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医療 機 器の安全管理
NO.21
医療機器の不良や医療スタッフの不適正使用による医療事故が頻発している。平成17年4月1日から施行
された薬事法改正により医療機器の製造(輸入)の承認、許可制度の見直し、市販後安全対策の充実がより強
化された。医療事故は益々責任が明確になるといえる。
ここでは、医療機関における医療機器の日常点検、保守点検の実態、医療機器安全講習会の実施状況等か
ら、医療機器の安全管理のあり方を専門家に論じて頂いた。また、病院の中枢機器であるモニタ、人工呼吸
器と安全管理システムについての事故防止支援を提案頂いている。
医療機関における医療機器保守点検
の実態からみた安全管理の必要性
名城大学大学院都市情報学研究科 保健医療情報学 教授
酒井順哉
ニュアルの 未 整 備などの 管 理 因 子( M a n a g e m e n t
1.医療機器安全を取り巻く現状
factor)に大別できる。
今日の医 療 機 器のめざましい発 展によって、従 来
特 に 、管 理 因 子 の 是 正 に は 、病 院 長 がリスクマ
では困難とされた治療・検査・手術も可能となった。
ネジメント委員会を組織し、医療事故防止のための
し かし 一 方 で 、医 療 機 器 の 構 造 欠 陥 や ロット不
安 全 性 情 報 の 伝 達 体 制 を 確 立 するとともに 、院 内
良 による 不 具 合 に 加 え 、医 療 スタッフの 不 適 正 使
で発生する不具合やヒヤリハット事例を全職員から
用 が 原 因 で 類 似した 医 療 事 故 が 繰り返して 起 こっ
吸 い 上 げる報 告 体 制 を 確 立しなけ れ ば ならないこ
ている。
とがわかる。
各種医療事故調査例によると、医療事故の原因
このような 意 味 で 、病 院 長 や 各 部 局 の 管 理 者
の 約 3 / 4 は 医 療 スタッフのヒューマンエラーによる
は 院 内 のヒヤリハット事 例 の 収 集 にとどまるだ け
ものである。ヒューマンエラーは 、医 療 事 故に 関 与
で は 、医 療 用 具 の 不 具 合 を 未 然 に 防ぐことが で
した 当 事 者 の 知 識 や 経 験 の 不 足・勘 違 い・憶 測 、
きな い た め 、医 療 機 関 で 得られ る 利 用 可 能 な 全
安 全 意 識( モチ ベーション)の 欠 落 、作 業 手 順 の 省
てのリソー ス( 人 、機 器 、情 報 等 )を、有 効 か つ
略( 経 験 過 信 か ら の 手 抜 き )な ど の 人 的 要 因
効 果 的 に 活 用し 、医 療 スタッフの 力 を 結 集して 、
(Human factor)
と、医 療 機 器・設 備 の 扱い 難さ、
業 務 遂 行 を 行 う C R M( C r e w
Resource
医 療 スタッフ間 のコミュニケーション不 足などの 環 境
M a n a g e m e n t )の 考 え 方 を 医 療 スタッフに 浸 透
因子(Environmental factor)
と、監督者による安
させる 必 要 が ある。
全 指 導 の 不 徹 底 、不 具 合 情 報 の 伝 達 遅 延 、診 療 マ
厚生労働省は、平成14年(2002年)10月に医療
1
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機 関 の 安 全 管 理 体 制 の 充 実 を 図 る べく、す べ て
3 6 6 施 設( 3 9 . 1 % )の 施 設 から1 , 3 0 2 件 の 回 答 が あ
の 病 院 及 び 有 床 診 療 所 に 対して 、医 療 安 全 管 理
り、そ の 内 訳 は 、診 療 科 が 2 8 8 件( 7 8 . 7 % )、看 護
体 制 の 確 保 の た め 、管 理 者 の 設 置 、安 全 管 理 指
部が334件(91.3%)、ME室が244件(66.6%)、手
針 の 整 備 、安 全 管 理 委 員 会 の 開 催 、安 全 管 理 の
術 部 が 1 8 8 件( 5 1 . 4 % )、資 材 部 が 2 4 8 件( 6 7 . 8 % )
た め の 職 員 研 修 の 実 施 、医 療 安 全 の 確 保 を目的
であった。
医 療 機 関 に おけるME室 の 組 織 化 の 現 状 や 専 任
とした 改 善 の た め の 方 策 確 保 に つ いて 義 務 付 け
1)
た 。また 、平 成 1 5 年( 2 0 0 3 年 )7 月3 0日から 、医
の臨床工学技士の定員化の現状は、
「当院にはM
療 機 関 が 医 薬 品 また は 医 療 用 具 に つ いて 、副 作
E 室 も 、専 門 の 臨 床 工 学 技 士 もい る 」が 6 8 0 件
用 等 の 発 生 を 確 認した 場 合 、厚 生 労 働 大 臣 に 対
( 5 5 . 5 % )、
「 ME室 はない が 、専 任 の 臨 床 工 学 技 士
し副作用・不具合等を報告することが義務付けら
はいる」が348件(28.4%)、
「ME室も、専任の臨床
2)
れた 。
工 学 技 士もいな い 」が 1 9 7 件( 1 6 . 1 % )となり、M E
一 方 、医 療 機 関 は 財 団 法 人 日 本 医 療 機 能 評
室 の 組 織 は 半 数 程 度 に 留まって いることが わ か っ
価 機 構 な ど の 第 三 者 機 関 か ら 医 療 の 質 、医 療
た 。このことから 、医 療 機 器 の 新 規 購 入 時 の 講 習
安 全 の 確 保 、病 院 機 能 が 客 観 的 に 評 価 され 、そ
と定 期 的 な 安 全 講 習 の 両 方 を 行 って い る 割 合 が
れ によって 病 院 の 格 付 け や 特 定 加 算 も 行 わ れ る
1 / 3 に 留まり、医 療 スタッフの 入 れ 替 えや スタッフ
時 代 となり 、患 者 は こ れ ら の 情 報 を 基 に 、より
採 用 により、残り2 / 3 は 医 療 機 器 の 取り扱 いを 十
透 明 性 の 高 い 医 療 機 関 を 選 択 す ること が 予 想
分 に 把 握 できず に 使 用 する 危 険 性 が 発 生 すること
され る 。
が推測される。
このような 中 、平 成 1 7 年( 2 0 0 5 年 )4 月1日から
医 療 機 関 で 管 理されている医 療 機 器・設 備 は 、
施 行 され る 薬 事 法 改 正 によって 、医 療 機 器 の 品 質
病院全体で中央管理している医療機器と、各部門
は 製 造( 輸 入 )の 承 認・許 可 制 度 の 見 直 し や 市 販
で 管 理している医 療 機 器と、医 療 電 気 設 備 、医 療
後 安 全 対 策 の 充 実 がより強 化 され るた め 、医 療 機
ガス設備の4つに大別できる。
関 に お ける 医 療 スタッフの 不 適 正 使 用 や 医 療 機 器
ここで 、安 全 使 用 の た め の 始 業 点 検・終 業 点
の 保 守 点 検 の 未 実 施 など 医 療 機 関 の 安 全 管 理 体
検 など の日常 点 検 を 実 施 して い る 部 門 を 集 計 す
制の不備が原因での医療事故は益々責任が明確
ると、中 央 管 理 の 医 療 機 器 の日常 点 検 は 、ME室
となる。
が 6 割 強 で あ る 一 方 、各 部 門 が 2 割 弱 に 留 まって
今回、医療機関における医療機器の日常点検・
