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RADIOISOTOPES ,58,291‐442(2009)
資
料
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した
放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
社団法人
日本アイソトープ協会
ポジトロン核医学利用専門委員会
医学・薬学部会
核薬学ワーキンググループ†
1
1
3
‐
8
9
4
1 東京都文京区本駒込2‐
2
8
‐
4
5
Key Words:18FDG, 15O-water, 13N-ammonia, 11C-L-methionine, 11C-sodium acetate, 11C-choline,
18
F-sodium fluoride, 11C-flumazenil, drug product standard code, manufacturing
control standard code, manufacturing hygiene control standard code, quality
control standard code, manufacturing direction, manufacturing record, quality
record
のを取りまとめたものである。ただし,ここに
はじめに
収載されている各種の書類の様式や内容はあく
本資料は,「ポジトロン核医学利用専門委員
まで一つの例であり,各施設は,
「ポジトロン
会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準
核医学利用専門委員会が成熟技術として認定し
(2009年改定)」の運用にあたり,基準書,手順
た放射性薬剤の基準(2
009年改定)
」,その基
書,記録などのさまざまな整備しておくべき書
準に関する解説及びここに記載する参考資料な
類のうち,現時点で手引きとして提供可能なも
どを参照し,それぞれの施設の状況を考慮して,
施設に適した書類を個別に作成するものとする。
Reference Materials for Standards of Compounds
Labeled with Positron Emitting Radionuclides Approved as Established Techniques for Medical Use
(2
0
0
9revision)
Nuclear Pharmacy Workgroup, Subcommittee on
Medical Application of Positron Emitting Radionuclides, Medical Science and Pharmaceutical Committee, Japan Radioisotope Association : 2-28-45,
Honkomagome, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8941, Japan.
†
なお,本資料は,現時点における情報を基に
作成されたものであり,今後新たな情報の提供
や整備に伴い,逐次追加,改定される予定であ
る。
ポジトロン核医学利用専門委員会
委 員 長 米倉 義晴( 独 放射線医学総合研究所)
同専門委員会核薬学ワーキンググループ
主
査 佐治 英郎(京都大学大学院薬学研究科)
委
員 井上
修(大阪大学大学院
医学系研究科)
岩田
錬(東北大学サイクロトロン・
ラジオアイソトープセンター)
鈴木 和年( 独 放射線医学総合研究所)
前田
稔(九州大学大学院薬学研究院)
安原 眞人(東京医科歯科大学医学部
附属病院)
(所属は2
0
0
8年1
1月現在)
( 73 )
目
次
資料1. 製造管理組織図(例)
資料2. 製品標準書(例)
(1)2―デオキ シ―2―フ ル オ ロ―D―グ ル コ
ース(18F)注射液
(2)アンモニア(13N)注射液
(3)水(15O)注射液
(4)L―メチオニン(11C)注射液
(5)酢酸(11C)注射液
(6)コリン(11C)注射液
(7)フッ化ナトリウム(18F)注射液
(8)フルマゼニル(11C)注射液
資料3. 製造管理基準書(例)
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5
8,No.
6
資料4. 製造衛生管理基準書(例)
(7)フッ化ナトリウム(18F)注射液
資料5. 品質管理基準書(例)
(8)フルマゼニル(11C)注射液
資料13.品質試験記録(例)
資料6. 入退出手順書(例)
資料7. クリーンベンチ操作手順書(例)
(1)2―デオキ シ―2―フ ル オ ロ―D―グ ル コ
資料8. 浮遊微粒子試験標準作業書(例)
ー ス(18F)注 射 液([18F]FDG 注 射
資料9. 空気中微生物試験標準作業書(例)
液)
(2)アンモニア(13N)注射液
(落下菌試験標準作業書,浮遊菌試
(3)水(15O)注射液
験標準作業書)
資料10.付着菌試験標準作業書(例)
(4)L―メチオニン(11C)注射液
資料11.原料及び資材の品質管理記録(例)
(5)酢酸(11C)注射液
資料12.製造指図書,製造記録(例)
(6)コリン(11C)注射液
(7)フッ化ナトリウム(18F)注射液
(1)2―デ オ キ シ―2―フ ル オ ロ―D―グ ル コ
1
8
1
8
(8)フルマゼニル(11C)注射液
ー ス( F)注 射 液([ F]FDG 注 射
液)
資料14.浮遊微粒子試験記録(例)
1
3
(2)アンモニア( N)注射液
資料15.空気中微生物試験記録(浮遊菌試
1
5
(3)水( O)注射液
験記録)
(例)
(4)L―メチオニン(11C)注射液
資料16.空気中微生物試験記録(落下菌試
(5)酢酸(11C)注射液
験記録)
(例)
1
1
(6)コリン( C)注射液
資料17.付着菌試験記録(例)
資料1. 製造管理組織図(例)
製造管理者
(氏名
○○
○○)
製造管理責任者
(氏名
○○
○○)
品質管理責任者
(氏名
○○
○○)
資料2. 製品標準書(例)
(1) 2―デオキシ―2―フルオロ―D―グルコース(18F)注射液
(i) 水酸化ナトリウムを用いて加水分解する場合
製品標準書
1. 薬剤の名称,成分
1)名
称
2―デオキシ―2―フルオロ―D―グルコース(18F)注射液([18F]FDG 注射液)
2)成
分
( 74 )
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0
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「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
2. 合成装置の医療機器承認番号
○○○○○○社製
FDG 合成装置○○○○
医療機器承認番号:○○○○
3. 原料及び製品の規格及び試験方法
1)原材料の規格及び試験方法
a.有機化合物(主な原料)
*
1)マンノーストリフレートは受入れ基準を満たした相当品(ABX 社など)を用いることができる。
b.フッ化物(18F)イオンの製造に使用するターゲット水(出発物質)並びにサイクロトロン
【ターゲット水(出発物質)】
( 75 )
293
294
RADIOISOTOPES
*
1)ターゲット水は受入れ基準を満たした相当品を用いることができる。
【フッ化物(18F)イオンの製造に使用するサイクロトロン】
製造者名:○○○○○○株式会社
型式:○○○○
c. 製剤に含まれる他の成分
[18F]FDG 注射液の調製に以下の薬品を添加する。
*
1)原材料は,肉眼により異常のないことを確認する。
d.合成試薬,精製物質,消耗品,交換部品*1)
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「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
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*
1)合成試薬,消耗品,交換部品は受入れ基準を満たした相当品を用いることができる。
*
2)原材料は全て,肉眼により異常のないことを確認する。
*
3)Kryptofix2.
2.
2は Merck 社の製品である。
*
4)試薬キット F には,アセトニトリル,Kryptofix2.
2.
2,炭酸カリウム溶液,0.
3mol/L 水酸化ナトリ
ウム,QMA 活性化試薬,注射用水バイアルが含まれる。
*
5)アクセル QMA ライトカートリッジ(Sep-Pak Light Accell QMA)は Waters 社の製品である。
*
6)IC-H カートリッジは Alltech 社(Maxi-Clean Cartriges IC-H)を用いることができる。
*
7)PS-2カートリッジ(Sep-Pak PS-2)は Waters 社の製品である。
*
8)アルミナカートリッジとしては,Waters 社(Sep-Pak Plus Alumina N)及び相当品を用いることがで
きる。
*
9)滅菌用フィルタは MILLIPORE 社(Millex-GS)を用いることができる。
*
1
0)製品バイアルの排気用フィルタは MILLIPORE 社(Dualex)を用いることができる。
*
1
1)試薬用バイアル,18O―水回収バイアル,製品バイアルは,日本薬局方に従って滅菌処理を行ったもの
を用いる。
e.標準物質
以下の化合物を[18F]FDG 注射液の品質管理用として用いる。
*
1)各標準物質は受入れ基準を満たした相当品を用いることができる。
( 77 )
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2)製品の規格及び試験方法
2―1)製品の規格及び試験頻度
*
1)頻度
・初めて合成を行うとき,長期間使用しなかった後,製造工程・設備・装置を変更した場合,作業従事
者を変更した場合(例えば,新しい作業者の参入)には,全ての検定を実施し,3ロット連続して適
合していることを確認すること。
・毎合成後:毎回の合成後,検定を実施する。
・1回/年以上:1年に1回以上の頻度で,定期的に検定を実施する。
・毎合成後(事後):使用開始前に,3ロット連続した検定において適合するとき,これ以降の検定を
事後検定とする。ただし,不適合が生じた場合,その要因を排除し,3ロット連続した検定において
適合すること。
*
2)毎合成時,比放射能としては理論値を用いる。ただし,1回/年以上は製品中に含まれる非放射性 FDG
の量を測定し,規格値以上であることを確認する。
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「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
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2―2)製品の試験方法
*
1)ガンマ線測定法
[18F]
FDG 注射液の放射能あるいはガンマ線スペクトルの測定は,あらかじめ標準線源によって校
正されたガンマ線スペクトロメータ,井戸型シンチレーション計数装置または井戸型電離箱式キャリ
ブレータ(またはキュリーメータ)により行うものとし,その方法は「ポジトロン核医学利用専門委
員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2
0
0
9年改定)
」
のⅢ.一般試験法 4ガンマ線測定
法に準じる。
*
2)比放射能測定法
[18F]
FDG注射液の一定量を精密に量り,放射能をガンマ線測定法*1)に従って定量する。電気化学検
( 79 )
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出器を用いる液体クロマトグラフ法により FDG 標準液について検量線を作成する。[18F]
FDG 注射液
の一定量について同様の試験を行い,検量線より[18F]
FDG 注射液の FDG の量を求め,比放射能を算
出する。液体クロマトグラフ法において,カラムとしてダイオネクス社「CarboPak PA-14×2
5
0mm」
及び「CarboPak PA-1Guard4×5
0mm」を用い,移動相として2
2
0mmol/L 水酸化ナトリウム水溶液,
流量0.
