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常用参照標準物質:JSCC 常用酵素のロット更新概要
Report of JCCLS Certification Committee for Reference Materials and
Committee for Certification Assessment in 2015 Outline of New Lot of
Reference Standard for Enzyme of JSCC Method
高木
康(JCCLS 認証委員会委員長、昭和大学医学部教授)
Yasushi Takagi (Chairperson of JCCLS Certification Committee for
Reference Materials, Professor, Showa University School of Medicine)
細萱茂実(JCCLS 認証評価委員会委員長、東京工科大学教授)
Shigemi Hosogaya (Chairperson of JCCLS Committee for Certification
Assessment, Professor, Tokyo University of Technology)
1.はじめに
常用参照標準物質:JSCC 常用酵素(JCCLS CRM-001)のロット更新を行い、新ロット
(JCCLS CRM-001c)の設定を行った。設定手順と認証書は国際文書に従い準備した。
2.委員
2.1
認証委員会:高木康(昭和大学)、矢冨裕(東京大学)、濱崎直孝(長崎国際大学)
、川
合陽子(国際医療福祉大学)
2.2
認証評価委員会:細萱茂実(東京工科大学)、大澤進(千葉科学大学)、高津章子(産
総研)
、山舘周恒(日大板橋病院)
、石橋みどり(新東京病院)
、美咲英生(日本臨床化学会)
、
植田成(旭化成ファーマ)
、市原文雄(積水メディカル)
、田中龍彦(シノテスト)
、関口光
夫(千葉科学大学、アドバイザー)
2.3
事務局:加藤英夫、梅田衞、吉川和明
3.経過の概要
3.1
候補品製造の公募
常用参照標準物質:JSCC 常用酵素(JCCLS CRM-001)のロット更新にあたり、候補品
製造の公募を平成 24 年 9 月 18 日に行った。公募内容は前ロット(JCCLS CRM-001b)の
設定条件および規格を継続することとした。ただし、LD 原料についてはヒト赤血球由来か
ら遺伝子組み換え体酵素に切り替えることが前回の認証評価委員会で承認されており、そ
れに従い変更した。
候補品製造の公募日は、前ロットと同様に候補品の製造期間を考慮した。
1
3.2
公募結果
常用参照標準物質:JSCC 常用酵素の候補品製造の応募が旭化成ファーマ㈱からあった。
これにより候補品製造を旭化成ファーマ㈱に依頼した。
3.3
認証値設定試験
認証値設定試験は、前ロットと同様に共同試験方式による手順で進めた。すなわち、1)
共同試験への参加依頼、2)試薬調製依頼、3)試験要綱、測定条件、報告書書式の作成、4)
試料配布、5)データ集計・解析、6)認証評価委員会の開催などである。認証評価委員会
では、データの解析・評価と認証書案等を作成した。作成した認証書案および取扱説明書
案は認証委員会に提出した。
4.認証評価委員会での協議概要
平成 25 年 6 月 11 日に認証評価委員会を開催し、認証値設定試験における測定データの
解析・評価および認証書案と取扱説明書案の作成を行った。本委員会での主な協議の概略
は以下のごとくである。
4.1
認証値の設定手順
・新ロットの認証値と不確かさの設定は、原則として常用基準法で行うことが基本である。
一方、現実的な問題としてロット間の継続性を重視することも重要であり、現ロットと新
ロットについて、常用基準法、自動化法の両者を用い、認証値と不確かさを設定した。
・試薬は用手法/自動化法ともに JSCC/JCCLS 常用基準法に基づく同じ処方を使用し、日本
臨床検査薬協会を通じ、基本的に前ロットと同様に同一項目を同一試薬メーカーに依頼し
たが、GGT のみ関東化学からシノテストに変更した。すなわち、AST/ALT は和光純薬、