い た( 図 1 )。また 、部 門 管 理 の 医 療 機 器 の日常
保守点検の実態とともに、医療スタッフの医薬品・
点 検 は 、各 部 門 独 自 の 点 検 が 約 5 割 で あ る が 、
医 療 機 器 添 付 文 書 の 把 握 の 実 態 、医 療 機 器 安 全
約 3 割 が ME室 で 代 行して い た 。一 方 、各 部 門 の
講 習 会 の 実 施 状 況 から、医 療 機 器 の 安 全 管 理 の
医 療 電 源 設 備 お よび 医 療 ガ ス 設 備 の日 常 点 検
あり方について考えてみた。
は 、事 務・資 材 部 が 約 3 割 、外 注 業 者 が 2 割 強 で
あり、各 部 門 自ら の日常 点 検 は 2 割 弱 に 留 まって
2.医療機関における医療機器の
日常点検・保守点検の実態
いた。
ま た 、日常 点 検 を 実 施 して い る 職 種 を 集 計 す
ると 、中 央 管 理 の 医 療 機 器 の日常 点 検 は 、臨 床
著 者 は 、平 成 1 5 年( 2 0 0 3 年 )1 2 月上 旬 、一 般 病
工 学 技 士 が6割 弱 で あ る 一 方 、看 護 師 が 2 割 に
床 3 0 0 床 以 上 の 医 療 機 関 9 3 5 施 設 でリスクマネジメ
留 まって い る( 図 2 )。ま た 、部 門 管 理 の 医 療 機
ント委 員 会 に 参 加 する診 療 科(リスクマネジャーの
器 の日常 点 検 は 、看 護 師 が 4 割 で 最 も 多く、次 い
医 師 )、看 護 部( 医 療 安 全 対 策 室 また は 病 棟 の 看
で 臨 床 工 学 技 士 、臨 床 検 査 技 師・診 療 放 射 線 技
護 師 )、ME室( 臨 床 工 学 技 士 )、手 術 部( 手 術 部
師 、医 師 など 様 々 な 職 種 に よって 行 わ れ て い る
長・麻 酔 部 長また は 看 護 師 長 )、資 材 部( 材 料 部 、
こと が わ か っ た 。ま た 、各 部 門 の 医 療 電 源 設 備
事 務 部 、S P D を 含 む )の 5 部 門 を 対 象として、医 療
お よ び 医 療 ガ ス 設 備 の日 常 点 検 は 、約 5 割 で 事
機器の日常点検・保守点検の実態とともに、医療ス
務 官( 施 設 係 な ど )や 外 注 業 者 に 依 頼 す る 傾 向
タッフの 医 薬 品・医 療 機 器 添 付 文 書 の 把 握 の 実
に あり、医 療 スタッフ の 介 在 は 医 師・看 護 師・臨
態 、医 療 機 器 安 全 講 習 会 の 実 施 状 況 に ついてアン
床 工 学 技 士 を 併 せ て も 4 割 に 満 た な い こと が わ
3)
ケート調 査を 実 施した 。アンケートの 有 効 回 答 は
か った 。
2
次に、医 療 機 器 の 保 守 点 検( 具 体 的には 、修 理
いる施 設も1∼ 2 割 の 範 囲 であった 。また 、各 部 門
や 安 全 のための 機 能 点 検など ) の 現 状を調 べ たと
の 医 療 電 源 設 備 および 医 療 ガス設 備 の 保 守 点 検
ころ、中 央 管 理 の 医 療 機 器 の 保 守 点 検は 、ME室
は 、4 割 以 上 で 外 注 業 者 に 依 頼されており、次 い
が 6 割 強 、外 注 業 者 が 2 割 である一 方 、各 部 門 が
で 事 務 官( 施 設 係 など )、そ の 他 の 職 種 に 任され
1 割 弱に 留まっていた( 図 3 )。また、部 門 管 理 の 医
ていた 。さらに 、医 療ガス設 備 の 保 守 点 検 の 委 託
療機器の保守点検も、ME室が4割弱と最も多いも
傾向はさらに顕著であった。
のの、各部門が3割弱、外注業者が約3割であった。
以 上 のことから 、日常 点 検・保 守 点 検 の い ず れ
一方、各部門の医療電源設備および医療ガス設備
に お い ても 、中 央 管 理 の 医 療 機 器 に つ い て ME
の 保 守 点 検 は 、外 注 業 者または 資 材 部 が 全 体 の
室 の 臨 床 工 学 技 士 が 主 体 とな って 点 検 され る 傾
7割強となり、代行傾向にあることがわかった。
向 に ある が 、部 門 管 理 の 医 療 機 器 に つ いて 管 理
また 、医 療 機 器・設 備 の 保 守 点 検を行っている
体 制 が 明 確 で なく、様 々な 部 門・職 種 によって 実
職種を集計すると、中央管理の医療機器の保守点
施 され て い ることから 、そ の 点 検 内 容 に つ い て
検は7割弱で臨床工学技士が行っている一方、2割
大きな 差 異 が あることが 予 想 され る 。また 、ME
強で外 注 業 者が 行っていることがわかった( 図 4 )
。
室 が 設 置 されて い る 医 療 機 関 に お い て は 、医 療
また、部門管理の医療機器の保守点検は、臨床工
機 器 保 守 点 検 を 実 施 する 医 療 スタッフ が 不 在 な
学 技 士 や 外 注 業 者 によることが 多 いが 、医 師 、看
た め 、事 務 部 や 外 部 委 託 の 傾 向 に あり、す べ て
護 師 、臨 床 検 査 技 師・診 療 放 射 線 技 師 が 行って
の 医 療 機 器 に つ いて 保 守 点 検 されて い るか は 疑
〈図1〉 医療機器・設備の日常点検の実施部門
〈図3〉 医療機器・設備の保守点検の実施部門
〈図2〉 医療機器・設備の日常点検の職種
〈図4〉 医療機器・設備の保守点検の職種
3
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問である。
一 方 、医 療 電 気 設 備 および 医 療 ガス設 備 の 定
期 点 検・保 守 点 検 は 、事 務 部 や 外 部 委 託 の 傾 向
にあるが、少なくとも、各部門の設備環境の日常点
検 に ついては 、各 部 門 の 医 療 スタッフが 安 全 確 認
を行うべきであろう。
3.医療機関における
医療機器添付文書の把握実態
厚生労働省は医療機器添付文書の作成に関
して 、医 療 スタッフ が 医 療 機 器 を 安 全 か つ 有 効
に 使 用 する 上 で 不 可 欠 な ハ イライト 情 報 と 規 定
し 、医 薬 局 長 通 知 で 医 療 機 器 の 製 造 業 者 / 輸 入
販 売 業 者 に 対して 平 成 1 5 年( 2 0 0 3 年 )1 月1 4日か
ら 出 荷 され る 医 療 機 器 に 添 付 文 書 の 作 成 を 義
〈図5〉 医薬品・医療機器添付文書の把握状況
4)
務 付 け た 。この 通 知 により、医 療 機 器 の 使 用 方
法 、注 意 事 項 、保 守 点 検 方 法 など を わ かりや す
く添 付 文 書 に 記 載 する 体 制 が 確 立 し 、医 療 スタ
ッフ へ の 説 明 責 任( a c c o u n t a b i l i t y )を 明 確 に
4.病院における医療機器安全講習の
開催および参加実態
した 。
し かし 、病 院 に おいて 医 療 スタッフが 医 療 機 器
に 添 付され る添 付 文 書 や 取 扱 説 明 書 の 禁 忌・警
医 療 スタッフを 対 象として 開 催され る医 療 機 器
告 や 特 扱 い 上 の 注 意 事 項を十 分 に 把 握 せ ず 使っ
の 安 全 講 習 会 や 勉 強 会などの 教 育 体 制 の 実 践 状
ているケースが推測される。
