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語学マニュアルの拡充に向けて : 辞書の引き方を例とし
て
林, 哲也
現代の図書館, 32(2): 148-153
1994-06-25
Journal Article
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/10086/18607
Right
Hitotsubashi University Repository
1
4
8 現代の図古館 Vo132 No2 (
1
9
9
4
)
<投 稿>
語学 マニ ュアルの拡充 に向 けて
-
辞書 の引 き方 を例 として
林
1
.
哲 也
事項 を列挙 した包括的な語学 マニュアル としては,
本 稿 の 目的
①
図書館資料 には, さまざまな言語が使用 されて
丸山昭二郎編 『洋書 目録法入門. マニュア
9
8
8
,3
1
0
p,(
図
ル編』東 京, 日本 図書 館協会 ,1
いる.洋書 の場合,件数的 には英独仏露語 が多数
書館員選書 , 7)
を占め るが, ときには日頃な じみの薄 い言語 に も
が あ り,世 界 の言 語 文化 の多様 性 を,暦 3)や人
対処 しなければな らない。主 と して洋書 の 目録作
名 4)の慣 習 を含 めて手軽 に瞥見す るには便利 な も
成業務の手引書 として,各種の実用的な言語 マニュ
のである。 その前身 に相 当す る,
アル頬 が公刊 されて きた. しか し, た とえば個別
②
丸山昭コ 弧 井上哲也共編 『洋書 目録 マニュ
言語 の辞書 の引 き方 を解説 した ものが見当た らな
97
0.2
8
2
p.は,
ア ル』東 京 , 日本 図書 館協会 ,1
い等, その内容 には不足 を感 じることがある。共
(
丑が割愛 している翻字表等 も収載 している。
有 され るべ き技術知 と しての語学 マニュアルを,
よ り充実 させ ることの必要 を訴 え ることが,本稿
多数 の言語 の文法的特徴 の略述 および翻字表 を
集成 した ものには,
③
の 目的であ る。
2
. 語 学 マ ニ ュア ル類 の現 状 を展 望 す る
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もない。個 々の言語 の使用地域 の境界線 は,国境
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0.3
4
7,5
6
p,
がある。これは第 3版 (
1
9
3
6
) の リプ リン ト (
1
9
7
0
)
であ り,下記第 4版 (
1
9
52
)での改訂箇所 は反映
線 と一致す ることの方 がむ しろ稀 である。複数 の
されていないが, そのかわ り,間宮不二雄 による
言語 を公用語 とす る国 もあれば,逆 に複数 の国で
独 自の補迫が追加 されている。
言語 の数 は, 日常用語 では
「nカ国語」 とい う
数 え方 をす るので, あたか も国家 の数 と同 じく百
数十程度であ るかのよ うな錯覚 を招 く。 しか し,
圧倒的多数 の言語 は, いずれの国家 の 「国語」で
常用 されている言語 もあ る。世界の言語 の数 は,
数 千 種類 といわれ,正確 な数 は不明であ る1
)
。古
今東西 のあ らゆ る言語 に個人 レベルで習熟す るこ
とは,不可能 かつ不必要 といえ る。実務上必要 と
な る言語 は,主 と して,国際的な適用範囲の広 い
大言語 で, その数 は限 られている2)0
洋書 の 目録作成業務 のための知識 ・技術 ・留意
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4
p.
対象を ヨーロッパ系の言語 (
英語を除 く) に限 っ
た,
⑤
はや し てつや 筑波大学附属E
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酋館
キーワー ド :外国語,洋沓 目録法,業務マニュアル,辞酋
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7
5.8
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3
p,
語学 マニュアルの拡充 に向けて一辞古の引 き方を例 として
1
4
9
は,印刷物 ・出版物 を扱 う実務 に直接役立 っ注意
文化背景,地理 的分布,現在 お よび過去 の使 用文
事項 の解説 が充実 して い る。
字等 の概要 をあ らか じめ知 ってお くことは,解読
ロシア語 につ いて は,
の対 策 を立 て る上 で有効 であ る5
)
。 言語名 の識別
⑥
同定 には, 出版地等 の言語外情報 の他, 出現頻度
宮 島太郎著 Fロシア語図書 目録法入 門』
東 京 ,龍 渓書 舎 ,1
9
81
.2
35p.(
図書 館 整 理 技術
の高 い/
ト辞 や語形変化 のパ ター ンに注 目すべ きだ
研究会 モノグラフシ リーズ, 1)
が,特定 の言語 に特有 な文字 で見当 を付 け る方法
⑦
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97
3.亀山芳子訳
『ライ ブ ラ リア ンの た めの ロシア語』 東京, ナ
もあ る6)。 た とえば文字 Fが使 われて いればチ ェ
コ語 , iが あ れば ス ログ ァキア語, とい う具合 に。
ただ し, これ はあ くまで も目安 に過 ぎな い。 た と
ウカ,1
97
6.1
03
p.
