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防 衛 庁 規 格
NDS
K 4824
窒素酸化物迅速試験方法
目次
制 定 平成 13.12.20
1.
適用範囲
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1
2.
引用規格
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1
3.
用語の定義
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1
4.
試料
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1
5.
装置及び器具
6.
試験場所
7.
操作
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2
7.1 NOx化学発光分析計の校正
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2
7.2 試験装置
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2
7.3 安全管理
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
3
7.4 測定
7.4.1 フロー法
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
3
7.4.2 バッチ法
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
3
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
4
7.5 計算
7.5.1 フロー法
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
4
7.5.2 バッチ法
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
4
付図1
窒素酸化物迅速試験方法で用いる試料ビンの構造例
付図2
窒素酸化物迅速試験方法における試験装置の配置図例
付図3
窒素酸化物迅速試験方法(フロー法)による測定結果の例
‥‥‥‥‥
7
付図4
窒素酸化物迅速試験方法(バッチ法)による測定結果の例
‥‥‥‥‥
7
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
8
解説
ⅰ
‥‥‥‥‥‥‥‥
5
‥‥‥‥‥‥‥
6
解説付図1
窒素酸化物迅速試験方法(バッジ法)による発射薬の窒素酸化物量
測定結果と耐熱試験における耐熱試験時間との関係
解説付図2
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10
窒素酸化物迅速試験方法(フロー法)による発射薬の窒素酸化物発
生速度の経年変化特性
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 10
ⅱ
防 衛 庁 規 格
NDS
K 4824
窒素酸化物迅速試験方法
1.
適用範囲
制 定 平 成 13.12.20
この規格は,無煙火薬のうち発射薬, 点火薬及び無煙火薬の原料の経年変
化による安定度の程度を詳細かつ迅速に評価するために行う試験方法について規定する。
2.
引用規格
次に掲げる文書は,この規格に引用されることによって,この規格の規定
の一部を構成する。これらの文書は,その最新版を適用する。
3.
JIS B 7982
排ガス中の窒素酸化物自動測定器
JIS B 8402
測定方法及び測定結果の正確さ(真度及び精度)
NDS Y 0001
弾薬用語
用語の定義
この規格で用いる主な用語の定義は, NDS Y 0001 によるほか,次によ
窒素酸化物
一酸化窒素と二酸化窒素の合量であり,一般的に NOx と略称される化合
る。
a)
物群。
b)
c)
試料ガス
試料より発生する窒素酸化物を含んだガス。
NOx化学発光法
自動車の排気ガス及び大気中等に含まれる微量な窒素酸化物の定量
を可能とする分析方法。試料ガス中の二酸化窒素を一酸化窒素に変換する触媒を充填
したコンバータにより試料ガスを前処理した後,一酸化窒素を人工的に発生させたオ
ゾンと化学反応させ,反応時に放出される光(化学発光)の強度を測定することによ
り,試料ガス中の窒素酸化物を定量する。
d)
無煙火薬試料
無煙火薬のうち発射薬,点火薬及び無煙火薬の原料として用いられる
火薬類であり,本規格で記述される試験に用いる試料。
e)
ゼロレベル
窒素酸化物を含まない状態での NOx 化学発光分析計が示す窒素酸化物量
の値。
f)
スパンレベル
NOx 化学発光分析計のゼロレベルを校正した状態における NOx 化学発
光分析計の各測定レンジにおける窒素酸化物量の最大値。
4.
試料
0.1 mg ま で 正 し く は か っ た 5g か ら 10g の 範 囲 の 無 煙 火 薬 試 料 を 用 い る 。
5.
