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1.手動切断の方法
1.1
①
各機器の取りつけ及び注意点
酸素容器の空吹かし
酸素容器の口金部分には、鉄粉等の粉塵、油ゴミ等が付
着していることが多い。これがら付着したまま調整器を取
りつけると、容器バルブを開いた場合、鉄粉等が調整器の
中で、吹き飛ばされ、調整器の壁にぶつかり、発火する可
能性が高い。更に、ガスは、急激に圧力が上昇するとガス
温度が上昇し、(15Mpの場合、約850゜C)更に発火
しやすい状態になる。
従って、調整器を取りつける場合は、容器の口金につい
図1.1.1
容器バルブのゴミ取り
ているゴミを取り除かなければならない。この為に、な
にも取りつけていない状態で、容器バルブを約半回転程度開き、約1秒酸素を大気中に放出する。これ
により口金のゴミは、吹き飛ばされる。
②
調整器の取りつけ
調整器の取り付け時、調整器のパッキンが正常に取りつけられているか、傷はないかを確認し、パッ
キンが損傷している場合は、必ず新しいものと交換する。
調整器のを取りつける場合、各容器の取りつけ部のゴミをきれいな布で拭き取っておく。
ねじで締め付ける場合は、ねじが手で締まらない程度に堅いと、ねじ山が痛んでいるか、斜めには行っ
ているかどちらかである。強引に入れないで、再度付け直しを行うこと。
手である程度締め付けたら、最後は、専用の工具、(スパナ等)を用い、しっかり締め付けを行う。
図1.1.2
③
パッキンの確認
図1.1.3
専用工具の使用
ホースの取りつけ
ホースの取り付けを行う場合、ホースに亀裂等がないかを確認するこ
と。亀裂等があり場合は、交換すること。また、ゴミ、油等がねじ部に
ついていないか確認し、付着があったらふき取ること。
ねじで締め付ける場合は、スパナ等の専用工具を用い、しっかり締め
付けること。ワンタッチジョイント等を使用している場合は、差し込
んだ後、必ず、両端を引っ張って、確実に差し込まれいてるか、確認す
ること。
図1.1.4
ホース
の取り付け
④
吹管の取りつけ
吹管を取りつける場合も、ホースの取り付けと同じ要領で行うこと。
吹管の各バルブが閉まっていることを確認すること。
⑤
容器バルブを開ける。
まず、酸素容器バルブを開ける。酸素容器バルブを開けるときは、急激に開けないように注意を要す
る。急激に容器バルブを開けると、調整器の取りつけ部に急激な圧力が掛かり、断熱圧縮現象となり、
ガスの温度が急上昇する。この為、酸素調整器の発火が発生するため、必ずゆっくり開けること。
容器バルブが堅いときは、手のひらで容器開閉ハンドルを軽く叩くようにして開ける。
次にアセチレン容器バルブを開ける。
⑥
漏れチェック
各部の接続が終わったら、酸素調整器の圧力を0.3∼0.5Mpに調整し、各接続部の漏れチェッ
クを行う。漏れチェックは、石鹸水で行うのが一番良い。
次に、燃料ガス調整器を0.03∼0.05Mpに調整し、同様、各接続部の漏れチェックを行う。
圧力の設定は、各メーカの出している取扱説明書に従うこと。
⑦
切断酸素及び燃料ガスの排出
各ガスの漏れチェックが終了したら、吹管の燃料ガスバルブを解放し、ガスを放出させる。この時間
は、約2から3秒流し、バルブを止めるサイクルを2回程度行う。
次に、燃料ガスバルブを止めた後、酸素バルブを開け、酸素を5秒程度放出する。
これは、ホース内に入った空気等のガスを大気に出すための操作である。特に始業時及び作業再開時
には必要である。
⑧
点火方法及び消火方法
