Download 平成13年度試験研究成果 病徴観察に よる診断

平成１３年度試験研究成果
区分
指導
題 名 ピ ー マ ン 病 原 ウ イ ル ス CMV ･ PMMoV ･ TSWV の 簡 易 迅 速 診 断
【 要 約 】 県 内 で ピ ー マ ン へ の 感 染 が 認 め ら れ て い る 病 原 ウ イ ル ス CMV ･ PMMoV ･ TSWV
について、病徴観察と市販キットによる簡易な確認検定によって病原ウイルスを迅速に
診断できる。
キーワード
ピーマン
ウイルス
簡易診断
農産部
応用生物工学研究室
CMV
PMMoV
TSWV
病害虫部
病理昆虫研究室
１．背景とねらい
県 内 で ピ ー マ ン で の 発 生 が 確 認 さ れ て い る ウ イ ル ス 病 は 、 CMV (キ ュ ウ リ モ ザ イ ク ウ イ
ル ス )・ PMMoV (ペ ッ パ ー マ イ ル ド モ ッ ト ル ウ イ ル ス )に よ る ピ ー マ ン モ ザ イ ク 病 と 、TSWV
(ト マ ト 黄 化 え そ ウ イ ル ス )に よ る ピ ー マ ン 黄 化 え そ 病 で あ り 、 ウ イ ル ス の 種 類 に よ り 感 染
経路・防除対策が異なるので診断に当たっては病原ウイルスを特定する必要がある。しか
し、ウイルスによる病徴は類似しており診断が難しく、またウイルス検定には一般に時間
を要するため検定結果を踏まえた迅速な病徴観察を行いにくい。この２点が現地での自立
的な診断を妨げる要因となっており、これを解決する診断技術が求められている。
２．技術の内容
( 1 )東 北 化 学 薬 品 か ら 市 販 さ れ る 「 植 物 ウ イ ル ス 診 断 キ ッ ト 」 の ウ イ ル ス 検 出 効 果 を 検 証
し 、 ピ ー マ ン 病 原 ウ イ ル ス の 診 断 に 使 用 で き る と 判 断 し た 。（ 表 １ 、 ２ ）
( 2 )病 徴 観 察 を キ ッ ト に よ り サ ポ ー ト す る 診 断 の 手 順 を 組 み 立 て た 。（ 下 図 ）
病徴観察に
よる診断
ウ
イ
ル
ス
？
モザイク
現地圃場で
キットによる確認
病原ウイルス
の確定
対策
ﾋﾟｰﾏﾝﾓｻﾞｲｸ病
CMV
PMMoV
TSWV
CMV
えそ
TSWV
感染経路
CMV用
陽性
CMV
PMMoV用
陽性
PMMoV
土壌・種子・接触
TSWV用
陽性
TSWV
ﾐｶﾝｷｲﾛｱｻﾞﾐｳﾏ
アブラムシ
ﾋﾟｰﾏﾝ黄化えそ病
病徴観察は岩手県病害虫防除技術情報No.13-5「病徴によるピーマンウイルス病の見分け方」による
図 病徴観察と市販キットによるピーマン病原ウイルスの診断手順
ア．診断株の病徴をつぶさに観察し、病原ウイルスをまず病徴から診断する。
イ ． キ ッ ト に よ る 確 認 検 定 を 行 う 。（ 表 ３ ）
ウ．病原ウイルスを確定する。
３．指導上の留意事項
( 1 )病 原 ウ イ ル ス を 確 定 し て か ら 再 度 病 徴 観 察 し 、ウ イ ル ス ご と の 病 徴 へ の 理 解 を 深 め る 。
( 2 )一 般 に ウ イ ル ス 検 定 で は 病 徴 が あ っ て も 老 化 し た 葉 か ら は ウ イ ル ス が 検 出 さ れ な い こ
と が あ る の で 、 検 体 と す る 葉 は 病 徴 の あ る 上 位 葉 が 望 ま し い 。 特 に TSWV は 罹 病 株 内 で
ウイルスが局在することが知られているので、検定部位はよく吟味する。
( 3 )病 原 ウ イ ル ス を 確 定 で き な い 症 例 に 対 し て は 農 研 が ELISA 検 定 な ど で サ ポ ー ト す る 。
( 4 )多 数 の 試 料 を 同 時 に 検 定 す る 必 要 が あ る 場 合 は ELISA 検 定 の ほ う が 効 率 的 で あ る 。
４．技術の適応地帯
県下全域
５．当該事項に係る研究課題
( 289 )ピ ー マ ン 病 原 ウ イ ル ス の 検 出 ・ 診 断 技 術 の 利 用 ( H.10-13 、 県 単 )
※ウイルス病・細菌病・糸状菌病等の診断技術および防除基礎技術の確立
（岩手県生物工学研究センターとの共同研究）
６．参考文献・資料
