ずしも十分ではないので、所要の方向に光束を集中させるこ
とが求められる場合が多くある。また複数個の素子を使用する際は、LED 特有の性能のばらつきが問題になるこ
とがある。このようなことをふまえて、特に白色の LED 照明器具やモジュールを作る際の光学設計について記述す
る。
3.2.2 要求仕様の決定
照明器具やモジュールを作る場合は、客先の要求をよく理解し、配置する場所、照射先の条件、明るさ、光色、
コストなどの仕様を決定する。
3.2.3 LED 素子の選定
まず、要求仕様にあった LED 素子の選定を行う。メーカーが出しているデータシートの中の光度、色度、指向特
性などからその照明器具やモジュールにあったものを選ぶ。また、LED は、光量、光色にバラツキがあるので、照
明での使用においては、かなりの注意が必要である。特に、LED 素子を複数個使った場合、照射した光に明暗や
色の違いが出ることがあるので、可能な限り対策を講じる必要がある。現状では、ランク指定やランク選別などを
行ない、対策をとるようにしている。それ以外では、光学設計により拡散機能を配置し、拡散させて、目立たなくさ
せることもある。拡散機能については、以下光学設計にて、詳しく記載することにする。さらに、配置する場所など
から LED のサイズも決まる。
3.2.4 光学設計
(1)光源の把握
LED が決定すれば、仕様要求を満たすための光学設計に入る。光学シミュレーションソフトなどを使い、レンズ
やリフレクターなどの光学部品の設計を行う。LED 素子を使用する際は、LED 素子の図面を入手し、素子の位置、
大きさ、リフレクターなどの光学部品の形状なども考慮に入れなければ、実際とはかなり違う結果が出るので、注
意が必要である。LED チップは、点光源と考えられがちだが、素子には面積があるので、面発光と考える必要があ
る。その面のそれぞれのポイントから四方八方へ光が出ているので、その点に注意しながら光学設計を行う。
(2)レンズ設計
レンズを設計する際、まず材質を選定する必要がある。要求仕様を基に、材質を決定する。レンズに使う材質は、
ガラスやプラスチックが一般的である。材質やグレードによって、屈折率や透過率が異なるので、材料メーカーが
出しているデータシートなどで確認しておく必要がある。また、温度変化によりこれらのパラメータが変動することも
あるので、注意が必要である。データが揃えば、スネルの法則に従って、光学設計を行う。スネルの法則とは、異
なった 2 種類の材質(例えばガラスと空気などの媒質)があるとき、その境界面に入る光の角度(入射角)と出る光
の角度(出射角)の関係を示したものである。入光側の媒質の屈折率を n1、入射角を θ1 とし、出光側の媒質の屈
折率を n2、出射角を θ2 とすると、下のような式が成り立つ。
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n1 sin θ1=n2 sin θ2
表 3.2-1 主な媒質の屈折率
空 気
1
水
1.33
アクリル
1.49
水 晶
1.54
ポリカーボネート
1.59
光学ガラス
1.45~1.92
サファイア
1.76
図 3.2-1 スネルの法則
また、LED の熱により、周辺材料とレンズの線膨張係数の違いから破壊をまねく場合があるので、構造設計をす
る際には、注意する必要がある。
(3)リフレクターの設計
リフレクターを必要とする場合、リフレクターの設計を行う。リフレクターもレンズ同様、材質の選定から始まる。レ
ンズと同じく、材質の特性をよく理解し、設計することが重要である。所要の性能を発揮しない場合は、蒸着やメッ
キなどで表面処理をして、反射効率をあげることもある。リフレクターを LED の放熱材として利用する場合もあるが、
その場合は、レンズ設計の項でも述べたとおり、周辺材料との線膨張係数の違いに注意しなければならない。
(4)照射光のむら対策
白色 LED は、青色のチップに黄色の蛍光体の組み合わせで白色光を得る方法が一般的である。この結果、屈
折率が波長ごとに異なるという光の性質から、レンズなどを通った光が、照射面に色むらとして現れることがある。
また、LED 素子の選定の項であげた、複数個の素子を使う際に出る光の明暗や光色のばらつきに対しても、対策
が必要である。その他には、一般的な電極のワイヤーボンディングにおいて、そのワイヤーが影となり照射する光
に影響が出る場合がある。これらの対策として、光学設計により、拡散機能を配置させる方法がある。例えば、樹
脂製のレンズの中に拡散材を入れる方法がある。その場合は、拡散材の配合率を大きくすればするほど、照射光
は綺麗になるが、光量を落とすことに繋がり、3.1.2 の総合効率の中に記載されている配光制御部の光学的効率
は低くなる。LED 照明において一般的に良いレンズとは、照射光が綺麗であり、かつ光学的効率が高いレンズだと
言える。光学的効率とは、LED の全光束を 100%とした時に、レンズなどの配光制御部を通過し、器具から出光され
る光束の割合である。LED 照明で使用される光学レンズは、樹脂製品が多く使われているが、透過率の高いとさ
れるアクリル樹脂でも、可視光線透過率はおよそ 92%で、集光レンズにすると、80% ~ 90%程度になる。そこへ拡
散材を入れると、光学的効率が 80%以下になったという話をよく聞く。
(5)グレアについて
LED はサイズが小さい上に、照明用途としては高輝度化を要求するために、まぶしさ(グレア)の問題が発生す
る。照明設計において、グレアの低減は重要であり、快適な照明環境を作るためには、十分な配慮が必要である。
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3.3. 回路設計
3.3.1 はじめに
LED は、従来の光源である白熱電球や蛍光ランプと比べて、非常に低い電圧と小さな電流で点灯する。また、
一方向にしか電流を流さない、高速に点滅させることが可能であるといった特徴がある。この他に、LED には白熱
電球のような抵抗成分が存在しないため、変動の大きい電圧を LED に直接印加した場合には、LED の定格電流
値を超えてしまい破壊に至る恐れがある。これを避けるために抵抗等を用いて外部で電流を制限するか、定電流
で駆動させる必要がある。LED を点灯させるためには、これらの特性を把握し安全で効率の高い点灯回路、及び
点灯制御を実現することが重要である。
また、LED の点灯回路には必ず電源装置(電源回路)が必要である。LED を用いた照明器具、又はサインディス
プレイ装置において、この電源回路は器具又は装置全体の性能を大きく左右する。したがって、この電源装置(電
源回路)についても、LED 点灯回路とのマッチングが重要となる。
以上より、本節では、まず LED 点灯回路を設計するために必要な LED の基本特性、および代表的な点灯方式
を解説し、LED の特徴を活かした明るさの制御方法の代表例を紹介する。続いて、LED 点灯回路に適した電源回
路について解説し、その代表例を紹介する。また、電源システムに求められる各種性能についても解説する。
3.3.2 LED 基本特性
(1)明るさと電流
LED の点灯回路設計には、明るさの決定とそれに必要な順電流の調査が必要である。LED を点灯させるには、
所定の電流を流す必要があり、この電流を順電流 IF という。順電流は点灯させる明るさ(相対光度 IV)によって設定
する必要があり、メーカーのカタログやデータシート上の「IV-IF 特性」グラフ(図 3.3-1)により関係を確認することが
できる。グラフ上では、LED の明るさは、ほぼ直線的に順電流値に比例していることがわかる。また、LED は電流を
流すと自己発熱によってジャンクション温度が上昇し、明るさが低下する特性を持っている。
(2)電流と電圧
LED に順電流を流すと、その大きさに応じて電極間に数ボルトの電位差が発生する。この電圧を順電圧 VF とい
う。順電圧は LED 点灯回路の電源電圧や LED の接続構成を決定する要素となるため、順電流との関係をメーカ
ーのカタログやデータシート上の「IF-VF 特性」により把握することが必要となる(図 3.3-2)。グラフ上では、わずか
な順電圧の変化で順電流が大きく変化していることがわかる。
図 3.3-1 「IV-IF 特性」グラフ例
図 3.3-2 「IF-VF 特性」グラフ例
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(3)順電圧のバラツキと温度変化による順電圧の低下
表 3.3-1 は LED の順電圧特性の一例を示す。順電流 20mA のときの順電圧は 3.4~3.8V と 0.4V の幅をもって
いることがわかる。これは LED の特性上、個体差によって順電圧にはバラツキがあることを示している。すなわち、
同一品種の LED に同じ順電圧を印加したとしても、同じ電流が流れるとは限らないことを意味している。このバラツ
キは不良ではなく製品定格仕様範囲であることを把握しておくことが重要である。また、LED は自己発熱によって
ジャンクション温度が上昇すると順電圧値が低下するという特性をもっている。
表 3.3-1 順電圧特性例
項目
記号
条件
最小
標準
最大
順電圧
VF
IF=20mA
-
3.4
3.8
以上のように順電圧のわずかな変化によって LED に流れる電流は大きく変化することから、それに応じて明るさ
も変化することになる。また、場合によっては LED の定格電流値を超えてしまい LED が破壊に至る恐れもある。こ
れらを避けるために、明るさや発光ムラが要求仕様範囲であるかどうか、定格範囲内で安全に動作するかどうか
を十分に検討して LED の特性に応じた回路設計をすることが必要である。
3.3.3 LED 点灯方式
以下に、主な点灯方式の特徴を示す。各方式の得失を考慮して選択する必要がある。
(1) 定電圧点灯方式(抵抗による電流制限)
LED 電圧を一定にして抵抗によって電流を制限することで所望の順電流IF を確保する方式で、制限抵抗式と
も呼ばれる。回路がシンプルかつローコストで実現でき、最もオーソドックスな方式である。ただし、LED 素子固
有の順電圧 VF のバラツキや温度変化による順電圧 VF が変化した場合においては、順電流も変化するため明る
さに影響を及ぼす。また、余分な電力を抵抗Rで消費させるので、LED の順電圧と電源電圧の差が大きいと全
体の効率が低下し、抵抗から発生する熱も考慮する必要がある。
図 3.3-3 における抵抗 R は、その目的から制限抵抗とも呼ばれ、LED の順電流を制限する機能を担う。抵抗
値の決定は、LED の特性グラフより、流したい順電流 IF に対する順電圧 VF を読み取り、回路の E= IF R+VF の関
係から、R=(E-VF)/IF に代入して求める。ただし、電源電圧 E と VF の差が小さいと、VF が変化することで流れる
電流が変わってしまうので注意が必要である。
例えば、表 3.3-1 に示した順電圧特性例を参考に、電源電圧 E が 5V で LED に 20mA の順電流 IF を流したい
場合の制限抵抗 R は、VF =3.4V を上記の式に代入する。
R=(E-VF)/IF =(5V-3.4V)/20mA=80Ω
抵抗での消費電力 W は
W= IF2R=20mA×20mA×80Ω=0.032W
以上から、制限抵抗 R は 80Ω で 0.032W 以上のものを選定する。
