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日本教育工学会論文誌 3
5(
1
)
,7
3
8
2
,2
01
1
道徳的規範意識 と情報モラルに対する意識 との関係
一中学校学習指導要領の解説 「
総則編」に示された情報モラルの考え方に基づいて- †
宮川洋一 *lL森山潤 *2
岩手大学教育学部*1・兵庫教育大学大学院*
2
本研究では,中学校学習指導要領の解説 「
総則編」に示 されている情報モ ラルの考 え方に基づ
き,学習者の道徳的規範意識 と情報モ ラル に対す る意識 との関係 を検討 した.中学 ・大学生 を対
象 として,情報モ ラル に対す る意識 を把握す る尺度 を作成す るとともに,道徳的規範尺度 (
玉田
4) を用いて道徳的規範意識 を把握 した.そ して,両尺度各因子間の関連性 について仮
ほか 200
説的因果モデル を構成 し,共分散構造分析 を用いてその妥当性 を検証 した.その結果,道徳的規
範意識 を構成す る因子
(
「
思慮 」「
節度 」「
思いや り ・礼儀 」「
正義 ・規範」) の内,「
節度」 と
「
正
義 ・規範」が,情報モ ラルに対す る意識-,相対的に強 く影響 していることが示唆 された.この
結果 を踏 まえ,道徳の時間で扱 う価値項 目と情報モラル の指導 との具体的な関連づけを示 した.
キー ワー ド:情報モ ラル,情報教育,道徳教育,道徳 の時間,共分散構造分析
1
. は
じ め
に
体的な内容①∼(
卦」
).その上で,ネ ッ トワークを利用
す る上での責任 について考 えさせ る学習活動など,内
本研究の 目的は,中学校学習指導要領 の解説 「
総則
容(
丑∼③に対応 した六つの学習活動を例示 している.
編」に示 されている情報モ ラルの考 え方 に基づき,道
また,中学校段階では,教科の指導内容 としで情報モ
徳的規範意識 と情報モ ラルに対す る意識 との関係 を検
ラルが具体的に位置づいている技術 ・家庭科技術分野
討す ることである.
(
以下,技術科)において, これまで と同様 に,理解
平成20年 3月に告示 された中学校学習指導要領 の解
させた情報手段の構成 ・仕組みな どを基に,情報モラ
総則 の解説 」
)では,情報モ ラ/
レ
説 「
総則編」 (
以下,「
ル にかかわる能力 ・態度 を身につけさせ ることとして
を 「
情報社会で適正な活動 を行 うための基になる考え
いる.
方 と態度」 と定義 した上で,情報モ ラル教育の具体的
一方,近年話題 となっている 「
青少年が利用す る学
な内容 として,①他者-の影響 を考え,人権,知的財
校非公式サイ ト (
匿名掲示板)等」,いわゆる 「
学校裏
産権な ど自他 の権利 を尊重 し情報社会での行動 に責任
サイ ト」の存在 と, これ らを悪用 した 「
い じめ問題 」
をもっ こと,②危険回避な ど情報 を正 しく安全 に利用
な ど,イ ンターネ ッ トをは じめとす る情報通信環境の
できること,③ コンピュータな どの情報機器の使用に
普及 による新たな教育問題 は,情報モ ラル教育が心の
よる健康 とのかかわ りを理解す ることな ど (
文部科学
教育 と切 り離せない深いものであることを示 している
8) をあげている (
以下,「
情報モ ラル教育の具
省 200
このよ うな背景の基,同学習指導要領解説 「
道徳編」
201
0
年1
1
月24日受理
†Yo
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.1(
2
01
1
)
では,
改善の具体的事項の一つ として,「
社会における
情報化が急速に進展す る中,イ ンターネ ッ トの 『掲示
板』-の書 き込みによる誹譲 中傷やい じめ といった情
報化の影の部分に対応す るため,発達の段階に応 じて
情報モ ラル を取 り扱 う.
」ことがあげ られている (
文部
008).この項 目は,標準指導時数 として年間
科学省 2
3
5単位時間 とされている,いわゆる 「
道徳の時間」に
限定 した ものではな く,教育活動全体で実施す る道徳
73
教育における位置づ けを示す ものである.このよ うな
ら先の先行研究をみ ると,玉 田ら (
200
4)の道徳的規
ことか ら,今後,中学校段階においで 情報モラル教育
範尺度は学習指導要領 に示 されている内容 に基づいて
を推進 してい くためには,技術科等で扱 う情報モラル
構成 されているものの,玉 田ら (
200
4)の情報モ ラル
教育 と道徳の時間を要 とす る道徳教育 との一層の連携
事例課題及び三宅 (
2006)の情報倫理意識 な ど,従来
が必要 となる.そのためには,道徳教育でめざす道徳
の情報モ ラル に対す る意識 に関す る調査 ・
尺度項 目は,
的心情や道徳的判断力等の醸成 によ り形成 され うる道
いずれ も,総則の解説 に示 されている情報モラル教育
徳的規範意識 と,情報モ ラル教育において形成 され う
の具体的な内容①∼③の多 くを網羅 しているとは言い
る情報モラルに対す る意識 との関係 を把握 してお くこ
難い.そのため, これ らの先行研究の知見だけでは,
とが肝要である.
