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Melanometer応用に際しての基礎的検討
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守**
山 本 一 哉*,鈴 木
Fundamental
Studies on Application of Melanometer
KazuyaYamamoto and Mamoru
皮膚色を評価するに当って,肉眼的には相対的比較に
Suzuki
meter或いは簡易察色沢計が皮緋色変化の測定のため
よって微小な色差をも感ずることが出来る.それ故,同
に,必しも有栽な只でないことを述べた.未発表である
時に一対或いは1群の被検体に対して肉眼的な比色を行
がわれわれぱ従来から簡易型色沢計を用いてSun
なえばかなり正確な評価が可能である.しかしながら肉
ningを目的とした化粧品の奴果を検討して或る程度の
眼的評価に基く定量的数値表現は厳密な意味では不可能
成果を得ているのでmelanometerによる皮膚色測定の
である.又,比色の時期が異なる場合,一対の被検体が
応用範囲を求める目的で本機応川に際しての基礎的検討
離れた位置に存する場合,或いは観察者が異なる場合に
を行なうに至ったのである.
は肉眼的比色はより困難となり,たとえ熟練した観察者
Melanometer機能の検討
であっても,その評価に主観が介入することは免れない
1.
であろう.従来,これを補う一つの方法として比色カー
Melanometer及び色沢計の原理及び概略にっいては川
ドがしばしば用いられるが比色カードは連続的な全色を
Melanometerの機構と原理
村ら1)及び高瀬ら9)によって述べられているので簡単に
表現していないし,又.皮膚と比色カードの表面物性の
述べる.
相違により正確な評価は不可能である.
第1図 Melanometer
一方,色の客観的かっ定量的評価の具として分光光度
計を始めとする種々の鉄器,装置が発展応用されつつあ
る.これらは特に染料及び塗料産業において,多いに活
用されているが未だ微妙な色のニュアンスに関しては肉
眼的判断に頼らざるを得ないと云われている.従って,
われわれはこの点について一層の検討を行なうことによ
って,これら機器により客観的かっ定量的な色に対する
数値表現がどの程度可能となるか究明することを試みん
とするものである.
皮膚色測定の鉄器として精密型或いは簡易型光電色沢
計がしばしば用いられている.又,川村ら1)はDaniels2)
の研究を基にしかmelanometerを開発し,皮膚色の数
値表現を試みている.しかしこれら機器に対する評価は
まちまちであり,精密型光電色沢計を使用した斉藤ら3),
宮里ら4‰及び竹内ら5)6)の成績では本器の有鼓性が示
唆されたが田多井ら≒加納ら8)及び高瀬ら9)はmelano *
国立小児病院皮膚科
**
ポーラ研究所
昭和42年7月5日受付 特掲
scree-
一832
−
昭和42年11月20日
833
第2図 Melanometer模型図
第1表 Melanometerと色沢計のFilterの
分光波長と応用分野
波長(mμ)
Filter
melanometer
色 沢 計
RGBL
619.8
590∼700
547.8
590∼490
400.0
490∼380
可視部
一
て用いられ,L
☆︼仁
第3図 簡易型色沢計模型図
filterは視感反射率を示す.
以下melanometerにR
filterを附した測定値はme-
lanoraeter R 或いは色沢計にG
filterを附したものは
色沢計Gの如くに略記する.
Melanometer
(東芝Melanometer
MC-1
型)の外観
2.
Melanometerと色沢計の使用上の比較
は第1,2図に示す如くであって,その原理は直径5m
色沢計の受光部は第3図に見られる如く,広い平板を
以内の円孔受光部を被検体面に接着させ,白熱電球光源
成しているため,凹凸面のある被検部に密着出来ないが
からの投射光に対し,45度方向の拡散反射光を硫化ca-
melanometerでは直径5謂以上の平担面には接着可能
dmium光電導体に受光せしめ,反射光量に比例した電
であった.なお,これら機器による測定値はそれぞれ3
気量を指示計に拡散反射率(%)として示すのである.
回測定した平均値である.
