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都市公園における遊具の安全確保に関する指針
(別編:子どもが利用する可能性のある健康器具系施設)
平成26年6月
国
土
交
通
省
目
次
■本書の読み方
ⅰ)「都市公園における遊具の安 全 確保に関する指針
(別編:子どもが利用する可能性のある健康器具系施設)」について
ⅱ)「都 市 公園における遊具の安全確保に関する指針
(別編:子どもが利用する可能性のある健康器具系施設)」の構成について
まえがき
Ⅰ
別編の位置づけ
·············································
1
Ⅱ
対象と適用範囲
·············································
2
1.子どもの遊びにおける危険性と事故
1-1
ハザード
(1)子どもが利用する可能性のある健康器具系施設に
関連するハザード
1-2
·······································
3
子どもが利用する可能性のある健康器具系施設に
関連する事故
···········································
5
2.子どもが利用する可能性のある健康器具系施設の事故と安全確保の
基本的な考え方
2-1
子どもが利用する可能性のある健康器具系施設の安全確保に
関する基本的な考え方
2-2
···································
6
安全確保における公園管理者の役割
(1)公園管理者の役割
·······································
(2)保護者・地域住民との連携
8
······························· 10
3.各段階での安全対策の考え方
3-1
計画・設計段階
(1)健康器具系施設の選定
··································· 11
(2)健康器具系施設の配置及び設置面への配慮
(3)健康器具系施設の構造
3-2
················· 13
··································· 16
製造・施工段階
(1)健康器具系施設の製造
··································· 22
(2)健康器具系施設の施工
··································· 26
3-3
維持管理段階
(1)点検手順に従った確実な安全点検
························· 29
(2)発見されたハザードの適切な処理
························· 35
(3)履歴書の作成と保管等
(4)事故への対応
··································· 37
··········································· 38
(5)事故に関する情報の収集と活用
3-4
利用段階
(1)健康器具系施設の利用状況の把握
(2)安全管理の啓発と指導
用語の解説
··························· 40
························· 42
··································· 43
······················································ 45
■本書の読み方
ⅰ)
「都市公園における遊具の安全確保に関する指針(別編:子どもが利用す
る可能性のある健康器具系施設)」について
これまで、大人を利用対象とした健康や体力の保持増進など健康運動を目的に設
置されている健康器具系施設は、遊具とは対象とする年齢や設置目的、利用形態が
異なることから、
「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」の対象としてい
ませんでした。
しかし、健康器具系施設は、主として大人が利用することを目的とした施設であ
る一方、子どもから見れば遊具と区別の付きにくい健康器具系施設もあり、子ども
が遊びに用いた場合、危険な施設もあります。
また、健康器具系施設は、高齢社会への対応等のため設置数が増加傾向にあるこ
とから、都市公園の安全性を一層高めるためには、公園管理者において必要な安全
措置を講ずることが必要です。
このため国土交通省では、子どもが健康器具系施設を利用する可能性を鑑み、遊
具と健康器具系施設との混在を避けるなど都市公園における子どもが利用する可能
性のある健康器具系施設の安全確保に関する基本的な考え方を示した「都市公園に
おける遊具の安全確保に関する指針(別編:子どもが利用する可能性のある健康器
具系施設)
」を都市公園における遊具の安全確保に関する指針の考え方を踏まえて作
成しました。
ⅱ)
「都市公園における遊具の安全確保に関する指針(別編:子どもが利用す
る可能性のある健康器具系施設)」の構成について
別編の構成については、以下の通りです。
○基本的な考え方(太線四角囲み)
…都市公園における子どもが利用する可能性のある健康器具系施設の安全確
保に関する基本的な考え方を示したものであり、公園管理者に対する国の技
術的助言に相当します。
○解説
…「基本的な考え方」の理解を深め、適切な運用が図られるよう、解説を示し
たものです。
○参考(細線四角囲み)
…「基本的な考え方」及び「解説」の理解を深め、適切な運用が図られるよう
補足的事項を示したものです。
○参考資料(細線四角囲み)
…解説に関連して、数値規準、留意事項及びイラストなど参考となる事項を示
したものです。
なお、別編で用いている略称は、以下の通りです。
・JPFA−SP−S:2014 :遊具の安全に関する規準。一般社団法人日本公園
施設業協会が策定。
(別編では、JPFA-SP-S:2014(2014 年
版)を参考にしました)
まえがき
Ⅰ 別編の位置づけ
別編は、都市公園において、主として大人を利用対象とする健康や体力の保
持増進など健康運動を目的とした建築物以外の工作物(以下「健康器具系施設」
という)のうち、子どもが利用する可能性がある健康器具系施設の安全確保に
関して、公園管理者が配慮すべき事項を示すものである。
(解 説)
1) 都市公園とは、都市公園法(昭和31年法律第79号)第2条に規定され
ている都市公園をいう。
2) 都市公園における公園施設の安全確保については、
都市公園法施行令第7
条に「公園施設は、安全上及び衛生上必要な構造を有するものとしなけれ
ばならない。
」と規定されており、公園管理者が遵守すべき基本的な事項
は示されている。
3) 別編は、都市公園法施行令第7条を踏まえ、都市公園法第31条に規定さ
れている、国による都市公園の行政及び技術に関する助言の一環として、
都市公園に設置する施設のうち、
子どもが利用する可能性のある健康器具
系施設の安全確保に関して、配慮すべき事項を示したものである。
4) 健康器具系施設とは、
主として大人を利用対象とする健康や体力の保持増
進など健康運動を目的とした建築物以外の工作物をいう。
■参考資料(都市公園法第31条)
国土交通大臣は、都道府県及び市町村に対し、都道府県知事は、市町村に対し、都
市公園を保全し、その他都市公園の整備を促進するため都市公園の行政又は技術に関
し必要な勧告、助言又は援助をすることができる。
5) 別編は、都市公園において子どもが利用する可能性のある健康器具系施設
の安全確保について、公園管理者が、健康器具系施設の計画・設計、製造・
施工、維持管理、利用の各段階にわたり、利用者などとともに取り組むべ
き事項を示したものである。これらの業務を外部に委託・請負する場合に
は、受託者・請負者に対し、同様の対応を求めるものとする。
6) なお、別編については、健康器具系施設の利用実態などを踏まえ、適宜見
直しを行うものとする。
1
Ⅱ 対象と適用範囲
別編の対象は、都市公園に設置する健康器具系施設のうち、子どもが利用す
る可能性のある健康器具系施設とする。
ただし、大人のみが利用できる状況で設置されている健康器具系施設につい
ては、別編の対象としない。
別編による安全確保の対象者は、幼児から小学生(おおむね3歳から12歳)
を基準とする。
(解 説)
1) 別編の対象となる施設は、都市公園に設置する健康器具系施設のうち、子
どもが利用する可能性のある健康器具系施設とする。大人のみが利用でき
る状況で設置されている健康器具系施設は、
子どもの安全を確保する必要
がないことから、別編の対象とはしない。
2) 別編による安全確保の対象者は、幼児から小学生(おおむね3歳から12
歳)を基準とする。3歳未満の乳幼児にあっては、保護者による安全確保
が必要であり、都市公園を利用する場合には、常時保護者等とともに利用
することを前提とする。
2
1.子どもの遊びにおける危険性と事故
1-1 ハザード
(1)子どもが利用する可能性のある健康器具系施設に関連するハザード
子どもが利用する可能性のある健康器具系施設に関連するハザードは、事故
につながる危険性あるいは子どもが判断不可能な危険性であり、物的な要因、
人的な要因とに分けることができる。
健康器具系施設の不適切な配置や構造、不十分な維持管理による健康器具系
施設の不良は物的ハザードであり、不適切な行動や利用には不適切な服装や持
ち物は人的ハザードである。
(解 説)
1)ハザードは、遊びが持っている冒険や挑戦といった遊びの価値とは関係の
ないところで事故を発生させるおそれのある危険性である。また、子ども
が予測できず、
どのように対処すれば良いか判断不可能な危険性もハザー
ドである。
2)子どもが利用する可能性のある健康器具系施設に関連するハザードには、
健康器具系施設の構造的な欠陥や故障、
不適切な突起の存在など健康器具
系施設の配置や構造、
維持管理の状態に起因する物的な要因によるものと、
突き飛ばしなどの行為、
絡まりやすい紐のついた衣服の着用など健康器具
系施設の不適切な利用や周辺での行動、
子どもの服装や持ち物などの利用
者に起因する人的な要因によるものがある。
ハザードにある物的な要因と
人的な要因とを整理しておくと、
事故を未然に防止する対策を立てやすい。
3
■参考(ハザードの例)
・物的ハザード…健康器具系施設の構造、施工、維持管理の不備などによるもの
・不適切な配置
