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シリコンクロム鋼オイルテンパー線
1 はじめに
弊社 高周波熱錬株式会社は1940年の創立以来、誘
導加熱におけるパイオニアとして、自動車・鉄道車両
部品をはじめ各種産業機械部品の熱処理加工、誘導加
熱装置および高周波熱処理技術の開発を行ってまいり
ました。
「ITW ®」は、この優れた高周波誘導加熱技
術を応用した高品質のばね鋼線です。
この製品は国内はもとより海外においても高く評価さ
れ、その技術と共に広く使用されております。
赤穂工場
2
ITW ®とは
ITW ® は、Induction Heated,Quenched and
Tempered Wireの略であり、高周波熱処理された高
強度ばね用鋼線の弊社商品名です。
3
高周波熱処理とは
弊社の高周波熱処理システムは、図1に示す高周波誘
導加熱と、均一に急冷のできる冷却系を確実な制御で
組合わせた熱処理方法です。
優れた性能が安定して得られるだけでなく、目的に応
じた任意の温度に無接触で急速加熱ができます。
高周波熱処理は省資源・省エネルギー時代にふさわし
い効率のよい無公害システムです。
図1 高周波誘導加熱のモデル
−1−
4
ITW ® の製造工程
ITW ®は厳選された素材を図2に示すような工程で高
素 材
受入れ
周波焼入れ・高周波焼戻しを施して、必要な機械的性
ディスケー
リング
質を与えたものです。
また、全長にわたり渦流探傷による疵検査と、焼入れ、
焼戻し温度の監視を実施することで品質保証をより完
全なものにしております。
引
抜
き
高
周
波
焼
入
れ
高
周
波
焼
戻
し
■渦流探傷
コイル材
巻取り
検 査
バー材
出 荷
定 尺
切 断
図2 製造工程
熱処理工程
荷 姿
−2−
5
ITW ® の特徴
ITW ®は、素材はもとより製品に至るまで充分な品質管理と、弊社開発の高周波熱処理システムを中心とした最新
の設備と最高の技術で製造され、下記のような特徴を有しております。
<ITW®の特徴>
1.高周波誘導加熱により急速・短時間でオーステナイト化を行いますので、
●微細な結晶粒が得られます。
●表面の脱炭や結晶粒界の酸化がほとんど生じません。
2.微細な焼入れ組織と高周波短時間焼戻しの相乗効果により、
●高強度と高靱性が同時に得られます。
3.加熱および冷却に正確な制御システムを使用し、更に1コイル単位で焼戻し温度の調整を行いますので、
●顧客の要求に応じて任意の強度に調整が可能です。
●製品全長にわたって均一な強度が得られます。
●製品コイル間の強度のばらつきは非常に小さく抑えられています。
4.このような特徴があるため、ばねに成形した場合、
●ばね成形時の形状のばらつきが小さくなります。
●高強度でありながら、D/dの小さなばね成形が可能です。
●耐久性、耐へたり性はともに高水準にあります。
●使用応力が高くとれることにより、重量軽減によるコスト低減が可能です。
製品(ITW®)
素 材
図3 組織写真
ITW ®12φσβ=1853Nmm2
図4 加工試験結果
−3−
6
■
ITW ® の仕様 <シリコンクロム鋼オイルテンパー線(SWOSC-B)>
化学成分
ITW ®の線材鋼種は、
SUP12又はSAE9254を基本に、
必要に応じ特殊元素を添加した鋼材を使用します。
ITW ®の化学成分は表1のとおりです。
表1 化学成分(%)
材 料
C
Si
Mn
P
S
Cr
SUP12
0.51−0.59 1.20−1.60 0.60−0.90
0.035以下
0.035以下
0.60−0.90
SAE9254
0.51−0.59 1.20−1.60 0.60−0.80
0.035以下
0.040以下
0.60−0.80
0.51−0.59 1.20−1.60 0.50−0.90
0.035以下
0.035以下
0.55−0.90
(参考)
JIS G 3560-1994
SWOSC-B
* 上記化学成分以外を使用する必要のある場合には、別途ご相談下さい。
■
標準線径
線径の範囲は5.0∼17.0mmとし、標準線径は表2のとおりとします。
表2 標準線径(単位mm)
5.0
5.5
6.0
6.5
7.0
7.5
8.0
8.5
9.0
9.5 10.0 10.5 11.0
11.5 12.0 12.5 13.0 13.5 14.0 14.5 15.0 15.5 16.0 16.5 17.0
* 5mm未満、17mmを超えるもの、および中間サイズにつきましては別途ご相談下さい。