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図 3.3-3 定電圧点灯方式
(2) 定電流点灯方式
定電流回路により LED の順電流 IF を一定にする方式である。回路構成はやや複雑になるが、LED 素子固有の
順電圧 VF のバラツキや温度変化による順電圧 VF 低下の不安定さも低減できる。LED は定電流で点灯させること
が理想的と言える。この方式では、使用用途、コスト、寿命や大きさなどを考慮して定電流回路をどのような構成
にするかがポイントである。
① 定電流ダイオード(CRD)
回路構成は電流制限抵抗を使う場合と同じく LED と直列に接続するだけで定電流が可能でシンプルな構
造である(図 3.3-4)。また、CRD を並列に接続することで定電流値の調整ができる。制限抵抗式に比べれ
ば入力電圧や LED 順電圧 VF のバラツキに対しても定電流特性を維持するが、CRD が定電流動作をするに
は、ある一定以上の電圧をかける必要がある。
図 3.3-4 定電流ダイオード方式
② トランジスタ
トランジスタのベース電圧 VB を一定にしておき、一定電流 IF = (VB-VBE)/R3 を得ることができる(図 3.3-5)。
回路はやや複雑になるが、比較的安定した順電流を確保しやすい方式である。
図 3.3-5 トランジスタ方式
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③ 3端子レギュレータ
3端子レギュレータの出力端子(VOUT)と可変端子(ADJ)の間に抵抗 R を挿入することで簡単に定電流を得
る方式である(図 3.3-6)。可変端子の電圧が基準電圧 VREF と等しくなるように動作することから、IF =VREF/R
の定電流値となる。入力端子電圧 Vin には、3端子レギュレータの動作電圧と LED 順電圧 VF の合計以上の
入力電圧が必要である。入力電圧と LED 順電圧 VF との差が大きいとその電力をすべて3端子レギュレータ
が負担することになり、効率が低下し3端子レギュレータ自身が発熱するので放熱に考慮する必要がある。
3端子
レギュレータ
E
R
Vout
Vin
ADJ
LED電流
Ref
I F =V /R
LED
V Ref
図 3.3-6 3端子レギュレータ方式
(3) スイッチング電源による電流制御方式
現在、照明用途の LED 駆動用として最も使用されているのがスイッチング電源方式である(図 3.3-7)。LED に
流れる電流 IF が電流検出抵抗を通過することによって発生する電圧をスイッチング素子にフィードバックして一
定の電流に制御する方式である。高速にスイッチングするためノイズが発生しやすく、電源高調波対策や力率
の改善など制御回路が複雑となり上述の定電流方式よりも部品点数は増えるが、入力電圧範囲が広くとれる特
長がある。各社から様々な LED 専用ICドライバが市販されている。
L
制御回路
E
D
LED
C
検出
比較回路
検出抵抗
IF
LED電流
図 3.3-7 スイッチング電源による定電流方式
3.3.4 明るさの制御
調光等の目的で使用されることが多く、LED の明るさを制御する方法の一つにデューティ制御方式がある。LED
の明るさは順電流 IF の値により設定できるが、僅かな順電流の変化によって明るさが変化するため、明るさの制
御が難しい場合がある。また、順電流を小さくすると点灯波長(色合い)も変動してしまう。これらを回避するため、
一定の順電流で点灯している LED を高速に点滅させることにより、見た目の明るさを制御するのがデューティ制御
方式である。人の目には残像機能があるため、およそ 10ms 未満の周期で点滅する明かりを連続した明かりとして
見せることができる。図 3.3-8 は定電圧方式への応用例を示しているが、定電流式にも応用できる。
ここでの“デューティ”とは、点滅周期(=点灯時間TON+消灯時間TOFF)に対する点灯時間TON の割合を百分
率で示したものである(図 3.2-9)。制御回路でデューティを操作することで容易に明るさの変更が行える。
なお、LED には白熱電球のような残光現象がないため、点滅周期を長くとるとチラツキを認識されてしまう場合
がある。反対に、点滅周期を短くする場合には、LED の応答速度を確認する必要がある。
- 10 -
順電流
点灯
消灯
TON
デューティ
(DUTY)
図 3.3-8 デューティ制御回路
TOFF
=
TON
TON +TOFF
×100(%)
図 3.3-9 点灯制御タイムチャート
3.3.5 LED 集合回路
(1)一斉点灯方式
複数の LED を一斉に点灯させる場合の代表的な方式を表 3.3-2 に示す。
表 3.3-2 一斉点灯回路の代表例
方式
①直列方式
②並列方式
③直並列方式
電源電圧Eを大きくしたい場合に
有効。
ただし、LEDがショートモードで故
障した場合、抵抗に加わる電圧が
上昇し、順電流が上昇するため、
定格電流を超えないよう注意が必
要。また、LEDがオープンモードで
故障した場合、すべてのLEDが不
点となるリスクがある。
複数のLEDを低い電圧で点灯さ
せたい場合に有効。
ただし、LEDの順電圧のバラツキ
が大きい場合、電流が順電圧の低
いLEDに偏るため、明るさのバラツ
キが顕著となる。LEDがショートモ
ードで故障した場合、すべてのLE
Dが不点となるリスクがある。
直列方式と並列方式を組み合わ
せ、LED故障時のリスクを軽減させ
た方式。
LEDがショートモードで故障した
場合でも、前(後)列のLEDの点灯
が維持できる。
LEDがオープンモードで故障し場合
は、他のLEDの点灯が維持でき
る。ただし、各LEDの順電流が変化
するため、全体の明るさは暗くな
る。
等価
回路
概要
(2)個別点灯方式
①スタティック点灯方式
図 3.3-10 の LED1~4 は、対応するスイッチ S1~4 を操作することで個別に点滅制御することが可能であ
る。LED が点灯している間は順電流が静的に流れるため、このような方式をスタティック(静的)点灯方式と
呼ぶ。
スタティック点灯方式ではすべての LED を同時に点灯させることが可能なため、LED 集合体としての明る
さを必要とするときなどに有効である。但し、LED の数だけ駆動部(図 3.3-10 では抵抗 R1~R4)が必要とな
るため、LED の数が多い場合は回路のスペースが増大する。
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LED1 LED2 LED3 LED4
E
R1
R2
R3
R4
S1
S2
S3
S4
図 3.3-10 スタティック点灯回路
②ダイナミック点灯方式
スタティック点灯方式に対し、各 LED を高速に順次点灯させることを繰り返すことで、人の目に LED が連
続点灯しているように見せる方式をダイナミック(動的)点灯方式と呼ぶ。図 3.3-11 のスイッチ S1 から S4 へ
の切換を一定周期で行い、そのタイミングに併せて S5 を操作することで各 LED を個別に点滅させることが
可能である。人の目の残像を利用する点ではデューティ制御方式と似ているが、LED を順次点灯させる為、
駆動部(図 3.3-11 では抵抗R)が集約でき、回路の省スペース化やコストダウンに有利である。
図 3.3-11 のタイムチャートでは、濃く背の高いパルス波形が実際の点灯波形を示し、薄く背の低い波形
が見た目の点灯波形を示している。LED の瞬間的な点灯光度を高くすることで、平均的な明るさも大きくす
ることができるが、瞬間的な点灯光度の高さには限界があるので、高い平均光度を必要とするときなどには
注意が必要となる。
図 3.3-11 のように LED の点灯周期を4分割する場合には 1/4 デューティと呼ぶ。また、順次点灯させていく
行為(図 3.3-11 では S1 から S4 の切換)をスキャンと呼ぶ。スキャン速度は LED の必要光度(見かけの光度)、
LED 及び切換回路の応答性などから決定する必要があり、それによりデューティの限界値も決まる。
LED1 LED2 LED3
光度
LED4
LED1
S5
LED2
E
R
S1~S4
LED3
LED4
図 3.3-11 ダイナミック点灯回路
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時間
3.3.6 電源回路
(1)直流電源の必要性
LED を一般照明用として用いる場合、商用(交流)電源に接続して使用するのが一般的である。
図 3.3-12 商用電源で LED を点灯させる場合の一例
通常、LED を点灯させる場合には、LED に順バイアスをかけなければならないが、例えば図 3.3-12 のように商用
電源で直接 LED を点灯させる場合、負の半周期は(逆電圧に耐えられる直列数と仮定して)LED が消灯しているた
め、人の目にはちらついて見えることになる。また、LED の VF は 3~4V 程度であるので、LED に流れる電流を定格
値以内に抑えるなら、図 3.3-12 において抵抗 R の抵抗値を上げるか、LED の直列数を増やさなければならない。
しかし、抵抗値を上げると、そこでの損失が増えて効率が悪くなる。さらに、LED のいずれかがオープンで壊れた場
合、直列に接続された全ての LED が消灯してしまう。また、LED が使用者の手に触れる場所にある場合、使用者
は感電の危険にさらされることになる。
以上の様な理由から、商用電源から LED を点灯させる場合、安全面・効率面から直流電源を用いるのが望まし
いと言える。
(2)直流電源の回路方式
①交流-直流変換回路
交流から LED 駆動用の直流を得るには、a.商用トランスで電圧を変換して整流・平滑する。b.シリーズレギュ
レータを使う。c.スイッチング電源を使うなどの方法がある。これらの代表的回路と特徴を表 3.3-3 に示す。
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表 3.3-3 交流-直流変換回路の方式による比較
(出典)戸川治朗:実用電源回路設計ハンドブック、CQ 出版
②スイッチング電源
スイッチング電源は、入力された電圧を半導体素子により高周波でスイッチングして、トランスにより電圧を
変換し、整流・平滑して LED を点灯させるのに必要な直流電源を得ている。
スイッチング電源をそれぞれの切り口から大まかに分類すると以下のようになる。
1)AC-DC コンバータ/DC-DC コンバータ
AC-DC コンバータは、商用電源から直流に変換するスイッチング電源である。コンデンサインプット型
で整流するものや、高調波対策回路を搭載したものなどがある。(3.2.5 参照。)
一方、DC-DC コンバータは乾電池・バッテリーなどの直流電圧から、別の直流に変換するスイッチング
電源である。
2)定電圧電源/定電流電源
LED を効率よく点灯させるためには、定電流回路が望ましいことは既に 3.2.2 で述べた。特に、最近では
高出力(高輝度)型の LED は定電流回路が必須と考えられている。定電圧電源は一般に広く出回っており、
安価で入手しやすいが、別途定電流回路を追加する必要がある。一方、定電流電源は定電流回路を内
蔵したスイッチング電源で、近年高出力型 LED 用として一部で市販されるようになっている。
フ
ィ
ル
タ
回
路
LED
検出抵抗
制御
回路
定電流
制御部
図 3.3-13 定電流電源例
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図 3.3-14 1 次 2 次絶縁型
