Download Page 1 Page 2 監督者責任の再構成 (三) 目 次 序論 第 一 章 監督者

Transcript
Title
監督者責任の再構成 (3)
Author(s)
Citation
北大法学論集 (2005), 56(3): 159-234
Issue Date
URL
林, 誠司
2005-09-26
http://hdl.handle.net/10252/922
Rights
This document is downloaded at: 2015-11-05T14:54:47Z
Barrel - Otaru University of Commerce Academic Collections
目
次
(
)
監督者 責任 に関す る従 来 の学 説 及び裁 判例 の問題点
北法5
6(
3・
1
5
9
)
1
1
9
7
監督 者責 任 の再構成 ≡
序論
わが国 の裁 判 例 の紹介 と分 析 -監 督義 務 の構造 の視点 か ら -
第 二即 わ が国 の立法 者 の見解 及び学 説 の検討 と位 置付 け
第 一章
第 二節
林
第 四日
第 三日
第 二日
第 一目
小括
そ の他 の事 故 に関す る裁 判 例
交 通事 故 に関す る裁 判 例
未成 年者 同士 のけ んか によ る事 故 に関す る裁 判例
故意 の犯 罪 に関す る裁 判 例
第 1款 責 任 能力 者 た る未 成年者 による加害 行為 に関す る裁 判 例
第 l項 1六歳 以 上 の責 任能 力者 に関す る裁 判 例
第 五日
一六歳未 満 の責任 能 力者 に関す る裁 判例
遊戯 ・スポ ー ツ事 故 に関す る裁 判例
故意 の犯罪 に関す る裁 判例
第 二項
第 二日
いたず ら によ る事 故 に関す る裁 判 例
第 1日
第 三日
いじめ に関す る裁 判 例
交 通事 故 に関す る裁 判 例
未成 年者 同士 のけ んか によ る事 故 に関す る裁判例
そ の他 の事 故 に関す る裁 判例
第 四日
第 六日
小括
第 五日
第 七日
七歳 以上 の責任無 能 力者 に関す る裁 判例
責 任無 能 力者 た る未 成年 者 によ る加害 行 為 に関す る裁 判例
まとめ
第 八日
第 三項
第 二款
第 一項
遊戯 ・スポ ー ツ事故 に関す る裁判 例
いたず ら によ る事 故 に関す る裁 判 例
故意 の犯罪 に関す る裁 判例
未 成年 者 同士 のけ んか によ る事 故 に関す る裁 判 例
第 一日
第 三日
第 二日
第 四日
(
以 上 五 五巻 六号 )
(
以 上 五六巻 二号 )
北法5
6(
3・
1
6
0
)
1
1
9
8
第五日 いじめに関する裁判例
第六日 交通事故 に関する裁判例
第 二章 ドイ ツ民法八三二条 一項に関する学説 ・裁判例
日本法 への示唆
第 三章 ドイ ツ民法八三二条 一項と社会生活上 の義務
第 四章
遊戯 ・スポ ー ツ事 故 に関す る裁 判例
〓 ハ歳未 満 の責任 能力 者 に関す る裁 判 例
責 任 能力者 た る未成年 者 によ る加害 行為 に関す る裁 判 例
わ が国 の裁 判 例 の紹介 と 分析 -監督義 務 の構 造 の視点 から -
第 三早 監督 者責 任 に関す る従 来 の学説 及び裁 判 例 の問題点
第 二節
第 一款
第 二項
第二日
こ の類型 に関す る公表 裁判 例 は これま でに六件存 在す る。
[
79]京 都 地裁 昭和 五 一年 一 一月 二五 日判決 (
学校事 故 ・学 生処 分裁 判例集 二 三 五
二
一
六頁)
(雌 -1)
(
以上本号)
︻
事 案 ︼A 二 四歳 五 ケ月男) が校 庭 にお いて投げ た ダー ツによ るⅩ の右 眼負 傷。Ⅹか らA の父母YYら に対 し賠償 請
求 。請求 棄却 。
︻
判旨 ︼未 成年 者 が責 任 能 力 を 有 す る場合 でも ' 「
親 権 者 にお いて未 成年 者 が他 人 に損害 を 加え る こと を 予測 し'あ る
いは予見 しう る状態 にあ りな がら そ の監督 義務を 慨怠 Lt他 人 に損害 を 与え た場合 には親 権者 は他 の要件 を満 たす 限り 、
北法5
6(
3・
1
6
1
)
1
1
9
9
(
3
)
監督者責任の再構成
説
論
民法 七 〇九条 によ- 不法行為責任を負う」と ころ、本件事故当時ダー ツ投げ が流行 し て いた こと やAが家庭 でダー ツを
所持 し て いた こと はな-tAが所持 し て いたダー ツは本件事故当 日初 め て同級生からも ら ったも のであり、さら に、家
庭 では母YがA の所持 品を点検す る等 し て いた のであり' 「
ま たA の素行、性格等 にか んが み、本件事 故発生を 予測 さ
せ る特 別 の事情 がありtか つYYがそれを 予測し、あ る いは予測 しう べき にも かかわらず予測 しなか った等 の特 別 の事
情 に ついては'Ⅹにお いて何 ら具体的事実 の主張は為 されず '従 って本件Aによる事故 に つき tYY に過失あ-と 認め
る ことは でき な い」。
︻
検討︼ダー ツによる事故 の予見 可能性を否定す る。事案と し ては'本件事故当 日他 の生徒 がダー ツを所持 し て いた こ
と が認定 され ており、Aと言え なくも な いが、判決 は、両親 の責任と の関係 でダー ツ投げ の流行を否定 し て いる点 が注
目される。
(1-6 )
頁 )
[
80]大阪地裁 昭和 五五年 七月 l.四日判決 (
判時九九九号 八 七
︻
事案 ︼A 二 四歳男)はグ ラ ンド内 でBと投球練 習中'小学生が自 己 の後方 に集合 し始 めた ことを知 って いた にも か
かわらず捕球姿 勢を とり続 け て いたと ころ、B の投げ た硬球 が逸 れtA の後方 に いたCを直撃 した (
C死亡)。Aは本
件 グ ラ ンド にお いて本件事 故前 の夏休 みに毎 日 のよう に友 人らと共 に、小学生と混じ って、野球を し て いた。C の遺族
ⅩらからA及び そ の父Yら に対し七 〇九条等 に基づき賠償請求。請求 認容。
A の日常 の行動を適確 に把握 し、Aが野球を好 み友人と 野球を し て遊 ぶため
︻
判旨︼Yと し ては、A の母と共 同し て 「
よ-外出し、Aが当時 一四歳 で軽率 な行動 に出 るおそれが当然 予想される のであ るから、周囲 の状況を よく見きわ めた
うえ危険性 のな い方法 '
ボー ルを使用し て野球をす るよう に十分な注意を与え るととも に、
特 にAらと は体力 ・敏捷性 ・
注意力 にお いて格段 の差 のあ る小学生が いる付近 では格 別気を配 って野球をす るよう指導 し て監督す べき義 務があ ると
北法5
6(
3・
1
6
2)
1
2
0
0
監督者責任 の再構成 (3)
いう べき であ る。と ころが'--YはA に対 し 野球 をす るな ら人 の いな い所 でやるよう 指導 し て いた こと は認 めら れ る
も のの、 そ れ以 上其 撃 な指導 ・監 督 が行 わ れたと は到底 認 めら れな い」。
小 学生 に混 じ って の野球 )
。 「日常 の行 動 の適確 な把握」 が問 題と さ れ て いるが 'あ くま で危
︻
検 討 ︼事 案 と し てはA (
よ う 。
険 な 状 況 で野球 を し て いる こと の認 識を 獲 得 す るた め のも のと 見 ら れ (
予見義 務 )' そ の他 の監督 措 置 に ついても危 険
(
1-7)
な状 況 で の野球 の防 止 に向 け られ て いる こと か ら' 具体 的監督義 務 が 問題と さ れ て いると 言え
[
81]大 阪 地裁 昭和 五八年 10月 六 日判決 (
判時 二 〇二号九 〇頁)
.
︻
事案 ︼A (二 二歳 一〇 ヶ月 男) は母Yに相談 せず自 ら の貯 金 で竿 や ル アー等 を 用意 し'後 にY の許 可を 得 て友 人Ⅹら
と共 に魚 釣 - に出 かけ'釣 り の経験 の豊富 な友 人 の選 んだ 狭 い場 所 で ルアーキ ャスティ ングを 行 ったと こ ろ、 ルアーが
斜 め後 方 に いたⅩ の右 目を直 撃 LtⅩは右 目を失 明 した。ⅩからA及びYら に対 し賠 償請求 。Yら に対す る関係 で請求
棄却。
︻
判旨 ︼YはAが友 人 らと 共 に魚 釣 に行 - ことを 許 した が、 「
具体 的 な魚 釣 の方 法 や使 用す る道 具 に つ いて の詳 細 は知
らな か ったも のであ り 'ま た'魚 釣 は'鋭 利 な鈎を 用 いる こと があ り 、 不注意 な取扱 い方を す れば 他 人 に傷害を負 わ せ
る可能 性 が絶無 と は いえ な いも の の' 1般的 には他 人 に危 害 を 及 ぼす 蓋然 性 が高 い行為と いう こと は でき ず 、Aが中学
二年 生 で魚 釣 の方法 '道 具 の取扱 い方 に ついて十 分 判断能力 を有 し て いたも のと 思 わ れ ると こ ろから 、Yが、Aが魚 釣
に出 かけ る に際 Lt他 人 に傷害 を負 わ せ る事 故 の発 生す る ことま でを 予測 し てA の行 動 に対 し て具体 的 な注意 を 与え て
事 故 の発 生 を 未 然 に防 止す る注意 義 務 を負 う も のと は到 底 認 め ら れ な いし、 本 件事 故 が極 め てま れ で偶 発 的 な事 故 で
あ ったと考え ら れ る こと からす ると 、YがA の魚 釣 の方法 や使 用す る道 具 に ついて注意 を払 わな か った か らと い って'
北法5
6(
3・
1
6
3)1
2
01
説
請
A に対す る指導監督義務を怠 ったも のと いう ことも でき な い」。
︻
検討︼魚釣 に際 し ての傷害 に ついて予見義務 及び予見 可能性を否定 し て いる。
[
8]千葉 地裁 昭和 六三年 〓 l
月 1九 日判決 (
判 夕六九 三号 1七 五頁)
︻
事 案 ︼A 二 五歳 二 ケ月男)
tB (1五歳 二 ケ月男)及びC (l四歳 七 ケ月男)らは中学校 の昼休 み時 間中 に ベラ ン
ダ にお いて'椅 子から外 れ て放置 され て いた鉄 パイプを用 いて野球 ゲームを し て いたと ころ、打者 の手 から滑 って飛ん
-23T5L
L
'
だ鉄 パイプ が偶 々側 に いたX に当 た った (
Ⅹ重傷)。ⅩからABC及び それら の父母YYYYYYら に対 し七 〇九条等
に基づき賠償請求。請求 認容。
︻
判旨︼ 「
親権 者 の未成年者 に対す る監督義 務 は'未成年者 の生活 万般 に関す るも のであ るから、未成年者 が就学者 で
あ る場合 には、学校内 の生活 に ついても、当然 これが及 ぶ」。学校 におけ る指導 監督 にはそ の性質 上肌理細 か-行届 い
た指導監督を期待 し得な いから' 「
親権者 は、 こ のよう な点 に留意 し て、親権者 の目 の届き に- い学校生活 に関しても 、
日頃から関心を持 って子 の生活態 度 や行動 の把握 に努 め'他 人 に危害を 及ぼす よう な危険な遊び や行動を しな いよう に、
子 の年令 '能力、性格 '等 に応 じ、具体的 、適 切な指導監督をなす べき義 務があ る」。Aらはしば しば 野球を し て遊び、
ま たAら の中学 の生徒 は本件 ベラ ンダ等 にお いて野球類似 のゲー ムを しば しば行 って いたと ころ、 「
Aらは当 時中学 三
年生 で、そ の年令 からし て軽率 な行為 に出 ることも 予想 されたから、Aら の親権者と し ては'学校 のよう に他 の生徒が
多 数集ま って いる場所 で野球 又はそれ に類似 した遊びをす るとき には、.
危険 のな いよう な場所と方法 で行 い'も し危険
があ る場合 にはそ のよう な行為を しな いよう 指導 監督す べき義 務 があ った」。 しか る に、Yらはそれぞれ子 に対 し 「
他
人 に迷惑 を かけな いよう に」 などと 口頭 で注意 し て いた ことは認 められ るも のの' 「
Aらが野球類似 のゲームを し て い
北法5
6(
3・
1
6
4)1
2
0
2
監督者責任 の再構成 (3)
た ことなど学校内 の生活 に ついて、十 分な行動 の把握もま た具体的 か つ適 切な注意 や指導も し て いなか った こと が認め
それぞれ指導監督を怠 った過失 があ ったも のと いう べき であ」 る。
られる」。従 って'YらはABC に対 し て 「
︻
検討︼学校 での事故 に ついて、学校 への監督 の委 託が行われ て いると の想定 の下、委 託者 であ る親 によ る子 への直接
の監督を要求 し'そ の具体的な内容と し て'野球 ゲー ムに際し ての軽率 な行動 の予見可能性を肯定 した上 でこの行動 の
防止 に関す る監督義 務を 問題と し て いること から、 具体 的監督義務 の違 反が問われ て いる (
この場合 ' 「
子 の生活態度
や行動 の把捉」 は予見義務 の現われと し て捉え る べき であ ろう )
。 なお'親 により 「
他 人 に迷惑を かけな いよう に」 と
の注意 がなされ て いた こと が認定 され て いるが、 このような注意 は 一般的監督 に属す るも のと考え られ、それ故本件 で
は' 一般的監督義務 が 一応 尽-され て いた こと が認定 された上 で具体的監督義 務 の違 反 の有無 が問われ、親 の責任 が肯
定 され て いると見ること が でき よう。
野球」 の態様 の詳細 が明らか でな いこと から評価 が困難 で
事案 と し ては'本件事 故以前 にAら により行わ れ て いた 「
あ るが'本件事 故以前 にも生徒 の出入が比較自由 であ-、それ故 '他 の生徒も集ま ると思わ れる ベランダ で同じ中学 の
生徒 が野球 ゲー ムを し て いた ことからす ると '少な-ともÅ (
他 の生徒 よる ベランダ で の野球 ゲー ム)と見 る こと が で
き よ、
つ。
[
83]静岡地裁 平成 六年 八月 四日判決 (
判時 l五三 一号 七七頁)
︻
事案 ︼柔道 の有段者A (
中学 三年 生男)は夏休 み中 の中学校 の柔道部 の練習 にお いて、それま での練習 で相当疲労 し
て いた 1年 生部員Bに柔道場 の端 付近 で大外 刈-を かけtB の後 頭部を板 の間 に打ち付 けた (
B死亡 )。他 の柔道 部員
など の供述 によれば、Aは事 故当 日柔道部 の県大会 に出場 でき な いこと から ふて- されたよう な態度を Ltま た、 日頃
北法5
6(
3・
1
6
5)1
2
0
3
説
論
からBに対 し て厳 し い練 習態度 で臨 んで いた ことが窺 われた。A の父母YYは、Aが中学 一年 の時、同学年 の柔道部員
を他 の柔道部貞と共 に小突 いた こと から'同人 の父親から いじめがあ ったと申 し入れられた こと があ るが、Aが中学 三
年 の時 には柔道 に励 み,それ故非行等 の問題行動を起す こともなか ったと認識し ており、ま た、Aが県大会 の出場権を
得られなか った ことを知 って いた。B の遺族ⅩらからA及びYyら に対 し七 〇九条等 に基づき賠償請求。請求認容。
︻
判旨 ︼A には、部活動 にお いて、下級生 に対 し て荒 い投げ方をす るなど相手 に対す る配慮 を欠 いた行動 に出 る傾向 が
窺 われ'県大会 の出場資格 が得られなか った挫折感等 から、右傾向 が助長 され る状況 にあ ったと推認 され る。ま た、A
が過去 に同学年 の柔道部員を いじめたこと は同人が柔道部 の練習を さぼる こと が多 か った こと による のであり、 いわば
柔道部 の統制 が目的 であ った のであ るから、三年 生時 でも 、そ のよう な行動を 下級 生 に対 し てと るかも しれな いこと'
「
ひ いては練習 にお いて下級生 に対 し てことさら に厳 し い練習を強 いるかも しれな いと いう こと の認識は可能 であ った
と いう べき であ る。 そうす ると、Y及びYと し ては、A の法定監護義務者と し て'同人が部活動 にお いて下級生 に対 し
てそ のよう な行動 に出な いよう に日頃から 一般的な注意を与え る べき義務 があ ったと いう べき であり ' これが尽- され
て いたならば、Aにお いて'体力 に劣-'受 け身等 の技能 の未熟なBに対 し、 こと さら に厳 し い練習を課 した-'大外
刈りを かけ て本件事故を惹起す ることを未然 に防ぎ得たと いう べき であ る」。
下級 生 に対す る厳 し い練 習態度 )
。 下級生 に対 し て過度 の練 習を強 いる こと の予見 可能性を
︻
検 討︼事案 と し てはA (
肯定 し て いる。
[
8]東京 地裁平成 二 二年 二 月 二日 (
判 夕 二 一六号 二 一六頁)
︻
事案 ︼A (二 二歳 一ケ月男) の持参 した エアーガ ンの遊戯中 の暴発 によるX の負 傷。本件 エアーガ ンは事 故前 日にA
北法5
6(
3・
1
6
6)
1
2
0
4
監督者責任の再構成 (3)
の父YがAに買 い与え 、A の部 屋 に保管 され て いたも のであり、また、Aが小学 五'六年 の頃、小道を ため て拳銃型 エ
アーガ ンを買 った際 tYは取扱 説明書をAに読ま せよう と せず '何も 注意を しなか った。ⅩからA及びYに対 し賠償請
求。請求 認容。
︻
判旨 ︼拳 銃型 エアーガ ンの取扱 説明書 には対象年 齢と し て 1八歳以 上、不注意 な発射 や誤使用 により失 明 や怪我など
の危険 が生じ る旨 の記載 があ る。 「
した が って、子ども が こ のよう な エアーガ ンを 所持 し て いる場合 、あ る いは、買 い
与え る場合 には、そ の危険性 に鑑 み、親と し ては'子供 が取扱 上 の注意を厳格 に守 るよう 子供を指導 監督す る義務 があ
ると いう べき であ る。 しかし、Yは、 --そ の取扱 に ついてAを指導 し て いたと は認められな い」。
︻
検 討︼事 案 と し てはA (
拳 銃型 エアーガ ンの所持 )及びB (
本件 エアーガ ン)
。 エアーガ ンの危 険性 から監督義務を
導き 出 し て いる。
以上遊戯 ・スポー ツ事故 に関す る裁判例 の検 討からは、以 下 のこと が明らか にな ろう。す なわち 、 ここでも '具体的
監督義務違反 の有無だけを問 い'監督義務違反を否定す る裁判例が見 られ る (
79、 81)
。ま た' 「
特定化 された行為」 が
80、 83' 84) のに対 し'それ以
既 に現われ て いたケー スでは具体的監督義務 の違反が問われ て責任を肯定 され て いる (
外 のケー スで具体的監督義 務違 反 の有無だ け が問わ れたとき 、責任 は否定 され て いる (
79、 81)
。も っとも 、 こ の類型
ではそ の他 に' 「
特定化 された行為」 を誘 発す る環境 が存 在 し て いた に止ま るケー スに関す る裁 判例 82にお いて'具体
的監督義務違反 が肯定 され てお-'ま た、 一般的監督と具体的監督 の双方 の態様を 問題と しながらも 、具体的監督義務
いたず ら によ る事故 に関す る裁判例
の違 反 に基づ いて親 に責任を負 わせ て いると見られる点 が注 目され る0
第 三日
北法56(
3・
1
67)1
2
0
5
説
論
この類型 に関す る公表裁判例は これま でに四件存在す る。
[
聖 宇都宮地裁 昭和 四五年 三月 三日判決 (
下民集 ≡ 巻 三 ・四号 三七
(潤 )
四頁 )
︻
事案 ︼A (二 二歳 四 ケ月男)は牛乳瓶を 川 に浮 か べ石を投げ つけ て割 ると いう遊びをす るため に拾 った牛乳瓶 が邪魔
にな った ので、Ⅹらが河原 に いることを 認めながら、瓶をⅩ の付近 の護岸 に投げ つけたと ころ'そ の破片 がⅩ の左 眼 に
刺 さり'Ⅹは左 眼を失 明した。当時牛 乳瓶を 川 に浮 か べ石を投げ つけ て割 ると いう 遊び が子ども ら の間 で流行 ってお- 、
A自身も前 に二、 三回 こ のような遊びを した こと があ った。ⅩらからA及びそ の父母YYに対 し七 一四条 に基づき賠償
請求。請求 認容。
︻
判旨 ︼弁論 の全趣旨 から七 〇九条責任 に基づ-損害賠償請求 の主張が含ま れ て いると解 され ると した上'以 下 のよう
に述 べる。Yらは'学校外 で の 「
Aの行動 に ついては監督義務者とし ての注意義務を十分 に尽くす べき責任 があり、ま
たY等 の社会 的地位 (
当時Yは県立商業高校 の教員 であ り、Yは洋裁教師 であ った。)と 生活環境 に鑑 みると 、それが
十分可能 であ った にも拘 らず tAが以前 にも 同じような危険 な遊びを し て いた のに、 これ に気づ かず放置 し ており'ま
た こ のよう な危険な遊戯を しな いよう にと の 一般的な生活指導をも怠 って いた ことは、法定監督義 務者と し ての注意義
務を怠 った過失 があ ると いわなければ ならな い 」。
︻
検 討︼ 「
同じよう な危険 な遊び」 に気づ かなか った こと、す なわち 「
特定化 された行為」 の予見義 務違 反を 認 め'具
体 的監督義務 の違 反を肯 定とす ると共 に' 「
危険 な遊戯を しな いよう にと の 一般的 な生活指導」 と いう ︼般的監督 の僻
意を認め、 一般的監督義務 の違反を肯定す るも のと 言え よう。事案 と し ては、当該加害行為 は空き瓶を護岸 に投げ つけ
ると いう '従前 子が行 って いた いたず ら (
川に浮か べた空き 瓶を 石 で割 る こと )と は やや異 な るも のであ るも のの'当
北法56(
3・
1
6
8)
1
2
06
監督者責任の再帯域 (3)
該加害行為 が従前と同様 の いたず ら に関連 し て行われた'空き瓶を割 ると いう行為 であ る こと からす れば 、Aと言え よ
、
つ○
[
8]大阪地裁 昭和 五九年 1月三 一日判決 (
民集 四 l巻 l号 五五頁 =判時 二 〇九号 二 五頁)
︻
事案 ︼A (1四歳六 ケ月男)を含む 五名 は夜 間共 に雑談 し て いるうち に、電車 が石を 飛ば し て通過す る様 子を見 た い
と の雰囲気 が出来tAが見張りを し、A の友 人が軌条 上 に石を置 いたため、電車 が脱線 し、 一〇四名 の乗客 が負傷 した。
A には本件事 件以前 に補導 歴はなか ったが、本件事故当時友 人らと夜遊びをす ることがあり'事 故当 日も 午後 八時 過ぎ
i
t友人らと集ま って いた。A の父Yは仕事 のため子供と接す る機会 が少 な-'子ども の教育 はA の母Yに任 せ、Yは子
供 のpTAには普通 に出席す る等 子ども に対 し て通常 の関心を持ち気 配-を し て いた。電鉄会社XがA及びyyに対 し
修復費等 の請求 及び直接被害者 であ る負傷者 への賠償を求償。
YYに対す る関係 で請求棄却。
Yは、仕事 が多 忙 のため自 らA に対す る日常的 な生活規範 に ついて指導 す る こと はあまりな-'専 らYに委
︻
判旨 ︼ 「
せ て いた こと が窺 われ るが、YはAに対 し て格 別放任 し て いたわけ ではなく、全体と し て子供 に対し てやや甘 い家庭 で
あ るにし ても、A の従前 の生活態度 (
補導 歴 のな いこと等 ) に照せば 、同人 に対 し て保護者と し て当 然 になす べき監督
義務を怠 って いたとま では いう こと は でき な い (
なお,本件事故 の突発性を考え れば ,仮り にY
lら に 一般的な監督義務
違 反があ ったと し ても 、そ のことと本件事 故発生と の間 には相当因果関係があ るも のと認め ることは でき な いも のと い
わなければ ならな い)
」。
︻
検 討︼Yに ついて 一般的監督義務違 反を否定 した上 でtYY の双方 に ついて本件事故 の予見可能性を そ の突発性 から
北法56(
3・
1
69)1
2
07
説
論
否 定 し て いるも のと 思わ れ る (
但 し、 この予見 可能 性 の有無 が 一般的 監督義 務違 反と事 故 発 生と の間 の相当 因 果 関係 の
判 断 の中 で考慮 され て いる)。ま た、Y に つ いては、Y への監督 の委 託 により 1般的 監 督を 尽 - したも のと し て いるも
のと 見 られ、Y自 身 によ る 1般 的監督 の態様 はとく に検 討 され て いな い。事案 と し ては、本件事 故直 前 の稚 談 の中 でA
が小学 生 の頃 に軌条 上 に釘を 置 いた こと があ る旨 述 べたと の認定 があ るが 、 それ以 上 の認定 (
特 にAが本件事 故 以前 に
実 際 に軌条 上 にも のを 置 いた こと があ るか 'ま た、ど のよう なも のを 置 いた ことがあ るか) がなさ れ てお らず 、 こ のよ
う な 認定 に従え ば 、 「
特定化 された行為」等 が何 ら現わ れ て いな か った ケ ー スと な ろう か。
[
87]大阪地裁昭和 五九年 二 一
月二五日判決 (
判夕五五〇号 一九 〇頁)
︻
事 案 ︼A (二 二歳 八 ケ月男 )は中学校 にお いて冗談 半 分 に同級 生Ⅹ にプ ロレ ス技を かけ て持 ち 上げ た後 、
Ⅹが気を失 っ
