Download 福祉機器の安全を考える

Transcript
HCR NEWS
福祉機器の安全を考える
福祉機器は、高齢者や障害者の可能性を拡げ介
護者の負担を軽減されるなど、先進諸国で共通課題
となっている少子高齢化社会にとって欠かせないも
のとなっています。今後一層、ITや新素材など新た
4件の福祉機器に関わる重大事故
事故発生日
事故内容
2007年10月22日
使用者が当該製品を使用して、立ち上がろうとした際に、当該製品の隙間に腕が挟まり怪我を
負った。事故原因は、当該製品を掴んで立ち上がろうとしたが、踏ん張りがきかず、床へずり落ち
な技術を搭載した機器の開発や普及が進んでいくと
てしまい事故に至ったと思われる。製品の性格上、隙間に発生するリスクについての十分な周知
考えられます。
等が望まれる。
一方で経済産業省は、2007年12月に発生した輸入
された安価な電動ベッドによる死亡事故は、リモコン
2007年11月4日
手すりに掴まりベッドから立ち上がろうとした際、固定されていたはずの手すりが動き、転倒し、
助骨にひびが入った。事故原因は、使用に伴うロックレバー部の磨耗と手すりに掴まることでロック
の不具合やモーターの力が強すぎるなど、設計上の
レバーに負荷が掛かっていたことにより、固定されていたロックが解除されてしまい事故に至ったと
事故を防止する機能が不十分だったと指摘しました。
思われる。
また、同省は2月15日、昨年5月以降に介護ベッド
用の手すりに首を挟まれるなどして4件の福祉機器に
2007年12月25日
当該製品の隙間で首を吊った状態で発見され、病院に運ばれたが死亡した。事故原因は、目
撃者がおらず、事故の発生状況が不明であるものの、手すりのサイドレール部が製造時とは逆の
関わる重大事故が発生していたことを公表しました。
方向で取り付けられていたことから、当該隙間が増大しており、事故に至ったと思われる。サイド
これらの事柄は、誤った福祉機器の選択や使い方
レール部の逆方向の取り付けによる挟み込みの増大についての十分な周知等が望まれる。
は、重大な事故につながる可能性があることを教え
2008年1月20日
ベッドの手すりと手すりの間に、ベッドの外側から首が挟まった状態で発見され、病院に運ばれた
てくれます。
が死亡した。ベッドに戻る際に事故が発生したと思われるが、目撃者がおらず、事故の発生状況
保健福祉広報協会では、第34回国際福祉機器展
の詳細が分からず、事故原因の特定には至らなかった。ベッドには複数の手すりを組み合わせて
使用するため、製品の形状等により、手すりと手すりの隙間は千差万別であり、隙間をなくすこと
HCR2007来場者を対象としたアンケート調査の中で、
は不可能であり、隙間の挟み込みリスクについての十分な周知等が望まれる。
福祉機器を利用したときの「ひやっと」した体験や
「ハッと」した体験について尋ねました。
※経済産業省が発表した福祉機器に関わる4 件の重大事故は、いずれもベッドの手すりに関するものでした。経済産業省では、製
その結果、アンケート回答総数5,267件のうち「ひ
やり、ハッと」した体験があったと回答されたのは、
延べ1,921件でした。一番多くの方が「ひやり、ハッ
と」した体験を持っていたのは、車いすを利用した
品の性格上全ての挟み込みを無くすことは困難だとし、使用上のリスクの把握と取扱説明書に基づいた正しい使用方法をおこなう
よう消費者への注意喚起をしています。日本福祉用具・生活支援用具協会と医療・介護ベッド安全普及協議会でも、事故を受け、
「介護ベッドのサイドレール・手すり等による事故等についてのご注意」
(右コラム参照)を作成し、JASPAのWebサイトに掲載
して周知を図っています。
時で768件です。次に入浴機器の320件、ベッド・
ベッド関連用品の277件と続いています。
次に個々の機器における体験事例(HCR2007来
場者アンケートから)をご紹介いたします。
◦風呂に手すりを取り付けたが、つかまったところは
ずれた
1
車いす
76 8件
2
入浴機器
320件
3
ベッド・ベッド関連用品
2 7 7件
4
福祉車両
14 4 件
不良による体験、介助方法による体験など一番多く
5
トイレ・トイレ用品