CK は関東化学、LD/GGT はシノテスト、AMY/P-AMY/Lipase はロシュ、ALP はカイノス
とした。
・用手法の試験参加施設は、AST/ALT/LD/ALP/GGT/CK が 5 施設、AMY/P-AMY が 3 施
設であり、現ロットと新ロット候補品ともそれぞれ 3 バイアルを 2 重測定した。
・自動化法の試験参加施設は、各項目 18 施設(ただし、P-AMY は 17 施設、Lipase は 16
施設)であり、前ロットでキャリブレーションを行い測定した。また、実測 K 値法は、
LD/CK/ALP/AMY/P-AMY が 5 施設、AST/ALT が 2 施設、GGT が 1 施設で行った。
・認証値の設定は、ISO Guide 35 に基づく認証値設定手順書(Ver.1.8)に準じ、候補品の
均質性の確認を含めて実施した。また、不確かさの算出には、ホームページ掲載の不確か
さの計算ソフト(Ver.5.52)を用いた。
4.2
認証値と不確かさ
・現ロットと新ロット候補品を JSCC/JCCLS 常用基準法(用手法)で測定し総平均値を求
めた。統計学的に外れ値の検討を行った結果、AST/CK/GGT に棄却値が認められたため、
全測定値および外れ値を除いた測定値群の両者の総平均値を検討したが、結果的にはいず
れの検討結果も同様であった。
2
・前ロットの常用参照標準物質の平均値は、常用基準法による安定性を含めた不確かさの
範囲内であり、前ロットの安定性と測定法の精確さが検証されたとみなすことができた。
・一方、用手法は参加施設も少なく不確かさが大きくなってしまうため、ロット間の継続
性維持を考慮し前ロット CRM-001b をキャリブレーターとして用いた自動化法で、新ロッ
ト CRM-001c の値付けとその不確かさを求めることで委員会の承認を得た。
・認証値の設定は常用基準法で行うことが基本であるが、高性能の分光光度計や温度制御
また技術スキルが必要であり実施には困難を伴う。その対策の一つとして、臨床検査用分
光光度計(日立 7012 形)による常用参照標準物質への値付けの試みの検討成績について関
口アドバイザーの報告を受けた。使用試薬が本試験とは別調製であることや、若干の機種
間差の存在など、単純に比較できない要素はあるが、AST/LD/GGT についての貴重な参考
情報が提供された。
・自動化法による新ロット候補品の測定値の平均値は、常用基準法による候補品の測定値
の不確かさの範囲内にあり、この値を前ロットとの継続性を考慮した新ロット候補品の認
証値とした。
・自動化法による測定値の統計学的な棄却検定において、LD/P-AMY に棄却値が認められ
たが、解析結果に殆ど影響を与えなかったため、全測定値を用いて認証値設定を行った。
・自動化法による CRM-001b 打ち返し値で補正した測定値は、補正しない測定値と有意な
差異がなく、キャリブレーションと試料測定の間でサンプリングに伴う影響要因は認めら
れなかったため、補正しない測定値(実測値)で認証値を設定した。
・長期安定性について、JSCC の常用参照標準物質の保存安定性に関する不確かさの評価指
針に基づき、旭化成ファーマ㈱の前々ロット(ERM005)の測定機関と不確かさの成績、
CRM-001b の 54 か月(4.5 年)長期安定性のデータ、観測期間初期での測定値のかたより
の検討データ、また LD 原料変更前後の同等性結果などから、期限 6 年における安定性の
不確かさを求めた。
・認証値は ISO Guide 35 に従い決定し、不確かさの成分は、均質性と実験誤差成分、校正
に用いた標準物質の不確かさ、および安定性を含む総合的な拡張不確かさ(包含係数 k=2)
とし、それぞれの成分ごとの不確かさの大きさをバジェット表(CRM-001c の不確かさ成
分の相対標準不確かさに関するバジェット表)にまとめ示した。
・不確かさの小数点以下の処理法については、GUM の記述およびヨーロッパの認定のガイ
ド(Expression of the Uncertainty of Measurement in Calibration (EA-4/02) European
co-operation for Accreditation (EA), 1999)
