Download 化学実験の安全ガイドライン - 琉球大学 理学部 海洋自然科学科 化学系

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第1章.専門教育科目の実験の一般的注意
第1章では、専門教育科目の実験を行なう上で、労働安全衛生法(安衛法)、消防(危険物取扱に関する)法、
毒物および劇物取締法、PRTR 法等の遵守の観点から、専門実験の安全ガイドラインを述べています。
一般的注意
実験は危険を伴うものであり、事故を起こさないよう日頃から努力する必要がある。たとえどんなに小さな実
験でも油断は禁物であり、事故を起こさないという日頃の努力を怠ってはならない。また、実験では化学物質を
取り扱うが、これらの中には健康障害を引き起こすものもある。実験を安全かつ健康的に行えるように、以下に
実験のための基本的注意を挙げた。
第1節.実験準備
から始める
−実験は十分な準備を終えて
1.実験を始める前に、専門教育科目の実験に関する安全ガイ
ドラインに沿った安全教育を受けること。
2.体調が優れない時は実験を行なわない。
日頃の健康管理には十分注意し、実験は体調を最優先にして行なう。体調が悪い時に実験をすると事
故につながったり、さらなる健康障害を受ける恐れがある。
3.実験はその操作方法を十分に理解しておく。
実験はその操作方法を充分理解し、予めフローチャートなどを作成するなど計画をたててから行うこと。
そのためには1日前、あるいは1週間前、またまた、1ヶ月前からも準備して計画をたてておかないといけ
ないこともある。わからないことは、実験を始める前に指導者に聞く。
4.実験室の点検と換気を行なう。
実験室に入室する際には、化学物質の漏えい臭、電気の漏電臭(スパーク臭)など異状がないか確か
める。熱交換型換気扇を稼動させ、実験室の換気を行なう。また、配電盤のスイッチを入れる。ドラフトチ
ャンバーを稼動させ、十分の吸引量が得られているか確認する。さらに、実験台上の化学物質が漏えい
していないか等異状がないか確かめる。いずれも異状がある場合は、関連する実験を中止する。
5.専門科目の実験には時間的ゆとりをもってのぞむ。遅刻はし
ない。
遅刻したり、遅刻しそうだからと走って実験室についても、息が上がっていたり、気が焦っていたりで、実
験上の注意を聞き逃したり、伝達しなかったりして注意力がおろそかになり、事故につながる。
6.化学物質(試薬・薬品)の確認
使用する化学物質(試薬・薬品)を点検する。化学物質の危険度(引火性、発火性および爆発性など)お
よび性質(融点、沸点、腐食性、潮解性および揮発性など)を MSDS(Material Safety Data Sheets);
(1) http://www.j-shiyaku.or.jp/home/msds/、
(2) http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/MSDS.html
で必ず調べてから実験を行う。化学物質の中には、個々の化学物質自体はそんなに危険ではないが、そ
れらを混合すると発火、爆発するものや有毒ガスを生じるものも多々ある。使用する化学物質の性質なら
びに取り扱い注意等を必ず調べ、発火、爆発するものはその取り扱い方法、有毒ガスを生じるものはその
取り扱い場所(ドラフトチャンバー中など)を熟知しておくこと。さらに、危険な薬品や装置を取り扱うときの
基礎知識をまとめた参考書が下記の通り数多く出版されているので、熟読の上、実験に取りかかること。
「実験を安全に行うために」,「続・実験を安全に行うために」(化学同人)
「化学実験の安全指針」(日本化学会)
「化学実験の災害防止」,「公害と毒・危険物 総論編」,「公害と毒・危険物無機編」,「公害と毒・危険物
有機編」(三共出版)
特に、「実験を安全に行うために」および「続・実験を安全に行うために」の2編は、基礎知識を学ぶため
に適している。
7.ガラス器具を確認する。
使用するガラス器具を点検する。ひび割れ、破損等があると思わぬ事故につながることがある。ひび割
れ、破損等があるガラス器具はすぐに交換する。ガラス器具を前もって点検してから実験を始める。
8.実験装置(機器)を確認する。
使用する実験装置を点検する。装置の危険性(漏電、感電、異状稼動など)を前もって調べておいてか
ら実験装置を使う。必要であれば、安全ガイドラインに沿った実験機器の安全教育を受ける。
9.実験装置(ガラス製)を確認する。
ガラス器具を使って実験装置を組み立てることがしばしばある。実験装置を組み立てた後は連結部分
が外れていないか、組み立てている間に器具にひびが入らなかったか、器具を破損していないか等必ず
点検する。実験装置を前もって点検してから実験装置を使う。
10.実験に適した服装をする。
実験時の服装はできるだけ皮膚を露出しないで、かつ、実験に適したもので軽快に動作できることが必
要である。また、実験時の服装は引火時、薬品等で融着を起こすナイロン、テトロンなどを避ける。さらに、
実験着を準備し、服装への付着等で実験室から外に化学物質を持ち出さないように、実験着と普段着を
区別する。
11.実験に適した履物を履く。
専門科目の実験室は下履きと上履きを区別し、上履きを履いて実験する。上履きにはスリッパ履は禁
止で、体育館シューズ等シューズを履くこと。
12.保護眼鏡等を準備し、着用する。
保護眼鏡を準備し、実験中は、常に保護眼鏡をかける。
13.実験は決して単独で行ってはならない。
単独実験は必ず事故の元となる。実験は指導者の指示を十分に仰ぐことも必要である。また、実験は、
事故に備えてかならず複数で行わなければならない。
14.事故発生時の対策を点検してから実験を始める。
止めるべき元栓やスイッチ、消火器や緊急シャワーの位置とその操作法ならびに逃避路の整頓、救急
法と連絡法などを確認した後で実験を始める。
15.学生教育研究災害傷害保険へ加入する。
まさかの事故の発生に備えて、経済的な負担が少なく十分な治療等が受けられるように、学生教育研
究災害傷害保険には必ず加入すること。
加入手続きは、学生部で行っている。
16.実験室では飲食禁止。
実験室には化学物質やそれを溶かす有機溶剤が置かれていて、実験台の上にこぼれていたりするかも
しれない。また、ガラスの破片が落ちているかも知れない。間違って、これらのものを誤飲して健康障害を
引き起こさないようにするために、実験室では飲食禁止。
17.専門分野毎の安全ガイドラインに沿った安全教育を受け
る。
各分野の専門実験についても、さらに安全ガイドラインがあるので、必要な分野の安全ガイドラインに沿
った安全教育を必ず受けること。
第2節.専門科目実験中の心得
18.実験中は実験に集中する。
実験中は実験に集中し、それ以外のことは考えない。いざこざを起こすとそれが気になって集中できず、
思わぬ怪我をしたり、健康を害したりする。実験室における携帯電話等の携帯も実験に集中することを妨
げる恐れがある。いずれも、日頃の生活態度・生活習慣が重要である。
19.実験中は、ばく露防止に努める。
化学物質を取り扱う時は、事前に調べた化学物質の MSDS の第8項「ばく露防止および保護措置」に従
って、必要に応じて防面具やビニール手袋などを着用してから取り扱う。また、取り扱う場所も、MSDS の
第8項「ばく露防止および保護措置」に従ってドラフトチャンバー中など適した設備で取り扱う。
目や皮膚についた場合は、中和を考えずに多量の水ですばやく洗い流す。特にアルカリは蛋白質を侵
すので注意する。目に入った場合は、必ず医師の診断を受ける。
化学物質を天秤等ではかり取った後は、試薬瓶のふたを必ず閉める。計っている最中に天秤の周辺に
化学物質をこぼしてしまった時は、MSDS の第6項「露出時の措置」に従って処理する。
MSDS:
(1) http://www.j-shiyaku.or.jp/home/msds/、
(2) http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/MSDS.html
20.実験中は指導者の指示をあおぐ。
予め実験に対する準備をしていても実験が始まると、実験機器の使い方がわからなくなったり、実験書に書
かれている様子とは異なったことが起こる。このような時は勝手に実験を進めないで、必ず、指導者の指示を
あおぐ。
21.実験廃液は流し等に放出しない。
実験の反応廃液や化学薬品の廃液は流し等に放出せずに、廃液処理センター配布の所定の廃液容器
に入れて回収・処理してもらう。所定の容器については、各専門分野の実験の安全ガイドラインに沿った
安全教育の中で教示する。
第3節.実験終了後の心得
22.実験終了後は整理整頓する。
次回実験する時に実験がスムーズに行えるようにまた、事故を起こさないように、常時実験台の上、実
験台の周りならびに実験室の動線は整理整頓する。
23.必ず掃除を行なう。
化学物質(試薬等)がこぼれていて、それが皮膚等について健康障害を引き起こす恐れがあること、ま
た、履物について実験室の外の持ち出される恐れもあるので、実験台の上の掃除と実験室の床の掃除は
必ず行なう。
24.実験室の点検、消灯ならびに施錠を行なう。
実験室を最後に出る者は、各実験台の電気機器のコンセントプラグがコンセントから引き抜かれている
か確認後、配電盤の決められたスイッチを切り、消灯して、実験室ドアを施錠すること。実験室のドアの鍵
は決められた場所に必ず返すこと。
第4節.安全ガイドラインの施行
25.化学系専門教育科目の実験の安全ガイドラインは平成16
年 4 月1日より施行する。
第2章. 分析化学実験 I, II の安全ガイドライン
はじめに
この安全ガイドラインは、分析化学実験 I および II を、安全に行なうための指針で、労働安全衛生法(安衛
法)対応のものである。また、多人数のクラスメイトが、効率よく実験を遂行する上でのルールでもあり、全受講
生が順守すべき事項である。
安全に関する注意
事故を起こさないことが大前提!
