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Ⅱ
各分野における消費者政策
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≪i≫ 各種商品・サービス別の消費者政策
Ⅱ 1.食品の安全・安心の確保
(1)食品安全行政の体制
① 食品安全基本法の制定と食品安全委員会の設置
食品流通の広域化・国際化が進展し、遺伝子組換えやクローンといった新たな技
術の開発が進むなど、我が国の食生活を取り巻く環境が大きく変化し、食品の安全
に対する関心が一層高まっています。また、我が国では、1990年代半ばから腸管出
血性大腸菌O157やノロウイルスによる食中毒、2000年代初めにはBSE(牛海綿状
脳症)などの問題が起こりました。
このような状況に的確に対応するため、2003年7月1日に国民の健康の保護を最
優先とすることなどを基本理念とする食品安全基本法(2003年5月23日公布、最終
改正2011年6月24日)が施行されるとともに、内閣府に食品安全委員会が設置され
ました。
食品安全基本法では、食品に含まれる危害要因(有害な微生物や化学物質等)を
摂取することによって人の健康に悪影響を及ぼす可能性がある場合に、その発生を
防止し、またはそのリスクを最小限にするための枠組みである「リスクアナリシス」
という考え方が取り入れられています。
リスクアナリシスは「リスク評価」、
「リスク管理」、
「リスクコミュニケーション」
の3つの要素からなっており、この考え方に基づき各府省庁等が機能的に分担し、
食品安全行政を展開しています。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [
1]食 品
[1]食品
i
②
消費者庁の取組
食品安全基本法第21条第1項に規定する基本的事項により、1)いわゆる「隙間事
案」については、消費者庁が消費者安全法(2009年6月5日公布、最終改正2012年
9月5日)に基づき措置すること、2)リスクコミュニケーションに係る関係府省庁
の事務の調整を消費者庁が実施すること、3)食品事故に係る緊急対策本部は、消費
者担当大臣が設置することなどが定められ、消費者庁が、食品安全に関わる行政機
関として明確に位置付けられました。
消費者庁では、消費者の食の安全・安心を確保するため、リスク管理機関、リス
ク評価機関等の関係行政機関の協力を得て、消費者に身近な地方公共団体や消費者
団体等との連携を図りながら、消費者の立場に立った情報提供、消費者からの意見
を施策へ反映することに取り組み、リスクコミュニケーションの一層の充実に努め
ています。
また、消費者行政の重要な分野の一つである食品表示制度については、これまで
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厚生労働省と農林水産省がそれぞれ所管していた食品衛生法(1947年12月24日公布、
最終改正2013年6月28日)、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律
(JAS法、1950年5月11日公布、最終改正2013年6月28日)及び健康増進法(2002
年8月2日公布、最終改正2013年6月28日)に基づく業務を、複数の行政部局にま
たがることなく、消費者庁で一元的に所管することとなりました。その後、食品表
示一元化検討会において取りまとめられた報告書等を踏まえ、現行の上記3法の食
品表示に関する規定を統合した食品表示法が2013年6月28日に公布されました。食
品表示法に基づく具体的な表示のルールである食品表示基準の検討に当たっては、
消費者、事業者を始めとする様々な立場の方の意見を広く伺いながら、消費者の求
める情報提供と事業者の実行可能性とのバランスを図り、双方に分かりやすい表示
基準を策定するよう取り組んでいます。
③
食品安全委員会の取組
食品安全委員会は、国民の健康の保護を最優先に、科学に基づく食品安全行政を
推進するため、厚生労働省や農林水産省などのリスク管理機関から独立して、科学
的知見に基づき客観的かつ中立・公正な立場からリスク評価(食品健康影響評価)
を実施するとともに、リスクコミュニケーションの推進や食品健康影響評価の結果
に基づき講じられる施策の実施状況の監視などに取り組んでいます。
委員会は7名の委員からなり、原則毎週1回会合を開催しています。委員会の下
には、企画やリスクコミュニケーション、緊急時対応を扱う企画等専門調査会に加
え、添加物、微生物、遺伝子組換え食品等といった、健康に悪影響を及ぼすおそれ
がある要因ごとに11の専門調査会を設置し、専門事項の調査審議を行っています。
④
厚生労働省の取組
食品衛生法は、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、国民の健康を保護
することを目的としており、1947年に制定されたものです。厚生労働省及び地方公
共団体は同法に基づき、食品、添加物等の製造、輸入、販売における衛生規制を講
じています。具体的なリスク管理施策としては、厚生労働省では、食品中の残留農
薬等の基準の設定や輸入食品に関する監視指導の計画的な実施等を、保健所を設置
する地方公共団体では国内で製造、流通する食品の監視指導の計画的な実施、食中
毒の発生防止の監視指導の実施等を行い、連携して食品の安全性確保のための施策
に取り組んでいます。また、厚生労働省は、消費者庁、食品安全委員会、農林水産
省等の関係府省庁と連携し、国民との意見交換会の開催などリスクコミュニケーシ
ョンの推進を行っています。
<食品衛生法の2003年の主な改正内容>
食品の安全性の確保のために必要な規制等を講じることを明らかにするための
目的規定の見直し、国、都道府県等及び事業者の責務の明確化、リスクコミュニ
ケーション規定の創設に加え、規格基準の見直し、監視検査体制の強化、食中毒
等飲食に起因する事故に対する対応の強化、罰則の強化を行いました。
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⑤
※HACCP:1960年代に米国で宇宙食の安全を確保するために開発された食品
の衛生管理のシステム
⑥
国税庁の取組
国税庁では、厚生労働省等と連携して、酒類業者に対する酒類の安全性等に関す
る技術指導・相談対応や販売されている酒類の安全性の調査等を行っています。
問合せ先
○内閣府食品安全委員会事務局 食の安全ダイヤル
電話 03-6234-1177
○消費者庁消費者安全課、食品表示企画課
電話 03-3507-8800(代)
○厚生労働省医薬食品局食品安全部企画情報課
電話 03-5253-1111(代)
○農林水産省消費・安全局消費・安全政策課
電話 03-3502-8111(代)
○国税庁課税部鑑定企画官
電話 03-3581-4161(代)
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [
1]食 品
HACCPの考え方を採り入れた家畜の飼養衛生管理(農場HACCP)への取組
を推進しています。このような取組について、関係府省庁と連携し、リスクコミュ
ニケーションの推進を図っています。
Ⅱ 農林水産省の取組
農林水産省では、リスク管理部門と産業振興部門とを分離し、食品分野における
消費者行政とリスク管理を担う「消費・安全局」を設置しています。また、各地域
に地方農政局を設置し、消費者の適切な商品選択に資するための食品表示の監視・
指導等を行っています。
農林水産省の具体的な取組として、国産農林水産物や食品の安全性を向上させる
ため、食品に含まれる有害な化学物質や微生物について実態調査を行い、健康への
悪影響が懸念される場合には、安全性向上のための取組を指針等として提示してい
ます。また、生産段階における取組として、農業生産工程管理(GAP:Good
Agricultural Practice)の更なる取組の拡大と、取組内容の高度化を推進し、製
造段階における取組として、食品製造事業者のHACCP(Hazard Analysis
Critical Control Point)※の導入を促進しています。加えて、家畜生産段階で、
i
(2)食品中の残留農薬等の規制
農薬、飼料添加物及び動物用医薬品(以下「農薬等」という。)は、農業生産性の向
上に重要な役割を果たしていますが、その使用方法によっては人の健康や環境に影響
を与えるおそれがあるため、安全性確保のため様々な規制がなされています。食品中
に残留する農薬等の成分については、従来から食品衛生法に基づいて食品規格として
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残留基準を定め、規制が行われてきました。しかし、輸入農産物の増加、使用される
農薬の種類の増加等により、その整備・拡充が各方面から求められてきたことから、
2003年5月に公布された改正食品衛生法に基づき2006年5月29日から、一般に人の健
康を損なうおそれのない量として0.01ppmを定め、これを超える残留を許容する場合に
は、個別にリスク評価を行って残留基準を設定することとする、いわゆるポジティブ
リスト制度が施行されています。
<我が国における農薬の規制>
我が国における農薬の安全性確保のための規制は、食品安全委員会、農林水産
省、厚生労働省、環境省が協力して行っています。
我が国では、農薬を製造、加工、輸入するためには、農薬取締法(1948年7月
1日公布、最終改正2007年3月30日)に基づく農林水産大臣の登録を受けなけれ
ばなりません。登録の申請をする際には、薬効・薬害試験、残留性試験、発がん
性等の各種の毒性試験といった、農薬の効果や安全性に関する様々な試験データ
を提出する必要があります。こうした試験データを基に、様々な角度から農薬の
安全性のチェックが行われ、安全性の確認されたもののみ登録され、製造、輸入、
販売及び使用できることになっています。
申請のあった農薬を登録してもよいかどうかの判断基準(登録保留基準)は、
農薬取締法で規定されています。このうち、①作物残留、②土壌残留、③水産動
植物の被害防止、④水質汚濁の観点からの基準については、環境省が設定してい
ます。各種試験のデータから、適正に使用してもこの判断基準を満たさないおそ
れがある農薬は登録されません。
農薬の安全な使用を確保するために、農薬取締法では、農林水産省及び環境省
が農薬の適正な使用の基準を定め、農薬使用者は、その基準を守って農薬を使用
しなければならないこととされています。なお、農薬の使用方法は、登録のある
全ての農薬の容器(例:ビン、袋など)のラベルに記載されていますので、農薬
使用者はこのラベルをよく読み、適用農作物の種類、散布量、散布回数や散布時
期などを確認し、これを守る必要があります。農林水産省は、都道府県、農協、
販売業者を通じて、使用方法を守るよう農薬使用者に指導しています。
食品中の残留農薬の規制に関しては、厚生労働省において、食品衛生法に基づ
き残留基準が定められており、残留基準に適合しない食品は、輸入や販売等が禁
止されます。
上記基準の設定又は変更に当たっては、食品安全基本法に基づき、食品安全委
員会において食品健康影響評価が実施され、人が生涯にわたって毎日摂取しても
健康上の影響が生じない量(一日摂取許容量(ADI: Acceptable Daily Intake))
の設定等が行われます。ADIは、一般的に実験動物を用いた様々な毒性試験に
おいて求められた、何ら毒性影響が認められなかった量(無毒性量)のうち最も
小さいものに、人と実験動物の違い(種差)や人の個体差を勘案した通常100倍の
安全係数を適用して設定されます。
食品中の残留基準は、各農薬の作物残留試験の結果より、農薬を適正に使用し
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» 種商品・サービス別の消費者政策 [
1]食 品
問合せ先
〇内閣府食品安全委員会事務局 食の安全ダイヤル
電話 03-6234-1177
〇厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課
電話 03-5253-1111(代)
〇農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室
電話 03-3502-8111(代)
〇環境省水・大気環境局土壌環境課農薬環境管理室
電話 03-3581-3351(代)
Ⅱ た場合に残留し得る最大の濃度を予測し、日本人の1日当たりの各食品の摂取量
から、各農薬の1日当たりの摂取量を推定し、それがADIの80%を超えていな
いことを確認して設定されています。さらに、安全性確保対策の一環として、農
薬の摂取量調査を実施しています。
i
(3)食品添加物等の規制
現在の豊かな食生活の一端を担っている加工食品を製造する時に使用される食品添
加物については、食品衛生法に基づく安全上の規制が行われています。従来は、化学
的合成品であるものについてのみを対象とし、厚生労働大臣が指定したものしか使用
することはできないとの規制が行われていましたが、添加物の安全性の一層の確保及
び添加物規制の国際的調和を図ることを目的に、1995年の食品衛生法の改正により、
天然添加物についても化学的合成品と同様に、原則として指定制の対象とされました
(なお、天然香料及び一般に食品として飲食に供されるものであって添加物として使
用されるものは除かれています。)。また、既に指定されたものでも最新の科学技術に
よる安全性の見直しがなされています。
①
食品添加物の安全性確保
食品添加物は、毎日食べる食品に添加されるものであり、その安全性が十分確認
されていなくてはなりません。すなわち、食品に含まれた食品添加物ごとに、人が
その食品添加物を一生、毎日食べ続けても、健康を損なうおそれがないことが科学
的に裏付けられている必要があります。
このため、厚生労働省は、安全性に関する各種試験データとともに食品安全委員
会に食品健康影響評価の依頼を行い、その結果を踏まえ、承認が得られたものにつ
いて指定を行っています(2013年10月末時点で437品目が指定されています。)。さら
に、その使用量についても、実験動物による様々な試験結果から、実験動物に毒性
影響が認められない無毒性量を基に、人がその食品添加物を毎日一生涯にわたり摂
取しても健康への悪影響がないとされる量(一日摂取許容量(ADI:Acceptable
Daily Intake)
)を推定し、これを十分下回るように必要に応じて使用基準が定めら
れています。また、このようにして指定された食品添加物の摂取量がADIを下回
っているかどうかを確認するために、安全性確保対策の一環として摂取量の調査を
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実施しています。
なお、近年は、国際基準との整合を図る観点から、国際的に安全性が確認され、
かつ欧米諸国において使用が広く認められている添加物(添加物45品目、香料54品
目)については、企業からの要請の有無にかかわらず、国が主体的に指定に向けた
検討を進めています。
②
天然添加物の安全性確保
従来は、化学的合成品であるものについてのみ指定制の対象とされていましたが、
1995年の食品衛生法の改正により、化学的合成品以外の食品添加物(いわゆる天然
添加物)についても原則として対象とされました。また、法改正時点で流通してい
た天然添加物については、厚生大臣(当時)が既存添加物名簿として公示し、指定
制の例外として使用を認めています。厚生労働省では、既存添加物の安全性確認の
ため、必要に応じて毒性試験等を行っています。
なお、2003年の食品衛生法改正によって、安全性に問題があると判明したものや
既に使用実態のないものは既存添加物名簿から当該添加物の名称を消除して、使用
を禁止することができることとなりました。2004年7月には、アカネ色素について
実施した発がん性試験において、ねずみ(ラット)の腎臓に対し発がん性が認めら
れたとの中間報告があり、食品安全委員会による食品健康影響評価及び薬事・食品
衛生審議会における答申を踏まえ、アカネ色素が既存添加物名簿から消除されてい
ます。また、2004年12月、2007年9月及び2011年5月に使用実態のない123品目の既
存添加物が名簿から消除され、現在、既存添加物名簿に収載されているものは365
品目となっています。
今後も、流通実態の調査を行い、流通実態の明らかでない既存添加物については、
消除することとしています。
問合せ先
○厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課
電話 03-5253-1111(代)
(4)その他の規制
① 器具・容器包装の安全性確保
食品に直接触れる可能性のある器具・容器包装は、食品衛生法の規制対象であり、
器具・容器包装から食品中へ化学物質が移行して健康影響を生じることのないよう
に、規格基準が定められています。
②
乳幼児用のおもちゃの安全性確保
乳幼児は一般に、手にしたものを口に入れたり、なめたりする行動を示すことか
ら、乳幼児おもちゃのうち、
「おしゃぶり」のように乳幼児が口に接触させることを
本質とするもののほか、手に持って遊ぶことで乳幼児がおのずと口に接触させるこ
とが考えられるものについては、食品衛生法の規制対象であり、乳幼児が口に入れ
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たり、なめたりしても衛生上問題がないように、規格基準が定められています。
Ⅱ (5)リスクコミュニケーションの推進
リスクコミュニケーションは、リスク評価やリスク管理とともに食品の安全性に関
するリスクアナリシスの3要素の1つです。この枠組みに基づき、リスク評価機関で
ある食品安全委員会と、リスク管理機関である厚生労働省、農林水産省及び環境省に
加え、2009年9月からは消費者庁が連携・協力して、リスクアナリシスの全過程にお
いて公正性や透明性を確保し、リスク評価やリスク管理の決定に反映するためのパブ
リックコメント等による国民の意見募集や、消費者、生産者、食品関連事業者、行政
等の関係者間での意見交換を通じて、リスクコミュニケーションを推進しています。
①
意見交換会の開催
リスクコミュニケーションの主要な取組の1つとして、食品安全委員会、厚生労
働省、農林水産省、消費者庁及び環境省が連携して、多くの国民の方に参加いただ
けるように全国的に意見交換会を開催しています。
意見交換会のテーマは、国民の関心が高い事項を中心に国民に広く知っていただ
きたい事項を設定しており、これまで、食品安全行政全体を扱うような大きなテー
マから、BSE、農薬、食品添加物、食中毒、輸入食品などを取り上げた個別のテ
ーマまで幅広く意見交換会を行ってきているところです。2011年3月の東京電力福
島第一原子力発電所の事故後は、食品中の放射性物質をテーマにしたリスクコミュ
ニケーションを積極的に行っています(2012年度に講じた食品と放射能に関するリ
スクコミュニケーションについては、303ページを参照)。
意見交換会の参加者は一般から公募しており、誰でも参加することができます。
今後の開催情報及び過去の意見交換会で使用した資料や議事録については関係府省
庁のウェブサイトに掲載していますので、御覧ください。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [
1]食 品
問合せ先
○厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課
電話 03-5253-1111(代)
i
○消費者庁(食品安全に関するリスクコミュニケーション(意見交換会))
ウェブサイト http://www.caa.go.jp/safety/index.html#m04
○食品安全委員会
ウェブサイト http://www.fsc.go.jp/koukan/index.html
○厚生労働省
ウェブサイト
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/index.html
○農林水産省
ウェブサイト
http://www.maff.go.jp/j/syouan/johokan/risk_comm/index.html
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②
積極的な情報提供
食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省及び消費者庁では、食の安全に関する
情報や施策の状況、調査結果などをウェブサイトやマスメディアを通じて迅速に公
表し、積極的な情報公開と発信に努めています。また、パンフレット、広報誌、メ
ールマガジンなども活用しています。
なお、酒類の安全性に関する情報等に関しては、国税庁において公表していま
す。
1)ウェブサイト
○食品安全委員会
ウェブサイト http://www.fsc.go.jp/
食品安全委員会ウェブサイトでは、委員会や意見交換会等の資料や概要、食中
毒等特定のトピックに関する科学的知見等を随時掲載しています。
特に国民の関心が高いと考えられる事案については、
「重要なお知らせ」又は「お
知らせ」を活用して情報提供を行っています。
○厚生労働省
ウェブサイト
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/index.html#top
厚生労働省ウェブサイトでは、報道発表資料、食品の安全に関するQ&A、審
議会等の会議資料、食品安全に関する施策の情報などを掲載しています。
○農林水産省消費・安全局
ウェブサイト http://www.maff.go.jp/j/syouan/index.html
農林水産省ウェブサイトでは、食品の安全や消費者の信頼確保のための農林水
産省の施策について情報提供しています。
○事故情報データバンク
ウェブサイト http://www.jikojoho.go.jp/ai_national/
消費者庁では、消費者事故情報について関係機関より事故情報・危険情報を広
く収集し、事故防止に役に立てるためのデータを提供しています。
(酒類の品質及び安全性の確保)
○国税庁
ウェブサイト
http://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/anzen/index.htm
国税庁では、販売されている酒類の安全性の調査結果などを情報提供していま
す。
2)メールマガジン
○食品安全委員会e‐マガジン
e-マガジンは、食品安全委員会のウェブサイトから登録できます。
ウェブサイト
http://www.fsc.go.jp/sonota/e-mailmagazine/e_new_mailmagazine.html
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Ⅱ 各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 1]食 品
・ウイークリー版
食品安全委員会の会議結果概要や開催案内などを、原則毎週火曜日にお届
けします。
・読み物版
実生活に役立つ情報、安全性の解説、Q&Aなどの読み物を主にしたe-マ
ガジン【読み物版】を月の中旬と下旬に配信しております。
i
二次元コードをスマートフォン等で読み取りしてください。
(※従来型の携帯電話では、読み取ることができません。)
○食品安全エクスプレス
ウェブサイト http://www.maff.go.jp/j/syouan/johokan/mail_magagine.html
毎日(月~金)、農林水産省を始め各府省庁が発出する報道発表資料を中心に、
食品の安全及び消費者の信頼確保に関係する情報をお届けします。
3)消費者からの問い合わせへの対応
○食品安全委員会 食の安全ダイヤル
食の安全について、情報提供、お問合せ、御意見をいただく窓口です。メール
でも受け付けています。
電話 03-6234-1177
ウェブサイト https://form.cao.go.jp/shokuhin/opinion-0001.html
○農林水産省消費者の部屋
食料、農林水産業・食品産業、農山漁村等についての情報を発信するとともに、
消費者からの情報・相談等を受け付けています。メールでも受け付けています。
電話 03-3591-6529
ウェブサイト http://www.maff.go.jp/j/heya/index.html
問合せ先
○内閣府食品安全委員会事務局 食の安全ダイヤル
電話 03-6234-1177
○厚生労働省医薬食品局食品安全部企画情報課
電話 03-5253-1111(代)
○農林水産省消費・安全局消費者情報官
電話 03-3502-8111(代)[内線:4600]
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○消費者庁消費者安全課
電話 03-3507-8800(代)
○国税庁課税部鑑定企画官
電話 03-3581-4161(代)
(6)トレーサビリティの取組
① 食品トレーサビリティ
食品のトレーサビリティとは、食品の移動を把握することであり、食品事故等が
発生した際に、記録等に基づきその移動経路をたどることにより、問題食品の迅速
な回収等の基礎となるものです。トレーサビリティが確保されるためには、生産者
や食品事業者が、自らが取り扱う農産物や食品について、いつ、どこから入荷され、
いつ、どこへ出荷されたか等を既存の伝票等に基づき把握しておくことが重要であ
り、農林水産省では、生産者等の取組の普及に取り組んでいます。
②
牛トレーサビリティ
国内におけるBSEの発生を踏まえ、BSEのまん延防止の的確な実施等を目的
として、牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法(牛トレー
サビリティ法、2003年6月11日公布)が公布され、同年12月から生産段階の措置が、
2004年12月から流通段階の措置が施行されました。
同法により、牛を生産する段階では、国内で飼養されている全ての牛に10桁の個
体識別番号が付与され、その番号の耳標が装着されます。その牛の生年月日や種別
(品種)などの情報と、出生から食肉処理までの履歴がインターネットを通じて公
開されています(個体識別情報の管理・公開は、独立行政法人家畜改良センターが
行っています。)。
牛肉が流通・消費される段階では、国内で飼養された牛の肉(いわゆる「国産牛
肉」。ただし、生体で輸入され国内で飼養されたものを含む。)について、販売業者
などによる個体識別番号の表示、仕入れと販売(消費者に販売する場合を除く。)を
記録することが義務付けられました。
これらにより、消費者は、購入した国産牛肉について、独立行政法人家畜改良セ
ンターのウェブサイトにアクセスし、個体識別番号を入力することにより、その牛
がどこで生まれ、どこで飼養されたか、種別(黒毛和種、ホルスタイン等)は何か
などの情報を得ることができます。
○独立行政法人家畜改良センター
ウェブサイト http://www.nlbc.go.jp/
(携帯電話から) http://www.id.nlbc.go.jp/mobile/
③
米・米加工品のトレーサビリティ・原料米の産地情報の伝達
2008年に発覚した事故米穀の不正規流通問題は、米の流通に関する多くの課題を
提起しました。
事故米穀の不正規流通問題では、流通の各段階において米・米加工品の取引等の
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※米・米加工品:米穀(玄米・精米等)、米粉や米こうじ等の中間原材料、米飯類、
もち、だんご、米菓、清酒、単式蒸留しょうちゅう、みりん等
農林水産省のウェブサイトでは、米トレーサビリティ法についての詳しい情報を
掲載しています。
○米トレーサビリティ法について
ウェブサイト
http://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/kome_toresa/index.html
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 1]食 品
し、表示の適正化を図り、及び適正かつ円滑な流通を確保するための措置の実施
の基礎とすることを目的とした、米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報
の伝達に関する法律(米トレーサビリティ法、2009年4月24日公布)が成立しま
した。
同法により、2010年10月からは、生産者を含む米・米加工品を取り扱う事業者に
対して、米・米加工品の取引等の記録の作成・保存を義務付けることにより、食品
事故などの問題が生じた際に速やかにその流通状況を把握することができるように
なりました。さらに、2011年7月からは、米・米加工品の取引に際し、原料に用い
ている米穀等の産地を事業者や消費者に対して伝達することを義務付けることによ
り、産地偽装を防止するとともに、原料米の産地を知ることができるようになりま
した。
Ⅱ 記録が残っていない場合や、取引等の記録の提供を拒否される場合があり、事故米