(出典)戸川治朗:実用電源回路設計ハンドブック、CQ 出版
3)1 次 2 次絶縁型/非絶縁型
1 次 2 次絶縁型とは、図 3.3-14 に示すように電源の 1 次側と 2 次側がトランスによって絶縁されている
スイッチング電源のことである。一方、非絶縁型とは、電源の 1 次側と 2 次側が直結されているスイッチン
グ電源のことで(表 3.3-4 参照)、非絶縁型の中では、昇圧型、降圧型、昇降圧型にさらに細かく分類され
る。
一般に市販されているスイッチング電源のうち、AC-DC コンバータのほとんどは絶縁型になっている。
これは安全規格とも関連するが、故障時にも安全低電圧をこえる電圧が出力されないように、各メーカー
が絶縁型トランスを採用していることが理由として挙げられる。(安全規格については 3.5 を参照)一方、
DC-DC コンバータについては、非絶縁型も採用されている。
表 3.3-4 非絶縁型の分類
(出典)戸川治朗:実用電源回路設計ハンドブック、CQ 出版
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3.3.7 電源システム
(1)総合効率
電源システムとしての総合効率は、
「電源部の電気的効率(ηe) ×配光制御部の光学的効率(ηo) ×光源部の発光効率(ηs)」
によって与えられる。従って、効率の高いシステムを作ろうとする場合、LED 素子の効率と同じ重要度で電源の効
率も考慮する必要がある。一般的な絶縁型の直流電源の効率は 70~75%程度であるが、最近では効率 80%以上
の絶縁型直流電源や、効率 90%以上の非絶縁型直流電源がある。
(2)LED 照明に使用される主な直流電源
LED 照明には商用電源を入力源とした直流電源が使用されることが多く、電源回路の方式にも様々なものがあ
る。
①コンデンサインプット型(商用電源を整流後、コンデンサで平滑した回路)
・ コンデンサインプット型+降圧チョッパ回路
・ コンデンサインプット型+絶縁フライバック回路
・ 部分平滑コンデンサインプット型+絶縁フライバック回路
など
コンデンサインプット型方式電源を複数台使用の場合、一台でも入力電力 25W を超える場合は、後述の
高調波対策に注意が必要になる。
②力率改善回路搭載型(高調波電流抑制)
・ 力率改善回路+絶縁フライバック回路
入力に流れる電流を正弦波に近づけ高調波電流を抑制することで、力率改善となる。
(3)入力電力と皮相電力と力率
一般に、スイッチング電源は整流器の直後に平滑用のコンデンサが挿入された、コンデンサインプット型が採用
されている。コンデンサインプット型の整流方式では、入力電流の流れる区間(導通角)が狭く、入力電流の実効値
が大きくなるため、皮相電力が大きくなる。入力電力と力率の関係は以下のようになる。
入力電力
= 皮相電力×力率
= (入力電圧×入力電流)×力率
ここで、入力電力:W、入力電圧:V、入力電流:A、力率:PF であるので、
W = (V×A)×PF
となる。
(4)高調波対策
コンデンサインプット型のスイッチング電源における入力電流は波高値が高く、同じ周波数の正弦波に比べて、
高周波成分(これを高調波という)を多く含んでいる。入力電力が 25W をこえる照明機器においては、JIS C
61000-3-2:2005(クラス C)による高調波規制を満足する必要がある。
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(5)雷サージ対策
LED 照明には商用電源が使用される場合が多く、電源装置には雷サージ保護が必要である。雷サージには直
撃雷と誘導雷の2種類に分けられ、直撃雷は雷サージ保護素子等で完全に保護することは非常に難しく、誘導雷
による雷サージは保護素子により保護が可能である。また、電源装置と器具筐体との絶縁距離を確保するなどの
対策も必要となる。
(6)EMI 対策
スイッチング電源が出すノイズは、EMI(電磁気妨害)として規制されており、以下に挙げる規格を満足する必要
がある。スイッチング電源単体でのノイズ規格には電気用品安全法、CISPR22、VCCI などがあり、LED 照明の器
具と電源を含めたシステム(照明機器)としての規格には電気用品安全法、CISPR15 などがある。ノイズの測定方
法、適用範囲、限度値については各規格を参照願いたい。
(7)電源寿命
LED の長寿命という特性を生かすには、電源も長寿命でなければならない。一般にスイッチング電源の寿命は
電解コンデンサやフォトカプラなどの経年変化によって決まる。特に電解コンデンサの寿命は、リプル電流による
自己温度上昇と周囲温度に大きく影響される。(周囲温度が 10℃下がるごとに寿命が 2 倍になる。詳しくは電解コ
ンデンサメーカーの資料を参照)よって、電源の長寿命化のためには、電源の周囲温度だけでなく、LED が発する
熱によって電源の温度が上がらないように、器具設計・放熱設計にも注意する必要がある。
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3.4. 信頼性設計
3.4.1 放熱設計
(1) 放熱設計の必要性
白熱電球は、ほとんどが赤外放射で熱は数十%であるのに対し、LED は、消費する電力のうち可視光線に変換
されるのは数%から数十%程度であり、その他は熱となって発散されるため、従来の照明器具以上に器具容積や
放熱構造が不可欠である。例えば発光効率 100lm/W の白色 LED において、入力電力が可視光線に変換される
効率は 30%程度という報告 1)がある。
また、LED は他の半導体製品と同様に温度依存性をもっており、半導体の接合部(ジャンクション)温度
は、特性の変化や信頼性に影響する。温度依存性として電気特性や発光出力及び色ずれがあげられるが、
特に、期待寿命にもとづいた LED の動作温度をある値以下にすることは重要である。ある値以下とはジャンクシ
ョン温度で、ジャンクション温度によって寿命の予測は決まる。照明用白色 LED の寿命は、全光束が初期全光
束の 70%に低下するまでの時間と定義されることが一般的である。2)また、照明器具は一般的に自然空冷であり
その環境温度は 35℃以下が基準である。
ジャンクション温度は、以下の熱抵抗等価回路より予測できる。
(2) 照明器具構造から見た器具内温度と LED 周囲温度との関係
照明器具内の温度は Tair=Tin+⊿Tair で表される。(図 3.4-1)
Tin:環境温度(℃)
Tair:器具内温度(℃)
灯体の容積などを考慮した際の発生熱による器具内温度上昇⊿Tair は以下から求められる。
⊿Tair=
Q
A・K
灯体の熱貫流率 K (kJ/m・h・℃)
灯体の表面積 A (m2)
内部発生熱
Q=総電力損失(W)×3.6=(kJ/h)
照明器具外郭材料や容積及び構造によって筐体内部にこもる熱を効率良く外部へ放出することによって、LED
の周囲温度(ここでいう Tair)を下げることに繋がる。
図 3.4-1 照明器具の熱抵抗等価回路
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(3) LED などの発生熱量からみた器具内温度とジャンクション温度の関係
器具内温度上昇値は⊿Tja=Rjatotal×Pn で表される。
Pn :集積 LED 光源の全電力損失(W)
Rjatotal:ジャンクションと器具内温度間全熱抵抗(℃/W)
Rjatotal =RjBtotal +RBA =
RjB
n
+RBA
RjB は抵抗と同様に並列合成抵抗で表される。(図 3.4-2)
よって、ジャンクション温度は以下で表される。
Tj=Tair+⊿Tja =Tair+Rjatotal ×Pn
熱抵抗とは放熱設計を行う際のパラメータで、熱の伝わりにくさを表す係数のことで、数値が高いほど、熱抵抗
が大きく放熱性が悪くなる。
図 3.4-2 熱抵抗等価回路 並列則
(4) 放熱手法
LED の放熱材の選択する手順としては、目標とする Tj と使用温度上限値 Tair を代入する。
Rja は直列合成抵抗で RjB+RBA と表される。(図 3.4-3)
(Tj-Tair)
Rja=
P
=RjB+RBA
RjB:ジャンクションと基板間熱抵抗(℃/W) (= (Tj - TB) ÷ P)
RBA:基板と器具内温度間熱抵抗(℃/W)
LED データシートで与えられた情報を基にさらに細かくする必要もある。
上記より RBA の目標値が定まる。
RBA=(基板上温度 TB-周囲温度 Tair)÷P(℃/W)
P=VF ×IF
VF、IF:LED 動作電圧と動作電流
正確には P において、熱に変換されない可視光線変換分を差し引く必要がある、実用上は可視光線変換分
を安全率として扱い、VF×IF をそのまま用いるのが一般的である。場合によっては LED 駆動回路抵抗などの損失
も考慮する必要がある。
以上から RBA 熱抵抗にあった放熱材料(図 3.4-4)を選択する。
- 19 -
図 3.4-3 熱抵抗等価回路 直列則
図 3.4-4 アルミ板放熱面積と熱抵抗の関係 参考例
放熱材の熱抵抗は材質の熱伝導率 λ を用いて算出する。熱伝導率が高いほど低熱抵抗となり放熱性が良くな
る。
R=
L
λ・A
L:長さ
A:断面積
λ:熱伝導率(W/m・K)
実際に放熱性を高める手段としては、基板の材質・パターン・寸法形状、接着としてのグリスやモールド材、
ヒートシンク材などの放熱材の選定及び放熱経路が放熱設計の決め手となる。
LED は従来の照明用光源と異なり、表面からの熱放射がほとんど無いため、熱伝導による放熱処置が重要
となる。例えば、「LED→実装基板→熱伝材(シート、グリス等)→器具筐体」のような経路で、各部材の接触面を
介して器具の外郭まで熱を伝導させて放熱させる。
以上のように、外部に熱を効率良く伝達するように構造対策を行うことで、LED の信頼性を確保することが重要
である。
参考文献
1) 板東完治:LED 照明の発展(1) LED 照明の概要, 照明学会誌 Vol.92-No.6, p.303, 2008
2) 「白色 LED 照明器具性能要求事項」(社)日本照明器具工業会規格 技術資料 134-2005
標準仕様書(TS) TS C 8153:2007
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3.4.2 静電気対策
(1) 静電気対策とは
半導体は静電気により破壊されるが、半導体の一種である LED も同様な問題を抱えている。IC など他の半導体
においては、MOS 型のゲート酸化膜の破壊が一番の問題となっていること、IC の高集積化、微細化の進展に伴い、
静電気破壊に弱くなっていることが特徴である。この点、LED は MOS 型ではないこと、微細化がそれほどまでに進
んでいないことなど、若干異なった状況もある。しかしながら、広い範囲において半導体で養われた静電気対策技
術を適用できると考えられる。半導体一般の静電気破壊については、多くの参考文献があり
1) 2) 3) 4)
、ここでは、そ
の概要を中心に記述する。詳細はこれらの文献を参考願いたい。
半導体において電気的な破壊原因として静電気放電(ESD)と電気的オーバーストレス(EOS)がある。前者の静電
気放電は、外部で発生した静電気によるものであり、後者は、電源あるいは回路的に発生したサージ、短絡によ
る電気的な負荷が素子の耐性を越えたものである。後者の EOS に対しては LED の耐性を考慮して、特に、電源