え ば文 字 ∂,pは,現代語 で はアイス ラ ン ド語
があ り, それぞれ,東欧 の諸言語 に も多少 は言及
に特有 だが,古期英語 に も用 い られて いた。 また,
している。
書 き言葉 を従来持 たなか った言語 を アル フ ァベ ッ
ローマ字以外 の文字 か らの翻字 につ いて集大成
した もの と して は,
トで表記 す る際 に, 同 じ特殊文字 が使 われ るか も
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しれ な い。 さ らに,正書法 (
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現代 で も諸 国語 で しば しば改訂 され続 けて いる し,
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当該文献 が標準 的綴字 法 に従 って い るとは限 らな
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い。 キ リル (ロシア)文字 をやめて民族固有 の文
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字 を復宿 させて い る近年 の モ ンゴルのよ うに,文
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字 体系 を全面 的 に入 れ替 え る例 も,歴史上稀 で は
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6
p.
が あ る。 ただ し,E
g際標準化機構 (
I
SO)の方式
とは一致 しない ことには留意 を要 す るO 日本 で は,
⑨
日本図書館協会 目録委員全編 『日本 目録規
ない。
3.
2.
00語辞典 の代 わ りに ××語辞典 を使 う
言語 の区分 には,政治的 ・社 会的要 因 も関 わ っ
て い るので,別 々の言語名 で呼 ばれ る複数 の言語
9
65
年 版』東京, 日本図書館協会 ,1
9
65
,p.
則 .1
が実用 的 には大差 のない場合 が あ る。 逆 に,独立
1
85
-2
2
0「付録 6 :翻手法基準表」
別個 の言語 間 の差異 に匹敵 す るほど互 いに異 な る
があ る。
諸 「方言」 が, ひ とっの言語名 の もとに一 括 され
3
. 辞 書 の 引 き方
て い る場合 もあ る。 また, ひ とつ の言語 につ いて
通常,辞書 を引 くの は, わか らない語 を調 べ る
フ ィ リピンの国語 フ イ リピノ語 は, かつて ピ リピ
ためであ る。 ところが, その言語 をあ る程度以上
ち, いろいろな別名 を持 つ ことが あ る。 た とえば
ノ語 と称 し,実体 はほぼ タガ ログ語 といえ る。
知 って いないと, そ もそ も辞書 が引 けな い場合 も
また, イ ン ドネ シア語 とマ レー シア語 は,共 に
多 い。通常 の辞書 は, その言語 を既 に習得済 みの
ム ラユ (マ レー)語 を基礎 に両国 で それぞれ国語
使用者 を想定 して作成 されてお り, あ る種 の知識
化 され た もので,双子 の よ うな関係 にあ り,辞書
を暗黙 の うちに要求 して くる。 留意事項 を凡例等
は互 いにか な りの程度 の代 用 が効 く。
で明示 して いる親切 な辞書 もあ るとはいえ, 自明
3.
3. 辞書 の見 出 し語 を推 定す る
の常識 と して言及 な しで済 まされて い る方 が, む
実際 の文章 中 に現 れ る単語 は, しば しば,辞書
しろ通例 であ る。
の見 出 し語 その ままで はな く,文法上 の活用 や接
3.