動線の交錯、健康器具系施設と遊具の混在、子どもの安全確保に配慮していない健
康器具系施設を子どもが自由に利用できる状況で設置するなど
・健康器具系施設及び設置面の設計、構造の不備
高低差、隙間、突起、設置面の凹凸など
・健康器具系施設の不適切な施工
基礎部分の不適切な露出など
・不十分な維持管理の状態
腐食、摩耗、経年による劣化、ねじなどのゆるみの放置など
・人的ハザード…利用者の不適切な行動や服装などによるもの
・不適切な行動
ふざけて押す、突き飛ばす、動く健康器具系施設に近づくなど
・健康器具系施設の不適切な利用
過度の集中利用、使用中止の措置を講じた健康器具系施設の利用など
・年齢、能力に適合しない健康器具系施設を利用する
幼児が単独で、あるいは保護者に勧められて健康器具系施設を利用するなど
・不適切な服装、持ち物
絡まりやすい紐のついた衣服やマフラー、ヘルメット、ランドセル、サンダル、脱
げやすい靴やヒールのある靴などを着用したまま遊ぶ、携帯電話をネックストラップ
で首から下げたまま遊ぶなど
■参考(ハザードにより引き起こされた事故の例)
○健康器具系施設の不適切な配置に起因する事故の例
・懸垂運動を行う健康器具系施設から飛び降りた際、転んで隣にあった背伸ばし
ベンチで肘を打って、骨折した。
4
1-2 子どもが利用する可能性のある健康器具系施設に関連する事故
子どもが利用する可能性のある健康器具系施設に関する事故には、落下、衝
突、挟み込みなどがあり、打撲、骨折、裂傷などの傷害をもたらすことになる。
事故の状態としては、①生命に危険があるか重度あるいは恒久的な障害をも
たらすもの、②重大であるが恒久的でない傷害をもたらすもの、③軽度の傷害
をもたらすものの3段階に大別することができる。特に、頭部の傷害は重度の
障害につながることがあるので十分な配慮が必要である。
(解 説)
1) 子どもが利用する可能性のある健康器具系施設に関連する事故には、落下、
衝突、挟み込みなど遊具と類似した事故が報告されている。これらの事故
は、物的ハザードと人的ハザードが関わりあって発生することが多く、一
つの要因に限定することは難しい場合が多い。
2)事故の状態は3段階に大別することができ、
頭部の傷害など重度の障害に
つながる事故として、衝突、落下などが多く報告されている。
■参考資料(代表的な事故事例)
○落下の例
・懸垂運動を行う健康器具系施設で遊んでいて着地しようとしたところ、バラン
スを崩し右腕を下にして落下し右腕を骨折した。
〔8歳〕
・平行棒2本に四つんばいになって腕の力だけで移動していたところ、約90c
mの高さから手を滑らせて顎から落下し、顎を数針縫うケガをした。
〔8歳〕
■参考資料(事故の要因となるハザードのレベル)
JPFA−SP−S:2014
ハザードレベル
ハザードレベル
ハザードレベル
ハザードレベル
0:傷害をもたらす物的ハザードがない状態
1:軽度の傷害をもたらすハザードがある状態
2:重大であるが恒久的ではない傷害をもたらすハザードがある状態
3:生命に関わる危険があるか、重度の傷害あるいは恒久的な障害をもたらす
ハザードがある状態
5
2.子どもが利用する可能性のある健康器具系施設の事故と安全確保の基本的な
考え方
2-1 子どもが利用する可能性のある健康器具系施設の安全確保に関する基本
的な考え方
子どもが利用する可能性のある健康器具系施設の安全確保に当たっては、ハ
ザードの除去に努めることを基本とする。公園管理者は、子どもの生命に危険
があるか重度あるいは恒久的な障害をもたらす事故(以下、
「重大な事故」と
いう)につながるおそれのある物的ハザードを中心に除去し、子ども・保護者
等との連携により人的ハザードの除去に努める。
子どもと保護者は、遊びには一定の自己責任が伴うものであることを認識す
る必要があり、保護者は、特に、自己判断が十分でない年齢の子どもの安全な
利用に十分配慮する必要がある。
公園管理者と保護者・地域住民は、連携し、子どもの遊びを見守り、ハザー
ドの発見や事故の発生などに対応することが望まれる。
(解 説)
1) ハザードの取り扱い
①重大な事故につながるおそれのある物的ハザードを中心に除去する。
・都市公園は一定の自己責任のもとに利用する場であるが、
子どもが
安心して利用できるよう、健康器具系施設において重大な事故につ
ながるおそれのある物的ハザードを中心に除去することが必要で
ある。
・物的ハザードについては、計画・設計段階、製造・施工段階、維持
管理段階の各段階において、除去することが必要である。
・健康器具系施設の構造的な欠陥など、
子どもが予測できない危険は
もとより、子どもにとって不適切な隙間や突起があるなど、子ども
が予測しにくい危険も除去することが必要である。また、健康運動
を行う上で必要不可欠な可動部が、子どもの挟み込み事故を誘引す
るなどの可能性がある場合は、その健康器具系施設を子どもが自由
に使えないようにしておくなどの措置が必要である。
・子ども・保護者の危険な行動、服装など利用に関する人的ハザード
については、
子ども・保護者等により除去することを基本としつつ、
健康器具系施設の設計などにおいても、
事故の抑制について配慮す
ることが必要である。
・子ども・保護者の危険な行動や服装などによる影響が著しい場合に
は、掲示などにより注意を喚起することが必要である。
・子どもにとっては、
事故防止のために設置した柵が遊び道具となる
など、再発防止策が別の事故を引き起こす場合もあるため、健康器
6
具系施設の改修に当たっては、改修する部分への配慮だけでなく、
健康器具系施設の新設と同様に、
全体の構造などについて配慮する。
②安全点検の重要性
・子どもが利用する可能性のある健康器具系施設の安全確保におい
て、安全点検により物的ハザードが検出されることから、安全点検
が果たす役割は重要である。
子どもが利用する可能性のある健康器
具系施設の安全確保の考え方に基づいて安全点検を行い、重大な事
故につながるおそれがあるハザードを発見した場合には、適切な措
置を講ずる。
・設置から長期間経過した健康器具系施設については、
健康器具系施
設そのものの老朽化や材料の劣化のほかに、
公園利用者の年齢構成
が変化することなどによる利用者の動線の変化、植栽などによる見
通しなど安全性への配慮が十分でなくなる場合もあり、
健康器具系
施設の利用状況なども勘案した安全点検が必要である。
2)利用者の自己責任
①子どもと保護者は、遊びには一定の自己責任が伴うものであることを認
識することが必要である。
②自己判断が十分でない年齢の子どもについては、その保護者が子どもに
代って安全な利用に十分配慮し、安全確保に努めることが必要である。
3)保護者・地域住民との連携
①保護者は、子どもの遊びを見守り、危険な行動に対しては注意あるいは
制止し、安全な施設利用について指導することが必要である。またハザ
ードを発見した場合は公園管理者への連絡、事故が発生した場合には、
必要な措置を講ずることが望まれる。
②地域住民は、公園の利用の際には、子どもの遊びを見守り、危険な行動
に対しては注意あるいは制止することが望まれる。またハザードを発見
した場合は公園管理者への連絡、事故が発生した場合には、必要な措置
を講ずることが望まれる。
7
2-2 安全確保における公園管理者の役割
(1)公園管理者の役割
公園管理者は、子どもが利用する可能性のある健康器具系施設の安全確保に
関する基本的な考え方に従って、計画・設計段階、製造・施工段階、維持管理
段階、利用段階の各段階で子どもが利用する可能性のある健康器具系施設の安
全が確保されるよう適切な対策を講ずるものとする。
公園管理者が各段階毎の業務を外部に委託・請負する場合には、受託者・請
負者に対し同様の対応を求め、適切な指示、承諾、協議などを行う。
また、事故が発生した場合は、事故の再発防止のための措置を講ずるととも
に事故の発生状況を記録し、各段階における安全対策に反映させる。
(解 説)
1) 公園管理者の役割
①計画から維持管理、利用まで全ての段階で適切な対策を講ずるものとす
る。
②健康器具系施設の計画・設計、製造・施工、維持管理、利用の各段階に
おける公園管理者の役割は、以下のように整理される。
・計画・設計段階においては、子どもが利用する可能性のある健康器
具系施設に関連するハザードに対する考え方を踏まえ、
健康器具系
施設を計画・設計する。
・製造・施工段階においては、製造・施工の受託者・請負者に対して、
計画・設計の意図を把握させた上で、設計図書に基づいた確実な健
康器具系施設の製造・施工、施工時の安全対策の実施及び健康器具
系施設の安全確保に関わる資料の提出を求める。
・維持管理段階においては、
子どもが利用する可能性のある健康器具
系施設に関連するハザードに対する考え方を踏まえて健康器具系
施設の安全点検を行い、それに基づき必要な措置を講ずるとともに
維持管理の記録を行う。
・利用段階においては、
健康器具系施設における子どもの利用状況に
よっては、利用指導などを行う。
③公園を計画・設計する際の子どもが利用する可能性のある健康器具系施
設の安全確保に関する配慮事項、安全点検及び発見された物的ハザード
の措置のノウハウ、事故情報並びに問題意識など、安全確保に関する知
見・技術等を記録・蓄積し、地方公共団体内の公園管理に関わる者にと
どまらず、学校教育、児童福祉、高齢者福祉、公営住宅などの関連部署・
地域住民や保護者、子どもの遊び場に関わる民間団体など、遊具や健康
器具系施設に関わる者と情報を共有・交換することにより、安全確保に
関する共通の認識を持ち、継承することが望まれる。
8
④事故が発生した場合に備え、応急手当、負傷者周囲の安全確保など二次
被害の防止の他、直ちに必要な措置が講ぜられるよう、消防署や公園管
理者への迅速かつ的確な連絡がとられるための手段を整えるなどの対
策を講ずることも、健康器具系施設における安全確保においては重要で
ある。
⑤安全対策は、事故を未然に防ぐ努力を継続することが基本であるが、事
故事例に学び、改善することも重要である。事故の再発を防止するため
には、要因となったハザードを速やかに除去するとともに、事故の発生
状況を記録し、公園利用者も含めて安全確保に関する意見交換を行うこ
とが望まれる。
2) 業務を外部に委託・請負する場合
①各段階毎の業務を外部に委託・請負する場合には、受託者・請負者に対
して同様の対応を求め、適切な指示、承諾、協議などを行う。
②受託者・請負者は、公園管理の責務の一端を担うことになるため、公園