、また前ロットからの不確かさの大きさを参考
に、5%以上の影響がある場合に切り上げることを原則とし対応することとした。
・常用参照標準物質:JSCC 常用酵素(JCCLS CRM-001)を用いた測定法の総合的な不確
かさの評価と許容限界について、ユーザーが常用参照標準物質を測定法の評価に使用する
場合の参考として会誌およびホームページに掲載する。
・P-AMY と Lipase の参考値を別掲する。
3
4.3
継続性確認試験
・今回の値付けにおいて、常用参照標準物質の継続性を確認するための追加試験を、日本
臨床検査薬協会を通じて栄研化学、カイノス、関東化学、シノテスト、ロシュ・ダイアグノ
スティックス、和光純薬に、また順天堂大学医学部附属浦安病院に依頼することとした。
・測定結果を 6 月 30 日までに JCCLS 事務局に回収し、CRM-001b と CRM-001c 候補品の
間の継続性に特に問題となる成績がないことを確認した。
5.認証委員会
7 月 12 日開催の認証委員会において、前述の認証評価委員会の報告、認証書および取扱
説明書について確認と承認を行った。また、ラベル、認証書、取扱説明書の印刷、発売、
頒布、ホームページ公表などのスケジュールについて協議した。
最後に、今回のロット更新作業は平成 24-25 年度 JCCLS 認証評価委員会が担当した。ま
た、測定の実施についての試薬などの準備は一般社団法人日本臨床検査薬協会・技術委員
会を通じて依頼した。共同試験に際し、以下のユーザー施設ならびにメーカー施設の協力
を得た。ここに関係者に深く謝意を表します。
旭化成ファーマ㈱、栄研化学㈱、㈱カイノス、関東化学㈱、九州大学病院、慶應義塾大学病院、
(社)検査医学標準物質機構、シスメックス国際試薬㈱、㈱シノテスト、順天堂大学医学部附属浦安
病院、㈱セロテック、千葉大学医学部附属病院、つくば臨床検査教育・研究センター・つくば
i-Laboratory LLP、天理医療大学/天理よろづ相談所病院、日水製薬㈱、東京大学医学部附属病院、
日本大学医学部附属板橋病院、浜松医科大学医学部附属病院、㈱三菱化学メディエンス、山梨大
学医学部附属病院、ロシュ・ダイアグノスティックス㈱、和光純薬工業㈱(以上五十音順)
以 上
4
表
酵素
CRM001cの不確かさ成分の相対標準不確かさに関するバジェット表
平均
実験誤差
均一性
安定性
CRM001b
合成%
合成U/L 拡張(U/L)
AST
160.54
0.24
0.38
0.34
ALT
155.07
0.34
0.38
0.3
LD
396.53
0.06
0.44
0.34
0.88 1.042689 4.134574 8.269148
CK
433.51
0.29
0.35
0.35
1.07 1.214084 5.263176 10.52635
GGT
152.49
0.14
0.33
0.33
1.38 1.463489 2.231674 4.463349
ALP
424.68
0.28
0.43
0.48
1.39 1.557498 6.614382 13.22876
AMY
348.13
0.16
0.30
0.33
1.25 1.336787 4.653757 9.307515
P-AMY
162.20
0.16
0.42
0.33
1.27 1.387011 2.249732 4.499464
LIP
133.93
0.34
0.41
0.67
1.41 1.649454 2.209114 4.418229
酵素
平均
拡張(U/L)
→
認証値
1.12 1.253794 2.012841 4.025683
0.99
不確かさ(k=2)
AST
160.54 4.025683
161
4±
ALT
155.07 3.576843
155
4
LD
396.53 8.269148
397
8
CK
433.51 10.52635
434
10
GGT
152.49 4.463349
152
5
ALP
424.68 13.22876
425
13
AMY
348.13 9.307515
348
9
162.2 4.499464
162
5
133.93 4.418229
134
5
P-AMY
LIP
5
1.1533 1.788422 3.576843