た こと に気付 かず にⅩを 降 ろし て立 たせ よう と した ため、Ⅹはそ のまま 倒 れ'床 に右 目付近 を 強打 し、右 目を失 明 した 。
Aは中学 一年 の頃 からプ ロレ スが好き になり 、 テレビ等 でプ ロレ ス技 を覚え 、弟 に技 を かけ た ごと があ - '中学 校 でⅩ
等 に対 し て冗談半 分 でプ ロレ ス技 を掛け '教師 か ら f度 注意 さ れた ことも あ った が' これま で弟妹 や友 人等 に負 傷を さ
プ ロレ スは シ ョウ であ る」 と Aに説明 し'学 校 からA のプ ロレ ス行為 に ついて家庭 への
せた こと はな い。 A の父Yは 「
連 絡等 はなく 、Y及び A の母Yは 子ども たちと レジ ャーに行 -等 し て子ども たち と のスキ ンシ ップを 保 つこと に留 意 し
て いた。ⅩからA及びyy に対 し賠償請求 。YYに対す る関係 で請求棄 却 。
︻
判旨 ︼YYは' 「
Aに対 し て格 別放 任 し て いたわ け では な- 、ま た 'A の性格 、素 行 、従前 の生活態 度 等 に照 せば 、
Aが学校 で親 し い同年生 に対 し て冗談半 分 でプ ロレ ス技 を 掛 け て いる こと に気 付 かなか ったと し ても 、A に対 し て保護
者と し てなす べき 監督義 務を怠 って いたとま で いう こと は でき な い」。
北法5
6(
3・
1
7
0)
1
2
0
8
監督者責任の再構成 (3)
(
二二
︻
検討 ︼事案と し てはA。 7舷的監督 の僻怠を否定 した上 で、子 の従前 の 「
特定化 された行為」 を認識しなか った こと
も監督義務慨意 ではな いと し て いる。
[
8]富山地裁平成 l四年 二 月 二七 日 (
判時 一八 一四号 二 一
五頁)
︻
事案 ︼Bは中学校 の休憩時 間中教室 で'机 の上 に置 いたイ スに乗- カー テン フックを直 そう と したと ころtA
歳 八 ケ月男)がそ のイ スを蹴 ったため転落 し、そ の際 に割 れた窓 ガ ラスで負傷 し死亡した。Aは比較的大 人しく、真面
目な生徒 であ ったが、中学 一年 の後半 頃からBにち ょ っか いを出す よう にな った。Bの遺族ⅩらからA及びそ の父母Y
Yに対 し賠償請求。yyに対す る関係 で請求棄却。
︻
判旨︼yyにはtA の 「
言動 に注意 し'適切な監護教育をす べき義務 があ る」。 しかしながら' 「
AはtBにち ょ っか
いを出す傾向 が増 し' こ の点 に ついて、BがⅩに愚痴を こぼし て いたなど の事情 は認められ るも のの'総じ て、おとな
し-真面 目だ ったも のであり'本件事故前 にt
Bや他人 に暴力を加え たり'あ る いは暴力を加え るか のよう な言動 があ っ
たとは認められな い。 したが ってtYYに、A の問題性 に気づかず 'あ る いは これを放置 したと い った事 情は見当 たら
ず、監護教育義 務 の慣怠 があ ったとま では言 い難」 い。
︻
検 討︼ 「
監護教育義務」違 反 の判断 にあ たり、Aに従前Bなど に暴力を 加え た こと (
或 いは加え るか のよう な言動 )
のなか った ことを重視 し ており、具体的監督義務 の違反を要求 し て いると見られる。事案と し ては、Aに従前見られた
「
Bにち ょ っか いを出す傾向」 の中身 が明らか ではな いため、 いず れ のケー スにあ た るか評価 が困難 であ る。
以上 の いたず ら による事故 に関す る裁判例 にお いては原則と し て (
具体 的監督義 務違反と共 に) 一般的監督義務違 反
北法5
6(
3・
1
71
)
1
2
0
9
説
論
の有 無 が 問わ れ て いる こと が特徴 的 であ る (
例外 と し て88). これ は 1般 に、 子 の いたず ら が家庭 で のし つけ 'す な わ
ち 一般 的 監 督 の慨怠 の徴 表 と 見 ら れ る こと と 関達 し よう。 そ し て' そ の故 にか へ こ の事 案 類 型 では ' 「
特 定 化 さ れ た行
為」 が事故 前 に現わ れ て いな か った場合 に 1般 的監督義 務違 反を 問 題と し てこれを 否定 す る裁 判 例 (
E
S) が見 られ 、 こ
れま で の裁 判 例 の傾向 (
こ のよう な場合 に 一般 的監督義 務 が 問題と され るとき には監督 義 務違 反 が肯 定 さ れる)と は や
や異 な る傾向 が見 出 され る。
第 四日 未成年 者 同士 のけ んか によ る事故 に関す る裁 判 例
[
89]大 分地裁 平成 二年 二 月 二 二日判決 (
判 夕七 五七号 二二三頁)
︻
事 案 ︼A (一四歳 一〇 ヶ月男 ) は中学校 にお いて同学年 のBと 些細 な こと か ら喧 嘩 と なり tB の後 頭部等 を 一〇数 回
儀 打 し'Bは 死亡 した。Aは短 気 な 一面を 有 し、小学 五年 生時 に他 の児童 を 症 が出 来 る ほど 殴打 した こと があ り'ま た、
中 学 入学 後 五回 の暴行事 件 を起 し (
そ のう ち の二回を 本件 の 一週 間前 と 本 件 の前 日 に起 し て いた)'同級 生 と 殴 り合 い
の喧 嘩を し て相手 に打撲傷を 負 わ せ る等 し ており 、A の暴力的性格 は 同級 生間 で知 れわ た って いた。A の父母Yyは こ
れら の中学 入学後 のA の行 動 に ついて学校 か ら連 絡を受 け てお らず 、知 らな か った。B の遺 族Ⅹらか らA及びyyら に
対 し七 〇九条等 に基 づき 賠 償 請求 。yyに対す る関係 で請求 棄却 0
Y、Yは、A の性格 からす れば '同人が何時喧嘩をす るかも知 れな いと思 って いた ので'同人 に対 し'平素
︻
判旨 ︼ 「
から喧 嘩 を しな いよう'も し喧 嘩を し ても 決 し て手 を 出 さず 話 し合う よう にと 説諭 す るなど指導 し て いた が、 学校 側 に
YtYはtAに対 し適宜説諭す るなど 同人
対 し、学校 内 におけ るA の行動 を問 い合 わす など と いう こと はな か った」。 「
北法5
6(
3・
1
72
)
1
2
1
0
監督者責任の再構成 (3)
を決 し て放任 し て いたわけ ではな-、それ にA の素行、従前 の生活態度 からす れば tAが学校 で同級生 に対し-- ︹
B
に加え た︺ よう な執掬 な暴行を加え るなどと いう こと は思 いも よらなか った こと であ ると認 められ る」。も っとも ,n
yは 「A の学校内 におけ る行動様式と家庭内 におけ る行動様式と の間 にかなり の相違 があ った のにこれを看過 し て いた
- 2
と いう ことが でき るが、 これを、YtYが積極的 に学校側と連絡を取り '学校内 におけ るA の行動 の把握 に努 める べき
であ った のにこれを怠 ったがため であ ると し て、Y、Yを責 める のは いささか酷 であ」 る。
︻
検 討 ︼事案 と し てはA (
同級 生 に対す る暴行 )
。 子を格 別放任 し て いたわけ ではな いと し て 一般的監督 の慨怠を否定
した上 で'さら に'子 による本件 暴行 のような暴行 の予見可能性を否定 し、ま た'学校 におけ る子 の行動 に ついて問 い
いじめ に関す る裁判例
合 わせを しなか った ことを監督 の僻意と し て責 める のは酷だとし て'予見義務違 反を否定 し て いる。
第 五日
(
判時 二二七 八号 二六頁)
こ の類型 に関す る公表裁判例は これま でに五件存 在す る。
[
90]東京地裁平成 三年 三月 二七日判決
︻
事案 ︼A (
C の自 殺当時 1四歳 四 ケ月男)及びB (
C の自殺当時 l四歳 三 ケ月男)ら のグ ループは中学 二年進級後、
授業 の抜 け出 し等問題行動をと るよう にな って いたと ころ'中学 二年 の六月以降交友す るよう にな った同級生Cを次第
葬式 ご っこ」 を行う
に使 い走りと し て使う よう になり、さら に二学期以降'欠席 がち のCが死亡したも のと見立 てて 「
他、時と し てCがAら の意 にそわな いとき にC に対す る暴行を行う よう にな って いた。 さら に' 二年生 の 二 一
月以降、
Aら に対 し て碓反感を抱- よう にな ったCがAら の意 にそわな いこと が多 くな った こと からtA及びBらはC に対 し て
北法5
6(
3・
1
7
3
)
1
2
1
1
説
論
暴行を 加え るなどす るよう にな-' 三学期 の始業式 当 日、暴行 の事 実を親 に告 げ た こと等 から立腹 し たAら がC に暴行
「
中野
を 加 え るなど し た。 そ の後 tcは長 期 間 にわ たり 学校 を 欠 席 した後 、 三学 期 が始 ま って約 三週 間後 に自 殺 した (
富 士見 野中事 件」)
。A の父母YY及びB の父母YYはA及びB の問題行動 に ついて再 三 にわ た って学 校 から連 絡を受 け 、
家庭 で の指導 を 促 され、 YYは これら の場合等 にBを 叱 責す るなど し たが tB の具体 的動 静を 十 分把握 しな いま ま であ
二年 生 の 二 一
月以 降 の)暴 行 の事 実 を聞 いたC の父Ⅹ の抗 議 を受 け tAに対 し て暴行 の事
- 、ま た tYYは、Cから (
実を 問 い質 す など した がtAが これを 否定 す ると そ れ以 上 深く事 情を 聞 - ことを しな か った。C の遺 族Ⅹらか らYYY
Yら に対 し七 〇九条 等 に基 づき tC の死亡 によ る逸失 利益 及び慰 謝料等 を請求 。 二年 生 の 1月以 降 の暴行 に関す るC の
慰 謝 料 の限度 で請求 認容。
︻
判旨 ︼ 二年 生 の 二 一
月頃ま で の状 況を 「いじ め」 と 見 る こと は当を 得 な いと した上 で、以 下 のよう に述 べる。 Yら の
七 〇九 条 責 任 は七 一四条 責 任 と異 なり 、 「一般 的 に監 護 教育 を怠 ったと か' 監護 教育 の実を あ げ る こと が でき な か った
と いう こと から直 ち にそ の責任 を負う と いうも のではな い」。 「
子供 は' そ の交 遊 関係 そ の他 子供社 会 におけ る体験 を 通
し て自 我を 確 立 し、社会 の価値 や規範を 体 得 し て社会 化を 遂げ て い-も のであ る こと が重視 されなけ れば な らな いので
あ って、 - -子供 の自 律 に委 ね ら れ て然 る べき 〓定の領域 が存 在 す る ことを 認 めざ るを 得 ず 、 - -未成 年 者 の親権 者 は 、
当 該 未成年 者 の年令 '性 別'性格 'そ の他 の具体 状 況 に照ら し て' そ のま ま放 置 した のでは他 人 の生命 若 しく は身体 へ
の重 要 な危 険 又社会 通念 上許 容 でき な いよう な 深刻 な精神 的 ・肉 体 的苦 痛を 及 ぼす こと が具体 的 に予見 され る にも かか
わ らず '故意 又は過失 によ って' それを 阻止 す るた め にと る こと のでき た実 効 的 な方策 を と らな か ったとき '監督 義 務
を 怠 ったも のと し て'そ れ によ って生 じた損害 を 賠償 す べき 責任 があ る」。 「
も っと も 、 父母 た る親権 者 は '子供 の性 格 、
心神 の発達 状 況 '行 動様 式等 に ついて最も よ-知 り得 る立 場 にあ り 、それだ け そ の行動 を 予 測す る ことも 容易 であ る の
北法 5
6(
3・
1
7
4
)
1
2
1
2
監督者責任 の再構成 (3)
が通常 であ るう え 、 そ の生活 関係全般 にわた って行 動を 規制す る こと が でき る立 場 にあ って'子供 が他 人 に危 害を 加え
るお それ があ る場合 にお いて'それを 阻止 す るた め にと る こと のでき る方 策も多 いのであ るから 'そ の負 う べき 監督義
務 の範 囲 は'学 校 設置 者 の負 う安 全 保 持義 務 に比 較 し て、決 し て低 か ったり狭 か ったりす るも のではな い」。Yら は、
特 にYY にお いては、
二年 生 の 一二月頃ま でにAら の担任等 か らA又はB の問題行動等 に ついて連絡を受 け るなど し、 「
マ マ
ⅩからAがC に暴行を受 けたと し て抗 議を受 け るなど し て いた のであ るか ら、 これら の事 実と - - T連 の事 実 経 過を併
せ考え ると'起 居を共 にし て いた父 母と し ては'当 時 におけ るA及びBを中心 とす る本件 グ ループ とCと の交友 関係 の
実 情を 知 り 又は これを契 機 と し てA又 はBから立ち 入 って事 情 を 聞-など す る こと によ って これを 知 り得 たも のと いう
べき であ - 、ま た、 そ のよう な前提 に立 って日頃 からき め細 か-A又はB の動静を 継続 的 に観察 し て いたと す れば '本
件 グ ループ の生徒 らが - - ︹
三学期始 業式 の︺ 日以 降右 グ ループ か ら離脱 し よう とす るC に対 し て暴 行等 を加え るなど
Ltそ の結 果' 同人を 深刻 な苦 悩 に陥 れ る こと のあ -得 べき ことを 予見 す る ことを でき たも のと 認 める のが相当 であ り 、
ま た' そ の段 階 にお いて' 父母と し て の適 切な方策 を講 じ る こと によ って有効 にこれを 阻止す る こと が でき たも のと解
Cが これを 原 因と し て--自 殺 を 図 る ことを 予見す る こと が でき な か っ
す る のが相 当 であ る」。 他 方 'Yらと し ては 「
たも のと解す べき」 であ る。
︻
検 討 ︼ l般論 と し て、親 の責任 を肯定 す る には 一般的監督 の願意 では尽-ず 、 具体 的 監督義務違 反 が必 要 であ ると し
)。
ま た '学校 内 の出来事 に ついて'親 の監督 義 務 が学校 設置 者 の監 督義 務 よりも 広 い範 囲 にわ た るも のであ る
た 上 で'本件 に ついて自 殺直 前 の暴行 に つ いて予見 (
認識 )義 務違 反を 認 め て いる (
他 方 、自 殺 に ついては予見 可能 性
を否 定
ことを 指摘 し て いる。事 案 と し ては'暴行 に関す る限り ではA (
被害 者 に対す る暴行 )
0
北法 5
6(
3・
1
7
5
)
1
2
1
3
説
論
[
91]東京高裁平成 六年 五月 二〇日判決 (
判時 一四九 五号 四二頁)
︻
事案 ︼ 90 の控訴審。Ⅹらから控 訴 (
Yらも 附帯控 訴)。C の慰 謝料等 の金額 に ついて控訴 一部認容。AB の素行 及び
同人ら によ るC への 「いじめ」並び にそれら に対す るYら の対応 に関す る事 実認定 に ついては,A に ついては、Aが中
学 二年時から弱 い生徒 に難癖を つけ て殴 って いた こと、深夜排綱 で補導 された際 にYが警察 で注意を受 け て いた ことt
Bに ついては、短気 且 つ粗暴 で教師 や他 の生徒等 に対 し て暴行 ' いじめを 繰返 し て いた こと 、 二年 生 の二学期 にお いてt
ABら によりCが使 い走- に行 かされる回数 が多数 回 に及び'また、ABら のC に対す る暴行も多数 回 に及び 且 つ激 し
いも のであ った こと、ABらがCを いじめ等 の対象と し て いた こと、CがAら のグ ループから離脱 した い旨述 べて いた
ことtYらは学校側からABの状況 に ついて説明を受 け、家庭 での指導を 要請 され て いた こと等を新 た に認定す るなど
した他 は' 90 の事 実認定 と ほぼ同じ。
︻
判旨 ︼ 二年 生 の二学期以降 の状況を 「いじめ」と 目す べき であ ると した上 で以 下 のよう に述 べ' 二年生 の 10月頃か
ら C の自殺直前ま での暴行 に関す るC の慰 謝料を認容 し て いる.YらはtA又はBによる 二年生 l学期以降 の問題行動
の反覆 に ついて教師 らから再 三知 らされ て指導を求められ、さら にtYYはAが補導を受 けた際 にも警察 から注意 を受
け て いた のであ るから、Yらは 「
親権者と し て、A又はB の行状 に ついて実態を把握す るため の適 切な努力を し て いれ
ば '遅-とも -- ︹
二年 生 の︺ 一〇月頃 には本件 いじめ の実態が深刻 であり、C の心神 に大き な悪影響 が生ず るおそれ
のあ る状況 であ ることを認識し得たはず であ る にも かかわらず、そ のような努力をす ることな-、A又はBに対 し適切
な指導 監督をす ることを怠り tA又はBを ほと んど放任 し て いたも のであり、そ のため、A及びBにC に対す る本件 い
じめ行為を 反覆 させ る結 果を招 いたも のであ る。 したが って、Yら にはA又はBに対す る監督義務を怠 った過失 があ る
と いう べき であ る」。 「
しかし、右 不法行為 によ ってCが自殺す る に至 ることをYY及びYyにお いて予見す る こと が可
北法5
6(
3・
1
7
6)
1
21
4
監督者責任の再構成 (3)
能 であ ったと認める に足り る証拠はな い」。
︻
検 討︼子 による 「いじめ」 の予見 (
認識)義 務違 反を認め'具体的監督義務 の違 反を肯定 し て いる (
他方 '自殺 に つ
いては、原審と 同様 に、予見 可能性を否定 )
0
[
92]大阪地裁平成九年 四月 二三 日判決 (
判時 一六三 〇号 八四頁)
︻
事案 ︼情緒 不安定等 の障害を有す るEは中学入学後 同学年 のA (
本件事件当時 l五歳 一〇ヶ月男)及びB (
同 l四歳
八 ケ月男)等 から足蹴 にされる等 の いじめを受 け て いたと ころ'本件事 件当 日 の放 課後 tAB並び に同学年 のC (
同一
五歳 五 ケ月女 )及びD (
同 一四歳九 ケ月女)から暴行を受 け、死亡した。Aは学年を追う ごと に問題行動 が顕著 になり'
中学 二年 頃から無 断欠席を Lt校内 では暴力を背 景 に同級生 ・下級生 に影響力を持 つ等 し、さら に'中学 一年 の頃から
本件事件ま での間 に七㌧ 八回Eを 足蹴 にす るなど し て いた。A の父母YYは学校と の懇談を繰り返 し'補導 セ ンター の
継続指導を受 け ること にな ったが、Aに対す るし つけは甘く、放任状態 であ った。Bは中学 二年 頃から欠席 が多 くなり、
中学 二年 二学期以降本件事件ま での間 に三回位Eを 足蹴 にした ことがあ った。B の母YはB の欠席 に つき教職員と相談
C
す る等 し て いたが'勤め のため 日中不在と し、自宅がAら の溜まり場とな って いた にも かかわらず 、放任 し て いた。
は中学 三年 の夏 にAと交際す るよう にな ってから授業を さぼること が増え 、本件事 件当 日にはDと共 に下級生 に対す る
暴力行為 に及び、また'中学 入学後本件事 件ま での間 に三回位Eを足蹴 にした ことがあ った。C の父母YY のCに対す
るし つけは甘- 、放任状態 であ った。Dは中学 三年 の夏 にBと交際す るよう になり、Aらと行動を共 にす ることが多 く
なり'授業を さ ぼることも増え、本件事件当 日も 下級生 に暴行を加え て いたが'本件事件以前 にEに対 し暴行を加え た
ことはなか った。D の父母YYの朕 は甘-、放任状態 であ った。また、Aら 四名 が本件事件以前 にEに対 し て集団 で暴
北法5
6(
3・1
7
7
)
1
2
1
5
説
論
行 を加え た こと や加え よう と した こと はな- '他 の生徒 に対 し ても集 団 で暴行 を 加え た こと はな か った。E の遺 族Ⅹら
からABCD及びY乃至Yら に村 し七 〇九条 に基 づき 賠償請 求。Yら に対 す る関係 で請求 認容。
︻
判旨 〓 親 権者 は中学 生 の子 であ っても ,原則 と し て子ども の生活 関係全 般 にわた ってこれを 保 護監督 す べき であ り '
少 な-とも '社 会 生活を 営 ん で い- 上 で の基 本 的規範 の 一と し て、他 人 の生命 '身 体 に対 し不法 な侵害 を 加え る こと の
な いよう '子 に対 し、常 日頃 か ら社会 的 規範 に ついての理解 と 認識を 深 め、 これを身 に つけ させ る教育 を 行 って、 中学
中学 三年 の︺夏休 み以
生 の人格 の成 熟 を 図 る べき 広 汎 か つ深遠 な義 務を負 って いると こ ろ'--Yらは、Aら が- - ︹
降 ' --暴力を 背 景と し て同級 生 ・下級生 に影 響を 及 ぼし て いるAを 中心 とす るグ ループを 形成 し、以来 、Aら の怠 学 '
喫煙 、 服装 の乱 れ等 の問 題傾向 が反覆 し て いた のであ るから (
か か る性向 が やが て暴力 的非 行 へと結 び つ いて いき やす
いこと は疑 いを 入 れ な いと こ ろ であ ろう )、Aらと 起 居を 共 にし て いるYらと し て、Aら の行 状 に ついて実態 を 把 握 す
るた め の適 切な努 力 を し て いれば tAら がA の影 響 のも と に早晩 弱者 に対 す る暴力 行使 によ る いじ め に及 ぶ予見可能性
を 予見 し得 た はず であ る にも か かわ らず ' そ のよう な努 力を す る こと な- tAら に対 し'前 記社 会 規範を 身 に つけ させ
る ことを 中心 とす る適 切 な指 導 監督 をす る こと を怠 り tAらを ほと んど 放任 し て いたも のであ- 、 そ のた め、Aら に本
件事 件 を 惹起 させ る結 果を 招 いたも のと いう べき であ る」
。 「したが ってtYらはtAら に対す る監督義務を怠 った過失
があ る」。
︻
検 討 ︼怠 学 や喫 煙等 の事 実 から暴力行使 によ る いじ め の予見 可能 性を肯 定 し ており 、 具体 的 監督義 務違 反 が問題と さ
れ て いる。も っとも 、事案 と し ては '子 によ る被 害者等 に対す る暴行 の事 実 が認定 され ており tAであ る。本 判決 も実
67
質 的 には これら の事 実 から暴行 の予見 可能 性を肯定 し て いると 見 ら れ る。但 し、YYに ついては'子 によ る被 害者 への
従 前 の暴行 が認定 され て いな い。 しか し、他 の生徒 に対す る暴行 の事 実 が認定 さ れ ており 'ま た ' 同学年 の者 によ る被
北法5
6(
3・
1
7
8
)1
2
1
6
監督者責任の再構成 (3)
害者 に対す る いじめが行われ て いたと の事実認定 から、少な-ともA乃至Åケー スと言え よう 。
判 夕 一〇八三号 〓 ハ1頁)
[
9]大 分地裁平成 二 年 一〇月 二五日判決 (
︻
事実 ︼A (いじめを始 めた当時 二 二歳)は中学 一年 二学期から同三年 生 の間 に同学年 のⅩに対 し て暴行 及び金銭 の強
要を行 いtAの父母YYはAが中学 二年生 であ った 二月 ころ、中学校 からA のXに対す る暴行 の連絡を受 け て初 め て、
A のⅩに対す る いじめを知 った。ⅩからA及びyyに対 し賠償請求。請求認容。
︻
判旨 ︼Aが中学 二年 であ った 二月 ころ学校 から連絡を受 け るま で の間 に、 「
Y及び YがtAがⅩ に対 し いじめを行う
Y及びYは'前記中学校から連絡を受 けた後 にお いても 、A の
ことを 予見 し得た ことを認 めるに足- る証拠はな い」。 「
いじめ の存在を否定す る弁解を鵜呑 み にし て、Aに対す る有効適 切な指導監督を行わな か った ことが認められる」。
︻
検 討 ︼事 案と し てはA (
暴行 及び金 銭 の強要)
。 いじめ の認識 乃至 そ の可能性 の有無 を基準と し て責位 の有無を 判断
し ており'具体的監督義 務違 反を 問題と し て いる。
[
94]さ いたま地裁平成 一五年 六月二七 日判決 (
判時 一八四九号七 一頁)
但 しAは暴行 の実行行為 に加わ って
︻
事 実 ︼ABCDE の五名 (いず れも 1五歳)は共謀 の上' Ⅹに集 団暴行を加え (
いな い)'Ⅹは負傷 した。ま た、A及びEは'本件暴行以前 から継続的 に万引き等 をⅩに強要し、数 回 にわたりⅩから
金 銭を喝取 し て いた。Aは中学生 にな ってから自 ら万引きを 五回程した こと があ るほか、 日頃から粗暴な行為をす る こ
とがあり、A の父母YYは基本的 に放任状態 で、A の母 YはAに粗暴な面 のあ ることを 認識 し て いた。 Eは自 らも 万引
き をし て いたがt
E の父母YYによ る生活全般 に対す る朕 は甘か ったoBはC及びDと共 に結成 した不良 グ ループ のリI
北法5
6(
3・
1
7
9
)
1
2
1
7
論
説
意 を し て いたも の の'そ の注意 の仕方 は必ず しも適 切なも のではな か った。CはBと 不良少 年 グ ループを 結成 Lt自 宅
・
I.
