Download Title 膜ろ過による下水2次処理水中微量汚染物質の除去
Transcript
Title Author(s) 膜ろ過による下水2次処理水中微量汚染物質の除去 : ろ過 膜及び微量汚染物質特性の影響 清水, 芳久 Citation (2006) Issue Date 2006-05 URL http://hdl.handle.net/2433/84922 Right Type Textversion Research Paper publisher Kyoto University 1536 も併協 時 幽 圃 ‑ ‑ ‑ ‑ B E E ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ EEE‑EE ‑EE‑EE ‑ ‑ B E B E E ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ E E EE E‑‑EE ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ E EE ‑ ‑ s a ‑ ‑ ‑ a E E ‑ ‑ ‑ E B E B E E ‑ ‑ E E EE l i ・ i l i彊 ‑ ・ l ・ i ・ l ‑ i l i ・・‑ l・ i l ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ E i l ‑ ・ l ・ l・ l i l i l・ l i l i ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ E ・ E │ 欄 ‑ ・ 1060665830 8年 5 は し が き 先進国・発展途上国を関わず、人口の増大およびそれに伴う都市の拡大等に伴って 水需要が増大し、これに対応できる水資源は量的にも質的にも枯渇しつつある。今後一 層深刻となるこの問題に対処するために、下水 2次処理水を直接的または間接的に再利 用することを目的に膜ろ過処理システムの研究が進められている。 水環境中には、人類の存続を脅かす内分泌擾乱性・発癌性等を始めとする毒性を有す る人工・自然由来の多くの微量汚染物質が未処理のまま存在し、微量汚染物質と結合す ることによってその動態および毒性に影響を及ぼすフミン質等の高分子溶存有機物 ( D O M ) も存在することがわかっている。しかしながら、最新の研究においては、微量 汚染物質の測定が困難であること等の理由から、これらの物質の膜ろ過処理について考 究しているものは見当たらない。 本研究は、各研究機関の研究成果・設備を最大限に利用して、微量汚染物質の膜ろ過 処理による除去についての基礎的・実践的研究を体系的に実施し、必要不可欠な情報を 提供することを目的としたものである。 膜ろ過処理は、クリプトスポリジウム等の病原性微生物や種々の汚染物質を物理的に 除去することが可能であり、他の生物化学的処理と比較して新たな汚染物質を副次的に 産出しない有望な水処理技術として注目されて久しい。しかしながら、国内外における 膜ろ過処理に関するこれまでの研究は、汚染指標や汚染物質の除去率のみを対象として 実施されて来ており、新たな処理対象水あるいは処理対象物質(特に微量汚染物質)が 生じた場合に、即座にその除去特性を推定し対処するために十分な基礎的知識が蓄積さ れているとは言い難い。 一方、水環境中に存在するフミン質を始めとする溶存有機系高分子 ( D O M ) は、無機・ 有機微量汚染物質の動態を左右し、これらの物質が人間を含めた生物に与える毒性にも 影響を及ぼすことがわかって来ている。本申請の研究代表者が所属する京都大学工学研 究科附属流域圏総合環境質研究センターでは、微量汚染物質は高い収着能を有する DOM と結合する傾向が強いこと、水環境中の動態に影響を及ぼす微量汚染物質の物理化学的 特性は DOMに結合されることにより DOMのそれと類似したものとなること、微量汚染物 質の細胞膜透過性や DNA損傷性は DOMの共存により低下すること、微量汚染物質や DOM は下水 2次処理では容易に分解されないこと、等を明らかにしてきている。また、 DOM は膜ろ過処理を行う場合には、膜の自詰まり ( F o u li n g ) の原因物質としても知られて いる O この様な既存研究状況を踏まえて、本研究では以下の様な目的を設定して研究を実施 した。 ①膜ろ過処理による微量汚染物質の除去特性の解明 吋ヤぷ戦流布 ②膜ろ過処理による D O Mの除去特性の解明 ③微量汚染物質と D O Mとの相互作用の解明 ④D O M共存下における膜ろ過処理による微量汚染物質の除去特性の解明 ⑤膜ろ過処理における物理化学的除去モデ、ノレの構築 この報告書では、本研究で得られた成果を次の様に 3つの内容に分類して報告する。 1.膜ろ過処理による水環境中溶存有機物質 D O Mの抽出・濃縮方法の開発 n . 膜ろ過処理による微量有機汚染物質除去特性の解明 m . 膜ろ過処理におけるファウリング原因物質の解明 研究組織 研究代表者 清水芳久(京都大学大学院工学研究科 助教授) 研究分担者 松井三郎(京都大学地球環境学大学院地球環境学堂 研究分担者 山田春美(京都大学大学院工学研究科 研究分担者 松田知成(京都大学地球環境学大学院地球環境学堂 研究分担者 越後信哉(京都大学大学院工学研究科講師) 教授) 助教授) 教授) (金額単位:円) 交付決定額(配分額) 直接経費 平成 1 5年度 7, 700, 000 平成 1 6年度 4, 800, 000 平成 1 7年度 2, 800, 000 総計 1 5, 300, 000 間接経費 合計 O O O O 7, 700, 000 4, 800, 000 2, 800, 000 1 5, 300, 000 研究発表 ( 1 ) 学会誌等 ‑池嶋規人、尾崎博明、松井三郎、清水芳久:低圧逆浸透膜の内分泌擾乱物質分 離に及ぼす共存物質の影響、環境工学研究論文集、第 4 2巻 、 2 25‑229、 2 0 0 5 . ・池田和弘、清水芳久、日下部武敏、松井三郎:天然有機物質の質量分析条件の 検討とその適用、環境システム計測制御学会誌、第 1 0巻 2号 、 6 6‑72、 2 0 0 5 . ・山本裕史、 H . M .L i l j e s t r a n d 、清水芳久:内分泌擾乱化学物質の N O Mへの収着、 環境システム計測制御学会誌、第 1 0巻 2号 、 7 3‑78、2 0 0 5 . ( 2 ) 口頭発表等 ・池嶋規人、尾崎博明、松井三郎、清水芳久:低圧逆浸透膜の内分泌援乱物質分 離に及ぼす共存物質の影響、土木学会環境工学フォーラム、 2 0 0 5年 1 0月. ( 3 ) 受賞 ・環境システム計測制御学会 2006年論文賞:池田和弘、清水芳久、日下部武敏、 松井三郎:天然有機物質の質量分析条件の検討とその適用、環境システム計測 制御学会誌、第 1 0巻 2号 、 66‑72、2 0 0 5 . ・環境システム計測制御学会 2006年論文賞:山本裕史、 H.M.Liljestrand、清水 芳久:内分泌撹乱化学物質の NOMへの収着、環境システム計測制御学会誌、第 1 0巻 2号 、 7 3‑78、2 0 0 5 . 1.膜ろ過処理による水環境中溶存有機物質 DOMの抽出・濃縮方法 の開発 第 l章 膜ろ過装置を用いた水環境中溶存有機物質の分画および濃縮 本研究では、膜装置システムによる溶存有機物質 ( D i s s o l v e dO r g a n i cM a t t e r,DOM) の分 画・濃縮方法は、池田ら 1 ),2 )に よ り 構 築 さ れ た も の を 使 用 し た 。 本 章 で は 、 こ の 方 法 を 水 環 境 中 溶 存 有 機 物 質 DOMに 適 用 し た 結 果 に つ い て 記 述 す る 。 トl 採 水 場 所 と 採 水 方 法 D i s s o l v e dO r g a n i cC a r b o n,DOC) 濃 度 の 低 い 琵 琶 湖 の 南 本研究では、まず溶存有機炭素 ( 湖 水 DOMを 分 子 量 分 画 す る こ と 、 特 性 解 析 ( 特 に 、 国 体 NMRに よ る 解 析 ) を 行 う た め に は 各 画 分 ご と に 数 百 mg以 上 の 濃 縮 図 体 試 料 が 必 要 な こ と 等 の 理 由 か ら 、 必 然 的 に 処 理 水 量が多くなることが予想された。そこで、前回の冬の琵琶湖南湖水の分画・濃縮結果 3)を 参考に目標処理水量を 1 , 0 0 0L程 度 に 設 定 し た 。 こ の た め に 、 後 述 す る 一 連 の 分 画 ・ 濃 縮 4 0Lに 設 定 し 、 合 計 3回 の 分 画 ・ 濃 縮 操 作 を 行 っ 操 作 に お い て 1回 あ た り の 処 理 水 量 を 3 た。しかし、このような多量の湖水を採水器などの小容量の容器を用いて行うと、それだ けで莫大な労力と時間を浪費することになる。したがって、本研究では、京都大学大学院 工学研究科附属環境質制御研究センターの敷地内に設置されている採水ポンプ設備を利用 ‑ 1に示す。 して琵琶湖南湖水の採取を行うことにした。採水地点の概略位置を図 1 図 1 ‑ 1 琵琶湖南湖水の採水地点 { 大 津 市 な ぎ さ 公 園 の 東 沖 合 50 m(水 深 約 2m)付近) l・2 膜 ろ 過 装 置 シ ス テ ム お よ び 分 画 ・ 濃 縮 操 作 の 概 要 本 研 究 で 使 用 し た 、 環 境 水 中 か ら 溶 存 有 機 物 質 (DOM) を 分 画 ・ 濃 縮 す る た め の 膜 装 置 お よ び そ の 操 作 条 件 等 に つ い て そ の 概 要 を 以 下 に 記 す 。 本 研 究 で は 、 DOMを 研 究 対 象 と し ているため、分画・濃縮に使用した装置および器具等は可能な限り、ガラス製、ステンレ ・1に 本 研 究 で 使 用 し た 膜 装 震 の 仕 様 を ま と ス製あるいはテフロン製のものを用いた。表 l めて示す。 表 1 ‑ 1 本研究で使用した膜装置の仕様 膜装置 膜材質 膜支持体 S S膜 ポリピニリデンクロライド アクリル製平板型カセット 1K膜 再生セルロース ポリプロン製円筒型カセット RO膜 ポリアミド系 *SS膜 : 0 . 2 2 μ m精 密 ろ 過 膜 装 置 ステンレス製円筒型カセット 1K膜:分画分子量1.0 0 0Da限 外 ろ 過 膜 装 置 RO膜 :NaC195%排 除 逆 浸 透 膜 装 置 ト2・1 琵 琶 湖 南 湖 水 の 採 水 お よ び 前 処 理 S膜 装 霞 に よ り S S除 去 操 琵 琶 湖 南 湖 水 の 場 合 、 湖 水 を 前 処 理 せ ず に 、 表 ト 1に示した S 作を行うと少量の試料で膜が自詰まりしてしまうことが予想された。そこで、本研究では 以下に示す前処理を行った。 採水ポンプにより環境質制御研究センター敷地内までポンプ輸送した湖水をステンレ ス バ ケ ツ で 直 接 採 取 し 、 す ぐ に ス テ ン レ ス 製 ふ る し ¥(飯田工業、自の開き 20μm、J I SZ 8 8 0 1 ) に 通 し た 。 こ の 際 、 原 水 の デ ー タ と し て 、 ろ 過 前 の pH、 電 気 伝 導 度 ( E l e c t r i cC o n d u c t i v i t y, EC)、 濁 度 ( T u r b i d i t y)、溶存酸素 (DO) お よ び 水 温 を 水 質 チ ェ ッ カ ( 堀 場 製 作 所 、 U ‑ 1 0 形 ) に よ り 計 測 し た ( 図 1・2 )。 電 気 伝 導 度 は 増 加 傾 向 に あ る が 、 そ れ 以 外 の 項 目 に 関 し て はほとんど変化は見られなかった。したがって、採水中の水質は安定しているものと判断 し た 。 ま た 、 採 水 ポ ン プ は 採 水 を 開 始 す る 1時 間 以 上 前 に 始 動 さ せ て お い た 。 こ れ は 配 管 中に残留していると思われる底質あるいは S Sな ど を 除 去 す る た め で あ り 、 濁 度 等 の 測 定 により 1時 間 程 度 で 安 定 す る こ と を 予 め 確 認 し て お い た 。 次に、ふるいのろ液をガラス繊維ろ紙 ( Whatman社、 GF/B、孔径1.0μm、中 1 5 0mm) を 用 い て 吸 引 ろ 過 を 行 い 、 そ の ろ 液 を 40Lス テ ン レ ス タ ン ク に 移 入 し た 。 な お 、 ガ ラ ス 繊 維 ろ 紙 は 保 湿 剤 等 の 有 機 物 が 試 料 水 中 に 混 入 す る の を 避 け る た め 、 予 め 450Cで 6時 間 熱 処 D 理 し 、 潟 水 約 1Lで 共 洗 い し た も の を 使 用 し た 。 ス テ ン レ ス タ ン ク は 洗 剤 で 洗 浄 し た 後 、 引き続きアセトン、 M i l l i ‑ Q水 (ADVANTEC社、 cpw・2 0 0AQUARIUS超純水製造装置、 1 8 MQ.cm以 上 ) に よ り 洗 浄 を 行 っ た 。 タ ン ク が 比 較 的 大 容 量 で あ る た め に ア セ ト ン が 残 留 0Cの M i l lトQ水 で す す ぎ を 行 っ た 。 以 上 の 採 していることが懸念されたため、さらに約 8 D 水および前処理操作は、全て室温で行った。前処理を施した試料水は、微生物等の繁殖や DOMの 変 性 を 抑 え る た め 、 前 処 理 後 す ぐ に 4Cの 恒 温 室 に 移 し 保 管 し た 。 な お 、 以 降 の 操 D 作も同様の理由から恒温室で行った。 2 251 ( a )1闘( 2000年 10月 25) 3 ̲ ̲ ̲ ̲20 トー斗一一一 可 i ? l/ ¥I/ 戸一 ‑ 1 10.25 、 μ i : l 0 . 1 0話 ロ 0 ゴ 4L5 2 4 0 . 0 5 5 。 0 . 0 0 0 : 0 0 3 : 0 0 9 : 0 0 6 : 0 0 1 2 : 0 0 1 5 : 0 0 鱒 251 ( b )2囲( 2000年 1 1月 10日 ̲ ̲ ̲ ̲20 1 1一 一 一 10.25 )j(‑‑‑{ 0 . 2 0 i ~ 0 . 1 0~ = a fQ 」 斗 5 0 . 0 5 01 l0.00 7 : 2 0 1 0 : 2 0 1 3: 20 1 6 : 2 0 1 9 : 2 0 鰭 2 5 10.25 ( c )3回( 2000年 11月 2627日 働 一 一 ー ヌ / ‑ ‑ ‑ ‑20 υ υ よ一一一一=)V:一一一 バ一一→ 0.20 よ 5 d z 1 1 5 0 │ l │ 1 6 ζ 4 a D 0.10υ 伝 ミ 逗8 1 8 : 0 0 pH 2 1 : 0 0 T u r b . 。 0 . 0 0 : 0 0 DO . : 1 く ー 3 : 0 0 Temp. 図 1‑2 試 料 原 水 の 水 質 デ ー タ 3 6 : 0 0 EC. 1・2 ‑ 2 0.22μm精 密 ろ 過 膜 装 置 に よ る s s除 去 ま ず 、 本 研 究 で 用 い た タ ン ジ ェ ン シ ャ ル フ ロ ー 式 0.22μm精 密 ろ 過 膜 装 置 ( 以 下 、 s s膜 ‑ 3に 示 す 。 タ ン ジ ェ ン シ ヤ ル フ ロ ー ろ 過 ( T a n g e n t i a lFlowF i l t r a t i o n, とする)の概略を図 1 TFF) は 、 十 字 流 ろ 過 ( C r o s sFlowF i l t r a t i o n ) ともいわれ、原液が膜苗と平行に流れること に よ り 膜 表 面 の 汚 れ を 取 り 除 き 、 洗 浄 効 果 を 有 す る こ と が 特 徴 で あ る ( 図 ト4 )。さらに、 この方式は定常な膜透過流束を得やすいという利点も有する。池田ら 1 ),2 )は 、 膜 装 置 の 最 適操作条件を、ろ過膜やポンプ、チューブから混入する有機性不純物が最少量となる条件 i l l i p o r e社 として、屈分式実験により求めた。本研究においてもその結果を踏襲しつつ、 M ‑ 2の よ う に 設 定 し た 。 ま た の TFFユ ー ザ ー ハ ン ド ブ ッ ク の 推 奨 値 を 参 考 に 操 作 条 件 を 表 1 ) の容量と数、操作性等を考慮、して、 本 研 究 に お け る 処 理 水 量 は 、 ス テ ン レ ス タ ン ク (40L こ の 次 の 段 階 で あ る 陽 イ オ ン 交 換 操 作 終 了 後 の 処 理 水 量 が 、 340L(34LXI0個 ) と な る よ うに設定した。 膜装置の使用前(保管中)に膜から有機物が溶出することが考えられることから、膜装 置を使用する直前には 4 5C前 後 の M i l l i ‑ Q水 で 洗 浄 ( フ ラ ッ シ ン グ 操 作 ) を 行 っ た 。 ま た 、 0 分画・濃縮操作終了後も速やかにフラッシング操作を行った。これは、膜システム中に残 留した DOMが 膜 へ 吸 着 す る の を 防 ぐ た め で あ る 。 さ ら に 、 フ ラ ッ シ ン グ 操 作 で は 除 去 で き な い 膜 表 面 お よ び 膜 中 に 吸 着 し て い る DOM を 除 去 す る 必 要 が あ る 。 そ こ で 、 膜 を 使 用 i l l i p o r e社 が 前の状態に戻すために M s s膜 の 洗 浄 剤 と し て 推 奨 し て い る NaCI0水 溶 液 ( 活 性 塩 素 400ppm以 上 ) で 洗 浄 操 作 ( ク リ ー ニ ン グ 操 作 ) を 行 い 、 洗 浄 剤 を 取 り 除 く た め に 引き続いてフラッシング操作を行った。洗浄操作終了後、微生物等の繁殖を防ぐために膜 装 置 は 次 の 使 用 ま で 4Cの 恒 温 室 で 保 管 し た 。 0 『 司 曙 一 一 一 一 一 一 一 ‑ 四 圧力計 液 持 保 圧力計 A昼畠EggE E 保持液出口 ・ ‑ ・ 送液側入口 園田岡ゆ 保持液出口 流量調整バルブ イオン交換 カラムへ 透過液出口 流量調整バルブ 図 1 ‑ 3 タンジェンシヤノレフロー式 0.22μm精 密 ろ 過 膜 の 概 略 図 4 宮 品 へ 1, R e t e n t a t e Feed ︑三又ふ十 原被 O 。 保持液 o o ‑ O 0 O • o n 2 ・o 隠 鵬 ・ ・ ・ ・ ・ ・1 1 . . . . . .. 厩 . . . O 0 O . ヲ' O 0 o 日 O V O O 0 0 m 土 o 0 0 O O O ヒ 土 日λ • Permeate 金‑ A 透過液 で 図1 ‑ 4 タンジェンシャルフロ}ろ過方式の模式図 話 (T a n g e n t i a lFlow F i l t r a t i o n TFF) ラ 圃 手当 ヲ瞬 、 " 莫 表 1 ・2 s s膜 の 操 作 条 件 操作因子 設定値 入 口 圧 力 Pin ( p s i ) 8 p s i ) 出 口 圧 力 Pout ( 5 保 持 液 流 速 (L/min) 6以 上 500600 透 過 液 流 速 (mL/min) 剛 1 ‑ 23 陽 イ オ ン 交 換 幽 琵 琶 瀬 水 中 に は Na+を は じ め と す る 多 種 多 様 な 陽 イ オ ン が 存 在 し て い る 。 本 研 究 に お い て 、 最 終 の 膜 装 置 と し て 使 用 す る 逆 浸 透 膜 装 置 で は NaClが 95% 排除(濃縮)されるもの を使用することから、湖水をそのまま濃縮すれば、逆浸透膜装置の最終的な濃縮液はかな り 高 い 塩 濃 度 に な る こ と が 予 想 さ れ る 。 一 般 に 、 pHや イ オ ン 強 度 の 変 化 に と も な い DOM の形態や凝集性が変わること が変化すること 4 )、 お よ び 陽 イ オ ン と 膜 表 面 と の 相 互 作 用 に よ り 膜 分 離 特 性 5 )が 知 ら れ て い る 。 そ こ で 、 本 研 究 で は SS 膜 透 過 液 を 陽 イ オ ン 交 換 樹 脂 (Dowex社、 50WX8、MeshS i z e : 5 0・100、H‑form) を 用 い て 表 l・3に 示 す 操 作 条 件 で 陽 イ オ ン 交 換 操 作 を 実 施 し た 。 陽 イ オ ン 交 換 樹 脂 は 、 1N NaOHと 1N HClを ベ ッ ド ボ リ ュ ー ム の 3倍 量 ず つ 交 互 に 3回 流 下 さ せ る こ と に よ り コ ン デ ィ シ ョ ニ ン グ を 行 っ た も の を 使 用 し た 。 た だ し 、 各 コ ン デ ィ シ ョ ニ ン グ 溶 液 を 流 し た 後 は 、 pH試 験 紙 で pHが 7付 近 に な る の を 確 i l l i ‑ Q水を流し続けた。 認するまで M 5 表 1 ‑ 3 陽イオン交換の操作条件 操作因子 設定 スピード可変型チューブポンプ 送液ポンプ (ぺリスタックポンプ) 100m L/minx 2本 処理流速(下向流) カラムの大きさ 500m mx 中50m m X 2本 約 800mLx2本 樹脂容量 1・2 ‑ 4 分画分子量 1 , 000Da限 外 ろ 過 膜 装 置 に よ る 分 画 ・ 濃 縮 , 000 Da限 外 ろ 過 本研究では、 SS膜 と 同 様 に タ ン ジ ェ ン シ ヤ ノ レ フ ロ ー 式 の 分 画 分 子 量 1 膜装置(以下、 1K膜とする)により、 DOMの 分 子 量 分 画 お よ び 濃 縮 操 作 を 行 っ た 。 こ の 1, 000Daと い う 数 値 は 、 環 境 水 中 に 存 在 す る フ ミ ン 酸 お よ び フ ノ レ ボ 酸 の 分 子 量 が 約 30, 000 000Daの 範 囲 に あ る と の 報 告 に 基 づ い て 設 定 し た も の で あ る . . . . . . . . 1, 6 ) 。ここでフミン酸およ びフルボ酸とは、本研究の最終目標であるフミン質のサブグループで、水への溶解性によ ‑ 4の よ う に 分 類 さ れ て い る も の を 指 す 。 り表 1 表 ト4 フ ミ ン 質 (HumicS ubstance) の 分 類 定義 名称 フミン酸 (humica c i d ) pH2 ( あ る い は 1 ) で 沈 殿 す る 画 分 フルボ酸 ( f u 1 v i ca c i d ) pH2 ( あ る い は 1 ) で も 沈 殿 し な い 画 分 ヒ ユ ー ミ ン (humin) 全 て の pHで、水に不溶な画分 本 研 究 で 用 い た 1K膜 の 概 略 図 お よ び 操 作 条 件 を そ れ ぞ れ 図 1 ‑ 5お よ び 表 1・5に示す。 1K 膜 で は 、 最 終 的 な 濃 縮 液 が 約 2L に な る ま で 濃 縮 操 作 を 続 け た 。 濃 縮 倍 率 が 変 わ る と 膜 分 離される成分の組成や性質が変わる令 7 )と い う 報 告 が あ る こ と か ら 、 各 自 毎 の 濃 縮 操 作 に お e t .と い て で き る 限 り 濃 縮 倍 率 が 一 定 と な る よ う に し た 。 1K膜 装 置 の 濃 縮 液 ( 以 下 、 1K R i l l iQ 水 で 膜 す る ) 回 収 後 、 膜 表 面 上 に 物 理 的 に 吸 着 し た 成 分 を 回 収 す る た め に 、 1L の M 幽 表 面 の 洗 浄 を 行 っ た ( 以 下 、 1K Ret.水とする)。この洗浄水を回収した後、膜に化学的に . 1N NaOH ( 2L) で 膜 表 面 を l時 間 洗 浄 す る こ と に よ り 脱 着 さ せ た ( 以 吸着した成分を 0 下 、 1KNaOHとする)。さらに、 1L の Milli‑Q水 で 膜 の 洗 浄 操 作 を 施 し た ( 以 下 、 1KNaOH 水とする)。以上より、 1K膜装置からは、 4つ の 画 分 が 採 れ る こ と に な る ( 表 1 ・6 )。 た だ し 、 NaOHを 用 い て 処 理 を 行 っ た 画 分 に つ い て は 処 理 後 、 NaOHに よ っ て DOMが 加 水 分 解 するおそれがあるために、直ちに揚イオン交換樹脂により陽イオン交換操作を行ったo 本 研 究 で は 一 連 の 操 作 を 合 計 3由 行 っ た の で 、 何 呂 田 の 分 画 ・ 濃 縮 操 作 の と き の 試 料 か を 明 n t h ) を付記することにする。例えば、 確にするときには、必要に応じて画分名のあとに ( 6 2回 目 の 1K膜 濃 縮 液 の 場 合 、 1 KRet .( 2 n d ) と 表 記 す る 。 こ こ で 、 NaOHや M i l lトQ水 に よ る 膜 吸 着 成 分 の 脱 着 操 作 は 、 DOMの 回 収 率 を 高 め る た め に 行 っ た も の で あ る 。 前 回 の 結 果 3 )と 比 べ て 、 本 研 究 で は N aOH抽 出 成 分 の 回 収 し た 全 DOMに 占 め る 割 合 が 減 少 し た 。 こ れ i l lトQ水 に よ り 脱 着 す る 膜 に 物 理 的 に 吸 着 し て い る 成 分 の 回 収 率 が 増 加 し た こ と に よ は 、 M るものであった。 s s膜 と 同 様 に 、 保 管 中 に 有 機 物 が 溶 出 し て い る こ と が 考 え ら れ る こ と か ら 、 膜 装 置 を 使 M i l l iQ 水 で フ ラ ッ シ ン グ 操 作 を 行 っ た 。 ま た 、 処 理 操 作 終 了 後 速 や か に フ ラ ッ シ ン グ 操 作 を 行 っ た 。 こ れ は 、 膜 シ ス テ ム 中 に 残 留 し た DOMが 膜 へ 吸 着 す る の を 防 ぐ た め で あ る 。 さ ら に 、 膜 表 面 お よ び 膜 中 に 残 っ て い る DOMを 除 去 し 、 膜 を i l l i p o r e社 が 推 奨 し て い る 0.1NNaOHで ク リ } ニ ン グ 操 作 を 使用前の状態に戻すために M 0 用 す る 甚 前 に 45C前 後 の 綱 行い、洗浄剤を取り除くために引き続いてフラッシング操作を行った。洗浄操作終了後、 微 生 物 等 の 繁 殖 を 防 ぐ た め 4Cの 恒 温 室 で 保 管 し た 。 0 出口圧力計 保持流出口 保持液 調整バルブ 流量調整バルブ 液 過 透 EEESEEE‑‑'' ー 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ー 一 ー ー 一 ー ー ‑ ‑ ‑ ' ・ ・ ‑ 一一同町田町周‑ーー一一一一‑‑ RO膜 送液タンクへ スピード可変型 送液タンク チューブポンプ ‑ 5 タンジェンシヤノレフロー式分子量分画 1 , 000Da限 外 ろ 過 膜 装 置 の 概 略 図 図 1 7 表 1 ‑ 5 1K膜 の 操 作 条 件 設定値 操作lZSl子 入 口 圧 力 Pin ( p s i ) 45 出 口 圧 力 Pout( p s i ) 35 保持液流速 ( L / m i n ) 4 透 過 液 流 速 (mL/min) 80 表 l・6 1K膜 か ら 得 ら れ る 画 分 画分名 内容 1KR e t . 1K膜 に よ る 濃 縮 液 1KRet . 水 1K膜 表 面 に 物 理 的 に 吸 着 す る 成 分 1KNaOH 1K膜 表 面 に 化 学 的 に 吸 着 す る 成 分 1KNaOH水 1KNaOH回 収 後 に 膜 中 に 残 留 す る 成 分 1 ・2 ‑ 5 逆浸透膜装置による分画・濃縮 本 研 究 で 用 い た NaC1950 / 0排 除 逆 浸 透 膜 装 置 ( 以 下 、 RO膜 と す る ) の 概 略 図 お よ び 操 作 条件をそれぞれ図 l ・・6お よ び 表 1 ・7に 示 す 。 こ の RO膜は、 N aCl、 MgS04、 グ ル コ ー ス お , 000mg/L水 溶 液 の 溶 質 を 90%以 上 保 持 す る ( 即 ち 、 透 過 さ せ な い ) 機 よびスクロースの 1 能 を も ち 、 有 機 物 に つ い て の 分 画 分 子 量 は 100Daに 相 当 す る 。 分 子 量 が 1 00Da付 近 の 代 表的な有機化合物を表 1 ‑ 8に ま と め た 。 お そ ら く 、 こ れ ら の 分 子 よ り も 分 子 量 が 小 さ く か っフミン質の性質を持ち合わせている化合物は考え難いので、本研究の最終目標と照らし 合わせて、分画分子量 1 00Daと い う 値 は 妥 当 で あ る と 考 え た 。 8 送液入口圧力計 ︑ w乎 ! 方 へ 持 保 A ‑ ‑ E E E E ポンプ ・・ ‑ v 液 過 透 EEE 幽幽幽白血ーーーーーーーーーーーー自由ーー自白血掴・‑ 保持液出口 圧力調整バルブ 図 1 ‑ 6 タンジェンシヤノレフロー式 T 匂 C195% 排除逆浸透膜装置の概略図 表 ト7 RO膜 の 操 作 条 件 操作因 設定値 ポ ン プ 周 波 数 (Hz) 1 9 3 9 3(=27b a r ) 入 口 圧 力 Pin ( p s i ) 保持液流速 ( L / m i n ) 4会 透 過 液 流 速 (mL/min) 100 すM illi‑Q水 通 水 時 9 表 l ・8 分 子 量 1 00Da付 近 の 有 機 化 合 物 化合物名分子量 構造式 CH2 (COOH)2 マロン酸 Malonica c i d CH CH CH CH COOH 3 2 2 2 吉草酸 V a l e r i ca c i d ヘブタン Heptane 104 1 0 2 . 1 1 0 0 . 1 OH フェノーノレ Phenol エチノレベンゼン E t h y lbenzene 9 4 . 0 4 1 0 6 . 1 e t . ) を 1Lに 設 定 し た 。 濃 縮 液 回 収 後 、 1K膜 の 場 合 RO膜 で は 、 最 終 的 な 濃 縮 液 (ROR と同様に M i l l i‑Q7 k1Lで 膜 表 面 に 物 理 的 に 吸 着 し て い る 成 分 を 回 収 し た (RORet.水)。引 き 続 い て 、 膜 表 面 に 化 学 的 に 吸 着 し て い る 成 分 を pH11の NaOH水 溶 液 1 Lで l時 間 処 理 す る こ と に よ り 脱 着 さ せ て 回 収 し た (RONaOH)。さらに、 1Lの M i l l i ‑ Q水 で 膜 の 洗 浄 操 作 を 施 し た (RONaOH水)。以上、 RO膜からは、 1K膜 と 同 様 に 4つ の 画 分 が 採 れ る こ と に な る ( 表 ト 針 。 ま た 、 NaOHで 処 理 を 行 っ た 画 分 に 関 し て は 、 処 理 後 直 ち に 陽 イ オ ン 交 換操作を行った。ここで、 lK膜 と 同 様 に 前 回 の 結 果 と 比 較 す る と 、 本 研 究 に お け る NaOH 抽出成分の回収率が減少し、 M i l lトQ 水 に よ り 脱 着 す る 成 分 の 回 収 率 が 増 加 し た こ と が 分 か った。 1 0 表 lθ RO摸 か ら 得 ら れ る 画 分 画分 内容 ROR e t . RO膜 に よ る 濃 縮 液 ROR e t .7 k RO膜 表 面 に 物 理 的 に 吸 着 す る 成 分 RONaOH RO膜 表 面 に 化 学 的 に 吸 着 す る 成 分 RONaOH水 RONaOH回 収 後 に 膜 中 に 残 留 す る 成 分 最後に、 RO膜 に お い て も 保 管 中 に 膜 か ら 有 機 物 が 溶 出 す る こ と が 考 え ら れ る こ と か ら 、 D 膜 装 置 を 使 用 す る 直 前 に は 45C前後の M i l l iQ 水 で 洗 浄 ( フ ラ ッ シ ン グ 操 作 ) を 行 っ た 。 剛 s s膜 お よ び lK膜 と 同 様 に 、 処 理 操 作 終 了 後 す み や か に フ ラ ッ シ ン グ 操 作 を 行 っ た 。 さ ら に 、 膜 表 面 お よ び 膜 中 に 残 っ て い る DOMを 除 去 し 、 使 用 前 の 状 態 に 戻 す た め に M i l l i p o r e 社 が RO膜 の 洗 浄 剤 と し て 推 奨 し て い る T 匂 OH ( pHIO‑‑11)と HCl ( p H 3 ' " " ' ‑ ' 4 ) でクリーニ ング操作を行った。ただし、 NaOH洗浄と HCl洗 浄 の 間 と ク リ } ニ ン グ 操 作 終 了 後 に フ ラ ッ シ ン グ 操 作 を 行 っ た 。 全 て の 洗 浄 操 作 終 了 後 、 微 生 物 等 の 繁 殖 を 防 ぐ た め 4Cの 恒 温 室 D で保管した。 1・2・6 凍 結 乾 燥 本 研 究 で は 、 次 章 以 降 で 述 べ る よ う に 膜 装 置 に よ り 分 画 ・ 濃 縮 さ れ た 琵 琶 湖 DOMの元 素 分 析 や FT‑IR、国体 NMRな ど に よ る 分 析 を 行 う o これらの分析には国体試料が必要であ り 、 分 画 ・ 濃 縮 し た DOMを 国 体 あ る い は 粉 末 状 態 に し な け れ ば な ら な い 。 本 研 究 で は 、 変 性 ・ 失 活 し や す い 生 物 活 性 生 体 高 分 子 や 微 生 物 の 乾 燥 に 繁 用 さ れ る 凍 結 乾 燥 法 を DOM の乾燥方法として選択した。凍結乾燥法とは、凍結させた溶液試料を減圧下に置くことで、 その試料の氷点以下の温度において国体から水分を除去(昇華作用を利用)する方法であ る。乾燥中の試料温度が低温に保たれるため、熱に不安定な試料に適用されることが多い。 し た が っ て 、 フ ミ ン 質 や DOMの 乾 燥 方 法 と し て も 広 く 使 わ れ て い る が 、 タ ン パ ク 質 に よ っては変性するものがあるなど注意が必要である 8 ) 。各膜装置で回収した濃縮液を容量 l Lの ナ ス 型 フ ラ ス コ に 数 百 mLずつ入れ、予備凍結装置(東京理科器械、 c o o la c eFDU・540) で 凍 結 さ せ た 後 、 凍 結 乾 燥 機 ( 東 京 理 科 器 械 、 Freezed r y e rFDU・830) に よ り 減 圧 ・ 乾 燥 し て国体(粉末)試料を得た。 1 1 ト 2・7 琵琶湖溶存有機物質の分画・濃縮システムのまとめ 本 研 究 で 用 い た 琵 琶 湖 DOMの 分 画 ・ 濃 縮 シ ス テ ム の 全 体 の 流 れ を 図 1・7にまとめた。 図 1 ・7に は 、 各 膜 装 置 に お い て 得 ら れ る 面 分 名 に つ い て も 付 記 し た 。 1K膜 濃 縮 画 分 1KR e t . lKRet . 水 l l 問 aOH抽 出 画 分 1KNaOH 1KNaOH水 凍結乾燥 RO膜 濃 縮 画 分 ROR e t . RoR e t .7 k l 問 NaOH抽 山 RONaOH RONaOH水 図ト 7 膜 装 置 シ ス テ ム に よ る 分 画 ・ 濃 縮 操 作 の 流 れ 1 2 ト3 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 分 子 量 分 画 ・ 濃 縮 結 果 前述の膜装置システムを用いた琵琶湖南湖水の分画・濃締結果を示す。なお、本章では 分 析 項 目 と し て 質 量 分 析 と DOCの物質収支を採用した。 ト3・1 琵 琶 湖 溶 存 有 機 物 質 の 質 量 分 析 本 研 究 で 用 い た 膜 装 置 の 有 効 性 を 検 証 す る た め に は 、 膜 装 置 に よ り DOMが 分 子 量 に 応 じ て 分 画 さ れ て い る か ど う か を 確 認 す る こ と が 必 要 で あ る 。 そ の た め 本 研 究 で は 、 DOMの 質量分析を行った。 1 ・3 ‑ 1・1 質 量 分 析 法 の 概 要 質量分析計では、試料をイオン化室においてイオン化させた後、静電場により加速しイ オ ン を 磁 場 に 導 入 す る 。 こ の 際 、 磁 場 中 の イ オ ン は 円 運 動 を 行 う 。 そ の 半 径 が m/zに 依 存 することを利用して質量差に基づく分離・検出を行うのが質量分析法である。本研究では、 DOM の 質 量 分 析 に エ レ ク ト 口 ス プ レ ー イ オ ン 化 法 四 重 極 質 量 分 析 計 (Thermoquest 社、 TSQ7000) を 用 い た 。 こ の 質 量 分 析 計 は 、 イ オ ン 化 法 と し て エ レ ク ト ロ ス プ レ ー 法 を 、 質 量分析計に操作性の良い四重極質量分析計を採用している。この質量分析計の特徴は優れ たイオン化法であり、イオン化の際に測定対象物質のフラグメントを生じさせにくいイオ ン化法として知られている列。このイオン化法では、揮発しやすい溶媒と塩を添加した試 料水溶液をイオン化部に導入し、試料溶液を霧状にして小さな液滴にする。イオン化部は 高電圧に印加されており、液滴は塩や水素イオン、水酸化物イオンなどで帯電し、個々の 液滴では正負どちらかの電荷が卓越する。ここで測定対象物質はこれらのイオンと結合し て 電 荷 を も つ よ う に な る 。 一 方 、 四 重 極 質 量 分 析 計 で は 、 電 圧 を か け た 4つの棒状電極(四 重極)を用いる。この四重極に直流電圧とラジオ周波電圧の両方をかけてイオンに複雑な 振 動 を さ せ る o この振動が m/zに 依 存 す る こ と か ら イ オ ン の 分 離 ・ 検 出 を 行 う 10)。 ・ 3・1 ‑ 2 試料謂製 1 (1)酢酸アンモニウム緩衝液 6mMの 酢 酸 ア ン モ ニ ウ ム 水 溶 液 を ア ン モ ニ ア 水 (25%) により pH調 整 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 緩 衝 液 の pHは 9 . 1であった。 ( 2 )琵琶湖溶存有機物質溶液 凍 結 乾 燥 し た DOM約 70mgに 酢 酸 ア ン モ ニ ウ ム 緩 衝 液 100mLを添加し、超音波洗浄器 (VWLCO社 、 Vs剖 300L) に 30分 間 か け た 後 、 一 昼 夜 静 置 し た 。 こ の 溶 液 中 に は DOMの 溶け残りとコロイド状のものが分散しているのが確認された。そこで、ポリカーボネート 製 精 密 ろ 過 膜 (M i l l i p o r e社 、 ISOPOREMEMBRANEFILTER、孔径1.2μm) を 用 い て こ れ らをろ過分離し、ろ液を質量分析試料とした。同時に、緩衝液のみをろ過したブランク試 料も調製した。 1 3 ( 3 )質量分析試料 上記( 2 )の DOM溶 液 に 同 体 積 の メ タ ノ ー ノ レ を 添 加 し 、 質 量 分 析 に 供 し た 。 以 上 、 試 料 調 製には和光純薬工業の特級以上の試薬と M i l l iQ水を使用した。 圃 1・ 3 ‑ 1・ 3 分析条件 池 田 1) は 、 費 量 ス ベ ク ト ル ( 分 子 量 分 布 〉 、 ト ー タ ル イ オ ン 強 度 お よ び 平 均 分 子 量 を 指 標 として用い、これらが最適となるように質量分析条件を決定した。本研究においても、同 様にして質量分析条件を決定した(表 1 ‑ 1 0 ) 0 1・ 3‑1‑2 で 調 製 し た 試 料 を シ リ ン ジ ポ ン プ (HARVERD APARATUS22) により 5μm/minの 流 速 で 連 続 的 に 導 入 し た 。 測 定 は 、 正 の イオンを分離・検出するポジティブイオンモードで行った。測定範囲は、 m /zが 100‑‑‑2, 000 Daで 、 5秒 間 に l回 走 査 し 30回 の 積 算 に よ り 質 量 ス ベ ク ト ル を 得 た 。 な お 、 本 研 究 で 使 用したエレクトロスプレーイオン化法四重極質量分析計では m /z値 で 4, 000Daま で 測 定 可 能であるが、その全範囲を含む測定では分解能の低下を免れないことから、本研究ではそ 000Daまでとした。 の 測 定 範 屈 を 2, 表 ト 10 質 量 分 析 条 件 Hha 試 料 導 入 流 速 (μm/min) 設定 モ ン 0 オ∞ イ♂ 5 ブ∞ 測定範囲 ( m / z ) 一ア 測定モード イー ジ ポ 操作因子 知 積算回数(回) 1・ 3・ ト4 琵 琶 湖 溶 存 有 機 物 質 の 質 量 分 析 結 果 と 考 察 各 膜 装 置 に お い て 得 ら れ た 2つ の 商 分 {lKRet. ( 1 s t ) お よ び ROR e t .( l s t ‑ ‑ ‑ 3 r d混 合 試 料)} の 質 量 分 析 結 果 を 図 ト8に示す。 m/zが 1 0 0 . . . . . . . . .2, 000 Daの 測 定 範 屈 で 数 平 均 分 子 量 を 算出した結果、 1K Ret .