万が一、事故がおきたら直ちに担当教員に通知せよ
《実験を始める前に》
1. 一般的注意
実験は危険を伴うものであり、事故を起こさないよう日頃から努力する必要がある。たとえどんなに小さな実
験でも油断は禁物であり、事故を起こさないという日頃の努力を怠ってはならない。寝不足のまま実験を行うと
本人だけでなく、周りにも事故の被害をもたらす危険があるので注意する。万全の体調で実験に臨めるように
することが大切である。もし、実験室で気分が悪くなったり、めまい等を感じたりする場合は、すみやかに担当
教員もしくは、TA に申し出る。また、薬品に対する過敏症などの可能性がある学生は、事前に担当教員に相談
する。
以下に実験のための基本的注意を挙げる。
2. 実験は十分な準備を終えてから始める
使用する装置や薬品の点検はもちろんであるが、装置の危険性ならびに薬品の危険度
(引火性、発火
性、爆発性および毒性等)および性質(融点、沸点、腐食性、潮解性および揮発性等)を必ず調べてから実験
を行う。実験時の服装はできるだけ皮膚を露出しないで、かつ、実験に適したもので軽快に動作できることが
必要である。また、実験時の服装は引火時、薬品等で融着を起こすナイロン、テトロン等を避ける。実験中は、
保護メガネと白衣を着用する。
3. 実験は担当教員および TA の指示に従って行う
勝手な解釈に基づく実験は必ず事故の元となる。実験は担当教員の指示を十分に仰ぐことが必要である。ま
た、実験は、事故に備えてかならず確認しながら行なう。
3.1 実験は常に危険度を想定して行う
事故は予知できないが、危険度は予知できる。未知の実験でも危険度を推測して対策をたてなければな
らない。実験をやる前に必ず予習し、実験の手順、操作法、気をつける点などを十分に把握しておく。
3.2 事故発生時の対策を点検してから実験を始める
止めるべき元栓やスイッチ、消火器や緊急シャワーの位置とその操作法や逃避路を確認した後で実験を
始める。実験ノート、テキスト、筆記用具など、実験に必要なもの意外、例えば、かばんなどは、学生控え
室のロッカーに入れ、実験室には持ってこない。
《危険な化学物質》
薬品の特性による注意
1.強酸性物質(塩酸、硫酸、硝酸等)
濃硫酸を水で希釈するときは、水に濃硫酸を注ぐ。この時かなり発熱するので、必要に応じて氷等で冷やす。
硝酸、塩酸は揮発性なので必ず、ドラフト内で取扱う。
2.強塩基性物質(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)
水に溶解する場合、かなり発熱するので水や氷を用いて冷やしながら行う。
3.その他の試薬
その他の危険試薬については、まず、MSDS (Material Safety Data Sheet)ファイル(Web サイトからダウンロ
ードする)から調べ、担当教員の指示に従って取り扱う。
Web サイト: http://www.merck.co.jp/japan/index.html
《緊急対処法》
緊急事態が発生したら、担当教員にすぐ知らせる。
1. 薬品が目や皮膚についた場合
目や皮膚についた場合は、多量の水ですばやく洗い流す。特にアルカリは蛋白質を侵すので注意する。アル
カリ水溶液が眼に入ると失明することがある。目に入った場合は、水道水でただちに水洗いする。すぐに必ず
眼科医の診断を受ける、遅れると取り返しのつかない事態になることがある。
2. ガラスによる傷で出血がある場合
けが人を座らせるか寝かせて、(ガラスが刺さっている場合は取り除き)止血する。けが人を立たせたまま治
療すると、傷が小さくても脳貧血で卒倒する場合がある。卒倒して頭などを打ちつけると大事に至ることもあ
る。
3.
火災の場合
火災には初期消火ほど有効なものはない。化学実験をする人は消火器の場所と使用方法を覚えておかな
ければならない。
《廃棄物処理》
実験の後始末をおろそかにしない。後始末も実験の過程である。特に溶剤の回収、廃液や廃棄物質の処理
を怠ってはならない。特に、分析化学実験では、重金属イオンを含む廃液が出る。重金属イオンを含む廃液は、
指定された黄色のリボンのついた容器に回収する。
1.黄色容器に回収する廃液…銀、鉛、銅等の重金属を含む水溶性廃液
2.赤色容器に回収する廃液…危険物第四類の第一石油類、アルコール類、第二石油類、第三石油類、
第四石油類、動植物油類等の可燃性液体廃液
《学生教育研究災害傷害保険》
まさかの事故の発生に備えて、経済的に負担が少なく十分な治療等が受けられるように、学生教育研究傷
害保険には必ず加入すること。加入手続きは学生部厚生課で行っている。
《緊急時の連絡先》
● 消防署
119
● 保健管理センター
895−8144
《飲食》
実験室内では、飲食は一切禁止する。
環境を計る国家資格 ―環境計量士―
環境計量士には,一般・濃度関係・振動騒音の 3 種類があります。資格の内容は,「濃度,騒音,
振動などの環境に関わる計量器の整備,正確な計量の保持,計量方法の改善,その他適正な計
量の実施を確保することができる資格。」とあります。環境計量士を取得した卒業生から,「資格に
もよりますが,資格手当てが付きます。また,会社での地位が上がることがありますのでそれに伴
って給与も上がります。反面,責任も重くなります。」との声が寄せられています。難しい資格試験
ですが,4 年生に上がる直前に受験し,合格した卒業生もいます。あなたもチャレンジしてみませ
んか。
① 試験・申し込みの主な日程
願書配布:10 月ごろ,願書受付:10 月ごろ,試験日:3 月,受験料:8,500 円
② 試験地:那覇市を含む全国 9 箇所。
③ 申し込み先・問い合わせ先:沖縄総合事務局 経済産業部 商務通商課
那覇市前島 2-21-7 カサセン沖縄ビル 098-864-2321(直) http://www.jemca.or.jp/info/
④ 関連授業科目:化学全般
⑤ 備考(受験資格など):受験資格なし。だれでも受験できる。
第3章. 無機化学実験の安全ガイドライン
無機化学実験を受講する上での諸注意
第 1 節 安全に関する一般的諸注意
本実験では様々な薬品類、ガラス器具、測定機器を使います。化学試薬の多くは人体に有害であり、中に
は操作方法の誤りや計量ミスなどの不注意から重大な事故を引き起こすものも含まれています。慎重に作業
をすすめ、事故を未然に防ぐことを最優先に実験を行なって下さい。そのためには、使用する試薬についての
知識に加えて、器具類や装置類の適切な使用法についても熟知しておく必要があります。もし事故が起きた場
合でも、速やかに適切に対処する事で被害を最小限におさえる事を心掛けて下さい。
実験を始める前に以下の注意事項を熟読し、事故を起さないよう充分注意して下さい。また、体調が悪い
時に無理に実験を行なうと注意力の低下を招き、重大事故の原因になりかねません。気分が悪い時は必ず実
験前に教官に申し出て下さい。
第 2 節 実験を始める前に
使用する薬品についての予備知識
無機化学実験では強酸性物質や強塩基性物質の他、引火性有機溶剤、刺激性有機薬品等
を取り扱います。その多くは人体に有毒であり、毒物、劇物指定の薬品も含まれています。実
験に入る前に、使用する薬品類の危険度(引火性、発火性、爆発性等)および性質(融点、沸
点、腐食性、潮解性、揮発性等)についてあらかじめ調べて、実験ノートに記述して下さい。一
般的な薬品類については、化学辞典等をもちいることで薬品の性質をあらかじめ調べる事がで
きます。特殊な化学薬品に関しては、実験前に教官から適宜注意がありますので、聞き漏らさ
ないよう注意して下さい。
化学薬品情報に関する文献
・ 日本化学会編、化学安全ガイド、丸善(1999).
・ 化学物質安全情報研究会編, 化学物質安全性データブック, オーム社(1999).
・ 日本化学会編, 改訂 4 版 化学便覧 基礎編, 丸善(1993). ほか
第 3 節 実験中の一般的注意事項
実験室では飲食行為を禁ずる。また飲食物を持ち込んでもいけない。
実験台の上には実験に必要な器具類や筆記用具以外はおいてはならない。
大声でふざけあったり、はしゃいだりすると事故の原因になるので厳禁。
携帯電話(メール)の使用は注意力の低下を招くため実験室では電源を切る。または持ち込まない。
実験室では必ず白衣を着用する事。室内では専用の上履きを使用する事(スリッパ、サンダル類の使用を
認めない)。
合成実験では必ず保護メガネをかけること。保護メガネは上下左右から試薬が目に入らないようなゴーグ
ルタイプの物が望ましい。
長髪の場合、反応容器の中に毛髪が入ったり炎にふれて火傷の原因になることがあるので、髪を束ねるな
どの対策を講じる。
第 4 節 薬品の特性による注意
酸性物質(塩酸、硝酸、硫酸等): 濃硫酸を水で希釈するときには発熱をともなうので、必ず水に濃硫酸を
注ぐ。塩酸、硝酸は揮発性なので必ずドラフト内で扱う。
塩基性物質(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アミン類等):水酸化ナトリウムや水酸化カリ
ウムを水に溶解する場合、発熱をともなうので注意する。それらの濃厚水溶液を多量に調製する場合、水
や氷を用いて冷やしながら行う。アンモニアやアミン類は刺激臭が強いので、必ずドラフト内で扱うこと。な
お、塩基性水溶液はタンパク質を侵し、特に目に入ると最悪の場合失明の恐れもあるので、取り扱いの際
は必ず保護メガネをかけること。
毒物、劇薬、特定化学物質、危険物の取り扱い:
本実験で使用する化学薬品のうち、以下の薬品は人
体に有毒であったり、または爆発・発火の危険がある事から法律で毒物、劇物(毒物、劇物取締法)、特定
化学物質(労働安全衛生法)、危険物(消防法)に指定されています。取り扱いには特に注意して下さい。
・劇物:塩酸、硫酸、硝酸、アンモニア水、水酸化ナトリウム、メタノール、塩化第一銅、
硫酸銅5水和物、塩化第二銅二水和物、過酸化水素
・特定化学物質:アンモニア、塩化水素、硝酸、硫酸
・危険物:エタノール、メタノール、n,n-ジエチルエチレンジアミン、ジエチルエーテル、
エチレンジアミン無水和物、ジ-n-ブチルアミン、チタンテトライソプロポキシド
第 5 節 実験後の注意事項
使用した試薬類は必ず所定の位置へ戻し、それを確認する。薬さじに付着した試薬は必要に応じて水で洗
浄し、重金属を含む場合は廃液用ポリタンクへ回収する。
実験終了後は使用した器具の片づけの他、ドラフトチャンバーや実験台およびその周囲の清掃を行ない、
教官へ報告する(了解を得て解散)。
第 6 節 廃棄物の処理
廃液:重金属を含まない酸、アルカリ水溶液は、中和して(pH 試験紙で pH6
∼8を確認)流し台に廃棄して良い。
重金属を含む溶液の場合は、黄色帯のポリタンクへ回収する。絶対に流し台へ流して