2mL/分の条件で測定したときの FDG 保持時間は2
5分前後である。
*
3)エンドトキシン試験法
比濁法によるエンドトキシン測定装置として,和光純薬工業「トキシノメーター」を用いることが
できる。また比色法によるエンドトキシン測定装置として,生化学工業の「ウェルリーダー SK60
3」
を用いることができる。
*
4)血液培養システム
血液培養システムによる無菌試験法は,「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定
した放射性薬剤の基準(2
0
0
9年改定)
」
のⅢ.一般試験法 1
1無菌試験法に準じて行う。
血液培養システムによる無菌試験法では,細菌の代謝産物であるガス状化合物によって生じる培養
ボトルの内圧上昇を,培養ボトルと細い針で接続されたグロスシグナルへの培養液の流入を観察する
ことにより,試料中の細菌の有無を判定する。
本法には,オクソイド社血液培養システム「シグナル」を用いることができる。
*
5)pH 試験紙
pH 試験紙には,Whatman 社「Type CF」及び相当品を用いることができる。
*
6)ラジオ薄層クロマトグラフ法
アセトニトリル/水混液(95:5)を展開溶媒としてシリカゲル薄層クロマトグラフ法により試験を
行うとき,FDG の Rf 値は,
0.
4前後である。シリカゲル薄層を使用し,0.
1vol%のトリエチルアミン
を含むメタノールを展開溶媒として試験を行うとき,FDG の Rf 値は,0.
6前後である。
*
7)ラジオ液体クロマトグラフ法
µ Bondapak carbohydrate(日本ウォーターズ社)を充填した φ 3.
9mm×3
0cm のカラムを使用し,
アセトニトリル/水混液(85:1
5)を移動相として流速1mL/分で溶出したとき,FDG は約6.
5分の
位置に溶出される。
*
8)ガスクロマトグラフ法
水素イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフ法にて測定する。カラムとして島津製作所「TSG-1
1
5% SHINCARBON A6
0/8
03.
2×31
0
0mm」を用い,カラム温度90℃,インジェクタ温度1
8
0℃,
FID 温度18
0℃,キャリアガス N27
0kPa の条件で測定したときエタノール,メタノール,アセトニ
トリルの保持時間はそれぞれ4.
1分,
3.
4分,
6.
7分前後である。
*
9)アルミニウムイオン試験法
アルミニウム試験紙として,アドバンテック社「アルミチェック」を用いることができる。
*
1
0)ClDG 測定法
電気化学検出器を備えた液体クロマトグラフ法にて行う。カラムとしてダイオネクス社「CarboPak
PA-14×2
5
0mm」及び「CarboPak PA-1Guard4×5
0mm」を用い,移動相として,
2
2
0mmol/L 水酸
化ナトリウム水溶液,流量0.
2mL/分の条件で測定したときの ClDG の保持時間は27分前後である。
*
1
1)薄層クロマトグラフ法
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(20
0
9年改定)
」
の
Ⅲ.一般試験法 8薄層クロマトグラフ法に準じて行う。メタノール/2
5% アンモニア水混液(9:1)
を展開溶媒としてシリカゲル薄層クロマトグラフ法により試験を行うとき,Kryptofix2.
2.
2の Rf 値
は,0.
3
8前後である。
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4. 製造方法及び手順
1)製造に使用する装置
製造者名:○○○○株式会社
型式:FDG 合成装置○○○○
医療機器承認番号:○○○
2)各ロットに使用する試薬類
[18F]FDG 注射液の各ロットは以下の試薬を用いて製造する。
*
1)ここに示す放射能量より高い放射能量を用いて合成を行う場合には,フッ化物(18F)
イオンの放射能量
のみを変更し,他のものに関しては,変更しないこと。
*
2)院内調製する場合,注射用水3
5mL に対し,
1mol/L 水酸化ナトリウム水溶液1
5mL を溶解し,
0.
3mol/
L 水酸化ナトリウム水溶液を調製する。
*
3)院内調製する場合,注射用水2mL に対し,炭酸カリウム2
8mg を溶解し,炭酸カリウム水溶液を調製
する。アセトニトリル7mL に対し,クリプトフィックス2.
2.
22
0
0mg を溶解し調製する。使用時に,
炭酸カリウム水溶液0.
2mL とクリプトフィックス2.
2.
2/アセトニトリル溶液0.
7mL を調製する。
*
4)院内調製する場合,注射用水1
0
0mL に対し,炭酸カリウム1
6.
7g を溶解し,1mol/L 炭酸カリウム水
溶液を調製する。
3)製造方法
酸カリウ ム 溶 液 で 脱 離 し,反 応 器 に
3―1)[18O]H2O を含むターゲット水に陽子を
1
8
(p,n)
F の核反応により
照射して18O
1
8
[ F]フッ化物イオンを製する。
[18F]KF を導入する。
3―4)アセトニトリル溶液を加え,濃縮乾固
して溶媒を除く。
1
8
3―2)生成した担体無添加の[ F]フッ化物
3―5)マンノーストリフレートのアセトニト
イオンを QMA カートリッジに吸着さ
リル溶液を反応器に導入し,反応器を
せる。
密閉状態で加熱してフッ素化を行う。
1
8
3―3)QMA カートリッジに吸着させた[ F]
フッ化物 イ オ ン を Kryptofix2.
2.
2/炭
( 81 )
次いでアセトニトリルを濃縮乾固する。
3mol/L の水酸化ナトリウ
3―6)反応器に0.
300
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6
ムを加え,密閉状態で加熱した後,室
リークテスト,流量テスト等の準備動
温で攪拌しながら加水分解を行う。
作を確認する。
3―7)加水分解終了後,FDG 溶液を精製カラ
ム
(IC-Hカートリッジ,
PS-2カートリッジ,
4―7)製品バイアルの取り付け
品質管理装置の準備を行い,製品バ
アルミナカートリッジ)に通して精製
イアルをセットする。製品バイアルに
し,0.
22 µ m のメンブレンフィルタを
は,あらかじめ注射用水9mL を加える。
4―8)アクセル QMA ライトカートリッジの
通して注射用薬剤とする。
取り付け
4)製造手順
QMA カートリッジをカセットの所
1
8
4―1)[ F]フッ化物イオンの製造
定の位置に取り付ける。
1
8
[ O]H2O を含むターゲット水に陽子
1
8
1
8
(p,
n) F の核反応により
を照射して O
[18F]フッ化物イオンを製する。
4―9)精製カラムの取り付け
IC-H カートリッジ,PS-2カートリッ
ジ,アルミナカートリッジの順に接続
4―2)アクセル QMA ライトカートリッジの
調製
し,付属のエクステンションチューブ
を取り付け,カートリッジのリークテ
一昼夜以上消毒用エタノールに浸し
て保管した QMA カラムを取り出し,
QMA 活性化用試薬10mL を通し,注
ストを行う。リークの有無の確認後,
カートリッジホルダに設置する。
4―10)試薬の準備
試薬を各バイアルに注入し,試薬ト
射用水60mL で洗浄する。
4―3)IC-H カートリッジ,アルミナカートリ
ッジの洗浄
レイにセットする。また,市販の合成
キットを用いる場合は,各バイアルの
一昼夜以上消毒用エタノールに浸し
準 備 を 行 う。ク リ プ ト フ ィ ッ ク ス
て保管したカラムを取り出し,注射用
2.
2.
220mg に 炭 酸 カ リ ウ ム 溶 液
水各40mL で洗浄する。
0.
88mL と ア セ ト ニ ト リ ル0.
68mL
4―4)PS-2カートリッジの活性化
の混合液を溶解する。マンノーストリ
消毒用エタノール1
0mL で上記カラ
フレート20mg にアセトニトリル1.
3
ムを活性化した後,注射用水4
0mL で
mL を溶解する。アセトニトリル0.
7
洗浄する。
mL,0.
3mol/L 水 酸 化 ナ ト リ ウ ム4
4―5)合成カセットの準備
mL,注射用水5mL を準 備 す る。試
カセットを合成装置本体の所定の位
薬トレイにセットし,合成装置の所定
置にセットする。付属の反応器やター
の位置に載せる。カセットの各試薬用
1
8
ゲット水回収バイアルのセット, O―
配管に注射針を取り付け,各試薬バイ
水回収ライン,Waste ラインなどの配
アルに注入する。
4―11)合成直前の確認
管を接続し,取り付ける。
4―6)合成準備前確認
試薬の設置ができたらコンピュータ
合成装置及びカセットの動作確認を
行う。コンピュータの「Check before
preparation」画面のチェックリストで
準備状況を確認する。次いで「Preparation」画面で加圧テストや排気テスト,
( 82 )
の「Check before synthesis」画面の
チェックリストによりチェックを行う。
4―12)[18F]フッ化物イオンの回収と合成の
開始
コンピュータの回収開始ボタンを押
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
し,[18F]フッ化物イオンを回収する。
301
診断上の有益性が被ばくによる不利益を上回
回収終了後,合成開始ボタンを押す。
ると判断される場合にのみ投与することとし,
以後,上記製造方法の項に記した方法
投与量は最小限度にとどめること。
1
8
FDGを合成する。
に従って自動的に
[ F]
・高齢者への投与
4―13)[18F]FDG の回収
一般に高齢者では生理的機能が低下している
1
8
FDG 溶液は窒素
合成終了後,
[ F]
ガス圧により0.