on あるいは off 時のサージ抑制や、定電流回路では過渡的な過電流抑制を中心に、電源あるいは回路の設計を
することが対策になる。この節では、より複雑である前者の ESD について記述する。
(2) 静電気の発生
別の種類の固体を接触させ、次に引き離した場合、接触したときに接触面で電子が移動し、引き離したときに電
子がそのまま残り、帯電する。これを接触帯電という。帯電する電荷量あるいは電位はこの接触させるふたつの固
体の種類に依存し、表面の形状、状態などにも影響される。
さらに、この接触帯電に接触面での摩擦、衝突、剥離が加わった摩擦帯電、衝突帯電、剥離帯電などがあり、接
触帯電の帯電傾向が強調されるとともに、温度や表面の構造の破壊などの要因にも影響される。
通常、この静電気が半導体へ影響を与える経路としては、人体自身が絶縁物との摩擦などによって静電気を発
生させたり、あるいは、絶縁物などで発生した静電気が人体に流れたりして、結局、人体に電荷がたまり、それが、
半導体へ流れるというケースが問題になることが多くなっている。これは作業者の半導体への直接接触、あるいは
道具を介した接触の可能性が大きいことによるが、人間は動き回ることや、人体は導電性があることにより、たま
った全部の電荷が一度に放電するため放電電荷量が大きいことにもよる。このため、図 3.4-5 に示すような人体帯
電モデル(HBM:Human Body Model)という、人体が 100 pF の静電容量で帯電し、1.5 kΩ を介して半導体に接続さ
れるという標準モデルを立てて、静電気の影響の評価や対策に利用している。
発生する静電気の電圧は、表 3.4-1 に一例を示すように、湿度に影響されるが、簡単に数 kV~30 kV 程度に達
する。
この人体帯電モデルの他、自動化された組み立て工程での摩擦からパッケージの表面に電荷がたまるケース
があり、この場合、電荷は尐ないが、高電圧で幅の小さい放電が起こる。平たいプラスチックケースの MOS 型で起
こり問題となっているが、LED で対応する障害が起こっているかどうか不明である。
表 3.4-1 作業者に対する静電気の電圧測定の一例
相対湿度
10~20%
65~90%
カーペット上歩行
35.0kV
1.5 kV
ビニール製床歩行
12.0kV
0.25kV
6.0kV
0.1 kV
作業台近くの作業者
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(3) 静電気による破壊のメカニズム
半導体においては、一般的に静電気が通過することによるジュール熱により回路の構成材料が溶けるのが基
本の破壊機構といわれている。特に順方向に電圧がかかる場合、そのまま通常の導通経路に電流が流れるので、
通常とは異なる電流値と波形で、このときの発熱に耐えられないと破壊される。
逆電圧の場合、静電気の電圧がかかっても電流があまり流れないため、そのままに近い電圧がかかり、電圧が
印加された領域のうち最も弱い点から微尐電流が流れることがきっかけで、電子雪崩が起こり、あるいは、微尐領
域に電流が集中するために局所的に昇温し、構成材料が溶けて破壊に至る。この電圧は、通常電流が流れない
リード線間や電極パターン間、素子の沿面などにも印加され、そこで絶縁破壊する機会も多いと考えられる。これ
らのことから、順方向の場合より、問題が大きくなりやすいことになる。
LED の耐電圧は 200 V~2000 V 程度である。GaN 系のうち、絶縁物であるサファイア基板を用いたタイプでは、
導電性がある SiC 基板を用いたタイプに比較して、リード線や電極パターンの距離が近くなりやすく、耐電圧が低く
なる傾向があった。しかしながら、耐電圧を上げる方策に加えて、最近は光の取り出し効率を上げるために種々の
構造が取られてきており、耐電圧の傾向もそれに従って変化しているので、データシート等で耐電圧を確認する必
要がある。
いずれにせよ、MOS ゲートの耐電圧は 100V 程度なので、それよりは高いレベルといえるが、耐電圧 200 V の
場合、取り扱いに特別の注意が必要であり、耐電圧 2000 V でも、静電気として普通に発生するレベルなので、対
策は必要である。
図 3.4-5 人体帯電モデル
図 3.4-6 保護回路の一例
(4) LED 照明器具等の静電気対策設計
照明器具として一般に使用されることを想定すると、最悪の条件に対応している必要があり、LED に静
電気が間接的にも印加されないように、以下のような対策が必要である。
① LED に直接・間接に接続される可能性がある配線や導体、あるいは LED は、静電気を遮断できる
部材で完全に覆う。
② 照明器具の入力端子側からの静電気は、LED との間にはいる駆動回路等で遮断する。
LED のパッケージやモジュールに保護回路を設けておくことが、この照明器具としての静電気対策と
しても、次に述べる LED 照明器具の製造工程での静電気対策としても有効である。
最も簡単な保護回路の一例は、図 3.4-6 に示す逆耐圧電圧 Vbd を持つ保護ダイオードを LED 素子と並
列に、方向を逆にして入れるものである。この逆耐圧電圧 Vbd が LED 素子の動作電圧以上、破壊電圧以
下のものを選択する必要がある。回路構成や使用する素子の他、できるだけ、LED に近づけて配置する
などの条件もあり、詳細は、文献 2 の 12 章などが参考になる。
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(5) LED 照明器具製造工程での静電気対策
実用上は、静電対策がどこまで必要かということが非常に重要である。素子の耐電圧を調べ、扱う管理
領域を設定し、その範囲内で静電気を素子の耐電圧以下に押さえるというのが基本的な考え方になる。
扱う半導体の耐電圧などで工場の各場所をクラス分けし、必要な静電気対策を明確にしようという試み
がなされているが、対策コストと静電気による不良対応コストとのバランスもあり、必ずしもどのような
場合にも適用できる簡単な手順が確立されているというわけではない。詳細は、たとえば、文献 2 の 14
章、文献 3 の 2 章と 8 章、文献 4 の P64~66 と 4~5 章、あるいは LED 供給先のデータシートなどを参考
願いたい。
主要な個別対策としては下記のようなものがある。
(記載の抵抗値範囲は目安である。文献などで確認願
いたい。)
① はんだごて:こて先をアースし、低電圧用を使用する。
② 工具(ピンセット等)、容器、包材:静電気防止用のものを使用し、金属と絶縁物をできるだけ避け
る。
③ リストストラップの使用:106Ω の程度の抵抗を介してアースする。さらに 105~108Ω/□程度の表面
抵抗率を持つ指サックあるいは手袋の着用が好ましい。
④ 作業着・靴:いずれも 105~1010Ω/□程度の表面抵抗率を持つ静電気対策用を使用。
⑤ 作業台表面:金属を避け、導電性マットを用いアースをする。表面抵抗率 105~108Ω/□程度、アース
間抵抗 106~108Ω 程度。保管用の棚の表面なども同様な条件が必要。
⑥ 作業イス:帯電防止用カバーをし、106~1012Ω 程度の抵抗を介して床にアースする。
⑦ 床:表面抵抗率 105~108Ω/□程度、アース間抵抗 106~108Ω 程度となるよう導電性マットなどを使用。
⑧ 装置等:アースする。
静電気対策では、通常のアースとは異なり、表面抵抗率が 1MΩ/□程度のものを用い、1MΩ 程度の抵抗を
介してアースするというのが基本になっている。この理由は、金属では急激な電荷移動の可能性があり、
それによる電荷流入や誘起などがありうることと、感電事故の可能性を小さくするためである。
湿度については、表 3.4-1 に示すように、高いほど静電気が起こりにくくなる。腐食などとのかねあいが
あるが、50%程度以上の湿度が推奨されている。また、上記の対策がとれない場合など、帯電した電荷を
中和するための正負のイオンを発生するイオナイザーの使用が推奨されている。
参考文献
1) 「静電気ハンドブック」、静電気学会編、オーム社 特に5章、8章、9章、11章
2) O.J. McAteer(村崎他訳)「エレクトロニクスの静電気対策」
、マグロウヒル出版(株)
、1992
3) 二澤「静電気対策マニュアル」、オーム社、1989
4) 二澤他「図解静電気管理入門」、
(株)工業調査会、2004
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3.5. 安全設計
3.5.1 はじめに
白色 LED の発光効率の向上、色むらの改善、演色性の向上等により、白色 LED を光源とした色々な照明器具が
21世紀に入り増加して来ている。一方、LED 光源は、半導体である発光ダイオードからの延長線であるので、従
来、照明器具に使用していた白熱電球、蛍光ランプ等の光源とは違う特性を持っていることから、環境負荷への影
響がないことを含めて、使用者の生命・身体や財産に対して損害を与えることがないように、この節では、白色
LED 光源を使用した照明器具に関しての安全性設計について記述する。また、LED を使用した応用製品は多々あ
るが、今後、著しく様変りすることが予想される照明器具にマトを絞り記述していく。
3.5.2 安全設計と法規
各種照明器具を設計するにあたり、“3.5.4 法令”に詳細記載されている 経済産業省管轄の『電気用品安全法』、
『電気事業法』、『電気設備技術基準』、や(社)日本電気協会管轄の『内線規定』及び(財)日本規格協会発行の
『JIS C 8105-1 照明器具 第1部:安全性要求事項通則』、『JIS C 8105-2-XX 照明器具 第2部:安全性要求事
項』や『JIS C 8015-3 照明器具 第3部:性能要求事項通則』及び『JIS C 8154 一般照明用 LED モジュール 安
全仕様』等の法規、規格及び基準を遵守することは、LED 光源を使用した照明器具の最低限の設計要求事項で
あると同時に、以下に記載されている環境に対する配慮や安全性確保に関する内容も含めて満足することが望ま
しいと思われる。
3.5.3 具体的な安全性設計
白色 LED 光源を使用した照明器具に関する『法規、規格及び基準』及び『LED 光源の人体への影響』について
は、LED 照明器具を設計する上で非常に重要な要因となる為、次項以降により掘り下げた内容で記述する。
この項では、設計者が製品設計を実施するに当り、意図した使用状況だけでなく、意図しない使用状況であって
も通常合理的に予見できる使用に対しても安全性を考慮する必要性と、且つ、残る未対応事項についての、注意・
警告等の表示をシール・取扱説明書等で実施する内容の内、正常使用、誤使用等の状況で発生する“安全でない
現象”を抽出してその内容をどのように対処していくかを安全設計の指針とする。また、個別商品の基準値につい
ては、商品の構成・使用方法、予想被害、企業の考え方 等で異なる為、以下には具体的な数値については設定
していない。
(1) “安全でない現象”の抽出
① 【発火・発煙・外郭過熱】に関しては、照明器具の外郭からの燃焼、外郭からの煙の継続的な発生、外郭部
品の異常な過熱による変色・変形、外郭の可燃物の発火点や周辺にある可燃物への低温着火 等の“安
全でない現象”をいう。
② 【落下・飛散】に関しては、鋭利な物体や傷害につながる重さの物体の落下・飛散、傷害につながる形状・重
さの商品の保持・運搬途中での落下や傷害につながる形状・重さの物体の転倒・倒壊 等の“安全でない現
象”をいう。