なお,電圧変動による電気量の変化を一定にするため,
定電圧装置を内蔵している10)
色沢計(東芝簡易型光電色沢計CG-3-B型)の原理は
第2表 Filterを変えたMelanometerと色沢
計によって測定された上腕伸側皮膚色
の平均値と標準偏差
melanometerに類似し,その外観は第3図に示す如く,
ている11)
これら機器には第1表に示すfilterか附属し,使用の
目的に応じて適宜に選択使用する.即ち,R
ラニソ色,G
filterは血色,B
filterはメ
filterは青色要素に対し
Mlanometer
RGBL
その受光部はかなり広い平板内に28m直径の円孔となっ
42.7土4.5
31.9土4.3
25.3±4.9
−
色沢計
41.6土4.8
22.5土4.8
19.0土4.4
30.0±5.0
834
日本皮膚科学会雑誌 第77巻 第11号
本邦男性成人16名の個体の上腕伸側皮膚色をこれら両
機を用いて測定したが,測定に際しては可及的同一部位
第3表 前腕屈側皮膚及び色票に対するMelano meter R 測定及び肉眼的観察
! 肉眼的評価
を測定するように努力した.第2表には各種filterを用
Melari-
いての測定値と標準偏差を示した.当然のことではある
彼検本部
がfilterの相違によって測定値は異なり,同種filterを
ometre
R値
色 相
用いても機器の相違によっで異なった測定値が得られ
た.標準偏差は機器及びfiilterの相違があっても4.3∼
5.0の範囲にあった.
3.肉眼的評価とmelanometer測定値の比較
1群7名(成人男子3名,女子4名)の右前腕屈側皮
膚色をmelanometerと肉眼によって観察した.肉眼的
観察値は6人の観察者の評点の総和で示された.各観察
者の評点表示法は7人の被検者の皮膚色を濃度順に順位
づけし,それぞれ相隣合った順位のもの間に著明な差を
第4図 Melanometer測定値と肉眼的観察値の相
関(かtestにて直線は適合する)
邑の三属性
色調
彩度 明度
約
47.5
淡桃 約
黄色 5.5∼6.5
釣
2∼3 19
約74.0
淡桃 5.5∼6.5
黄色
2∼3 19
暗灰
5.5∼6.5
褐色
1∼3 17
前腕掴側
前腕屈側と肉
眼的にほぼ同
等の色票
前腕別個とほぼ
同等のMelan約47.5
ometer R値を示
す色票
16∼
皮膚及び色票の色に対してめ肉眼的感覚とmelanometer測定の相違について第3表に示した.表中検体皮膚
のmelanometer
R値は47.5であり,薄色の色票は肉眼
的に皮膚色とほぼ一致するものであったがそのmelanometer R 値は74.0であった.又,濃色色票はmelanometer R 値が皮膚の47.5と一致するものであったが肉眼
的に見ると極めて相違した.それ故,肉眼的にほぼ一致
する色であっても皮膚と色票のmelanometer測定値は
20以上相違するという結果を得た.
Sraili' J3︸3lU0UtlJ8W
5.
MunseUの色感覚に関する三属性とmelanome-
ter測定値との関係
Munsellの色感覚に関する三属性についてあらかじめ
第5図 無彩色を軸とした球形分布で全色を表現した図
白
肉眼的観察値
認めた場合2,著明ではないが差を認めた場合1,並び
禄
に殆んど差を認めなかった場合Oという加算評点を設定
した.最も濃色に認めたものに基本評点1を与え,濃色
傾向のものから順次,加算評点を累加した点数を各被検
者の皮膚色に対する肉眼的評点とした.
一方,肉眼的に観察した部位と同一部位の皮膚をmelanometer R,G及びBにて測定し,肉眼的観察値との関
係を第4図の如く求めた.この図に示された各点は戸
testにより(P=0.05)直線関係が成立した.
4.皮膚及び標準肌色色票に対するmelanometer
測定値
黒
色相は軸を含む分割面(右下り斜線で示した面),明
度は軸との直交分割面(左下り斜線で示した面),彩
度は軸との距離で示され,これら三属性が球体内の
点を示す3つのdimensionとなる.
赤
昭和42年11月20日
835
第4表 Melanometer
R値と三属性間の関係を
検討する為の肌色々票選択条件
固定した属性名
固定した
属性値
の勾配は彩度とのものより急峻であった.これはmelanometer測定値が三属性のうち,明度によって最も影響
彩度 明度 色相 明度 色相 彩度
されることを示している.
A系列
3.0 18.0
6.0 18.0
6.0 3.0
機器要因性の測定値変動に関する検討
B系列
2.0 17.01
5.0
17.0
5.0
皮膚色に対するmelanometer測定値は時期を変えて
C系列
1.0116.0
4.0
16.0
4.0 1.0
2.0
変化させた属性
名
色相
彩度
変化させた属性
値の範囲
1.0∼
7.0
1.0∼
16.0∼
4.5 19.0
明度
測定するとかなりの変動を示した.従ってその変動が機
器要因性のものか否かについて検討を加えた.
