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古屋祐子編
株式会社奉文堂発行
「英語のバカヤロー
『 英 語 の 壁 に 』 挑 ん だ 12 人 の 日 本 人 」
新聞の書評か配信メールの書評かを読んでいくらかでも英語に関係したことのあるヒゲ
・じーちゃんは興味を覚え購入した。
12 人 に 関 す る 英 語 と の 付 き 合 い 方 を 読 ん で 感 じ た こ と は 、 普 通 の 英 語 好 き は こ こ に 書
かれている内容にごまかされてはいけないと言うことだった。英語習得に非常に苦しめら
れた経験談は理解できないでもないが、これらの人の中で途中で英語習得を諦めたと言っ
ている人が、その習得を諦めた段階の英語力がどの位のものだったのかを想像しなければ
な ら な い 。凡 人 か ら す れ ば め ち ゃ く ち ゃ な 英 語 習 得 の た め の 努 力 を み な さ ん や ら れ て い る 。
当たり前の英語好きがいくら逆立ちしても遙かに及ばぬ実力の持ち主であることを肝に銘
じて読まなければならない本である。アメリカに数年滞在して”マクドナルド・イングリ
ッ シ ュ ” が あ る 程 度 難 な く し ゃ べ ら れ る 人 が 、 こ れ ら 12 人 よ り 英 語 能 力 で 勝 っ て い る と
思い込んだら、とんでもない誤解である。
学会における英語での説明にはある程度の苦労をされたことは想像できるが、英語で書
かれた論文については、一応大学の英文科を卒業した人とは比べものにならない英語力を
身につけられた方々ばかりとお見受けする。
こういう前置きをして、読んでいて特にヒゲ・じーちゃんが面白いと思った事を紹介し
よう。
養老孟司の編 - 「卒中などを起こして脳の一部が壊れると、文字が読めなくなる「読
字障害」に陥ることがあります。英語圏の人はまったく文字が読めなくなりますが、日本
人の場合、カナが読めない人と、漢字が読めない人の2通りに分かれます。なぜなら、日
本 人 の 脳 の 中 で 「 カ ナ を 読 む 部 位 」 と 「 漢 字 を 読 む 部 位 」 が 別 々 だ か ら で す 。」 本 当 に 日
本人の脳は複雑ですね。西欧人には騒音としか聞こえない”小川のせせらぎ”が風情に富
んだ音に聞こえたり。
養老教授が書いた論文を点検したネイティブの専門家が「これはネイティブが書いたの
だろう」とか「本人が自分で書いてないだろう」という評をもらっていることを読み落と
してはいけない。この本のタイトルにしたという養老先生の”英語のバカヤロー”を鵜呑
みにしてはいけません。
淺野史郎 - 専門分野の英語は 8 割理解できるのだが、ヒアリングできないことに不安
を覚えたという。書いたレポートをネイティブの英語の先生に見せたら「なんでこんな立
派な英語が書けるんだ?むしろアメリカの学生よりもちゃんとした英語を書く」と言われ
たそうである。いくら勉強してもこれだけのレベルにたどり着けるもではない。本人はそ
うは言わないかも知れないが、血のにじむような努力をしたのではないかと察せられる。
明石康さん - 中学・高校で英語の基礎をみっちりやっていれば、アメリカでの英語の
実力は本物になると言われる。
松沢哲郎さん - 学校英語はダメだという人はたぶん学校できちんと勉強していなかっ
たのではないかと指摘されている。
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明石さんと松沢さんの意見で思い出すのが、先月本の紹介ページで取り上げた株式会社
デ ィ ス カ ヴ ァ ー ・ ト ゥ エ ン テ ィ ワ ン 発 行 、 越 前 敏 弥 著 、「 越 前 敏 弥 の 日 本 人 な ら 必 ず 誤 訳
する英文」の中で著者は、
「翻訳学校で教えていて、ひとつ感じることがあります。合格したかどうかはともかく、
かつて大学受験などの大きな試験に向けて本格的に勉強した人とそうでない人とのあいだ
に は 、 翻 訳 学 校 に か よ い は じ め た あ と で も や っ ぱ り 明 確 な 差 が 表 れ て く る ん で す 。」 と 言
