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一般論文
XMLとデータベースを活用したドキュメント制作システムの概要
Outline of Database/XML-based Document Production System
吉 田 樹 治,間 島 誠 也,大 橋 則 行
Shigeji
要
旨
Yoshida,
Seiya Majima,
Noriyuki Ohashi
ドキュメントの制作・管理作業に X M L ,データベース,自動組版の技術を
適用したシステムを開発した。このシステムでは,ドキュメントの構造と文章を分離
してデータベースで管理することで,複数のドキュメントで文章を共有することを可
能 に し て い る 。 ま た デ ー タ ベ ー ス に は 言 語 の 管 理 機 能 を 持 た せ て お り ,英 語 で 作 成 し
たドキュメントは,西語や仏語など他の言語で書き出すことができる。最終的には
データベースから文章を抽出し, X M L 形式で記述されたドキュメントを生成して, 自
動組版している。
Summary
This system has been developed to apply XML, database and automated layout tech-
nologies to document production and management. Using this system, the structure and text of a document are contained separately in a database, enabling content to be shared among several documents. The
database can also be used to manage multiple languages, generating Spanish, French and other languages
from an original English document. Finally, text can be extracted from the database, XML-tagged documents created, and page layout automated.
キ ー ワ ー ド : ドキュメント制作,取扱説明書,多言語展開,翻訳管理,X M L ,
データベース,自動組版
1.
まえがき
は 困 難 で あ る ( 修 正 が あ る 場 合 は ,そ れ ぞ
製品の複雑化・高機能化が進む中,取扱説明
れの取扱説明書で修正する必要がある) 。
書の制作フローにおいて,開発日程や品質を
・見た目( レイアウト) を整える組版作業に
キープしながら数多くの言語に同時展開してい
人手を介するため,一定の編集工数が必
く難しさには想像を上回るものがある。多くの
要である。
※1
・多言語に展開する場合は翻訳期間が必須
( D e s k T o p P u b l i s h i n g ) と称される制作方法で
であるが,翻訳依頼文章の抽出や取り込
は,次のような点が課題としてあげられる。
み作業にも手間がかかる。日程に重なり
制作会社で中心的で,広く普及している D T P
・個々の取扱説明書ごとにデータを作成す
るため,同じ機能の説明でも文章の共有
- 79 -
があるモデルでは二重翻訳になる傾向に
あり,翻訳資産を生かしきれない。
PIONEER R&D Vol.14 No.1
このような状況下での仕様変更や設計変更
である。
システム全体の構成を図 1 に示す。このシス
は,修正やチェック,文書の管理に,×言語数,
×展開モデル数の工数が必要となり,効率が良
テムは X M L ドキュメント制作アプリケーション
いとは言い難い。
と自動組版アプリケーションに分かれている。
X M L ドキュメント制作アプリケーションの役
そこで,文章の共有・再利用を促進するため
にデータベースを使用し,また組版作業を自動
割は大きく,
・DTD ※ 3 (Document Type Definition:文書
化するために X M L を利用したドキュメント制作
システムを開発した。
型定義 ) に 沿 っ て 構 造 を 組 み 立 て る 構 造 管
XML ※ 2 (eXtensible Markup Language)は,拡
理部
張性に優れた情報記述形式として注目されてお
・文章( コンテンツ) の状態や履歴をデータ
り,各業界団体でさまざまな取り組みが行われ
ベース化する文章管理部
ている。しかしドキュメント制作分野におい
・未翻訳の文章を翻訳依頼するために翻訳
て,構造化データという特徴を活かした既存ア
原稿の出力 / 入力を行う翻訳管理部
プリケーション利用例は,まだあまり見られな
・構造と文章を結びつけてドキュメントを
い。このため,X M L ドキュメントを制作するア
プリケーションの開発から着手した。
X M L 形式で出力する X M L 文書生成部
に分類される。
自動組版アプリケーションは生成された X M L
2. システムの構成
文書を組版し, 冊子という体裁に整える役割を
システムのねらいは,
持つ。
・構造や文章の共有,再利用
・翻訳コントロールの効率化
3. XMLドキュメント制作アプリケーション
・組版 ( レイアウト) 作業の自動化
図 2 に X M L ドキュメント制作アプリケーショ
・品質の均一化
ンの概念を示す。ドキュメントの構造とドキュ
自動組版アプリケ
ーション
データベースサーバ
組版サーバ
XML
ファイル生成
・整合性チェック
・抽出・合成・タグ付け
PDF
ファイル生成
・自動組版
西
文章
構造
画像
DTD
仏
英
XML
ファイル
PDF
ファイル
印刷依頼
翻訳依頼
INTERNET
制作担当
・原稿入力 ・構造編集
翻訳会社
・翻訳
XML
ドキュメント
制作アプリケ
ーション
図 1
PIONEER R&D Vol.14 No.1
システムの構成
- 80 -
印刷会社
・印刷
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㧦
5'%6+10
6+6.'