■ 線径許容差および偏径差
線径の許容差および偏径差は表3のとおりとします。
表3 線径許容差および偏径差(単位mm)
線 径
許容差
偏径差
5.0以上6.0未満
±0.04
0.04以下
6.0以上17.0以下
±0.05
0.05以下
■ 機械的性質
ITW ®の標準的な機械的性質は表4のとおりとします。
表4 機械的性質
記 号
引張強さ(N/mm2 )
絞 り(%)
SWI−150
1,450−1,550
35以上
SWI−165
1,600−1,700
35以上
SWI−180
1,750−1,850
35以上
SWI−190
1,850−1,950
35以上
SWI−200
1,950−2,050
35以上
* 上記標準的な引張強さの範囲外も製造できますので、別途ご相談下さい。
−4−
−
7
取り扱い上のご注意
1.荷扱い
鋼線についた疵は、鋼線折損の危険性やばねの品質特性を著しく低下させる要因となります。
コンクリート等、硬いものによる打ちきず、すりきずには特にご注意下さい。
*吊り上げ時は、ワイヤーロープを避け、ナイロンスリングを使用して下さい。
*ゴムマット等を敷いた上でのご使用をお薦めします。
2.保管時
錆が発生しないように雨や、その他化学物質と離れた場所に保管して下さい。
また、溶接のスパッタ等を受けないように保管して下さい。
3.使用時
①ITW ®はプレベンドをかけておりますがストレートに近い鋼線をコイル状に巻き取ってありますので、
*結束したフープを切断する場合、跳ね出す危険がありますので、充分ご注意下さい。
*抵抗の少ない巻き戻しスタンドをご使用下さい。
②コイリング後の低温焼きなましは連続してその日のうち(24時間以内)に行って下さい。
③製品へのメッキは避けて下さい。
● 用途
詳細については「ばね用線の取扱説明書」をご覧下さい。
二輪車用サスペンション・四輪車用サスペンション
大型エマージェンシーブレーキ・シャッター
産業機械・その他高応力、耐久性を必要とするばね
(弁ばねには使用できません)
8
加工設備
1.巻き戻しスタンド
2.コイリングマシン用治具
マンドレル、切断ナイフ等のコイリングツール。
* 詳細は別途ご相談下さい。
−5−
〈参考資料−1〉
ばね鋼線(ITW®)の機械的性質
(N/mm2)
2500
σB・σ0.2・σ0.01・τB・τ0.3
(%)
100
σ0.2/σB・τB/σB・τ0.3/σB
σ0.2/σB
90
σB
2000
80
σ0.2
70
σ0.01
1500
τB/σB
60
τB
τ0.3
τ0.3/σB
50
40
1000
30
20
500
10
0
1500
SWI-150
1600
1700
SWI-165
1800
1900
0
1500
2000
SWI-180 SWI-190 SWI-200
SWI-150
1600
SWI-165
(引張強さ N/mm )
縦弾性係数
(E)
(N/mm2)
100000
95000
90000
85000
80000
75000
70000
65000
60000
1500
208000
206000
E
204000
202000
200000
1500
1600
1700
1800
1900
2000
1600
60.0
50.0
ψ
40.0
30.0
1800
1700
1800
1900
2000
(引張強さ N/mm )
70.0
1700
SWI-180 SWI-190 SWI-200
2
絞り
(ψ)
1600
2000
G
(引張強さ N/mm )
20.0
1500
1900
横弾性係数
(G)
2
(%)
1800
(引張強さ N/mm2)
2
(N/mm2)
210000
1700
1900
2000
(%)
19.0
17.0
15.0
13.0
11.0
9.0
7.0
5.0
1500
(引張強さ N/mm2)
伸び
(δ)
δ
1600
1700
1800
(引張強さ N/mm )
2
−6−
1900
2000
〈参考資料−2〉
SWI−180
低温焼きなまし設定条件について
■ 低温焼きなまし推奨条件
SWI−180を使用してコイルばねを成形した後の低温焼きなまし条件は、
下記条件で実施されることを推奨致します。
保持時間
加熱温度
保持時間
400℃±10℃
30分以上
加
熱
温
度
加熱時間
適用ばね鋼線…SWI−180(引張強さ:1750∼1850N/mm2)
1900
引
張
保持時間
30分一定
1800
1700
強
1600
さ
(N/mm2) 1500
1400
as coil
300
325