管理者と同様にそれぞれの立場において適切な対策を講ずる必要があ
る。
9
(2)保護者・地域住民との連携
子どもが利用する可能性のある健康器具系施設の安全確保に当たっては、公
園管理者のみで行うことは難しく、子どもが利用する可能性のある健康器具系
施設の安全確保に関する基本的な考え方を踏まえ、保護者・地域住民と連携す
ることが不可欠である。
このため公園管理者は、保護者・地域住民との間において、安全点検、子ど
もの遊びを見守ること、危険な行動への注意、事故発生時の連絡などについて、
都市公園の管理を通して協力関係を醸成していくことが必要である。
(解 説)
1)連携の意義
①身近な都市公園(住区基幹公園)に常駐の管理者等が置かれることは少
ないが、地域住民の目が行き届いている場合には、子どもの遊びを見守
り、危険な行動への注意、健康器具系施設の故障の早期発見、事故が発
生した場合の対応などの点において、より安全性を高めることが期待で
きる。
②地域社会においては世代間の交流などの機会が少なくなっており、これ
まで保護者や地域住民が行ってきた、子どもの遊びを見守り、危険な行
動に対しては注意するといった習慣が失われつつある。こうした背景の
もとでは、公園管理者が都市公園の整備、管理などの機会を捉え地域住
民との連携を進めることは、地域住民の都市公園への理解を深めるとと
もに健康器具系施設の安全性の向上には重要である。
2)保護者・地域住民との連携
①子どもが利用する可能性のある健康器具系施設における安全確保にお
いては、計画段階から維持管理段階、利用段階に至るまでの各段階にお
いて関わる者が、子どもの遊びや子どもが利用する可能性のある健康器
具系施設に対する共通の認識を持つとともに、相互に連携し、情報を共
有・交換することなどが望まれる。
②保護者や地域住民に対しては、日常の安全点検や遊びを見守ること、危
険な行動への注意などに主体的に参画し公園管理者の取組と連携しつ
つ事故の発生を未然に防ぐことのほか、管理者等が常駐していない場合
などでは、事故発生時の初期対応への協力を求めていくことが重要であ
る。
③そのため、健康器具系施設の設置場所には、物的ハザードを発見した場
合などの連絡先や、事故が起きたときに何をするべきかを分かりやすく
伝えるための掲示などを行うことが必要である。
10
3.各段階での安全対策の考え方
3-1 計画・設計段階
(1)健康器具系施設の選定
健康器具系施設の種類や規模の決定に当たっては、子どもが利用する可能性
を想定して検討する。また、重量が大きい可動性の健康器具系施設や子どもの
挟み込みのおそれがある可動部を有する健康器具系施設の選定に当たっては、
子どもの利用について十分に考慮し、慎重を期する。
(解 説)
1)製品を購入する場合にも、設計の際と同様の観点を持って健康器具系施設
を選定する。特に、健康器具系施設の品質、安全性が保証されているもの
であるか確認する必要がある。
2)健康器具系施設の選定に際しては、以下の事項を検討・決定する。
①子どもが利用する可能性を想定した健康器具系施設の安全確保
・子どもは、さまざまな利用方法(遊び方)を思いつくものであり、
健康器具系施設を本来の目的とは異なる遊びに用いることもある
ため、実際の使われ方などを参考に一定の幅を想定する必要がある。
②健康器具系施設の種類
・健康器具系施設の構造(p.16「3-1(3)健康器具系施設の
構造」参照)に起因する安全確保上の課題への対策は、維持管理段
階及び利用段階では、安全点検や利用指導等に限られることから、
健康器具系施設の種類や構造を十分検討して健康器具系施設を選
定する。
・重量が大きい可動性の健康器具系施設は、
接触した場合の衝撃が大
きく、
重大な事故につながるおそれがあるため、
選定に当たっては、
子どもの安全確保について十分に考慮し、慎重を期する。
・子どもの挟み込みのおそれがある可動部を有する健康器具系施設
の選定に当たっては、
子どもだけで自由に使えないようにしておく
などの措置について十分に考慮し、慎重を期する。
11
■参考資料(健康器具系施設の例)
背伸ばし運動ができる施設
ストレッチ運動ができる施
設
懸垂運動などができる施設
ジャンプ運動ができる施設
肩回し運動ができる施設
足つぼを刺激する施設
■参考資料(重量が大きい可動性の健康器具系施設、子どもの挟み込みのおそ
れがある可動部を有する健康器具系施設の例)
クロストレーナーに
類似する健康器具系施設
ローイングマシンに
類似する健康器具系施設
③健康器具系施設の規模
・当該健康器具系施設について、
子どもが利用する可能性も想定して
健康器具系施設の規模を決定する。
3)健康器具系施設の改修・更新などについては、以下の視点を持って行う。
①健康器具系施設の改修などは、新設時と同様の検討過程を踏まえて行う。
②健康器具系施設の改修・更新は、健康器具系施設が老朽化し、使用不能
となる物理的な耐用年数ではなく、一定の条件のもとで安全上支障なく
利用できる期間である標準使用期間(p.22「3-2(1)健康器具
系施設の製造」参照)を考慮して行う必要がある。
4) 公園管理者は、健康器具系施設の選定に係る以上の配慮事項など健康器具
系施設の安全確保に関する知見・技術等を記録・蓄積し、公園管理に関わ
る者と共有・継承していくことが望まれる。
12
(2)健康器具系施設の配置及び設置面への配慮
健康器具系施設の配置については、健康器具系施設とその周辺にいる子ども
の衝突事故などを防ぐため、周辺も含めた利用動線や各健康器具系施設の運動
方向を考慮した安全領域などに配慮する。
健康器具系施設は、主として大人の利用を目的として設置するものであり、
遊具との混在を避けるなどの安全対策を講ずる。
また、健康器具系施設は、硬い設置面には配置せず、必要に応じて設置面へ
の落下に対する衝撃の緩和措置についても検討する。
(解 説)
1) 健康器具系施設の配置
①健康器具系施設の配置
・健康器具系施設の配置に起因する安全確保上の課題への対策は、
維
持管理段階及び利用段階では、利用指導等に限られるため、健康器
具系施設の配置は、その計画段階(改修を含む)において、健康運
動に対するニーズを踏まえつつ、
安全性を第一に考えることが必要
である。例えば、衝突事故などについては、静的な利用形態の健康
器具系施設、動的な利用形態の健康器具系施設及び遊具を分離する
ことにより、軽減することが可能である。
・健康器具系施設の配置に当たっては、動線の交錯、適切な健康器具
系施設の向き、健康器具系施設周辺の障害物の有無などについて配
慮する。
■参考(動線の交錯、健康器具系施設周辺の障害物等の例)
健康器具系施設周辺の安全領域
・健康器具系施設が通路に近すぎると衝突事故の原因となる。
健康器具系施設周辺の障害物
・隣接する健康器具系施設、樹木、柵、花壇、縁石。
・健康器具系施設は、
主として大人の利用を目的として設置するもの
であり、遊具との混在を避けるなどの配慮を行う。具体的には、健
康器具系施設を子どもの遊び場と明確に区分したエリアや子ども
のアクセスが比較的少ないエリアに設置する、健康器具系施設と遊
具との間に各施設の利用方法を掲示するなどの安全対策を講ずる
ことが考えられる。
②健康器具系施設の安全領域
・健康器具系施設の設置に当たり、安全な利用を確保する観点から、
障害物や動線の混乱による衝突をなくすため、安全領域を十分確保
13
することについて検討する。
・特に、
可動部及び利用者の大きな動きを伴う健康器具系施設につい
ては、動きの方向等も考慮する。
■参考資料(安全領域の確保に関する事項)
(一部抜粋)
JPFA−SP−S:2014
・安全領域とは、健康器具の適正な利用と器具間の移動に必要とされる空間であり、利
用者が健康器具を利用する際に、利用者の身体または可動する製品の場合はその可動
部などが、到達すると想定される範囲である。安全領域の内部空間では、健康器具本
体及び、正しく利用するための表示物などを除き、事故に結びつく要因となるような
障害物や異物などがあってはならない。
・安全領域は、健康器具の外形線から外側のあらゆる方向に、また可動部を有する健康
器具はその可動範囲の外側に、個別の健康器具ごとに確保する。
・本規準で定める安全領域は、通常の利用状態で利用者の落下が想定される高さが 600
㎜ を超える場合は 1,800 ㎜ 以上、 600 ㎜ 以下の場合は 1,500 ㎜ 以上とする。
■参考資料(安全領域の概念(考え方)
)
JPFA−SP−S:2014
L は安全領域の範囲
落下高さ 600 ㎜ 以下の場合の最小値 1,500 ㎜
落下高さ 600 ㎜ を超える場合の最小値 1,800 ㎜
2) 設置面への配慮
①設置面の衝撃緩和
・健康器具系施設は、落下・転倒の際に受ける衝撃が大きいコンクリ
ートやアスファルトなどの硬い設置面には配置しない。
・必要に応じて安全領域には、砂やウッドチップ、ラバーなどの衝撃
吸収材の使用について検討する。
・衝撃吸収材の選定に当たっては、安全性、耐候性・耐久性、維持管
理の難易などについて検討する。
・表土や芝草などの設置面は、適切に管理されている場合、衝撃の緩
和に一定の効果がある。
14
■参考資料(設置面の衝撃吸収性能に関する事項)
JPFA−SP−S:2014
・健康器具は、落下・転倒の際に受ける衝撃が大きいコンクリートやアスファルトなど
の硬い設置面には配置せず、安全領域内の設置面は必要に応じて、砂やウッドチップ、
ラバーなどの衝撃吸収材の使用について検討する。
■参考資料(高さに関する事項)
(一部要約)
JPFA−SP−S:2014
・落下高さは、転落による重度の傷害あるいは恒久的な障害を最小限とするため、その
最大値を幼児用では 2,000 ㎜、児童用では 3,000 ㎜ とする。
・「 5 各種遊具の詳細規定」に個別の遊具ごとの詳細な設定や条件などがある場合には
その詳細規定を優先する。
15
(3)健康器具系施設の構造
健康器具系施設の構造については、子どもが利用する可能性も想定し、子ど
もの安全確保のため以下のような安全対策を講ずる。
①絡まり・ひっかかり対策
・衣服の一部などが絡まったり、身体がひっかかるでっぱり、突起、
隙間などを設けない
・突起の形状に留意し、埋め込み、ふたを被せるなど工夫する
②可動部との衝突対策
・可動部と地面の間に適切なクリアランスを確保する
・可動部との衝突による衝撃を緩和する
③落下対策
・登れないように足がかりをつくらない
④挟み込み対策
・身体の一部が引き抜けなくなるような開口部や隙間を設けない