穀の流通状況を把握するのに相当の時間を要したり、流通先や用途の特定が困難な
場合もありました。
また、消費者が国産米を使った商品と思っていたものにまで、幅広く輸入米が使
用され、消費者が認識しないまま輸入米を口にしていたことが明らかになる一方で、
米加工品や外食、弁当等を選択する際に、原料米の原産地が分からないことから、
米製品全般にわたって消費者の不信が増幅したことも挙げられます。
このため、米・米加工品※に関し、食品としての安全性を欠くものの流通を防止
i
問合せ先
① 農林水産省消費・安全局表示・規格課
電話 03-3502-8111(代)
② 農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課
電話 03-3502-8111(代)
③ 農林水産省消費・安全局表示・規格課米穀流通監視室
電話 03-3502-8111(代)
(7)輸入食品の安全性の確保
輸入食品の安全性確保については、食品の輸入及び違反状況等を踏まえて毎年度策
定する「輸入食品監視指導計画」に基づき、重点的、効率的かつ効果的な監視指導を
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実施しています。具体的には、これまでの違反(検出)事例や海外での情報に基づき、
違反の可能性が高いものは、特定の品目ごとに全数検査を実施(検査命令)し、その
他のものについてはスクリーニング的に抽出検査(モニタリング検査)を実施してい
ます。モニタリング検査の計画件数については、統計学的に一定の信頼度で違反を検
出することが可能な検査数を基に、食品群ごとに違反率、輸入量を勘案して設定して
おり、2013年度は約9万3千件の実施を計画しています。
また、問題発生時の二国間協議や現地調査に加え、計画的に輸出国の衛生対策に関
する情報収集及び評価を推進し、問題発生の未然防止を図ることとしています。2010
年5月31日には、日中間で「日中食品安全推進イニシアチブ覚書」が締結され、日中
両国で輸出入される食品等の安全分野における交流及び協力を促進させていくことで
一致しました。
なお、全国32海空港の検疫所に、輸入食品等の監視・指導や検査を行う食品衛生監
視員を399名(2013年4月時点)配置するとともに、残留農薬等の高度な分析を行う輸
入食品・検疫検査センターへの機器等の増設を行っているほか、検疫所が行う試験検
査の一部の登録検査機関への委託を実施しており、輸入時検査体制の充実及び強化を
図っているところです。
問合せ先
○厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課輸入食品安全対策室
厚生労働省医薬食品局食品安全部企画情報課検疫所業務管理室
電話 03-5253-1111(代)
2.広告その他の表示の適正化等
(1)食品表示の一元化
① 食品表示一元化の背景
食品の表示は消費者が食品を購入するとき、食品の内容を正しく理解し、選択し
たり、適正に使用したりする上で重要な情報源となっています。また、万が一、事
故が生じた場合には、その原因の究明や製品回収などの行政措置を迅速、かつ的確
に行うための手掛かりとなります。
食品一般について、その内容に関する情報の表示ルールを定めた法律として、食
品衛生法、JAS法、健康増進法の3法があります。これら3法に基づき複数の表
示基準が定められ、それぞれの基準に従って表示が行われていますが、制度的に複
雑であるとともに、使われる用語の定義が異なるなど、分かりにくいものとなって
おり、その改善は長期にわたり課題とされてきました。
こうした状況の下、2010年3月に閣議決定された消費者基本計画において、食品
表示に関する一元的な法律を策定することが盛り込まれ、2011年7月の当該計画の
一部改定において、2012年度中の国会提出を目指すこととされました。
これを受けて、2011年9月から、学識経験者、消費者団体、事業者団体等で構成
する食品表示一元化検討会を設置して、分かりやすい食品表示の在り方などについ
76
76
食品表示一元化検討会報告書の概要
平成24年8月 消費者庁
検討会(座長:池戸重信宮城大学特任教授)は、平成23年9月から12回開催
食品表示の機能:適切な商品選択のための情報提供と、実際にそ
の食品を摂取する段階での安全性の確保
今日的な課題への対応のための食品表示制度の見直し
・我が国の食生活をめぐる状況変化への対応
(食生活の多様化、高齢化の進展、様々な情報伝達手段の普及)
・諸外国の食品表示制度の動向を踏まえた対応
新たな食品表示制度の基本的な考え方
現行制度の枠組みと一元化の必要性
新たな食品表示制度における適用範囲の考え方
中食、外食等におけるアレルギー情報の取扱い
インターネット販売の取扱い
新たな食品表示制度における栄養表示の考え方
健康・栄養政策における課題
栄養表示が、健全な食生活の実現に
向けて重要な役割を果たすことを期待
~生活習慣病の増加等に対応
○ 食品衛生法、JAS法、健康増進法のうち、表示部分の一元化
○ 分かりやすい食品表示が必要~ 現行制度は複雑で、消費者、事業者、行政にとって問題
消費者基本法の理念と食品表示の役割
消費者基本法において消費者の権利とされている安全の確保と自主的かつ
合理的な選択の機会の確保の両方を実現するために重要な機能
新しい食品表示制度の在り方
○ 新制度の目的は、
・食品の安全性確保に係る情報の消費者への確実な提供(最優先)に併せて、
・消費者の商品選択上の判断に影響を及ぼす重要な情報の提供を位置付け
○ 食品衛生法とJAS法で定義が異なる用語の統一・整理
○ より重要な情報が、より確実に消費者に伝わるようにすることが基本
○ 食品表示の文字を見やすく(大きく)するための取組の検討が必要
義務表示事項の範囲
○ 表示の義務付けは、表示により情報が得られるというメリットと、表示に要す
るコストというデメリットを、消費者にとってバランスさせることが重要
○ 現行の義務表示事項について、長年の議論も踏まえつつ、情報の確実な提
供という観点から検証
○ 新たな義務付けを行う際には、優先順位の考え方を活用
~容器包装以外の媒体での情報提供を前提とした容器包装への表示省略も考慮
○ 将来的にも必要に応じて見直しできるような法制度とすることが必要
専門的な検討の場を
別途設け検討
国際的な栄養表示制度の動向
2012年コーデックス委員会総会に
おいて、栄養表示の義務化に向けた
見直しを合意
i
栄養表示に関する基本的な考え方
栄養表示の義務化は、消費者側・事業者側双方の環境整備と表裏一体
新しい栄養表示制度の枠組み
<義務化の対象>
・原則として、全ての加工食品、事業者に義務付け
・対象とする栄養成分は、義務化施行までに幅広く検討
<表示値の設定方法>
・計算値方式の導入、低含有量の場合の許容範囲の拡大等
栄養表示の義務化に向けての環境整備
・計算値方式等の先行導入及びそれらを活用した表示拡大(食品、成分)の推奨
・栄養に関する情報についての消費者への普及啓発
・公的データベースの整備、計算ソフト等の支援ツール等の充実
義務化導入の時期
新法の施行後概ね5年以内を目指しつつ、環境整備の状況を踏まえ決定
本報告書で示された基本的考え方を踏まえ、新法の立案作業に着手
⇒成案を得た後、速やかに法案を国会に提出することが適当
加工食品の原料原産地表示
遺伝子組換え表示など
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 1]食 品
(参考)食品表示一元化検討会報告書の概要
Ⅱ ておよそ1年にわたって議論を行い、2012年8月に同検討会報告書がとりまとめら
れました。この検討会報告書等を基に、上記3法を統合した食品表示法が第183回通
常国会において成立し、2013年6月28日に公布されました。
一元化の機会に検討すべき項目とは
別の事項として位置付け
77
77
②
食品表示法について
平成25年6月
消 費 者 庁
食品表示法の概要
食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択
の機会を確保するため、
整合性の取れた表示基準の制定
消費者、事業者双方にとって分かりやすい表示
食品衛生法、JAS法及び健康増進法の食品の表示に関する規定を統合して
食品の表示に関する包括的かつ一元的な制度を創設。
消費者の日々の栄養・食生活管理による健康増進に寄与
効果的・効率的な法執行
(現行、任意制度となっている栄養表示についても、義務化が可能な枠組みとする)
目的
消費者基本法の基本理念を踏まえて、表示義務付けの目的を統一・拡大
【新制度】
【現行】
・ 食品を摂取する際の安全性
・食品衛生法・・・衛生上の危害発生防止
・ 一般消費者の自主的かつ合理的な
・J A S 法・・・品質に関する適正な表示
食品選択の機会の確保
・健康増進法・・・国民の健康の増進
○ 基本理念(3条)
・食品表示の適正確保のための施策は、消費者基本法に基づく消費者政策の一環として、
消費者の権利(安全確保、選択の機会確保、必要な情報の提供)の尊重と消費者の
自立の支援を基本
・食品の生産の現況等を踏まえ、小規模の食品関連事業者の事業活動に及ぼす影響等に
配慮
食品表示基準
(4条)
○ 内閣総理大臣は、食品を安全に摂取し、自主的かつ合理的に選択するため、
食品表示基準を策定
① 名称、アレルゲン、保存の方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分の量及び熱量、
原産地その他食品関連事業者等が表示すべき事項
② 前号に掲げる事項を表示する際に食品関連事業者等が遵守すべき事項
○ 食品表示基準の策定・変更
~厚生労働大臣・農林水産大臣・財務大臣に協議/消費者委員会の意見聴取
食品表示基準の遵守
(5条)
内閣総理大臣等に対する申出等
(11条・12条)
○ 何人も、食品の表示が適正でないため一般消費者の利益が害されていると認めるとき
~内閣総理大臣等に申出可
⇒内閣総理大臣等は、必要な調査を行い、申出の内容が事実であれば、適切な措置
○ 著しく事実に相違する表示行為・おそれへの差止請求権
(適格消費者団体~特定商取引法、景品表示法と同様の規定)
権限の委任
(15条)
○ 内閣総理大臣の権限の一部を消費者庁長官に委任
○ 内閣総理大臣・消費者庁長官の権限の一部を都道府県知事・保健所設置市等に委任
(政令)
罰則
(17条~23条)
○ 食品表示基準違反(安全性に関する表示、原産地・原料原産地表示の違反)、命令
違反等について罰則を規定
附則
○ 施行期日~公布の日から2年を超えない範囲内で政令で定める日から施行
○ 施行から3年後に見直す旨規定を設けるほか、所要の規定を整備
○ 食品関連事業者等は、食品表示基準に従い、食品の表示をする義務
指示等
(6条・7条)
○ 内閣総理大臣(食品全般)、農林水産大臣(酒類以外の食品)、財務大臣(酒類)
~食品表示基準に違反した食品関連事業者に対し、表示事項を表示し、遵守事項を
遵守すべき旨を指示
○ 内閣総理大臣~指示を受けた者が、正当な理由なく指示に従わなかったときは、命令
○ 内閣総理大臣~緊急の必要があるとき、食品の回収等や業務停止を命令
○ 指示・命令時には、その旨を公表
立入検査等
(8条~10条)
○ 違反調査のため必要がある場合
~立入検査、報告徴収、書類等の提出命令、質問、収去
(参考)表示基準(府令レベル)の取扱い
○ 表示基準の整理・統合は、府令レベルで別途実施
(法律の一元化による表示義務の範囲の変更はない。)
【今後の検討課題】
○ 中食・外食(アレルギー表示)、インターネット販売の取扱い~当面、実態調査等を実施
○ 遺伝子組換え表示、添加物表示の取扱い~当面、国内外の表示ルールの調査等を実施
○ 加工食品の原料原産地表示の取扱い
~当面、現行制度の下での拡充を図りつつ、表示ルールの調査等を実施
→上記課題のうち、準備が整ったものから、順次、新たな検討の場で検討を開始
○ 食品表示の文字のポイント数の拡大の検討 等
1)食品表示法の目的と基本理念
食品表示法制定の目的は、目的が異なる食品衛生法、JAS法、健康増進法に
基づく現行の食品表示制度を、食品表示法に統一することにより、整合性の取れ
た分かりやすいものとすることにあります。
そこで、本法では、食品の表示が食品を安全に取り扱い、使用するために必
要な情報及び一般消費者の選択のために必要な情報を提供するという重要な機
能を果たしていることを踏まえ、食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の
自主的かつ合理的な食品選択の機会を確保することとしています。
また、食品表示法では、基本理念の規定を設けています。消費者基本法の基
本理念を受けて、食品表示の適正確保のための施策は、消費者基本法に基づく
消費者政策の一環として、安全確保、選択の機会確保、必要な情報の提供が消
費者の権利として尊重されること及び消費者の自立の支援を基本とすることを
定めています。
一方で、食品表示は事業者に対し一定のコストをかけて遵守する義務を課す
ものです。そのため、表示基準を遵守することの負担が相対的に大きい小規模
の食品関連事業者の活動や食品関連事業者間の公正な競争の確保に対する配慮
規定も設けています。
2)食品表示基準
食品表示法の下では、食品の安全性の確保や消費者の自主的かつ合理的な選択
78
78
立入検査等
・内閣総理大臣…立入検査、報告徴収、物件提出、収去(第8条第1項)
・農林水産大臣(酒類以外の食品)…立入検査、報告徴収、物件提出(第8条第2項) 等
・財務大臣(酒類)…立入検査、報告徴収、物件提出(第8条第3項)
※権限の委任 内閣総理大臣→消費者庁長官、都道府県知事等、農林水産大臣→地方支分部局の長・都道府県知事、
財務大臣→国税庁長官・地方支分部局の長
表示事項を表示せず
又は遵守事項を遵守しなかった場合
指示・命令
指示
(第6条第1項、
第3項)
消費者庁
農林水産省
財務省
(都道府県等)
食品を摂取する際の安全性に重要な影響を
及ぼす事項について、食品表示基準に従った
表示をしない場合
緊急の必要性
生命又は身体に対する危
害の発生又は拡大の防止
回収等命令
命令
(第6条第5項)
消費者庁
(都道府県等)
命令違反
罰則
1年以下の懲役又は100
万円以下の罰金
(第20条)
(第6条第8項)
原産地(原材料の
原産地を含む。)
の虚偽の表示
2年以下の懲役
又は200万円以
下の罰金
(第19条)
立入検査
等を拒んだ
とき
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 1]食 品
食品表示法の執行の流れ
Ⅱ の機会の確保という統一的な観点に基づき、表示基準が策定できるようになりま
した。また、栄養表示については、近年、生活習慣病等の増加などが世界的に問
題視され、その対応策として適切な食事と運動の重要性が指摘されており、海外
では栄養表示の義務化の動きが進んでいることを踏まえ、我が国においてもこれ
を可能とする枠組みとしています。
食品表示法に基づく食品表示基準の策定に当たっては、関連する施策との整合
性を取る必要があり、食品の衛生を所管する厚生労働大臣、酒類以外の食品を所
管する農林水産大臣、酒類を所管する財務大臣との事前協議をすることを定めて
います。また、これら三大臣は必要があるときには、内閣総理大臣に対し、その
策定を要請することができます。
また、第三者からの意見聴取による表示基準の適正性確保の観点から、食品表
示基準を定めようとするときは、消費者委員会の意見を聴くこととしています。
食品関連事業者等は、食品表示基準に従った表示をする義務を負い、これに違反
した場合には、行政の是正措置の対象となります。
i
消費者庁
(都道府県等)
命令違反
3年以下の懲役
若しくは300万円以下
の罰金又は併科
(第17条)
表示違反
2年以下の懲役若しくは
200万円以下の罰金又は
併科
(第18条)
50万円以下の
罰金
(第21条)
3)違反者に対する是正措置
内閣総理大臣、農林水産大臣及び財務大臣は、不適正な表示をした食品関連事
業者に対し、表示を是正するよう指示をすることができます。また、指示を受け
た者が正当な理由なく指示に従わなかった場合には、内閣総理大臣は、その指示
に係る措置を取るべきことを命ずることができることとしています。
また、アレルギー表示の欠落等消費者の生命や身体に対する危害が発生する可
79
79
能性があり、かつ、緊急の必要があるときは、内閣総理大臣は、食品関連事業者
等に対し、食品の回収等の措置や、期間を定めて業務の全部又は一部を停止する
ことを命令できることとしています。
これらの是正措置が取られた場合には公表することとしており、消費者への情
報提供と違反抑止の効果が期待されるところです。
食品表示法では、食品関連事業者等による不適正な表示が疑われる場合におけ
る、内閣総理大臣等の調査権限も定めています。これまで、任意で提出した書類
に基づき調査を行っていたため十分な調査が行えない場合がある等の問題が生じ
ていたことも踏まえ、立入検査、報告徴収、収去のほか、新たに書類等の提出命
令と質問調査の権限を加え、効果的・効率的な法執行が行えるようにしていま
す。
4)差止請求制度及び申出制度
食品表示法では、食品を選択する上で特に重要な事項である名称やアレルゲン
等一定の事項について、著しく事実に相違する表示行為及びそのおそれがある場
合の、適格消費者団体による食品関連事業者に対する差止請求制度が整備されま
した。この制度は表示に関する法律である景品表示法に導入されています。
また、食品の表示が適正でないため一般消費者の利益が害されているときは、
誰でも内閣総理大臣等に対して適切な措置を求めることができるという申出制度
が設けられています。これは、現行のJAS法の制度を参考に整備したものです
が、食品表示法では、JAS法に由来する食品の品質に基づく表示にとどまらず、
食品の表示は全て申出制度の対象とされています。
この申出を受けた場合には、内閣総理大臣等は必要な調査を行い、申出の内容
が事実であるときは、指示など適切な措置をとることとされています。
5)権限委任
食品表示法における内閣総理大臣の権限は、原則として消費者庁長官に委任さ
れ、さらにその権限は都道府県知事や保健所設置市の長等が行うことができるこ
ととしています。また、財務大臣の権限は国税庁長官に、農林水産大臣と国税庁
長官の権限はそれぞれの地方支分部局の長に委任することができることとしてい
ます。
これにより、現行の食品衛生法やJAS法と同様に、保健所や都道府県、国の
地方出先機関においても食品表示法に基づく権限を行使して、効果的・効率的な
執行が可能となります。
6)罰則
食品関連事業者等に対して一定の表示義務を課す食品表示法では、不適正な表
示に対しては、まずはその是正を求めることが制度の秩序を図る上で重要ですが、
一方で、命令に従わない場合には罰則をもって当たることも必要です。また、安
全性に関する表示や原産地・原料原産地表示の違反があった場合には、直ちに罰
則を科す必要が生じる場合もあります。
食品表示法では、安全性に関する表示や原産地・原料原産地表示に係る基準違
反に対する直罰、命令に従わない場合における罰則等を定めています。
80
80
Ⅱ 問合せ先
○消費者庁食品表示企画課
電話 03-3507-8800(代)
1999年7月…JAS規格制度を改善し、品質表示基準制度を充実・強化するとともに、
有機食品の検査認証制度を創設した。
2002年6月…食品の偽装表示の多発を踏まえ、消費者への情報提供及び実効性確保の
観点から、指示した場合に公表を行うことができるようにするとともに、
罰則を強化した。
2005年6月…消費者の食料品等の選択に資するため、流通の方法についての基準を内
容とするJAS規格の制定を可能にするとともに、JASマークを貼付
することができる製造業者等を認定する登録認定機関の位置付けを国の
代行機関から民間の第三者機関へと移行する措置を講じた。
2009年4月…品質表示基準違反の指示又は命令と併せてその旨を公表する規定及び原
産地(原料又は材料の原産地を含む。
)について虚偽の表示をした飲食料
品を販売した者に対する直罰規定(行政処分を経ずに直接罰則が適用さ
れる規定)を新設した。
2009年6月…消費者庁の設置に伴い、内閣総理大臣が消費者委員会の意見を聴いて品
質表示基準を制定することとした。また、品質表示基準に違反する製造
業者等に対する改善指示は内閣総理大臣又は農林水産大臣が、指示に従
わない製造業者などに対する命令は内閣総理大臣が行うこととした。
1) JAS規格
JAS規格は、加工食品や林産物等の農林畜水産物資(酒類、医薬品等を除く)
の品質についての基準を定めたもので、検査の結果、規格に適合したものにはJA
Sマークを付すことができます。
JAS規格の種類は、ア)品位、成分、性能その他の品質を基準化した規格(一
般JAS規格)、イ)特色のある生産方法を基準化した規格(特定JAS規格)
、ウ)
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 1]食 品
(2)農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)
JAS制度は、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)
に基づいて、農林物資の①品質の改善、②生産の合理化、③取引の単純・公正化及び
④使用又は消費の合理化を図るため、農林水産大臣が制定した日本農林規格(JAS
規格)による検査に合格した製品にJASマークを付けることを認める「JAS規格
制度」と、一般消費者の選択に資するために内閣総理大臣が制定した品質表示基準に
従った表示を全ての製造業者又は販売業者に義務付ける「品質表示基準制度」の2つ
からなっています。
JAS制度は、1950年にJAS法に基づくJAS規格制度としてスタートし、1970
年に品質表示基準制度を加えて現在の形となりましたが、その後も社会情勢や消費者
のニーズ等を踏まえて、制度の改正が行われています。
i
81
81
特色のある流通方法を基準化した規格(流通JAS規格)の3つに大別することが
できます。
一般JAS規格は、2013 年 11 月時点で、即席めんやしょうゆ、果実飲料、合板
等 51 品目について制定されています。
特定JAS規格は、2013 年 11 月時点で、熟成ハム類や地鶏肉、手延べ干しめん
等5品目のほか、有機農産物、有機加工食品、有機畜産物、有機飼料、生産情報公
表牛肉、生産情報公表豚肉、生産情報公表農産物、生産情報公表加工食品及び生産
情報公表養殖魚について制定されています。
流通JAS規格は、2013 年 11 月時点で、定温管理流通加工食品について制定さ
れています。
問合せ先
○農林水産省消費・安全局表示・規格課
電話 03-3502-8111(代)
2)
品質表示基準
1970 年にJAS法を改正して導入された品質表示基準制度は、消費者の経済的利
益を守るために、JASマークの有無にかかわらず、品名、原材料名、内容量、製
82
82
名
称
原材料名
いちごジャム
いちご、砂糖、ゲル化剤(ペクチン)
酸化防止剤(V.C)、酸味料
内 容 量
賞味期限
保存方法
製 造 者
400g
2010.4.15
直射日光を避け常温で保存して下さい。
○○食品株式会社
東京都千代田区永田町○-○-○
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 1]食 品
いちごジャムの表示例
Ⅱ 造年月日、製造業者等の氏名又は名称及び住所等の表示を事業者に義務付けるとい
う制度です。当初は一部の品目に限定されていましたが、1999 年のJAS法改正に
伴い、2000 年3月 31 日に品目横断的な品質表示基準として生鮮食品品質表示基準
及び加工食品品質表示基準を新たに定め、一般消費者向けに販売される全ての飲食
料品に、品質表示を義務付けることとしました。
また、これら品目横断的な品質表示基準に加えて、それぞれの食品の特性に応じ
て、個別に品質表示基準が定められている品目もあります。
なお、2009 年9月の消費者庁設置に伴いJAS法に基づく品質表示基準の企画立
案は消費者庁で行うことになりました。
ア)生鮮食品品質表示基準
生鮮食品については、名称及び原産地等の表示が義務付けられています。
原産地の表示については国産品の場合、原則として、農産物は都道府県名、畜
産物は国産である旨、水産物は生産した水域名又は地域名で表示します。また、
輸入品の場合、原産国名を表示します。
イ)加工食品品質表示基準
加工食品のうち容器に入れ、又は包装されたものについては、名称、原材料
名、内容量、賞味期限、保存方法、製造業者等の氏名又は名称及び住所の表示
が義務付けられています。また、輸入品にあっては、原産国名の表示が必要で
す。
i
ウ)水産物品質表示基準
生鮮食品のうち水産物には、生鮮食品品質表示基準に規定する表示事項のほ
か、解凍、養殖したものについて、その旨表示することが義務付けられていま
す。
エ)玄米及び精米品質表示基準
生鮮食品のうち、容器に入れ、又は包装された玄米及び精米については、名称、
原料玄米、内容量、精米年月日、販売業者等の氏名又は名称、住所及び電話番号
の表示が義務付けられています。
オ)遺伝子組換えに関する表示に係る加工食品品質表示基準第7条第1項及び生鮮
83
83
食品品質表示基準第7条第1項の規定に基づく農林水産大臣の定める基準
大豆、とうもろこし等の農産物(8作物)及びその加工食品(33 食品群)につ
いて、
「遺伝子組換えのものを分別」、
「遺伝子組換え不分別」等の表示が義務付け
られています。
また、高オレイン酸遺伝子組換え大豆、高リシン遺伝子組換えとうもろこしを
使用した加工食品については、
「高オレイン酸遺伝子組換え」等の表示が義務付け
られています。
問合せ先
○消費者庁食品表示企画課
電話 03-3507-8800(代)
(3)食品・外食の原産地表示
① 食品の原産地表示
食品の原産地表示は、食品を選択する際の目安として、消費者の関心が高い項目
の1つです。このためJAS法に基づく品質表示基準において、全ての生鮮食品に
原産地表示を、また、製品として輸入される全ての加工食品に製造した原産国の表
示を義務付けているところです。
以前は、国内で製造・加工される加工食品については、一部の品目を除いてその
原材料の原産地を表示する義務がなく、例えば、生鮮食品である牛肉には原産地表
示がされているのに、牛肉にタレをかけた味付けカルビには原産地表示がないとい
う状況が、消費者にとって分かりにくい表示の1つとされていました。
このため、2004年9月にJAS法に基づく加工食品品質表示基準を改正し、乾燥
野菜類、調味した食肉類、塩蔵魚介類など、原材料の原産地の違いが製品の品質に
大きく影響すると考えられる生鮮食品に近い加工食品20食品群について、2006年10
月から、その主な原材料の原産地を表示することを義務付けました。さらに、2009
年10月からは「緑茶飲料」と「あげ落花生」を、2013年4月からは「黒糖及び黒糖
加工品」と「こんぶ巻」をそれぞれ追加し、現在、原料原産地表示の対象品目は、
22食品群と4品目(農産物漬物、野菜冷凍食品、うなぎ加工品、かつお削りぶし)
となっているところです。(次表)
1.乾燥きのこ類、乾燥野菜及び乾燥
果実
12.表面をあぶった食肉
2.塩蔵したきのこ類、塩蔵野菜及び
塩蔵果実
13.フライ種として衣をつけた食肉
3.ゆで、又は蒸したきのこ類、野菜
及び豆類並びにあん
14.合挽肉その他異種混合した食肉
4.異種混合したカット野菜、異種混
合したカット果実その他野菜、果実
及びきのこ類を異種混合したもの
15.素干魚介類、塩干魚介類、煮干魚
介類及びこんぶ、干のり、焼きのり
その他干した海藻類
84
84
16.塩蔵魚介類及び塩蔵海藻類
6.もち
17.調味した魚介類及び海藻類
7.いりさや落花生、いり落花生、あ
げ落花生及びいり豆類
18.こんぶ巻
8.黒糖及び黒糖加工品
19.ゆで、又は蒸した魚介類及び海藻
類
9.こんにゃく
20.表面をあぶった魚介類
10.調味した食肉
21.フライ種として衣をつけた魚介類
11.ゆで、又は蒸した食肉及び食用鳥
卵
22.4又は14に掲げるもののほか、生
鮮食品を異種混合したもの
Ⅱ 5.緑茶及び緑茶飲料
農産物漬物
かつお削りぶし
野菜冷凍食品
うなぎ加工品
原料原産地表示の拡大の進め方については、2010年12月に消費者委員会食品表示
部会に設置された「原料原産地表示拡大の今後の進め方に関する調査会」において
検討が行われ、2011年7月6日に調査会報告書を公表しました。
その後、食品表示一元化検討会(2011年9月~2012年8月)において、これ
までの「品質の差異」の観点にとどまらず、新たな観点から原料原産地表示の
義務付けをすることについて議論を進めましたが、合意に至らず今後の検討課
題として位置付けられました(2012年8月9日付け 食品表示一元化検討会報告
書)。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 1]食 品
このほか、以下の4品目についても原料原産地の表示が義務付けられています。
i
②
外食の原産地表示
BSE、食品の偽装表示事件の発生などにより、消費者の食品に対する信頼が揺
らぎ、外食に対しても原材料の原産地の情報を求める声が強まっています。