22 µ m のメンブレン
ので,患者の状態を十分に観察しながら慎重に
投与すること。
フィルタを通して,製品バイアル中に
・妊婦,授乳婦等への投与
回収する。
妊婦または妊娠している可能性のある婦人及
4―14)品質検査
び授乳中の婦人には,原則として投与しないこ
上記製品の規格及び試験方法の項に
とが望ましい。診断上の有益性が被ばくによる
記した方法に従って品質検査を行う。
不利益を上回ると判断される場合のみ慎重に投
与すること。
5)合成終了後の手順
・小児への投与
5―1)合成装置の再利用部品以外の消耗品と
小児等に対する安全性は確立していない(現
原材料は全て単回使用とし,適切に廃
在までのところ,十分な臨床成績が得られてい
棄する。
ない)。診断上の有益性が被ばくによる不利益
5―2)合成終了後の後処理は取扱説明書に従
う。
を上回ると判断される場合のみ慎重に投与する
こと。
・その他
5. 製品の保管条件,有効期間
「放射性医薬品副作用事例調査報告
用時調製し,保存は行わない。
第16
報」
(日本アイソトープ協会医学・薬学部会放射
性医薬品安全性専門委員会)において自家製の
6. 用法・用量並びに使用上の注意または取扱
FDG 注射液による副作用は頭痛,悪寒を
[18F]
いの注意
訴え発疹を生じた1例が,第28報・第29報そ
1)用法・用量
れぞれで皮膚発赤・そう痒感2例が報告されて
120∼480MBq(2∼8MBq/kg 体重)を 静
いる。
脈内に投与する。その直後より撮像終了まで頻
2―2)取扱いの注意
回に動脈血または動脈,静脈血の採血を行い,
FDG 注射液による被ばくの防止・軽減
[18F]
血漿中の放射能濃度を測定する。更に血漿中の
のため,放射線障害防止法,医療法,FDG 合
ブドウ糖濃度も測定する。投与直後より連続的
成装置○○○○取扱説明書等に則り,取り扱う
な動態イメージングを行うか投与40∼90分後
こと。
より撮像する。なお,相対的なブドウ糖消費の
臓器分布を画像化することのみを目的とする場
7. 定期的/変更時の再バリデーション
合には,採血は不要である。測定原理等の詳細
1)製造設備
a.定期的な再バリデーション
は臨床編を参照すること。
製造管理,品質管理に用いる機器のうち,
2)使用上の注意または取扱いの注意
校正を必要とする機器について,定期的に
2―1)使用上の注意
校正を実施し,異常や経時変動がないこと,
・一般的注意
基準内であることを確認する。
( 83 )
302
RADIOISOTOPES
b.変更時の再バリデーション
Vol.
5
8,No.
6
て最低3ロット連続で試験を実施し,適正
製造・品質試験設備の更新,補修,改造
であることを確認した後,臨床に再使用す
などを実施し,対象設備が PET 薬剤の品
ることとする。また,変更に関わる記録を
質に重大な影響を及ぼす可能性のある場合
「製品標準書」にファイリングすること。
は,影響する可能性のある品質因子につい
2)製造プロセス
定温度・時間など)
,製造に用いる原材料
a.定期的な再バリデーション(日常的な
の規格,メーカー,製造工程そのものの変
バリデーション)
更などがあり,その変更が PET 薬剤の品
製造作業に用いる製造記録などにおいて,
質に重大な影響を及ぼす可能性のある場合
定められた手順,基準に従って製造工程管
は,影響する可能性のある品質因子につい
理を実施する。基準に従った結果を与えた
て最低3ロット連続で試験を実施し,適正
ロットのみを臨床に供する。
であることを確認した後,臨床に再使用す
b.変更時の再バリデーション
ることとする。また,変更に関わる記録を
製造工程において,そのパラメータ(設
3)品質
「製品標準書」にファイリングすること。
性のある変更を実施した場合は,実際の
a.定期的再バリデーション
PET 薬剤を用いた試験を最低3ロット連
定期的に実施日を設定して(1年に1回
続で実施し,変更前と同等の結果を得られ
以上)回顧的バリデーションを行う。実施
ることを確認した後変更すること。また,
法は,回顧的バリデーション実施時の直前
変更に関わる記録を「製品標準書」にファ
10製造分について品質試験(検定)項目
の平均,分散を求め,過去の蓄積データと
イリングすること。
c.定期的な品質試験の実施
の比較により,分散が大きくなっていない
一部の品質試験項目については,その品
か,平均値に傾向的な変動がないかを確認
質因子が比較的変動しにくいのに対して,
し,変動が認められた場合は調査対応する。
試験自体の困難さや,試験実施による試験
b.変更時の再バリデーション
者(検定者)の被ばくによる不利益を考慮
品質試験法(検定法)そのものや,試験
して,定期的な実施としている。これら試
に用いる機器,試薬の規格,メーカーなど
験項目については以下の表に基づいて,定
品質試験の結果に重大な影響を及ぼす可能
期的な試験を実施し,基準内であることを
( 84 )
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
確認する。あわせて過去の試験結果と照ら
303
る。
し合わせて,変動傾向がないことを確認す
添付書類
3.日本アイソトープ協会医学・薬学部会
Ⅰ.マンノーストリフレート分析証明書
ポジトロン核医学利用専門委員会核薬
1
8
Ⅱ.[ O]H2O 分析証明書
学ワーキンググループ,「ポジトロン核
Ⅲ―1.日本アイソトープ協会医学・薬学部会
医学利用専門委員会が成熟技術として
ポジトロン核医学利用専門委員会,ポ
認定した放射性薬剤の基準(2
009年改
ジトロン核医学利用専門委員会が成熟
定)」に 関 す る 参 考 資 料,RADIOISO-
技術として認定した放射性薬剤の基準
291-442
(2009)
TOPES ,
5
8,
(2009年 改 定),RADIOISOTOPES ,
5
8,
221-245
(2009)
Ⅳ.日本核医学会,院内製造された FDG を
用いて PET 検査を行うためのガイドラ
2.日本アイソトープ協会医学・薬学部会
ポジトロン核医学利用専門委員会核薬
学ワーキンググループ,
「ポジトロン核
イ ン(第2版),平 成17年10月,核 医
005)
学,
4
2(2
Ⅴ.平成16年度厚生労働省科学研究費補助
医学利用専門委員会が成熟技術として
金
認定した放射性薬剤の基準(2009年改
検査施設における放射線安全の確保に関
定)」に 関 す る 解 説,RADIOISOTOPES,
する研究班編,FDG―PET 検査における
247-289
(2
009)
5
8,
安全確保に関するガイドライン(2005)
( 85 )
医療技術評価総合研究 事 業
PET
304
RADIOISOTOPES
Vol.
5
8,No.
6
(ii) 塩酸を用いて加水分解する場合
製品標準書
1. 薬剤の名称,成分
1)名
称
2―デオキシ―2―フルオロ―D―グルコース(18F)注射液([18F]FDG 注射液)
2)成
分
*
1)注射用水10
0mL に対し,NaOH5
3
6mg,Na2HPO4 3.
2
0
4g を溶解して調製する。
2. 合成装置の医療機器承認番号
○○○○○社製
FDG 自動合成装置○○○○○
医療機器承認番号
3. 原料及び製品の規格及び試験方法
1)原材料の規格及び試験方法
a.有機化合物(主な原料)
*
1)マンノーストリフレートは ABX 社(M-1
0
3GE)より供給が可能である。
( 86 )
○○○○○
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
305
b.フッ化物(18F)イオンの製造に使用されるターゲット水(出発物質)並びにサイクロトロン
【ターゲット材料(出発物質)】
ターゲット材料([18O]水)の他の供給元を以下に示す。
【フッ化物(18F)イオンの製造に使用されるサイクロトロン】
製造者名:○○○○○株式会社
型式:○○○
c.製剤に含まれる他の成分
[18F]FDG 注射液の調製に以下の薬品等を添加する。
*
1)注射用水1
0
0mL に対し,NaOH5
3
6mg,Na2HPO4 3.
2
0
4g を溶解して調製する。
*
2)原材料は全て,肉眼により異常のないことを確認する。
( 87 )
306
RADIOISOTOPES
Vol.
5
8,No.
