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そして自動人形は心を探す
刀祢梨子
タテ書き小説ネット Byヒナプロジェクト
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︻小説タイトル︼
そして自動人形は心を探す
︻Nコード︼
N8960BW
︻作者名︼
刀祢梨子
︻あらすじ︼
高校二年の秋、俺は少女を庇って死んでしまった。神様に転生
ついでにチート能力を貰ったが、それには代償が必要で、その代償
は感情だった。
異世界の遺跡で目覚めた俺︵少女︶は心を探す旅に出る。⋮⋮っ
て、その前に誰かここから連れ出して!
◇作者はこれが初作品です。投稿は不定期、調子が出たら書くと思
う。できれば完結まで行きたいです。
◇打ち切りにて終了しました。
1
登場人物
オートマトン
◇名無しの自動人形
遺跡最深部にて発見された太古の遺産。
幼い少女の姿をしている。
人間にしか見えないが、心と呼べるものを持っていない模様。
災竜と酷似した性質を持っているが、詳細は不明。
ドラグーン
ドラゴンスレイヤー
◇滅竜騎士の少年
殺意の滅竜武装を駆る期待の新人滅竜騎士。
銃身を短く切り詰めた射撃型という謎のカスタマイズがなされてい
るが、その破壊力は折り紙付き。
◇隊長
驚異的な戦闘能力とセンスを持つ人類最強とまで言われる人間。
その戦闘能力から私生活まで、謎の多い人物。
◇
2
用語一覧︵前書き︶
ネタバレ注意です。
随時更新していきます。
3
用語一覧
オートマトン
◇自動人形
太古の失われた技術によって作られた機械生命体。
作られたのは恐らく一体のみで、二千年以上の時が経った今でも動
いている。
構造は完全なるブラックボックス。
クォーツ
◇竜水晶
ブースト
エフェクト
災竜の体内で生成される物質。
感情を増幅し、エネルギーに発現する力を有する。
完全な状態の竜水晶は滅竜武装に組み込まれる。
災竜が死ぬと砕け散るため完全な状態の物は稀である。
完全体の結晶は他の破片を吸収し、成長する。滅竜武装に組み込ま
れた物も同様である。
ドラゴンスレイヤー
◇滅竜武装
竜水晶の力を効率的に運用すべく開発された兵器。
近接型、射撃型、複合型に大別される。いずれもエネルギーを収束
して攻撃するため、熟練した者ほど高い威力を発揮することができ
る。
コア周辺はブラックボックスと化しているため、現在は18機しか
ない。
◆近接型
ゼロ距離でスラスターにより加速した強力な連撃を打ち込む。
基本的には至近距離での戦闘だが、エネルギーの刃による高い貫
通力を持つ
4
◆射撃型
遠距離で後方からの支援射撃を基本とする。
リーチ
一撃の威力こそ低いものの、手数の多さと圧倒的な射程で高い殲
滅力を誇る。
◆複合型
近接型と射撃型の特徴を併せ持ち、高い汎用性を持つが、逆に言
えば器用貧乏。
決定打には欠けるが、その取り回しの良さと高い状況対応能力か
ら、多用される傾向にある。
ドラグーン
◇滅竜騎士
体内に災竜を宿した、人類で唯一災竜と渡り合える人間。滅竜武装
を武器に戦う。
極一部の適合者以外は災竜を宿すことができない。
しかも、体内に竜を宿すということは、常に死と災竜化の危険と隣
り合わせになるということでもある。
そのため、人数は滅竜武装の数よりも少ない。
さいりゅう
◇災竜
人に仇なす異形の怪物。
様々な姿形をしており、それらは総じて巨体で、強大な力を有する。
一様に機械のような羽を有する。
羽の大きさは力の大きさに比例すると思われる。
姿形により特徴がある。現在判明しているのは、虫型は動きが早く、
獣型は感覚器官が鋭く、人型は知能が高く、その名を冠する竜型は
強力無比な力を有すること。
5
◇滅竜武装の開発者
18機の滅竜武装の初号機と17のコアユニットの開発者。
三年前、忽然と姿を消した。
滅竜武装のコアが作れるのは彼のみで、彼が行方不明となっている
今、滅竜武装の開発研究が滞っている。
◇竜の心臓
滅竜武装のコアのさらに内部にある竜水晶周辺の、特定の感情をブ
ーストする機構。
この機構により滅竜武装の特性が決まる。
◇
◇
◇
◇
6
用語一覧︵後書き︶
いやー、なんというか。
自分で書いておいてかなりの厨二っぷりですね。
7
プロローグ︵前書き︶
初めまして作者です。
作者はこれが初めての小説なので、稚拙な部分などあるかもしれま
せん。
生暖かい目で見てくださると幸いです。
8
プロローグ
高校二年の秋。文化祭も期末テストも終わり、残すは終業式のみ
というある日の放課後。俺は友達数人と喋りながら歩いていた。
途中には4か月前建設が始まった高層マンションがある。こんな
田舎にこんなもん建ててどうすんだよとみんなで笑っていた。
その道に差し掛かる時、大きな物音がした。風にあおられた建築
資材が倒れて落ちたのだ。その時俺は見てしまった、落ちる鉄筋の
その先に、小さな女の子がいる事を。
俺は迷わず駆け出した。そして少女と鉄筋の間に割って入るよう
に飛び出す、それと同時に胸を貫く冷たい異物感と熱、激痛。俺は
落ちてきた鉄筋に胸を貫かれた。
押し倒すように庇った少女に目立った外傷はない。よかった、こ