点火方法は、まず燃料ガスバルブを半回転以上開け、専用の点火ライターにてガスに点火を行う。
点火したら素早く、予熱酸素を出し、火炎を調整する。火炎は、中性炎に調整する。
点火後、パチンという音が時折するときは、火口の締め付けが悪いか、火口が損傷しているので、火口
を締め付けなおしても直らないときは、火口を交換する。
消火方法は、予熱酸素バルブを先に閉め、燃料ガスをしめること。
これらの、点火、消火の方法は、高圧ガス保安法に規定されている。
1.2
切断方法
a) 端面からの切り込み
火口高さを5∼8mmにして、予熱炎のみで、切断材を
加熱する。加熱位置は、図に示す如く、火口の半分から
80%程度かかる様にする。
切断材の表面が赤く変色してきたら、火口を鋼材の端面
白点が半分以上掛かるように
火口をセットする
白点
より、水平に外し、切断酸素を噴出させる。切断酸素は、
バルブを一回転以上回しておく。この状態で、切りたい方
向にゆっくり火口を移動させる。
切断材
火口を動かす早さは、切断材の下に飛び散る火花が、切
断材の真下に飛び散る様に動かすこと。あまりゆっくりす
ぎると、切断した部分が再融着するので、注意を要する。
ノロが下に飛ぶ
図1.2.1
予熱位置
ノロが遅れて飛ぶ
再切断位置
図1.2.2
切り損じ位置
ノロの飛び方
図1.2.3
再切り込み
早すぎると、切断ノロが、切断方向と逆の方向に飛び、更に早くなると、下まで、切断酸素が抜けき
らず、アンカットとなる。
火口高さと吹管の移動速度(切断速度)は、一定にする必要がある。
切断速度が速すぎて、アンカットした場合、同じ場所を再度切ると難しくなので、切断線を切り幅の
半分以上切断酸素が掛かるようにして、再切断する。
また、切断速度が遅すぎ、再融着した場合も同様である。
b)途中からの切り込み
約15゜程度傾ける。
切断材の途中から切り込むには、ピアシングを行う必要がある。
ピアシングは、切断材の表面を予熱し、切断材が赤色から黄色か
かった色になったとき、切断酸素を出して、切断材に穴を開ける
方法である。
表面が黄色
になったら
切断酸素を出す。
加熱時は、吹管を切断材に対し垂直にして加熱し、切断材の
表面が黄色味を帯びたら、吹管を約15度程度傾け、切断酸素を
噴出させる。
切断酸素は、急激に出さず、1秒程度で一回転の割合程度にバ
図1.2.4
ピアシング
ルブを開く。
吹管を垂直状態で、切断酸素を出すと、表面からのノロが吹管に直接返ってくるため、火口にノロが
つまり逆火を発生させるので注意を要する。
ピアシング後、そのまま切断を続行できる。
c)ジグを用いた切断
ⅰ)直線を切断する場合
図に示すような直線の鋼材等を置き、火口の再度でその鋼材を案内とし
倣いジグ
て使用する。
これらの直線切断用ジグは、有る程度の重さがないと、動いてしまう。
熟練してくると、比較的軽くても十分使用可能となる。
直線切断ジグとして、磁石等を装備した専用のジグも市販さ
れている。
ⅱ)曲線を切断する場合
図1.2.5
直線ジグ
車輪の付いた案内ジグを使用することで、火口高さを一定にするとと
もに曲線の切断も車輪があることで自由に出来る。
罫書き線等を書き、それを倣うことで、比較的精度の高い切断も可能で
案内車輪
ある。
車輪は、一輪車のものと二輪車のものがある。二輪車の方が安定して
いるが、一輪車の方が自由度がある。
どちらが良いと言うことではなく、使用しやすい方を選定すればよい。
ⅲ)円の切断をする場合。
図に示すような円切断用のジグを持ちいることで、簡単に寸切断が出来