;
.
を溜 ま り場と し て いた が,C の父母YYは特 段 の注意 も せず にこれを 放 置 し て いた。DはBと共 に不良少 年 グ ループを
ダ ー であ った ほか' 日頃 から粗 暴 な行 動 が 目立 ち '本件 以前 にも 暴行事 件 を起 こし、B の母YはB に対 し てそ の都 度 注
結 成 し て いたが、D の父 母YYは不良 グ ループ と の交友 関係 に特 段 の注意 を 払 わず 放任 状態 にあ った。ⅩからY乃至Y
12 89
に対 し本件 暴行 を 理由と し て、ま たYYYY に対 し ては加え て本件 暴 行以前 の いじめ行 為 をも 理由 と し て賠償 請求。請
求 認容 。
Aら 二名 に ついては '本件 いじ め行為 の前 か 、少 な
︻
判旨 ︼ 「
少 年 ら 五名 には、 いず れも 本件 暴 行事 件 より以 前 から (
くと も これと 並 行 し て)、喫 煙 、ピ ア ス の着 用、 粗 暴 な 行為 ' 不良 グ ループ の結成 等 の問 題行 動 が生 じ て いたと ころ、
Yら は これを 認識 し、 又は認 識す べき であ った から '少年 ら 玉名 が、 早晩 弱者 に対す る いじ め や暴力 行為 等 に及 ぶ こと
をも 十 分 に予見 し得 たも のと いえ る」。
︻
検 討 ︼集 団暴行事 件 と いじ め が複合 し て いる事 案 類型 であ るが便宜 上 こ こ で取-扱 う こととす る。
・・り5 6 7
事 案 と し ては、集 団暴 行事 件 に のみか かわ った 子 の親 のう ちY に つ いてはA (
暴 行事 件 )tYYYY に つ いてはC (
不
)'/
_I
.
-I
粗 暴 な 行為'暴行 '継 続 的 な 万引 き
良 グ ループ の結成 )。 いじ め にも かか わ った子 の親 であ るYYYY に ついてはA (
の強要等 )
0
粗 暴な行為 や不良 グ ループ の結成 など の事 実 から いじ め や暴力行為 など の予見 可能性 を肯 定 し て いる。
以 上 の いじめ に関す る裁 判 例 にお いては いず れも 具体 的監督 義 務 の違 反 のみが問 わ れ て いる点 が特 徴 的 であ る。 これ
は' いじめ が反覆 且 つ継 続 的 な行 為 であり ' それ故 '親 に ついてそ れら の行為 の予見 (
認識 )可能性 を肯 定 す る こと が
北法5
6(
3・
1
8
0)1
21
8
監督者責任 の再構成 (3)
容易 であ ること によるも のと思われる。また'反対 にこ のこと から'被害者 が自殺 した場合 であ っても、 1般的監督義
-9
1)
(
務違 反 に基づ-親 の責任 は認められ て いな い。 この点 は'判 例 上被害者 た る生徒 の自殺 に ついては予見 可能性 がな い限
-学校 設置者等 は責任を負 わな いと され て いる ことと の均衡も重視 され て いるも のと思わ れる。
第 六日 交通事故 に関す る裁判例
こ の類型 に関す る公表裁判例は これま でに人件存在す る。
[
95]名古 屋地裁 昭和 三八年 三月九 日判決 (
判時 三四五号 四八頁)
tB (一四歳 二ケ月男)
、C (二 二歳 四 ケ月男)及びD (二四歳 二 ケ月男)はtCが拾得
︻
事案 ︼A (一四歳 七 ケ月男)
したキーを用 いて数 日前 から放置 され て いた自動車を始動 させた上tAが ハンド ルを tBがブ レーキを受 け持ち、C及
-ソ
ー3一
・
・
び Dを同乗 させ て無 断無免 許運転を し て いたと ころ、Ⅹ に衝突 した (
Ⅹ負 傷)
。ⅩからABC の父又は母YYYY及び
D の父母YYに対 し賠償請求。Y乃至Yに対す る関係 では請求認容。 YYに対す る関係 では請求棄却。
亡
..
い
︻
判旨 ︼Dは同乗者 に過ぎず、本件事故 に ついて責任を負わな いこと からYYも責任を負 わな いと し、ま た、Y乃至Y
に ついてはⅩによ る監督義 務憾意 の立証 がな いと し て いる。
︻
検討︼昭和 四九年 判決以前 の判決 であ るが、七 〇九条責任成立 の余 地を認め て いる。
[
96]徳島 地裁 昭和 五四年六月 二六日判決 (
交 民集 〓 一
巻 三号 八四二頁)
Ⅹ重傷)。ⅩからA
︻
事 案 ︼ A (一二歳九 ケ月男)運転自 転車 の交差点 におけ る信号無視 によ るⅩ運転自転車 の転倒 (
北法5
6(
3・
1
81
)
1
2
1
9
説
論
の父Yに対 し七 一四条 に基づ いて賠償請求。監督義務違 反否定。
︻
判旨 ︼A の責任能力を肯定 し て七 1四条責任を否定 した上 で以 下 のよう に述 べ、七 〇九条責任も否定す るQA の 「
父
母は、 同人 の学校教育 には熱心 であ ったが、そ の社会教育 には関心 が薄 か った疑 いがあ る。 そ の点 では、XがYを非難
し て いることは多少 は当 って いるよう に思われる。 しかしながら' これら の点を考慮 し ても 'な お、本件事故 の発生と
Y の本件未成年者 に対す る監督義務違 反と の間 に相当因 果関係を認め ることは でき な い」。
但 し、子 に不法行為 があ れば責任をと る旨 の答弁書 の記載を根拠 に慰謝料 に ついて請求を 一部認容 し て いる。
︻
検討︼交通事 故 の予見可能性を 問題 にせず、 「
社会教育」 の僻怠 、す なわち 一般的監督 の僻怠を 問題と し て いる。
もっ
とも ' 一般的監督義 務 の僻怠 それ自体 又はそれと本件事 故発生と の間 の相当因 果関係を否定 し て いる。
[
97]東京 地裁 昭和 五八年 四月 二八日判決 (
交 民集 一六巻 二号 五八五頁)
︻
事案 ︼A (1四歳男)運転自転車とⅩ運転自転車と の交差点 で の衝突 (
Ⅹ重傷)
。Aは小学 l年 の頃から自転車 に乗 っ
て いるが、 これま で交 通事故を起 した こと はな-'ま た、学校内 や家庭 で問題行動を起 した こと はなく、A の父母YY
は 日頃A の教育 やし っけ に意を用 い、交 通事故 に ついては気を つけ るよう に相応 の注意 を し て いた。ⅩらからA及びy
Yに対 し七 〇九条 に基づき 賠償請求。yyに対す る関係 で請求棄却。
︻
判旨︼ 「
Aは'たまたま 不注意 により本件事故 を起 したが'平素 から非行性 があ ったと か'問題行動 が みられたと か
いう ことは仝-認められず 'ま たYtYにお いて平素必要な監督義務を 尽くさずAを放任 し て いたと いう よう な事 情も
見当たらな いのであ るから'本件 にお いてYtYに対 し民法 七 〇九条 によ る責任を問う こと は でき な い」。
︻
検 討︼平素から非行性 や問題行動 のなか った ことを重視 し て いることから、 1般的監督 の憾意を否定 し て いるも のと
北法5
6(
3・
1
8
2
)
1
2
2
0
監督者責任の再構成 (3)
見られる。
[
9]東京地裁 昭和 六三年 7月 二九 日判決 (
交民集 二 1巻 言三 四四頁)
︻
事案 ︼A (1四歳 男)運転自 転車 (一時停止無視 ) の交差点 におけ る歩行者Ⅹと の衝突 (
Ⅹ重 傷)
。Ⅹか らA及びそ
の父母YYに対し七 一四条及び七 〇九条 に基づき賠償請求。YYに対す る関係 で請求棄却.
︻
判旨︼七 〇九条責任 は'「
特 段 の事 情 のな い限-'子 の当該 不法行為 な いし過失 が同年 代 の子 に通常 みられ るよう な
形態 のも のとは異 な るも のであ って、か つ'かかる不法行為 の発生が右親 の子 に対す る指導監督な いし教育義務 の憾意
の発露と認められる場合 に限られるも のと解す る (
したが って、通常 の過失 の場合 には右責任は生じな い) のが相当と
いう べき であ る」。 「
本件事故 におけ るA の過失態様 は--決し て軽微 なも のではな いが、同年代 の子ら に往 々にし て生
じ る突発的なも のであ って'通常 の範ち ゆう から外 れた特異 なも のと は認め難 い上'︰-・
本件自転車 の様式 、購 入 の経
緯 '自 転車 搭乗 におけ る 一般的注意等 にお いてtYtYにA の--過失 の発生を助長したと認め る に足りる特段 の事 情
も兄 い出し難 い」。
︻
検討︼ 一般論とし て 「
教育義務 の慨怠」 に基づ いて親 の責任 が成立す ることを認 めた上、自転車搭乗 に ついての 1般
的注意を問題と し てお-' 一般的監督義務 の違反を 問うも のと見 られ る。なお'被監督者 であ る子 の不法行為 又は過失
が同年代 の子 に通常見られな いも のであ ることを要求 し て いる点 は、換言す れば、子 の過失 が同年代 の子 に通常見られ
るあり ふれたも のであ る場合 は親 の責任 が否定 されると いう こと であり、監督義務違 反 の有無 の判断 に際 し て子 の行為
態様 が問題となりう ることを示し ており'注目 に値す る。
北 法5
6(
3・
1
83)1
221
説
論
[
99]山 口地裁下関支部平成 三年九月 10日判決 (
交民集 二四巻 五号 1
〇三〇頁)
︻
事案︼A (二二歳男) の横断歩道 から三 m離れた地点 での車道 への飛び出し によるバ スの急停車 (
乗客Ⅹの負傷
ⅩからA及びそ の父母YYら に対し七 〇九条等 に基づき賠償請求。YYに対す る関係 で請求棄却。
)0
︻
判旨︼「
Y及びYは、常 日頃からtAに対し、道路を横断す るとき には左右を必ず確認す るよう に、また'信号 のあ
る場所 では青信号 で渡 るよう に注意し て いた--も のであ るから、本件事故当時 二二歳 であ るAに対す る監督義務違反
は認められな い」。
︻
検討︼道路 の横断方法 に関する監督を問題とし て いるも のの'交通事故 の予見可能性 には言及し て いな い。
[
1-0]岡山地裁平成 五年 四月 二七 日判決 (
交民集 二六巻 二号 五三四頁)
Aも交替 で無免許運転し'事故
︻
事案︼A (一五歳男)が知人名義 で購入し友人Bが無免許運転し て いた自動 二輪車 (
時は後部座席 に同乗 し て いた)と対向車線 のⅩ運転原付自転車と の衝突 (
Ⅹ負傷B死亡)。Aは中学 1年 の頃から自動
二輪車等を無免許運転LtBと共 に暴走族 に加入Ltまた'中学 一年 の頃自動 二輪車 の三人乗り で自損事故を起 こす等
し、所轄警察署交通係 にそ の名が知れわた って いた。ⅩからA及びそ の父Yに対し七 〇九条等 に基づき賠償請求。請求
認容。
︻
判旨︼「
Yは親権者と し て、子 のAが無免許運転 のような他人 に危害を及ぼす恐れ のあ る行為をしな いよう'交通法
規を遵守す るよう監視監督す べき義務を怠 って いたと いわざ るを得な いのであ って、Yの右監督義務僻怠 が本件事故発
生 の要因を成し て いる」。
無免許運転及び無謀運転 による交通事故等)
。交通事故 の予見可能性 には直接言及され て い
︻
検 討︼事案とし てはA (
北法5
6(
3・
1
8
4)1
2
22
監督者責任の再構成 (3
)
な いが'子 によ る過去 の無免許運転 の事 実 や事 故 の事 実を 認定 し て いる こと から' 「
特定化 された行為」 の予見 可能性
を前提と し て監督義務 の違 反を肯定 し て いるも のと見られ る。
[
ー]東京地裁平成七年 〓 1
月 l九 日判決 (
交民集 二八巻 六号 1七七 三頁)
︻
事案 ︼比較的人通り があ-自転車 の通行 の禁 じられ て いる歩道 上 で のA (一五歳 七 ケ月女)
運転自 転車とⅩ の接触 (
Ⅹ
負 傷)
。Ⅹには学校 や日常 生活 で問題行動 はな-、ま た'本件事 故ま で事 故 はなか った。Ⅹ の母Yは、 日頃から子ども
たち には曲 がり角 や大きな道路 に出 るとき は必ず 一旦停止す ることなど の教育 を Lt子ども らが 五㌧六歳 の頃 から自転
車を買 い与え 、また、Ⅹ の父と の離婚後 は子ども らを厳 し-育 ててき た。ⅩからA及びYに対 し七 〇九条 に基づき賠償
請求。Yに対す る関係 で請求棄却。
︻
判旨︼ 「
Yは子 ら に対 し て'自 転車 の運転時 に注意 す べき 点 に ついて 〓疋の教育 を し て いた こと が窺 わ れるがtAは
本件事 故時 にお いて'自 転車 の通行禁止場所を '本件自転車 に乗車 したまま 通行 し ており、そ の教育 にお いて行き届 か
な い面 があ った ことを否定 できな い」。 「
しかし、A に日常生活等 にお いて問題がなか った こと'成 人 であ っても自 転車
の通行禁止場所を自 転車 に乗車 し て通行す ることは'全-考え られな い事態 ではな-、 それ自体をと-わけ重大な過失
と 評価 でき な いこと 'Aは 一五歳 で、物事 の分別も それなり にあ る年齢 であ る ことなど の事 情を考慮す ると、Yにはそ
の親権者と し ての監督義 務違 反 の過失 があ るとま で いう ことは でき な い」。
︻
検討︼自転車 による事故 の予見 可能性 には言及し ておらず 'さら に主と し て当該事故 の態様等を問題と し てそ こから
監督義務 の僻怠を否定 し て いること から' 一般的監督義務 の違反 が問題と され て いると見 られる。
北法5
6(
3・
1
85)1
22
3
説
論
[
1-2]名古 屋地裁平成 一四年 九 月 二七 日判決 (
交 民集 三五巻 五号 1二九 〇百ハ
)
)
。Ⅹ
︻
事 案 ︼A (7四歳 1ヶ月 男 )無 灯 火 運 転 の自 転車 (マウ ンテ ンバイ ク)と 歩 行 者Ⅹ の衝突 (
Ⅹ負 傷
中 死亡 し、訂ら が承継 ) か らA及び そ の父 母YY に対 し賠償 請求 。YY に対す る関係 で請求 棄却。
(
訴訟係属
︻
判旨 ︼A の自 転車 は格 別運 転 に際 し て注意 を 要 したり '危 険 性を有 す る自転車 ではな- 、ま た、Aは本件事 故当 時 中
学 二年 生 で、本件事 故 以前 には事 故 歴も な- 、従来 の日常 生活 にお いても 格 別 問題行 動等 は見 ら れな か った。 これ ら の
A に対 し'Y及びY にお いて' 日常 生活 や自 転 車 の運 転 、道路 交 通 の安 全 に つき 適 切 な指導 ・監
事 実 関係 によ れば 、 「
督を す べき 状況 にあ ったとも 、 そ の指導 ・監督 を行 わなけ れば 本件 のよう な事 故 が発 生す る相当 の蓋 然性 があ ったも の
とも 認 めが た い」。
︻
検 討 ︼自 転車自 体 の持 つ危険 性 や事 故 歴 のほか' 日常 生活 の問題行 動 や日常 生活 に つ いて の指導 ・監督 を 問題と し て
いる こと から、 具体 的監 督義 務 と 一般的監 督義 務 の双方 を 問 題と し て いると いう こと が でき る。
以 上 の交 通事 故 に関す る裁 判 例 では ' 一六歳 以上 の責任 能力 者 た る未成 年 者 に関す る裁 判 例 の場合 とは異 なり 、主 と
9
し て自 転車 及び車 道 への飛び 出 し に関す る事 故 が問 題と な って いる (
96' 97㌧ 98' 9㌧ 1-1、 1-2)。 そ し て' これ ら の事
案 では いず れも 子 の従前 の行 動 に特 段 の危険 性 が認 め られな いケー スであ ると ころ、 一般的監督 義 務 の違 反を 問題と し
て これを否 定 し て いる。 こ の点 に'前 述 の いたず ら によ る事 故 に関す る裁 判 例と 同様 、他 の事 案 類型 に関す る裁 判 例 の
傾向 と の相違 を 見出す こと が でき よう 。 こ の点 に関連 し て' さら に'自 転車 によ る加害 に関す る裁 判 例 の いず れ にお い
ても ' 一六歳 以 上 の未成 年 者 によ る自 動車 等 で の交 通事 故 に関す る裁 判例と は異 な り '被 告車 が親 により供 与 され た事
実 (
通常 は親 が子 に買 い与え たも のであ ろう ) は認定 さ れ ておらず 、 こ のよう な事 実 は重 視 さ れ て いな い。 これは自動
車 や自 動 二輪車 と自 転車 と では' それ自 体 が有 す る危険 性 の程度 に格 段 の差 が存 在 す るた め であ ると 見 ら れ、 こ のよう
北法56(
3・
1
86)1
2
2
4
監督者責任の再構成 (3)
な評価 が 一般的監督義務違反 の判断 にも影響 し て いると見られる。
も っとも 、上記 の 一般的監督義務違 反を否定す る裁判例 の中 には'子が従前 「
特定化 された行為」を した こと がな か っ
1-)
た ことを積極的 に認定 す る裁判例も 見 られると ころ (
97、 1-1' 1-2)' これら の裁判例 (
と- に97、 1 に ついては' い
ず れも 具体 的監督義務違 反を問う 際 の予見可能性を 認め難 いこと から暗 黙 のうち にこれが否定 され て いるも のと思われ
る。
第七日 そ の他 の事 故 に関す る裁判例
この類型 に関す る公表裁判例は これま でに三件存在す る。
[
1-3]東京 地裁 昭和 四九年 〓 l
月 一八日判決 (
判時七 六六号七 六頁)
︻
事案 ︼ABCD (いず れも 一五歳)は、終戦時 に海中 に投棄 され海岸 にう ちあげ られ て いた砲弾を焚き 火 の中 に投棄
した (
投棄 の理由 は判決 理由中明示的 に認定 され て いな いが'
請求 原因 によ ると爆発 の様 子を見 るため であ ったらし い)
後 、帰途 、E及びXに出会 い'焚き 火があ る ことを教え たため、E及びⅩが こ の焚き 火 で暖をと って いたと ころ'砲弾
が突然爆発 した (
E死亡'Ⅹ重 傷)。本件 海岸 には終 戦後度 々砲 弾類 が打ち 上げ られ、子ども たち の中 には砲弾類 の火
・-ハ
ノ
︼3一
q
薬を抜き 取り、点火し て花火 のよう にし て遊 ぶ者が いた。Ⅹら及びE の遺 族ⅩらがA乃至D の父YYYYら に対 し七 一
四条 に基づき 賠償請求。Y乃至Yに村す る関係 で請求棄却。
︻
判旨 ︼子が責任能力 を有 す る場合 には親 に ついて七 〇九条責任が成 立す るが' 「
責任能力 のあ る未成年者 に対す る監
督義務者 の監督 に過失 があ ったと いう ため には'当該未成年者 に つき '平素 から重大な非行を重 ねたり'思 いがけな い
北法56(
3・
1
87)1
2
2
5
説
論
行動 に出たりす るなど の問題性があ った のにかかわらず、監督義 務者 がそれ に村す る適 切な指導 ・監視を怠 って いたと
いう よう な特 別な事情 のあ る ことを要す るも のと解す べきと ころ'--Yら に つき そ のよう な監督 上 の過失を肯定す る
に足り る事 情を 認める ことは でき な い」。
︻
検 討︼本件 は いたず ら によ る事 故とも見う るが、Aら の加害行為 の動機 が判決理由 中 に明示的 に認定 され て いな いた
め、 ここに分類す る。
子ども たち によ る砲 弾類 への点火)
。監督義 務僻怠 を 認め るた め の要件 と し て子 の従前 の行動 の問
事案 と し ては∬ (
題性等を要求 し て いること からす ると '具体的監督義務違反を問題と し て いるよう にも 思われるが、砲 弾類 の取扱 に関
す る監督 に限定し て いな いことから、 一般的監督義務違 反を 問題とし て いると解す る余 地もあり'評価が困難 であ る。
[
畑]東京地裁平成 四年 五月 二九 日判決 (
判時 1四四六号九 二頁)
︻
事案 ︼駅 け階段 におけ るA (一二歳 三 ケ月男)とX の衝突 (
転落 によりⅩ負傷)
。Aは本件事故 の三乃至 四 ケ月前 頃'
自宅付近 の駐車場 に置 いてあ る鉄製 のポー ルを倒す よう な いたず らを した こと があ った。XからA及び そ の父母YYに
対 し七 〇九条 に基づき 賠償請求。yyに対す る関係 で請求棄却。
︻
判旨 ︼「
本件事 故 の態様 は--、A の過失行為 によ るも のであり'--無謀 な行為 であ るとは いえ な いば かり でな-∼
本件事故以前 にAが-- ︹
鉄製ポー ルを倒す ︺よう な行動を した こと があ るからと い って'進 ん でtAが--かね てよ
り素行 が悪 いと評判 の子 でありtか つ、右事故 に つき 、Y及びYが親権者と し て--監督義 務を怠 った過失 があ るとま
で認定す る こと は困難 であ ると いう はかな」 い。
︻
検討 ︼事案と し てはC (