れで二人とも貫かれていたら意味がない。
俺は鉄筋を少女に当たらないように払いのけ、少女を避けるよう
に倒れこんだ。それと同時に強い眠気に襲われる。
駆け寄ってくる足音に続き、友達が必死で何か叫んでいるのが聞
こえる。視界はすでに暗闇に閉ざされ何も見えない。胸には冷たい
異物感と何かが漏れ出す感覚のみ。すでに痛みすら感じない。
最後に聞いたのは、俺の名を叫ぶ声だった。
◇◆◇◆◇◆
目が覚めると真っ白いところに漂っていた。ああ、俺は死んだん
だっけ。
﹁真っ白だな、これが死後の世界ってやつか﹂
9
﹁若干違うな。まあ似たようなものだが﹂
俺のつぶやきに返事があった。おそらくこの目の前に突如出現し
た、やたらと輝いているちっさい子だろう。誰だよ、そしてどこか
ら現れた。ビビったじゃねえか。
﹁私は神だ、崇めるがいい﹂
﹁聞いてもないのに返事すんなや、てか何故わかる﹂
﹁私は神だからな、なんとなくわかる﹂
すごいだろとばかりに反り返る幼女。これで神様とか︵笑︶。
﹁で、その神様が何の用?﹂
﹁む、今失礼なこと考えただろう。﹂
﹁で、何の用?﹂
﹁むうー﹂
俺が構わず聞き返すと自称神様がむくれる。なにこれ和む。
﹁まあいい、貴様には転生の機会が与えられた﹂
﹁またテンプレートな﹂
﹁どうする?記憶は保持したままでも消してでもいいぞ﹂
記憶持ちの転生か、よくあるな。機会が与えられたってことは、
そうそう転生しないって事か。
にしても転生か。転生といえば異世界とかチートとか定番だけど、
そこらへんどうなんだろうか?異世界といえば魔法だよね。
﹁なあ、転生って異世界とかチート能力とかできる?﹂
﹁異世界は簡単だ、元からそのつもりだしな。ただ能力には代償が
10
いるぞ﹂
﹁へえ、どんな?﹂
代償と来たか。ただでくれてもいいのに。代償によっては諦めね
ばならんではないか。
﹁死の直前、最も損傷していたところに関するものだ﹂
﹁俺の場合心臓あたりか﹂
﹁貴様は少女の命を救っているからな。多少なりとも代償は軽くな
るだろう。そもそも代償といっても、克服できたり治ったりするか
ら気にするほどでもないが﹂
﹁代償治っちゃっていいのかよ。ま、治るならいいか、記憶ありの
チート付きで頼むぜ﹂
﹁よし。では第二の人生、謳歌するがいい﹂
そう神様が言った瞬間、暗闇に包まれる。次に目が覚めた時は異
世界だ。
11
プロローグ︵後書き︶
誤字脱字等ありましたら指摘していただければ修正します。
12
第1部 地下シェルター︵前書き︶
遅くなりました。
タイトルを﹁そして機械人形は心を探す﹂から
﹁そして自動人形は心を探す﹂に変更しました。
13
第1部 地下シェルター
俺は薄暗いところで目が覚めた。転生っていうことだったからテ
ンプレートに知らない天井だ、とか言ってみたかったけど、どうや
らそうは行かないらしい。
壁にもたれ掛って座っている自分の体と無機質な床が見える。寒
いから動きたいんだけど、体が軋んで思うように動けない。
﹁ここ、は?﹂
とりあえず疑問を声に出してみたが、声を出すのも一苦労だ。一
先ず行動は諦めて、現状を把握することにしよう。まあ、首すら動
かないから分かることは少ないけど。
まず自分の状態だが、体が動かないから細かいことは分からない
がどうやら女のようだ。何がって俺の体が。いわゆるTS転生って
やつだ。立てないから身長は分からないが、全体的に細くて華奢だ
と思われる。
次にこの世界についてだが、今いるところは地下シェルターらし
い。これは俺の記憶にある俺のものじゃない記憶から分かった事だ。
おそらくこの体の記憶だろう。それによると、この地下シェルター
は196年前、小惑星の墜落で分厚い雲に覆われ冷えた地上から逃
げるように作られたものだということ。その時、人類は人口の約7
割を失ったそうだ。
オートマトン
それから175年後、つまり21年前自分が作られた。言い忘れ
ていたが俺の今の体は作られたもので、いわゆる自動人形だ。
そして8年前、謎の感染病により人形である自分を残して人類は
ほぼ全滅、6年前最後の一人も息を引き取った。この体の主は6年
間の孤独に耐えられず、自らの意識を削除、つまり自殺をした。そ
れが最後の記憶のようだ。
14
それから何年たったか定かでは無いが、この記憶が確かなら人類
はもう滅んでいるのだろう。転生して早々一人ぼっちって、そんな
馬鹿な。
と、あれこれ考えていたら、いつの間にか体が動くようになって
いたので少し探索することにした。
﹁よ、いしょ﹂
掛け声とともに一気に立ち上がると身体から大量の埃が舞い上が
った。
﹁けほっ、けほっ⋮⋮ふぇえ∼。どんな長い時間座り込んでたんだ
よ、けほ﹂
それにしては身体のどこかが傷んでいる様子はないし、ほとんど
人間にしか見えないし、すごい科学力だったんだなぁ。もう誰も生
きてないらしいけど。
﹁とりあえず扉的な何かはどこ?﹂
まずはこの薄暗い部屋から外に出ないことにはどうしようもない。
扉はどこだ。
﹁お、扉はっけーん。あれ?﹂
壁をつたって歩いていてやっと扉を見つけたのだが、開かない。
押しても引いても動かない。スライドもできない。どうやって開け
るんだ?力技で開くかな?
