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isas12-sbs-005 芸術衛星用ミッション OBC モジュールの性能試験 久保田 晃弘∗ 田中利樹† 中澤賢人‡ 2012 年 10 月 16 日 概要 とを主目的とした専用 (芸術) 衛星の打ち上げ」の 2 つ の大きなテーマから構成されている。芸術衛星の開発 2014 年 2 月に H-IIA ロケットで相乗り打上げ予定の 主体を東京大学チームが担当し、衛星からのデータを CubeSat 芸術衛星「INVADER」において、その主目 的である芸術ミッションを実行するためのミッション OBC の性能試験と作品制作のためのデータ収集を大気 活用した作品制作や、地上局の運用やデータ配信を多 球を用いて行いたい。このミッション OBC は CubeSat で構成され、さらに多摩美術大学では、PBL(課題解決 用のモジュールとしてだけでなく、単独でパッケージ 型授業) 科目などを通じて、衛星芸術のミッションを 化することで、汎用のテレ・クリエーション (遠隔創 美術大学の文化の中でも展開している。 造) モジュールへと発展させていく予定である。さら 2011 年 12 月、JAXA が提供する、H-IIA ロケットに相 に、大気球実験によって取得されたさまざまなデータ 乗りする小型副衛星として、ARTSAT プロジェクトが を ARTSAT API を通じて公開することで、衛星や気 提案した世界初の芸術衛星「ARTSAT1: INVADER2 」 摩美術大学チームが担当している。両大学のチーム共 に、学部、学科や学年の枠を超えた学際的なメンバー 球からのデータを用いた芸術表現の可能性を、オープ が選定された。INVADER は、一辺が 10cm 立方、重 ンに探求する場を提供する。 量 1.5kg の 1U CubeSat 規格の超小型衛星で、2014 年 2 月に、高度 407km の円軌道、傾斜角 65 度の太陽非 同期軌道に投入される予定である (図 1)。 1 衛星芸術プロジェクト 「ARTSAT:衛星芸術プロジェクト」は、地球を周回 する衛星を「宇宙と地上を結ぶメディア」であると捉 え、そこからインタラクティブなメディアアート作品 やサウンドアート作品など、さまざまな芸術作品の制 作を展開していくプロジェクトである1 。アートを出発 点に、広く日用品やガジェットのデザイン展開からゲー ムやエンターテインメント活用まで、さまざまなプラ ンを社会に提案・実践していくことを企画している。 プロジェクトは、多摩美術大学と東京大学のコラボレー ションを軸としたチームによって進められており、 「衛 図 1 芸術衛星 INVADER 星から得られるデータを活用した (衛星) 芸術作品や関 連プロダクトのデザイン」と「芸術作品に利用するこ ∗ 多摩美術大学 美術学部 情報デザイン学科 メディア芸術コース 超小型衛星センター ‡ ほどよし超小型衛星プロジェクト 1 http://artsat.jp † 東京大学 2 INteractive 1 Vehicle for Art and Design Experimental Research 2 INVADER のミッション OBC 芸術衛星 INVADER は、通常の CubeSat に搭載して いる OBC に加えて、芸術ミッションを実行するため のミッション OBC を搭載している (図 2)。 図 3 オープンソースハードウェア Arduino ミッション OBC は、いわば地上のクリエイタの分身 (アバター) である。ミッション OBC に接続されたさ まざまなセンサーからのデータは、表現を生成するた めの素材であり、そこにアルゴリズミックな操作を加 えることで、アルゴリズム制作者独自の表現を生み出 すことが可能になる。 図 2 芸術衛星 INVADER のシステムダイアグラム こうしたアプローチは、今日のジェネレーティブ・アー ミッション OBC のボードは、Arduino という、2012 ト (生成芸術) の方法論と重なる。ジェネレーティブ・ 年春の時点で 100 万セットが販売されたオープンソー アートとは、コンピュータソフトウェアのアルゴリズ スハードウェア互換のものとしている (図 3)。Arduino ムや数学的/機械的/無作為的自律過程によってアルゴ はアーティストやデザイナーのコミュニティーで、イ リズム的に生成・合成・構築される芸術作品のことを ンタラクティブな作品を制作するためのデファクト・ 指し、70 年代のコンピュータ・アート、80 年代のイン スタンダードのデバイスとして用いられており、その タラクティブ・アート、90 年代のメディア・アート、 ため世界の多くの美術/デザイン系の大学で広く教育 用、作品制作用に用いられている。ミッション OBC 00 年代のソフトウエア・アートといった一連のディジ タル・アートの流れ (歴史) 上に位置付けられる、今日 を Arduino 互換のものとすることで、衛星のミッショ の主要な芸術形式のひとつである4 。 