Download コシヒカリ鑑定団 DNA解析技術の理解に最適な新しい教育用キット

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鑑定団シリーズ
コシヒカリ品種判別キット
コシヒカリ鑑定団®
(DNA実験キット)
取扱説明書
Cat No. 01-2021
実験用試薬
キットの特徴
1. オールインワン設計(米粉砕済み試料、DNA抽出試薬、PCR試薬、電
気泳動試薬、DNA染色試薬、等)のキットであり、 DNA抽出→PCR
反応→ゲル作製→電気泳動→結果解析までの各工程を効率的に体験する
ことができます。
2. 全ての工程を、2時間で行うことが可能です。
3. 遠心分離機や恒温槽、有機溶媒を使用しない簡易抽出法を採用していま
すので、初心者でも安全かつ迅速にDNA抽出を行っていただけます。
4. 付属のDNA染色試薬には、強い変異原性を示す物質(臭化エチジウム
等)は使用しておりませんので、学生実験にも安心してご使用いただけ
ます。
5. 我が国において最も身近な食材であるコメを試料としており、ヒト遺伝
子や組換え遺伝子を材料とした実験よりも、心理面やプライバシーの点
で取り扱いやすいキットです。
6. 付属の米粉砕試料以外でもご利用いただけます。
(自前で試料を準備する場合には、粉砕程度やサンプリング量にご注
意下さい)
7. 平成25年度作付け上位10品種との明確な品種判別が可能です。
8. シングルPCRであるため、再現性が非常に高く、簡便な操作で結果判
定まで行えます。
9. 検査手法としてマイクロサテライト法を採用しており、高精度で信頼性、
再現性の高い結果が得られます。
注解および留意点
※) 各県農業試験場のご協力のもと、各都道府県産のコシヒカリ原種や主要な
品種について、同一パターンを示すことを確認しておりますが、遺伝的変異
により異なるバンドパターンになる可能性があります。
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推奨モデル
本キットは、3試料/ユニット×4班分で構成されています。
1試料の担当は1~2名が標準ですので、本キット使用での推奨受講者数は、
12~24名となります。
構成品(3試料×4班)
品目
数量
保存条件
米粉砕物(3種類/班)
12本(1.5mLチューブ入り)
常温可
DNA抽出試薬(3本/班)
12本(2.0mLチューブ入り)
常温可
PCRプレミックスチューブ
(3本/班)
12本(0.2mLチューブ入り)
要冷凍
TBE粉末
1包(約4.2g)
常温可
アガロース粉末
1包(2.5g)
常温可
DNA染色液
1本(スクリューチューブ入り)
要冷凍
コシヒカリ標準マーカー
1本(スクリューチューブ入り)
要冷凍
有効期限
6か月
その他必要な機器・備品
<必須>
・マイクロピペット(2-20μL用)及び、ピペットチップ
・サーマルサイクラー
・電気泳動装置
・ビーカーまたは三角フラスコ
・薬さじ等(撹拌用として)
・メスシリンダー
・蒸留水、または精製水
・電子レンジ及びラップ
・トランスイルミネーター(UV,LED共に可)
<任意>
・PCRラック(0.2mLチューブ対応品)
・クラッシュアイス
・デジタルカメラゲル撮影装置
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コシヒカリ鑑定団® (DNA実験キット)
1-1.DNA抽出
1. 3種類の米試料( A , B , C )チューブ の中から
1本ずつ選択します。
1.5mlチューブ
A,B,Cは、コシヒカリ・ひとめぼれ・あきたこまちの
いずれかとなります。本キットを使用し、コシヒカリ
がどの試料であるのかをDNA鑑定しましょう!
2. DNA抽出試薬を1本ずつ手元に準備します。
2.0mlチューブ
使用前に常温に戻して下さい。低温状態で使用した
場合、抽出効率の低下を招き、DNA増幅不良の原因
となることがあります。
3. 米粉砕物をDNA抽出試薬に全量投入します。
他の試料との取り間違えを防ぐため、チューブ蓋等に
目印を記載して下さい。(試料名、記号、氏名等)
4. チューブのフタをしっかりと閉め、10回程度転倒混和(撹拌)させま
す。
5. 約5分間静置し、上澄みをそのままPCR用試料と
します。
浮遊物が多い場合には、軽く遠心分離を行うことを
お勧めします。
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コシヒカリ鑑定団® ( DNA実験キット)
1-2.DNAの増幅(PCR法)
1. PCRプレミックス溶液チューブを1本用意し、PCR用試料溶液(上澄
み)を5μL添加します。
※PCRプレミックス溶液は室温ですぐに解凍されます。溶液がチューブ壁面や蓋に飛散
している場合には、軽く遠心分離を行い、溶液がチューブ底側に溜まった状態でご利
用下さい。
5μl採取
数回ピペッティング
使用直前に解凍!