1. 言語 の識別方法
辞 の付加 で変形 して い る。 さ らに, それ に伴 う音
辞書 を引 く以前 に, そ もそ も何語 で書 いてあ る
韻上 ・正書法上 の変化 も考慮 す る必要 が あ る。
のかわか らない場合 があ る。文字 が同 じア ラ ビア
活用変化 す る部分 が主 と して語尾 に限 られ る言
文字 で も, ベル シア語 その他 さまざまな言語 の可
語 で は,文字 さえ読 めれば,特別 な予備知識 な し
能性 があ る。各言語 の史的系統関係,構造的特徴,
で も, と りあえず辞書 を引 いてみ ることは比較 的
1
5
0 現代の図書館 Vo132 No2 (
1
9
9
4
)
容易 である。 ただ し,たとえば ラテ ン語の r
e
r
um
が これに該当す る。 また,氏は nとは別個の文字
や ドイ ツ語の a
uf
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nとい う語形 を見たと
き,辞書 の見 出 し語 と して r
e
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事物),auf
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な の で ,配 列 は ,c
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熱 ),c
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側 溝 ),c
u元
a(
模),c
hl
l
e(
唐 辛子 ) と
起 きる)を兄 いだす には,前者 は名詞 の複
he
n(
いう順 になる。大型の事典を使用す るときは特 に,
数属格,後者 は動詞 の過去分詞, といった判断を
載 っているはずの語を見落 として しまわないよう,
くだす程度の文法的知識 は要求 され る。 また, ド
注意を要す る。
イツ語 の正書法 は,他の多 くの言語であればい く
ドイ ツ語のウムラウ ト(
a,6,i
i
)は,辞書では普
つかの単語 に分かち書 きす るよ うなところを, ひ
通 の a, 0, uと一緒 に配列す るが,書誌では a
e
,
とつなが りの語 として表記す る傾向がある。 その
oe
,ueと綴 られているものとみな して配列す ると
結果,辞書 の見出 し語 にない長 い複合語が頻出す
い う慣習 があ る。北欧 の諸言語の a, 氏,a
,6,
ることにな り,語構成要素 の区切 り目を見極める
g
判断力 を要す る。
ファベ ッ ト順の終わ りの方 に配列 され る。配列 は,
語形変化が語頭 に及ぶ言語では,辞書が引ける
は,それぞれ,aや O の直後 ではな く, アル
辞書の作 られた年代 によって も異なる場合がある。
よ うにな るまでが一苦労である7)。 たとえばアラ
且は昔 は aaと綴 り,辞書で も普通の aが 2つ続
ビア語では,単語 は多 くの場合 3子音か ら成 る語
いただけの ものとして配列 していた。 また,正書
根を有 し,語根 の前後への接辞 の付加や語中母音
法が未確立の (あるいは制定後 まだ 日が浅 い)言
の交替 によ って活用形や派生語が生 じる。文中に
語や,古 い時代 に書かれた文献を読む ときは, チ
現 れ る語 形 makt
abah (
図 書 館 ・書店),t
aka
-
クス トの綴 りが,その辞書 の採用 している正書法
t
aba (
彼 は文通 した),yukt
abu (それ は書 かれ
ではどの文字 に対応す るのかを推理す る必要のあ
る)等 を,それぞれ辞書 の m,t
,yのページで捜
して もみつか らない。語根 kt
bを見 出 し語 とし
る場合 もある。
て検索す るのである。
また, たとえばイ ン ドネシア語では,接頭辞 ・
4. どん な語 学 マ ニ ュアルが 必 要 か
4
.
1
. 諸言語の取扱説明書 と して
接尾辞 を適切 に見抜 いて取 り除かないと辞書 は引
外国語の習得 には多大の労力を要 し, しか もな
けない。 さ らに,語幹の冒頭の音 は,接頭辞 との
かなか使 いこなせ るまでに至 らないのは我々の経
間の同化作用で規則的に交替 している場合がある。
験 す るところである。外国語の学習方法8)につい
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手 紙 を書 く),pe
nul
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著者) は,
辞書ではそれぞれ,見出 し語 s
ur
at(
手紙),t
ul
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s
ては,古来 さまざまに論 じられて きた。効果的に
学ぶ コツや合理的な教え方の方法論があるとはい
(
書 く) の もとに派生語 として記述 されている。
え,それに加えて,学習者 自身がそれ相応の時間
3.