( 1 s t ) お よ び RO Ret.の数平均分子量は、それぞれ 997 Daお よ び 889Daと な っ た 。 こ れ ら の 値 か ら 、 膜 装 置 に よ り DOMが 完 全 に 分 子 量 分 画 さ れ た と は 言 う こ と は で き な い が 、 数 平 均 分 子 量 に し て 100Da以 上 の 差 が あ る こ と が 分 か る 。 本 研 究 に お い て DOMの 分 子 量 分 画 を 行 っ た の は 、 DOMを よ り 高 分 子 量 の 画 分 と よ り 低 分 子 量 の 画 分 に 分 け 、 そ れ ぞ れ の 画 分 中 の DOMの 特 性 が ど れ く ら い 違 う の か 、 あ る い は 同 じ か を 解 明するためである D し た が っ て 、 分 子 量 1, 000Daに お い て 完 全 に 分 画 さ れ て い る 必 要 は な く 、 こ の 結 果 は 、 本 研 究 の 自 的 に 合 致 し て い る も の で あ る と 言 え る 。 函 I・ 8の 2つ の 質 量 ス ベ ク ト ル か ら 明 ら か な よ う に { 特 に 1K R e t .( 1s t ) の場合}、 m /zが 2, 000Daよ り も 大 き な範囲においてもスベクトルが連続的に分布していることが示唆される。したがって、 m /z の 測 定 範 囲 を 拡 大 す る こ と に よ っ て 、 1KR e t .( 1 s t ) の数平均分子量が上昇(両面分の数平 1 4 均分子量の差が拡大)し、本研究で実施した膜分離の有効性がより確実なものになると考 えられる。 質量スベクトノレの縦軸は、検出したシグナルの中で強度が最も強いイオンの強度を 1 00 として、相対的なイオン強度で表示される。ここでは、 2 つの画分の分子量分布を直接比 較 す る た め に 、 図 1・8の 質 量 ス ベ ク ト ル の 縦 軸 を 検 出 さ れ た イ オ ン 強 度 そ の も の に 変 換 し て 両 者 の ス ベ ク ト ル の 比 較 を 行 っ た ( 図 ト9 )。図 l・9より、両面分ともに m/zが 100‑‑2, 000 Daの 測 定 範 囲 に 広 く 分 布 す る こ と が 分 か る 。 そ れ ぞ れ の ス ベ ク ト ル を 見 る と 、 分 布 の 仕 方 に違いがあるのが分かる。測定範囲全般にわたり 1K R e t .( 1 s t ) のイオン強度は高いこと が分かる。また、 RORet .( 図 1 ・9 赤 色 の ス ベ ク ト ル ) で は 、 低 分 子 領 域 (<1 , 000' D a ) において、ある周期(約 1 20Da間 隔 ) を も っ た 断 続 的 な シ グ ナ ル が 存 在 し て い る 。 こ れ は 、 低分子量領域の DOMの 高 次 構 造 が 無 秩 序 な も の で は な く 、 あ る 構 造 単 位 を も っ た 高 分 子 からなっていることを示唆するものである。一方、 1 K Ret .( 1s t )( 図 1 ‑ 9;青色のスベクト ノレ)では、 RORet.に見られた周期的なシグナノレはなく、比較的一様な分布をしていること が分かる。 1 5 1 0 0 ( a )1KR e t . ト ー タ ル イ オ ン 強 度 =6 . 0 E + 0 4 I 1 . =997Da 数平均分子 I 1 E ω P 民 60 同 制 同h M o 吋 g 40 ‑ 出 z a F e 6 ‑ b 3 B 2 0 O 1 0 0 500 , 000 1 1 , 500 2, 000 m/z 100 ( b )ROR e t . トータルイオン強度 1 . 2 E + 0 5 80 数 平 均 分 子 量 =889Da Z q a g6 0 ‑ H H b J H h 。40 Z ・ 4 2 幽 ‑ 出 H U e 同 p C s B J ' b 20 。 E B ‑ ‑ 唱 υ ハ ハU 500 l0 00 m/z ラ l5 00 ラ 図 1・8 各 模 装 置 濃 縮 画 分 の 質 量 ス ベ ク ト ノ レ 1 6 2000 ラ トト2 膜 装 置 を 用 い た 分 画 ・ 濃 縮 操 作 に お け る 溶 存 有 機 炭 素 の 物 質 収 支 前 述 の 膜 装 置 に よ り 分 画 ・ 濃 縮 し た 琵 琶 湖 DOMの 各 面 分 の DOCを 全 有 機 体 炭 素 計 ( 島 OC‑5000A) に よ っ て 分 析 し 、 物 質 収 支 お よ び 回 収 率 を 評 価 し た 結 果 を 示 す 。 津製作所、 T ただし、サンプリング操作に一部不備があったため、 2 回目の分画・濃縮結果については 省略する。 ト3・2・1 1K膜 装 置 に お け る 物 質 収 支 1KR e t .と 1KR e t .水 の 画 分 を 足 し 合 わ せ た も の を 1K膜濃縮画分、 1KNaOHと 1KNaOH 水 の 商 分 を 足 し 合 わ せ た も の を 1K膜 NaOH抽 出 甑 分 と す る ( 表 l ・1 1 ) 1回 目 お よ び 3回 0 ・1 2お よ び 表 ト 1 3に示す。 目の操作における各画分中の溶存有機炭素量を表 1 表 ト1 1 物質収支をとる際の画分名 膜分離薗分 1KR e t . 1KR e t .水 1KNaOH 1KNaOH水 物費収支箇分 1K膜 濃 縮 商 分 1K膜 NaOH抽 出 画 分 表 ト1 2 1K膜 装 置 の 各 画 分 中 の 溶 存 有 機 炭 素 量 (1回目) DOC (mgC) 画分 脱 s s. 陽 イ オ ン 交 換 後 612土45 275土28 1K膜 濃 縮 画 分 1 5土4 1K膜 NaOH抽 出 面 分 461土45 1K膜 透 過 液 (平均値土標準偏差) 表 1 ・1 3 1K膜 装 置 の 各 国 分 中 の 溶 存 有 機 炭 素 量 ( 3回目) DOC (mgC) 画分 脱 s s. 陽 イ オ ン 交 換 後 6 5 1土 88 1 7 1土47 1K膜 濃 縮 画 分 1 4: 1 :4 1K膜 NaOH抽 出 国 分 497土 88 1K膜 透 過 液 (平均値土標準偏差) 1 8 各 自 ご と に 1K膜 装 置 の 物 質 収 支 を と る と 、 l回 目 の 回 収 率 が 12201 0、3回 目 が 1050/0で あ っ た 。 こ こ で 物 質 収 支 を と る 際 の 回 収 率 は 、 膜 装 置 に 入 っ て く る DOC 量 に 対 す る 膜 装 置 に よ り 濃 縮 さ れ た 成 分 の DOC総 量 と 膜 を 透 過 し た DOC量 の 和 の 比 で あ る と 定 義 し た 。 回 収 率 は 上 述 の よ う に 2回とも 100%を超えた。これは、 DOCの 測 定 や 各 面 分 の 体 積 計 量 時 の誤差などが影響しているのかもしれないが、直接的な原因は不明である。もし、今後も 常 に 100%を 超 え る の で あ れ ば 、 そ れ ら 以 外 の 本 質 的 な と こ ろ に 原 因 が あ る の か も 知 れ な い。たとえば、膜装置から有機性不純物が溶出していることなどが考えられる。ただし、 池田ら 1 ),2 )は 、 膜 か ら 溶 出 す る 成 分 が ほ と ん ど な い こ と を 確 認 し て い る 。 トト 2 ‑ 2 RO膜 装 置 に お け る 物 質 収 支 . と RO Re t.水の画分を足し合わせたものを RO膜濃縮画分、 RO 1 匂 OH と まず、 RO Ret RO NaOH水 の 画 分 を 足 し 合 わ せ た も の を RO膜 NaOH抽 出 画 分 と す る ( 表 ト l針。 l回目 お よ び 3回 目 の 操 作 に お け る 各 商 分 中 の 溶 存 有 機 炭 素 量 を 表 ト 1 5お よ び 表 ト 1 6に示す。 4 物質収支をとる際の商分名 表 1・1 膜分離画分 RORet . RoR e t .水 RONaOH RONaOH水 物質収支額分 RO膜 濃 縮 画 分 RO膜 NaOH抽 出 画 分 ・1 5 RO膜 装 置 の 各 画 分 中 の 溶 存 有 機 炭 素 量 (1回目) 表 1 DOC (mgC) 画分 1K膜 透 過 液 461土 45 RO膜 濃 縮 画 分 5 314土2 1 6土3 RO膜 NaOH抽 出 画 分 1 8 6土45 RO膜 透 過 液 (平均値土標準偏差) ‑ 1 6 RO膜 装 置 の 各 画 分 中 の 溶 存 有 機 炭 素 量 ( 3回目) 表 1 DOC (mgC) 画分 1K膜 透 過 液 497土 88 RO膜 濃 縮 画 分 249土 26 36土 5 RO膜 NaOH抽 出 直 分 309土 87 RO膜 透 過 液 (平均値土標準偏差) 各 回 ご と に RO膜 装 置 の 物 質 収 支 を と る と 、 l回 目 の 回 収 率 が 11201 0、 3回 目 が 1200 / 0で 1 9 あった。 RO膜 装 置 に お い て も 2回 と も 回 収 率 が 100%を 超 え た 。 こ れ に 関 す る 原 因 に つ い て は RO膜 装 寵 に お い て も さ ら な る 検 討 が 必 要 で あ る 。 トト2・3 膜 装 置 シ ス テ ム 全 体 に お け る 物 質 収 支 本 研 究 で 用 い た 膜 装 置 シ ス テ ム 全 体 の 物 質 収 支 を 表 ト1 2 ‑ ‑表 ト 1 3お よ び 表 ト1 5‑‑表 ト1 6から求めた。その結果、 l回 目 の 回 収 率 が 132%で 3回目が 120%であった。 1K膜およ び RO膜 装 置 の 結 果 か ら 予 想 さ れ た よ う に 、 再 膜 装 置 と も に 100%を超える結果が得られた。 ト3・3 DOC分 布 の 比 較 こ こ で は 、 今 回 と 前 回 の 分 画 ・ 濃 縮 の 結 果 、 明 ら か に な っ た DOC 分布の比較を行う。 0に 、 今 回 の 結 果 を 図 ト 1 1 に 示 す 。 た だ し 、 今 回 の 2つ の 試 料 の 回 収 前 回 の 結 果 を 図 ト1 率が 100%を 超 え た た め 、 こ こ で は 膜 に よ り 回 収 さ れ た DOMと RO膜 を 透 過 し た 成 分 の み を考慮、した。前回の分画分子量は、 30, 000Da, 1 , 000Daお よ び 1 0 0Daで あ っ た た め 、 こ こでは、 30, 000Daと 1 , 000Daの画分をあわせて一つの画分として扱った。 抽 H M 出m nU 43 出 5% 1KNaOH 抽 出 1% k RONaOH 抽 1K+30K 濃縮 液 1 9 ' / 0 RO透 瀦 37' / 0 35% 図 ト1 0 前 回 琵 琶 湖 南 湖 水 中 の DOC分 布 (1月 1 9 日採水) 2 0 ( a ) 1回目、 10月 25日 採 水 RONaOH 抽出 1KNaOH 抽出 /‑ 2% 2% RO透 趨 1 K : 濃縮 23% 34 0 / 0 RO濃 縮 39 0 / 0 /11 ¥ ︐ ノ トU 3回目、 11月 26/27自採水 RONaOH 透過 1KNaOH 透過 50 / 0 2% 1K 抽濃 22 0 / 0 RO縮 濃 39 0 / 0 //, /RO 拙濃 32% 図l ・1 1 度琵琶湖南湖水中のI10C分 布 (1回 目 お よ び 3回目) 図 ト1 0 と図 1・1 1 か ら 、 今 回 2回 分 と 前 回 の 各 成 分 の 分 布 は ほ ぼ 等 し い こ と が 分 か る 。 ま た 、 今 回 l回目の 1K膜濃縮画分の割合が高く、 RO透過液の割合が低いことが分かる。 しかし、これら 3 つ の ケ ー ス に つ い て 、 全 体 的 な 分 布 に 大 き な 相 違 が あ る か 否 か に つ い て は、採水当日の気象条件等を考慮、して判断を下す必要がある。今後は、これらの気象デー タの収集も併せて、季節変動等も考慮した採水を実施する必要があると考えられる。 2 1 1 ・ 4 まとめと今後の課題 本 章 で は 、 膜 孔 径 の 異 な る 2つ の 膜 装 置 を 直 列 に 組 み 合 わ せ て 琵 琶 湖 南 湖 水 中 の 溶 存 有 機物質の分子量分画・濃縮を行った。その結果と今後の課題を以下に列挙する。 (1)分間・濃縮した琵琶湖南湖水 DOMの 質 量 分 析 に つ い て 1K膜濃縮画分の数平均分子量は、 997Daであった。 1K膜濃縮画分の分子量分布は、 m/zが 1 0 0 ' " ' ‑ ' 2, 0 0 0Daの 範 囲 で 一 様 に 分 布 し て お り ¥ mlzが 2, 000Da以 上 の 範 囲 に も 広 く 分 布 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 RO膜濃縮画分の数平均分子量は、 8 8 9Daであった。 RO膜濃縮画分の分子量分布は、 m/zが 1 0 0 ' "1 , 0 0 0Daの 範 囲 で は 周 期 性 を も っ た シ グナノレ群が検出された。これは RO膜 濃 縮 画 分 中 の 成 分 に 、 あ る 構 造 単 位 を も っ 繰 り返し構造が存在することを示唆するものであった。 2つ の 膜 装 置 に よ る 分 子 量 分 簡 は 、 本 研 究 の 目 的 を 達 す る た め に 有 効 な 方 法 で あ る こ と が 分 か っ た 。 こ れ は 、 質 量 分 析 か ら DOMの 高 分 子 領 域 と 低 分 子 領 域 の 画 分 で 化学構造に関して違いがあることが示唆されたことによる。 ( 2 ) 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 分 画 ・ 濃 縮 に お け る 物 質 収 支 に つ い て 1K膜 お よ び RO膜 装 置 と も に 回 収 率 が 100%を超えた。 M i l l i ‑ Q水 を 用 い て 膜 に 物 理 的 に 結 合 し た 成 分 の 回 収 は 、 膜 装 置 の 回 収 率 を 増 加 さ せた。 前回の分画・濃縮結果との比較を行ったが、各成分の分布に有意な差があるか否か については判断が国難であった。 ( 3 )今後の課題 より明確に分子量分画できるシステム・手法を確立する。 分 画 ・ 濃 縮 操 作 に お い て 回 収 率 が 100%を 超 え た 原 因 を 究 明 し 、 シ ス テ ム の 改 良 に つなげる。 高 分 子 量 領 域 ( >2, 0 0 0D a ) における分子量分布あるいは数平均分子量の評価手法 を確立する。 本研究では秋から冬にかけて採水を行った結果、試料水間に大きな相違は認められ な か っ た が 、 春 や 夏 と い っ た 異 な る 季 節 の 試 料 を 解 析 す る こ と に よ り 、 DOC 分布 の季節変動の有無を検証する。 22 第 2章 水環境中溶存有機物質の構造特性 本研究では、前章で述べた方法により分子量分画した琵琶湖南湖水 DOMの 構 造 特 性 を 明らかにすることを自的に、フーリエ変換赤外吸光分光法、プロトン"核磁気共鳴分光法お よび炭素日間核磁気共鳴分光法の適用を試みた。本章では、これらの手法について概略を 述べるとともに、その適用結果について述べる。 2・1 フ ー リ エ 変 換 赤 外 吸 光 分 光 法 ( F T ・I R ) DOMの 官 能 基 分 析 に 使 用 さ れ る F T ‑ I Rに つ い て そ の 測 定 原 理 を 述 べ る 。 ま た 、 こ れ を 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMに 適 用 し た 結 果 を 示 す 。 ここでは、フミン質あるいは 2 l・1 剛 F T ‑ I Rの 測 定 原 理 1 0 ) 分光法とは、簡単に言うと電磁波と分子の相互作用を調べることにより、分子の構造に 関する何らかの情報を得る手法のことである。一般に分子のエネノレギ~ (E) は 、 並 進 エ ネノレギー(Et 1 e) v i b) および電子エネノレギー(Ee o t)、 振 動 エ ネ ル ギ ー (E r)、 回 転 エ ネ ル ギ ー (Er の総和に等しい E 田 1 1 )。 ( 2 .1 ) Et 巴 r +Erot +EVib 十 Eel 赤 外 吸 光 分 光 法 ( IR) は 、 あ る 領 域 の 電 磁 波 を 吸 収 す る こ と に よ り 、 有 機 分 子 の 振 動 エ ネ ノレギ}準位聞の遷移が起こることを利用したものである。通常、存機分子の振動エネノレギ } 準 位 の 励 起 に と も な っ て 吸 収 さ れ る 電 磁 波 は 、 約 10, 000‑‑‑100 cm・1の 範 囲 で 赤 外 領 域 に 分類される。つまり、有機分子に赤外線を照射することにより、分子の振動特性に関する 情報を得ることができる訳である。この他、分子振動の励起は、加熱、反応、電子励起な どにともなって起こる。分子振動のエネノレギー準イ立は量子化されているが、一つの振動エ ネルギー状態の変化にともなって、多数の分子回転のエネノレギー状態に変化が起こるので、 振動スベクトルは線状というよりはむしろ帯状になって現れる。有機化学の分野では、赤 外 領 域 ( 約 10, 000‑‑‑100cm‑1) の な か で も 特 に 4, 0 0 0 ‑ ‑ ‑400cm ・1 の 領 域 に 関 心 が も た れ て い 1 2 9 0 " " ‑ ' 4, 000cm‑1) や 遠 赤 外 領 域 ( 7 0 0 " " ‑ '200cm‑ ) に お け る る 。 最 近 で は 、 近 赤 外 領 域 (14, 研究も盛んに行われている。振動エネノレギ}準位関の励起にともない吸収される電磁波の 振動数(あるいは波長)は、原子の相対質量、化学結合の力の定数および原子関の幾何学 的配置に依存する。したがって、赤外スベクドルを解釈することにより、分子中にどのよ うな振動運動をしている原子団が存在しているかが分かり、それによりどんな官能基が存 在しているかが分かる(定性分析) 0 I R測 定 で は 、 各 吸 収 帯 ( 官 能 基 ) ご と に Lambert‑Beer 則が成り立ち、赤外吸収帯の強度を透過率(0/ 0T ) ま た は 吸 光 度 (A) で 表 さ れ る 。 ( 定 量 分析)。 分 子 振 動 に は 、 伸 縮 と 変 角 と い う 2種 類 の 振 動 モ ー ド が あ る 。 伸 縮 振 動 は 原 子 関 の 距 離 が増減する振動で、変角振動は結合角の照期的な変動によるものである。分子が大きくな るにつれて原子関の結合が増えることになり、その数だけ吸収帯が存在することになる。 そのため、比較的簡単な有機分子でも非常に複雑なスベクトルを示す。赤外スベクトノレの 解釈では、このスベクトノレの複雑さを利用して物質の同定を行う。ただし、 I Rで は 厳 密 に は、分子振動のうち分子の双極子モーメントを変化させる振動しか観測できない。これを 23 補うものとしてラマン分光法がある o 赤外活性振動はラマン不活性振動であり、その逆も 成り立つ(交互禁制律)。つまり、赤外吸光分光法とラマン分光法を組み合わせることによ り、全ての分子振動を網羅することが可能となる。ただし通常の官能基分析では、赤外吸 光 分 光 法 だ け で 充 分 で あ る 。 し か し 、 有 機 物 の 構 造 解 析 に は IR単 独 で 使 う こ と は 稀 で 、 質 量分析法、核磁気共鳴分光法、および可視幽紫外吸光分光法のデータと組み合わせて使われ ることが多い。 一昔前までは、分散型 IRが 広 く 使 わ れ て い た が 、 最 近 は FT‑IRが 急 速 に 普 及 し て い る O FT‑IRが 分 散 型 ほ と 比 べ て 有 利 な 点 を 以 下 に 示 す 。 明るい分光計 短時間で測定可能 波数軸(横軸)が高精度 高分解能 コンピュータによるデータ処理が可能 こ の よ う な 利 点 を 有 す る FT‑IRを 、 フ ミ ン 質 や DOMの よ う な 混 合 物 系 に 適 用 し た 多 く の 例が報告されている 1 2 ), 1 3 )。しかし、 FT ・I Rで 得 ら れ る 情 報 は NMRなどと比べて少ない。 フ ミ ン 質 や DOMの 構 造 解 析 に お け る FT‑IRの 利 点 は 、 必 要 な 試 料 量 が 少 な い こ と 、 溶 液 状態での測定が可能であること、および短時間測定が可能であること等である。 本研究では、 2通 り の 方 法 で IR測 定 を 行 っ た 。 一 つ は 間 体 試 料 に 対 し て 適 用 さ れ る KBr 錠剤法であり、もう一つは固体試料をクロロホノレムで抽出したものをアルカリ塩板上に滴 下して薄膜を形成させて測定を行う方法(以下、クロロホノレム液膜法と呼ぶ)である。 2 ‑ 1 ‑ 2 KBr錠 剤 法 に よ る 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 赤 外 吸 光 分 析 KBr錠剤法では、 KBrが 赤 外 線 に 対 し て 透 明 で あ る た め 、 試 料 と KBrを混合させて加圧・ 成 形 す る こ と に よ り 錠 剤 ( ベ レ ッ ト ) を 作 製 し 、 そ れ を ほ 測 定 に 供 す る 。 フ ミ ン 質 や DOM の IR分 析 に お い て は 、 こ の KBr錠 剤 法 が 最 も よ く 利 用 さ れ て い る 。 し か し 、 あ る 特 定 の 条 件 下 で は 酸 性 官 能 基 の 脱 炭 酸 (d e c a r b o x y l a t i o n ) 反応を触媒することが報告されている 向 。 な お 、 本 研 究 の KBr錠 剤 法 に よ る 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの分析は、ユニチカ(株)分析セ ンターに依頼し、赤外分光光度計 ( P e r k i nElmer社、 System‑2000 フ ー リ エ 変 換 赤 外 分 光 光 度 計 ) に よ り 測 定 し た も の で あ る よ そ の 分 析 条 件 を 表 2・1に示す。 表 2 ‑ 1 KBr錠剤法(中5mm) に お け る 分 析 条 件 設定値 項目 測定範囲 0 0 0 " " " ‑ ' 4 0 0cm・1 4, 分解能 4 1 Cロ 1 検出器 TGS データ処理 64回 加 算 平 均 処 理 24 KBr錠 剤 法 に よ り 分 析 を 行 っ た 試 料 は 、 分 画 ・ 濃 縮 し た 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM ( 7月 1 5日 採 水 ) と 以 下 の 方 法 で 精 製 ・ 分 画 し た 市 販 の フ ミ ン 酸 ナ ト リ ウ ム (A l d r i c h 社、 Lot No.PG01828JZ、 以 下 A l d r i c hフ ミ ン 酸 と す る ) で あ る 。 A l d r i c hフ ミ ン 酸 は 、 泥 炭 由 来 と さ れ て お り 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM と は 特 性 が 異 な る こ と が 予 想 さ れ た た め 、 比 較 対 照 と し て 採 用 し た 。 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMは 、 第 I章 で 記 述 し た 方 法 で 前 処 理 、 SS除 去 操 作 お よ び 陽 イ オ ン 交 換 樹 脂 に よ り 揚 イ オ ン 交 換 操 作 を し た 後 、 RO 膜 に よ り 濃 縮 し た も の を 凍 結 乾 燥 し て 分 析 試 料 と し た 。 一 方 、 市 販 の フ ミ ン 酸 ナ ト リ ウ ム は 、 SSを 除 去 後 、 陽 イ オ ン 交 換 操 000 Da限 外 ろ 過 膜 装 置 ( 以 下 、 30K膜 と す る ) 濃 作 に よ り 精 製 し た も の を 分 画 分 子 量 30, 縮 液 と し て 得 た 高 分 子 量 領 域 の 画 分 を 凍 結 乾 燥 し た も の で あ る 。 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM と A l d r i c hフ ミ ン 酸 の 赤 外 ス ベ ク ト ル を そ れ ぞ れ 図 2 ‑ 1お よ び 図 2・ 2に 示 す 。 図 2・ 1お よ び 図 2 ‑ 2において、赤外スベクトノレは透過率 (%T) の最大値が1.0 と な る よ う に 表 示 し て い る 。 スベクトル中の主要な F T ‑ I R吸 収 帯 の 位 置 お よ び 帰 属 を 表 2‑2に ま と め て 示 す 。 ま た 、 両 ス ベ ク ト ル を 度 接 比 較 し や す い よ う に そ れ ら を 重 ね 合 わ せ た も の を 図 2・ 3に示す。 F T ‑ I Rと可視・紫外吸光分光法 ( U V ‑V I S )は 、 試 料 に 照 射 す る 電 磁 波 が そ れ ぞ れ 赤 外 領 域 と可視幽紫外領域だという違いだけで、原理的には同じ測定方法である。したがって、赤外 スベクトノレの比較を行うときには、 UVV I Sと 同 様 に 測 定 条 件 、 ( 例 え ば 、 試 料 濃 度 を 揃 え 輔 て ) 、 あ る い は 単 位 有 機 炭 素 重 量 当 り の 吸 光 度 (A) あ る い は 透 過 率 (%T) に 換 算 し て 比 較すべきである。また、特定の官能基について定量的な測定をしたいときには、内部標準 物 質 を 添 加 し て Lambert‑Beer則 を 適 用 す る こ と に よ り そ の 目 的 を 達 成 す る こ と が で き る 。 さらに、内部標準物質の添加により、分光計や試料調製にともなう変動を最低限度に抑え ることができる。 I R 測 定 の 内 部 標 準 物 質 と し て チ オ シ ア ン 酸 カ リ ウ ム (Potassium t h i o c y a n a t e,KSCN) 等が使われている。 KSCNは 、 フ ミ ン 質 が ほ と ん ど 赤 外 吸 光 を 示 さ な い 2, 050cm‑1に 強 い 吸 収 帯 を も ち 、 水 に も 50%dimethyls u l f o x i d e (DMSO) に も 溶 け る 性 質をもっている 1 2 )。 し か し 、 本 研 究 で は 試 料 濃 度 を 揃 え た 分 析 あ る い は 内 部 標 準 物 質 添 加 による定量分析の実施には至っていない。したがって、定性的ではあるがスベクトル形状 l d r i c hフ ミ ン 酸 の 間 に あ る 構 造 特 性 の 違 い を 見 出 す こ と の 違 い か ら 琵 琶 湖 南 潟 水 DOMと A を試みた。 ‑ 3に お い て 、 ス ベ ク ト ル 全 体 を 比 較 す る と 、 低 波 数 領 域 に お い て 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM 図 2 の方が鋭い吸収帯を示している。これは、構造の分布が比較的単分散であることを示唆す る も の で あ る 。 こ れ は 、 分 画 分 子 量 が 30.000Daで あ る こ と か ら 、 多 糖 や タ ン パ ク 質 な ど , 500 cmぺ 以 下 の 領 域 に 強 い 吸 収 帯 の高分子の寄与が大きいのではないかと考えられる。 1 がいくつか確認できるが、この領域は指紋領域と呼ばれ事実上の解析は不可能である。一 l d r i c hフ ミ ン 酸 は ス ベ ク ト ル 全 体 が ブ ロ ー ド で あ る こ と か ら 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM と 方 、 A 比べてより多分散な混合物であることが予想される。 l d r i c hフ ミ ン 酸 の 両 方 の ス ベ ク ト ル に お い て 、 3400cmぺ 付 近 に 強 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM と A ラ 3 )。これは、 OH伸 縮 振 動 に 対 応 す る 吸 収 帯 ( 表 2 ‑ 2参照)である。 い 吸 収 帯 が あ る ( 図 2・ し か し 、 フ ミ ン 質 や DOM の ス ベ ク ト ノ レ で は 、 吸 着 水 分 子 に よ る 寄 与 が 大 き い と 言 わ れ て い る 。 こ の 領 域 に お け る 水 の 影 響 を 確 認 す る た め に 、 OH 基 を 別 の 官 能 基 に 変 換 さ せ て 、 この領域の吸収強度がどのように変化するかをみることが行われる。この場合、メチル化 さ せ る こ と が 多 い 。 次 に 、 カ ノ レ ボ キ シ ル 基 (COOH) に つ い て 診 て い く 。 カ ノ レ ボ キ シ ル 基 2 5 に 由 来 す る 代 表 的 な 吸 収 帯 は 、 2, 600c m ‑1( 水 素 結 合 し た カ ル ボ キ シ ル 基 の OH伸縮)、 1 , 720 c m ‑1 (C=O伸 縮 ) お よ び 1, 630cm‑1 (COO‑j を対称伸縮)付近に現れる。両方のスベクトル においてこれらの位置に吸収帯を確認することができる(図 2 ‑ 3 )。 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM と 比べて A l d r i c hブミン酸の方が、これらの吸収強度が相対的に強いように見受けられるこ l d r i c hフ ミ ン 酸 の カ ル ボ キ シ ノ レ 基 含 有 率 が 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM と 比 べ て 高 い こ と とから、 A が示唆される。また、カルボキシル基に関しても化学修飾により、その存在を正確に確認 することができる。この場合、メチノレエステル化することが多い。 2 6 1 . 0 0 . 9 0 . 8 0 . 7 0 . 6 長 0 . 5 0. 4 0 . 3 0 . 2 0 . 1 0 . 0 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 O Waven u m b e r([11ぺ) 図 2・1 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 赤 外 ス ベ ク ト ル (KBr錠 剤 法 ) 1 . 0 0 . 9 0 . 8 0 . 7 0 . 6 忌0 . 5 0 . 4 0 . 3 0 . 2 0 . 1 0 . 0 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 W a v en u m b e r( [ 1 1‑ 1 ) 図 2 ‑ 2 A l d r i c hフ ミ ン 酸 の 赤 外 ス ベ ク ト ノ レ (KBr錠 剤 法 ) 27 O KBr錠 剤 法 に よ る FT‑IR分 析 を 行 っ た 結 果 、 当 初 の 予 想 通 り 複 雑 な 赤 外 ス ベ ク ト ル を 得 l d r i c hフミ た 。 全 て の 吸 収 帯 を 帰 属 す る こ と は 不 可 能 で あ っ た が 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMと A ン酸のスベクトルを比較することにより、両試料の構造特性が本質的に異なることが示唆 された。 NMRな ど に 比 べ て 得 ら れ る 情 報 量 が 少 な い と 言 わ れ る FT‑IRだ が 、 前 述 の 理 由 に 加え、 DOMの 構 造 特 性 を 簡 単 に 定 性 分 析 で き る こ と か ら 、 フ ミ ン 質 や DOMの 構 造 解 析 に 有力なツールであると言うことができる。 2・1・3 ク ロ ロ ホ ル ム 液 膜 法 に よ る 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 赤 外 吸 光 分 析 ク ロ ロ ホ ル ム 液 膜 法 は 、 国 体 試 料 に ク ロ ロ ホ ル ム を 適 量 加 え て 抽 出 し た 成 分 を 、 NaCl 結晶板上に滴下してはさみ、試料溶液の薄膜を作成して測定する方法である。この方法に よ る 測 定 は 、 人 間 ・ 環 境 学 研 究 科 文 化 ・ 地 域 環 境 学 専 攻 環 境 保 全 発 展 論 講 座 修 士 課 程 2年 の 神 山 直 樹 氏 に 依 頼 し た ( 島 津 製 作 所 、 FTIR8600PCを 使 用 ) 。 そ の 測 定 条 件 を 表 2・3に 示 剛 す。 ‑ 3 表 2 クロロホノレム液膜法における分析条件 項目 条件 測定範囲 4, 000‑‑‑600cmぺ 4cm‑l 分解能 積算回数 1 6回 s s除 去 お よ び 陽 イ オ ン 交 換 操 作 を し た 後 、 RO膜 に よ り ‑ 4 )、前処理、 s s除 去 お よ び 陽 イ オ ン 交 換 分 画 ・ 濃 縮 し た 画 分 ( 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM、 図 2 本方法の測定試料は、前処理、 ‑ 5 )、 お よ び こ れ に 操作をした後、 lK膜 に よ り 分 画 ・ 濃 縮 し た 箇 分 (lK膜 濃 縮 画 分 、 図 2 引 き 続 い て RO膜 に よ り 分 画 ・ 濃 縮 し た 画 分 (RO膜 濃 縮 画 分 、 図 2 ‑ 6 ) である。 ク ロ ロ ホ ノ レ ム 液 膜 法 は 、 有 機 合 成 の 分 野 で 行 わ れ る 簡 便 な IR測定方法である。 DOMの 構造特性を解明するために、固体試料からゲロロホノレムで抽出可能な成分のみについて分 析 す る の は 相 応 し く な い か も 知 れ な い 。 し か し 、 次 に 述 べ る 溶 液 NMR では重クロロホノレ ム と 重 水 が 最 も よ く 使 用 さ れ る 溶 媒 で あ る こ と か ら 、 溶 液 NMR と 組 み 合 わ せ る こ と に よ り構造特性に関する有用な情報を得ることができる可能性がある。本研究では、重クロロ ホノレム溶媒を用いた NMR測 定 は 実 施 し て い な い が 、 ク ロ ロ ホ ノ レ ム 液 膜 法 に よ る FT‑IR分 析により構造特性の違いを見出すことができることを期待して分析を実施した。 ‑4'"図 2 ‑ 6 よ り 、 前 述 の KBr錠 剤 法 に 比 べ て ク ロ ロ ホ ル ム 液 膜 法 に よ り 得 た 赤 外 ス 図 2 ベ ク ト ノ レ の 方 が さ ら に 複 雑 で あ る こ と が 分 か る 。 約 3, 800、 1, 700お よ び 1, 500 cm‑1付 近 に は、非常に多数の吸収替が存在することが分かる。これだけ複雑なスベクトルでは、帰属 は不可能である。この理由としてまず考えられるのは、試料の乾燥状態が充分なものでは 2 9 なかったことである。国体試料からクロロホノレムを用いて抽出する際に、国体試料の水分 が 充 分 に 除 去 さ れ て い な い と ク ロ ロ ホ ル ム 中 で DOMが 不 安 定 な 状 態 に あ り 、 完 全 に 溶 解 していない可能性がある。次に考えられる理由は、分光計が不安定であった可能性である。 これに関しては確認する術がなく、不明である。しかし、有機合成の分野では、目的の吸 収帯の位霞さえ確認できれば良いという認識が普通なので、本研究で必要としているよう な精度の測定は本来無理なのかもしれない。全てのスベクトルにおいでほぼ同じ領域に吸 収帯が存在することから、クロロホルムに溶けやすい成分のみを選択的に抽出して分析し た可能性が非常に高い。 以上をまとめると、国体試料中の全成分をクロロホルムで抽出できている可能性は低い と考えられ、クロ E ホノレム液膜法では各画分全体の構造特性を把握することはできないと 考えられた。また、有機溶媒による抽出を行う場合は、充分な乾燥状態を維持することが 必 要 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 し か し 、 フ ミ ン 質 や DOMの NMR分 析 で は 、 高 濃 度 の 試 料 を 得 ら れ る こ と か ら DMSO‑d6 を 溶 媒 と し て 用 い る 事 例 も 多 い 14)。 し た が っ て 、 今 回 使 用 したクロロホルム以外の有機溶媒で抽出を行い、 NMRと 組 み 合 わ せ る こ と に よ り 構 造 特 性 をより明確に把握できる可能性がある。 30 2 ‑ 2 プ ロ ト ン 核 磁 気 共 鳴 分 光 法 eH‑NMR) こ こ で は 、 ま ず NMR の 一 般 的 な 原 理 を 概 説 す る 。 次 に 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM な ど に lH‑NMRを適用した結果を示す。 2・ 4ぺ NMRの 測 定 原 理 1 0 ),1 5 ),1 6 ),1 7 ) 全 て の 原 子 核 は 、 ス ピ ン 量 子 数 1( 1 ロo o r1*0 ) によって以下のように特徴付けられる。 1=0: 自 転 運 動 ( ス ピ ン ) を し て い な い (NMRで分析不可能)。 1*0:角運動量 pをもっ (NMRで分析可能)。 原 子 核 に は 自 転 軸 が あ り 、 核 ス ピ ン を し て い る 。 こ の 核 ス ピ ン は ス ピ ン 角 運 動 量 pをもち、 こ の 核 ス ピ ン 角 運 動 量 は 磁 気 量 子 数 m により以下のように量子化されている。 P盟 主 主 査1 ( I日1 ) h 2日 2日 2口 磁 場 Bo ・ ↑磁気モーメント μ ( 2 . 2 ) (m 1 , 1口1 , 1口 三…, 0, … 刀1 ) 出 正電荷をもちスピンしている原子核は、核磁 歳差運動 気 モ ー メ ン ト μを も っ 、 一 種 の 磁 石 と み な す こ と が で き る ( 図 2・7 )。 こ の と き の 磁 気 モ ー メント μ は 、 角 運 動 量 p と 比 例 定 数 Yによっ て次式で関係づけられる。 μ y p ( 2 . 3 ) 思 式 ( 2 . 3)において、 yは 磁 気 回 転 比 で 核 に 国 有の値である。 次 に 磁 場 B。と原子核の相互作用を考える。 ‑ 7 磁気モーメントの歳差運動 図2 磁場と磁気モーメントの相互作用によって、 磁 気 量 子 数 m に 関 す る 縮 重 が 解 け て 、 核 ス ピ ン の エ ネ ル ギ } 準 位 が 分 裂 す る 現 象 を Zeeman 効果という(図 2・8 )。 分 裂 後 の エ ネ ル ギ ー 準 位 数 は 、 ス ピ ン 量 子 数 Iにより規定され、 21+1 で与えられる。 NMRで は 、 核 ス ピ ン の 縮 重 し た 準 位 を 磁 場 に よ り 分 裂 さ せ 、 分 裂 し た 準 位 間の遷移に相当する電磁波の吸収特性を調べることにより、核スピンに関する情報を得る。 J ? 喝 ミ ら グ ク 、 v 旬 、手 │問│ ~~ e 4 九 ~ 民モ J 磁 場 Bo 込 磁場 、 R44pdz dど 、 ミ 市 、 ilE=hv Bo 4 恥 J ? ' ~.é::?? 小A 吉弘 クグホ ミミや合~ I α状 態 図 2・8 磁 場 と 核 ス ピ ン の 相 互 作 用 (Zeeman分裂) 3 5 磁 場 Boは 、 磁 気 モ ー メ ン ト μに ト ル ク を か け 、 核 の 自 転 軸 は 歳 差 運 動 を は じ め る ( 図 2・7 )。 こ の 歳 差 運 動 の 角 速 度 を ω、 周 波 数 を vと す る と 次 式 が 成 り 立 つ 。 。 ω =‑ yB y B o γ 一‑2Jr ま た 、 分 裂 後 の エ ネ ノ レ ギ ー 準 位 間 の 差 は 、 次 式 に よ り 表 さ れ る ( 図 2‑8)。 y h B o L l l i 口 hv口 ー アL . L , J t 式 ( 2 . 5 ) において、 hは プ ラ ン ク 定 数 で あ る 。 したがって、エネノレギ}量子 ( h v ) す る こ と に よ り エ ネ ル ギ ー 準 位 聞 の 遷 移 が 起 こ る 。 