道徳教育の価値項 目と情報モ ラル教育の指導内容 とを
この間題 については,三宅 (
2006)が,中学生 ・高
具体的に関連づけることが難 しいのが現状である.言
校生 ・大学生を対象 として,情報倫理意識 (
I
T情報悪
い換 えれ ば,道徳的規範意識 と情報モ ラル に対す る意
用,著作権保護,電子 メール礼儀 の各因子) と,道徳
識 との関係 を,学習指導要領やその解説書に示 されて
的規範意識 (
交通道徳,生活節度,騒音礼儀,公衆道
いる内容 と明示的に対応 させ ることができれば,道徳
徳 の各因子) との関連 を検討 している.その結果,公
教育の要である道徳 の時間 と,情報モ ラル教育 との連
衆道徳因子 を除き,両意識 との間に有意な正の相関が
携 に対す る具体的な方略を得 られ ることにな り,学校
み られたことか ら,道徳的規範意識の向上は,情報倫
現場で役立つ有用な知見 とな りうるもの と考えられ る
理意識の向上につながるのではないか とい う因果関係
そ こで,本研究では,総則の解説 に示 されている情
を推察 している.また,玉 田ら (
2
004)は,情報モ ラ
報モラル教育の具体的な内容①∼③に対応 した情報モ
ル判断学習を実施す るために,平成1
0年1
2月に告示 さ
ラル に対す る意識尺度 を構成 し,玉 田ら (
200
4)の作
れた小 ・中学校学習指導要領 「
道徳」 を基に,道徳的
成 した道徳的規範尺度 とあわせて調査 を行 う.その上
規範尺度 を作成 している.ここでは,道徳教育に示 さ
で,仮説的因果モデル を構成 し,道徳的規範意識 と情
れている四つの視点の内,情報モ ラル とかかわ りが深
報モ ラル に対す る意識 との関係 について検討す ること
い と考 えられ る三つの視点 「
主 として 自分 自身に関す
に した.
主 として他 の人 とのかかわ りに関す るこ
ること」,「
2
.研 究 方 法
主 として集 団や社会 とのかかわ りに関す るこ
と」,「
と」を取 り上げた上で,下位 目標 として 「
思慮」「
節度 」
「
思いや り」「
礼儀 」「
正義」「
規範」に着 目した尺度の
2
.
1
. 情報モラルに対する意識 を把握する尺度の
作成
思慮 」「
節度 」「
思いや り ・礼儀 」「
正
開発 を行 い ,「
2.1
.1. 調査対象
義 ・規範」の 4因子 を抽出 している.そ して,作成 し
A県 ・B県の国公立中学校 3校 における41
1
名 (
男子
た尺度 を基に,学習者 のタイプ分 けを行い,情報モ ラ
21
0
名,女子200
名,未記入 1名),C県国立大学 1年生
ルの問題 に対 して適切な判断ができる学習者の割合 に
1
65
名 (
男子79
名,女子86
名),計57
6
名 .記入漏れが認
ついて検討 した上で, 4因子の下位尺度得点の低い学
め られた調査用紙 を除き,中学生381
名 (
男子1
91
名,
習者 に対 しては,全ての判断観点の事例 (
法律違反,
女子1
90
名),大学生1
62
名 (
男子7
6
名,女子86
名),計
他人-の迷惑, 自分-の被薯,情報技術関連)につい
5
43
名 を対象 とした.
て指導 しなければな らないことを示 している.これ ら
ここで,大学生 (1年生)を調査対象 として加 えて
いずれの先行研究においても,道徳的規範意識が情報
いるのは,三宅 (
2
006)の先行研究で示 されている校
モ ラル に対す る意識 に影響 を与 えるとい う因果関係 の
種間の差異 を勘案 し,中学生 と大学生の比較 を行 うた
可能性が示唆 されている.
めである.なお,大学生については,調査 を入学直後
一方,学校現場における実践では,
、一般的に学習指
の年度初 めの段階で実施 しているため,実態 としては
導要領 に記述 されている内容 を基に,カ リキュラムや
高校 における必修教科 「
情報」を学び終えた段階 と位
指導方針等が立案 され る. したがって,得 られ る研究
置づけることができる.
の成果は,なるべ く学習指導要領やその解説書,これ
2.1.
2. 調査時期
らが具現化 されている検定済教科書に示 されている内
調査は,200
9
年 5月- 6月に実施 した.
容 と対応 していることが望ま しい.このよ うな観点か
74
日本教育工学会論文誌 (
J
pn.J
.Ed
u
c
.Te
c
h
1
7
0
1
.
)
2.1.3. 項 目の収集 と検討
まった くそ う思わない 」
は ,「5:とて もそ う思 う- 1:
2000) の情報化社会 レデ ィネ ス尺度 を中学
小林 ら (
の 5件 法 とした.以下,本調査 を調 査 1とす る.