﹁ふぐぐぐぐ、ほりゃあああっ!!⋮⋮⋮⋮はあ、はあ﹂
15
力みすぎて変な声が出るほど踏ん張ったがピクリともしない。ど
うやったら開くのだろうか?ふと扉の横にキーボードらしきものが
あるのに気付いた。が、壊れているようで反応しなかった。外側か
ら開くかとも一瞬考えたが、人間は絶滅してるから外側から開ける
人がいない。
つまり。
﹁閉じ込められたってこと?﹂
オートマトン
なんてこった。他に自動人形が動いてりゃそのうち見つけてくれ
るかも知れないけど、一体どれだけ待てばいいんだ?
俺はしばらく、どうにかここから出られないかといろいろと試し
た。
通気口から脱出⋮⋮狭すぎて入れない。窓から⋮⋮そもそも無い。
壁に穴を⋮⋮硬すぎる。
奮闘むなしく力尽きた俺は、埃を隅に払いのけ少し綺麗になった
床に寝そべる。
﹁だめだ、出られない。誰かここから出してー﹂
俺のつぶやきはむなしく暗闇に吸い込まれて消えていった。
16
第1部 地下シェルター︵後書き︶
説明するのって難しい。
タイトルは前の方がいい、と言われたら戻します
誤字脱字などありましたら修正します。
17
第2部 記憶と記録︵前書き︶
遅れました。
まだまだ続きます説明回、今回はすこし長いです。
18
第2部 記憶と記録
俺は取りあえずこの部屋からの脱出は後にして、部屋の中をもう
少し詳しく調べることにした。
﹁取りあえずは向こうのゴミ山だな﹂
そう呟いて俺は部屋の端、扉の反対側あたりに積み上げられた段
ボール箱に酷似した箱を一つひっくり返す。
出てきたのはガラクタばかり、使えそうなものは見当たらない。
諦めて次をひっくり返す。
今度は2つの小さな黒い正方形の板、なんだこれ。この身体の前
の持ち主の記憶や知識にないということは、新しく作られたものだ
ろうか?
どちらにせよ今は分からないので放置。次いこう。
﹁⋮⋮ん?﹂
ほかより一回り小さな箱から出てきたのは、灰色の棒のようなも
・・・・・
のとナイフの柄だ。
片方は知っている。棒の方、15センチ定規を分厚くしたような
形の、いわゆるパソコンと言うやつだ。正式名称は携行型量子コン
ピューター、なんという未来技術っぷり。
だがもう片方、これはこの身体の知識には無い。つまり分からな
い。
見るからにナイフの柄だが、刃がないのだ。刃だけ付け忘れたと
か外れたとかではないだろう。鍔の先には2センチほどの突起があ
る。刃が付いていたなら溝があるはずだ。
19
﹁ナイフっぽいけれど、どうやって使うんだろう?﹂
こう、飛び出しナイフ的な感じで刃が出てくるんだろうか?スイ
ッチらしきものがあるし、これを押したらビームサーベル的なかん
じで出てくるのだろうか。いいなそれ、男の浪漫。やってみよう。
﹁ぽちっとな﹂
︱︱ブォンッ
﹁うわっ。ほんとに出てきた。﹂
出てきたのは薄緑色の淡く光る全長20センチほどのナイフの刃。
半透明の綺麗な刃、これまたなんとも未来。
﹁すげー。きれえー﹂
オートマトン
思わず瞬きも忘れて見惚れてしまった。文字どおりしばらく瞬き
するの忘れてた、さすが自動人形。
﹁さて、こいつの切れ味は如何程だろうか﹂
いくら未来技術の光学ナイフと言っても切れなければ意味がない。
適当にさっき広げてたガラクタに刃を押し当てる。すると、豆腐
を切るかのように簡単に切れた。
﹁おー、すごい切れ味﹂
これはすごい、仮にも金属を易々と切り裂くとは。ここまでの切
れ味はこの世界の技術でもかなり高いところにあるだろう。
20
これは貰っておこう、持ち主はもういないだろうし問題無いよね。
ナイフに気を取られて忘れかけたけど、そろそろパソコンを弄ろ
⋮⋮調べよう。
電源ボタンは結構すぐに見つかった。お馴染みの丸に縦棒のボタ
ンがあった。この世界でもおんなじなのね。
起動すると、QICとよく分からないロゴが出てきて次にはデス
クトップらしき画面が映った。
ディスプレイとキーボード︵ぽいもの︶は水色に光る透明なガラ
スみたいなもので、何処からともなく出現した。
日付は最後の記憶の12年後を示している。そしてデータだが、
ファイル数が多い。軽く5桁はある。
取りあえずしらみつぶしに知れべるしかなさそうだから、一つづ
つファイルを開いていく。
幾つ目かのファイルを開いたところでさっきの2枚の黒い板の正
体が分かった。あれは所謂外部記憶媒体、メモリー的なものだ。パ
ソコンは分かったのにメモリーが分からないとは、この世界につい
ての知識は穴だらけなのだろうか。
て訳で後でパソコンにぶち込んで調べる。
さらに無闇矢鱈にファイルを開くとネットワークに繋がった。こ
れには少し驚いた。人間は滅んだと思ってたから、ネットワークと
か外部に通じるものは機能しないと思っていた。
そして、さらにここで驚愕の事実が発覚した。
ネットワークの今現在の日付は、最期の記憶から約6000年経
っていた。パソコンの日付がネットワーク接続と同時に書き換わっ
たところから見てこちらが正しい日付だろう。
と言ってもパソコンの時間が止まっていたところから考えると、
実際にはもっと時間が経ってるかも知れない。
俺の記憶が穴だらけだったのは長い年月の間にいくつかの記憶が
風化していたからだろうか。