況を尋 ねたところ、新 規 購 入 時 の 講 習 会と定 期 的
医 療 機 器 の 添 付 文 書 をど の 程 度 把 握して い る
な 講 習 会 を 併 せ て 実 施 して い る 回 答 は 4 1 5 件
か を 医 療 機 関 に 尋 ね たところ 、医 薬 品 、医 療 機
(34.2%)に留まった(図6)。
器 、医 療 材 料 の 添 付 文 書 を 全 員 また は 大 部 分 の
また、医療機器の安全講習を受講している医療
医 療 スタッフ が 把 握して い る 割 合 は 5 割 以 上とな
スタッフは 部 門 全 体 のどの 程 度を占 めるかを尋 ね
るものの、医薬品、医療機器、医療材料に共通し
たところ、
「医療スタッフの全員が受講している」が
て 把 握 が 半 数 に 満 た な い 割 合 が 4 割 に 達 し 、医
7 5 件( 7 . 1 % )、
「 大 部 分 の 医 療 スタッフが 受 講して
療 スタッフに お い て 添 付 文 書 が 十 分 に 把 握 され
いる」が481件(45.2%)、
「医療スタッフの5割未満
て い な い 現 状 が 推 測 され た( 図 5 )。特 に 、添 付
に 留まっている」が 2 2 8 件( 2 1 . 4 % )、
「 限られ た 医
文 書 の 把 握 が 比 較 的 容 易 に できる 医 療 材 料 に お
療 スタッフのみ が 受 講している」が 2 7 9 件( 2 6 . 2 % )
ける 添 付 文 書 の 把 握 徹 底 が 不 十 分 で あ ることは
であった(図7)。
問題である。
以 上 の こと か ら 、医 療 機 器 の 新 規 購 入 時 の
このように 、添 付 文 書 の 把 握 状 況 が 悪 い の は 、
講習と定期的な安全講習の両方を適正に行っ
今 まで 病 院 に 医 療 機 器 の 添 付 文 書 を 把 握 する 慣
て い る 割 合 が 1 / 3 に 留 まり、残 りの 2 / 3 で は 、
習 が な い ことだ け で なく、医 療 現 場 で 添 付 文 書
医 療 スタッフ の 入 れ 替 えや スタッフ 採 用 により、
を 見 る 余 裕 が な い た めと 考 えら れ る 。また 、繰
医 療 機 器 の 取 り扱 い を 十 分 知 らず に 使 用 する
り返 し 使 用 され る 医 療 機 器 に お い て は 、医 療 機
危 険 性 が 発 生 する 。さら に 、約 半 数 が 医 療 機 器
器 本 体 に 添 付 文 書 また は そ れ を 簡 略 化した マニ
の 安 全 教 育 を 受 講 して い な い 現 状 に あり、病 院
ュアル を 添 えて お か な いと、ファイルし 保 管 した
で 講 習 会 をビデ オ で 取 り、い つ でも 閲 覧 できる
添 付 文 書 から 迅 速 に 対 応 付 け することも難しく、
体 制 や 、講 習 会 の 内 容 を 把 握 し た 医 療 スタッフ
見 た いときに 見 るに は 紙 媒 体 で の 限 界 が あ るこ
名 を 確 認 す る な ど の 教 育 管 理 体 制 が 必 要 とな
とがわかった。
ろう。
4
取ることが可能となる。
今 後 、医 療 の 安 全 性 向 上 は 勿 論 、病 院 経 営 の
改 善を 図 るには 、医 療 用 語・コードの 標 準 化と情
報 交 換 の 標 準 インターフェースをベースとして、診
断・治 療 技 術 に 関 する医 療 技 術 評 価 、EBM 、診
療 成 績 の 積 極 的 な 開 示 、病 院 の 診 療 機 能 の 第 三
者機関による評価が必要である。
特 に 、医 薬 品 、医 療 機 器 、医 療 材 料などの 医 療
資 材 に ついては 、製 造 から消 費まで 一 貫して 利 用
できるよう、
「 モノ」と「 情 報 」を1対1に 対 応 付 ける
〈図6〉 医療機器の安全教育の実施状況
べく、国 際 的 に 整 合 性 のある商 品コードとバーコ
ードを 活 用した 物 流システムと安 全 チェックシステ
ムとの連動が必要である。
そのためには 、医 薬 品・医 療 機 器・医 療 材 料 の
コード・バーコードを各医療機関で独自に付番する
のではなく、製造業者/輸入販売業者が業界標準
の 商 品コードをW e b 上 に 登 録・公 開 するとともに 、
医 療 資 材 の 個 装( 使 用 単 位 )に バーコード 表 示を
行うことが不可欠である。
医療材料の標準化については、医療業界物流の
合 理 化と医 療 の 安 全 性 向 上を目指して、日本 医 療
〈図7〉 医療機器の安全教育の受講状況
機 器 関 係 団 体 協 議 会( 現・日本 医 療 機 器 産 業 連 合
会 )が 平 成 1 1 年( 1 9 9 9 年 )9月に「 医 療 材 料 商 品コ
5.ヒューマンエラーをバックアップする
ード・バーコード標 準 化ガイドライン」を策 定し、医 療
材 料 の 商 品コードに J A N( J a p a n e s e A r t i c l e
IT支援と標準化の重要性
Number)
( 国際的にはEAN(European Article
患 者 の 取り違 いに ついては 、患 者IDの 付 与さ
Number)、UPC (Universal Products Code)
れ たリストバンドを つけることや 、患 者 名をフルネ
を含む)
を使うとともに、医 療 材 料の外 箱・中箱・個
ームで 確 認 することで 可 能 であるが 、誤った 医 療
装(使用単位)に「有効期限/使用期限」、
「数量」、
機器・医療材料を使用することのチェックは多忙か
「ロット番 号 」または「シリアル番 号 」をU C C / E A N 5)
128バーコードで表示することを業界標準化とした 。
つ煩雑な医療現場で回避することは難しい。
この 標 準 化 の 動 向 は 、既 に 医 療 材 料 だ け でな
これを 解 決 する手 段として、医 療 機 器・医 療 材
料 に 表 示され た バーコードを使 用 直 前 に 医 師・看
く、医療機器や医薬品までに発展する方向にあり、
護 師 が バーコード・スキャナーで 直 接 読 み 取り、オ
この 標 準 化 の 考え 方を導 入 することで、他 の 医 療
ーダ 情 報と現 物 確 認 や 有 効 期 限 等をチェックする
機関で発生した不具合事例を迅速に入手すること
方法が考えられる。
も可能となる。
このことが 実 現 することで、従 来 、マンパワーだ
医 療 機 器 の 適 正 使 用 に 役 立 てるために 、独 立
けに頼っていた安全確認を、機械的な安全支援シ
行 政 法 人 医 薬 品 医 療 機 器 総 合 機 構 は 、平 成 1 7 年
( 2 0 0 5 年 )6月頃 に 新 たに 医 療 機 器 の 各 企 業 の 協
ステムでバックアップできる。
今 後 、わ が 国 に おいても同 様 のインフラ整 備 が
力 で 医 療 機 器 の 添 付 文 書を医 療 機 器 添 付 文 書 デ
整うことによって、診 療 業 務 の 発 生 する医 療 現 場
ータベースに 登 録し 、医 薬 品と類 似した 電 子 検 索
で、患 者 に 使 用 する医 療 資 材 に バーコードを表 示
で 医 療 機 器 の 添 付 文 書をインターネットで 提 供 す
し、いつ(使用日時)、だれが(医療スタッフ)、だれ
る「医療機器情報提供システム」の運用を計画して
に( 患 者 )、何を( 医 療 資 材 の 商 品 識 別 )、どうした
いる 。
6)