生版 に改編 した宮川 ら (
2006)の尺度項 目を参考 とし,
2.2. 道徳的規範意識 と情報 モラル に対す る意識 と
の関係 の検討
情報 モ ラル教育 の具体 的 な内容① ∼③ が盛 り込 まれ る
2.2.1
. 調査対象
9項 目作成 した (
質
よ うに,筆者 らで協議 して原案 を3
問項 目は表 2を参照).項 目作成 の際,内容(
Dにおいて
A 県 ・B県の国公 立 中学校 4校 にお ける45
2名 (
男子
は,
個人情報保護 に関す るこ と,
著作権 に関す るこ と,
239名 ,女子 21
3
名 ),C県 国立大学 1年生 227
名 (
男子
内容② においては,危 険回避行動 に対す るこ と, コン
1
04名 ,女子 1
23名),計 679名 .記入漏れ が認 め られ た
ピュー タ犯罪 に関す る こ と,内容(
卦にお いては,健康
調 査用紙 を除 き, 中学生 444
名 (
男子 23
2名 ,女子 21
2
問題 とのかかわ り関す るこ とを測 定 し うる項 目とな る
名),大学生 2
24名 (
男子 1
02
名 ,女子 1
22名 ),計 668名
よ う配慮 した.なお,質 問に対す る回答方法 について
を対象 と した.
2004) の作成 した 「
道徳 的規範尺度 」 の質 問項 目と因子
表 1 玉 田ら (
No
因子名
1
4
8
i
l
l
1
5
23
26
3
0
5
1
2
1
8
27
31
3
3
2
6
9
1
3
1
6
1
9
21
2
4
28
3
2
思
節
慮
度
思いや り
礼
儀
質
問
項
目
テ レビを見ていて疑問がある時には,新聞や本な どで確認す るよ うに している.
先生の話の内容に疑問がある時には,本などで確認す るよ うに している.
買い物の ときには,間違いがないか どうか レシー トの内容 を確認す るように している
友達か ら聞いた噂話を,そのまま信 じ込まない.
商品を買った ら,取扱説明書を読んでか ら使 うよ うに している.
テ レビでやっている内容はそのまま信 じる.
友達か ら聞いた噂話 を,そのまま別の友達に話す ことがある.
電車の中で,知 らない人が話 を していた内容が面 白かった ら友達に話す.
欲 しい物があってもす ぐに必要でなければ買 うのを我慢す る.
欲 しい ものがある時は,す ぐに買って しま う.
欲 しい物があるときには,計画的に貯金 をしてか ら買 うよ うに している.
どうしてもや らなければな らないことがある時には,誘われても遊びにい くのを我慢す る
欲 しいものが落 ちていた ら, 自分のものにす る.
友達 と遊びに出かけた くても,試験前に遊びに行 くのを我慢す る.
質問に答えて もらった時には,お礼を言っている.
人に何かを頼む ときには,丁寧 に説明 している.
人に迷惑をかけてもきちん と謝れない.
秘密でなくても,他人の家の話な ど個人的なことはあま り言わないよ うに している.
相手の立場を考えずに,悪 口をいって しま うことがある.
年上の人 とも友達 と話すの と同 じ言葉づかいで話 している.
人に物 をあげるときには,相手が本当に欲 しいか どうかをよく考 えてか らあげる.
人が傷つ くことをつい言って しま うことがある.
自分が怒っている時には,相手の気持ちな どを考えずに,傷つけることを言 って しま うことがある
人に何かを説明す るときには,相手に分か りやすいか どうかを考えなが ら説明す る.
友達 と一緒に行動す るときには,悪い と思 うことでもついや って しま う.
絶対にバ レない と思った ら,悪いことを して しま う.
先生に注意 されたことは,きちん と守 る.
友達か ら誘われても悪いことは絶対に しない.
みんなが一人の人をい じめていた ら注意す る.
クラスのみんなで話 し合って決 めたルールは絶対に守る.
法律に違反す るよ うことは絶対に しない.
みんなで一緒にや ろ うと誘われても,やってはいけないことはや らない.
学校に持って行 ってはいけないものは,持って行かない.
友達が法律 に違反す るよ うなことを しよ うとしていた ら注意す る.
Vo
l
.35,No,1(
2011
)
75
表 2 情報モ ラル に対す る意識尺度 の 6因子 と因子 間相 関
FI
No
項目
29
プライバシーを侵害す るよ うな内容のホームページは,見ないよ うに
したい.
F2
F3
F4
.
7
4 -.
02 -.
03 -.
01
F5
F6
.
11 ∴05
3 知 らない人か らの電子メールは,開かないよ うに したい.
.
62 一.
04
.
1
2 一.
03 -.
02
.
05
20 よくわか らないホームページは,開かないよ うに したい.
.
56 -.
05
.
0
8
.
06
.
0
2
37 学校裏サイ ト-,友達のことは書 き込まないよ うに したい.
.
44
.
1
4 一.
07
.
06 -.
07
.
06
3
4 自分のホームページに友達の顔写真 を勝手に載せないよ うに したい.
.
38
.
22 -.
06 ∴01 -.
08
.
1
3
3
8 本人に断 らずに,電子メールのア ドレスを人に教 えて もよい と思 う.
-.
0
2
2 栗苦冨賢 や電話番号 ぐらいな ら,本人に断 らずに,人に教 えてもよ
・
1
5
1
2 時々な ら,人あてに来た電子 メール を断 り無 しに見てもよい と思 う. ∴04
.
70
.
07
.
05
.
00
.
0
0 -.
02
・
66 -・
0
9 -・
06 -・
03 -・
1
1
.
51 -.
02
.
0
4
.
00
.
06
・
1
4
・
1
3
.
D主の許可を得ずに,そのメールをそのまま人
一・
1
6
・
44
・
04
・
0
4
友達の個人情報を他人に伝 えるときは,めん どうでも必ず許可を得て
か らに したい と思 う.