こ の 現 象 を 核 磁 気 共 鳴 (Nuclear MagneticResonance,NMR) と い い 、 そ の と き の 共 鳴 周 波 数 を Larmor周 波 数 ωo と呼ぶ。 状態 分 裂 し た 準 位 の う ち 、 安 定 な エ ネ ノ レ ギ ー 状 態 を α状 態 、 不 安 定 な エ ネ ル ギ ー 状 態 を P と 呼 ぶ ( 図 2・8 )。 熱 平 衡 状 態 で は 、 核 ス ピ ン は 次 の Boltzmann分布に従う。 % 門︺ U 門 A a 口 28 ・ 口一口 式 (2.6) において、 Nα は α状態にある核スピン数で、 N~ は P 状態にある核スピン数である。 核磁気共鳴現象では、 INα-N~ Iが 比 較 的 小 さ い た め に 、 IRや U VVIS な ど 他 の 分 光 法 と 蜘 比べてその感度は低い。 熱平衡状態では、 Nα が N~ よりも大きいことを考慮、して全体としての磁化を考え、全磁化 Moで 表 す こ と が で き る ( 図 2・9 )。 Mo y 己二二> V X X x,y成 分 は な し randomd i s t r i b u t i o n 図 2み 熱平衡状態の磁気モーメントと全磁化 核 磁 気 共 鳴 分 光 法 で は 、 x軸方向にパノレス磁場 M1をかける。すると、 Z軸方向を向いでし た全磁化が、 x軸 を 軸 と し て 次 式 で 表 さ れ る パ ル ス 角 yだけ回転する。 G 360陣 ,t 出 2d 一般に、 NMR装 置 の 検 出 器 は y 軸 方 向 の 磁 化 を 検 出 す る よ う に 設 計 さ れ て い る 。 て 、 全 磁 化 の パ ル ス 角 が 90 になるようにパノレスをかけて y 軸 方 向 に 傾 け る と 、 検 出 器 0 最 大 の 磁 化 を 検 出 す る こ と に な る 。 そ の と き の パ ル ス を 90 パルスと呼ぶ。次に、パノレ 0 3 6 磁場を切ると、磁化は再び熱平衡状態に戻る。この過程を緩和過程と呼ぶ。このとき、検 出器では過渡的に減衰する正弦曲線を検出することになる o この曲線を自由誘導減衰 ( F r e e I n d u c t i o n Decay,FID) と 呼 ぶ 。 こ の FIDを フ ー リ エ 変 換 す る こ と に よ り NMRスベクトノレ を 得 る こ と が で き る 。 NMRス ペ ク ト ル は 、 横 軸 に 化 学 シ フ ト (ppm) を と り 、 縦 軸 を 強 度 軸として表示される。化学シフトはその核の磁気的環境を反映したもので、その観測核種 が ど の よ う な 結 合 を し て い る か に つ い て の 情 報 を 与 え る も の で あ る 。 ま た 、 NMRス ベ ク ト ルのシグナノレ面積は、ある化学シフトをもっ核が分子中に存在する量に比例する。したが って、スベクトル中のシグナル面積比を調べることにより、それぞれの存在比を知ること もできる。 全磁化が熱平衡状態へ緩和する過程の時定数を緩和時間と言い、 Z軸 方 向 の 緩 和 時 間 ( 縦 緩 和 あ る い は ス ピ ン ー 格 子 緩 和 時 間 、 T1) と Xヴ 平 面 に お け る 緩 和 時 間 ( 横 緩 和 あ る い は ス ピン幽スピン緩和時間、 T2) の 2つ が あ る 。 励 起 し た 核 ス ピ ン の 寿 命 は 、 数 秒 数分もあり、 電子の場合(ピコ秒のオーダー)と比べて非常に長い。スピンがほぼ完全に緩和するため に は 5T1以 上 待 つ 必 要 が あ る 。 こ の よ う に 緩 和 時 間 が 長 い た め に 、 NMR測 定 は 他 の 分 光 法 と比べて非常に長い分析時間を要する分光法であると言える。しかし、最近のマルチパル ス NMR で は 、 長 い 緩 和 時 間 を 逆 に 利 用 し て 、 励 起 し た ス ピ ン 系 を 自 由 に 操 作 す る こ と に より、欲しい情報を入手することが可能となった。 2・2 ‑ 2 装置の仕様 本 研 究 に お い て 、 lH‑NMRによる DOMな ど の 分 析 に 使 用 し た 分 光 計 を 以 下 に 記 す 。 BruckerARX‑500 ( 日 本 ブ ル カ 一 社 ) 、 観 測 周 波 数 : 125.77MHz eC) 3 2・2・3 lH‑NMR測 定 試 料 の 調 製 本研究では、 DOMの 水 溶 解 度 が 低 い こ と を 考 慮 、 し て 、 そ れ を 上 昇 さ せ る た め に 、 重 水 に 重水酸化ナトリウムを添加して測定試料の調製を行った。その手!棋を以下に記す。 測 定 に 使 用 す る サ ン プ ル 管 ( 中 5mm) の 洗 浄 に は 、 ク ロ ム 駿 混 酸 、 ア セ ト ン お よ び M i l lトQ 水 に よ る 洗 冷 の 後 、 ジ ク ロ ロ メ タ ン (DCM) に よ る 洗 浄 を 行 っ た 。 洗 浄 後 、 サ ン プ ル 管 を デシケーター内で減圧乾燥させた。また、サンフ。ル管のキャップ(ポリエチレン製)は、 アセトンおよび M i l l i ‑ Q水 に よ る 洗 浄 を し た 後 、 同 様 に 減 圧 乾 燥 し た 。 . 8ppm付 近 の シ グ ナ ル が 妨 害 フ ミ ン 質 や DOMの lH‑NMR測 定 で は 、 水 の 存 在 に よ り O4 さ れ る 。 し た が っ て 、 lH‑NMR試 料 は 充 分 に 乾 燥 さ せ て お か な け れ ば な ら な い 。 そ こ で 、 本 研 究 で は NMR測 定 に 供 す る 国 体 試 料 を 24時 間 以 上 デ シ ケ ー タ ー 中 で 減 圧 乾 燥 を 行 っ た 。 試料溶媒には、 D20/NaOD系 を 用 い た 。 乾 燥 さ せ た 1 0mLの ガ ラ ス 製 遠 沈 管 に 10mLの D20 を入れ、さらに NaODの 400 / 0重 水 溶 液 を 0 . 2mL添加した。なお、この溶液の規定度は、 約 0 . 3N である。 調製した溶媒に、過剰量(数百 mg)の 国 体 試 料 お よ び 内 部 標 準 物 質 と し て 痕 跡 量 の TSP‑d 4 {Sodium 3べ Trimethyl s i l y1 )p r o p i o n a t e ‑ 2ム3, 3・d4} を 入 れ て 撹 持 し た 後 、 一 昼 夜 静 置 し た 。 剛 そ の 後 、 遠 心 分 離 機 ( 久 保 田 製 、 KN・7 0 ) により懸濁物質を沈殿させ、その上澄み液を測 定試料とした。サンプノレ管に試料を封入後、キャップを占めて測定直前まで遮光し、シー ルテープにより密閉した。 37 、 3 幽由民』ι 2 ‑ 2 ‑ 4 測定結果とシグナルの帰属 本 研 究 で は 、 以 下 の 3つ の 試 料 に つ い て 表 2 ‑ 4に 示 す 条 件 で lH‑NMR測定を行った。 (1)琵琶湖南湖水 ( 7月 1 5 日採水)を前処理、 SS除 去 お よ び 陽 イ オ ン 交 換 後 、 RO膜 の み に よ り 分 画 ・ 濃 縮 し た 試 料 ( 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM) ( 2 )琵 琶 湖 南 湖 水 (10月 25 S採 水 、 第 2章 の 1回目)を前処理、 SS除 去 お よ び 陽 イ オ ン交換後、 lK膜 に よ り 分 画 ・ 濃 縮 し た 試 料 (lK膜 濃 縮 画 分 ) ( 3 )琵 琶 湖 南 湖 水 を 前 処 理 、 SS除 去 お よ び 陽 イ オ ン 交 換 後 、 lK膜 を 透 過 し た 成 分 を RO 膜 に よ り 分 画 ・ 濃 縮 し た 試 料 ( 第 2章 の 3 回分の混合試料、 RO膜 濃 縮 画 分 ) そ れ ぞ れ の 試 料 の 1HNMR測 定 結 果 を 図 2 ‑10、図 2 ‑ 1 1お よ び 図 2 ‑ 1 2に 示 す 。 な お 、 図 中 の * 印 は 、 内 部 標 準 物 質 TSP‑d SPーののシ 4 に よ る シ グ ナ ル で あ る 。 ま た 、 化 学 シ フ ト bは T グナルを oppmと し 、 そ れ を 基 準 と し た 。 ま た 、 シ グ ナ ル の 帰 属 は R.L.Ma1 colm1 5 )を 参 考 にした(表 2 ‑ 5 )。 以 下 に そ れ ぞ れ の 試 料 の lH‑NMRか ら 得 ら れ た 結 果 を ま と め る 。 ‑ 4 lH‑NMRの 測 定 条 件 表 2 設定 問問 +B‑nHH ・日本寸 ・凶ス m延 .山遅 中ル度 幻パ温 操作因子 2 . 2s e c 1 0s e c 300K 表 2 ‑ 5 lHNMRシ グ ナ ノ レ の 化 学 シ フ ト お よ び 帰 属 刷 化 学 シ フ ト 奇 (ppm) 帰属 0 . 8l .0 TerminalmethylgroupsofMethylenec h a i n s 0 . 8 ‑l .4 P r o t o n sonmethylgroupsonh i g h l ybrancheda l i p h a t i cs t r u c t u r e s l .4幽 l .8 P r o t o n sona l i p h a t i cc a r b o n swhicha r etwoo rmorec a rbons P r o t o n sa t t a c h e dt oa l i p h a t i cc a r b o n s( m e t h y landmethyleneg r o u p s ) l .7 ‑ 3 . 3 ぬc hedt oe l e c t r o n e g a t i v eg r o u p s( e . g .,carboxylgroupo r whicha r ea t a na r o m a t i cr i n g ) P r o t o n s oncarbons a t t a c h e dt o0 o rN heteroatoms ( p r i m a r i l y0 i n 3 . 35 . 0 珊 humic s u b s t a n c e s ),e . g .t h e HCO ofs a c c h a r i d e s methoxylgroups, ラ amineandt r a c e sofwater 6 . 58 . 1 圃 Unhindereda r o m a t i cp r o t o n s 8 . 1 ‑ 9 . 0 38 ラ (1)琵琶湖南湖水 DOM (7月 1 5 日採水) ( 図 2 ‑ 1 0 ) O5 . 9 9、5 . 8 8、5 . 7 8、3 . 3 5、3.27、2.86、2 . 8 3、2 . 6 4、1.52、1.1 2、1.00、0. 47お よ び 0 . 3 ppm の化学シフトにおいて顕著なシグナノレが検出された。水のシグナノレ (HOD) によ り 、 O6 ' " ' " '4ppmの 領 域 が 妨 害 さ れ て い る の が 分 か る 。 O3 . 0 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑0 . 7ppmの 領 域 に 集 中 し いるシグナルは、脂肪族水素に帰属される。この領域のシグナルは、スベクトノレ中 主なシグナノレであることから、この試料が脂肪族性に富む構造特性をもっていること が示唆される。 ( 2 )1K膜 濃 縮 画 分 (10月 25 日採水) ( 図 2 ‑ 11 ) O8 . 48、3 . 9 6、3.77、3 . 7 3、2.07、1.26、 お よ び 0 . 9 5ppmの 化 学 シ フ ト に お い て 顕 著 シグナノレが検出された。水のシグナノレ (HOD) により、 O4 . 9 ' " ' " '4 . 7ppmの 領 域 が 妨 害 さ れているのが分かる。この試料で最も強いシグナルは、 O4 . 1 0 ' " ' " ' 3 . 3 5ppmに あ り 、 こ らは、ヘテロ原子、すなわち酸素や窒素などに結合した炭素に結合した水素に帰属 れる。つまり、炭化水素(多糖)、メトキシル基あるいはアミン類の水素として帰属さ れる。この他の主なシグナルとしては、 O2 .07ppm ( メ チ ル 基 、 メ チ レ ン 基 、 あ る い カ ル ボ キ シ ル 基 も し く は ベ ン ゼ ン 環 の α位水素)、および1.26 ppm (分岐した脂肪鎖の メチル基)、 0 . 9 5ppm (末端メチル基)が挙げられる。 ( 3 )RO膜 濃 縮 画 分 ( 3回 の 混 合 試 料 ) ( 図 2 ‑ 1 2 ) O8. 46、7 . 3 9、3 . 7 5、3 . 3 6、1.92および1.21ppmの 化 学 シ フ ト に お い て 顕 著 な シ グ ナ が 検 出 さ れ た 。 水 の シ グ ナ ル (HOD) により、 O5 . 2 ' " ' " '4. 4ppmの 領 域 が 妨 害 さ れ て い る .21ppmに あ り 、 こ れ は 分 の が 分 か る 。 こ の ス ベ ク ト ル 中 で 最 も 強 い シ グ ナ ル は 、 o1 40 " ' ‑ '1 . 8 0ppmの 領 域 は 、 メ チ ル 基 か メ チ レ 、 し た 脂 肪 鎖 の メ チ ル 基 に 帰 属 さ れ る 。 o2. 基 と い っ た 脂 肪 族 水 素 、 あ る い は カ ル ボ キ シ ノ レ 基 も し く は ベ ン ゼ ン 環 の α位 水 素 で あ る 以上、脂肪族水素の領域に主なシグナノレが集中していることから、この試料が脂肪 性に富む構造特性を有していることが示唆される。 以上より、 3つ の 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM試 料 に つ い て lHNMRを 実 施 し た 結 果 か ら 得 ら れ 幽 構造的特徴を列挙すると以下のようになる。 1K膜濃縮画分は、炭化水素(多糖)、メトキシノレ基あるいはアミン類に富む構造特 を有している。 RO膜 濃 縮 画 分 は 、 脂 肪 族 性 に 富 む 構 造 特 徴 を 有 し て い る 。 全ての試料において芳香族水素に帰属するシグナルは検出されなかった。 2 ‑ 3 炭素 ‑ 1 3核 磁 気 共 鳴 分 光 法 eCNMR) 3 蜘 こ こ で は 、 は じ め に 毘 体 NMRの 測 定 原 理 に つ い て 簡 単 に 述 べ る 。 次 に 、 琵 琶 湖 南 湖 DOMなどに CPMAS13C‑NMRを適用した結果を示す。 42 2・3・1 測 定 原 理 近年まで、主に 3つ の 理 由 の た め に 間 体 NMR測 定 を 実 施 す る こ と が 困 難 で あ っ た 。 そ の理由を以下に示す 1 8 )。 NMRの 共 鳴 線 幅 が 、 異 方 性 双 極 子 幽 双 極 子 相 互 作 用 (DD) お よ び 核 四 極 子 場 勾 配相互作用 ( Q F ) により広くなる。 国体 化学シフトの異方性により化学シフトが広くなる。 国体のスピン"格子緩和時間 (T1)が非常に長い。 3つ の 問 題 は 、 固 体 NMRを 高 分 解 能 測 定 す る 上 で 大 き く 立 ち は だ か る 問 題 で あ っ た。しかし、これらの問題は高出力デカップリング、マジック角回転 ( M a g i cA n g l eS p i n n i n g, MAS) お よ び 交 差 分 極 ( C r o s sP o l a r i z a t i o n,C P ) により解決された。高出力デッカプリング これら は、プロトンの核スピンを一定の速さで回転させることにより、異種核相互作用をゼロに MASは 、 同 種 核 双 極 子 相 互 作 用 、 化 学 シ フ ト の 異 方 性 ( C h e m i c a lS h i f tA n i s o t r o p y, CSA) 効 果 お よ び 核 四 極 子 場 勾 配 相 互 作 用 ( Q F ) による線幅の広がりを小さくする。これ 2 c o sS ‑ 1の 大 き さ に 依 存 す る が 、 8が 5 4 4 4 ' (マジック角)のときにゼロ らの相互作用は 3 となる つ ま り 試 料 の 回 転 軸 を 外 部 磁 場 に 対 し て 5 4 4 4 '傾 け る と 、 こ れ ら の 相 互 作 用 が 全てゼ、ロになる。最後に、 CPは 1 3 Cと 1 Hを 熱 接 触 さ せ て 1 3 Cス ピ ン 系 の エ ネ ル ギ ー を 1 H する。また 0 0 o スピン系に移動(交差分極)させることで、その結果より短い間隔でパルスをかけること が可能となる。なお、以上の方法を組み合わせた NMR測 定 方 法 を CPMAS1 3 C ̲ l 、 JMRと呼 ぶ 。 2・3・2 装 震 の 仕 様 本研究において、 1 3 CNMRに よ る 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMな ど の 分 析 に 使 用 し た NMR装 置 附 を以下に記す。 3 C h e m a g n e t i c sCHX‑300 ( C h e m a g n e t i c s )、 観 測 周 波 数 : 7 4 . 6 6MHz e C) 2 ‑ 3・3 測定結果とシグナノレの帰属 本研究では、以下の を表 3つ の 試 料 に つ い て CPMAS13C‑NMR測 定 を 行 っ た 。 そ の 測 定 条 件 2 ‑ 6に示す。 (1)琵琶湖南湖水 ( 1 0月 2 5 日採水)を前処理、 SS除 去 お よ び 陽 イ オ ン 交 換 後 、 lK 膜 に よ る 分 画 ・ 濃 縮 し た 試 料 (lK膜 濃 縮 画 分 ) ( 2 )琵琶湖南湖水を前処理、 S S除 去 お よ び 陽 イ オ ン 交 換 後 、 lK膜 を 透 過 し た 成 分 を RO膜 に よ り 分 画 ・ 濃 縮 し た 試 料 ( 第 2章 の 3回の混合試料、 RO膜 濃 縮 画 分 ) ( 3 )A l d r i c hフミン酸:前処理、 S S除 去 お よ び 陽 イ オ ン 交 換 後 、 RO膜 に よ り 分 画 ・ 濃縮した試料 CPMAS1 3 CNMRの 測 定 結 果 を 函 2・1 3、図 2・1 4お よ び 図 2 ‑ 1 5に 示 す 。 な お 、 シ 1 5 グナルの帰属は R . L . M a l c o l m) を参考にした(表 2 ・7 )。 以 下 に そ れ ぞ れ の 試 料 の CPMAS 13C̲NMRか ら 得 ら れ た 結 果 を ま と め る 。 各試料の 四 4 3 表 2・6 CPMAS13C‑NMRの 測 定 条 件 設定 匙 〆 勘 日間 4ELwnHH ・日会リ m延 回 ι ・出遅度 iM パ m w ‑ m ス速 円 以 凶午ル転 操作因子 l .0msec. 3 4 . 1msec 5 . 0s e c 4 . 5kHz ( 1 )lK膜 濃 縮 画 分 (10月 25 日採水) ( 図 2・1 3 ) O1 73. 4 、 130. 4 、 1 0 2 . 1、 72.2、 12.4および 1 8 . 0ppmの 化 学 シ フ ト に お い て 顕 著 な シ ナノレが検出された。このスベクトノレの中で最も強いシグナノレは、 O7 2 . 2ppmで あ る 。 こ れは、 CH(OH)の 炭 素 、 多 糖 の 環 炭 素 あ る い は エ ー テ ル 結 合 し た 脂 肪 族 炭 素 に 帰 属 さ る 。 前 述 の lHNMRスベクトノレと O 1 0 2 . 1ppmに ア ノ マ ー 炭 素 の シ グ ナ ル が 見 ら れ る こ 剛 2 . 2ppmの シ グ ナ ル を 多 糖 類 に 由 来 す る も の と 判 断 し た 。 そ の 他 に は 、 O 1 7 3 . とから、 O 7 ppmが カ ル ボ キ シ ル 基 炭 素 の シ グ ナ ル 、 ま た 、 O 1 8 . 0ppmに メ チ ル 基 あ る い は メ チ レ ン 基炭素のシグナノレが認められる。 ( 2 )RO膜 濃 縮 画 分 ( 3回 の 混 合 試 料 ) (図 2 ‑ 1 4 ) O 170、 138、 78お よ び 27ppmの 化 学 シ フ ト に お い て 顕 著 な シ グ ナ ノ レ が 検 出 さ れ た 。 こ の 試 料 に お い て も O 78ppm付近に多糖のシグナノレが観られる。 lK膜 濃 縮 画 分 と 比 す る と 、 脂 肪 族 炭 素 領 域 (27ppm付近)に強いシグナノレが確認できる。その他、 ppmにカルボニル炭素、 138ppmに 芳 香 族 炭 素 の シ グ ナ ル が 認 め ら れ る 。 ( 3 )A l d r i c hフ ミ ン 酸 ( 図 2・1 5 ) O1 75. 3 、 121 .5、 66.3および 2 6.2ppmの 化 学 シ フ ト に お い て 顕 著 な シ グ ナ ル が 検 出 さ れた。 O 2 6 . 2 ppmに あ る 脂 肪 族 炭 素 の 強 い シ グ ナ ノ レ は 、 こ の 試 料 の 支 配 的 構 造 が 脂 鎖であることを示唆している。その他には、微小なシグナノレしか存在していない。 以 上 、 本 研 究 に お い て CPMAS13C̲NMRに よ り 測 定 し た 3つ の 試 料 に つ い て 得 ら れ た 結 を列挙する。 lH‑NMRスベクトノレの結果と合わせて考えると、 lK膜 濃 縮 画 分 の 主 要 構 成 成 分 は 、 多糖類である。 RO膜 濃 縮 画 分 で は 、 多 糖 類 と 脂 肪 族 炭 素 の 割 合 が 高 い 。 A l d r i c hフ ミ ン 酸 は 、 主 と し て 脂 肪 族 で あ る 。 44 2 ‑ 4 まとめと今後の課題 本 章 で は 、 第 l章 で 述 べ た 方 法 に よ り 分 子 量 分 画 ・ 濃 縮 し た 琵 琶 湖 南 淑 水 DOMの 構 造 特 性 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て 、 FT‑IR、lH‑NMRお よ び CPMAS13C‑NMRの 適 用 を 試みた。以下に本章の成果をまとめ、今後の課題について述べる。 ( 1 )FT‑IRに よ る 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 分 析 結 果 に つ い て 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 低 波 数 領 域 に お け る ス ベ ク ト ル の ピ ー ク が A l d r i c hフ ミ ン 酸 の それと比べて鋭いことから、前者の構成成分の分布が比較的単分散であることが示 唆された。 A l d r i c hフ ミ ン 酸 の カ ル ボ キ シ ル 基 含 有 率 が 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの そ れ と 比 べ て 高 い ことが示唆された。 ク ロ ロ ホ ノ レ ム 液 膜 法 に よ る 赤 外 吸 光 分 析 は 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 構 造 特 性 を 把 握 す るには相応しくないことが分かった。 FT‑IR (KBr錠 剤 法 ) が 、 フ ミ ン 質 や DOMの 構 造 特 性 を 解 明 す る 簡 便 で 有 力 な 手 段 であることが分かった o ( 2 )NMRに よ る 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 分 析 結 果 に つ い て 1K膜 濃 縮 画 分 の 主 要 構 成 成 分 は 、 多 糖 類 で あ る こ と が 分 か っ た O RO膜 濃 縮 商 分 は 、 脂 肪 族 性 が 高 い こ と が 示 唆 さ れ た 。 A l d r i c hフ ミ ン 酸 は 、 脂 肪 族 炭 素 の 割 合 が 多 い こ と が 示 唆 さ れ た 。 ( 3 )今後の課題 FT‑IR (KBr錠 剤 法 ) に よ る 、 フ ミ ン 質 や DOMの 定 性 ・ 定 量 分 析 方 法 を 確 立 し て 、 適用を試みる。特に、ヘテロ原子を含む官能基の分析・帰属を試みる。 lH‑NMRでは、 WATR条 件 で 測 定 を 行 い 、 水 の HODシグナノレを除去したスペクトル を得る必要がある。 国 体 NMRでは、 CP/T1・TOSS& DPMAS13C̲NMRと い う マ ル チ パ ル ス NMRの 適 用 に よ り 、 サ イ ド バ ン ド (SSB) を 定 量 的 に 抑 制 し 、 さ ら に カ ル ボ キ シ ノ レ 基 や 芳 香 環 炭 素 などのシグナノレを定量的に評価する。 本 研 究 で は 、 各 試 料 の 水 溶 解 度 が 低 し い こ と か ら 溶 液 13C‑NMRの 測 定 を 行 う こ と が で き な か っ た 。 こ の 溶 液 13C̲NMRの 実 施 は 、 以 下 に 挙 げ る 理 由 か ら DOMや フ ミ ン 質 の 構 造 解 析 に 必 要 不 可 欠 で あ る こ と が 言 え る 。 そ の た め に も 、 今 後 は DMSO圃のなど の有機溶媒を使用することにより、溶解度の問題を解決する必要がある。 @ 国 体 13C̲NMRに 比 べ て 、 よ り 定 量 的 な 議 論 が 可 能 で あ る 。 • DEPTお よ び QUAT法 の 適 用 に よ り 、 各 シ グ ナ ル の 炭 素 が 何 級 炭 素 で あ る か を 判 ' " ' ‑ ' 3 級の炭素を、 QUAT 断 す る こ と が 可 能 で あ る 。 す な わ ち 、 DEPT 法により 1 法により 4級 炭 素 を 識 別 す る こ と が 可 能 と な る 。 49 第 3章 水環境中溶存有機物質の特性解析 前 章 で は 、 第 l章 で 述 べ た 方 法 で 琵 琶 湖 南 湖 水 か ら 分 画 ・ 濃 縮 し た DOMの 構 造 特 性 の 解析を行い、画分が異なると化学構造に違いがあることが示唆された。本章では、前章の 結 果 を 踏 ま え つ つ 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM の 様 々 な 特 性 に つ い て 解 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 を 示す。 3 ‑ 1 元素分析 フ ミ ン 質 や DOM は 多 種 多 様 な 化 合 物 の 混 合 物 で あ る が 、 そ の 平 均 的 な 元 素 組 成 は そ れ らを全体としての特性や性質を代表する最も基本的な指標として有効であることが知られ てい 19)。 そ こ で 、 本 研 究 に お い て も 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 元 素 分 析 を 行 っ た o 京都大学薬学部微量有機元素分析センターに依頼して CHl、;コーダ~(ヤナコ分析工業、 MT ・3型 あ る い は M T5型 ) で 元 素 分 析 ( C,H,N お よ び S )を 行 っ た 。 表 3ぺ に そ の 結 果 を 示 鵬 す 。 ‑ 1 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM と Aldrichフ ミ ン 酸 の 元 素 組 成 表 3 画分 C wt% Hwt% Nwt% Swt% Ashwt% Otherwt% lK膜 濃 縮 画 分 28.20 4.86 1 .90 RO膜 濃 縮 画 分 3 . 1 2 2.32 0 . 1 9 .79 21 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM 5 . 0 4 3 . 3 8 0 . 3 3 1 8 . 3 9 51 .81 3 . 5 6 0 . 9 3 Aldrichフ ミ ン 酸 7 . 7 0 57.33 33.12 39. 47 72.87 6 . 0 5 37.66 表 3・1において、 1K膜 濃 縮 画 分 は 第 l章の l回目 ‑ ‑ ‑ ‑ 3回目の平均値、 RO膜 濃 縮 画 分 は 3 四 分 の 混 合 試 料 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMは 9月 1 2日に採水した試料、そして A 1 d r i c hフミ、 酸 は 前 述 し た 方 法 ( 第 2章)により精製したものである。 ‑ ‑ ‑50wt%近くを占める 一 般 に 、 フ ミ ン 質 や DOMの 主 要 な 構 成 元 素 は 炭 素 で 、 全 体 の 40‑ ‑ 1において RO膜 濃 縮 画 分 と 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの炭 ことが知られている。しかし、表 3 含有率が極端に低く、 1K膜 濃 縮 画 分 に つ い て も 若 干 低 め の 値 と な っ た 。 そ こ で 、 こ の 原 を 探 る た め に 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 組 成 に 関 す る さ ら な る 分 析 を 行 っ た 。 元 素 分 析 の 果を受けて、はじめに懸念したのが水分と灰分の含有率である。しかし、元素分析に依 する産前までデシケ}ター内で減圧乾燥していたことから、乾燥に関してはできる限り 対策を施したと判断した。そこで本研究では、灰分についてさらなる測定を行った。こ は、採水時にポンプ設備を使用しているため、灰分の混入が懸念されたからである。灰 の測定は、 600C、 1時 間 の 熱 処 理 前 後 の 重 量 変 化 か ら 求 め た 。 そ の 結 果 、 1K膜 濃 縮 画 0 . 7 00/0、 RO膜 濃 縮 画 分 は 33.120 / 0、 A l d r i c hフミン酸は 6 . 0 50 / 0で あ っ た ( の灰分含有量は 7 3・ 1 ) 。 さ ら に 凍 結 乾 燥 し た 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 国 体 試 料 を 量 り 取 っ て M i l l i々水に溶かし、 の溶液の TOC測 定 を 行 う こ と に よ り 、 元 素 分 析 の 炭 素 含 有 率 (Cwt%) を 検 証 し た 。 そ 結果を表 3 ‑ 2に 示 す 。 そ の 結 果 、 元 素 分 析 の 結 果 と ほ ぼ 一 致 し た こ と か ら 、 元 素 分 析 の 5 0 果は信頼しうる値であると判断を下した。 D i o n e x社、 QIC(陽イ 元素組成の残りの部分を調べるために、イオンクロマトグラフ法 { オン分析)および D X‑500(陰イオン分析)、表 3・ 3 }および高周波誘導結合プラズマ・質量分 析 法 {( I n d u c t i v e l yC o u p l e dP l a s m a ‑ M a s sS p e c t r o s c o p y,ICP‑MS、 HEWRETTPACKARD社、 I C P質 量 分 析 装 置 H P 4 5 0 0 )、表 3 ‑ 4 } による測定を行った。 ‑ 2 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの TOC分 析 に よ る 炭 素 含 有 率 の 検 証 表 3 DOM( m g ) 溶 液 中 TOC( m g ) TOCの割合(%) Cwt% (元素分析) lK膜 濃 縮 画 分 2 3 . 9 5 . 8 2 2 4 . 3 5 2 8 . 2 0 RO膜 濃 縮 画 分 6 6 . 2 2 . 2 2 3 . 3 5 3 . 1 2 画分 表 3・3 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの イオンクロマトグラフ法による分析結果 画分 1K膜 濃 縮 画 分 RO膜 濃 縮 画 分 表 Na+( p p m )C l・ ( p p m ) SO/・ ( p p m ) 1 0 . 9 5 . 5 7 7 . 0 4 5 7 . 2 4 9 6 . 0 4 . 1 3 ‑ 4 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの I C P・ MSに よ る 主 な 元 素 の 分 析 結 果 画分 1K膜 濃 縮 画 分 RO膜 濃 縮 画 分 Na( p p m ) S i( p p m ) K( p p m ) 5. 3 9 . 0 l .4 5 7 . 2 3 5 0 . 4 8 . 2 イオンクロマトグラフ法において、陽イオンとしては N a +イ オ ン の み を 検 出 し 、 陰 イ オ ンについては c rイオンと S 0 42・イオンを検出した。 N a +イ オ ン は NaClを 、 陰 イ オ ン は そ れ ぞ れ の ナ ト リ ウ ム 塩 を 用 い て 外 部 標 準 法 に よ り そ の 濃 度 を 求 め た 。 表 3・ 3より、この結果 では負電荷が過剰に存在して電気的中性にならず、他の陽イオンの存在が示唆される。さ らに、 I C P・ MSによる測定では、 N a + fこ 関 し て イ オ ン ク ロ マ ト グ ラ フ 法 で 得 た 値 と 比 べ て 一 桁低い伎を得た。現段階でこれらの測定結果を完全に説明することはできていないが、冗 素組成の問題を今後の最も基本的かつ最大の検討課題として取り組む必要がある。 3・ 2 紫外部吸光特性 Iにかけて 一 般 に DOMやフミン質の可視・紫外吸光スベクトルは、長波長側から短波長イ員J 5 1 指数関数的に増大することが知られている 2 0 )。つまり、 DOMやフミン質の可視・紫外部 光 特 性 の 特 徴 は 、 特 定 の 官 能 基 に 由 来 す る 顕 著 な 吸 収 帯 が 見 ら れ な い こ と で あ る 。 DOM フミン質の場合、吸収スベクトノレの縦軸を対数変換するとスベクトノレを直線に近似でき ことから、その直線の傾き(ム logK=log~00-logA6oo 、 A400 および A 600 は そ れ ぞ れ 400 お よ び 600 nm に お け る 吸 光 度 ) は 特 性 値 と し て 用 い ら れ る 。 ま た 、 単 位 有 機 炭 素 重 量 S p e c i f i cU l t r aV i o l e tAbsorbance SUVA) も 芳 香 族 炭 素 量 2 1 )や 消 毒 部 りの紫外部吸光度 ( ラ 2 )の 指 標 と し て 採 用 さ れ て い る 。 本 研 究 で は 、 SUVAが PAHsの収着能と 成物の生成能 2 )を 踏 ま え 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM の 紫 外 部 吸 光 特 性 の 指 標 と し の相関があるという結果 3 SUVAを 採 用 し て 実 験 に よ り 求 め た の で 、 そ の 結 果 を 示 す 。 3・ 2 ‑ 1 試料調製 本 研 究 で は 、 イ オ ン 強 度 が 100m M程 度 と な る よ う に 炭 酸 緩 衝 液 を 利 用 し て 試 料 を 調 4gと1.2N HCl1 6mLを M i l l i ‑ Q水 で 1L に メ ス ア ッ プ し て 炭 酸 した。まず、 NaHC038. 衝液を調製した。その結果、 pH7.8、 イ オ ン 強 度 1 0 5 . 7m Mの 炭 酸 緩 衝 液 を 調 製 す る こ と で き た 。 こ こ で 、 イ オ ン 強 度 の 値 は Marion ら 2 3 )に よ り 提 案 さ れ た 、 多 種 の イ オ ン を 含 水試料におけるイオン強度と電気伝導度の関係式を用いて算出した。本研究では、この s t )、 RO膜 濃 縮 衝 液 を 用 い て 測 定 試 料 の 調 製 を 行 っ た 。 測 定 試 料 は 、 lK膜 濃 縮 画 分 (1 分 (1s t ) お よ び Aldrichフ ミ ン 酸 の 3つ の 試 料 で あ る 。 各 試 料 濃 度 を 数 段 階 に 希 釈 し て 定試料とした。 3・ 2 ‑ 2 測定結果 本 研 究 で は 、 紫 外 部 吸 光 度 を 254 nmに お け る 吸 光 度 と し て SUVAを 算 出 し た 。 そ の 果を表 3 ‑ 5 に示す。なお、測定に使用した装置は、紫外可視分光光度計(島津製作所、 UV ・ 2500PC) および全有機体炭素計(問、 TOC5000A) であり、石英セル (10X 10X45m臨 欄 を用いて測定を行った。 表 3 ‑ 5 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM と Aldrichフ ミ ン 酸 の SUVA 画分 SUVA{ (mgC/L) ぺcmぺ} lK膜 濃 縮 画 分 0.008 RO膜 濃 縮 画 分 0.019 Aldrichフ ミ ン 酸 0.065 前回の結果 3 )と同様に、 SUVA値 は よ り 高 分 子 量 の 画 分 で あ る lK膜 濃 縮 画 分 の 方 が 低 結果となった。 SUVA 値 は 芳 香 族 炭 素 量 の 指 標 と な る こ と か ら 、 lK 膜 濃 縮 圏 分 と 比 べ RO膜 濃 縮 画 分 が 芳 香 族 性 に 富 む 構 造 特 性 を 有 し て い る こ と が 示 唆 さ れ る 。 ま た Aldrich 52 ミ ン 酸 は 、 こ れ ら 琵 琶 湖 DOMの 2つ の 画 分 と 比 較 し て SUVA値 が 大 き い こ と か ら 、 琵 琶 湖 DOMよ り も 芳 香 族 性 に 富 む こ と が 示 唆 さ れ る 。 こ こ で 、 DOMや フ ミ ン 質 の 芳 香 族 性 の 3CNMRに よ る 解 析 が 一 般 的 で あ る 定量的な解析に関しては、 1 剛 24)。 本 研 究 で は そ の 段 階 に は 達 し て い な い が 、 今 後 NMRに よ る 解 析 は 必 要 で あ る と 言 え る 。 3 ‑ 3 蛍光分析 フ ミ ン 質 や DOMが 蛍 光 を 発 す る こ と は 昔 か ら 知 ら れ て い た 。 し か し 、 3次 元 励 起 蛍 光 m スベクトノレ ( Excitation‑EmissionMatrices,EEMs) は 、 い ず れ も ブ ロ ー ド な 山 型 を 示 す だ け で、それがどのような化学構造に由来するかを特定することは困難であった。しかしなが ら、研究事例が増えるにつれて、サンプル聞のわずかなスベクトルの相違を見分けること が 可 能 と な っ て き た 。 そ こ で 、 本 研 究 に お い て も 分 画 ・ 濃 縮 し た 琵 琶 湖 南 湖 DOMの 3次 元蛍光分析を行うことにした o さらに、蛍光特性と試料濃度との関係についても調べたの で、その結果を記す。 3・ 3 ‑ 1 3次 元 励 起 ・ 蛍 光 分 光 法 (EEMs) 25),2 6 ) ト3・ 1・1 試 料 調 製 本 研 究 で は 、 イ オ ン 強 度 が 50 m M 程 度 と な る よ う に 炭 酸 緩 衝 液 を 調 製 し た 。 ま ず 、 NaHC03 4 . 2gを 1L の M i l l iQ 水 に 溶 か し た 炭 酸 緩 衝 液 (50mM) を 0 . 1 2N HClを 用 い て 嗣 pHが 7付 近 と な る よ う に 調 整 し た 。 そ の 結 果 、 pH7.7、 イ オ ン 強 度 5 5 . 5m Mの 炭 酸 緩 衝 液 を調製することができた。この炭酸緩衝液を用いて、蛍光測定試料を調製した。各試料の TOC濃度は、 1K膜 濃 縮 画 分 の 試 料 が 1 5 . 7mgC/L、 RO膜 濃 縮 酉 分 の 試 料 が 2 1 . 6mgC/Lで ldrichフ ミ ン 酸 の 蛍 光 測 定 試 料 は 、 前 述 の 方 法 に よ り 精 製 し た Aldrichフ ミ ン 酸 あった。 A 約 20mgを M illi‑Q水 で 100mLに メ ス ア ッ プ し て 測 定 試 料 と し た 。 こ の と き 、 コ ロ イ ド 状 のものが分散しているのが確認されたので、その上澄み液を蛍光測定に供した。 本来、蛍光測定試料の調製には無蛍光試薬あるいは溶媒を使用しなければならない。本 研究では、測定したスベクトルに後述するブランク補正を施すことから、和光純薬工業の i l l iQ 水を使用した。 試薬特級以上の試薬と M 酬 3・ 3・ ト2 測 定 結 果 分画・濃縮した琵琶湖南湖水 DOM と Aldrich フミン酸のそれぞれの EEMs を図 3-1~ 図 3・ 3に 、 そ の 測 定 条 件 を 表 3‑6に 示 す 。 