( 使 用・投 与 )を バーコード 付き無 線 型 携 帯 端 末
これ が 実 現 することで、病 院の医 師・看 護 師・臨
( P D A:P e r s o n a l D i g i t a l A s s i s t a n c e )で 読 み
床工学技士などの職種に対応した医療機器の添付
5
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文 書を電 子 化して供 給 することができ、適 正 使 用が
で 行っていた 安 全 確 認を、バーコード 付き無 線 型
図れ、医療安全が確実となるものと期待できる。
携 帯 端 末 等 の 機 械 的 な 安 全 支 援システムを 付 加
無 線 L A N の 環 境 で バーコード 読 み 取り機 能 付
し 、添 付 文 書 の 簡 易 把 握 や 人 間 による安 全 確 認
き携 帯 端 末を使 用 することで、病 棟 や 手 術 室 の 各
をバックアップする有用性を提案した。この方策は
患 者 の 傍らで 発 生 するアクションを即 時 に 登 録し 、
単 に 医 療 安 全 が 強 化されるだけでなく、各 医 療 資
そ のレスポンスを 受 けることが 可 能となる。特 に 、
材 の 院 内 物 流を記 録 することで、不 良 在 庫 の 把 握
医 療 材 料 の 個 装 や 医 療 機 器 本 体 に 表 示され た バ
や 最 小 安 全 在 庫を 決 定 でき、病 院 経 営 の 向 上 に
ーコードを 読 み 取り、診 療 行 為 の 記 録として 保 存
役立つことができる。
するには有用な方法である( 図8)。
さらに 、電 子カルテシステムと結び つけることで、
クリティカルパスの見直しやEBMの実践に役立つ。
今 後 、医 療 現 場 に おいて I Tを 利 用した 医 療 安
全 に 役 立 つ 環 境 作りに 、M E 室 の 組 織 化と臨 床 工
学 技 士 の 定 員 化 は 不 可 欠 で あり、臨 床 工 学 技 士
が主体となって医療機器医療安全を確保する体制
が早急に整備されることを期待したい。
〈参考文献〉
1)厚生労働省(2002)
:医療安全対策のための医療法施行
規 則一部改正、http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/
i-anzen/2/kaisei/.
2)厚生労働省(2003)
:医療機関等からの医薬品又は医療
用具についての副作用、感染症及び不具合報告の法制化に
伴う実施要領の制定について
(医薬発第0515014 号)
.
3)酒井順哉、那須野修一、安食和子、石川 廣(2003)
:医療
用具添付文書情報の活用方策に関する検討、平成15年度
厚生労働科学研究(医薬品等医療技術リスク評価研究事業)
分担研究報告書、常川印刷、名城大学大学院.
4)厚生労働省(2001)
:医家向け医療用具の添付文書記載
要 領 について( 医 薬 発 第 1340号 、医 薬 安 発 第 158号 )、
http://www.t-mia.org/1340.pdf.
5)
日本医療機器関係団体協議会(1999)
:
「医療材料商品
コード・バーコード標準化ガイドライン」
6)酒井順哉(2004)
:医療機関における医療機器保守点検の
実態からみた医療機器管理室の必要意識、医科器械学、
Vol.74, No.11、pp.681― 687.
〈図8〉 添付文書とバーコードの利用概念
6.まとめ
医 療 スタッフが 安 全な 医 療を 実 践 する上 で、医
療機器添付文書の内容把握や医療機器安全講習
会 へ の 参 加 が 重 要 であるが 、現 状として 十 分 に 実
践されていないことを述べた。
これ を 解 決 するために 、従 来 、マンパワーだ け
6
病棟向けモニタによる
事故防止支援システム
フクダ電子株式会社 ME開発部部長 学術博士 真
医
柄
療 事 故をいかに 防ぐかということは 、メーカ
タとの通信に障害が発生した場合にも看護師に異
ーにとっても大きな 課 題 になってきている。
常を知らせることが可能なシステムとなっており、さ
生 体 情 報 モニタの 本 質 的な役 割は 、医 師・看 護 師
らなる安全確保に貢献している。
に代わって患者様の容態を監視することであり、い
かに 医 療 スタッフの 省 力 化 の 要 求 に 応えられるか
双方向無線通信 TCON
が重要であるが、
本来の患者監視の役割以外にも、
TM
さまざまな 情 報 処 理 作 業を行える可 能 性を持 つよ
一 般 の 病 棟 では 、患 者 様 の 脇 に 設 置され た ベ
うになった。以 下に、これらを活 かした、病 棟 向け
ッドサイドモニタで取り込んだデータを、ナースステ
の事故防止支援システム
( 図1)を提案する。
ーションに 設 置され たセントラルモニタに 医 用 テレ
メータで 送 信し 、集 中 監 視 するシステムが 使 わ れ
ることが 多 い 。テレメータ方 式 は 、監 視 できるパラ
外部機器アラーム監視
メータ数 に 制 限 が あるものの 、通 信 用 ケーブル が
医 療 機 器 は 品 質・安 定 性 の 向 上と、医 療 スタッ
不要で設置が比較的容易であるという利点を持っ
フの 不 足 が 相まって、I C U の みならず、一 般 病 棟
ている。し かし 、安 全 面 から考えると、医用テレメ
でも人 工 呼 吸 器 、輸 液 ポンプ、シリンジポンプなど
ータが 一 方 向 の 通 信 であることに 注 意を払う必 要
の 生 命 維 持 装 置 が 使 用されるようになってきてい
がある。つまり、
『セントラルモニタからベッドサイド
る。生 命 維 持 装 置 は 幾 重 にも安 全 防 止 の 機 構 が
モニタに 情 報を流 すことが できない』とか 、
『 ベッド
組 み 込まれ た 上 で、さらに 万 が 一 の 故 障 等 に 備え
サイドモニタからの 情 報 が セントラルモニタに 届 い
て多種のアラームで動作状況を知らせる機構を持
たかどうかが分からない』、という限界があるため、
っている。し かし 、アラームは 、視 覚 的な 警 報( 表
両者間に「食い違い」が起きないとも限らないので
示 画 面 やランプ 等 の 点 滅 )
と、聴 覚 的な 警 報( 音 )
ある。例えば 、セントラルモニタでアラームの 設 定
であるため 、装 置 のそば に 操 作 者 が いなけ れ ば 、
を 変 えたとしても、そ れをベッドサイドモニタ側 に
その 役 割を果 た すことが できない 。夜 間 の 病 棟な
は 伝える方 法 がない 。ベッドサイドモニタでアラー
ど では 勤 務 できる看 護 師 の 数 に 限りが あることも
ムが 発 生しても、セントラル モニタで 同じようにア
あり、このアラームを看 護 師 が 確 実 にキャッチでき
ラームが 発 生していることが 保 証 できないことにな
るとは 言 い 切 れ ない 状 況 が ある。このリスクを 低
る。もちろん 、これらの 事 態 が 発 生しないよう、ア
減させようというの が 、生 体 情 報 モニタによる外 部
ラーム等 重 要な 設 定を 変える時 にメッセージで 注
機器アラーム監視システムである。
意 喚 起をしたりするなどの 工 夫 はできるものの 、医
この中で、ベッドサイドモニタは 看 護 師 に 代わっ
用 テレメータが 本 質 的 に 持 つ 単 方 向 通 信 のリスク
て患者様のみならず生命維持装置の監視を行い、
をゼロにすることはできない。
何らか の 危 険 が 発 生した 際 は ナースステーション