鉄製ポー ルを倒す いたず ら)
。本件事故 のよう な事 故 の予見 可能性 に言及し て いな い。
北法5
6(
3・
1
8
8)
1
22
6
監督者責任 の再構成 (3)
[
1-5]東京 地裁平成 八年 三月 二七 日判決 (
判時 一五九 言了五八頁)
︻
事案 ︼階段 の踊-場 におけ るA (二 一
歳 二ケ月男 )とⅩ のじ ゃれ合 いによるⅩ の転落 (
Ⅹ重傷)
。Aは穏和な性格 で、
本件事 故以前 に他 人と喧嘩を し てけがを させた ことなど ほと んどなか った。ⅩらからA及び そ の父母YYに対し七 〇九
条等 に基づき賠償請求。請求認容。
︻
判旨 ︼ 「
Aは'本件事件直後 に'Ⅹ の受傷状 況を確 かめも せず、両親 にも 本件事 故 のことを仝 -報告 せず、む し ろ隠
し て いたと い ってよ い状況 であり、 このよう な事後 の対応 は小学 六年 生と し ても幼稚 であ る。ま た、Y、Yも当初Aか
ら事実 関係を十分確 かめず'自 分 の息 子 の非を直視 せず に過失 にせよ生じさせた結 果 に対す る責任をとらせようとす る
教育的配慮 に欠け て いる。 こ のことから み てもY及びYは親と し てtAに対 し て生活全般 にわた って周囲 の人 に危険を
も たらさな いよう に行動す るよう教育す る義務 に反 し て いたも のと いう こと が でき る」。
︻
検討︼本件事故後 の子及び親 の事 故 に対す る対応 を問題と し ており'当該加害行為と 同種 の行為 に ついての予見 可能
性を問題と し て いな いこと から、 1椴的監督義務 の違反 が問題と され て いると見られる。も っとも、監督者責任 におけ
る監督義 務僻意 の有無 は' (
具体的監督義務 の違 反 が問わ れ る にし ろ 一般的監督義 務 の違 反が問わ れ る にし ろ)子 が当
該 加害行為を行 った ことと の関係 で判断 される べき も のであり、本判決 のよう に事 故発生後 の対応 に基づ いて親責任 の
有無を決す る こと は疑 問 に思われる (
それとも 、 これら の対応 から本件事 故前 の 一般的監督僻意を推定す ると いう 趣旨
であ ろう か)
。
以 上そ の他 の事 故 に関す る裁判例 では'突発的な事故 が多 -' 「
特l
疋化 された行為」 の予見 可能性 が暗 黙 のう ち に否
定 され るためか'予見可能性を問う ことな- 1般的監督義務違 反 の有無 が問われ る傾向 があ る。
北 法5
6(
3・
1
8
9)1
2
27
論
第 八日
小
以 上、 〓 ハ歳未 満 の責任
括
能
結 論を簡 単 にま と め ておく〇
力者 た る未成 年者 に関す る裁 判 例を検 討 し てき た が、 こ こ で検 討 し た全 て の類 型を 通 し て
一六歳未 満 の責任 能力 者 た る未 成年 者 に関す る裁 判 例 では ' 一六歳 以 上 の責任 能力者 た る未成 年 者 のそ れ に比 べ'事
案 の内容 は多 岐 にわ た っており '故意 の犯罪、 遊戯 ・スポ ー ツ事 故 ' いたず ら によ る事 故 '未 成年 者 同士 のけ んか に関
す る事 故 、 いじめ、交 通事 故等 が見ら れ、 こ のう ちも っとも多 数を 占 め る のが故意 の犯罪 に関す る裁 判 例 であ る。
これら各 種 の類型 ごと に見 てみると 、 一六歳 以 上 の未成 年 者 に関す る裁 判例 に比 べ'事案 類 型 ごと の特 徴 が より 見 出
されよう 。す なわち 、第 lに、 いたず ら に関す る裁 判例 では、 いたず らが家 庭 で のし つけ へす な わち 一般的 監督 の僻怠
の徴表 と 見 ら れるた め か' いず れも 一般的 監督義 務違 反 の有 無 が (
具体的 監督義 務違 反 の有無 と共 に) 問わ れ て いる。
第 二に、 いじめ に関す る裁 判 例 では、 いじめが反覆 且 つ継続 的 な行為 であり ' それ故 '親 に ついてそ れら の行為 の予見
(
認識 ) 可能性 を肯定 す る こと が容易 であ り 'ま た、判 例 上認 め られ て いる学校 設 置者 の責任 要件 と の均 衡 を 図 るた め
か、 いず れも 具体 的監督 義 務 の違 反 のみが問わ れ、監督義 務違 反 が肯 定 さ れ て いる。第 三 に'交 通事 故 に関す る裁 判例
ではtと- に自 転車 や歩道 への飛出 し によ る事 故 に ついて、通常 は子 の従前 の行動 に特 段 の危 険性 が認 め られず 、ま た '
予見 可能性 を暗 黙 のう ち に否定 し て いるた めか、 具体的 監督義 務 の違 反だ けを 問う 裁 判例 は見 ら れず 、 一般 的監督 義 務
の違 反ま でも 問題と され て いるも の の'親 の責任 は否定 さ れ ており 、 さら に' 一六歳 以 上 の未成 年 者 に関す る裁 判 例と
は異 なり '親 か ら子 への被 告車 の供 与と いう事 実 は重視 され て いな い。 第 四 に、 そ の他 の事 故 に関す る裁 判 例 では 、突
発的 な事 故 が問 題と なり ' 且 つ、子 の従 前 の行動 に危険 性 が見 ら れな いケー スが多 いた めか 、予見 可能性 を 問う こと な
- 一般的監 督義 務違 反 の有無 が問わ れ る傾向 にあ ると 言え よう 。
北法5
6(
3・
1
9
0)
1
2
28
監督者責任の再構成 (3)
しかし'他方 で'他 の類型、故意 の犯罪 や遊戯 ・スポ ー ツ事故 '未成年者 同士 のけんか に関す る裁判例を見 ると、 こ
こでも監督義務 の内容'及び'それと事案 の内容と の対応 に ついて、 1六歳以上 の未成年者 に関す る裁判例と 同様 のこ
とが言え よう 。すなわち'「
特定化 された行為」 が事 故前 に既 に現わ れ て いた ケー スでは原則とし て具体的監督義務 の
違 反 の有無を 問 い'監督義務違 反を肯定 し て いる (
7
2、 75、 80、 83、 84、 89、4
9 (
A の集 団暴行 に ついて)。 そ の他 に
交 通事 故 に関す る裁 判例 の1-0)
。 これ に対 し'子 の従前 の行動等 に特段 の危険性 がなか ったか若 し- は そ のような危険
性あ る行動等 が認定 され て いな いケー ス'又は、 「
特定化 され て いな い危険」など が現わ れ て いた に止ま るケー スでは、
具体的監督義務違反 の有無だけが問われ るか'それとも ' 一般的監督義務違反 の有無ま でが問わ れるか によ-結論 が異
な る傾向 が見られ'前者 の場合 には監督義務違反は否定 され (
74 (
Bに ついて)、 77、 78' 79、 81)、後者 の場合 には監
督義務違反が肯定 される (
69㌧ 70' 71、7
3)傾向 が見られる。も っとも '以上 のような傾向と は異 な る裁判例も存在 し
な いわけ ではな い (
74 (
Aに ついて)、6
7
㌧ 82㌧ 94 (
C及びD の集 団暴行 に ついて)。但 し、74に ついては こ の判決 の︻
検
討︼を参 照)
。
そ こ で' 「
特定化 された行為」 が事故前 に現わ れ て いなか った事案 に関す る裁判例 にお いて具体的監督義 務違反を 問
う にとどま るか'それとも 1枚的監督義務違 反をも問う かを区別す る メルク マールがど こに求 められ るか であ るが' こ
れは、第 一に'被侵害利益 の重大性 に求 められよう (
故意 の犯罪 に関す る裁判例 で l般的監督義務違 反が問われ て いる
場合 、 いず れも被 侵害利益 は生命 であ る)
。 しかし、遊戯 ・スポ ー ツ事 故 に着 目す ると '具体的監督義 務違 反だ けを問
う裁判例 (
79'81)と 一般的監督義務違反を 問う裁判例 (
84) の いず れも身体 侵害 の事案 に関す るも のであり、被侵害
利益 の性質だけからは説明は つかな い。 そ こで'遊戯 ・スポ ー ツ事故 に関す る裁判例 にお いて' 一般的監督義 務違 反を
問題と し てこれを肯定す ると見られる裁判例 (
84)が何を手 がか-と し て親 の監督義務違 反を肯定 し て いるかを見 ると '
北法5
6(
3・
1
91
)
1
2
2
9
説
諭
判決 は加害行為 に使 用 された物 の親 から子 への供与と いう事 実 から監督義 務を導き 出 し て いる。 さら に' 「
特 定化 され
た行為」 が事 故前 に現わ れ て いな か った にも かかわらず 具体的監督義 務違 反を肯定す る裁判例 (
76' 82)が' 「
特定化
され て いな い危険」 が事件前 に存在 した こと や 「
特定化 された行為」を誘 発す る環境 が事故前 に存在 した ことを手 がか
-と し て いる点 が注 目され る。 なぜな ら' 「
特定化 された行為」 が事 件 ・事 故前 の子 の行動 に現わ れ て いなか った にも
かかわらず そ のよう な行為 の予見可能性を肯定す る こと は'通常困難 であり'そ のよう な場合 に具体的監督義 務違 反を
認 めるとき 、そ こには予見 可能性 に基づ-過失と は異 な る何らか の実質的考慮 が働 いて いると見られ るから であ る。従 っ
て' こ のよう な観点 から'故意 の犯罪'遊戯 スポ ー ツ事 故 に関す る裁 判例を改 め て見直すと '上述 の物 の供与 の他 、「
特
定化 され て いな い危険」 (
69' 70' 71' 76、 94 (
C及びD の集 団暴行 に ついて))、 「特定化 された行為を誘 発す る環境」
(
7
3㌧ 82)と い った メルク マー ルを見出す ことが でき よう 。
他方、上述 のよう に'具体的監督義 務違 反 の有無だけを検 討し て監督義 務違反を否定す る裁判例が この年齢 階層 に関
す る裁判例 にお いても見出されると ころ'子 の年齢 の低 さ に鑑 みると '現在 の学説 の到達点 であ る監督義務 に対す る理
解 では' 一般的監督義務 の僻怠 が検討 され て いな い点 に ついてこれら の裁判例を説明す ることは困難 であ ろう 。なお'
ここでも、裁判例 にお いて具体的監督義 務違反 のみが問われること のあ る背景 に'裁判所 の判断が当該訴訟 におけ る当
事 者 の主張 二且証 の内容 に左右 され て いること があ ると見られ るかも しれな い。 しかし'例えば 、裁判例 68や77にお い
てはそも そも 一般論と し て具体的監督義務違反 に限定 し ており 'また、裁判例 74にお いては 一般的監督僻意 に相当す る
事 実を認定 しながらも 具体的監督義務違反だけを問題と し て親 の責任を否定 し て いる。
最後 に'裁判例 の中 には' 一般的監督義務と具体的監督義務 の双方 の態様を 問題と しながらも 、前者 の義務を親 は尽
し て いたと し て具体的監督義務違 反 に基づ いて責任を負 わせ て いると見 られ るも のが存在 す る (
82)
。 こ のこと は 一般
北法5
6(
3・
1
92)
1
23
0
監督者責任の再構成 (3
)
的監 督義務 違 反と 具体 的 監督義 務違 反 の相 互 の関係 に ついて、 必ず しも 前 者 の義 務 が よ-高 度 な義 務 と し て、後 者 の義
まとめ
務違 反 が否定 さ れた場合 の受 け 皿的な役 割を 果すも のではな いことを窺 わ せ よう 。
第 三項
責 任 能力 者 た る未成年 者 の不法 行為 に関す る監督 者責任 の裁 判 例 に ついて、 そ の検 討 か ら明 ら か にな った こと を 要約
す ると '以 下 のよう にな る。
第 一に、裁 判 例全 体を 通 し て' 具体 的監督義 務 の違 反 のみを 問 い'監 督義 務違 反を否 定す るも のが存在 す る。監 督義
務 の構 造 に関し て現在 の学 説 が到 達 し て いる理解 により こ のこと を 説 明す る こと はtとく に子 の年齢 が低 いよう な 場合
には'極 め て困難 であ ろう 。 ま た '裁 判 例 の中 には' 一般的 監督義 務違 反 の有 無 と 具体 的監督 義 務違 反 の有無 の双 方を
問 い' 一般 的 監督 義 務違 反を 否 定 しな が ら 具体 的 監督 義 務を 肯 定 す るも のも 見 ら れ ると こ ろ (
例え ば 裁 判 例 82参 照 )∼
こ のこと から は'現実 の裁 判 例 では必ず しも ' 一般 的監 督義 務 が具体 的監督義 務 よりも高 度 の監 督義 務 であ - '後 者 の
監督義 務違 反 が否定 された場合 の受 け 皿と し て の役 割を 前者 の監 督義 務 が果す と の理解 が され て いな いこと が窺 わ れ る。
そし て' こ のよう に具体 的監督 義 務 の違 反だ け が問わ れ る場合 が存 在す る ことと 関連 し て'第 二 に、 具体 的監督義 務
の違 反だ けを 問う か' 一般的監 督義 務 の違 反を も 問う か に応 じ て、判決 の結論 が左 右 さ れ る こと があ ると 見 ら れ る。 す
な わち 、 「
特 定 化 さ れ た行為」 が 子 の従 前 の行 動 に現 わ れ て いな か った ケー スでは 、 具体 的監 督義 務違 反 の有 無 だ け が
問わ れ る場合 には監督 義 務違 反 が否 定 され ' 1股的 監督義 務違 反 の有 無ま でも 問わ れ る場合 には監督 義 務違 反 が肯定 さ
れ る傾向 があ ると 見 ら れ る。 そ し て' さ ら に' 「
特 定 化 さ れた 行為」 が 既 に現わ れ て いた ケー スでは' 原則 と し て具体
的監 督義 務違 反 の有 無 が問わ れ' これが肯 定 さ れ ると こ ろ、裁 判 例 の中 には 1般 的監督 義 務違 反 の有無 を 問う こと によ
北 法5
6(
3・
1
9
3)1
2
31
説
論
り監督義務違反を否定す るも のも見られる (
裁判例4参 照)
0
このよう に' 「
特定化 された行為」 が現われ て いな か ったケ ー スにお いて、 (
場合 によ っては具体的監督義務違 反 に仮
託 し て) 1股的監督義務違反 の有無ま で問う か否 かを 区別す るメルク マー ルと し ては,子 の年齢 や被 侵害 利益 の性質、
「
特定化 され て いな い危険」等 が 〓疋の役割を 果し て いる (
と- に 〓 ハ歳末満 の責任能力者 による故意 の犯罪'遊戯 ・
スポ ー ツ事 故 に関す る裁判例 にお いて)と考え られ るも のの'裁判例全体 にお いて必ず しも決定 的役割を 果し て いると
は言えず' こ のため'裁判例 の 一部 には混乱 がもたらされ て いるよう に思われ る。例えば 、裁判例 51と 57では子 の性 別
が同じ で'年 齢も ほぼ同年 齢 であり (一六歳 と 一七歳)、被 侵害 利益も 同種 (
生命 ) であ る上、加害行為 の態様も 同類
型 (
交差点 で の 1時停止無視 による交通事 故。 57ではさら に速度制限違 皮) であ る にも かかわらず 、前者 では l般的監
督義務違 反 の有無 が問われ て監督義務違反が肯定 され、後者 では具体的監督義務違反 の有無 が問われたとどまり、監督
義務違反が否定 され て いる のであ る。
しかし'以上 のよう な全体的傾向 に対し て第 三に'比較的年齢 の低 い (一六歳未満 の)子 に関す る裁判例 では、 一部
の裁判例 に類型的特徴 が見られる。 いたずら に関す る裁判例 では' いずれも 一般的監督義務違 反と具体的監督義務違反
の双方 の有無 が問わ れ'ま た' いじめ に関す る裁判例 では' いずれも 具体的監督義務 の違 反 のみが問われ て監督義務違
反が肯定 され て いる。 さら に'自 転車 や車道 への飛出 し によ る交 通事故 に関す る裁 判例 では、 一般的監督義務違 反 の有
無ま で問うも のの親 の責任 は否定 され'そ の他 の突発的な事故 が問題とな る場合 には、予見 可能性を 問う ことな- 一般
責任無能力者た る未成年者 によ る加害行為 に関す る裁判例
的監督義務違反 の有無 が問わ れる傾向 にあ ると 言え よう。
第 二款
北法5
6(
3・
1
9
4
)
1
2
3
2
監督者責任 の再構成 (3)
責任無能力者 たる未成年者 による加害行為 に関す る裁判例 に ついては、 1股 に責任能力 の分水嶺と され る 〓 1
歳児ま
でを 二分 し、七歳以 上 の未成年者 に関す る裁判例と 七歳未満 の未成年者 に関す る裁判例 に ついてそれぞれ紹介 し て いき
た い。
なお、責任無 能力者 に関す る裁判例 では'親 によ る監督義 務傭怠 不存在 の主張 二止証がな いとだけ述 べて親 の責任を
ノ
肯定す る等 し、監督義 務 の内容 に言及しな いも のが少 なからず見 られる。 したが って、 ここでは原則と し て事案 の紹介 '
七歳以 上 の責任無能力者 に関す る裁判例
判旨 及び事案内容 の検討 にとど め'監督義 務 の内容 の検討 は必要 に応 じ て付け加え ることとす る。
第 一項
(1-0 )
例
第 一日 故意 の犯罪 に関す る裁判
こ の類型 に関す る公表裁判例は これま でに三件存在す る。
訟務月報 八巻 二 号 一五九 五頁)
[
1-6]徳島地裁 昭和 三七年九月 一〇日判決 (
︻
事案︼A (二 二歳 二 ヶ月男) によ る夜 間 におけ る公衆電話 の敦損 及び現金 の窃 取。Aは知能 の発達 が著 しく 遅れ、
満 一〇乃至 一一歳相当 の知能程度 であ った。A の父Yは、A の知能 の発達 が遅れ て いる ので中学 入学 に際 し、特 にA の
教育 に配慮 し て-れ るよう担任教諭 に依 頼す るなど し て'そ の監護 に留意 し て いた。電話機所有者 であ る当時 の電信電
話公社ⅩがYに対 し七 一四条 に基づき賠償請求。請求認容。
A には -- ︹
本件︺事 件以前 から家庭 および学校 生活 に適応 でき な いと ころから虚 言癖 '浪費、夜 遊び の習
︻
判旨︼ 「
北法5
6(
3・
1
9
5
)
1
2
3
3
説
論
慣等 があ って' これら のことは少年 が本件 のよう な罪を 犯す に至 る過程 にお いて表 わす 通常 の徴候 であ る のに、YはA
の資質 からす れば か ゝる傾向 は やむを得な いと し て同人 の監護を半ばあき らめ て放置 した結 果、 --深夜 に重ね て本件
の所為を なす に至 った事 情 が窺 わ れ る のであ って、 ・
・
・
・
・
・
結 局YがA に対す る監督 の義 務を 尽 したも のと は認 めら れな
い」。
︻
検討︼浪費等を 「
本件 のよう な罪」 の 「
徴候」と し て捉え ており' このこと から'本件 のよう な犯罪 の予見 可能性を
肯定 し て いるも のと見られ る。事案と し ては'未成年者 の夜遊び や浪費 が何 らか の犯罪 に つながり易 いと見 る限り tC
(
窃盗と夜遊び や浪費)と言え よう。
[
1-]長崎地裁 昭和 五九年九月 二六日判決 (
判 夕五四四号 1九 l頁)
︻
事案 ︼A (二 歳 一〇 ヶ月男)は同級生と共 に、世間を 騒がせようと 、各 々持参 した マッチ等を 用 いてⅩ方建物 に火
を つけ'同建物 が焼失 した。Aは小学校低学年 の頃火遊びを し、近所 の主婦からAの父母YYが注意を受 け ており tA
が自 宅から マッチを持ち出す に つき特段 の苦労 はし て いなか った。ⅩらからYYに対 し七〇九条 に基づき '焼失 した家
屋等 に ついて賠償請求。請求 認容。
︻
判旨 ︼本件加害行為 は 「
放火」 であ ると し て失火責任法 の適 用を排除 した上 で以 下 のよう に述 べる。本件放火 の経緯
乃至Aが自宅から容易 に マッチを持ち出 した等 の事 実 に 「
Aらが世間を 騒がせ る目的 で三回 にわたり火を つけ て遊 んで
いた ことを併 せ考え ると、Aには火遊び癖があ ること、及び'それ にも拘 らずYら にお いて マッチ の管 理が充 分 ではな
か った こと が窺 われ る。 そし て--未だYらがA の監督義務者と し ての注意義務を怠 らなか ったも のと 認める こと は で
き」 な い。
北法56(
3・
1
9
6)1
2
3
4
監督者責任の再構成 (3)
︻
検討︼子 による過去 の火遊び の事実を認定した上'子 に火遊び癖があるとし ており、火遊び の予見可能性を肯定す る
火遊び)及びE