1 0 1件
○ベッド
の体験が報告されています。特に踏み切りや電車の
ベッドについて一番多い報告はベッドからの転落
6
家具・食器、テーブル・いす
6 7件
乗降、歩道の横断中に立ち往生したり、車いすから
ですが、中には頭がベッドと柵の間に挟まるなど、冒
7
介護関連用品、衣類、くつ
43件
落下するなど大事故につながりかねない事例が多数
頭の重大事故につながるケースも複数報告されてい
8
建築・住宅設備
43件
あります。また反対に、
「車いすを人にぶつけた」
「電
ます。また、介助者についてもギャッジアップ中に足
9
リハビリ機器/義肢・装具
39件
動車いすで他人の足を轢いた」など加害者になりか
を挟まれたなどの事例も報告されています。
ねない事例もあります。
◦ギャッジアップ中にベッドとサイドレールの間に手を
10
その他
119 件
11
無回答
3,637件
(回答総数5,267件、複数回答あり。
)
◦浴槽内の滑り止めマットがはがれて、転倒しそうに
○車いす
なった
「車いす」については、操作に伴う体験、機器の
◦踏み切りで車いすの前輪がはさまり転倒した
◦左右に傾いた歩道を走っていた電動車いすが滑っ
て、車道に飛び出しそうになった
車いす、入浴機器、ベッド、トイレなど利用して
いる方が多数いる機器について、
「ひやり、ハッと」
した体験事例が多く報告されています。中でも、車
いすや福祉車両など「動き」が伴う機器に「ひやり、
ハッと」した体験事例が多くありました。動きが伴う
◦電動車いすのタイヤがパンクしていて、ブレーキが
利かなかった
はさんだ
◦ベッドの柵の隙間に頭がすっぽりと入ってしまった
◦寝ている間にリモコンを押してしまい、ベッドの位
置が一番高いところまで上がっていた
◦足元でストッパーを操作するベッドに軽く触れたら、
◦車いすのストッパーをかけずに立ち上がろうとし、
転倒した
ストッパーが解除され動き出した
◦スライディングボード使用中に利用者が滑ってし
◦車いすを折りたたむとき、手をはさんだ
まった
機器については、加えて「踏み切りで車いすの前輪
がはさまり転倒した」
「左右に傾いた歩道を走ってい
入浴機器については、滑りやすいという場所の特
た」
「天井走行型リフトから落ちた」など、大事故に
○トイレ
トイレについては、ポータブルトイレ・簡易トイレ
殊性から滑って転んだと体験が多く報告されていま
での事故が目立ちます。簡単に動かせるのが利点で
つながりかねない事例が多く見受けられます。
すが、中には機械浴中に利用者の体がずれおぼれそ
すが、軽いので転倒もし易いようです。
その他に、歩行器の利用者の中に歩道の段差で「ひ
うになったなど、小さな事故が生命に関わりかねない
◦ポータブルトイレが軽く、利用者がトイレごとひっく
やり、ハッと」した体験を持つ方も多数いて事故防
事例も報告されています。
止には地域づくりという広い観点でも考えていく必要
◦機械浴中に利用者の体がずれ、おぼれそうになっ
た電動車いすが滑って、車道に飛び出しそうになっ
があることを再認識させられました。
○入浴機器
た
り返った
◦跳ね上げ式の手すりが軽すぎて簡単に持ち上がっ
てしまい転倒した
以上のように、福祉機器利用者の「ひやっと」
改善を図るとともに、利用者や介助者への機器の操
「ハッと」した体験を大きく分けると、①利用者の操
作方法やリスクについての周知の徹底、建物や交通
作に伴うもの、②介助者の操作に伴うもの、③機器
機関など老人や障害者が暮らしやすい街づくりの整
に問題があるもの、④歩道など外部環境に伴うもの
備といった複合的な対策をおこなっていく必要があり
の4つに大まかに分けられると考えられます。
ます。
こうした事故を防ぐためには、福祉機器の性能の
平成20年2月15日
介護ベッドをご使用の関係者の
皆さまへ
日本福祉用具・生活支援用具協会
医療・介護ベッド安全普及協議会
介護ベッドの
サイドレール・手すり等による
事故等についてのご注意
しかし、このすき間に挟まれることにより事故が発生
することがあります。特にベッド上で予測できない行
動をとる可能性がある方や、自力で危険な状態から
回避することができない方などにはご注意下さい。
また、こういった方に使用する際は、すき間をクッショ