Melanometerは定電圧装置を内蔵しているが更に定
電圧装置(東芝光電式定電圧装置PS-IA型)を介して採
電した際とそれを介さない場合についてmelanometer
のみを変えた.
指針の変動を観察した.
ノ仁
注;三属性の内,二属性を固定し,他の一属性
第6図 Melanometer
R と肌色色票における色相,
彩度,明度との相関
Melanometer校正箱底部の白ガラスに受光郎を接着
させ,10分後から10秒間毎の指針の最高と最低指示値を
読み,3分間続けた.この指示値の平均値に対する標準
偏差(最終的には標準誤差)を変動の示標とした.その
︵巴珊型黙1ご9︶2云
結果は第5表に示すように,定電圧装置を介した場合の
第5表 定電圧装置を介して採電した時の
Melanometer指針の変動
標準偏差
実験No.
装置有
装置無
標準偏差の
百分率(%)
1
1.29
1.71
75.4
1_ユ L_ L
拓 78 2ひ
2
0.78
2.37
32.8
明摩
3
1.53
3.12
49.0
4
1.69
3.16
5
1.37
1.27
107.9
これを三属性と呼ぶ.色を総体的に見ると白から黒まで
6
1.22
1.40
87.1
の無彩色系を軸とし,これら三属性を3つのdimension
7
0.48
0.73
65.8
とした球形に分布せしめると全色が表現出来る.3つの
8
0.57
1.71
33.3
dimensionのうち,色相は軸を通る平面分割,彩度は
9
0.30
0.54
55.5
軸からの距離,明度は軸との垂直分割面を示す(第5
標準誤差
0.34
0.59
57.1
3 ら
色相
了
3
彩度
弓
簡述する.色は感覚的に色相,彩度及び明度から成り,
53.5
図).この概念はOstwaldによるものであるがMunsell
指針変動の読みの標準偏差を指標として,同装
は球形分布を歪形楕円球分布に修正した1町
置を介した時の標準偏差を,介さない時のもの
で除した百分率で比較した.
Munsellの色感覚に関する三属性を基にして作られた
肌色色票(目本色材研究所)を第4表に示す如く,三属性
標準偏差は0.30∼1.69,定電圧装置を介さない時のもの
のうち2属性を固定し,残り1属性を変えて選び,各属
は0.54∼3.16であった.標準誤差で比較すると定電圧装
性毎に3系列作った.それら系列の各色票をごmelanom-
置を介した時の変動はそうでない場合よりも57.1%に減
eter R にて測定し,三属性とrnelanometer
少した.(註,この項目以外の実験は定電圧装置を介し
を第6図に示した(x'-test,
Rとの関係
p=0.05).本実験範囲内にお
て行なっていない.)
いてはmelanometer測定値と色相との間にはx軸(色
一方,一定の色を示す肌色色票(ほ本色材研究所)を
相値)に平行な直線関係が得られmelanometer測定値
時期を変えて,4回にわたってmelanometer
は色相によって影響されなかった.明度及び彩度との関
し,一色票に対する4回の測定値をt-test
係はかなり急勾配の直線関係を示し,特に明度との直線
にて有意差の有無を検討した.第6表に見られる如く,
R で測定
(P=0.05)
836
日本皮膚科学会雑誌 第77巻 第11号
第6表 Melanometer
Rによる肌色色票の測
第7表 各部位におけるNIelanometer
R 値及
び個体差分布率並びに露出部と被覆部
定値及び同一色票内における測定値間
の有意差の有無(ただし,日時を変え
における個体差分布率0比較
て測定)
色 票
急性
色和
一
彩度
一
明度
A
B
6.5
2・5
5.5
17.5
C
D
E
F
7.0
7.0
6.0
7.0
3.0
1 3‘0
18.0
部 位
17.0
2.0
18.0
額 部
44.7
75.0%
右傾部
46.2
57.工
17.0
左頬部
44.8
67.8
50.7
71.4
2.5
17.5
1.5
1
72.5
71.7
61.3
69.0
58.2
55.0
右胸部
2
72.3
72.0
61.7
68.8
59.0
55.5
左胸部
51.0
89.3
3
72.2
71.8
61.7
68.7
57.8
54.3
右背部
49.1
82.1
54.3
左背部
48.9
78.6
54.3
右上腕押側
49、6
78.6
無
左上腕利他
51.1
78.6
左上腕押側
49.5
78.6
E票を除く各票の測定値は時期を異にしても差があると
左上腕別個
51.2
67、8
はいえなかった.E票に関しては色票の表面にわずかな
平 均
48.8土2.5
75.0
実
験
番
号
4
平 均
有意差
72.8
72.5
無
71.5
71.5
61.8
61.6
熊
無
68.7
68.8
59.3
58.6
無
宥
露出部と被覆
部の個体差分
布率比較
個体差
分布率
測定値
露出拓
郎.9土9.0
P−
0.1
被覆部
80.4土7,5
凹凸があり,受光部の接着が完全でなかったことに起囚
第8表 各個体における諸種部位のMelanom eter R平均値及び部位差分布率
するものと考えられた.