我 々は 、これらの 問 題を回 避し 、患 者 の 安 全 確
に 設 置され たセントラルモニタに 異 常を知らせる。
保 支 援 に 寄 与 する方 法を検 討して、新 たなテレコ
ナースステーションにいる看護師は、そこでの警報
ン・テレメータシステムT C O N T Mを開 発した。テレコ
表 示 、警 報 音 によって 異 変を 知り、すぐに 対 処 で
ン・テレメータは、電 波 法で 許 可された通 信 方 法 の
きることになる。さらには 、ナースステーションを離
1つであり、通 信 速 度 の 制 限 から、多 量 の 波 形 デ
れている場 合 を 想 定し 、院 内 P H S に 警 報 を 転 送
ータの 通 信には 適さないが 、医 用テレメータには 無
することも可 能 である。現 状 では 、人 工 呼 吸 器 な
い 双 方 向の 無 線 通 信 が 可 能であるという特 長を持
ど でアラームが 発 生した 場 合 だ け ではなく、モニ
っている。TCON T Mによりベッドサイド、セントラルの
7
No.21
どちらのモニタから設 定を変 更しても、他 方にそれ
テレコン・テレメータには医用テレメータと重なる430
を反 映 することが できるようになる上 、データ送 信
∼ 4 6 0 M H z 帯 の 電 波 が 頻 繁に 使 用されており、そ
後に受信側からの応答を確認することにより、確実
の併用は困難である。一方、TCON TMは、1.2GHz
なデータの 受 渡しが 可 能となる。その 結 果 、セント
帯を使用することにより、医用テレメータと併用可能
ラルモニタとベッドサイドモニタ間で 患 者 属 性・アラ
で、か つマイクロ波 治 療 器 や 無 線 L A N が 使 用 する
ーム設 定などの 食い 違いが 発 生しか ねないという
2 . 4 G H z 帯 の 影 響を排 除 できるシステムになったこ
医 用テレメータの 問 題 が 解 消される。また、市 販 の
とが大きな特徴である。
〈図1〉病棟向け事故防止支援システムの概念図
8
安全で質の高い
呼吸療法のために
フクダ電子株式会社 クリティカルケア事業部情報教育管理課 臨床工学技士 田
野雪絵
はじめに
近 年 、医 療 現 場 に おけるインシデント・アクシデ
ント報 告 は 、後 を 絶 つことなく報 告 されて い る 。
そ れらは 、確 認ミスや 操 作・設 定 不 良 など による
ヒュー マンエラーと医 療 機 器 の 不 具 合 によるもの
とに 大 別され 、医 療 現 場と医 療 機 器 メーカで は 、
そうした 事 例 を 繰り返さない 、起こさせ ない 安 全
対 策 を 必 要とされている。ここで は 高 度 化 する人
PSVを最初に搭載した機器
工 呼 吸 器 の 機 能 を 紹 介しな がら 各 種 安 全 機 能 に
①従圧式から従量式へ
ついて述べる。
アナログ 式 気 道 内 圧 計 の み の 従 圧 式 換 気 から
従 量 式 換 気 の 登 場 は 、換 気 制 御を 行 い や すくし 、
人工呼吸器の歴史
∼肺にやさしい環境への変遷∼
PEEPの肺虚脱防止効果(酸素化改善など)
ととも
に爆発的に普及した。しかし、低肺コンプライアン
人工呼吸器は、ICU/CCUなど高度治療室にお
ス、高気道抵抗症例においては、過大な圧力負荷
ける急 性 期 医 療 、一 般 病 棟における慢 性 期 医 療 、
による肺損傷を招く危険性があった。
一 般 家 庭 での 在 宅 療 法として、さらに 救 急 搬 送 時
②SIMV (Synchronized Intermittent
Mandatory Ventilation)モードと自 発 呼 吸トリガ
や 院 内 搬 送などと、様 々な 現 場 で 使 用されること
呼吸トリガ機能の開発により、SIMVモードが可能
が 多い 生 命 維 持 装 置 であるが 、その 歴 史は 浅い。
1 9 3 0 年 代に「 鉄 の 肺 」からスタートし 、1 9 5 0 年 代ヨ
になり、ASSIST(補助換気)モードでの過換気傾向
ーロッパで 流 行したポリオによって 大きく躍 進した。
の 問 題 や I M V モードでの自発 呼 吸とのファイティング
1 9 6 0 年 代 後 半 には 、それまでの 従 圧 式 換 気 にか
の 問 題 が 軽 減され た。さらに P S V 機 能により、自発
わり従 量 式 換 気 の 導 入 や 、現 在 の 呼 吸 療 法 では
呼吸を生かした呼吸管理が可能となり、ON/OFF方
欠 か せ ないテクニックである「 P E E P
Positive
式のウィーニング(呼吸器からの離脱)から、強い自発
E n d E x p i r a t o r y P r e s s u r e:呼 気 終 末 持 続 陽
呼吸を引き出しながら段階的に行う安全な方式がと
圧 」が 開 発された。1 9 8 1 年には「 P S V P r e s s u r e
られるようになる。
S u p p o r t V e n t i l a t i o n 」が 発 表され 、自発 呼 吸を
温存し、呼吸仕事量を軽減するためのテクニックの
③ PCV(Pressure Controlled Ventilation)
への注目
開発がさかんになる。こうしたテクニックの開発と呼
P C V は 、8 0 年 代ごろより上 位 機 種 に 搭 載され は
吸 療 法 の 普 及にともない、警 報 装 置を含 めた 安 全
じめた換気モードであるが、近年注目がたかまって
性機能も様々に工夫されてきた。
いる。これ は 2 0 0 0 年 に 米 国 の A R D S N e t によって
人工呼吸器の目的は、呼吸運動の代行である。
発 表され たランダム比 較 試 験 の 結 果( 高1回 換 気 量
呼 吸とは 、酸 素 摂 取と炭 酸 ガス排 出であり、そ れ
による 管 理 は 、低1回 換 気 量 管 理 に 比し 死 亡 率 が
らは 、換 気( 大 気と肺 胞 気 のガス移 動 )
と拡 散( 肺
高 い )や 、A R D S に お ける臨 床 研 究 で は P C V が 検
胞 気と血 液 間 のガス交 換 )によって 行 わ れ る。人
討 対 象 で あること、従 量 式 換 気と比 較して 合 併 症
工 呼 吸 器 はこの 運 動をいか に 効 率よく負 担 すくな
予 防 の 観 点 から 優 れていると示 唆 する研 究 発 表 が
く行わせるかという点において発展を続けていく。
多くなされて いることからで あろう。P C V は 、吸 気
9
No.21
時 間と吸 気 時 の 気 道 内 圧とを 設 定して 行う圧 補 助
向 上 は 、機 器 の 性 能 向 上 から安 全システムの 向 上
換 気 で ある。そ のフロー パターンは P S Vと同 様 の
へと繋がっているのである。
漸 減 波 を 示し 、補 助 / 調 節 モードや S I M V モードで
の 使 用 が 可 能 で ある。し かし そ の 最 適 設 定 に は 、
グラフィックモ ニタによる 波 形 解 析 や 、呼 気1回 換
気 量 モ ニタを 必 要とする。P C V は 、従 圧 式 換 気 へ
アラームによる事故対策
人 工 呼 吸 器 の 警 報 に 関 するトラブルの 内 容 は 以
の回帰ではない。
下のものが多く報告される。
④ 拡張換気モードへの発展
① 気 道 内 圧 の 低 圧 / 低 換 気 量 アラームが 適 切 に 従 量 式 換 気 は 換 気 維 持 に 優 れるが 、高 気 道 内