はならない。
固形廃棄物: ろ紙からはぎ取って専用容器へ回収する。ろ紙にこびりついている場合は、ろ紙ごと専用容
器へ回収する。
第 7 節 事故への対応
実験では事故を未然に防ぐ事が最も大切ですが、もし事故が起きた場合には速やかに適切に対処する事
で被害を最小限におさえる事ができます。どんな事故でも、ただちに教官に通知してください。
無機化学実験でもっとも起こり得る事故は、薬品による中毒、火災、ガラス器具の破損による怪我などで
す。以下に事故時の対処法を記すので、緊急時に備え熟読してください。
薬品が目に入ったとき: 可能な限り速やかに、実験室に備付けの洗顔用噴水で15分以上目を洗浄する。
障害の程度に関わらず、直ちに眼科で診察・治療を受ける。
薬品を吸引してしまった時: 悪臭、異臭が原因で気分が悪くなった場合は、たいていの場合はしばらく安
静にするだけで回復する。症状の改善が見られない場合は、病院で診察・治療をうける。
薬品を飲み込んでしまった時: 多量の水を飲み、飲み込んだ試薬をできるだけ嘔吐するようにつとめる。
その後、速やかに病院で診察・治療をうける。
薬品による火災: 周囲でバーナーを使用していればすぐに炎をとめ、元栓を閉じる。近くに可燃性、引火
性の有機溶媒もしくはそれを使った反応溶液があれば火元から遠ざける。フラスコやビーカー内の小さな
火災は大ビーカーや時計皿、濡れ雑巾などでおおえばすぐに鎮火する。それでも鎮火せず火種が大きくな
るようであれば、備付けの消化器を使って消化する。
衣服の火災: 実験室に備付けの緊急用シャワーで消化する。やけどの程度により、病院で診察・治療をう
ける。
切り傷: ガラス器具の破損によって生じた切り傷は、まず切り傷を水で良く洗い、ガラスの破片がささった
ままであれば注意深くそれを取り除く。消毒薬(同じフロアにある化学系事務室に常備)で消毒し、傷が深
い場合や、なかなか止血しない場合は病院で診察・治療してもらう。
実際に行う各実験テーマの操作等に関して、さらに詳細な説明や安全上の注意を実験書に記載しているの
で、熟読して実験に望むこと。
高圧ガスを取り扱うための国家資格
― 高圧ガス製造保安責任者・高圧ガス販売主任者 ―
① 資格の内容:高圧ガスによる災害を未然に防止し、公共の安全を守るための資格。高圧ガス製造の
従事に必要な資格が「高圧ガス製造保安責任者」、販売業務の従事に必要な資格が「高圧ガス販売主任
者(第二種販売主任者)」であり、いずれも国家資格。
「高圧ガス製造保安責任者」の免状は 9 種類(以下では“責任者免状”を略す)。1)甲種化学、2)甲種機
械、3)乙種化学、4)乙種機械、5)丙種化学(液化石油ガス)、6)丙種化学(特別試験科目)、7)第一種冷凍
機械、8)第二種冷凍機械、9)第三種冷凍機械。免状の種類に応じて、職務を行うことができる高圧ガスの
種類や製造施設の規模に制限が設けられている場合もある。
「高圧ガス販売主任者」の免状は 1)第一種販売主任者免状、2)第二種販売主任者免状で、免状の種
類により職務を行うことができる高圧ガスの種類と販売施設に制限がある。
石油化学コンビナートや LP ガス充填事業所、LP ガススタンドなどの LP ガス製造事業所や販売事業所
などで役に立つ資格。
② 試験・申し込みの主な日程
願書受付:8 月下旬∼9 月上旬(インターネット受付と書面受付によって異なる)
試験:11 月頃、受験料:試験の種類や願書受付方法によって異なる。
③ 試験地:甲種化学、甲種機械及び第一種冷凍機械は沖縄県のほか経済産業局単位、その他の種類は
全国都道府県単位で実施。
④ 申し込み先、問い合わせ先:
・高圧ガス保安協会 http://www.khk.or.jp/
・(社)沖縄県高圧ガス保安協会 TEL 098−858−9562
http://www.okinawakhk.or.jp/index.shtml
⑤ 関連授業科目:熱力学、化学全般
⑥ 備考:年齢、学歴、経験に関係なく受験できる。
第4章. 物理化学実験の安全ガイドライン
はじめに:物理化学実験を安全に行うために
物理化学分野の実験では、有機化学や無機化学の実験に比べ、大量の化学物質を扱うことはまれであり、
化学物質の反応に伴う爆発や発火の危険性は相対的には高くない。しかし、化学における実験全般的な注意
および安全上の留意点は共通であり、加えて、物理化学的な実験操作や測定等に特有な危険性も存在する。
ここでは、第 1 節、第 2 節で、化学の実験全般に共通する注意事項を簡単にまとめ、次に、第 3 節において
物理化学分野の実験で遭遇する安全上の注意事項を述べることにする。物理化学以外の分野における化学
の実験においても、物理化学的な操作や測定が行なわれることが多く、第 3 節で述べられていることは、その
ような場面における安全のガイドラインとして知っておくと良いと考えられる。
第 1 節.試薬の取り扱いに関する一般的注意
第 2 節.化学の実験における一般的注意
第 3 節.物理化学領域の実験、物理化学的な操作・測定に伴う安全上の注意事項
なお、本章の末尾に参考文献を挙げてある。安全上の注意、考え方等に関連して、これらの文献中の詳細な
記載も参考にするとよい。
第 1 節. 試薬の取り扱いに関する一般的注意
実験に用いる試薬については、性質や毒性、取扱の注意点、廃棄方法などを理解しておく。特に、始め
て使用する試薬については、事前に、よく調査しておく。
試薬の安全性については、MSDS(Material Safety Data Sheets)が普及している。実験研究用の試薬を
供給しているメーカーから提供されている(Web サイト、CD-ROM など)ので、これを利用するとよい。米
国のコーネル大学などの Web サイトなども便利である。また、環境省の Web サイトなどでも化学物質に
関連した情報が調査・閲覧できる。オーソドックスに Merk Index や便覧・化合物事典の類をひくことも有
効である。
第 2 節. 化学の実験における一般的注意
実験に適した服装・装備をととのえる。
(白衣や作業着の着用。足の甲が露出しない靴をはく。長髪は束ねるか巻上げるかする。目の保護のため
保護めがね、防護面などを常用する。)
実験に際しては、周辺の整理整頓を行い、使用器具を注意深く点検・取扱いしながら実施する。
できるだけ少量の薬品で実験を行い、実験室に必要以上の量や種類の試薬を持ち込まない。また、不
必要に多量な溶液を調製しないよう、よく考えながら進める。
万一の事故発生の場合に備えて対策を充分たてておく。消火器、緊急シャワー、洗眼器などの安全設
備の位置、使用法を確認し、応急処置の方法を知っておくこと。消火器については、その種類を確認、
取扱い法についても日頃から心得ておく。
もしも火災が発生したら、大声で周囲に知らせる。火元の人は自分で消そうとせず、冷静な他人にまか
せる方が良い。周囲の可燃物は取り除き、延焼を防ぐ。また、ガス源、電源などをなるべく離れた場所
で切る。
使用済みの試薬は、そのまま捨てないこと。決められた方法に従って安全化処理を行い、所定の場所
で定められた方式で安全に廃棄処理を行うこと。
第 3 節. 物理化学領域の実験、物理化学的な操作・測定に伴う安全上の注意事項
1.ガラス器具の取扱いやガラス細工における注意
ガラス器具は使用前によく点検し、傷のあるものの使用は避ける。特に、減圧、加圧、加熱、冷却
するものについては入念に点検する必要がある。
三角フラスコのような平たい部分のある肉薄の容器は、絶対に減圧してはならない。
デュワー瓶はわずかな傷で爆発的に破損することがあるので、瓶の中へ素手を入れたり、顔を近
づけてはならない。
ゴム栓やコルク栓にガラス管や温度計を差し込む時に折れて負傷することが多い。管に水または
アルコールやグリセリンを塗り、栓を回しながら少しずつ押し込む。この際、栓を持つ手と管をもつ
手が、5 cm 以上離れていると、ガラス管などが折れ、大けがをすることがあるので、短く持って作
業するように注意する。
ホールピペットやメスピペットを安全ピペッターに差し込む時も、上記と同様の危険がある。安全ピ
ペッターを持つ手とピペット類を持つ手を短く操作すること。
ガラス細工の際、過熱されたガラスに触れてやけどをすることが多いので注意する。
2.寒剤を扱う際の注意
寒剤としてよく用いるのは、ドライアイス、あるは液体窒素や液体ヘリウムなどの液化ガスである。液化
ガスの運搬貯蔵容器は真空容器となっている。構造や操作法を十分に確かめておかなければならない。
大学において寒剤の供給を受ける場合には、大学の極低温センターで年度始めに開催される保安教
育を受講しなければならない。また、その際のテキストに、寒剤の性質、取扱い方法、供給の受け方、貯蔵
方法、運搬方法などがまとめられている。
凍傷にならないように注意する。液化ガスの飛沫が皮膚に飛び散っても皮膚が乾いていればすぐに
気化するので凍傷にかかりにくいが、皮膚が水などで濡れていると液体が凍結し、凍傷をまねくので
注意が必要である。大量の寒剤を扱う時には、皮の手袋を使用する。軍手などは寒剤が透過するの
で、かえって凍傷を助長することになり、好ましくない。
寒剤を使用するときには、換気に注意して酸素欠乏にならないようにしなければならない。風通しの
よくない部屋の場合、特に注意すること。
液体窒素トラップなどを大気に開放した状態で長時間放置すると、空気中の酸素が液化する。これ
が有機物と爆発的に反応したり、気化による体積膨張などで思わぬ事故に結びつくので、細心の注
意が必要。有機物を近づけたりしないようにする。
液化ガスを取扱う際の鉄則は、液体を密封系に閉じ込めないことである。液化ガスが気化するとその
体積は 800∼1000 倍に増大することを認識する。
3. 高圧ガス(高圧ガスボンベ)の取り扱い
化学の実験で気体を使用する場合、容器(ボンベ)に充填された高圧ガスを減圧して使用する。ガスは、
貯蔵、運搬の便宜上、高圧ガスとしてボンベと呼ばれる鋼鉄製の容器に圧縮されて入っている。高圧ガス
はいったん使用を誤ると大きな事故につながる可能性が大きいので、取り扱いには細心の注意が必要で
ある。最初は、取り扱いに慣れた人にそばで見ていてもらって、その指導の下で使うようにすること。
<ボンベの保持・運搬>
高圧ガスボンベは、日陰で風通しのよいところを選んで保持する。直射日光があたったり、熱源
のそばに置くことのないようにする。
(温度上昇に伴って圧力が上がり、安全弁が破裂するようなことを避ける。万が一、安全弁が破
裂したときにはすぐに近寄らないで、圧力が下がるまで放置するのが無難。まわりの火気に気
をつけ風通しをよくしできるだけ早くガスを外へ逃がす。)
ボンベは、専用の鎖などで頑丈な架台に固定すること。重心が高いので、少しの振動や他の物