ま た 、 各 試 料 の 蛍 光 ピ ー ク 位 置 を 表 3・ 7にまとめる。 な お 、 本 研 究 で 使 用 し た 分 光 蛍 光 光 度 計 ( 日 立 製 作 所 、 F‑4500型)は、取扱説明書の手/1慎 に 従 い 分 光 器 の 励 起 側 を ロ ー ダ ミ ン B溶 液 に よ り ス ベ ク ト ル 補 正 し た も の で あ り 、 石 英 セ ル (10x1 0x45mm) を 用 い て 測 定 を 行 っ た 。 スベクトノレ中にある励起光と同じ波長位置に現れる盲蛍光と呼ばれる成分は、溶媒分子 に よ っ て Rayleigh散 乱 さ れ た 一 次 散 乱 光 や 試 料 中 の 懸 濁 物 質 や 気 泡 に よ っ て 反 射 さ れ た 光 に よ る も の で あ る 。 散 乱 光 強 度 が 強 い と 、 励 起 光 の 2倍 の 波 長 位 置 に 二 次 散 乱 光 が 現 れ る 3参 照 ) 。 さ ら に 、 励 起 光 よ り も 長 波 長 側 に 溶 媒 分 子 に よ る Raman散 乱 光 が 出 現 す ( 図 3・ る 27)。 こ れ ら の 盲 蛍 光 成 分 は 、 ス ベ ク ト ル 間 の 比 較 を 困 難 に す る 。 こ れ ら の 盲 蛍 光 成 分 を 5 3 DOMの EEMsに 対 し て 、 炭 酸 緩 衝 液 の み の 3 次元蛍光スベクトノレを用いてブランク補正を行った。しかし、函 3 ・1お よ び 図 3 ‑ 2におい 除去するために、本研究では琵琶湖南湖水 て富蛍光成分が完全に除去されていないことが確認できる。これは、ブランク測定時に、 試料がセノレ壁に付着して残留している可能性を示唆するものである。容器に付着した は取り除きにくいことから、今後の課題として取り組む必要がある。 表 3・6 EEMs測 定 条 件 設定値 操作因子 ス リ ッ ト 幅 (nm) 5 (励起側、蛍光側とも) 励 起 波 長 (nm) 200500 蛍 光 波 長 (nm) 3 0 0 ‑ 6 0 0 サ ン プ リ ン グ 間 隔 (nm) 幽 5 (励起側、蛍光側とも) 2,400 400 走 査 速 度 (nm/min) ホトマノレ電圧 ( V ) 表 3 ‑ 7 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMと A l d r i c hフ ミ ン 酸 の 蛍 光 ピ ー ク 位 置 画分 励 起 波 長 (nm) lK膜 濃 縮 画 分 P e a k1 ) RO膜 濃 縮 画 分 ( P e a k2 ) RO膜 濃 縮 画 分 ( A l d r i c hフ ミ ン 酸 ( P e a k1 ) A l d r i c hフ ミ ン 酸 ( P e a k2 ) 5 4 蛍 光 波 長 (nm) 3 0 5 3 8 4 3 2 5 4 3 0 2 5 5 4 3 1 3 2 5 4 8 0 4 5 0 5 3 0 DO 図3 ‑ 1から 1K膜 濃 縮 画 分 の EEMsには 1つ の 蛍 光 ピ ー ク が 、 図 3・2から RO膜 濃 縮 画 分 ‑ 1 と図 3・2の比較から、 1K の EEMsに は 2つ の 蛍 光 ピ ー ク が 存 在 す る こ と が 分 か る 。 図 3 膜 濃 縮 画 分 と RO膜 濃 縮 画 分 の EEMs は 異 な っ た ス ベ ク ト ル 形 状 を し て い る こ と か ら 、 2 つの画分はそれぞれ異なる蛍光特性を有する成分から構成されていることが示唆される。 また、起源が異なると、蛍光ピーク位置が異なることが知られており、水系由来のフミン 質は青色(短波長)側に、土壌由来のものは赤色(長波長)側に蛍光ピ}クが現れる 28)。 そ こ で 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM と 泥 炭 由 来 と さ れ る A l d r i c hフ ミ ン 駿 の EEMsを比較すると、 l d r i c hフ ミ ン 酸 が よ り 長 波 長 倶I I 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 蛍 光 ピ ー ク 位 置 が よ り 短 波 長 側 に 、 A に あ る こ と か ら 、 起 源 が 異 な る こ と が 示 唆 さ れ る 。 し た が っ て 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMが水 ldrichフ ミ ン 酸 が 土 壌 由 来 の フ ミ ン 質 と 似 た 蛍 光 特 性 を 有 す る こ と も 同 時 に 一 系由来で、 A 唆される。 3・3 ‑ 2 蛍光特性の濃度依存 蛍 光 ピ ー ク 位 置 が DOM濃 度 変 化 に と も な っ て 変 化 す る か ど う か を 調 べ る た め に 、 DO 濃 度 を 数 段 階 に 希 釈 し て 、 一 連 の 蛍 光 測 定 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 DOM濃 度 の 増 加 に と も な って、励起波長は一定であったの対し、蛍光波長が僅かではあるが短くなる傾向があるこ ‑ 4 )。 とが分かった(図 3 ま た 、 フ ミ ン 質 や DOMの 濃 度 が 高 く な る と 、 濃 度 と 蛍 光 強 度 の 比 例 関 係 が 成 り 立 た くなる濃度消光という現象が報告されているお)。しかし、今回測定を行った濃度範囲では 顕著な濃度消光を確認することはできなかった。 460 叫 品寸弓 ハ U 今/ H A U O O A. A ===8=二二二一一一一回 ハU (ロ語以媛県相 ~十\と「 /ROPeak2( 硲 EX255nm 440 υ ハ 3 。 ROPeak1( a 2EX325nm 」一一一一一¥¥>/̲1KRETC c YEX305nm 一 一 ¥ 、¥ ーー 1 0 1 5 20 M 5 ︐ ゥ 。 青色 360 TOC( m g C I L ) 図3 ‑4 ピ } ク 位 置 の DOM濃 度 依 存 性 3 ‑ 4 糖質分析 第 2章 の NMR測 定 の 結 果 よ り 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの lK膜 濃 縮 画 分 に は 糖 質 ( 多 糖 が 多 く 存 在 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。 こ こ で 本 研 究 で は 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM 中 の 糖 質 に いて定性・定量分析を行った。 58 3‑4・1 定 性 分 析 まず、 lK膜濃縮画分、 RO膜 濃 縮 画 分 の 混 合 試 料 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMお よ び Aldrich フ ミ ン 酸 そ れ ぞ れ の 闘 体 試 料 約 50mgを 0 . 3mLの 72wt%民 S040 . 3mLと混合し、 2時間 0 援持した。その後、蒸留水 8 . 3 mLを 加 え て オ ー ト ク レ ー ブ (120C、 1時 間 ) に か け て 加 水 分 解 さ せ た 。 こ の 試 料 を HPAEC (High Performance Anion Exchange Chromatography、 Dionex社 、 DX‑500) に よ り 定 性 分 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 中 性 糖 と し て ア ラ ピ ノ ー ス 、 ラ ム ノ ー ス 、 ガ ラ ク ト ー ス 、 グ ル コ ー ス 、 キ シ ロ ー ス お よ び マ ン ノ } ス の 6種を検出した。 3 ‑ 4 ‑ 2 定量分析 lK膜 濃 縮 商 分 の 国 体 試 料 5mgを 72wt%H2S0 . 3盟 L と混合し、 2時 間 撹 持 し た 。 そ の 40 0 後 、 蒸 留 水 8. 3 mLを 加 え オ } ト ク レ ー ブ (120C、 1時 間 ) に か け て 加 水 分 解 さ せ た 。 こ の 試 料 を 10mLにメスアップした。また、 RO膜 濃 縮 画 分 の 混 合 試 料 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM お よ び Aldrichフ ミ ン 駿 そ れ ぞ れ の 国 体 試 料 約 50mgを 72wt%H2S040 . 1 5mLと混合し、 2 時間援件、した。その後、蒸留水 4 . 1 5mLを 加 え 、 オ ー ト ク レ } ブ (120C、 l時 間 ) に か け 0 て 加 水 分 解 さ せ た 。 こ の 試 料 を 5mLに メ ス ア ッ プ し た 。 こ れ ら の 溶 液 0 . 5mLと発色試薬 (5% フェノ}ノレ 0 . 5mLお よ び 濃 硫 酸 2 . 5mL) を混合して測定試料とした。 定 性 分 析 で 明 ら か と な っ た 糖 質 の 組 成 と 同 じ 組 成 の 100mg/L溶液を調製した。これを 0、 1 0、20、30お よ び 40陪 / 0 . 5mLと な る よ う に 蒸 留 水 で 希 釈 し て 検 量 線 作 成 用 の 試 料 と し た 。 これらの 490 nm に お け る 紫 外 部 吸 光 度 の 測 定 ( 島 津 製 作 所 、 UV‑VIS Spectrophotometer U V1200) に よ り 糖 質 濃 度 を 求 め た 。 得 ら れ た 分 析 結 果 を 表 3‑8に示す。 剛 表 3‑8 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMと Aldrichフ ミ ン 酸 の 糖 質 含 有 率 直分 糖 質 合 存 率 (wt%) lK膜 濃 縮 画 分 2 3 . 1 RO膜 濃 縮 画 分 0 . 0 9 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM 0 . 0 3 Aldrichフ ミ ン 酸 0 . 1 5 表 3・8 より、 lK膜 濃 縮 画 分 は 他 の 画 分 と 比 べ て 糖 質 に 富 む こ と が 分 か る 。 ま た 、 残 り の 3 つ の 画 分 は ほ と ん ど 糖 質 を 含 ま な い 。 こ れ ら の 結 果 は 、 第 2章 で 述 べ た NMRの 分 析 結 果 と一致するものであった。 3 ‑ 5 まとめと今後の課題 本 章 で は 、 前 章 の 結 果 を 踏 ま え て 分 画 ・ 濃 縮 し た 水 環 境 中 DOMの特性解析を行った。 本章で分かったことを以下にまとめると共に、今後の課題を示す。 (1)水環境中 DOMの 元 素 分 析 に つ い て RO膜 濃 縮 画 分 の 元 素 分 析 を 行 っ た 結 果 、 炭 素 含 有 量 が 3.12%と 非 常 に 低 く 、 灰 分 含 有 5 9 3 3 . 1 2 %と 今 回 の 測 定 し た 試 料 の 中 で 最 も 高 い こ と が 分 か っ た 。 lK膜 濃 縮 画 分 の 元 素 分 析 の 結 果 、 炭 素 含 有 量 が 2 8 . 2 0 %と低く、灰分含有量が 7 . 7 0 % 量が 低いことが分かった。 DOMの 紫 外 部 吸 光 特 性 に つ い て SUVAの値は、 lK膜 濃 縮 画 分 と 比 べ て RO膜濃縮画分の方が大きく、 ( 2 ) 水環境中 ことが示唆された。 A l d r i c hフ ミ ン 酸 は 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 2つ の 直 分 と 比 べ て SUVA値が大きく、 香族性に富むことが分かった。 DOMの 蛍 光 分 析 に つ い て EEMsの比較により、 lK膜濃縮画分と RO膜 濃 縮 画 分 が 本 質 的 に 異 な る 蛍 光 成 分 で ( 3 ) 水環境中 成されていることが示唆された。 琵琶湖南湖水 DOMと A l d r i c hフ ミ ン 酸 の EEMsから、この 2つの試料は起源、が異な ことが示唆された。 測定試料中の DOM濃 度 の 増 加 に と も な っ て 、 蛍 光 波 長 が 短 波 長 側 に シ フ ト す る こ と 分かった。 DOMの 糖 質 分 析 に つ い て 琵 琶 湖 南 湖 DOMは 中 性 糖 と し て ア ラ ピ ノ ー ス 、 ラ ム ノ ー ス 、 ガ ラ ク ト ー ス 、 ( 4 )水 環 境 中 ス、キシロースおよびマンノースを含むことが定性的に分かった。 lK膜 濃 縮 画 分 は 、 糖 質 に 富 む こ と が 分 か っ た 。 糖質分析の結果は、 NMR測定の結果と一致した。 ( 5 )今後の課題 フミン質や DOMの 元 素 分 析 は 本 来 難 し い と さ れ て い る 。 よ り 正 確 な 分 析 を 行 う た め 必要な知識と技術を身に付ける。 本研究では、無機成分の分析を念頭に置いていなかったため、今後は、無機分析を 頭に置いた研究計画を立てる必要がある。 本研究では糖質分析を行ったが、 RO膜 濃 縮 画 分 は 脂 肪 鎖 に 富 む 構 造 特 性 を も つ こ と ら、脂肪鎖に関する解析を実施する必要がある。 PAHsを は じ め と し た 微 量 有 機 汚 染 物 質 の DOMへの収着特性と SUVA値 の 関 係 を よ 詳細に把握する。 6 0 第 4章 結 論 本 研 究 は 、 環 境 水 中 の フ ミ ン 質 あ る い は DOMが 微 量 汚 染 物 質 と 様 々 な 相 互 作 用 を し て いることを踏まえ、本研究の最終目標を琵琶湖フミン震が微量汚染物質の挙動・運命に与 え る 影 響 を 把 握 す る こ と に 設 定 し た 。 本 研 究 は 、 そ の 前 段 と し て 琵 琶 湖 DOM を 研 究 対 象 として選び、数種の解析手法を適用してその有効性を検証することおよび膜装置システム に よ り 分 画 ・ 濃 縮 し た 琵 琶 湖 DOMの 化 学 構 造 や 物 理 化 学 的 特 性 が DOMの 分 子 量 と ど の よ う な 関 係 に あ る か を 明 ら か に す る こ と を そ の 目 的 と し た 。 本 研 究 で は 、 琵 琶 湖 DOM の 構 造 特 性 を 明 ら か に す る た め に FT ・ . I R、 lH‑NMRお よ び CPMAS 13CNMRの適用を試みた。 幽 ま た 、 琵 琶 湖 DOM の 特 性 を 明 ら か に す る た め に 、 元 素 分 析 、 紫 外 部 吸 光 分 析 、 蛍 光 分 析 お よ び 糖 質 分 析 を 実 施 し た 。 本 研 究 で 行 っ た 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM の 解 析 を 通 し て 得 た 知 見 をまとめ、最後に今後の課題を記す。 (1)膜孔径の異なる 2つ の 膜 装 置 を 直 列 に 組 み 合 わ せ た シ ス テ ム を 用 い て 水 環 境 中 DOMの 分 子 量 分 画 ・ 濃 縮 を 行 っ た 。 質 量 分 析 に よ り 、 1K膜 濃 縮 画 分 と RO膜 濃 縮 画 分 の 分 子 0 0 Da以 上 で あ る こ と が 分 か っ た 。 さ ら に 、 1K膜 濃 縮 画 分 の 量差は数平均分子量で 1 , 000 Da以 上 の 範 閤 に も 広 く 分 子 量 分 布 し て い る こ 質量スベクトノレにおいて、 m/zが 2 とが示唆されたことを考慮、して、この分子量差はさらに広がることが言えた。したが って、分画・濃縮に用いた膜装置システムは、本研究の目的を達するためには有効な 分画方法であることが分かった。 ( 2 ) RO膜 濃 縮 商 分 に つ い て 質量分析により、数平均分子量が 8 8 9Daで 、 低 分 子 領 域 ( く 1 , 0 0 0Da) に お い て 2 0Da間 隔 の 周 期 的 な 繰 り 返 し 構 造 を も つ こ と が 示 唆 さ れ た 。 約 1 RO膜 濃 縮 画 分 は 、 全 DOC中の 39% ( 1回 目 ) お よ び 32% ( 3回目)を占めた。 NMRに よ り 、 脂 肪 族 性 に 富 む こ と が 示 唆 さ れ た 。 元素組成を解析した結果、炭素含有率が 3 . 1 20 / 0と低く、糖質をほとんど含まない ことが明らかとなった。 SUVA値は、 1K膜 濃 縮 画 分 と 比 べ て 高 く 、 芳 香 族 性 に 富 む こ と が 示 唆 さ れ た 。 3次 元 蛍 光 分 析 に よ り 、 主 に 2つ の 蛍 光 ピ ー ク を 有 す る こ と が 分 か っ た 。 ( 3 ) 1K膜 濃 縮 画 分 に つ い て 質量分析により、数平均分子量が 9 97Daで、 mlzが 2000Da以 上 の 領 域 に も 広 く ラ 分子量分布することが示唆された。 1K膜 濃 縮 画 分 は 、 全 DOC中の 34% ( 1回 目 ) お よ び 22% ( 3回目)を占めた。 NMRに よ り 、 主 要 構 成 成 分 が 多 糖 類 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 8.20%で 、 糖 質 含 有 率 が 2 3 . 10 / 0 と高いこ 元素組成を解析した結果、炭素含有率が 2 と が 分 か っ た 。 な お 、 こ の 結 果 は NMRの 結 果 と 一 致 す る も の で あ っ た 。 SUVA値は、 RO膜 濃 縮 商 分 と 比 べ て 低 い こ と が 分 か っ た 。 3次 元 蛍 光 分 析 に よ り 、 主 に 1つ の 蛍 光 ピ ー ク を 有 す る こ と が 分 か っ た 6 1 D ( 4 )A l d r i c hフ ミ ン 酸 に つ い て FT‑IR~こより、琵琶湖南湖水 DOM と比べてカルボキシル基含有率が高いことが 唆された。 CPMAS1 3 CNMRに よ り 、 脂 肪 族 炭 素 が 支 配 的 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 幽 元 素 組 成 の 解 析 の 結 果 、 炭 素 含 有 率 が 51 .8 1%と予想される範囲内の値を得た。 SUVA値 は 、 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの そ れ と 比 較 し て 大 き く 、 芳 香 族 性 に 富 む こ と 示唆された。 3 次 元 蛍 光 分 析 に よ り 、 主 に 2つ の 蛍 光 ピ ー ク を 有 す る こ と が 分 か っ た 。 さ ら i 蛍 光 ピ ー ク 位 置 が 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM と 比 べ て 長 波 長 側 に あ る こ と か ら 、 両 画 分 起源が異なることが示唆された。 糖質分析により、糖質をほとんど含まないことが分かった。 ( 5 ) その他、解析を通して分かったこと FT‑IRは 、 DOMや フ ミ ン 質 と い っ た 混 合 系 の 試 料 の 官 能 基 分 析 に 対 し て 、 簡便で有力な手法であることが分かった。 NMR (特に、 13C‑NMR) は 、 各 種 パ ル ス シ ー ケ ン ス を 活 用 す る こ と に よ り 、 D やフミン質の定量的な構造解析において、主力となることが分かった。 3 次元蛍光分析により、 DOM濃 度 が 増 す に つ れ て 、 蛍 光 ピ ー ク 位 置 の 蛍 光 波 長 短波長側にシフトすることが分かった。 画分が異なると化学構造や物理化学的特性が異なることが分かった。 ( 6 ) 今後の課題 DOMや フ ミ ン 質 の 最 も 基 本 的 な 指 標 と な る 元 素 組 成 を 正 確 に 把 握 す る 。 本研究で用いた解析手法にさらなる検討を加え、より定量的な解析手法の確立 必要となる。 本 研 究 で 明 ら か と な っ た 琵 琶 湖 南 湖 水 DOM の 化 学 構 造 と 物 理 化 学 的 特 性 が ど ような関係にあるかを解明するために、さらなる検討が必要である。 本 研 究 で 求 め た 琵 琶 湖 南 湖 水 DOMの 特 性 値 ( 指 標 ) を 有 機 的 に 統 合 ・ 発 展 さ せ ことにより、琵琶湖フミン質が環境水中で微量汚染物質の挙動・運命にどのよう 影響を与えているかを把握する。 以上、本研究で得た知見と今後の課題を述べた。様々な問題が山積しているが、本研 で 得 た こ れ ら の 知 見 は 琵 琶 湖 フ ミ ン 質 や DOMの 解 析 を 行 う 上 で 、 最 も 基 礎 的 な 情 報 に る こ と は 間 違 い な い と 確 信 し て い る 。 本 研 究 に よ り 、 フ ミ ン 質 や DOMが環境水中で、 るいは水利用の際に与えている様々な影響を解明あるいは把握するための礎となれば幸 である。 62 参考文献 1 ) 池田和弘:水中フミン質の膜分離装置による分画濃縮方法の確立と質量分析計による 特性解析,京都大学大学館工学研究科環境地球工学専攻修士論文, 1 9 9 9 . 2 ) 存村良一:膜分離装置を用いた溶存有機物の分画濃縮システムの開発,京都大学工学 都衛生工学科卒業論文, 1 9 9 9 . 3 ) 水 野 秀 明 : 琵 琶 湖 溶 存 有 機 物 質 (NOM)の 分 子 量 分 布 と ピ レ ン 収 着 か ら み た 特 性 解 析 , 京都大学工学郵衛生工学科卒業論文, 2 0 0 0 . 4 )E t e l k aTombacz: C o l l o i d a lP r o p e r t i e sofHumicAcidsandSpontaneousChangesofT h e i r C o l l o i d a lS t a t eunderV a r i a b l eS o l u t i o nC o n d i t i o n s .S o i lS c i e n c e .Vol .1 6 4 .NO.lL 814824 欄 1 9 9 9 . 5 )P e r s o n a lCommunicationw i t hR .Minear 6 )F .J .S t e v e n s o n : Organic M a t t e rR e a c t i o nl n v o l v i n gH e r b i c i d e si nS o i l,J . Environmental Q u a l i t y,Vol .l,333・343,1 9 7 2 . 7 )C . J .T a d a n i e r,D .F . B e r r y,andW.R.Knocke:D i s s o l v e dOrganicM a t t e rApparentMolecular Weight D i s t r i b u t i o n and Number‑Average Apparent Molecular Weight by Batch U1 t r a f i1 tr a t i o n,ES&T ,Vo1 .34,2348ω2353,2 0 0 0 . 8 ) 日 本 分 析 化 学 会 編 : 分 析 化 学 デ ー タ ブ ッ ク ( 改 訂 4版 L 丸善, 1 9 9 4 . 9 ) 平 岡 賢 三 : イ オ ン 化 法 : そ の 特 徴 と 将 来 展 望 , 第 24@ ]BNS コ ン ブ ア レ ン ス 公 演 要 E 集 , 25‑36,1997 1 0 )荒 木 峻 , 益 子 洋 一 郎 , 山 本 修 訳 : 有 機 化 合 物 の ス ベ ク ト ル に よ る 同 定 法 ( 第 5版) ,東 京化学問人, 1 9 9 2 . 1 1 )大野公一:量子物理化学,東京大学出版会, 1 9 8 9 . 1 2 )W.M.Davis,C . L . E r i c k s o n,C .T . J o h n s t o n,J . J . D e l f i n o,and J . E . P o r t e r :Q u a n t i t a t i v eF o u r i e r Transform l n f r a r e dS p e c t r o s c o p i cl n v e s t i g a t i o n of Humic S u b s t a n c eF u n c t i o n a l Group Composition,Chemosphere,Vo1 .38,No.12,2913‑2928,1 9 9 9 . 1 3 )Y.Zegouaghe ta l . :R e f r a c t o r yO r g a n i cM a t t e ri n Sedimentsfromt h eN o r t h ‑ w e s tA f r i c a n Upwelling S y s t e m : Abundance,Chemical S t r u c t u r e and O r i g i n,Organic Geochemistry, Vo1 .30,1 0 1・117,1 9 9 9 . 1 4 )U. S .G e o l o g i c a lS u r v e y :HumicS u b s t a n c e si nt h eSuwanneeR i v e r,G e o r g i a :l n t e r a c t i o n s, P r o p e r t i e s,andProposedS t r u c t u r e s(OpenF i l e sReport8 7 ‑ 5 5 7 ),Denver,Colorado,1 9 8 9 . 鵬 1 5 )R.L.Malcolm:Anαl y t i c aChimicaActa,Vo1 .232,1 9 ‑ 3 0,1991 . 1 6 )山崎潤訳:化学・生化学・薬学・医学のためのやさしい最新の NMR入門,培風館, 1 9 8 8 . 1 7 )TimothyD .W.Claridge:H i g h ‑ R e s o l u t i o nNMRTechniquesi nO r g a n i cChemistry Pergamon, ラ 1 9 9 9 . 1 8 )通 元 夫 , 慶 田 洋 監 訳 : 最 新 NMR‑基 礎 理 論 か ら 2次 元 NMRまで,シュプリンガー・フ 9 8 8 . ェアラーク東京, 1 1 9 )D.O.Hessen and L . J .T r a n v i k :A q u a t i c Humic S u b s t a n c e s ; Ecology and B i o c h e m i s t r y ラ EcologyS t u d y1 3 3,S p r i n g e r,1 9 9 8 . 2 0 )米 林 甲 陽 : フ ミ ン 物 質 の 分 離 と そ の キ ャ ラ ク タ リ ゼ ー シ ョ ン , 水 環 境 学 会 誌 , Vo1 .1 8, No.4,257・260,1 9 9 5 . 6 3 2 1 )U.P.Chin,G.R.Aiken,andK.M.Danielsen: Bindingo fPyrenet oA q u a t i candCommerci Humic S u b s t a n c e s : The Role of Molecular Weight and A r o m a t i c i t y,ES&T , Vol .3 1630・1635,1 9 9 7 . 2 2 )M.L.Pomese ta l . :DBPF ormationP o t e n t i a lofA q u a t i cHumicS u b s t a n c e s,Journα1A W , W Vo1 .93,I s s u e3,103‑115,March1 9 9 3 . 2 3 )1 .V.Perminova,N.Y.Grechishcheva,andV .S . P e t r o s y a n :R e l a t i o n s h i pbetweenS t r u c t u r e BindingA f f i n i t yofHumicS u b s t a n c e sf o rP o l y c y c l i cAromaticHydrocarbons:Relevance MolecularD e s c r i p t o r s,ES&T,Vol .33,3781‑3787,1 9 9 9 . 2 4 )E.M.Perdue: A n a l y t i c a lC o n s t r a i n t s on t h eS t r u c t u r a lF e a t u r e s of Humic S u b s t a n c e Geochimicae tCosmochimicaActa,Vol .48,1435・1442,1 9 8 4 . 2 5 )P . G . C o b l e : C h a r a c t e r i z a t i o n o f Marine and T e r r e s t r i a l DOM i n Seawater U s i E x c i t a t i o n ‑ e m i s s i o nM a t r i xS p e c t r o s c o p y,MarineChemistry,Vo1 .5 1,325・346,1 9 9 6 . 2 6 )長 尾 誠 也 , 鈴 木 康 弘 , 中 口 譲 , 妹 尾 宗 明 , 平 木 敬 三 : 三 次 元 分 光 蛍 光 光 度 計 に よ る 天 水腐植物質の蛍光特性の直接測定法,分析化学, Vol .46,No.5,335342,1 9 9 7 . 幽 2 7 )木 下 一 彦 , 御 橋 農 民 編 : 日 本 分 光 学 会 測 定 法 シ リ ー ズ 3 蛍光測定蝋生物科学への応 9 8 3 . 学会出版センター, 1 2 8 )J.J.Mobed,S.L.Hemmingsen,J . L . A u t r y,andL.B.McGown:F l u o r e s c e n c eC h a r a c t e r i z a t i o n IHSSHumicS u b s t a n c e s :T o t a lLuminescence S p e c t r aw i t hAbsorbanceC o r r e c t i o n,ES& Vol .3 0 .No.10.3061・ ‑ 30 6 5 .1 9 9 6 . 6 4 a l I T . 膜ろ過処理による微量有機汚染物質除去特性の解明 第 1章 序 論 1 . 研究の背景 アオコとはシアノバクテリア(別名ラン(藍)藻)が湖沼・河川等の水面に 集積して青い粉を散らせたようになる状態をいう。ほとんどのシアノバクテ リアは有毒と考えられており、淡水だけでなく汽水や海水からも検出される O また、シアノバクテリアはアオコを発生させるだけでなく、水中に漂ってい たり、浅い湖や海の底にマット状に張り付いたりして生息している o 1980 年 代 の 後 半 に シ ア ノ バ ク テ リ ア の 毒 素 の 構 造 が 始 め て 発 表 さ れ て か ら有毒シアノバクテリアが私たちの周りにたくさんいることが明らかになっ てきたo 特に飲料水源となっている湖沼に発生したシアノバクテリアの毒素 (シアノトキシンと呼ばれる)によって、急性中毒による死亡事故や、肝臓 ガン等の被害が世界各地で報告されている c これまで原因が分からず、その地域特有の風土病と考えられてきた病気の 中のいくつかは、このシアノバクテリアの毒素に起因するらしいことが明ら かになってきている。特に、人口の増加に伴って、淡水湖沼に大量の生活廃 水や産業排水が流れ込むようになり、湖沼が富栄養化状態、になってきてから 有毒シアノバクテリアが大発生するようになった。シアノバクテリアによる 疾病が明らかになったのはその生態や毒素の物理化学的性質や毒性が明らか になってからであり、 1985年 以 降 の こ と で あ る o シ ア ノ バ ク テ リ ア に よ る 疾 病や事故例のほとんどは外国で起きたものであり、日本においては人間に及 ぼす具体的な悪影響の事例は報告されていない。しかしながら、 R本 も 例 外 ではなく国内のほとんどの湖沼でシアアバクテリアの毒素が検出されている。 日本国内での大きな事故の記録がないのは、本当にシアノバクテリアによる 疾病がなかったのか、あるいはシアノバクテリア以外の原因とされたために 表面上は存在しないのかは定かではない。世界的にみるとシアノバクテリア による被害は増加の傾向にあり、有毒なシアノバクテリアはひたひたと私た ちの周りに忍び寄ってきているのである O 2 1 世紀は水不足の世紀になるといわれている。水の量はもちろんのこと、 資源として価値を持たせるためにはそれに相当する水の質が求められる O 最 も重要なことは、資源としての水を汚染しないようにすることであるのは言 うまでもない。しかしシアノバクテリアの発生に見られるように、一旦環境 が破壊された場合には、制御の難しいシアノバクテリアの増殖や毒素をし¥か に人為的に制御するかが重要となり、水資源確保のために解決しなければな らない大きな問題となる o シアノバクテリアの増殖を阻止できなかった場合、 何らかの方法で水を処理してその毒素が飲料水に混入しないようにしなけれ ばならない o シアノトキシンは通常細胞内に存在するので、薬剤を加えて細 胞を凝集沈殿処理することによってかなりの毒素を除くことができる しか O し、細胞の外に放出されてしまった毒素は通常の凝集沈殿処理では除けない o 現在、シアノトキシン等の溶存有機汚染物質を処理するために実用化され ている技術として、活性炭ろ過、塩素処理、オゾン処理、逆浸透膜処理等が ある o ま た 実 験 的 に 紫 外 線 照 射 な ど も 行 わ れ て い る o こ れ ら の 物 理 化 学 的 処 理方法のなかで逆浸透膜処理は、膜で、 2相 の 境 界 を 仕 切 り 、 駆 動 力 で あ る 圧 力差を調整して様々な物質の透過を制御する技術であり、他の処理方法と比 較 し て 簡 素 で 、 薬 品 添 加 を 伴 わ な い た め 人 の 健 康 に 有 害 な 処 理 由i 生成物の発 生の心配がないという利点がある o 1 .2 膜 透 過 法 1 .2 . 1 膜透過法について 膜処理は非常に古くから存在していた技術であるが、本格的に利用されは じめたのは最近になってからで、近年その応用分野は急速に拡大している o 現時点では、主として溶液系、特に水溶液に対して用いられ、溶質と溶媒の 分離、すなわち濃縮や溶質の棺互分離に役立っている o 膜によって物質を分離(または濃縮)する場合、膜は選択性を持つ隔壁に すぎず、分離の駆動力(エネノレギー)は外部から与えられる O この駆動力には、 力学的、電気的、物理的等の各種の形態、のものが用いられる O 力学的エネル ギーでは圧力(またはまれには遠心力)を用いるろ過法が、電気的な方法には 荷電粒子の電場における移動を利用する電気泳動法と電気透析法が、そして ) 物 理 的 な 方 法 で は 濃 度 差 に よ る 拡 散 を 利 用 す る 等 が 存 在 す る ( 図 1 .1 0 2 機構 溶液系のおもな膜透過法 ろ過法 電気移動法 駆動力(エネルギー) ・・小分子阻止 圧力差 ・・大分子臨止 圧力差 …小分子透過 電位差 電気泳動……大分子移動 電位差 小分子透過 濃度差 {逆浸透 H 限外ろ過 {電気透析 透析法 H H H 図1.1 主な膜透過法と駆動力(エネルギー) 新しいろ過膜の開発とその応用研究は、 1950年 代 の 中 頃 か ら 米 国 に お い て 海水の脱塩研究の奨励が大きな推進力となり非常な熱意で始められた O それ らのなかで 1960年代に誕生し、発展してきた逆浸透 (RO:Reverse Osmosis) 法 は 、 同 様 に 圧 力 を 分 離 の 駆 動 力 と す る 限 外 ろ 過 (UF :U1 t r a f i l t r a t i o n ) 法と ともに、非常に広い分野、例えば、地下水の飲料水化、超純水や純水および " J 無菌水の製造、工場やピルの廃水処理、食品や医薬工業等の各種プロセスの 生成物の分離・濃縮・精製、で利用されている。 逆浸透法は無機塩類程度の小分子溶質と溶媒分子との分離を目的とするも のであり、限外ろ過法は比較的大きな溶質分子を小分子溶質または溶媒分子 からふるいわける操作である O したがって両者には本質的な大きな差はなく、 習慣的に大きく逆浸透法と限外ろ過とに分類されているが、両者の境界は明 土 瞭なものではない。逆浸透法では溶質が小分子であるために浸透圧が高く、 これに打ち勝って溶媒を通過させるための高圧を必要とする コ O これに対して 限外ろ過法を利用して高分子溶質を分離する場合には、濃厚な溶液でも浸透 圧 が 低 い の で 比 較 的 低 い 圧 力 で ろ 過 が 進 行 す る こ と に な る o このため両法で ヲ' '‑ は使用する膜の性質の差だけでなく、装置や操作上にも種々の違いがあるの で、男I Jの名称、がつけられている O レ 逆浸透法、限外ろ過法いずれについても重要であるのは、膜の材質とその 十小戸︑ 構造、溶媒の透過速度、溶質分子の透過選択性(分子分画性)、耐圧強度およ び耐久性である o これら諸因子のうち、透過速度と強度とは膜の厚さに関係 して互いに相反する性質であるが、異方性膜の開発によって、飛躍的に改良 された。異方性膜は、ち密で著しく細かい通過孔を有する表層と、きわめて 3 粗で厚い層からなる深層によって構成されている。主に透過の選択性を有す るのは膜表面部の薄い層で、これは活性層、スキン層、ち密層等とよばれて おり、深部の厚い層は膜の形を保つのに役立っているが透過にはほとんど寄 与しない部分で、多孔層、スポンジ層、支持層等の名称で呼ばれている(図 ) 1 .2 0 μfo mm m 今ム ハU 多 ‑ 不i 一 ト 制i 金 層一一︑︒ 性一︑層 n i w 活一ヘ一孔 図1.2 膜 透 過 法 に よ り 利 用 さ れ る 異 方 性 膜 の 構 造 膜の溶質分子に対する透過の制限が孔によるものとすると、塩類の通過を 制限する孔はきわめて細かいものでなければならないから、均質膜の場合に は相対的に著しく細長い形となり、溶媒がその孔を通過するための抵抗はき わめて大きなものになる。これに対して異方性膜は、透過を制限する表面層 を著しく薄いものとし、孔の長さを短くすることによって、溶媒の透過を容 易にしたものである。また、異方性膜では通過孔が短いので、操作中に通過 物が孔に詰まったり吸着され宅溶媒の通過を妨害する原因の発生もはるかに 少なくなる o し た が っ て 異 方 性 膜 で は 、 あ る 程 度 の 強 度 を 保 ち な が ら 大 き な 透過流束を得られる o 1 .2.2 逆 浸 透 法 用途の拡大につれて、様々なタイプの逆浸透膜が開発されている。本来、 膜透過法がその他の物質の分離法である蒸発、蒸留、抽出、沈殿、吸着、イ オン交換、クロマトグラフィー、遠心分離等の方法と比べ、自動化の可能な 4 省エネノレギー的技術として登場したことから、現在では当然の方向として、 より低い圧力で使用できる低圧逆浸透膜の開発が進んでいる o 異方性の低圧逆浸透膜によるの溶質阻止能力は、膜の物理的構造と、溶質 や溶液の物理化学特徴によっている O 阻止に影響を及ぼす溶質の特性には、 イ オ ン の 荷 電 性 、 分 子 の 大 き さ 、 水 素 結 合 が あ る と さ れ て い る 1)。これは、 イオンの荷電性、溶質の分子の大きさがそれぞれ大きくなれば溶質阻止率が 上昇し、水素結合が強ければ溶質透過量が多くなる、ということによる o ま た、阻止に影響を及ぼす操作条件としては、溶質の濃度、温度、 pH、及び操 作圧力が挙げられている o 金 2 )は NTR729HFを用いて 圃 L i3) は ES20を 用 い て 低 圧 逆 浸 透 膜 の 分 離 特性について研究を行い、低圧逆浸透膜の溶質阻止性能は特に溶質の分子量 お よ び 解 離 乗 数 (pKa)、溶液の pHに よ る 影 響 が 大 き い と の 結 論 を 得 て い る O 無 機 物 及 び 非 解 離 性 の 有 機 物 の 阻 止 率 は pH依 存 性 を 示 し て お り 、 ど ち ら の 結果でも pH5付 近 で そ の 阻 止 率 が 最 低 と な っ て い る 。 