それにしても、6000年以上経っても劣化してないパソコンと
21
かナイフとか、この身体とかすごいな。さすが未来技術。
ま、いいや。残りのデータを調べよう。
◇◆◇◆◇◆
パソコン内のデータを調べ終った。
パソコンの中身はこの世界の常識とかが書いてあるだけで、ほと
んど辞書みたいなものだった。ネットワークで、シェルター内部の
まだ生きてたいくつかの監視カメラに繋げられたのは収穫だろう。
メモリーの中身は片方はさっきのナイフの取扱説明書と俺自身の
オートマトン
開発計画書だった。それによると俺はこの世界で最初で最後の完全
な自動人形らしい。
ついでにさっきのナイフ、あれはこの世界の技術の粋を集めて作
られた世界最先端の技術︱︱今となっては最早オーパーツだが︱︱
だそうだ。
話を戻そう。
計画書によると、俺の体は疑似細胞の集合体らしい、なので怪我
したりすると血のようなものが出る、要するに生身の人間そっくり。
そして、俺の体を形作っている疑似細胞は電流を流すと強度が著
しく上昇する。最大出力だとダイヤモンドに傷をつけるほどの硬さ
になるようだ。ただ通電すると副作用的に発熱するため背中の放熱
機構から放熱する必要がある。
ジェット
ちなみにこの放熱機構、無駄に放熱できるらしい。というか、全
力を出せば噴流が発生する出力だそうだ。この身一つで空を飛ぶの
オートマトン
も夢じゃない。まあ着地できなさそうだからしないけど。
そしてすっかり忘れていたが、今の俺は自動人形という身体の女
の子だった。
企画書には容姿の説明はプラチナブロンドにライトブルーの瞳と
22
だけ書いてあったが、髪は自分で見た感じだとほとんど銀髪だ。長
い間に色が抜けたのだろうか。瞳の色や顔は分からない、鏡とかな
いかな。
残りの箱をいくつか漁ると姿見が出てきた。しかしどこにこんな
デカいものが入っていたんだろうか。
ちょっと鏡を覗いてみたのだが、部屋が暗くてよく見えなかった。
取り敢えず明かりを探そう。
しばらくして、薄っぺらい光る板がはまったスタンドを見つけた。
取りあえずはこれでいいだろう。
で、改めてみた俺は、酷く華奢で今にも折れそうな四肢に主張の
・・・・・
薄い胸、虹色に透き通る銀髪、色素の薄い真っ白い肌、そして透き
通るような瑠璃色の瞳を携えた幼い顔立ちの少女。
ロリコン
というよりむしろ幼女である。年齢二桁にも届いていないであろ
う幼女である。
道理で目線が低いわけだ。というか開発者共は変態ばっかりか。
23
第2部 記憶と記録︵後書き︶
失踪しかけました、すいません。
さて、今回は少しばかり長くなりましたが、如何でしたでしょうか。
次回は小惑星のことやら外の世界に触れてみようかと思います。
お楽しみに?
誤字脱字などありましたらご指摘ください修正いたします。
追※ちなみにパソコンに出てきたQICのロゴは量子産業社の頭文
字です。意味はありません。
24
第3部 家族︵前書き︶
約一か月もお待たせしてしまいました。
申し訳ありません。
25
第3部 家族
あれから十七年、いろいろ試して幾つか分かった事がある。
まず俺のことだが、堅くなる能力︱︱面倒だからそのまんま、硬
化能力とでも呼ぼう︱︱で、その能力だが、副作用の発熱は実際は
オートマトン
大した事なく、体温が4から5度くらい上がる程度だった︱︱ああ、
俺は自動人形だが、体温は一応あるようだ。まあそれも駆動系の熱
を肌から逃がしているだけだが。それに平熱は三十度ほどしかなく
て、人間からしたら少し冷たいのだろう︱︱。
ただ、硬化した時、身体中が青白く光った時はびっくりした。暗
闇だと目立ちそうである。
それと背中の放熱機構だが、無機質な銀色の羽が付いていて、こ
っちも放熱する時に青白く光った。これは計画書に書いてあった事
とは違って、ほとんど熱は吐かず何か光る粒子を吐き出していた。
それにこの羽動かせるようで、目いっぱい広げると両腕を広げる
より大きく広がった。しかし空は飛べないようだった。
あとは、独り言をぶつくさ言ってて気付いたのだが、どうも声に
抑揚というか感情が無い。というか俺自身の感情が希薄なようだっ
た。俺がこっちの世界で長い間平気でいられたのもそのせいだろう。
いや、おかげと言うべきか。
そう言えばずっとこっちの世界って呼んでるが、俺はそもそも一
度死んで転生したわけだし、こっちの世界ではなく現世とでも呼ぶ
べきだろうか。それを言えばこの容姿で一人称﹁俺﹂もどうかと思
うし、一人称は﹁私﹂にすべきだろうか。まあ俺⋮⋮じゃなかった、
私もやぶさかではないし。おっと、話が逸れた。
で、これが一番大事なんだが。パソコンが壊れた。
暇だったから入ってたチェスやリバーシのようなもので遊んでた
のだが、コンピューターに勝てなくてついイラッと来てしまった。
それで勢いで投げたら思いのほか飛んでって壁にぶつかってしまっ
26
た。
投げてから慌てて取りに行ったが動かなくなってしまっていた。
これはもう一大事である。おもちゃ、もとい娯楽が無ければ人間
は健康な精神を保てないと言うし︱︱まあ、おれ⋮⋮私は人間じゃ
ないのだけれど︱︱それで無くとも、暇は人間を殺すと言うわけだ
し。
◇◆◇◆◇◆