・子どもの挟み込みのおそれがある可動部を有する健康器具系施設に
ついては、子どもだけで自由に使えないようにしておく
⑤その他の危険対策
・つまずかないように基礎部分を埋め込むか、垂直に立ち上げず設置
面にすり付ける
・健康器具系施設のどの部分にも、切傷や刺傷の原因となる鋭い尖端、
角、縁(ふち)
、ささくれをつくらない
・部品や部材を簡単に外すことができないようにする
また、健康器具系施設は、屋外に設置され、風雨にさらされるものであるこ
とから、材料の耐水性や耐候性、仕上げにも配慮する。また、健康器具系施設
の構造は、点検整備、部品交換が容易なものとする。
16
(解 説)
1) 健康器具系施設の構造に関する安全対策は、
物的ハザードの除去の方法が
一つとは限らないことから、
健康器具系施設に求められる機能に応じて適
切な方法を選択する。
2) 子どもが手で触れられる部位では、安全な端部や隙間の形状、平滑な仕上
げ、容易にはずれないボルトまわりの処理など、特に、慎重な配慮が必要
である。また、表面仕上げは材料自体に有害性がないこと、降雨によって
滑りやすくなるなど利用上の安全性が損なわれないことなどに配慮する。
3) 健康器具系施設を設計する際には、維持・修繕についても配慮し、点検整
備、
部品交換が容易なものとする。
また、
子どもの利用方法などを想定し、
必要な場合は材料の安全性に関する資料などを確認する。
4) 健康器具系施設の荷重条件などは、子どもの利用実態を踏まえ、安全側に
設定する。また、想定していた荷重条件を超えた利用や厳しい気象条件な
どにより消耗、摩耗などが早まる場合もあるため、耐久性の確保について
は十分に検討する。
5) 複数の健康器具系施設が一体となった施設については、
構成部分同士の安
全領域が重複することがあるため、構成部分の動線が明らかに交錯しない
よう工夫するとともに、構成部分の組み合わせ方によっては、足がかりと
なったり落下した際の障害物となる場合があるため、十分に配慮する。
■参考資料(代表的な事故事例)
○複数の健康器具系施設が一体となった施設における落下の例
・健康器具系施設の登はん棒を支える架構上(2.7m)に登って遊んでいたと
ころ転落し、下部にあるバランス台(平均台)部分で頭を打った。
〔11歳〕
6) 健康器具系施設の安全設計に当たっては、次に示す対策を行う必要がある。
①絡まり・ひっかかり対策
・健康器具系施設にでっぱりや突起、狭い隙間がある場合には、衣服
やかばんの吊るし紐などの絡まりやひっかかりによって首が絞め
られ、重大なケガや死に至ることがあるため注意する。
■参考(絡まり・ひっかかり対策の例)
・突起を埋め込む。
・突起の形状を工夫したり、ふたを被せる。
・衣服などがひっかかるようなV字型開口部はなくす。
・ロープの、固定されていない端部を環状に結ぶことは、首や手足を入れた
ときに締まるおそれがあるため避ける。
17
■参考資料(絡まり・ひっかかり対策に関する事項)
JPFA−SP−S:2014
・子どもが容易に触れる可能性のある部分には、不意に着衣の一部やカバンのヒモが絡
まったり、引っ掛かったりすることが起きないように配慮しなければならない。
・落下が予測される箇所や体勢が不安定な箇所には、絡まったり、引っかかったりする
突出部や隙間がないようにする。
・滑降系遊具の滑り出し部分や滑降面には、子どものフードや肩掛けかばんの紐などが
引っかかる隙間を設けてはならない。
・登はん用のロープ・ワイヤーおよびチェーンの両端は固定するとともに、たるんだ部
分が子どもの首などに容易に巻きつくことがないようにしなければならない。
■参考資料(絡まり・ひっかかり例)
JPFA−SP−S:2014
②可動部との衝突対策
・健康器具系施設の可動部が子どもに衝突した場合、
重大な事故につ
ながるおそれがあるため注意する。
■参考(衝突対策の例)
・健康器具系施設の可動部と設置面、支柱の間に、適切なクリアランスを確
保する。
・可動の度合いを制御する。
・衝突による衝撃を緩和するため、可動部などの形状や素材を検討する。
③落下対策
・落下は、
頭部骨折などの重大な事故につながるおそれがあるため注
意する。
■参考(落下対策の例)
・落下するおそれがある健康器具系施設の下の基礎は、露出させない。
・基礎部分が露出している場合は、
原則として埋め戻しなどによる対
策が必要であるが、これらの対策が困難な場合は、露出している基
礎部分をラバーなどの衝撃吸収材で覆う。
18
④挟み込み対策
・全身又は身体の一部を入れたとき、
引き抜けなくなるような開口部、
又は可動部等の隙間の存在は、挟み込みなどによって重大な事故に
つながるおそれがあるため注意する。
■参考(挟み込み対策の例)
・頭部、指、身体などを挟み込むような開口部、隙間をなくす。
・揺れる、落下などの可能性がある健康器具系施設で、開口のチュ-ブ又は
鋼管、形状が変わりやすい隙間(チェ-ンを除く)などの指がひっかかる
隙間をなくす。
・手が届く範囲内にある可動部の隙間については、カバーをつけるなど、隙
間をなくす。
・特に、子どもが通り抜けようとした場合に、頭部又は首が挟み込ま
れて抜けなくなるおそれのある開口部又は隙間を設けてはならな
い。
■参考(頭部又は首の挟み込みの例)
・開口部に頭部から入った場合:頭部の向きを変えたときに、頭部が抜けな
くなる。
・開口部に脚部から入った場合:胴体は通ったが頭部が通らないときに、頭
部が抜けなくなる。
■参考資料(代表的な事故事例)
○歩行運動を行う健康器具系施設の例
・歩行運動を行う健康器具系施設で友人と遊んでいたところ、友人の動かしていた器
具と支柱の間に脚を挟み、左下腿骨を骨折した。
〔10歳〕
■参考資料(挟み込み対策に関する事項)
(一部要約)
JPFA−SP−S:2014
・頭部・胴体の挟み込み
・頭部や胴体の挟み込みが発生しないように開口部は胴体が入らない構造とするか、
胴体が入る場合は頭部が通り抜ける構造としなければならない。
・頭部および胴体が入らない構造(通り抜けさせない開口部)
・開口部に「 JPFA 点検器具 B 」の 100 × 157 ㎜ の部分が入ってはな
らない。
・ネットの網目などの柔軟な素材で構成された開口部の場合には「 JPFA 点
検器具 A 」の φ 127 ㎜ の部分が入ってはならない。
・柵などの隙間は、100 ㎜ 未満とする。
19
・頭部および胴体が通り抜けるような構造(通り抜けさせる開口部)
・開口部は、
「 JPFA 点検器具 A 」の φ 230 ㎜ の部分が通り抜けなけ
ればならない。
・ネットの網目など柔軟な素材で構成された開口部の場合も「 JPFA 点検
器具 A 」のφ230 ㎜ の部分が通り抜けなければならない。
・頭部または首の挟み込み
・頭部または首が挟まって抜けなくなるような、開口角度が 55°未満の上向きのV
字型開口部を設けてはならない。
・指の挟み込み
・φ 8 ㎜ の丸棒が入って φ 25 ㎜ の丸棒が入らない隙間や穴は指が抜けなくな
る恐れがあるので設けてはならない。
・ヒンジなどの隙間が変化する可変開口部や回転体のような隙間そのものが動く可
動開口部は、高さにかかわらず指先をつぶしたり、切断したりする危険性がない
ようにする。
・指が挟まって切断を発生させるような上向きのV字型開口部を設けてはならない。
■参考資料(挟み込み例)
JPFA−SP−S:2014
・頭部及び胴体が通り抜ける
構造となっているが、落下
対策が不十分な例
※上記説明は、JPFA-SP-S:2014 をもと
に作成
20
⑤その他の危険防止対策
・基礎部分は埋め込むか、垂直に立ち上げず、設置面にすり付けるな
ど工夫して、つまずきの原因となる段差を作らない。
・健康器具系施設のどの部分にも、
切傷や刺傷の原因となる鋭い尖端、
角、縁(ふち)を作らない。また、ささくれは、確実に除去する。
・手又は簡単な道具で、
ボルト類などの部品や部材を外すことができ
ない構造とする。
・石材や金属面などは、
直射日光によって非常に熱くなりやけどのお
それもあるため、日陰に配置するなど配慮する。
■参考資料(衝突・転倒例)
JPFA−SP−S:2014
21
3-2 製造・施工段階
(1)健康器具系施設の製造
健康器具系施設の製造については、製造受託者又は請負者(以下、
「製造者」
という)に対して、設計図書に基づき、計画・設計段階における健康器具系
施設の構造に起因する物的ハザードの除去対策を行うことや、健康器具系施
設の製造時に設定される期間(以下、
「標準使用期間」という)内の十分な安
全確保を図るため、材料に適用される日本工業規格などの諸規格に沿って、
材料の経年変化などを勘案しつつ、身体に悪影響を及ぼすおそれのある物質
を含まない耐久性のある材料の使用及び加工(接合を含む)
・仕上げを行うこ
となど、製造の各段階における品質管理を徹底するよう、指示、承諾、協議
などを行う。
なお、健康器具系施設の維持管理における留意事項を把握するため、製造
者に対して、健康器具系施設の特性、仕様など、健康器具系施設の安全確保
に関わる資料の提出を求める。
(解 説)
1) 製造者に対して、設計図書に基づき、計画・設計段階における健康器具系
施設の構造に起因する物的ハザードの除去対策を踏まえた上で、製造させ
ることが重要である。
2) 健康器具系施設を構成する部材には、標準使用期間を通して使用される構
造部材と、期間内においても交換・補修することを前提とする消耗部材が
ある。
3) 標準使用期間は、通常の気象条件、立地条件、利用状況及び適切な維持管
理状況のもと、安全上支障がなく利用することができる期間として、構造
部材として使用する素材の特性等を考慮し、
製造者が健康器具系施設の設
計・製造時に設定するものである。
4) 標準使用期間内において、十分な安全確保を図るため、材料に適用される
規格や指針などに沿って、経年変化による材料の変化等を勘案した品質管
理を徹底するため、製造者に対して、指示、承諾、協議などを行うことが
必要である。
■参考資料(標準使用期間)
JPFA−SP−S:2014
・遊具の標準使用期間は適切に維持管理される条件下において、構造部材が鉄製の場合
には 15 年、木製の場合には 10 年を目安として設定する。その他の素材については、
その特性などを考慮して標準使用期間を設定する。遊具に使用する構造部材は、遊具
の標準使用期間内はその機能を全うすることができるように適切に維持管理されるこ