4. Cが アルフ ァベ ッ トの 3番 目とは限 らな
と労力を費や して努力 しなければ,読み ・書 き ・
い
話す といった運用能力の習熟 までは不可能 という
文字 の配列順序 は,各国語 の歴史的成立事情の
点 は,諸家の見解 の一致す るところのよ うだ。 し
もとに決 まった ものなので,言語 によって微妙 に
か しなが ら, いわゆる 「マスターす る」 ことを目
異 なる。文字体系が全 く異質な ものな ら,我 々 も
指 して 「習 うより慣れろ」式 に努力す ることは別
それな りに覚悟 して辞書 を引 くものだが,表記が
次元で, とりあえず辞書が引けてだいたいの見当
ラテ ン ・アル ファベ ッ ト (ローマ字)だ と,つい
がつ く程度 に 「
分か る」 ための, プラグマティッ
気 を許 して,a, bの次 には当然 Cと期待 して し
クな早見表のよ うな ものがあ って もよいのではな
まいがちである。 ところが, たとえば フイ リピノ
かろ うか。
請では,a, bの次 は kであ り, Cは yに続 く2
1
番 目に配列 され る。
て学習す るよ うに構成 されている。て っとりぼや
配列上 ,2文字組で 1文字扱 いとなる文字 を持
く概略だけ知 りたいときには不便である。前掲④
つ言語 もある。 たとえばスペイ ン語では ,c
h,l
l
の副書名 に列挙 されているような専門的な職業に
個別言語の入門書 は通例,漸進的に段階を追 っ
語学 マニ ュアルの拡充 に向 けて一辞書 の引 き方 を例 と して
1
5
1
従事す る者のみな らず一般 に,不案内な言語で書
他方, ヨーロッパ系の諸言語 については,便利
かれた文献 について簡単な調べ事 を しようとす る
なマニュアル も各種公刊 されてお り, また,語形
際にひろ く役立っような,実用を旨としたマニュ
変化 も語尾 に集中す る傾向があるので辞書 も比較
アルがあれば便利だろう。 たとえば外来語の原義
的引 きやすい。 しか し,少 し時代を遡 った出版物
を辞書で調べる,研究者が引用文献の原文を確認
に対処す る場面では,我 々はたちまち混乱 して し
する,図書館員が目録 を作成す る, といった当座
まう。 たとえば英米 目録規則第 2版 の2
.
1
4Eにい
の用にかろうじて足 りる程度の技術 の手引である。
う 「あ る種 の文字 の転記」,すなわち,大文字 Ⅰ
,
マニュアルの記述 には,分か りやすさをこころ
J,U,V を小文字 に転記す る際の i
/
J
,u/
Vの使 い
がける必要 もある。電気機器の取扱説明書 と同様
分 け,および, それに伴 う索引の綴 りをどうすべ
である。特別な予備知識 な しで初めて対処す る場
きか は,判断 に迷 うところだ。 ラテ ン語 】0)を中
合で も, マニュアルを見なが ら順を逐 って操作 し
心 として, その他の諸言語 について も古 い時代の
ていけば, とりあえずの目的に到達で きるよう工
特徴 ・慣行を,出版 ・印刷文化史の基礎知識 も含
夫す るのである。説明に使用す る専門用語 は,刺
めて解説 したマニュアルが必要 と思 う。
用者 に 「
常識」 として要求 しないよう,別途一覧
4.
3. 継続的な改訂の必要
のかたちで解説 しておきたい。学習書や辞書 に現
一般 に, あ らゆる情報 には誤 りの含 まれている
れる文法用語には不統一が見 られ る。同 じ概念を
可能性がある。 いかに 「
権威 ある」辞書 ・事典 と
表すのに別の用語が使われて とまどう場合がある。
いえども例外ではない。広汎 な対象を網羅 しよ う
た とえば属格 (
ge
ni
t
i
v
e
)のことを英文法で 「所
有格」
, ドイツ語文法で 「
2格」, ロシア語文法で
とすれば正確を欠 く箇所 も増 え,特殊文字の印刷
には誤植が忍 び込む。本稿で言及 して きた各種 マ
「
生格」 と称 す るとい った,「お国なまり」の慣
ニュアル ・事典類 も,信頼性の高低 はそれぞれに
習がある。 また,執筆者個人の独 自の用語が使用
異 なるとはいえ,誤記 の可能性 を想起 しつつ批判
される場合 も少 な くない。現 に既 に存在す る各種
的に利用すべ きものである。 また,言語 は時代 と
の入門書 ・文法書 ・辞書の利用者である我 々とし
共 に常 に変化 してやまない。 マニュアルは,作成
ては,使用 されている主 な文法用語 は,一覧対照
と同時に古 くな り始める。誤 った箇所を訂正 し,
表 にまとめてお く必要がある。
古 くなった部分を書 き直 し, といった改訂 の小回
4
.