6:66':6+&6':64'801
6+6.'
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6:66':6+&6':64'801
6:66':6+&6':64'801
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2.
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2.
㧦
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ID
TEXT-00000957
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⧷
Use Only CDs that have either of the two Compact....
⷏
Sólo Utilice discos compactos que tengan una de......
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N'utilisez que les disques portant une des deux.........
੽
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⯗
Gebruik alleen CD's met een van de twee Compa.....
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図 2
X M L ドキュメント制作アプリケーションの概念
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メント内で使われている 1 つ 1 つの文章を分離
す。この機能により誤った要素の挿入を防ぐこ
して,データベースで管理する。構造データに
とができ,制作担当者が構造に精通していない
は実際に入る文章( X M L の規格でいう C D A T A ) の
場合でも均一化されたドキュメントの制作が可
代 わ り に ,文 章 の I D と 履 歴 番 号 を 持 た せ る こ
能になる。
とで文章データとリンク付けを行っている。
アシスト機能は,D T D の定義内容に情報を付
構造データをアプリケーションで開くと,左
加して独自形式でデータベースに登録すること
側にドキュメントの構造を表したツリー図,右
で実現している。さらにこの情報を利用して
側に文章実体を配置した編集画面が表示され
XPath ※ 4 (XML Path Language)の一部の指定を
る。制作担当者はこの編集画面を通して構造や
G U I 操 作 で 実 現 し て お り , 図 4 に 示 す よ う に,
文章の追加・修正・削除を行い,編集結果をデー
全ドキュメントを対象に,任意の階層を追った
タベースに保存する。
構造による検索が可能である。X P a t h は X M L の
ドキュメント内やドキュメント間では任意の
関連規格で,構造の一部を特定する際に使用さ
フォルダ( 要素) ごとにコピー&ペーストを行う
れる。例えば X P a t h では,セクションのタイト
が,構造データをコピーするだけで文章は 1 つ
ルが「C D の聞きかた」で下位階層の「解説」と
の I D を 参 照 す る た め ,複 数 ド キ ュ メ ン ト で 文
いう要素を抽出するのに,
章を共有している状態となる。
3.1
select="SECTION[TITLE='CDの聞きかた']//解説"
構造管理
という記述をするが,これを図 4 に示すような
文章の共有率を高めるためには,ドキュメン
G U I 操作で行うことができる。
トの構造が標準化されていなければならない。
3.2
そこで取扱説明書の構造を D T D として明確に定
文章管理の概念は前述の図 2 に示した通りで
義し,ドキュメントに新しく要素を追加する際
ある。文章を部品としてとらえ,I D を付与して
は,D T D で定義された要素以外は選択できない
データベースに登録する。その I D に対して各言
ようにするアシスト機能を盛り込んだ。制作担
語の実体と修正履歴,翻訳状況などを管理する。
文章管理
当者が他のドキュメントから要素をコピー&
図 5 の文章編集画面には,図 2 で右側に表示
ペーストした際も,D T D で定義されていない場
された文章実体をダブルクリックして遷移す
合は色を変えて表示する。この機能を図 3 に示
る。新規文章の追加の場合も,I D を新たに取得
ᣂⷙⷐ⚛ㅊട䈱㓙䋬ᝌ౉䈪䈐䉎ⷐ⚛䈱䉂䈏⴫␜䈘䉏䉎
䉮䊏䊷䋧䊕䊷䉴䊃䈮䉋䉍ਅ૏㓏ጀ䈮⺋䈦䈢ⷐ⚛䈏ᝌ౉䈘䉏䈢႐ว䋬
⿒䈒⴫␜䈘䉏䉎
図 3
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D T D のアシスト機能
- 82 -
䊂䊷䉺䊔䊷䉴ౝ䈱ో䊄䉨䊠䊜䊮䊃䈎䉌䋬ᜰቯ䈚䈢᭴ㅧ䈣䈔䉕ᬌ⚝䈚䋬
䉮䊏䊷䋧䊕䊷䉴䊃䈪ᵹ↪䈪䈐䉎
㪯㪧㪸㫋㪿䈪⸥ㅀ䈚䈢႐ว䈱଀
UGNGEV5'%6+10=6+6.'%&ߩ⡞߈߆ߚ?⸃⺑
㪞㪬㪠ᠲ૞
図 4
構造検索例
図 5
文章編集画面例
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PIONEER R&D Vol.14 No.