装置及び器具
a)
NOx 化 学 発 光 分 析 計
b)
試験ビン
JIS B 7982 に規定される化学発光分析計を用いるものとする。
付図1 に示すようなねじ口及びおとしこみを有するガラス器具を用いるも
2
K 4824
の と す る 。 試 験 ビ ン は , 容 量 150ml か ら 250ml の も の を 用 い る 。
c)
充填材
直 径 薬 3mm の ガ ラ ス 球 を 用 い る も の と す る 。
d)
恒温水槽
e)
試料袋
65± 1 ℃ で 恒 温 可 能 な も の を 用 い る も の と す る 。
ポリエチレン及びポリエステル繊維製で,試料ガスの流通の良いものを用い
るものとする。
f)
スパン調整用ガス
g)
ゼロ調整用ガス
h)
ガス導管
JIS B 7982 に 規 定 さ れ る 標 準 ガ ス を 用 い る も の と す る 。
99.99 vol% 以 上 の 純 度 の 窒 素 ガ ス を 用 い る も の と す る 。
テフロンチューブもしくはテフロンを内面にコーティングしたチューブを
用いるものとする。
i)
ガス切替コック
6.
試験場所
テフロン製のものを用いるものとする。
本 試 験 方 法 で 用 い る NOx化学発光分析計は,分析計設置場所の温度及び
湿度変化に対し,ゼロレベル,スパンレベル及び感度が変化する場合があるため,可能な
限り恒温恒湿の屋内で行うことが望ましい。その他の試験場所に関する規定は,用いる
NOx 化 学 発 光 分 析 計 の 取 扱 説 明 書 に よ る も の と す る 。
7.
操作
7.1
NOx 化 学 発 光 分 析 計 の 校 正
a)
NOx 化学発光分析計の校正は,試験開始前に実施するものとし,校正法は,JIS B 79
82 及 び 用 い る NOx 化 学 発 光 分 析 計 の 取 扱 説 明 書 に よ る も の と す る 。
b)
校 正 終 了 後 , JIS B 7982 及 び 用 い る NOx 化学発光分析計の取扱説明書により,二酸
化窒素を一酸化窒素に変換するコンバータの変換効率を測定するものとする。
c)
NOx 化学発光分析計のゼロレベル,スパンレベル及び感度は時間の経過に伴って変化
する可能性があるため,無煙火薬試料測定中適宜に校正を繰り返すことが望ましい。
7.2
試験装置
7.3
安全管理
a)
試験は付 図 2 を参考とする配置により行うものとする。
経年変化した無煙火薬試料は,試験における取扱い及び加熱により,発火もしくは急
激 な ガ ス 圧 力の上昇により試験ビンが破裂する恐れがあるため,危害予防上観察者
は,手袋及び保護眼鏡を使用して試験をしなければならない。
b)
試験終了後,試験に用いた無煙火薬試料は,安定度が低下している恐れがあるため,
取扱いには十分に注意し,出来るだけ速やかに処分する。
c)
その他の安全管理については,関連法令等による他,各試験場の取扱い規則による。
3
K 4824
7.4
測定
7.4.1
a)
フロー法
試験ビン,充填材,ガス導管及びガス切替コックを,有機溶剤で洗浄し,十分乾燥さ
せておく。また,試料袋は,各試験毎新しいものを用いるものとする。
b)
試 験 ビ ン に 充 填 材 を 試 験 ビ ン の ね じ 式 栓 上 部 ま で の 高 さ の 約 1/3 ま で 詰 め る 。
c)
無煙火薬試料を試料袋に詰め,試験ビン内の充填材の上に乗せる。
d)
NOx化学発光分析計の試料ガス流入口に試料ビンを取付けない状態で窒素酸化物量を
測 定 し , 背 景 窒 素 酸 化 物 量 と す る 。 ま た , NOx 化学発光分析計へのガス流入量を記録
する。
e)
試 料 ビ ン を 閉 じ , ガ ス 導 管 及 び ガ ス 切 替 コ ッ ク を 付 図 2 に示すように配管した後,
65± 1 ℃ に 調 温 し た 恒 温 水 槽 に 浸 す 。