2
. マニュアルの不足 している分野
りが効 くよ う,小項 目ごとに差 し替え可能な加除
特 に必要性を強 く感 じるのは, アジア ・アフ リ
式の形態, さ らには,電子 メデ ィアでの提供へ と
カの諸言語 についてのマニュアルである。 たとえ
進むべ きだろう。
ばアラビア語の翻手法の場合,米国議会図書館の
更新 を システム的に継続す る体制を確立 してお
方式 9)は,文脈や発音 に基づ く細則を多数含んで
くことは,語学 マニュアルに限 らず,業務上の文
お り,かな りの文法的知識を等
区使 しなければ使 い
こなせない。一般の文法書等を読んで も,翻字の
書管理 (
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s mana
ge
me
nt
)一般 において,
極めて重要 な要素である。篤志の個人が, ある時
実際についてまではあまりよ くわか らない。 ヨー
点でいかに立派 なマニュアルを作成 して も,後任
ロッパ系以外の諸言語 は,辞書や学習書 も種類が
者が代々引 き継 いでいけるような工夫を組み込ん
あまり多 くな く,かつ入手困難 な場合が多 い. マ
でおかないと,内外の環境の変化 によ り,実状 に
ニュアルその他が整備 されていないの も需要が少
合致 しない箇所が短時 日の うちに累積 してい く。
ないか らであって,要す るに,実際に取 り扱 う頻
当該文書の維持 ・更新 に関す る責任の所在 を明示
度の低 い言語のためにまで対策を用意 してお く必
す るとともに,改訂作業を容易に実行で きるよ う
要 はない, という考え方 もあ りうる。 しか し,頻
な文章構成 と物理的形態を設定 してお く必要があ
度の低 い言語 ほど,手引書 な しで対処す るのは困
る。
難である。各国の公用語 については, ひととお り
のマニュアルが欲 しい。
1
5
2 現代の図書館 Vo
13
2 No2 (
1
9
9
4
)
5
. 知 識 の共 有 財 産 化 へ 向 けて
の目録 ・索引が標準化 されることは,検索する利
用者 にとって も有益である。
5.
1. NACSI
Sの充実のためにも
5.
3. ネ ッ トワーク上の語学マニュアル構想
学術情報 セ ンター (
NACSI
S-Nat
i
o
nalCe
nt
e
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現時点の機器環境ではまだ実現困難 と思 うが,
f
or Sc
l
e
nC
el
nf
or
mat
i
on Sys
t
e
ms
) の総合 目録
データベースには, さまざまな規模 ・館種 の図書
特殊文字 をそのまま扱える機器が普及 ・標準化す
館が参加 している。新規書誌作成の場合 は,個 々
語学 マニュアルを構築す ることも考え られる。構
の図書館の入力 したデータが, そのまま全国 ネ ッ
成 は,幹事役 の管理 ・更新す る公式 ファイルと,
トで公開 され る共有財産 としての書誌 レコー ドと
書 き込み自由の会議室 ファイルとす る。公式 ファ
なる。 目録作成者 の心情 としては, 自信 のない言
イルには, たとえば言語名 と言語 コー ドの対応表
語 の資料 については,入力を差 し控 えた くなる場
や,特殊 な暦か ら西暦を知 る変換 プログラムを組
合がある。特殊文字を手軽 に入力で きるような機
み込む こともで きよう。会議室 ファイルは,パ ソ
器環境 の開発 の問題 とともに,語学力の水準向上
コン通信 の電子掲示板のよ うな方式で,改訂案の
(
対個人の研修 とい う次元ではな く,容易 に利用
提起 ・検討 の他,参考文献の新刊情報,諸国語の
可能 な参考 ツールの整備 とい う意味で) について
ら,図書館界全体で対策が講 じられることが望 ま
れば, た とえば NACSI
Sの ネ ッ トワーク上 に,
正書法の改訂等のニュースも扱 う。
NACSI
SI
R 等 の一般利用者 もアクセスでき,
かっ,発言 もで きるように しておけば,互 いに有
れ る。図 書 館 間 相 互 貸 借 (
I
LL-I
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r
Li
br
a
r
y
Loan) を前提 と した分担収集 とい う基本構想 の
益 な情報を交換す ることが期待で きる。図書館界
観点か らも,ユニークな資料 こそ積極的に入力 さ
という狭い枠組みで閉 じることな く,出版 ・報道 ・
れ るべ きである。
行政等,多言語処理の技術的知識を必要 とする各
5.