体との接触によって、倒れることがあり、架台に固定しないで放置するのは非常に危険。地震が
あったとしても倒れることのないよう、処置しておくべきである。
液化ガスのボンベは横にして置かないこと。
運搬の際はバルブを保護するために必ずキャップを付けること。ボンベの一番弱いところはバ
ルブである。
※ 以上のような事柄は、法的にも定められていることである。
<バルブの操作>
ボンベ本体の上端についているバルブは、専用のレンチを用いて開閉すること。ペンチやスパ
ナを用いると危険。開ける時は、1 回∼1 回半左へ、静かに回すだけで良く、急激な開弁は非常
に危険であるので気をつける。
<減圧調整器(レギュレータ)・減圧弁の取り付けと操作>
高圧ガスボンベのガス出口には減圧調整器が接続されるが、接続用のネジにはガスの種類に
よって右ネジと左ネジの区別がある。一般に可燃性ガスは左ネジで、その他のガスは、右ネジ
である。ヘリウムは可燃性ではないが左ネジであり、ネジ山の高さおよびピッチが可燃性ガスの
左ネジと若干異なっている。また、酸素ガスの場合は、ガス出口がメスネジになっている。
減圧調整器を選択する際は、ボンベと接続ネジが合うことを確認する。1 種類のガスには必ず一
つの減圧調整器を用意する。1 個の減圧調整器をいろいろなガスに共用しないこと。酸素の場
合には、“禁油”と指定されたものを使用しなければならない。減圧調整器を購入する際にガス
名を指定すると良い。
減圧調整器を取り付ける時は、まず、ボンベのバルブに付着した砂・泥・塵埃を拭い去り、ボン
ベのバルブを静かに2∼3回開閉して水分や塵埃を取り去る。減圧調整器の取り付けパッキン
の有無を調べ、接続する時にはスパナやレンチを用いてしっかりと固定する。接続部分からガス
漏れの有無は、圧力をかけた状態で石けん水を塗布することによって容易に確認する事ができ
る。
ガスを使用する時は圧力調整バルブを静かに右へ回し、低圧ゲージを見ながら希望の圧力に
調整する。次にストップバルブを左に回すと低圧ガス出口から気体が出てくるようになっている。
ボンベのバルブを開く場合は必ず身体や顔が減圧調整器の正面に向かわない位置で行なうこ
と。また、減圧調整器の圧力計を見る時は、決して正面から見ないで斜めの方向から見ること。
これらの事は圧力計のガラスが破損した時、顔にあたらないようにするためである。
4.電気災害とその防止
物理化学実験では、電気機器を用いて操作・測定を実施することが多い。電気による災害は、感電、マ
イクロ波やレーザーなどの強力な電磁波による被爆、および漏電による火災などがある。
電気機器の接地(アース)を完全にする。
電気機器の通電部や帯電部を直接に触れることが必要になったときは、電源を切り、その部分を
必ず接地した状態にして、作業を進めること。電源スイッチをオフにしても、コンデンサーなどに電
荷が蓄えられている場合があるので注意が必要。
電気機器からの電流の漏えいを避けるため、付着したごみや油を取り去って、機器とその周辺を
清潔に保つこと。
高電圧や大電流を伴う実験は、単独で行なわないこと。複数名で実施すること。
電源やコード、ヒューズ、ブレーカー等は、機器の消費電力に適したものを用いること。
電源との接続は確実にし、接触不良を起こさないこと。
電気機器などを購入する際についてくる取扱説明書の安全上の注意を、使用前に読んで理解して
おく。また、取扱説明書は、すぐに参照できるよう手近に保管すること。
5. 回転真空ポンプを使用する際の注意
物理化学実験ではしばしば真空状態を得るために、油回転真空ポンプや油拡散ポンプなどが使用され
る。油回転真空ポンプは、真空ポンプをモーターの動力で稼動させるしくみになっている。モーター直結型
のものが多く市販されているが、ゴムベルトで動力を伝える型のものも依然として使用されていることがあ
る。
購入時についてくる取扱説明書の安全上の注意を、使用前に読んで理解しておくこと。また、取扱説明
書は、すぐに参照できるよう手近に保管すること。
実験用白衣の裾や、腰からぶらさげた手拭などが巻き込まれないように注意する。長髪の場合も
注意。
ゴムベルトの劣化、亀裂の有無を調べてから作動させる。
ポンプの排気ガスで部屋の空気を汚染することがあるので、排気ガスを室外に誘導するなどの措
置を行いながら使用する。
過負荷の状態でモーターに通電を続けると発熱して火災の原因となるので注意。
停電時には、電源を一旦切ること。通電が復帰する時に事故が発生する可能性があるので、それ
を防ぐためである。
6.紫外可視分光光度計に関する注意
光源ランプ(重水素ランプ、ハロゲンランプ)の交換などは、光源を切ってから充分な時間が経過し
てから作業を始めること(点灯中および消灯直後、ランプは高温になっているため)。また、電源ス
イッチを切り、電源コードも抜いてから作業する。
光源ミラーの調整が必要な時は、紫外線(重水素ランプの光)から目を保護するために、眼鏡をか
けること。点灯中のランプは高温になっているので素手で触れないこと。また、絶対にリード線に手
やドライバーが触れないようにする(電撃を受けることがある)。
購入時についてくる取扱説明書の安全上の注意を、使用前に読んで理解しておく。また、取り扱い
説明書は、すぐに参照できるよう手近に保管すること。
7.蛍光分光光度計に関する注意
光源ランプ(キセノンランプ)には、高圧のガス(常温:1 MPa、点灯時:約 4 MPa)が封入されている
ため、衝撃を加えたり、石英ガラスの表面に傷などをつけると、破裂し、ガラス片が飛び散り、重症
を負う恐れがある。保護面、厚手の長袖シャツ、保護眼鏡、手袋などの保護具をつけ、慎重に取り
扱うこと。
ランプの交換時には、バルブ(ガラスの部分)に力が加わらないように注意すること。
使用済みのランプも高い圧のガスが残っているので、新品のランプと同様に慎重に取り扱うこと。
ランプを取り外す場合、交換や調整を行なう場合は、消灯操作(電源 off)後、ランプが冷えるまで
の間、充分待ってから交換作業に取り掛かること。キセノンランプは点灯中や消灯直後は高温にな
っている。
ランプの交換等で光源カバーを取り外すときは、電源遮断後、ランプが充分冷えるまでの間、2 時
間以上待ってから行うこと。(キセノンランプの電源(∼30 kV)による感電のおそれ)
不要になったキセノンランプは、厚手の布で完全に包み、その上からハンマーなどでガラスを破砕
し危険物として処理する。
もしもホトマルを交換するような必要が生じた場合には、本体の電源スイッチが off になっているこ
とを確認してから、実施すること(ホトマル電圧(∼1000 V)による感電のおそれ)。
電源コード接続の際は、光度計本体の電源スイッチが off になっていることを確認すること。(電源
電圧(∼100 V)による感電のおそれ)
キセノンランプの光を見る場合は、紫外線をカットする保護面や保護眼鏡などを着用し、眼を保護
すること。たとえ散乱された反射光でも、眼に有害な紫外線を含んでいることに留意する。
購入時についてくる取扱説明書の安全上の注意を、使用前に読んで理解しておく。また、取扱説
明書は、すぐに参照できるよう手近に保管すること。
8.各種光源の取り扱い(紫外線ランプ、高圧水銀灯、キセノンランプ、等々)
点灯中のランプは、絶対に直接肉眼で見ないこと。眼の痛みや視力障害の原因になる。
光源を取り扱う際は、保護眼鏡や保護面(例えば紫外線カット用)を着用すると良い。
冷却が必要な光源は、冷却しない場合は点灯させないこと。例えば、水冷式の高圧水銀灯などは、
光源を点灯させてから冷却通水すると、ランプ冷却管が破損する恐れがある。
点灯中や消灯直後の光源には触れないこと。加熱しておりやけどの恐れがある。
購入時についてくる取扱説明書の安全上の注意を、使用前に読んで理解しておく。また、取扱説
明書は、すぐに参照できるよう手近に保管すること。
9.レーザーの安全な取扱い
レーザー光は電磁波としての波面がそろい、指向性にすぐれ、エネルギー密度が高く、波長領域は真
空紫外、紫外、可視、赤外、ミリ波に及ぶ。一般にレーザー光は生体に吸収されやすいので、取り扱いに十
分注意する必要がある。また、十分に経験を積んだ者と一緒に扱うべきである。
レーザー光の危険度について、十分認識していること。
レーザー光を飛ばす光路は、目の高さを避けること。
レーザー光の予想される光路は、レーザーが作動してなくてものぞきこまないこと。
レーザー光の波長に適した保護めがね、保護面などを使用すること。
レーザー発振を開始する時は、必ず他の人に声をかけて注意する。
レーザーの装置は高圧電源を使用しているので、この点に注意して取扱うこと。
10.強磁場実験での注意
超伝導マグネットでは強力な磁場が発生するので、磁気カードや FD などを近づけると記録が消え
るので注意。
金属製の実験器具等が強力な磁場に吸い寄せられ、大きな事故につながる可能性がある。
心臓のペースメーカーを使用している者は近づいてはならない。
超伝導マグネットを形成するコイルの超伝導がクエンチした(破れた)場合、コイルに蓄えられてい
た磁気エネルギーがジュール熱として放出され、寒剤として用いている大量の液体ヘリウムが急
激に蒸発する。従って、気密性の高い部屋で装置を使う場合は、部屋の換気に充分注意しなけれ
ばならない。
11.X 線を用いる場合の注意
十分に経験を積んだ者と一緒に扱うこと。
X 線用フィルムバッジを着用する。
高圧電源を使用しているので、感電に注意すること。
長期に X 線を扱う場合は定期健康診断を受けることが義務付けられている。
12.コンピュータやインターネットの利用
化学の実験に伴って、化学物質などの情報検索、書籍や論文の文献検索、および大型計算機利用など
で、インターネットに接続されたコンピュータを活用する場面が、多いと考えられるが、『情報セキュリティ』、
『情報モラル』についても留意し、安全な利用を心がけること。
参考文献
物理化学実験法(第 4 版)、千原秀昭・徂徠道夫編、東京化学同人、2000.
物理化学実験のてびき、足立吟也ほか、化学同人、1993.
物理化学実験法(増補版)、鮫島実三郎、裳華房、1985(昭和 60).
物理化学実験、岡秀彦・広瀬哲也、共立出版、1964(昭和 39).
保安教育テキスト∼液体窒素利用の手引き∼、琉球大学極低温センター.
分光蛍光光度計取り扱い説明書、日立.
分光光度計取り扱い説明書、島津.
分光光度計取り扱い説明書、日本分光.
化学安全ノート、日本化学会編、丸善、2002.
新版 実験を安全に行うため、化学同人編集部、化学同人、1993.
新版 続・実験を安全に行うため、化学同人編集部、化学同人、1987.
化学実験の安全指針(第 4 版)、日本化学会編、丸善、1999.
大学人のための安全衛生管理ガイド、鈴木直ほか、東京化学同人、2005.