6
d.その他の試薬,溶剤,ガス,精製カラムないし精製物質等
*
1)原材料は全て,肉眼により異常のないことを確認する。
*
2)アルミナカートリッジとしては Waters 社(Sep-Pak plus Alumina N)及び相当品を用いることができる。
*
3)C1
8カートリッジとしては Waters 社(Sep-Pak plus tC18)及び相当品を用いることができる。
*
4)[18F]
FDG 合成用キットには,[18F]
FDG 合成用カセットの他,バイアル(8個)が含まれている。
*
5)滅菌用フィルタとしては MILLIPORE 社(Millex-GS)及び相当品を用いることができる。
*
6)製品バイアルの排気用フィルタとしては MILLIPORE 社(Dualex)及び相当品を用いることができる。
e.標準物質
以下の化合物を[18F]FDG 注射液の品質管理用として用いる。
*
1)2-Deoxy-2-fluoro-D-glucose は SIGMA 社(F-5
0
0
6)より供給が可能である。
*
2)2-Chloro-2-deoxy-D-glucose は ABX 社より供給が可能である。
( 88 )
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
307
2)製品の規格及び試験方法
2―1)製品の規格及び試験頻度
*
1)頻度
・初めて合成を行うとき,長期間使用しなかった後,製造工程・設備・装置を変更した場合,作業従事者を
変更した場合(たとえば,新しい作業者の参入)には,全ての検定を実施し,3ロット連続して適合して
いることを確認すること。
・毎合成後:毎回の合成後,検定を実施する。
・1回/年以上:1年に1回以上の頻度で,定期的に検定を実施する。
・毎合成後(事後)
:使用開始前に,3ロット連続した検定において適合するとき,これ以降の検定を事後検定
とする。ただし,不適合が生じた場合,その要因を排除し,3ロット連続した検定において適合すること。
*
2)担体を添加しない製法を用いて製し,検出器の感度の問題から製剤中に含まれる FDG の定量が困難な
場合は,毎合成時,比放射能としては理論値を用いる。ただし,1回/年以上は製品中に含まれる非放射
性 FDG の量を測定し,規格値以上であることを確認する。
( 89 )
308
RADIOISOTOPES
Vol.
5
8,No.
6
2―2)製品の試験方法
*
1)ガンマ線測定法
[18F]
FDG 注射液の放射能あるいはガンマ線スペクトルの測定は,あらかじめ標準線源によって校正さ
れたガンマ線スペクトロメータ,井戸型シンチレーション計数装置または井戸型電離箱式キャリブレータ
(またはキュリーメータ)により行うものとし,その方法は「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技
術として認定した放射性薬剤の基準(2
0
0
9年改定)
」
のⅢ.一般試験法 4ガンマ線測定法に準じる。
*
2)比放射能測定法
[18F]
FDG 注射液の一定量を精密に量り,放射能をガンマ線測定法*1)に従って定量する。電気化学検出
器を用いる液体クロマトグラフ法により FDG 標準液について検量線を作成する。[18F]
FDG 注射液の一
定量について同様な試験を行い,検量線より[18F]
FDG 注射液の FDG の量を求め,比放射能を算出する。
液体クロマトグラフ法において,カラムとしてダイオネクス社「CarboPak PA-14×2
5
0mm」及び「CarboPak PA-1Guard4×5
0mm」
を用い,移動相として2
2
0mmol/L 水酸化ナトリウム水溶液,流速0.
2mL/
分の条件で測定したときの FDG の保持時間は25分前後である。
ただし,担体を添加しない製法で製し,物質量の定量が困難な場合(キャリアフリー状態での合成の場
合)は,毎合成時には,比放射能としては理論値を用いる。
*
3)エンドトキシン試験法
比濁法によるエンドトキシン測定装置として,和光純薬工業「トキシノメーター」を用いることができ
る。また比色法によるエンドトキシン測定装置として,生化学工業の「ウェルリーダー SK60
3」を用い
ることができる。
( 90 )
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
309
*
4)血液培養システム
血液培養システムによる無菌試験法は,「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した
放射性薬剤の基準(2
0
0
9年改定)
」
のⅢ.一般試験法 1
1無菌試験法に準じて行う。
血液培養システムによる無菌試験法では,細菌の代謝産物であるガス状化合物によって生じる培養ボト
ルの内圧上昇を,培養ボトルと細い針で接続されたグロスシグナルへの培養液の流入で観察し,試料中の
細菌の有無を判定する。
本法には,オクソイド社血液培養システム「シグナル」を用いることができる。
*
5)ラジオ薄層クロマトグラフ法
アセトニトリル/水混液(95:5)を展開溶媒としてシリカゲル薄層クロマトグラフ法により試験を行う
とき,FDG の Rf 値は,
0.
4前後である。また,シリカゲル薄層を使用し,
0.
1vol%のトリエチルアミンを
含むメタノールを展開溶媒として試験を行うとき,FDG の Rf 値は,0.
6前後である。
*
6)ラジオ液体クロマトグラフ法
µ Bondapak carbohydrate(日本ウォーターズ社)を充填した φ 3.
9mm×3
0cm のカラムを使用し,
アセトニトリル/水混液(8
5:1
5)を移動相として流速1mL/分で溶出したとき,FDG は約6.
5分の位置
に溶出される。
*
7)ガスクロマトグラフ法
水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフ法にて測定する。カラムとして島津製作所「TSG-1
1
5% SHINCARBON A6
0/8
03.
2×31
0
0mm」を用い,カラム温度90℃,インジェクタ温度1
8
0℃,FID
温度1
8
0℃,キャリアガス N27
0kPa の条件で測定したときのエタノール,メタノール,アセトニトリル
の保持時間はそれぞれ,
4.
1分,
3.
4分,
6.
7分前後である。
*
8)アルミニウムイオン試験法
アルミニウムイオン試験紙として,アドバンテック社「アルミチェック」を用いることができる。
*
9)ClDG 測定法
電気化学検出器を備えた液体クロマトグラフ法にて行う。カラムとしてダイオネクス社「CarboPak PA-1
4×2
5
0mm」及び「CarboPak PA-1Guard4×5
0mm」を用い,移動相として22
0mmol/L 水酸化ナトリ
ウム水溶液,流速0.
2mL/分の条件で測定したときの ClDG の保持時間は27分前後である。
4. 製造方法及び手順
1)製造に使用する装置
製造者名:○○○○○○社
型式:○○○○○○
医療機器承認番号:○○○○○
2)各ロットに使用する試薬類
[18F]FDG 注射液の各ロットは以下の試薬を用いて製造される。
( 91 )
310
RADIOISOTOPES
Vol.
5
8,No.
6
*
1)ここに示すより,より高放射能量を用いて合成を行う場合には,フッ化物(18F)イオンの放射能量の
みを変更し,他のものに関しては,変更しないこと。
*
2)注射用水10
0mL に対し,NaOH5
3
6mg,Na2HPO4 3.
2
0
4g を溶解し,中和用緩衝液を調製する。
注射用水100mL に対し,NaOH5
36mg,
3)製造方法
1
8
3―1)[ O]H2O を含むターゲット水に陽子を
1
8
1
8
1
8
(p,n) F の核反応により[ F]
照射して O
Na2HPO4 3.
204g を溶解し,中和用緩衝
液を調製する。
4―2)[18F]フッ化物イオンの製造
フッ化物イオンを製する。
3―2)生成した担体無添加の[18F]フッ化物
イオンを4―(4―メチルピペリジニル)ピリジ
ニウム基を有する樹脂に吸着させる。
[18O]H2O を含むターゲット水に陽子を
1
8
(p,
n)
F の核反応により[18F]
照射して18O
フッ化物イオンを製する。
3―3)無水アセトニトリルにより水分を除去
後,無水アセトニトリルに溶解した1,
3,
4,
6―テトラ―O ―アセチル―2―O ―トリフル オ
4―3)Sep-Pak Plus tC18,Sep-Pak Alumina N
カートリッジカラムの活性化
消毒用エタノールで上記カラムを活性化
ロメタンスルフォニル― β ―D―マンノピラノ
した後,注射用水で洗浄する。
ース(マンノーストリフレート)を加えて
4―4)[18F]FDG 合成用キットの準備
付属のシリンジ(6本)をカセットにセ
反応させる。
3―4)得られたフルオロテトラアセチルグル
ットする。また,付属のバイアルにアセト
コピラノースを塩酸で加水分解し,中和用
ニトリル(4mL),
1mol/L 塩酸(2mL),
緩衝液で中和する。
中和用緩衝液(10mL)を入れ,カセット
8,Sep-Pak Alumina
3―5)Sep-Pak Plus tC1
に取り付ける。マンノーストリフレート
N カートリッジカラムにより不純物を分離
(30mg)のバイアルをカセットに取り付
除去した後,0.
22 µ m のメンブ レ ン フ ィ
ルタを通して注射薬剤の製法により製する。
ける。
FDG 合成用カセットの取り付け
4―5)[18F]
(LOAD)
4)製造手順
Sep-Pak Plus tC1
8,Sep-Pak Alumina N
4―1)中和用緩衝液を調製
カートリッジカラム,その他の配管を取り
( 92 )
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
311
付け,[18F]
FDG 合成用カセットを合成装
2―1)使用上の注意
置にセット,LOAD ボタンを押す。自動
・一般的注意
的にセットアップが行われレディーランプ
診断上の有益性が被ばくによる不利益を上回
が点灯する。
ると判断される場合にのみ投与することとし,
フッ化物イオンの回収と合成の開始
4―6)[18F]
投与量は最小限度にとどめること。
1
8
[ F]フッ化物イオンを回収し,合成開
・高齢者への投与
始ボタンを押す。以後,上記製造方法の項
1
8
一般に高齢者では生理的機能が低下している
に記した方法に従って自動的に[ F]FDG
ので,患者の状態を十分に観察しながら慎重に
が合成される。
投与すること。
1
8
4―7)[ F]FDG の回収
・妊婦,授乳婦等への投与
1
8
FDG 溶液は窒素ガス
合成終了後,[ F]
妊婦または妊娠している可能性のある婦人及
圧により0.