ああ、どうしよう。暇で暇でしょうがない。
ほとんど自業自得なんだが、取りあえずあのガラクタの山から何
か探そうか。何の部品か分からないものばかりだったが、一部お⋮
⋮私の知っている部品もあった。
アンチマテリアルライフル
それは、前世の趣味でいろんな雑学やらを調べてた途中で興味を
持った対物狙撃銃、その部品と酷似していた。
私は取りあえずそれらしき部品を拾い集めた、当面はこれを組み
立てて暇潰しをしよう。
さっそく行き詰りました。やっぱりにわかの知識じゃ如何にもな
らない。見た目だけは出来たんだけど、中身がスッカスカである。
﹁なんというか、張りぼてですね﹂
うーん、何か他にやることは無いのだろうか⋮⋮あ、ここから出
るという一番大事な目標を忘れていた。とは言っても、レーザーナ
イフでも傷がつかないし、硬化して殴っても数分で元に戻るし。如
何しようか。
時間はほぼ無限にあるのだし、ゆっくりと考えればいいか。
⋮⋮まあ、今はまずライフルを組み立てよう。
27
◇◆◇◆◇◆
あれから更に二十五年経った。
結局、試行錯誤の末にガラクタから人形が出来上がった。何故に。
ライフルは私の知識だけでは出来上がらなかった。で、諦めてい
ろいろ削ったりしてるうちに、気が付いたら人形になっていたとい
う。もう一度言おう、何故に。
ガラクタの山を漁っていて、白いプラスチックのようなものの塊
を見つけたのが切っ掛けだった。
白い塊を削って身体を作り、透明な素材を探して目を作り、よさ
げな布を解いて髪を作り、服を縫い上げ、顔料を作って塗装して、
表面を磨いて仕上げ、人形が完成した。
完成までに二十年ほどかかったが、素人にしては上出来だろう。
出来上がったのは、金色の髪に白い肌、翡翠色の瞳に白いドレスの
綺麗な人形。自分でもよくできたと思う。
オートマトン
ドール
モデルは私自身だから私にそっくりである。さしずめ姉妹と言っ
たところかな。私は自動人形この子は人形、今世の私の家族である。
人形同士仲良くしようねー。
そこ、かわいそうな子とか言うな。
28
第3部 家族︵後書き︶
今回は約四十年ほど吹っ飛ばしました。
前回の予告は忘れてました、すいません。次回こそはシェルターの
外のお話です。
それと、ちょっと文体が変わってますが、それはまあご愛嬌という
やつで。
次回はちょっと本編から外れて、説明回になります。説明ばかりで
すね。
誤字脱字等ありましたら修正いたします。
29
第4部 ある少年の戦い方︵前書き︶
更新ペースが半月ごとになってる⋮⋮
今回も若干長いです。
ほとんど説明できてないorz
30
第4部 ある少年の戦い方
俺は元々この世界の人間じゃない。
まあそんなことはどうでもいい。この世界の人間だろうが、そう
じゃなかろうが、この世界で生きていくためには戦うしかないのだ。
要するに何が言いたいかというと、現在戦闘中。
二年前の大地震の折に出現したという地下遺跡。俺たちはその遺
跡の調査に向かっていた。
遺跡まであと少しという所で災竜の大群に遭遇してしまった。
この辺りにはいなかったはずだが、こうなってしまったからには
戦うしかない。が、今のメンバーでは少々辛い。
災竜とは人に仇なす異形の怪物だ。災竜について詳しいことは何
も分かっていないが、確実に言えるのは人類の敵ということ。
災竜の姿は様々だ。巨大な虫のようなものから獣のようなもの、
人型のものもいるし、ドラゴンみたいなものもいる。ただ、どの形
にも一つの共通点がある。災竜は形はどうあれ機械のような硬質の
羽を持つ。
現在、俺たちの目の前にいる災竜は、八割が虫型で二割が獣型と
いったところか、小型災竜ばかりだがなにしろ数が数だ。
虫型の災竜は、昆虫を大きくしてごつい足に岩や金属板をくっつ
けた姿を想像してくれると分かりやすいだろうか。獣型も似たよう
なものだが、こちらはキメラのように歪な狼やサイが近いだろう。
今回は調査という事だった上に、強力な災竜は確認されていない
ドラグーン
という事で、五人中三人が新人で二人は実戦経験がほぼ皆無、残り
の二人も片方はあまり戦闘向きな滅竜騎士ではない。まともに戦え
るのは隊長だけだ。
31
俺も戦ったことがあるが、それはこの世界に来る前の話だ。対人
戦の経験が化け物相手に通用するとは思えない。
﹁た、隊長!どうするんですか!?﹂
新人の一人が混乱して声を上げるが、どうするもこうするも囲ま
れてしまっては戦うしかない。
﹁こうなったら戦うしかねぇだろうなあ⋮⋮ふぁあー⋮⋮﹂
隊長も俺と同じ意見のようだが如何にも覇気がない。大丈夫かこ
の人。
﹁副隊長∼、隊長がやる気ありませんよぅ、どうにかしてください
ぃ﹂
﹁あ−、お前ら新人は隊長の実力知らないか﹂
﹁どういうことですか?かなりやばい状況じゃないですか!?﹂
﹁うぇえん、もうだめだぁああ⋮⋮ふぇぇええ﹂
副隊長は冷静だが残りの新人一人は慌てふためき、もう一人に至
っては泣き出してしまった。これから災竜と戦うってのに、大丈夫
かなあ⋮⋮
ちなみに俺はさっきから無言で一人隊長の後ろに控えている。隊
長がどうするのか少し楽しみだ。
そしてその隊長はと言えば。
﹁あーねむ、︽武装展開︾﹂
ドラゴンスレイヤー