3 ン用プログラムの開発とそれを利用するための敷居を 本実験では、現在芸術衛星 INVADER のミッション 下げ、デザイナーやアーティスト、DIY ホビイスト等 く。2014 年 2 月の打ち上げを予定している INVADER OBC ボードとして開発中のシステムを、スタンドア ローンで動作するモジュールとしてパッケージ化し、 それを気球に搭載し稼動させることで、空中における は、2012 年 10 月現在、BBM の開発が終了し EM の ボードの機能確認と性能試験を行う。さらに、取得した へと衛星ミッション開発者や利用者の裾野を拡げてい 開発が始められている。 データを広く一般に公開することで、宇宙からのデー タの芸術作品への活用方法をオープンに検討し、さま ざまなクリエイターが、データを用いた衛星芸術作品 の習作を制作することができる場を提供する。もちろ 3 計画の概要 ん衛星と気球では、その軌道や高度が違うため、直接の 代用にはならないが、逆に気球ならではの軌跡や高度 を生かした、オリジナルな表現の制作が可能になる5 。 芸術衛星 lNVADER において、宇宙環境でデータを収 集したり、自律的にアルゴリズムを実行することで、 さまざまな表現を生成することをサポートするための 4 http://ja.wikipedia.org/wiki/ジェネレーティブアート 5 それを広く「気球芸術」と呼ぶことも可能だろう。 3 http://www.arduino.cc/ 2 モジュールの詳細 4 て、気圧計や GPS などを追加すると同時に、C&DH 系プログラムを気球のセンサーデータ取得に特化し、 ン OBC ボード6 の機能ブロック図を図 4、回路図を図 MORIKAWA に接続する。また、気球実験においては モジュールを回収することが可能なため、衛星搭載機器 5 に示す。 の予行演習を行うだけでなく、取得したセンサーやボー 芸術衛星 INVADER における、現在開発中のミッショ ドの状態をメモリーカードに記録するデータロガー機 能を付加することで、各種センサーの Raw データを回 収できるようにする。加えて、ボードに搭載した音声 DigiTalker 合成 LSI(デジトーカー) を、気球に搭載された通信装 ATP3011F4 Audio 置に接続することによるセンサーデータのリアルタイ LSI SPI/UART ムモニター、および民生のアウトドア用小型カメラ7 に Camera AL422B FIFO UART できることから得られる Raw データを解析することに FLASH 8MB SPI PCA 9306 ADG709 A るかという判断材料が得られることは、MORIKAWA FRAM 1MB LEDx5 Shared Memory E2P ROM より、軌道上から降ろすデータ量をどうサイジングす LED LED LED LED LED I2C E2P ROM よる撮影も試みる。通信の制約なく各種データを記録 OV7675 ATmega2560 AVR 8bit MCU Level Converter HUB B E2P ROM に搭載するアルゴリズムを制作したり、衛星ミッショ ROM/RAM ンを考える上でも、非常に重要な資料となる。 E2P ROM ARTSAT プロジェクトでは、今回の大気球実験で用 いるこの MORIKAWA ボードを出発点に、汎用の衛 図 4 MORIKAWA の機能ブロック図 星 (遠隔) 芸術モジュールの開発を計画している。芸術 衛星 INVADER は、それ自体がスタンドアローン型 D0 D1 D2 D3 D4 D5 D6 D7 ov_cam VDD28 1 2 3 4 4 3 GND C432 IC420P 4 0.1u NJM8202 GND J412 1k 2k 2k R425 10k 6 5 0.1u MAIN_VDD5 GND MEM0 MEM1 C419 などを含む日常生活のさまざまな場面、さらには海中 ロボットのような ROV 8 に、この芸術ミッションパッ ケージを搭載することで、衛星芸術のコンセプトをよ り広い範囲に、応用・拡張し、汎用化していくことがで 0.1u 4.7k GND DIGI_OUT PWM_OUT 2 820 GND R444 R442 10k 10k 2 R443 3 10k GND NJM8202 3 R416 8 RG -V 5 6 IC420B 7 NJM8202 0.1u 6 クなデータ処理ユニットの開発と他のハードウェアと AD623R MAIN_VDD5 3 + GND 1 IC420A することができる、オープンソースのアルゴリズミッ IC417 GND +V 1 RG 2 0.1u 4.7u IC402 GND VOUT C424 C423 C431 R415 2 - +VS 6 -VS 0.1u 23 24 25 26 10 7 PC0 PC1 PC2 PC3 4 NC NC NC NC NC GND GND GND DIGIRX DIGITX SDA_M SCL_M AOUT /TEST 7 8 19 20 22 3 5 21 きる。