350
375
400
425
450
475
500
加熱温度(℃)
図1 低温焼きなまし温度と引張強さの関係
1000
残
800
留
600
1000
ばね仕様
d=11.5mm
D=115.0mm
測定位置
ばね内径側 表面軸方向
保持時間
30分一定
応
400
力
(N/mm2)200
0
as coil
350
375
400
425
加熱温度(℃)
残
800
留
600
応
400
力
(N/mm2)200
0
as coil 10
450
ばね仕様
d=11.5mm
D=115.0mm
測定位置
ばね内径側 表面軸方向
低温焼きなまし温度
400℃一定
20
30
40
保持時間(分)
50
60
図3 低温焼きなまし温度とコイルばね残留応力の関係
図2 低温焼きなまし温度とコイルばね残留応力の関係
−7−
〈参考資料−3〉
SWI−200
低温焼きなまし設定条件について
■ 低温焼きなまし推奨条件
SWI−200を使用してコイルばねを成形した後の低温焼きなまし条件は、
下記条件で実施されることを推奨致します。
保持時間
加熱温度
保持時間
380℃±10℃
30分以上
加
熱
温
度
加熱時間
適用ばね鋼線…SWI−200
(引張強さ:1950∼2050N/mm2)
2100
2000
保持時間
30分一定
引
1900
張
強
1800
さ
1700
(N/mm2)
1600
1500
as coil
300
325
350
375
400
425
450
475
500
加熱温度(℃)
図1 低温焼きなまし温度と引張強さの関係
1200
1000
ばね仕様
d=11.5mm
D=115.0mm
測定位置
ばね内径側 表面軸方向
保持時間
30分一定
残 1000
留
800
応
600
力
400
(N/mm2)
200
0
as coil
350
375
400
425
加熱温度(℃)
残
800
留
600
応
400
力
(N/mm2)200
0
as coil 10
450
ばね仕様
d=11.5mm
D=115.0mm
測定位置
ばね内径側 表面軸方向
低温焼きなまし温度
400℃一定
20
30
40
保持時間(分)
50
60
図3 低温焼きなまし温度とコイルばね残留応力の関係
図2 低温焼きなまし温度とコイルばね残留応力の関係
−8−
−9−
SWI-200
SWI-190
SWI-165
SWI-150
(150)
(100)
(100)
±0.070
±0.060
±0.050
0.070以下
0.060以下
0.050以下
30以上
35以上
JIS G 3560
SWOSC−B
35以上
ITW®
6.5
6.0
5.5
5.0
線径
(mm)
12.0
12.5
12.0 1,610−1,760
12.5
13.5
14.0
14.5
15.0
15.5
16.0
16.5
17.0
13.5
14.0
14.5
15.0
15.5
16.0
16.5
17.0
* 引張強さの下の( )数字は引張強さの範囲を表す。
13.0
13.0
(150)
11.5
10.5
11.5
0.090以下
11.0
±0.090
10.0
9.5
9.0
8.5
8.0
11.0
10.5
10.0
9.5
9.0
8.5
8.0
(150)
7.5
(100)
0.040以下
ITW
絞り(%)
7.5
(100)
0.045以下
JIS G 3560
SWOSC−B
®
7.0
(150)
(100)
±0.040
ITW
偏径差(mm)
7.0 1,660−1,810
6.5
6.0 1,710−1,860
5.5
±0.045
JIS G 3560
SWOSC−B
®
®
ITW
SWI-180
線径許容差(mm)
引張強さ(N/mm2)
5.0 1,760−1,910 1,950−2,050 1,850−1,950 1,750−1,850 1,600−1,700 1,450−1,550
線径
JIS G 3560
(mm)
SWOSC−B
SWOSC−Bと弊社ITW®との比較
〈参考資料−4〉
製品事業部
東 京 営 業 所 〒141-8639 東京都品川区東五反田 2丁目17番1号 オーバルコート大崎マークウエスト・
・
・ TEL.03(3443)5444 FAX.03(5488)7538
大 阪 営 業 所 〒530-0041 大阪府大阪市北区天神橋2丁目3番8号 MF南森町ビル2階・
・
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No.27311
2011010400S