して同じ画面となる。この画面で文章データに
がある。しかし,モデルによって制作担当者が
関する編集を行う。運用上は,編集するのは主
異なってしまうため,開発日程が重なった場合
に日本語・英語で,その他の言語は後述する翻
は,図 7 に示すように,同じ内容だが違う表現
訳フローで管理している。
の文章をそれぞれ翻訳依頼すること( 二重翻訳)
構造を作りながら文章編集を行うため,制作
があった。また,たとえ英語が同じ文章でも他
担当者はデータベースに登録している意識はな
言語では異なった翻訳結果になる場合もあり,
く,作っているドキュメントが自動的に文章単
文章統一の作業には同じかどうかの判断をはじ
位でデータベースに登録される。登録された文
め多くの工数を費やしてきた。
章は検索が可能になり,他のドキュメントから
流用・共有できる。前述の構造検索以外にもテ
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⵾ຠ㪙䈱ขᛒ⺑᣿ᦠ
キストベースの全文検索に対応している。
文章は複数のドキュメントから共有されてい
ห䈛ౝኈ䈲ห䈛⸥ㅀ䈏⦟䈇
ㆊ෰䈮ห䈛ౝኈ䈏䈅䉏䈳ᵹ↪䈚䈢䈇
る状態であり,どのドキュメントからでも修正
される可能性がある。データベースでは履歴を
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ត䈜ᚻ㑆䈏ᄢ䈐䈭Ꮏᢙ㪬㪧
管理しているため,他の制作担当者の編集によ
り文章の履歴番号が上がった場合は,ドキュメ
ត䈚䈐䉏䈝䈮⠡⸶ଐ㗬䋽⠡⸶⾗↥䉕↢䈎䈚䈐䉏䈭䈇
ント内の文章リンクが古くなったことを示す
図 7
マークが表示され,図 6 に示すように,更新を
翻訳管理の課題
促す。更新内容の確認結果,反映が好ましくな
翻訳は翻訳会社へ依頼するが,翻訳が必要な
いと判断した場合には,確認済みフラグを立て
ることによりそのまま使用する選択もできる。
箇所の選択,抽出,そして翻訳後の反映などは
手作業で行っていたため,工数が必要な上に作
業ミスが発生する可能性は否定できなかった。
ᣂ䈚䈇ጁᱧ䈏䈪䈐䈢႐ว䋬䇸㪦㪣㪛䇹䊙䊷䉪䈏⴫␜䈘䉏䉎
翻訳抽出の課題を図 8 に示す。
図 9 に示すように,データベースで管理する
ことにより,各言語の翻訳状況もわかり,文章
単位に翻訳管理ができる。指定された言語が未
ᦝᣂ䈎⏕⹺ᷣ䈱ㆬᛯ䈏น⢻
翻訳のフラグを持つ文章だけを自動抽出するこ
ㅢᏱ䈲ᦝᣂ䈜䉎
䊄䉨䊠䊜䊮䊃㪘
ጁᱧ㪋
䂾᦬䂾ᣣ䈎䉌䈱㔚⹤⇟ภ
ᄌᦝ䈮ኻᔕ䈚䈩ୃᱜ
とで,翻訳原稿の完成となる。
なお,翻訳会社では TRADOS に代表される翻訳
䊂䊷䉺䊔䊷䉴䈱ᢥ┨
䊄䉨䊠䊜䊮䊃㪙
ጁᱧ㪋
䇭㪧㫃㪼㪸㫊㪼㩷㪺㪸㫃㫃㩷㪇㪊㪄㪈㪈㪈㪈㪄㵹㵹
支援ツールを使って翻訳作業を効率化している
ጁᱧ㪊
䇭㪧㫃㪼㪸㫊㪼㩷㪺㪸㫃㫃㩷㪇㪊㪄㪇㪇㪇㪇㪄㵹㵹
が,翻訳原稿は TRADOS の入力形式となるファイ
ጁᱧ㪊
ル形式で出力しており,また翻訳結果もデータ
䈖䈱䊝䊂䊦䈱⊒ᄁ㐿ᆎ䈲㔚⹤⇟ภᄌᦝ೨䈭䈱䈪䋬
ጁᱧ㪊䉕䈠䈱䉁䉁૶↪
図 6
ベースへ自動取込できるようにしている。
3.4
新しい履歴の通知機能
X M L 文書生成
構造と文章を組み合わせれば,ドキュメント
1 冊分の X M L 文書の完成である。この際に言語
3.3
翻訳管理
を指定すれば,各国語版のドキュメントが生成
取扱説明書では,モデルが違っても,同じ機
されることになる。
能や類似した機能は同じように表現する必要
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最終版を X M L 文書として生成するには,使用
言語すべてが翻訳済みになっている必要があ
ただし制作の途上では確認用に未翻訳の文章で
る。このため生成前には,使用言語の翻訳状態
も出力することがあるため,未翻訳の文章につ
や画像ファイルの有無,参照箇所の存在などを
いては代替として英語で出力することも可能と
まとめてチェックする。図 1 0 に表示例を示す。
している。
⧷⺆ 䉝䊤䊎䉝⺆ ୃᱜ୘ᚲ䈲
䈬䈖䈎䋿
᛽಴䊶෻ᤋ䈱
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図 8
翻訳抽出の課題
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䊄䉨䊠䊜䊮䊃᭴ㅧ
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図 10