2. 個人や 1館の枠を越えて
いわゆる 「
特殊言語」 による資料 を扱 う頻度の
低 い一般の図書館の場合 は, 目録対象資料 の使用
界 とも連携 した システムが望 ま しい。
6
. おわ リに
言語がな じみの薄 い ものだ ったときは, その資料
整備 された語学 マニュアルは,時間 と労力を節
を処理す る巡 り合わせに 「当たって」 しまった担
約す るのみな らず,業務の品質 も向上 させ る。各
当者個人が, その場限 りの調査 ・学習で対処せざ
館が個別 に伝承 してきたマニュアルや,個人の頭
るをえないか もしれない。多大の時間を費や して
の中にあ って未だ文書化 されていない技術知が,
苦労 した末 に,で きあが った目録 データは初歩的
少 しずつで も共有財産 として公開されてい くこと
な誤 りだ らけ, といった悲劇 も起 こりかねない。
を希望 したい。
個人の努力 ・勘 ・経験や, たまたま持 ち合わせて
いた知識 ・技能 に依存す るので はな く,担当者が
注 ・参考文献
次々に交代 して も目録 ・索引の・
一貫性が多年 にわ
1)亀井孝,河野六郎,千野栄一編著 r
言語学大帝D
Q』第 1巻
たって維持で きるよ う,業務 マニュアルのかたち
で技術知を継承 してい くことが必要である。
しか し,具体的な事例 に出会 う機会 の少 ない一
一第 5巻 「
世界言語編」 東京,三省掌,1
9
8
8
1
9
9
3
の 「
序
2
.言語の数」(
第 1巻,PXI
VXVl
)を参照。なお,
説」の 「
同省 は,世界の言語を列挙 ・概説 した図苔 として当代最大
規模 ・最高水準で, 3千 5再余の言語に言及 している。た
般館が個 々に作成す るマニュアルでは,内容的に
だ し,文字 の実際については,以後の巻に続刊予定の 「
世
も自ず と限界がある。多様な言語 による資料を 日
界文字編」に譲 っている。また,田中克彦,H ハールマ
常的に多数扱 う,専門性 の高 い図書館 には, それ
相応 の技術知 の蓄積があることと思 う。各専門館
の衆智を結集 し,図書館界全体の共有財産 として
ン
(
Haar
mann)著 r現代 ヨー ロッパの言語J
I 東京,岩
9
8
52
0
8
p (岩波新啓,東版2
9
2
)は,言言
吾人r
j
波書店 ,1
の正確 な統言
1の原理的な不可能性や,国家 と民族の関係に
も論及 している。
利用で きるよ うになれば,一般各館の目録 データ
2)すべての自然言語は,話 し言柴 としては,意思疎通のあら
の品質,作業効率 も向上す るだろう。 また,各館
ゆる必要を満たす十全な表現ノブを備えている。 け れ ど も,
語学マニュアルの拡充に向けて一辞書の引き方を例 として 153
出版物 に常用 されるに至 ることは,書 き言葉 としての標準
部編 r
辞 書 を 語 る J 東 京 ,岩 波 菖 店,1
992,p.
1
7
6
化,および, 日常生活の場面を離れた科学技術 ・政治 ・学
-1
84(
岩波書店,新赤版 211
)
,および,西江雅之 「引けな
術 ・文芸等の語愛の増補 といった,人為的な整備の努力を
い辞書」西江雅之著 rことばを追 って』 東京,大修館,
経 て初 めて可能 となる。土着の言語を公用語化することの
mas
.Fl
or
l
n
a
困難については,Coul
Spr
a
c
heundSt
aat
1
98
9,p1
21
-1
35等を参照 (
後者の例はスワヒリ語)
。
8)千野栄一著 F
外国語上達法』 東京,岩波苔店,1
986.21
5
l
n,W deGr
uyt
e
r
.1
9
85 山下公子訳 r
言語 と国家
Be
r
l
岩 波新書,黄版 32
9)
,および,津田昭夫 r
外国語の習
p (
言語計画ならびに言語政策の研究J
I 東京,岩波智店,1
987
い万 一国際人教育のために』 東京,講談社,1
9
84.27
3p.