農林水産省では、外食事業者が自主的に原産地表示を行うための指針として、2005
年7月に「外食における原産地表示に関するガイドライン」を策定し、外食事業者
の自主的な原材料の原産地表示を推進しています。
さらに、ガイドラインによる自主的な原産地表示が促進されるよう、業界の事業
者に向けて原産地表示アドバイザー研修会を開催するなど、食品への信頼を確保す
る取組を実施しています。
<外食における原産地表示に関するガイドラインの概要>
1)ガイドラインの位置付け
○ 消費者のメニュー選択に資するため、事業者が自主的に表示を行うための指
針。
85
85
2)原産地表示を行う原材料
○ 以下の原材料について原産地を表示
ア)メニューの主たる原材料(例:ステーキの牛肉)
イ)メニュー名に用いられている原材料(例:チキンソテーの鶏肉)
ウ)こだわりの原材料(旬のさんま)
(注)「主たる原材料」は、メニュー構成を決定する原材料。「こだわりの原材
料」は、品種、栽培方法や産地等にこだわって調達している原材料。
○ その他
ア)売れ筋メニューや定番メニュー等については、上記ア)~ウ)以外の原材
料についても積極的に表示。
イ)地産地消の取組や農業との連携等により安定した調達に取り組んでいる事
業者等は、表示方法を工夫し、より多くの原材料の原産地を表示。
3)原産地の名称
○ 国産品は「国産」、輸入品は「原産国名」を表示。
○ 上記のほか、以下のような一般に知られている地名を用いての表示も可能。
例:国産品の場合、都道府県名、旧国名、地方名、地域名、水域名、島名、湖名
輸入品の場合、州名・省名、地方名、地域名、海域名、島名、湖名
4)複数の国の原材料を使用している場合の表示
○ 重量割合の多い順に原産国を表示。
○ ただし、3ヵ国以上の原材料を使用している場合は、重量割合で3番目以下
を「その他」として表示が可能、等。
5)表示の方法及び表示場所
○ 消費者のみやすい場所に、
「原材料の種類ごと」又は「メニューのジャンルご
と」に消費者に分かりやすい表現で表示。
例:野菜は国産を使用
例:ハンバーグの牛肉は豪州産、豚肉は米国産
6)留意事項
○ 誤った表示を行わないよう、原産地情報の管理を徹底すること。また、消費
者の誤認を招くような表示は行わないこと。
○ 消費者の問合せに迅速かつ適正に対応できるよう、仕入伝票その他関係書類
の整理に努めること。
問合せ先
(食品の原産地表示について)
○消費者庁食品表示企画課
電話 03-3507-8800(代)
(外食の原産地表示について)
○農林水産省食料産業局食品小売サービス課外食産業室
電話 03-3502-8267
86
86
景品表示法上の扱い
外食のメニューや料理等の表示については、不当景品類及び不当表示防止法(景
品表示法)において、自己が供給する商品・役務(料理等)について、一般消費者
に対して実際のものより著しく優良であると誤認させる表示を禁止しているところ
です(詳細については、42ページを参照)。
②
食品表示の適正化について(2013年12月9日食品表示等問題関係府省庁等会議)
2013年12月に取りまとめた「食品表示の適正化について」では、適正化に向けた
対策として以下の内容を盛り込んでいます。
問題の所在
【景 品 表 示 法 の 趣 旨 ・ 内 容 の 不 徹 底】
・過去に同様の不正事案が発生
しているにもかかわらず、景
品表示法の趣旨・内容が十分
に周知徹底されていない。
・景品表示法の禁止対象に関す
る具体的なルールが不明確。
【行政の監視指導体制の問題】
○国内外の消費者の「日本
の食」に対する信頼を失
墜させるおそれ
国・地方の消 費者行
政の体制強化等
・多数の事業者を対象とした監
視指導体制を消費者庁のみで
行うには体制面で限界あり。
・悪質な事案に対する措置が不
十分ではないか。
対策パッケージ
1.個別事案に対する厳正な措置
◎景品表示法による立入検査、指示、措置命令(行政処分)
・措置命令に従わない場合や虚偽報告・検査拒否は、刑事罰(法人は3億円以下の罰金)
○不正競争防止法(虚偽の表示)に違反した者は、刑事罰(法人は3億円以下の罰金)
2.関係業界における表示適正化とルール遵守の徹底
◎食品表示等のルールの明確化と遵守の徹底―消費者庁と関連省庁が連携した指導―
○関係業界に対する指導(表示の状況把握と適正化に向けた取組の要請、必要な指導)
○景品表示法の不当表示に関する分かりやすいガイドラインの作成とその周知・遵守徹底
○消費者庁及び地方消費生活センター等の表示に関する相談体制の強化
3.景品表示法の改正等-緊急に対応すべき事項は次期通常国会に法案を提出
(1)事業者の表示管理体制の強化
◎食品表示等に関するコンプライアンス強化のため、事業者の表示管理体制を明確化
(2)行政の監視指導体制の強化
①消費者庁を中心とする国における体制強化
1)消費者庁・消費生活センターの監視指導体制の強化
・消費者庁・消費生活センターの監視指導体制の強化、「食品表示モニター(仮称)」の導入
2)消 費 者 庁 を 中 心 に 関 係 省 庁 が 連 携 し 、 国 の 表 示 監 視 指 導 を 強 化 す る た め の 体 制 を 確 立
・消費者庁の措置命令の実効性を強化するための所要の措置を導入
②都道府県知事の権限強化(措置命令の導入)
・都道府県知事が、措置命令(行政処分)を行えるようにし、地域の監視指導体制を強化
「日本の食」に対する国内外の消費者の信頼を回復
意識、コンプライアンス(法令・社会
規範の遵守)意識が欠如。
・事業者内部の表示に関する管
理責任体制が不明確である。
事業者のコンプライアンス意識の
確立と景品表示法の周知徹底等
【事業者のコンプライアンス意識の欠如】
・事業者による表示の重要性の
基本課題
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 1]食 品
①
Ⅱ (4)食品表示等問題への対応
2013年10月以降、多くのホテルや百貨店、レストラン等で、食品表示等の不正事案
が表面化しました。
この食品表示等の問題は、国内外の消費者の「日本の食」に対する信頼を失墜させ
るおそれもあることから、関係府省庁等の担当局長等が参集し、政府一丸となった取
組について協議する「食品表示等問題関係府省庁等会議」を設置しました。2013年中
に同会議を2回開催し、同年12月には「食品表示の適正化について」を取りまとめ、
必要な対策を速やかに講じることとしております。
i
(3)違反事案に対する課徴金等の新たな措置の検討
◎景品表示法の不当表示事案に対する課徴金等の新たな措置について、総合
的な観点から検討を行う(消費者委員会(消費者庁からの諮問))。
③
ウェブサイトによる情報提供、相談窓口等
1)ウェブサイトによる情報提供
○食品表示等問題対策専用ページ
ウェブサイト
http://www.caa.go.jp/representation/syokuhyou/index.html
87
87
上記の関係府省庁会議の報告、消費者庁の調査結果及び各府省庁から報告のあっ
た各府省庁所管団体に対しての調査結果、景品表示法のガイドラインを始めとする
関係資料、相談窓口の案内等、関係する情報をまとめて提供しています。
2)相談窓口等
一般の方の相談窓口:0570-064-370(消費者ホットライン)
事業者の方からの相談窓口:消費者庁 03-3507-8800 (代)(内線:2364)
情報提供 電話番号:消費者庁 03-3507-8800(代)(内線:2390、2394)
情報提供は上記の食品表示等問題対策専用ページにおいても専用フォームにて受
け付けております。
問合せ先
○消費者庁表示対策課、消費者政策課
電話 03-3507-8800(代)
(5)有機食品の検査認証制度
有機食品とは、有機農産物(堆肥等で土作りを行い、種まき又は植え付け前に2年
以上禁止された農薬や化学肥料を使用しないほ場で栽培し、遺伝子組換え技術を使
用しない等の基準を満たした農産物)、これらを原料とした有機加工食品(化学的に
合成された食品添加物や薬剤の使用を避ける等の基準を満たした加工食品)及び有
機畜産物(有機飼料を給与し、動物医薬品の使用を避け、野外への放牧などストレ
スを与えず飼育する等の基準を満たして飼育した家畜から生産された畜産物)を指し
ます。
有機食品を検査・認証するため、農林水産大臣は、JAS法に定められた基準に基
づいて審査を行い、登録認定機関を登録します。登録認定機関は、規格に合致した生
産が行われているかどうか、農家や製造業者等の検査・審査を行い、認定します。
①
背景
有機農産物については、1992年に「有機農産物等に係る青果物等特別表示ガイド
ライン」により生産や表示のルールを示し、表示の適正化を図ってきましたが、ガ
イドラインには強制力がないことから、不適切な表示も多く、消費者はもとより生
産者からも適切な表示がなされるよう、第三者機関による認証を受けた有機食品に
対する要望が高まっていました。
また、国際的にも有機食品の生産基準等について検討が行われており、FAO(国
連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同食品規格委員会(コーデックス
委員会)において「有機的に生産される食品の生産、加工、表示及び販売に係るガ
イドライン」が1999年7月に採択され、有機食品の生産基準、検査の仕組みや表示
等についての指針が示されました。
88
88
②
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 1]食 品
有機JASマーク
Ⅱ 検査認証制度の導入
このような状況を踏まえ、我が国においても有機食品の検査認証制度の導入の必
要性について検討が行われた結果、1999年7月のJAS法の改正を機に、有機農産
物及び有機農産物加工食品の検査認証制度が創設されました。
この制度の導入によって、2001年4月から、
「有機JASマーク」が付された農産
物やその加工食品でなければ「有機」、「オーガニック」等の表示を付してはならな
いという表示規制が行われています。
なお、畜産物やその加工品については2005年10月にJAS規格が制定されていま
す。
i
問合せ先
○農林水産省消費・安全局表示・規格課
電話 03-3502-8111(代)
(6)遺伝子組換え食品
遺伝子組換え食品(組換えDNA技術応用食品)とは、組換えDNA技術を用い、
ある生物から目的とする有用な遺伝子を取り出し、その遺伝子を改良しようとする生
物に導入することにより、新しい性質を付加した食品のことです。遺伝子組換え食品
等の安全性については、食品安全委員会において評価がなされます。その結果、安全
性に問題がないと判断された食品等は、厚生労働省から安全性審査を経た旨が公表さ
れます。
公表された遺伝子組換え食品には、例えば、除草剤の影響を受けないなたねや大豆、
オレイン酸含量を高めた大豆、害虫に強いトウモロコシ等があり、米国・アルゼンチ
ン等で栽培され商品化されています。
<遺伝子組換え食品の表示>
JAS法では、①従来のものと組成、栄養価等が同等であって、食品中に組換え
られたDNA又はこれによって生じたタンパク質が存在するもの、②従来のものと
組成、栄養価等が著しく異なるものについて、義務を課しています。
また、食品衛生法では、食品衛生調査会表示特別部会(当時)の報告を受け、遺
伝子組換え食品の表示について、上記の安全性審査と併せて、表示を2001年4月よ
り義務付けました。
なお、2013年11月時点の表示対象品目は、大豆、とうもろこし、ばれいしょ、
なたね、綿実、アルファルファ、てん菜及びパパイヤの8農作物と、これらを
89
89
原材料とする加工食品33食品群となっています。JAS法では、従来のものと
組成、栄養価等が著しく異なるものとして、高オレイン酸大豆及び高リシンとう
もろこしの農産物と、これらを原材料とする加工食品も表示義務の対象としてい
ます。
問合せ先
○消費者庁食品表示企画課
電話 03-3507-8800(代)
○厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課
電話 03-5253-1111(代)
(7)食品の期限表示
従来、品質の劣化が比較的緩やかな食品等に表示する期限表示には、食品衛生法に
規定する「品質保持期限」又はJAS法に規定する「賞味期限」のいずれの用語を用
いてもよいこととされていましたが、2003年7月に「賞味期限」と記載することと統
一されました。また、品質の劣化が速い食品の期限表示である「消費期限」も含め、
従来、食品衛生法とJAS法の間で用語の定義に若干の文言上の相違がありましたが、
当該改正により、両法で統一されました。
「消費期限」とは、定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その
他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す
年月日をいいます。
「賞味期限」とは、定められた方法により保存した場合において、期待される全て
の品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいいます。ただし、
当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるとされ
ています。
問合せ先
○消費者庁食品表示企画課
電話 03-3507-8800(代)
(8)アレルギー物質を含む食品
特定の食品に対してアレルギー体質を持つ方の健康危害の発生を防止する観点から、
食物アレルギーを引き起こすことが明らかになった食品のうち、特に発症数、重篤度
から勘案して表示する必要性の高い7品目(小麦、そば、卵、乳、落花生、えび及び
かに)を「特定原材料」とし、これらを含む加工食品については、食品衛生法に基づ
き、当該特定原材料を含む旨の記載を義務付けています。
また、通知において特定原材料に準じるもの20品目(あわび、いか、いくら、オレ
ンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、
鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご及びゼラチン)の表示を奨
励しています。
90
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問合せ先
○消費者庁食品表示企画課
電話 03-3507-8800(代)
(9)保健機能食品制度等(栄養機能食品、特定保健用食品)
いわゆる健康食品のうち、一定の条件を満たした食品について「保健機能食品」と
しての機能表示を認める制度が食品衛生法に基づき2001年4月に創設されました。当
制度は、食品の目的や機能等の違いにより、
「栄養機能食品」と「特定保健用食品」の
2つの表示に分けられ、消費者が安心して、食生活の状況に応じた食品の選択ができ
るよう、適切な情報提供をすることを目的として創設されたものです。
また、健康食品に関わる制度については、2004年6月にとりまとめられた「『健康
食品』に係る今後の制度のあり方について(提言)」において示された方向性を踏ま
え、健康食品について国民に対する適切な情報提供が行われる環境整備を図る観点
から、保健機能食品(特定保健用食品及び栄養機能食品)における表示内容の充実
及び適正化等を始めとする見直しを行いました(一部を除き、2005年2月1日施行)。
さらに、
「健康食品」の適切な利用のための普及啓発として、独立行政法人国立健康・
栄養研究所の「『健康食品』の安全性・有効性データベース」等による科学的な情報提
供を進めていくとともに、健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の監視の強化
等を図っているところです。
なお、当該食品は、医薬品ではないので疾病の予防・治療の効果があるものではあ
りません。また多量に摂取しても、より健康が増進するものではありません。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 1]食 品
(注1)キャリーオーバー:原料中には含まれるが、使用した食品には微量で効果が出
ないもの。
(注2)加工助剤:加工工程で使用されるが、除去されたり、中和されたり、ほとん
ど残らないもの。
Ⅱ 食物アレルギーはごく微量のアレルギー物質によっても誘発することがありますの
で、特定原材料である7品目はキャリーオーバー注1及び加工助剤注2に該当する食品添
加物であっても表示が義務付けられています。
具体的な表示方法としては、従来の原材料表示に付け加えて、特定原材料等を
原材料として含む場合には「(〇〇を含む)」、「(原材料の一部に〇〇を含む)」と
表示し、食品添加物の場合は「(〇〇由来)」等、特定原材料等を含む旨を記載し
ます。また、その表記から使用されている特定原材料が連想(代替)できるよう
な一般的(常識的)な表記であると判断されたものに限り、
「代替表記」や「特定
加工食品」として特定原材料の表示と同等に扱い、特定原材料等の表示は不要と
しています。
i
①
栄養機能食品について
栄養機能食品とは、栄養成分の機能を表示した食品です。当該食品の対象成分は
現在、ミネラル5種類とビタミン12種類です。当該食品と称して販売するには、国
91
91
への許可申請等は必要ありませんが、国が定めた規格基準(当該食品の1日当たり
摂取目安量に含まれる機能表示成分量の上・下限値等)に適合し、包装部分に「栄
養機能食品」や「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です。」(栄養機能表
示)など定められた表示をしなければなりません。
②
特定保健用食品について
特定保健用食品とは、身体の生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含
んでおり、血圧、血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けたり、お腹の
調子を整えたりするのに役立つなどの、特定の保健の用途に資する旨を表示する食
品です。当該食品は、国において個別に特定の保健機能を示す有効性や安全性等に
関する審査を受け、その表示について許可を受けなければなりません。
(参考)
特別用途食品について
特別用途食品とは、病者用、妊産婦用、授乳婦用、乳児用、えん下困難者用、
特定の保健の用途などの特別の用途に適する旨の表示をする食品です。これらは、
その表示について国の許可を受けなければなりません。特別用途食品のうち、特
定保健用食品のみが保健機能食品に含まれます。
保健機能食品制度等
○ 「特定保健用食品」には、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることがで
きる。
○ 「栄養機能食品」には、栄養成分の機能の表示をすることができる。
○ 「特定保健用食品」及び「栄養機能食品」を「保健機能食品」という。
○ 保健機能食品以外の食品には、保健の機能や栄養成分の機能の表示をすることができない。
食品
医薬品
【保健機能食品】
【特別用途食品】
《健康食品》
【特定保健用食品】
保健の機能の
表示ができる
【栄養機能食品】
(例)
栄養成分の機能の表示ができる
(例)
カルシウムは骨や歯の形成に
必要な栄養素です。
おなかの調子を整えます。
食物繊維
オリゴ糖
他
病者用
乳児用
他
・医療用医薬品
・一般用医薬品
ビタミン
ミネラル
医薬部外品
問合せ先
○消費者庁食品表示企画課
電話 03-3507-8800(代)
92
92
地方農政局・地方農政事務所の職員による監視・指導
一般調査(生鮮食品等の表示実施状況調査等)として、生鮮食品の店舗における
名称、原産地等の品質表示の状況を調査し、品質表示の実施状況が不十分な店舗又
は原産地等の表示が不適正な店舗に対し指導、啓発を行うことにより、生鮮食品の
品質表示の適正化を図ることとしています。
また、地方農政局及び地域センターにおいて毎月、地域における流通・販売実態
を考慮して青果、水産、畜産毎に品目を指定して原産地の表示根拠を仕入れ伝票等
で確認することにより、表示の真正性の確認を行うこととしています。
②
国民の協力を得た監視体制の充実
「食品表示 110 番」は、広く国民から食品の表示について情報提供等を受け付け
るためのホットラインとして全国の地方農政局、地域センター及び独立行政法人農
林水産消費安全技術センターに設置しています。
③
産地表示適正化の推進
産地表示の適正化を図るため、原産地判別の参考となるデータを得るための科学
的分析を民間機関に委託し、得られたデータを活用して産地偽装の取締りを重点的
に実施することとしています。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 1]食 品
①
Ⅱ (10)食品表示についての巡回調査
食品表示についての巡回調査は、農林水産省の地方農政局及び地域センターに、食
品全般の表示の監視業務に専従する職員を配置して行っています。これらの職員が、
日常的に小売店舗等を巡回し、表示について監視・指導を実施しています。
このほか、食品表示110番等を通じて情報が寄せられた個別の案件については立入検
査等を行っています。
これらの調査を通じて不適正な表示が明らかになった場合には指示・公表等の措置
を適切に行うこととしています。
i
④
食品表示の科学的検証技術の確立と活用
独立行政法人農林水産消費安全技術センターでは、食品の偽装表示の監視・取締
りのため、生鮮食品については品種及び原産地、加工食品については原材料表示の
真正性や原材料の原産地等について、DNA分析、元素分析、安定同位体比分析、
各種成分分析等の科学的手法を活用した検査を計画的に行っています。また、研究
機関や大学と連携して、科学的手法による食品表示の実用的な検査技術を開発して
います。
⑤
不正表示に対する厳正な対処
これらの監視においては、必要に応じ都道府県・消費者庁等の関係行政機関とも
連携するとともに、不正表示が行われていることを確認した場合には、JAS法に
基づく指示・公表を行うなど厳正な措置を講じているところです。
93
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問合せ先
○農林水産省消費・安全局表示・規格課
電話 03-3502-8111(代)
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[2]工業製品等
Ⅱ (1)消費生活用製品安全法
① 消費生活用製品安全法の概要
消費生活用製品安全法(1973年6月6日公布、最終改正2011年12月14日)は、消
費生活用製品による一般消費者の生命又は身体に対する危害の防止を図るため、特
定製品の製造及び販売を規制するとともに、特定保守製品の適切な保守を促進し、
併せて製品事故に関する情報の収集及び提供等の措置を講じ、もって一般消費者の
利益を保護することを目的としています。対象となる消費生活用製品とは、一般消
費者の生活の用に供される製品をいいますが、船舶、消火器具等、食品、毒物・劇
物、自動車・原動機付自転車などの道路運送車両、高圧ガス容器、医薬品・医薬部
外品・化粧品・医療器具など、他の法令で個別に安全規制が設けられている製品に
ついては、法令で除外しているものがあります。
<国による特定製品の安全規制(PSCマーク制度)>
消費生活用製品の中で、消費者の生命・身体に対して特に危害を及ぼすおそれ
が大きい製品については、国の定めた技術上の基準に適合した旨のPSCマーク
がないと販売できず、マークのない危険な製品が市中に出回った時は、経済産業
省は製造事業者等に回収等の措置を命ずることができます。これらの規制対象品
目は、自己確認が義務付けられている特定製品とその中で更に第三者機関の検査
が義務付けられている特別特定製品があります。
特
特別特定製品
乳幼児用ベッド
携帯用レーザー応用装置
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [2]工業製品等
1.製品安全4法
i
浴槽用温水循環器
ライター
定 製 品
家庭用の圧力なべ及び圧力がま
乗車用ヘルメット
登山用ロープ
石油給湯機
石油ふろがま
石油ストーブ
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95
<国による重大製品事故情報報告・公表制度>
半密閉式ガス瞬間湯沸器や家庭用シュレッダーの事故を受け、2006年に消費生
活用製品安全法が改正されました。消費生活用製品により、死亡事故、重傷病事
故、後遺障害事故、一酸化炭素中毒事故や火災(重大製品事故(注))が発生した
場合、事故製品の製造・輸入事業者は、重大製品事故の発生を知った日を含めて
10日以内に消費者庁に報告しなければなりません。また、販売・修理・設置工事
事業者は、重大製品事故を知った時点で、直ちに製品の製造・輸入事業者へ通知
するよう努めなければなりません。
また、重大製品事故情報が報告されると、消費者庁は、ガス機器・石油機器の
場合は、事業者名、型式名を含め、迅速にウェブサイト上で公表するとともに記
者発表します。また、ガス機器・石油機器以外の一般製品の場合は、製品起因か
否かが不明なときは、事故概要のみをウェブサイト上で公表します。さらに事故
情報を分析し、必要があると認める時には、事故報告の詳細(事業者名、機種型
式名、事故内容、事業者による再発防止策、その他の事故再発防止のための留意
事項)を報道発表します。
(注)重大製品事故とは、消費生活用製品事故の中でも、死亡や30日以上の治療
を要するなど被害が重大であった事案や火災の発生があった事案を指してお
り、消費生活用製品安全法第2条第6項に規定されています。
<長期使用製品安全点検・表示制度>
2007年2月の小型ガス湯沸器に関する死亡事故等、製品の長期使用に伴う劣化
(経年劣化)が主因となる重大な事故の発生を受け、2007年に消費生活用製品安
全法が改正されました。製品の経年劣化による事故を未然に防止するため、長期
使用製品安全点検・表示制度が創設されました。
長期使用製品安全点検制度では、特定保守製品※の製造・輸入事業者が、製品
に、設計標準使用期間(安全上支障がなく使用することができる標準的な期間)、
点検期間、点検の要請を容易にするための問合せ連絡先等を表示します。特定保
守製品の所有者には、製造・輸入事業者に対して所有者情報(情報に変更があっ
た場合は変更情報)を提供することと、事故が生じた場合に他人に危害を及ぼ
すおそれがあることに留意して、点検等の保守を行うことが求められています。
また、長期使用製品安全表示制度では、電気機器のうち、扇風機、エアコン、
換気扇、洗濯機(洗濯乾燥機を除く。)、ブラウン管テレビの製造・輸入事業者
が、製品に、設計上の標準使用期間と経年劣化についての注意喚起等の表示を
します。
※特定保守製品・・・屋内式ガス瞬間湯沸器(都市ガス用、LPガス用)、屋
内式ガスふろがま(都市ガス用、LPガス用)、石油給湯機、石油ふろがま、
密閉燃焼式石油温風暖房機、ビルトイン式電気食器洗機、浴室用電気乾燥
機
96
販売業者による安全情報提供の促進
小売業者は、販売する商品や提供するサービスに関し、消費者からクレーム等を
直接受けており、その中には、消費者の安全に関する情報を有するケースがありま
す。この安全に関する情報の早期把握は、危害の発生・拡大を防止するために重要
です。このため、小売業者は、消費者からのクレーム等から得た安全に関する情報
を製造業者、消費者及び行政にフィードバックする等の責務を果たすことが必要と
考えられます。
<製品事故に関する情報の提供について>
小売業者は、消費者の安全の確保を目的として、その小売り販売に関する消費
生活用製品について生じた製品事故に関する情報を収集し、当該情報を一般消費
者に対し適切に提供するよう努めなければなりません。(第34条第1項)
加えて、その小売販売に関する消費生活用製品安全法について重大製品事故が
生じたことを知ったときは、その旨を当該消費生活用製品の製造事業者又は輸入
事業者に通知するよう努めなければなりません。(第34条第2項)
さらに、重大製品事故以外の事故情報に関しては、独立法人製品評価技術基盤
機構(59ページ参照)に対し安全に関する情報を報告することが期待されます。
これら販売業者の取組を促進するために、
「製品安全に関する流通事業者向けガ
イド」を策定・公表するなどし、事業者全体での取組を促進しています。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [2]工業製品等
②
Ⅱ 問合せ先
(重大製品事故情報報告・公表制度に関する第1報、報告の要否の相談につ
いて)
○消費者庁消費者安全課
電話 03-3507-8800(代)
(上記以外、PSCマーク制度、重大製品事故情報報告・公表制度に関する
原因究明結果及びリコールの開始・進捗・相談、長期使用製品安全点検・表
示制度について)
○経済産業省商務流通保安グループ製品安全課
電話 03-3501-1511(代)
i
問合せ先
○経済産業省商務流通保安グループ製品安全課
電話 03-3501-1511(代)
(2)液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律