( 1 )岩 手 県 病 害 虫 防 除 技 術 情 報 No.13-5 「 病 徴 に よ る ピ ー マ ン ウ イ ル ス 病 の 見 分 け 方 」
( 2 )「 い わ て の 農 作 物 病 害 虫 図 鑑 (Ⅲ )野 菜 ・ 花 き 編 」（ 平 成 ７ 年 版 、 TSWV の 記 載 な し ）
( 3 )平 成 10 年 度 試 験 研 究 成 果 「 ト マ ト 黄 化 え そ ウ イ ル ス に よ る 野 菜 ・ 花 き 病 害 の 発 生 実 態
と 症 状 の 特 徴 」（ 指 導 ）
( 4 )平 成 12 年 度 試 験 研 究 成 果 「 ピ ー マ ン 黄 化 え そ 病 の 発 生 特 徴 と 伝 染 源 」（ 指 導 ）
( 5 )東 北 化 学 薬 品 株 式 会 社 「 植 物 ウ イ ル ス 診 断 キ ッ ト 」 取 扱 説 明 書 （ キ ッ ト に 付 属 ）
７．試験成績の概要
表１
試料
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
「植物ウイルス診断キット」のウイルス検出効果（ELISA法との比較）
CMV
PMMoV
TSWV
採取地点
病 徴 観 察
キット ELISA キット ELISA キット ELISA
石鳥谷町 大瀬川 凹凸／軽微なモザイク
+
+
石鳥谷町 八重畑 凹凸／緑黄ｺﾝﾄﾗｽﾄ明瞭なﾓｻﾞｲｸ
+
+
石鳥谷町 八重畑 凹凸／軽微なモザイク
+
+
石鳥谷町 新堀
緑黄の
あ
+
+
+
+
緑黄ｺﾝﾄﾗｽﾄ明瞭な激しいﾓｻﾞｲｸ
石鳥谷町 新堀
凹凸／軽微なモザイク
+
+
北上市(農研)
縮れたモザイク／えそ斑点
+
+
北上市(農研)
縮れたモザイク／えそ斑点
+
+
北上市(農研)
縮れたモザイク／えそ斑点
+
+
北上市(農研)
縮れたモザイク／えそ斑点
+
+
北上市(農研)
縮れたモザイク／えそ斑点
+
+
北上市(農研)
縮れたモザイク／えそ斑点
+
+
北上市(農研)
軽微なモザイク
+
+
北上市(農研)
無病徴
北上市(農研)
無病徴
北上市(農研)
無病徴
*) ELISAは（社）日本植物防疫協会作製の抗血清を用い、直接法により行った。
（ 考 察 ） CMV ・ PMMoV に つ い て 、 キ ッ ト と ELISA の 検 定 結 果 は よ く 一 致 し て お り 、
キットを診断に使用できると判断した。
表２ 「植物ウイルス診断キット」を用いたTSWVの検定結果
病徴観察
地点
病徴
診断
石鳥谷町 新堀 ①② えそ・黄化
TSWV
石鳥谷町 新堀 ③
激しいえそ・黄化・芽枯れ・芯止まり TSWV(重症)
（病害虫防除課調査）
検体
数
5
2
キットによる
検定結果
全て陽性
〃
（ 考 察 ） TSWV に つ い て 、 現 地 で の 使 用 実 績 よ り キ ッ ト を 診 断 に 使 用 で き る と 判 断
した。
表３
キ ッ ト に よ る 検 定 手 順 （ 詳 細 は 付 属 の 取 扱 説 明 書 、 ｱﾝﾀﾞｰﾗｲﾝは キ ッ ト の 構 成 品 ）
① チ ャ ッ ク 付 ポ リ 袋 に 磨 砕 用 緩 衝 液 を 約 2ml と り 、 約 1cm 四 方 の 葉 片 を 軽 く 押 し つ ぶ す
ように磨砕する。
②試験紙に①の汁液をゆっくり２滴、滴下する。
③試験紙に汁液が吸収されたら検出用試薬をゆっくり３滴、滴下する。
④ 陽 性 の 場 合 、 滴 下 位 置 か ら 上 方 約 １ cm の 位 置 に 、 赤 色 バ ン ド が 現 れ る 。
（ 発 色 ま で の 時 間 は 約 １ ∼ ５ 分 で 概 ね 早 い ほ う か ら CMV ・ TSWV ・ PMMoV の 順 ）
原 理 ： ウ イ ル ス 抗 血 清 を 用 い た 抗 原 抗 体 反 応 「 二 段 階 RIPA 法 」
費 用 ： キ ッ ト は ウ イ ル ス 別 で １ キ ッ ト ( 25 検 体 )で ¥5,000 （ ３ ウ イ ル ス で ¥15,000 ）
１ ウ イ ル ス １ 検 体 で ¥200 (３ ウ イ ル ス 同 時 検 定 だ と １ 検 体 ¥600 )
東 北 化 学 薬 品 よ り 2002 年 １ 月 よ り 発 売 （ 受 注 生 産 ）