22 µ m のメンブレンフィルタ
び授乳中の婦人には,原則として投与しないこ
を通して,あらかじめ注射用水(1
2∼13
とが望ましい。診断上の有益性が被ばくによる
mL)を加えた滅菌バイアル中に回収され
不利益を上回ると判断される場合のみ慎重に投
る。
与すること。
4―8)品質検査
・小児への投与
上記製品の規格及び試験方法の項に記し
た方法に従って品質検査を行う。
小児等に対する安全性は確立していない(現
在までのところ,十分な臨床成績が得られてい
ない)。診断上の有益性が被ばくによる不利益
5)合成終了後の手順
を上回ると判断される場合のみ慎重に投与する
原材料は単回使用とし,適切に廃棄する。
こと。
・その他
5. 製品の保管条件,有効期間
「放射性医薬品副作用事例調査報告
用時調製し,保存は行わない。
第16
報」
(日本アイソトープ協会医学・薬学部会放射
性医薬品安全性専門委員会)において自家製の
6. 用法・用量並びに使用上の注意または取扱
FDG 注射液による副作用は頭痛,悪寒を
[18F]
いの注意
訴え発疹を生じた1例が,第28報・第29報そ
1)用法・用量
れぞれで皮膚発赤・そう痒感2例が報告されて
120∼480MBq(2∼8MBq/kg 体重)を 静
いる。
2―2)取扱いの注意
脈内に投与する。その直後より撮像終了まで頻
回に動脈血または動脈化静脈血の採血を行い,
FDG 注射液による被ばくの防止・
[18F]
血漿中の放射能濃度を測定する。更に血漿中の
軽減のため,放射線障害防止法,医療法等
ブドウ糖濃度も測定する。投与直後より連続的
に則り,取り扱うこと。
な動態イメージングを行うか投与40∼90分後
より撮像する。なお,相対的なブドウ糖消費の
7. 定期的/変更時の再バリデーション
臓器分布を画像化することのみを目的とする場
1)製造設備
合には,採血は不要である。測定原理等の詳細
a.定期的な再バリデーション
製造管理,品質管理に用いる機器のうち,
は臨床編を参照すること。
校正を必要とする機器について,定期的に
校正を実施し,異常や経時変動がないこと,
2)使用上の注意または取扱いの注意
( 93 )
312
RADIOISOTOPES
Vol.
5
8,No.
6
基準内であることを確認する。
具体例
b.変更時の再バリデーション
て最低連続3ロットの試験を実施し,適正
製造・品質試験設備の更新,補修,改造
であることを確認した後,臨床に再使用す
などを実施し,対象設備が PET 薬剤の品
ることとする。また,変更に関わる記録を
質に重大な影響を及ぼす可能性のある場合
製品標準書にファイリングすること。
は,影響する可能性のある品質因子につい
具体例
2)製造プロセス
定温度・時間など)
,製造に用いる原材料
a.定期的な再バリデーション(日常的なバ
の規格,メーカー,製造工程そのものの変
リデーション)
更などがあり,その変更が PET 薬剤の品
製造作業に用いる製造記録などにおいて,
質に重大な影響を及ぼす可能性のある場合
定められた手順,基準に従って製造工程管
は,影響する可能性のある品質因子につい
理を実施する。基準に従った結果を与えた
て最低連続3ロットの試験を実施し,適正
ロットのみを臨床に供する。
であることを確認した後,臨床に再使用す
b.変更時の再バリデーション
ることとする。また,変更に関わる記録を
製造工程において,そのパラメータ(設
製品標準書にファイリングすること。
具体例
3)品質
の比較により,分散が大きくなっていない
a.定期的再バリデーション
か,平均値に傾向的な変動がないかを確認
定期的に実施日を設定して(1年に1回
以上)回顧的バリデーションを行う。実施
し,変動が認められた場合は調査対応する。
b.変更時の再バリデーション
法は,回顧的バリデーション実施時の直前
品質試験法(検定法)そのものや,試験
10製造分について品質試験(検定)項目
に用いる機器,試薬の規格,メーカーなど
の平均,分散を求め,過去の蓄積データと
品質試験の結果に重大な影響を及ぼす可能
( 94 )
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
313
性のある変更を実施した場合は,実際の
質因子が比較的変動しにくいのに対して,
PET 薬剤を用いた試験を最低連続3ロッ
試験自体の困難さや,試験実施による試験
ト実施し,変更前と同等の結果を与えるこ
者(検定者)の被ばくによる不利益を考慮し
とを確認した後変更すること。また,変更
て,定期的な実施としている。これら試験
に関わる記録を製品標準書にファイリング
項目については以下の表に基づいて,定期
すること。
的な試験を実施し,基準内であることを確
c.定期的な品質試験の実施
認する。あわせて過去の試験結果と照らし
一部の品質試験項目については,その品
合わせて,変動傾向がないことを確認する。
2.ClDG 分析証明書
添付書類
3.エタノール分析証明書
Ⅰ.マンノーストリフレート分析証明書
1
8
Ⅱ.[ O]H2O 分析証明書
4.メタノール分析証明書
1
8
Ⅲ.[ O]H2O 分析手順書
5.CH3CN 分析証明書
Ⅳ―1.Na2HPO4 分析証明書
Ⅵ.日本アイソトープ協会医学・薬学部会ポ
2.NaOH 分析証明書
ジトロン核医学利用専門委員会,
「ポジ
3.1mol/L HCl 分析証明書
トロン核医学利用専門委員会が成熟技術
4.CH3CN 分析証明書
として認定した放射性薬剤の基準(2009
5.アルミナカートリッジ分析証明書
221-245
年改定)
」,RADIOISOTOPES ,
5
8,
(2009)
6.C18カートリッジ分析証明書
1
8
7.[ F]FDG 合成用キット分析証明書
日本核医学会,院内製造された FDG を
8.滅菌バイアル分析証明書
用いて PET 検査を行うためのガイドラ
Ⅴ―1.FDG 分析証明書
イン第2版,平成17年10月,核医学,
4
2
(2005)
(2) アンモニア(13N)注射液
製品標準書
1. 薬剤の名称,成分
1)名称
NH3 注射液)
アンモニア(13N)注射液([13N]
2)成分
( 95 )
314
RADIOISOTOPES
Vol.
5
8,No.
6
2. 合成装置の医療機器承認番号
○○○○○○社製
アンモニア合成装置○○○○
医療機器承認番号:○○○○
3. 原材料及び製品の規格及び試験方法
1)原材料の規格及び試験方法
a.アンモニア(13N)の製造に使用するターゲット水(出発物質及び添加物質)並びにサイクロトロン
【ターゲット水*1)(出発物質)】
*
1)ターゲット水は受入れ基準を満たした相当品を用いることができる。
【ターゲット水*1)(添加物質)】
*
1)ターゲット水は受入れ基準を満たした相当品を用いることができる。
( 96 )
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
【アンモニア(13N)の製造に使用するサイクロトロン】
製造者名:○○○○○○株式会社
型式:○○○○
b.製剤に含まれる他の成分
アンモニア(13N)注射液の調製に以下の薬品を添加する。
*
1)原材料は,肉眼により異常のないことを確認する。
c.合成に使用する試薬,カラム,消耗品,交換部品,ガス
*
1)原材料は全て,肉眼により異常のないことを確認する。
*
2)イオン交換樹脂は Waters 社(Sep-Pak Plus Accell CM)を用いることができる。
*
3)滅菌用フィルタは MILLIPORE 社(Millex-GS)を用いることができる。
*
4)製品バイアルの排気用フィルタは MILLIPORE 社(Dualex)を用いることができる。
*
5)製品バイアルは,日本薬局方に従って滅菌処理を行ったものを用いる。
( 97 )
315
316
RADIOISOTOPES
Vol.
5
8,No.