設定されていなかった
圧 や 患 者 不 同 調 の 問 題 が 残る。P C V は 、同 調 性
②アラーム機能をオフにしていたのを戻し忘れた
や 低 圧コントロールに 優 れるが 、換 気 の 維 持 に 苦
③アラーム音が聞こえなかった
慮 する。9 0 年 代 になるとこれら2つの 換 気 の 優 れ
④アラーム音が発生しなかった る点 を 合 体させ た 換 気 様 式( P R V C / V S V など )
が 発 表され た 。P R V C / V S V は 、コンプライアンス
① は 、呼 吸 回 路 の 破 損 、接 続 不 良 、外 れ 、呼 吸
を 監 視しな がら、設 定 の1回 換 気 量 が 維 持 できる
量 の 低 下を 示 すものであり、最も重 要 なアラーム
最 低レベル の 吸 気 圧 に自動 調 整 するというもので
といえるのに 、な ぜ 適 切 に 設 定されないのだろう
ある。
か。これは回路交換、加湿器用の給水、吸引処置
や 、自発 呼 吸 の 出てきた 場 合 など により、一 番 頻
回 に 発 生し 、一 番 煩 わしく思 わ れるアラームであ
るといえる。アラームレベルを低く
( 鈍く)設 定 する
ことにより、呼 吸 回 路 が 完 全 に 外 れ たような 場 合
でもアラームが 発 生しないという事 態となる。こう
した 事 例を受 けて、機 器 に 有 するアラーム基 準 が
設 定され た 。これ に 適 合 するように 対 策され た 機
器・新たに販売される機器には、図1のような適合
品 マークが 貼 付されている。また 、使 用 者 に 対 す
る注 意 喚 起として 図2のシール の 貼 付 や 、簡 易 取
VSVの実際
扱説明書の作成により重点項目をわかりやすくして
コンプライアンスの改善により、吸気圧(青色)
は
いる。
徐々に低下していくが、換気量(黄色)
は維持されて
いることがわかる。
(ピンクはフローを示す)
〈図1〉適合マーク
換気性能の向上が、安全につながるか?
このマークは医療事故対策の
ために設定された厚生労働省
こうした 肺 へ の 負 担を軽 減 する機 能 は 、人 工 呼
基準に適合することを示す関
係業界の自主的なマークです
吸管理時間を短縮し、合併症誘発率を低減し、予
後が良好とされる。それらは患者様の安全確保の
みならず、トラブル 発 生 に 関 わる時 間を減 少させ 、
医療スタッフへの負担の軽減、コストセーブへと貢
〈図2〉注意喚起シールの例
献 できるものである。換 気 制 御 やモニタシステムに
は 大 いにマイクロプロセッサ が 利 用されるようにな
ってきた 。アナログ 式 の マノメータの み が 頼りの 時
代から、そのデジタル化、呼気換気量モニタ、酸素
② は 、世 代 の 古 い 機 器 にみられる。処 置 の 際 、
濃 度 、グラフィックモニタなどの 多くの 情 報を 一 度
アラーム発 生を抑えるため 利 用したが 、処 置 後 に
に 入 手 することが 可 能 であり、これら情 報をもとに
戻し 忘 れてしまうのである。これ は 前 述 の 警 報 基
適 切 なタイミング で の 設 定 変 更 が 可 能 で ある。同
準 の 制 定 により現 在 市 販されている機 器 はオフに
時 に 多 角 的なアラーム監 視も充 実し 、換 気 性 能 の
できないよう対策されている。
10
人 工 呼 吸 器 によるトラブルの 早 期 発 見 にも役 立 て
られる。また 、用 手 蘇 生 器(アンビュバッグ、ジャク
ソンリース回路)を常備しておくことも重要である。
サクション機能の例
機能がオンにされると、吸引のため回路が外されて
警報機能付きモニタ搭載例
も不要なアラーム音を発することなく、またリークを
この機種はパルスオキシメータとカプノメー
補う為の大容量のガス供給も停止され、環境にも
機器にもやさしい状態となる
タが同時に測定可能である。
最近の機器では、事前消音機能や、サクション機
保守管理
能を有しているので、十分に利用してもらいたい。
機械は、使用状況に応じた劣化が必ず発生し、そ
③は、一 般 病 棟で 発 生 する。ナースステーション
れが故障につながっていくということを忘れてはならな
から離れた部屋での使用による場合が多い。使用
い。故障の発生を未然に防止し、購入時の性能を維
前 に 、アラーム音 量 が 適 切 か 確 認 することが 必 要
持するには、院内における日常点検はもちろんのこと、
である。また 、人 工 呼 吸 器 にはナースコール や 生
メーカの推 奨 するサイクルによる定 期 点 検やオーバホ
体情報モニタなどへアラーム信号を出力することが
ールの 実 施も欠 か せない。臨 床 工 学 技 士 が その 任
できるものもあり、安全の環境整備に利用できる。
を行う場合には、換気量や圧力測定機能のある測定
④ は 、機 械 的 なトラブル であるが 、未 然 に 防ぐ
機器の利用も日常メンテナンスに有益である。
ことが 可 能 で ある。始 業 前 点 検 の 確 実 な 実 施 で
ある。各 機 器 には 、メーカの 推 奨 する点 検 表 が 取
扱説明書に記載または添付されているので参考に
してもらいたい。また、機器に内蔵されている点検
機能を利用するのもよいだろう。
アラームが、その大事に発生しないということは
重 大 であるが 、かといって、アラームが 発 生 する環
境 に 慣 れてしまっては 問 題 である。アラーム内 容
人工呼吸器用アナライザ
とそ の 対 策 方 法 を 理 解し 、設 定 内 容 が 適 切 で あ
るかどうか 判 断 できる能 力を身 に つける「 教 育 」も
圧・換気量・酸素濃度などが簡便に測定で
安全対策の一環として重要であると考える。
きる。専用ソフトウェアのレポート機能など
を利用することによりデータの保存も可能。
周辺機器
おわりに
これまで、人工呼吸器に備わった安全機能を中
人 工 呼 吸 器 に 関 する 安 全 対 策 は 、そ の 換 気 機
心 に 記 述してきた が 、何らか の 原 因 により、人 工
能・モニタ機 能・安 全 機 能・メンテナンスを 正しく理
呼 吸 器自体 が アラームを 発 生 することなく作 動 停
解し 使 用 することである。また 万 一 に 備えた 周 辺 機
止した 場 合 や 、アラームが 適 切 に 設 定されなかっ
器 の 整 備 や 、人 工 呼 吸 器 の 熟 知 度をあげるための
た 場 合 にも対 処 すべく、警 報 機 能 付きの パルスオ
教 育といった 環 境 整 備 にある。安 全 で 質 の 高 い 呼
キシメータやカプノメータを 併 用 することを 推 奨 す
吸 療 法 のために 、更 なる機 器 の 進 歩と、確 実 な 情
る。これらは、呼吸状態を非侵襲的にモニタでき、
報提供、教育サポートに努めていきたい。
11
No.21
医療機器のトータルマネージメントと
安全管理システムの活用
フクダ電子株式会社 保守・サービス推進部
栗原節也
り入れることで、様 々な施 設においてもカスタマイズす
1. ME機器管理に求められる事
ることなくご利用いただけるようなパッケージ化を実現
M E 機 器 は 、年 々、高 度 化・複 雑 化 が 進 んでい
いたしました。M A R I Sには、M E 機 器 管 理の様 々な
ます。また、これらは、医薬品とは異なる耐久消費
ノウハウが 盛り込まれておりますので、これからM E 室
財としての性質を持ちます。
を整備してME機器の中央管理を始めようとする施設
ME機器管理には、こうした点を十分に考慮し、
では、強力なサポートツールになると考えています。