極限環境のハードウェアに組み込んだり相乗り 30 31 27 28 14 15 16 17 /SS MOSI MISO SCK C427 SDA SCL VCC VCC VCC SMOD0 SMOD1 PMOD0 PMOD1 0.1u RXD TXD /SLEEP /PLAY C426 /RESET 32 1 12 13 7 APT3011F4-AU 2 11 4 6 18 REF 29 9 C422 0.1u 0.1u B2 DIR M_RX SN74LVC2T45 C418 33k R413 0 8 7 6 5 C421 A2 M_RST 7 10k AT45DB321 8 GND M_TX 6 5 B1 A1 R419 10k 1k VDD33 SO GND VCC WP B2 DIR VCCB GND SN74LVC2T45 IC414 VCCA 7 5 SI SCK RESET CS 10k R411 0 8 7 6 5 GND 3 4 A2 8 4 A0 VDD A1 WP A2 SCL VSS SDA IC404 8 7 6 5 B1 R436 R409 R414 R410 IC405 2 MISSION_RX 8 7 6 5 24LC1025-I/SM FV24V02 1 2 3 4 A0 VCC A1 WP SCL A2 VSS SDA 4 1 0.1u VCCB A1 B1 B2 B3 B4 B5 B6 B7 B8 B9 B10 B11 B12 B13 B14 B15 B16 B17 B18 B19 B20 B21 B22 B23 B24 B25 B26 B27 B28 B29 B30 B31 B32 B33 B34 B35 B36 B37 B38 B39 B40 B41 B42 B43 B44 B45 B46 B47 B48 B49 B50 B1 B2 B3 B4 B5 B6 B7 B8 B9 B10 B11 B12 B13 B14 B15 B16 B17 B18 B19 B20 B21 B22 B23 B24 B25 B26 B27 B28 B29 B30 B31 B32 B33 B34 B35 B36 B37 B38 B39 B40 B41 B42 B43 B44 B45 B46 B47 B48 B49 B50 GND D402 1 2 3 4 A0 VCC A1 WP A2 SCL VSS SDA IC409 3 MISSION_RST C417 VCCA 10k GND C420 IC408 0.1u 8 7 6 5 GND LED1608 0.1u LED2 LED3 LED4 LED5 A0 VCC A1 WP A2 SCL VSS SDA 24LC1025-I/SM 1 2 3 4 LED1 VDD33 LED1 LED2 LED3 LED4 LED5 R426 2 1 GND GND SN74LVC1G00DVBR GND 12 DIGITX 13 DIGIRX 14 15 16 17 18 27 1 2 3 4 5 6 7 2 WRST 6 23 AL422B PWM_OUT 51 52 70 28 29 1 J413 1 IC407 24LC1025-I/SM IC413 A1 A2 A3 A4 A5 A6 A7 A8 A9 A10 A11 A12 A13 A14 A15 A16 A17 A18 A19 A20 A21 A22 A23 A24 A25 A26 A27 A28 A29 A30 A31 A32 A33 A34 A35 A36 A37 A38 A39 A40 A41 A42 A43 A44 A45 A46 A47 A48 A49 A50 R437 5 7 8 9 1 2 3 4 2 MISSION_TX A1 A2 A3 A4 A5 A6 A7 A8 A9 A10 A11 A12 A13 A14 A15 A16 A17 A18 A19 A20 A21 A22 A23 A24 A25 A26 A27 A28 A29 A30 A31 A32 A33 A34 A35 A36 A37 A38 A39 A40 A41 A42 A43 A44 A45 A46 A47 A48 A49 A50 2k 1 2 3 4 11 12 13 14 GND SCCB_DATA HREF XCLK WEN D6 D4 IC411 D2 D0 VCC 5 1 C416 R417 MISSION_TX MISSION_RX GND 2 GND 8 7 6 5 1 0.1u /WE TST /WRST WCK /RE /OE /PRST RCK DEC A0 VCC WP A1 SCL A2 VSS SDA 24LC1025-I/SM +VS I2C DI0 DI1 DI2 DI3 DI4 DI5 DI6 DI7 DO0 DO1 DO2 DO3 DO4 DO5 DO6 DO7 2 4 6 8 10 12 14 16 GND R418 24 22 21 20 19 10 IC406 り大型の衛星や気球、あるいは自動車、自転車、電車 Low = S1(H8), High = S2(AVR) GND MEM1 ADG709 1 2 3 4 4 VCC MEM0 1k 