③ 【漏電・充電部の露出】に関しては、人が触れる恐れのあるAC30V、DC45Vを超える充電部
露出や人が触れる恐れのある非金属部/アースするおそれのある非充電金属部と充電部との間にお
ける絶縁抵抗の低下 等の“安全でない現象”をいう。
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④ 【高熱部の露出】に関しては、人が容易に触れる恐れのある外郭での高温、長時間接触する外郭での低
温やけどや、やけどをするスパークの発生の飛散 等の“安全でない現象”をいう。
⑤ 【傷害危険部の露出】に関しては、人が容易に触れる恐れのある外郭でのシャープエッヂ・挟み込み部・駆
動部の露出、手指が吸込まれる様な人体に危険がおよぶ部位の露出 等の“安全でない現象”をいう。
(2) 種々の“安全でない現象”に対する安全設計指針
① 発火・発煙・外郭過熱に関しては、以下の内容を配慮する。
寿命末期、過負荷及び過電圧を配慮した電気部品を使用する。
発熱、スパーク発生及びサージ電圧を配慮したプリント実装回路(保護回路を含む)を使用する。
断線時のスパークによる着火及び短絡時の発火・発煙しない電線を使用する。
電気接続部は、緩みが生じない方式であると同時にさび等が生じない材料を使用する。
プリント実装回路は、異常発熱・発火時にも広がらない材料と構造とする。
供給電源の誤使用ができないような構造とする。
② 落下・飛散に関しては、以下の内容を配慮する。
使用者が取付する商品は、誤った取付ができない様な構造とするか容易に認識できる構造とする。ま
た、重大な危害の恐れのあるときには、2重の落下防止装置を設ける。
子供がぶら下がる恐れがある商品は、ぶら下がった部位から破断する構造とする。
ガラス部品の固定については、ガラスの破損しない固定構造とする。
浴室用商品については、割れてもガラスが飛散しない様な構造や材料とする。
③ 漏電・充電部の露出に関しては、以下の内容を配慮する。
工具等をもちいずに取外せる外郭は、外殻を取外し後に充電部露出がないようにする。
指・ピン等で挿入できる開口部がある場合、充電部に接触できない構造とする。
破損・変形の恐れがある外郭については、充電部との接触しない構造とする。
差込口がある場合、適用プラグをどのような形で差し込んでも充電部の短絡が生じない様にする。
内部配線は、稼動部・高温部・切断部 等との近接・接触によって損傷しない様にする。
水廻り商品は、万が一湿気や水滴により絶縁抵抗が低下しても人体に感電等の影響がない様にする。
④ 高熱部の露出に関しては、以下の内容を配慮する。
やけど等の火傷するおそれがある発熱部は、適当な保護をする。
やけど等の火傷するおそれがある発熱部や危険性のある高温部は、注意・警告を行う。
電源処断後直ちに温度低下がしない部位についても、注意・警告を行う。
⑤ 傷害危険部の露出に関しては、以下の内容を配慮する。
使用時・施工時に人に触れるおそれのある部位については、バリや突起・鋭利な部分がない様にす
る。
床や天井等の設置面に、傷をつける様なバリや突起・鋭利な部分がない様にする。
人がぶつかるおそれのある部位については、怪我をしないような対処をする。
- 25 -
3.5.4 法令
白色 LED は低ボルトの直流電源で動作する新しい発光素子である。素子そのものの感電、火災、人体への影
響といった安全に関わる直接的な法令上の規制は見当たらない。素子を複数個まとめた“照らす明かり”、“見せ
る明かり”としての照明用モジュール/照明器具や内部部品として組み込んでいる機械器具は法令上の規制を受
ける。以下に照明に関連する法令を中心に記載する。商品設計、商品使用の際の参考にされたい。
(1)【電気用品安全法】
電気事業法は経済産業省が管轄している。この法律は電気用品で一般用電気工作物の部分であったり、電気
工作物に接続して用いられる機械、器具であって、電気用品安全法施行規則の「電気用品の区分」に定められた
ものに適用する法律である。
代表的な器具として、
● 光源及び光源応用機械器具
● 配線器具
● 交流用電気機械器具-直流電源装置、電灯付家具、調光器、電気ペンシルなど
● 交流用電気機械器具-直流電源装置など
● 小形単相変圧器類-電圧調整器、放電灯安定器
などがある。
LED に関しては光源及び光源応用機械器具以外、サイン、ディスプレイなどの表示用機器としても使用されてい
る。このなかの第 10 条 表示の義務
第 12 条 表示の禁止 について電気用品安全法に適合していることを示
すための表示に関する決まりである。
2010 年 4 月現在、LED を光源としたランプ、照明器具は一部の品目※を除いて電気用品に指定されていない。
LED 照明が普及してきたことを考慮して、電気用品に指定する動きがあり近い将来には、ほとんどの LED 照明関
連品目に電気用品安全法が適用されるようになる。
※現在、電気用品安全法が適用される LED 照明関連品目
・電気スタンド
・広告灯
・ハンドランプ
・庭園灯器具
・装飾用電灯器具
①(電気用品安全法施行令)
電気用品の区分とその有効期間を定めている。
第1条では、特定電気用品の適用範囲 を定めている。
第2条では、特定電気用品以外の電気用品 を定めている。
適用範囲の“電源の周波数”、“定格電圧の範囲”を指定している。
電源電圧は 50 ヘルツまたは 60 ヘルツで、定格電圧が 30 ボルト以上 300 ボルト以外のものを規制
の対象としている。
②(電気用品安全法施行規則)
「電気用品の区分」に定めるものは電気用品安全法に従い、電気用品の製造、輸入を行わねばならない。そ
のための規則を定めている。
事業届出のための電気用品の区分(第2条)――別表第1で規定している。
- 26 -
型式の区分(第4条)
――別表第2で規定している。
表示の方式(第17条)
――別表第5:電気用品の表示方法を規定している。
――別表第6:特定電気用品に表示する記号
――別表第7:特定電気用品以外の電気用品に表示する記号
③(電気用品安全法技術基準)
電気用品安全法には、製品の安全性を担保するために技術基準(省令)があり、指定された品目はこの技術
基準を守る義務がある。技術基準には、従来からの国内規格である省令1項基準と、国際規格に整合させた省
令2項基準があり、製造業者はいずれか一方を選択することになる。
省令1項基準において、光源及び光源応用機械器具は、別表第八に規定された技術基準が適用される。LED
照明関連製品を製造・輸入しようとする事業者は、法体系のなかで規定された基準を十分に理解して遵守する
ことが必要である。
(2)【電気事業法】
電気事業の基本法で経済産業省が管轄している。電気の使用者の利益を保護し、電気事業の健全な発達を図
り、電気工作物の工事、維持及び運営を規制することにより、公共の安全の確保及び環境の保全を図ることを目
的とした法律である。
(3)【電気設備の技術基準】
電気事業法に基づく経済産業省が管轄する省令である。電気工作物の設計、工事及び維持に関し守るべき性
能基準を定めている。具体的な技術的内容の[例]をあげた「技術基準の解釈」の記載がある。
(4)【電気工事士法】
経済産業省が管轄している。電気工事作業に従事する者の資格及び義務を定め、電気工事による災害の発生
の防止に寄与するための法律である。
(5)【内線規定】
(社)日本電気協会が管轄している。電気設備の保安を確保し安全に電気を使用できるよう、施行上守るべき技
術的事項を具体的に示している民間の規程である((社)日本電気協会 JEAC 8001-2005)。
(6)【日本工業規格】(JIS)
鉱工業品に関する国家規格で、関係の主務大臣が制定する。色に関する規格、電球・放電管・材料に関する規
格、照明器具に関する規格、配線材料に関する規格など照明に関連した規格や電子機器・電気機械に関する規
格が数多く定められている。なお、改定新 JIS は 2005.10.1 から施行され、主務大臣による認定制度から民間の登
録認証機関(第三者機関)による認証に、ISO/IEC ガイドとの整合化に、指定商品制度が廃止され JIS マーク表示
対象外であった製品についても新 JIS マークの表示が可能 となった。以下に代表的な規格を記載する。
- 27 -
性質区分としては ①製品規格 ②方法規格 ③基本規格(用語、記号、単位など)がある。
分類は A 土木及び建築 C 電子機器及び電気機械 D 自動車:自動車用ランプ類、警告灯など E 鉄道:
鉄道表示灯など H 非鉄金属 K 化学 T 医療安全用具 W 航空 Z その他:色用語、照明用語、色の表示方
法、色の測定方法、照度基準など の部門に分類されている。
2010 年 4 月現在発行されている LED 照明に関連のある JIS 規格は以下のとおりである。
[JIS C 8152
2007
照明用白色発光ダイオードの測光方法]
[JIS C 8153
2009
LED モジュール用制御装置-性能要求事項]
[JIS C 8154
2009
一般照明用LEDモジュール安全仕様]
[JIS C 8147-2-132008 ランプ制御装置-第2-13部:
直流又は交流電源用LEDモジュール用制御装置の個別要求事項]
[TS C 8153
2007
照明用白色LED装置性能要求事項]
上記のほか、電球形 LED ランプの性能・安全規格などの原案審議が進んでいる。
(7)【建築基準法】
国土交通省が管轄している。建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めている。建築設
備に関する基準も定められており、非常用の照明装置の設置基準や非常時の明るさなどを定めている。参照:
JIL5001「非常用照明器具技術基準」
(8)【消防法】
施行令・施行規則などに関する政令・規則。地方自治体により内容が異なる場合がある。関係する規格として誘
導灯および誘導標識の基準が定められている。参照:JIL5002「誘導灯器具及び避難誘導システム用装置技術基
準」…光源に LED を用いたものも含まれる。
(9)【団体規格】
日本照明器具業会規格(JIL)]
[JIL 5006 白色LED照明器具性能要求事項]
(10)【道路交通法】
国土交通省が定めている法令である。車両の前照灯、尾灯、室内灯、ハイマウントストップランプなど、また交通
信号機についても規定している。
(11)【航空法】
航空灯台、飛行場灯火、航空障害灯などが定められている。
(12)【計量法】
経済産業省で定めている。照度計、温度計などの検定事項が定められている。
(13)【省エネルギー法】
- 28 -
LED はこのニーズにあった光源といえる。燃料資源の有効な利用の確保のため、エネルギー使用の合理化を
総合的に進めるために必要な措置によりエネルギーの効率的利用に努めることを規定した法律である。
(14)【製造物責任法(PL 法)】
製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責
任について定めることにより被害者の保護を図ることを目的に制定された法令である。
(15)【公害防止関係】
経済産業省で定めている。ダイオキシン廃止、水質汚濁防止、PCB 廃止、Ni-Cd 電池の回収など
※EU 域内では電気・電子部品に含まれる特定有害物質の使用が RoHS 指令で制限される。
(16)【国際規格】
①国際電気標準会議規格(IEC 規格)
【IEC 60364(建築電気設備)】 【IEC 60065(家庭用電子機器の安全性)】
【IEC 60598(照明器具)】などほとんどは JIS との整合化が図られている。
②国際照明委員会推奨(CIE 推奨)は見え方などを規定。