学生のための化学実験安全ガイド、徂徠道夫ほか、東京化学同人、2003.
これだけは知っておきたい化学実験セーフティガイド、日本化学会編、2006.
実験室の笑える?笑えない!事故実例集、田中陵二・松本英之、講談社、2001.
改訂パーフェクト化学実験全書(基礎編)、大塚明郎監修、東陽出版、1986.
化学実験操作書(改正版)、化学実験研究会、廣川書店、1988(平成元年).
イラストで見る化学実験の基礎知識(第 2 版)、飯田隆ほか編、丸善、2004.
化学実験マニュアル、荘司菊雄、技報堂出版、1996.
図解 基礎の化学実験法(Ⅰ)化学実験の基礎、西山隆造、オーム社、1983.
自然科学基礎実験(化学編)、北海道大学自然科学基礎実験(化学)実験書編集委員会編、三共出版、
1996.
非化学系技術者のための化学実験入門、佐々木健・鈴木洸次郎編著、学術図書出版、1990.
第 5 版実験化学講座5:化学実験のための基礎技術、日本化学会編、2005.
第 5 版実験化学講座 30:化学物質の安全管理、日本化学会編、2006.
その他
エックス線作業主任
① 資格の内容
国家資格。レントゲンによって発見されたエックス線は、あらゆる分野において科学技術の発展に貢献
しており、今後も同様の状況が持続すると考えられている。製造業や医療機関など各種検査・測定
でエックス線装置が用いられているが、取り扱いを誤ると人体へ有害な影響を与える。
従って、安全かつ安心してエックス線を科学技術の発展や人間の生活に活用することが必要であり、そ
のためには、これを取り扱う仕事や職場において、「労働安全衛生法」に基づいた「電離放射線障害
防止規則」という法律に従う義務が生じてくる。すなわち、エックス線を取り扱う事業所では、エック
ス線に関する知識・技能を身につけた作業主任者の監督のもとで業務を行なう事が義務付けられ
ている。「エックス線作業主任」は、エックス線に携わる作業者らの安全と安心を確保するように努
めなければならず、その取り扱いの責任者となる。
② 試験科目
「エックス線の管理に関する知識」、「関係法令」、
「エックス線の測定に関する知識」、「エックス線の生体に与える影響に関する知識」
③ 試験・申し込みの主な日程
年間4∼6回程度(実施地区によって異なるので、(財)安全衛生技術試験協会、各安全衛
生技術センターに問い合せが必要)。
受験料:8,300 円
④ 申し込み・問合せ先
安全衛生技術センター(各支部)。
* 試験センターホームページ: http://www.exam.or.jp/index.htm
参考・引用文献: エックス線作業主任者試験徹底研究、平井昭司ほか、オーム社、2006.
第5章. 有機化学実験Ⅰ・Ⅱの実験安全ガイド
ライン
はじめに
ここでは、すでに「専門教育科目の化学実験における安全ガイドライン」の「第1章 専門教育科目の実験の
一般的注意」に基づいた安全教育を受講してきている教員、ティーチングアシスタントならびに化学系学生の
内で、専門教育科目「有機化学実験 ・ 」の担当教員、ティーチングアシスタントならびに受講生を対象に有
機化学実験 ・ を安全に行なうための実験安全ガイドラインを記載している。従って、実験に関する一般的注
意については省いた。もしも、「第1章の専門教育科目の化学実験の一般的注意」に基づいた安全教育を受講
していない受講生は、それを受講してから本安全教育を受講すること。
第1節. 有機化学実験の一般的注意
実験は危険を伴うものであり、事故を起こさないよう日頃から努力する必要がある。たとえどんなに小さな実
験でも油断は禁物であり、事故を起こさないという日頃の努力を怠ってはならない。以下に実験のための基本
的注意を挙げる。
1.実験は十分な準備を終えてから始める。
使用する装置や薬品の点検はもちろんであるが、装置の危険性ならびに薬品の危険度(引火性、発火性およ
び爆発性など)および性質(融点、沸点、腐食性、潮解性および揮発性など)を必ず化学物質安全データーシ
ート(MSDS)で調べてから実験を行う。
実験時の服装はできるだけ皮膚を露出しないで、かつ、実験に適したもので軽快に動作できることが必要で
ある。また、実験時の服装は引火時、薬品等で融着を起こすナイロン、テトロンなどを避ける。
実験中は、常に保護眼鏡をかける。
2.実験は指導者の指示に従って行い、決して単独で実験を行ってはならない。
単独実験は必ず事故の元となる。実験は指導者の指示を十分に仰ぐことが必要である。また、実験は、事故
に備えてかならず複数で行わなければならない。
3.実験は常に危険度を想定して行う。
事故は予知できないが、危険度は予知できる。未知の実験でも危険度を推測して対策をたてなければならな
い。以下のような実験には万全の注意が必要である。
❀未知の反応および操作
❁複合危険のある実験(火災と毒ガス発生など)
❂過酷な反応条件(高温、高圧など)
4.事故発生時の対策を点検してから実験を始める。
止めるべき元栓やスイッチ、消火器や緊急シャワーの位置とその操作法ならびに逃避路の整頓、救急法と連
絡法などを確認した後で実験を始める。
5.実験の後始末をおろそかにしない。
後始末も実験の過程である。特に溶剤の回収、廃液や廃棄物質の処理を怠ってはならない。
第2節.有機化学実験における化学薬品(危険物、特定化学物質、有機溶剤および毒物・劇物)の取扱
第1節の一般的注意の項でも記述したが、化学薬品には、爆発性、引火性、発火性、毒性、腐食性をもつも
のが多い。必要に応じて防面具やビニール手袋などを着用してから取り扱う。また、化学薬品の中には、個々
の薬品自体はそんなに危険ではないが、それらを混合すると発火、爆発するものや有毒ガスを生じるものも
多々ある。使用する薬品の性質ならびに取扱い注意等を必ず調べ、発火、爆発するものはその取り扱い方法、
有毒ガスを生じるものはその取り扱い場所(ドラフトチャンバー中など)を熟知してから取り扱うこと。さらに、実
験はその操作方法を充分理解し、予めフローチャートなどを作成するなど計画をたててから行うこと。危険な薬
品や装置を取り扱うときの基礎知識をまとめた参考書が下記の通り数多く出版されているので、熟読の上、実
験に取りかかること。
「実験を安全に行うために」,「続・実験を安全に行うために」(化学同人)
「化学実験の安全指針」(日本化学会)
「化学実験の災害防止」,「公害と毒・危険物 総論編」,「公害と毒・危険物 無機編」,「公害と毒・ 危険物
有機編」(三共出版)
特に、「実験を安全に行うために」および「続・実験を安全に行うために」の2編は、基礎知識を学ために適し
ている。
1)有機化学系実験における危険物の取り扱い
有機化学系実験で使用する溶媒や化学薬品のほとんどは消防法で規定される危険物である。危険物とは、
火災発生の危険につながる性質をもつもので、その性質によって第一類から第六類まで分類されている。消
防法によれば、危険物の取扱は危険物取扱者免状を取得した危険物取扱者でなければ行ってはならず、それ
以外のものが取り扱う場合には危険物取り扱い者の立会が必要とされている。多量の危険物は、「理学部危険
物屋内貯蔵所(危険物倉庫)」に貯蔵することが義務づけられている。
化学物質安全データーシート(MSDS)には、その化合物が消防法に規定されている危険物であるか否か
のデーター、危険物であるならその種類と取扱上の注意(火災予防法)、消火方法が記載されている。従って、
化学物質を取り扱う時は、MSDSでその化学物質が危険物であるか調べ、その化学物質が危険物であると
きは、その性質、取扱上の注意、消火方法等を必ず調べてから実験を始めること。 また、危険物は前述の
通りその性質等から第一類から第六類の危険物に分類される。類の異なる危険物を混合混触させると、ただ
ちに発火するものや、発熱後しばらくして発火するもの、あるいは混合したものに熱・衝撃を与えることによっ
て発火・爆発を生じるものなどがある。そこで、危険物を保管する場合にはむやみに混在させて保管しては
いけない。表4に、混在させて保管してはいけない危険物と混在させて保管してもよい危険物の組み合わせ
を示してある。この表に従って、危険物を保管しなければならない。使用後も危険物を保管庫等に戻す時は
この表に従ったもとあった場所に戻さなければならない。
MSDSホームページ: http://www.j-shiyaku.or.jp/home/msds/
表4.危険物の混在貯蔵(保管)の可否
第一類
第一類
第二類
第三類
第四類
第五類
第六類
×
×
×
×
○
×
○
○
×
○
×
×
○
×
第二類
×
第三類
×
×
第四類
×
○
○
第五類
×
○
×
○
○
×
×
×
第六類
×
×
×:混在貯蔵(保管)を禁止する組み合わせ。 ○: 混在貯蔵(保管)
にさしつかえない組み合わせ。
2)有機化学系実験における特定化学物質の取り扱い
安衛法の特定化学物質取扱規則によると、安衛法に規定される特定化学物質を取扱う場合は、健康障害防
止のために、規則に則った取扱場所、取扱方法で取扱わなければならない。化学物質を取り扱う時は、MSDS
でその化学物質が特定化学物質であるか調べ、その化学物質が特定化学物質であるときは、その性質、取扱
場所、取扱上の注意等を必ず調べてから実験を始めること。
MSDSホームページ: http://www.j-shiyaku.or.jp/home/msds/
3)有機化学系実験における有機溶剤の取り扱い
安衛法の有機溶剤取扱規則によると、安衛法に規定される有機溶剤を取扱う場合は、健康障害防止のため
に、規則に則った量を規則に則った取扱場所、取扱方法で取扱わなければならない。化学物質を取り扱う時は、
MSDSでその化学物質が安衛法で規定されている有機溶剤であるか調べ、その化学物質が規定されている
有機溶剤であるときは、その性質、取扱量、取扱場所、取扱上の注意等を必ず調べてから実験を始めること。
MSDSホームページ: http://www.j-shiyaku.or.jp/home/msds/
4)有機化学系実験における毒物・劇物の取り扱い
毒物及び劇物取締法によると、毒物・劇物の取扱には専任の「毒物劇物取扱責任者」を置き、毒物・劇物によ
る保健衛生上の危害の防止に当たらせなければならない。従って、毒物・劇物を取扱う時は、「毒物劇物取扱
責任者」の指示に従って取り扱わなければならない。毒物・劇物を収納した容器にはその旨を記載することが
義務づけられている。化学物質を取り扱う時は、MSDSでその化学物質が毒物・劇物であるか調べ、その化学
物質が毒物・劇物であるときは、その性質、取扱場所、取扱上の注意等を必ず調べ、「毒物劇物取扱責任者」
の指示に従って取り扱わなければならない。
MSDSホームページ: http://www.j-shiyaku.or.jp/home/msds/
5)有機化学系実験における廃液処理
実験の反応廃液や化学薬品の廃液は流し等に放出せずに、廃液処理センター配布の所定の廃液容器に入
れて回収・処理してもらう。反応溶液中に有機物と重金属等を含む廃液は、有機溶媒に可溶な有機物、水に可
溶な無機物および不溶物に分けてから、それぞれ廃液容器中に回収する。前述のように化学薬品には混合す
ると発火・爆発するものが数多くあるので、各化学薬品の性質を熟知してから、細心の注意を払って、廃液処
理作業を行う。
ア)赤色容器に回収する廃液・・・危険物第四類の第一石油類、アルコール類、第二石油類、第三石油類、第
四石油類、動植物油類などの可燃性液体廃液
イ)白色容器に回収する廃液・・・ハロゲン化物(四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1、2-ジクロロエタ
ン等)などの難燃性液体廃液、水を多量に含む アルコール廃液
ウ)黄色容器に回収する廃液・・・クロム、マンガンなど重金属を含む水溶性廃液
エ)青色容器に回収する廃液・・・シアン系廃液
その他の廃液については廃液処理センターに問い合わせてから、指定された容器に回収する。
第3節.有機化学実験安全ガイドラインの施行、確認
1. 化学系専門教育科目の有機化学実験 ・ の安全ガイドラインは平成16年 4 月1日より施行する。
2. 本安全ガイドラインに基づいた安全教育を受講したものは、受講確認書に署名すること。
安全教育受講確認書
理学部海洋自然科学科
化学系主任
私こと は専門教育科目、海化353「有機化学実験Ⅰ」ならびに海化354「有機化学実験Ⅱ」の
実験を実習するにあたって、事前に「化学系専門教育科目の化学実験における安全ガイドライン」に沿った安全教育
を受講しました。この「化学実験における安全ガイドライン」を遵守して、実験を行ないます。
1.
