Download 「IT時代と老人」 所長 加藤 寛

Transcript
FRONT
OF
VIEW
IT時代と老人
●
ライフデザイン研究所 所長
加藤 寛
最近では、携帯電話を語る上でしば
iモードの成功については、海外でも注目
しば耳にする言葉として「モバイル」とい
が非常に高まっており、モバイル・インタ
う言葉が挙げられる。
「モバイル」とは、
ーネットのさきがけとして高く評価されて
もともと「可動性の、移動性の」という意
いるのである。かつてはあの有名なビ
味の英語であるが、簡単に持ち運びが
ル・ゲイツ氏でさえも語ったようにこれか
できて外出先でもつかえる通信機器・情
らのインターネット革命の主戦場として
報機器の総称として広く使われるように
は、
「無線インターネット」から「モバイ
なってきている。
ル・インターネット」に移行しつつある。
そして「モバイル」の最高傑作として今、
この「iモード」は、日本という国の「個
世界から注目されているのが「iモード」
性」に徹したことから生まれた産物であ
である。いわゆるインターネット接続機能
る。日本では、パソコンの値段が高い、
を持つ携帯電話のことである。この「iモ
使いにくい、置き場所がないという問題
ード」サービス
(NTTドコモ)は珍しさもあ
があった。だからその日本では、インタ
って急速に普及し、その後、
「EZアクセ
ーネットを使ったエレクトロニック・コマー
ス」
(IDO)
「Jスカイ」
(J-PHONE)
「EZウェ
ス(通称、電子商取引)が普及しないん
ブ」
(DDI他)
という同様のサービスも開
じゃないのか?と思われがちであった
始されたため、携帯電話によるインター
が、
「安くて、使いやすくて、場所も取ら
ネット利用者は1年ちょっとで1000万人を
ないインターネット端末」、すなわち「iモ
超えた。一方、アメリカではこういう携帯
ード」の出現によってそのイメージを打破
電話によるインターネットサービスがまだ
したといえる。
普及しておらず、利用者は50万人程度で
ただし、携帯電話によるインターネット
ある。ゆえに『iモードは日本独自のIT革
利用は万能ではない。パソコンではでき
命だ』といっても過言ではないだろう。
ない、モバイルならではの活用法がある
LDI REPORT
2001. 4
1
一方で、やはり画面サイズの限界、取り
るようになったが、うれしいことに最近
扱えるデータの限界などもある。現に
の調査では、高齢者の方が、若者よりIT
NTTドコモでは取り寄せることができる
に関心をもっているらしい。もちろん、若
のにJ-PHONEでは取り寄せることができ
者はすでに携帯電話でIT化を身辺に経
ないデータもある。ほかにもいろいろな
験しているから当然と思っているのかも
問題がある。携帯電話にインターネット
しれないし、高齢者は将来への不適合
などの機能が充実した半面、電話以外の
をおそれているから、知りたがっている
操作が多くなった。取扱説明書も電話帳
のかもしれない。しかし日本の高齢者の
並みの厚さがあり、読みづらくもなった。
関心が強いこともあるが、痴呆症老人に
若者は、適応するのは早いかもしれない
とっても貴重な道具となっている。靴の
が老人には少し苦痛を覚えるのではな
中に受信機をつけておけば、放浪してい
かろうか。そういう点において「iモード」
てもすぐ発見することができる。ラスベガ
離れが徐々に増えていくと思われる。特
スはいまやギャンブルの街ではなく、老
にこれからの日本は、高齢化社会に向か
人特に痴呆性老人にとって安心して楽し
うため、老人向けのインターネット接続機
める街に変わっているという。
能付き携帯電話も開発してほしいもので
ある。
デジタル・ディバイド(情報格差)
という
ことが、IT化の影の部分としてよくいわれ
2
LDI REPORT
2001. 4
こうした変化について日本ではまだま
だ緻密な研究が少ない。本レポートの研
究はそうした方向に筋道をつけてくれる
にちがいない。
Related documents
非常時に使える200W蓄電源 さらに、無停電機能付き
非常時に使える200W蓄電源 さらに、無停電機能付き