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NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
日本海の流動数値シュミレーション「温度境界層の実測について」
Author(s)
市屋, 義幸; 中根, 重勝; 野中, 稀平; 栗須, 正登; 琴浦, 和樹
Citation
長崎大学工学部研究報告, (16), pp.19-26; 1981
Issue Date
1981-01
URL
http://hdl.handle.net/10069/23998
Right
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http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
1
9
長崎大学工学部研究報告第 1
6号 昭 和 5
6
年 1月
日本海の流動数値シュミレーション
「温度境界層の実測について」
*
**
勝登
重正
根須
中栗
*
*
***
幸平樹
義稀和
屋中浦
市野琴
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1
.緒画
度分布を調べる必要がある.温度分布は,そとに出入
我々は, 日本海の温海水及び冷海水の温度差による
する温度差のエネルギ、によって決まるが,そのエネノレ
エネノレギを利用する研究を進めている. とれを有効に
ギ、は,潮流及び海水の比重差などによって決まる.言
利用するためには,まず日本海の季節による海中の温
い換えれば潮流が海水の温度差によって決まるという
年1
0
月 1日受理
昭和 55
*機械工学科
料水産学部
***佐世保高専
20
日本海の流動数回シュミレーション
ことになる.そのため予備段階として昭和54年度に日
本海の潮流数値解析を行った.そして潮流の数値解析
PoτENTIAし MEτER
にエネルギの式を組合わせて,日本海の季節変化によ
る温度分布を調べたいと考えている.温度エネルギの
u
一隔一櫛一
流れは,エネルギの式によって決定される.・それを差
R3
旨
AφB
分に置き換えて計算するためには,温度境界条件が必
要となってくる.そのために,昭和54年度に東シナ海
R6
R1
!
PENぐ・
及び対馬海域において温度測定を行った.今回は境界
Q
R7
条件となるべき対馬海域とこの測定の予備段階として
〃
調査した東シナ海の両温度分布から,対馬海域におい
「
ては,エネルギを取り出せることがわかった.本報で
1
はまず,各海域での温度測定に関する方法と,実験結
L
果を述べ対馬海域の有意義性を示す.
’ 「 R2
晦“ 1
の
墜_」
ロ
2.実験測定装置
Fig.2 Circuit of XBT
水深により水温を測定するために,XBT水温記録
装置(以下「XBT装置」という,)を使用した.こ
れは,航行中の船から水温測定プローブ(以下「プロ
高精度である.また,
ーブ」という.)を投下し,海中の垂直温度分布を自
/S±0.7%である.
フ。ローブの落下速度は,6.31m
動的に測定し記録するものである.プローブを図.1
に示す.長さ21珈η,最:大子51㎜の大きさで流線形に
5.実験結果
5.1 東シナ海
我が研究室では,対馬海峡での本実験に先がけて,
水産学部の御協力により,予備実験を行った.昭和54
年6月29日∼7月4日の間実習船長崎丸に便乗させて
あ
9
一一
Elll,
\
1 ②
Fig.1
δ
画、
Probe(XBT)
もらい東シナ海での黒潮の海水温度を,10ケ所にわけ
て測定することができた.表.1に測定点の座標を示
す.本報告では,この中から2ケ所の地点を抜粋して
報告する.図.3の地図には盃1から妬10の測定した
座標を示し,図.4はその温度分布のグラフであり,
作られている.①は,サーミスタ抵抗であり水温の変
横軸が温度 縦軸が水深を表わす.駈1は,水深が
化を受信する.②は,プローブの重りであり材質は鉛
である.③は,2心になったφ0.1η加のニグロム線ケ
Table.1
Observational Position in the East
China Sea.
ーブルで長さ3000伽をコイル状に巻かれており,一端
はサーミスタ抵抗に接続され,他端は測定器に接続す
るようになっている.④は,羽根でコイル状に巻いた
TEST}
l
NO
POSITION
DEPTH
LATITUDE IL・NGITUDE
(M)
ケーブルが解ける時に,ねじれを戻しニクロム線の断
1
27.27.28N1
126−55.40E
1574
線を防止するためプローグを回転させながら落下する
2
27−29.55
126−55.40
1654
ように作られている.プローブを海中に落下させた時
3
28−03.2
126−45.5
804
のXBT装置の基本図は,図.2の通りで,噛 vローブ
4
28℃6.3
126−43.9
604
内のサーミスタRsの抵抗を一辺とするホイートスト
5
28−07.4
126−43.2
384
ンブリッジ回路を用いて,水温変化によるサーミスタ
6
28−07.9
126−43.1
292
7
31−23.2
126−26.1
8
32−16。6
128−40.0
9
32−07.7
128−58.2
10
32−07.4
129−17.4
86
544
558
404
抵抗の変化によって記録ペンをサーボアンプAと,9サ
ーボモータBを利用したサーボ回路で自動的に水温に
追従させている.XBT装置の性能は,温度指示範
囲が一2∼35℃であり,温度記録精度は,±0.1℃と
21
市名義幸・中根重勝・野中稀平・栗須正登・琴浦和樹
Table。2
_ぬ一\/フ垂
Tushima Straits.