こ れ は 、 溶 液 の pHに よって膜表面の荷電性が変化し、 pHが 5以下では膜が正に帯電し、 5以上で は負に帯電するために、膜と溶質とに電気化学的作用が働くことで、その透 過 に 影 響 を 与 え る た め で あ る と さ れ て い る o また、解離性の有機物の場合は、 溶 液 の pHが解離定数より大きくなれば、その限止率が上昇または下降する、 と い う 結 果 が 得 ら れ て い る が 、 こ れ は 溶 液 の pHが 解 離 定 数 を 超 え る こ と で 溶質のほとんどが解離をするために、電気化学的作用が働くためであるとさ れている。 膜の帯電性が溶質阻止に関わっていることについては以前から示唆されて いる。池島 4)は、いくつかの低圧逆浸透膜の~ ‑ 電 位 を 測 定 し 、 こ れ ら の 膜 を利用して環境ホノレモン(外因性内分泌撹乱物質)であるピスフェノール A と 17ß ーエストラジオーノレの除去特性を測定している O この結果、膜の~ ‑ 電位が膜分離効率に影響を与える一つの要因であるとしている O 2. 研 究 の 目 的 お よ び 概 要 本研究では、世界各地の湖沼で問題となっているシアノバクテリアの毒素 (ラン藻毒素、シアノトキシン)の一つで被害発生件数が最も多く、毒性も最 5 も強いミクロシスチン LRの低圧逆浸透膜による分離実験を行い、膜の種類、 溶液の p H、および NOM( N a t u r a lO r g a n i cM a t t e r , 溶存性有機炭素化合物) が膜分離に及ぼす影響いついて基礎的な検討を行う o また、そのために必要 なミクロシスチン LRの分析方法についても検討を加える o 本研究の具体的な目的を以下に列挙する。 1.ミクロシスチン LRの 分 析 方 法 と し て 、 既 存 の 方 法 を 比 較 し 、 低 圧 浸 透 膜 による分離実験のために最適な方法を選択すること。 2.ミクロシスチン LRを 低 圧 逆 浸 透 膜 に よ り 処 理 し 、 こ の 際 の 膜 の 種 類 ( 特 に, ‑電位)、溶液の性質(特に pH)、 お よ び NOMが 与 え る 影 響 を 把 握 すること o 本 研 究 で は 上 記 (1) および ( 2 ) の研究目的に対し実験・考察した 結 果 を それぞれ第 2章 お よ び 第 3章に詳述する o そして第 4章 で は 、 こ れ ら の 結 果 をまとめて今後の課題とともに記す。 低圧逆浸透膜を種々雑多に存在する有機微量汚染物質の除去のために有効 利用するためには、これまでに実施されてきたような、特定の対象水を利用 したケーススタディーの域を越え、様々な条件における低圧逆浸透膜法の有 効 性 を 普 遍 的 に 論 じ る こ と が 必 要 と な る o ミクロシスチン LRを対象とした 本研究における微量物質分析法の選択および低圧逆浸透膜処理に及ぼす膜お よび溶質の特性に関する検討がこの普遍的議論の一助となるものと考える o 6 第 2章 分析方法の選択 本章ではまず実験に利用したミクロシスチンの構造・特徴について記述す る。次に、既存の分析方法の中からこのミクロシスチンを膜透過法により分 離除去するための実験に最適な方法を検討・選択した結果について述べる o 2 . 1 ミクロシスチン ラ ン 藻 類 の 生 産 す る 毒 素 は 、 大 き く 分 け て 神 経 毒 と 肝 臓 毒 の 2種 類 に 分 類 される。それらの毒素のうちで、日本において主に問題となっているのは、 ミク口シスチンと呼ばれる肝臓毒素である O ミクロシスチンの化学構造は、ブ 個のアミノ酸からなる環状のペプチドで、アミノ酸の種類の違いなどによっ て多くの同族体や誘導体が存在しており、現在までに 60種 類 以 上 の ミ ク ロ シ スチンが報告されている )。これらの中でその毒性が最も大きいミクロシス 1 . 1 )の念、性毒性は、マウスで 3 2 . 5 ' " ' " '100μg/kgであるといわれて チン LR(図 2 いるわ。その標的となる器官は主に肝臓であり 6 )、 ミ ク ロ シ ス チ ン を マ ウ ス らラットに投与すると、その多くは肝臓に取り込まれ、肝不全が引き起こさ れ て 死 亡 す る o また、ミクロシスチンは発ガンにも関与するとされており、 藤 木 ら 1)は、ミクロシスチンに発ガンのプロモーター作用があることを報告 している。中国では、肝臓ガンの発生率が他の地域に比べ高い地域が存在し ているが、その原因の一部としてラン藻毒のミクロシスチンが指摘され、調 査が行われている 1)。したがって、アオコの発生している水域を飲料水の水 源とする地域においては、ミクロシスチンの急性毒性とともに、発ガンへの 関与を考慮、した慢性的な影響について、注意を払う必要がある。 7 人 ヘJ 1 4 、ミミ 図2 . 1 ミクロシスチン LRの 化 学 構 造 2 . 2 ミクロシスチン LRの 分 析 方 法 本研究において分析の対象となるサンプノレの溶媒は水である o 将 来 に お い て膜透過法によってその処理効果および特性を検討していかなければならな い有機微量汚染物質は非常に多数存在するが、それらの研究の際のサンプル は 本 研 究 の 場 合 と 同 様 に い ず れ も 水 試 料 で あ る o したがって、本研究では、 ミクロシスチン LRの 分 析 方 法 を 選 択 す る 際 に 、 ま ず 溶 媒 抽 出 等 の 前 処 理 操 作を必要としない方法を選び、それらについて比較検討することとした o そ 、 の 結 果 、 既 存 の 水 試 料 の ミ ク ロ シ ス チ ン LRの分析方法として、 ELISA法 HPLC/UV法 、 HPLC/MS法の 3つの方法が挙げられた。 2 . 2 . 1 ERISAt 去 近 年 、 ミ ク ロ シ ス チ ン LRに対するそノクローナノレ抗体が作成され、ミク ロシスチン LR を 高 感 度 か つ 特 異 的 に 測 定 す る こ と の で き る 酵 素 免 疫 測 定 法 (ELISA法 、 EnzymeLinkedImmunosorbentA ssay) を開発された o なおこの 闇 抗 体 は 、 ミ ク ロ シ ス チ ン LRを 抗 原 と し て 作 成 さ れ た も の で あ る が 、 他 の タ イプのミクロシスチンとも反応性を示す o 市 販 さ れ て い る ミ ク ロ シ ス チ ン ELISAキットでは、多孔プレート底面にあ らかじめミクロシスチン‑牛血清アルブミン複合体が間相化されている o こ こにミクロシスチンを含む試料水と抗ミクロシスチンモノクロ一ナノレ抗体 8 (一次抗体)を加えると、加えた抗体は液相・回相のミクロシスチンと競合 的に反応する O その結果、試料水中にミクロシスチンが多く含まれれば、濃 度依存的に一次抗体の国相への結合を限害することになる。分析操作では、 この後、国棺に結合しなかった余剰のミクロシスチンと一次抗体を洗い流し た後、国相に結合した一次抗体に対して特異的な二次抗体を結合させる O こ の二次抗体には、西洋わさびベノレオキシターゼで標識されたものが用いられ ている o 次 に 、 非 結 合 の 二 次 抗 体 を 洗 い 流 し た 後 、 国 相 に 残 っ て い る 二 次 抗 体量を測定するために二次抗体により発色する基質を用いて酵素反応を行わ せる o こ の よ う に し て 測 定 さ れ た 発 色 の 強 弱 は 試 料 水 に 含 ま れ る ミ ク ロ シ ス チン量を反映しており(ミクロシスチン量が多い→一次抗体、二次抗体の量 が少ない→発色が弱い)、既知濃度の標準品から得られる発色から得られた検 量線と比較することで、ミクロシスチンの濃度が定量できることになる O ELISA分 析 に お け る ミ ク ロ シ ス チ ン LRの検量線を図 2 . 2に示す 7。 ) 2 ̲ ̲ ̲1 . 5 世 露 米 話 0 . 5 1 O 10 1000 100 10000 濃度 ( ng/し ) 図2 . 2 ELISA分 析 に お け る ミ ク ロ シ ス チ ン LRの検量線 この方法の長所は検出限界が 1 0 0 " " " ' "500 ng/L と 非 常 に 高 感 度 で る こ と 、 多 干しマイクロプレートを使用することから、一度に多数の試料の定量が可能で あ る こ と 等 が 挙 げ ら れ る 。 短 所 は ミ ク ロ シ ス チ ン LR と似た構造を持つ物質 が抗体に結合するときも同様の反応が起こるため対象物質の正確な濃度が測 9 定できなくなること、および操作が煩雑で、熟練を擁すること等が挙げられる。 2 . 2 . 2 HPLC/UV法 現在、最もよく使われている方法である o 高速液体クロマトグラフ装置 (HPLC、High Performance L i q u i d Chromatography)で ミ ク ロ シ ス チ ン LR と 共 雑 物 質 を 分 離 し て 紫 外 線 吸 光 光 度 (UV、U l t r a v i o l e tAbsorbance) 検 出 器 で ミ ク ロ シ ス チ ン LRの濃度を検出するという方法である。 カ ラ ム は C18の 逆 相 カ ラ ム 、 移 動 相 は MeOH:0.05Mリン酸緩衝液 (pH3) = =58:48 (v/v) を用い、流量 1 . 0mL/min、 検 出 波 長 は 238nmとするのが条 件として一般的になっている。 こ の 際 の 検 出 限 界 は 1mg/L程度である。検出器としては、一般に有機物質 . 1 に示し の分析の場合、蛍光度を利用する方が感度が高いとされるが、図 2 た よ う に 、 ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 化 学 構 造 は 共 役 二 重 結 合 を ほ と ん ど 含 ん で おらず、蛍光度による検出は困難である o 2 . 2 . 3 HPLC/MS~去 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ / 質 量 分 析 計 法 (High Performance L i q u i d Chromatography/Mass S p e c t r o m e t r y )は 、 HPLC の 溶 離 液 を 噴 霧 し 、 種 々 の 方 法により大気圧下でイオンを生成させ、イオンと溶媒蒸気を分離して質量分 析計に導入し目的物質を検出する装置である o 質量分析計は、導入された試 料中の物質群をイオン源においてイオン化し、それを質量分析部でイオンの 質 量 (M) /イオン価数 (Z) に従って分離検出し、マススベクトノレとして表 すことができる装置である o 質量分析計が高感度かっ同定能力に優れている 検出器であるため、検出器が吸光度計などの通常の HPLCと比較し、 HPLC/MS 法は有機微量物質の定量に極めて有効な装置と言える O 特に測定対象物質に 特 徴 的 な イ オ ン の み を 検 出 し 、 そ の ク ロ マ ト グ ラ ム を 得 る 方 法 で あ る SIM ( S i n g l eI o nM o n i t o r i n g ) を用いることで、非常に高い感度を得ることが出来 る 。 ミクロシスチンの定量に関しても、 HPLC/MS法 に よ る 分 析 は 上 水 試 験 法 の 公定法となっている O ミクロシスチン LRの HPLC/MS法による分析の結果、 1 0 数 μg/L か ら 数 十 時I L という低い濃度範囲でクロマトグラムのピーク面積 と濃度に良好な直線性が得られたという報告がある 。 8) 本 研 究 に お け る 膜 透 過 実 験 で は 、 ミ ク ロ シ ス チ ン LRの初期濃度を実際の 00時 I Lとしており、測定の再現性と簡便性を確保す 環境中濃度を考慮、して 1 L の濃度まで定量でき る た め に 試 料 の 濃 縮 操 作 を 行 わ な い こ と か ら 、 数 時I ることが要求される o こ の こ と か ら 本 研 究 に お い て は ミ ク ロ シ ス チ ン LR の 定 量 に は HPLC/MS法 が 適 し て い る と 考 え ら れ る O 2 . 3 本研究で選択した分析方法 実 際 の 水 試 料 中 に は 、 ミ ク ロ シ ス チ ン LRのみが溶質として存在すること は な く 、 他 の 種 々 雑 多 な 共 存 物 質 が 溶 解 し て い る o ELISA法 の 場 合 、 こ の 共 存物質のいずれかが、分析の際の競合物質となる可能性を否定することはで きない。 したがって、ミクロシスチン LR の 分 析 に は 、 ミ ク ロ シ ス チ ン LR を 分 離 す る こ と が 可 能 な HPLCの利用を避けることはできない。 ま た 、 ミ ク ロ シ ス チ ン LR に対する WHO のガイドライン値が 100μg/L であり、日本の湖沼で検出される濃度がこれ以下の範囲であることを考慮す ると、 HPLCを利用した 2つの方法のうち、 HPLC/MSが 適 し て い る こ と に な る o 以上の考察により、本研究では HPLC/MSを ミ ク ロ シ ス チ ン LRの分析方 法として選択することとした。 2 . 4 HPLC/MS法 に よ る ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 分 析 方 法 の 確 立 本 研 究 で 用 い た 質 量 分 析 装 置 は Thermoquest社の TSQ7000であり、イオン 化 法 と し て ESI法 を も っ 。 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ は 、 カ ラ ム と し て Magic C18、 5μm、200A、l.0x1 5 0m mが 備 わ っ て い る ) を 用 い た o 2 . 4 . 1 ESI法 HPLC/MS法のイオン化には種々のイオン化法があるが、今回の分析には最 l e c t r o s p r y も ソ フ ト な イ オ ン 化 方 法 で あ る エ レ ク ト ロ ス プ レ ー イ オ ン 化 (E . 3に示す。 ESI法 で は 、 ま ず 揮 I o n i z a t i o n、ESI)法を用いた。その原理を図 2 発されやすい溶媒と塩を添加した試料水溶液をイオン化部に導入する 1 1 O 試料 溶液はそこで霧状に噴霧されて、小さな液滴になる。イオン化部では高電圧 に印価されており、液滴は塩や水素イオンおよび水酸化イオンなどで高度に 荷電する。液滴は正負どちらかの電荷が卓越し、ここで測定対象物質はそれ らイオンと結合し電荷を持つ o イオン源にはシースガスと呼ばれる窒素ガス が導入されており、また、イオン源(ヒーティッドキャピラリー)は高混と なっている o こ れ ら に よ っ て 荷 電 し た 液 滴 は 揮 発 し て 小 さ く な り 、 つ い に は イ オ ン 密 度 が 上 昇 し 、 ク ー ロ ン カ に よ っ て イ オ ン は は じ か れ 気 化 す る o 気化 したイオンはチューブレンズによって効率よく質量分析部に導入される。 イオン蒸発 液潟 シースガス L 試料溶液一一炉 コ ご > ‑ 0 o0 0 0 o 。→ l T 高電圧 ι1 4 、 間 部 十よ キャド弓りーチューブレンズ‑ ‑‑",.,. 図2 . 3 エレクトロスプレーイオン化法の原理 2 . 4 . 2 ミクロシスチン LRの分析条件 ミクロシスチン LRの 高 感 度 分 析 の た め 、 ま ず 質 量 分 析 計 の 分 析 条 件 の 適化を行った O あらかじめ M RFA‑Myoglobin混 液 で キ ャ リ プ レ ー シ ョ ン を っ た 質 量 分 析 計 に 、 高 濃 度 の ミ ク ロ シ ス チ ン LRを HPLCのカラムを通さ 注 入 し 、 ポ ジ テ ィ ブ イ オ ン モ ー ド で 2秒 に 1回スベクトルを得ることで、 の分子イオンのピークを確認した(図 2 . 4 )。 つ い で 、 製 造 業 者 の マ ニ ュ ア に従って、そのイオンの M/Zの 感 度 が 最 大 と な る よ う に チ ュ ー ニ ン グ を 行 s i、 オ ー キ シ ラ リ ー ガ ス 圧 た o こ の 結 果 、 分 析 条 件 は 、 シ ー ス ガ ス 圧 :70p 5u n i t、 ス プ レ ー 電 圧 :4 . 5 kV、 ヒ ー テ ィ ッ ド キ ャ ピ ラ リ ー 温 度 : 1 7 5C、 0 1 2 料 注 入 流 速 : 20μL/min、 試 料 溶 媒 : 0.5%TFA/メ タ ノ ー ル =1 / 1 (V/V) とな った。ついで、 HPLCを質量分析計に接続し、ミクロシスチン LRの水溶液を 5μL うち込み、 0.5%TFA/メタノールヱ 1 / 1 (V/ V ) 溶液を展開液としたイソ クラティック (20μL/min) での分析を SIM で 行 い 、 カ ラ ム で の 保 持 と 分 離 を確認した(図 2.5) 。この結果、 l 附/L~l mg/Lのミクロシスチン LR濃度 に対し、いずれも約 8分 に シ ャ ー プ な ピ ー ク が 見 ら れ 、 そ の ピ ー ク 面 積 と 濃 度に線形関係を確認できた(図 2 . 6 )。 こ れ ら の こ と か ら 、 上 記 の 分 析 条 件 を 最適なものとし使用した。 本 研 究 で 選 択 し た HPLC/MSは、イオン化に ESI法を利用することにより、 他の水試料中の有機微量汚染物質の分析にも適した方法であるといえる。こ のことは、今後の有機微量汚染物質の膜透過法による研究を進行させるため に有効な方法であると考えられる O 9 9 5 . 6 0 100 ‑ F X 、 」 hJ 80 並 区 4 門 部 r 、 入 4 マ 60 ヤ 1 実 ← ロ 4立 40 20 イ 600 700 800 1000 h在/ Z 図2 . 4 ミクロシスチン LRマススペクトラム 1 3 守~品~ A A1 4 1 6 7 6 3 3 ぐ な 1 0 0 、 。 」〆 並 区 4 剖 丈 5 0 対 ャ 0 ‑ ¥ ‑ 4 ‑ nHHMW F仇HV 4 . 0 ‑ n J ω SE0.0 n u v ヰ 実 8 . 0 時間(分) 図 2 . 5 HPLC/MS法 に よ る ミ ク ロ シ ス チ ン LRの SIMク ロ マ ト グ ラ ム 1 2, 000, 000 置10,000,000 、 々 U Q 4 8, 000, 000 6, 000, 000 1 ( ¥ 、 史 4 圃 4, 000, 000 ν ! ロ 000, 000 、 々 2, O O 50 100 150 ミクロシスチン L R 濃度 図 200 250 (μg/し ) 2 . 6 HPLC/MS法 に よ る ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 検 量 線 1 4 第 3章 逆浸透膜による微量有機汚染物質の除去特性 3 .1 概 要 本 章 で は 、 逆 浸 透 法 に よ る ミ ク ロ シ ス チ ン LR の 除 去 特 性 を 把 握 す る た め に使用した逆浸透膜の性状、平膜型実験装置および実験方法について述べる O そ し て 実 験 結 果 を 基 に 、 膜 の 種 類 に よ る 除 去 特 性 を 比 較 し 、 溶 液 の pHお よ び NO 描共存の影響を考察する。 3 .2 実 験 方 法 3 .2 .1 逆 浸 透 ( R O )膜 本研究では、 RO膜 に 属 す る UTC20、UTC60、UTC70U、DKL3500お よ び DKL4000 の 5種 類 の 平 膜 ( い ず れ も 異 方 性 膜 ) と そ れ ら の 支 持 膜 と な っ て い る ポ リ ス ル ホ ン 多 孔 膜 の 計 6種類の膜(いずれも東レ(株)製)を使用した o 5種 の RO 膜の性能を表 3 .1に示す。 表 3 .1 本 研 究 に 使 用 し た RO膜 の 性 能 RO膜 操作可能 標準使用 圧力範囲 圧力 (MPa)昌) (MPa) UTC20 話1.0 O .5 UTC60 五 三1 .0 O .5 UTC70U ; 至 上O 0.75 DKL3500 五 二1 .0 O .3‑0.5 三 五 1 .0 O .3‑0.5 標準物質排除率(%) NaCl MgS04 500 mg/L 500 mg/L ショ糖 グルコース 1,000 mg/L 1,000 mg/L 99.0 一 (0.75 MPa) C) 55.0 一 一 99.7 (0.35 MPa)c) 一 ( 0 .75MPa) C) 99.5 一 99.9 一 (0.75 MPa) C) 97.0 DKL4000 b ) 97.5 (0.3 MPa) C) (0.3 説Pa) c) 85.0 98.0 (0.3 MPa) C) (0.3 MPa) c) (0.75 MPa) C) 94.5 一 (0.3 MPa) C) 92.0 一 ( 0 .3 MPa) C) さらに、電気電位法により測定された~ ‑ 電 位 を 基 に し て 求 め ら れ た 、 こ れ a ) 耐 圧 性 は 2.0Mpaま で 可 能 b )pH6 . 5 c )実 験 時 に お け る 圧 力 1 5 ら 5種 の RO膜 の 等 電 位 長 を 表 3 .2に示す。東レ(株)によれば、「アニオン性 の 強 い1 ' 頃は、 DKL4000>DKL3500>UTC60>UTC70U>UT20 と想定している Jとのこと であった o この製造元の見解と表 3 .2の 等 電 位 長 の 測 定 結 果 は 、 厳 密 に は 一 致 し て い な い が 、 少 な く と も DKL4000 が最もアニオン性が強く、 UTC20 はカ チオン性であると考えられる o 膜 は 6種とも A4サイズで、 5種の RO膜 は 密 封 容 器 中 の 純 水 に 浸 し て 冷 蔵 保存 ( 4C )し で あ り 、 実 験 前 に 後 述 す る 平 膜 型 膜 ろ 過 装 置 の 有 効 膜 面 積 の 大 き 0 さに合うように円形に整形して使用した o 支持膜の場合、有機溶媒に浸して 保 存 さ れ て い る た め 、 実 験 の 直 前 に 90Cの 純 水 で 2分 間 洗 浄 し 、 そ の 後 整 形 0 して用いた O 表 3 .2 本 研 究 に 使 用 し た RO膜 の 等 電 位 点 RO膜 等電位点 UTC20 6.16 UTC60 2 .5 8 UTC70U 3 .56 DKL3500K 3.61 DKL4000K 3 .67 3.2.2 膜 ろ 過 装 置 今回、実験には逆浸透 ( R O )処理(または限外ろ過 ( U F )処理)装置である新型 レモリーノ(ミリポア製)を用いた その概要を図 3 .1に 、 ま た 、 膜 ろ 過 装 .2にそれぞれ示す。 置セル本体の断面を図 3 1 6 ロ令 口 出 図 3 .1 膜 ろ 過 装 置 の 概 観 図 3 .2 レ モ リ ー ノ 本 体 内 部 1 7 膜ろ過装置は図 3 .1に 示 す よ う に 原 液 槽 部 分 、 高 圧 ポ ン プ と ラ イ ン に よ る ネットワーク部分、平膜用の膜ろ過装置セノレの 3つ の 部 分 か ら 構 成 さ れ て い る。デッドエンドろ過方式の膜装置に原液槽を接続することにより、セル内 の 液 量 を 減 少 さ せ る こ と な く 連 続 的 に ろ 過 で き る o 原液はダブノレプランジャ ー製の高圧ポンプによって連続的に膜ろ過装置本体セル内部に送りこまれ、 RO膜(または限外ろ過膜)によって分離がおこなわれ、膜を透過した液はステ ンレス製の多孔質の支持プレートを通って透過液出口より流出する。本膜ろ 過装置の特徴は、時間の経過と共にセル内に原液中の溶質の濃縮がおこるが、 透過液として系外へ出た分を原水で補給するため回分式装置に比べてセノレ内 の濃度変化は緩やかで、極端な濃度の上昇なしに実験を行うことができる点 である O 逆浸透(または限外ろ過等)処理する際に、濃度分極またはゲ、ノレ層の生成に よって透過流束の低下や、対象物質の失活等が問題となるが、この装置では、 装置本体セル内部に装着された捜祥子がマグネティックスターラーにより回 転することによって、膜面付近の濃度分極がおさえられている O また、捷持 により同時にセノレ内の液全体の濃度を均一に保持することができる o この膜ろ過装置では、高圧ポンプのダイアノレを調整することにより送液流 量を変化させることによって加圧の大きさを調整することができる(最大送 液 流 量 50mL/min ) ま た 、 こ の 装 置 に お け る 有 効 膜 面 積 は 約 45 cm2、セノレの 0 6mLである。なお、本研究では、各 RO膜 に 対 し て 送 液 流 量 を 一 定 と 容積は 1 して、圧力を測定することとした。 3.2.3 試 料 溶 液 Rはラン藻毒のうちで 今回の膜除去の対象物質であるミクロシスチン L K C N )よりはるかに強力とさ 最も被害報告が多く、また毒性の強さは青酸カリ ( れる物質である O 原液中のミクロシスチン L Rの初期濃度は、濃縮していない 弘 99弘 除 去 さ れ た と 予 想 し た と き の 処 理 水 中 の 濃 度 が 分 析 可 能 な 範 状態で 90、 囲であることや、実際の環境中での濃度などを考慮、して 100 μg/Lとなるよ うにした O ミクロシスチン L R(和光純薬(株)製)の粉末を超純水中に溶解させ 100 μg/L としたものを実験ごとに 500 mL用意し、 1 Lピーカーに入れたも 1 8 の を 実 験 の 前 日 か ら 23Cの 恒 温 室 内 で 一 晩 ス タ ー ラ ー 撹 枠 し た o こ れ は 、 試 0 料溶液に緩衝能をもたせる目的で大気中の二酸化炭素と平衡状態にさせたた め で あ る o さ ら に 実 験 の 直 前 に 0.05Mの NaOH溶 液 ま た は 0.01Mの HCl溶 液 を 用 い て 所 定 の pH に 調 整 し た も の を 実 験 の 初 期 試 料 溶 液 と し た 。 試 料 溶 液 pHの 影 響 を 測 定 す る た め の 実 験 で は 、 pH5、 7お よ び 9について実験を行った。 な お 、 本 研 究 で 使 用 し た 超 純 水 は ADVANTEC社 cpw‑200超 純 水 製 造 装 置 に よ っ て 製 造 し た 限 ill‑Q水である。 ま た 、 共 存 物 質 と し て NOMを 用 い る 実 験 で は 、 自 然 環 境 水 中 の NOM濃 度 を 考慮、してその濃度が DOCで 2 mg/Lと な る よ う 試 料 溶 液 に 添 加 し た 添 加 は も D とのミクロシスチン L R溶 液 を 一 晩 ス タ ー ラ ー で 撹 持 し た 後 に 行 い 、 さ ら に そ の 後 2時 間 ほ ど そ の NOM添 加 試 料 溶 液 を ス タ ー ラ ー 撹 祥 し 、 pH調 整 し た 後 に 実 験 に 用 い た o なお、 NOM と し て 本 研 究 で は 国 際 的 に 多 数 の 研 究 で 使 用 さ れ て い る デ フ ァ ク ト ス タ ン ダ ー ド で あ る Suwannee河 NOMを 使 用 す る こ と と し た o NOM 溶 液 は ア メ リ カ 合 衆 国 IHSS よ り 購 入 し た 。 表 3 .3 に 本 研 究 で 使 用 し た Suwannee河 NOMの 各 元 素 の 存 在 比 を 示 す 。 .3 Suwannee河 NOMの 組 成 (wt出 ) 表 3 v a C H 0 N S P 48.8 3 . 9 39.7 1.02 0.606 0.02 Ash Total 7 . 0 1 0 1 . 0 、 p 目 3 .2 .4 実 験 の 操 作 手 順 ミ 1 .3に示す。本実験では、常に新膜を使用した 膜ろ過実験の操作手順を図 3 O 新膜を用いる場合、ろ過開始後に支持層の圧密化がおこるため、開始直後に ﹄ 刊 円HW 透過フラックスが急激に低下し、その後徐々に安定してくることが報告され ﹁ ﹂ ている O そのため 実験の初期のおける膜の状態の変化が本実験に与える影 響を考慮、した膜の安定化、および膜の洗浄のために前処理として超純水の透 コ 過 を 2時間おこなった。 19 純水による洗浄 試料溶液の通水開始 試料溶液の調整 サンプルの採取 試 料 水 の pHの 確 認 装置の洗浄 図 3 .3 膜 ろ 過 実 験 の 操 作 手 順 膜の奨励フラックスが1.0m3/ m2d付 近 で あ る こ と と 操 作 圧 力 範 囲 の 目 安 が 0.3‑1 .0MPaであることから、全ての実験でポンプの操作流量(膜の透過流量) は 3 mL/minと 設 定 し た 。 ま た 、 前 処 理 で の 操 作 流 量 は 5 mL/minとした O 原液(試料溶液または超純水)槽としての容器はガラス製ピーカーを用いた が 、 試 料 溶 液 の pHを 9 に 調 整 し た 実 験 の 場 合 、 実 験 中 の 試 料 溶 液 の p百低下 が著しいためこの実験の場合には試料溶液の容器に細口ピンを使用したo 前処理の後、セノレ内に残った膜上部の水は除去したが、装置内や膜自身の 内部には水が残存し、サンプル濃度に影響を与えることが懸念された O 前処 理の後、セノレ内に残った膜上の水を除去した後、送入する溶液を超純水から 試料溶液に変えて膜処理実験を開始した o なお、超純水による前処理後、セ ノレ内および膜内の水は完全には除去できなかったが、最初のサンフ。ル時間ま でに処理した水量 ( 6 0X 3=180mL)に 対 し て は 無 視 で き る と 判 断 し 、 本 実 験 の 解 析においてその影響は考慮、しなかった o サンプノレは O分時の原液、 60分 、 90 分 、 120分 、 150分 後 の そ れ ぞ れ の 透 過 液 、 お よ び 終 了 時 の (150分 後 の ) セ ノレ内の膜面上部に残った濃縮液の 6つ に つ い て そ れ ぞ れ 2 mL程 度 採 水 し た o 採 水 終 了 後 、 試 料 溶 液 の pH を 確 認 し た 。 な お 、 膜 ろ 過 実 験 は 全 て 23Cの 0 恒温室内で実施した。 20 3 . 3 実験結果および考察 ここでは膜ろ過実験の結果を、まず膜特性による分離能の違いについて考 察する O そ し て 次 に 、 溶 液 の 性 質 (pHお よ び NOM共 存 の 有 無 ) に よ る 分 離 能の違いについて考察する o 3 . 3 . 1 各膜による分離能の比較 ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 分 離 能 を 6種 類 の 膜 ( 5種 類 の 膜 お よ び 支 持 膜 ) に つ . 0 と し た が 、 実 験 終 了 後 の pHは 6 . 3 ‑ ‑ ‑ ‑ い て 比 較 し た o 原 液 中 の pHは 常 に 7 6 . 7の聞であった。 は じ め に 、 分 離 実 験 中 の RO膜 5種 の 操 作 圧 力 の 経 時 変 化 を 図 3 . 4に示す。 本実験は、送液流量を一定 ( 3mL/min) に し て 行 っ た た め 、 操 作 圧 力 は 各 膜 . 2 ‑ ‑ ‑ ‑ 0 . 7Mpa程 度 の 範 囲 で あ っ た o こ の 範 囲 で は い ず れ も によって異なり、 0 表 3 . 1に 示 し た 各 膜 の 操 作 可 能 圧 力 範 囲 に あ っ た o 操 作 圧 力 は DKL4000以 外 の RO膜 で は 時 間 の 経 過 と と も に 若 干 の 低 下 は 観 ら れ る も の の 実 験 中 に わ た って定常であったとみなせる。また、支持膜の場合、ろ過前後における操作 圧力変化は認められなかった。 0.8 。。。 。 。 。 。 0 . 6 〆曲、 o 芝 c ¥ s 企 A AA 、 ‑ ‑ " ‑ R 0.4 是 国 曜 土E A AA • ‑ • • • •• • ロロロロ』 圃 A企 ロロ ロロロ E 園田園 聞圃 ロロ 属国瞳 IA UTC60 ~砂 0 . 2 I< >UTC70U 田 DKL350 ハ O O 100 50 150 ろ過時間 ( m i n ) 図 3. 4 RO膜 ろ 過 処 理 中 の 操 作 圧 力 の 経 時 変 化 (送液流量 3mL/min、 原 液 の 初 期 pH7) 2 1 次に、 RO膜 お よ び 支 持 膜 に つ い て 、 原 液 中 の ミ ク ロ シ ス チ ン LR濃 度 に 対 . 6 にそ する透過液中濃度の比率(透過/原液濃度) の 経 時 変 化 を 図 3 . 5、 図 3 れぞれ示す。 0 . 3 戸 、 回 、J ロUγC20 0.25 < >UTC70U • DKL3500 ・ 0.15 躍 • • DKL4000 0 . 1 0.05 ‑ • ︒A E 魁蝶媛遜¥悩鱒'制収頬蝦 AUTC60 0 . 2 O 100 50 150 ろ過時間 J nH ︐ ︑ m r ・1 O 図 3 . 5 RO膜 処 理 中 の 原 液 中 の ミ ク ロ シ ス チ ン LR濃 度 に 対 す る 経 時 変 化 世 話 0 . 8 • • ト 礎 震0.6 ト ¥、 制 0.4 艇 0.2 意 蝦 ト ト O O 50 150 ︑︐ / n r ' z ︑ ・ m ろ過時間 100 図 3 . 6 支 持 膜 処 理 中 の 原 液 中 の ミ ク ロ シ ス チ ン LR濃 度 に 対 す る 透過液濃度の比の経時変化 DKL3500お よ び UTC20以外の RO膜 の 場 合 、 ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 透 過 液 22 濃 度 と 原 液 濃 度 の 比 は 時 間 と と も に ほ ぼ 線 形 的 に 増 加 し た o UTC20、 支 持 膜 の場合、その比の経時変化はあまりみられなかったo 一般に、膜による被処理水中の溶質の阻止率は次の式で表される、 R=~-Cp/C ル 100 式 ( 3 . 1 ) 式 ( 3 . 1 ) において、 R は溶質の阻止率(%)、 Cp は 透 過 液 中 の 溶 質 濃 度 (μg /L)、 C は セ ル 内 膜 上 部 の 溶 質 濃 度 (μg/L)である O 本実験で用いた膜ろ過 装置は、透過液量の増加に伴って膜上部の液量が減少する完全な回分式タイ プではなく、透過水量分が原水で補充される半回分式タイプであるためセノレ 内の液量は変化せず溶質濃度だけが濃縮によって高くなる。ところで、こ の装置の場合、そのシステム上、濃縮液を経時的に採水することが不可能で あったため、実際の膜面上の(濃縮液中の)濃度の経時変化を知ることができ なかった O そこで、膜による溶質の阻止機構は、膜への溶質の収着と膜の細 孔による溶質排除の組み合わせであるが、膜によって阻止されたミクロシス チンはすべてセル内膜面上の液中にあるものとして あるろ過時間までのミ ク ロ シ ス チ ン LRの 供 給 量 と そ の 時 間 ま で の 透 過 液 中 の LR濃 度 の 経 時 変 化 か らある時間におけるセノレ内膜面上のミクロシスチン LR濃 度 を 算 出 し 、 そ の 濃 度 を そ の ろ 過 時 間 に お け る セ ル 内 膜 上 部 の 見 か け の ミ ク ロ シ ス チ ン LR濃 度とみなした。 (見かけのセノレ内膜上部濃度) 日(時間内にセル内に流入されたb口全量)一(時間内に透過した口口金量) (セノレ内容積) M C・・・ミクロシスチン LR 式 ( 3 . 2 ) このようにして求めた見かけのセノレ内膜上部のミクロシスチン LR濃 度 か ら得られた阻止率を、 RO膜 処 理 に お け る 見 か け の ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 阻 止 2 3 率 と し て 膜 の 阻 止 性 能 を 評 価 す る こ と と し た o 見かけのセル内膜上部のミク ロシスチン濃度とその見かけの阻止率の関係を図 3 . 7に示す。 RO 膜 5種 は そ れ ぞ れ 差 は あ る が い ず れ も 9 9 %以 上 と 高 い 阻 止 率 を 示 し た o UTC70では見かけ上のセノレ内膜上部濃度の上昇とともに阻止率が漸減す る傾向も見られるがいずれの膜も見かけのセノレ内膜上部濃度が 3倍程度にな る ま で の 濃 度 範 囲 で は ミ ク ロ シ ス チ ン LRの阻止率は安定して良好な状態を 保っているといえる。 除 廿 A ロ ︒ ロ ロUTC20 ロA ̲ ̲100 。 企 aU TC60 き99.5 。 UTC70U 0 : : : J , ¥ .DK し3500 ¥ h r く 99 .DKL4000 , λ 口 、 々 躍 n A 。 • • •• • 置 国 包98.5 4 十 、 会 由 民 98 O 1000 2000 毘かけ上のセル内膜上部のミクロシスチンしR 濃度 3000 (μg/L) 図3 . 7 RO膜処理における見かけ上のセノレ内膜上部の ミクロシスチン LR濃 度 と 見 か け の 阻 止 率 と の 関 係 RO膜 処 理 に お け る ろ 過 時 間 150 分 後 の セ ル 内 膜 上 部 の 実 際 の ミ ク ロ シ ス チン LR濃 度 と 見 か け の 濃 度 の 比 較 を 図 3 . 8に示す。 24 │白実際濃度 E見かけ濃度│ 3000 宮 J ¥、 c> : : 1 ~ 由 2, 000 J 入 ~、 f く 、 : , R17000 O UTC20 UTC60 UTC70U 0 1 く し3500 0 1 くL4000 図3 . 8 実際のセノレ内膜上部濃度と見かけのセル内膜上部濃度 (ろ過時間 150分 ) の 比 較 いずれの膜でも実際のセル内膜上部濃度と見かけのそれには相違が認め ら れ 、 実 際 の セ ル 内 膜 上 部 に 存 在 す る ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 濃 度 は 膜 へ の ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 収 着 を 無 視 し た 見 か け の 濃 度 よ り も 小 さ い こ と が 分 か る 。 50分 ま で の ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 膜 へ の 収 着 量 を 次 の 式 そこで、ろ過時間 1 から求めた。 (膜への収着量)一 ( セ ル へ の 全 供 給 量 ) 一 {(セノレ内膜上部の残存量) + (透過量)} 式 (3.3) 25 式 ( 3 . 3) に お い て 、 セ ル へ の 全 供 給 量 は ろ 過 時 間 150分 間 ま で に 原 液 槽 か ら の セ ル へ 供 給 さ れ た ミ ク ロ シ ス チ ン LR の量、セノレ内膜上部の残存量は 150 分後の濃縮液中濃度にセル内膜上部容積を乗じて求めたその時点におけるセ ノレ内膜上部のミクロシスチン LR量 、 透 過 量 は 150分間に膜を透過 し た ミ ク ロシスチン LR 量である o な お 、 透 過 量 は 、 透 過 液 中 の ミ ク ロ シ ス チ ン LR 濃度の変化(図 3 . 5 ) を直線近似することで、各ろ過時間における透過液中 濃度を求め、それに透過液量を乗じたものの総量として算出した(ただし、 DXL3500お よ び UTC20 に つ い て は 、 経 時 的 に 線 形 変 化 し た わ け で は な か っ ) た が 、 解 析 上 線 形 と み な し て 行 っ た o。 0 . 6 0 . 5 ↓ 0.4 時 書0.3 Q 会0.2 0 . 1 O UTC20 UTC60 UTC70U DKL3500 D I く し4000 図3 . 9 ミクロシスチン LRの 膜 へ の 収 着 率 ( ろ 過 時 間 150分) 図 3 . 9にろ過時間 150分 に お け る ミ ク ロ シ ス チ ン LRの セ ル へ の 全 供 給 量 に対する各 RTO膜 へ の 収 着 率 を 示 す 。 損 失 量 分 の ミ ク ロ シ ス チ ン は 膜 中 に 存 在 す る と 考 え ら れ る 。 ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 膜 へ の 収 着 率 は 、 各 膜 に よ っ て . 2 5 ' " " ' ‑ ' 0 . 5 )、UTC20、UTC70、DKL4000、UTC60、そして DKL350 異なり(約 0 の頗に高かった o UTC20は表 3 . 2に 示 さ れ る よ う に 最 も カ チ オ ン 性 の 高 い である。またミクロシスチン LRは p H 2 ' " " ' ‑ ' p H 1 0の範囲では負に帯電している といわれている O これらの点を考慮すると UTC20の場合膜とミクロシスチ、 26 LRとの聞に電気的引力が最も大きく働き、その結果として膜への収着量が他 の膜より多くなったと考えられる。 本実験の場合、装置の都合上、サンプルとしてセノレ内のもミクロシスチン LRの 濃 度 が 測 定 可 能 と な る の は 、 実 験 終 了 時 の み で あ る o よって、 150分後 (実験終了時)の R O膜 5種 の 実 際 の セ ル 内 膜 上 部 濃 度 に 対 す る 阻 止 率 を 式 ( 3 . 