1
3
.
37
.
06
.
0
8 ∴02 -.
09
1
6 コンピュータを使用す るときには,休憩を入れなが ら利用す るよ うに
したい.
一.
0
4
.
01
.
84 -.
01
.
1
7
.
0
4
.
68 -.
0
9 -.
05 -.
03
3
0 票孟三諾
冨票嘗諾
27 コンピュータを使 うときには, ときどき 目を休めるよ うに したい.
4 コンピュータに向か うときには,体の姿勢に気 をつけたい.
インターネ ッ ト上で,個人攻撃の内容 を見つけた ら,身近な大人に相
談す る.
プライバ シーの侵害になる記事 をのせてい る雑誌 は買わないよ うに
している.
イ ンターネ ッ ト上の有害情報 を取 り締 まるための法律 をつ くるべ き
だ と思 う.
31
テ レビゲームな どのゲーム ソフ トをコピーす ることができた ら迷わ
ずそ うす るだろ う.
.
49
.
21 -.
06
-.
04
.
03
.
05
.
73
.
00 ㌧1
3
.
1
7 -.
07
.
00
.
63
.
04
.
03
.
5
4 -.
01
.
1
2
-.
03
.
09 -.
01 -.
03 -.
02
.
06
.
0
4 1.
0
8
.
06
.
67
.
06 1.
07
.
53
5 2 5 3
2 3 2 3
1 5 1 7 9
3 4 2 2 2
.
1
4 -.
09 1.
04
一
.
03
一
76
.
59
4 9 0
5 2 5
F5
.
04
一
F4
.
76 一.
0
4
.
00
一
F2
F3
I.
0
2
.
03
.
0
4
0 9
5 2
因子間相関 FI
.
08 -.
03
6
4
自分の好 きなキャラクタであっても,ホームページに勝手に掲載 しな
いように したい.
,
0
0
I.
06 -.
0
4
25 コンピュータソフ トは,買わずにコピー して済ませればよい と思 う. -.
04
好きなイラス トをインターネ ッ トか らコピー して,自分のホームペー
ジに掲載 したい.
.
05
日本教育工学会論 文誌 (
J
pn.J.Ed
u
c
.Te
c
血o
J
.
)
2.
2.
2. 調査時期
用す るよ うに したい」, 「
コンピュータを使 うときには,
9年 1
0月 と201
0年 4月に実施 した.
調査は,200
ときどき日を休めるよ うに したい」な どに対 して負荷
2.
2.
3. 測定尺度
量が高 く, 「
情報機器使用 にお ける健康維持 に対す る
情報モ ラル に対す る意識の把握 には,前節で作成 し
F3:健康維持)とした.第 4因子は, 「
イ
意識」因子 (
た情報モ ラル に対す る意識 を把握す るための尺度 (
質
ンターネ ッ ト上で,個人攻撃の内容 を見つけた ら,身
問項 目は表 2を参照) を準備 した.また,道徳的規範
近な大人に相談す る」, 「
プライバシーの侵害になる記
意識 の把握 には,玉 田ら (
2
00
4) の作成 した 「
道徳的
事 をのせている雑誌 は買わないよ うに している」な ど
4項 目 (
「
思慮」8項 目, 「
節度」
規範尺度 」4因子,全3
に対 して負荷量が高 く, 「
情報社会 にお ける犯罪 防止
6項 目, 「
思いや り ・礼儀 」1
0
項 目, 「
正義 ・規範」1
0
F4:犯罪防止) とした.第 5因
に対す る意識」因子 (
項 目),を 4件法 「4 :非常にあてはまる- 1 :全 くあ
子 は, 「
テ レビゲームな どのゲーム ソフ トをコピーす
てはま らない」で準備 した (
表 1).以下,本調査 を調
ることができた ら迷わずそ うす るだろ う」, 「
コンピュ
査 2とす る.
ータソフ トは,買わずにコピー して済ませればよい と
3. 結 果 と 考 察
3.1. 情報モラルに対する意識 を把握す る尺度の
作成 (
調査 1)
思 う」に対 して負荷量が高 く,「ソフ トウェアの不正 コ
F5:不正 コピー) とした.
ピーに対す る意識」因子 (
好 きなイ ラス トをイ ンターネ ッ トか ら
第 6因子 は, 「
コピー して, 自分のホームページに掲載 したい」, 「自
3
.
1
.
1
. 予備的分析
分の好 きなキャラクタであっても,ホームページに勝
調査 1では,尺度の因子構造を検討す る前に,各項
手に掲載 しないよ うに したい」に対 して負荷量が高 く,
目の記述統計量 を算出 し,平均値 が4.
5以上,1
.
5以下
「
I
CT活用における著作権 に対す る意識」因子 (
F6:
の項 目は,以後の分析か ら除外す ることとしたが,諺
P分析 を実施 し,有意
当項 目はなかった.続いて,Gな弁別性が認 め られなかった 2項 目については,以後
の分析か ら除外 した.
3.1
.
2. 項 目の精選 と因子の確定
著作権) とした.
-F6までの 6因子をま とめて,「
情報
以下,上記の F1
モ ラル に対す る意識因子」 と呼ぶ ことにす る.
3,
1
.
3. 内容(
令,内容(
塾,内容③ の下位尺度の確定
項 目作成の際に配慮 した事項 (
2.