とが必要である。材料の選定にあたっては、経済性の考慮も忘れてはならない。
22
■参考資料(材料・製造に適用・準用される主な規格、指針など)
・日本工業規格
・日本農林規格
・軽鋼構造設計施工指針・同解説(一般社団法人日本建築学会)
・ステンレス建築構造物の施工基準・検査基準/ステンレス建築構造物工事標準仕様
書・同解説(一般社団法人日本鋼構造協会)
・アルミニウム合金建築構造設計施工規準案・同解説(一般社団法人日本建築学会)
・木構造計算規準・同解説(一般社団法人日本建築学会)
など
5) 大型の健康器具系施設の固定荷重、積載荷重などについては、建築基準法
に定められた建築物に作用する荷重及び外力等の基準を必要に応じて準
用する。また、健康器具系施設には、健康器具系施設固有の荷重による応
力が働くため、これについても考慮する必要がある。
■参考資料(準用する建築基準法施行令 関係法令文(抜粋)
)
第83条 建築物に作用する荷重及び外力としては、次の各号に掲げるものを採用
しなければならない。
1.固定荷重
2.積載荷重
3.積雪荷重
4.風圧力
5.地震力
■参考資料(考慮すべき荷重の種類と組み合わせ)
JPFA−SP−S:2014
・遊具の設計では、以下の応力を考慮するとともに相互の荷重の組み合わせを行い、応
力度を照査する。
G .固定荷重による応力
P1 .遊動荷重による応力
P2 .積載荷重による応力
W .風圧力による応力
S .積雪荷重による応力
K .地震力による応力
・上記応力は、実際には個々別々ではなく組み合わさって遊具に働くため、表 4.5.3 に
示す組み合わせ例により、
「建築基準法施行令」などの関連条項を準用して照査する。
23
表 4.5.3 応力の組み合わせ例
荷重の状態
一般地方
多雪区域
長期
常時
G + P1(または P2 )
G + P1(または P2 )+ S
短期
常時
G + P1(稀少頻度)
G + P1(稀少頻度)+ S
積雪時
G +( P2 )+ S
G +( P2 )+ S
暴風時
G +( P2 )+ W
G +( P2 )+ S + W
地震時
G +( 0.6×P1 )+ K
G +( 0.6×P1 )+ S + K
6) 製造段階において、安全確保のため、製造者に対して実施させる品質管理
の例は、以下の通りである。
①材料
・使用材料は、子どもが直接触れたり、舐めることを考慮して、身体
に悪影響を及ぼすおそれのある物質を含まない耐久性のあるもの
を使用する。
・使用材料は、原則として材料に適用される規格や指針に適合し、そ
れ以外の材料については、公的機関において品質や性能が同等品以
上であることが証明されているものなどを使用する。
②加工
・子どもが直接触れる可能性のある部分は、バリ、ささくれ、亀裂な
どをつくらず、角や縁(ふち)
、突起などは各種面取りを行い、保
護材で覆うなど、切傷や刺傷などの原因になる部分をつくらない。
・設置面に埋設されない部分で、
鋼管の端部など挟み込みのおそれの
ある開口部を塞ぐ。
・プラスチック類の加工は、欠け、割れ、含浸不良などの欠陥をつく
らない。
・回転部分など摩滅しやすい部分は、耐久性のある材料を用い、併せ
て、維持管理に配慮し、給油孔を設け注油できるようにする。
③仕上げ
・腐食しやすい鋼材は、
亜鉛メッキなど保護効果のある表面処理を行
う。
・防腐処理や防蟻処理は、使用時において人体に害がなく、処理を行
った木材が鉄類を著しく腐食させない方法で行う。
・子どもが直接触れる可能性のある部分は、バリ、ささくれ、亀裂な
どがないよう滑らかな表面処理を行う。
④接合方法
・鋼材の接合は、十分な強度を確保するよう溶接を行う。
・木材の仕口の収め方については、
構造上安全を確保するため隙間が
ないようにする。
24
7) 維持管理段階における安全点検や修繕、部材の交換を適切に行うため、製
造者に対して、健康器具系施設の特性並びに材料、構造及び交換・修繕の
対象となる消耗部材等の仕様、標準使用期間、安全点検の要点など、健康
器具系施設の安全確保に関わる資料の提出を求め、
維持管理のために必要
な基礎的な情報として予め適切に把握するとともに、整理・蓄積し、公園
管理に関わる者と共有・継承していくことが望まれる。
■参考資料(遊具引き渡し時の提出資料)
(一部抜粋)
JPFA−SP−S:2014
・遊具の引渡し時には、取扱説明書を施工者または管理者に提出しなければならない。
・
「取扱説明書」は、以下の項目を具備しなければならない。
①製品の品名・品番
②出荷日
③販売者名または製造者名
④各部の名称及び製品仕様
⑤利用対象年齢
⑥標準使用期間及び保証年数
⑦保証対象外の事項
⑧点検・修繕
・点検・修繕方法
・日常点検表
・専門業者が行う点検・修繕及び部品交換についての注意・禁止事項
・消耗品とその推奨交換サイクル
⑨本製品のお問い合わせ先
⑩利用方法
・正しい使い方
・利用上の注意
・危険行為に対する警告
⑪検査関係書類
・完成チェックリスト
⑫その他(必要に応じて提出するもの)
・
「SP 表示認定企業認定証」の写し
・
「公園施設団体賠償責任保険加入証」の写し
8) なお、公園に設置される健康器具系施設の種類は多岐にわたる上、それら
の製品の使用目的、使用材料、形状加工方法が各々に異なるため、公園施
設の製造に関わる民間団体において、健康器具系施設については、遊具の
規格・寸法、維持管理に関する規準を準用することが定められているとこ
ろであるが、必要に応じて充実を図ることが望まれる。
25
(2)健康器具系施設の施工
健康器具系施設の据付けなどの施工については、施工受託者又は請負者(以
下、
「施工者」という)に対して、設計図書に基づき、計画・設計段階におけ
る健康器具系施設の構造に起因する物的ハザードの除去対策を行うことや、
標準使用期間内の十分な安全確保を図るため、基礎部分の設置面への収め方
など利用者の安全確保と健康器具系施設の耐久性に配慮した地面への固定方
法、組み立て、接合、仕上げを行うことなど、施工の各段階における品質管
理を徹底するよう、指示、承諾、協議などを行う。
なお、子どもの遊びの特徴から、施工者に対して、資材搬入時や施工時か
ら施工完了、引き渡しまでの期間に、安全確保が図られるよう指示を行うこ
とが必要である。
(解 説)
1) 施工者に対して、設計図書に基づき、計画・設計段階における健康器具系
施設の構造に起因する物的ハザードの除去対策を踏まえた上で、施工させ
ることが重要である。
2) 標準使用期間内において、十分な安全確保を図るため、健康器具系施設の
施工において準用される規格や指針などに沿って、
品質管理を徹底するよ
う、施工者に対して、指示・承諾・協議などを行うことが必要である。
■参考資料(健康器具系施設の施工において準用される主な規格・指針など)
・建築工事標準仕様書(一般社団法人日本建築学会)
・軽鋼構造設計施工指針・同解説(一般社団法人日本建築学会)
・鋼構造接合部設計指針(一般社団法人日本建築学会)
・ステンレス建築構造物の施工基準・検査基準/ステンレス建築構造物工事標準仕様
書・同解説(一般社団法人日本鋼構造協会)
など
3) 大型の健康器具系施設の固定荷重、積載荷重などについては、建築基準法
に定められた建築物に作用する荷重及び外力等の基準を必要に応じて準
用する。また、健康器具系施設には、健康器具系施設固有の荷重による応
力が働くため、これについても考慮する必要がある。
■参考資料(再掲)
(準用する建築基準法施行令 関係法令文(抜粋)
)
第83条 建築物に作用する荷重及び外力としては、次の各号に掲げるものを採用
しなければならない。
1.固定荷重
2.積載荷重
26
3.積雪荷重
4.風圧力
5.地震力
■参考資料(再掲)
(考慮すべき荷重の種類と組み合わせ)
JPFA−SP−S:2014
・遊具の設計では、以下の応力を考慮するとともに相互の荷重の組み合わせを行い、応
力度を照査する。
G .固定荷重による応力
P1 .遊動荷重による応力
P2 .積載荷重による応力
W .風圧力による応力
S .積雪荷重による応力
K .地震力による応力
・上記応力は、実際には個々別々ではなく組み合わさって遊具に働くため、表 4.5.3 に
示す組み合わせ例により、
「建築基準法施行令」などの関連条項を準用して照査する。
表 4.5.3 応力の組み合わせ例
荷重の状態
一般地方
多雪区域
長期
常時
G + P1(または P2 )
G + P1(または P2 )+ S
短期
常時
G + P1(稀少頻度)
G + P1(稀少頻度)+ S
積雪時
G +( P2 )+ S
G +( P2 )+ S
暴風時
G +( P2 )+ W
G +( P2 )+ S + W
地震時
G +( 0.6×P1 )+ K
G +( 0.6×P1 )+ S + K
4) 施工段階において、安全確保のため、施工者に対して実施させる品質管理
の例は、以下の通りである。
①設置面への固定
・基礎部分の設置面への収め方は、
落下やつまずきによる事故を防止
するため、埋設するか設置面にすり付けるようにする。
・腐食や腐朽による劣化などを防ぐため、構造上重要な金属支柱は、
腐食しやすい部分に防食保護材や防食塗料、
木製支柱は防腐処理あ
るいは腐朽しやすい部分に鋼製の柱受けなどを用いるなどの対策
を行う。特に、支柱が回転軸を兼ねているものや単軸の場合、その
地際部は応力に伴う負荷が加わることから十分な対策を講ずる。
②接合方法
・鋼材の接合は、十分な強度を確保するよう溶接を行う。
・木材の仕口の収め方については、
構造上安全を確保するため隙間が
ないようにする。
③仕上げ
・腐食しやすい鋼材は、
亜鉛メッキなど保護効果のある表面処理を行
27
う。
・防腐処理や防蟻処理は、使用時において人体に害がなく、処理を行
った木材が鉄類を著しく腐食させない方法で行う。
・子どもが直接触れる可能性のある部分は、バリ、ささくれ、亀裂な
どがないよう滑らかな表面処理を行う。
5) 健康器具系施設の形状寸法、部材寸法及び配置などの項目について、安全
確保の観点のため変更する必要があると認めるときは、施工者に対して、
指示・承諾・協議などを行うことが必要である。
6) 図面上で健康器具系施設の基礎部分が必要以上に突出しており、設置面へ
のすり付けや埋め込みによる安全対策を講ずる必要がある場合など、設計
図書と現場での施工に不一致、不都合が生じた場合には、指示・協議など
を行い、設計変更を行うなど適切に対応する。
7) 子どもの遊びの特徴から、子どもが、施工中の健康器具系施設に興味を示