28 27 26 25 18 17 16 15 C412 9 GND OE RRST RCLK 8 LM19_ZH LM19 1 2 J404 VDD28 1 SCCB_CLK 3 5 VSYNC 7 PCLK D7 9 D5 11 D3 13 D1 15 GND IC403 VDD 0 PH0/RXD2 PH1/TXD2 PH2 PH3 PH4 PH5 PH6 PH7 D6p D7p D8p D9p 4 5 6 7 8 9 DO0 DO1 DO2 DO3 DO4 DO5 DO6 DO7 J409 EN 1 16 DB ECS3963 24MHz Camera_header VDD33_2 4.7k Q402 2 DA S1B S2B S3B S4B 0.1u 2 GND OUT 3 1u XC6209F332MR R404 VDD28 1 C413 A0 A1 S1A S2A S3A S4A 3 GND PE2 PE3 PE4 PE5 PE6 PE7 PG0 PG1 PG2 PG3 PG4 PG5 4.7k 1 2 R423 GND VDD28 R412 D4p GND GND GND GND GND AREF ATMEGA2560 11 32 62 81 99 98 D41 D40 D39 C406 C408 VDD33 D5p D2p D3p CE R403 J408 UART1 D0 PE0/RXD0 2 D1 PE1/TXD0 3 VSYNC 35 PL0 D49 HREF 36 PL1 D48 WEN 37 PL2 D47 RRST 38 PL3 D46p 39 PL4 D45p OE RCLK 40 PL5 D44p SCCB_CLK 41 PL6 D43 SCCB_DATA 42 PL7 D42 3 5 1u XC6221A282MR 8 PJ0/RXD3 PJ1/TXD3 PJ2 PJ3 PJ4 PJ5 PJ6 PJ7 43 44 45 RX1 46 TX1 47 48 49 50 0.1u VOUT 0.1u 4.7k PD0/SCL PD1/SDA PD2/RXD1 PD3/TXD1 PD4 PD5 PD6 D38 PD7 C405 GND DO0 DO1 DO2 DO3 DO4 DO5 DO6 DO7 D37 PC0/A8 53 D36 PC1/A9 54 D35 PC2/A10 55 D34 PC3/A11 56 D33 PC4/A12 57 D32 PC5/A13 58 D31 PC6/A14 59 D30 PC7/A15 60 VIN CE C407 VDD33_2 5 VOUT R406 63 64 65 66 67 68 69 79 D53p PB0/SS 19 FLASH_SEL D52p PB1/SCK 20 SCK D51p PB2/MOSI 21 MOSI D50 PB3/MISO 22 MISO D10p PB4 23 D11p PB5 24 D12p PB6 25 D13p PB7 26 VIN 10k PF0/ADC0 PF1/ADC1 PF2/ADC2 PF3/ADC3 PF4/ADC4 PF5/ADC5 PF6/ADC6 PF7/ADC7 PK0/ADC8 PK1/ADC9 PK2/ADC10 PK3/ADC11 PK4/ADC12 PK5/ADC13 PK6/ADC14 PK7/ADC15 V403 3 V402 GND XTAL2 97 96 95 94 93 92 91 90 89 88 87 86 85 84 83 82 1 R441 33 1 R405 1k EN GND 4 5 6 7 13 12 11 10 VDD33 0.1u PCA9306DP1 D22PA0/A0 78 D23PA1/A1 77 RAD_INT D24PA2/A2 76 RAD_EN D25PA3/A3 75 AN_POWER D26PA4/A4 74 DIGI_PLAY D27PA5/A5 73 DIGI_SLEEP D28PA6/A6 72 RAD_RESET D29PA7/A7 71 CAM_PWR 2k C414 VDD 15 2k 5 IC415 0.1u 3 VSS 6 1 GND MAIN_VDD5 GND SDA2 R422 SCL2 SDA1 2k 8 EN SCL1 R424 200k 7 VREF1 VREF2 R427 C41514 R440 IC412 3 4 R421 2 2k 1 2 3 4 5 RAD_INT RAD_EN RAD_RESET GND R408 XBTELEM XBCMD J405 1k D401 10u 10k 10k R401 XTAL1 10 80 31 61 0.1u 10p 1 2 C404 0.1u 0 RESET 34 VCC VCC VCC VCC C411 C409 C410 NX5032GA 10p Q401 J407 C403 R402 IC401 30 8MHz UART3 TC1262-VDB GND PROG GND VOUT GND 0.1u 2 M_RX M_TX VDD5 R420 10u R428 VIN C401 C402 M_RST GND GND LED1608 MOSI GND R438 R439 1k 1k 10k 1 2 3 4 5 6 100 J403 VDD33 TX R407 MISO VCC SCK MOSI RST GND 1 2 J402 RX VDD5 V401 J406 AVCC MISO SCK RST 2 4 6 I2C_SELECT の衛星芸術ミッションデバイスであるが、並行してよ ISCP_header 1 3 5 IC418 AD8541R GND の通信インターフェース (API) の実証は、そのための AOUT J411 1 2 AOUT 工学的な解を提供する。 