6
2)製品の規格及び試験方法
2―1)製品の規格及び試験頻度
*
1)頻度
・初めて合成を行うとき,長期間使用しなかった後,製造工程・設備・装置を変更した場合,作業従事者を
変更した場合(たとえば,新しい作業者の参入)には,全ての検定を実施し,3ロット連続して適合して
いることを確認する。
・使用日ごとに1回:[13N]
アンモニア薬剤は短期間で放射能が減衰する(半減期は約10分)ため,本装
置で合成された[13N]
アンモニア薬剤は直ちに被検者に投与される必要がある。すなわち,被検者に使用
する[13N]
アンモニア薬剤を合成ごとの全てについて検定を行うことは現実的には不可能である。
したがって,頻度の「使用日ごとに1回」については,現実的方法として,実際に被検者に投与される
1
3
[ N]
アンモニア薬剤を合成する日の最初に,試験的に[13N]
アンモニア薬剤を1回合成(検定合成)し,
これを検定することとする。
・1回/年以上:1年に1回以上の頻度で,定期的に検定を実施する。
・使用日ごとに1回(事後)
:使用開始前に,3ロット連続した検定において適合するとき,これ以降の検
定を事後検定とする。ただし,不適合が生じた場合,その要因を排除し,3ロット連続した検定において
適合することを確認する。
( 98 )
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
317
2―2)製品の試験方法
*
1)ガンマ線測定法
[13N]
アンモニア薬剤の放射能あるいはガンマ線スペクトルの測定は,あらかじめ標準線源によって校
正されたガンマ線スペクトロメータ,井戸型シンチレーション計数装置または井戸型電離箱式キャリブレ
ータ(またはキュリーメータ)により行うものとし,その方法は「ポジトロン核医学利用専門委員会が成
熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2
0
0
9年改定)
」
のⅢ.一般試験法 4ガンマ線測定法に準じる。
*
2)エンドトキシン試験法
比濁法によるエンドトキシン測定装置として,和光純薬工業「トキシノメーター」を用いることができ
る。また比色法によるエンドトキシン測定装置として,生化学工業の「ウェルリーダー SK60
3」を用い
ることができる。
*
3)血液培養システム
血液培養システムによる無菌試験法は,「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した
放射性薬剤の基準(2
0
0
9年改定)
」
のⅢ.一般試験法 1
1無菌試験法に準じて行う。
血液培養システムによる無菌試験法では,細菌の代謝産物であるガス状化合物によって生じる培養ボト
ルの内圧上昇を,培養ボトルと細い針で接続されたグロスシグナルへの培養液の流入で観察し,試料中の
細菌の有無を判定する。
本法には,オクソイド社血液培養システム「シグナル」を用いることができる。
( 99 )
318
RADIOISOTOPES
Vol.
5
8,No.
6
*
4)pH 試験紙
pH 試験紙には,Whatman 社「Type CF」及び相当品を用いることができる。
*
5)ラジオ液体クロマトグラフ法
カラムとして島津製作所製 Shim-Pak(内径3.
9mm×長さ1
5
0mm)を使用し,室温で5mmol/L 硝酸
を移動相とするとき,[13N]
アンモニアの保持容量は4.
5mL 前後である。また,カラムとしてウォータ
ーズ社製 Nova-Pak C18(内径3.
9mm×長さ1
5
0mm)を使用し,室温で5mmol/L PIC B-8・アセトニ
トリル(4
0:6
0)を移動相とするとき,[13N]
アンモニアの保持容量は1.
2
5mL 前後である。
*
6)ホルムアルデヒド呈色試薬
ホルムアルデヒド呈色反応試薬として,共立理化学研究所製パックテストを使用することができる。
4.[13N]アンモニアの製造方法及び手順
1)製造に使用する装置
製造者名:○○○○株式会社
型式:アンモニア合成装置○○○
医療機器承認番号:○○○
2)各ロットに使用する試薬類
[13N]アンモニアは以下の試薬類を用いて製造される。
1)注射用水50mL にエタノール29µ L を添加し,十分混和する。
*
*
2)ここに示す放射能量より高い放射能量を用いて合成を行う場合には,[13N]
アンモニアの放射能量のみ
を変更し,他のものに関しては,変更しないこと。
3)製造方法
3―5)洗浄後,生理食塩液によりイオン交換
3―1)10mmol/L エタノール水溶液をターゲ
樹脂に保持された[13N]アンモニアを
溶出し,0.
22 µ m のメンブレンフィル
ットボックスへ充填する。
3―2)エタノールを含む注射用水に陽子を照
タを通して注射用製剤とする。
1
3
(p,α )
N の核反応により,
射して16O
ターゲットボックス内で[13N]アンモ
4)製造手順
ニアを直接生成する。
4―1)ディスポーザブル部品の準備
1
3
3―3)回収液をイオン交換樹脂に通して[ N]
合成に使用する一日ごとの試薬,カ
アンモニアを保持させ,不純成分を通
ラム,消耗品,再利用部品を準備する。
過させる。
イオン交換樹脂は消毒用エタノール,
3―4)イオン交換樹脂を注射用水で洗浄し,
注射用水の順に洗浄する。
4―2)合成装置の準備
残留する不純成分を洗い流す。
( 100 )
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
合成装置の所定の位置に試薬,カラ
319
原材料は全て一日ごとの使用とし,適
ム,消耗品,廃液バイアル,製品バイ
切に廃棄する。
6―2)合成終了後の後処理は取扱説明書に従
アル,ターゲット回収ラインを取り付
う。
ける。
4―3)合成前準備
パーソナルコンピュータよりイオン
5. 製品の保管条件,有効期間
用時調製し,保存は行わない。
交換樹脂のコンディショニングを実施
する。
生理食塩液20mL をイオン交換樹脂
6. 用法・用量並びに使用上の注意または取扱
いの注意
に通し,注射用水20mL で洗浄する。
4―4)ターゲット水の準備
1)用法・用量
10mmol/L エタノール水溶液をター
ゲットボックスへ充填する。
240∼4800MBq(4∼80MBq/kg 体重)を
静脈内に投与し,早期に撮像する。測定原理等
4―5)[13N]アンモニアの製造
の詳細は臨床編を参照すること。
エタノールを含む注射用水に陽子を
1
3
(p,α )
N の核反応によ
照射して,16O
2)使用上の注意または取扱いの注意
り,ターゲットボックス内で[13N]ア
2―1)使用上の注意
ンモニアを直接生成する。
・一般的注意
1
3
4―6)[ N]アンモニアの回収と合成
診断上の有益性が被ばくによる不利益を上
コンピュータの回収開始ボタンを押
回ると判断される場合にのみ投与することと
し,[13N]アンモニアを含むターゲット
し,投与量は最小限度にとどめること。
水を回収する。回収終了後,合成開始
・高齢者への投与
ボタンを押す。以後,上記製造方法の
一般に高齢者では生理的機能が低下してい
1
3
項に記した方法に従って自動的に[ N]
るので,患者の状態を十分に観察しながら慎
アンモニアを合成する。合成終了後,
重に投与すること。
1
3
[ N]アンモニア溶液は窒素ガス圧によ
・妊婦,授乳婦等への投与
り0.
22 µ m のメンブレンフィルタを通
妊婦または妊娠している可能性のある婦人
して,滅菌バイアル中に回収する。
及び授乳中の婦人には,原則として投与しな
4―7)合成終了後の後処理(連続合成を実施
いことが望ましい。診断上の有益性が被ばく
の場合)
による不利益を上回ると判断される場合のみ
繰り返し合成を実施する場合,生理
投与すること。
食塩液20mL をイオン交換樹脂に通し,
・小児への投与
注射用水20mL で洗浄する。
小児等に対する安全性は確立していない
(現在までのところ,十分な臨床成績が得ら
5)品質検査
れていない)
。診断上の有益性が被ばくによ
上記製品の規格及び試験方法の項に記し
た方法に従って品質検査を行う。
る不利益を上回ると判断される場合のみ慎重
に投与すること。
2―2)取扱いの注意
[13N]アンモニア注射液による被ばくの防
6)合成終了後の手順
6―1)合成装置の再利用部品以外の消耗品と
( 101 )
止・軽減のため,放射線障害防止法,医療法,
320
RADIOISOTOPES
アンモニア合成装置○○○○取扱説明書等に
則り,取り扱うこと。
Vol.
5
8,No.