すことがあるため、施工者に対して、資材搬入時や施工時から施工完了、
引き渡しまでの期間の安全確保がなされるよう、施工現場に立ち入らない
ように柵などで囲うか、あるいは案内板などによって注意を喚起するなど
事故防止対策を徹底するよう適切な指示を行う。
8) 公園管理者は、健康器具系施設の引き渡し後から供用開始までの期間につ
いて、供用前の健康器具系施設を利用できないように柵などで囲う、掲示
などによって注意を喚起するなど事故防止対策を徹底する。
28
3-3 維持管理段階
(1)点検手順に従った確実な安全点検
健康器具系施設の維持管理については、健康器具系施設そのものの性能確保
に関する点検・補修を行うにとどまらず、子どもにとって安全な環境であるか
という視点を持って行うことが必要である。健康器具系施設の構造や劣化など
を要因とする物的ハザードの発見・除去及び危険な使用の有無など健康器具系
施設の使用実態の把握・必要に応じた利用調整を行うなど、確実な安全点検を
行う。定期的な修繕などの維持管理を行うため、維持管理計画を策定・実行し、
維持管理の履歴を記録・保管する。
安全点検は、維持管理全体の中で最も基本的な作業である。安全点検には、
初期の動作確認のために製造・施工者が行う初期点検、公園管理者が行う日常
点検及び定期点検、公園管理者から委託された専門技術者が行う精密点検があ
り、これらの安全点検を確実に行うものとする。
特に、日常点検においては、腐食・腐朽、変形、摩耗、部材の消失などに注
意し、必要に応じて専門技術者による安全点検を行うものとする。
(解 説)
1) 健康器具系施設の安全点検が不十分な場合、
物的ハザードの見落としなど
によって、重大な事故が起きるおそれが高くなる。日頃の適切な安全点検
で物的ハザードを発見し、適切な措置を講ずることにより、事故の発生を
未然に防ぐことが可能となる。
2) 確実な安全点検を行い、発見された物的ハザードを適切に処理するために、
現場に適応した健康器具系施設の維持管理計画を策定・実行する。
①維持管理計画
・維持管理計画においては、
・健康器具系施設の種類別及び構造部材・消耗部材別の維持
管理についての基本的考え方
・健康器具系施設の日常点検や定期点検等の安全点検の実施
体制、頻度・時期及び方法
・安全点検等により発見された物的ハザードに対する措置の
内容及び手順
・計画的な部材の交換、修繕等に関する事項
・維持管理に係る年度ごとの事業計画の作成に関する事項
・点検記録書及び健康器具系施設履歴書の整備等
・事故情報等への対応に関する事項
などを定める。
・維持管理計画の策定及び見直しに当たっては、
事故や苦情の情報な
どを踏まえる必要がある。
29
・健康器具系施設の劣化の進行状況は、設置後の経過年数、健康器具
系施設の構造、利用状況、地域の気象条件、立地条件などで異なる
ため、公園管理者は、製造・施工者の示す保守及び点検等に関する
資料を踏まえ、各々の健康器具系施設の設置状況等に対応した適切
な点検頻度を設定する。
②安全点検の種類
・安全点検は、その内容と頻度により以下のように区分される。
a.初期点検:
・供用後に公園管理者の立ち会いのもと、健康器具系施設の
初期の動作性能確認のために、製造・施工者が設置直後に
行う点検のことである。
・製造・施工者の責任と判断において行われる。
・動的な構造を持つ健康器具系施設や新設計の健康器具系施
設は、初期不良が発生するおそれがあり、そのため十分な
機能を発揮しない場合がある。また、木製健康器具系施設
の中には、設置後にボルト類の増し締めを必要とするもの
もあり、これらの不具合を解消するために行う。
b.日常点検:
・公園管理者が、主として目視、触診、聴診などにより、施
設の変形や異常の有無を調べるために日常業務の中で行う
点検のことである。
・日常点検においては、構造部材についてはぐらつきや、腐
食・腐朽が進みやすい基礎部分の状態などに、また、消耗
部材については、部材の脱落・消失、破損がないか、変形
や磨耗の有無、度合いなどに、着眼して行う。
・変形及び異常を発見した場合には、直ちに健康器具系施設
の一部又は全体の使用中止の措置を講ずるとともに、必要
に応じて健康器具系施設の構造や点検に関する専門的な知
見、技能を有する専門技術者による点検を行う。
■参考(日常点検の着眼点の例)
・変形
:ゆがみ、たわみ
・部分の異常 :金具、締め具の変形やゆるみ、詰め物の脱落、上向きあるいは目の高
さにある不適切な突起
・部材の異常 :ひび、破損、さび、腐食・腐朽、経年による劣化、塗料の剥離
・健康器具系施設の異常
:動かない、きしみ、揺れ、摩耗、傾き
・欠損、消失 :手すり子や踏み板などの部材の欠損・消失、金具や締め具などの消失
・周囲の異常 :地面の凹凸、危険物の散乱、不適切な基礎部分の露出、有毒な害虫
・危険な利用実態の把握
:危険な使い方、利用者の混在
30
■参考資料(代表的な事故事例)
○部分の異常の例
・あん馬ベンチに体育座りで座った際に、座面が傾き体勢を崩し、座面の角で尻
を打撲する軽傷を負った。事故発生時、座面裏側の固定ネジ(ナット)がはず
れており、座面が傾く状態であった。当該ベンチは設置当初、座面が溶接固定
された製品であったが、事故が起きた座面のみ、修繕後、ボルト固定となって
いた。
〔11歳〕
・目視・触診・聴診が主体となるため、点検を行う者の経験則
に頼るところが大きく、診断結果に個人差がでることが予想
される。できる限り客観的な診断を行うためには、点検記録
書を作成して点検を行うことが有効である。
・健康器具系施設本体と併せて、設置面や植栽など周囲の異
常について点検を行うことも必要である。
■参考(設置面、植栽などにおける点検の視点の例)
・健康器具系施設の設置場所にガラス片が落ちていないか。
・健康器具系施設の設置場所の植栽に有毒な害虫が発生していないか。
c.定期点検:
・公園管理者が、必要に応じて専門技術者と協力して、一定
期間ごとに行う日常点検より詳細な点検のことである。
・定期点検については、子どもが安全に利用できるかという
視点を持って構造部材、消耗部材についてより詳細、入念
な点検を行う。特に、構造部材がぐらついておらず安定し
た状態であるか、埋設した基礎部分、回転軸の軸受け部分
など、通常外観から確認できない重要な部材について、テ
ストハンマーを用いた打診による異常の察知などにより、
次の定期点検までの安全が確保できる状態であるかなどに
着眼し、確認する必要がある。
・変形及び異常を発見した場合には、直ちに健康器具系施設
の一部又は全体の使用中止の措置を講ずる。必要に応じて
健康器具系施設の構造や詳細な点検に関する専門的な知見、
技能を有する専門技術者による点検を行う。
・点検の頻度は年 1 回以上とする。
31
■参考(定期点検の着眼点の例)
・構造部材(標準使用期間を通して使用される部材)
:腐食、腐朽
・消耗部材(交換を前提とした部材)
:磨耗、経年による劣化
・通常外観から確認できない部位(埋設した基礎部分、
回転軸の軸受け部分、全方向の吊り金具など)
:腐食、腐朽、摩耗、疲労
d.精密点検:
・公園管理者から委託された専門技術者が詳細に行う点検の
ことである。
・日常点検や定期点検時にハザードと思われるものが発見さ
れ、特に、精度の高い診断が必要な時に専門技術者が行う。
③安全点検の視点
(点検記録書の作成等)
・点検記録書は、安全点検を実施した際に、安全点検の対象となった
健康器具系施設の全体について、
安全点検を行った時点における状
況、点検の結果を記録し保管するものである。
・適切かつ確実に安全点検を行うためには、点検漏れの防止に努め、
判断基準の統一を図る必要がある。その際、点検シート・点検カー
ド等の点検記録書を活用するとともに、巡回ルート・順番、点検ポ
イント・要注意箇所を統一しておくことが有効である。
・また、点検対象の健康器具系施設の特性、仕様など、基礎的な情報
は予め適切に把握、整理しておく必要がある。
(健康器具系施設の劣化)
・健康器具系施設の劣化の進行状況は、
設置後の経過年数だけでなく、
健康器具系施設の使用材料や部位、構造、利用状況、地域の気象条
件、
立地条件、
管理方法によって変わることに留意する必要がある。
(材料特性や健康器具系施設の種類に応じた点検)
・健康器具系施設を構成する構造部材・消耗部材には、金属類、木質
類、プラスチック系材料、繊維材料など、さまざまな材料があり、
それぞれの特性に応じた点検を行う必要がある。健康器具系施設の
種類によっても、
事故につながりやすい危険な箇所などがそれぞれ
あり、過去の実例等から危険性があると判断されるポイントなどに
ついて、重点的に点検を実施する。
32
(構造部材の点検)
・構造部材は、
健康器具系施設の標準使用期間内はその機能を全うす
ることができるように適切に維持管理を行わなければならない。
こ
のため、劣化による施設の性能の低下を事前に防止する予防保全型
管理の考えに基づいて、安全点検を行う必要がある。構造部材のぐ
らつきや腐食・損傷、亀裂等が確認された場合は、その度合いや利
用状況、標準使用期間等を考慮し、施設の使用中止、部材の補強等
の必要性について的確かつ迅速に判断するとともに、同様の施設に
ついても入念に点検を実施する。
(消耗部材の点検)
・消耗部材は、
標準的な交換サイクルや実際の利用状況等に基づいて
適宜交換・補修を行う必要がある。このため、適時適切な更新・交
換、修繕等を行い、部材の脱落、破断等による事故を未然に防止す
る考えに基づいて、安全点検を行う必要がある。消耗部材の磨耗、
変形、部品消失等が確認された場合は、その度合いや利用状況、推
奨交換サイクル等を考慮し、施設の使用中止、部材の更新、修繕、
部品交換等の必要性について的確かつ迅速に判断するとともに、
同
様の施設についても入念に点検を実施する。
(点検後の対応)
・安全点検において異常を発見した場合は、
必要に応じて専門技術者
の意見を求める。
・施設の使用中止が必要と判断されたときは、
直ちに使用中止措置を
講じるとともに、発見されたハザードの適切な処理を行うために、
必要とされる改善措置(構造部材の補強、消耗部材の更新、修繕、
部品交換等)についての点検者としての所見を、現場の状況に即し
て速やかにとりまとめる。
・施設の使用中止を行う必要はないが、
一定期間内に計画的な改善措
置を講じることが必要と判断されたときは、
発見されたハザードの
適切な処理を行うために、
必要とされる改善措置
(構造部材の補強、