1 ) に従って求めた結果をそれぞれの膜の操作圧力とともに図 3 . 1 0 に示 5 0分における値である。 す。ただし操作圧力の大きさはろ過時間 1 !日阻止率・操作圧力│ 100 ー 0 . 8 t アアアマ吋 ト ・ ・ ・ . 「一一一 99 ︿ゆか) . . 卜 , , , .• 298 0.6̲ c t i : ・ : 0. 芝 . . r ; ‑ ; ‑ ; ‑ っ . ! ・ : 回 ‑ ・ ・ ・ 0.4~ ・ l ¥ : 97ト 96 → ・ i 斗 是 蟻 0 . 2 O UTC20 UTC60UTC70LDI く し3 5001 く し4000 図3 . 1 0 5種の RO膜 に お け る ミ ク ロ シ ス チ ン LR阻 止 率 と 操 作 圧 力 5 0分) (ろ過時間品 1 UTC70U、UTC60、UTC20お よ び DKL3500 は 99%以上の阻止率があり、 また DKL4000 は 98%と 他 と 比 べ て や や 低 い 値 と な っ た も の の 、 い ず れ の 膜 もミクロシスチン LRの阻止率は非常に高い結果であった。 圧 力 と 溶 質 阻 止 率 の 関 係 は 、 比 較 的 阻 止 率 の 低 い DXL シ リ ー ズ の 膜 ( 表 2 . 1 参照)である DKL3500 と DKL4000の 2膜 に つ い て み る と 、 加 圧 力 の 高 い DKL3500の 方 が ミ ク ロ シ ス チ ン LRに対して高阻止率を示し、本来の膜の 2 7 性 質 に あ っ た 傾 向 を 示 し た 。 一 方 、 溶 質 阻 止 率 が 高 い UTCシリーズの膜(表 2 . 1参照)である UTC70U、UTC60お よ び UTC20の 3膜 の 場 合 は 操 作 圧 力 の 大 き さ と 、 ミ ク ロ シ ス チ ン LR阻 止 率 の 大 き さ の 関 係 は 逆 転 し て お り 、 低 圧 であった UTC20が最も高い阻止率をした。 最 後 に 、 支 持 膜 に つ い て RO膜 の 場 合 と 同 様 に 、 ろ 過 時 間 150分における ミクロシスチン LRのセノレへの全供給量、セノレ内膜上部の残存量、 着量、および透過量をまとめて表 3 . 4に示す。 表 3 . 4 支 持 膜 に お け る ろ 過 150分 後 の ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 物 質 収 支 ミクロシスチン量 (μg) 流入全量 4 5 . 9 7 透過全量 4 4 . 0 1 回収量 2 . 9 9 表 3 . 4において、物質収支が 1μg合 わ な い が 、 こ れ は 計 算 値 で あ る た め 計 . 4か ら わ か る よ う に 支 持 膜 で は ミ ク 口 シ 算上の誤差の範囲だといえる o 表 3 スチン LRは 膜 に よ る 収 着 も 細 孔 に よ る 排 除 も さ れ ず に ほ ぼ 全 量 が 膜 を 通 過 していることがわかる O 3 . 3 . 2 水 質 の 違 い の ミ ク ロ シ ス チ ン LR分 離 能 へ の 影 響 水 質 の 違 い が ミ ク ロ シ ス チ ン LRの分離に与える影響を、 pHの相違と NOM 共存の有無から検討した。 pHの 影 響 を 見 る 場 合 に は 、 前 節 で 使 用 し た 5種の 2 . 5 8 )、 RO膜の中から、等電点が最も低い UTC60(等 電 位 点 を 示 す pH、 pHzpc= 最も高い UTC20(pH 6 . 1 6 )の 2模を、 NOM共 存 の 影 響 を 見 る 場 合 に は 、 前 zpc= 節 の 実 験 で 最 も 低 い ミ ク ロ シ ス チ ン LR限 止 率 を 示 し た DKL4000お よ び 高 阻 . 1 1に原 止率を示した UTC60と UTC20を そ れ ぞ れ 用 い て 実 験 を 行 っ た o 図 3 2 8 液 の 初 期 pH ( 5、 7、 お よ び 9 ) と ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 阻 止 率 と の 関 係 を 示 5 0分後におけるセノレ中膜上部のミクロシ す。ただし、ここで阻止率はろ過 1 ス チ ン LR濃 度 ( 濃 縮 液 ) と そ の と き の 透 過 液 中 の 濃 度 と か ら 求 め た も の で ある O な お 、 原 液 pHは 、 実 験 中 に お い て +0.2の 範 囲 に あ り 、 初 期 の p H7.0 の場合には 6 . 3 " ‑ ' 6 . 7に 低 下 し て い た o 1 0 0 コ ‑f 企一一一 』ー一 一 ー ‑ ‑ ‑ 司 司 ・ ・伺 A t 与、 、 、 、 、 、、 ー ヤ 、 、 ¥ ¥¥ 9 9 ~ 、 F幅 , 求 ‑ 、 量 告 器 9 8 計 、/ 97 4 6 8 1 0 pH 図3 . 1 1 原 液 の 初 期 pHと ミ ク ロ シ ス チ ン LR阻 止 率 と の 関 係 過 (ろ過時間 1 5 0分) ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 阻 止 率 は pHの 上 昇 と と も に 低 下 す る 傾 向 に あ っ た 。 これは膜の~ ‑ 電 位 が 試 料 溶 液 の ~M pHの 上 昇 と と も に ア ニ オ ン 性 に 傾 く た め 、 負 に 帯 電 し て い る ミ ク ロ シ ス チ ン LR と の 電 気 的 反 発 力 が 大 き く な り 、 そ の 結 果 、 ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 膜 へ の 収 着 量 が 少 な く な っ た た め と 考 え ら れ る 、 ( 図 3 . 1 2 ) 0 なお、図 3 . 1 1に お い て は 、 膜 へ の 収 着 率 は 図 3 . 9と同様の手傾 前阻原 の によって求めている O 2 9 0 . 9 0 . 8 0 . 7 ↓ 0 . 6 e 栴 辱 醤 時 ど0 . 5 0. 4 、 三 ¥ 0 . 3 0 . 2 0 . 1 0 . 0 4 8 6 10 pH 図3 . 1 2 原 液 の 初 期 pHと ミ ク 口 シ ス チ ン LRの 膜 へ の 収 着 率 と の 関 係 50分) (ろ過時間 1 NOMの 共 存 影 響 は 、 原 液 中 の NOM濃 度 2mgC/L、 原 液 初 期 pH7.0の 条 件 で検討した o 図 3 . 1 3に UTC20、UTC60お よ び DKL4000の そ れ ぞ れ の 膜 に よ . 1 4に そ の と き の NOMの 膜 る ろ 過 時 間 分 に お け る NOMの 阻 止 率 を ま た 図 3 へ の 収 着 率 ( 解 析 手 法 は 、 こ れ ま で の ミ ク ロ シ ス チ ン LRに 対 す る そ れ と 同 様)を示す。なお、 NOMの阻止率は、 NOMの 濃 度 を 分 析 簡 略 化 の た め 紫 外 部 254 nm に お け る 吸 光 度 の 値 か ら 求 め て い る た め 、 NOMの全成分のうち、 254nmに 吸 収 を 持 つ 成 分 に 対 す る 評 価 で あ る o 3 0 100 (次﹀ . . . . . ‑ ・ .... 「司--~ r‑自由自ーーー山田 99 r ‑ ‑ ‑ ‑ ー 『 ー 『 ー 『 喧 . . . . . . , 廿詔 MW 98 97 ム UTC20 UTC60 D J く し4 000 図 3 . 1 3 各 RO膜 に 対 す る NOMの 阻 止 率 ( ろ 過 時 間 150分) 0.25 0 . 2 . . . . 0.15 憐 u 尽 ~ 0 . 1 e 会0.05 O UTC20 同 UTC60 DKL4000 0.05 図3 . 1 4 各 RO膜 に 対 す る NOMの 膜 へ の 収 着 率 UTC20、UTC60の場合、 ミ ク ロ シ 穴 チ ン LRの 阻 止 率 は NOMのそれより 高かったが、 一方、 DKL4000 の場合、 NOMの 阻 止 率 の ほ う が ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 阻 止 率 よ り 高 か っ た o また、 DKL4000で は NOMの 膜 へ の 収 著 は な . 9に 示 し た ミ ク ロ シ ス かったことがわかる。 UTC20、UTC60に つ い て も 図 3 チ ン LRの 膜 へ の 収 着 率 と 比 べ て そ の 値 は 低 い こ と か ら 、 NOMの 膜 へ の 収 着 O これらの結果は、 ミ¥ 率 は ミ ク ロ シ ス チ ン LR の そ れ よ り 低 い こ と が わ か る ク ロ シ ス チ ン LRと NOMが 異 な っ た 機 構 で 阻 止 さ れ て い る こ と に よ る と 考 え られる。 3 1 UTC20、 UTC60お よ び DKL4000の各膜について、 NOM共 存 に よ る ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 阻 止 率 へ の 影 響 を 図 3.15に示す。 100 ~ 99 梼 ‑ = ! 国 9 8 97 UTC60 UTC20 D I く し4 000x 図3 . 1 5 各 RO膜 の NOM共 存 に よ る ミ ク ロ シ ス チ ン LR限 止 率 へ の 影 響 (ろ過時間 150分) NOM共 存 に よ る ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 阻 止 率 へ の 影 響 は UTC20ではほと んど観られず、 UTC60では阻止率が低下し、 DKL4000で は 上 昇 し て い た 。 次 に NOM共 存 に よ る ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 膜 へ の 収 着 率 へ の 影 響 を 図 3.16に 示す。 0.60 nununununU 54321 (i﹀憐拠出﹃Qど盤 nununununu 0.00 UTC20 UTC60 DKL4000x 図 3 . 1 6 各 RO膜 の NOM共 存 に よ る ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 膜 へ の 収着率への影響(ろ過時間 32 150分) いずれの膜でも NOMの 共 存 に よ り ミ ク ロ シ ス チ ン LRの 模 へ の 収 着 率 が 低 下 し て い る こ と が 分 か る o このことから、 UTC60に お い て は 、 ミ ク ロ シ ス チ ン LRの阻止率が NOM共存によって低下し、一方、 DKL4000で は 上 昇 し た の は 、 ミ ク ロ シ ス チ ン LRが NOMに 収 着 さ れ た こ と に 起 因 す る も の で あ る O したがって NOMに 収 着 さ れ た ミ ク ロ シ ス チ ン LRは、遊離のミクロシスチン LRとは膜に対する挙動が違ったものとなり、 NOM共 存 下 で は 、 こ れ ら 両 者 の膜に対する挙動を同時に考慮する必要があると考えられる。この結果は、 実 際 の 環 境 水 を 対 象 と し て ミ ク ロ シ ス チ ン LRを 膜 分 離 除 去 す る 際 に 重 要 で あると考えられ更なる詳細な研究が必要とされる領域である。 3 . 4 まとめ 本章で得られた知見を以下に記す。 l.ミクロシスチン LRの 阻 止 率 が 最 も 高 か っ た の は UTC20で 、 最 も 低 い の は DKL4000Xであった o 2 . ミクロシスチン LRは 5種の RO膜いずれに対しでも収着性を示した。 pH7 では UTC20に 最 も 収 着 し 、 こ れ は ミ ク ロ シ ス チ ン LRが p H 2 " " " " ' p H I Oでは 負に帯電していることと、 UTC20 は 使 用 し た 膜 の 中 で 最 も カ チ オ ン 性 が 強 い こ と か ら 、 ミ ク ロ シ ス チ ン LRと 膜 と の 間 に 働 く 電 気 的 引 力 が 大 き か ったためであると考えられる。 3 . 試 料 水 の p Hは ミ ク ロ シ ス チ ン LRの阻止率に影響を与え、 p Hの上昇と 共 に そ の 阻 止 率 は 低 下 し た o これは、 p H の 上 昇 と 共 に UTC20 お よ び UTC60 の い ず れ も ア ニ オ ン 性 が 大 き く な る 傾 向 に あ り 、 負 に 帯 電 し て い る ミ ク ロ シ ス チ ン LRと の 電 気 的 反 発 力 が 高 ま っ た た め 収 着 量 が 減 少 し た ことに起因するものと考えられた o 4 . NOM共 存 下 で は ミ ク ロ シ ス チ ン LR は NOMに 収 着 さ れ 、 こ の 結 果 膜 に 対 す る 挙 動 が 変 化 す る ミ ク ロ シ ス チ ン LRが 存 在 す る こ と に よ り 阻 止 率 に 相違が生じることになることが分かった O こ れ ら の 結 果 よ り 、 ミ ク ロ シ ス チ ン LR等 の 有 機 微 量 汚 染 物 質 を RO膜に より分離除去をする際には、 RO 膜の特性(本研究では~ ‑ 電 位 お よ び 等 電 3 3 位 点 ) お よ び 溶 液 の 性 質 ( 本 研 究 で は pHお よ び NOMの 有 無 ) が 大 き な 影 響 を有することが示唆された。また、その除去特性としては分子ふるい効果に よる物理的なもののみならず、膜への収着という機構も重要であることがわ かった o 34 箇幽幽』 第 4章 結 論 4 . 1 結論 本研究ではラン毒素ミクロシスチン LRを対象として、ミクロシスチン LRが 含まれる水試料水の分析方法を選択し、ミクロシスチン LRの逆浸透膜による分 離除去特性を把握することを目的として実験を行い、以下の結論を得た。 ( 1 ) 既存のミクロシスチン LRの分析方法を比較検討した結果、選択性および分 析感度の観点から水試料の場合には HPLC/MS法を最適な方法として選択し た。また E ま PLC/MS法によるミクロシスチン LR分析方法では一 数百 μ g/L の範囲で良好な検量線が得られた。 ( 2 ) 膜ろ過実験に使用した 5種の RO膜のうち、ミクロシスチン LRの阻止率が 最も高かったのは等電位点が最も高い UTC20で、最も低かったのはこの値が 最も低い DKL4000Xであった。 ( 3 )ミクロシスチン LRは 5種の RO膜いずれに対しでも有意な収着性を示した。 pH7では UTC20に最も収着した。これはミクロシスチン LRが p H 2 " " " " p H I 0 の範囲では負に帯電していることと、 UTC20は使用した膜の中で最もカチオ ン性が強いことから、ミクロシスチン LR と膜との聞に働く電気的引力が大 きかったためであると考えられた。 ( 4 )試料水の pHはミクロシスチン LRの阻止率に影響を与え、 pHの上昇と共に その阻止率は低下した。これは、 pHの上昇と共に UTC20および UTC60のい ずれもアニオン性が強くなる傾向にあり、負に帯電しているミクロシスチン LR との電気的反発力が高まったた均収着量が減少したことに起因するもの であると考えられた。 ( 5 ) NOM共存下ではミクロシスチン LR は NOMに収着され、この結果膜に対 する挙動が変化することによって阻止率に相違が生じることになることが示 唆された。 4 . 2 今後の課題 本研究の結果、更なる検討が必要と考えられる事項を今後の課題として以下に 3 5 記す。 ( 1 ) 本研究で用いた装置ではセル内膜上部に濃縮される溶質濃度の経時変化が 測定困難である o この経時変化を測定することにより膜による阻止率および 収着率の濃度依存性を評価することが可能となると考えられる G ( 2 )NOM共存が膜分離に与える影響をさらに詳細に把握するために、ミクロシ スチン LRの NOM収着実験を行う必要がある。 ( 3 ) ミクロシスチン LRと部分的に構造の異なるミクロシスチン RRやミクロシ スチン YRについても同様の実験を行うことで、除去対象物質の化学構造が 膜分離に与える影響について評価する必要がある。 36 参考文献 1 ) Visvabathan,C: T r a i n i n gCourseonD e s a l i n a t i o n, 1992. 2 ) 金時凌:低圧逆浸透法の溶質分離特性と多成分系廃水処理への適用に関 する研究,京都大学工学滞士学位論文, 1999. e j e c t i o nofOrganicCompoundsbyU l t r aLowP r e s s u r eReverse 3 ) HuafangL i :R .T, 1999. Osmosis(ULPRO)Membrane,A.I 4 ) 池 嶋 規 人 : 低 圧 逆 浸 透 法 に よ る ピ ス フ ェ ノ ー ル A と 17園。エストラジオ . ー ル の 分 離 特 性 , 京 都 大 学 工 学 部 地 球 工 学 科 卒 業 論 文 , • 2001 5 ) 彼 谷 邦 光 : 飲 料 水 に 忍 び よ る 有 毒 シ ア ノ バ ク テ リ ア , 裳 華 房 , 2001 . 6 ) 山下尚之,松井三郎,清水芳久,松田知成:琵琶湖疎水におけるラン藻 類 と そ の 含 有 毒 素 ミ ク ロ シ ス チ ン の 挙 動 , 土 木 学 会 論 文 集 , NO.685/VH 20, 珊 pp.69‑77, 2001 .8 . 8 ) 梅谷友康,森賞圭ニ:高速液体クロマトグラフー質量分析計を用いたミ クロシスチン定量方法の開発, Vo1 .65,No.7, pp.25 34, 1996. 帽 37 既.膜ろ過処理におけるファウリング原因物質の解明 第 1章 序 論 1 .1 は じ め に 古 く か ら 「 い の ち の み な も と Jなどといわれ地球上の生命体にとっては、 欠くことのできない f 水 jで あ る が 、 現 在 、 水 環 境 中 に 存 在 す る 微 量 有 機 汚 染 物質による様々な被害が報告され、飲料水に対する人々の不安は高まるばか りである O 日本の水道は、凝集・沈殿・急速砂ろ過を基本とするろ過システムと塩素 に よ る 消 毒 を 基 盤 と し て 水 道 水 質 の 安 全 性 を 確 保 し て き た o しかし、水の安 全性確保のために採り入れられた塩素処理によりトリハロメタン等の有害な 消毒副生成物の生成、また一方でクリプトスポリジウムなどの塩素耐性原虫 類の出現による健康被害が現在問題となっている o 近年、新たな水処理技術として導入され始めているのが、膜処理技術であ る。膜処理技術は、圧力差を分離の駆動力とする方法であり、除去対象物質 により、精密ろ過 ( m i c r o f i l t r a t i o n :MF)膜 、 限 外 ろ 過 ( u1 tr a f i1 tr a t i o n :UF)膜 、 ナ n a n o f i1 t r a t i o n :NF)膜 、 お よ び 逆 浸 透 ( r e v e r s eo s m o s i s :RO)膜 の 4種 類 ノろ過 ( が使い分けられている。 MF膜 や UF膜 は 、 重 力 沈 降 を 補 助 す る 程 度 の 圧 力 で ろ過できる o 一 方 、 逆 浸 透 膜 上 に は 孔 と 呼 べ な い ほ ど の 微 細 な 孔 し か 存 在 せ ず 、 液 体 が 膜 を 透 過 す る に は 浸 透 圧 以 上 の 圧 力 が 必 要 と な る o また NF膜 は UF 膜 と 逆 浸 透 膜 の 中 間 の 性 質 を 持 つ と い わ れ 公 称 孔 径 は な い ま で も 分 画 分 子量をもっ。これらの技術は、従来水処理法に比べ、省スペースで行えるこ と、運転や維持管理が容易であること、消毒副生成物生成の心配がないこと などが利点としてあげられる。 993年 度 か ら MF膜 お よ び UF膜 に よ る 浄 水 の 膜 処 理 技 術 が 導 日本では、 1 入され、 2005年 3月 現 在 、 膜 処 理 施 設 は 建 設 予 定 を 含 め 全 国 で 442ヵ所、計 000m3/日となっている 画 施 設 能 力 で 約 362, 1 )。 しかし、 MF膜 や UF膜 に お け る 処 理 は ク リ プ ト ス ポ リ ジ ウ ム や 大 腸 菌 、 細 菌類の除去および濁質の除去が目的であり、それぞれ単独での使用では臭気 物質、微量有機汚染物質、無機イオン、硝酸性窒素などの処理は困難で、ある O そこで、より高度な技術として水処理分野への導入が期待されているのが、 1 NF膜 や 逆 浸 透 膜 を 用 い た 膜 処 理 技 術 で あ る o NF膜を用いることで、 トリハ ロメタンの前駆物質や農薬、フルボ酸などの低分子物質までを除去すること が可能となる O さらに逆浸透膜を用いると、これらの低分子物質に加えてイ オン性物質までを除去することが可能となる o 現在、水処理を対象とした逆浸透膜開発は、海水の淡水化を目的とした高 圧化と超純水製造を目的とした低圧化の両極端で、進められている O 日本にお いては、海水を対象とするよりも河川水や地下水といった水質レベノレの原水 を対象とし、有害物質を除去することを目的とした低圧逆浸透膜処理に注目 が集まっている o 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 で 用 い ら れ る 膜 は 、 表 面 に 自 に 見 え な い ほど微細な孔が存在する極めて薄い機能層とその強度を補強するための目が 粗く厚い支持層からできている O なお、物質の選択透過性は機能層により決 まるといわれる。 膜素材としては合成高分子系のものと酢酸セルロース系のものがある o 合 成高分子系膜は主に、分離機能層がポリアミド系高分子化合物、支持層がポ リスノレフォン系高分子化合物でできている。また、酢酸セノレロース膜は非対 称膜であり、同一素材の鍛密層と多孔質支持層からできている。 市 販 の 低 圧 逆 浸 透 膜 に は 阻 止 率 が 設 定 さ れ て い る が 、 限 止 率 100%のもの は存在しない。つまり膜面において除去対象物質をかなり高い割合で阻止可 能ではあるが、一部は少なからず透過する。操作条件としては、溶質濃度、 温度、 pH、 イ オ ン 強 度 お よ び 操 作 圧 力 が 透 過 や 阻 止 に 影 響 を 与 え て い る 。 低圧逆浸透膜の分離機能層上では、膜構成物質の熱運動によって生じるす きまを溶液が通ることにより透過が起こる o 溶液中の溶質の低圧逆浸透膜透 過現象は、溶質の濃度差、浸透圧差による分子拡散現象、体積流束に随伴し 微細孔や欠陥細孔を透過する移流現象、および保持液側で膜に吸着した分子 が担体輪送され透過液側で脱着する吸脱着反応などによって説明されている 一方、低圧逆浸透膜における溶質の阻止は、主に分子ふるいおよび静電気的 相互作用により説明される o 分子量や立体配置が膜の孔径より大きい分子は 基本的に孔を通れず阻止される O また、膜が帯電している場合、溶質が膜表 面電荷と向じ電荷を持って存在すれば、静電気的反発力によりはじかれ、阻 止される O その他、膜の荷電特性や疎水性、溶質の極性的や 1 ogK o w ( K o w : オク 2 タノーノレ/水分配係数)3)も 阻 止 に 影 響 を 与 え る と い わ れ る o 水処理技術として低圧逆浸透膜を用いる際には運転時間の増加に伴って 膜表面および膜内部で目詰まりが起こり、透過流東が減少する現象であるフ ァウリングが問題となるが、現在その原因究明のために様々な研究がなされ ている o その結果、 Na t u r a lO r g a n i cM a t t e r(NOM)が 主 な 原 因 で あ る と 言 わ れ るようになっている o フ ァ ウ リ ン グ は 、 膜 表 面 や 内 部 に 無 機 物 や 有 機 物 が 堆 積することによる膜細孔や膜内流路の閉塞、濃度分極による浸透圧の増大お よび膜表面や膜細孔と NOM内 の 芳 香 族 成 分 と の 間 の 疎 水 性 相 互 作 用 な ど が 原因と考えられている o 現在、膜ファウリングは、流束の低下率や洗浄後の 透過流束の回復率、ろ過抵抗、透過能、膜表面の荒さ、接触角による溶質と 膜の相互作用、膜からの溶質抽出などによって評価されている。 溶質は、溶媒の流れに伴い膜表面を移動するが、溶質の多くは膜表面で阻 止されてしまうため、溶質が膜近傍で濃縮を受ける。この現象を濃度分極と い い 、 濃 度 分 極 に よ り 浸 透 圧 が 増 大 し 、 そ の 結 果 膜 透 過 流 束 が 減 少 す る o MF 膜 や UF膜 で の 処 理 の 場 合 は 逆 洗 に よ る 洗 浄 が 可 能 な た め 、 透 過 流 束 は 逆 洗 後回復もしくはより良くなるが、 NF膜 処 理 や 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 の 場 合 、 一 度 ファウリングが起こってしまうと、洗浄を行っても使用前の状態に回復させ ることは困難である o こ れ は 電 力 等 の 操 作 費 用 や 洗 浄 用 薬 剤 等 の 維 持 費 用 の 増加につながるだけでなく、膜自身の寿命も短くする O フ ァ ウ リ ン グ に 影 響 を 与 え る と い わ れ る NOMとは、水環境中に存在する 自然由来の有機物の総称である。起源としては陸生植物由来のもの、土壌中 の有機物由来のもの、藻類由来のもの、微生物由来のものなど様々であり、 地域特性、季節変動によっても組成や物性が変化するので、普遍的な評価を 行うことや、特定の分子構造を把握することが難しいため、現状では、 NOM に関する十分な理解がなされていない。 NOMの 特 性 な ど を よ り 詳 細 に 研 究 す る た め の 方 法 と し て 、 一 般 的 に サ イ ズ や 化 学 特 性 に よ る 分 画 作 業 が 実 施 さ れ る o 図1.1 に標準的な分画を示すめ。 また、表1.1に 各 分 画 に 含 ま れ る 化 合 物 を 例 示 す る 3 5 )。 一性別一 一中州一 国 1 . 1: N a t u r a l OrganicMatter(NOM) の 分 臨 方 法 表1.1:各分留に含まれる化合物 F r a c t i o n 疎水性一酸 疎水性一中性 疎水性一塩基 S o l u t eCompound C l a s s e s フミン質(フミン酸、フルボ酸) 芳香族アミン 炭化水素、カルボニル化合物 親水性一酸 親水性一中性 親水性一塩基 糖酸、脂肪酸、ヒドロキシル酸 蛋白質、アミノ糖 少糖類、多糖類 NOMはまず、干し径l.0μmの ガ ラ ス 繊 維 ろ 紙 を 通 過 で き な い 懸 濁 態 有 機 物 ( P a r t i c u l a t eOrganicM a t t e r :POM)、孔径1.0μmのガラス繊維ろ紙は通過でき る が 孔 径 0.45μm の ガ ラ ス 繊 維 ろ 紙 は 通 過 で き な い コ ロ イ ド 状 有 機 物 ( C o l l o i d a lOrganicM a t t e r : COM)お よ び 孔 径 0.45μmのガラス繊維ろ紙を通過 できる溶存有機物 ( D i s s o l v e dOrganicM a t t e r :DOM)に分間される o さらに DOM は XAD‑8/4 樹 脂 を 用 い て 有 機 物 を 疎 水 性 成 分 (Hydrophobic Organic M a t t e r : HPO)、親水性成分 ( H y d r o p h i l i cOrganicM a t t e r : HPI)、親水性と疎水性の中間 の性質を持つ成分 ( T r a n s p h i l i cOrganicM a t t e r :T P I )に分画される o この分画法 においてはいわゆる HPO が フ ミ ン 質 に あ た る 。 こ の フ ミ ン 質 は さ ら に pH2 以下で沈殿する分子量数千のフミン酸と pH2以下でも溶解する分子量数百の フノレボ酸に分画される O 水環境中のフミン質に関しては、金属や有機化合物との相互作用、酸中和 4 作用、生態系への影響に関する報告が数多く存在する o 近年、フミン質だけ で な く 非 フ ミ ン 質 を も 含 む NOMに 関 す る そ れ ら の 報 告 も 増 え て き た 。 フ ァ ウリング原因物質としても同様に疎水十生であるフミン質が主な原因であると 言われてきたが、現在はアミノ糖などの親水性成分を含む非フミン質もファ ウリングを起こす原因となる 6)こ と が 明 ら か に な っ て き て い る o このように、 NOMは 膜 処 理 フ ァ ウ リ ン グ の 主 な 原 因 物 質 で あ る と い わ れ る に も か か わ ら ず 、 未 だ NOMの 構 造 や 特 性 が 十 分 に わ か っ て い な い た め フ ァ ウ リ ン グ 問 題 の 解 決 は 因 難 を 極 め て い る 。 そ の た め NOM を 構 成 す る と 考 え られる成分を数種想定し、想定した成分から膜ファウリングを起こしうる成 分を特定できれば、 NOMに よ る フ ァ ウ リ ン グ 発 生 が NOMの 持 つ 官 能 基 に 原 因があるのか、構成単位と想定される物質の物性に原因があるのか、何らか の性質をもっ単体どうしの共存が原因であるのか、単体としてではなく混合 物として存在することが原因であるのかといった説明が可能となるため、 NOM に よ る フ ァ ウ リ ン グ メ カ ニ ズ ム の よ り 細 部 へ の 理 解 が 可 能 と な る と 考 えられる o そ の よ う な 議 論 に 持 ち 込 む こ と が で き れ ば 、 対 象 水 を 前 処 理 し て ファウリング原因物質を除去しておく、あるいは操作条件を変更するといっ た方法によりファウリングを抑制することが可能となる o また、ファウリン 物き物過 幾で畿通 グ原因物質とその分子構造の特定により、よりよい低圧逆浸透膜の開発にも つながると考えられる。 1 .2 本 研 究 の 目 的 以上の内容を踏まえて、本研究では、膜処理ファウリング原因物質特定に 向けた基礎的データの蓄積を行った る O 以下に本研究の具体的な目的を列挙す O 1 . NOM構 成 成 分 を 想 定 し 、 そ れ ぞ れ に つ い て 特 定 の 化 学 物 質 を フ ァ ウ リ ン グ原因候補物質として選択すること口 2 . ファウリング原因候補物質の低圧逆浸透膜への付きやすさ、阻止されやす 百の さ、透過能の低下に及ぼす影響を実験的に検討することを通じて、ファウ リングにつながる化学物質を把握すること 中和 O 3 . 実 際 の 水 環 境 中 NOMを 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 し 、 種 々 雑 多 な 有 機 物 が 混 在 す 5 る系においてより多く膜に残ると考えられる成分を同定し、上記の目的 2 .で 想 定 し た 成 分 と の 対 応 を 確 認 す る こ と o 1 .3 本 研 究 の 構 成 第 2章 で は 、 本 研 究 で 使 用 し た 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 装 置 、 選 定 し た 対 象 化 学 物 質 の 特 徴 、 お よ び 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 実 験 方 法 に つ い て 記 述 す る 。 第 3章で は対象化学物質によるファウリングの評価を行い、その結果と考察について 記述する o 第 4章では、 NOMに よ る フ ァ ウ リ ン グ の 評 価 を 行 い 、 そ の 結 果 と考察について記述する o そして、第 5章 に お い て 本 研 究 か ら 得 ら れ た 結 論 と今後研究を進める上で必要と考えられる課題について言及する。 6 第 2章 低圧逆浸透膜処理におけるファウリング評価方法 本章では、 ま ず 実 験 に 使 用 し た 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 装 置 お よ び 低 圧 逆 浸 透 膜 の性能について記述する。次に、 ファウリングを検討するために選定した対 象化学物質の特徴について述べる o さらに実験の方法および本研究で使用し た分析装置等についても記述する o 2 . 1 低圧逆浸透膜処理装置 ファウリング実験を行うために使用した低圧逆浸透膜処理装置の概要を図 2 . 1に、また図 2 . 1の膜モジューノレとして使用した平膜型テストセノレ C l O T (日 帽 東電工製)の外観を図 2 . 2に示す。 原液タンクより 平膜型テストセル 一 AWhn択 川 ' h えて 九 ; ; ; / パ 、 々 一 省晶新盤I 号 、 ' 1 蹴出融問 可γ ニ方コック 2 . 1:ファウリング実験を行うために使用した実験装量の概要 ( ¥ R ~ サ 図 圧 透過液 ン セ にカ 田 車 F 一山 流 バルブ 膜 透過スベーサ 官亨 挺 属 0リング 国 透過液 2 . 2:平膜型テストセル C‑10Tの 外 観 7 低圧逆浸透膜処理装置は図 2 . 1に示すように、原液タンク、高圧定流量ポン プと配管によるネットワーク部分、平膜型テストセノレの 3つ の 部 分 か ら 構 成 される o 図 2 . 2に示すように平膜型テストセノレ C 10Tは 、 膜 表 面 に 平 行 に 溶 圃 液を流すことにより膜表面付近で濃度分極がおこりにくいクロスフロー方式 を採用している。透過液は膜を通り抜けスベーサーの隙間をぬって排出され 2 るo な お 、 セ ル の 有 効 膜 面 積 は 60cm である o ポンプは揚水時に対象物質にせん断力が働かないようプランジャー式ポ 0型)を使用した o また、膜前後の圧力および循 ンプ(富士ポンプ製、 SHI0M1 幽 環流量を測定するため圧力センサー(キーエンス製、 FD‑P05、FDV70)2台と 帽 流量センサー(キーエンス製、 AP‑13S, Aト V80)を図 2 . 1の よ う に 配 置 し 、 膜 間差圧が見られるようにした O それらのデータは連続的にデータ収集システ ム(キーエンス製、 NRHA08、NR5 0 0 ) を通して PCに 取 り 込 め る よ う に し 幽 幽 た 。 化学物質の配管への移行を最小限とするため、配管等の接液部には、ステ ンレス SUふ 316製 、 テ フ ロ ン 製 、 一 部 シ リ コ ン 製 の も の を 用 い た o また原液 を lヵ所ずつ取り付けた。また、 原 液 タ ン ク に は 、 容 量 2Lの概珪 クり /i¥ bf るようにテアロン製の三方コック ンよ 液 原 と透過液を適宜サンプリングでき 酸ガラス製試薬ピンを使用し、原 液タンクには図 2 . 3 に示すような キャップ 各ラインを通す穴の開いた口径 、 、、 / 〆/ 園II GL45サイズのキャップで蓋をし、 実験が閉鎖系で行えるよう工夫し タンク た。原液タンクは化学物質の光分 解を防ぐためアノレミホイノレで遮光 し、水浴させることで温度の変化 国 2 . 3:原漉タンク上部の構造 を抑えた。なお、実験中は原液タ ンク内の濃度が均一にかつ温度変化が抑制されるようスターラーで撹持した D 本研究では必要最小限の原液容積で実際の評価を再現できるよう、保持液、 8 0 透 過 液 の 両 方 を 原 液 タ ン ク に 戻 し 、 25Cの 全 循 環 モ ー ド で 実 験 を 行 っ た 。 2 . 2 低圧逆浸透膜 本 研 究 で は 低 圧 逆 浸 透 膜 と し て SU レG10{東レ(株)製}を使用した O SU レ G10 は 、 架 橋 ポ リ ア ミ ド 製 の 低 圧 逆 浸 透 膜 で あ る o 給 水 圧 力 0.75 MPa で 塩 阻 止 率 99.5%、 濃 縮 水 量 20L/minに 対 し 透 過 水 量 6 . 5m3/dayの 性 能 を 持 つ o SUL‑G10の 性 能 お よ び 操 作 条 件 を 、 表 2 . 1お よ び 表 2 . 2に示す。なお、 表 2 . 1: 本 研 究 で 使 用 し た 低 圧 逆 浸 透 (LPRO)膿 SUL‑G10の 性 能 電 気 電 位 法 に よ り 測 定 さ れ た SU レGIOの 等 電 位 点 は 2.6で あ っ た ホルムアルヂヒド 表 2 . 2:本研究で使用 紛 一6 9 9 9 0 0 0 0 ( 一9 9 9 9 7 4 9 9 率 一9 9 9 9 4 8 4 2 食 尿素 間血一 クエン酸 酢酸 エチレンジアミン 止一 原 一 グルコース 2β55 H 一 5558 ・ nv‑nopononJhqdnUFO U 1 液 一 阻止物質名 NaCI MgS04 1 )。 した低圧逆浸透 (LPRO)膜 SUL‑G10の 操 作 条 件 操作条件 圧力 原液温度 原液pH(洗浄時) 原液pH(運転時) 濃縮水量/透過水量 標準運転範囲 1 . 0MPa < <35O c 3 . . . . . . 9 2 . . . . . . . 1 1 >6 膜 は A 4サイズで、 500‑1, 000ppmの 重 亜 硫 酸 ナ ト リ ウ ム を 含 ん だ 超 純 水 中 に保存されている O 実験前に保存液の除去を目的として超純水中で浸漬洗浄 した後、ポリエチレン製の袋に入れ、透過スベーサーと洗浄後のピンセット で型をとり、その後アセトンと超純水で洗浄したはさみを用いて整形したo 整形した膜は超純水中に保存し、一週間以内に使用した O な お 、 本 研 究 で 使 用 し た 超 純 水 は ADVANTEC社 cpw200超 純 水 製 造 装 置 皿 に よ り 製 造 し た MillQ 水(尋問 MQ/cm)で、ある 帽 9 O 2 . 3 対象化学物質の選定 フ ァ ウ リ ン グ 評 価 実 験 を 行 う に あ た り 、 ま ず NOMの 前 駆 物 質 を 数 種 想 定 し、更にそれらの構成単位と考えられる構造が比較的簡単な化学物質を選定 す る こ と と し た また、これらの化学物質とともに実際の NOMも採用した。 O こ こ で は 本 研 究 で 実 施 し た 化 学 物 質 の 選 定 経 緯 と 、 使 用 し た NOMについて 述べる。 2 . 3 . 1 対象化学物質の選定 対 象 化 学 物 質 を 選 定 す る に あ た り 、 以 下 の 3点に注目した O ( 1 )水中に存在する NOM構 成 単 位 の 候 補 と し て 考 え ら れ る 物 質 ( 2 )フ ァ ウ リ ン グ を 起 こ す と 考 え ら れ て い る 化 合 物 の 構 成 単 位 で あ る 物 質 ( 3 )そ の 単 体 の 持 つ 官 能 基 が フ ァ ウ リ ン グ に 影 響 を 与 え る 可 能 性 が あ る と の 情報が存在する物質 まず、低圧逆浸透膜処理において、ファウリングの可能性があると考えら れ て い る の は NOM の 中 で も COM ( C o l l o i d a lO r g a n i cM a t t e r )と DOM ( D i s s o l v e dO r g a n i cM a t t e r )の部分である。 COMの前駆物質としては多糖類、 アミノ糖、タンパク質(ペプチド)が考えられる O また、 DOMの前駆物質とし ては縮合タンニン、テルベノイド、続いてリグニンやタンパク質があげられ る 2 )。 タ ン ニ ン 、 テ ル ベ ノ イ ド お よ び リ グ ニ ン は 主 に 陸 生 高 等 植 物 中 の 葉 や 幹に由来し、ペプチドグリカン、多糖類、アミノ糖、テルベノイドおよびタ ン パ ク 質 は 主 に 微 生 物 細 胞 壁 の よ う な 生 物 組 織 に 由 来 す る と い わ れ る o そこ で水中に存在する COMおよび DOMの 由 来 と し て 陸 生 植 物 由 来 の も の と 藻 類 やプランクトンによる排出物や老廃物由来のものに特に注目した まず、陸生植物由来の成分 2 )として表 ンニンには主として m p h e n o lが含まれる 岬 O 2 . 2 に示す 3種類をあげた。縮合タ 3)との報告があるため r e s o r c i n o lを まず縮合タンニン由来物質の候補として選定した。