なんともやる気のない掛け声と共に、隊長はユニットを展開する。
隊長の滅竜武装は中距離戦と汎用性を重視した複合型だ。複合型
32
の特徴は癖が無く扱いやすいことだが、逆に言えば優れたところも
・・・
無いということ。
しかし隊長は一般的な複合型の射程外にいる災竜に照準を定める。
そう、あくまで一般的な、である。
隊長がトリガーを引いた瞬間、エネルギー弾が高速で撃ちだされ
る。それらは寸分違わず災竜の羽に吸い込まれていく。
災竜の力は羽の大きさとだいたい比例する。そして、羽を失うと
力が激減するのだ。ただ、災竜の羽は硬いためなかなか壊せるもの
では無いと教わったのだが。
どうやら俺の心配は杞憂だったようだ。と言うか隊長、あんた何
者だよ。
﹁なっ!なんですかそれ!すげ、隊長まじですか!﹂
﹁ぐすっ⋮⋮隊長すごい、すごいけどぉー⋮⋮すごい勢いでこっち
来てるじゃないですかぁ!﹂
﹁んー、羽削ったからお前らでも狩れるだろ、がんば﹂
﹁そういうことだ。頑張りたまえ新人﹂
隊長達はのんきにそんなことを言ってくれるが、いくら弱体化し
た竜でもこの数は新人にはキツイ。
隊長なら簡単に倒せるんだろうが、恐らく新人研修の一環なんだ
ろう。無茶言うぜまったく。
﹁⋮⋮やるしかないか︽武装展開︾﹂
俺は自らの滅竜武装ユニットを展開する。
アサルトタイプ
滅竜武装は感情を力に変える武器だ、つまり思いの強さがそのま
ま攻撃力に直結する。
クォーツ
俺の滅竜武装は射撃型で、中でも扱いやすいという強襲型の銃身
を増設し、切り詰めて近距離戦を意識したカスタマイズ。竜水晶の
33
特性は殺意。
ブースト
竜水晶ってのは滅竜武装に組み込まれた、感情をエネルギーに変
える滅竜武装の心臓部のことだ。
装備している竜水晶により、使用者の対応する感情を増幅するた
め、戦闘中はその感情が顕著に表れる。
竜水晶の特性は、﹃喜﹄﹃怒﹄﹃哀﹄﹃楽﹄﹃愛﹄﹃憎﹄の六種
類に大別される。俺の殺意の竜水晶は﹃憎﹄に分類される。
ちなみにそれぞれ、隊長のは﹃楽﹄に分類される弛緩の竜水晶、
副隊長は﹃怒﹄に分類される緊張の竜水晶、ハイテンションの方の
新人は﹃喜﹄に分類される興奮の竜水晶、べそ掻いてる女の子は﹃
哀﹄に分類される悲嘆の竜水晶だ。
俺は腰だめで構える。俺の滅竜武装は至近距離で秒間八十発以上
の弾丸を叩き込む事で最も威力を発揮する、しかし今回は最大威力
は必要ない。隊長の攻撃で弱体化された災竜に対してならこの距離
からでも十分だろう。
照準を右翼に合わせトリガーを引く。瞬間、爆音と共に大量の弾
丸が打ち出される、射線上にいた数頭の災竜の全身に弾丸が雨霰と
降り注ぐ。
全身に数十発の弾丸を受けた災竜は一瞬にして蜂の巣になってい
く。俺は殺意の弾丸を吐き出し続ける銃口を左へと滑らせる。
右から順に災竜が砕け散っていき、後に残るのは粉々の災竜だっ
たもの。射線の通った後には、災竜の特徴であるどす黒い紫の体液
が飛散する。
前方を包囲していた災竜の群れは粗方片付いた。あとは残り二人
でも大丈夫だろう。
まあ、その肝心の二人は呆気にとられて固まっているが。
﹁⋮⋮はっ!俺たちだって!﹂
﹁え?あ、はい!﹂
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どうやら俺の視線を受けて二人とも動き出したようだ、あっちは
放っておいても大丈夫だろう。俺も一応新人だから偉そうなことい
えた立場じゃないが。
前方の残党は二人に任せて俺は後方、挟み撃ちの形になっていた
災竜の群れの殲滅を行う。
時間差でやってきていたため、まだ距離は射撃型ですら射程外。
その上此方はまだ万全の状態だ、恐らく同じ手は通用しない。
俺の装備は射撃型だが、銃身を切り詰めたせいで複合型ほどの射
程しかない。中てるにはもっと近づく必要がある。
俺は腰を落として迎撃態勢を整える。さっきも言ったが、俺の滅
竜武装は遠距離で複数を相手取るようにはできていない。
だが、滅竜武装の本領は思いの強さを力に変えること。その力は
意志の力によって性質を変える。
俺は銃身の先に力場の銃身を組み上げる。一時的な銃身の延長、
その上組み立てられた力場の銃身は弾丸の威力を底上げする。
そして俺はトリガーを引いた。先程とは比べ物にならないほどの
轟音と反動。しかしそれは威力と射程も同様。撃ちだされた弾丸は
目標に吸い込まれ、そして、爆ぜる。
災竜が次から次へと爆発四散する。精度の甘さを弾数の多さで補
う。破壊力だけならば、俺は隊長と同じかそれ以上の瞬間出力を有
する。
延々と撃ち続け、災竜の足音が消えたところで射撃を中断する。
撃ち続けたことで銃身は赤熱しており、反動で巻き上がった土煙で
視界もいいとは言いがたい。が、すべて倒したのだから問題は無い。
俺は武装を解除し唖然としている隊長たちのもとへと戻ることに
した。
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第4部 ある少年の戦い方︵後書き︶
ほんと、亀更新で申し訳ないです。
前回﹁秘密に迫るよ!﹂的な事を言っておきながら、何にも説明で
きてません。次回予告なんて忘れてたね!