単 なる物 の 管 理とは 異 なる質 の 高 い 管 理 体 制 が
M A R I Sとは 、M E 室を標 準 化 するというテーマ
求 められています。特 に 重 要 なポイントとして、①
に ついて、弊 社 がご 提 案 する最 善 のシステムであ
安全対策を考慮した運用、②医業的な視点による
ると自負いたしております。
機 器 管 理 の2つ が 上 げられます。これらを 実 現 す
る為には、従来の台帳管理を基調とした方法では
限界があります。これからのME機器管理には、機
器一つ一つについて、購入から廃棄までの履歴を
残しながら、それらの情報を安全面や医業面へ有
効利用 できるME 機器トータルマネージメントシステ
ムが求められています。
3. MARISの安全点検
M A R I S では 、M E 機 器 の 保 守 点 検と、各 部 門
への貸出&返却受付を独立した業務として考える
のではなく、一連の業務としてとらえています。
使 用 後 の 機 器を 確 実 に 保 守 点 検し 、点 検 済 み
の 機 器を 貸し 出 すという一 連 の 業 務フローをコン
トロール することで、又 貸し の 禁 止を 徹 底した 安
全性の高い環境づくりをサポートします。
2. MARISが提供する3つの環境
弊 社 の 提 案 する安 全 点 検システムM A R I S は 、
安 全 管 理 体 制・M E 機 器 管 理 業 務 の 効 率 化・医 業
的 な 分 析という3つ の 環 境を 提 供 するM E 機 器 の
トータルマネージメントシステムです。
このMARISでは、特にME機器管理の中枢となる
ME室の運用とは何か、専門スタッフである臨床工学
技 士 が 求めるものとは何か 、という点に着目し、現 場
からの多くの声を大 切にしながら開 発を進めてまいり
ました。そして、現場からの共通ニーズを積極的に取
12
M A R I S では 、M E 機 器 一 つ 一 つの 使 用 年 数 や
4. 貸出管理
耐 用 期 間 などを 管 理 する使 用 年 数 表 示 機 能 、機
M E 機 器 管 理 では 、M E 室を中 心とした中 央 管
種 毎 の 台 数とそ れらの 使 用 年 数 の 分 布を 表 示 す
理という考え 方 が 主 流となっています。そうした 管
る使 用 年 数 の 分 布 表 示 機 能を搭 載しています。こ
理 体 制 下 では 、数 多くあるM E 機 器 が 、何 処 に 貸
うした 表 示 機 能 により、院 内 に 存 在 する 数 多 い
し 出され 、どのように 利 用されているか に ついて、
M E 機 器 の 老 朽 化 の 把 握 や 、機 器 購 入 の 予 算 策
リアルタイムに 把 握 でき、また 過 去 の 履 歴を簡 単に
定 などをサ ポートすることで、これ からの M E 機 器
調べる事のできるシステム管理が求められます。
管理についての提案を行っています。
しかし、システム管 理の実 現には、利 用 者の協 力
が 必 要 不 可 欠です。多くを望むあまり、受 付 時の手
続きが 煩 雑であったり、面 倒であったりすると、利 用
されないシステムになってしまいます。M A R I Sでは、
タッチパネルとバーコードを利 用して 簡 易 的な受 付
処 理を行うモードと、専 門スタッフにより詳 細な情 報
( 患 者 情 報など )
を追 加 入 力できるモードという、利
用 者のレベルと目的に合わせた二 つのマンマシンイ
ンターフェースを使い分けることで、利 用されるシス
テムと高品質な機器管理を同時に実現しています。
5. 老朽化の把握
6. 今後の方向性
医療安全を考える時、ME機器の老朽化を把握し
これまで 弊 社 では 、M E 室 にスポットを当 てたシ
管理する事は非常に重要です。ME機器は、医薬品
ステムづくりに 力 を 入 れてまいりました 。し かし 、
とは 違う耐 久 消 費 財 であるという側 面 から、オー バ
M E 機 器 を 取 巻く安 全 環 境 づくりを 考 え たとき、
ーホールやメンテナンス時 期 、及び 廃 棄 のタイミング
M E 室 周 辺 の 閉じた 世 界 でのシステムでは 限 界 が
を管理することが、医療事故の防止につながります。
あります。M A R I S では 、M E 室 の 標 準 化という一
また、老 朽 化した M E 機 器 が 突 然に 故 障し 、日常 の
つ の 答 えに 到 達したと考 え 、次 なるステップに 進
医 療 業 務に 支 障を来たさぬよう、廃 棄と更 新を計 画
もうとしております。今 後 の 方 向 性といたしまして
的 に 行う事も重 要 で す。故 障した 機 器をメンテナン
は 、院 内ネットワークを利 用した 、M E 機 器 利 用 者
スしながら使用するのが良いのか、維持費用を考慮
に 向 けた 様 々な 情 報 発 信 サービスなどを中 心 に 、
して更新するのが良いのかといった医業的な視点か
M E 機 器をより安 全 に 利 用していただけるような 環
らの判断も、当然求められてきます。
境づくりに貢 献したいと考えております。
13
No.21
AED
(自動体外式除細動器)
について
血
液を送る心臓のポンプ機能が、奪われ、そ
く一部の施設しか設置されていないのが現状です。
のままでは死に至る心室細動と呼ばれる不
今後自治体でも予算化され、ここ数年のうちにかなり
整脈は、誰でも突然発生する可能性があります。日本
の台数が納入されると考えられています。
フ
では、毎日100人もの人が、その為に命を奪われてい
ると言われています。
ィリップス社製AEDハートスタートFR2は、液晶の
ディスプレイにリアルタイムの心電図表示が出来る
この心室細動に最も効果がある治療法が、電気的
タイプと出来ないタイプの2種類あります。電源を入れると
除細動です。しかしこの電気的除細動は、発生から
音声で操作の指示をしますので、誰でも簡単に操作でき
数分以内に行う事が望ましく、1分遅れると成功率が
ます。さらにこの装置は、モノフェ−ジックよりも除細動の成
10%下がると言われています。そのため、救急車が
功率が高いバイフェージック
(二相性)
の出力波形となって
到着してからでは、手遅れの場合が多かったのです。
おります。また、
150ジュール固定で低エネルギーでも充分
昨年7月に厚生労働省は、除細動器の中でも除細動
除細動効果がある独自のテクノロジーを有しており、心筋
が必要か不用かを判断し除細動のエネルギーを自動
ダメージも他の機器に較べ少ないと言われております。保
的に充電する自動体外式除細動器(AED)の一般人
障期間も5年と長く、優れた特長を兼ね備えています。
への使用を4つの条件付きで認めました。
100
①医師等を探す努力をしても見つからない等、医
90
師等による速やかな対応を得ることが困難であるこ
80
成功の可能性が1分ごとに7∼8%低下
70
と、②使用者が、対象者の意識、呼吸がないことを確
成
功
率
︵
%
︶
認していること、③使用者が、AED使用に必要な講
習を得ていること、④使用されるAEDが医療用具と
60
50
40
30
して薬事法上の承認を得ていること。
20
これにより空港や駅等人が多く集まる場所に設置
10
する事により、除細動の対象者が発生した場合俊敏
0
1
2
3
な対応が可能になります。しかし現実には、空港等ご
4
5
6
7
8
9
経過時間(分)
心筋ダメージを低く抑える!スマートバイフェージック方式採用
ハートスタート FR2/AED(自動体外式除細動器)
・ 低エネルギー(150J)で高い除細動成功率!