を参照。 また,同智 p7
095「
民衆語の近代化 と定律化」
に も言及 されているように,西洋近代の諸言語の場合 も,
(
講談社学術文庫,66
6)等を参照。
9)前掲⑧ ALAI
,
Cr
omanL
Za
t
L
Ont
a抽 S
,p41
3"
Ar
abl
e
"
ラテ ン語 に代わって書 き言責 として用の足 りるものとなる
なお,⑨ rE
l
本 El
録規則 .1
965
年版 .
ap1
86-1
9
6「7 ラビ
までには,営々と整備に努めた人々があったのであり,吃
ア語翻字法」 も,おおむね同一の方式o
りゆきまかせで自然発生的に発展 したわけではない。
1
0)前掲⑤A manu
alo
fEL
L
r
O
Pe
anl
an
gua
ge
sforl
L
b
r
ar
L
anS
3)暦の全編 r
暦の百科事典』 東京,新人物往来社,1
9
86 50
9
では p1
25
-1
45が "
Lat
l
n"
。③ Manualo
f for
e
i
gn L
an-
p,および,小島屈逸,大岩川鰍編 r
「こよみ」 と 「くらし」
S
, p1
2
9 (または④ p.
1
6
5で も同 じ)"
Lat
i
n l
nC
ugL
L
a
ge
第三世界の労働 リズムJ
) 東京,アジア経済研究所,1
9
87
.
Ip.
1
69
-1
71が詳 し
いて は,前掲② r洋智 目録 マニ ュアルJ
)等を参照。
2
5
6p (アジアを見 る臥 73
4)島村修治著 r
世界の姓名J
l 東京,講談社,1
97
7 4
42p.
,
および,ア ジア経済研究所,企画.松本偶作,大岩川轍 ・
編 r
第三世界の姓名 ●人の名前 と文化」 東京,明石等店,
1
99
4.41
4p 等を参照。
5)各言語 に 2ペー ジずつを充 てて紹介 している読み物に,
「
朝 日ジャーナル」編 r
世界 の ことば.
. 東京,朝 日新聞
991
.2
29p.(
朝 日遷宮 ,4
36
) があるO新潮社の広報
社 ,1
誌 r
彼J も,2
6巻 1号 (
1
99
2年 1月号)か ら 「
世界の言語」
を連載 中。 また,大修館の月刊誌 r
言語J
lの,11巻 5号,
p33
-111(
1
9
82.
5);11巻 6号 ,p3
3
-11
3(
1
9
826)「
創刊
十周年記念特集 ●外国語 のすすめ」
,および,2
0巻 5号,
p1
7
8
9(
1
991
.5
),2
0巻 6号 ,p.
1
7
87(
1
991
.
6
)「
特集 :世
界の言語7
0+1
」には,辞書や学習智の紹介 もあって便利。
さらに,柴田武編 r
世界のことば小事典」 東京,大修館,
1
9
9
3 5
62p.は,前掲 「
世界 の言語7
0十1
」を 1
27十1に増
補改訂 したもの。
,r
講座言語』
体系的 な概説f
u
l
tとしては
1
97
9
-1
9
81の第 5巻
nabul
a"には,独特 の略字の一覧があるO ローマ数字につ
東京,大修館,
西田龍雄編 「
世界の文字」,第 6巻 ●
北村甫編 「
世界の言語」等がある。文字 については,世界
の文字研究全編 r
世界の文字の図典」 東京,吉川弘文館,
1
9
93 6
0
5p.をも参照。
6)前掲② r
洋苔目録マニュアル』p.
1
40
-1
42「
特殊言語の判別」,
同省 p1
5
6-1
6
8「
南方 ア ジアの言語」,⑥ Fロシア語図沓
目録 法入門J p.
1
4
4-1
5
0「キ リル文字を使 う言語の見分 け
方」.⑦ rライブラリ7ンのためのロシア語 Jp.
6
469「
東
欧諸言 語 の同定」
。前注に掲 げた r
世界の文字の図典」を
も参照 (
特 に p.
1
86
-1
9
8
)Oまた,識別同定 という実用に徹
した早見表 Gl
l
yar
e
vs
ky,R.
S.
;Gr
l
Vnl
n,VS La
n
gL
L
a
ge
S
L
de
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L
jc
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L
Ongui
de Mos
c
ow,Nauka 1
97
03
43
p は,各
種の索引を装備 している (
0nPe
T
L
eJ
T
meJ
Tbf
l
at
,
I
t
(
OBMl
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1
4
CbMemi
OCTS
I
M/P.
C.n 川刃peBCIく日放,B.
C.rpⅥtlHl
川
の英訳版)
。
7)奴田原 睦明 「アラビア語の辞啓 とその周辺」岩波新書編集
い。
(
1
9
94.5.6受理)