消耗部材の更新、修繕、部品交換等)についての点検者としての所
見を、現場の状況に即して速やかにとりまとめる。
④標準使用期間を超えた健康器具系施設への対応
・標準使用期間を超えた健康器具系施設については、
健康器具系施設
の使用材料や部位、構造、利用状況、気象条件、立地条件、管理方
法によって、劣化の進行状況が異なるものであることから、直ちに
撤去する必要はないが、その期間に相応する劣化が進んでいるもの
と推定されるので、当該健康器具系施設の状態や設置期間、過去の
33
維持管理の履歴等を踏まえ、
健康器具系施設の更新などの具体的な
対応を早期に検討する必要がある。
・また、更新までの間は、安全点検の頻度を高くするなどの適切な対
応を行う必要がある。
・なお、
標準使用期間の定めのない既設の健康器具系施設についても、
同種の健康器具系施設に設定された標準使用期間等を参考に、
同様
の対応をとるものとする。
⑤維持管理の記録
・点検シート・点検カード及び点検者による所見(必要な状況写真等
を含む)等をまとめた点検記録書を安全点検ごとに作成し、報告書
として活用するとともに、次回以降の安全点検等の参考とするため、
各年度別に保管する。
3) 安全点検を委託する場合は、点検対象健康器具系施設、点検部位、点検方
法等、点検の具体的内容及び点検者の技術者要件などを仕様書で明らかに
しておくとともに、適宜点検業務受託者の履行状況を現地で確認し記録す
る。また、安全点検で発見された物的ハザードに迅速かつ適切に対処する
ため、公園管理者と点検業務受託者との連携体制や応急措置の方法などに
ついて事前に決めておく必要がある。
34
(2)発見されたハザードの適切な処理
発見された物的ハザードについては、その程度に応じて健康器具系施設の使
用中止、修繕などの応急措置を講ずるとともに、補修、改良、移設、更新、撤
去などの本格的な措置の方針を迅速に定めて実施する。
なお、応急措置を講ずる際には、本格的な措置を講ずるまでの間に、事故が
発生しないよう現場の管理に留意する。
(解 説)
1) 発見された物的ハザードについては、その危険性の程度を判定し、より危
険性の高いものは優先的に措置を講ずる。
■参考資料(再掲)
(事故の要因となるハザードのレベル)
JPFA−SP−S:2014
ハザードレベル
ハザードレベル
ハザードレベル
ハザードレベル
0:傷害をもたらす物的ハザードがない状態
1:軽度の傷害をもたらすハザードがある状態
2:重大であるが恒久的ではない傷害をもたらすハザードがある状態
3:生命に関わる危険があるか、重度の傷害あるいは恒久的な障害をもたらす
ハザードがある状態
2) 特に、生命に危険を及ぼす、重度又は恒久的な障害をもたらす、身体の欠
損を引き起こすなどのおそれのある物的ハザードは、早急に取り除く。ま
た、子どもは、破損した健康器具系施設に興味を示すことが多いため、破
損した健康器具系施設についても早急に措置を講ずる。
(
「都市公園における遊具の安全確保に関する指針(改訂第2版)」
p.58 参考「物的ハザードの発見から本格的な措置までの流れ」参照)
①物的ハザードに対する措置
・特に、健康器具系施設に倒壊、部材の欠損・消失等により挟み込み
のおそれがあるなど、
重大な事故につながるおそれがある物的ハザ
ードが認められた場合には、
直ちに健康器具系施設の一部又は全体
の使用中止の措置を講ずるとともに、補修、改良、移設、更新、撤
去などを行う。なお、本格的な措置は、ハザードに対する考え方を
踏まえて、健康器具系施設の安全性、強度、経済性、利用状況、社
会的な耐用年数などを総合的に判断し措置の方針を定めて実施す
る。
・点検結果に応じて整備修繕や部材の交換などを行う場合、製造・施
工者が提出した資料を参考とすることは効果的であり、
公園管理者
は健康器具系施設の設置に当たり、製造・施工者に対して、健康器
具系施設の特性並びに材料、構造及び消耗部材等の仕様、標準使用
期間、消耗部材の交換サイクル、安全点検の要点など健康器具系施
35
設の安全確保に必要な資料の提出を求め、提出された資料を履歴書
とともに保管するものとする。
・本格的な措置の方針を定める際には、
必要に応じて専門技術者の意
見を求める。
・応急措置及び本格的な措置の内容を、遊具履歴書を参考に記録し、
その後の安全点検、修繕、更新等の参考とする。
■参考(重大な事故につながるおそれのある物的ハザードの例)
○倒壊のおそれがある例
・支柱 1 本で支えている健康器具系施設がぐらついている。
・使用中止とする場合は、立入り防止柵の設置や、可動部分の結束又
は取り外し、健康器具系施設全体をシートで覆う等により、当該健
康器具系施設を使用することができないよう直ちに適切な措置を
講ずる。その際、これらの措置が、結果として予期しない遊びを生
じさせ、事故を発生させるおそれがあることに十分留意する。併せ
て、使用中止の旨を掲示し注意を喚起する。
・ボルト類の緩みなどの軽度な物的ハザードが認められた場合に迅
速な対応を可能にするため、
簡易な修繕ができる体制と技術を備え
ておくことが望ましい。
・修繕や部品交換などは、
必要に応じて専門技術者の意見を踏まえて
行う。
■参考(応急措置の例)
○使用中止の例
・健康器具系施設全体をシートで覆い、そのシートをしっかりと固定す
るとともに、使用中止のはり紙をした。
○修繕の例
・緩んでいるボルト類を増締めした。
・小規模な亀裂や穴をテープで塞いだ。
・埋め戻しなどによる復旧が困難な露出した基礎部分をラバーで覆った。
②故意による損壊・落書き
・故意による損壊、落書きなどを放置することは、都市公園の環境を
悪化させたり破壊行為を助長することになるため、
速やかに落書き
の消去や損壊した健康器具系施設の補修などを行うことが望まし
い。
36
(3)履歴書の作成と保管等
健康器具系施設の維持管理に当たっては、健康器具系施設の名称、設置場所、
設置年月、製造者、施工者、標準使用期間等を記載する履歴書を健康器具系施
設ごとに作成する。履歴書には、点検記録書を活用して健康器具系施設の安全
点検の実施状況や点検結果、健康器具系施設の補修・部材の交換、塗装の実施
状況等、健康器具系施設の維持管理上必要な情報について定期的に記載し、履
歴として保管する。
(解 説)
1)履歴書は、
健康器具系施設の維持管理や更新等の安全管理を適切に行って
いくために、当該健康器具系施設の設置に関する記録、安全点検の実施状
況に関する記録、
設置時点から現在に至るまでに実施した構造部材や消耗
部材についての修繕等の維持管理に関する情報等を記載した履歴書とし
て整備し、
健康器具系施設の設置に当たって提出を求めた健康器具系施設
の安全確保に必要な資料とともに保管する。
(
「都市公園における遊具の安全確保に関する指針(改訂第2版)」
p.60 参考「遊具履歴書の例」参照)
2) 履歴書には、公園名(設置場所)
、健康器具系施設の種類・名称、設置年
月、製造者名、素材、施工者、標準使用期間等を記載するとともに、点検
記録書を活用し、安全点検の実施状況、点検結果(特記事項)等、健康器
具系施設の維持管理上必要な情報について、定期的に追加記載し、保管し
ていくものとする。
3) また、構造部材の補強、塗装等、消耗部材の更新、修繕、部品交換、塗装
等の改善措置については、実施記録をそのつど追加記載するものとする。
4) なお、履歴書の作成は、原則として健康器具系施設の新設又は更新を行う
際に作成するものとするが、既存の健康器具系施設についても、履歴につ
いての調査を行ったうえで、
都市公園ごとに計画的に作成して保管するこ
とが望ましい。
37
(4)事故への対応
事故が発生した場合、負傷者への対応や再発防止対策を速やかに講ずる必要
があるため、健康器具系施設の設置場所には関係官署や公園管理者の連絡先を
掲示することが望ましい。
事故後の対応としては、事故のあった健康器具系施設への迅速な応急措置及
び本格的な措置、事故原因の調査などを行い再発防止に努める。
(解 説)
1) 事故への対応に当たっては、
事故が発生した場合には直ちに必要な対策が
講じられるよう対応を図るとともに、事故の再発防止に努める。
①速やかな連絡の重要性
・事故が発生した場合には、
負傷者への対応や再発防止対策を速やか
に講ずるため、消防署のみならず、公園管理者へも速やかに連絡が
とられるよう緊急連絡手段を確立することが必要である。
・健康器具系施設の設置場所には、
事故が起きたときに何をするべき
か示すため、少なくとも1箇所、公園名(所在地)とともに以下の
内容を掲示することが望ましい。
・救急車要請先(119番)
・公園管理者の連絡先
・最も近くに設置されている電話がある場所
②事故の再発防止
・公園管理者は、事故の再発防止対策として、事故が起きた健康器具
系施設について直ちに使用中止の措置を講ずるとともに、速やかに
補修、撤去などの迅速かつ適切な措置と事故や苦情の記録の蓄積・
整理を行う。
・公園管理者は、定期的に記録を見直し、改善すべき点を抽出し、計
画・設計、製造・施工、維持管理、利用の各段階における安全対策
に反映させる。
2) 負傷者に適切に対応するため、健康器具系施設の欠陥や管理瑕疵に起因す
る損害賠償などに備え、設置した健康器具系施設に適用される保険への加
入などの対応が望まれる。さらに、既製品を用いる場合には、製造者が製
造物責任法に対応する保険に加入しているか確認しておく。
38
■参考資料(都市公園において事故が発生した場合に適用される賠償保険の例(被保険者
が地方公共団体の保険)
)
・被保険者が都道府県の場合:
「施設賠償責任保険」
・被保険者が市の場合:おおむね「全国市長会市民総合賠償補償保険」
(
「賠償責任保
険」と「補償保険」の内「賠償責任保険」にて対応)
・被保険者が町村の場合:おおむね「全国町村会総合賠償補償保険」
(
「賠償責任保険」
と「補償保険」及び「公金総合保険」の内、
「賠償責任保険」にて対応)
39
(5)事故に関する情報の収集と活用
事故については、発生状況の記録と分析を行い、事故の再発防止、健康器具
系施設の改善などに反映させることが必要である。
事故の発生状況などの情報については、遊具や健康器具系施設に関わる者が
共有・交換し、相互に役立てることが望まれる。
特に、健康器具系施設において30日以上の治療を要する重傷者又は死者の
発生した事故が起きた場合には、関係機関が速やかに情報を共有できるよう報
告などの必要な措置を行うものとする。
(解 説)