f)
試 料 ビ ン の外気流入側及び外気流出側に取付けたガス切替コックを用いて試料ビン内
で発生 す る 試 料 ガ ス を NOx化学発光分析計へ導入し,試料ガス中の窒素酸化物量の時
間 変 化 を 測 定 す る 。 こ の 時 ,NOx 化学発光分析計への試料ガス流入量が,背景窒素酸
化物量測定時と同じであることを確認する。
g)
試料ガス中の窒素酸化物量の時間変化がなくなった時点において試料ビンを恒温水槽
か ら 取 り 出 し , 配 管 を 取 り 外 し た 後 , NOx化学発光分析計の試料ガス流入口に試料ビ
ンを取付けない状態で窒素酸化物量を再度測定し,測定した背景窒素酸化物量が,無
煙火薬試料測定前の値と同等であることを確認する。
h)
恒温水槽から取り出した試験ビンは,中の無煙火薬試料が十分冷却された後,ピン
セット等で試料ビンより取り出し,速やかに処分する。
7.4.2
a)
バッチ法
試験ビン,充填材,ガス導管及びガス切替コックを,有機溶剤で洗浄し,十分乾燥さ
せておく。 また,試料袋は,各試験毎新しいものを用いるものとする。
b)
試 験 ビ ン に 充 填 材 を 高 さ 約 1/3 ま で 詰 め る 。
c)
無煙火薬試料を試料袋に詰め,試験ビン内の充填材の上に乗せる。
d)
試 料 ビ ン を 閉 じ , ガ ス 導 管 及 び ガス切替コックを付 図 2 に示すように配管した後,
65± 1 ℃ に 調 温 し た 恒 温 水 槽 に 浸 す 。
e)
試 料 ビ ン 内 に 外 気 を 流 通 さ せ た 状 態 で 30 分 以 上 放 置 す る 。
f)
試料ビンの外気流入側及び外気流出側に取付けたガス切替コックを用いて試料ビン内
を密封し,所定時間無煙火薬試料より発生する試料ガスを,試料ビン内に蓄積させる。
g)
試料ビンの外気流入側及び外気流出側に取付けたガス切替コックを用いて試料ビン内
に 蓄 積 さ れ た 試 料 ガ ス を NOx 化学発光分析計へ導入し,試料ガス中の窒素酸化物量の
時間変化を測定する。なお,測定データの記録は,試料ビン内に蓄積された試料ガス
を NOx化学発光分析計へ導入する以前より開始し,試料ガス導入前の値を背景窒素酸
4
K 4824
化 物 量 と す る 。 ま た , NOx 化 学 発 光 分 析 計 へ の 試 料 ガ ス 流 入 量 を 記 録 す る 。
h)
恒温水槽から取り出した試験ビンは,中の無煙火薬試料が十分冷却された後,ピン
セット等で試料ビンより取り出し,速やかに処分する。
7.5
計算
7.5.1
フロー法
付 図 3 に示すような試料ガス中の窒素酸化物量の時間変化より,試料ガ
ス 中 の 窒 素 酸 化 物 量 が 一 定 と な る 値 を 求 め , NOx 化学発光分析計への試料ガス流入量,背
景窒素酸化物量及び試料量を用いて次式により,無煙火薬試料より発生する窒素酸化物発
生速度を計算する。
v?
(V ? V ' ) ? L
W
こ こ に , v : 無 煙 火 薬 試 料 よ り 発 生 す る 窒 素 酸 化 物 発 生 速 度 (ppm l min-1 g-1 )
V : 試 料 ガ ス 中 の 窒 素 酸 化 物 量 が 一 定 と な っ た 時 の 値 (ppm)
V': 背 景 窒 素 酸 化 物 量 の 値 (ppm)
L : NOx 化 学 発 光 分 析 計 へ の 試 料 ガ ス 流 入 量 (l min - 1 )
W : 試 料 量 (g)
7.5.2
バッチ法
付 図 4 に示すように,測定した試料ガス中の窒素酸化物量の時間変化の
曲 線 よ り , 試 料 ガ ス 中 の 窒 素 酸 化 物 量 の 積 分 値 を 求 め , NOx 化学発光分析計への試料ガス
流入量及び試料量を用いて次式により,無煙火薬試料より発生する所定時間試験ビンを密
封した際に発生した窒素酸化物量を計算する。
S?
ここに, S
S' L
?