qo
も のと見られる。事案とし てはA (
判 夕五七七号六 〇頁)
[
1-]東京地裁 昭和六 〇年 五月三 1日判決 (
︻
事案︼放課後 の中学 におけ るA (二二歳六 ケ月男) の手拳 によるⅩの後 頭部 の殴打 (
Ⅹ負傷)。Aは中学 一年 のとき
同級生を いじめた ことがあ- (
但し、他 の生徒 に暴行を加えたため に教師から指導を受けた ことはな い)'また、A の
友人 には小学校から問題があり'中学 一年 のとき にも乱暴な行為をす る者 が いた。ⅩらからA の父Yに対し賠償請求o
請求認容。
︻
判旨︼Aが本件暴行時責任無能力者 であ った ことを認めるほかな いから'「
A の親権者 であ るYは民法七 一四条 によ
りⅩに生じた--損害 に ついて賠償義務を負う」
。
乱暴な行為」 の内容は明らか でな いが'
︻
検討︼事案とし てはtA の行 って いた 「いじめ」 やAの友人 の行 って いた 「
少な-ともÅ (
友人 による 「
乱暴な行為」)又はC (
「いじめ」)と言え よう。
以上 の故意 の犯罪 に関す る裁判例 のうち'監督義務違反 の判断 に ついて比較的詳細 に説示され て いるも の (
6
1-'1-7)
に ついては'子 の従前 の行動等 に ついても比較的詳細に認定され、予見可能性を認めた上 で免責立証が否定され ている。
これ に対し て'子 の従前 の行動 に ついて、 「
特定化 され て いな い危険」等を認定す るに止まり監督義務 の内容 に 一切触
れず に免責立証を否定す る裁判例も見られる (
1-8)
O後者 の裁判例 に ついては' 一般的監督義務と具体的監督義務 の い
ず れに基づ-責任を認めるも のか'明らか ではな い。
北法56(
3・
1
97)1
2
3
5
第 二日 遊戯 ・スポー ツ事故 に関す る裁判例
この類型 に関す る公表裁判例は これま でに二二件存在す る。
[
1-9]大阪控訴院明治 四五年 三月四日判決 (
法律新聞七八 言亨 一
六頁)
︻
事案 ︼A (
九歳男) の放 った矢 によるⅩの左眼負傷 (
ほぼ失明)
。ⅩからAの父Yに対し賠償請求。請求認容。
︻
判旨︼「
Yに於 て九歳 の幼童 が右 の如き危険なる弓矢を弄す ることを知り て之を制止せぎ りLとす れば勿論 又之を知
らざ-Lとす るも共 に監督不行届と諸 はざ るを得ず単 に右 の行為 がYの視界外 に於 て行 はれたりと の 1事を以 てYに監
督義務 の僻怠なかりLと謂 ふを得ず」。
︻
検討︼子 による弓矢 の取扱を知らなか ったことも監督義務願意だとし ており、弓矢 による事故 の予見義務違反 に基づ
-責任を認めるも のと見られる。事案とし ては'本件事故以前 にAによる弓矢遊びが行われ て いた ことなどが明確 に認
定され て いな いも ののtAが弓矢 で遊んで いた ことを認めたため訓戒 したと の学校教員 の証言が引用され ており'本判
A ケー ス)と考えられる。
決はAが過去 に弓矢遊びをし て いた ことを前提とし て いるも の (
法律評論六巻民法 四二 一頁)
[
110]東京控訴院大正六年 三月 一〇日判決 (
歳 二ケ月男)は他 の子どもたちと の遊戯中Ⅹの制止 にもかかわらずⅩに向け て射的銃を発砲 し'Ⅹは
︻
事案 ︼A (〓 l
左眼を失明した (
「
光清撃 ツゾ」事件)
。Aはそ の父Yの不在中 に家 にあ った本件射的銃と弾丸を持ち出し、右弾丸を撃
ち尽-した後さら に訴外Bから弾丸を貰 い受け'この弾丸 により本件事故を引き起 こした。XからYに対し賠償請求。
請求認容。
北法5
6(
3・
1
9
8)
1
2
3
6
監督者責任 の再構成 (3)
︻
判旨︼「
YカAカ銃器又 ハ弾薬 ヲ持出 シ他人 二損害 ヲ生 セシムル コー ナキ様注意 シ予 メ銃器又 ハ弾薬 ノ保管 ヲ厳 ニシ
い。
Aノ行動 こ留意 シ相当 ノ監督 ヲ怠 ラサリシ事実 ノ認 ム ヘキ証左 ナキ限り--YカAノ監督義務 ヲ怠 ラサリシモノ-認定
シ難」
︻
検討︼銃器及び弾丸 の厳格な管 理並び に子 の行動 への留意 の立証を求 め て いるも のの'銃器 による事故 の予見可能性
の有無を問題とし て いな い。事案としてはh (
射的銃)
0
[
;]東京控訴院大正七年三月 11日判決 (
法律新聞 二二九九号 二 1頁)
︻
事案︼A (二二歳男)は遊戯中、自分 に石炭殻を命中させるよう他 の者 に申し向けた後、石炭殻を防ぐためにⅩらを
盾としたため'Ⅹに石炭殻が命中した (
Ⅹ右眼失明)。ⅩからAの母Yに対 し賠償請求。請求認容。
い。
Aが学校 に於け る成績佳良なりし ことを認め得 るに止まり末だ以 てYが前記 の義務を怠らざりし ことを肯 認
︻
判旨︼ 「
し難」
︻
検討︼学校 の成績が優秀 であ ると の事実 の立証だけ では免責立証となり得な いとし て いる。
民録 二七輯 1九三頁)
[
ー]大審院大正 10年 二月三日判決 (
Ⅹ右眼失明)。ⅩからAの父Yに対し賠償請求。Y上告。
︻
事案 ︼A 二 二歳七 ケ月男) による遊戯中 の空気銃 の誤射 (
上告棄却。
︻
判旨︼「
原判決 ハYカA ニ買 ヒ与 へタル空気銃 ハ最新式 ノモノ ニシテAノ如 キ普通児童 ノ娯楽用ト シテ ハ原 ル精巧 ノ
モノナ ル コト ヲ認 メ監督義務者 タルYカA ヲシテ斯 カル銃器 ヲ弄 セシムル ニ付 テ ハ充分ナル注意 ヲ加 フル コト ヲ要 スル
北法5
6(
3・
1
9
9)
1
2
3
7
説
論
モノナル ニYノ提出 シタル 一切 ノ証拠 二依 リテ ハYカ監督義務 ヲ怠 ラサリシモノト認 ムル 二足 ラサ ル旨 ヲ判示 シタルモ
ノ」 であ るQ
︻
検討︼銃器 の取扱 に ついての監督を要求す るも のの、当該空気銃 の精巧さから監督義務を導き出し ており,空気銃 に
ょる事故 の予見可能性など に触れ て いな い (
銃器が 「
精巧」 であ ることから直接事故 の予見可能性を導き 出す ことは困
難 であ ろう。なぜなら、銃器が粗雑 であれば爆発等 による事故発生 の可能性は高-な るが'「
精巧」 であ れば それだけ
Q(
空気銃)
O
事故発生 の可能性は低-なると思われるから であ る)
。事案としてはE
[
1]東京地裁大正 11年 四月 二 l日判決 (
法律評論 11巻民法 二八五頁)
九歳男) の放 った矢 によるⅩ の右眼失明。ⅩからA の法定監督義務者 Y (
本判決 の控訴
︻
事案 ︼弓矢を弄し て いたA (
審判決 であ る次述 114判決 によれば、A の実父) に対し賠償請求。請求認容。
︻
判旨︼YはAの 「
法定 ノ監督義務者-シテAカⅩ ニ加 へタル本件損害 ヲ賠償 ス ヘキ義務 アル コト勿論」 であ る。
[
1]東京控訴院大正 〓 l
年 四月 一四日判決 (
法律評論 〓 一
巻民法 四五 1頁)
︻
事案︼ 113 の控訴審。Yから控訴。控訴棄却。本判決 によれば、Aは僧侶Yの実子 であ るが、戸籍上訴外Bの子と して
Yの主張 によれ
届け出られ'三歳ま でBの下で養育された後tYに引き取られそ の実子とし て養育されty の不在中 (
ばtyは法話等 のため寺を年中不在 にLt本件事故当時も不在 であ った)も、Yの内縁 の妻 により衣食 の世話を受け て
いた。
旨︼ Aは本件事故当時責任無能力者 であ ったと認める のを相当とす べき が故 に'「
Y ハ法定 ノ監督義務者ト シテ右
︻判
北 法5
6(
3・
2
0
0)
1
2
3
8
監督者責任の再構成 (3)
AノⅩ こ加 へタル損害 ヲ賠償 スル義務 アルモノト ス」。
[
115]東京地裁大正 1三年 二 月 l七 日判決 (
法律新報 三五号 一九頁)
︻
事案︼鬼ご っこに際し てのA (一〇歳八 ケ月男) の行為 に基因す る、針金 の先端 によるⅩの左眼失 明.XからA の父
Yに対し賠償請求。請求認容。
︻
判旨︼ 「
監督義務者 力監督 ヲ必要ト スル行為 ノ範囲 ハ該行為 ノ種類又 ハ該行為 力通常危険 ヲ伴 フモノタルト否ー ニヨ
リテ之力差別 ス ヘキ理由 ナク萄 モ責任無能力者 ヲ監督 ス ヘキ地位 ニアル者 ハ該責任能力者 ノ行為 二村 シテ ハ 一様 二之力
監督 ノ義務 アル コト勿論」 であ る。
︻
検討︼子が責任無能力 であ る以上'子 の行為 の種類を問わず監督義務が存在す るとし て いる。
[
116]大審院 昭和 一六年九月四日判決 (
法律新聞四七 二八号七頁)
︻
事案︼戦争ご っこにおけるA (二 歳七 ケ月男)所持 の竹棒 によるⅩの左眼負傷。ⅩからA の父Yに対し賠償請求。
Y上告。上告棄却。
︻
判旨︼原判決はtAが 「
戦争遊戯を為す に当りYに於 いて同人 に追従監督す る の義務は これなしとす るも元来戦争遊
戯は性質上勇壮活発なるも のなれば其 の当然 の結果とし て動もすれば粗暴 に陥-易-遊戯者 の間 に身体 の危険を生ぜし
む る虞なしとせざ るも の」 であ ると ころ、本件事故発生当時Aは責任無能力者 であり、 「
而も 同人は性質稗粗暴 の傾あ
る者なるを以 て--之 に適当なる何等 か の方法 に依-同人を監督す べき義務あ るも のと為したるも のなることを領す る
に足-而も該判断は相当」 である。
北法5
6(
3・
2
0
1
)
1
2
3
9
説
論
︻
検討︼戦争ご っこの性質と子 の粗暴な性質から、戦争 ご っこに際し ての事故 の予見可能性 (
「
身体 の危険を生ぜしむ
る虞」等)を認め て いるも のと見られる。も っとも'事案とし ては、原判決 の事実認定 の詳細が明らか でな いことから'
子が従前戦争ご っこをし て いたか否かは明らかではな いため、せ いぜ いC (
粗暴な傾向)と言え よう か。
[
117]大阪地裁昭和 三〇年 二月八日判決 (
下民集六巻 二号九 二頁)
歳 二 ヶ月男) の投げた球が逸
︻
事案︼子ども の遊び場とし て利用され て いた空地 でのキ ャ ッチボールに際LA (二 一
れ'付近 に いたⅩに命中した (
Ⅹ左眼失明)。ⅩからAの父Yに対し賠償請求。請求認容。
単 に運動場とし て利用されて いた空地 にお いてなされた こと の 1事を以 てしてはYの右責任
︻
判旨︼A の加害行為が 「
免除 の理由とはならな い」。
︻
検討︼運動場 での事故 であ ると の事実だけ では免責立証となり得な いとして いる。
[
118]東京地裁昭和 三 一年 二月二七 日判決 (
下民集七巻 二号 四四四頁)
︻
事案︼路上 で射撃をして いたA (一一歳 一ケ月男) の空気銃 の暴発 による見物人Ⅹの右眼負傷。Aは本件事故 の前 々
日に父Yより買 い与え られた本件空気銃が暴発を起す ことがあ ること に気付き 、本件事故当 日Yに告げ て単身本件空気
銃を持 って空気銃店 に修理 に行 ったが、そ の際試験射撃を せず (
店主も これを しなか った)
、簡単 に故障が治 ったも の
と考え て帰り、帰宅後Yに空気銃が治 ったか確かめ てもらわず、またYに預け ることもせず、射撃し てみた いと の衝動
等 から'再び単身本件空気銃を持出し'本件事故を引き起 こした。ⅩからY及びA の母Yに対し慰謝料を請求。請求認
容。
北法5
6(
3・
2
0
2
)
1
2
4
0
監督者責任の再構成 (3)
︻
判旨︼ 「
Y等 は射撃 の場合 は必ず大 人と 1緒 にす るよう にと か、空気 銃 の操作方法 と か'個 々の点 に ついて若 干 の注
意 を 払 っては いた よう であ るが、右事 実 のみをも ってし ては未 だ監督義 務を怠 った こと がな いと は認 め難く 'かえ っ
て'--Y等 は、たとえ修 理 のた め であ ったとは いえA 一人 に故障 のあ る空気銃を持たせた こと、更 に修 理後も それが
治 ったかどう かを確 かめ ることな-、また空気銃 の保管 に つき格 別 の注意 を払う ことなく '空気銃をA の自由 にさせ て
お いた ことが認められ」tYら の監督義 務違 反不存在 の主張 には理由 がな い。 「
更 にY等 は'本件事故 は何人も 予知 でき
な い暴発 に原因す るも のであ るから責 任 がな いと主張 す るが'暴発自 体 は仮 に何 人 にも 予知 さ れ得 な い性質 のも ので
(空 気
あ ったと し ても 、Y等 がそ の監督義務を つ- し ても本件事 故 の発生を防止 でき なか った ことを認め る に足 る証拠はな い
から右 主張も亦採 用す る余 地がな い」。
\
-
︻
検 討︼ 「
暴発」 の予見 可能性 がな い場合 であ っても 監督義 務僻怠 が認 めら れ得 ると し て いる。事案 と し てはB
疏)
0
[
119]東京高裁 昭和 三 二年 四月 二六 日判決 (
下民集 八巻 四号 八三 一頁)
︻
事案 ︼ 118 の控訴審。Yらより控訴。控訴棄却。
︻
判旨︼ 「
YがA に対 し空気 銃を使 用す るとき は家 人と共 にす べき ことを注意 し て いた こと --、YからもA に対 し空
気 銃を操作す るとき は銃 口を 下 に向 け るよう に教え た こと が認められるけ れども ' これら の事 実だけ ではY等 がそ の監
督義務を怠 らな か ったと認める こと は できず '本件事故 発生前Y等 が空気銃を自 ら保管 しそ の許がなければ容易 にこれ
を持ち出す こと が できな いよう にし てお いたと いう事実 は証拠上認め難」 いから'監督義務慨怠 不存在 の抗弁 は採 用 で
き な い。
北法5
6(
3・
2
0
3
)1
2
41
説
諭
︻
検討︼空気銃 の使用に関する教示をしたと の事実 の立証だけ では免責立証とな-得な いとす る 一方 で、適切な保管 の
月 l〇日判決 (
民集 l六巻 二号 四 1九頁)
事実 の立証があれば免責立証となり得 るとす るも のと見られる。 いず れにしろ空気銃 による事故 の予見可能性 には言及
され て いな い。
[
1-0]高松高裁昭和三四年 二
(
Ⅹ重傷)。ⅩからA の父Yに対し賠償請求。請求棄却。
︻
事案︼鬼ご っこにお いて友人から逃げようとするA (
小学 二年生女)から頼まれ、同女を背負 った こと によるⅩ の転
倒
︻
判旨︼ 仏を背負 った時点 でⅩも当該鬼ご っこに加わ ったと みなければならな いとした上 で'「
Ⅹが--背負う ことを
承諾し遊戯 に加わ ったも のであ る以上'遊戯行為 の 一員としてAの右程度 の行為 による結果は甘受す べき であ ると解す
頁
)
)
べく、したが ってAの右行為も客観的 にみて'条理上是認しう べきも のであ って違法性を欠-も のと解す るのが相当 で
ある」とす る。
七
( 1-1
︻
検討︼子 の行為 に違法性がな いとし て親 の責任を否定して いる0
[
1-1]最高裁昭和 三七年 二月 二七日判決 (
民集 一六巻 二号四〇
1-
︻
事案 ︼0の上告審。Ⅹ上告。上告棄却。
︻
判旨︼責任能力を 「
具えな い児童が ﹃
鬼ご っこ﹄なる 1股 に容認される遊戯中-- ︹
本件 の︺事情 の下に他人 に加え
た傷害行為 は'特段 の事情 の認められな い限り、該行為 の違法性を阻却す べき事由あるも のと解す る のが相当 であ る」。
︻
検討︼子 の行為 に違法性がな いとして、原審判断を是認し て いる。
北法56(
3・
2
0
4)1
2
42
監督者責任の再構成 (3)
[
1-2]仙台高裁昭和 三九年 二月 二四日判決 (
判夕 〓 ハ言号九 八頁)
歳 l〇ヶ月男)
、B (〓 l
歳 二ケ月男)、C (10歳 二 ヶ月男)及びD (二 歳 10ヶ月男)及びX
︻
事案︼A (〓 1
の'木 の又 にゴ ムひもを つけた いわゆるパチ ン コでの木 の実 の打ち合 いによるⅩの左眼負傷。XからA乃至Dの父母Y
23.456L
-8
YYYYYYYに対し賠償請求。請求認容。
本件 にはそ の
︻
判旨︼ 「
子供ら の監督者 であ るYら にお いてそ の監督義務を怠 らなか った こと の反証を挙げな い限り (
ような主張も反証もな い。)同法 七 一四条 の規定 により各自 そ の子供らが前記共同不法行為 によりⅩに加えた損害 -を賠償する責めに任ず べきも のであ る」。
[
1-3]函館地裁昭和 四六年 二 月 二 一
日判決 (
判 夕二七 二号 二五四頁)
八歳 一〇ヶ月男)が他 の児童 から自転車 で追 いかけられた
︻
事案 ︼放課後 の校庭 (
小中学校が共同使用) にお いてA (
ことから自転車をよそ見運転し て いたと ころ、同所 にお いて運動会 の練習を し て いた中学生Ⅹと衝突した (
Ⅹ重傷)0
Aの小学校 では'同校全校 の授業終了後 で且 つ同校 及び中学校 にお いて行事等 のために校庭を使用し て いな いとき に限
り、同校児童が放課後校庭を自転車 の練習運転 に使用す ることを許し ていたが'本件事故当時校庭 では同校児童及び中
学校生徒が運動会 の練習をし て いた。ⅩからA の父母YY対 し賠償請求。請求認容。
︻
判旨︼「
親権者 は児童 の生活 の全面 にわた って監督義務を負うも のであ るから'学校長等 の代理監督義務者 に損害賠
償責任があ るからと いって'そ のこと によ って当然 に親権者 の責任が免除されると いう ことはできな い。当該行為 の行
われた時間場所'態様'児童 の年齢等諸般 の事情を考慮 したうえ'そ の行為がも っぱら代理監督義務者 の監督 下で行わ
れ、か つそれが学校生活 にお いて通常発生す ることが予想されるような性質 のも のである場合 にかぎり、親権者は当該
北 法5
6(
3・
2
0
5)1
2
43
説
論
行為 の責 任を免 れ る こと が でき るも のと解 す る のが相当 であ る。 けだ し、右 のよう な行為 に ついては親 権 者 は児童 の監
督を全 面的 に代 理監督義 務 者 に委 ね ており '親 権者 が介 入 し得 る余 地 がな いも のと 考え ら れ るから であ る」。 「
本件事 故
は校庭 にお いて学校 長等 の勤 務時 間内 に発 生 したも のであ ると は いえ 、授 業 が終 了 し い った ん帰 宅 した後 の行為 であ る
う え禁 止 に違 反 し て自 転車 を 校庭 に乗 り 入 れた結 果発 生 したも のであ るか らも っぱ ら代 理監督 義 務者 であ る学校 長ま た
は教 員 の監 督 下 で発 生 し たも のと いう こと はき ず 、 親権 者 であ るYら の責 任 は免 れ得 な いも のと いわ な け れば な ら な
い」。
︻
検 討 ︼ 一般 の道路 交 通 への参 加 に際 し て の事 故 ではな- 、校 庭 におけ る遊び に際 し て の事 故 であ る こと か ら、 こ こに
分 類す る。
当該 加害 行為 が代 理監督 義 務者 の監督 下 で行 わ れ且 つ学校 生活 で通常 発生す る こと が予見 され る性 質 のも のであ れば 、
親 は免 責 され る こと があ ると し て いる反面 、本件事 故 が そ のよう な事 故 ではな いこと か ら直 ち に親 の責 任 を 認 め て いる。
[1-4]福 岡地裁 昭和 四七年 三月 〓 ハ日判決 (
判 夕 二七 八号 三三 二頁 )
︻
事案 ︼道 路 と フ ェンスで区 切ら れた某 社 宅広 場 にお いてA及びB (いず れも 一〇歳 男 )が キ ャ ッチボ ー ルを し て いた
際 、Bが受 け 損 ね て フ ェン スを 越え た ボー ルが歩 行者Ⅹ に命 中 した (
Ⅹ負 傷 )。 本件広 場は社宅 入居者 により遊び場と
3 .爪
り
し て常 用 さ れ て いた。Xか らA の父 母YY及びB の父母YYに対 し賠償 請求 。 請求 認容 。
︻
判旨 ︼ 「
如 何 に遊 び場 と し て常 用 さ れ、 フ ェンスでさえ ぎ ら れ て いる広 場 で のキ ャ ッチボ ー ルであ っても ' フ ェン ス
を 越え て通行 中 の歩行 者 にボー ルを当 て てよ いわけ はな - ' やはり道 路 の状 況 にも 注意 し' 子供 ら にボー ルが外 に飛び
出 さな いよう向 き を かえ るなど し て遊 ぶよう に注意 す べき義 務 はあ る」。
北法5
6(
3・
2
0
6
)
1
2
4
4
監督者責任の再構成 (3)
︻
検討 ︼キ ャ ッチボ ー ルの態様 に関す る注意 の喚起等 が問題と され て いるも のの、キ ャ ッチボ ー ルに際し ての事故 の予
見 可能性 には触 れられ て いな い。
[
1-5]東京 地裁 昭和 四九年 三月 二五日判決 (
下民集 二五巻 1-四号 l九 六頁)
︻
事案 ︼校庭施設を児童 生徒 のため に遊び場と し て開放す る学校 開放 にお いてA (
小学 五年 生女 )が回転塔 (
支柱 の上