1
.
3.
参照)を基に,
予備的分析 を経た37項 目について,逆転項 目を修正
抽出 された情報モラル に対す る意識 因子及び構成す る
した上で,因子分析 を行 った.その際,因子抽出法に
質問項 目を再度検討 し, どの因子が情報モ ラル教育の
は重み付 けのない最小二乗法を採用 し,因子の数は 1
具体的な内容(
》∼③に該 当す るのかを検討 した.この
を超 えた固有値の数 とし,因子抽 出後にプ ロマ ックス
際,中学校 においで 情報モ ラルに対す る指導の中心 と
法 を用いて回転 を行 った.次に,項 目の精選 を行 うた
なる技術科の検定済教科書 も検討資料 とした.教科書
めに,因子負荷量が.
35に満たない場合は,該 当項 目を
は現在 2社か ら出版 されている.これ らの教科書では,
削除 しなが ら,同様 の方法で因子分析 を繰 り返 し実行
内容①に関連 して 「
知的財産権,著作権,人権 ・プラ
し,最終的に 6因子解 20項 目を得た.得 られた因子負
イバ シーの保護 ,個人情報の保護 ,著作権の保護」,内
荷量 と因子間相関を表 2に示す.
容② に関連 して 「
ネ ッ ト社会の安全な歩 き方,不正な
プライバ シー を侵害す るよ うな内容
第 1因子 は, 「
のホームページは,見ないよ うに したい」, 「
知 らない
利用の防止,情報の信頼性,不正侵入, コンピュータ
ウィルス」,内容③に関 して 「
健康-の配慮,健康管理」
人か らの電子メールは,開かないよ うに したい」な ど
とい う見出 し (
キー ワー ド)を設 けて説 明 している (
加
に対 して負荷量が高 く, 「
I
CT 活用 における危険回避
9) (
間田ほか 2
009).この具体的なキー ワ
藤 ほか 200
Fl:危険回避) とした.第 2因
に対す る意識」因子 (
ー ドと記述 されている内容 も参考 とし,抽 出された情
子は, 「
本人に断 らず に,
電子メールのア ドレスを人に
報モ ラル に対す る意識因子 と,情報モ ラル教育の具体
教 えてもいい と思 う」, 「
友達の住所や電話番号 ぐらい
的な内容①∼③ との関連 を,筆者 らと教職経験 1
5
年以
な ら,本人に断 らず に,人 に教 えてもよい と思 う」な
上の現職技術科教師を交 えて協議 した.その結果 を表
どに対 して負荷量が高 く, 「
個人情報保護 に対す る意
3に示す.
F2:個人情報) とした.第 3因子 は, 「コ
識」因子 (
次に,これ らの関連性 について,内容① に対応す る
ンピュータを使用す るときには,休憩 を入れなが ら利
内容①」,内容②に
と思われ る F2,F5,F6の上位 に 「
vo
l
.35,No.i(
2
01
1
)
77
表 3 情報モ ラル に対す る意識因子 と
小学生 ・中学生を調査対象 とした沖林 ら (
2006) の先
内容(
D∼③ との関連
行研究では,例 えば,匿名性の悪用 に関す る質問に対
因子
しては,小学生の方が中学生 よ り適切な対処 を選択す
他者-の影響を考え,人権,知的財
産権など自他の権利を尊重 し情報社
会での行動に責任をもっこと
2
F5
F6
か ら,内容(
ら,内容②,内容③各因子 について,校種
危険回避など情報を正 しく安全に利
用できること
F1
F4
総則の解説に示 されている内容
る割合が高いことを指摘 している.これ らの先行研究
内容①
内容②
別や性別 による差異があるのではないか と予測 され る
2)×性別(
2)
の 2要因分散分
そ こで本研究では,校種別(
析 を実施 した.校種別,性別における内容①,内容②,
内容③
コンピュータなどの情報機器の使用
による健康
とのかかわ りを理解する
内容③各因子の下位尺度得点の平均 と標準偏差を表 4
F3
に示す.
1
,
5
3
9
)
-8・
37,pく・
01
) と内容③
分析 の結果,内容② (
F(
内容②」とい う因
対応す る思われ る Fl,F4の上位 に 「
(
F(
I
,
5
3
,
)
=6.
53,pく.
05) では,交互作用が有意 とな り,
子 を仮定 してモデル を構成 した.そ して, このモデル
が適切であるか否かを確認す るために,確認的因子分
内容①では,交互作用は有意では考かった (
表 5).
内容②では,大学生における性別 の単純主効果が認
=.
941AGFI
=.
923CFl
=.
923
析 を行 った.その結果 ,GFI
め られ ,女子 が男子 よ りも有意 に高い結果 となった
RMSEA=.
046とな り,いずれ も十分な水準であった.
,pく.
001
).また,男子における校種別の
(
F(
1
,
5
3
9
)
=1
8.
01
単純主効果が認 め られ,中学生が大学生 よ りも有意 に
そ こで,以後の分析 においては,内容①因子 (
以下,
内容①)の下位尺度 として F2,F5,F6を構成す る項
目を,内容②因子 (
以下,内容②)の下位尺度 として
高い結果 となった (
F(
1
,
5
3
9
)
=6.
62,pく.
05).