皮膚要因性の測定値変動に関する検討
個体番号
1.皮膚色の部位差と個体差
8名の個体(男子)のそれぞれ額部(正中部,眉間上
1 cm),左右頬部(頬骨部),左右胸部(乳頭中央部直下3
cm),左右背部(肩甲骨下縁直下5
cm)及び左右上腕屈,
仰側計11部位を数回にわたってmelanometer
R にて測
定した.各個体の各部位毎の測定値から部位差及び個体
澗 定 値
49.2
56.4%
B
45.8
63.6
C
50.4
78.2
D
51.5
67.3
80.0
E
50.2
、F
48.9
81.8
G
47.3
63.6
47.4
80.0
差の分布率を求めた.部位差分布率は各個体毎に測定さ
れた11部位のうち,2部位ずっを相対させて組合せを行
H
なうと55組が出来る.これら各々の組合せた部位間の
部位差分布率
A
平 均
48.8十L9
71.4
−
melanometer測定値に有意差があるかないかをt-test
第9表 被覆部と露出部におけるMelanomet er R 値の比較
(P=0.05)にて検討し,有意差を示した組合せ数と全
組合せ数の百分比をもって部位差分布率とした.又,個
体差分布率は同様な考え方で各部位毎に2個体間のme-
部 位
lanometer測定値を対比せしめたものである.
測定値
平均値
額部1
44.7
|
右傾部
46.2
布率を示し,第8表に各個体毎のmelanometer測定値と
左傾郡
44.8
45.2士0.8
|
部位差分布率を示した.個体差分布率は右頬部57jから
右胸部
50.7
左胸部
51.0
右背部
49.1
左背部
48.9
露出部
第7表に各部位毎のmelanometer測定値と個体差分
左胸部の89.3%の間にあり,平均すると75%であった.
部位差分布率は個体A
抜擢部
CO56.4から個体Fの81.8%間にあ
り,平均値は71.4%であった.従って,部位差及び個体
差はかなり広範囲に分布すると云える,更に,部位差
分布率は露出部より被覆部にて大であった(t-test,
有意差
(P=0.01)
有意差有り
49.9十1.1
−
値は露出部のものより高値を示し,この差は有意的(P
P =
=0.05)なものであった,
0.1).
仲側と屈側の部位差にっいても第10表のように,伸側
第9表に示される如く,被覆部のmelanonieter測定
は屈側よりもいずれもmelanometer値が低く,この差
昭和42年11月20日
837
第10表 仲側と屈側におけるMelanometer
の比較
R
第12表 吸湿皮膚面におけるMelanometer
測定値
胴 部*
上 腕
右
右
平均値
左
左
仲側
49.1
48.9
49.6
49.5
49.3土0.3
屈側
50.7
51.0
51.1
51.2
51.0士0.2
有意差
(P−
0.01)
有意差
あり
対照との差
処置前1分
49.7
+0.21士0.68
処置後5分
49.0
−0.49十〇.47
−
対 照 部
49.5
対照との
差の比較
有意差あり
(P==0.05)
-
皮膚を対照としてmelanometer
*腹部を屈側,背部を神側とした.
R 値
R にて測定した.直前
及び5分後に測定されたmelanometer測定値に差があ
第n表 左右対称部位におけるMelanometer
R値の比較(統計的集団における平均
るとは云えなかったが対照との差にて比較するとその差
値による比較と個人における比較)
は有意であった(P=0.05).即ちかかる手段によって吸
涯 定 値
右
左
頬 部
46.2
44.8
胸 部
50.7
背 部
個人にお
統計的集団
いて有意
における有 差を示す
意差
比率*
有
(P=
0.1)
6/8
51.0
無
1/8
49.1
48.9
無
2/8
上腕朋側
51.1
51.2
無
3/8
上腕仲側
49.6
49.5
無
1/8
*比率=各個体毎において左右対称側に有意差
があるか否かを検し(t-test,
P=0.05),有意
差を示した個体数/全個体数で示した.