W 60
: 無 煙 火 薬 試 料 よ り 発 生 す る 窒 素 酸 化 物 量 ( ppm l g- 1 )
S' : 試料ガス中の窒素酸化物量の時間変化より求めた,試料ガス中の
窒 素 酸 化 物 量 の 積 分 値 (ppm sec)
L
: NOx 化 学 発 光 分 析 計 へ の 試 料 ガ ス 流 入 量 (l min - 1 )
W
: 試 料 量 (g)
5
K 4824
ガラス吸排気管
ねじ式栓
試料ガス排出口
ガラスフィルター
付図1 窒素酸化物迅速試験方法で用いる試料ビンの構造例
6
K 4824
NOA-7000
ガス導管
スパンレベル
調整用ガス
ガス切替コック
(3方)
ガス切替コック
(2方)
ゼロレベル
調整用ガス
化学発光分析計
NO x
恒温水槽
試料ビン
(
A)
充填材高さ
(
試料ビン高さの約1/3)
試料袋
試料ビン高さ
外気取入口へ
NO x
化学発光分析計へ
無煙火薬試料
充填材
B)
(
付図2 窒素酸化物迅速試験方法における試験装置の配置図例
( A)全 体 配 置 図 (B) 試料ビン内の充填材及び試料袋の設置例
7
K 4824
窒素酸化物発生量 ,(ppm)
1.6
1.4
1.2
1.0
試料ガス中の窒素酸化
物量が一定となる区間
0.8
0.6
0.4
0.2
背景窒素酸化物量
0.0
0
10
20
30
40
50
60
70
時間 (分)
付 図 3 窒 素 酸 化 物 迅 速 試 験 方 法 (フロー法)による測定結果の例
窒素酸化物発生量 (ppm)
25
20
バッチ法による窒素酸化物量
測定のための積分区間
15
10
5
背景窒素
酸化物量
フロー状態における発生する
窒素酸化物発生速度のレベル
0
0
20
40
60
80
100
時間 (秒)
付 図 4 窒 素 酸 化 物 迅 速 試 験 方 法 (バッチ法)に よ る 測 定 結 果 の 例
120
8
K 4824
NDS
K 4824
窒素酸化物迅速試験方法
解説
この解説は,本体に規定した事項,並びにこれらに関連した事項を説明するもの
で,規格の一部ではない。
1.
制定の趣旨及び経緯
この規格は,無煙火薬のうち,発射薬,点火薬及び無煙
火薬の原料の経年変化に伴う安定度の変化を詳細かつ迅速に評価することを目的と
し た も の で あ る 。 本 規 格 と 類 似 す る 規 格 と し て は , NDS K 4812B ( 火 薬 類 安 定 度 試
験 方 法 ( サ ー ベ ラ ン ス 試 験 法 ))( 昭 和 51 年 1 月 1 7 日 制 定 ) が , 本 規 格 制 定 以 前 に
は,無煙火薬の安定度を評価する試験方法として防衛庁において用いられていた。
し か し な が ら , N D S K 4 8 1 2 B は , 65.5 ℃ に お い て 無 煙 火 薬 の 安 定 度 を サ ー ベ ラ ン ス
試験ビン内の窒素酸化物量を試験ビン内が赤褐色へ変色する日数を目視により計測
す る も の で あ る 。 NDS K 4812B は , 同 時 に 多 数 の 試 料 を 測 定 す る こ と が 可 能 で あ る
が , 一 方 , 目 視 で の 色 の 変 化 を 確 認 す る こ と か ら 試験 結 果 の 客 観 性 及 び 無 煙 火 薬 よ
り発生する窒素酸化物のうち無色の一酸化窒素に対しては,判定することは困難で
あ る 。 こ れ ら の 理 由 に よ り ,防 衛 庁 技 術 研 究 本 部 第 1 研 究 所 弾 薬 第 4 研 究 室 に お い
て , NDS K 4812B 制 定 以 後 の 分 析 技 術 の 高 精 度 化 及 び 迅 速 化 を 反 映 し , NDS K 4812B
における問題点を補い,無煙火薬の安定度を正確に判定するための試験方法につい
て の 研 究 を 行 い ,成 果 を 基 に 防 衛 庁 規 格 原 案 を 作 成 し た 。規 格 の 作 成 に 当 た っ て は ,
使 用 す る 装 置 及 び 器 具 に 関 し て 類 似 す る 日 本 工 業 規 格 ( JIS B 7982) と の 共 通 化 及
び 市 販 の 器 具 で 試 験 が 可 能 で あ る よ う に 配 慮 し た 。本 規 格 に 類 似 す る 規 格 と し て は ,
MIL STD 286C が 米 国 で 制 定 さ れ て い る 。 し か し な が ら , MIL STD 286C に お い て は ,
無 煙 火 薬 を 140℃ の 高 温 下 に お け る 窒 素 酸 化 物 発 生 量 を 測 定 し 評 価 し て い る が , 防
衛庁技術研究本部第1研究所弾薬第4研究室における研究成果により,試験温度約
70 ℃ 以 上 に お い て 無 煙 火 薬 の 劣 化 機 構 が 変 化 す る 研 究 結 果 を 得 て お り , 試 験 温 度
70℃ 以 下 で 評 価 可 能 に す る た め , MIL STD 286C と は 異 な る 試 験 方 法 を 考 案 し 本 規 格
に記述した。
2.