っている。
ヒゲ・じーちゃんもこれと同じような思いをしたことがある。ヒゲ・じーちゃんは輸出
専門商社に勤めていたことがある。アメリカ市場担当者は交代でアメリカにある合弁会社
に駐在して仕事をしていた。担当者には英文科を卒業した者とその他の学部を卒業した者
が い た 。 英 文 科 以 外 の 学 部 を 卒 業 し た 者 は 、 帰 国 す る と 2, 3 年 で 英 語 の 話 す 能 力 も 、 読
み書き能力もがくんと落ちてしまうのだが、英文科卒業の者は読み書きの能力は向上した
状態を維持していたようだ。
ただ英語を話す発音は、中学高校時代に英語が好きで英語を勉強し大学の英文科に進ん
だ者は、発音のお粗末な英語教師から英語を学ぶケースが多いため、その時に覚えた下手
な発音が習い癖になって長い間アメリカに滞在しても下手な英語の発音から解放されるこ
とはないようだった。私の知る限り英語の発音ではアメリカ帰りの他の学部出身者に英文
科出身者は負けっ放しであった。
また、この会社の私の上司は、英語を米軍基地で習得したためか、ヒアリングとスピー
キングの発音は素晴らしい能力を発揮していたが、コレポンを読んだり書いたりするのは
大の苦手で私が入社したら丸投げで私にすべて任せてしまった。
本 川 達 夫 さ ん - 英 語 に 向 か い 合 う の に 、 こ れ 以 上 的 確 な 表 現 は な い 。「 す っ き り 、 く
っきり、これっきり」
ヒ ゲ ・ じ ー ち ゃ ん は 、 商 社 勤 め の 後 10 年 間 M 重 工 業 の サ ー ビ ス 部 マ ニ ュ ア ル グ ル ー プ
に属して翻訳、翻訳点検、議事録の準備・作成、通訳をしていた。このグループでたっぷ
り 産 業 英 語 を 経 験 し た 。そ の 時 感 じ た こ と は 、高 校 と 大 学 の 英 文 科 で 産 業 英 語( 工 業 英 語 )
を教える場所と機会を設けるべきだということだった。
その理由は、絶えず真剣に英語と向き合う、つまり誤訳をしてはいけないという考え方
を徹底できるからである。航空機の取扱説明書やフライト・ハンドブック(パイロットが
使う操縦マニュアル)で誤訳をしたら最悪どういう事態が生じるか想像できるだろう。そ
こへいくと文系の英語は理解したつもり程度のあやふやな訳をして誤訳をしても極端に言
えば、何の支障も起きない場合が多い。
機 械 英 語 に "machine tool"と 言 う 言 葉 が あ る 。 こ れ を 英 文 学 で 著 名 な 大 学 教 授 に 翻 訳 を お
願いしたところ、この英語に”機械用工具”というような意味合いの訳をしたらしい(ヒ
ゲ ・ じ ー ち ゃ ん は そ の 訳 語 を 正 確 に 覚 え て い な い の で )。 機 械 に 詳 し い 人 な ら 、 こ れ が 誤
訳 で あ る こ と は 直 ぐ 分 か る 。「 工 作 機 械 」 と い う 日 本 語 が 当 て ら れ て い る 言 葉 だ 。 こ の 誤
訳をおそるおそる指摘したら、この教授は烈火のごとくお怒りになったそうだが、この本
の は じ め か ら 終 わ り ま で "machine tool"を ” 機 械 用 工 具 ” と い う 訳 語 で 通 し た ら 意 味 不 明 の
まま終わるだろう。
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最後に繰り返すが、ここに登場されている方の中には途中で英語の習得を止めたとか、
英語のバカヤローとか言われているが、その方たちの英語の実力は、大学の英文科を卒業
しただけの凡人の英語のレベルとは比べものにならないほど高いこと、英語習得で想像で
きないような努力をされているということを行間から読み取って欲しい。また、英語の習
得に王道なし。地道に英文法を徹底的に理解し、応用できる能力を身につけること、そし
て話す内容の元となる常識、学識、知識を納めることが何よりも大切なことをこの本は教
えてくれる。
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