湿した皮膚面のmelanometer測定値は有意的に低下し
た(第12表).
3.日光照射による影響
日光照射の影響を検するに当って,運動会(10月,9
時半∼15時半,快晴)の1週間前に測定したmelanometer値を対照として,運動会の1日前及び2日後に男子
第13表 日光照射の影響.秋期運動会(10月,
快晴,照射時間9時半∼15時半)前日
及び2日後のMelanometer
R 値の比
較並びに対照との差による比較
対照* 1目前 2日後
前後の比較
額 部
44.7
44.3
42.0
左右対称側の部位差にっいては第11表に示される如
右傾部
46.2
46.1
44.8 差あり(P−0.5)
く,全個体の平均値にて比較すると差があるとは云えな
左傾部
44.8
46.4
かったが,頬部においてのみP=0.1にて差を示した.
額 部
右傾部
一
−0.4
− ―
左傾部
− +1.6
も又,有意的なものであった.
各個体毎に左右対称側の部位差を検すると頬部では8人
中6人が差を示し,その他の部位でもわずかではあるか
左右対称部と雖も有意差を示すことがあった.
差あり(P=
44.4 差あり(P=
0.1)
0.1)
― 2.7 差ぉり(P=0.05)
0.1 ― 1.4 差あり(P=
−0.4
0.5)
差あり(P=0.05)
*運動会1週間前のMelanometer
R 値
2.吸湿皮膚面におけるmelai・:o一犬eter測定値
8人の額部(眉間上1
Cm)及び左右頬部(頬骨部)の
前述の如く肉眼的にほぼ同一色を有する皮膚と肌色色
皮膚色をmelanometer
R にて測定した.その結果,第
票のmelanometer測定値が著明に異なるのは被検体表
13表に示されたように運動会1日前と2日後のmelano-
面性質の相違に基くものであると考えられた.一方,皮
meter測定値は額部及び左頬部ではP=0.1にて,右頬
膚は諸種環境の変化に適応して,その性状に変動を来た
部ではP
すので石鹸洗濡及び化粧水塗布の如くjラニン色に変化
ら対照との差(j値)で1日前と2日後の値を比較する
を与えることなく,
と額部及び左頬部ではP=0.05で2日後の値が有意的に
2,
3の皮膚の性質に変化を与え得
=
0.5にて2日後の値が低下した.しかしなが
る(たとえば吸湿等)処理を皮膚に施し,その前後にお
濃色化した.従って,秋期日光照射による軽度の皮膚色
けるmelanometer測定値に変化を生ずるか否かを検討
変化を検出することが出来た.
した.
4.皮膚色の季節的変動
6人(男子3人,女子3人)の右前腕屈側皮膚面を石
1項に示された11部位の皮膚色を8人の個体につい
鹸にて洗濡し,水にて十分に洗濡後化粧水を塗布し,が
て,1年を通じてmelanometer
ーゼで拭った.この操作直前及び5分後に,左前腕屈側
際,1項にて述べた如く,左右対称側のmelanometer
Rにて測定した.この
838
第7図
日本皮膚科学会雑誌 第77巻 第11号
夏期に海水浴を行なった群における顔部
2り
り
0 ″
8り
64
44
O4
n I4
r
︵芒個型懸jざ弓三盗
(I),胸部(I),背部(Ⅲ)及び上腕仲
(ly),別側(V)皮膚色の季節的変動
第14表 顔部,胸部,背部,上腕屈伸側におけ
る季節的変動
顔部
海水浴を行
なった群
海水浴を行なわ
なかった1例
胸部 背部
6.5
6.5
4.6
3.4
6.5
2.7
屈側
仲側
3.4
8.9
3.1
5.0
注:年間を通じてMelanomeetr測定による最
高値と最低値の差を示した.
な変動は上腕仲側,胸部,背部及び顔部における測定値
の夏期における低下であった.上腕屈側では夏期におけ
る低下はあったが上述の四部ほど著明でなかった.又,
顔部における測定値のこの低下は他の部位より速やかに
回復した.海水浴を行なわなかった1例では夏期におけ
第8図 夏期に海水浴を行なわなかった1例におけ
る顔部(I),胸部(I),背部(Ⅲ)及び上
腕仲(Ⅳ),屈側(V)皮膚色の季節的変動
るかかる低下は顔部においてのみ見られ,他部位では年
間を通じてほぼ一定であると判断される結果を示した.