る。回転部を円の中心に設置し、ガイド車輪を軸上にスライドさせるこ
図1.2.6
一輪車
とでも必要とする半径をセットする。
回転
スライド
代表的なジグを用いた切断方法を説明したが、これらもの
は、基本的なジグであり、その他種々のものが市販されて
いる。これらの使い方は、それらの取扱説明書を十分読み
理解して使用する必要ある。
1.3
a)
図1.2.7
円切りコンパス
特別な切断の注意点
錆板の切断
錆板の切断は、表面の状態がひどい場合、予熱力が大きくないと、アンカットし易くなる。従って、
ガス圧力を0.5∼0.7Kg/cm2 、酸素圧力を5Kg/cm2 に設定し、火炎を強めに調整する。
出来れば、使用吹管は、予熱力が強い1形2号または、中圧用切断器を使用する方がよい。
切断速度は、通常の切断より遅くし、アンカットが激しい場合や再融着する場合は、ジグザグ情に吹
管を動かし、切り幅を広くしながら切断を行うと良い。
錆の厚さが厚いと、予熱中及び切断中錆が跳ねてくるので、火傷を負う恐れがあるため、顔及び胸元
の防御を十分する必要がある。
少なくとも、保護眼鏡は、絶対に必要である。
b)塗装鋼鈑の切断
塗装鋼鈑の場合も、錆板の切断と同じで、予熱力を大きくして切断を行う。塗装が蒸発して、火口に
付着し、目づずまりをおこすので、時折火口を掃除する必要がある。
また、亜鉛塗装鋼鈑や樹脂を塗装したものを切断する場合は、蒸気に有毒性があるので、ガスマスク
等の着用を行う必要がある。また、換気を十分にすることも忘れてはならない。
c)極薄板の切断
3mm以下の薄板の切断を行う場合は、吹管を図の如く
切断方向
傾斜角度
進行方向に傾けて切断を行う。これは、切断板厚を大きく
することで、燃焼熱を十分得るためである。
板が薄いほど吹管の傾きを大きくしなければならない。
傾きは、鋼鈑から15∼30゜程度にする。
使用する火口は、一番小さい番程を使用する。
火口高さは、予熱力が必要となるため、出来るだけ低く設
図1.2.8
薄板の切断方法
定する必要がある。
d)形鋼の切断
形鋼を切断する場合は、まず両方のフランジ部分を切断する。フランジ部分の切断時中央のウエーブ
部分に切断がかかったら、切断速度を少し低下し、ウエーブを多く切断するようにする。ウエーブ部分
を渡るときにノロが吹きあがるので、顔等にかからない様注意を要する。
両方のフランジ切断後、ウエーブを切断する。フランジ切断時、ウエーブの切断が深く行われていな
いと、ウエーブの切断スタート部をピアシングしなければならなくなる。
深く切断されていると、スタートはウエーブの切り幅部分から開始できる。
まずフランジを切断する
図1.2.9
1.4
次にウエーブを切断
アングルの切断
異常時の対応
切断中、火が消えた場合は、すぐに切断酸素、予熱酸素バルブを止める。次に燃料ガスバルブを閉じ
る。
逆火の可能性があるので、容器のバルブを閉じ、吹管を外し、逆火の有無を調べる。
何もなかったら、再度吹管を取りつけ点火する。
再度火が消える状況が有ったなら、原因を明確にし、問題を解決する。原因が明確にならない場合は、
切断器を交換すること。
明らかに逆火とわかっている場合は、切断酸素予熱酸素を止め、次に燃料ガスを止めた後、吹管を冷
却する。吹管を冷却したら、酸素、燃料ガスの順で点火せずにガスを大気放出する。約2秒程度放出後、
放出したガスが拡散するまで、約一分程度待ってから点火し、作業にはいる。
ガスを止めるとき、燃料ガスから止めてはいけない。酸素を止めず、燃料ガスを止めると、吹管が
燃料となり、吹管が急激に燃え出すので注意を要する。