本安全
ガイドラインに
平成 年 月 日
基づい
氏名 印
受講し
た安全教育を
たもので、受
講確認書に署名し、提出した受講生には名札を配布する。安全教育を受講した学生であるか確認でき
るように実験中は必ず名札をつけること。
有機化学実験Ⅰ・Ⅱ 受講生
学籍番号 073300 T 氏名 琉球太郎 安全教育受講済、MSDS 作製済
MSDS の例
化学物質安全データシート
アセトフェノン
【火災時の措置】
Acetophenone
消火剤
Methyl phenyl ketone
水噴霧。二酸化炭素、粉末または泡消火剤。
【組成及び成分情報】
消火時における特殊な措置および注意事項
成分情報
皮膚と眼への付着を防止するため、自給式呼吸
アセトフェノン、≧98%
器および保護衣を着用する。
化学式又は構造式
異常な火災および爆発の危険性
◇分子式…CH3COC6H5
可燃性の液体である。
官報告示整理番号
【漏出時の措置】
◇化審法…(3)-1231
1. 汚染場所から退避する。
CAS No.
2. 自給式呼吸器、ゴム長靴および厚手のゴム
98-86-2
手袋を着用する。
EC No.
3. 砂またはバーミキュライトに吸着させ、処理
202-708-7
用の密閉容器に保管する。
4. 換気を行い、回収後に漏出した場所を完全
に洗浄する。
【危険有害性の要約】
【取扱い及び保管上の注意】
1. 有害である。
取扱い
2. 飲み込んだ場合、有害である。
暴露防止及び保護措置を参照。
3. 皮膚を刺激する。
貯蔵
4. 眼に入った場合、重大な損傷を与える危
1. 厳重に密閉して保管する。
険がある。
2. 熱源、裸火から離して保管する。
5. 可燃性である。
3. 乾燥した冷所に貯蔵する。
危険性 ・ 危険度を 0∼4 の 5 段階で表示
(NFPA)
【暴露防止及び保護措置】
火災 2(危険)
◇安全管理上の留意事項…
人体 2(危険)
1. 蒸気を吸入しない。
反応 0(危険無)
2. 眼、皮膚および衣服への接触を避ける。
有害性
3. 長時間または反復の暴露を避ける。
有害性に関する追加情報は有害性情報の
4. 全身用シャワーおよび洗眼器を備える。
項目を参照。
5. 自動排気装置を備える。
【応急措置】
6. NIOSH(US)または CEN(EU)などの適切な政
1. 飲み込んだ場合、意識のある時は水で
府機関の規格で試験され、認められた呼吸用保
口をすすぐ。医師の診察を受ける。
護具および部品を使用する。リスクアセスメント
2. 吸入した場合、空気が新鮮な場所へ移
によりろ過式呼吸用保護具が適切であると示さ
す。呼吸が困難になった場合、医師の診察
れている場所では、工学的制御のバックアップ
を受ける。
として、多目的直結式(US)または AXBEK 型
3. 皮膚に付着した場合、直ちに石鹸と大量
(EN14387)呼吸用保護具カートリッジ付き全面
の水で洗う。
形呼吸用保護具を使用する。呼吸用保護具が
4. 眼に入った場合、少なくとも 15 分間大量 唯一の保護手段である場合、全面形送気マスク
の水で洗い流す。指でまぶたを開いて確実
を使用する。
に十分洗い流す。医師の診察を受ける。
7. 化学薬品耐久性手袋を着用する。
8. 安全ゴーグルを着用する。
9. 取り扱い後に完全に洗浄する。
許容濃度
ACGIH(2004) TWA 10ppm
MSDS の例(アセトフェノン つづき)
化学物質安全データシート
【物理的及び化学的性質】
【有害性情報】
外観等
急性毒性
無色透明の液体
1. 皮膚に触れた場合、皮膚の炎症を起こす。
沸点
2. 皮膚から吸入されたとき、有害となる可能性
83∼85 ℃(11mmHg)
がある。
融点
3. 眼に入った場合、重度の炎症を起こす。
19 ℃
4. 吸入したとき、有害となる可能性がある。
蒸気圧
5. 粘膜および上気道を刺激する可能性があ
1 mmHg(15℃)
る。
蒸気密度
6. 飲み込んだとき、有害である。
4.1 g/L
7. 化学的、物理的および毒性学的性質の研究
密度
は不十分と考えられる。
1.027 g/cm3
RTECS# AM5250000
含水量
毒性データ
<0.3 %
経口 ラット LD50 815 mg/kg
分配係数
経口 マウス LD50 740 mg/kg
Log Kow:16
腹腔内 マウス LD50 200 mg/kg
引火点
皮膚 ウサギ LD50 15900 μl/kg
76 ℃(クローズドカップ法)
皮膚 モルモット LD50 >20 ml/kg
爆発限界
経口 哺乳類 LD50 2700 mg/kg
下限:1.4 %
吸入 哺乳類 LC50 1200 mg/m3
上限:5.2 %
刺激性データ
発火温度
皮膚 ウサギ 10mg 24H:刺激性試験(開放系)
570 ℃
皮膚 ウサギ 515mg:刺激性試験(開放系)
屈折率
眼 ウサギ 0.75mg:重度の刺激性
1.534
変異原性
ハムスター 600mg/L(肺、細胞遺伝分析試験)
【安定性及び反応性】
【適用法令】
◇安定性…
◇消防法…
通常の取り扱い条件では安定。
危険物第 4 類 第 3 石油類
◇避けるべき物質…
◇特定有害廃棄物輸出入規制法…
強酸化剤、強塩基、強還元剤
廃棄物の有害成分・法第 2 条第 1 項第 1 号イに
◇危険有害な分解生成物…
規定するもの(平 5 三省告示 2 号)(廃棄物、0.1
一酸化炭素、二酸化炭素
重量%以上)
◇有害な重合化…
◇外国為替及び外国貿易法…
起こらないと思われる。
輸出貿易管理令別表第ニ(輸出の承認)(0.1 重
【環境影響情報】
量%以上(廃棄物))
適当なデータが見あたらない。
輸入貿易管理令第 4 条第 1 項第 2 号(2 号承
【廃棄上の注意】
認)(0.1 重量%以上(廃棄物))
1. 専門の廃棄物処理業者に処理を依頼する。
◇労働安全衛生法…
2. 環境保護に関する地域の法的規則に従い、
法 57-2(令 18-2)名称等を通知すべき有害物
処分する。
No. 16
【輸送上の注意】
国連分類及び国連番号
3334 クラス 9
危険物を取り扱うための国家資格
①
−危険物取扱者(甲種)−
資格の内容
国家資格。化学実験で使用する試薬の多くは危険物に分類される。消防法では、危険物
の取扱は危険物取扱者免状を取得した危険物取扱者でなければ行ってはならず、それ以
外の者が取り扱う場合には、危険物取扱者の立ち会いが必要とされている。就職先で有利
な仕事に就くことができる。特に危険物を使う職場では、必需品。
② 試験・申し込みの主な日程
年2回(前期 受付:5月頃、試験日 6月頃;後期 受付:10 月頃,試験日 11 月頃)、受験
料:受験料:5,000 円
③ 試験地:沖縄他、全国各地。
申し込み先・問い合わせ先:財団法人 消防試験研究センター
http://www.shoubo-shiken.or.jp/
④ 関連授業科目:化学全般
第6章. 実験機器(装置)使用時の安全ガイドラ
イン
ウォーターバス
バスに軟水を八分目くらい入れ、コンセントプラグをコンセントに差し込む。温度設定ダイヤルをまわして、希
望温度に合わせる。
注意:空炊きに注意する。また、温度設定ダイヤルを過信してはいけない。設定温度を超えてしまうことが多々
あり、中には温度暴走する場合もある。そこで、ウォーターバスを使うときは、必ず湯浴中に 100℃の温度計を
差して、温度を監視する。使用後は、必ずコンセントプラグをコンセントから抜いておく。
電熱器(電熱ヒータ)
周りに燃えやすいものがないか、近くに引火性のある有機溶媒などがないか確かめる。可燃物があるときは
取り除く。ニクロム線の上にセラミック付き金網が載せてある場合は、その金網を取る。実験で使用する電熱器
は、1200 W(ワット)用で、内側と外側に独立して 600 W のニクロム線が巻かれている。スイッチには切、内 300
W、外 300 W および 600 W と文字および数字がふられている。スイッチが切に合わせられていることを確認し
てから、コンセントプラグをコンセントに差し込む。次に、スイッチを 600 W に合わせ、内側と外側のニクロム線
が発熱し、それぞれが切れていないか確認する。いったんスイッチを切り、セラミック付き金網を載せて、さらに
その上に被加熱体を載せて希望のワット数にスイッチを合わせて、加熱を行う。加熱中は、その場から離れな
い。実験台には誰もいないのに、電熱器だけニクロム線が真っ赤についているというようなことは絶対にしない。
最低限、電熱器を見張る人を一人おいておく。加熱が終了したら、スイッチを切に戻し、コンセントプラグを抜く。
加熱終了直後は、まだ電熱器は熱いので、見張りの人は、触らない、触らせないように注意する。
乾燥機
コンセントプラグをコンセントに差し込む。スイッチを入れる。液晶パネルに設定温度が表示されるので、希望
温度にセットする。温度暴走をしないように、必ず、上限温度(リミッター)をセットしておく。乾燥が終了したら、
スイッチを切って、コンセントプラグを抜く。
法的に経営者等に化学技術を指導できる資格 −技術士・技術士補−
① 資格内容
国家資格。技術士は、法廷の登録を受け技術士の名称を用いて、科学技術に関する高等の専
門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価またはこれらに
関する指導の業務を行う。また、技術士補は、技術士を補助する。
② 試験の日程
第一次試験:8月頃。
第二次試験(筆記試験):10 月頃。第二次試験(口頭試験):筆記試験合格者に対して通知する。
③ 試験地:第一次試験および第二次試験の筆記試験は沖縄県を含む全国 12 都道府県第二次意見の
口頭試験は東京。
④ 問い合わせ先
日本技術士会 技術士試験センター。
http://www.engineer.or.jp/ondex.html
第7章. 島嶼の環境保全
公害問題が深刻化してきたことによって、「化学物質」イコール「公害の基」あるいは「悪者」という悪評のレッ