端 から鎖 で鉄製 のリ ングを吊り 下げ、 こ のリ ングが自由 に回転す る構造 のも のであり、遊戯者 は このリ ング に つかま っ
Ⅹ負 傷 )。ⅩらからA の父母YYら に対 し七 一
て回転 させ て遊 ぶ)を速- 廻した こと による、Ⅹ の回転塔 か ら の落 下 (
四条等 に基づき 賠償請求。請求棄却。
︻
判旨 ︼学校 開放制度 の趣旨等 を検 討 した上 で、 「
学校 開放 に参 加 中 のAに対 し監督義務を負 って いた のは'結局同女
の親権者 であ るYYと いう ほかはな い」 と し てtYら の責任を肯定す る。
︻
検討 ︼子ども が学校開放 に参加 し て いると の事 実だけ では親 の監督義務 はな-ならな いとす る。
[
潤]東京 地裁 昭和 五〇年 四月 二二日判決 (
交 民集 八巻 二号 五二五頁)
︻
事案 ︼ フ ェンスに囲ま れた空地 にお いてA (二二歳 八 ケ月女 )及びB (一〇歳 二 ヶ月男)が バレーボ ー ル のパ スを
し て いた際、道路 に転 がり 出たボー ルとⅩ運転 原付自 転車 が接触 し、原付自転車 が転倒 した (
Ⅹ負 傷 )。 子ども たち が
事 故現場周 辺 の空地 で遊 んだり'本件道路 でボール遊びを した-す る こと はしば しばあり、そ の際大 人も 一緒 にボー ル
遊びをす る ことも よくあり'本件事故直前ま でA の母Yも本件空 地 でAらと共 にボ ー ル遊びを し て いた。また、本件事
故当 日以前 に子ども ら の遊 ん で いるボ ー ルが本件道路 に転 がり でた ことは何回かあ った。ⅩからY及びA の父Y並 び に
北法5
6(
3・
2
0
7
)
1
2
4
5
説
論
3・・ぺ
Bの父母YYに対し賠償請求。請求認容。
)0
︻
判旨︼ 「
当時Aは 二二歳tBは 一〇歳 の未成年者 であ った こと こと明らか であ るから、YらはtA、BがⅩに加えた
損害を賠償す る責任があ る」
。
︻
検討︼事案 の内容とし てはÅ (
子供ら のボールが道路 へ転がり出ること
[
1-7]名古屋地裁昭和 五 1年 10月二五日判決 (
交 民集九巻 五号 1四三〇頁)
︻
事案︼A (
八歳 五 ケ月男)はBと共 に、駐車場 の中央部 の出発点から付近道路を自転車 で各 々右 回-及び左 回り で 一
周して出発点 に早-着 いた者を勝ちとす る競戯をし て いたと ころ、右駐車場 の中央部付近 で両者が衝突しtBが転倒し
た (
B死亡)。Bの遺族ⅩからAの父母YYに対し て賠償請求。請求認容。
︻
判旨︼「
YらはA の親権者と し てAの仝生活関係 に ついて監督す る義務があり、本件 のような自転車を用 いた遊び に
ついても、事故 が起 こらぬよう遊戯方法、車体 の検査、自転車 の安全適正な使用方法、交通 ルールの遵守等 に ついて充
分監督、注意 して いなければならな い。また、本件 のような タクシーご っこと いわれる遊び にお いて衝突等 の事故が起
ることは有得 ること であ って予測不可能と いう ことも できな い」0
︻
検討︼ 一般 の道路交通 への参加 に際しての事故 ではな-、遊び に際し ての遊戯者間 の事故 であ ることから' ここに分
類す る。
本件 のような自転車 での遊び に際し ての予見可能性を肯定 して いる。
[
1-8]福岡地裁小倉支部昭和 五九年 二月 二三日判決 (
判時 二 二〇号 八七頁)
北法5
6(
3・
2
08)1
2
46
監督者責任の再構成 (
3)
︻
事案︼少年団 のキ ャンプ に参加していたA (二 歳男) の飛ばした竹とんぼのX への命中 (
Ⅹ右眼負傷)。ⅩからA
の父母YYに対し七 一四条 に基づき賠償請求。請求認容。
︻
判旨︼本件事故当時、Aは責任無能力者 であ ったから'「
Yらは'民法七 一四条 一項 によりAの違法行為 による損害
の賠償責任を負担する」。
[
1-9]東京高裁昭利五九年四月二六日判決 (
判時 〓 7八号 1八 一頁)
︻
事案︼放課後 の小学校 にお いてA 二 〇歳四ケ月女)が回転塔 で遊んで いたところ、仲間に加わろうとしたXが突然
Ⅹ負傷)。ⅩからAの父母YYに対し七 一四条 に
回転中 の回転塔 の円周内 に入り込 んできたため、AとⅩが衝突した (
基づき賠償請求。請求棄却。
︻
判旨︼子 の行為 に違法性がな いとして親 の責任を否定している。
[
1-0]神戸地裁平成八年三月八日判決 (
交民集 二九巻 二号三六三頁)
︻
事案︼路上 での鬼ご っこに際しルール違反を理由としてA (一〇歳男)がBの背中を押したことによるtBの路上 へ
B死亡)。Bの遺族ⅩらからAの父母YYに対し七 一四条等 に基づき賠償請求。請求認容。
の転倒とバスによる擦過 (
︻
判旨︼Aの行為 には違法性があると いう べき でありtAが本件事故当時責任無能力者 であ ったこと、YらがAの父母
Yらは、民法七 1四条 7項本文'七 二 1
条 により、Bに生じた損害を賠償
であることは当事者間に争 いがな いから、「
する責任がある」。
北法5
6(
3・
2
0
9)1
2
47
説
論
以上 の遊戯 ・スポ ー ツ事故 に関す る裁判例 のうち'初期 の判例 にお いては監督義務 の内容 に関し て比較 的詳細 に説示
され て いる (
1-9' 110' 112、 1-6t u8、 119。も っとも この時期 にお いても監督義務 の内容 に言及す る ことなく親 の責任を肯
定す る裁判例は少なくな い)も のの、学説 にお いて親 の監督者責任 の厳格化を志向 す る松坂 説 の登場と時期を 同じく し
て、親 が遵守す べき 監督義 務 の内容を説示す る裁判例が減少 し て いる。
監督義務 の内容 に関し て比較的詳細 に説示 し て いる裁判例 にお いては'加害 行為 の予見 可能性を肯定 Ltそれ に基づ
いて責任を 認め ると解 され る裁判例が見 られる (
1-9' 116、 1-7)
。 しか し、他方 で、子 による 「
特定化 された行為」 に関
す る監督 が問題と され て いるも のの'そ のよう な行為 の予見 可能性を前提と し て いな い裁判例も見 られる (
110、 112㌧ 118'
119、 1)
。さら に'監督義 務 の内容 に 一切触 れな い裁判例も多数見 られ る (
111、 113、 114、 115、 117㌧ 1-2㌧ は3、 1-5、 1-6、 1-8'
13
0
)。 これら の裁判例 に関しては、第 一日で述 べた のと同様 のことが言え る。
な お、以 上 の裁判例 にお いては'運動場 で の事 故 であ る こと (
117)
、学校 開放 下 の事 故 であ る こと (
1-5)を 立証 した
だけ では免責立証 にな-得な いとす るも の'また、 一般論と し てであ るが'学校内 での事 故 に ついて'そ の事 故 が学校
の監督 下で起 こ った こと 及び学校生活 にお いて通常発生す ること が予想 されるも のであ る ことを要件と し て、親 が免責
される こと があり得 ることを 認めるも の (
1-3)が見 られ る。 これら の点 は、学校と の関係 にお いて監督 の委 託 が行 われ
いたずら によ る事故 に関す る裁判例
(
1-2)
て いると見た場合 の親 の免責要件を示すも のと し て捉え られよう。
第 三日
この類型 に関す る公表裁判例は これま でに 一六件存在す る。
北法5
6(
3・
2
1
0
)
1
2
4
8
監督者責任の再構成 (3)
[
1-1]東京控訴院大正九年 二月 l七日判決 (
法律新聞 l六九 二号 1七頁)
年齢不詳'男。但し'判決理由中 「
満 八歳 に達せぎりし」とあ ることから七歳程度と見られる) の投げ つ
︻
事案 ︼A (
負傷 による急性脳膜炎 でB死亡)
。B の遺族ⅩからAの父Yに対し賠償請求。請求
けた石塊 のBの足 の親指 への命中 (
認容。
︻
判旨︼Aが責任無能力 であ るが故 に 「
親権者たるYはAが不法行為 に困-他人に加 へたる損害 に付き之が賠償 の責任
を負わざ るべからずYは親権者とし てAの監督を怠らざりLを以 て責任を負 ふべき に非ざ る旨争 ふも--証拠 に依り て
は到底其事実を認めしむるに足らず」。
(
訴訟係属後死亡Lt.Nが承継)からA の親権
[
1-2]東京控訴院大正 二 一
年 六月 二七日判決 (
法律評論 〓 一
巻民法 五 一六頁)
Ⅹ
︻
事案 ︼A (二 歳 二ケ月男) による押切り でのXの左手 四指切断。
者Yに対し慰謝料請求。請求認容。
︻
判旨︼責任無能力者を 「
監督 ス へキ法定義務 アルモノ其未成年者 力他人 こ加 へタル損害 ヲ賠償 スル章 二任 ス ヘキ コ-
民法第七百十 四条 ノ法意 二徴 シ明カナルヲ以 テYハAノ行為 こ因 りⅩ こ蒙 ラシメタ ル 1切 ノ損害 ヲ賠償 ス ヘキ責 アルヤ
勿論ナリ」。
[
1-3]東京地裁昭和 四〇年九月九 日判決 (
判時 四二九号 二六頁)
︻
事案︼放課後 の中学校 にお いてA (〓 1
歳 一〇ヶ月男)はⅩをからか い'走 って逃げ る途中防火扉を閉じたことから、
同様 に走 って追 って来たⅩが防火扉 に衝突し、負傷した。ⅩからA の父母YYら に対し慰謝料請求。請求認容。
北法5
6(
3・
2
1
1
)
1
2
4
9
説
論
︻
判旨︼「
親権者は未成年者 の保護者として'そ の生活 の全面 にわた って監督義務を負う」。
︻
検討︼親は子 に ついて 「
身上監護型」 の監督義務を負う こと (
したが って'学校 における事故 であ ることを理由とし
-3
1)
(
て免責され得な いこと)を明らかにして いるも のの、監督義務 の内容 に ついては明らか では な い 。
[
1]高松高裁昭和 四九年 11月 二七日判決 (
判時七六四号 四九頁)
︻
事案 ︼小学校 における運動会 の準備作業終了後A (二 歳 四ケ月男)が拾 って投げた水練り石灰 の屑が偶 々付近を通
りかか ったⅩの左眼 に命中LtⅩは負傷した。ⅩらからA の父Yら に対し賠償請求。Yに対する関係 で請求認容。
︻
判旨︼「
親権者 や後見人等 の無能力者 の法定監督義務者は、無能力者 の家庭内 に いると家庭外 に いるとを問わず、原
則とし てそ の仝生活関係 にお いて、法律上 これを保護監督す べき であ るから、そ の監督義務は'無能力者 の生活関係 の
YはtAの仝生活関係 に ついてそ の監督義務があ」 る。も っとも、Yは'本件事故 は学校内 で起き たも
全部 に亘る」。 「
のであ-、 これ に対す る責任は学校長が負う べき であ るからtYに責任はな いと主張 し て いると ころ' 「
学校内 で起き
た児童間 の不法行為 に ついては'学校側--等 のみがそ の責任を負 い、親権者はそ の責任を負わな い場合もあり得 るけ
れども'--本件事故は、学校内 における教育活動な いしはこれ に準ず る活動関係 に随伴し て発生したも のではな-t
か つ、通常はそ の発生を予測し難 いも のであ るから、--学校 関係者ら には、そ の責任はな」-tYの主張は失当 であ
る。
︻
検討︼親は子 に ついて 「
身上監護型」 の監督義務を負う ことを明らかにした上'学校 での事故 に ついて親が免責 され
1-
通常はそ の発生を予測し難 いも のである」とし
る要件として裁判例 3と同様 の要件を挙げ て いる。さら に本件事故が 「
て いることから'本判決は 7般的監督義務違反 に基づ いて親 に責任を課し ていると見られる。
北法56(
3・
21
2)1
2
5
0
監督者責任の再構成 (3)
[
135]神 戸地裁尼崎支部昭和 五〇年 五月二二
0日判決 (
学校事故 ・学生処分判例集 一〇九七 ・5)
︻
事実︼小学校 での清掃作業終了後A (二 一
歳 八 ケ月男)は同級生Ⅹと ふざけ合 いt等をⅩに向か って投げ つけたと こ
ろt等 の柄がⅩの右眼 に当た った (
Ⅹの右 目視力低 下)。ⅩからAの父母YYらに対し賠償請求。請求認容。
Aは前記学級 のうち では暴れ好き の児童 に属し'母Yも美容師 であるため、両親 であ るY両名がA の性行 に
︻
判旨︼「
即した平素 の監督を尽-して いなか った ことが認められる」。 「
また、Y両名は、本件事故は教育 の場 にお いて発生した
も のであ るから、監督責任は排除される旨主張するが、親権者 の監督義務者と しての責任は責任無能力者 の 1股的な監
督行為を怠 ることを意味 し、責任無能力 の加害行為が学校内 の如き教育 の場 で発生した場合 でも、親権者とし て通常な
す べき監督が欠け て いたならば'そ の責任を負う こと に変わりはな い」。
︻
検討︼事案と し てはA (
暴れ好き)か。加害者A の 「
性行 に即した」監督を要求 し て いること から'「
暴れ好き」 に
対す る具体的監督義務 の履行を要求し て いるも のと見られる。なお'「T股的な監督行為」も問題とされ ているが、 こ
れは親 の監督義務 の尽-されるべき時間的場所的範囲 の広狭 に関連し て述 べられたも のであ-'本稿 で用 いて いるよう
(
判時 八五六号七三頁)
な'具体的加害行為 の予見可能性 に着目した 「
具体的監督義務」 及び 「1股的監督義務」 の区別と異なること に注意を
要す る。
[
136]神戸地裁昭和五 一年九月三〇日判決
︻
事案︼小学校 の授業時間中隣席 のⅩに いたずらをしようとしたA (
八歳 一〇ヶ月男) の鉛筆がⅩの左眼 に突き刺さり'
Ⅹは負傷した。Aは本件事故 の二ケ月半程前から授業中落ち着かな い動作が目立 つよう になり'何度も教師 の注意を受
けながら止める様子もな-、Ⅹに対し ても しば しば鉛筆 で袖 のあたり等を つつ-など のいたずらを し、本件事故 の二'
北法5
6(
3・
21
3)1
251
説
論
三 日前 及び そ れ以前 にも 一度 (
こ のときAは担 任 教諭Bから叱 られ て いる)Ⅹ の衣 服 に鉛筆 で落書き を し て いた。A の
母YはAが鉛筆 を折 ること に つ いてA に直 接 注意 し、本件事 故 の約 1ヶ月前 にBが家 庭訪 問 に来 た際 にA の落 ち着き の
な さ や鉛筆 を折 る癖 など に ついてBと 話を し て いたが,A のX に対す る いたず ら に ついては知 らな か った。ⅩからA及
びY並 び にA の父Yら に対 し賠償請 求。 請求認容 。
︻
判旨 ︼小学校 教育 の目的達 成 のた め に小学校 教師 が有 す る監督 権 限 は親 の監護 教育 権も 制 約 でき る場合 があ るか ら'
小学校 教師 の右 権 限行使 に支障をき たす親 権行 使 は許 されず 、反 面そ の範 囲 で親 が監督義 務を 果 た さな- ても 監督義 務
僻怠 はな いと 解 さ れ な いではな い。 し か しな が ら' 「
右 に述 べた許 さ れ る べき では な い親権 行使 と は、 小学 校 教 師 が教
育 活動 又は これと密 接 不離 の関係 にあ る活 動 中 に親 権者 が直 接 監護を 加え る行為 と いう狭 い範 囲 のも のに止ま ると 解 さ
れ る。 これ に対 し て、本 来法定 監督義 務者 が負 担 し て いる児童 が加害 行為 を しな いよう 監督 す べき 義 務 は、右 義 務者 が
児童 を 監視 し直接 監督 行為 を 及 ぼす こと が でき る範 囲内 で当 該児 童 が加害 行為 に及 ぼう と す る場合 に のみ履行 す べき も
のではな い。 --特 に監 護教育 を含 む親 権 が権 利 であ る のみな らず 子 及び社会 に対す る義 務 であ - 、親 権 者 は子と 同居
し て扶養 Lt そ の性格 '性 癖 、知 能 的発 達段 階等 に つき も っとも 知 識を 有 し て いてそ の仝 生活 関係 に関与す べき も ので
あり 、更 にま た、児 童 が 一般 に社 会 生活規範 に習熟 せず 人格 が未 熟 で意 思能力 に欠 け るだ け に加 害 を行 いやす - 、行 動
も合 理性を欠き 予測 し難 い面 があ るた め何をす るか判 ら ぬが加害 行為 を す る ことだ け は十 分 予見 でき る場合 が多 - 、家
庭 など 周 囲 の環境 にも影 響 さ れ やす いこと からす ると '親権 者 の負 担す る児 童 の他 人 に対す る加 害行 為 を 防止す べき 監
督 義 務 は、児童 が加 害行為 に及 ぶ現実 的 か つ具体的危 険 が生 じた場合 にそ の発 生を 阻止 す べき であ ると いう 具体 的 な狭
い範 囲 の義 務 に尽き るも のではなく '児童 の生活全 般 にわた る広 汎 か つ 一般的 なも のであ って、当 該 児童 が 、 一般 的基
本 的社会 生活規範 やど のよう な行動 を と れば右 規範 に触 れ る結 果 にな るか に ついて の理解 と 認 識を 深 め身 に つけ る こと
北 法5
6(
3・
21
4)
1
2
5
2
が でき るよう 、ま た、社会 の事 理 に適 った行 動 を 目指 す意 志 の統 制力 を強 化 でき るよう 、常 日頃 か ら教育 、訓育 を 行 う
こと によ ってtも しそ れ でも 効 果 が見 られ な いよう な らば 、深- 情操 教育 などを 通 し て人格 の改 善と 成熟を は か る こと
によ って、他 人 に対す る加害 行為 の発 生を 防止 す べき 義 務 でもあ ると いわ なけ れば な らな い。更 に、 --親 権 者 は児 童
に対 し前 記監督 に服す るよう '常 日頃 か ら教育 、訓育 を 行う こと によ っても 監督 す べき 義 務 があり 、 こ のよう な義 務を
尽- し て いたな らば 本件 加害 は発 生 しな か った であ ろう こと は 、 ⋮-十 分推 認 し得 る- - (
も っとも 、親 が民法 七 一四
条 一項但 書 の免責 を得 る には当 該児童 の性格 '年令 等 に応 じ て'社 会 の ︼般常 識 上 必要と され る程度 にま で前 記 の各 義
Y両名 は'他 人 の顔面を先 の尖 ったも ので突
務 を 果 し て いれば 足 るも のと 解 せ ら れ る。)
」。 これをAに即 し て言えば 、 「
いたり などす ると 思 わ ぬ大怪 我を させ る こと があ るか ら し てはな らな いこと 'ま た、他 人 の人格 は尊 重 しなけ れば な ら
な いか ら他 人 の気 持 を大 切 にしな いと か、他人 の嫌 が るよう な こと '特 に他 人 の身 体を 故意 又 は重大 な 過失 によ って傷
つけ るよう な こと は厳 に つつしま な ければ な らな いこと 、ま たtB教諭 の注意 を よ-聞き 授 業 中 は同級 生 に いたず らな
ど し てはな らな いこと を ' 日常 平素 から '少 な- とも戒 しめ教育 す る こと によ っても 監督 す べき 義 務 があ ると解 せ られ
る」。
︻
検 討 ︼従 来 の判決と 同様 に学校 内 の事 故 に ついて親 が責任 を負 わ な い場合 があ り得 る ことを 認 めな がら、 それが狭 い
範 囲 に限定 され ることを 明 らか にした 上 で'親 が子 に ついて 「
身 上監 護 型」 監 督義 務を 負 って いる ことを 強 調 し て いる。
さ ら に現実 的且 つ具体 的危 険 が生 じた場合 にそ の危 険を 防 止す る監督 義 務 (
本稿 に言う 「
具体 的監督 義 務」 に相当す る
も のと 言え る)だ け ではな- 、 「一般 的 な」 監 督義 務 をも 負 う と し ており 、 こ の 1股 的 監 督 義 務 の内 容 と し て、 一般 的
基本 的社 会 生活 規範 に関す る理解 と 認識 の深化 、社 会 の事 理 に適 った行動 を 目指 す意 志 の統 制力 の強 化 、情 操教育 など
を 通 した人格 の改 善 と成 熟 、教師 の監督 への服従 のた め の教育 を 挙 げ て いる (
本稿 に言う 「一般監督 義 務」 に相当す る
北法5
6(
3・
2
1
5
)
1
2
5
3
(
3)
監督者責任の再構成
説
請
と言え よう)
。
事案としてはA (
被害者を鉛筆 で突き刺す等 の いたずら)
0
[
1-7]福岡地裁小倉支部昭和 五六年 八月 二八日判決 (
判時 一〇三二号 二 三頁)
︻
事案︼小学校 の放課後 の居残り学習終了後担任教諭 の帰宅せよと の指示を軽視 したA 二 〇歳 二ケ月男)が友人らと
共 に飛ば した画鋲付紙飛行機 による同級生Ⅹの左眼負傷。教室内 で児童が紙飛行機を飛ばす ことはしばしばあ ったが、
そ の先端 に画鋲等を 固定した のは本件事故当日が始め てであ った。ⅩらからA の父母YYら に対し七 一四条等 に基づき