続いて、 UF膜 フ ァ ウ リ ン グに関する報告ではあるが、フミン質中に存在するフェノールおよびカノレボ キシル基が膜に吸着するとの報告があるのこと、水環境中に存在する芳香族 1 0 酸は、リグニンやその他の植物細胞組織からの分解生成物であるといわれる 3 )ことをふまえ、芳香族酸の t r i m e s i ca c i dを選定した o また、フェノール性水 酸基およびカノレボキシル基をもっ v a n i l l i ca c i dは リ グ ニ ン に 由 来 す る と の 報 告もある 5 )ことから、 v a n i l l i ca c i dを選定した o 続いて、藻類やプランクトン由来の成分 2)として表 2 . 4に示す 2種類をあ げた。まずアミノ駿はタンパク質の構成単位であり陸生植物、土壌有機物、 藻類、水生植物、堆積物など、様々なものに由来する o 潟水においては富栄 養化時に溶存アミノ酸が増加することから、アミノ酸は藻類の生産力によっ て 存 在 量 が 大 き な 影 響 を 受 け る 成 分 で あ る と も 考 え ら れ る o また、タンパク 質 中 に 存 在 す る ペ プ チ ド は COMを構成するものであり、 COMは 膜 表 面 で ゲ ノレ層を形成しファウリングを起こす原因となると考えられている O そこで COMによるファウリングを追う基礎的検討を目的として、アミノ酸残基によ る影響を考察するため、本研究では中性分岐鎖アミノ酸である L ‑ l e u c i n eを 選 定 し た 。 最 後 に 本 研 究 で は 、 単 糖 で あ る L‑fucoseを 選 定 し た 。 こ れ は 、 多 糖類の一部もペプチドを持つ物質問様コロイド状で存在するが、単糖である L‑fucose は 褐 藻 に 含 ま れ る 吸 湿 性 の 強 い 粘 性 多 糖 フ コ イ ダ ン の 主 な 構 成 成 分 であることによる。よって Ll e u c i n e同様に COMフ ァ ウ リ ン グ の 基 礎 的 検 討 耐 を目的として ιfucoseを選定した o 表 2.3:選定した対象化合物質 ( 1 ) 限研 寝室雇璃 r e s o r c i n o / 構造式 1¥ 山 一 一¥/ 分子量 水 溶 解 度 (mg/し ) logK僻 pka ヘンリ一定数 (atm, m 3!mo ) l t r i m e s i ca c i d 妥(~ v a n i l l i ca c i d …-ßL~ HOOC/¥〆 ¥ C O O H ¥ 一 /一 1 1 0 . 1 1 7 . 1 7x1 05 0 . 8 9 . 3 2 2 1 0 . 1 4 2 . 6 3x1 04 1 . 6 4 3 . 1 2 1 6 8 . 1 5 1 , 5 必 1 4 . 5 1 9 . 8 8x1 0・1 4 . 3 9x1 0‑ 1 7 6 . 6 7x1 0‑ 1 3 1 1 ∞ 表2 . 4 :選 定 し た 対 象 化 学 物 質 ( 2 ) 露錨 藻類・プランクトン Lー しeucine COOI→ 構造式 L聞 干 CH~ I~ 一CH‑CH2‑CH‑CH3 H 2N一 1 31 .1 8 2.15x104 0 . 8 2 . 3 5 . 9 . 6 0 分子量 水溶解度 (mg/し ) logKow pKa ヘンリ一定数 (atm.m3 / l ) mo 1 6 8 . 4 3 . 4 9x1 0‑9 2 . 3 . 2 NOMの 選 定 ( 1 ) 琵 琶 湖 NOM(LBNOM) 実際の水試料によるファウリング状況を検討するため、本研究では琵琶湖 南 湖 の 水 を 試 料 に 選 ん だ 。 採 水 位 置 は 大 津 市 な ぎ さ 公 園 の 東 沖 合 い 50m、水 深 約 2 mの 琵 琶 湖 の 出 口 に 近 い と こ ろ に あ る o な お 、 琵 琶 湖 に は 約 1 20本の 一級河川が琵琶湖に直接流入している。一方、流出河川は瀬田 J 1 [と琵琶湖疏 水のみであるがその水は京阪神の約1.400万 人 の 人 々 の 飲 料 水 な ど に 利 用 さ れている向。 ( 2 ) SuwanneeRiverNOM(SRNOM) 高濃度の NOM を 処 理 す る こ と に よ り 、 膜 を フ ァ ウ リ ン グ さ せ 、 そ の と き 膜に残った成分から、膜に残りやすい成分について検討することを目的とし て 20mgC/Lの SuwanneeR i v e rNOM を 調 整 し て 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 を 行 っ た o SuwanneeRiverNOMは、国際腐植物質学会 ( I n t e r n a t i o n a lHumicS u b s t a n c e s S o c i e t y :IHSS) か ら 頒 布 さ れ て い る 参 照 物 質 で あ る o IHSSに よ り 、 公 表 さ れ 1 2 ている NOMの 抽 出 法 7 )によると、 NOMの抽出は原水を1.0μmと 0.4μmの ポリプロピレンフィルターでろ過し、イオン交換をして陽イオンを除き、低 圧逆浸透膜で濃縮し、さらに、膜に吸着したと考えられるフミン酸に関しで . 0 1Nの NaOHで定期的に回収した後、イオン交換して陽イオンを除き、 も0 それらの両方を凍結乾燥させることにより作成したとある。 S u w a n n e eR i v e r原水の pHが 3 . 9 3で あ る こ と 、 ま た ピ } ト 由 来 の 成 分 を 多 く含む水であることからも、 B本 で の 水 環 境 中 に お け る NOM とは組成など が異なると考えられる O しかし、膜に付きやすい成分についての基礎的検討 を行うためには意義があると考えられる o なお、本研究ではフミン質以外の 成分に関しでも検討を行えるよう、 NOMを す べ て 溶 か し た も の を 試 料 と し て 用いた。表 2 . 5に S u w a n n e eR i v e rNOMの 元 素 組 成 を 示 す 7 )。 表 2 . 5 :SuwanneeR i v e rNOMの 元 素 組 成 C O N 4 8 . 8 3 9 . 7 1 . 0 2 ぬ 一G A一 7 元案 重量 wt% T o t a l 1 0 1 . 1 2.4 フ ァ ウ リ ン グ 評 価 方 法 本 研 究 で 実 施 し た フ ァ ウ リ ン グ を 評 価 す る た め の 方 法 を 図 2.4 に示す。ま ず、水処理において問題となるのは、処理水が出なく(得られなく)なること である。第 1章1.1で示したようにファウリングの評価方法は様々であるが、 本 研 究 で は 透 過 流 束 の 低 下 か ら フ ァ ウ リ ン グ を 評 価 す る こ と と し た o この方 法には二通りある。本研究では保持液、透過液を原液タンクに戻す全循環方 式 で 実 験 を 行 っ た 。 こ の 場 合 透 過 流 束 は い ず れ 一 定 値 と な る o 一つ目は、そ の一定となった透過流束( C )が 初 期 透 過 流 束 (Co)に 比 べ て ど れ だ け 減 少 し た か( C /Co)で 評 価 す る 方 法 、 も う 一 つ は 透 過 流 束 が 一 定 と な る ま で 経 時 的 に 変 化を追う方法である O 本研究では、低圧逆浸透膜におけるファウリング現象の基礎的研究として、 対 象 化 学 物 質 お よ び 選 定 し た NOMが単独で透過流束を経時的に低下させう る も の で あ る か ど う か を 観 察 す る こ と と し た そして 24時 間 以 内 に 透 過 流 東 O の低下が観られた物質をファウリングにつながる現象を引き起こす物質と考 え 、 フ ァ ウ リ ン グ 原 因 物 質 の 候 補 と し て あ げ る こ と と し た o しかし、流束の 1 3 低下を引き起こさなくとも、膜に吸着し、原液濃度を減少させる物質が存在 する可能性がある O この物質は、長時間膜処理することでファウリングの原 因の原因になるもしくはファウリングを助長する物質である可能性がある o よって、膜に吸着する物質をファウリングに関与する可能性のある物質と位 置づけ予備候補物質とした。 対象物質を逆浸透膜処理する ファウリング物質の 候補としてあげる ファウリング物質の 予備候檎としてあげる 国 2 .4:本研究で採用したファウリングを静価するための方法 2 . 5 低圧逆浸透膜処理実験操作の手順、使用試薬および分析装置 第 3章 お よ び 第 4章 で 詳 述 す る 実 験 操 作 の 概 要 の フ ロ ー チ ャ ー ト を 図 2 . 5 に示す。なお、サンプルの濃度測定は、 2 . 3 . 1で 選 定 し た 各 対 象 化 学 物 質 に 関 しては LC/MS/MS(液体クロマトグラフ/タンデム質量分析装置)を使用し、 2 . 3 . 2で述べた NOMに 関 し て は 全 有 機 体 炭 素 計 お よ び 吸 光 光 度 計 を 用 い て 測 定した。なお、本実験で用いた試薬および装置についてまとめたものをそれ ぞれ表 2 . 6、表 2 . 7に示す。 1 4 試料溶液の調整 pH、イオン強度 およびタンク重量計測 試料溶液の通水開始 サンプル採取 試料水の pH、イオン強度 およびタンク重量計測 サンプルの希釈 対象化学物質:し C/MS/MS測定 NOM :TOC.吸光測定 国 2 . 5 :低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 実 験 操 作 の フ ロ ー チ ャ ー ト 表2 .6 : ; 本研究で用いた眠薬 試葉 詳細 t r i m e s i ca c i d v a n i l l i ca c i d r e s o r c i n o l L‑Ieucine L‑fucose methanol a c e t o n i t r i l e f o r m i ca c i d 20%ammonia acetone Wako,和光特蔽 >98弘 A l d r i c h註97% Wako,和光特級迄 99覧 Wako,和光特級迄 99覧 SIGMA迄99% LC/MS用 Wako, Wako し ,C/MS用 Wako, LC/MS用 sodiumh y d r a t e Wako和光特級註 96弘 h y d r o c h l o r i ca c i d Wako,和光特級, 35.0‑37.0% 多摩化学工業株式会社高純度分析グレード Wako,和光特級迄 9 9 . 5% 表2 .7:本 研 究 で 用 い た 分 析 装 震 分析装置 pHメーター 電気伝導度計 紫外吸光光度計 蛍光分光光度計 全有機炭素計 高速液体クロマトグラフ 質量分析計 註組 RADIOMEγERCOPENFAGEN TOA CM‑5S, UY‑2500PC,SHIMADZU F‑4500.HIT ACHI TOC‑YcPH/5000A,SHIMADZU A l l i a n c e2 6 9 5 .Waters Quattrom i c r o™ API 1 5 第 3章 対象化学物質によるファウリングの評価 本 章 で は 、 ま ず 第 2章 で 選 定 し た 対 象 化 学 物 質 の 調 整 方 法 と 膜 処 理 実 験 の 詳細及び分析方法について説明する。そして実験結果に基づいて考察を行う o 3 . 1 試料溶液の調整方法 逆 浸 透 膜 処 理 に お い て は 、 試 料 溶 液 の pHの 相 違 に よ り 化 学 物 質 の 物 理 化 学的特性や膜の荷電性等が変化し、阻止率や膜への吸着量に影響が出る o ま た イ オ ン 強 度 に よ り 膜 に か か る 浸 透 圧 等 が 変 わ っ て く る o したがって、試料 溶 液 の pHとイオン強度を十分考慮、して調整した上で実験を行うべきである o 本研究では、実際の水環境に近い条件を想定し、 pHを 7 . 0土 0 . 5に調整する こ と と し た 。 ま た 、 イ オ ン 強 度 の 調 整 に 関 し て は NaCl を用いて調整するこ と を 考 え た が 、 対 象 化 学 物 質 の 分 析 に LC/MS/MS を用いる際、 NaCl は不揮 発性の塩であるためイオン化が抑制されてしまうことから、イオン強度を NaClを 利 用 し て 調 整 す る こ と は 困 難 で あ っ た 。 し た が っ て 、 本 研 究 で は イ オ ン強度は電気伝導度を測ることによって把握はしたが、対象化学物質問で条 件の調整は特に行わなかった o 試料溶液の作成法はまず、1.0mmolの 試 料 を 精 密 電 子 天 秤 (SHIMADZU製 、 AX200)で 量 り と り 、 そ れ を 容 量 2L 三 角 フ ラ ス コ 内 で 30分 以 上 曝 気 し 大 気 平 衡 さ せ た 250Cの 超 純 水 で 2Lにメスアップし、 0 . 5m Mの溶液を 2L作成し た。その後、 0 . 1N の NaOHを用いて pH7 . 0土 0 . 5に 調 整 し た 。 こ れ を 低 圧 逆 浸透膜による膜処理実験の初期試料溶液とした。 3 . 2 低圧逆浸透膜処理実験の方法 まず本研究では、常に新しい膜を使用することとした。これは、前に行っ た低圧逆浸透膜処理実験で用いた化学物質が混入すること、膜の除去特性が 変化すること等が考えられたことによる。前処理として、膜洗浄の目的で、 圧 力 を か け ず に 1L の 超 純 水 を 循 環 さ せ ず 一 巡 さ せ て 捨 て 、 次 に 膜 内 部 の 重 亜 硫 酸 ナ ト リ ウ ム の 除 去 お よ び 膜 の 安 定 化 を 目 的 と し て 、 容 量 lL の試薬び ん に 入 っ た 超 純 水 を 30 分 間 圧 力 を か け ず に 循 環 さ せ 、 そ の 後 圧 力 を 0 . 3MPa に調節して 30分照循環させた。このとき、透過流束が通常どおり得られてい 1 6 るかを確認した。 3 0分 後 、 圧 力 を 開 放 し て 管 内 に 残 る 超 純 水 を 空 気 で 押 し 出 す こ と に よ り で き る 限 り 回 収 し 、 原 液 タ ン ク を 試 料 の 入 っ た 2Lの 試 薬 ピ ン に 交 換 し た o 交 換後、まず試料溶液の管内濃度を一様にする目的で 3 0分圧力をかけずに循 . 3 MPaま で 上 げ た 。 こ の と き を 操 作 開 始 ( 0時 環させた。その後、圧力を 0 . 3L/minであった o また、膜処理 間)とした o な お 、 こ の と き の 循 環 流 速 は 1 実験中入口圧力が変化した場合には圧力調整バルブの微調整を行い、入口圧 力を一定に保持するようにした。 試料溶液は、試料調整時の原液タンク内の濃度を原液タンク内初期濃度と し、これを Cint (mM)とおいた o 原液タンク側を開始。、 2、4、 札 口 お よ び 24 時間後に、透過液側を開始。、 0 . 5、 l、1.5、 2、4、 札 口 お よ び 2 4 時間 . 1)、それぞれ対象化学物質の濃度 後にそれぞれ三方コックから採水し(図 2 を 測 定 し た 。 な お 、 透 過 液 側 に 関 し て は 、 各 採 水 時 間 に 1分間ずつ採水し、 サンプノレの重さを量ることにより透過流束を測定した o なお、本研究では、 一連の操作は 2 5Cの 恒 温 室 内 で 行 っ た o こ れ は 水 の 粘 性 変 化 に よ る 影 響 を 防 0 ぐためである。実験を等温下で行った上、透過流東や濃度の絶対値を特に必 要とするわけではなく、これらの値の時間経過に伴う相対比較が重要である と考えた。そこで、試料溶液の密度については簡素化のため 1g/mLとして補 正することとした o 実験開始 2 4時間後の透過液をサンプリングした時を終了時間とし、圧力を 開 放 し 試 料 溶 液 を 空 気 で 押 し 出 し 可 能 な 限 り 回 収 し た o その後、平膜型テス トセノレから膜を取り外した後、再び平膜型テストセルのみを装置に取り付け 管 内 に 残 る 試 料 溶 液 の 回 収 お よ び 膜 以 外 φ箇 所 に 吸 着 し た 試 料 溶 液 を 回 収 す るため、 lLの超純水を 3 0分 間 循 環 さ せ た G その後、超純水を回収した後、 1 .0X 1 0 ‑4N の NaOH溶 液 lLを 3 0分間循環させ更に洗浄した。なお、次の実 験の前には、 5Lの純水を循環させず捨てることにより管内を洗浄した。 3 . 3 対象化学物質の分析方法 3 . 3 . 1 分析装置 上 記 の 対 象 化 学 物 質 の 濃 度 測 定 は す べ て LC/MS/MS ( W a t e r s,A l l i a n c e 2 6 9 5 1 7 および Q uatroMicroAPI)を用いて行った。本研究では、低圧逆浸透膜処理 におけるファウリング原因物質を検討するための基礎的研究として各対象化 学物質単独で、の評価しか行わなかったが、実際の低圧浸透膜処理においては、 多種多様な NOMが 混 在 し て い る 水 を 対 象 と し て い る こ と か ら 、 今 後 は 、 混 在しているものから各対象化学物質を分離して分析することが必要になって くるものと考えられる こ の よ う な 場 合 に は 、 そ の 分 析 手 段 と し て LCによ る分離技術が必要となる o し た が っ て 、 本 研 究 で 実 施 す る 分 析 方 法 お よ び 結 果はそれに向けた基礎的データの蓄積と位置づけ、対象化学物質の溶液中濃 度を LC/MS/MSで測定することとした。 LC/MS/MSは 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー (HPLC)、直結した二台の質量分 析 計 (MS)、 お よ び こ れ ら を 結 び つ け る イ ン タ ー フ ェ ー ス の 部 分 と で 構 成 さ れ る まず、 LCカ ラ ム の 部 分 で 固 定 相 と 移 動 相 に 対 す る 親 和 力 の 違 い に よ り 溶 O 質 が 分 離 さ れ る 。 続 い て イ ン タ ー フ ェ ー ス の 部 分 で イ オ ン 化 さ れ 、 第 1の質 量分析計に導入される o 第 2の 質 量 分 析 計 で 目 的 の 特 定 イ オ ン 種 の み が 選 択 される o 第 lと第 2の質量分析計聞に設置された衝突活性化室(コリジョンセ ノレ)でこの特定イオンを更に解離させられることにより生成したプロダクト イ オ ン の ス ベ ク ト ル を 第 2の 質 量 分 析 計 で 測 定 す る こ と も 可 能 で あ る 。 各 質 量分析計では、質量数/電荷 ( m / z )比によって試料中の溶質の定性、定量を行う ことが可能である o まず HPLCで は 回 定 相 と 移 動 相 を 組 み 合 わ せ る こ と に よ り 固定相の極性 が移動栢の極性より高い順相モードと、移動相の極性が固定相より高い分離 系である逆相モードの中から適切な分離モードを選ぶことができる。 イオン化においてはソフトなイオン化法であるエレクトロスプレーイオ ン化 ( E l e c t r oSprayI o n i z a t i o n : ESI)法 を 使 用 し た o ESI法 で は 、 試 料 溶 液 が 高 幽 電圧に印加されたキャピラリーを通り大気圧下で静電噴霧され、高度に帯電 した液滴となる。その後、液滴表面から溶媒の蒸発が起こって液滴が細分化 されることにより、電荷が対象分子に移り対象分子がイオン化される。また、 本 研 究 で 使 用 し た 質 量 分 析 計 は 4本 の 円 柱 状 電 極 か ら な る 四 重 極 型 の も の で あった O 1 8 3 . 3 . 2 LC/MS/MS分 析 条 件 の 最 適 化 LC/MS/MSでの分析を行うために、まず各対象化学物質のみを水に溶かし、 MS/MS に 直 接 サ ン プ ル を 導 入 す る フ ロ ー イ ン ジ ェ ク シ ョ ン 法 を 利 用 し て イ オン化の確認をした。水に溶かすだけではイオン化しない物質も存在したが、 ア ン モ ニ ア を 添 加 し pH を 上 げ る こ と で そ れ ら の 物 質 に お い て も イ オ ン 化 を 確認することができた o 逆相 HPLCに お い て は 解 離 し た イ オ ン 性 、 あ る い は 極 性 を 有 す る 物 質 は 疎 水性の強い国定相に保持されにくい。そのため、カノレボン酸のような酸性物 質 で は 移 動 相 の pHを下げ、またアミンのような塩基性物質では pHをあげて 溶質のイオン化を抑制することで固定相への保持を大きくするイオン制御法 を と る 。 一 般 に 弱 酸 お よ び 弱 塩 基 は pKa土 l の 範 囲 で 緩 衝 能 力 を 持 つ と い わ れ る た め 、 逆 送 HPLC に よ り 効 率 よ く 分 離 す る た め に は 移 動 相 の pHをでき る だ け 対 象 化 学 物 質 の pKa土 l の 範 囲 外 に 調 整 す る こ と が 望 ま し い 。 本 研 究 では v a n i l l i ca c i dと t r i m e s i ca c i dは 1 % formica c i dを使用することにより、ま た L leucine、L‑fucose、 お よ び r e s o r c i n o lに関しては 0 . 0 5 % ammoniaを、解 間 離を抑制するためにそれぞれ使用した。 逆相 HPLCで は 疎 水 性 充 填 剤 と し て C18基をシラノーノレ結合した ODSシ a n i l l i ca c i dと t r i m e s i ca c i d リカが固定相としてよく使われる o 本研究では、 v の分析にも、 Waters製 C18系の分析カラム SunF i r eを使用した。ただし、シ リ カ ゲ ル ベ ー ス の 充 填 剤 の 使 用 可 能 pH範 囲 は 2‑ ‑8 . 5 であり、この範囲以外 ではシラノール結合およびシリカゲルが分解する o そのためこの範囲以外で はポリマーゲノレをベースにしたものやシリカゲル表面をシリコーンポリマ} でコートしたカプセノレ型などを使用す~必要がある。本研究では、 0.05% ammonla を 添 加 し た 場 合 に 定 量 性 が 向 上 し た L‑leucine、L‑fucose、 お よ び r e s o r c i n o l の分析に関してはポリマー系の糖分析用カラム(昭和電工製、 AsahipakNH2ト 50シ リ ー ズ ) を 使 用 し た c 最終的には質量分析計のポジティブモードとネガティブモード両方にお いて最適な親イオンと娘イオンを探索し、移動相の水相と有機溶媒相の混合 割合を最適化した O 本研究において最適化した分析条件を表 3 . 1 に示す。 1 9 表3 . 1: し C/MS/MS分析における最適分析条件 現豪砺賓客 移動棺 ( v o l 九 ) l : l : e u c i n e Ll 町 c i n o l r e s a c e t o n i t r i l e 7 5 a c e t o n i t r i l e 7 5 0 . 0 5覧a n m o n i a2 5 0 . 0 5%a n m o n i a2 5 v a n i l l i ca c i d t r i m e s i ca c i d w a t e r 2 0 w a t e r 4 5 4 5 m e t a n o l 7 0 m e t h a n o l . 1 %f o r m i ca c i d1 0 0 . 1 %f o r m i ca c i d1 0 0 時 ,古監 注入量 使用カラム イオン化モード 窺ィ~ン(m/Z) 議イオン( m / z ) c o n ev o 民a g e ( V ) c o l l i s i o n盟主魁必 u n F i r e W a t e r s,S 5 . 0 m,C18 2 .1x1 5 0mm ES ト 部9 . 0 1 2 0 . 9 2 5 1 5 u n F i r e W a t e r s,S 5 . 0 m,C18 2 . 1x1 5 0mm ESJ‑ 1 6 7 . 0 1 . 9 1 5 2 0 1 0 0 . 2m l / m i n 1 0 I s a h i p a k S h o d e x,A NH2P‑50 2 . 0 X1 5 0mm ES ト . 7 1 0 8 制 . 7 3 0 1 0 S h o d e x,A s a h i p a k NH2P 一部 2 . 0 x1 5 0mm ES ト 1 2 9 . 9 6 7 . 3 3 5 1 5 L‑fu ∞se 注r i l e 7 a c e t o n 5 0 . 0 5%a n m o n i a2 5 S h o d e x,A s a h i p a k NH2P一回 2 . Ox1 5 0mm ES ト 1 6 2 . 9 8 8 . 7 1 5 5 3 . 4 実験結果および考察 ここではまず各対象化学物質溶液を低圧逆浸透膜処理実験を行った場合の 透過流束の経時変化について述べ、その後膜への推定吸着量、原液中濃度の 経時変化、および見かけの阻止率に関する結果を記述する。そしてこれらの 結果に基づいてファウリングに関して考察を行う o 3 . 4 . 1 イオン強度 対 象 化 学 物 質 を 溶 か し た 水 溶 液 を pH7 に 調 整 す る た め に 入 れ た 0 . 1N の NaOH の 量 は 対 象 化 学 物 質 に よ っ て 異 な る 。 す な わ ち 、 初 期 イ オ ン 強 度 が 対 象化学物質問で異なる。本研究では溶液を作成し、 pH調 整 を 行 っ た 後 の イ オ ン 強 度 を 把 握 す る た め に 、 電 気 伝 導 度 計 (CM園児, TOA)を 用 い て 電 気 伝 導 度 を 計 測った。なお、この電気伝導度計を用いて NaCl溶 液 の イ オ ン 強 度 I(mM) ( 算値)と電気伝導度 E(mS/m)(測定値)の関係、を求めると、次式が得られた o l o g l田 1 .0437xl o gど‑1.1 0 7 8 2 (R=0.9998) ( 3 . 1 ) 式( 3 . 1 )に 電 気 伝 導 度 計 を 用 い て 求 め た 各 対 象 化 学 物 質 溶 液 の 電 気 伝 導 度 を 代 入して、イオン強度を NaClに 換 算 し た 値 と し て 求 め た 。 そ の 結 果 を 表 3 . 2に 示す。 20 表 3 . 2:対象化学物質溶液のイオン強度 (mM) (NaCI換 算 値 ) 対象化学物質名 NaCI 換算イオン強度 (mM) t r i m e s i ca c i d v a n i l l i ca c i d r e s o r c i n o l L‑fucose L‑Ieucine 1 . 4 0 9 0 . 3 4 9 0 . 0 1 9 0 . 0 2 7 0 . 0 2 2 3 . 4 . 2 透過流東の経時変化 図 3 .1' " ' ‑ ' 図 3.5 に 各 対 象 化 学 物 質 溶 液 に 対 す る 透 過 流 束 (Flux)の経時変化を 示 す 。 な お 、 本 研 究 で は 透 過 流 東 は 式( 3 . 2 )で 定 義 し た o 透過流束( c m / s ) サンプリング量( g ) 出 ( 3 . 2 ) 図 3 .1 ' " ' ‑ ' 図 3.5 より、 2 4時 間 で 透 過 流 束 が 著 し く 減 少 し た よ う に 見 受 け ら 図 3.5) に関して、 0.5 時 間 目 の デ ー タ が 他 の 値 れ る 物 質 は な い o L‑fucose ( より少し高くなっているが、もしこのデータがファウリングによる透過流東 の低下に起因するものであれば、その後透過流束は徐々に減少するはずであ るo しかし、 1時間後以降もほぼ変化はないことから、 0.5時 間 後 の 高 い 透 過 流束の値は、十分に膜が平衡化されていなかったことによるものと考えるの が妥当である。よって、本研究で選択した対象化学物質は透過流束の経時変 化を測定した結果からは、設定条件下ではファウリングが起こらなかったと 言える o 2 1 3 . 0 2 . 5 (ω¥EO)vSE 2 . 0 . ・ .•• • • 置 1 .5 1 .0 0 . 5 0 . 0 6 O 1 2 1 8 24 Time( h ) 図3 . 1: t r i m e s i ca c i d溶液を逆浸透膜ろ過処理をした際の透過流東の経時変化 3 . 0 自 2 . 5 瞳 .. 聞 聞 2 . 0 1 .5 ︾ ¥EO) S E (出 • • ー 1 .0 0 . 5 0 . 0 O 6 1 2 1 8 24 Time( h ) 図3 . 2 :v a n i l l i ca c i d溶液を逆浸透膜ろ過処理をした際の透過流束の経時変化 2 2 3 . 0 2 . 5 コ 一 比 (ω¥ε0)X 2 . 0 ・. 橿・ . • ‑ 橿 1 .5 1 .0 0 . 5 0 . 0 2 0 1 5 1 0 5 O Time( h ) 図3 . 3 :r e s o r c i n o l溶液を逆浸透膜ろ過処理をした際の透過流束の経時変化 3 . 0 2 . 5 圃 ‑ 園田園田園 c ; ;2 . 0 ε ¥¥ • • • • ー • 橿 . 3 .1 . 5 X コ L L . . 1 .0 0 . 5 0 . 0 O 1 2 6 1 8 24 Time( h ) 図3 . 4 :L‑ I e u c i n e溶液を逆浸透膜ろ過処理をした際の透過流東の経時変化 2 3 3 . 0 医 2 . 5 瞳 ‑ (ω¥ε0)X3E • .・圃闇 圃圃 2 . 0 1 .5 1 .0 0 . 5 0 . 0 1 2 6 O 1 8 24 Time( h ) 図 3 . 5 :L‑fucose溶液を逆浸透膜ろ過処理をした際の透過流東の経時変化 踊洗浄により回収した量 ロ原液タンク内の量 1 .2 1 .0 I 0.8 206 回 0 . 4 0 . 2 0 . 0 t r i m e s i ca c i d v a n i l l i ca c i d r e s o r c i n o l L‑leucine 図 3 . 6:逆浸透膜処理後の各対象化学物質の回収率 24 し .‑fucose 1 . 2 1 . 0 置 ぢ0 . 8 史0.6 permeate + ‑ ' o 0.4 0 . 2 0 . 0 O 6 12 1 8 24 Time( h ) 図3 . 7 :trimesica c i d試 料 溶 液 ( 0 . 5mM)の 原 液 中 お よ び 透 過 液 中 濃 度 の 経 時 変 化 1 .2 「 ぢ0 . 8 三06 • ••• 4J p e r m e a t e o 0.4 0 . 2 0 . 0 O 6 1 2 1 8 24 Time( h ) 図3 . 8 :v a n i l l i ca c i d試 料 溶 液 ( 0 . 5mM)の 原 液 中 お よ び 透 過 液 中 濃 度 の 経 時 変 化 25 1 . 2 1 . 0 ‑ ‑ ぢ0 . 8 国 、 Q E + 3 06 司 J ' 0 . 4 0 . 2 0 . 0 O 6 1 2 1 8 24 T i m e( h ) 図 3.9:resorcinol試 料 溶 液 ( 0 . 5mM)の 原 液 中 お よ び 透 過 液 中 濃 度 の 経 時 変 化 1 . 2 1 .0 ぢ0 . 8 g06 キJ o 0.4 0 . 2 0 . 0 O 6 1 2 1 8 24 T i m e( h ) 図 3.10:L‑Ieucine試 料 溶 液 ( 0 . 5mM)の 原 液 中 お よ び 透 過 液 中 濃 度 の 経 時 変 化 26 1 . 2 1 . 0 ぢ0 . 8 g 0 6 . , o 0.4 0 . 2 0 . 0 O 6 1 2 18 24 T i m e( h ) 図 3 . 1 1: L‑fucose試 料 溶 液 ( 0 . 5mM)の原液中および透過液中濃度の経時変化 100 75 詰 重 訴 量 さ 50 t r i m e s i ca c i d ¥ 一 ノ r e s o r c l n o 25 140 }自官一一 120 分 100 明子 o 180 200 図 3.12:対象化学物質問の見かけの阻止率の比較 27 220 3 . 4 . 3 膜への吸着量の推定 膜に吸着した対象化学物質量の推定を行うために、処理前の原被タンク内 の 対 象 化 学 物 質 量 を lと し て そ れ に 対 し て 処 理 後 の 原 液 タ ン ク お よ び 装 置 内 から回収した溶質量の割合(回収率)を算出した(図 3 . 6 )。なお、図 3 . 6に示 す処理後の質量の割合(回収率)は次式により求めた。 回収率む) 日処理後の原液タンク骨量( m m o l ) +超純水による洗滑 6 分間)で回収した最l m o l ) 処理前原液タンク内 i あった量m m o l ) 口 ( ラ ( : 刈ω 可 ;(刈 0 C κ ( ( ; ( 0 刈口 口 1 T 九日恥凶 ( 3 . 3 ) p :水の密度 ( g / m L )(=1g / m L ) Cint : 試 料 溶 液 調 整 直 後 の 原 液 タ ン ク 内 の 濃 度 (mM) CFeed : 膜 ろ 過 処 理 終 了 後 の 原 液 タ ン ク 内 の 濃 度 (mM) CFlush : 超 純 水 洗 浄 後 の 洗 浄 タ ン ク 内 濃 度 (mM) V 。 :試料溶液調整後の原液タンク内水量 ( g ) V1 g ) :膜ろ過処理終了後の原液タンク内水量 ( V2 g ) :管内洗浄に用いた超純水量 ( 図3 . 6より、 v a n i l l i cA c i d、L‑fucoseに 関 し て は 膜 処 理 実 験 終 了 後 の 回 収 率 が 100%を 超 え た が 、 こ れ は 測 定 誤 差 の 範 囲 内 と 考 え ら れ 、 膜 に 残 っ た 物 質 はほぼなかったといえる。図 3 . 6か ら は 、 ど の 対 象 化 学 物 質 に つ い て も 膜 へ の 吸 着 は ほ ぼ な い と 考 え る の が 妥 当 で あ る 。 し か し 、 本 研 究 で 使 用 し た 5種 の対象化学物質の中では r e s o r c i n o lが 最 も 回 収 率 が 低 く 約 5%の減少が観測さ e s o r c i n o lは フ ァ ウ リ ン グ 原 因 物 質 の 候 補 と し て 更 な る 研 究 の 必 要 が あ れた。 r ると考えられた O 28 3 . 4 . 4 見かけの限止率 f e e d )と透過液 ( p e r m e a t e )中 の 対 象 化 学 物 質 濃 度 の 経 時 変 化 を 追 う こ と 原液( で膜への吸着の評価を試みた O その結果を図 3 . 7 " ' ‑ '図 3 . 1 1に示す。図 3. 7" ' ‑ ' 図 3. 1 1の デ ー タ を 基 に し て 見 か け の 阻 止 率 を 計 算 し た 結 果 を 図 3 . 1 2に示す。図 3 . 1 2より、見かけの阻止率は r e s o r c i n o l以外は良好であると言える。なお、 本研究では見かけの阻止率は式( 3 . 4 )で定義した。 C p e e r m ( 3 . 4 ) 釘 C f c 免巴吋 ( ο t ) R 見かけの阻止率ト) C p e r m e 透 過 液 中 対 象 化 学 物 質 濃 度 (mM) C f e e d ( t ) : 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 実 験 開 始 t時間後の 原 液 中 対 象 化 学 物 質 濃 度 (mM) これらのデータはイオン強度が同じではないため、直接比較することは難 しいが、図 3 . 1 2に 示 す よ う に 見 か け の 限 止 率 は 良 い 順 に t r i m e s i ca c i d(99.9%) > Lイucose (99.6%) > L ‑ l e u c i n e (99.6%) > v a n i l l i ca c i d (98.9%) > r e s o r c i n o l (76.7%)であった o か っ こ 内 の 数 字 は 低 庄 逆 浸 透 膜 処 理 実 験 開 始 24時間後の データを基に算出した値である o R e s o r c i n o l 以 外 の 物 質 は 95%以 上 祖 止 さ れ ている。 ポリアミド系の膜ではサイズふるいが支配的な阻止機構であるとの報告 がある 1 )。また Ozakiら 2)によれば、超低圧逆浸透膜である ES20(日東電工製、 ポリアミド系複合膜)による分離では、分子量 150以 上 の 物 質 の 見 か け の 阻 止 率が 90%を超えたとの報告もある。図 3 . 1 2より L ‑ l e u c i n eと v a n i l l i ca c i dを 比較すると、 L ‑ l e u c i n eの ほ う が 分 子 量 が 小 さ い の に v a n i l l i ca c i dよりも見か けの阻止率が高い結果が得られている。その理由としては、 L ‑ l e u c i n eのほう が v a n i l l i ca c i dよ り も 分 子 の 幅 が 大 き い 可 能 性 も あ る が 、 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 e u c i n e を処理した場合での時のほうが低 実 験 を 行 っ た 際 の イ オ ン 強 度 が Ll 四 か っ た た め で あ る 可 能 性 も 否 定 で き な い o イオン強度が低い場合、 L l e u c i n e 幽 自体の分子サイズが大きい一方、膜表面における電気的二重層が厚くなるこ 29 とにより膜の孔径が小さくなるため除去率が上がる可能性があり 3)、v a n i l l ic a c i dよ り も 見 か け の 阻 止 率 が 高 く な っ た と も 考 え ら れ る o 図 3 . 7 ' " ' ‑ '図 3 . 1 1 の結果の考察に戻る o これらは試料溶液調整時の原液タン ク内の濃度である C i n tに対する時間 tに お け る 原 液 お よ び 透 過 液 中 対 象 化 学 物 質 濃 度 C(t)の割合{C(t)/Cindの経時変化を表す。実験は全循環(すなわち、 透過液と保持液共に原液タンクへ戻す)モードで行っているため、 C(t)/C i n t が lを超えることはないはずであるが、何点か超えてしまったデータがある o これは、濃度の経時変化の測定に毎回ほぼ向量(約 3mg)のサンプノレを採取す ることにより、原、液タンクと透過液中に含まれる対象化学物質の全量の違い による濃縮の可能性がある o す な わ ち 、 あ る 時 刻 tにおいてサンプリングし て除いた試料中の濃度が低かった場合には、膜処理システム中に残存する対 4時間後の原水タ 象化学物質の濃度は棺対的に高くなることになる。しかし 2 ン ク 内 の 水 量 の 減 少 量 は せ い ぜ い 60mg前 後 で あ り 、 こ れ は 原 水 タ ン ク の 容 量 (2L) を 考 慮 す る と 無 視 可 能 な 量 だ と 考 え ら れ 、 濃 度 変 化 に 影 響 を 与 え る ほどであるとは言えない O また原液タンク内濃度が十分均ーになっていない 状態の試料溶液をサンプリングしてしまっている可能性もある O しかし、こ の l以上の値を生じさせた原因としては、 f e e d俣u の濃度を測定する際に本研 究 で 使用した LC/MS/MSの分析の都合上、各サンプノレを 5mg/L以下の濃度 になるよう(約 100倍)希釈してから分析したことによるものとも考えられる。 しかし、 C(t) /C i n tが 2 4時 間 を 通 じ で ほ ぼ 1か ら 変 わ ら な い も の は 、 ろ 過 膜 お よ び 管 内 へ の 吸 着 は 起 こ ら な か っ た 物 質 で あ る と み な せ る o図 3 . 7 ' " ' ‑ '図 3 . 1 1 を比較すると、 r e s o r c i n o l においてのみ原液中濃度が著しく (20%以上)低下し ていることがわかる O ただ、原液中濃度が減るにつれて透過液中濃度が増加 している o こ れ は 原 液 中 の 対 象 化 学 物 質 が 透 過 液 中 に 移 行 し た た め に 起 こ っ た結果である可能性を示唆する O しかし、本研究で使用した低圧逆浸透膜処 理装置において透過液は膜を出てから原水タンクへ戻るライン中に存在する だ け で あ り 、 容 積 と し て は 200mL程度でしかなく、残る 1800mLの溶液は 原液濃度として存在している。よって、原液側における濃度の減少分が透過 . 