テルを貼られ、化学が目の敵にされてきています。化学に携わるものにとってこれほど悲しいことはありません。
化学技術がこれまでに社会に果てしてきた大きな役割、すなわち化学物質が現代社会のような「便利な世の
中」に貢献してきた役割が片隅に追いやられ、化学物質が悪者にされてきていることだけがクローズアップされ
るにはそれだけ理由があることと思います。その理由は、環境保全をないがしろにして便利な化学物質の生産
を優先してきたことに外にありません。この章では、これから化学技術をさらに発展させていく化学系の皆さん
が、歴史上の同じ過ちを犯さないで技術開発を行える化学者となり、さらに化学物質は悪者ではありませんと
胸を張って社会に説明できる人間へと成長するために、化学物質が悪評のレッテルを貼られるに至った化学
物質と公害についての歴史と琉球大学が取り組んでいる化学物質と島嶼の環境保全について紹介します。
化学物質と法律:「人の安全・健康」と「環境」を守る法律の制定と歴史
ここでは化学物質や環境保全と法律について考えていきます。化学と法律(?)と思われる方が多いかもしれ
ませんが、化学物質や環境に関係する法律は意外に多くあります。では、日本の法律の中で、化学物質や環
境に関連した法律とは具体的にどのようなものがあるでしょう。次の表には主な法律の制定年とその頃の社会
状況をまとめてみました。すると、法律の制定にはその時代背景が深く関わっていることがわかります。
第二次世界大戦以前、化学物質や環境に関係する法律としては、地域ごとで制定された条例等はいくつかあ
りましたが、国が制定した法律では毒物劇物営業取締規則などが目につく程度です。大戦終了後に現在のよう
な法制度の整備が進んできました。法整備のなされ方については時代背景によって特徴がありますので段階
的にみていきましょう。まず、第二次世界大戦終了直後(1948 年∼1950 年代)には、消防法や毒物劇物取締法、
高圧ガス保安法等のように化学物質の性質や取り扱い、管理の観点から「人の安全・健康」に関する法律が主
に制定されました。その後、高度経済成長期(1955 年∼1970 年代)になると、急激な経済発展とともに拡大した
公害問題を反映して、水質汚濁防止法や大気汚染防止法などの「生活環境の保全」に関する法律が制定され
ています。そして 1980 年代以降から現在で
<化学物質や環境に関わる主な法律の制定年とその時代の社会の様子>
年
法
律
1890(明 23)
1912(明 45)
日本社会の様子と国際的な条約・決議
足尾鉱毒事件(日本)
[毒物劇物営業取締規則:毒物劇物取締
法の前身]
1945(昭 20)
第 2 次世界大戦終了
1946(昭 21)
日本国憲法
1948(昭 23)
消防法
1950(昭 25)
毒物劇物取締法
1951(昭 26)
高圧ガス保安法
帝銀事件:毒物劇物取締法へのきっかけ(日本)
1955(昭 30)
イタイイタイ病を病名として初めて報じた(日本)
1956(昭 31)
熊本水俣病公式発見(日本)
1957(昭 32)
放射線障害防止法
1958(昭 33)
[水質保全法、工場排水規制法
浦安事件:水質二法制定のきっかけ(日本)
(水質二法):水質汚濁防止法の前身]
1961(昭 36)
四日市ぜんそく多発、四大公害事件問題化:、水俣病、新
潟水俣病、イタイイタイ病(日本)
1962(昭 37)
[ばい煙規制法:大気汚染防止法の前身]
1967(昭 42)
[公害対策基本法:環境基本法の前身]
1968(昭 43)
大気汚染防止法
カネミ油症事件:化学物質審査規則法制定のきっかけ(日
本)
1970(昭 45)
水質汚濁防止法、廃棄物処理法 ほか
第 64 回臨時国会「公害国会」14 法案成立(日本)
1971(昭 46)
悪臭防止法
環境庁設置(日本)
1972(昭 47)
労働安全衛生法
1973(昭 48)
化学物質審査規制法
1974(昭 49)
経済協力開発機構(OECD) 汚染者負担原則実施勧告、環
境政策宣言、越境汚染原則勧告
1984(昭 59)
湖沼水質保全特別措置法
1985(昭 60)
オゾン層保護ウイーン条約(国際)
1986(昭 61)
ソ連 チェルノブイリ原発事故
1992(平 4)
環境と開発に関するリオ宣言 アジェンダ 21 : PRTR の重要
性が国際的に認められる(国際)
1993(平 5)
環境基本法
1995(平 7)
化学兵器の禁止及び特別物質の規制など
に関する法律
化学兵器禁止条約(国際)
に関する法律
1996(平 8)
OECD PRTR 導入勧告(国際)
1997(平 9)
京都議定書(国際)
1998(平 10)
地球温暖化対策法
1999(平 11)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR 法)
は、生活環境や日本国内にとどまらず地球規模の環境問題や国際条約に対応して、環境基本法や地球温暖
化対策法、化学物質排出把握管理促進法(PRTR 法)といった「地球の環境保全」に関する法制度が整備されて
きました。
私たちが琉球大学で行っている化学実験と法律について考えてみましょう。私たちが実験室で化学薬品や装
置を適切に取り扱って実験を行うということは、意識していないかもしれませんが、消防法や毒物劇物取締法、
高圧ガス保安法などに従っていることであり、自分自身や周りの人たちの「安全や健康」を守っていることにな
ります。また、実験によって生じた廃液を下水へ流さないようにすることは、下水道法や水質汚濁防止法などで
定められた環境基準の遵守によって西原町や近隣市町村の「生活環境の保全」やひいては「沖縄の環境の保
全」にも努めていることになります。
沖縄県はたくさんの島々からなる独特の島嶼環境を持っています。環境保全は地域特性に応じて対応する
必要があるので、沖縄県でも「沖縄県赤土等流出防止条例」という他府県にはみられない条例を制定して環境
保全に努めていることも付け加えておきましょう。
化学実験は安全や健康、環境保全と密接に関わっているのです。私たち自身の「安全と健康」はもちろんの
こと、私たちの生活・地球環境である「島嶼環境の保全」についてもこれを機会に考えていきましょう。
[参考図書、ホームページなど] ・交告尚史他、環境法入門、有斐閣アルマ(2005).
・富井利安 編、レクチャー環境法、法律文化社(2006).
・北村喜宣、プレップ環境法、弘文堂(平成 18 年).
・神田文人 他編、戦後史年表 1945∼2005、小学館(2005).
・厚生省医薬安全局毒物劇物研究会 編、改訂新版 毒物劇物取扱の手引、時事通信社(1999).
・法令データ提供システム:http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi
・環境省ホームページ:http://www.env.go.jp/
・経済産業省ホームページ:http://www.meti.go.jp/
・厚生労働省ホームページ:http://www.mhlw.go.jp/
・沖縄県法規集:http://www.pref.okinawa.jp/reiki/reiki.html
「環境基本法」って知っていますか?
公害と公害対策基本法そして環境基本法へ・公害とは事業活動、その他の人の活動に伴って生ず
る相当範囲にわたる大気汚染、水質汚濁(水質以外の水の状態または水底の底質悪化を含む)、土
壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下および悪臭によって、人の健康または生活環境に関わる被害が
生ずること(典型7公害と言われる)である。そもそも、公害問題は、すでに明治の中頃からあり、その
代表例が足尾銅山の鉱毒による水質汚濁である。昭和に入り終戦後、重化学工業の進展や人口の
都市集中が進み、これに伴い、汚水、ばい煙、騒音等を問題視するようになってきた。昭和 30 年代
には熊本県の水俣病、愛知県の四日市のぜんそく疾患が発生し、個々の公害を規制する法律が制
定されてきました。昭和 40 年代に入ると、公害は全国規模にまで広がり、公害発生源を規制するこ
とばかりだけでなく、計画的・総合的な対策の推進を図る必要性が認識され、昭和 42 年に「公害対
策基本法」が制定されました。しかしながら、産業および都市化の進展に伴う公害現象はなかなか解
消されず、昭和 45 年に「公害対策基本法の改正」をはじめ 14 の公害関連法の改正および整備がさ
れました。さらに、これに続き、昭和 46 年には、「特定工場における公害防止組織の整備に関する法
律」、昭和 48 年には「瀬戸内海環境保全臨時措置法」、昭和 53 年には「瀬戸内海環境保全臨時措
置法と水質汚濁防止法のそれぞれの一部を改正する法律」、昭和 59 年には、富栄養化、有機汚染
等水質汚濁の著しい湖沼の浄化を目的とした「湖沼水質保全特別措置法」が、それぞれ制定されま
した。近年になり、地球温暖化、オゾン層保護等の地球環境問題の高まりに対応し、気候変動枠組
条約、生物多様性条約に地球サミットで署名を行うなど、地球環境の保全に取り組んでいく必要が出
てきました。そこで、環境の保全の基本理念とこれに基づく基本的施策の総合的枠組みを定めるも
のとして、従来の公害対策基本法に代って、新しい「環境基本法」が平成5年に制定されました。すな
わち、昭和の時代までは公害などの環境問題は、個々の国で法の制定を行うなど地域規模の取り組
みとして環境保全を行ってきていましたが、平成に入ってからは、地球規模の取り組みとして環境保
全を行なっていきましょうということです。従って、「地球規模の環境保全に対する取り組みで、国に
課せられた責任は重大であり、さらに、国民一人一人、たぶん全世界の人一人一人にも責任が課せ
られていますよ」ということになります。皆さん一人一人にも地球環境を保全する責任がありますよ。
琉球大学水質汚濁防止に関する法の番人である「
「 琉 球 大学環 境 安 全 セン タ ー 」 って知っています
か?