賠償請求。Yら に対す る関係 で請求認容。
︻
判旨︼ 「
民法七 一四条 1項 に いう児童 の行為 に対す る父母 の監督義務とは具体的、現実的な義務 に限定されるも ので
はな-児童 の生活全般 に関す る 一般的'基本的な義務を そ の内容とす るも のであるから、たとえ当該児童 が学校内 にお
いて同法条 二項 の代理監督者 であ る教師 の指導監督を受け るべき状況下にあ ったからと い って直ち にそ の義務僻怠 によ
Yらが平素父母とし てAに対し 一般的'基本的 に違法行為防止 の義務を
る責任を免除さるべき性質 のも のではな い」
。「
尽し ていた ことは本件全証拠 によるも これを認めるに足らな いLt却 って'--本件事故はAがM教諭 の指示を無視し
て居残 ったことから生じた点 及びⅩら の制止を無視 して他 の児童 の危険な遊び に無反省 に同調した点 に着目すれば、Y
らが父母とし て平素から 一般的な監督義務を怠 らなか ったとは到底認めがた い」。
︻
検討︼親は 「
身上監護型」監督義務を負う ことから、学校内 で教師 の指導監督を受けるべき状況下 の事故 であると い
うだけ では免責されな いことを明らか にLtさら に親 の監督義務 の内容とし て 「1般的'基本的な義務」 や 「一般的、
基本的」な 「
違法行為防止 の義務」を挙げ て いる。 この 二 役的、基本的義務」 の内容 は明らか にされ て いな いも のの'
北法5
6(
3・
21
6)1
25
4
監督者責任の再構成 (3)
学校設置者 の責任 に関す る判断 の中 でtAら の担任教諭 にと ってであ るが、本件事故発生が 「
事前 に危険を予測 できな
(
判時 一二二四号 〓 1
八頁)
い突発的事故」 であるとされ てお-'このことを併せ考え ると' 一般的監督義務違反 に基づ-責任を肯定し て いると見
られる。
[
1-]神戸地裁昭和五九年 四月二五日判決
Ⅹの突発性難聴)。ⅩからA の父母YYに対 し
︻
事案︼A (二二歳 五 ケ月男)はⅩ の顔面を平手打ち で 一回強打 した (
七 一四条等 に基づき賠償請求。請求認容。
YらはAの法定監督義務者とし て民法七 一四条 一項 に基きXの蒙 った損害を賠償す べき義務があ る」。 「
▲
︻
判旨︼「
[
1-9]長野地裁昭和六 〇年 二月 二五日判決 (
判 夕五五四号 二六二頁)
︻
事案 ︼A及びB (いずれも 二 一
歳男)は小学校 の廊 下にお いてⅩの手を掴む等 し てⅩをぐ るぐ るまわしたと ころtX
が転倒した (
Ⅹ負傷)。ⅩらからAの父母YY及びBの父母YYら に対し賠償請求。請求認容。
︻
判旨︼AB の本件行為は 「いたずら型」 であ るが' 「
Ⅹ の身体 に対し意識的 に有形力を加え た ことは明らか で'更 に
そ の態様は傷害 の結果を発生す る蓋然性が低 いとは いえず、違法性 があ」-、「
更 に被害者 であ るXに何ら の落ち度も
な いから、被害者と の関係 で' 二 一
歳 の子 の親権者とし ては日頃から他人 に村する いたずらを防止す るよう に監督す べ
き義務があ ったと いう べき であ る」。
︻
検討︼学校設置者 の責任 に関す る判断 の中 で本件事故が、
Ⅹの担任教諭 にと っては予見可能 であ ったとしながらも (
X
の担任教諭自身生徒 に対し て暴力容認 の態度を示し'また、ⅩがA及びB以外 の生徒から暴行を受けた こと のあ る事実
北法5
6(
3・
21
7)
1
2
5
5
説
論
を知 って いた)'「
通常 では予見 の困難な類型 に属」 Lt「一般的 には予見困難」 であるとし ており' このことから、Y
yに村す る関係 では判決理由 に いう 「日頃から他人 に対する いたずらを防止す るよう に監督す べき義務」を 一般的監督
義務と見ることができよう。
[
ー]名古屋地裁昭和六二年 八月 1四日判決 (
判時 二 一
六三号三五頁)
Ⅹ負傷)。ⅩからA の父母YY
︻
事案︼A (二 歳 二 ケ月女)は公園 で会 ったⅩのお尻 のあた-を木 の枝 で突 ついた (
(
但しtYはA の実父 であ るがtA の親権者Yの内縁 の夫 であり、法定監督義務者 ではな い) に対し慰謝料等請求。請
求認容。
︻
判旨︼YがA の実母 であり親権者 であ ることtYがAの実父 でありtY及びAと同居してAの出生以来生計を共 にLt
A のし っけ、扶養 にあた って いること、Yらは事実上 の夫婦とし て長年生活を共 にしてお-'そ の間 にAのほかBがあ
-' いずれも父Yの認知を得 て父 の氏を称す る入籍を了し'以降住民票も同 7世帯とな って いること等 が認められる。
「
右事実 によれば、Yは親権者とし て、Yは実父 であり、か つ'事実上A の監護養育 に当た って いる者 であ るから、条
理に基づき監督義務者とし て、 いずれもAの生活関係 の全般 にわたり これを監督す べき義務を負う」。 「
しかると ころ'
本件全証拠 によ っても'Yら にお いてそ の監督義務を怠 らなか ったと認めるに足りな い」。
︻
検討︼親権を有 しな いが'長年子 の父親とし て生活し て いる実父 に ついて'「
条 理」 に基づき 不法行為法上 の (
その
慣意 の存否 に ついて証明責任 の転換された)監督義務を認め て いる。
[
ー]長崎地裁福江支部昭和六三年 〓 l
月 l四日判決 (
判夕六九六号 一七三頁)
北法56(
3・
21
8)
1
2
5
6
監督者責任の再構成 (3)
︻
事案︼A (二 歳 八 ケ月男)及びB (二 歳 五 ケ月男)は同級生Ⅹと ふざ け合うう ち にⅩ の章丸を握 った (
Ⅹ負 傷
)0
本件 いたず らは本件事故当時ABX の他'他 のクラスの 一部 の生徒 間 で行 われ、特 にABがXに対す る ふざ け行為 と し
て仕掛け ること が多 か ったがtAB及びXが本件 いたず ら に ついて父母等 に話 した こと はなか った。ⅩらからA の父母
3一
l
yy及びBの父母YYら に対 し賠償請求。Yら に対す る関係 で請求認容。
︻
判旨 ︼ 「
親権者 は、通常'当該児童 の性格'心神 の発達状況'行動様式 '生育 歴などを 知り'最も児童 の行動規制を
なし得 る立場 にあ って、家庭内 におけ る児童と の対話等 によ って児童と の接触を深 め'児童 が他人 に危険を 及 ぼす行動
に出 る危険を 予見Lt予め危険行為 に ついての認識を与え、 一般的な注意 、指導をな し て危険行為を 防止す る監督義 務
を有す ると いう べき であ-、 そ の意味 で'親権者は児童 が校長'教師等 の代理監督義務者 の監督 下 にあ ったか否 か にか
かわらず'児童 の仝 生活 関係 にわた ってそ の監督義務を負うも のであ る。 したが って、児童 の危険行為 が代 理監督義務
者 の下 でなされたと いうだ け では'法定監督義 務者 であ る親権者 はそ の責任を免 れる こと は できず 、右 のよう な親権者
と し ての包括的な義務を 尽- した ことを主張、立証 しな い限り、そ の責任を免 れること は でき な い」。
︻
検討 ︼ 「
児童 が他 人 に危 険を 及 ぼす行動 に出 る危険」 に ついて の予見義 務を親 に課 し て いると見 られ る。事案 と し て
はA (
皐丸を握 る行為)
0
判 夕八三 五号 二二三頁)
[
1-2]東京 地裁 平成 五年 七月 二〇日判決 (
︻
事 案 ︼A (
九歳 一〇 ヶ月男)は小学校 にお いてⅩ に足を かけ て転倒 させた (
Ⅹ重 傷)。Aは本件事 故め 約 一年前 に好
意 から同級生 の女 の子 の背 中を いたず ら の つもり で小突 いた こと がありtA の担任教諭 は こ の事 実をA の母Yに伝え て
いた。A の父Yは本件事 故 の約 二年 五 ケ月前 からA及びYと別居 し て いた。ⅩらからYYら に対 し賠償請求。Yら に対
北法5
6(
3・
21
9)1
2
5
7
説
論
す る関係 で請求認容。
︻
判旨 ︼ 「
Aが本件事 故前 から粗暴 な行動 の目立 つ子供 であ ったと は認められな い。 しかし、 そう であ っても 、子供 同
士 の遊び やふざ けご つこ の際 に、突発的 に相手 にけがを させ る こともあり得 るから、監督義 務者と し ては,たとえ 遊び
であ っても危険な行為を し ては いけな い旨 言 い聞かせ る べき であ る。理由 はどうあ れ、AがⅩに対 し、 一方的 に暴行を
加え た ことからす れば 、YらがAに対 し'他人 にけ がを させ るよう な危険な行為を し ては いけな い旨十分注意 し て いた
と は認められな い」。なおtYは本件事 故当時A及びYと 別居 し て いたが、 「
他方 で、右当時、YはY及びA の居宅 から
徒歩 一五分-ら いの所 に住ん でお-、Aとは同じ少年 野球 チームで日曜祭 日 のたび に顔を合 わせ て いた こと が認められ
るから'--親権者 であ るYは監督義 務者 の責任を免 れな い 」。
㌔
︻
検 討︼ 「
突発的」 な事 故 の防止 のため の監督義務 が存 在す ると し ており、親 の 1般的監督義務違 反 に基づ-責任を肯
定す るも のと見られ る。ま た、子と別居し て いる親 に ついて'住居が近-' 日曜祭 日 のたび に子と顔を合 わせ て いる場
合 には、監督義務 が存続す る ことを明らか にし て いる。事案 と し ては'好意 か ら であ る にし ても他 人 の身体 に対す る攻
撃を加え て いたと いう ことからす ると、C (
同級生 に対す る小突き )と言え よう か。
交 民集 三 l巻 二号 五六 〇 頁 )
[
1-3]大阪地裁平成 10年 四月 l四日判決 (
︻
事案 ︼A (一〇歳 二 ヶ月男) の発射した空気 銃 の弾丸が車 の後部 ガ ラスに当 った衝撃音 によりわき 見運転 したⅩ の
車 の自損事故 (
Ⅹ負 傷)。ⅩらからA の父母YYら に対 し七 1四条 に基づき賠償請求 。請求 認容。
︻
判旨 ︼ 「
Y及びYが訴外A の監督義務を怠 らな か った ことを 認 め る に足- る証拠 はな いから、Y及びY の免 責 の抗弁
は理由 がな い」。
北法5
6(
3・
2
2
0
)
1
2
5
8
監督者責任の再構成 (3)
[
ー]東京地裁 平成 二二年 11月 二六 日判決 (
判 夕 一一二三号 二二八頁)
︻
事案 ︼中学校 の授業時間中Bと じ ゃれ合ううち に立腹 したA (二 二歳 1ヶ月男) の投げた椅 子がⅩに当 った(
Ⅹ負 傷)。
Aは同級 生と喧嘩をす ること があ り、興奮す ると学用品を投 げたり 、椅 子 や机を蹴 ることもあ った。 A の担任教諭Cはt
Aが問題行動を した際 にはA の母Yと連絡をと-、家庭 での指導等を依 頼 し て いた。ⅩらからA の父母YYに対し賠償
請求。請求 認容。
︻
判旨︼ 「
Aは学校内 にお いてしば しば粗暴な問題行動をと って いたも のと認 められ'Aの学校 での問題行動 に ついて
は、c数諭 から の連絡等 によりYらも 認識 し て いた こと が認 められる0--Yは'本件事故以前、c数論 からAが同級
生と喧嘩 した旨 の連絡 に対 し て適 切な対応をと って いな いことが認められ る。また'--Yは'--Aの問題行動 に つ
いて深刻 に考え て いなか ったと推認す ること が でき '・
・
・
・
・
・
y IがtAに対 し、監督義 務を尽-し て いたと認める 蔓 り
る証拠 はな い」。
喧嘩 '学用品を投げ る こと)
。
︻
検 討︼子 の危険行為 に ついて認識があ った ことを認定 し て いる。事案と してはC (
[
1-5]神 戸地裁平成 一六年 二月 二五日判決 (
判時 一八五三号 二二三頁)
︻
事案︼A (
九歳 一ケ月男)は下級生Bを自宅近- の調整池 に連れ て行き 、B の靴を放り投げそれをBに取りに 行-よ
う に命 じたと ころ、 A に暴力を振 るわ れたり脅 され て いたBは水 のヰ に入-溺 れた (
B死亡)。 Aは 日頃、自 分 の要求
に従 わな い同級生 や下級生 に暴力を振 る い'他 人 の玩具などを放り投げ て取り に行 かせ るなど し て いた ほか'本件事故
の数 日前 には 下級生Cを本件池 に連 れ て行き '同人 の玩 具を池 に投げ込 んで取り に行かせ て いた。またtA の父母YY
は離婚と再婚を 繰り返し、Aが六歳 七 ケ月 のとき 三度 目 の離婚を した後 母YがA の親権者と な って いたも ののtYはA
北法5
6(
3・
2
2
1
)
1
2
5
9
説
論
に十分な食事 や衣服を与え ておらず ' 日頃から のA の粗暴な行動 のため に家庭訪 問 に訪 れたA の小学校 の教師 からA に
対す る配慮を要請 され て いた。B の遺族ⅩらがYy に対 し賠償請求。Yに対す る関係 で請求認容。
︻
判旨 ︼YがAに十分な食事 や衣服を与え て いなか ったと の事実 によれば 、「
YがAに対す る監督義 務を怠 って いなか っ
たとは認め難 い」。
Yに ついては七 一四条 l項 の準用を否定 した上 で以 下 のよう に述 べる。Y の七 〇九条責任 が認められるため には、A
が本件加害行為を行う こと に ついて 「
具体的な予見可能性 が認められる必要があ るがtyらが婚 姻 し て いた間 に'Aが'
上記違法行為 に及 ぶ危険性 があ る ことを 予見す ることが でき たと推認 しう るような事 情 は証拠上認められな い。また'
マ
マ
Yらが離婚 した後 に ついても '--離婚 した当初、AがY宅を訪 れ て いた こと はあ ったが、程なく し てⅥがD ︹
筆者 註
︰本件事故後Yと婚姻 した者︺と 同居を始 め'それ以降 は、AがY宅を訪 れる こと がな-な った こと が認められ、Aが
訪 れた際 に、Aが上記違法行為 に及 ぶ危険 性があ ることを 予見す ること が でき たと推認しう るような事 情も証拠上認 め
られな い」。
︻
検 討︼故意 の犯罪 に含 め ることも 可能 であ るとも見 られ るが、判決 はtBの生命 の危険 に関す るA の認識を認定す る
にとどま る (いわ ゆる認識あ る過失 のケー スとも見 られ る) こと から、 いたず ら による事故 に位 置づけ ることとす る。
池 への入水 の強制)
。Y に ついては食事 や衣 服 の状 況から監督義務違 反を肯 定 し てお-、 一般的監督
事案 とし てはA (
義務 が問題とされ て いると見られる。 これ に対 し、Yに ついては、本件加害行為 に ついての 「
具体的 な予見可能性」 が
要求 され て いる。 これは、Yに ついては親権も子と のあ る程度定期的な接触も な いこと が影響 し て いると見 られ る。
[1-5 - 1 ] 甲府地裁平成 一六年 八月 三 一日判決 (
判時 一八七八号 二 三 盲ハ
)
北法5
6(
3・
2
2
2
)
1
2
6
0
監督者責任の再構成 (3)
︻
事案 ︼小学校 の 「
帰り の会」 にお いてA 二 〇歳 四 ケ月男) の投げた鉛筆 がⅩ の左 眼 に刺 さ った (
Ⅹ左眼 ほぼ失 明)。
A には短気 なと ころがあり'友達 に手を出 した-消 しゴ ム等を投げ るなど の暴力的素行を有 LtXに対し ては言葉 や態
度 で 一方的 にち ょ っか いを出し、本件事故 の前月 には雪合戦中 にⅩに怪我をさせ て いた。A の父母YYはA の担任教諭
BとA の授業態度 や友達 関係 に ついて話をす ることがあ ったが、ⅩがAから いじめられ て いる のではな いかと のX の母
からB への相談 に ついては連絡を受け て いなか った。ⅩらからYYに対 し七 1四条 一項 に基づき 賠償請求。請求認容。
︻
判旨 ︼親権者 は責任無能力者 の全 生活 関係 に ついて監督義務を負う。Aは本件事故当時責任無能力 であ ったと認 めら
A の親権者 であ ったY、Y にお いて'民法 七 一四条 一項 に基づき '損害を賠償す べき 義務を負 う」。 「
児童
れ るから' 「
が加害行為を行 った際'小学校教育 のため に担任教諭等 の指導監督 の下 に置 かれ'代理監督義 務者がそ の責任を負うと
し ても 'そ のこと によ って親権者 の責任 が当然 に免除される こと にはならな い。ま た、本件 ではtAは、短気な性格 で、
友 達をたた いたり'物を投げ つけたりす ると い った問題行動 が日頃からみられたため、B教諭 が個別指導を繰り返 し て
いた こと や、保護者 であ るYらと のやり取り にお いて、授業中 の態度 や友達 関係 に ついて話を し て いた ことも窺 われる
のであ るから'本件事故 が学校教育 の場 で生じた ことをも って、
Yらが自 ら の監督義務を怠 らなか ったと認め ることは」
できな い。
︻
検討︼Ⅹ への 「
ち ょ っか い」 の内容 が明らか ではな いも のの、従前暴力的素行が認められた ことから'事案 と し ては
A。監督義 務 の内容 に直接 は触 れ て いな いも のの、学校教育 下 で の事 故を理由 とす る親 の免責を否定す る説示 に関し て
であ るが、Aの従前 のも のを投げるなど の行動を指摘 し て親 の監督義務違 反を 認め て いることからす ると 、具体的監督
義務 の違反が問題と され て いると見 る ことが でき よう。
北法5
6(
31
22
3)1
2
61
説
論
以上 の いたず ら によ る事故 に関す る裁判例 のうち、学校内 での事 故 に関す る裁判例 にお いては監督義 務 の内容 に つい
脚, E
3
, 淵)
。 こ のこと は、責任 能力者 によ
て比較 的詳 細 に説示 がなされ て いる (
1-4㌧ 1-5' 1-6㌧ 1-7' 1-9、 1-1' 1-2、 1)
。 そ し て'そ の中 には親 の 1舷的監督義 務違
反 に基 づく責任 の成立を 認め ると見ら れ る裁 判例が少 なく な い (
堅 墜
る学校 での加害行為 に関す る裁判例 (
主と し てけ んか による事故 及び いじめ に関す る裁判例) にお いて'親 の七 〇九条
責任を認め る前提と し て予見 可能性が要求 され て いる のと は対照をな し て いる。 さら に'監督義 務 の内容 に 一切触 れな
1- 1-
い裁判例も多数見 られ (
1-1、 1-2、 3、 8、 1-0、 1-3㌧ 1-5-1)
、 ここでも第 一日 で述 べた のと同様 のこと が妥当 しよう (
檀
し' 1-5-1を除-)
0
なお'学校内 での事故 に ついて親 が免責 される場合 があ ることを認め る点 では' この類型 にお いても '遊戯 ・スポ ー
ツ事故 に関す る裁 判例と 同様 であ るが、免責 され得 る場面 は非 常 に限定 され (
「
教育 活動 又は これと密接 不離 の関係 に
あ る活動中 に親権者 が直接監護を加え る」義務 は親 にな-' この点 に ついてのみ親 は免責 され得 るとす る。裁 判例 1-6参
」
照)
'実質的 には親 の免責を認めな いも のと な って いる。
また'親権 のな い実 父'別居中 の (
但 し 日曜祭 日には子と会 って いる)父 に ついても (
条 理 に基づき 'そ の慨意 に つ
いて証明責任 の転換 された)監督義 務を負 わせ て いる裁判例 が見 られ る (
1-0、 1-2)
。但 し、親権 のな い実 父 に つき 、子
と のあ る程度定期的な接触 がな い場合 に'監督義務 の内容を限定 的 に解す る (
具体的監督義務 の違 反を 要求す る)裁判
例 (
1-5)も見られる。
第 四日 未成年者 同士 のけ んか によ る事故 に関す る裁判例
この類型 に関す る公表裁判例は これま でに三件存在す る。
北法5
6(
3・
2
2
4)
1
2
6
2
監督者責任の再構成 (3)
[
1-6]東京控訴院大正四年 四月 二 一
日判決 (
法律新聞 一〇 一六号 二二頁)
︻
事案︼A、B及びC (いずれも数え年 二 歳以上 一四歳以 下男) のいずれかが下校途中 にⅩと争闘LtAらを含む 一
123
Ⅹ負傷)。ⅩからA乃至C の親権者YYYに対し賠償請求。請求認容。
一名が共 にXを殴打した (
︻
判旨︼Yらが監督義務僻怠不存在を立証するため に援 用した証人 の 「
証言 に依- ては単 にY等 の監督す る未成年者 に
」
従来悪行なかりしことを認め得 るに止ま-毒もY等 が監督義務を怠らざりしことを認む るに由なし 。
︻
検討︼子 に従来悪行 のなか ったと の事実 の立証だけ では免責立証とな-得な いとす る。
.