6
a.定期的な再バリデーション
製造管理,品質管理に用いる機器のうち,
校正を必要とする機器について,定期的に校
7. 定期的/変更時の再バリデーション
正を実施し,異常や経時変動がないこと,基
1)製造設備
準内であることを確認する。
b.変更時の再バリデーション
ロット連続で試験を実施し,適正であること
製造・品質試験設備の更新,補修,改造な
を確認した後,臨床に再使用することとする。
どを実施し,対象設備が PET 薬剤の品質に
また,変更に関わる記録を「製品標準書」に
重大な影響を及ぼす可能性のある場合は,影
ファイリングすること。
響する可能性のある品質因子について最低3
2)製造プロセス
温度・時間など)
,製造に用いる原材料の規
a.定期的な再バリデーション(日常的なバ
格,メーカー,製造工程そのものの変更など
リデーション)
があり,その変更が PET 薬剤の品質に重大
製造作業に用いる製造記録などにおいて,
な影響を及ぼす可能性のある場合は,影響す
定められた手順,基準に従って製造工程管理
る可能性のある品質因子について最低3ロッ
を実施する。基準に従った結果を与えたロッ
ト連続で試験を実施し,適正であることを確
トのみを臨床に供する。
認した後,臨床に再使用することとする。ま
b.変更時の再バリデーション
た,変更に関わる記録を「製品標準書」にファ
製造工程において,そのパラメータ(設定
イリングすること。
3)品質
的な変動がないかを確認し,変動が認められ
a.定期的再バリデーション
た場合は調査対応する。
定期的に実施日を設定して(1年に1回以
上)回顧的バリデーションを行う。実施法は,
b.変更時の再バリデーション
品質試験法(検定法)そのものや,試験に
回顧的バリデーション実施時の直前1
0製造
用いる機器,試薬の規格,メーカーなど品質
分について品質試験(検定)項目の平均,分
試験の結果に重大な影響を及ぼす可能性のあ
散を求め,過去の蓄積データとの比較により,
る変更を実施した場合は,実際の PET 薬剤
分散が大きくなっていないか,平均値に傾向
を用いた試験を最低3ロット連続で実施し,
( 102 )
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
321
変更前と同等の結果を得られることを確認し
定者)の被ばくによる不利益を考慮して,定
た後変更すること。また,変更に関わる記録
期的な実施としている。これら試験項目につ
を「製品標準書」にファイリングすること。
いては以下の表に基づいて,定期的な試験を
c.定期的な品質試験の実施
実施し,基準内であることを確認する。あわ
一部の品質試験項目については,その品質
因子が比較的変動しにくいのに対して,試験
せて過去の試験結果と照らし合わせて,変動
傾向がないことを確認する。
自体の困難さや,試験実施による試験者(検
添付書類
キンググループ,
「ポジトロン核医学利用
1.日本アイソトープ協会医学・薬学部会ポ
専門委員会が成熟技術として認定した放射
ジトロン核医学利用専門委員会,ポジトロ
性薬剤の基準(2
009年改定)」に関する参
ン核医学利用専門委員会が成熟技術として
2
9
14
-4
2
(2
0
0
9)
考資料,
RADIOISOTOPES,58,
認定した放射性薬剤の基準(2
009年改定)
,
4.日本核医学会,院内製造された FDG を
221-245
(2009)
RADIOISOTOPES ,
5
8,
用いて PET 検査を行うためのガイドライ
2.日本アイソトープ協会医学・薬学部会ポ
ン(第2版),平成17年10月,核医学,
4
2
(2005)
ジトロン核医学利用専門委員会核薬学ワー
キンググループ,
「ポジトロン核医学利用
5.平成16年度厚生労働省科学研究費補助金
専門委員会が成熟技術として認定した放射
医療技術評価総合研究事業
性薬剤の基準(2
009年改定)」に関する解
設における放射線安全の確保に関する研究
247-289
(2009)
説,RADIOISOTOPES ,
5
8,
班編,FDG―PET 検査における安全確保に
3.日本アイソトープ協会医学・薬学部会ポ
関するガイドライン(2005)
ジトロン核医学利用専門委員会核薬学ワー
(3)水(15O)注射液
製品標準書
1. 薬剤の名称,成分
1)名称:水(15O)注射液(H215O 注射液)
2)成分
2. 合成装置の医療機器承認番号
○○○○○○○社製
○○型水注射液合成装置
3. 原材料及び製品の規格及び試験方法
( 103 )
医療機器承認番号:○○○○○
PET 検査施
322
RADIOISOTOPES
Vol.
5
8,No.
6
1)原材料の規格及び試験方法
a.[15O]酸素ガスの製造に使用する,ターゲットガス(出発物質)並びにサイクロトロン
【ターゲットガス(出発物質)】
*
1)ターゲットガスは受入れ基準を満たした相当品を用いることができる。
【[15O]酸素ガスの製造に使用するサイクロトロン】
製造者名:○○○○○○株式会社
型式:○○○○
b.製剤に含まれる他の成分
[15O]水注射液の調製に以下の薬品を添加する。
*
1)原材料は,肉眼により異常のないことを確認する。
c.[15O]酸素ガス,[15O]水合成に使用する消耗品*1)
*
1)通常,[15O]
酸素ガスの製造は,○○○○○○社製「短寿命 RI 標識化合物自動合成システム(○○○○)」
(医療機器承認番号○○○○)のガス状標識化合物自動合成装置を用いる。
*
2)消耗品は受入れ基準を満たした相当品を用いることができる。
*
3)原材料は,肉眼により異常のないことを確認する。
( 104 )
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
d.[15O]水捕集部に使用する消耗品,再利用部品
*
1)原材料は全て,肉眼により異常のないことを確認する。
*
2)バイアル瓶は,日本薬局方に従って滅菌処理を行ったものを用いる。
e.[15O]水注入部に使用する消耗品
*
1)原材料は全て,肉眼により異常のないことを確認する。
( 105 )
323
324
RADIOISOTOPES
Vol.
5
8,No.
6
2)製品の規格及び試験方法
2―1)製品の規格及び試験頻度
*
1)頻度
・初めて合成を行うとき,長期間使用しなかった後,製造工程・設備・装置を変更した場合,作業従事者を
変更した場合及び使用時の検定で不適合が生じた場合,全項目の検定を実施し,3ロット連続して適合し
ていることを確認する。
・被検者ごとに1回:被検者に対する1回の PET 検査では,多くの場合が複数回のカメラ撮影を行うこと
になる。[15O]
水注射液は短時間で放射能が減衰する(半減期は約2分)ため,これら一連のカメラ撮影
では,その都度,放射性薬剤[15O]
水注射液を被検者に投与しなければならない。しかも,短時間に放射
能が減衰するため,本装置で合成された[15O]
水注射液は直ちに被検者に投与される必要がある。すなわ
ち,被検者に使用する[15O]
水注射液を合成ごとの全てについて検定を行うことは現実的には不可能と思
われる。
したがって,頻度の「各被検者ごとに1回」については,現実的方法として,一人の被検者の検査(一
連のカメラ撮影)時に実際に被検者に投与される[15O]
水注射液を合成する直前に,試験的に[15O]
水注
射液を1回合成(検定合成)し,これを検定することとする。
・被検者ごとに1回(事後)
:使用開始前に,3ロット連続した検定において適合するとき,これ以降の検
定を事後検定とする。ただし,不適合が生じた場合,その要因を排除し,3ロット連続した検定において
適合することを確認する。
・1回/年以上:1年に1回以上の頻度で,定期的に検定を実施する。
( 106 )
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
325
2―2)製品の試験方法
*
1)ガンマ線測定法
[15O]
水注射液の放射能あるいはガンマ線スペクトルの測定は,あらかじめ標準線源によって校正され
たガンマ線スペクトロメータ,井戸型シンチレーション計数装置または井戸型電離箱式放射能計測器によ
り行うものとし,その方法は「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の
基準(2
0
0
9年改定)
」
のⅢ.一般試験法 4ガンマ線測定法に準じる。
*
2)エンドトキシン試験法
比濁法によるエンドトキシン測定装置として,和光純薬工業「トキシノメーター」を用いることができ
る。この場合,最低4
0分の観察を行う。また比色法によるエンドトキシン測定装置として,生化学工業
の「ウェルリーダー SK6
0
3」を用いることができる。
*
3)血液培養システム
血液培養システムによる無菌試験法は,「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した
放射性薬剤の基準(2
0
0
9年改定)
」
のⅢ.一般試験法 1
1無菌試験法に準じて行う。
血液培養システムによる無菌試験法では,細菌の代謝産物であるガス状化合物によって生じる培養ボト
ルの内圧上昇を,培養ボトルと細い針で接続されたグロスシグナルへの培養液の流入で観察し,試料中の
細菌の有無を判定する。
本法には,オクソイド社血液培養システム「シグナル」を用いることができる。
*
4)pH 試験紙
pH 試験紙には,Whatman 社「Type CF」及び相当品を用いることができる。
( 107 )
326
RADIOISOTOPES
Vol.
5
8,No.
6
*
5)放射化学的純度分析
ガスクロマトグラフィ分析装置(熱伝導度検出器・放射能検出器)を使用し,
カラム
:液相として PEG2
0M あるいは Carbowax2
0M を使 用 し た キ ャ ピ ラ リ ー カ ラ ム
カラム温度
:4
0℃
注入部温度
:2
5
0℃
検出部温度
:2
0
0℃
(0.
5
3mm×3
0m 相当)
サンプル注入量:5
0µ L
放射能ピークの99% 以上が[15O]
水によることを確認する。
4.[15O]水の合成及び回収,注入方法
1)合成及び回収,注入に使用する装置
製造者名:○○○○株式会社
型式:○○型水注射液合成装置
2)合成及び回収,注入方法
医療機器承認番号:○○○
1―4)準備運転
25∼0.
5% の酸素
2―1)高純度窒素ガスに0.