琉球大学環境安全センターは、実験廃液の処理のみを行っている施設と思っている人も多いかも
しれません。事実、実験廃液の処理も行っていますが、実は大切な責務を負っている施設です。同
センターは、琉球大学から排出される排水の水質調査を行い、琉球大学が水質汚濁防止法に抵触
していないか法の番人の役割をしています。琉球大学千原事業所(理学部があるキャンパス)のす
べての排水は、宜野湾市の下水道に流させてもらっています。もちろん、宜野湾市と琉球大学との間
で排水に関する基準項目を盛り込んだ水質汚濁防止協定を締結してのことであります。したがって、
排水基準に合っていない排水を間違えて流すと、宜野湾市から下水道へ通じる下水バルブを閉めら
れて、琉球大学の排水を流す事ができなくなります。この事は何を意味するか。千原のキャンパス内
では、手も洗えなければトイレにも行けない、大学内はパニックに陥り、大学としての機能は正常に
働かなくなります。不注意あるいは「アー、これくらいの量なら、たいした事はないだろう」と軽い気持
ちで流しに試薬を捨てると、大学全体の機能をストップさせてしまうという大変な事態を招いてしまい
ます。環境安全センターは、このような事態に陥らないように、常に、排水の番人をしています。実験
者も、日頃から実験を行う際は、試薬の取り扱いや実験廃液の取り扱いには常に注意するようにしな
ければなりません。また、法の番人である環境安全センターから排水に関して指摘あるいは指導さ
れた場合は、その事実を真摯に受け止め、早急に対策を講じなければなりません。そのままにして
おくと大変な事になりますよ。
琉球大学の教職員ならびに学生の生活環境を保全してくれる水質汚濁防止法と
排水基準
水質汚濁防止法は、
① 琉球大学のような事業場や工場から公共用水域に排出される水の排出および地下に浸透する
水の浸透を規制するとともに、生活排水対策の実施を推進することによって公共用水域および地
下水の水質汚濁の防止を図り、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全すること
② 琉球大学のような事業場や工場から排出される汚水、廃液に関して人の健康に係る被害が生じ
た場合における事業者の損害賠償責任について定めることにより、被害者の保護を図ること
をそれぞれ目的として、制定されている。これを身近な問題に置き換えると、つまり、大学の講義の
化学実験で受講者が勝手に試薬等を捨ててそのことにより西原町や宜野湾の住民が健康被害を受
けたときは、琉球大学の学長は損害賠償責任を問われるということである。もちろん賠償責任のうち
の金銭的な賠償金の支払いは、試薬を捨てた受講生に負担がかかってくることをよく覚えておくこと
です。
排水基準は、琉球大学等のような事業場から出る排水の規制を行う際に、排出水の汚染状態につ
いて汚染指標毎に定められた許容限度を示したものであり、すべての公共用水域を対象として環境
省令で定められたものである。つまり、排水基準で定められた濃度以上の試薬(汚染物質)を含んだ
排出水を公共用水域に流すと、人の健康に係る被害を生じさせるということである。排水基準には、
一律に適用される基準(一律基準)と、都道府県知事が水域を指定して条例で定める上乗せ基準と
がある。琉球大学では、一律基準より、より厳しい基準を設けて、汚染物質が公共用水域に流出し
ないように努力している。(関連項→「琉球大学水質汚濁防止に関する法の番人である『
『琉球大学
環境安全センター』って知っていますか?」参照)。
表 1 および 2 に、琉球大学から宜野湾市の下水道に流せる排水についての検査項目とその規制
値を示してあります。この他に、クロロホルム(0.06 mg/ℓ )、キシレン(0.4 mg/ℓ )、ホルムアルデヒド
も監視項目としてあります。これらの規制値よりも高い濃度の有害物質が検出されると、琉球大学で
の教育および研究は成り立たなくなりますよ。
表 1. 琉球大学から宜野湾市の下水道に流せる排水の健康項目に係る排水基準
有 害 物 質 の 種 類
許容限度 mg/・
カドミウムおよびその化合物
0.1
シアン化合物
1
有機リン化合物 (パラチオン、メチルパラチオン、メチルジジメトン、および EPN に限る。)
1
鉛およびその化合物
0.1
六価クロム化合物
0.5
ヒ素およびその化合物
0.1
水銀とその化合物
0.005
アルキル水銀化合物
検出されないこと
PCB
0.003
ジクロロメタン
0.2
四塩化炭素
0.02
1,2-ジクロロエタン
0.04
1,1-ジクロロエチレン
0.2
シス-1,2-ジクロロエチレン
0.4
1,1,1-トリクロロエタン
3
1,1,2-トリクロロエタン
0.06
トリクロロエチレン
0.3
テトラクロロエチレン
0.1
1,3-ジクロロプロペン
0.02
チウラム
0.06
シマジン
0.03
チオベンカルブ
0.2
ベンゼン
セレン
0.1
0.1
表 2. 琉球大学から宜野湾市の下水道に流せる排水の生活環境項目に係る排水基準
項
目
許容限度
温度
45
水素イオン濃度
5∼9
℃
生物化学的酸素要求量(BOD)
160 (日間平均 120)
mg/・
化学的酸素要求量(BOD)
160 (日間平均 120)
mg/・
浮遊物質量
200 (日間平均 150)
mg/・
ノルマルヘキサン抽出物含有量(鉱物油含有量)
5
mg/・
ノルマルヘキサン抽出物含有量(動植物植物油脂類含有量)
30
mg/・
フェノール類
5
mg/・
銅およびその化合物
3
mg/・
亜鉛およびその化合物
5
mg/・
鉄およびその化合物(溶解性)
10
mg/・
マンガンおよびその化合物(溶解性)
10
mg/・
クロムおよびその化合物
2
mg/・
220 未満
mg/・
120 (日間平均 60)
mg/・
16 (日間平均 8)
mg/・
ヨウ素消費量
窒素
燐
浄水場での有毒な臭素酸の発生とその対策
Br Br -
沖縄県では、主に河川水、湧き水、ダムの漂水を取水し、浄化して水道水とし
Br -
て使っている。周りが海に囲まれている沖縄県では、河川水や湧き水に海水由来
の臭化物イオンが、含まれている。浄水場でこれらの水(原水と言う)を取水し
ポンプ
て浄化していくと、浄化工程で加える次亜塩素酸ナトリウムと原水中に含まれる
臭化物イオンが沈澱池で太陽光(UV)下で反応し、有毒な臭素酸を生成してしま
う。このまま各家庭に水が供給される
と、図のように健康を害することにつなが
る。 そこで、沈澱池を遮光ネットで覆う
などして、有毒な臭素酸を発生させ
[Al2(OH)nCl6-n]m
Al2(SO4)3・nH2O
NaClO
Br -
NaClO
混和池
ないようにしている。
Br -
Br -
Br -
Br -
NaClO NaClO
フロック
形成池
UV
UV UV
UV
UV
Br BrO3- BrO
BrO3
3UV
沈澱池
BrO3- BrO3NaClO
ろ過池
BrO3-
BrO3- BrO3浄水池
BrO3-
『用水と廃水』 49 巻 2 号 2007 年
BrO3配水池
BrO3-
BrO3-
第8章. 「ひやっ!」とした事象と安全指針
琉球大学での事例
種類
No.
実験
原
怪
部
テー
因
我
位
マ
事故のあった
事故内容
(分類用)
事故内容
事故後処置
大学・高専でと
られた安全対
策
実験台の上で
メスシリンダー
を倒し、割っ
た。割れたメス
1
ガラ
刺
ス
傷
足
メスシリン
シリンダーが
ダー
実験台を転が
って、割った学
生の足の上に
落ち、刺さっ
水で洗浄後、
保健管理セン
ターで処置を
実験時は靴の
受けた。神経
着用を徹底し
をきるような大
た。
けがにはいた
らなかった。
た。
三角フラスコに
入った沸騰し
た水溶液を吸
携
2
帯
電
なし
三角フラス
コ
話
引濾過中に、
溶液が冷えて
携帯電話がな
から、回収し
り、驚いて三角
た。
フラスコを落と
実験時には携
帯電話を所持
しないようにさ
らに徹底した。
し、熱湯をばら
まいた。
無水酢酸が入
った試験管を
撹拌中に、実
不
3
注
意
験台の角にぶ
なし
試験管
つけて破損し、
無水酢酸の刺
激臭が実験室
に充満し、実験
進行に支障が
水を含んだぞ
うきんで拭き取
り、流水で洗浄
した。
実験中は実験
に集中するよう
に徹底した。
でた。
粗結晶を再結
晶するために
電熱ヒーター
三角フラスコに のスイッチを切
不
4
注
なし
意
粗結晶と溶媒
った。電熱ヒー
を加えて電熱
ターの上に、セ
三角フラス
ヒーターで加
ラミック付き金
コ
熱中に突然三
網をおいてい
角フラスコが
たので大事に
割れて、粗結
至らなかった。
晶がこげて、実
この金網を交
験室中に異臭
換した。
が漂った。
他の機関などでの事例
以下の URL をクリック。
・http://www.akebia.jim.tottori-u.ac.jp/~www_tec/doc/safety.xls
あるいは
・http://www.akebia.jim.tottori-u.ac.jp/~www_tec/
活動 → 化学系実験中の事故事例集と安全指針
実験に使用す
る前に、ガラス
器具にひび等
が入っていな
いか確認する
ように徹底し
た。
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学生のための化学実験安全ガイド
実験を安全に行うために
実験を安全に行うために 続 基本操作・基本測定編
化学物質に関する国内法令・制度と対象化学物質のデータベース
毒物および劇物取締り法(毒劇法)と対象物質データベース(日本医薬品食品衛生研究所)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR制度とMSDS制度)について
PRTR制度について
PRTR制度対象物質データベース
PRTR対象化学物質情報
MSDS検索(日本試薬協会)
MSDSライブラリー(日本化学工業協会)
労働安全衛生法について
安衛法物質検索(安全衛生労働センター)
化学物質の危険性に関するデータベース
化学物質ハザードデータ集(化学物質評価研究機構)
国際化学物質安全性カード(日本医薬品食品衛生研究所)
化学物質の一般的データベース
日本化学物質辞書Web(構造式)
NIST Chemistry WebBook(物性、スペクトル)
ChemExper(2D,3D構造式、物性、スペクトル、MSDS)