[
1-7]水 戸地裁土浦支部昭和 四年 二 月 四日判決 (
法律新聞三〇四七号 四頁)
/
八歳七 ケ月男) により横腹 の辺りを足蹴 にされtBに手 で頭部を叩かれたと ころtA の足蹴が原因 で
︻
事案 ︼CはA (
C死亡)。C の遺族ⅩからAの父Yら に対し賠償請求。請求認容。
肋膜肺炎とな った (
其法定 の監督義務者た るYに於 て之が為 め に生じたか損害を賠
︻
判旨︼Aは加害行為当時責任無能力 であ った故 に'「
償す べき責 に任ず べき は論を填たず」。
Bの父に対する請求 に ついては、Bの行為とC の死亡 に因果関係がな いとし て棄却。
[
1-8]大阪地裁昭和 五 〇年 三月三日判決 (
判時七八 言方九三頁)
︻
事案︼小学校 の放課後Ⅹから の決闘 の申 入れ に応じたA (二 歳 一ケ月男)はⅩと喧嘩となり、Ⅹの左眼付近を殴り
つけた (
Ⅹ負傷)。XからA の母Yらに対し慰謝料請求。Yに対す る関係 で請求認容。
Aの母 であ るYは民法七 1四条 によりⅩに対 し損害賠償義務を負う」。
︻
判旨︼Aは責任無能力 であ ったから、「
北法56(
3・
22
5)1
2
6
3
第 五日
いじ め に関す る裁 判 例
こ の類型 に関す る公表裁 判 例 は これま でに三件存 在 す る。
判時 二 五九号 六 八頁 )
[1-9]浦 和 地裁 昭和 六 〇年 四月 二 二日判決 (
九歳 七 ケ月男) が立 て続 け に廊 下 で立ち 話を し て いたⅩ の足 元目掛 け て背 後 か ら滑
︻
事 案 ︼小学校 の放 課後B及びA (
り込 みを かけ、A によ る滑り込 み の際 にⅩが転 倒 し、負 傷 した。 本件事 故 の約 七 ケ月前 頃 からAら の学年 の男 子 生徒 の
間 で、廊 下 に仔 立す る者 の虚 を ついて滑り込 みを かけ ると いう いたず ら が流行 し始 め、A及びBは本件事 故 以 前 にも 同
級 生 の女 子児童 に対 し てこ の いたず らを試 みた こと があ った。ま た、Ⅹは本件事 故 の約 一〇 ヶ月前 に転枚 し てき た直後
から 同級 生 の男 子児童 より 頻繁 に殴 る蹴 る等 の暴行 を受 け るよう にな って いた。Ⅹか らA の父母YY及びB の父母 ら に
対 し て七 〇九条 及び 七 一四条等 に基 づき 賠償請求 。
︻
判旨 ︼小学校 の校 長 や担 任 教諭 には、 そ の教育活 動 の効 果を 十 分 に発揮 す る必 要上、法定 監督 義 務 者 の監督 義 務を 一
時的 に排 除 Lt児童を指 導 監督 す る権利義 務 が与え ら れ ており '従 って'学校内 で の児童 の違 法 行為 に関 し親権者 がそ
の責任 を負 わ な い場合 があ り得 る。 「しか しな がら親 権 者 は、 そ の子 た る児 童 が家 庭 内 に いると 家庭 外 に いると を 問わ
ず 、 原則と し て子ども の生活 関係全 般 にわ た ってこれを 保護 監督 す べき であ- 、少 な-とも '社会 生活を営 ん で い-う
え で の基本 的規範 の 一と し て'他 人 の生命 、身 体 に対 し不法 な侵害 を加え ること のな いよう 、 子 に対 し、常 日頃 か ら社
会 生活 規範 に ついて の理解 と認識を 深 め' これを身 に つけ させ る教育 を行 って、児童 の人格 の成 熟を 図 る べき 広 汎 か つ
深遠 な義 務を負うと いわ なけ れば ならな いのであ って'たとえ ' 子ども が学校 内 で起 した事 故 であ っても 、 そ れが他 人
の生命 ' 及び身 体 に危害を 加え ると いう よう な社会 生活 の基本 規範 に抵触 す る性質 の事 故 であ る場合 には '親 権者 が右
北法5
6(
3・
2
2
6)
1
2
6
4
監督者責任の再構成 (3)
のよう な内容を有す る保護監督義務を怠 らなか ったも のと認められ る場合 でな い限り'--右事故 により生じた損害を
賠償す べき責任を負担す るも のと いう べき であ る。 しかし て'--弱 い者 いじめはしな い-- ︹
と のYら によ るAに対
すT
Q]説諭 のみをも ってし ては'右 のよう な保護監督義務を 尽- したと は到底 いえ な い」。
B の父母 に ついては、B の行為とX の傷害 に因果関係がな いと し て請求を棄却 し て いる。
︻
検討︼Ⅹが従前 「いじめ」を受 け て いたと の事実認定 がなされ'本件事故もそ のよう な状況 の中 で感化 されたAによ
り引き起 こされたも のであ ると し てお-' このこと からす ると本件加害行為も 「いじめ」 の延長線上 にあ る行為ととら
え ることが でき よう。但 しtA及びBが従前Ⅹに対 し て暴行を加え て いたと の事実認定 はなされ ておらず 、 こ のこと か
ちすれば本件事故 には いたずら による事故とし ての側面もあ ると言う ことが でき る。
\
学校内 の事故 に ついても 、親は子 に ついて 「
身上監護型」監督義 務を負 っており、他人 の生命 ・身体 に危害を加え る
事故 に ついては、そ のような不法 な侵害 の防止 に関す る社会 生活規範 に ついての理解 ・認識 の深化及び体得 のため の教
育を行う義 務を負うと し て いるOも っとも'弱 い者 いじめを しな いと の説諭 では こ の義務を 果した こと にならな いとし
て いると ころ、 具体的 にど のような監督措置 が講じられ る べき かは明らか にされ て いな い。
事案と し てはA (
滑り込 みにより他人を転倒 させ る いたずら)及びÅ (
Ⅹに村す る いじめ)と言え よう か。
[
1-0]金 沢地裁平成 八年 一〇月 二五日判決 (
判時 一六 二九号 一二二頁)
︻
事案 ︼小学校 の給食時間終 了後A (二 歳 二 ケ月男)がⅩを追 いかけ る等 した こと に端を発 LtBCらそ の他多 数 の
児童 が加わ-、Ⅹに足蹴等 の暴行を加え る等 したため'Ⅹは負 傷 し、また、学校生活 に恐怖感を抱き'そ の複数 ヶ月間
登校しなか った。Ⅹは'本件事件 の約七 ケ月前 に転校 した てき たそ の二週間後 に放 課後上級生から暴行を受け て負 傷 し、
北法56(
3・
22
7)
1
26
5
説
論
そ の後も本件事件 に至 るま で、同級生から叩かれた-す る等 され て いた。Ⅹから本件事件 現場 に居合 わせたA乃至G七
名 (一〇歳 六 ケ月 乃至 二 歳 三 ケ月) の父又は母Y乃至Y
lら に対 し七 〇九条 及び七 一四条 に基づき慰 謝料等を請求。講
求 認容。
︻
判旨 ︼親権 者 の監督義務 の範囲 は' 「
そ の子た る児童 が家庭内 に いると家庭外 に いるとを 問わず'原則と し て子供 の
生活 関係全般 に及 ぶ べきも のであり、少な-とも、他人 の生命 ・身体 に対 し不法 な侵害を加えな いと の規範 は、社会生
活を営 ん で い-上 での最も基本的な規範 の 一つであ るから'親権者と し ては、当然 にこれを身 に つけ る べ-教育を行う
義務があ るも のと いう べき であ る」。 「
したが って'たとえ 子供が学校内 で起 した事 故 であ っても 'それが他人 の生命 ・
身体 に危害を加え ると いう よう な社会 生活 の基本規範 に抵触す る性質 の事 故 であ る場合 には'親権者 は、右 のよう な内
容を有す る保護監督義務を怠 らな か ったも のと認められる場合 でな い限り、--右事 故 によ って生じた損害を賠償す べ
き 責任を負 わなければな らな い」。Yら によ るAら に対 し て の 「
人 に迷惑 を かけな いこと'人 の いやが るよう な ことを
\
しな いことなど -- ︹
と の︺説諭 のみをも ってし ては、右 のような保護監督義務を 尽- したとは到底 いえ な い」。
︻
検討 ︼監督義務 に関し て1-9と ほぼ同様 の説示を し て いる。事案と し ては、本件事故以前 にAらがⅩに対 し て暴行等を
加え て いた事実 は認定され て いな いも のの、Å (
被害者 に対す る継続 的暴行 )と言え よう。
判 夕 二 l八号 二二五頁)
[
ー]大阪高裁平成 二 一
年 11月 三〇日判決 (
︻
事案 ︼事案 の詳細 は不明 であ るが、判決理由 から明らかな限り では以 下 のよう な事案 であ る。Ⅹは小学校 入学後 間も
性 別不明)らから加害行為を受 け、と- に二年 生 の六月 乃至 二学期以降プ ロレ
な い頃から約 二年 にわたり、同級生A (
スご っこ等 の 「いじめ」 を受 け、 二年生 の三月 にはA の加害行為 により負 傷 した。 Aは 二年 生 の二学期頃少な-とも 二
北法5
6(
3・
2
2
8
)
1
2
6
6
監督者責任の再構成 (3)
〓
-A
)
・
」
1
回Ⅹ に金 員 を交 付 さ せ、A の母Yは'Aが要求 す るとXがお金 を - れ ると いう 関係 にな って いた こと を 認 識 し て いた。
xからA乃至F六名 の両親Y乃至Y に対 し賠償 請求 。A の両親YYに対す る関係 で請求 認容 。B乃至F の両親Y乃至Y
に対す る関係 で請求棄 却C
︻
判旨 ︼yyは' 「
AがⅩ に対 し てな した - -行 為 に つき ' 民法 七 〇九 条 ' 七 1四条 に基 づき ' 不法 行為 によ る損 害 賠
償 責任 を負 う と いう べき であ る」。
B乃至F に ついては 「いじ め」 に加 わ ったと 明確 に認定す る こと が でき ず 、ま た '加 わ って いたと し ても そ の違 法 性
1
.
は軽微 であ る こと か ら、Y乃至Y に不法行為責 任 があ ると いう こと は でき な い。
︻
検 討 ︼子 の年 齢 が七歳未 満 であ る可能 性も あ るが 、便宜 上 ここ で検 討す る。
Y に関 し ては'金 銭 のやり 取り の認 識 可能 性 を 認定 し ており、 「いじ め」 の認 識 可能 性 を 認 め て いるも のと 見 ら れ る。
A に関す る限り事案 と し てはA (
プ ロレ スご っこ、金 銭 の要求等 )
。
な お '判旨 が何故 七 〇九条 に言 及 し て いる のか は明 ら か ではな い。
いず れ の裁 判 例 にお いても (
但 し' 1-1に関 し ては父親 に ついて のみ)' 「
特 定 化 され た行為 」 やそ のよう な行為 を誘 発
す る環 境 が認定 さ れ て いる にも かかわ らず 、当 該加 害行為 の予見 可能 性 には特 に言 及され て いな い。 こ のこと は '責 任
交 通事 故 に関す る裁 判 例
能 力者 によ る いじ め に関す る裁 判 例 にお いて'親 の七 〇九 条責任 を 認 め る前 提 と し て予見可能性 が要求 さ れ て いる のと
対 照を な し て いる。
第 六日
北法5
6(
3・
2
2
9
)
1
2
6
7
説
論
この類型 に関す る公表裁判例はこれま でに七件存在す る。
[
E
3
]東京地裁昭和三七年 二 月 二日判決 (
下民集 二二巻 二 号 二三 七頁)
Ⅹ重 傷)
。Aは通学 の都合上母Yと別居し て いた。
︻
事案︼A (一四歳 一〇ヶ月男)運転 の自転車と歩行者Ⅹと の衝突 (
ⅩからYに対し て七 一四条 に基づき賠償請求。請求認容。
︻
判旨︼YはA の養育及び監督をB (
Yの主張 によればAの伯母) に 一切任せ て いたことを理由とし て責任がな いと主
代理監督者をお いたと いうだけ で親権者 の法定 の監督責任が免脱されるとはとう て い考え られな い。けだ
張す るが'「
し、親権者は代理監督者をお いた場合 であ っても、何時 でも法定 の監護教育 の権利を自ら行使しう べき者 であ るから で
12
ある」。 「
本件事故が親権者たるY及び代理監督者たるBの監督上 の注意をも ってし てもさけえなか ったも のであること
を認める」 ことはできな い。
︻
検討︼監督 の委託 の事実だけ では免責立証となりえな いと して いる。
[
1-3]東京地裁昭和 五二年 二 一
月 二〇日判決 (
交民集 一〇巻 六号 一七七五頁)
︻
事案︼夜間 におけるA (二二歳 llヶ月男)運転 の自転車と歩行者Xと の衝突 (
Ⅹ死亡)
。A の自転車 はAの父母YY
がAに買 い与え たも のであ った。Bの遺族ⅩらがA及びyyに対し七 〇九条及び七 一四条 に基づき賠償請求。請求認容。
︻
判旨︼「
Aの乗 って いた--自転車 はセミド ロ ップ式 のスポー ツ車 であ-、且 つA の前方不注視 が本件事故 の原因と
な って いる等 の事情を考慮すると'A の両親たるY、Yが、A の監督義務を尽-し て いたとは認め難 い」。
︻
検討︼セミド ロップ式 ハンド ルのスポー ツ車 (ハンド ルの位置が低 いため運転者は下を向- ことが多 い) による前方
北法56(
3・
2
3
0)
1
2
6
8
監督者責任の再構成 (3)
不注視を原因とする事故と いう事情を主として考慮 して監督義務憾意を肯定し ており、事故 の予見可能性 及びそれを直
接 に基礎づけ得 る事実 には言及されて いな い。事案とし てはB (
自転車)
0
[
1-4]山 口地裁徳山支部 昭和 五三年七月 四日判決 (
交民集 〓 巻 四号九八三頁)
B死亡)。Bの遺族ⅩらからA及びそ の父母YYに
︻
事案︼A (二 歳 一ケ月男)運転 の自転車と歩行者Bと の衝突 (
対し七 〇九条及び七 一四条 に基づき賠償請求。請求認容。
︻
判旨︼「
Aは小学校 二年生 の頃から自転車 に乗りはじめ て いたがtyと YはAが本件事故当時ど の位 の頻度 でど のよ
う な交通状況 の道路 でど のような方法をも って運転 して いたか に ついて明確 には知 らず'ただ乗車 にあ た っては交通
ルールを守り前方 や左右をよ-見 て走行す べき ことを 口頭 で注意す ることはあ っても、Aの自転車運転 の技術や注意能
力を実際 に確かめたことはな いことが認められ、右事実 によればYらがAの本件自転車運転 に つき監督義務を尽し てい
たとはなし難」 い。
︻
検討︼自転車運転 に関する監督を問題とし て いるが'事故 の予見可能性及びそれを直接 に基礎づけ得 る事実 には言及
され て いな い。また' 口頭 の注意 では足りず、子 の自転車運転 の技術等 の親自身 による確認を要求す るも のと見られる。
[
1-5]岡山地裁笹岡支部昭和 五九年九月五日判決 (
交民集 一七巻 五号 二 一
三四頁)
歳 二 ヶ月男)運転 の自転車とB運転 の自転車と の衝突 (
B死亡)
。Bの遺族 ⅩらからA及びそ の父
︻
事案︼A (二 一
母YYに対し賠償請求。請求認容。
YらはA の両親 であ ること が認められるから、Aを監督す べき法定 の義務あ る者
︻
判旨︼Aは責任無能力者 であり、 「
北法5
6(
3・
2
31
)1
2
6
9
説
[
ー]大阪地裁昭和六〇年 l月二九日判決
とし て、Aの前記過失行為 によ-Bに生じた損害を各自賠償す べき義務がある」。
(
交民集 一八巻 l号 1六〇頁)
論
歳三 ケ月男)がわき見運転す る自転車と歩行者Bと の衝突
︻
事案︼公園内 で友人らと自転車 で遊戯中 であ ったA (二 一
(
B死亡)。A の自転車はA の父母YYが買 い与えたも のであ った。B の遺族ⅩらからA及びyYに対し七 一四条等 に
基づき賠償請求。請求認容。
︻
判旨︼YらはA の法定監督義務者 であり、「
また、同人 に五段変速機付 ミ ニサイク ル自転車を買 い与えた のであ るか
ら、同人が公園内 で右自転車を運転しょうとす る場合 には、事故 の発生を未然 に防止しう る速度と方法 で走行す るよう
に指導監督す べき注意義務がある のに、 これを怠り、公園内 で遊 ぶ際 の加害自転車運転上 の注意を十分与えず、か つ'
十分な監督をしなか った過失が認められ」 る。
︻
検討︼遊戯中 の事故 であ るが、自転車と いう乗-物 による加害 であ-、また、被害者は遊戯 に参加し て いな い歩行者
であ ることから、 ここに分類す る。
自転車)
。
自転車運転 に関す る監督を問題として いるが'事故 の予見可能性 には言及され て いな い。事案とし てはB (
[
1-7]京都地裁平成元年九月六日判決 (
判時 二二八 〇号 二 一
六頁)
Ⅹ負傷)。ⅩからA の父母YYら
︻
事案︼A (11歳 11ヶ月男)運転 の自転車と バスから降車 し て いたXと の衝突 (
に対し賠償請求。請求認容。
︻
判旨︼本件事故当時Aは責任無能力者 であ-、YらはAの父母 であ-、法定代理人親権者 にあた る。 「
従 ってt Yら
北法5
6(
3・
2
3
2
)
1
2
7
0
監督者責任の再構成 (3)
は tA の監督 義 務者と し て、 民法 七 一四条 一項 本文 に基 づき '各 自 本件事 故 によ-Ⅹに生 じた損 害 を 賠償 す る責任 があ
る」。
[1-]大 阪 地裁 平成 五年 二 一
月 七 日判決 (
交 民集 二六巻 六号 1四九 〇頁 )
Ⅹ負 傷)
。ⅩからA の父母YYに対
︻
事 案 ︼交 差点 におけ るA 二 一歳 七 ケ月女 ) 運転 の自 転車 と 歩 行 者Ⅹと の衝 突 (
し七 一四条 に基 づき 賠償 請求。請求 認容O
︻
判旨 ︼ 「
本件事 故 当 時 、Aが 二 歳 七 ケ月 であ った こと か らす ると tA の親権 者 であ るYら は ' 民法 七 二 一
条 '七 一
四条 に基 づき 'Ⅹに対 し て、本件 事 故 によ る損 害を 賠償 す る責任 があ ると 解す る のが相当 であ る」。
いず れも自 転車 によ る加害 に関す る裁 判例 であ る。監督義 務 の内 容 に ついて比較 的詳 細 に説示 し て いる裁 判例 にお い
では、 いず れも 子 によ る 「
特 定化 さ れた行為」 に関す る監督 が問 題と さ れ て いるも のの、 そ のよう な行為 の予 見 可能 性
(
1-
に触 れ ら れ て いな い 3、 1-4' 1-6)。但 し、自 転車 の供 与と いう 事 実 か ら直 接 に監 督 義 務 を導 き 出す 裁 判 例 が見 ら れ る
(
1-6)
。 こ の年 齢 階 層 の子ど も に ついては そ の取扱 いにより自 転車 が 既 に公 衆 にと って の危 険 物と なり得 ると の評価 に
よ ると見 ら れ る。
(1-5 - 1 )本件 に ついては判例評釈として'奥 野久雄 「
生徒間 の校内事故と親 の責任」 ﹃
大阪商業大学論集﹄六五号 (
昭和五七
年 ) 一五七頁がある。
(
捕)本件 に ついては判例評釈として、奥野久雄 「
大阪地判昭和五五年七月 一四日刊批」﹃
法時﹄ 五五巻六号 (
昭和五八年) 1
北法5
6(
3・
2
3
3)
1
2
71
五七頁があ る。
(
1-7) この点 に ついて奥 野 ・前掲判批 (
註 1-6) 一六 一頁は'「
判例は'当該未成年者 の不法行為 に対 し て監督義務者 がど のよう
に関与 したかと いう 個別的 ・具体的な判断を示し ておらず、 一般的 ・日常的な監督義務者 の未成年者 に対す る態度をも っ
て相当因果関係 の有無を判断し て いる」 とす る。しかし'確 か に裁判例'殊 に本判決が' 日常 の監督 の態様を問題 にし て
いると し ても、あ-ま で当該加害行為と同種 の行為'すなわち危険な状況下 での野球を防止す るた め の監督を 問題と し て
おり、そ の限り で 「一般的」監督を問題 にし て いるとは言 い難 いよう に思われる。
(
1四
8)本件 に ついては判例評釈とし て、山本 ・前掲判批 (
註 12) の他'明石三郎 「
宇都宮地判昭和 四五年 三月三日判批」﹃
法時﹄
三巻六号 (
昭和 四六年) l三六頁、米山隆 「
同判批」 ﹃
法時﹄ 四四巻七号 (
昭和 四七年) l三 1頁があ る.
(
1-9)教師 による懲戒後 の生徒 の自殺 に関し てであ るが最高裁昭和 五二年 一〇月 二五日判決判 夕三五五号 二六 〇頁。 [
91]判決
は学校設置者 の責任 に ついて明示的 にこの判決を引用して いる。
(
1-0)責任無能力者 の加害行為 に つき 「
故意」 が認められるか否 かは'故意 に つき違法性 の認識 (
可能性)を必要とす るか否
か にも 関連 し て問題となるかも しれな い。しかし、本稿 では この間題 に深-立ち入らず'差 し当 た- 「
犯罪構成要件 に該
当す る具体的事実を認識す れば足」 るとす る刑法 上 の判例 (
最判昭和 二六年 二 月 一五日刑集 五巻 二 一
号 二三五四頁) に
従 い、当該加害行為が故意 の犯罪 に該当すると見られる裁判例を ここに分類した。
(
1-1)本判決 に ついては坂井調査官 による判例解説 (
「
最判 昭和 三七年 二月 二七 日判解」 ﹃
曹時﹄ 一四巻 四号 (
昭和 三七年) 一
1八頁)があ る他、判例評釈とし て谷 口知平 「
最判昭和三七年 二月 二七 日判批」 ﹃
民商﹄ 四七巻 四号 (
昭和 三八年)六 〇五
頁があ る。
(
1-2)特段 の理由な-し て第 三者 に危険を及ぼす行為をす ること が責任能力を有 しな いよう な児童 ・幼児 の いたず ら の特徴と
見 ること が でき ることから'子が当該加害行為を行 った理由 が明らか ではな-且 つ他 の類型 に含め ること のでき な いケー
スも この類型 に含めることとす る。
(
1-3)「
身上監護型」監督義務が監督義務 の尽-される べき時間的場所的範囲 の広狭 によ-定ま るべきも のであり'監督義務 の
内容 に触れるも のではな いこと に ついては、前註 130参 照。
北法5
6(
3・
2
3
4)
1
2
7
2