内容③では,大学生における性別の単純主効果が認
Fl,F4を構成す る項 目を,内容③因子 (
以下,内容③)
め られ ,女子 が男子 よ りも有意 に高い結 果 となった
の下位尺度 として F3を構成す る項 目を,使用す ること
05).また,女子 における校種別の単
(
F(
I
,
5
3
9
)
=5.
3
4,pく.
純主効果が認 め られ,大学生が中学生 よ りも有意に高
に した.
3.1.
4. 校種別 (
2)×性別 (
2
)の 2要因分散分析
2006)
中学生 ・
高校生 ・
大学生 を調査対象 とした三宅 (
01
).
い結果 となった (
F(
1
,
5
,
9
)
=1
0.
77,p〈.
内容①では,性 の主効果が認 め られ,女子が男子 よ
の先行研究では,例 えば,I
T 情報悪用因子 において,
001)
りも有意 に高い結果 となった (
F(
1
,
5
3
9
)
=3
8.
9
6,pく.
(
表 6).
校種 と性の交互作用があることを指摘 している.また,
表 4 校種別 ・性別 における内容①,内容②,内容③の下位尺度得点の平均 と標準偏差
因子
内容(
丑
内容②
内容③
校 種
中学生
大学生
中学生
大学生
中学生
大学生
性 別
男 子 女 子
男 子 女 子
男 子 女 子
男 子 女 子
男 子 女 子
男 子 女 子
Me
a
D
3.
66
3.
94
3.
70
4.
09
3.
81
3.
90
3.
56
4.
0
4
3.
66
3.
55
3.
61
3.
96
S.
D.
0.
04
0.
0
4
0.
07
0.
0
6
0.
05
0.
05
0.
08
0.
08
0.
07
0.
07
0.
11
0.
1
0
表 5 校種別(
2)×性別 (
2
) 2要因分散分析の交互作用の結果一覧
単純主効果
因子
,
1
7g9
,
内 容 (
D
o.
88
内 容 ②
8.
3
7
内 容 ③
6.
53
判定
校種別
F'
性別
中学生
大学生
男子
女子
n.
S
.
女子>男子*
*
*
中学生>大学生*
n.
S
.
女子>男子*
n.
S
.
n.
S
.
*
*
*
大学生>中学生*
*
*
p(・
05 *
*
p(.
01 *
*
*
p(.
001
78
日本教育工学会論文誌 (
hn,I
.Ed
u
c
.T
e
c
h
DO
J
.
)
表 6 校種別 (
2)×性別 (
2
) 2要因分散分析 の主効果 の
因子 にお ける校種別 (
2)×性別 (
2)
の 2要 因分散分析 を
結果一覧
行 った.
その結果 ,4因子 とも交互作用 は認 め られず,
各因子 とも性別 の主効果 のみが認 め られた (
表r
7).具
校 種
内 容
①
②
内 容
③
内
容
体的には,「
思慮」因子 (
F(
1
,
6
66
)
=5.
80,pく.
05) のみ,男
性 別
女子>男子軸
n.
S
.
子 が女子 よ りも有意 に高 く,「
節度」因子 (
F(
1
,
6
6
6
)
=22.
1
3,
p〈.
0
01
),「
思いや り・
礼儀」因子 (
F(
1
,
6
6
6
)
=25.
01,p〈1
001
),
***
p(.
001
「
正義 ・規範」因子 (
F(I.6
6
6
)
-1
3.
95,p〈.
001
) では,い
ずれ も女子が男子 よ りも有意 に高い結果 となった.一
内容①,内容②,内容③各
方,調査 1の結果 か らも,.
この ことか ら,他者-の影響 を考 え,人権,知的財
因子 に校種別や性別の差異が認 め られ てい る. これ ら
産権 な ど自他 の権利 を尊重 し情報社会での行動 に責任
の ことを勘案 し, ここではまず,全体 として両尺度各
をもつ ことに対す る意識 では,男子 が女子 に対 して,
因子間の関係 を検証 した後,校種別や性別 の違いによ
有意 に低 い ことか ら,指導 にあたっては男子 に配慮す
る関係 の差異 について,検討す ることとした.
る必要がある と考 え られ る.
3.2.
2. 仮説 的因果モデルの検討
危険回避 な ど情報 を正 しく安全 に利用で きることに
仮説 的因果モデル の構成 にあたっては,3.
1
.
3.
におい
対す る意識 では,大学生の男子が女子 に対 して有意 に
て行 った確認 的因子分析 におけるモデル を基 に,内容
低 く,また,大学生の男子が中学生の男子 に対 して も
①,内容②,内容③各因子の上位 に,潜在的な因子 「
情
有意 に低 い ことか ら,指導 にあたっては大学生の男子
報モ ラル」が存在す る と仮 定 した.次 に,先 に示 した
に,特 に配慮す る必要 があると考 え られ る.なお,学
三宅 (
2006),玉 田 ら (
2004)の先行研究か ら示唆 され
年進行 に伴 い意識 が低下す る傾 向性 に鑑み,中学時に
てい る知見か ら,本研究では,因果 関係 の方 向性 を 「
道
おける男子の指導 にも留意す る必要がある と考 え られ
徳的規範意識 が情報モ ラル-影響 を与 えている」 と仮
る. これ は, コン ピュー タな どの情報機器 の使用 によ
定 し,道徳的規範意識 の 4因子か ら情報モ ラル因子-
る健康 とのかかわ りを理解す ることに対す る意識 にお
向か うパスを引いた.