試験方法
本 規 格 で は ,NOx 化 学 発 光 分 析 計 を 用 い て 無 煙 火 薬 試 料 中 よ り 発 生
す る 窒 素 酸 化 物 を フ ロ ー 法 及 び バ ッ チ 法 の い ず れ か を 用 い て 測 定 す る ため の 試 験 方
法について記述した。フロー法では,無煙火薬試料より発生する窒素酸化物の発生
速度を測定することができ,バッチ法では試験ビンを所定時間密閉する間発生する
窒素酸化物総量を測定することができる。
2.1
フロー法
フロー法を用いる利点としては,試験方法が,バッチ法に比べ単
純であり,かつ,無煙火薬より発生する窒素酸化物の発生速度を直接測定でき,さ
ら に 用 い る N Ox 化 学 発 光 分 析 計 の 性 能 に よ り ,発 生 す る 窒 素 酸 化 物 中 の 一 酸 化 窒 素
と二酸化窒素の発生速度を分離して測定することが可能な点である。一方,フロー
法 に お ける 問 題 点 と し て は , 安 定 度 が 高 い 無 煙 火 薬 試 料 に 対 し て は , 窒 素 酸 化 物 の
発 生 速 度 の 値 が 極 端 に 低 く , NOx 化 学 発 光 分 析 計 の 検 出 限 界 以 下 に な る 恐 れ が あ る
解1
9
K 4824
点である。また,無煙火薬試料中に揮発成分を多量に含む場合,測定中に揮発成分
が 蒸 発 し , N Ox 化 学 発 光 分 析 計 内 の コ ン バ ー タ ー に よ り 熱 分 解 を 受 け て 窒 素 酸 化 物
を発生し,擬似的の窒素酸化物の発生速度が増加して計測される点である。用いる
無煙火薬試料においてこのような恐れのある場合は,バッチ法を用いることを推薦
する。
2.1
バッチ法
バッチ法を用いる利点としては,安定度の高い無煙火薬試料に対
し て も 試 験 ビ ン の 密 閉 時 間 を 長 く す る こ と に よ り , NO x 化 学 発 光 分 析 計 の 検 出 限 界
以上で発生する窒素酸化物量を測 定することが可能な点にある。一方,バッチ法に
おける問題点としては,規格付 図 4 に示すように,窒素酸化物量の計算のために積
分計算を行わなければならず,フロー法に比べ計算が煩雑となる点である。また,
バッチ法では,窒素酸化物中の一酸化窒素と二酸化窒素の量を分離することは困難
である。
3.