4J
︵5
Z に
0Q
84
64
44
24
に
︵c︶迎2;(i│';J313ujounj3Σ
このことは第14表に示すように,海水浴を行なった群に
おいては上腕屈側の値が他よりも少であり,又海水浴を
行なわなかった1例の顔部における差値が大であったこ
とからも明らかである.一方海水浴を行なわなかった1
例では上腕仲側の値が顔部のものより大であったが,第
8図に見られる如く夏期における低下がなかった.これ
はむしろこの例が年間を通じて薄色化する傾向かあった
ので,特に上腕伸側にてこの傾向が強く現われたことに
基くものであろり.
考 按
近年,皮膚色測定の具としてmelanometer''が開発
されたがmelanometer及び色沢計による成績はまちま
測定値は統計的集団において差があるとは云えないの
ちであった3)-9)われわれはかかる機器による皮膚色測
で,左右対称側を一括した.ただし頬部では左右対称側
定における機器の利用方法及び応用範囲に問題があると
にて差を示し,むしろ左頬部と額部に差が得られなかっ
いう観点からmelanometer自体並びにmelanometerに
たので右頬部を除いて左頬部と額部を一括した.従って
よる皮膚色測定に関する基礎的な問題を検討した.
それぞれ顔部,胸部,背部及び上腕伸,屈側の5部位と
1.色沢計との比較
して検討した.
Melanometerと色沢計との比較においては,同一被検
8名中7名が夏期に海水浴を行なったが残り1名は
体の集団に対する同種原理の鉄器によって測定された平
行なわなかったので別々に検討し,その結果を第7,8
均値の標準偏差が感度の示標となり得る.従って丙機に
図に示した.又,年間を通じて各部位の最高と最低の
よる測定値の標準偏差を対比すると,これらの感度に差
melanometer測定値間の差を第14表に示した.
があるとは云えない.一方,色沢計の受光部は広い板状
海水浴を行なわなかった1例の季節的変動を示した第
を呈するので凹凸不平の被検体面に十分密接せしめるこ
8図は海水浴を行なった群の第7図より例数が少ないの
とか不可能である.
で変動が大になる可能性があったにも拘らず,第7図の
程度で,それより大なる平面を有する被検体には接着可
Melanometerでは受光部直径が5回
夏期におけるmelanometer測定値の低下は第8図のも
能である.ただし広域平面に対する測定であれば色沢計
のより著明であった.海水浴を行なった群における著明
の方が精確に接面し得るが,皮膚を被検体とする限りに
839
昭和42年11月20日
ては平面が少ないのでmelanometerの方がより応用範
し全色を諸種filterで測定する時,かような関係か常に
囲が広いと云える.しかしmelanometerといえどもいか
成立することはない.この点について,色沢計を用いて
なる面に対しても完全に接着出来るとは云い難い.たと
検討すると第9図に示すようになる,即ち明度17の色票
えばわずかな凹凸面を有する肌色色票に対して時期を変
(日本色材研究所)を色相5
えて測定されたmelanometer値が変動すること,或い
色(Gray)及び色相5と補色関係にある色相(17,
は右頬部melanometer測定値及びその標準偏差が左頬部
plish blue)についてR,G及びB
のものより大であることが不完全密接の場合を示すと考
標X軸上に無彩色を0,色相5を正dimension並びに
えられる.即ち凹凸面ではわずかな間隙を生じ,外光の
色相17を負のdimensionに取って,色沢計測定値との関
(Yellowish orange),無彩
Pur-
filterで測定し,座
干渉を許すかも知れない.従って凹凸面における測定値
係を求めた.Gによる測定値はこの系と関係がなかった
は平担面に比し大なる値を示すと同時に標準偏差も大に
がRでは正,Bでは負のdimensionにて大なる値を示
なると判断される.頬部での相違は頬骨上という不安定
した.従って彩度は選んだ色相とfilterとの関連におい
面における測定に加えて,測定者が右利きであれば右手
て,色沢計及びmelanometer測定値と無関係,正関係
にmelanometerを持って被検者の右頬部に受光部を接
及び負関係を示したりする.かような問題は色相及び明
触させるため,鼻部と手が交錯し,受光部の完全接触を
度にっいても生じる得ることであり,被検体の限定され
妨げ,更に接面観察が行ない難い位置にある.それ故,
た色相と使用されるfilterとの関係,特に補色関係にあ
右頬部への接着が不完全であるため,かかる結果を導く
る時,問題がある.しかしmelanometerでは対応され
ということも考えられるであろう.