1) 安全対策を講ずる上で、事故事例から学ぶことは多い。既に起きた事故に
ついての状況記録と原因分析は安全管理上必要なため、
これらの情報の蓄
積・整理を行い、定期的に記録を見直し、健康器具系施設の安全確保のた
めの対策に活かす。
①事故情報の記録
・事故の発生状況などの情報は、
遊具や健康器具系施設に関わる者の
間で、又は地域住民などとの間で共有することを前提に、事故の発
生日時、場所、負傷者本人の情報、負傷部位、ケガの種類・程度、
事故原因などの必要事項を分かりやすい書式を定めて記録する。
(
「都市公園における遊具の安全確保に関する指針(改訂第2版)」
p.65 参考「記録しておくとよい項目」参照)
②事故情報の活用
・事故情報は、地方公共団体内の公園管理に関わる者にとどまらず、
学校教育、児童福祉、高齢者福祉、公営住宅などの関連部署や、他
の地方公共団体の公園管理者など、遊具や健康器具系施設に関わる
者が情報を共有・継承することにより、相互の改善に役立て事故の
再発防止に資することが望まれる。
・また、
救急や医療機関から速やかに事故発生の連絡が入るようにす
るなど、情報収集のしくみの確立が望まれる。
2) 健康器具系施設を含む公園施設における事故が発生した場合については、
「都市公園における事故の防止について」
(平成2年2月19日付け建設
省都公緑発22号都市局公園緑地課長通知)
、
「都市公園の安全管理の強化
について」
(平成11年12月24日付け建設省都公緑発第89号都市局
公園緑地課長通知)及び「都市公園における安全確保について」
(平成2
6年4月1日付け国都公景発第1号都市局公園緑地・景観課長通知)をも
って、同種事故の再発防止などを図るため、その状況などを調査の上、速
やかに報告するよう公園管理者に依頼している。
40
■参考資料(
「都市公園における事故の防止について」(平成2年2月19日付け建設省
都公緑発22号都市局公園緑地課長通知)
(抜粋)
)
「公園施設に起因する事故が発生した場合、同種事故の再発防止等を図るため、当
該事故(30日以上の治療を要する重傷者又は死者の発生したもの)について、その
状況等を調査の上、速やかに当職あて報告することとされたい。
」
■参考資料(
「都市公園の安全管理の強化について」
(平成11年12月24日付け建設
省都公緑発第89号都市局公園緑地課長通知)
(抜粋)
)
「
「都市公園における事故の防止について」
(平成2年建設省都公緑発22号)におい
て、公園施設に起因する30日以上の治療を要する重傷者又は死者の発生する事故が
起こった場合には、当該事故の状況等について当職あて報告するよう依頼していると
ころであるが、同種の事故の再発を防止するためには、事故に関する情報を発生後早
期の段階で共有することが不可欠であることから、今後とも速やかな報告に努められ
たい。
」
■参考資料(
「都市公園における安全確保について」
(平成26年4月1日付け国都公景
第1号都市局公園緑地・景観課長通知)
(抜粋)
)
「公園施設に起因するか若しくはその恐れがある30日以上の治療を要する重傷者
又は死者の発生する事故が起こった場合、さらに、人的被害が発生しなくても、公園
施設に起因する30日以上の治療を要する重傷者又は死者が発生する恐れのあった事
故が起こった場合には、当該事故の状況等について当職あて速やかに報告するようお
願いする。
」
41
3-4 利用段階
(1)健康器具系施設の利用状況の把握
設置した健康器具系施設における子どもの利用状況の実態を知ることは、健
康器具系施設の安全確保を図る上で重要であり、子どもと保護者・地域住民の
協力を得て健康器具系施設の利用状況を把握し、必要に応じて利用調整を行
う。
(解 説)
1) 危険な使い方や大人と子どもの利用の混在など、健康器具系施設の利用状
況を把握することは、
安全点検における着眼点をより明確にするために重
要である。また、必要に応じて、大人と子どもの混在利用を回避するなど
の利用調整を行う。
2) 都市公園に公園管理者が常駐していないことから、
各公園に対するきめ細
かな健康器具系施設における利用状況の把握は、保護者・地域住民の協力
を得ることが有効であると考えられる。
協働して利用状況を把握すること
によって、保護者・地域住民の都市公園や健康器具系施設の安全に関する
意識を高める効果も期待できる。
42
(2)安全管理の啓発と指導
健康器具系施設に関わる事故を未然に防ぐためには、健康器具系施設の利用
状況を踏まえた上で、公園管理者と子ども・保護者や地域住民との間で、健康
器具系施設の安全確保のための対策や相互の役割分担などについて共通の認
識を持つことが重要である。
健康器具系施設の安全管理には、子どもや保護者の協力が不可欠であるた
め、公園管理者は、地方公共団体内の関係部署や地元自治会、地域住民との相
互協力のもとで、子どもや保護者が自らの服装や健康器具系施設の異常にも注
意を払うなど都市公園の安全な利用についての普及啓発にも配慮する。
(解 説)
1) 子ども・保護者が、健康器具系施設の安全確保について正しい知識を有し
ていないと、健康器具系施設の安全でない使い方や健康器具系施設での遊
びを奨めるといった危険な行為が行われることがあるため、安全確保につ
いて正しい知識が必要である。
2) 健康器具系施設の安全確保のための対策などについて、
公園管理者と子ど
も・保護者や地域住民との間で共通認識を持つとともに、相互に連携し、
情報を共有・交換することは、遊具が安全に利用される上で重要である。
①子ども・保護者や地域住民への普及啓発
・特に保護者に対し、健康器具系施設の危険な利用方法、行動、服装
など、子どもと保護者の自己責任において注意する必要がある事項
と健康器具系施設の異常を発見した場合の連絡先について情報を
提供する必要がある。また、地域住民に対しても同様の情報提供を
行い、危険な利用を見かけた場合の注意、健康器具系施設の異常を
発見した場合の連絡について、協力を求めることが必要である。
・安全確保に関する情報提供の方法には、
健康器具系施設の利用対象
年齢に関する情報等の公園での掲示のほかに、子どもと保護者の自
己責任において注意する必要がある事項等をまとめたパンフレッ
トの作成や地方公共団体発行の広報紙への掲載、幼稚園・保育所、
児童館、学校など子どもに関わる施設、地元自治会への指導協力依
頼などがある。その際、総合的な安全キャンペーンの一環として展
開することが有効であると考えられる。
・子どもと保護者・地域住民と安全確保に関わる安全な施設利用がで
きるための対策を講ずる。
②意見交換の有効性
・情報提供の際には、
公園の安全管理についてどのような対策を講じ
ているか示した上で、
公園管理者側からの一方的な働きかけとしな
いように意見交換などを行い、子ども・保護者や地域住民からの安
43
全に関する情報及び意見・要望の反映、地域住民の知識や経験を活
用することは、安全確保上有効であると考えられる。
44
用語の解説
別編で使用している用語の解説は以下の通りです。なお、
「都市公園におけ
る遊具の安全確保に関する指針(改訂第2版)
」の用語の解説も参照下さい。
事故
:健康器具系施設に関連して発生し、思いがけず心身に一定の障害・傷害ある
いは死を引き起こす出来事。
動線
:都市公園における健康器具系施設や遊具の利用者等の動きを示す線。
製造・施工者 :健康器具系施設の製造・施工を受託・請負した者。
専門技術者
:健康器具系施設の構造に熟知し、専門的な知見や詳細な点検に必要な専門的
な技能を有する者。
設置面
:健康器具系施設が固定されている地盤面、又はそれに準じた整地面。
安全領域
:健康器具系施設の安全な使用に必要とされる空間。
クリアランス :部材と部材、健康器具系施設と設置面の間隔。
標準使用期間 :通常の気象条件、立地条件、利用状況及び適切な維持管理状況のもと、安全
上支障がなく利用することができる期間として、構造部材として使用する素
材の特性等を考慮し、製造者が健康器具系施設の設計・製造時に設定する期
間。
維持管理計画 :健康器具系施設の確実な点検、定期的な修繕などの維持管理を行うために作
成する計画で、以下の事項を定める。
・健康器具系施設の種類別及び構造部材・消耗部材別の維持管理についての基本的考
え方
・健康器具系施設の日常点検や定期点検等の安全点検の実施体制、頻度・時期及び方
法
・安全点検等により発見された物的ハザードに対する措置の内容及び手順
・計画的な部材の交換、修繕等に関する事項
・維持管理に係る年度ごとの事業計画の作成に関する事項
・点検記録書及び健康器具系施設履歴書の整備等
・事故情報等への対応に関する事項
点検記録書
:安全点検の対象となった健康器具系施設の全体について、安全点検を行った
状況、点検の結果についての記録を、安全点検を実施した際に作成し、保管
するもの。
履歴書
:個別の健康器具系施設について、設置に関する記録、安全点検の実施状況、
構造部材や消耗部材についての補修、交換等の実施状況等を時間軸に従って
記録し、保管するもの。
安全点検
:健康器具系施設において、初期の動作確認のために製造・施工者が行う初期
点検、公園管理者が行う日常点検及び定期点検、公園管理者から委託された
専門技術者が行う精密点検を総称したもの。
構造部材
:標準使用期間を通して使用される部材。健康器具系施設の標準使用期間内は
その機能を全うすることができるように適切に維持管理を行う必要がある。
健康器具系施設の素材:健康器具系施設を構成する構造部材・消耗部材に用いられる、金属
類、木質類、プラスチック系材料、繊維材料などの材料。点検の際には、そ
れぞれの特性に応じた点検を行う必要がある。
予防保全
:構造部材の劣化の進行を予防する塗装などを適切に実施することなどにより、
45
健康器具系施設の長寿命化を図ること。
点検者
:健康器具系施設の点検を実施する者。点検の種類により、公園管理者、又は
技術者要件
:公園管理者が健康器具系施設の安全点検を委託する場合に、資格の保有など
公園管理者から委託された専門技術者が行う。
の点検者に求める技術的要件。
46
都市公園における遊具の安全確保に関する指針
(別編:子どもが利用する可能性のある健康器具系施設)
平成26年6月
国土交通省 都市局 公園緑地・景観課
住 所 〒100-8918 東京都千代田区霞ヶ関2-1-3
TEL 03-5253-8419
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