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船舶事故等調査報告書 平成27年8月27日 運輸安全委員会(海事専門部会)議決 事故等番号 2014横第177号 事故等種類 運航不能(機関故障) 発生日時 平成26年12月15日 00時50分ごろ 発生場所 静岡県浜松市浜名湖南方沖 御前埼灯台から真方位245°34海里付近 (概位 北緯34°21.26′ 東経137°36.32′) 事故等調査の経過 平成26年12月15日、本インシデントの調査を担当する主管調 査官(横浜事務所)を指名した。 原因関係者から意見聴取を行った。 事実情報 船種船名、総トン数 船舶番号、船舶所有者等 乗組員等に関する情報 かず 液体化学薬品ばら積船 和丸、368トン 141285、大豊運輸株式会社 船長、五級海技士(航海) 機関長、四級海技士(機関) 死傷者等 なし 損傷 なし 事故等の経過 本船は、船長及び機関長ほか2人が乗り組み、苛性ソーダ約730 tを積載し、千葉県千葉港に向けて主機回転数毎分(rpm)約690 で北東進した。 本船は、平成26年12月14日20時00分ごろ、機関長が、機 関室内を巡視中、主機1番シリンダの排気温度が約450℃(他のシ リンダの平均が約333℃)に高くなっているのを認め、船舶所有者 及び管理会社に連絡し、主機の回転数を約630rpm に下げたとこ ろ、過給機がサージングするようになったが運転を続けた。 本船は、12月15日00時00分ごろ、浜名湖南方沖を航行中、 機関長が、主機1番シリンダの給気管とシリンダヘッドの接合部から 火炎が噴出しているのを認め、火災の危険があると判断して船長に連 絡し、船長が主機を中立にした。 本船は、風浪により北西に圧流され、機関室の他の機器、航海計器 等には異常がなかったが、火災発生のおそれがあって主機の運転がで きず、00時50分ごろ、船長が、自力航行不能と判断し、海上保安 庁及び船舶所有者に救助を要請した。 .. 本船は、14時20分ごろ巡視船によるえい 航が開始され、その 後、船舶所有者が手配した引船に引き継がれ、三重県四日市港に入港 した。 主機は、機関整備業者による開放点検の結果、1番シリンダの右舷 側の吸気弁の弁傘部が欠損しており、燃焼ガスが逆流して給気管とシ リンダヘッド接合部のパッキンが焼損し、1番、2番、3番シリンダ 群の過給機ブロワ側出口側の伸縮継ぎ手に破口を生じていたことが判 明した。 (写真1 主機1番シリンダヘッド 参照) 気象・海象 気象:天気 晴れ、風向 北西、風力 7、視界 良好 海象:波高 約2m その他の事項 主機は、排気タービン過給機を2基備えた4サイクル6シリンダデ ィーゼル機関であり、各シリンダには船尾側から順に番号が付けら れ、各シリンダヘッドには、吸気弁及び排気弁がそれぞれ2本ずつ組 み込まれていた。 本船は、平成26年12月5日、主機1番シリンダの排気温度が他 のシリンダより約40℃高かったので、船舶所有者等に整備を依頼し ていたが、平成27年の定期検査の際に整備を行う予定であった。 本船は、整備業者が主機の整備を行っていたが、吸気弁、排気弁等 の整備内容を記録していなかった。 取扱説明書には、各シリンダの排気温度と全シリンダの平均値との 差が50℃以内で運転し、吸気弁及び排気弁の点検整備を2~3年又 は8,000~10,000時間で実施するよう記載されている。 分析 乗組員等の関与 あり 船体・機関等の関与 あり 気象・海象等の関与 なし 判明した事項の解析 本船は、浜名湖南方沖を航行中、主機1番シリンダの吸気弁の弁傘 部が欠損したことから、燃焼ガスが逆流して給気管とシリンダヘッド の接合部から火炎となって噴出し、主機の運転ができなくなり、運航 不能となったものと考えられる。 主機1番シリンダの吸気弁は、運転中、弁座と弁傘部との間にカー ボン等を噛み込んだことから、弁傘部が燃焼ガスに浸食されて吹き抜 けを生じ、弁傘部が欠損した可能性があると考えられる。 原因 本インシデントは、本船が、浜名湖南方沖を航行中、主機1番シリ ンダの吸気弁の弁傘部が欠損したため、燃焼ガスが逆流して給気管と シリンダヘッドの接合部から火炎となって噴出し、主機の運転ができ なくなったことにより発生したものと考えられる。 参考 今後の同種事故等の再発防止に役立つ事項として、次のことが考え られる。 ・吸気弁及び排気弁は、取扱説明書に従い、使用条件を考慮して点 検整備を行い、整備記録を残すこと。 写真1 主機1番シリンダヘッド 吸気弁の弁傘部の欠損