6より r e s o r c i n o 液 側 に す べ て 漏 出 し た と 考 え る の は 適 切 で は な い また、図 3 O の回収率は lではないことから、 r e s o r c i n o lに関しては、膜上および膜内部に 30 吸着している可能性があると言える O R e s o r c i n o l の見かけの阻止率が低かったことは分子ふるい効果によると考 えられるが r e s o r c i n o lが 膜 内 に 残 っ た 原 因 の ー っ と し て r e s o r c i n o lの pKaが pHア に 比 べ て 十 分 高 く 、 非 解 離 状 態 で あ っ た こ と が あ げ ら れ る o 本研究で用 いた逆浸透膜 る O s u レG10は pHzpcが 2.6であり、 pH7では膜は負に帯電してい そのため、 pH7付 近 で 負 に 帯 電 し て い る t r i m e s i ca c i dや v a n i l l i ca c i dは 膜の静電気的反発により高除去率が得られ、膜にも吸着しなかったと考えら れ る 。 本 研 究 で 選 定 し た 対 象 化 学 物 質 の う ち 、 pKa が 7 よ り 高 い も の は L‑fucose と r e s o r c i n o lがあげられる。 pH 7の 状 態 で L‑fucoseは非解離状態、で あ る た め 、 膜 面 で 静 電 気 反 発 を 受 け て い な い と 考 え ら れ る o しかし L‑fucose は極性が強い物質である。 Bruggen4)は、非解離状態、にある物質のうち双極 を持つ物質はこの双極子がポリアミド系膜の電荷に吸引され、膜構造の中に 入り込むと述べている。しかし、 L‑fucose は図 3 . 6 より膜への吸着は起こっ て い な い と 考 え ら れ る 。 こ れ は 、 解 離 し て い な い L‑fucoseは分子量が 150以 上でありほぼ膜内に入り込めず、膜表面上でのクロスフローにより堆積が抑 えられていると考えられる O また、 K i s 0 5 )は 溶 質 の 膜 へ の 吸 着 は 疎 水 性 が 強 い ほ ど 起 こ り や す い と 述 べ て い る o L‑fucose は 親 水 性 の 強 い 物 質 で あ る と 考 え られ、したがって膜との棺互作用は働かなかったとも考えられる。 一方、 r e s o r c i n o lが膜に吸着したのは非解離状態で存在し、膜に反発されず、 また分子量が小さいことから膜の内部に入り込むことができたと考えられる o また、 r e s o r c i n o lは極性をもっ O 非解離状態にある双極子をもっ物質は膜の電 荷により反対の電荷をもっ双極子が引き付けられて膜構造の内部に入り込み 透過するといわれるの。このように引き付けられ、始めは膜内部に入りこみ トラップされていた分子が徐々に透過液の流れ方向に運ばれ、透過液と膜の 界面において脱着するため、透過液側濃度が経時的に増えたと考えられる。 これと似た現象が他の研究者によっても報告されている。池嶋 7 )により nonylphenol が 解 離 定 数 (pKJ 以下の p百 で 膜 処 理 実 験 を 行 っ た 際 、 透 過 液 中の濃度はほとんど変化がないのに対し原液中濃度が低下したこと、木村ら めにより 2 ‑ n a p h t o lや 4‑phenylphenolに お い て 同 じ よ う な 現 象 が 指 摘 さ れ て い る 。 3 1 3 . 5 まとめ 本章では選定した対象化学物質がファウリング原因物質となるか否かを 検討することを目的として実験を行った。その結果より得られた知見につい て以下にまとめる o ‑ 本 研 究 で 対 象 化 学 物 質 と し て 選 定 し た 5物質について 24時間の低圧逆浸 透膜処理実験を行った結果、透過流東については変化は認められずファウ リングは起こっていないことがわかった。 ・ 対 象 化 学 物 質 5物質について、各物質の回収率を見かけの阻止率を測定し たところ、 r e s o r c i n o l について回収率、見かけの限止率共に低いといった e s o r c i n o lが 膜 に 吸 着 し て い る こ と に よ る も の と 考 え ら 結果が得られた o R れる結果であり、この物質がファウリング原因物質の一つである可能性を 示唆するものであった o 本 研 究 で は 、 水 環 境 中 NOMの 構 成 成 分 と し て 5種の化学物質を選定し、 これらそれぞれについて低圧逆浸透膜処理実験を実施した。その結果、 r e s o r c i n o lについてはわずかな可能性が観られたが、ファウリング原因物質を 特定するには至らなかった。今後は、これらの対象化学物質が混在した場合 の検討や本研究で選択に至らなかった他の化学物質を利用しての実験等が必 要であると考えられる o 32 第 4章 NOMに よ る フ ァ ウ リ ン グ の 評 価 本 章 で は 、 第 3章 に お け る 考 察 を ふ ま え 、 様 々 な 化 学 物 質 が 混 在 し た 状 態 で 存 在 す る 起 源 が 異 な る 2種 類 の NOMを 用 い る こ と で 、 フ ァ ウ リ ン グ の 評 価を試みる o ここではまず試料溶液の調整法、分析方法および実験方法につ いて述べ、その後実験結果に基づいて考察を行う。 4 . 1 試料溶液の調整方法 4 .1 .1 SRNOMの 調 整 IHSSよ り 購 入 し た SRNOMを 少 量 の 0 . 1MNaOHで す ば や く 溶 か し た 。 加 水 分 解 が 起 こ ら な い よ う 、 そ の 後 す ぐ に 超 純 水 で 20 mgC/L と な る よ う に 希 釈したのち、 0 . 1MHClで pH7に 調 整 し た o 4 .1 .2 LBNOMの 調 整 採 水 は 2006年 1月 1 1 日に行った o 採 水 し た 水 を 20μmの ス テ ン レ ス フ ィ ノレターでろ過したのち、孔径1.0μmの ガ ラ ス 繊 維 ろ 紙 で ろ 過 し た 1 )(この透 過液を以下 1 . 0LBNOMとする)。その後、干し径 0.45μmの MF膜 (Mil 1i p o r e製、 Durapore)で、模処理した(この透過液を以下 0 . 4 5LBNOMとする)。本研究では、 DOMの 影 響 を 観 る た め に 0 . 4 5 LBNOMを 、 COMと DOM両 方 の 影 響 を 観 る ために1.0LBNOMを 利 用 し て 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 実 験 宏 行 っ た 。 4 . 2 分析方法 NOMは 多 種 多 様 の 物 質 が 溶 け 込 ん で い る た め 、 全 有 機 体 炭 素 ( T o t a lO r g a n ic C a r b o n : TOC)計 (SHIMDZU製、 TOCVCPH)と 吸 光 分 光 光 度 計 (SHIMADZU製、 醐 UV.2500PC)を用いて NOMの定性、定量評価を行った。 幽 低圧逆浸透膜処理を行った試料溶液は大気中の二酸化炭素と平衡状態にあ I n o r g a n i cC a r b o n :I C )を多く含むため、 TOCの 測 定 に は こ の IC り無機体炭素 ( を 除 外 す る 必 要 が あ る 。 こ の た め 本 研 究 で は 試 料 に 酸( 2M HCl、200μL)を加 え て 酸 性 (pH3 以下)にしたあと、パージガス (02)を 通 気 す る こ と で ICを空気 0 中 に 追 い 出 し た 試 料 を 680Cの 燃 焼 管 で 燃 焼 さ せ る こ と に よ り 、 TOC量 を 得 る方法を採用した O こ う し て 求 め た TOC は 正 確 に は 不 揮 発 性 全 有 機 体 炭 素 3 3 (Non‑PurgeableOrganicC a r b o n :NPOC)で あ る が 、 水 環 境 中 に 含 ま れ る 揮 発 性 有機物 ( P u r g e a b l eOrganicC a r b o n :POC)は非常に少ないので、 NPOCは TOCと みなすことができる。また、吸光度の分析には波長領域 7 0 0 " " ' ‑ ' 2 0 0nmにおけ る範囲をスリット幅1.0nm、 ス キ ャ ン 速 度 は 中 速 で 測 定 し た O 4 . 3 低圧逆浸透膜処理実験の方法 実 験 の 方 法 は 、 基 本 的 に は 第 3章 で 記 述 し た 対 象 化 学 物 質 を 用 い て 行 っ た 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 実 験 の 方 法 と 同 様 で あ る 。 こ こ で は NOMを用いた実験の 際に一部条件を変更した笛所について述べる O 4 . 3 . 1 低圧逆浸透膜からの有機物溶出量の確認 本研究では、 NOMの濃度として TOC計を利用することとした。 TOC計 で 濃度を測定するときの問題点として、濃度が有機炭素濃度として表されるた め 、 NOMだ け に 起 因 す る 濃 度 を 評 価 で き な い と い う 欠 点 が あ る 。 即 ち 、 本 研 究で使用した低圧逆浸透膜はポリアミドとポリスノレフォンからできており、 処理水中に有機物が溶出する恐れがある O 本研究では、超純水のみを循環さ せ 膜 か ら の 有 機 物 溶 出 量 を 確 認 す る た め の 実 験 を 行 っ た 。 な お TOC計 で の 測 定には 1回 の 測 定 で お mLのサンプノレが必要である O 原 液 タ ン ク 容 量 2Lに 対 し 、 サ ン プ リ ン グ 量 合 計 が 10%以 下 と な る よ う に 、 サ ン プ リ ン グ 間 隔 を 原 液 側 で 実 験 開 始 後 0、2、6、12お よ び 24時 間 後 に 、 ま た 透 過 液 側 で 実 験 開 始 . 5、 2、 6、 ロ お よ び 24時間後に採水することにした。 後 0 4 . 3 . 2 低圧逆浸透膜からの付着物質の回収 基 本 操 作 は 第 3章でおこなったものと同様であるが、 LBNOM試 料 に 関 し ては、無機物に起因する成分も付着している可能性があるので、通常の洗浄 0 ‑4 M の HCl溶 液 lLを 30分 間 循 環 さ せ て 洗 浄 し た 。 そ し 操作の後、1.0X 1 てその後 5Lの超純水を装置内で一巡させることにより更に洗浄した。 4 . 4 実験結果および考察 4 . 4 . 1 イオン強度 34 表 4 . 1に第 3章 3 . 4 . 1同様に NaCl濃 度 で 換 算 し た 試 料 溶 液 の イ オ ン 強 度 を 示 す 。 第 3章 の 各 対 象 化 学 物 質 の 試 料 溶 液 と 同 様 に NOMの 場 合 も イ オ ン 強 度は一定ではない。 表4 . 1:NOM溶 液 の 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 開 始 前 の イ オ ン 強 度 NOM名 称 SRNOM 0 . 1LBNOM 0 . 4 5LBNOM NaCI 換算イオン強度 (mM) 0 . 7 2 1 .6 3 1 . 2 7 4 . 4 . 2 低圧逆浸透膜からの有機物溶出量 まず原液タンクを取り付けて 3 0分間圧力をかけずに低圧逆浸透膜処理装 . 1に示すように、開始 O時 間 後 に は 既 に 試 料 水 の TOC 置内を循環させた。図 4 は 0.25mgC/Lと な っ て い た 。 低 圧 逆 浸 透 膜 に よ る 膜 処 理 実 験 終 了 時 間 で あ る 24時 間 後 に は 0 . 3 1 mgC/Lま で 上 昇 し た 。 実 際 の 処 理 で は 溶 質 と 膜 と の 相 互 作用が生じることで膜からの溶出量が変化すると考えられるが、本研究では、 膜からの溶出による影響を補正しない値をデータとして使用することとしたo ・ 0 . 3 0 ぜ 0.25 30. 2 0 ε ) 0 . 1 5 │permeate E 2 2 010 0 . 0 5 0 . 0 0 o 6 121824 Time( h ) 国 4 . 1:低圧逆浸透膜からの者機物の溶出による TOCの変化 4 . 4 . 3 SRNOMの 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 結 果 3 5 SRNOM を 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 実 験 し た 際 の 透 過 流 束 の 経 時 変 化 を 図 4 . 2に . 2より、透過流束はなだらかに減少し、 24時間後に約 11%透 過 流 示す。図 4 束が減少したことがわかり、 SRNOMは 20mgC/Lの 濃 度 で フ ァ ウ リ ン グ を 起 こす可能性があるといえる。 次に第 3章 で 記 述 し た 式 ( 3 . 3 )よ り 膜 上 お よ び 膜 内 部 に お け る 残 存 量 の 推 定 値を求めた。その結果、原液に存在した溶質の約 8%が膜上および膜内部に 残存していることがわかった o 原 液 中 お よ び 透 過 液 中 の TOCの 経 時 変 化 を 図 4 . 3に示す。図 4 . 3 より、 TOC 濃 度 は 徐 々 に 減 少 し て い る 傾 向 に あ る が SRNOMにおいては r e s o r c i n o l に観 られたような原液側での大きな濃度変化は起こらなかった。 SRNOM の 紫 外 吸 収 ス ベ ク ト ノ レ を 測 定 し SUVA(Specific U l t r a v i o l e t Absorbance)を求めた結果と TOC との対応を図 4 . 4に示す。なお、 SUVA値と は単位 DOC量 あ た り の 波 長 254nmにおける吸光度として式(4 . 1 )のように定 義される o SUVA(L/mgC/m) 出 UV l /cm)口 1 0 0 254( DOC(mgC/L) ρ 侍 ( 4 . 1 ) なお、式(4 . 1 )の DOCの 値 は 本 研 究 で は TOCの そ れ に 等 し い と み な す こ と が できる o SUVA値 は 有 機 物 の 不 飽 和 度 の 指 標 で あ り 、 有 機 物 構 造 中 に 芳 香 族 環 や 二 重 結 合 が 多 く 含 ま れ る ほ ど 高 い 値 を 示 す と 言 わ れ る o なお、 SUVA値 が4 ' " ' ‑ '5L/mg/mである物質はフミン質に由来し、 3L/mg/m以下のものは非ブ ミン質に由来するとの報告 2)がある o 図4 . 4より、 TOCが 経 時 的 に 減 少 し て い る に も か か わ ら ず SUVA値 は 漸 増 していることがわかる o こ れ は 原 液 タ ン ク 内 の 試 料 溶 液 中 の 芳 香 族 環 を も っ 物質および不飽和脂肪族性の物質の割合が増えたことによるものと考えられ、 SUVAが 対 応 し な い 飽 和 脂 肪 族 や 糖 類 等 の 物 質 の ほ う が 膜 上 お よ び 膜 内 部 に より残存しやすい可能性を示唆している o 36 3 . 0 2 . 5 i ・ . • 1 . 1 国 ‑ E 20 1 . 5 宅O 、 J 橿 t k1O 0 . 5 0 . 0 6 O 12 18 24 T i m e( h ) 国 4 . 2 :SRNOMを 低 圧 遊 浸 透 膜 処 理 し た 際 の 透 過 流 東 の 経 時 変 化 1 . 2 1 . 0 さ0 . 8 宝 0 . 6 , . . p e r m e a t e o 0.4 0 . 2 0 . 0 O 6 12 18 24 T i m e( h ) 国 4 . 3 :SRNOMを低 E逆 浸 透 膜 処 理 し た 際 の 原 液 お よ び 透 渇 液 中 の TOOの 経 時 変 化 37 1 8 . 6 で ふ • ぜ 18.4 3183 E 5182 4 . 0 3 . 9 3 . 8 3 . 7 2181 1 8 . 0 3 . 6 1 7 . 9 3 . 5 6 O 1 2 1 8 (E¥O凶ε¥J) ︿﹀コω 1 8 . 5 24 Time( h ) 隠 4 . 4 :SRNOMを 低 圧 遊 浸 透 膜 処 理 し た 際 の 原 液 中 TOOと SUVAの 経 時 変 化 4 . 4 . 4 LBNOMの 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 結 果 まず 0 . 4 5LBNOMと1.0LBNOMの 透 過 流 束 の 時 間 変 化 を 図 4 . 5に示す。図 4 . 5 より、 1 . 4 5 LBNOM . 0 LBNOMでは透過流束が上がっているのに対し、 0 では透過流束が徐々に下がり、 24時 間 で 約 7%低下した O この結果から、 0 . 4 5 LBNOM は フ ァ ウ リ ン グ が 生 じ る 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ る 。 一 方 1 .0 LBNOMは 24時 間 以 内 に は フ ァ ウ リ ン グ に つ な が る 現 象 は 確 認 で き な か っ た o ま た 、 第 3章 で 述 べ た 式 ( 3 . 3 )か ら 膜 上 お よ び 内 部 に お け る 残 存 量 を 求 め た と ころ、 0 . 4 5LBNOMで 5%、 1 .0LBNOMで 1%であった。1.0LBNOM は近年 低 圧 逆 浸 透 膜 フ ァ ウ リ ン グ の 原 因 と な る 場 合 が あ る と 報 告 さ れ て い る 3)COM ( C o l l o i d a lO r g a n i cM a t t e r )を 含 ん で い る が 、 本 研 究 で は フ ァ ウ リ ン グ に つ な が る現象は起こらなかった。透過流束の減少を引き起こすファウリングは、膜 孔を膜表面でふさぐよりも、膜内部に分子が入り込むことによって生じると 考えられる o 1 .0LBNOMを 膜 処 理 し た 際 に は 、 分 子 の 大 き さ に よ り 膜 孔 径 を 通過できない分子が膜表面の孔を塞ぐ割合が増えるため、微細な分子が膜内 に入れる隙間が減る O しかし クロスフロー流により孔を塞いだ大きめの分 子は保持液の流れに沿って保持液側に戻されるため膜内部に入り込む分子が 38 0 . 4 5LBNOMを 処 理 し た と き よ り も 減 少 し フ ァ ウ リ ン グ が 起 こ り に く く な っ たと考えられる。そのため 24時 間 よ り も 長 く 低 圧 逆 浸 透 膜 に よ る 膜 処 理 実 験 を実施すると 1 . 0LBNOMにおいても膜内部の目詰まりがいずれ深刻化し、 透過流束の低下が起こる可能性は否めない。図 4 . 6に 0 . 4 5LBNOM を低圧逆 浸 透 膜 に よ る 膜 処 理 実 験 し た 際 の TOC と SUVA の経時変化を示す。 LBNOMにおいても SRNOMでみられたような現象が起こった。 3 . 0 r 2 . 5 • ぞ E O 2 . O 1 .5 コ × i ι 臨 圃 田 .0.45 LBNOM . 0 LBNOM 1 .0 」 一 一 同 一 一 一 0 . 5 0 . 0 O 6 12 1 8 24 Time( h ) 国 4 . 5 :LBNOMを低圧進浸透膜処種した際の透過流東の経時変化 39 0 . 4 5 1 . 6 1 .5 自 1 . 4 1 . 3 1 . 2 (E¥O凶ε¥J) ︿﹀コω (J¥OMg)00ト 87654321 1 .8 1 . 7 1 . 1 1 . 0 1 . 0 O 6 12 18 24 Time( h ) 国 4.6:O.45LBNOMを 低 圧 逆 浸 透 膿 処 理 し た 際 の 原 液 中 TOCと SUVAの 経 時 変 化 4 . 5 選 定 し た NOMの 低 圧 逆 浸 透 膜 処 理 結 果 と 対 象 化 学 物 質 の 低 圧 逆 浸 透 膜 処理結果との比較 . 4 5 LBNOMで フ ァ ウ リ ン グ に つ な が る 現 象 が 認 本研究では、 SRNOMと 0 められた o SRNOMは SUVA値 3 . 5L/mg/m以 上 で あ り フ ミ ン 質 由 来 の 成 分 が 比較的多いと考えられる。 一方、 LBNOMでは SUVA値がl.5L/mg/m前後で あり、 こ れ は 琵 琶 湖 の 水 に は 非 フ ミ ン 質 由 来 の 成 分 が 比 較 的 多 く 含 ま れ る こ とを示している。 SRNOM、 0.45LBNOMの両 NOMで フ ァ ウ リ ン グ 類 似 現 象 が観られたことと、 いずれの NOMの場合も SUVA値 の 漸 増 現 象 が 認 め ら れ たことから、 フ ミ ン 質 以 外 の 成 分 に も フ ァ ウ リ ン グ 原 因 物 質 と な り う る 成 分 e s o r c i n o lが低圧逆浸透膜に吸着し が存在する可能性が示唆される。 これは r やすいといった上記の結果に対応する。 また、 SuwanneeR i v e rで見られるよ うな " Blackwater"中 に は 縮 合 タ ン ニ ン に 由 来 す る フ ェ ノ ー ル を 多 く 含 む DOM を含むと言われる 4)0 R e s o r c i n o lは 縮 合 タ ン ニ ン に 由 来 物 質 で あ る こ と か ら も r e s o r c i n o l が低圧逆浸透膜ファウリングに何らかの影響を起こす可能性は捨 てきれないと考えられる O 4 0 4 . 6 まとめ 種 々 雑 多 の 有 機 物 が 混 在 す る NOMの 低 圧 逆 浸 透 膜 に よ る 膜 処 理 実 験 実 験 の結果とその考察より得られた知見について以下にまとめる o ・ SRNOM(20mgC/L)は 24時 間 以 内 に 透 過 流 束 が 1 1%低下した。このことよ り SRNOM は 膜 の ブ ァ ウ リ ン グ に つ な が る 現 象 を 引 き 起 こ す 可 能 性 が あ ることがわかった o ・ SRNOMの原液タンク内の TOC濃度は経時的に減少したにもかかわらず、 SUVAの値は大きくなった o これは、膜に付着した成分として芳香族環や 二重結合を持たない化学物質が比較的多いことを示唆する結果であった ・ LBNOMについては 0 0 . 4 5LBNOMは透過流束が 7%低下し、ファウリング につながるものと考えられたが、1.0LBNOMでは透過流束が逆に上昇し たことから、 COM をファウリングの原因となる成分として特定すること はできなかった o ・ SUVA値の経時変化より SRNOMお よ び LBNOMのいずれについてもフミ ン質だけではなく非フミン質もファウリングの原因となりうると考えら れた O これは r e s o r c i n o lが 低 圧 逆 浸 透 膜 に 吸 着 し や す い と い っ た 上 記 の 結 果に対応するものであった o ・ SRNOMや LBNOMといった実際の NOMを 低 圧 逆 浸 透 膜 に よ る 膜 処 理 実 験した際に、ファウリングにつながる現象が生じたことから、ファウリン グは単物質で起こるというより複数の化学物質や成分が共存した状態で 起こりやすくなる可能性があることが示唆された。 4 1 第 5章 結論と今後の課題 本研究では、低圧逆浸透膜による膜分離実験におけるファウリングの原因 となる NOMの 構 成 成 分 や 化 学 物 質 を 特 定 す る た め の 基 礎 的 検 討 と し て 、 選 定 し た 対 象 化 学 物 質 お よ び 実 際 の 水 環 境 中 の NOMを 対 象 と し て 低 圧 逆 浸 透 膜による膜分離実験を行った。本研究で得られた結論と今後の課題について 以下にまとめる。 5 . 1 結論 ・ NOMの 構 成 単 位 と し て 、 リ グ ニ ン や そ の 他 の 植 物 細 胞 組 織 か ら の 分 解 生 r i m e s i ca c i d、リグニンを由来とする v a n i l l i ca c i d、 成物であるといわれる t 縮合タンニンを由来とする r e s o r c i n o l、 微 生 物 細 胞 壁 を 由 来 と す る L ‑ l e u c i n eと ιfucoseを選定した。 ・ 対 象 化 学 物 質 と し て 選 定 し た 5物 質 に つ い て 24時間の膜ろ過実験を行つ た結果、透過流束について変化は認められず、いずれの物質もファウ リ ン グにはつながらないと考えられた。 ・ 対 象 化 学 物 質 5物質について、各物質の回収率と阻止率を測定したところ、 r e s o r c i n o l について回収率、阻止率ともに低いといった結果が得られた o これは r e s o r c i n o lが 膜 に 吸 着 し て い る こ と に よ る も の と 考 え ら れ る 結 果 で あり、この物質がファウリング原因物質のひとつとなりうる可能性 を 示 唆 するものであった。 ・ SRNOMに 対 し て 低 圧 逆 浸 透 膜 に よ る 膜 分 離 実 験 を 行 っ た と こ ろ 、 透 過 流 束の低下が観られ、ファウリングにつながる現象が生じることがわかった o ・ LBNOMについては 0 . 4 5LBNOMは透過流束の低下が観られ、ファウリ ングにつながるものと考えられたが、1.0 LBNOM で は 透 過 流 束 が 逆 に 上 昇したことから COMを フ ァ ウ リ ン グ の 原 因 成 分 と し て 特 定 す る こ と は で きなかった o SUVA値の経時変化より SRNOMお よ び LBNOMのいずれについてもフミ ン質だけではなく非フミン質もファウリングの原因となりうると考えら e s o r c i n o lが 低 圧 逆 浸 透 膜 に 吸 着 し や す い と い っ た 上 記 の 結 れた。これは r 果に対応するものであった。 42 SRNOM、LBNOMといった実際の NOMを低圧逆浸透膜処理した際に、フ ァウリングにつながる現象が生じたことから、ファウリングは単物質で起 こるというより複数の化学物質や成分が共存した状態で起こりやすくな る可能性があることが示唆された o 5 . 2 今後の課題 ファウリングは、最初に膜との親和性を示す化学物質が膜表面に吸着し、 膜表面に吸着した化学物質と親和性のある物質どうしが結合していくことに より膜の孔径や荷電性が変化することにより、ファウリング現象が促進され たり軽減されたりしうると考えられる。ただし、今回採用した膜処理方法(保 持液、透過液両方を原液タンクに戻す全循環モード)では実際の水処理での状 況を再現できているとはいいがたい o 実際の処理では常に新しい水試料が取 り入れられ続けるため平衡に達しないが、この方法では吸着平衡が生じる。 またファウリングは長い時間をかけて深刻化していくものであるため、本研 究 で は フ ァ ウ リ ン グ に つ な が る 現 象 し か 観 ら れ て い な い こ と に な る o 実際に 起 こ る フ ァ ウ リ ン グ を 再 現 で き 、 か つ NOMフ ァ ウ リ ン グ の メ カ ニ ズ ム を 解 明することができる実験系を理論的、経験的に組み立てることが上にあげた 今後の課題を達成するためにまずすべきことである。 5 . 1 で述べた結論を踏 まえ、今後の課題について述べる。 ファウリング現象を観測するに当たって、保持液も透過液も戻さない場合、 保持液は戻し透過液は戻さない場合(濃縮)、保持液も透過液も戻す場合(全 循環)の三つのモードで生じる違いを確実に理解する必要がある o ・M a n t t a r iら 1)は l o c u s tbean、karayagumお よ び ブ ミ ン 酸 の 混 合 影 響 を 見 る 際 、 1種 類 自 の 物 質 を 加 え 透 過 流 量 が 安 定 し た あ と に 2種類目をスパイク し透過流速が安定した後、次の物質を加えていくという方法で実験を行っ た(彼らも実験を全循環式で行っている)。スパイクする順序を入れ替える ことにより不可逆的ファウリングを回避できる組み合わせがあることも 示している。この方法を応用することで循環モードのまま長期的ファウリ ングに類似する現象を再現できる可能性があると考える 4 3 O より多くの文献 考察を行い、色々な方法もうまく取り入れ実験系を完成させる必要がある o ・使用する膜により、阻止、透過および吸着に差が出てくることが予想され る。したがって、被験膜を数種増やす必要がある。 ・ファウリング原因物質の一つである可能性が示唆された r e s o r c i n o lに関し て 、 24 時 間 以 上 の 逆 浸 透 膜 処 理 し た 場 合 に 、 透 過 流 東 に 変 化 が み ら れ る か等の検討する必要がある。 ・膜に吸着する物質が実際にファウリングの原因となりうるかについてさ らなる検討が必要である。 ・ 本 研 究 に お い て は 対 象 化 学 物 質 と し て 選 定 し な か っ た COMファウリング の原因となる単糖、アミノ酸に関しでもさらなる検討が必要である o また、 より特徴的な糖アノレコール、環状アルコーノレ、ウロン酸、アミノ酸、分岐 糖などへ対象物質の選定を広げる必要がある。 ・ 膜 に 吸 着 し や す い 成 分 と 他 の NOM構 成 単 位 と 考 え ら れ る 物 質 を 共 存 さ せ ることにより、ファウリングを軽減する物質、促進する物質の組み 合 わ せ に関するデータの蓄積が必要である o 44 参考文献 第 1章 1 ) 2 ) 財団法人 水道技術研究センタ大規模ろ過施設導入技術資料,2 0 0 5 . B .Vand e rBruggen ,J .S c h a e p, D Wilms ,andC .V a n d e c a s t e e l e :I n f l u e n c eo fm o l e c u l a r s i z e , p o l a r i 句ra ndc h a r g eont h er e t e n t i o no fo r g a n i cm o l e c u l e sbyn a n o f i l t a r t i o n , J o u r n a l ofMembraneS c i e n c e,156,2 9 ‑ 4 1,1 9 9 9 . 3 ) Y .Kiso ,Y .S u g u i r a ,T .K i t a o ,andK .N i s h i m u r a :E f f e c to f h y d r o p h o b i candm o l e c u l a r s i z eonr e j e c t i o no fa r o m a t i cp e s t i c i d e sw i t hn a n o f i l t a r a t i o nmembranes , J o u r n a lof MembraneS c i e n c e,192,1 ‑ 1 0 ,2001 . 4 ) J .A .Leenheer ,T .I .Noyes,C .Roatad ,andM.L .D a v i s s o n :C h a r a c t e r i z a t i o nando r i g i n ofp o l a rd i s s o l v eo r g a n i cm a t t e rfromGr e a tSa 1 tLake, B i o g e o c h e m i s f 1 ヲ ア 69,1 2 51 4 1, 幽 2 0 0 4 . 5 ) 今井章雄、福島武彦、松重一夫、井上隆信、石橋敏昌:琵琶湖湖水及び 9 9 8 . 流入河川水中の溶存有機物質の分画,屋三大難, 59,5 368,1 幽 6 ) J .A .L e e n h e e r :Comprehensivea s s e s s m e n to fp r e c u r s o r s ,d i a g e n e s i s ,andr e a c t i v i ザt o 抗e r ,W a t e rS c i e n c eand w a t e rt r e a t m e n to fd i s s o l v e dandc o l l o i d a lo r g a n i cma T e c h n o l o g y ,4 ( 4 ), 2 0 0 4 . 第 2章 1 ) 7 池嶋規人:低圧逆浸透法によるピスフェノール Aと 1 圃 Sエ ス ト ラ ジ オ ーノレの分離特性,京都大学工学部地球工学科待別研究ヲ 2 0 0 1 . 2 ) , TheP h y s i c a lP r o p e r t i e sD a t a b a s e , S y r a c u s eR e s e a r c hC o r p o r a t i o n h抗p : / / w w w . s y r r e s . c o m / e s c / p h y s p r o p . h t m . 3 ) J .A .L e e n h e e r :Comprehensivea s s e s s m e n to fp r e c u r s o r s ,d i a g e n e s i s , andr e a c t i v i 句rt o w a t e rt r e a t m e n to fd i s s o l v e dandc o l l o i d a lo r g a n i cm a t t e r ,W a t e rS c i e n c eand ルchnology,4 ( 4 )2 0 0 4 . ラ 4 ) E .M.Thurman:O r g a n i cG e o c h e m i s t η ofn a t u r a lw a t e r sDRW.R 乃ぽ ラ PUBLISHERS,1 9 8 5 . 5 ) KirkO t h m e r :E n c y c l o p e d i ao fChemicalTechnology ,3 r de d .,W i l e y ,New1 匂r k ,23, 圃 704・717 1 9 8 3 . ラ 4 5 6 ) 滋賀県琵琶湖・環境科学研究センタ 切 ://www. l b r i . g o . j p / o u t 1ine/lake̲biwa.htm/. 7 ) I n t e r n a t i o n a lHumicS u b s t a n c e sS o c i e t yO f f i c ia 1W W Wpage, h t t p : / / w w w . i h s s .g a t e c h .e d u / . 第 3章 1 ) K.Kimura , G .Am y, J .Drewes ,andY .Watanabe:A d s o r p t i o n so fhydrophobic compoundso n t oNF/RO membranes:ana r t i f a c tl e a d i n gt oo v e r e s t i m a t i o no f r e j e c t i o n , J o u r n a lofMembraneS c i e n c e,221,89‑10, 2001 . 2 ) H.OzakiandH.L i :R e j e c t i o nofcompoundsbyu l t r a ‑ l o wp r e s s u r er e v e r s eosmosis a t e rR e s e a r c h, 36,123‑130 ,2002. membrane W ラ 3 ) D.V iolleau, H.E s s i sTomeH.Habarou ,J .P .Croue , andM.P o n t i e :F o u l i n gs t u d i e sof 圃 ラ apolyamiden a n o f i l t r a t i o nmembranebys e l e c t e dn a t u r a lo r g a n i cm a t t e r :ana n a l y t i c a l a p p r o a c h , D e s a l i n a t i o n,173,223238, 2 0 0 5 . 4 ) 、 幽 a nd e rBruggen , J .S chaep, D Wilms ,andC .V a n d e c a s t e e l e :I n f l u e n c eofm o l e c u l a r B .T s i z e ,p o l a r i t yandc h a r g eont h er e t e n t i o nofo r g a n i cm o l e c u l e sbyn a n o f i l t a r t i o n , J o u r n a l 2 9 ‑ 4 1,1 9 9 9 . ofMembraneS c i e n c e,156, 5 ) Y .Kiso ,Y .S u g u i r , aT .K i t a o ,andK.Nishimura:E f f e c tofh y d r o p h o b i candm o l e c u l a r t a r a t i o nmembranes, J o u r n a lof s i z eonr e j e c t i o nofa r o m a t i cp e s t i c i d e sw i t hn a n o f i1 MembraneS c i e n c e,1 9 2,ト10, 2001 . 6 ) K.Kimura ,S .Toshima ,G.Am y, andY .Watanabe:R e j e c t i o no f n e u t r a le n d o c r i n e d i s r u p t i n gcompounds(EDCs)andp h a r m a c e u t i c a la c t i v ecompounds(PhACs)byRO , J o u r n a lofMembraneS c i e n c e,245,7ト78,2 0 0 4 . membrane 7 ) 池嶋規人:低圧逆浸透法による内分泌撹乱物質の分離特性と影響因子に ついて,京都大学大学館工学研究科環境工学専攻修士論文, 2003. 46 第 4章 1 ) 日下部武敏:化学的および分光学的手法による琵琶湖溶存有機物質 (DOM)の 特 性 解 析 , 京 都 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 環 境 地 球 工 学 専 攻 修 士 論 文, 2 0 0 1 2 ) Y .Zhao , J .T a y l o ra n dS .Hong:Combinedi n f l u e n c eo fmembranes u r f a c ep r o p e r t i e s ラ /NFm asst r a n s f e r ,ap i l o ts t u d y ,W a t e rR e s e a r c h, 3 9, a n df e e dw a t e rq u a l i t i e sonRO 1 2 3 31 2 4 4,2 0 0 5 . 圃 3 ) S .Lee ,J .Cho ,a n dM.E1 i m e l e c h :CombinedI n f l u e n c eo f n a t u r a lo r g a n i c(N OM)a n d t i o nm e m b r a n e f o u l i n g , J o u r n a lofMembraneS c i e n c e, c o l l o i d a lp a r t i c l e sonn a n o f i肱 a 2 6 22 74 1,2 0 0 5 . ヲ 4 ) 酬 J .A .L e e n h e e r ,T .I .Noyes ,C .R o a t a d ,andM.L .D a v i s s o n :C h a r a c t e r i z a t i o na n do r i g i n e a tS a l tLake , B i o g e o c h e m i s t r ) ら6 9,1 2 51 4 1, o fp o l a rd i s s o l v eo r g a n i cm a t t e rfromGr 幽 2 0 0 4 . 第 5章 1 ) MikaM a n t t a r i, L i i s aP u r o , J u t t aN u o r t i l a ‑ J o k i n e n , M a r i a n n eN y s t r o m :F o u l i n ge f f e c t s 1 t r a t i o n , J o u r n a lofMembraneS c i e n c e, o f p o l y s a c c h a r i d e sa n dhumica c i di nn a n o f i 1 6 5, 11 7 , 2 0 0 0 . 幽 4 7