実施例
解 説付図1 にバッチ法で測定したダブルベース発射薬の窒素酸化物
量の結果と火薬類取締法における耐熱試験結果との関係を示す。解 説 付図1 よりシ
ン グ ル ベ ー ス 発 射 薬 及 び エ チ ル セ ン ト ラ リ ッ ト( ECL) を 安 定 剤 と し て 含 む ダ ブ ル ベ
ース発 射薬は,耐熱試験時間が短くなる(安定度低下)に従って 窒素酸化物迅速試
験方法 により窒素酸化物量が指数的に増加していることが分かる。一方,同じく解
説 付 図 1 よ り , ジ フ ェ ニ ル ア ミ ン ( DPA ) を 安 定 剤 と し て 含 む ダ ブ ル ベ ー ス 発 射 薬
は,バッチ法による結果と耐熱試験における結果の間の傾向が,シングルベース発
射 薬 及 び エ チ ル セ ン ト ラ リ ッ ト( ECL) を 安 定 剤 と し て 含 む ダ ブ ル ベ ー ス 発 射 薬 の 示
す傾向と逆になっていることが分かる。この特異な傾向は,耐熱試験においてダブ
ル ベ ー ス 発 射 薬 に 含 ま れ る DPA が , 試 験 で 用 い る よ う 化 カ リ ウ ム デ ン プ ン 紙 の 変 色
を阻害して,見かけ上耐熱試験時間を増加させているためである。
解説付図2にフロー法で測定した経年に伴うシングルベース発射薬とダブルベ
ース発射薬の窒素酸化物発生速度の結果を示す。解説付図2 から,シングルベース
発射薬及びダブルベース発射薬とも経年によって窒素酸化物発生速度が増加するこ
とから,安定度が徐々に低下していくことが分かる。また,ダブルベース発射薬は,
シングルベース発射薬に比べて高い窒素酸化物発生速度を示しているが,この現象
は,ダブルベース発射薬からは,窒素酸化物のうち二酸化窒素が,シングルベース
発射薬に比べ多量に発生しているためであるとの結果を得ている。
4.
参考文献
1)
木 村 潤 一 ,“ 火 薬 類 エ ー ジ ン グ の 研 究 ( 第 2 報 )( NOx 化 学 発 光 法 に よ る 火 薬 類
2)
の 低 温 熱 分 解 の 研 究 ”, 防 衛 庁 技 術 研 究 本 部 技 報 , 第 6200 号 , 平 成 3 年 12 月
丸 山 淳 , 木 村 潤 一 ,“ マ イ ク ロ DSC に よ る 火 薬 類 の 研 究 ( そ の 1 ) 硝 酸 エ ス
3)
テ ル の 発 熱 特 性 ”, 防 衛 庁 技 術 研 究 本 部 技 報 , 第 6696 号 , 平 成 11 年 9 月
木 村 潤 一 , ”弾 火 薬 の 安 全 寿 命 と 性 能 寿 命 全 3 回 ( そ の 1 ) ”, 防 衛 技 術
ジ ャ ー ナ ル , Vol. 18 , N o . 1 0 , 4 ( 1 9 9 8 ) .
解2
10.
K 4824
4)
木 村 潤 一 , ”弾 火 薬 の 安 全 寿 命 と 性 能 寿 命 全 3 回 ( そ の 2 ) ”, 防 衛 技 術
5)
ジ ャ ー ナ ル , Vol. 18 , No. 11 , 4 ( 1 9 9 8 ) .
木 村 潤 一 , ”弾 火 薬 の 安 全 寿 命 と 性 能 寿 命 全 3 回 ( そ の 3 ) ”, 防 衛 技 術
ジ ャ ー ナ ル , Vol. 18 , N o . 1 2 , 1 2 ( 1 9 9 8 ) .
窒素酸化物量 (ppm l/ g)
3.0
2.5
シングルベース発射薬及びECL
を含むダブルベース発射薬
2.0
DPAを含むダブルベース発射薬
1.5
1.0
0.5
0.0
0
5
10
15
20
25
30
耐熱試験時間 (分)
解 説 付 図 1 窒 素 酸 化 物 迅 速 試 験 方 法 (バ ッチ法)に よ る 発 射 薬 の 窒 素 酸 化 物
量測定結果と耐熱試験における耐熱試験時間との関係 (試料ビン密閉時間3
0分 で の 結 果 )
窒素酸化物発生速度 (ppm l/min g )
1.0
ダブルベース発射薬
0.8
0.6
0.4
シングルベース発射薬
0.2
0.0
0
5
10
15
20
25
経年数 (年)
解 説 付 図 2 窒 素 酸 化 物 迅 速 試 験 方 法 (フロー法)による発射薬の窒素酸
化物発生速度の経年変化依存性
解3.