液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(LPガス法、1967年12
月28日公布、最終改正2013年6月14日)は、一般消費者等に対する液化石油ガスの販
売、液化石油ガス器具等の製造及び販売等を規制することにより、液化石油ガスによ
る災害を防止するとともに液化石油ガスの取引を適正にし、もって公共の福祉を増進
97
97
することを目的としています。
<国による安全規制(PSLPGマーク制度)>
主として一般消費者等が液化石油ガスを消費する場合に用いられる機械、器具
又は材料であって、政令で定めたものを「液化石油ガス器具等」とし、そのうち、
構造、使用条件、使用状況等からみて特に液化石油ガスによる災害の発生の恐れ
が多いと認められる液化石油ガス器具等を「特定液化石油ガス器具等」として指
定しています。
これらは、省令で定めた技術上の基準に適合していることを示す表示(PSL
PGマーク)を付したものでなければ、販売又は販売の目的で陳列することがで
きません。
なお、これらのガス器具等が技術上の基準に違反していると認められる場合に
は、製造事業者や輸入事業者に対して改善を命じたり、改善がなされるまでの一
定期間、事実上の販売禁止となる表示の禁止を命じたり、また、マークのない危
険な製品が市中に出回った時には、回収等の措置を命ずることができます。
特定液化石油ガス器具
カートリッジガスこんろ
液化石油ガス用瞬間湯沸器(半密閉式)
液化石油ガス用バーナー付ふろがま(半密閉式)
ふろがま
液化石油ガス用ふろバーナー
液化石油ガス用ストーブ(半密閉式)
液化石油ガス用ガス栓
調整器
特定液化石油ガス器具
以外の液化石油ガス器具
一般ガスこんろ
液化石油ガス用瞬間湯沸器(開放式、密閉式、屋外式)
液化石油ガス用継手金具付高圧ホース
液化石油ガス用バーナー付ふろがま(密閉式、屋外式)
液化石油ガス用ストーブ(開放式、密閉式、屋外式)
液化石油ガス用ガス漏れ警報器
液化石油ガス用継手金具付定圧ホース
液化石油ガス用対震自動ガス遮断器
問合せ先
○経済産業省商務流通保安グループ製品安全課
98
98
電話 03-3501-1511(代)
特定ガス用品
ガス瞬間湯沸器(半密閉燃焼式)
ガスストーブ(半密閉燃焼式)
ガスバーナー付ふろがま(半密閉燃焼式)
ガスふろバーナー
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [2]工業製品等
<国による安全規制(PSTGマーク制度)>
主として一般消費者等がガスを消費する場合に用いられる機械、器具又は材料で
あって、政令で定めたものを「ガス用品」とし、そのうち、構造、使用条件、使用
状況等からみて特にガスによる災害の発生のおそれが多いと認められるガス用品を
「特定ガス用品」として指定しています。これらは、省令で定めた技術上の基準に
適合していることを示す表示(PSTGマーク)を付したものでなければ、販売又
は販売の目的で陳列することができません。
なお、これらのガス用品が技術上の基準に違反していると認められる場合には、
製造事業者や輸入事業者に対して改善を命じたり、改善がなされるまでの一定期間、
事実上の販売禁止となる表示の禁止を命じたり、また、マークのない危険な製品が
市中に出回った時には、経済産業省は製造事業者等に回収等の措置を命ずることが
できます。
Ⅱ (3)ガス事業法
ガス事業法(1954年3月31日公布、最終改正2011年12月14日)は、ガス事業の運営
を調整することによって、ガスの使用者の利益を保護し、及びガス事業の健全な発達
を図るとともに、ガス工作物の工事、維持及び運用並びにガス用品の製造及び販売を
規制することによって、公共の安全を確保し、併せて公害の防止を図ることを目的と
しています。
i
特定ガス用品
以外のガス用品
ガスこんろ
ガス瞬間湯沸器(開放燃焼式、密閉燃焼式、屋外式)
ガスストーブ(開放燃焼式、密閉燃焼式、屋外式)
ガスバーナー付ふろがま(密閉燃焼式、屋外式)
問合せ先
○経済産業省商務流通保安グループ製品安全課
電話 03-3501-1511(代)
(4)電気用品安全法
電気用品安全法(PSE法・電安法、1961年11月16日公布、最終改正2011年12月14
99
99
日)は、電気用品の製造、輸入、販売を規制するとともに、電気用品の安全性の確保
につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより、電気用品による危険及び障
害の発生を防止することを目的としています。
<国による電気用品の安全規制(PSEマーク制度)>
一般家庭、商店、事務所等で使用される電気製品であって、政令で定められて
いる製品(電気用品)は、国の定めた技術上の基準に適合した旨のPSEマーク、
事業者名、定格電圧、定格消費電力等の表示がないと販売できず、これらの表示
のない危険な製品が市中に出回ったとき等は、経済産業省は製造事業者等に回収等
の措置を命ずることができます。これらの規制対象品目は、技術基準への適合につ
いて自己確認が義務付けられており、その中で特に危険又は障害の発生するおそれ
が多いものは、特定電気用品として第三者機関の検査が義務付けられています。
特定電気用品
電気用品
ゴム絶縁電線、直流電源装置等、電気用品安全法施行令別表第
一に挙げられている電気用品 116 品目
扇風機、電気こたつ等、電気用品安全法施行令別表第二に挙げ
られている電気用品 341 品目
問合せ先
○経済産業省商務流通保安グループ製品安全課
電話 03-3501-1511(代)
2.日本工業規格表示制度(JISマーク表示制度)
JISマーク表示制度は、消費者等が安心して「品質」や「互換性」
「安全性」が確
保された商品を入手できるように、これらの内容を日本工業規格(JIS)に規定し、
そのJISに適合する製品にはJIS適合品であることを示す特別の表示(JISマ
ーク)を付けることができるというものです。
JISマーク表示制度は2005年10月1日より、国が工場を認定する旧制度から民間
の登録認証機関が製品を認証する制度へと変更され、JISに該当する商品を製造す
る事業者等は民間の登録認証機関から認証を受けた後、JISマーク(次図)をその
商品などに表示することができます。このJISマークが付いている商品がいわゆる
JISマーク品といわれるもので、JISに適合した商品を選ぶ目安となっています
(対象商品:日用品、電気用品、家具類、建築資材など)。消費者が安心して品質の良
い商品を入手できることに貢献すべく、引き続き信頼性の高い制度として推進します。
100
100
JISマーク
3.家庭用品(家庭用品品質表示法)
家庭用品品質表示法(家表法、1962年5月4日公布、最終改正2011年12月14日)
は、消費者が日常使用する家庭用品について、品質に関し表示すべき事項や、その
表示方法を定め、家庭用品の品質表示を適正かつ分かりやすくすることにより、消
費者が商品の品質を正しく認識し、その購入に際し不測の損失を被ることがないよ
う、消費者保護を図ることを目的に制定された法律です。家庭用品は、消費者の生
活スタイル、ニーズの変化や製品開発の技術革新等により様変わりしてきており、
表示の対象とする品目や表示を行う事項等については、随時見直しが行われていま
す。
(1)対象品目
本法の対象となる家庭用品は、一般消費者の通常生活に使用されている繊維製品、
合成樹脂加工品、電気機械器具及び雑貨工業品のうち、消費者がその購入に際し品質
を識別することが困難で、かつ品質を識別することが特に必要と認められる品目につ
いて、政令で指定されます。
現在は、以下のような90品目が対象に指定されております。
・ 繊維製品:糸、織物、上衣、ズボン、スカート、下着等 計35品目
・ 合成樹脂加工品:食事用、食卓用又は台所用の器具等 計8品目
・ 電気機械器具:電気洗濯機、電気掃除機、電子レンジ等 計17品目
・ 雑貨工業品:魔法びん、机及びテーブル、ほ乳用具等 計30品目
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [2]工業製品等
図
Ⅱ 問合せ先
〇経済産業省産業技術環境局認証課
電話 03-3501-1511(代)
i
(2)表示の標準となる事項
対象品目については、次の2つの事項について、それぞれの品目ごとに表示の標準
となる事項を消費者庁長官が告示しています。表示者(製造業者、販売業者又は表示
業者)はこの告示に従って品質表示を行うことになります。
① 成分、性能、用途、貯法その他品質に関し表示すべき事項
② 表示の方法その他①に掲げる事項の表示に際して表示者が遵守すべき事項
(3)表示の標準に関する最近の見直し
近年では、テレビ、エアコン、浄水器、洋傘、乳幼児用椅子などについて見直しを
101
101
行いました。
また、本法における繊維製品については、日本工業規格JIS L0217(繊維製品の
取扱いに関する表示記号及びその表示方法)で規定された洗濯絵表示を表示すること
となっていますが、現在、国際規格であるISO 3758(繊維-記号による取扱い表示
コード)との整合化に向けて新しいJISの制定が検討されています。洗濯絵表示に
関する新しいJISが制定された際には、本法においても当該新JISに基づく洗濯
絵表示をするよう、所要の見直しを行う予定です。
また、その他の事項についても、必要に応じて随時見直しを行う予定です。
問合せ先
○消費者庁表示対策課
電話 03-3507-8800(代)
○経済産業省商務流通保安グループ製品安全課
電話 03-3501-1511(代)
102
102
[3]金融商品等
Ⅱ (1)目的
金融商品取引法(金商法、1948 年4月 13 日公布、最終改正 2013 年6月 21 日)
は、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑に
するほか、金融商品等の公正な価格形成等を図り、もって「国民経済の健全な発展」
と「投資者の保護」に資することを目的としています。
(2)金融商品取引法の概要
① 規制の対象
有価証券(国債、地方債、社債、株券、投資信託の受益証券など)、みなし有価
証券(信託受益権、集団投資スキーム持分など)の売買等及びデリバティブ取引
(金融商品を原資産とする先物取引、オプション取引、スワップ取引)を規制の
対象としています。
② 企業内容等の開示
投資者が十分な情報に基づく投資判断を行うための制度として、上場株券など、
投資者の間に広く流通する有価証券の発行者に対し、その事業内容や財務内容等
を記載した開示書類(有価証券届出書、有価証券報告書など)の提出等を義務付
け、インターネット(金商法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子
開示システム(EDINET)、http://disclosure.edinet-fsa.go.jp/)を通じて公衆
縦覧しています。
③ 金融商品取引業者の開業・業務範囲に関する規制
金融商品取引業は原則、登録制となっており、業務内容の範囲に応じ、金融商
品取引業を区分し、各区分に応じた参入規制(財産的基礎要件、人的構成の適確
性など)等を設けています。
例えば、流動性の高い有価証券の販売・勧誘、引受け、店頭デリバティブ取引、
有価証券等管理業務などを行う場合には第一種金融商品取引業、流動性の低い有
価証券の販売・勧誘などを行う場合には第二種金融商品取引業、投資信託の受益
証券の権利者から拠出を受けた金銭その他の財産を、金融商品の価値等の分析に
基づく投資判断に基づいて有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投
資として運用を行う場合には投資運用業、有価証券の価値等又は金融商品の価値
等の分析に基づく投資判断に関して投資顧問契約を締結して助言を行う場合には
投資助言・代理業として、それぞれ登録を受ける必要があります。
④ 金融商品取引業者の行為に関する規制
金融商品取引業者が金融商品の販売・勧誘を行う際に遵守すべき事項として、
顧客に対し誠実・公正に業務を遂行する義務、商号や登録番号を表示しなければ
ならないなどの広告等の規制、契約締結前に契約の概要、顧客が支払うべき手数
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 3]金融商品等
1.金融商品取引法
i
103
103
料、相場等の変動により損失が生じるおそれがあるときはその旨等を記載した書
面を交付する義務、顧客の損失を補てんすることの禁止、適合性原則(顧客の知
識・経験・財産の状況及び契約の目的に照らして不適当と認められる勧誘を行っ
てはならないという原則)、禁止行為(虚偽告知の禁止、断定的判断の提供の禁止
など)などを定めています。
⑤ 金融商品取引業者が破綻した場合の投資者保護
金融商品取引業者には、顧客から預かった財産を金融商品取引業者自身の財産
と分けて保管することが義務付けられているため(分別保管)、金融商品取引業者
が破綻した場合でも、顧客から預かった財産は顧客に返還されることになります。
また、破綻処理に相当な時間を要するなど有価証券関連業を行う第一種金融商
品取引業者が顧客から預かった財産を円滑に返還することが困難になった場合に
備え、投資者保護基金による補償制度が設けられています。有価証券関連業を行
う第一種金融商品取引業者の破綻に関する投資者保護基金の補償金額は1人当た
り 1,000 万円までです。
⑥ 有価証券の取引等に関する規制
有価証券の売買等について、不正の手段を用いるなどの不正行為の禁止、相場
の変動を図る目的で行う風説の流布・偽計・暴行脅迫の禁止、相場操縦行為の禁
止、会社関係者等が内部情報を知りながら取引を行うインサイダー取引の規制な
どを定めています。
また、規制の実効性を確保するため、違反に対する刑事罰のほか、行政上の措
置として課徴金を課し、不正に得た利得を剥奪する制度を設けています。
⑦ その他投資者保護
金融商品・サービスに関する顧客と業者等のトラブルを簡易・迅速に解決する
手段として、金融分野における裁判外の紛争解決制度(金融ADR)
(詳細につい
ては、226 ページ参照)を設けています。
また、無登録業者による未公開株等の取引に関する対応として、無登録業者が
非上場の株券等の売付け等を行った場合には、その売買契約を原則として無効と
することなどを定めています。
問合せ先
○金融庁総務企画局市場課、企業開示課
電話 03-3506-6000(代)
2.商品先物取引法
商品先物取引は、少額な資金でその何倍もの取引ができるハイリスク・ハイリター
ンな取引であり、その取引に参加するに当たっては、取引の内容・リスク等を十分に
理解することが必要です。
商品先物取引による損益については、投資家(商品先物取引では「委託者」といい
ます。)に帰属することとなりますので、委託者の責任において、主体的な判断の下、
104
104
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 3]金融商品等
(1)委託者資産の保全制度
商品先物取引に参加するには、委託者は取引の担保である「取引証拠金」を預託
する必要があります。国内取引における「取引証拠金」については、商品先物取引
業者を介して、株式会社日本商品清算機構に全額直接預託され、厳重に管理される
こととなります(商品先物取引業者が委託者から預かった証拠金をそれ以上の金銭
等に差し換えて清算機構に預託する場合もあります。)。(取引証拠金制度)
また、国内取引における「取引証拠金」以外に商品先物取引業者に預けた資産に
ついては、商品先物取引業者において自身の財産と区別して信託会社への信託や日
本商品委託者保護基金への預託等によって厳重に保管されることとなります。なお、
海外取引及び店頭商品デリバティブ取引において商品先物取引業者に預けた資産に
ついても、商品先物取引業者において自身の財産と区別して信託会社への信託等に
よって厳重に保管されることとなります。(分離保管制度)
さらに、商品先物取引業者が万一破綻等した場合に備え、国内取引については日
本商品委託者保護基金において、一般委託者についてのみ1人当たり1,000万円以内
でのペイオフを行う制度を整備しています。(一般委託者支払制度)
また、海外取引及び店頭商品デリバティブ取引については弁護士等の受益者代
理人が選定されており、万が一の場合はこの代理人を通じて清算業務が行われま
す。
Ⅱ 取引を行うことが大前提となります。
また、この取引は商品先物取引業者(又は商品先物取引仲介業者)を介して行いま
すが、その方法として、(1)商品先物取引業者の外務員(営業員)との対面取引、(2)
インターネットによる取引があります。
なお、国内商品市場、海外商品市場及び店頭商品デリバティブにおける商品先物取
引については、次のとおり、商品先物取引法により、委託者保護のためのルールが設
けられています。
i
(2)事前の説明・書面交付
委託契約を締結する前に、商品先物取引業者には、委託者に対して商品先物取引
の仕組み・リスクを説明するとともに、書面を交付することが義務付けられていま
す。具体的な法定交付書面として、委託取引における普通取引約款(定型化された
契約条項)である「受託契約準則」や、それを含めて委託者が知っておくべきこと
を解説した「事前交付書面」などです。
取引を開始する前には、まず、
「事前交付書面」を熟読し、理解することが重要です。
(3)商品先物取引業者における禁止行為
委託者保護のために、商品先物取引業者の不当な勧誘等の行為は商品先物取引
法で禁止されています。具体的には、例えば、次のような行為が禁止されていま
す。
105
105
① 不当な勧誘
1)利益が確実であると誤認させるような断定的判断を提供して勧誘すること
2)虚偽の説明をして勧誘すること
3)委託をしない旨の意思表示をした顧客に対して更に勧誘すること
4)迷惑な時間・方法での勧誘を行うこと
5)勧誘に先立って、商品先物取引業者の商号及び商品取引契約の締結の勧誘で
ある旨を告げずに勧誘すること
6)勧誘に先立って、商品市場における取引の勧誘を受ける意思の有無を確認せ
ずに勧誘すること
7)取引単位を告げないで勧誘すること
8)両建て(同一物品について対当する建玉(売り注文と買い注文)
)を勧めること
9)契約締結の勧誘の要請をしていない顧客に対し訪問や電話で勧誘すること
10)損失補填の約束又は利益保証、特別利益の提供を約して勧誘すること等
② のみ行為
商品先物取引業者が、受けた委託について、国内及び海外の取引所における商
品市場につながずに、自己がその相手方となって取引を成立させること
③ 一任勘定取引
一定の事項(取引の数量、対価の額、上場商品、取引の種類等)について、顧
客の指示(省令で一部除外)を受けないで委託を受けること
④ フロントランニング
顧客から相場変動をもたらすような大量の注文を受けた場合に、予想される相
場変動を利用して利益を得るため、その委託に係る注文を執行する前に自己のた
めに取引を行うこと
⑤ 返還遅延
預り金の返還を不当に遅延すること
⑥ 委託者の利益を害する向かい玉
受託玉と対当させた自己取引を行い、委託者の利益を害することとなる取引を
行うこと
⑦ 無断売買
委託者の指示を受けないで委託者の取引を執行すること
⑧ 仕切拒否
委託者が建玉を決済しようとするのを拒否すること
⑨ 虚偽の表示
商品市場における取引の委託について、虚偽の表示をし、又は重要な事項につ
いて誤解を招く表示をすること等
(4)適合性原則等
商品先物取引業者は、顧客に対して誠実かつ公正に業務を遂行するとともに(誠
実公正原則)、顧客の知識、経験、財産の状況及び商品取引契約を締結する目的に照
らして不適当と認められる勧誘を行ってはならない(適合性原則)こととなってい
106
106
ます。
Ⅱ (参考)商品先物取引業者等の監督の基本的な指針
(5)苦情・相談窓口
委託者保護を目的として、商品先物取引法に基づく自主規制団体である「日本商
品先物取引協会」(以下、「日商協」という。)があります。
日商協では、無料で委託者等からの苦情・相談を行うとともに、商品先物取引業
者と顧客の間に生じた紛争について、有料であっせん・調停を行っております。な
お、このあっせん・調停手続のうち、調停案について委託者が受諾した場合は、商
品先物取引業者も受諾しなければならない等、委託者に有利な片務的な制度となっ
ています。
また、日商協では、商品先物取引業者の受託、取次ぎ及び仲介業の業務に関して
自主規制ルールを定め、会員の業務の状況を監視するとともに、法令、自主規制ル
ールに違反する商品先物取引業者に対して、指導、勧告又は制裁を行います。
問合せ先
○農林水産省
・食料産業局商品取引グループ商品先物相談窓口
電話 03-3501-6730
及び各地方農政局経営事業支援部事業戦略課
○経済産業省
・商務情報政策局消費者相談室
電話 03-3501-4657
及び各地方経済産業局の消費者相談室
・商務情報政策局商取引監督課
電話 03-3501-1776
○日本商品先物取引協会
電話 03-3664-4731(代)
03-3664-6243(相談センター)
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 3]金融商品等
主務省(農林水産省、経済産業省)では、商品先物取引法における商品先物取
引業者等のコンプライアンス遵守や委託者保護等の指針として、表題の指針を制
定しています。
i
3.預金保険制度
(1)預金保険制度の役割と運営主体
預金保険制度は、万が一、金融機関が破綻した場合等に、預金者等の保護や資金
決済の確保を図ることによって、信用秩序を維持することを目的としています。
107
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我が国の預金保険制度は、預金保険法(1971年4月1日公布、最終改正2013年6
月19日)により定められており、政府、日本銀行、民間金融機関の出資により設立
された預金保険機構が制度の運営主体となっています。
(2)預金保険制度の対象金融機関
預金保険制度の対象となる金融機関は、日本国内に本店のある次の金融機関です。
これらの金融機関は、法律により預金保険制度への加入が義務付けられているため、
これらの金融機関に預金等(預金保険制度の対象となる金銭)を預け入れるだけで、
預金者等、金融機関及び預金保険機構の間で保険関係が成立することとなります。
このため、預金者等は、預金保険制度について特に手続を行う必要はありません。
銀行、信用金庫、信用協同組合、労働金庫、信金中央金庫、
全国信用協同組合連合会、労働金庫連合会、
株式会社商工組合中央金庫
(注1)日本国内に本店のある金融機関が海外支店で受け入れる預金等、政府系
金融機関、外国銀行の日本支店は制度の対象外です。農協・漁協、信農
連・信漁連、水産加工協、同連合会、農林中金は農水産業協同組合貯金
保険制度に加入しています。
(注2)現在、預金保険制度の対象となっている金融機関の一覧は預金保険機構
のウェブサイト(http://www.dic.go.jp/)で御覧いただけます。
(3)預金保険制度の対象となる預金等と保護の範囲
① 預金等の分類と保護の内容
預金等の分類
当座預金、無利息型普通預金等、無利
決済用預金 息・要求払い・決済サービスを提供でき
るという3要件を満たす預金
保護の内容
全額保護
有利息型普通預金、定期預金、通知預金、合算して元本1,000 万円まで
貯蓄預金、納税準備預金、定期積金、掛金、と破綻日までの利息等を保護。
元本補塡契約のある金銭信託(貸付信託を 1,000 万円を超える部分は、破
一般預金等
含む。)、金融債(保護預り専用商品に限 綻金融機関の財産の状況に応
る。)及びこれらの預金等を用いた財形貯 じて支払われます(一部カッ
蓄商品・確定拠出年金の積立金 等
トされることがあります。)。
保護対象外
外貨預金、譲渡性預金、金融債(募集債及び保護預 破綻金融機関の財産の状況に
り契約が終了したもの) 等
応じて支払われます(一部カッ
トされることがあります。)。
詳しくは、各金融機関にお問合せください。
② 送金や振込中のお金の保護
金融機関が、顧客から振込・口座振替等の依頼に基づき受け入れた預り金等につ
いては、当該金融機関が破綻した場合であっても、決済債務として全額保護される
ため、取引が確実に履行されることになっています。
108
108
合計額を計算する必要があります。破綻金融機関に同一の預金者等が複数
の預金等の口座を有している場合、それらを合算して、預金保険で保護さ
れる預金等の総額(付保預金額といいます。)を算定します。これを「名寄
せ」といいます。この名寄せのために、口座ごとに預金者等のデータ(氏
名、生年月日、住所(法人の場合は、名称、設立年月日、所在地)
、電話番
号等)が必要です。このため、預金者等の皆様は引越しや結婚等によりこ
れらの事項に変更が生じた場合、速やかに各金融機関での手続をお願しま
す。
(注2)破綻金融機関の財産の状況に応じて清算による配当として支払われること
になりますが、通常、配当までには時間がかかることから、その部分を預
金保険機構が概算払率(破産手続により配当可能と見込まれる額等を考慮
して決定した率)を掛けた金額で買い取ることにより、預金者等に迅速に
概算払額の支払いを行います。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 3]金融商品等
(注1)預金を迅速に払い戻すには、1預金者等が破綻金融機関に預け入れている
Ⅱ (4)金融機関が破綻したら
金融機関の破綻処理の方法には、保護される預金等を預金保険機構が各預金者等
に直接支払う方式(保険金支払方式)と、他の健全な金融機関に保護される預金等
を含む事業の全部や一部を譲渡して資金援助を行う方式(資金援助方式)の2つの
方法があります。どちらの方式でも、預金保険制度により保護される預金等の範囲
は同じですが、保険金支払方式は、破綻金融機関の金融機能が停止し清算されるの
に対して、資金援助方式は、破綻金融機関の一定の金融機能は救済金融機関に移管
され維持されます。
金融機関が破綻した場合でも、預金者等の利便性を確保するため、1)保護され
る範囲内の預金等の迅速な払戻し(注1)、2)保険金や預金等の支払いにかなりの日
数を要すると見込まれるようなときには、預金者等の当面の生活資金等に充てるた
めの仮払金の支払い(普通預金1口座当たり60万円を限度)、3)元本1,000万円を
超える部分とその利息等及び外貨預金についても、預金保険機構が概算額で預金等
を買い取り預金者等に支払う(注2)などの制度があります。詳細については、預金保
険機構等へお問合せください。
i
問合せ先
○預金保険機構
電話 03-3212-6029
○各財務局の金融監督課
○金融庁総務企画局企画課信用機構企画室
電話 03-3506-6000(代)
109
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4.金融商品の販売等に関する法律
金融商品の販売等に関する法律(金融商品販売法、2000年5月31日公布、最終改
正2012年9月12日)は、金融サービスの利用者保護を図るため、金融商品販売業者等
の顧客に対する説明義務を明確化し、説明義務違反に対する損害の賠償責任を民法の
特例として定めるなどの措置を講じている法律です。2006年6月の同法改正(2007年
9月30日完全施行)により、説明義務の拡充、断定的判断の提供等の禁止規定の新設、
対象商品・取引等の範囲の拡大など、金融サービスの利用者保護がより一層拡充され
ました。
(1)対象となる金融サービスの範囲
金融商品については、預貯金、信託、保険、有価証券等を幅広く対象とし、今後
登場する新しい商品については政令で追加することができます。
(2)金融商品販売業者等の説明義務の明確化及び説明義務違反に対する損害賠償責
任等
① 金融商品販売業者等の説明義務の明確化
1)金融商品販売業者等に対し、次のような金融商品の有するリスク等に係る
重要事項の説明を義務付けています。
ア)元本欠損や当初元本を上回る損失が生ずるおそれがある旨及びこれらを
生ずる要因に関する次の事項
(a)金融商品の価値の変動要因
・金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変
動を要因とするときはその指標
・金融商品販売業者等の業務又は財産の状況の変化を要因とするときは、
主体である金融商品販売業者等
・その他政令で定める事由を要因とするときはその事由
(b)金融商品の取引の仕組みのうちの重要な部分
イ)権利行使期間の制限又は解約期間の制限
2)金融商品についての説明の際には、以下の顧客の属性に照らして、顧客に
理解されるために必要な方法及び程度でなければなりません。
・顧客の知識、経験
・顧客の財産の状況
・顧客の金融商品の販売に係る契約の締結の目的
3)顧客が、金融商品販売業者等である場合や、顧客が説明を要しない旨の意
思の表明をした場合等には、説明は不要です。
②
断定的判断の提供等の禁止
金融商品販売業者等は、顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供
し、又は確実であると誤認されるおそれのあることを告げる行為を行ってはなり
110
110
法 709 条)をめぐって争われることとなり、業者の説明義務違反と損害の