(17)【外国規格】
ANSI、DIN、BS、NF、UNI、GOSP、中国、韓国、台湾、シンガポール、
IEEE、NEMA、UL などそれぞれの国で定められた規格がある。
(18)【その他】
人体への影響については 3.5.5 項を参照願いたい。国際規格化(IEC-CIE 規格化)の作業などの記載がある。
[法令の種類]
法律:国会で制定されたもの。
電気事業法、電気工事士法など
命令:法令のうち国、地方公共団体(都道府県,市町村)の行政機関によって制定されたもの。
政令:内閣が制定したもの。
省令:各大臣が制定したもの。内閣府令を含む。
告示:公の機関が決定事項を一般に知らせたもの。
通達:行政官庁が所管の諸機関、地方公共団体に対しある事項を通知したもの。
条例:地方公共団体の議会の決議を経て制定したもの。
規則:地方公共団体の長が発する命令。
- 29 -
3.5.5 人体への影響と生体安全性
(1) 光環境と光の生体安全性についての考え方
光は人間の生活と密接に結びついており、われわれの周囲では、太陽を始めとする自然光源やいろいろな種
類の人工光源が活用されている。特に、それら光源の中で、人間の生活環境である地球上の光環境の重要構成
要素となっている照明用光源からの光は、視覚支援や視作業支援という重要な役割を果たしている。これらの照
明用光源は、元来、人間の視覚や視作業を支援することを第1義として開発・製作されたものだから、光源から放
射される光は、主として可視放射で構成されるように設計されてはいるが、実際にその光源からの光の全てが可
視放射だけで構成されていることは無く、視覚支援には全く寄与しない紫外放射や赤外放射も不可分的な構成要
素の一部として含まれている。(このことは、自然の光環境の光源である太陽光についても全く同様である。)
ところで、良く知られているように、光の本質(実体)はエネルギーの1様態である。人体が光エネルギーの照射
を受け、光を吸収すると、そのエネルギーの大きさにより、人体にいろいろな作用を生じる。中でも、波長の短い紫
外放射は光子(フォトン)のエネルギーが大きく、人体に吸収されると、何らかの光生物的作用効果、時には光生
物的傷害を及ぼす可能性がある。したがって、光環境で生活したり、光エネルギーを利用したりする場合には、視
覚だけでなく光のエネルギーとしての視覚以外の諸作用についても充分に注意を払い、必要があれば適切な対応
措置、特に安全を確保するための諸管理を実施することが重要な要件となってくる。今後 LED 照明の高出力化に
伴い、これらの安全性についての考慮が必要になると思われる。
即ち、LED 照明による光環境を設計する場合に、視覚だけでなく、光エネルギーの視覚以外の作用や効果につ
いても正確な知識を持ち、種々の影響、特に傷害が発生する可能性について正確に検討した上で、そのことの適
正な制御を加味した視環境設計を行い、傷害の発生を未然に防止する措置をとっておくことが必要である。視環
境の設計だからといって、視覚以外の作用や効果については全く考慮しない、という態度では、良い視環境設計
は出来ないといっても過言ではない。
(2) 光エネルギーの人体に対する作用
前項で述べたように、光放射(紫外放射、可視放射、赤外放射の総称)は通常の地球上の光環境において、重
要環境要素のひとつとして存在し、その環境に存在する人間や動植物、各種の物質に対していろいろの作用を及
ぼしている。中でも、地球上における最大の光環境要素である太陽からの光放射の作用については、日常的に体
験する機会が多くあり、よく知られている通りである。
表 3.5-1(次ページ) に、現在までに明らかになっている、光エネルギーの、人間や動植物、諸物質に対する作
用の概要についてまとめたものを示す。これらの各作用の詳細については、ここでは記述するスペースが充分に
ないので省略する。必要に応じ、別の資料の参照願いたい。
- 30 -
表 3.5-1 光エネルギーの作用
波長 [nm]
区 分 名 称
作
用 効 果
関連する人工光源
X 線
100
UV-C
280
紫
UV-B
315
外
放
UV-A
射
オゾン生成、殺菌作用
殺菌ランプ、低圧水銀ランプ、溶
紫外性眼炎(角・結膜炎)
接アーク、石英 UV ランプ
陰イオン生成
医療用 UV-B 蛍光ランプ
紅斑作用
健康線用蛍光ランプ
日光皮膚炎(日焼け)
中圧水銀ランプ
ビタミンD生成
UV LED
色素沈着作用
ブラックライト蛍光ランプ
日光色素増強(日焼け)
ブラックライト水銀ランプ
PUVA(ソラレン光治療)
人工日焼けサロン用ランプ
光過敏症、UV-A 白内障
医療用 UV-A 蛍光ランプ
無水晶体眼網膜傷害
光化学用水銀ランプ
退色促進
UV LED
光化学
光架橋(光硬化性樹脂)
400
光触媒作用
可視放射
780
赤外放射
1 mm
光複写、光触媒作用
ハロゲンランプ
カプロラクタンの光合成
白色蛍光ランプ
青色光網膜傷害
三波長形蛍光ランプ
ビリルビンの光分解
メタルハライドランプ
植物の光合成
高圧ナトリウムランプ
昆虫・魚類の走光性
特殊(青色、黄色)蛍光ランプ
昆虫の複眼の明順応
白色 LED、単色 LED
光情報処理(光ディスク)
有機 EL
光サイン、光通信、防犯灯
レーザー
光信号、光アート
OLED
加熱、暖房、保温
赤外電球
加工、調理
遠赤外ランプ
乾燥
ニクロム・ヒーター
医療
遠赤外ヒーター
リモートセンシング
CO2 レーザー
光探査
IR LED
マイクロ波
- 31 -
(3) 光源の光の生体安全性リスク評価のための国際規格制定の経過
このような状況に対応するために、電気技術に関連する国際組織である IEC(国際電気標準会議)TC34
専門委員会(専門委員会名:光源類及び関連機器)および TC76 専門委員会(専門委員会名:光放射安全
とレーザー機器)、並びに光と照明技術に関連する国際組織である CIE(国際照明委員会)第6部会(部
会名:光生物学と光化学)において、光源からの光の生物的リスク(特に生体安全性リスク)を定量評価
するための方法、および、その評価結果を光環境設計に適用するための手順を国際規格化(IEC-CIE 規格
化)する作業が、1997 年より開始された。
これは、IEC 加盟国のひとつであるアメリカから新しい課題として IEC に提案され、各国の賛成を得て
IEC TC34 および IEC TC76、並びに CIE において関連の討議が開始されたものである。内容的に光源から
の光の特性と光生物的安全性が問題となるために、IEC TC34/SC34A 分科会(分科会名:光源類)と IEC
TC76 のワーキング・グループ:WG 9(グループ名:非コヒーレント光源)および CIE TC6-47 技術委員
会(技術委員会名:光源と光源システムの光生物的安全性)との連携の下に、IEC-CIE の合同パネル会
議が組織され、検討が進められた。合同パネル会議は、前後合計4回の会合を開催し、加盟主要国の代表
が参画して議論を進め、国際規格の原案を作成した。
アメリカにおいては、1997 年時点に、既に照明用光源の安全基準およびリスク評価方法がアメリカ国家
規格(ANSI-IESNA 規格)として制定・公布されていた。IEC TC34 および IEC TC76 に対するアメリカの
提案は、この ANSI-IESNA 規格が骨子となっていた。
この合同パネル会議での審議により、2001 年に、総則の部分の審議および原案作成が完了し、先ず CIE
加盟各国の国内委員会の投票に掛けられ、CIE 規格:CIE S 009/E(規格名: Photobiological safety of lamps
and lamp systems)として、2002 年に制定・公布された。次いで、この CIE 規格が IEC TC34 および IEC
TC76 に回付された。IEC 内においては、TC34 専門委員会と TC76 専門委員会で種々検討し、いくつかの
要検討点を精査した結果、2006 年に、この CIE S 009/E を IEC 規格としても承認し、あらたに IEC の規
格番号(IEC 62471、規格名:CIE S 009 に同じ)を付与することとした。これにより、CIE S 009/E は IEC
規格としても正式に承認され、IEC-CIE 合同規格(Dual-logo 規格)となった。
その後、この総則部分(IEC 62471)に引続いて、実際に適用するためのガイドラインの制定について、
IEC TC76 WG 9 で議論が継続され、2008 年に、IEC TR 62471-2(規格名: Photobiological safety of lamps
and lamp systems、 part 2 : Guidance on manufacturing requirements relating to non-laser optical radiation
safety)が制定公布された。(これにより、総則部分の規格番号は 62471-1 となった。)
この国際規格が整備されたことを受けて、各国が逐次それぞれの国家規格を整備することとなった。日
本では、(社)日本電球工業会が所轄団体として JIS の制定が進められることになった。(JIS 原案作成委員
会が 2010 年度より立ち上がることが既に決まっている。)
報告者は、この作業を担当した IEC-CIE 合同パネル会議の日本代表委員として、規格制定のための国
際討議に、合同パネル会議発足時の最初から参画し、日本の意見も数多く主張し、IEC-CIE 規格原案に反
映させた。また、上記の JIS 原案作成委員会にも構成員として参画することが決まっている。)
以下に、この“光源からの光の生体安全性リスク評価のための国際規格(IEC-CIE 規格)”(以下、“光の
生体安全性国際規格”)の概要について述べる。
- 32 -
(4) 光の生体安全性国際規格の内容
① 対象とする光放射の人体に対する傷害の種類
IEC 62471-1/CIE S 009/E では、光放射による人体への生体的傷害の中で、現在までに生体的・病理的に、傷
害の発生機構や作用波長、傷害の閾値などがある程度解明されている 10 種類の傷害を対象とすることとした。
(これ以外の傷害は対象外である(安全性は問題にならない)ということではない。リスクの正確な評価と安全性の
確保のためには、その傷害の発生機構や作用波長、傷害の閾値などが定量的に明らかになっている必要がある。
これら 10 種類以外の傷害についても、今後これらの諸点が解明され、明らかにされた時点で、対象に追加される
可能性は充分ある。)
表 3.5-2 に、これら 10 種類の傷害についての概要をまとめたものを示す。なお、各傷害の詳細については、
IEC 規格:IEC 62471-1/CIE S 009/E の規格書・本文を参照願いたい。
表 3.5-2 光の安全性リスク評価の対象となる光放射の人体に対する傷害的作用
対象となる傷害の種類
1. Actinic UV 、 skin & eye
皮膚と目の角・結膜に対する急性
の傷害[紅斑、紫外性眼炎]
害[UV-A 白内障]
3. Retinal blue light hazard
4. Retinal blue light hazard、
small
容
近紫外放射による水晶体への傷
2. Near UV、 eye
-
内
source
(α≦0.011)
(Retinal blue light hazard、
-aphakic eye)
(Retinal blue light hazard、
-small source、 aphakic)