PCRプレミックス溶液(0.2mlチューブ)
DNA抽出液(2.0mlチューブ)
2. チューブの蓋をしっかりと閉め、底面に気泡が無いことを確認します。
(気泡が残っている場合には、タッピングや遠心で除去して下さい。)
3. 下記の反応条件で高速PCR反応を行います。(所要時間:約1時間)
Cycle (35cycles)
Hold
94℃
55℃
68℃
4℃
5秒
1秒
5秒
∞
補足:このPCR待ち時間を利用してアガロースゲルを
作製すると効率的です。(作製方法は次頁を参照)
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コシヒカリ鑑定団® ( DNA実験キット)
1-3. アガロースゲルの作製方法
組成: 2.5% アガロースゲル(0.5×TBE buffer)
1.付属のTBE粉末(Tris-borate-EDTA)全量を蒸留水(精製水)300mL
程度に完全溶解させたのち、更に蒸留水(精製水)で500mLに定容して
下さい。
※ TBE粉末は物性上、部分的に固化していますが、品質上の問題はございません。
※ 完成した溶液は0.5× TBEバッファーとなります。
2.ビーカーまたは三角フラスコに0.5× TBEバッファー100mLと付属のア
ガロース粉末(2.5g)を全量投入します。容器の口をラップで軽く閉じ、
アガロースの粒子が見えなくなるまで、電子レンジで加熱して完全に融解
させて下さい。
※ この作業は、突沸などによる火傷の危険性があるため、軍手の上にビニル
手袋を装着し、指導者自身、又は厳重な監督のもと行うようにして下さい。
3.粗熱がとれるまで冷却を行って下さい。(50℃程度まで)
※ 一定時間放置する場合、表面部分が膜状に凝固しやすいため、時々撹拌を
行って下さい。スターラーを使用すると均一に放熱することができます。
また、意図せぬ凝固が進んでしまった場合には、電子レンジで再加熱する
ことにより、再調製が可能です。
4.調製した溶液をゲルトレイに気泡ができないように流し込み、コームを
セットして室温にて約15分間、冷蔵庫にて約15分間静置し、ゲルを固め
ます。
※ 気泡が出来てしまった場合は、チップ等で除去してください。
また、埃等の混入を防ぐため、ラップやアルミホイルで軽く覆うことを
お勧めします。
留意点
本キットでのゲル作製はMupid-exU 及び Mupid-2plusを想定しています。
(ラージサイズゲル2枚、又はスモールサイズゲル4枚)
その他の電気泳動装置をご使用の際には、作製スケール等、適宜変更をお願い致します。
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コシヒカリ鑑定団® ( DNA実験キット)
1-4. アガロースゲルによる電気泳動
1.
電気泳動槽にアガロースゲルをセットし、ゲルが十分に浸る量の
0.5× TBEバッファーを注入します。
2. PCRチューブのフタを開け、付属のDNA染色液を2μL添加し、ピペッ
ティングで十分に撹拌します。
(DNA染色液)
(PCR産物)
3. コシヒカリ標準マーカーチューブにDNA染色液を10μL添加し十分に撹拌
します。
※DNA染色液を加えたコシヒカリ標準マーカーは保存性が低下します。数回に分けて実験を
行う場合には、必要量をパラフィルム等に採取し、10(コシヒカリ標準マーカー)対1(DN
A染色液)の比率で混合のうえ、ご利用下さい。
レーン ⑤
レーン ④
レーン ③
レーン ②
レーン ①
4. アガロースゲルに下記の要領でアプライ(10μL程度)し、 100V定電圧
で30~40分間の電気泳動を行います。
≪電気泳動参考例≫
①:コシヒカリ標準マーカー
②:試料 A ③:試料 B
④:試料 C
⑤:コシヒカリ標準マーカー
5. トランスイルミネーター(UVまたはLED)でバンドを観察します。
注解および留意点
※1) 付属のDNA染色液は低変異原性のDNA染色剤を既に含有していますので、アガロースゲル自体を
その他の染色剤(臭化エチジウム等)で先染め・後染めする必要はありません。また、ローディング
バッファーも含まれておりますので、添加の必要はございません。
※2) UVトランスイルミネーターをご使用の際は、目の保護のため、紫外光は決して直視せず、保護メ
ガネ等をご使用下さい。
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コシヒカリ鑑定団® ( DNA実験キット)
1-5.解析・判別
1. キット添付のコシヒカリ標準マーカーと比較して判別いたします。
2. 試料のPCR産物とコシヒカリ標準マーカーが同じ長さのバンドサイ
ズであれば、試料は、コシヒカリであると判別されます。
※サーマルサイクラー機種のDNA増幅効率の違いにより、コシヒカリ標準マーカー
の位置が下側(短いサイズ)に見えることがあります。その場合、A,B,Cの増幅長
差異での判別を行って下さい。
3.コシヒカリ標準マーカー(約150 bp )よりも陰極側(約180
bp )にバンドが検出された場合、異品種と判定されます。
<電気泳動画像例>
検出:UVトランスイルミネーター
撮影:フード付きゲル撮影装置
S
A
B
C
検出:UVトランスイルミネーター
撮影:家庭用デジタルカメラ
S
S:コシヒカリ標準マーカー
A:あきたこまち
B:コシヒカリ
C:ひとめぼれ
正解:コシヒカリは試料Bです。
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検出原理(PCR反応)
PCR(Polymerase Chain Reaction)法では、目的となるDNA領域