因果関係や損害額等について原告が立証責任を負うことから、顧客の負担
は大きくなります。
(参考)民法 709 条(不法行為による損害賠償責任)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した
者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(注2)金融商品販売法によって、説明義務等を法定し、原告(顧客)の因果関係
の立証責任を転換することにより、原告の立証責任の軽減が図られること
となります。なお、原告は、民法 709 条による損害賠償請求を行うことも
可能です。
(3)金融商品販売業者等の勧誘の適正の確保
① 金融商品販売業者等は、勧誘の適正の確保に努めなければなりません。
② 金融商品販売業者等は、次の事項を含む勧誘方針を策定・公表しなければなり
ません。
1)勧誘の対象となる者の知識、経験、財産の状況及び当該金融商品の販売に係
る契約を締結する目的に照らして配慮すべき事項
2)勧誘の方法及び時間帯に関し勧誘の対象となる者に配慮すべき事項
3)その他勧誘の適正の確保に関する事項
③ 上記②に違反した金融商品販売業者等は、過料に処されます。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 3]金融商品等
(注1)金融商品販売法によらなければ、通常は不法行為による損害賠償責任(民
Ⅱ ません。
説明義務違反・断定的判断の提供等に対する損害賠償責任
金融商品販売業者等が顧客に重要事項を説明しなかったとき、又は断定的判断
の提供を行ったときは、損害賠償責任を負うものとし、元本欠損額をその損害額
と推定します。
③
i
問合せ先
○金融庁総務企画局企画課
電話 03-3506-6000(代)
5.資金決済に関する法律
資金決済に関する法律(資金決済法、2009年6月24日)は、資金決済に関するサー
ビスの利用者等の保護を図るため、前払式支払手段(商品券やプリペイドカード等)
の発行及び資金移動業を行う者について、登録等の必要な措置を講じている法律であ
り、2009年6月に制定されました(2010年4月1日施行)。
その内容としては、①旧法(前払式証票の規制等に関する法律)において規制対象
とされていた紙型やIC型のものに加え、いわゆるサーバ型の前払式支払手段につい
ても規制の対象とするとともに、②従来、銀行等のみに認められてきた為替取引を少
111
111
額の取引に限定して銀行等以外の者でも行うことができるようにしたものです。
(1)前払式支払手段
① 法律の規制を受ける前払式支払手段
次の要件を全て満たす証票、電子機器その他の物又は番号、記号その他の符号
(証票等)については、前払式支払手段として、法律の規制を受けます。
1)証票等に、一定の金額又は物品・サービスの数量が記載又は電磁的な方法で
記録されていること。
2)証票等に記載又は電磁的な方法で記録された金額又は物品・サービスの数量
に応ずる対価が支払われて発行されること。
3)物品の購入等のために証票等が提示等の方法により使用されること。
② 前払式支払手段の発行者(財務局等への届出・登録)
1)事後届出が必要な場合(自家型発行者)
発行者の店舗等においてのみ使用できる証票等を発行している場合には、
3月末又は9月末の未使用残高(総発行額-総回収額)が1,000万円を超えた
場合、財務局等への届出が必要となります。
2)事前登録が必要な場合(第三者型発行者)
発行者以外の第三者の店舗(加盟店)においても使用できる証票等を発行
する場合には、財務局等への事前の登録が必要です。
③ 主な規制の内容
1)表示事項
証票等に発行者の氏名、証票等の金額等の事項を表示する必要があります。
2)払戻しの原則禁止
前払式支払手段の払戻し(換金等)は、発行の業務を廃止した等、一定の
場合を除き、原則的に禁止されています。
3)発行保証金の供託等
3月末又は9月末において、未使用残高が1,000万円を超えた場合、その未
使用残高の2分の1以上の額に相当する額を供託等する必要があります。
④ 発行保証金の還付
前払式支払手段の保有者は、発行者の破綻等により、前払式支払手段が使用
できなくなった場合、発行保証金を原資として、還付を受けられる場合があり
ます。
(2)資金移動業
① 資金移動業者(財務局等への登録)
銀行等以外の事業者が為替取引を行うことを登録制としています。
② 少額の取引
資金移動業者が行う資金移動サービスの1回当たりの上限額は100万円です。
③ 主な規制の内容
1)履行保証金の供託等
112
112
6.保険業法
保険業法(1995年6月7日公布、最終改正2013年6月26日)は、保険契約者等の保
護を図る観点から、保険会社等の経営の健全性や保険募集の公正を確保するための措
置を講じている法律です。近年においては、
(1)保険契約の移転に係る規制の在り方、
(2)生命保険会社のセーフティネットについて、所要の措置が講じられました。
(1)保険契約の移転に係る規制の在り方
保険会社が「責任準備金の算出の基礎が同一である保険契約」の一部を他の保険
会社に移転できるようにすることとし、保険契約者が契約移転において不利益な立
場に置かれることのないよう、以下の保険契約者保護のための改正を併せて行いま
した(2013 年3月 26 日施行)
。
・保険会社から保険契約者に対して、契約の移転の要旨や異議申立てができる旨等
について、従来の公告に加えて個別通知を義務付けた。
・移転対象契約者の異議申立ての成立要件を引き下げた(異議申立者数等の占める
割合が全体の1/5→1/10)。
・異議を述べた保険契約者が解約を希望する場合には、被保険者のために積立てた
金額や未経過期間保険料を払い戻すことを義務付けた。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 3]金融商品等
問合せ先
○金融庁総務企画局企画課信用制度参事官室、監督局総務課金融会社室
電話 03-3506-6000(代)
Ⅱ 資金移動業者は、滞留資金の全額以上に相当する額の履行保証金を供託等
する必要があります。
2)利用者保護に関する措置
資金移動業者は、銀行等が行う為替取引との誤認防止のための利用者への説
明、資金受領時の利用者への受取証書の交付等を行う必要があります。
i
(2)生命保険会社のセーフティネット
保険会社のセーフティネットは、保険会社が破綻した際に、保険契約者等の保護
を図るため、保険契約者保護機構から資金援助等を行うことにより、保険契約を存
続させつつ、責任準備金(将来の保険金支払いのための積立て)の原則 90%までを
補償する制度となっています。
生命保険契約者保護機構の財源については、原則として生命保険会社の負担金の
拠出により賄う仕組みとした上で、生命保険会社の拠出のみでは対応が難しい場合
に政府の補助を可能とする特例措置が 2011 年度までの時限措置として設けられて
いましたが、これを5年間延長し、2017 年3月末までの破綻に対応するものとしま
した(2012 年3月 31 日施行)
。
113
113
問合せ先
○金融庁総務企画局企画課保険企画室
電話 03-3506-6000(代)
7.未公開株の取引等
未公開株や社債の取引を利用した新たな手口の詐欺的商法による消費者被害の事案
が相次いでみられたことから、2010年1月、関係省庁(消費者庁、警察庁、金融庁等)
等が連携して「新たな手口による詐欺的商法に関する対策チーム」を設置し、消費者
被害の発生・拡大の防止のための対策について検討を行い、同年3月、情報集約から
取締までを一貫的かつ迅速に行う体制の構築、関係者の連携・協力による注意喚起・
普及啓発などを柱とする対応策を取りまとめました。
これを基に関係省庁等において以下の取組が進められています。
(1)情報集約・共有体制の強化
○消費者庁及び国民生活センターから、地方公共団体に対し、未公開株等に係る被
害情報について、被害情報を速やかに共有できるよう、消費生活センターにおけ
るPIO-NETへの早期入力を依頼。
○日本証券業協会から関係省庁等に対し、同協会の未公開株通報専用コールセンタ
ーに寄せられた相談情報を定期的に提供。
○これらの情報を国民生活センターにおいて蓄積し、個別事業者の名寄せを実施。
名寄せ情報について、消費者庁から定期的に関係省庁に提供。
(2)業者への対応強化
○消費者の財産被害に係る隙間事案への行政措置が導入された改正消費者安全法が
施行。(2013年4月~)
○金融庁において、無登録で金融商品取引業を行う者に対する警告書の発出につい
て、2010年4月から業者名の公表を同庁ウェブサイトにおいて開始。
○金融商品取引法上の無登録業者が非上場の株券等の売付け等を行った場合にその
売買契約を原則として無効とするルールの創設等を盛り込んだ改正金融商品取引
法が施行。(罰則引上げは2011年6月、その他の項目は同年11月)
○適格機関投資家等特例業務に係る問題に対応すべく法令改正及び監督指針改正を
実施。(2012年4月)
○警察において、悪質な事業者の捜査を推進し、被疑者を検挙。
○警察において、詐欺的商法に利用された口座情報を金融機関に対して提供開始。
(2012年1月~)
(3)注意喚起・普及啓発の強化
○金融庁において、主として高齢者を対象としたパンフレット「実例で学ぶ「未公
開株」等被害にあわないためのガイドブック」を作成。(2010年12月)
114
114
Ⅱ 各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 3]金融商品等
○金融庁、証券取引等監視委員会において、注意喚起文書(「適格機関投資家等特例
業者に対する対応を強化!」)を公表。(2012年2月)
○日本証券業協会において消費者庁、警察庁、金融庁との連名により作成したポス
ターを地方公共団体等に対して継続的に配付。(2010年3月~)
○日本証券業協会において、「未公開株等詐欺の未然防止のための行動計画」(3か
年計画)を策定し、全国街頭注意喚起活動、地方公共団体等と連携した未然防止
活動、新聞広告掲載やPRイベント等の各種広報活動を内容とする未公開株等詐
欺未然防止キャンペーンを展開中。(2012年2月~)
○国民生活センターから、
「買え買え詐欺注意報」として金融商品等について適宜注
意喚起を実施。(2013年3月~)
○金融庁において、詐欺的な投資勧誘被害を未然に防止するため、
「これは投資詐欺
の可能性!」を作成。(2013年10月)
i
近時、未公開株、社債、ファンド取引等については、特に高齢者の方を中心にト
ラブルが発生しており、少しでも不審に思う場合には取引を見合わせるなど、くれ
ぐれも慎重に対処するよう注意が必要です。また、高齢者の方がトラブルに遭われ
ていないかどうかを周囲の方々が見守るなどの配慮も重要です。
問合せ先
(未公開株について)
○日本証券業協会 未公開株通報専用コールセンター
電話 0120-344-999
8.偽造・盗難キャッシュカード等による被害の防止・救済
2004年度から2005年度にかけて、偽造・盗難キャッシュカード等を用いた預金の不
正引出しによる被害が急増し、社会問題化しました。こうした事態を受け、預貯金者
の保護を図る観点から、金融機関による被害者への補償制度や金融機関の犯罪防止措
置義務を規定した、偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預
貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律(預貯金者保護法、2005年8月18
日公布、最終改正2007年6月1日)が議員立法により成立し、2006年2月より施行さ
れています。
金融庁では、2007年1月、「情報セキュリティに関する検討会」(2006年3~6月開
催、構成員:金融庁、警察庁及び各金融関係団体)での検討結果を実行するため、「主
要行等及び中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」
(以下「監督指針」という。
)
を改正し、偽造・盗難キャッシュカード等における不正取引に関して、ATMシステ
ム等の情報セキュリティ対策に関する監督上の着眼点を明確化しています。さらに、
2008年5月には監督指針を改正し、盗難通帳等による預金等の不正払戻しの被害に遭
った顧客への対応に係る態勢の整備に関する監督上の着眼点を明確化しています。
115
115
2008年2月以降、業界団体において、預貯金者保護法、同法附則及び附帯決議を踏
まえ、盗難通帳やインターネット・バンキングによる預金の不正払戻しが発生した際
に、金融機関が無過失の場合でも預金者に過失がないときは、原則、金融機関が被害
を補償する旨の申合せを実施しています。
(1)偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等か
らの預貯金者の保護等に関する法律(預貯金者保護法、2005年8月10日公布、最終
改正2007年6月1日)
○偽造キャッシュカード等を用いて行われる機械式預貯金払戻し等
・偽造キャッシュカードが使用されたことによる損害は、原則として金融機関が
全額を負担すること
・ただし、預貯金者に故意又は重過失がある場合には、預貯金者が全額を負担す
ること
・預貯金者の帰責事由については、金融機関が立証責任を負うこと
○盗難キャッシュカード等を用いて行われた機械式預貯金払戻し等
・預貯金者が、1)速やかに金融機関へカードが盗取された旨を通知すること、
2)遅滞なく金融機関へカードが盗取された状況について十分な説明を行うこ
と、3)捜査機関へ被害の届出を行うこと、の3要件を充たしたとき、原則と
して損害の全額を金融機関が負担すること
・預貯金者に過失がある場合には、損害の4分の3の額を金融機関が負担すること
・預貯金者に故意又は重過失がある場合には、預貯金者が全額を負担すること
・預貯金者の帰責事由については、金融機関が立証責任を負うこと
・金融機関が負担する金額は、原則として、預貯金者による金融機関への通知(上
記1))の日前 30 日の間の損害に係る額に限ること
○施行日
・2006 年2月 10 日
116
116
偽造カード等による被害と盗難カード等による被害について(イメージ図)
Ⅱ ① 偽造カード等による被害について
預貯金者の過失の有無〈金融機関が立証〉
〈
預
貯
金
者
が
負
担
な
し
(立証不能の場合)
金融機関が負担
(原則)
i
(
〉
金
自
融
ら
機
の
関
無
の
過
過
失
失
を
の
立
有
証
無
過失(重過失以外)・無過失
(金融機関が立証)
立
証
不
あ
能
り
の
場
合
金融機関が負担
)
② 盗難カード等による被害について
預貯金者の過失の有無〈金融機関が立証〉
(
)
重
無過失
重 過
過
過 失
失
(立証不能の場合)
失 以
外 (金融機関が立証)
金
〈
預
融
貯 75% 機
金
関
者
預
が
負 25% 貯
金
担
者
な
し
金融機関が負担
(原則)
(
〉
金
自
融
ら
機
の
関
無
の
過
過
失
失
を
の
立
有
証
無
金融機関が負担
限定①:盗難されたことについての預貯金
者の届出・説明義務
(1) カード等が盗取された旨の金融機関
への通知
(2) 盗取に関する状況についての説明
(3) 捜査機関に対する届出の事実の申出
↑
※盗難カード等の不正使用でないことの反
証(金融機関)
限定②: 補てん対象の限定
特段の事情がある場合を除き、上記(1)の
通知の日前30日の間に行われた払戻しの金
額に限る。
限定③: 補てんの除外事由
次のいずれかに該当する場合は補てんを要
しないこととする。
(ⅰ) 払戻しが家族、同居人、家事使用人
により行われたこと。
(ⅱ) 上記①(2)の説明において、重要な
事項につき偽りの説明をしたこと。
(ⅲ) 盗取が戦争、暴動等による著しい社
会秩序の混乱に乗じ、又はこれに付随して
なされたこと
)
立
証
不
あ
能
り
の
場
合
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 3]金融商品等
重
過
失
(注1)金融機関の過失 あり→なし についても金融機関に立証責任がある。
117
117
(2)預貯金者保護法に関する業界申合せ(2008年2月~)
○盗難通帳による預金等の不正払戻しへの対応
・預貯金者が、1)速やかに金融機関へ通帳が盗取された旨を通知すること、2)
遅滞なく金融機関へ通帳が盗取された状況について十分な説明を行うこと、3)
捜査機関へ被害の届出を行うこと、の3要件を充たしたとき、原則として損害
の全額を金融機関が負担すること
・預貯金者に過失がある場合には、損害の4分の3の額を金融機関が負担するこ
と
・預貯金者に故意又は重過失がある場合には、預貯金者が全額を負担すること
・預貯金者の帰責事由については、金融機関が立証責任を負うこと
・金融機関が負担する金額は、原則として、預貯金者による金融機関への通知(上
記1))の日前 30 日の間の損害に係る額に限ること
○インターネット・バンキングによる預金等の不正払戻しへの対応
・預貯金者が、1)速やかに金融機関へ不正払戻しされた旨を通知すること、2)
遅滞なく金融機関へ不正払戻しされた状況について十分な説明を行うこと、3)
捜査機関へ被害事実等の事情説明を行うこと、の3要件を充たしたとき、原則
として損害の全額を金融機関が負担すること
・預貯金者に(重)過失がある場合には、被害に遭った顧客の態様やその状況等
を加味した上で個別事案毎に補償を検討する。
・預貯金者の帰責事由については、金融機関が立証責任を負うこと
・金融機関が負担する金額は、原則として、預貯金者による金融機関への通知(上
記1))の日前 30 日の間の損害に係る額に限ること
(3)監督指針の主な改正点
○ATMシステム等のセキュリティ対策に係る監督上の着眼点の明確化(2007年1月)
・金融機関の内部管理態勢の整備について、リスク分析、セキュリティ対策の策
定・実施、効果の検証、対策の評価・見直しからなるいわゆるPDCAサイク
ルが機能しているか。
・セキュリティの確保について、体制構築時及び利用時の各段階におけるリスク
を把握した上で、自らの顧客や業務の特性に応じた対策を講じているか。
・顧客対応について、顧客への周知が必要な場合、速やかに周知できる体制を整
備するなど、被害を最小限に抑制するための措置を講じることとしているか。
○盗難通帳等による不正払戻しの被害に遭った顧客への対応に係る態勢の整備に関
する監督上の着眼点を明確化(2008年5月)
・不正払戻しの被害に遭った顧客からの届出を速やかに受け付ける体制が整備さ
れているか。
・利用者保護を徹底する観点から、約款、顧客対応方針等において統一的な対応
を定めるほか、真摯な顧客対応を行う態勢が整備されているか。
・不正払戻しに関する記録を適切に保存しているか。
118
118
Ⅱ 各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 3]金融商品等
(4)偽造キャッシュカード等による被害の発生状況及び金融機関による補償状況
2013年3月末までの偽造キャッシュカード等による被害の発生状況及び金融機関
の補償状況の概略は以下のとおり。
○偽造キャッシュカードによる預金の不正払戻し等
・被害発生状況
被害発生件数・被害額は、2010 年度は 273 件・249 百万円、2011 年度は 476 件・
329 百万円、2012 年度は 858 件・670 百万円となっている。
・金融機関による補償状況
これまでに処理方針が決定している被害のうち、件数ベースで 96.2%(98.8%)
を金融機関において補償している。
○盗難キャッシュカードによる預金の不正払戻し等
・被害発生状況
被害発生件数・被害額は、2010 年度は 6,594 件・3,930 百万円、2011 年度は 5,303
件・2,865 百万円、2012 年度は 3,623 件・1,635 百万円となっている。
・金融機関による補償状況
これまでに処理方針が決定している被害のうち、件数ベースで 56.6%(82.8%)
を金融機関において補償している。
○盗難通帳による預金の不正払戻し等
・被害発生状況
被害発生件数・被害額は、2010 年度は 243 件・224 百万円、2011 年度は 172 件・
203 百万円、2012 年度は 129 件・78 百万円となっている。
・金融機関による補償状況
これまでに処理方針が決定している被害のうち、件数ベースで 37.7%(48.7%)
を金融機関において補償している。
○インターネット・バンキングによる預金の不正払戻し等
・被害発生状況
被害発生件数・被害額は、2010 年度は 78 件・88 百万円、2011 年度は 163 件・
402 百万円、2012 年度は 132 件・107 百万円となっている。
・金融機関による補償状況
これまでに処理方針が決定している被害のうち、件数ベースで 70.4%(83.4%)
を金融機関において補償している。
(注) ( )内は、処理方針決定件数のうち、当初、本人以外による不正払戻し
として申出があったものの、調査の結果、配偶者や親族による払戻しであり、
不正払戻しでないことが判明した件数等を除いた場合の補償率。
i
問合せ先
○金融庁総務企画局企画課金融トラブル解決制度推進室、監督局銀行第一課
電話 03-3506-6000(代)
119
119
(参考)少額投資非課税制度(NISA)
2014年1月より、NISA(ニーサ、少額投資非課税制度)が始まりました。NI
SAは、家計の安定的な資産形成の支援と、経済成長に必要な成長資金の供給拡大の
両立を図る観点から導入される制度です。
通常、株式や投資信託などから得られた配当や譲渡益は所得税や地方税の課税対象
となりますが、NISAにおいては、毎年 100 万円を上限とする新規投資を対象に、
その配当や譲渡益が最長5年間、非課税になります。
【NISAの概要】
投資可能期間
10年間(2014年~2023年)
非課税対象
上場株式・公募株式投信・ETF・REIT 等の配当・譲渡益
非課税投資額
毎年、新規投資額で100万円を上限
非課税期間
投資した年から最長5年間
制度を利用可能な者
20歳以上の居住者等
途中売却
自由(ただし、売却部分の枠は再利用不可)
損益通算
特定口座等で生じた配当・譲渡益との損益通算は不可
口座開設数
1人1口座
(2013年11月現在)
問合せ先
○金融庁総務企画局政策課
電話 03-3506-6000(代)
120
120
[4]不動産
Ⅱ (1)住宅の品質確保の促進等に関する法律
住宅に関するトラブルを未然に防ぎ、また万が一トラブルに巻き込まれた際も、消
費者保護の立場から紛争を速やかに処理できるような市場の条件整備を図る観点から、
住宅の品質確保の促進、住宅購入者等の利益の保護及び住宅に係る紛争の迅速かつ適
正な解決を図るための住宅性能表示制度(任意)、瑕疵担保責任の特例(義務)を内容
とする、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法、1999年6月23日公布、最終
改正2011年6月24日)が2000年4月1日から施行されました。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 4]不動産
1.不動産取引の適正化
i
①
住宅性能表示制度
国土交通大臣及び内閣総理大臣が住宅の性能(構造の安定、高齢者等への配慮、
省エネルギー性等)の表示の基準(日本住宅性能表示基準)を、国土交通大臣がそ
の表示のための評価方法の基準(評価方法基準)を定めています。国土交通大臣の
登録を受けた者(登録住宅性能評価機関)は、申請により、評価方法基準に従って
住宅の性能の評価を行い、特別なマークを付した評価書(住宅性能評価書)を交付
することができます。住宅の建設工事の請負契約又は新築住宅の売買契約の際、住
宅性能評価書が契約書に添付された場合等においては、請負人又は売主が契約書に
反対の意思を表示している場合を除き、住宅性能評価書に表示された性能を有する
住宅を引き渡すこと等を契約したものとみなされることになります。
なお、住宅性能表示制度は任意の制度であり、全ての住宅について適用されるも
のではありません。
建設された住宅に係る住宅性能評価書が交付された住宅について紛争が発生した
場合には、国土交通大臣が指定する指定住宅紛争処理機関(全国全ての弁護士会)
に紛争処理を申請することができます。
また、住宅紛争処理支援センターとして国土交通大臣の指定を受けた「住まいる
ダイヤル」
(公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター)では、弁護士会
における紛争処理業務の支援のほか、消費者からの住宅相談や苦情等を電話で受け
付けています(電話 0570-016-100)。
具体的には、
・ひび割れ、雨漏りや床の傾きなどの欠陥や契約に関するトラブルの相談
・リフォームの見積りや契約後のトラブルの相談
・法律や技術などの知見の問合せ
など、住宅に関するあらゆる相談に建築士等の資格を有する相談員が対応してい
ます。消費者のみならず、消費者関係機関の相談員や関係行政機関からの問合せも
受け付けています。
121
121
②
瑕疵担保責任の特例
住宅の新築工事の請負契約又は新築住宅の売買契約においては、請負人又は売主
は、注文者又は買主に引き渡した時から10年間、住宅の構造耐力上主要な部分又は
雨水の浸入を防止する部分について、瑕疵担保責任を負わなければならないことに
なります。この場合の責任の内容は、修補や損害賠償等となります。
また、前述の契約においては、住宅の全ての瑕疵について瑕疵担保期間を20年ま
で伸長することができます。
なお、その瑕疵が構造耐力又は雨水の浸入に影響のない場合や、仮設住宅等一時使
用のため建設されたことが明らかな住宅については、責任を負う必要がありません。
問合せ先
○国土交通省住宅局住宅生産課
電話 03-5253-8111(代)
○住まいるダイヤル
電話 0570-016-100
ウェブサイト
http://www.chord.or.jp
※住まいるダイヤルは公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センタ
ーの愛称です。
(参考)住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要
1)新築住宅の契約に関する瑕疵保証制度の充実(第7章関係)
ア)新築住宅の取得契約(請負/売買)において、基本構造部分(柱や梁など住
宅の構造耐力上主要な部分、雨水の侵入を防止する部分)について10年間の
瑕疵担保責任(修補請求権等)が義務付けられる。(第94条、第95条関係)
イ)新築住宅の取得契約(請負/売買)において、基本構造部分以外も含めた瑕
疵担保責任が、特約を結べば20年まで伸長可能になる。(第97条関係)
2)住宅性能表示制度の創設(第2章、第3章関係)
ア)構造の安定、高齢者等への配慮、省エネルギー性などの住宅の性能を表示
するための共通ルールを定め、住宅の性能を相互比較しやすくする。
(第3条
~第4条関係)
イ)住宅の性能評価を客観的に行う第三者機関(登録住宅性能評価機関)を整
備し、表示される住宅の性能についての信頼性を確保する。(第7条~第24
条)
ウ)登録住宅性能評価機関により交付された住宅性能評価書を添付して住宅の
契約を交わした場合などは、その際の内容(住宅性能)が契約内容として保
証される。(第5条~第6条関係)
エ)建設住宅性能評価を受けた住宅に関わるトラブルに対しては、裁判外の紛
争処理体制を整備し、万一のトラブルの場合にも紛争処理の円滑化、迅速化
を図る。(第66条~第93条関係)
122
122
資力確保措置の義務付け
2009年10月1日以降に新築住宅を引き渡す建設業許可を持つ建設業者や宅地建物
取引業免許を持つ宅地建物取引業者に対し、住宅瑕疵担保責任保険への加入又は保
証金の供託による資力確保措置を義務付けました。これにより、引き渡された住宅
に瑕疵が発生した場合、建設業者等が倒産等していたときでも消費者は修補に必要
な費用が確保されることになりました。
②
住宅瑕疵担保責任保険制度の整備
資力確保措置の1つである住宅瑕疵担保責任保険については、国土交通大臣によ
り指定された住宅瑕疵担保責任保険法人により対応する仕組みとしており、2013年
11月末日時点で、以下の5社の住宅瑕疵担保責任保険法人を指定しています。
1)株式会社住宅あんしん保証
2)住宅保証機構株式会社
3)株式会社日本住宅保証検査機構
4)株式会社ハウスジーメン
5)ハウスプラス住宅保証株式会社
③
特別紛争処理体制の整備
住宅瑕疵担保責任保険が付された住宅の売主や請負人とその買主や発注者との間
で紛争が生じた場合、消費者保護の観点から住宅専門の紛争処理機関において、適
切かつ迅速な紛争処理が受けられることとなりました。具体的には売主等又は買主
等が「指定住宅紛争処理機関(住宅紛争審査会)」に申請して、
「あっせん」「調停」
又は「仲裁」を受けることができます。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 4]不動産
①
Ⅱ (2)住宅瑕疵担保履行法
新築住宅に瑕疵が発生した場合においても確実な瑕疵担保責任の履行が確保され、