今回、説明回を通り越して設定資料的なものを直接載せるという暴
挙に出ました。
資料は先頭に割込みで載せたので、興味があったら見てください。
基本、読まなくても大丈夫なはずです。
※追 指摘がありましたので、災竜の描写を加筆修正しました。
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第5部 遺跡の調査︵前書き︶
超遅くなりました。
別に忘れてたわけじゃない︵言い訳
結構文体が変わってるかもしれません。
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第5部 遺跡の調査
災竜の大群との遭遇というアクシデントはあったものの、俺たち
は無事遺跡にたどり着いた。
地表に出ているのは遺跡の一部のみで、その地下にはさらに大き
な遺跡があるという。今回はその地下遺跡の調査に来たわけだ。
この調査の目的は、二千年ほど前に滅んだという文明の技術を探
し出しそれを回収すること。ようするにオーパーツを拾ってこい、
ってことだな。
地表に出ている遺跡のほとんどが風化して脆くなっているが、柱
ドラゴンスレイヤー
や骨組のほとんどは朽ちずに姿を保っていた。試しに柱に向けて砲
撃してみたのだが、堅すぎて滅竜武装でも傷一つ付けることができ
なかった。
そして地下への入り口。それは床にあいた大穴だった。
穴の底には、遺跡の街並みが大穴から漏れる太陽の光で幽かに照
らされている。直下の街までの高さは目測でおよそ二百メートル。
これだけでもこの遺跡がとてつもなく巨大だという事が分かる。
とにかくここで突っ立っていても仕方がないので、俺たちは持って
きたワイヤーを下して遺跡に降り立った。
降りる前から見えてはいたが、実際に見てみるとやはりと言うか、
家のほとんどは朽ち果てて今にも崩れ落ちそうな状態だった。
地面にも時々亀裂が走っていて奈落の底のような暗闇をのぞかせ
ていた。下にも空間があるようで、このフロアを一通り探し終わっ
たら下に降りる方法を考えるそうだ。
災竜の気配も無いし、降下地点のすぐ近くに開けた場所があった
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ので、そこに臨時キャンプを張って一休みしてから探索することに
なった。
探索は俺と隊長、他三人という二つのチームで行う。俺と隊長は
キャンプから北へ、副隊長たちは南へ向けて、四時間後に集合とい
う事でそれぞれ行動を開始した。
◇◆◇◆◇◆
しばらく歩くと、少し大きめの倉庫のようなものがありそこだけ
は風化が比較的穏やかだった。
中はやはり倉庫のようで、たくさんの箱が並んでいたが、そのす
べてが触れた瞬間に砂のようになって崩れてしまった。
しばらくそうやって箱を砂に変換する作業?を続けていると、明
らかに雰囲気の違う箱を見つけた。
中身は前衛的なデザインのハンドガンで、マガジンを挿すところ
には何かのバッテリーがはまっていた。レーザーガンみたいなもの
だろうか。それが十五丁入っていた。
﹁隊長、これは⋮⋮﹂
﹁ああ、なに?﹂
﹁これハンドガンかなにかだと思うんですけど、回収しますよね?﹂
﹁ん?ああ、そうじゃねえの﹂
いやそんな適当な。あんた隊長だろう、もうちょっと考えろよ。
とりあえずこれは中身が劣化していなかった唯一のものなので、
回収することにした。
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それからしばらくして俺たちは壁にたどり着いた。と、思ったの
だが⋮⋮どうやら巨大な柱のようだった。
大きすぎて円形の柱が壁に見えるほどだ。このサイズからして、
この遺跡を支える中枢の柱なのか、それとも内部に何かしらの施設
を備えているのか。取り敢えず一周して入口か何かを探すことにな
った。俺が。
﹁なぜ俺だけなんだ⋮⋮﹂
思わずぼやいたら、隊長にヘッドロックをキメられた。痛い痛い
!どんな力だよ?!首が!首が?!
︱︱ミシミシ⋮⋮
音!音が!首から鳴ってはいけない音が!