・ AHA クラスIIaに準拠した高性能
・ ワン!ツー!スリー!簡単操作
医療用具承認番号:21400BZY00185000
●医用電子機器の総合メーカー
本 社/東京都文京区本郷 3-39-4
フクダ電子ホームページ http: // www.fukuda.co.jp
14
中高年のスポーツ
ー水 泳ー
東京女子医科大学附属第2病院
スポーツ健康医学センター教授
若い頃から水泳を続け、水泳大会などに参加するこ
浅井利夫
水死事故の原因
とを楽しんでいる中高年、健康保持や増進のために
①心臓疾患の発作(心筋梗塞発作や致死的不整脈 新 たに 水 泳を始 めた中 高 年など、水 泳を楽しんで
発作など)
を起こす。
いる中高年が多数います。
をした時、耳の奥にある錐体という部分 ②『息こらえ』
水泳は以下に述べるような利点と欠点があります。
に圧がかかり、出血して、目まいを起こし、死亡す
る。カゼを引いている時や鼻の調子が悪い時に起
水泳の主な利点
こりやすい。
1:全身運動であり、心肺機能を鍛えるのによい。
③冷たい水を呼吸と同時に気管内に飲み込むと、
2:比較的いつでもやりたい時に出来る。
反射的に心臓が停止する。ベテランの死亡事故 3:比較的費用が安い。
の原因として注目されている。
4:重症なスポーツ障害が少ない。
④精神的にパニック状態になって溺れてしまう。
水泳の主な欠点
⑤その他、さまざまな慢性疾患の悪化や発作を起
こし、死亡することがある。
1:単調な運動であり、1人で行うことから継続が
困難なことがある。
中高年の水泳は、肥満の治療、健康保持や増進の
2:地上の運動とは異なる負荷が体にかかり障害
為の運動として勧められる運動です。
を起こす(図1)
。
これから水泳を行う人も現在楽しんでいる人も主治医と
相談し、定期的にメディカルチェックを受けることが大切で
Oculovestibular reflex
(caloric stimulation)
す。さらに、水泳当日にはコンディション
(体調)
を自己判断し、
安全を確認して実施してください。無理は禁物です
(表1)
。
体位
精神
最後に、中高年の泳法としては、平泳ぎやクロール
が勧められ、バタフライは勧められません。
呼吸
水抵抗
水圧
水温(低温)
浮力
前面抵抗
摩擦抵抗
造渦抵抗
〈表1〉 中高年の健康水泳とは
頻 度
〈図1〉 水中運動で生体にかかる諸負荷
1回の時間
始めは10∼15分程度の短時間から開始し、
徐々に時間を延長し、60分程度にする。
運動強度
中 年: 最大運動強度の50∼70%
高齢者: 最大運動強度の40∼60%
重症なスポーツ障害が少ない水泳でも、中高年に
なると加齢や運動不足で体力が低下し、誤った泳法
や自己の限界を超えるような水泳を行って水死事故
泳 法
バタフライは勧められない。
水中で息こらえしないでゆっくり吐き出す。
力を抜いて泳ぐ。
注 意
発汗を感じなくても適度な水分補給。
体調の悪い日は休む。
水泳中に異常を感じたら直ちに中止する。
を起こすことがあります。
15
週に2∼3回程度
No.21
繁昌企業最前線
福山医療器 株式会社
ー広 島 ー
今回は、岡山県との県境に近い福山市の福山医療器
(株)の三谷孝雄会長と三谷信孝社長をおたずねした。
社長は大学時代には土木工学を学ばれ、卒業後は5年
ただけるチャンスも多くなっていくわ
ほど東京の建設会社に籍を置かれ、その後、福山に戻ら
れ11年前に現会長の跡を継いで社長に就任された。
の永い者が多く、それだけ経験や
けです。そしてこれは自慢できるこ
となんですが、私どもの社員は社歴
知識の豊富な人間がおり、そういう
意味でもお客様とのおつき合いの
創業当時の想い出
仕方もしっかりしています。
昔は、たいていの
そんな社員の方々に今望むことは
扱い商品は鉗子など
の小物が多かったの
とにかくお客様にはまじめに対応してほしい。誠心誠意の
で す が 、そういった
心は相手にも自然と伝わるもの。それがなければ上っ面の取
医療器のメーカーは
引になってしまいます。この人でなければダメというくらいの信
ほとんど が 東 京 で、
頼をお客 様 からい
挨拶に行くと
「福山っ
てどこにあるの?」
と
ただいてほしいで
左:三谷信孝社長 右:三谷孝雄会長
すね。特にベテラン
いった感じの反応で、ましてや新参者の我々には見えない
社員の多い弊社で
壁のような物がありました。取引も現金取引のような感じで
はマンネリにならな
やりづらかったことを覚えています。また、高額の医療器と
いように気をつけね
いえばレントゲンか心電計といったところで、当時は撮影式
ばと思っています。
の心電計が熱ペン式心電計に移行した時期でしたが、この
地域では心電図を判読できる医師も少ない状態で、心電計
を売るためにメーカーと協力して岡山大学から原岡先生を
講師にお招きして月一回で半年間、心電図の読み方の講習
会を開催したものです。そんな努力の結果、心電計は先生
今回の取材で会長様に会社のモットーをお話しいただ
いたとき、懐から取り出した手帳を見せていただいた。そ
こには自筆で経営者の心得を綴った一文が記されていた
(表)
。それを拝見したとき、会長様の経営者としての哲学
を感じられたように思えた。
方に受け入れられ普及していきました。おかげで当時この
辺りはまだ舗装道路なんかはありませんでしたが、4輪自動
車を真っ先に導入することができました。
会
社
概
要
経営にあたってモットーとしていることは
企業であるからには何よりも利益を出すことに神経を使ってい
ます。ただ、そのためにもっと大事なことはお客様の満足度を高
めなければなりません。病院の経営者とどれだけ人間関係を構
築できるかが大事です。良い関係ができれば貴重な情報をい
〒720-0031 福山市三吉町3 ―4 ―8
TEL:084-923-3073
資本金:10,000千円
売上高:770,000千円
従業員:10人
沿 革:1
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8年8月設立
平成2年 新社屋鉄骨4階を建設
Heart Net No.21
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6
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定価262円(税抜250円)A2006EM E. No. 056134
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