図 5 MORIKAWA の回路図 5 現在の MORIKAWA ボードは、芸術衛星 INVADER 実験内容 の一部として組み込むことを想定したデータ処理用 実験は、データーロガー機能を付加した MORIKAWA 基板であり、INVADER のメイン OBC に接続された ボードおよび、本実験のために改修をほどこしたメイ センサー情報を、共有メモリーを介して取得してい ン OBC+センサ系システムを気球に搭載することで、 る。本気球実験では、INVADER の MainOBC に、衛 芸術衛星 INVADER の模擬テストを行うと同時に、気 星の House Keeping データ取得用のセンサーに加え 7 GoPro HD HERO2 <http://gopro-nippon.com/product/hd2 surf/index.html> 8 Remotely Operated Vehicle, 遠隔操作無人探査機 6 開発コード名は「MORIKAWA」。本郷の老舗「食堂もり川」 の名に由来している。 3 球の上昇、滞空、下降時における各種センサーの Raw れを芸術衛星 INVADER と地上局のデザインにフィー データを、搭載モジュールを用いて記録回収すること ドバックさせる。 を第一の目的とする。将来的には、大気球のセンサデー タを直接取得し、各種アプリケーションが実行できる システムとなると理想的である。 7 将来の展望 飛行高度は実際の衛星の軌道高度に少しでも近づける ため、なるべく高い (30km 以上) 方が良いが、低高度 これまでにもスペースシャトルや ISS でいくつかの芸 であってもそこで取得されたデータは、後述の実験後 術利用テーマが行われてきたが10 、実際に芸術家が宇 の展開においては、貴重なデータとなる。滞空時間に 宙飛行士として搭乗して、軌道上で芸術作品の制作を ついても、特に制約はないが、実験データの作品の応 行うまでには至っていない。今回実験を行うミッショ 用のためには、さまざまな高度や滞空時間、軌跡など、 ン OBC は、芸術家の知覚を拡張する「テレ・パーセ 複数の時期、時間による実験が行えることが望ましい。 プション (遠隔知覚)」のためのものであるが、将来的 には、地上のクリエイターが、自分の芸術作品の制作 なおモジュールが回収不可能の場合も考慮して、実験 プロセス (アルゴリズム) をプログラム化し、それを遠 の実施までに、トランシーバのような簡易な通信シス 隔実行することで作品制作を行う、汎用かつオープン テムを用いたデータのダウンリンクシステムの併用を な「テレ・クリエイション (遠隔創作)」ミッションへ 検討する。 と発展させていきたい。そのモジュールを気球や地球 の衛星軌道上のみならず、月面や地球外の惑星、さら にはヴォイジャーのような太陽系外にまで到達する無 6 実験後の展開 人探査機に搭載できるようなものにすることで、「宇 宙の遠隔芸術家」による生成芸術作品の制作が可能に 実験によって取得されたデータは、ARTSAT チーム なるだろう。 内のみならず、データを広く公開することで、衛星や 気球など、遠隔地からの生のセンサーデータを用いた 芸術表現の可能性を、オープンに探求する場を提供す る。データの配信には、ARTSAT のウェブサーバー上 に構築している、ARTSAT API 9 を活用する (図 6)。 なお、実験の開始前に、本ボードで稼動する Arduino プログラムのサンプルコードの配布、ライブラリの提 供と取扱説明書の配布等も行い、実験データだけでな く、非専門家のクリエイター (アーティストやデザイ ナー) が、作品制作のためのデータ処理プログラムの 開発に、オープンに参加できるような場をつくる。 さまざまなアーティストやデザイナーに、気球で取得 されたデータを使ってもらうことで、衛星芸術のため のプロトタイピングを行うと同時に、衛星芸術プロジェ クトの課題のひとつである、少ないデータを想像力で 図 6 ARTSAT API <http://api.artsat.jp> 補完して豊かな表現を生みだすことに適したデータの 種類、精度、サンプリング間隔といった「芸術表現に必 要なデータの質」に対するコメントを得ることで、そ 9 http://api.artsat.jp 現在は INVADER のシミュレーショ ンデータを試験的に配信中である。 10 http://iss.jaxa.jp/utiliz/epo/ 4