ン材や毛布で埋めるなど事故を防止するための工夫
をお願いします。
のすき間に首がはさまり死亡した。
事例2:使用者がベッドの端に座り左手で手すりの
介護ベッドの使用中における事故が少なからず発
開放部分をつかんでいたが、踏ん張りがき
生しており、使用者の生命に関わる重大な事故も複
かず、床へずり落ちてしまった。その際、手
数件数発生していることが明らかになっております。
すりの折れ曲がる部分に左手上腕部がはさ
事故防止のためには、製品そのものが安全であるこ
まり怪我を負った。
いの介護ベッドの特性をご理解いただき、取扱い説
明書等に記載されている注意事項をお守りいただき
れ病院に運ばれたが死亡した。
事例4:サイドレールのすき間に首を入れ、窓を開閉
しようとした際にリモコンスイッチが入った
つきましては、これまでに発生した事故事例を踏ま
ため背上げ部分が作動し、ベッドの背とサ
え、事故の発生を未然に防止するために利用者の皆
イドレールとの間に首がはさまって窒息死し
さまにお守りいただきたい注意事項をご紹介しますの
ていた。
事例5:サイドレールとサイドレールのすき間に首を
はさまれ死亡した。
サイドレール・手すりの
すき間について
でベッドを操作するとはさまれて身体の傷害や生命
にかかわるけがをするおそれがありますので注意し
場合、通常よりもすき間が大きくなって、ベッドで
寝ている人の転落や寝具の落下を予防することが
出来なくなるおそれがありますので組み合わせない
でください。
すき間以外の事故事例
事例1:手すりに捉まりベッドから立ち上がろうと
した際、固定されていたはずの手すりが動
き、転倒し、肋骨にひびが入った。
事例2:着衣がベッドの手すりの固定用ノブにひっ
かかり頸部圧迫をおこし、窒息により死亡し
た。
事例3:被介護者が可動式サイドレールにつかまり
立ちしたところ、金具が破損しバランスを崩し
て転倒したため介護者が首と肩を打撲した。
▪注意事項
◦思わぬけがをしないように、製品に異常(手すり本
▪注意事項
◦サイドレールや手すりのすき間、ボードとのすき間に
サイドレールや手すりは用途により形状や構造が異な
身体の一部(特に頭や首)が入ると抜けなくなり、
るため、いろいろなすき間を内包しています。また、
身体の傷害や生命にかかわるけがをするおそれが
こうした製品内部のすき間ばかりでなく、ベッド本体
ありますので注意してください。
との組み合わせによっても同様のすき間が生じること
◦身体の一部(特に頭や首)がサイドレールや手すり
になります。このようなすき間によりベッド上で療養さ
にあたり圧迫されると身体の傷害や生命にかかわるけ
れる方々の視野が確保されるとともに、閉塞感が軽
がをするおそれがありますので、注意してください。
減され、療養環境の向上にも繋がります。
◦身体の一部(特に頭や首)がすき間に入った状態
事例3:手すりのすき間で首を吊った状態で発見さ
ご利用されることが安全確保の上で欠かせません。
で、以下についてご確認下さい。
おそれがあります。
◦ベッドと異なるメーカーのサイドレール等を使用した
事例1:ベッドの外で転倒してサイドレールと手すり
とは当然ですが、ご利用される皆さまにおいてもお使
掛けたりしないでください。負荷に耐えられず製品
が破損又は固定が解除されることによって転倒する
てください。
すき間による事故事例
時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
落や寝具の落下を予防するための製品ですので腰
◦サイドレールや手すりは、ベッドで寝ている人の転
体がぐらついたり、ストッパーの固定が出来ないな
ど)がないか定期的に点検してください。
◦サイドレールや手すりの操作がうまくできない方に
は、転落等の事故を防止するためにも操作させな
いでください。
◦固定(ロック)は確実に行ってください。
◦ベッドの上からサイドレールや手すりを操作する際
は転落に注意してください。
以上
ボードとサイドレールのすき間
すき間
サイドレール間の
すき間
すき間
ボードと
サイドレールの
すき間
すき間
床面(ボトム)の外端と
サイドレールとのすき間
ボードと手すりの
すき間
すき間
すき間