の両端に相補的な20塩基程度のオリゴヌクレオチド(プライマー)を
足がかりとし、DNAを合成する酵素(耐熱性DNAポリメラーゼ)に
よって、相補的な配列が伸長していきます。この反応は温度変化により
制御することが可能で、3段階の温度変化により、特定のDNA領域が2
倍になります。
1サイクル中の反応機構
STEP1 94℃
STEP1 94℃
二本鎖DNAの熱変性
STEP2 55℃
STEP2 55℃
プライマーとDNAが二本鎖を形成
STEP3 68℃
STEP3 68℃
耐熱性ポリメラーゼによる
DNA伸長反応
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検出原理(PCR反応)
前述の反応を1サイクルとし、35サイクル程度の酵素反応を繰り返す
ことにより、最終的には目的のDNA領域がおよそ百万倍にまで増幅し
ます。
増幅過程の反応機構
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検出原理(PCR反応)
マイクロサテライト(microsatellite)は、ゲノム上に存在する、数塩
基の単位配列が数回から100回ほど反復した配列です。多型マーカーに
は、マイクロサテライト多型以外にも一塩基多型(SNP;Single
Nucleotide Polymorphism)によるものなどがありますが、マイクロ
サテライト多型は、ゲノム中に広く散在しており、中立で共優性を示す
ことから、集団遺伝学やDNA鑑定のための遺伝マーカーとして重用さ
れています。ヒトの個人識別にも同様の手法が用いられています。
マイクロサテライトは他の中立的な領域と比べて変異速度が高く、品
種間であっても高い多型性を持つものがあります。本キットに含まれる
プライマーセットは、数千のイネマイクロサテライトの中から、コシヒ
カリにおいて反復数が少ない特徴を持つマイクロサテライトの両端から
設計したもので、このプライマーを用いたPCR増幅により、コシヒカリ
を判別することができます。
検出原理(イメージ図)
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検出原理(電気泳動)
緩衝溶液中に電極をおき、直流電流を流すことで電極間に電位差(電圧)
を生じさせると溶液中に電場が生まれます。電極の間に、電荷をもつタン
パク質やDNA/RNAのような生体高分子が存在すると、プラス電荷をもつ
分子はマイナス極へ、マイナス電荷をもつ分子はプラス極へと移動します。
例えば、中性付近で、マイナス電荷をもつDNA分子が、この電場におかれ
るとプラス極側に移動し、この現象を電気泳動現象と呼びます。
この現象を、均一な網目構造をとるアガロースゲルを介して行うと、高
分子なDNA断片と低分子なDNA断片との移動距離に大きな違い(低分子な
ほど移動距離が大きくなる)を生じさせるため、その性質を利用して分子
量(増幅サイズ)によるDNA断片のふるい分けを行うことが可能となりま
す。本キットにおいても、この性質を利用し、コシヒカリ(約150bp)と
その他品種(約180bp)とのDNA増幅断片サイズを比較することにより、
コシヒカリがいずれの試料(A,B,C)であるのかを鑑定する設計となってい
ます。
陰極
DNAの
移動方向
サイズ大
サイズ小
陽極
電流の
流れる方向
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品種別判定可否リスト(参考資料)
本キットを使用した場合、コシヒカリを除く上位10品種全てとの識別が可能です。
平成25年産水稲の品種別作付割合上位10品種
※
順位
品種名
作付割合(%)
コシヒカリとの識別
1
コシヒカリ
36.7
-
2
ひとめぼれ
9.6
○
3
ヒノヒカリ
9.5
○
4
あきたこまち
7.5
○
5
ななつぼし
3.0
○
6
キヌヒカリ
2.9
○
7
はえぬき
2.7
○
8
まっしぐら
1.9
○
9
あさひの夢
1.5
○
10
きらら397
1.5
○
※公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構
情報部
平成26年3月25日
コシヒカリと同じパターンを示す品種例
ササニシキ
にこまる
つや姫
ミルキークイーン
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使用上または取扱上の注意
1. 有効期限の過ぎたキットは使用しないで下さい。
2. ロットの異なる試薬や本キット以外の試薬を組み合わせて使用しな
いで下さい。
保証
1. 本キットを使用して得られた結果の評価および利用は、お客様の責
任と判断において行ってください。
2. 測定結果を利用し、その結果生じた損害および損失については、当
社は一切保証を負いません。
3. 本キット以外の試薬、または原材料を使用されて得られた結果につ
いては、当社は一切保証いたしません。
4. 万一、試薬に品質上の瑕疵があると当社が判断した場合、新しい製
品とお取替えいたします。
製品の技術的なお問い合わせは、
〒839-0864 福岡県久留米市百年公園1-1
久留米リサーチセンタービル
Tel : (0942)36-3100 Fax : (0942)36-3101
URL : http://www.visionbio.co.jp
E-mail : [email protected]
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