いて も,同様 の ことが考 え られ る.
この仮説的因果モデル を用いた共分散構造分析 の結
3.2. 道徳的規範意識 と情報モラル に対す る意識 と
の関係 (
調査 2)
果 を図 1に示す.このモデル の適合度 を示す各指標 は,
GFI
=.
966AGFI
=.
932CFI
=.
951RMSEA=.
071とな り,い
3.2.1
. 予備的分析
ずれ も十分な水準であった.また, このモデルで示 さ
調査 1の結果 を踏 まえ,調査 2では,道徳的規範意
れ てい るパス係数 は,すべて統計的に有意 であった.
識 と情報モ ラル に対す る意識 との関係 を具体的に検討
これ らの ことか ら,本研究では,校種別 ・性別 を合算
す るために,仮説 的因果モデル を構成 し,共分散構造
した全体の傾 向 として,道徳的規範意識 と情報モ ラル
分析 を用 いて,その妥 当性 を検証 した.
に対す る意識 との関係 に, このモデル を採用す ること
まず ,分析 の指針 を得 るために,道徳的規範尺度 4
とした.
表 7 道徳的規範意識各 因子 にお ける性 の主効果
では,「
思慮 」「
節度 」「
正義 ・規範 」「
思いや り・礼儀」
道徳 的規範意識 と情報モ ラル に対す る意識 との関係
女子
男子
女子
思いや り 男子
礼 儀 女子
正 義
規 範
男子
女子
Me
a
n
S.
D.
5 5 7 0 7 9 0
4 4 5 5 3 3 5
0 0 0 0 0 0 0
節 度
男子
N
3 4 5 4 5 0 9 2
3 2 8 0 8 0 7 9
2 2 2 3 2 3 2 2
思 慮
性
4 4 3
4 4 3
4 4 3
4 3
4
3
3 3
3 3 3
3 3 3
3 3 3
因子
0.
44
F値
5.
80
判定
*
い ることが示唆 された.特 に,「
節度 」「
正義 ・規範」
が,「
思慮 」「
思いや り ・礼儀」 よ りも,相対的に強い
*
*
*
影響 を及 ぼす ことが示唆 された.
25.
01
*
*
*
に着 目す ると,例 えば,「
正義 ・規範」か らの間接効果
1
3.
95
*
*
*
接効果=.
42,内容③ :標 準化 間接効果 =.
30とな り,棉
2
2.
1
3
道徳 的規範意識 と内容(
丑,内容②,内容③ との関係
は,内容(
丑・
.標準化 間接効果 -.
42,内容② ・
.標準化 間
*
p(.
05 *
**
p(.
001
Vo
l
.3
5,No.1 (
2011
)
がいずれ も情報モ ラル に対す る意識 の形成 に影響 して
対的に内容③ よ りも内容①及び内容②-の影響力 が強
い ことが示唆 された.
79
適合度 GFI
=.
9
66AGFI
=.
93
2CFI
=.
951RMSEA=.
071
*
p〈.
05 ***
pく.
001
図 1 道徳的規範意識が情報モ ラルに対す る意識 に与 える影響 (
全体モデル)
次に,全体でのモデル を基本形 とし,校種別 ・性別
慣 を身に付け,心身の健康増進 を図 り,節度 を守 り節
のモデル をそれぞれ検討 した.その結果,中学生のみ
制に心掛 け調和のある生活 をす る.
」と深 く関連 してい
思いや
及び男子のみのモデルでは,それぞれ 「
思慮 」 「
1
)「
法や き
る.同様 に 「
正義 ・規範」は,内容項 目4(
り ・礼儀」か らのパス係数が有意 とはな らなかった.
ま りの意義 を理解 し,遵守す るとともに, 自他の権利
このパスを削除 したモデルでは, 「
節度」, 「
正義 ・規
を重ん じ義務 を確実に果た して,社会の秩序 と規律 を
範」か らのパス係数は,全体モデル と同程度であった
高めるよ うに努 める.
」や,内容項 目4(
3
)「
正義 を重
29,pく.
001, 「
正義 ・
規範 」6=.
49,
(
中学生 :「
節度」6=.
pく.
001
男子 :「
節度」 ノ
ダ=.
33,p〈.
001, 「
正義 ・規範 」
ん じ,だれ に対 しても公正,公平に し,差別や偏見の
ない社会の実現に努 める.
」と深 く関連 している.そ こ
C=.
49,pく.
001
).また,大学生のみ及び女子のみのモ
J
で, これ らの価値項 目の指導時に情報モ ラルの指導時
デルでは,それぞれ 「
思いや り ・礼儀」か らのパスが
期 を合わせ るな ど,有機的な関連性 をもたせた指導計
有意 とはな らなかった. このパスを削除 したモデルで
画 を立案 してい く方略が考 えられ る.例 えば,各教科 ・
は, 「
思慮」か らのパス係数が全体でのモデル よ り若干
領域等の特性 を生か し,道徳の時間では関連す る価値
高 くなった (
大学生 :6=.
16,p〈
.
05,女子 :,
9=.
1
6,
項 目に対す る道徳的判断力の醸成 とい う徳育的なアプ
p(.
01
).