専用コントローラより1―2)と1―3)で
ガ ス を 添 加 し,重 陽 子 を 照 射 し て,
準備した,シリンジ,配管内の空気の追い
1
4
出し及びバブリングバイアルへの生理食塩
1
5
N
(d,n)
O の核反応により生成した15O2
をソーダライム及び活性炭カラムに通して
1
5
副生成物を除去し,
[ O]酸素ガスを製する。
1
5
2―2)製造した[ O]酸素ガスと水素を,白
液の導入を行う。準備運転は STEP1∼4
まであり,STEP1ではシリンジの空気追
い出し,STEP2ではバブリングバイアル
金を触媒として反応させ,生成された[15O]
に生理食塩液を満たす,STEP3では捕集
水をガラス容器に捕捉し,生理食塩液で回
部側の生理食塩液ラインの空気を抜く,
収して注射製剤とする。
STEP4では被検者への注入ラインを満た
1
5
2―3)回収した[ O]水を専用コントローラ
の操作画面より注入作業を行う。
す操作を行う。各ステップは目視による液
漏れ等の確認を行う。
1―5)前合成(コールド確認)
1
5
5.[ O]水注射液合成装置の準備,使用手順
(操作手順も含む)
状標識化合物自動合成装置からターゲット
1)準備,使用手順
ガスを流す。パーソナルコンピュータの
1―1)ディスポーザブル部品の準備
1
5
準備終了後,コールド確認を行う。ガス
INJECTION CHECK の STEP を実行し,
1
5
[ O]水捕集部,[ O]水注入部に使用す
る消耗品,再利用部品を準備する。
バブリングされることを確かめる。
専用コントローラの操作画面の注入モー
1―2)[15O]水捕集部の準備
ド1∼5を実行する。モード1はバブリン
[15O]水捕集部の所定の位置にエクステ
グを停止し,
[15O]水をチューブに引き込
ンションチューブ,バイアル瓶,注射針,
む。モード2はチューブに引き込んだ[15O]
三方活栓,生理食塩液を取り付ける。
水をループに引く。モード3は注入を実行
1―3)[15O]水注入部の準備
する。モード4はシリンジに生理食塩液を
1
5
[ O]水注入部の所定の位置にエクステ
引く。モード5はバブリングバイアルに生
ンションチューブ,三方活栓,フィルタ,
理食塩液を入れる。注入モードが正常に動
注射針,シリンジ,生理食塩液を取り付ける。
作することを確認する。
( 108 )
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
1―6)検定合成
327
④放射能計測器表示部の放射能量が注入放射
前合成終了後,検定のための合成を行う。
能量まで減衰したら,注入(開始)キーを押
高純度窒素ガスに0.
25∼0.
5% の酸素ガ
1
4
す。所定の注入速度で被検者に注入される(注
1
5
(d,
n) O
スを添加し,
重陽子を照射して, N
入モード3)。
の核反応により15O を製し,ガス状標識化
臨床責任者は,注入している間に装置に不具
合物自動合成装置にて副生成物を除去し,
合が起こっていないことを観察し,注入が安全
1
5
[ O]酸素ガスを製する。
であることを確認する。
ガス状標識化合物自動合成装置から
注入終了後,自動的にバブリングバイアルに
[15O]水合成部に[15O]酸素ガ ス を 流 し,
生理食塩液が満たされ,再び,バブリングを開
パーソナルコンピュータから合成開始命令
5)。
始し,[15O]水が捕集される(注入モード4,
が専用コントローラに入ると[15O]酸素ガ
[15O]水 捕 集
スか ら[15O]水 を 合 成 す る。
7. 臨床の終了
部で蒸気状態の[15O]水をバブリング補集
臨床終了時は,終了キーを押すことで,終了
し,放射能値の上昇を確認し,必要量(400
モードに移行する。終了モードは,合成部を窒
MBq)の放射能に達したら注入モードを
素パージしながら,クールダウンを行う。
終了モード移行後は,サイクロトロンの照射
順番に実行する。モード3(静注)にてサ
ンプル瓶に[15O]水を注入し,検定に使用
を停止する。
する。静注終了後,速やかにモード4,
5を
実施する。
8. 臨床の中止
臨床責任者は,被検者の状態に変化が見られ
2)品質検査
た場合,また,
「6.臨床手順」に示す装置の動
上記製品の規格及び試験方法の項に記した方
作に異常が見られた場合には,直ちに検査を中
法に従って品質検査を行う。
止する。
6. 臨床手順
置を停止させ,直ちに被検者への注入ラインを
非常停止の場合は,非常停止ボタンを押し装
検定に適合すれば,注入画面に切り替え臨床
外す。
に進む。準備担当者と臨床検査担当者が異なる
場合には,臨床検査前に装置状態の引き継ぎを
9. 臨床終了後の後処理
1)[15O]水捕集部には,放射能が残留してい
行う。
臨床検査担当者は,準備が正常に行われたこ
るので,十分に減衰を待って(30分以上)
とと,注入モード3の条件が希望の値であるこ
から,器具の取り外し等を行う。実行前に,
とを確かめて,引き継ぐ。
安全のために放射線測定装置で残留放射能
臨床を実施するには,被検者への注入ライン
量を確認する。
2)合成装置の再利用部品以外の消耗品と原
を確保した後に,下記手順で実施する。
①準備画面で運転(注入)キーを押す。
材料は一日ごとの使用とし,適切に廃棄す
②注入画面が表示され,RI 製造量が増加す
る。ただし,投与ラインは被検者ごとに交
る(バブリング状態となる)。
換する。
③所定の製造量になれば,吸引(開始)キー
1
5
にて,放射能計測器内のループに[ O]水を
導く(注入モード1,
2)。
( 109 )
3)合成及び臨床終了後の後処理は取扱説明
書に従う。
328
RADIOISOTOPES
10.製品の保管条件,有効期間
Vol.
5
8,No.
6
重に投与すること。
用時調製し,保存は行わない。
・妊婦,授乳婦等への投与
妊婦または妊娠している可能性のある婦人
11.用法・用量並びに使用上の注意または取扱
及び授乳中の婦人には,原則として投与しな
いの注意
いことが望ましい。診断上の有益性が被ばく
1)用法・用量
による不利益を上回ると判断される場合のみ
<持続投与法>
慎重に投与すること。
120∼480MBq/min(2∼8MBq/kg 体重/
・小児への投与
min)を持続的に静脈内に投与し,組織での放
小児等に対する安全性は確立していない
射能が平衡に達してから撮像する。同時に動脈
(現在までのところ,十分な臨床成績が得ら
1
5
血中の O 濃度を測定する。測定原理等の詳細
れていない)。診断上の有益性が被ばくによ
は臨床編を参照すること。
る不利益を上回ると判断される場合のみ慎重
<一回投与法>
に投与すること。
2―2)取扱いの注意
480∼4800MBq(8∼80MBq/kg 体重)を
1回静注し,直後より適当な時間撮像する。こ
[15O]水注射液による被ばくの防止・軽減
の間投与直後より経時的に動脈血中の15O 濃度
のため,放射線障害防止法,医療法,
[15O]
を測定する。
水注射液合成装置取扱説明書等に則り,取り
扱うこと。
2)使用上の注意または取扱いの注意
2―1)使用上の注意
12.定期的/変更時の再バリデーション
・一般的注意
1)製造設備
診断上の有益性が被ばくによる不利益を上
回ると判断される場合にのみ投与することと
a.定期的な再バリデーション
製造管理,品質管理に用いる機器のうち,
し,投与量は最小限度にとどめること。
校正を必要とする機器について,定期的に校
・高齢者への投与
正を実施し,異常や経時変動がないこと,基
一般に高齢者では生理的機能が低下してい
準内であることを確認する。
るので,患者の状態を十分に観察しながら慎
b.変更時の再バリデーション
ロット連続で試験を実施し,適正であること
製造・品質試験設備の更新,補修,改造な
を確認した後,臨床に再使用することとする。
どを実施し,対象設備が PET 薬剤の品質に
また,変更に関わる記録を「製品標準書」に
重大な影響を及ぼす可能性のある場合は,影
ファイリングすること。
響する可能性のある品質因子について最低3
( 110 )
Jun.
2
0
0
9
「ポジトロン核医学利用専門委員会が成熟技術として認定した放射性薬剤の基準(2009年改定)」に関する参考資料
329
2)製造プロセス
温度・時間など)
,製造に用いる原材料の規
a.定期的な再バリデーション(日常的なバ
格,メーカー,製造工程そのものの変更など
リデーション)
があり,その変更が PET 薬剤の品質に重大
製造作業に用いる製造記録などにおいて,
な影響を及ぼす可能性のある場合は,影響す
定められた手順,基準に従って製造工程管理
る可能性のある品質因子について最低3ロッ
を実施する。基準に従った結果を与えたロッ
ト連続で試験を実施し,適正であることを確
トのみを臨床に供する。
認した後,臨床に再使用することとする。ま
b.変更時の再バリデーション
た,変更に関わる記録を「製品標準書」にファ
製造工程において,そのパラメータ(設定
イリングすること。
3)品質
を用いた試験を最低3ロット連続で実施し,
a.定期的再バリデーション
変更前と同等の結果を得られることを確認し
定期的に実施日を設定して(1年に1回以
た後変更すること。また,変更に関わる記録
上)回顧的バリデーションを行う。実施法は,
を「製品標準書」にファイリングすること。
回顧的バリデーション実施時の直前1
0製造
c.定期的な品質試験の実施
分について品質試験(検定)項目の平均,分
一部の品質試験項目については,その品質
散を求め,過去の蓄積データとの比較により,
因子が比較的変動しにくいのに対して,試験
分散が大きくなっていないか,平均値に傾向
自体の困難さや,試験実施による試験者(検
的な変動がないかを確認し,変動が認められ
定者)の被ばくによる不利益を考慮して,定
た場合は調査対応する。
期的な実施としている。これら試験項目につ
b.変更時の再バリデーション
いては以下の表に基づいて,定期的な試験を
品質試験法(検定法)そのものや,試験に
実施し,基準内であることを確認する。あわ
用いる機器,試薬の規格,メーカーなど品質
せて過去の試験結果と照らし合わせて,変動
試験の結果に重大な影響を及ぼす可能性のあ
傾向がないことを確認する。
る変更を実施した場合は,実際の PET 薬剤
( 111 )