消費者が安心して住宅を購入できるよう、新築住宅を引き渡す建設業者及び宅地建物
取引業者に対し、資力確保措置(住宅瑕疵担保保証金の供託又は住宅瑕疵担保責任保
険契約の締結)を義務付ける、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住
宅瑕疵担保履行法、2007年5月30日公布)が2009年10月1日に施行されました。
i
問合せ先
○国土交通省住宅局住宅生産課
電話 03-5253-8111(代)
(3)宅地建物取引業法
① 媒介契約
宅地建物取引業者(以下「業者」という。
)に宅地又は建物(以下「物件」という。
)
の売却(購入)の媒介を依頼する際の契約を媒介契約といいます。この媒介契約に
おける契約関係を明確化し、取引に関するトラブルを防止するため、宅地建物取引
123
123
業法(宅建業法、1952年6月16日公布、最終改正2012年8月1日)に媒介契約に関
する規定が設けられています。
業者に物件の売却(購入)の媒介を依頼する場合には、その依頼関係について書
面をもって明確にしておく必要があります。契約関係が口約束など曖昧なままでは、
媒介契約の存否や報酬などについて後日トラブルが生じる原因となり、また、業者
の成約に向けての積極的な努力を期待することもできなくなります。
そこで、国土交通省では、媒介契約の標準的なものとして標準媒介契約約款を作
成しており、既に一般に普及しているところです。
宅建業法は物件の売買における媒介契約について、以下の3種類を規定していま
す。どの類型を選択するかは依頼者の自由であり、業者には依頼者に対して各類型
の十分な説明が義務付けられています。
媒介契約の類型
宅地建物取引業者へ
の売買の依頼
自己発見取引(注1)
一般媒介契約
専任媒介契約
専属専任媒介契約
複数社可
1社のみ
1社のみ
可
可
不 可
宅地建物取引業者に
媒介契約締結後7日 媒介契約締結後5日
依頼者の希望による
よる指定流通機構(注
以内の登録を義務付 以内の登録を義務付
任意登録
2)
への登録
け
け
宅地建物取引業者に
よる依頼者への状況
報告
―
2週間に1回以上の 1週間に1回以上の
報告を義務付け
報告を義務付け
(注1)自己発見取引とは、宅地建物の売買の依頼者自身が売買取引相手を探すこと。
(注2)指定流通機構とは、業者による物件情報の登録に関する業務や業者に対する当
該情報の提供に関する業務等を適正かつ確実に行うことができる者として国土
交通大臣が指定した者を指します。指定流通機構に物件情報を登録することによ
り、取引の相手方を広く探索でき、迅速、透明な不動産取引が可能となります。
上記のとおり、
(専属)専任媒介契約の場合、依頼を受けた業者は依頼者の物件情
報を指定流通機構へ登録することなどが義務付けられています。指定流通機構制度
の充実により、より多くの物件情報が業者間で共有され、不動産流通の円滑化が図
られることなどが期待されています。
②
クーリング・オフ
業者が売主となる物件の売買契約について、当該業者の事務所等以外の場所にお
いて、当該物件の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主は、一定の
場合(※)を除き、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(クーリング・
オフ)を行うことができます。
(※)クーリング・オフができなくなる場合
124
124
手付金等の保全
物件の売買契約においては、物件が引き渡される前に、売買代金の一部が「手付
金」
「中間金」等の名目で授受されることが通例です。しかし、物件の引渡し前に業
者が経営不振や倒産に陥った場合、買主は手付金等の返還を受けることも、物件の
引渡しを受けることもできず、多大な損害を被る恐れがあります。
このため、宅建業法では、業者が売主となる宅地又は建物の売買契約について、銀行
等による保証又は保険事業者による保証保険を内容とする保全措置を講じた後でなけ
れば、
「手付金等」を受領してはならず、業者がこのような保全措置を講じないときは、
買主は手付金等を支払わないことができることを定め、買主の保護を図っています。
④
重要事項説明
宅建業法では、業者が取引の相手方又は当事者等に対し、これらの者が取得し、
又は借りようとしている物件に関する一定の重要な事項について、契約締結前に、
取引主任者をして書面を交付して説明することを義務付けています。説明すべき事
項は宅建業法第35条に列挙されていますが、これらは少なくとも説明しなければな
らない最小限の事項を規定したものであり、他に重要な事項がある場合には、業者
は説明の義務を負います。
説明すべき事項の一例
権利関係の明示
取引条件(契約上の権利義務関係)の明示
○登記された権利の種類、内容等
○私道に関する負担
権利制限内容の明示
○代金、交換差金以外に授受される金額及
びその目的
○契約の解除に関する事項
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 4]不動産
③
Ⅱ 1)買主等が、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等
を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から
起算して8日を経過したとき。
2)買主等が、当該物件の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払ったとき。
i
取引に当って宅建業者が講じる措置
○都市計画法、建築基準法等の法令に基
づく制限の概要
○手付金等の保全措置の概要
○金銭の貸借のあっせん
物件の属性の明示
○飲用水、電気、ガスの供給、排水施設の整備状況又はその見通し
○宅地造成又は建物建築の工事完了時における形状、構造等(未完成物件のとき)
⑤
マンションの悪質な勧誘行為の禁止
全国の消費生活センター等に寄せられるマンションの勧誘に関する相談件数は、
2006~2010年度までの5年間で、2万2千件を超え、契約を締結させるに当たって、
相手を威迫したり、電話による長時間の勧誘等により相手を困惑させたりするなど、
その強引で悪質な勧誘が社会問題化していました。
125
125
このような状況から、マンションの悪質な勧誘に関する問題について、2011年3
月の行政刷新会議の「規制仕分け」
(規制強化)で取り上げられ、同年4月には「規
制・制度改革に係る方針」が閣議決定されました。さらに、同年5月には消費者委
員会からも関係省庁による連携、規定の明確化等について、国土交通大臣及び消費
者担当大臣に対して建議が出されました。
国土交通省では、これらの状況を踏まえ、2011年8月に宅地建物取引業法施行規
則を改正し、新たに、①勧誘に先立って会社名、担当者名、勧誘目的を告げずに行
う勧誘、②勧誘拒否後の再勧誘、③迷惑を覚えさせるような時間の勧誘等を禁止行
為として規定しました。
問合せ先
○国土交通省土地・建設産業局不動産業課
電話 03-5253-8111(代)
(4)一般財団法人不動産適正取引推進機構
一般財団法人不動産適正取引推進機構は不動産取引をめぐる紛争を未然に防止し、
紛争の適正かつ迅速な処理を推進して、消費者の保護と宅地建物取引業の健全な発展
に寄与しています。
不動産は国民の貴重な財産であり、生活の基盤です。それだけに、その取引をめぐ
る紛争は後を絶ちません。
現在、宅地建物取引に関する苦情の処理には、都道府県、業界団体、消費者団体等
の相談窓口が行っていますが、これらの相談窓口だけでは解決の付かないものもあり
ます。このため、各処理機関への助言支援機能及び自ら紛争を処理する機能を持つ機
関として一般財団法人不動産適正取引推進機構が設置されています。同機構では、①
特定紛争処理:先例的価値のある代表的案件の処理、紛争処理委員(学者、弁護士、
建築士等)3名による調整又は仲裁(下図参照)、②調査研究:紛争事例、判例、契約
書、紛争処理基準等の調査研究を行い成果物を刊行、③助言支援:都道府県、業界団体、
消費者団体等の相談・照会に対する助言・回答、④研修講演:都道府県担当者等の研修、
講演会の開催、業界団体等の研修会に講師を派遣、⑤広報出版、⑥宅地建物取引主任
者資格試験の実施等の事業を行っています。
紛争処理手続の流れ
126
126
問合せ先
Ⅱ ○国土交通省土地・建設産業局不動産業課
電話 03-5253-8111(代)
○一般財団法人不動産適正取引推進機構
電話 03-3435-8111
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 4]不動産
(5)不動産特定共同事業
不動産特定共同事業とは、投資家が事業者の行う不動産取引(売買、賃貸借等)の
ために出資を行い、事業者が当該不動産取引から生じた利益を投資家に分配する事業
等のことです。投資家にとっては、事業者との健全な取引を通じて投資の多様化が図
られる一方、事業者にとっては、新たな事業資金調達手段の拡大につながることにな
ります。
不動産特定共同事業は、土地の有効利用、良好な都市開発の促進に資するなど社会
的意義の大きい事業ですが、一方で、過去において適正な情報が開示されず収益性の
低い不動産について投資家の勧誘が行われたり、事業者の倒産により投資した資金を
回収できないといった投資家被害が数多く発生しました。そこで、投資家が安心して
事業に参加できるよう必要最小限のルールを整備するため、1995年から「不動産特定
共同事業法」が施行されています。
この法律には、主に以下のことが定められています。
① 事業者が不動産特定共同事業を営もうとするときは行政庁の許可が必要(許可
の要件は、資本金が一定額以上であること、事業を適確に遂行できる人的構成で
あること、適正な約款を用いることなど。)
② 勧誘・広告の規制(勧誘に当たって重要な事項について故意に事実を告げなか
ったり、不実のことを告げたりしてはならないことなど。)
③ 情報の開示(重要事項については、契約成立前及び契約成立時に書面を交付し
て説明すること、事業に参加する投資家に定期的に財産管理状況を報告すること
など。)
④ クーリング・オフ(投資家が契約成立時の重要事項を記載した書面を受領した
日から8日間は契約の解除をすることができることなど。)
i
問合せ先
○金融庁総務企画局企画課信用制度参事官室、監督局総務課金融会社室
電話 03-3506-6000(代)
○国土交通省土地・建設産業局不動産市場整備課不動産投資市場整備室
電話 03-5253-8111(代)
(6)賃貸住宅標準契約書
民間賃貸住宅における賃貸借契約をめぐるトラブルを防止するため「賃貸住宅標準
契約書」が定められています。
民間賃貸住宅においては、貸主と借主との間で賃貸借契約をめぐる紛争が少なから
127
127
ず起こっています。この紛争が発生する大きな原因の1つとして、使用されている契
約書の中には、必ずしも内容が明確、十分又は合理的ではないものがあることなどが
挙げられます。
こうした住宅の賃貸借契約をめぐるトラブルを防止するため、国土交通省では、内
容が明確、十分かつ合理的な賃貸借契約書の雛形(モデル)を作成し、その普及に努
めています。
「賃貸住宅標準契約書」の主なポイントは以下のとおりです。
① 頭書において物件の状況、契約期間、賃料等を一覧できるようにした。
② 賃料の改定事由を具体的に明らかにし、賃料の改定は当事者間の協議によるこ
ととした。(第4条)
③ 共益費、敷金の性質を明らかにし、敷金については借主の債務を差し引いて返
還する場合は、差引額の明細を示すこととした。(第5条、第6条)
④ 借主が禁止・制限される行為の範囲を具体的に明らかにした。(第8条)
⑤ 貸主には賃貸住宅の使用のために必要な修繕をなす義務があることを明らかに
する一方、賃借人の修繕義務は、賃借人の故意・過失の場合にのみ生じること、
明け渡し時の原状回復義務は、通常の使用に伴う損耗については生じないことを
規定した。(第9条、第14条)
⑥ 貸主からの契約解除事由を具体的に明らかにし、解除手続きを定めた。(第10
条)
⑦ 貸主は、原則として、借主の承諾を得なければ賃貸物件に立ち入れないことを
明確に規定した。(第15条)
なお、高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法、2001年4月6日公
布、最終改正2011年6月24日)に基づく終身建物賃貸借制度を利用する際の賃貸借契
約については、
「終身建物賃貸借標準契約書」を作成・公表するとともに、この契約書
が活用されるよう地方公共団体、不動産等関係団体などに周知を要請するなど、普及
に努めています。
問合せ先
○国土交通省住宅局住宅総合整備課
電話 03-5253-8111(代)
ウェブサイト http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakuke
ntiku_house_tk3_000016.html
(7)定期賃貸住宅標準契約書
2000年3月1日に施行された、「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置
法」
(1999年12月15日公布、最終改正2006年6月8日)は、借地借家法の改正をその主
な内容とし、これにより定期借家制度が設けられました。
定期借家制度に基づく定期賃貸住宅契約は、契約期間の満了により、更新されるこ
となく確定的に契約が終了するなど、従来型の賃貸住宅契約とは大きく異なるもので
128
128
(8)賃貸住宅管理
賃貸住宅は、我が国の住宅ストックの4分の1以上を占めており、そのうち約8割
の所有者が、一部又は全部の管理を管理業者に委託していることから、国民の多様な
生活ニーズに応えるものとして賃貸住宅管理の重要性が高まっています。その一方で、
敷金、保証金の返還や契約の更新などの管理業務に係るトラブルが増加する中、管理
に関する特段の法規制やルールが設けられていませんでした。
このような状況に鑑み、国土交通省では、管理業者の実施する管理業務について、
一定のルールを設け、賃貸住宅管理業の適正化を図り、貸主及び借主の利益の保護に
資するため、国土交通省告示による任意の賃貸住宅管理業者登録制度を 2011 年 12 月
1日に施行しました。
この登録制度においては、家賃、敷金などの受領に係る事務並びに賃貸借契約の更
新及び契約終了に係る事務は、その委託率の高さ及び借主等とのトラブル発生件数な
どから、管理業務の中でも、特にその適正化が求められる業務であることから、これ
らいずれかの業務を担う管理業者を登録の対象としています。
本制度の施行により、管理業者は国土交通省の備える登録簿に登録を受けることが
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 4]不動産
問合せ先
○国土交通省住宅局住宅総合整備課
電話 03-5253-8111(代)
ウェブサイト http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakuke
ntiku_house_tk3_000016.html
Ⅱ あることから、国土交通省では、貸主・借主間の紛争を未然に防止し、健全で合理的
な賃貸借関係を確立することにより、借家人の居住の安定と賃貸住宅の経営の安定を
図るため、民間賃貸住宅の賃貸借に係る諸法令、判例などを踏まえた、内容が明確、
十分かつ合理的な契約書のひな形(モデル)を作成し、その普及に努めています。
「定期賃貸住宅標準契約書」の主なポイントは以下のとおりです。
① 契約書に契約が「期間の満了により終了し、更新しない」旨を明記し、定期借
家契約であることを規定した。(第2条)
② 再契約できることを明記し、再契約した場合の契約関係を整理した(原状回復
債務の内容、敷金の精算等)。(第2条、第17条)
③ 賃料改定について、公租公課の増減等に応じた協議による改定を規定した。
(あ
わせて、「借賃改定に係る特約」(契約期間中は賃料改定しない方式、一定の算定
式により改定する方式)も選択できるよう規定)(第4条)
④ 賃借人からの中途解約権(1月前の解約の申入れによる解約)を規定した。
(あ
わせて、借地借家法第38条第5項に規定する解約事由に限定することも選択でき
るよう規定)(第11条)
⑤ 礼金等の一時金(敷金を除く。)は契約書上規定しないこととした。
⑥ 連帯保証人の債務の範囲の明確化等の規定を置いた。(第16条)
⑦ その他、定期賃貸住宅契約についての事前説明書等の雛形を作成した。
i
129
129
でき、借主や貸主等は登録簿を閲覧することにより、賃貸住宅選択や管理業者選択の
判断材料として活用することが可能となりました。また、登録業者は、貸主及び借主
の利益の保護に資するため、管理業務に関して重要事項の説明など一定のルールを遵
守する必要があり、登録業者がルールに違反した場合などは、指導、勧告、登録抹消
の対象となります。
今後、登録制度の更なる普及啓発を図ることにより、賃貸住宅管理の共通化・標準
化が進み、安心して住むことができる健全な賃貸住宅市場の形成が促進されることが
期待されます。
登録業者であることを示すシンボルマーク
問合せ先
○国土交通省土地・建設産業局不動産業課不動産業指導室
電話 03-5253-8111(代)
(9)原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
民間賃貸住宅における賃貸借契約は、いわゆる契約自由の原則により、貸す側と借
りる側の双方の合意に基づいて行われるものですが、退去時において、貸した側と借
りた側のどちらの負担で原状回復を行うことが妥当なのかについてトラブルが発生す
ることがあります。
原状回復の問題は退去時の問題と捉えられがちですが、トラブルの未然防止のため、
これを入居時の問題として捉えることを念頭におき、賃貸住宅標準契約書の考え方、
裁判例及び取引の実務等を考慮の上、原状回復の費用負担の在り方について、現時点
で妥当と考えられる一般的な基準を示すとともに、入退去時の物件の確認等の在り方、
契約締結時の契約条件の開示を具体的に示しました。
○ガイドラインのポイント
① 原状回復とは
原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人
の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損
耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、
いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は賃料に含まれるものとし
ました。
②
「通常の使用」とは
「通常の使用」の一般的定義は困難であるため、具体的な事例を次のように区分
130
130
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 4]不動産
i
「通常の使用 」のイメージ図
G
○
経年変化
通常損耗
A
○
善管注意義務違反
故意・過失
その他
B
○
A(+B)
グレードアップ
A(+G)
100(%)
時間
新居
Ⅱ して、賃貸人と賃借人の負担の考え方を明確にしました。
A
:賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても、発生すると考えられ
るもの
B
:賃借人の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりすると考
えられるもの(明らかに通常の使用等による結果とは言えないもの)
A(+B):基本的にはAであるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗
等が発生又は拡大したと考えられるもの(+B)
A(+G):基本的にはAであるが、建物価値を増大させる要素(例えば、古くな
った設備を最新のものに取り替える等)が含まれているもの(+G)
このうち、B及びA(+B)については賃借人に原状回復義務があるとしまし
た。
入居
退去
③
経過年数の考慮
前記BやA(+B)の場合であっても、経年変化や通常損耗が含まれており、賃
借人はその分を賃料として支払っていますので、賃借人が修繕費用の全てを負担す
ることとなると、契約当事者間の費用配分の合理性を欠くなどの問題があるため、
賃借人の負担については、建物や設備の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割
合を減少させるのが適当です。
④
施工単位
原状回復は毀損部分の復旧ですから、可能な限り毀損部分に限定し、その補修工
事はできるだけ最低限度の施工単位を基本としていますが、毀損部分と補修を要す
る部分とにギャップ(色あわせ、模様あわせなどが必要なとき)がある場合の取扱
いについて、一定の判断を示しています。
131
131
問合せ先
○国土交通省住宅局住宅総合整備課
電話 03-5253-8111(代)
ウェブサイト http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakuke
ntiku_house_tk3_000016.html
(10)リフォーム対策
住宅のリフォーム工事については、
「経験のない工事業者がリフォーム工事を請け負
って、ずさんな工事をされた。」「本来必要のない工事が必要と言われて高額な工事費
用が請求された。」
「サービス工事と聞いていたが、後で費用を請求された。」といった
トラブルが発生することもあります。
消費者が安心してリフォームできる市場環境の構築を図るため、国土交通省はリフ
ォーム市場の消費者保護に取り組んでいます。
① リフォーム瑕疵(かし)保険制度
リフォーム工事に欠陥が見つかった場合に、国土交通大臣が指定した保険法人
(123ページ参照)から修理費用を賄うための保険金が支払われるリフォーム瑕疵
(かし)保険制度が創設されました。
この保険は、リフォーム事業者が加入する任意の保険ですが、
・リフォーム工事施工中に専門家による現場検査を実施
保険に加入するためには、工事ごとに第三者である保険法人の現場検査員(建
築士資格保有者)による現場検査を受けることが義務付けられています。
・リフォーム事業者登録制度
保険を利用する事業者は、あらかじめ保険法人へリフォーム事業者登録するこ
とが必要となります。保険法人はウェブサイト等を通じて登録事業者を公開し
ています。これにより消費者は、リフォーム保険を利用する消費者保護の意識
の高い事業者を選別することができます。
・リフォーム工事に欠陥が見つかった場合の確実な保険金支払いを確保
事業者が倒産等している場合であっても、消費者から保険法人へ直接保険金を
請求することにより修補費用を確保することができます。
といった特長によって、ずさんな工事による消費者被害の防止を図るものです。
②
リフォーム見積相談制度
悪質な過剰請求、工事途中の追加請求、過大な工事による過大請求を消費者が事
前に回避できるようにするため、住宅の相談窓口として国土交通大臣の指定を受け
た「住まいるダイヤル」(電話 0570-016-100)において、事業者から提示された見
積書について以下のような相談を無料で実施しています。
・見積の項目・形式についての相談
不明瞭な項目がないか、二重計上や不要な項目がないか
・見積金額についての相談
132
132
リフォーム専門家相談制度
リフォーム工事を実施し実際に事業者との間でトラブルになった場合など専門家
の支援が必要な消費者は、最寄りの弁護士会で弁護士や建築士との対面相談を利用
することが出来ます。相談の申込みなどの詳細は「住まいるダイヤル」で御案内し
ています。
問合せ先
○国土交通省住宅局住宅生産課
電話 03-5253-8111(代)
○住まいるダイヤル
電話 0570-016-100
ウェブサイト
http://www.chord.or.jp
※住まいるダイヤルは公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援セン
ターの愛称です。
(11)マンション管理
マンションは、ここ数年は年間約10万戸前後が新規供給され、2012年末現在で約590
万戸のマンションストックに、国民の約1割に当たる約1450万人が居住していると推
計されており、重要な居住形態となっています。
こうした中、マンションの適切な管理は、マンションの区分所有者等だけでなく、
社会的にも要請されているところですが、一方で、一棟の建物を区分して所有するた
め、権利関係が複雑であること等、マンション特有の問題が存在することから、居住
者間の共同居住ルールの確立や、マンション管理の適正化の推進のための制度の整備
を行っています。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 4]不動産
③
Ⅱ 見積書の金額が一般的な相場と比べて特に高額な請求ではないか
・工事内容や追加費用についての相談
見積や図面に記載のある工事内容が希望と合っているか、追加工事の費用負担
について合意があるか
i
①
マンション標準管理規約
多くの住民が一棟の建物を区分して所有しているマンションにおいて、住民が長
い間にわたり快適な生活を送るためには、住民の間でマンションの維持、管理や生
活の基本的ルール(管理規約)を定める必要があります。国土交通省は、管理組合
が各マンションの実態に応じて管理規約を制定変更する際の参考として「マンショ
ン標準管理規約」を定め、その周知を図っており、さらに、マンションを取り巻く
情勢の変化等を踏まえ、2011年7月にこれを改正しました。
②
マンション標準管理委託契約書
管理組合がマンション管理業者との間で、管理委託契約を締結するに際して、個々
133
133
のマンションの状況に応じ、適宜修正して活用する標準形である「マンション標準
管理委託契約書」を定めています。
③
マンション履歴システム(マンションみらいネット)
区分所有者が、修繕の履歴情報等の管理情報からマンションの管理状況を把握す
ることで適正な管理を一層推進するとともに、購入予定者が管理状況を考慮してマ
ンションを購入できる環境を整備するため、マンションの管理情報を登録・閲覧す
ることのできるマンション履歴システム(マンションみらいネット)が設けられて
います。
○マンションみらいネット
ウェブサイト
http://www.mirainet.org/
④
マンション管理標準指針
適正なマンション管理のために管理組合に求められる広範多岐にわたる基本事項
について、初めて標準的な対応を全般的かつ具体的に示した「マンション管理標準
指針」を2005年12月に策定しました。
⑤
マンション管理の適正化の推進に関する法律
2000年12月8日には、マンション管理士制度の創設、マンション管理業者の登録
制度等、マンション管理の適正化を推進するための措置を講ずることで、マンショ
ンにおける良好な居住環境の確保を図ることを目的とした、マンションの管理の適
正化の推進に関する法律(2000年12月8日公布、最終改正2011年6月24日)が公布
され、2001年8月1日から施行されました。
1)マンション管理士
マンション管理士は、管理組合の運営やその他のマンションの管理に関し、管理組
合の理事長又はマンション区分所有者等の相談に応じ、助言・指導等を行います。
2)マンション管理業者登録簿
管理組合からマンションの管理を委託されているマンション管理業者について
は、国土交通省の「マンション管理業者登録簿」への登録が義務付けられ、登録
業者に係る登録関係書類は国土交通省各地方整備局、北海道開発局及び内閣府沖
縄総合事務局の窓口で誰でも閲覧することができます。
3)マンション管理業者の業務に関する相談
マンション管理業者の業務の改善向上を図ることを目的とするマンション管理
業者の団体として、一般社団法人マンション管理業協会が指定されており、マン
ション管理業者の業務に関する苦情の解決のための相談や業務を行っています。
4)マンション管理に関する相談
管理組合の運営、管理規約の内容、修繕計画等マンションの管理に関する相談
や助言等を行う「マンション管理適正化推進センター」として、公益財団法人マ
ンション管理センターが指定されています。
134
134
○定期借家制度のポイント(旧制度との相違点)
これまでの借地借家法では、
「転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情」
(旧第38条)によって生じる不在期間に限定して、契約期間の満了により契約を確
定的に終了させることができるとしていました。しかしながら、良質な借家の供給
を促進するという観点から、正当事由がなくても期間の満了により 確定的に借家契
約が終了する「定期借家権」を導入すべきであるとの主張がされるようになり、不
動産の賃貸による運用収益の予測可能性を高めることにより不動産の流動化・証券
化を促進するための基盤を整備するという観点からも、同様に定期借家制度の導入
を主張する意見が出されるようになりました。このため、1997年9月より定期借家
制度の導入に関する検討が本格的に行われ、1999年末の借地借家法の改正に至り、
一般的な定期借家制度が導入されました。この制度の創設により、賃貸人が借家契
約の更新拒絶の通知または解約申入れをした場合においても「正当事由」がない限