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䊂䊷䉺
⠡⸶⁁ᴫ䉕▤ℂ䈚䋬
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䊂䊷䉺
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䋨㪫㪩㪘㪛㪦㪪䈭䈬䋩
⠡⸶⠪
データベースによる翻訳管理
X M L 文書生成時のチェック結果表示例
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PIONEER R&D Vol.14 No.
生成された X M L 文書は次に述べる自動組版ア
た,ボタン名称やディスプレイの表示文字など
プリケーションで印刷用の P D F データに変換す
は変数として扱う仕組みを用意することで,1
るが,特に印刷物にする必要がなければ,W e b
箇所の修正で済むようにしている。
ブラウザで表示することも可能で,実際の表示
4.2
レイアウトコントロール
例を図 1 1 に示す。
実装した組版スクリプトの例を図 1 2 に示す。
従来から D a t a b a s e P u b l i s h i n g という思想
4 . 自動組版アプリケーション
はあったが,構築したのは良いが運用に膨大な
X M L テクノロジーにおける組版仕様としては
データベース管理工数を必要とする例が多く見
XSL ※ 5 -FO(eXtensible Stylesheet Language
受けられた。特に取扱説明書のようなドキュメ
- F o r m a t t i n g O b j e c t s ) が注目されるところ
ントの場合,ページ数を抑えるために,自動組
だが,ドキュメントレベルの組版機能となると
版した後に細かなレイアウト調整を手作業で行
まだ力不足である。このため,組版エンジンと
うことが数多くある。一度レイアウト調整した
してはいくつかの市販パッケージから,次の理
後は,記載内容の修正も手作業となるため,度
由によりアドベント社の 3 B 2 を選択した。
重なる仕様変更の修正結果をデータベースに
・アプリケーションレベルで U n i c o d e 化さ
れている。
フィードバックするメンテナンス工数が課題と
して認識されていたのである。
・サポート言語が多い( 4 8 ヶ国語) 。
今回のシステムでは,自動組版の過程にスク
・スクリプトによるレイアウトコントロー
ルが可能である。
リプトを組み込むことで状況判断に応じた詰め
処理も可能となり,組版の精度を高めることが
・状況判断に必要な情報( プロパティ) が多
く取得できる。
できた。このため手作業によるレイアウト調整
を排除し,データベース自体を修正してから再
4 . 1 単純編集作業の自動化
度自動組版するフローで運用が可能である。
単純な繰り返し作業である記号系文字のフォ
ント変更,目次や索引の生成,参照ページや参
5. まとめ
照タイトルの発生,柱や小口見出しの生成は,
このシステムは現在,海外向けカーオーディ
自動化することでミスを防ぐことができる。ま
オ製品の取扱説明書の制作に利用している。自
↢ᚑ䈘䉏䈢㪯㪤㪣ᒻᑼ䈱ขᛒ⺑᣿ᦠ䋨㖧࿖⺆䋩
䉴䉺䉟䊦䉕ቯ⟵䈜䉏䈳䊑䊤䉡䉱⴫␜䉅น⢻
図 11
PIONEER R&D Vol.14 No.1
X M L 取扱説明書
- 86 -
動組版の性質上,レイアウトコントロールには
て取扱説明書の持つ役割は重要になってくる。
限界があり柔軟なレイアウト変更には課題が残
検索性やインタラクティブ性といったわかりや
るが,記載情報の標準化や編集工数の削減など
すさに直結する観点から電子メディアへも展開
X M L で管理できるメリットは大きい。
されており,紙にこだわらない取扱説明書も現
製品が多機能・高機能になるほど,製品と
在では珍しくない。
ユーザをつなぐコミュニケーションツールとし
今後は,わかりやすさ品質の向上により多く
㪈䊕䊷䉳䈮㪌ⴕએਅ䈱႐ว䋬೨䈱䊕䊷䉳䈮෼䉄䈢䈇
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図 12
೨䈱䊕䊷䉳䈮෼䉄䉎૞ᬺ䈏⥄േ䈪ⴕ䉒䉏䉎
䇭䇭㸣
⸥タౝኈ䈮ୃᱜ䈏౉䈦䈢႐ว䋬䊂䊷䉺䊔䊷䉴䉕ୃᱜ䈚䈩䈎䉌
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䊂䊷䉺䊔䊷䉴䉕Ᏹ䈮ᦨᣂ䈮଻䈧䈖䈫䈏䈪䈐䉎
組版スクリプト概要
- 87 -
PIONEER R&D Vol.14 No.