青色光網膜傷害
青色光網膜傷害-発光部の小さ
い光源(光源の見込角:α≦0.011)
青色光網膜傷害(無水晶体眼の
場合)
青色光網膜傷害(無水晶体眼の
場合、発光部の小さい光源)
5. Retinal thermal hazard
網膜に対する熱的傷害
6. Retinal thermal hazard、
網膜に対する熱的傷害(可視放射
-weak visual stimulus
7. Infrared radiation
hazard、 eye
8. Thermal hazard、 skin
のほとんど無い場合)
赤外放射による角膜および水晶体
への傷害
皮膚の熱的傷害
対象波長域[nm]
基準物理量
200~400
有効放射照度
315~400
放射照度
300~700
有効放射輝度
300~700
有効放射照度
300~700
有効放射輝度
300~700
有効放射照度
380~1400
有効放射輝度
780~1400
有効放射輝度
780~3000
放射照度
380~3000
放射照度
これらの各種傷害の作用スペクトル、傷害の閾値、閾値を決めるために基準とする物理量およびその単位など
の詳細については、上記 IEC 規格:IEC 62471-1 の規格書本文の参照願いたい。なお、光源の安全基準のリスク
評価の対象として、IEC-CIE 合同パネル会議では、水晶体摘出手術をした人の目(Aphakic eye-いわゆる無水
晶体眼)の網膜に対する傷害は、重要であるが、必ずしも一般的な傷害ではないとし、通常の光環境条件では、生
じる可能性のある残りの8種類に絞って評価を行うこととしている。
- 33 -
② 傷害の閾値と許容露光量
前項の各傷害に対する傷害の閾値や許容露光量については、傷害の種類により放射照度または放射輝度の時
間積分値(露光量)で評価する必要がある。光放射の人体に対する傷害の許容露光量(exposure limit) について
は、過去の研究成果による諸データを参照して数値を決めることとした。このために、過去に制定された類似の主
旨の関連の国際規格や国家規格、およびそれらに準ずる規格も充分調査した。その結果、次の3つが参考になる
ことが分かった。
1) ICNIRP(International Commission on Non-ionizing Radiation Protection) の ガイドライン
2) ACGIH の TLV
3) ANSI/IESNA(RP-27 シリーズ)
IEC-CIE 合同パネル会議では、これら3つの規格を参考にして、許容露光量(閾値)の基準値を定めた。具体的
な許容露光量については、上記 IEC 規格:IEC 62471-1 の規格書・本文をご参照願いたい。
③ 光による傷害度を基準にしたリスク・グループ区分
アメリカの国家規格:ANSI/IESNA 規格では、照明用光源を光生物的傷害度に応じて、4グループに区分するこ
ととしている。区分は、あくまで“傷害を生じる可能性がある(potential hazard)”という考え方で区分する。“必ずこ
の傷害が生じる”ということではないとしている。
合同パネル会議においても、この ANSI/IESNA 規格の考えを踏襲し、光生物的傷害の種類に応じて、リスク・ク
ループ区分を行うこととした。ただし、区分する尺度の数値はもちろん重要であるが、数値よりも区分のコンセプト
(概念)がより重要ということを確認した。今後適用していく段階で、区分する数値は見直される可能性があるが、コ
ンセプトの方はあくまで優先的概念であるから、容易には変えないようにすることとした。
表 3.5-3 に、IEC-CIE 合同パネル会議が制定したリスクグループ区分と区分のコンセプトを示す。
- 34 -
表 3.5-3 光の生体安全性国際規格におけるリスクグループ区分と区分のコンセプト
グループ区分
区分のコンセプト
原則的考え方としては、結果的にどのような光生物的傷害も誘起する可能性の無い光
リスク免除
[Exempt Group]
源。具体的必要基準としては、例えば、8時間の照射を受けても目や皮膚に急性の傷害
を与えることが無い光源や、10、000 秒(2.8 時間)見つめても青色光網膜傷害を生じるこ
との無いような光源などは、このグループ区分になる。
原則的考え方としては、通常の一般的行動条件での照射範囲内では、光生物的傷害を
リスクグループ 1
生じる可能性の無い光源。具体的必要基準としては、リスク免除グループのレベルは越
[低リスク]
えるが、例えば、10、000 秒(2.8 時間)の照射を受けても目や皮膚に急性の傷害を与え
[RG-1]
ることが無い光源や、100 秒間見つめても青色光網膜傷害を生じることの無いような光
源などは、このグループ区分になる。
原則的考え方としては、高輝度に起因する嫌悪感や熱的不快感が無い場合でも傷害を
リスクグループ 2
与える可能性のある光源。具体的必要条件としては、RG-1 のレベルは越えるが、例え
[中リスク]
ば、1、000 秒の照射を受けても目や皮膚に急性の傷害を与えることが無い光源や、0.25
[RG-2]
秒間見つめても青色光網膜傷害を生じることの無いような光源などは、このグループ区
分になる。
リスクグループ3
原則的考え方としては、瞬間的な、あるいは非常に短時間の照射を受けても(あるいは
[高リスク]
見つめても)光生物的傷害を生じる危険性のある光源。RG-2 のレベルを越える光源は
[RG-3]
全てこのグループ区分になる。
(5) 市販の LED 光源の生体安全性リスク評価
① 光源の生体安全性国際規格と LED 光源
前項までに述べてきた“光源の生体安全性リスク評価・国際規格”は、その制定の主旨と経過から、一般照
明用光源全てを対象としたものである。21 世紀の光源として注目されている固体素子光源である LED が、
一般照明用にも利用されるようになることが予測されるようになったので、光源の生体安全性国際規格の
適用範囲に LED 光源も、明確に含められるようになった。
そこで、
((特定非営利活動法人)LED 照明推進協議会((NPO 法人) LED 照明推進協議会(以下、JLEDS))
では、市販の LED 光源について、光源の生体安全性リスク評価・国際規格による生体安全性のリスク評価
を実施することを計画した。最初に、2002 年に当時の市販の砲弾形 LED(白色を含む6色)について実施
した。
② 砲弾形 LED についての生体安全性評価結果(2002 年実施)
2002 年に市販されていた6種類(発光色:青色、青緑色、緑色、黄色、赤色、白色)の T-7/4 砲弾形 LED
光源(狭配光形、全て日本製)について、生体安全性リスク評価を実施した。測定・評価条件は、全て順
方向電流: DC 20 mA の条件により実施した。
- 35 -
図 3.5-1 供試砲弾形 LEDs の分光分布(2002 年)
供試 LEDs の分光分布を図 3.5-1 に示す。
また、評価結果(リスクグループ区分)を表 3.5-4 に示す。
表 3.5-4 光源の生体安全性リスク評価・国際規格による市販 LED 光源のリスクグループ区分
(砲弾形 LED。2002 年に実施したもの)
傷害の種類
白
色
青
色
青緑色
緑
色
黄
色
赤
色
1. Actinic UV H.、 skin & eye
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
2. Near UV hazard、 eye
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
3. Retinal blue light hazard
――
――
――
――
――
――
4. RBLH、 small source
Exempt
RG-2
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
5. Retinal thermal hazard
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
6. RTH、 weak visual stimulus
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
7. IR hazard、 eye
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
8. Thermal hazard、 skin
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
表 3.5-4 に示したように、青色 LED の RBLH(青色光網膜傷害-発光部の小さい光源)に対するリスク
が、RG-2(リスクグループ2)に区分される以外は、全て Exempt Group(リスク免除グループ)に区分
された。
③ ハイパワー形 LED の開発商品化と最近の市販 LED についての生体安全性評価(2009 年実施)
1) ハイパワー形 LED の開発と最近の白色 LED 光源の動向
前項の 2002 年当時の市販 LED は、1素子当りの電力が 0.07~0.1 W、白色 LED の場合で、ランプ効率
- 36 -
が 10~20 lm/W 程度であった。その後の関係者の性能向上への努力により、最近(2009 年)では、白色 LED
のランプ効率が 100 lm/W を超える製品も発表されるようになり、効率的には、発表値においては、従来の真
空システム光源の代表である蛍光ランプと肩を並べる水準に到達しつつある。また、 LED1素子当たりの電
力も 3~5 W と大きくなり、全光束も白色の場合で1素子当り 150 lm に近い、いわゆる“HP LED(ハイパワー形
LED)”も製品化されるようになってきた。LED 光源 の一般照明用への利用がいよいよ本格的に始まり、将来
更に飛躍的に増大するとの期待がますます大きくなってきている。
LED 光源が光環境において、更に広く一般照明用として利用されるようになってくると、人間が LED 光源を
見たり、LED からの光の照射を受けたりする機会も増大する。LED 光源は、従来の照明光源である白熱電球、
蛍光ランプ、HID ランプなどとは異なった構造や光特性を持っている。従来の光源と比較した LED 光源の光放
射特性の特徴は、小面積の発光部(点光源に近い)から光度の高い光が放射されていること(いわゆる“輝度
が高い”こと)や、急峻な空間分布、狭帯域の発光スペクトルを有していることなどである。この特徴により、従
来の光源と対比して、光源を直視するような位置関係になった時に、人間の目の網膜に対する安全性のリス
クが大きな課題となってくることが予測される。
照明用光源は、光環境における日常の基幹要素商品として広く使用されている。したがって、LED 光源を光
環境照明用として使用するに当っては、LED 光源からの光の人間に対する生体安全性リスクを調査・確認す
ることが重要な課題となってくる。特に、最近の HP LED は、既に述べたように1素子当りの電力や発光量が従
来の普通形・砲弾形 LED に比べて大きく、生体安全性リスクは大きくなる方向である。
そこで、LED 光源についての業界団体である JLEDS では、これらの商品動向や必要性・重要性を充分認
識し、2006 年度より、再び直近の市販の LED 光源についての生体安全性リスク調査に着手した。なお、発光
色としては、一般照明用に使用される白色の他、青色光網膜傷害のリスクが大きいと予測される青色を含め