り契約は終了しないこととする制度に例外が認められたこととなります。
定期借家制度においては、契約を締結するに際して、①賃貸人はあらかじめ賃借
人に対し、定期借家契約である旨を記載した書面を交付して説明すること、②期間
1年以上の定期借家契約において賃借人に対する期間満了の1年前から6か月前ま
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 4]不動産
(12)定期借家制度
1999年12月9日に成立し、2000年3月1日に施行された、良質な賃貸住宅等の供給
の促進に関する特別措置法は、借地借家法(1991年10月4日公布、最終改正2011年5
月25日)の改正をその主な内容とし、これにより定期借家制度が設けられました。
定期借家制度とは、定められた契約期間の満了により更新されることなく借家関係
が終了(再契約は可能)する借家契約のことです。なお、定期借地制度については、
1992年に導入されていましたが、2007年末の借地借家法の改正(2008年1月1日施行)
により、事業用定期借地権を設定する場合の存続期間の上限が「20年以下」から「50
年未満」に引き上げられました。定期借家契約(借地借家法第38条)及び普通定期借
地契約(同法第22条)では公正証書等の書面により、事業用定期借地契約(同法第23
条)では公正証書のみにより、契約を締結することが義務付けられています。
Ⅱ 問合せ先
○国土交通省住宅局市街地建築課マンション政策室
国土交通省土地・建設産業局不動産業課不動産業指導室
電話 03-5253-8111(代)
○各地方整備局、北海道開発局及び沖縄総合事務局のマンション管理業担当課
○公益財団法人マンション管理センター
電話 03-3222-1516
ウェブサイト
http://www.mankan.or.jp
○一般社団法人マンション管理業協会
電話 03-3500-2721
ウェブサイト
http://www.kanrikyo.or.jp
i
135
135
での間に契約終了の通知を義務付けていること、③通知期間に関する特約のうち賃
借人に不利な特約は無効とする、など一定の賃借人保護の充実が図られています。
なお、従来の「正当事由」を必要とする借家契約制度も引き続き残っています。
○良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法の概要
第1条
目的規定
第2条~第4条 「良質な賃貸住宅等の供給の促進」「住宅困窮者のための良質な公
共賃貸住宅の供給の促進」「賃貸住宅等に関する情報の提供、相談
等の体制の整備」に関する国・地方公共団体の努力規定
第5条
借地借家法の一部改正(定期借家制度の導入:(1)賃貸人の事前の書
面交付による説明義務、
(2)説明義務違反があった場合の更新がない
旨の特約の無効、
(3)期間1年以上の定期借家契約における賃貸人か
ら賃借人への終了通知義務に関する規定、
(4)賃借人の中途解約権創
設に関する規定、
(5)
(3)
、
(4)に関する賃借人に不利な特約を無効
とする規定、
(6)借賃増減に関する特約に関する規定の定め)
問合せ先
○法務省民事局参事官室
電話 03-3580-4111(代)
○国土交通省住宅局住宅総合整備課
電話 03-5253-8111(代)
ウェブサイト http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakuke
ntiku_house_tk3_000016.html
(13)建設工事紛争審査会
建設工事の請負契約をめぐるトラブルの解決を図るための裁判外紛争処理機関とし
て、建設工事紛争審査会があります。
例えば、新築の家であるにもかかわらず雨漏りし、業者に修理を依頼したが、業者
が修理に応じない、契約の内容と違う家が完成した、又は、工事の途中で解約を申し
入れたが、精算金の額について折り合いがつかないなどといった注文主と建設業者の
間の請負契約をめぐる紛争の解決を図るには、建設工事に関する技術などの専門的知
識が必要になることが少なくありません。そのため、専門の紛争処理機関として、国
土交通省及び各都道府県に建設工事紛争審査会が置かれています。
建設工事紛争審査会は、建設工事の請負契約に関する紛争を公正、中立に解決する
ことを目的として、建設業法の規定に基づいて設置された裁判外紛争処理機関です。
申請をされる方は、事件の内容、解決の難しさ等を勘案して、
「あっせん」
、
「調停」
、
「仲
裁」のいずれかの手続を選択し、担当委員(弁護士、建築士等)が双方の主張を聴き、提
出された証拠等を基に紛争の解決を図ります。
(2012年度:申請件数155件、取扱件数286件)
なお、建設工事紛争審査会は、建設業者の許可の種類により、次のように審査会の
管轄が分かれています。
136
Ⅱ <審査会の管轄>
① 中央審査会
1)当事者の一方又は双方が国土交通大臣の許可を受けた建設業者である場合
2)当事者の双方が建設業者で、許可をした都道府県知事が異なる場合
都道府県審査会
1)当事者の一方のみが建設業者で、当該都道府県の知事の許可を受けたものであ
る場合
2)当事者の双方が当該都道府県知事の許可を受けた建設業者である場合
3)以上のほか、当事者の双方が許可を受けた建設業者でなく、その紛争に係る建
設工事の現場が当該都道府県の区域内にある場合
③
管轄合意
上記①、②にかかわらず、当事者双方の合意により、いずれの審査会にも紛争処
理を申請することができます。
問合せ先
○中央建設工事紛争審査会
国土交通省中央建設工事紛争審査会事務局
電話 03-5253-8111(代)
ウェブサイト
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt
_000172.html
○各都道府県建設工事紛争審査会
各都道府県建設工事紛争審査会事務局
(14)高齢者の住環境
厚生労働省においては、1963年に、高齢者の福祉施策を総合的・体系的に推進する
ために、老人福祉法(1963年7月11日公布、最終改正2011年12月14日)が制定されて
から現在まで、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホ
ームなどの高齢者の住環境の整備を含め、高齢者のよりよい生活のために、様々な施
策を講じてきました。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 4]不動産
②
i
(参考)老人福祉法(1963年7月11日公布、最終改正2011年12月14日)(抄)
(目的)
第一条 この法律は、老人の福祉に関する原理を明らかにするとともに、老人に
対し、その心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措置を講じ、もつ
て老人の福祉を図ることを目的とする。
137
137
現在、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となって
も住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、
医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステム
の構築の実現に努めています。高齢化が急速に進む中で、高齢の単身者や夫婦のみ
の世帯が増加していることから、今後も、これらの高齢者が生活支援、介護等のサ
ービスを受けながら安心して暮らせる住まいを確保するための取組みを進めていく
ことが必要です。このため、特別養護老人ホームや認知症対応型グループホームな
どの施設等については、介護ニーズを把握し地域の実情を勘案した上で、保険者で
ある市区町村は介護保険事業計画、都道府県は介護保険事業支援計画を策定し、計
画的に整備を行っています。また、有料老人ホームについては、2006年の老人福祉
法の改正により、①帳簿の作成・保存や重要事項説明書の交付を行うこと、②入居
一時金の算定基礎を書面で明示し、かつ倒産などの場合に備えて必要な保全措置を
講じること等が義務付けられ、さらに、2012年の同法の改正により、入居契約につ
いて、①家賃、敷金、介護等のサービス以外の費用を受領してはならないこと、②
入居後一定期間に契約解除等が行われた場合に、前払金を返還することが義務付け
られました。さらに、厚生労働省・国土交通省が連携して、2011年10月に高齢者の
居住の安定確保に関する法律(2001年4月6日公布、最終改正2011年6月24日)を
改正して高齢者を対象とした状況把握サービスや生活相談サービスを提供する「サ
ービス付き高齢者向け住宅」制度を創設し、供給促進を図っていくこととしていま
す。
(参考)高齢者の居住の安定確保に関する法律(2001年4月6日公布、最終改正
2011年6月24日)(抄)
(目的)
第一条 この法律は、高齢者が日常生活を営むために必要な福祉サービスの提供
を受けることができる良好な居住環境を備えた高齢者向けの賃貸住宅等の登録
制度を設けるとともに、良好な居住環境を備えた高齢者向けの賃貸住宅の供給
を促進するための措置を講じ、併せて高齢者に適した良好な居住環境が確保さ
れ高齢者が安定的に居住することができる賃貸住宅について終身建物賃貸借制
度を設ける等の措置を講ずることにより、高齢者の居住の安定の確保を図り、
もってその福祉の増進に寄与することを目的とする。
サービス付き高齢者向け住宅においても、入居者を保護する観点から、①契約締結
前に、サービス内容や費用について書面を交付して説明すること、②登録事項の情報
開示や契約に従ったサービスを提供すること、③入居後一定期間内に契約解除等が行
われた場合に、前払金を返還すること等が義務付けられています。
138
138
高齢者向け住まいとしての「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住
宅」を選ぼうとする消費者がより良い選択をし、かつ、後々のトラブルを回避す
るために、あらかじめチェックしておくことが望ましい内容について、事業者団
体や消費者関係団体、地方公共団体、厚生労働省・国土交通省の連携のもと、
「-
高齢者向け住まいを選ぶ前に-消費者向けガイドブック」をまとめています(2012
年10月1日発行)。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 4]不動産
(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaig
o_koureisha/other/dl/other-03.pdf)
Ⅱ (参考)高齢者向け住まいを選ぶ前に -消費者向けガイドブック
i
問合せ先
○厚生労働省
老健局高齢者支援課
電話 03-3595-2888
○国土交通省
住宅局安心居住推進課
電話 03-5253-8952
2.広告その他の表示の適正化等
(1)住宅性能表示制度
住宅の品質確保の促進等に関する法律(121ページ)を御参照下さい。
(2)建物部品の防犯性能
① 指定建物錠の防犯性能表示制度
消費者が建物錠を購入する際に、防犯性能の観点からの選択が可能となるよう、
特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律(2003年6月4日公布)に基づき、2004
年4月から、建物錠の製造・輸入業者が指定建物錠の防犯性能に関して表示すべき
事項やその表示の方法等を定めた指定建物錠の防犯性能表示制度の運用が開始され
ました。
1)制度の概要
空き巣等の建物に侵入して行われる犯罪の防止を図るためには、ピッキング用具
や一定の工具の不法所持・携帯の取締りと併せて、防犯性能の高い建物錠の開発・
普及を促進することが必要かつ効果的です。そこで、特殊開錠用具の所持の禁止等
に関する法律においては、指定建物錠の防犯性能の表示に関して統一的なルールが
定められています。これにより、指定建物錠について市場原理が有効に機能し、防
犯性能の高い指定建物錠の開発・普及が促進されることが期待されています。
139
139
指定建物錠とは、住宅の玄関や建物の出入口の戸に使用される錠(その部品を
含む。)のうち、防犯性能の向上を図ることが特に必要なものとして政令で定める
ものをいいます。現在、シリンダー錠、シリンダー及びサムターンの3種類がこ
れに該当します。
2)表示の内容・方法
空き巣等の犯人は、
「ピッキング」、
「サムターン回し」等の手口で建物に侵入し
ており、その被害を防ぐためには、
「耐ピッキング性能」、
「耐サムターン回し性能」
等の防犯性能の高い建物錠を使用することが必要です。
指定建物錠には、その製造・輸入業者によって、
「耐ピッキング性能5分以上」、
「耐サムターン回し性能あり」などの防犯性能の表示が行われています。この表
示は、指定建物錠への紙片の貼付又はその容器、包装、取扱説明書等への記載な
どにより、指定建物錠の最終消費者等が確実に知ることができる方法で行わなけ
ればならないこととされています。
○表示の内容
シリンダー錠 シリンダー サムターン
耐ピッキング性能
5分未満 / 5分以上 / 10分以上
○
○
耐かぎ穴壊し性能
5分未満 / 5分以上 / 10分以上
○
○
耐サムターン回し性能
なし(5分未満)/ あり(5分以上)
○
耐カム送り解錠性能
なし(5分未満)/ あり(5分以上)
○
耐こじ破り性能
なし(5分未満)/ あり(5分以上)
○
出荷するかぎの本数
○
何本
○
○
○印は、表示すべき項目を示す。
平成15年法律第65号 第7条 指定建物錠の防犯性能の表示
品 番
事 項
○○-△△
←
低 性 能 高
→
耐ピッキング性能
5分未満
5分以上
10分以上
耐かぎ穴壊し性能
5分未満
5分以上
10分以上
なし
-
あり
耐サムターン回し性能
耐カム送り解錠性能
なし
-
あり
耐こじ破り性能
なし
-
あり
出荷時かぎ本数
3本
(指定建物錠の防犯性能表示の例:シリンダー錠)
140
140
Ⅱ 問合せ先
○警察庁生活安全局生活安全企画課
電話 03-3581-0141(代)
防犯性能の高い建物部品(防犯建物部品)の表示について
国民に多大な不安を与えている空き巣等の侵入手段の巧妙化に対処するためには、
建物錠、ドア、窓、シャッター等の建物部品の防犯性能を高めることが重要です。
2002年11月、警察庁、国土交通省及び経済産業省は、建物部品関連の民間団体とと
もに、「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」(以下「官民
合同会議」という。)を開催し、2004年4月には、建物部品の防犯性能試験の結果に
基づき、侵入までに5分以上の時間を要するなど一定の防犯性能があると評価した
建物部品(防犯建物部品)を登載した「防犯性能の高い建物部品目録」
(以下「目録」
という。)を公表しました。2013年10月末現在で、17種類3,243品目の防犯建物部品
が目録に登載されています。
1)防犯建物部品の共通標章(CPマーク)
2004 年5月、官民合同会議では、防犯建物部品の普及を促進するため、防犯建
物部品に共通して使用することができる共通標章(CPマーク)を制定しました。
CPマークは、
「防犯=Crime Prevention」の頭文字「C」と「P」を図案化した
ものです。
2)共通標章の使用
建物部品のパンフレットその他の広報資料等において、共通標章を使用し、防
犯性能の高い建物部品の普及を促進します。
目録登載の建物部品については、当該製品が防犯建物部品であることを示すた
めに、当該製品の製造・輸入業者において、共通標章を製品に貼付したり、カタ
ログ等に表示することができます。
3)注意事項
本目録に登載されている製品は、官民合同会議の試験の結果、現在広く見られ
る空き巣等の手口に対して5分以上その侵入を阻止する能力を示したものですが、
このことは、あらゆる状況における侵入者の攻撃に対し5分以上抵抗することを
意味するものではありません。例えば、建物の置かれている環境により侵入者の
攻撃内容が変わることがあり、その他、侵入者が用いる工具の大きさや道具の性
能、侵入者の熟練度や体力、人数などの要因により抵抗時間が5分に満たない場
合があります。
官民合同会議における公式の試験時間は、一部を除いて5分間としており、目
各分野における消費者政策 « 各
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②
i
141
141
録登載製品は一定の防犯性能を有していますが、このことは、全ての防犯性能が
同一であることを意味するものではなく、侵入者の攻撃に対する抵抗時間が、同
じカテゴリー(種類)の中にも、5分を若干上回る程度のものから5分を大きく
超える性能を有するものまで存在する可能性があります。
目録に登載された製品を使用したとしても、その施工や使用が適切に行われて
いなければ、個々の製品の性能が十分発揮されない場合があります。各製品の内
容や施行方法については、目録の「連絡先」に示す各製造団体にお問い合わせ下
さい。
問合せ先
○警察庁生活安全局生活安全企画課
電話 03-3581-0141(代)
○国土交通省住宅局住宅生産課
電話 03-5253-8111(代)
○経済産業省製造産業局住宅産業窯業建材課
電話 03-3501-1511(代)
(参考)防犯性能の高い建物部品目録
○公益財団法人全国防犯協会連合会
ウェブサイト
http://www.cp-bohan.jp/
142
142
[5]保健・医療・福祉
Ⅱ (1)各種商品と薬事法との関連
薬事法(1960年8月10日公布、最終改正2013年6月14日)は、医薬品、医薬部外品、
化粧品及び医療機器の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとと
もに、医療上特にその必要性が高い医薬品等の研究開発の促進のために必要な措置を
講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とするものです。
医薬品は、疾病の治療等に使用されることが目的とされているものであり、医薬部
外品は、育毛剤や浴用剤等の特定の製品群のうち人体に対する作用が緩和なもの等が
分類されます。また、化粧品は身体を清潔にしたり、美化するなどの目的で使用され
るものが分類されます。
さらに、医療機器は、疾病の診断、治療、予防等に使用されることが目的とされて
いる機械器具等が分類されます。
医薬品や医薬部外品及び医療機器については、企業からの申請に基づき、その製品
の品質、有効性(効能・効果等)及び安全性について承認(認証)審査が行われ、そ
の結果を踏まえ、承認(又は認証)されます。化粧品については、
「皮膚にうるおいを
与える」等の56の効能の範囲の中で、企業が製品に応じた適切な効能を選択した上で、
届出により製造販売を行うことになります。
また、いわゆる健康食品については、サプリメント等と称して食品として販売して
いても、医薬品成分が含有されている場合があり、それによる健康被害が発生する可
能性が否定できません。そういった医薬品成分が含有されている製品はもとより、医
薬品成分が入っていない製品であっても、医薬品的な効能効果(人の疾病の予防、診
断、治療に使用されることを目的としていること、人体の構造や機能に影響を与える
ことを目的としていること等)を標ぼうしている製品は、医薬品とみなされ、薬事法
上の製造販売業の許可等なく販売等することはできません。
さらに、美顔器等の美容機器については、一般的には、美容目的のみであれば薬事
法上の医療機器には該当しませんが、医療機器的な効能効果(人の疾病の予防、診断、
治療に使用されることを目的としていること、人体の構造や機能に影響を与えること
を目的としていること等)を標ぼうすると医療機器とみなされる場合があり、
やはり、
薬事法上の製造販売業の許可等なく販売等することはできません。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 5]保健・医療・福祉
1.医薬品・医療機器等
i
143
143
問合せ先
○厚生労働省医薬食品局審査管理課/同課医療機器審査管理室/監視指導・麻
薬対策課
電話 03-5253-1111(代)
144
144
医薬品
医薬部外品
化粧品
医療機器
計
2003
年度
2004
年度
2005
年度
2006
年度
2007
年度
2008
年度
2009
年度
2010
年度
2011
年度
2012
年度
255
199
416
184
162
153
183
146
166
129
24
15
9
23
28
29
19
11
19
8
72
60
62
103
100
92
83
91
75
74
292
370
322
365
360
396
373
396
408
386
643
644
809
675
650
670
658
644
668
597
問合せ先
○厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課
電話 03-5253-1111(代)
(3)患者用の説明文書の公開
患者が医薬品を安全に使用するためには、医薬品について説明が十分になされ、患
者自身が医薬品について理解することが重要です。不十分な説明では、患者自身が用
法・用量を理解して正確に服用することができません。さらに、使用方法の複雑な医
薬品や多剤併用の増加、高齢者の増加などを考えると、正確な服薬のために患者に対
する服薬指導はますます重要となっています。また、医薬品の副作用を含めた疾病の
治療方法に関する患者さんへの説明(インフォームドコンセント)の普及とともに、
国民の医薬品の情報に対するニーズが高まっています。
しかし、医療用の医薬品の添付文書は医師、薬剤師等の医療の専門家への情報提供
のため作成されているものであり、一般の患者が理解するのは困難です。患者に対し、
医薬品が正しく理解され、診療に協力してもらうには、口頭による服薬指導に加え、
添付文書を分かりやすく説明した文書が必要です。このため、重篤な副作用の発生等
に注意する必要がある医薬品については、国が示すガイドラインに基づき、製薬企業
等が患者用の説明文書(患者向医薬品ガイド)を作成し、ウェブサイト上に掲載する
等、国と企業が共同して広く国民に普及啓発を図っています。
○患者向医薬品ガイド
http://www.info.pmda.go.jp/guide_iyaku/guide_iyaku.html
各分野における消費者政策 « 各
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回収件数年度推移
Ⅱ (2)回収制度
1997年4月から、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の製造販売業者が自主
回収に着手したときには、行政に報告をすることが義務付けられています。また、2000
年には回収に当たっての基本的な考え方、対象範囲、手続の詳細等について通知で明
確化するとともに、同年4月からは全ての事例をインターネット上で公開しています。
○医薬品医療機器情報提供ホームページ 医薬品等の回収に関する情報
http://www.info.pmda.go.jp/kaisyuu/menu.html
i
145
145
問合せ先
〇厚生労働省医薬食品局安全対策課
電話 03-5253-1111(代)
(4)医薬品副作用被害救済制度等
今日、私たちの生活に医薬品は不可欠なものとなっています。しかし、医薬品は、
人体にとって本来異物であるので、適正に使用したとしても副作用の発生を完全にな
くすことは困難です。このような副作用により、重い健康被害に遭われた方の救済を
目的として創設されたのが、医薬品副作用被害救済制度です。医薬品は、今日、医療
上必要不可欠なものとして、国民の生命・健康の保持増進に大きく貢献しています。
他方、医薬品は、有効性と安全性のバランスの上に成り立っているものであり、その
使用に当たって万全の注意を払ってもなお発生する副作用を完全に防止することは、
現在の科学水準をもってしても非常に困難であるとされています。このため、医薬品
の副作用によって重い健康被害に遭われた方の救済を行う必要があります。
医薬品副作用被害救済制度においては、このような医薬品の副作用により重い健康
被害に遭われた方の迅速な救済を図るため、製薬企業の社会的責任に基づく拠出金を
財源として、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づき、医療費、医療手当、
障害年金等様々な給付が行われています。
この救済制度の対象となる方は、1980年5月以降に、医薬品を適正な目的に従って
適正に使用したにもかかわらず発生した副作用により重い健康被害に遭われた方です。
使用した医薬品と健康被害の間の因果関係や被害の程度などの判定は、厚生労働大臣
の諮問機関である薬事・食品衛生審議会において、医学薬学的見地から専門的に行わ
れ、その判定の結果を基に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が、医療費、医療
手当、障害年金等の支給の決定を行います。
また、人や動物など生物に由来するものを原料や材料とした医薬品や医療機器(輸
血用血液製剤やワクチン、ブタ心臓弁やヘパリンを塗布したカテーテルなどの生物由
来製品)の使用により、その製品を介してウイルスなどの感染被害に遭われた方に対
しては、2004年4月1日に、生物由来製品感染等被害救済制度が創設されました。制
度創設日以降に、生物由来製品を適正に使用したにもかかわらず、発生した感染等に
より重い健康被害に遭われた方が救済の対象となります。
これら救済制度は、病院・診療所で投薬された医薬品や薬局などで購入した医薬品
が対象となりますが、抗がん剤等のように救済の対象外となっているものもあります
ので、詳細は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構までお問い合わせ下さい。
問合せ先
〇独立行政法人医薬品医療機器総合機構
住所 〒100―0013 東京都千代田区霞が関3丁目3番2号新霞が関ビル
電話 03-3506-9411、0120-149-931(フリーダイヤル)
〇厚生労働省医薬局総務課医薬品副作用被害対策室
電話 03-5253-1111(代)
146
146
2.保健・福祉サービス
Ⅱ 各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 5]保健・医療・福祉
(1)クリーニング業、理容業、美容業、一般飲食店営業及びめん類飲食店営業の標準
営業約款(Sマーク)
クリーニング業、理容業、美容業、一般飲食店営業及びめん類飲食店営業の標準営
業約款は、これらの業種について、提供するサービスの内容又は商品の品質の表示の
適正化や、万一利用者に被害が生じた場合の損害賠償が確実に実施されることを目的
として定められたものです。標準営業約款に従って営業を行っている業者は、公益財
団法人都道府県生活衛生営業指導センターで登録を受け、標識(Sマーク)を掲示し
ているので、消費者が安心して利用することができる店であることが分かります。
クリーニング業、理容業、美容業、一般飲食店営業及びめん類飲食店営業は私たち
の日常生活において大変身近なものです。しかし、それを利用する私たち消費者と業
者の間で、様々なトラブルが発生しているという問題があります。この原因の1つと
しては、消費者の支払う代金と引換えにこれらの業者が提供するサービスについて、
消費者が事前にそのサービスの内容又は商品の品質を正確に把握できない場合がある
ことが考えられます。
そこで、サービスの内容又は商品の品質の表示の適正化に関する事項等を定め、利
用者又は消費者に正確な情報を提供して、選択の利便を図ることを目的として、これ
らの業についてそれぞれ標準営業約款が制定されています。
標準営業約款は、生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(生衛法、
1957年6月3日公布、最終改正2011年6月24日)に基づき、公益財団法人全国生活衛
生営業指導センターが作成し、厚生労働大臣が認可、告示することとされており、ク
リーニング業については、1983年3月、理容業、美容業については、1984年10月、一
般飲食店営業及びめん類飲食店営業については、2004年11月に認可され、5業種で設
定されています。
また、毎年11月を「標準営業約款普及登録促進月間」と定め、この期間を中心に公
益財団法人全国生活衛生営業指導センターがポスターを作成・配布するなどして、標
準営業約款の普及のためのキャンペーンを実施しているところです。
標準営業約款に従って営業を行おうとする業者は、各都道府県にある公益財団法人
生活衛生営業指導センターの登録を受けなくてはなりません。登録を受けた業者は、
この標準営業約款を遵守するほか、店頭又は店内に標識(安全:Safety、衛生:
Sanitation、標準:Standardの頭文字の「S」マーク)とサービス内容の要旨を掲示
するものとされています。これにより、消費者はSマークの表示がある店は標準営業
約款に従った安心できるサービスを提供する店であることが分かります。
標準営業約款の内容は以下のとおりです。