る色相が限定されるので厳密には問題があろうが原理的
以上の事実はmelanometerが感度の点で色沢計に勝
には妥当であると云える.
るとは云えないが被検体への接触という点においてより
3.
狭小面に接触出来るので色沢計よりも皮膚色測定には便
時期を変えて皮膚色をmelanometerで測定する時,
Mel・jnometer測定値の変動
利であることを示している.
その測定値はかなり変動する.たとえ,同一個体の可及
2.
的同一部位において,肉眼的に殆んど差がなく,メラニ
Melanometer測定値と色感党
Melanometer測定値と色感覚性との関係について肌
ソ色に変動を与える条件が何ら認められないような場合
色色票をR filterにて測定する限りにおいてはその測定
でも,その測定値は変動する,この変動の原因として機
値は明度と彩度,特に明度によって著明な影響を受け,色
器要因性のものと皮膚由来のものが考えられる.定電圧
相によっては殆んど影響されないことが示される.しか
装置を介して採電する時,指示針の変動は定電圧装置を
介さない場合の57.1%に減少する.それ故,機器要因性
第9図
明度17の色票(日本色材研究所)において
補色関係にある色相5(正)と17(負)の
系の彩度と色沢計測定値との関係
の変動として電圧が関与し,定電圧装置を介して採電し
てもなお変動することは明らかである.この点について
melanometer取扱説明書1o)には精密を要する場合,定
電圧装置の使用を奨めている.
しかし一定の表面性質を有する肌色色票をmelanometerで三回測定した平均値について,時期を変えて測定
5
蓼叙一ig;
したものを比較すると凹凸面を有する色票以外ではそれ
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ら測定値に差は得られない.従って電圧変動に基く測定
値の変動はあるが実際面において機器要因性の測定値変
動は少ないと判断される.
一定の被検体集団にて数部位の皮膚色をmelanometer
で測定し,個体差及び部位差がかなり広範囲に存するこ
とを確認した,それ故,皮膚色測定による値の変動の一
因として個体差及び部位差が考えられる.
(彩度)
色相5←一一トー・色相17
又,前腕を石鹸で洗滞し,化粧水を塗布し,その処置
前後の皮膚色を測定すると処置後のmelanometer測定
840
日本皮膚科学会雑誌 第77巻 第11号
値は処置前のものより低下する.しかしながら,このよ
相違を明確に示しているものと云えよう.又,この相違
うな処置によってソラニン色の変動があるとは考え難
がmelanometer応用範囲を現制する一因子となること
い.皮表における変化としては皮脂及び汚垢の除去並び
は明らかである.
に水分による冷却及び皮膚表面の吸湿等が想像される.
5
皮表附着物の除去はむしろmelanometer測定値の増加
Melanometerの如き機器による評価方法は客観的かっ
を,冷却故果は血管収縮に基く皮膚色の淡色化を促す因
定量的な数値表現を行ない得ることに数多くの利点があ
子と思われる.皮膚表面吸湿は非常に少ないものとはい
る.モの一例として被覆部の個体差分布は露出部のもの
え,その膨潤と透明度の増加を来たすであろう.透明度
より多も,.この成績は個体によって相違する先天的性質
の増加が透過光量を九進し,逆に反射光量を減少せし
(被覆部の個体差)が後天的に与えられるほぼ一定の外
め,結果としてmelanometer測定値を低下させる事が
的因子(日光)の影響によって一定方向の性質を示すよ
Melanometer応用条件
出来るであろう.一方,肌色色票と皮膚を肉眼的及び
うになる(露出部の個体差分布)ためであると理解され
melanometer測定によって比較すると肉眼的にほぼ同一一
る.このような現象は定量的数値表現において可能とな
に見られる皮膚と色票のmelanoraeter測定値は著明に
ることに思える.それ故melanometerに限らず客観的
相違する.従って,吸湿によるmelanometer測定値の低
定量的数値表現を行ない得る手段の利点を活用するため
下共々,たとえ色が一定であっても被検体表面性質の相
にはそれら手段の応用範囲を知る必要があろう.
違によってmelanometer測定値はかなり変動すると推
既に述べた如くmelanometer
論される.皮膚表面性質は外部環境によって可変性であ
或る程度正当に評価出来るか,この際皮膚起因性の,及び
Rは皮膚メラニン色を
るのでその測定値の変動は皮膚表面性質の不定性に基い
わずかではあるが機器要因性の測定値変動がある故,著
ていることが示唆される.