KYロSYU
㌦
32。層
No.7
04
30。轟
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No,4
No 5
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No.2
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げ
o
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qりservational Position in the
TEST
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TIME
POSITION
LONGI−
LATITUDE TUDE
DEPTH
1
18:30
34−04.ON
130−41.5E
57(M)
2
19:00
34−10.7
130−35.1
77
3
19:30
34−14.6
130−27.7
87
4
20:00
34−19.0
130−20.4
97
5
20:30
34−23.6
130−13.9
100
6
21:00
34−28.0
130−06.8
110
7
21:30
34−32.6
130−00.6
112
8
22:00
34−37.6
129−54.2
111
9
22:30
34−41.9
129−47.7
112
10
23:00
34−45.6
129−40.2
97
11
23:30
34−49.6
129−33.2
80
12
23:40
34−50.8
129−31.0
106
13
23:50
34−52.3
129−28.5
139
14
24:00
34−53.6
129−26.7
164
15
24:10
34−55.2
129−24.6
219
16
24:20
34−56.7
129−22.6
181
17
24:30
34−58.0
129−20.6
130
18
01:00
35−01.8
129−13.5
100
130岬瓦
ユ28。E
Fig.3 0bservational Position in the East
China Sea
には,海中の温度分布を調べる必要があり,日本海の
10 20 :娩
10 20 ,30b
100
温度分布を調べるには,広範囲にわたり,時間と費用
がかかるため,』
葡ェが東シナ海から日本海へ流入する
入ロであり,シベリア地方の冷海水が到達していると
思われる下関と韓国の釜山とを結ぶ直線上の温度分布
を調べることにした.
300
3
表2は測定地点の座標を示し,図。5に●印で示し
ているのは,昭和54年9月5日に18ケ所にわけて,測定
した地点であり,○印は,昭和54年9月8日に14ケ所
500
m
NO,1 NO、8
にわけて,測定した地点を示している,図.6は,9月
5日に測定した温度分布であり,9月8日の温度分布
は,ほぼ9月5日のデータと同じ結果のため除くこと
Fig.4 Relation between Depth and Temp.
にする.図。7は,9月5日に測定した温度分布を等
in the East China Sea
温線で結んだ温度分布図である.図.7から言えるこ
とは,海面全体の温度は約24∼26℃とあまり変化がな
1,574肌と非常に深い地点での温度分布で,海面の温
いことがわかる.海底の温度は,水温100篇では,15
度は28.5℃,水深500肌では11。Cとなっており温度差
∼17℃となっており海面との温度差は9∼10℃あるこ
は17.5℃である.妬8は水深が544糀の地点での温度
とがわかる.しかし,測定点13∼18の水深が200批以
分布であり,海面温度は23.6℃で,水深500郷では
上と急激に深くなっている朝鮮海峡では,水深100糀
8.5℃であり,温度差は15.1℃が得られた.
から温度が急激に減少し,水深200彿で4℃まで下が
5.2 対馬海峡温度分布
東シナ海での水深100糀以下の温度減少とは,著しく
日本海の海洋温度差エネルギを有効に利用するため
異っていることがわかる.
っており温度差は,約20℃と大きくなっている.また
22
日本海の流動数値シュミレーション
● 554、9.5
REPuBLIc oF KoREA
15
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13
O S弘.9.8
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35。N
HONSYU
3牟N
KYUSYU
128rE
130。E
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Fig.5 0bservational Position in the Tushima Straits
4.考察,結論
は,4℃以下という莫大な冷海水が畜えられており,
日本海入ロの海水温度分布は,次のようなことがい
海面との温度差を利用すると充分なエネルギが得られ
える.黒潮が日本海へ流入するのは,普通水深100糀
ると考えられる.
までの海水だと思われる.海水表面の温度は黒潮の影
最後に,この研究において,御協力頂いた関釜フ・エ
響により広範囲に温度一定である.また水深100窩ま
リー(K.K)松岡氏,水産学部長崎丸の方々,当研究
では温度差は10℃までしか得られない.しかし朝鮮海
室,宇都,田中氏に謝意を表します.
峡の水深100?πから急激に温度が減少し,水深200肌で
4。Cになっている.したがって,水深100糀以下の海
参考文献
水は,黒潮が運んできたものではなく日本海の深海か
XBT水温記録装置(MK−2A)
ら流れ込んだものと思われる,
子会社鶴見精機
以上のセとから,日本海では,水深200伽以下に
取扱説明書株
市屋義幸・中根重勝・野中開平・栗須正登・田浦和樹
10
2σ
30。C 1 2 3℃ . 10 ’20
50
50 50
100
100 100
15
150 150
2
2 20
m
23
℃
m m
NOユ
’NO、2 NO、3
10 20 30・C IO 20 30℃ 10 20
5
30鷺
5 5
1
10 10
15
8σ 150
200
200 20
m
m m
NO、4
NO、5 ・”NO,6
量0 20
30℃’ 10 20 3℃ 10 2σ
50
50 5
100’
10 10
15
15 15
2
2 200
m 、 m
m
・NO。7
Fig.6
NO、8 NO,9
Relation between Depth and Temp. in the Tushima Straits
3ρ℃
24
日本海の流動数値シュミレーション
30℃ 10 20 .允
.鐙
50
50
5
100
1
r1
150.
15
15
2
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m
中
m
NOユ0
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lNO、12
NO、l1
110 20
C
重0 ・20
30℃
1
1
1・
1
15・
2
200’
20
1』
m
「rh
NO,15
10 20
m
NO,14
10 20.
3㏄’、
50
.NQ・15
10 20
30℃
50
1
1
10
15
!5
15
200
20
20
m
,℃
5
5
5
3ぴC
⑩
m
酪
NO.ユ6 NO、17 NO,18
Fig.6 Relation between Depth and Temp. in the Tushima Stralts
3◎℃
市屋義幸・中根重勝・野中稀平・栗須正登・琴浦和樹
25
KOREA
11即珈1勿ザ♀37,6 .4
50
100
〆フ、
グ
グ
葺
出
∩
150
200
m.
ダ
Fig.7 Temperature Distribution
KYUSYU
3
2 1