※ 5 . XSL(eXtensible Stylesheet
の時間をかけることが可能な制作フローを構築
Language):
するとともに,X M L という再利用しやすいデー
X M L 文書のデータ内容( コンテンツ) を画面
タ形式の利点を生かして,公開情報のワンソー
や紙の上にフォーマットするためのスタイ
ス・マルチユース化を進めていく予定である。
ルシート言語。
注 :X S L の 開 発 の 初 期 段 階 で は , X M L 文 書 を
6. 謝 辞
他 の デ ー タ 形 式 に 変 換 す る 部 分
本システムの開発にあたり,日立ソフトウェ
( T r a n s f o r m a t i o n s ) とフォーマットする部
分( F o r m a t t i n g
アエンジニアリング( 株) ならびにアルテック
O b j e c t s ) が両方とも含まれ
ていたが,現在では変換言語は X S L T という
( 株) の関係各位に多大なるご協力をいただきま
独立した規格となっており,X S L と言えば
した。この紙面をお借りして厚くお礼申し上げ
フォーマット言語( X S L - F O ) を指すように
なっている。
ます。
用
語
解
参
説
( 1 ) アスキー
※ 1 . DTP(DeskTop Publishing):
文
献
デジタル用語辞典:
http://yougo.ascii24.com/
パーソナルコンピュータを使って出版物を
(2)Elliotte
作成すること。文字や図版の入力から始
Rusty
H a r o l d 著,藤本叔子 訳:
「X M L バイブル」
まって,ページ全体のレイアウトから印刷
(3)Neil
の前段階( P r e p r e s s ) まで含まれることもあ
る。そのため,D e s k T o p
考
B r a d l e y 著,安藤
慶一
訳:
「X S L T 完全活用マニュアル」
P r e p r e s s の略で
使われることもある。
筆 者
※ 2 . XML(eXtensible Markup Language):
I n t e r n e t 上での S G M L の利用を容易にする
吉 田
ことを目的として設計されたマークアップ
所 属 : ( 株) パイオニアメディアクリエイツ
言語。H T M L のような固定のマークアップ方
開発部
法だけではなく,文書独自のマークアップ
入社年月: 1 9 9 0 年 4 月
方法を定義できるようになる。この X M L の
標準化は,W 3 C で行なわれている。
樹 治 ( よしだ し げ じ )
主な経歴: マニュアル制作関連のシステム開発
間 島
※ 3 . DTD(Document Type Definition):
誠 也 ( まじま せ い や )
所 属 : ( 株) パイオニアメディアクリエイツ
S G M L で使われる文書型定義。S G M L は汎用
開発部
マークアップ言語であり,どのような要素
入社年月: 1 9 9 4 年 4 月
をどのようなタグを用いてマークアップす
主な経歴: マニュアル制作関連のシステム開発
るかは,用途に応じて任意に決められる。
大 橋
そして,それを決めるのが D T D の役目でも
ある。
所 属 : ( 株) パイオニアメディアクリエイツ
川越マニュアルセンター
注 :X M L で も 同 様 の 目 的 で 利 用 す る こ と が
できる。
入社年月: 1 9 8 5 年 4 月
主な経歴: マニュアル制作関連の管理業務
※ 4 . XPath(XML Path Language):
X M L 文書構造にアドレッシングするための
言語。
PIONEER R&D Vol.14 No.1
則 行 ( おおはし の り ゆ き )
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