︱︱メキッ
◇◆◇◆◇◆
ふう、死ぬかと思った。
目が覚めたら隊長が覗き込んでて、驚いて悲鳴を上げたらまた絞
められた。お花畑がみえました。
で、結局柱らしき巨大建築物を一回りしてきたわけだが、一周す
るのに一時間近くかかった。円周はおよそ五キロメートルだろうか。
開始地点から右回りに三キロ程、つまり隊長のいるところの裏側
あたりだ。そこに僅かに開いた扉を見つけた。
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それを隊長に伝えたところ、そろそろ時間だから一度戻ってもう
一度来るとのこと。
隊長がキャンプで寝て待ってるなどとほざいていたから引っ叩い
た。また絞められた。
41
第5部 遺跡の調査︵後書き︶
今までの半分くらいを書くのに二か月もかかるとは。
プロフィールにも書いてますが、もう来月あたり受験なのでまた滞
ります。
ごめんなさい。
しかし、完結までは持っていくつもりですので、見捨てないでくだ
さい︵切実。
ところで、ここまでキャラクター名を一切出さずにやってきました
が、若干後悔中です。
このまま突き進むか、名前付けるか、意見ください。
何にも言われなかったらこのまま行きますが。
誤字脱字などありましたら、ご指摘ください。
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第6部 邂逅︵前書き︶
とりあえず一言、申し訳ありません。
文章が大分変ってる気がします。というかかなり変わってます。
43
第6部 邂逅
件の巨大建築物、その中身は巨大なエレベーターだった。
そしてたどり着いたエレベーターの底。エレベーターにこれより
先がなかったことからも、恐らくここが最下層だろう。
そこには幻想的な景色が広がっていた。
床を突き破るように生えているのは、淡い光を放つ透明な水晶。
天井の暗闇にも星のような煌めきが見えることから、天井からも生
えているのだろう。
光る水晶は徐々にその光を増し、その光は次の瞬間には光の粒子
となり弾けるように霧散する。
飛び散った光の粒子は空間を淡く照らし、蛍のように瞬き、消え
ていく。
最初に我に返ったのは隊長だった。
﹁おい、お前ら。とりあえず進むぞ﹂
隊長のその一言に我に返った俺たちは、一応周囲を警戒しながら
歩き出す。
途中、思い出したかのように副隊長が水晶の採取をしようとして
いたが、ナイフでは傷一つつかなかった。
そこでものは試しにと滅竜武装で削ったところ、削れたはいいが、
削れたところから光の粒子になって消えてしまった。如何にもよく
分からない物質だった。
エレベーターを中心に、半回りしたあたりだった。かなり遠くの
巨大な水晶が目に入った。
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周りの水晶がゴマ粒ほどにしか見えない中で、その水晶ははっき
りと視認できる程の大きさを誇っていた。
﹁隊長、あの水晶⋮⋮﹂
俺が思わず声に出すと、隊長もその存在には気づいていたようで、
すぐさま返事が返って来た。
﹁ああ、かなりデカいな。さっさと行くぞ﹂
そう言うと隊長は、弾かれたように飛んでいった。
俺たちは顔を見合わせて、やれやれと言った風に肩をすくめて走
り出した。副隊長は眉間によった皺をもみほぐしていたが。
◇◆◇◆◇◆
目の前まで来ると、その大きさは圧巻だった。
視界を埋め尽くすほどに巨大な水晶は、巨大な一つの水晶では無
く、数多の水晶の集合体だった。
・・・・・・・・
そして、その水晶の集合体は何かを守るように歪なドームを形成
していた。
﹁おい、気付いたか?﹂
﹁ええ。何があるのかは分かりませんが、構造には﹂
﹁なんとなく、何かを守っているような﹂
﹁え?なに?どうしたの?﹂
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隊長以外もこの近さまで寄れば、この集合体の構造には気づいて
いたようだ。若干一名を除いて。
﹁なにが在るかは分からんが、取り敢えず⋮⋮﹂
そう言いながら隊長はおもむろに武装を展開する。
ん、なにか嫌な予感がする。まさかこんな至近距離でブラスター
︵着弾後に指向性のあるものの、周りを吹き飛ばす爆発を起こす特
殊弾︶なんか使わないよな?
﹁突・撃!﹂
︱︱ドガァアアアアン!!!
隊長の掛け声と共に爆発が生じる、水晶の壁に穴が穿たれ、それ
に伴って大量の光の粒子が辺りに撒き散らされる。
光の煙が大方散った後には、大人二人が並んで歩けるほどの大穴
が開いていた。
﹁隊長!ちょっとは後先考えてくださいよ!﹂
﹁さて、鬼が出るか蛇が出るか﹂
隊長は、副隊長の抗議など聞こえていないかのようにスルーして、
穴の中へと歩んでいった。
俺たちもいまだ光の靄の残る穴へと足を踏み入れる。
何気に長い穴を抜けると、突っ立っている隊長の背中が目に入っ
た。
﹁隊長?﹂
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呼びかけても返事の無い隊長を怪訝に思い、隊長の顔を窺おうと
脇から顔をだし、止まった。
硬直した隊長の視線の先。蓮の花のような形をした水晶。その中
心で眠っているのは、
美しいとしか言い表せないような、真っ白な少女だった。
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第6部 邂逅︵後書き︶
はい、終わりました。
打ち切りです。終わったんです。
言い訳をさせて貰うと、何時だったか活動報告に﹁プロット書いて
からまた続きを書くね﹂みたいなことを書きました。
で、ですね。じっくり、ねっとりプロットを書いてましたら﹃根底
は一緒だけど全く違う作品﹄のプロットが出来上がりまして、﹁あ、
こりゃ続きかけねえな﹂と悟ったのです。
中途半端にエタるのは申し訳ないというか、かなりアレだったので、
打ち切りエンドで無理やり終わらせた所存でございます。
伏線とかまったく回収できてませんし。
最後の最後で、いやどうして女主人公水晶の中で眠ってんの?!と
か思った方もいらっしゃるかもしれません。
読者様や男主人公が知らないうちになにかあったんです。なにせ二
千年ですから、きっとなにかあったんです。
この度は本当に申し訳ありません。
出来上がったプロットの方ですが、ある程度書き上がり次第、次回
作︵リメイク?︶として上げる予定ですので、あまり期待せずに待
っていてくださると幸いです。
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PDF小説ネット発足にあたって
http://ncode.syosetu.com/n8960bw/
そして自動人形は心を探す
2015年11月3日20時58分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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