i
① サービスの内容又は商品の品質の表示の適正化
サービスの内容又は商品の品質の表示の適正化に関する事項について定めるとと
もに、サービスの提供に当たって、公益財団法人全国生活衛生営業指導センターが
定める業種毎の処理基準に従うことを義務付けています。
147
147
②
損害賠償の実施の確保
事故により損害が生じた場合は、所定の賠償基準に基づいて賠償を行うことを定
めています。また、この損害賠償が確実に実施されるよう、業者に対して専用の損
害保険(クリーニング事故賠償保険、理容所事故賠償保険、美容所事故賠償保険、
一般飲食店事故賠償保険、めん類飲食店事故賠償保険)に加入することを義務づけ
ています。
③
標識等の掲示
厚生労働大臣認可
標準営業約款
Standard(標準)
Sanitation(衛生)
Safety(安全)
Sマーク
④
登録
公益財団法人都道府県生活衛生営業指導センターが営業者の申出により登録。
(2)クリーニング業のLDマーク
クリーニング業では、47都道府県に所在するクリーニング生活衛生同業組合に加
盟しているクリーニング店であることを示す標識(LDマーク。「L」はLaundry、
「D」はDrycleaningの頭文字)があります。LDマークの表示がある店では、クリ
ーニングトラブルの防止技術等についての情報共有を通じて、サービスの向上が図
られているほか、標準営業約款と同様に、原則として所定の賠償基準に基づいた対
応がされます。
LDマーク
148
148
○生活衛生関係営業に関する行政組織
Ⅱ 厚 生 労 働 省
指導・監督
(健康局生活衛生課)
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 5]保健・医療・福祉
日本政策
金融公庫
指導・監督
指導・監督
連絡調整
融資
生活衛生同業組
合連合会
全国生活衛生営
業指導センター
指導
連絡調整
指導
指導
都道府県生活衛
生同業組合
都道府県生活衛
生営業指導セン
ター
融資
指
導
・
監
督
i
指導・監督
指導・監督
指導・監督
共同事業
都道府県衛生主
管部局
指導・監督
(政令市)
融資
営 業 者
指導・監督
(組合員)
保 健 所
問合せ先
○厚生労働省健康局生活衛生課
電話 03-5253-1111(代)
○公益財団法人全国生活衛生営業指導センター
電話 03-5777-0341
○全国クリーニング生活衛生同業組合連合会
電話 03-5362-7201
(3)エステティック
経済産業省の委託事業として、2002年12月に「エステティック産業の適正化に関す
る検討会」
(座長:石橋康正東京大学名誉教授)が設置されました。検討会では、消費
者が安心してサービスを受けられるよう、エステティック産業の適性化に向けた検討
が行われ、エステティックサロンの認定制度とエステティシャンの共通資格制度の早
期実現、これら制度を実施する中核機関の設立を提言しました。
○参考:上記検討会に関する報告書本文
http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g30604b01j.pdf
上記報告書の提言を踏まえ、エステティック業界では 2004 年5月に認定特定非営利
149
149
活動法人日本エステティック機構を設立しました。同法人では、2008 年1月にエステ
ティックサロンの認証の受付を開始し、続いて同年4月にエステティック機器の認証
制度、2009 年 12 月にエステティシャン試験に対する認証制度を開始しています。ま
た 2012 年からエステティックサロンで施術可能な光線を使用した脱毛(美容ライト脱
毛)に対する安全性の検討も行っています。
同法人によって適正に認証が行われることにより、消費者が認証マークを目印に安
心してサロンを選択し、安全に施術を受けられる環境が整い、消費者被害が未然に防
止されることと、エステティック産業の健全な発展に寄与していくことが期待されて
います。
○認定特定非営利活動法人日本エステティック機構 http://esthe-npo.org/
問合せ先
○経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課
電話 03-3501-1511(代)
また、公益財団法人日本エステティック研究財団において、エステティック営業施
設における衛生基準を作成し、事業者等に対する周知を図るとともに、衛生基準に関
する知識の習得のため、2010年12月よりe-ラーニングを実施しています。
○公益財団法人日本エステティック研究財団
http://www.jerf.or.jp/
問合せ先
○厚生労働省健康局生活衛生課
電話 03-5253-1111(代)
150
150
[6]運輸
Ⅱ (1)リコール制度
リコール制度とは、欠陥車による事故を未然に防止し、自動車ユーザー等を保護す
ることを目的とするものであり、自動車製作者等が、その製作し、又は輸入した同一
の型式の一定の範囲の自動車の構造、装置又は性能が自動車の安全上、公害防止上の
規定(道路運送車両法の保安基準)に適合しなくなるおそれがある状態又は適合して
いない状態にあり、かつ、その原因が設計又は製作の過程にあると認める場合に、そ
の旨を国土交通省に届け出て自動車を回収し改善のための修理をする制度です。
なお、2003年1月より、自動車製作者等にリコールの届出を確実に行わせるため、
国がリコールの命令を行うことができる制度を整備し、また、2004年1月から、特定
後付装置(タイヤ及びチャイルドシート)に関するリコール制度を導入しました。
①
リコールの手続きと措置
自動車製作者等は、その製作する自動車又は特定後付装置に、設計又は製作上の
不具合があると認められるに至ったときは、不具合の状況及びその原因・改善措置
の内容・自動車使用者等に対して周知させるための措置等を最終決定した翌日から
5日以内に国土交通大臣に届け出なければなりません。
②
リコール等の公表
リコール届出がなされたものについては、その内容を国土交通省ウェブサイトに
公表しています。また、自動車使用者等から寄せられた不具合情報や、自動車製作
者等から報告のあった事故・火災情報についても国土交通省ウェブサイトに公表し
ています。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 6]運 輸
1.車両・乗り物
i
③
リコール届出件数及び対象車両台数の推移
1969年度の制度発足以来、2013年3月までのリコール届出件数は4,977件、対象車
両台数の累計は約9,091万台となっています。近年の推移は下表のとおりです。
項目/年度
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
届 出 件 数
(件)
204
438
309
300
310
295
304
320
263
308
車 両 台 数
(万台)
442
757
566
697
427
535
328
735
259
561
151
151
問合せ先
○国土交通省自動車局審査・リコール課リコール監理室
電話 03-5253-8111(代)
(2)自動車アセスメント等
自動車ユーザーが安全な車を選ぶことができるように、安全性についての比較情報
や安全装置の解説・装備状況に関する情報を、
「自動車アセスメント」として分かりや
すく提供しています。自動車アセスメントの情報は国土交通省ウェブサイトやパンフ
レットでご覧いただけます。
また、安全なチャイルドシートを選ぶことができるように、チャイルドシートの安
全性・使用性に関する比較情報を、
「チャイルドシートアセスメント」として提供して
います。
①
自動車アセスメント
実際に販売されている新車について、主に、乗員保護性能評価、歩行者保護性能
評価、ブレーキ性能評価、後席シートベルト使用性評価、及び座席ベルトの非着用
時警報装置評価の5つの評価を行い、その結果を分かりやすくまとめて公表してい
ます。
乗員保護性能評価は、衝突事故の際に乗員の安全性を評価するため、フルラップ
前面衝突試験、オフセット前面衝突試験、側面衝突試験、後面衝突頸部保護性能試
験の4つの種類の試験を行っています。これにより、自動車の前面、側面及び後面
に衝撃を受けたときの乗員の安全性を評価しています。歩行者保護性能評価は、歩
行者頭部保護性能試験及び歩行者脚部保護性能試験の2つの種類の試験を行ってい
ます。これにより、自動車が歩行者に衝突した場合に歩行者の頭部及び脚部への衝
撃を低減させる性能を評価しています。ブレーキ性能評価は、雨天・晴天時の高速
走行時に急ブレーキを掛けた際の制動性能を評価しています。後席シートベルト使
用性評価は、後席のシートベルトの着用が義務付けられたこと等を踏まえて、後席
シートベルトの使用性を前席並みにすることで後席シートベルトの着用率を向上さ
せるために評価をしています。また、座席ベルトの非着用時警報装置評価は、運転
者以外の乗員シートベルトの着用率向上を図り、死亡者数の低減を図ることを目的
として、評価をしています。
国内で販売されている新車の販売台数の約8割をカバーする車種についての結果
を国土交通省ウェブサイト等で公表するとともに、パンフレット等により広く周知
しています。
②
チャイルドシートアセスメント
実際に販売されているチャイルドシートについて、前面衝突安全性評価及び使
用性評価の2つの評価を行い、その結果を分かりやすくまとめて公表していま
す。
前面衝突安全性評価は、衝突時にチャイルドシートに座った乳児・幼児への頭部、
152
152
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 6]運 輸
○自動車総合安全情報
ウェブサイト
http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/02assessment/index.html
Ⅱ 胸部に受けた衝撃やダミー頭部の挙動等を測定して、乳児・幼児への安全性を評価
しています。また、使用性評価では、チャイルドシートの誤った使用を防ぐために、
使用性(取扱説明書等の記載内容、本体表示内容、機構の性能、座席への装着性、
着座性)を評価しています。
国内で販売されているチャイルドシートについて評価を行い、その結果について
国土交通省ウェブサイト等で公表するとともに、パンフレット等により広く周知し
ています。
自動車アセスメント及びチャイルドシートアセスメントの結果は下記ウェブサイ
トでご覧いただけます。
i
問合せ先
○国土交通省自動車局技術政策課
電話 03-5253-8111(代)
2.運輸・運送サービス
(1)運輸・運送、旅客運送
① 道路運送
1)道路運送法の旅客自動車運送事業
道路運送法における旅客自動車運送事業とは、他人の需要に応じ、有償で、自
動車を使用して旅客を運送する事業であり、一般乗合旅客自動車運送事業、一般
貸切旅客自動車運送事業、一般乗用旅客自動車運送事業、特定旅客自動車運送事
業に区分されます。
2)高速・貸切バスの安全対策
2012年4月に発生した関越道高速ツアーバス事故を受けて、国土交通省では
2013年4月に「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」を策定し、2013、2014
年度の今後2年間にわたって、高速・貸切バスの安全性向上に向けた取組を集中
的に実施することとしています。
3)乗合バスにおける転倒防止対策
乗合バスにおける車内事故は、バスの発進時に多く発生しており、事故による
負傷者は65歳以上の高齢者が半数以上を占めています。
国土交通省では、このような事故を防止するため、2010年度に「乗合バスの車
内事故を防止するための安全対策実施マニュアル」を作成し、関係団体及び事業
者等に対しチラシや通知文での周知を行いました。また、2013年度に利用者等に
転倒防止の注意喚起を行うなど、車内事故の防止を事業者及び利用者等に呼び掛
けています。
153
153
4)貸切バス事業者安全性評価認定制度
公益社団法人日本バス協会が実施している貸切バス事業者安全性評価認定制度
では、貸切バス事業者の安全性や安全の確保に向けた取組状況を評価・公表する
ことで、貸切バスの利用者や旅行会社がより安全性の高い貸切バス事業者を選択
しやすくするとともに、本制度の実施を通じ、貸切バス事業者の安全性の確保に
向けた意識の向上や取組の促進を図り、より安全な貸切バスサービスの提供に寄
与することを目的としています。
5)交通事故の被害者救済(交通事故被害者ホットライン)
国土交通省所管の独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA:ナスバ)で
は、交通事故被害者ホットライン(電話:0570-000738)を運営し、交通事故被害
者及びその家族並びに一般的な質問者を対象に、交通遺児等への無利子貸付、重
度後遺障害者への介護料の支給等、ナスバの被害者援護業務について案内すると
ともに、事故後の対応全般、保険の手続き、医療サービス、過失割合、示談交渉
等に関する相談窓口の紹介を行っています。
運用時間:土・日・祝日・年末年始を除く9:00~17:00
○独立行政法人自動車事故対策機構
ウェブサイト http://www.nasva.go.jp/
6)標準運送約款(生命身体被害に伴う損害賠償請求)
利用者保護と契約内容の適正さの確保を図るため、一般乗合旅客自動車運送事
業者、一般貸切旅客自動車運送事業者、一般乗用旅客自動車運送事業者が使用す
る約款について、記載すべき標準的な事項を標準約款としてあらかじめ定めて公
示しており、万一、自動車の運行によって、旅客の生命又は身体を害したときは、
これによって事業者は損害を賠償する責に任じることとなっています。
ただし、事業者及び事業者の係員が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこ
と、当該旅客又は事業者の係員以外の第三者に故意又は過失のあったこと並びに
自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限
りでありません。
(注) 標準約款制度とは、約款の内容の適正さの確保、約款の認可等に伴う行
政手続の簡素化を図るため、行政庁が約款に記載すべき標準的内容を定めて
公示し、この約款を使用する事業者については、約款の認可、届出を必要と
しない制度です。
②
公共交通における事故による被害者・家族等への支援
国土交通省では、公共交通事故による被害者等への支援の確保を図るため、2012
年4月に公共交通事故被害者支援室を設置しました。同支援室では、①公共交通事
故が発生した場合の情報提供のための窓口機能、②被害者等が事故発生後から再び
平穏な生活を営むことができるまでの中長期にわたるコーディネーション機能等を
154
154
担うこととしています。
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 6]運 輸
(2)貨物運送
宅配便、トランクルームサービス、引越運送などについては、消費者保護と契約内
容の適正さの確保を図るため、事業者が使用する約款について、責任の範囲や送り状
又は見積書などへの記載すべき標準的な事項などを標準約款としてあらかじめ定めて
公示しています。
宅配便、トランクルームサービス、引越運送などの一般消費者を対象とする物流サ
ービスが近年急速に成長しています。このような物流サービスについて従来適用さ
れてきた標準貨物自動車運送約款、標準倉庫寄託約款は、企業間の取引を前提とし
て制定されたもので、生じたトラブルに対し、必ずしも消費者保護の観点から適切
な解決が得られないという問題がありました。そこで、利用者である一般消費者の
保護を図るため、これらの物流サービスについて標準約款が制定され、1985年11月
から宅配便、1986年5月からトランクルームサービス、1987年3月(2001年4月に
改正)から引越運送について実施されています。これらの標準約款の実施により、
事業者の責任やサービス内容の明確化が図られ、利用者はこれらの物流サービスを
安心して利用できるようになりました(宅配便や引越運送については、適用するべ
き運送約款や運賃及び料金制度について、営業所等において見やすいように掲示す
ることとされております。また、トランクルームサービスについては、2001年6月
に行われた倉庫業法の改正により、消費者への配慮という点で基準に適合するトラ
ンクルームを国土交通大臣が優良認定する制度が創設されたところです)。
なお、それぞれの標準約款の主要な内容は次のとおりです。
Ⅱ 問合せ先
(道路運送について)
○国土交通省自動車局安全政策課
電話 03-5253-8111(代)
○国土交通省自動車局旅客課
電話 03-5253-8111(代)
(公共交通事故被害者支援について)
○国土交通省公共交通事故被害者支援室
電話 03-5253-8969
FAX 03-5253-1552
E-mail [email protected]
ウェブサイト http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sose
i_barrierfree_fr_000013.html
i
①
標準宅配便運送約款
1)荷物の運送を引き受ける時に、荷物の品名や注意事項など運送契約の締結に
必要な重要事項を記載した送り状を荷物1個ごとに荷送人に交付します。
155
155
2)送り状には荷物引渡予定日を記載することとしていますが、荷物引渡予定日
を記載しない場合は、運送距離400kmまでは荷物受取日の翌々日、以後400kmご
とに1日を加算した日が荷物引渡予定日となります。
3)荷受人が不在の場合は、荷受人宛に不在連絡票により通知した上で、事業者
はその荷物を持ち帰って保管することを原則とします。ただし、荷受人の隣人
等の承諾を得て、当該隣人等に荷受人への荷物の引渡しを委託することがあり、
この場合には、不在連絡票に荷物の引渡しを委託した隣人等の氏名が記載され
ます。
4)荷物に破損等があった場合は、発送地における荷物の価格を基準として、破
損等についてはその程度に応じ、送り状に記載された責任限度額の範囲内で賠
償します(主観的価値の高い荷物の破損等についても賠償は責任限度額の範囲
内とします)。
5)運送の申込みが標準約款によらない場合、送り状に必要な事項を記載しない
場合、荷物の点検が必要とされる場合に点検の同意を与えなかった場合や事業
者が標準約款に基づき特に定めて表示したもの(例:現金、有価証券類などの
貴重品等)である場合などにあっては、運送の引受を拒絶することがあります。
②
標準引越運送約款
1)事前に見積りを実施し、約款の提示をした上で、運賃・料金の額及びサービス
の内容を分かりやすく記載した見積書を発行します。見積料は請求しません。
ただし、下見が必要な場合にあっては、下見に要した実費を請求することがあ
ります。また、見積りを行った際、内金や手付金等は請求しません。
2)運賃・料金の請求に当たっては、利用者側の責任による場合を除き、見積り額
を上回って請求しません。
3)キャンセル料については、原則、請求しません。ただし、利用者側の事情によ
るキャンセルや延期に限り、見積書に記載された荷物の引渡日前日は見積運賃部
分の約10%以内、当日は同20%以内のキャンセル料を請求することがあります。
また、解約の原因が利用者側にある場合に、解約手数料とは別に、既に実施又
は着手した附帯サービスに要した費用(見積書に明記されたものに限ります。)を
収受します。
4)滅失、毀損、遅延等についての事業者の責任を明確化し、滅失、毀損の場合は、
直接生じた損害を賠償するとともに、遅延の場合も運賃・料金の額の合計の範囲
内で賠償します。
(なお、同様の内容の標準貨物自動車利用運送(引越)約款があります。)
問合せ先
(宅配便、引越運送について)
○国土交通省自動車局貨物課
電話 03-5253-8111(代)(9:30~18:15)
(トランクルームについて)
156
156
Ⅱ ○国土交通省総合政策局物流政策課(物流産業室)
電話 03-5253-8111(代)(9:30~18:15)
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 6]運 輸
i
157
157
[7]その他のサービス
1.旅行業
旅行業法(1952年7月18日公布、最終改正2011年6月24日)では、旅行業務に関す
る取引の公正の維持、旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進を図るため、旅行業
等を営む者についての登録制度や個別取引の行為規制、旅行業協会の業務等を定めて
いるところ、旅行業が無形かつ非定型のサービスを提供するものであることに鑑み、
旅行業に特有の消費者保護に関する規定が設けられています。
具体的には、まず旅行業協会の正会員である旅行業者と旅行業務に関して取引をし
た旅行者がその取引によって生じた債権について、旅行業協会が国に供託した弁済業
務保証金から一定の範囲で旅行者に弁済することとしています。また、旅行業者が、
営業所ごとに1人以上の旅行業務取扱管理者を選任し、取引の明確性や旅行に関する
サービスの提供の確実性その他取引の公正、旅行の安全及び旅行者の利便を確保する
ため必要な事項の管理・監督に関する事務を行わせることを義務付けることにより、
消費者保護を図っているところです。
インターネットを通じた取引の増加や旅行者ニーズの多様化等により、旅行業にお
ける消費者保護の必要性が益々高まっている中、旅行業法については、2009年9月の
消費者庁の設置に併せて、消費者保護に関する規定が観光庁と消費者庁の共管となり
ました。これにより、旅行業に関する消費者保護については、観光庁と消費者庁が連
携して取り組んでいます。
また、観光庁では、旅行業法の適正な執行はもちろん、個別の課題についても旅行
業者に対する指導や消費者への情報提供の充実等を図りながら、旅行業をめぐる消費
者保護の取組みを進めています。例えば、2012年11月に発生した中国万里の長城付近
における遭難事故を受け、観光庁では、ツアー登山の安全対策について、旅行業協会
とともに「ツアー登山運行ガイドライン」の改訂を行い、このガイドラインの内容を
踏まえ、ツアー登山の安全確保に万全を期すよう旅行業協会を通じて旅行業者への周
知徹底を図ったところです。
旅行業界においても旅行業協会を中心に、様々な消費者保護のための取組が進めら
れていますが、旅行業協会では旅行に関する苦情についても取り扱っており、2012年
度の一般社団法人日本旅行業協会における苦情・相談件数は2,260件、一般社団法人全
国旅行業協会における苦情・相談件数は245件となっています。このうち、インターネ
ット取引や取消料等に関する苦情・相談の占める割合が多くなっています。
問合せ先
○観光庁観光産業課
電話 03-5253-8111(代)
○一般社団法人日本旅行業協会
電話 03-3592-1271
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Ⅱ ○一般社団法人全国旅行業協会
電話 03-5401-3600
警備業法(1972年7月5日公布、最終改正2011年6月3日)では、警備業者が依頼
者と警備業務契約を締結する際には、契約の前及び後にその概要について記載した書
面の交付を義務付けるとともに、常に、警備業者が行う警備業務について依頼者等か
らの苦情の適正な解決に努めなければならないこととしています。
契約前の書面交付は、依頼者が警備業務を行う契約の内容について十分理解した上
で契約することを可能とするため、警備業者にその概要について、重要な情報の説明
を契約の締結に先立って行わせるものです。契約後の書面交付は、成立した契約内容
が不明確であった場合、後日、当事者間に契約内容をめぐって紛争が生ずるおそれが
あるので、成立した契約内容を確実に記録し、その内容を明確にするために行わせる
ものです。
また、警備業界の業界団体である一般社団法人全国警備業協会では、警備業者と依
頼者間の契約に関して起こるトラブルを防止するために、
「消費者契約に関するガイド
ライン」を定めるとともに、ADR機関として同協会及び各都道府県警備業協会に苦
情受付窓口を設け、警備業者、顧客のいずれかの申出により、問題の適切な解決に努
めるものとしており、業界団体として自主的に警備業務に関する苦情の解決を図って
います。
問合せ先
○警察庁生活安全局生活安全企画課犯罪抑止対策室
電話 03-3581-0141(代)
○一般社団法人全国警備業協会総務部
電話 03-3342-5821
3.探偵業
各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 7]その他のサービス
2.警備業
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探偵業の業務の適正化に関する法律(2006年6月8日公布、最終改正2011年6月3
日)では、探偵業者が依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは、あら
かじめ、当該依頼者に対し、契約に関する重要事項について書面を交付して説明しな
ければならず、また、依頼者と探偵業務を行う契約を締結したときは、遅滞なく、当
該契約の内容を明らかにする書面を当該依頼者に交付しなければならないこととされ
ています。
また、探偵業の業務の適正化に関する法律施行規則(2007年2月22日公布、最終改
正2012年3月21日)の改正により、探偵業者が探偵業の開始の届出の際に都道府県公
安委員会から交付を受ける届出のあったことを証する書面(以下「届出証明書」とい
う。)の番号(以下「開始届出証明書番号」という。)を、変更の届出の際に交付され
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る届出証明書上でも明示するようにしました。これは、探偵業者の役員の氏名や住所
といった変更が生じる度に届出証明書の番号が変更される事態が生じ、依頼者の困惑
を招くなどの問題を解消するためであり、警察では、依頼者が探偵業者の同一性を容
易に確認できるよう、この開始届出証明書番号を契約書面に記載するように指導して
います。
問合せ先
○警察庁生活安全局生活安全企画課犯罪抑止対策室
電話 03-3581-0141(代)
4.ペットに関するサービス
(1)動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法、1973年10月1日公布、最
終改正2013年6月12日)について
この法律は動物愛護の気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操を涵養すると
ともに、動物を適正に飼養することにより、動物による人の生命、身体及び財産への
侵害を防止するために制定されたものです。
(2)動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律(改正動物愛護管理法、
2012年9月5日公布)のねらい
2013年9月に施行された改正法による変更点は以下のとおりです。
① 法律の目的に「人と動物の共生する社会の実現」などが追加されました。
② 所有者等の責務として、逸走を防止すること、終生飼養すること、不用意な繁
殖を制限することが追加されました。
③ 動物取扱業者が、営利性のある事業を行う「第一種動物取扱業者」と、非営利
だが飼養施設を有し、一定数以上の動物を飼養する「第二種動物取扱業者」に分
けられ、前者には生後56日(施行後3年間は45日、それ以降別に法律に定めるま
での間は49日)以内の犬猫の販売の禁止、犬猫等健康安全計画の策定と所有状況
の報告、販売が困難となった犬猫等の終生飼養の確保、販売時には購入者に対し
て現物を確認させ、対面で販売すること等が義務付けられました。また、後者は
都道府県知事等への届出が必要となります。
④ 適正ではない多頭飼育に起因して動物が衰弱する等の虐待を受けるおそれのあ
る事態が生じていると認められる場合を、都道府県知事等による勧告や命令の対
象とする規定が追加されました。
⑤ 犬及び猫の引取りに関しては、動物取扱業者から引取りを求められた場合や、
個人の飼養者であっても引取りを繰り返し求められた場合などは、都道府県知事
等がその引取りを拒否することができる規定が追加され、動物の飼養者及び販売
者の終生飼養の責務が強化されました。
⑥ 虐待に当たる具体的な事例が規定され、虐待や遺棄を行った者に対する罰金が
100万円に増額され、また、愛護動物の殺傷については2年以下の懲役又は200万
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円以下の罰金に強化されました。
Ⅱ 各分野における消費者政策 « 各
» 種商品・サービス別の消費者政策 [ 7]その他のサービス
問合せ先
○環境省自然環境局総務課動物愛護管理室
電話 03-3581-3351(代)
ウェブサイト
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/o
utline.html
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