明に異なる皮膚色の比較を除くと個体を対象とした評価
4.肉眼的観察との平行性
には必しも正当な結果を与えるとは限らない.それ故,
屈側は仲側よりも,被覆部は露出部よりも淡色傾向に
melanometer使用の範囲として統計的集団に,これを用
あること,及び日光照射による.,・ラニン色の増加等は肉
いる事が必要とも考えられる.
眼的に判別可能で常識的にも既定の事実である.又,皮
準偏差をより少にし,更に正確な値を得るためにはme-
膚色の季節的変動は夏期において著明であり,顔部皮膚
lanometer取扱上の基本的注意の他に,個体差或いは部
の濃色化からの回復は他の部位より速やかであること,
位差を相殺せしめるための対照部を併せて検討すること
日光の影響を受け難い上腕屈側と年間を通じて日光に露
並びに皮膚の表面性質をなるべく一定にさせること(た
出されなかった部位において季節的変動が少ないことも
とえば被検部を一定に吸湿させる)等の条件設定を考慮
Melanometer測定値の標
常識的に容易に判断出来る.これら各現象をmelanome-
すべきであろう.
ter にて検するとそれら測定値は肉眼的観察ないし常識
総 括
的判断と一致する傾向を示す,それに加えてmelanome-
皮膚色測定の客観的かっ定量的評価の具としてmela-
ter測定値は皮膚色の肉眼的観察値及び肌色色票の明度
noineter或いは色沢計が開発応用されて来たが従来の成
或いは彩度と直線関係を示す.それ故,
績はまちまちであった.かかる成績の不一致は本機応用
melanometer測
定値が肉眼的観察及び常識的な理論的判断と平行するこ
範囲に問題があるかも知れない.それ故,われわれは
とは明らかである.
melanometer応用範囲を確認するために本機機能及び
しかし田多井ら≒ 加納ら8)及び高瀬ら1o)はこれら機
測定値変動要因について基礎的に検討した.
器による測定値が肉眼的なものと必しも一致しないの
Melanometer測定値は主として被検体要因性の変動
で,これら機器が皮膚色を正しく評価するとは限らない
を伴ない,その結果,統計的集団に依らない測定値は必
と述べている.このわれわれの結果との相違の原因は統
しも正当な評価を与えない.しかし統計的集団に基いた
計的集団を対象とするか或いは個体を対象にするかの相
melanometerによる評価は皮膚色と呼ばれる色の範囲
違に基くものであろう.たとえば左右対称側の皮膚色を
において感覚的色性とほぼ直線関係を示し,皮膚色測定
比較すると統計的集団にて差があるとは云えなかったが
においても肉眼的,常識的判断と平行する.従って,本
個体別には左右対称側といえども差を示す場合もあっ
機は統計的評価手段において皮膚色測定に使用し得ると
た,この成績は統計的集団と個別に対象を求めた時との
考えられる.
841
昭和42年11月20日
色彩理論について御教示戴いた湯浅正治氏並びに実験
本論文は第436回及び第437回日本皮膚科学会東京地
4こ御協力戴いた岡田京子氏を初めポーラ研究所員の方々
方会においてその要旨を口演した.
に感謝の意を表します.なお.
文
献
I)川村太郎,笹川正二,小野莞爾,高岩尭:最新
医学, 18, 2517, 1963.
2) Daniels, F. & Imbrie, J.D.: J. Invest. Der-
塩見輝雄:ビタミソ,
34, 112, 1966.
7)田多井恭子,梅田久恵,田多井吉之助,小川庄
mat・,30, 295, 1958.
3)斎藤総明,川瀬健二z目皮会誌,
73, 664,1963.
4)宮里肇,岡部省吾:同誌,
76, 97, 1966.
5)竹内勝,麻生和雄,川瀬健二:同誌,
76, 97,
1966.
石)竹内勝,麻生和雄,市川皓,川瀬健二,菅原宏,
吉:最新医学,
18, 870, 1963.
8)加納魁一郎,野崎憲久,渡辺貞夫,上田徹,菱
田宏こ皮膚臨床,
7,561, 1965.
9)高橋吉雄,塩原貞子z皮膚臨床,
8, 478, 1966・
工O)東芝タラノj−ターMC-1型取扱説明書.
11)東芝簡易型光電色沢計CG-3-B型取扱説明書・
12) JIS. Z8721 : 三属性による色め表示方法,
1958.