て実施した。2007 年に調査を完了し、2009 年 3 月に、最近の砲弾形 LED、COB 形(chip-on-board 形)LED
および、最近の新製品で今後普及が期待されている HP LED を含めた各種市販の LED 光源について、生体
安全性リスクの調査を完了し、JLEDS 内で報告書を発行した)。
2) JLEDS におけるリスク調査の体制
JLEDS における生体安全性リスク調査は、JLEDS 内の技術標準化推進委員会において実施した。具体的
作業の推進は、技術標準化推進委員会内に主担当の分科会を組織して行った。主担当分科会の名称は、
2006 年度~2007 年度は“第Ⅳ分科会”2008 年度は“20B 分科会”であった。構成員は、途中で多尐の入出は
あったが、基本的に同じ構成員が継承しした。
作業は分科会構成員全員により分担推進した。生体安全性リスク評価作業は、LED 光源の光特性の測定
およびその光特性を基にしたリスク評価が中心となる。光特性の測定は、分科会構成員である大塚電子㈱お
よび㈱テクノローグが担当した。これらを含めた分科会内の作業分担は以下の通りである。
・市販 LED サンプルの調査並びに収集 ・・・・・
構成員全員で分担
・光特性の測定および主担当者・・・・・・・・・・・・・
大塚電子㈱[大嶋 浩正、三島 俊介]
㈱テクノローグ[銭 衛 東、河本 康太郎]
・生体安全性リスク評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
㈱テクノローグ[銭 衛 東、河本 康太郎]
対象 LEDs の中で、HP LED は、砲弾形 LED や COB 形 LED に比べて1素子当りの入力電力が大きい(順
方向電流が大きい)ため、熱損失が大きくなる。したがって、測定の際の熱処理のためのヒートシンクの構造・
- 37 -
取り付けなどが重要な要件となってくる。これらの HP LEDs は、製品として既にヒートシンクが一体化されてい
るものが多いが、今回の測定のために、特別にヒートシンクを設計したものもあった。(一部の分科会構成員
には、上記作業分担のほかに、これらのヒートシンクを含む測定治具の作成などに、多大なご支援をいただい
た。この場をお借りして厚くお礼申し上げる。
図 3.5-2 に測定サンプルの一例を示す。
図 3.5-2 供試 HP LED の商品例
3) 生体安全性リスク評価結果
表 3.5-5(次ページ)に生体安全性リスク評価結果を示す。また、図 3.5-3(本項末尾)に供試 LEDs の分光分
布を示す。
(6)まとめ
(5)-① で述べたように、LED 光源は、その構造的・発光原理的特徴により、従来の照明用光源と比較して、目
の網膜に対する傷害のリスクが大きくなることが予測される。今回まとめた前項までの調査結果では、砲弾形 LED、
COB 形 LED、HP 形 LED とも、傷害の種類の中で、青色光網膜傷害のリスクだけが、リスク・グループ1または2
(RG-1 または RG-2)に区分されるとの結果となり、この予測が正しかったことが裏付けられた。
今回調査した市販の LED 光源は、2008 年に市販されている製品が多いと考えられる。JLEDS のロードマップに
よれば、LED 光源の光束(効率)は、将来更に改良されていくと予測されている。
青色光網膜傷害のリスクは、(LED)光源の輝度の値に対応している。もし LED 光源(LED 素子)の形状・寸法が
変化せず、光束だけが増大していくなら、輝度の値は大きくなる。そして、結果として青色光網膜傷害のリスクが増
大していくことになる。したがって、JLEDS としては、生体安全性リスク調査は今回で終わりとするのではなく、将来
も引続き継続していきたいと考えている。
参考文献
1) IEC 62471-1 : Photobiological safety of lamps and lamp systems、 2007(= CIE S 009/E-2002)
2) IEC TR 62471-2 : Photobiological safety of lamps and lamp systems、 part 2.: Guidance on manufacturing
requirements relating to non-laser optical radiation safety、 2008
3) LED 照明推進協議会・編:LED 照明ハンドブック、オーム社(平 18)
4) (NPO 法人)LED 照明推進協議会:LED 生体安全性調査報告書(平 21)
- 38 -
表 3.5-5 光源の生体安全性国際規格による市販 LED 光源のリスクグループ区分 (2)
(砲弾形 LED、COB 形 LED、HP LED、2008 年に実施したもの)
傷
区 分
製造
社
A
砲弾形
社
B 社
C 社
D 社
E 社
A 社
B 社
F 社
COB 形
G 社
H 社
E 社
I 社
K 社
G 社
N 社
E 社
HP 形
L 社
M 社
発光色
評価条
件
白 色
青 色
電球色
白 色
白 色
青 色
青 色
白 色
RBG
白 色
温白色
白 色
白 色
白 色
白 色
白 色
青 色
白 色
青 色
白 色
白 色
電球色
昼光色
青 色
青 色
昼白色
昼光色
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
害
の
種
類
UV
actinic
UV-A
eye
Blue light
retinal
Retinal
thermal
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
IR、
corn
eal/lens
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
電球色
500 lx
Exempt
Exempt
RG-1
Exempt
Exempt
Exempt
青 色
昼光色
電球色
青 色
昼光色
電球色
青 色
昼光色
電球色
青 色
昼光色
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
500
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
lx
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
RG-1
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
電球色
500 lx
Exempt
Exempt
RG-1
Exempt
Exempt
Exempt
青 色
白 色
電球色
500 lx
500 lx
500 lx
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
RG-2
RG-1
RG-1
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
- 39 -
Skin
thermal
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
Exempt
0.25
分光放射束 [mW・nm-1]
0.20
A社(電球色)
A社
B社
C社
E社
0.15
0.10
0.05
波長[nm]
0.00
300
400
500
600
700
800
図 3.5-3(1) 供試砲弾形 LED の分光分布((1) 白色)(2008 年)
1.20
-1
分光放射束 [mW・nm ]
1.00
0.80
A社
D社
0.60
E社
0.40
0.20
波長[nm]
0.00
300
400
500
600
700
800
図 3.5-3(2) 供試砲弾形 LED の分光分布((2) 青色)(2008 年)
- 40 -
図 3.5-3(3) 供試 COB 形 LED の分光分布((1) 白色)(2008 年)
図 3.5-3(4) 供試 COB 形 LED の分光分布((2) 青色)(2008 年)
- 41 -
図 3.5-3(5) 供試 HP LED の分光分布((1) 白色)(2008 年)
図 3.5-3(6) 供試 HP LED の分光分布((2) 青色)(2008 年)
- 42 -
3.5.6 環境への影響
近年国際的に盛んに言われている環境問題。白色 LED の発光効率は 100lm/W 以上の製品が発売され、それ
以上の製品が開発されている。2015 年頃には 150lm/W に達する見込みで(LED 照明推進協議会「2008 年白色
LED の技術ロードマップ 」より)蛍光ランプ以上の効率を得ることが可能となり、長寿命及び CO2 削減の観点から
環境に優しい光源として需要は拡大するものと考えられる。また、蛍光ランプ・高輝度放電ランプには、環境に負
荷を与える水銀が含まれているが、白色 LED は水銀を含めこのような有害物を含まないという特徴がある。LED モ
ジュールや器具を製造・販売しようとする場合、設計の過程で、最終製品の各構成要素(レンズ、プリント基板、放
熱板、電源、器具本体)の使用物質と、自社の工程中で使用する(最終製品には残らない)物質について環境負
荷をチェックしていくことが、製造・販売責任として求められる。
LED 照明器具を製造・販売するにあたり、環境負荷物質に関する規格・団体は多岐に亘っており必要に応
じて規準を遵守する必要が考えられる。
代表的な規格・団体を以下に示す。
・RoHS 指令
・WEEE 指令
・REACH
・JAMP
・グリーン購入法
・各国の環境規格
なお、国内環境に関わる法規は以下に示すように多岐に亘っており、製品の種類に応じて適用される法規は変
わるので、具体的なケースに応じて調査・対応していくことが求められる。
区分
法律名
環境一般
・環境基本法
・グリーン購入法
・循環型社会形成推進基本法
・国等による環境物質等の調達の推進に関する法律
・人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律
・特定工場における公害防止組織の整備に関する法律
・環境影響評価法
・公害健康被害の補償に関する法律
・計量法
・環境省設置法
地球環境
・地球温暖化対策の推進に関する法律
・特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律
・特定有害廃棄物質等の輸出入の規制に関する法律
・海洋汚染及び海上火災の防止に関する法律
大気汚染、悪臭
・大気汚染防止法
・道路運送車両法
- 43 -
・道路交通法
・自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措
置法
・スパイクタイヤ粉塵の発生の防止に関する法令
・揮発油等の品質の確認等に関する法律
・悪臭防止法
3.5.7 まとめ
LED 素子の性能向上に伴い、従来光源を上回る省エネルギー性能の製品が続々と上市されている。長寿命で
メンテナンスの手間を大幅に尐なくすることができることが、LED 照明の普及を加速している。また、優れた省エネ
ルギー性能と有害物質を含まない特性から、地球温暖化防止に有効であり、環境に優しい照明として広く認知さ
れるようになった。今後も、LED の特徴を活用することで、照明の質の向上と環境負荷の低減を両立させることで
社会貢献することが強く望まれている。LED 照明市場の拡大と量産効果による価格低減が相乗的に作用して LED
照明を普及拡大させ、より一層地球環境の維持に貢献していきたい。
- 44 -