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調査鑑識(Survey&Investigation)レポート 電子レンジ には、カソード︵陰極︶とアノード︵陽極︶が あり、高 電 圧 に よ り カ ソ ー ド が 加 熱 さ れ ア ノードへ向かって電子を放出し、磁石の力で 発生した磁場により電子が円を描くように なると陽極電流が不安定な振動を起こし、そ の振動を共振させることでマイクロ波が発振 され、導波管から加熱室へ放出される。 ○安全装置 安 全 装 置 に は、 電 流 ヒ ュ ー ズ、 温 度 過 昇 防止装置︵温度センサー︶及びラッチスイッ チ 等 が あ る。 ヒ ュ ー ズ や 温 度 セ ン サ ー は 他 の電化製品等に取り付けられているものと 変 わ ら な い が、 ラ ッ チ ス イ ッ チ は ド ア の 開 閉に合わせて動作するマイクロスイッチが 3個︵ラッチスイッチ︵ドアスイッチ︶2個、 モ ニ タ ー ス イ ッ チ 1 個 ︶ あ り、 モ ニ タ ー ス イッチとラッチスイッチは逆の動きをす る。 こ れ は 電 子 レ ン ジ 作 動 中 に 使 用 者 が ド ア を 開 け た 場 合 に ラ ッ チ ス イ ッ チ がOFF となり調理を停止することでマイクロ波を 加熱室外に漏らさないための安全装置であ る。 こ の 場 合、 モ ニ タ ー ス イ ッ チ は O N と な る た め、 ラ ッ チ ス イ ッ チ が 溶 着 等 に よ り 故 障 し て も、 回 路 上 シ ョ ー ト サ ー キ ッ ト と な り、 調 理 を継続する モニタースイッチ ことなく電 流ヒューズ が 切 れ る仕 温度スイッチ 組 み と なっ ている。 ︵図3参照︶ 電子レンジの回路 (スイッチ部分) れた食品かすな どが調理時に過 熱されたもの、 転居などによる 定格周波数以外 での使用︵ ㎐ の製品を ㎐ の 地域で使用︶な どがある。この ような事故を使 用者が起こさないよう食品のパッケージに加 熱時間や注意書きが記載され、また、加熱室 の清掃等についても製品の取扱説明書で注意 喚起されている。 おわりに 高圧トランス 焼損した2次側コイル 使用者にとって、電子レンジは親しみ慣れ た電化製品で、簡単な操作で調理ができる便 利な存在となっており、また、調理に裸火を 使用しないこともあり使用方法の不良などに よる出火を想像しにくい面がある。しかしな がら、市内では毎年2、3 件の火災が発生し て お り、 , 000世 帯 当 た り の 普 及 率 を 見 れば、未だ見えていない火災に至らなかった 発煙事故等が存在するはずである。 電子レンジの原理は目に見えず複雑である ためなかなか理解しにくいが、構造はとても 単純で、過去の事例等の蓄積から火災や発煙 事故に至りやすい箇所もあらかた想像がつ く。 火災の未定義を調査することで、今後これ まで以上に製品鑑識の機会が増えると思われ るが、火災原因調査と同じように調べて、広 めることで火災予防へつながり、市民を守る ことになるものと信じている。 ︵文責 大居︶ 1次側コイル 写真2 50 60 1 出火・発煙事例 ・出火事例 概要 台所において、電子レンジで加熱調 理中、制御部が焼損したもの。鑑識の結果、 加熱と解凍機能を切り替えるためのマイクロ ス イ ッ チ の 接 点 が 荒 れ て お り、 さ ら に メ ー カーの社告により不具合が伝えられたため、 接触不良により発熱し出火したものと考えら れる。 全国的にもマイクロスイッチに関する出火 事例は多く、代表的なものは、繰り返し調理 中にドアを開ける事で発生している。これに より接点部分で大きな負荷電流が遮断されス パークが生じ、接点を荒れさせ、やがて接触 不良を起こし出火に至る。 ・発煙事例 概要 飲食店において、電源部の高圧トラ ンスの2次側コイルが焼損したもの。鑑識の 結果、本来絶縁されているマグネトロン内部 に 導 通︵ ア ノ ー ド・ カ ソ ー ド の 接 触︵A ︱K タッチ︶︶があり、短絡したことにより大電 流が流れ、高圧トランス2次側コイルに負荷 がかかり発熱し層間短絡 ︵レイヤーショート︶ したものと考えられる。 ︵写真2参照︶ なお、この事案では、電流ヒューズで電路 が遮断され、安全装置が適切に機能したと判 断し火災として取り扱っていない。 A ︱Kタッチの要因は、家庭用の製品を業 務で使用しているなど使用頻度が高いこと、 製品周囲の吸排気が悪いこと及びガスこんろ の上方で使用していたことなどで内部温度が 過度に上昇したのではないかと考えられる。 紹介した事例以外にも、芋などの食品が長 時間過熱され炭化したものや加熱室内に残さ 25 ラッチスイッチ ノイズフィルター基盤 電流ヒューズ 〈ドアを閉めている状態〉 ラッチスイッチ 図3