ローチか らの指導 を,技術科では情報の科学的な理解
したがって,中学生の場合は, 「
思慮」 「
思いや り ・
に基づ く技術的な判断力の醸成 とい う知育的なアプロ
礼儀」 とい う道徳的規範意識 と,情報モ ラルに対す る
ーチか らの指導を,密接 に関連づけなが ら展開す る等
意識 との関係 が薄いことが示唆 された.
の手立てが有効ではないか と考え られ る.
以上のことか ら,道徳 の時間が位置づいている中学
4. まとめ と今後の課題
校 の場合には,生徒の情報モラル に対す る意識 を形成
してい くためには,特に,道徳教育における 「
節度」
本研究では,道徳的規範意識 と情報モ ラルに対す る
「
正義 ・規範」の価値項 目と,情報モ ラル教育 との具
意識 との関係 について検討 した.本研究で実施 した調
体的な関連が特に重要であると考 え られ る.「
節度」に
査の条件下で得 られた成果,知見等は,以下の通 りで
ついては,中学校学習指導要領 「
道徳」 (
文部科学省
ある.
2008) に示 されている内容項 目 1(
1
)「
望ま しい生活習
80
(
1
)総則の解説 に示 されている情報モ ラル教育の具
日本教育工学会論文誌 (JpJ
7
.I
.Edu
c
.Te
c
h
DO
J
.
)
体的な内容①∼③対す る意識 を測定す る 「
情報モ
み,波多野和彦,坂元昂 (
20
00)情報化社会 レデ
ラル に対す る意識尺度」 を作成 した.
ィネス尺度の作成お よび信頼性 ・妥 当性 の検討.
(
2)道徳的規範意識 と情報モラルに対す る意識 との
関係 について,仮説的因果モデル を構成 し,共分
散構造分析 を用いてモデルの妥当性 を検証 した.
教育システム情報学会誌 ,1
7
(
4
):5
21
-53
2
間田泰弘,ほか85名 (
20
09)技術 ・家庭科技術分野.
開隆堂出版株式会社,東京 ,pp.
1
80
-1
83
思慮」 「
節度 」 「
正義 ・規範 」 「
思いや
その結果 , 「
宮川洋一,森 山潤,角和博 (
200
6)情報モ ラルの学習
り ・礼儀」がいずれ も情報モラル に対す る意識の
指導に対す る中学生の レデ ィネスの検討.佐賀大
形成 に影響 していることが示唆 された.特に四つ
学文化教育学部研究論文集 ,ll
(
1
):1
45
-1
5
4
の因子の内, 「
節度」 「
正義 ・
規範」が, 「
思慮」 「
思
三宅元子 (
200
6) 中学 ・高校 ・大学生の情報倫理意識
いや り ・礼儀」 よ りも,相対的に強い影響 を及ぼ
す ことが示唆 された.
と道徳的規範意識 の関係 .日本教育工学会論文誌,
3
0(
1
):51
-5
8
以上の知見か ら,情報モ ラル に対す る意識の形成に
影響 を与える可能性がある道徳教育での価値項 目を,
具体的に提示 して,今後の実践-の方略を示 した.
しか し,先行研究か ら 「
道徳的規範意識 が情報モラ
ル-影響 を与えている」 と仮定 したモデルの妥 当性 は
得 られたものの,例 えば,時系列 にみた場合 には,本
文部科学省 (
2
00
8)中学校学習指導要領.文部科学省,
東京
文部科学省 (
200
8)中学校学習指導要領解説
総則編.
株式会社 ぎょうせい,東京
20
0
8)中学校学習指導要領解説
文部科学省 (
道徳編.
日本文教出版株式会社,東京
モデル とは逆の 「
情報モ ラル に対す る意識 を高めるこ
沖林洋平,神 山貴弥,西井章司,森保 尚美,川本憲明,
とによ り,道徳的規範意識 が高まる」 とい う関係や,
200
6)児童生徒 における情報
鹿江宏明,森敏昭 (
双方向の関係の可能性 な ども否定できない.
倫理意識 と規範意識 の関係 . 日本教育工学会論文
また,各学校段階においで情報モ ラル教育を経験す
誌 ,30(
S
up
pl
.
):1
81
-1
8
4
る前後で意識 間の関係 が どのよ うな変容 をす るのか,
玉 田和恵,松 田稔樹,遠藤信一 (
200
4) 3種の知識 に
小学生の場合 は,中学生や大学生 と同様 に両者の関係
よる情報モラル判断学習 を実施す るための道徳 的
を想定 してもよいのか どうか,道徳的規範意識 を基礎
規範尺度の作成 とそれ に基づ く学習者 の類型化.
とした情報モ ラル に対す る意識 の醸成が,適切 な判断
教育システム情報学会誌 ,21
(
4
):3
31
-3
42
力の育成 に有効であるのか, といった課題 には対処す
ることができていない.
今後は,本研究で得 られた知見について,よ り大規
Summa
r
y
模 な調査による追試や縦断的な調査 を行い,上記の各
l
n t
hi
s pa
pe
r
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課題 に対処 しつつ,道徳の時間 と情報モラル教育 との
i
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連携 を図る具体的な指導計画の立案,実践,効果の検
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証 を行 ってい く必要があろ う.
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調査に協力 を していただいた生徒 ・学生の皆 さん,-
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日本教育工学会論文誌 (