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小沼・長内「B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-」
(2015.8)
早稲田大学 IT 戦略研究所
Research Institute of IT & Management,
Waseda University
2015 年 8 月
B2B2C ビジネスにおける機能的価値と
意味的価値の使い分け戦略
-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-
早稲田大学経営管理修士(専門職) 小沼 麻理
早稲田大学ビジネススクール・准教授
長内 厚
早稲田大学 IT 戦略研究所ワーキングペーパーシリーズ No.54
Working Paper
早稲田大学
IT 戦略研究所
ワーキングペーパー
小沼・長内「B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-」
(2015.8)
B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略
-富士フイルムの経鼻内視鏡のケースの事例-
早稲田大学経営管理修士(専門職)
早稲田大学商学学術院・准教授
小沼 麻理
長内 厚
【要旨】
本稿では、B2B 製品において、直接顧客の先にいるエンドユーザー(B2B2C)に
対する異なる価値創造のアプローチを含めた総合的な価値創造のパターンのひ
とつを経鼻内視鏡の事例を通じて示す。医療機器の直接的な顧客は病院・医院
であり、製品価値は専ら機能的価値である。しかし、実際に内視鏡検査を受け
る患者に対して B2C 特有の情緒的、感情的な価値を訴求することで、B2B 事
業を有利にするプロセスを明らかにする。
【キーワード】
価値創造、製品開発、意味的価値、医療マネジメント
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小沼・長内「B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-」
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<目次>
1. はじめに ………………………………………………………………… 1
2. 先行研究レビューと本稿の論点 …………………………………………2
2-1.B2B2C ビジネスとしての医療 …………………………………………2
2-2.医療マーケティングと顧客価値としての患者満足 …………………3
3. 事例研究 ……………………………………………………………………4
3-1.消化器内視鏡市場の問題点 ……………………………………………4
3-1-1.
3-1-2.
3-1-3.
市場の成熟 ………………………………………………………………5
市場の持つ課題 ……………………………………………………… 10
トレードオフになる機構 …………………………………………… 13
3-2. 富士フイルムの戦略 ……………………………………………… 18
3-2-1. ターゲティング ……………………………………………………… 18
3-2-2. 製品戦略 ………………………………………………………
19
3-2-3.
3-2-4.
3-2-5.
3-2-6.
22
24
28
32
3-3.
全社戦略 ………………………………………………………………
市場の反応 ……………………………………………………………
プロモーション戦略(広告・販売促進 等) ……………………
価格戦略 ………………………………………………………………
インタビュー ……………………………………………………… 34
3-3-1.
3-3-2.
3-3-3.
経鼻内視鏡推進派 …………………………………………………… 34
経口内視鏡推進派 …………………………………………………… 36
小括 …………………………………………………………………… 36
4. 考察 ……………………………………………………………………… 37
4-1. 顧客が多様な状況下での分断型(Disruptive)イノベーション37
4-2. 医療における意味的価値の実現 ………………………………… 38
5. おわりに ………………………………………………………………… 41
5-1.実務的インプリケーションと今後の課題 ………………………… 41
5-2. 医療産業の発展のために ………………………………………… 43
参考文献 ………………………………………………………………………… 45
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1. はじめに
戦後日本の高度成長は、自動車や家電産業に代表されるように、科学技術の発展に
伴う製品の機能・性能の進化が多くの付加価値を創造することで成し遂げられた。し
かし、技術的進歩が突き詰められると、製品の機能や性能の向上が顧客の認知レベル
を超えた、いわゆる過剰品質の状態となり、追加的な技術進歩が必ずしも事業成果を
産 ま な い と い う 状 況 を も た ら し た 。 こ う し た 状 況 に 、 延 岡 (2006; 2011)、 楠 木
(2001)、 楠 木 ・ 阿 久 津 (2006)な ど の 研 究 は 、 機 能 ・ 性 能 の 進 歩 と は 異 な る 製 品 の 価 値
次 元 を 実 現 す る 必 要 性 を 述 べ 、 特 に 、 延 岡 (2006; 2011)は 、 Schmitt(1997)な ど マ ー
ケティング領域で発展した、顧客の感性や情緒に訴えかける付加価値創造を技術や製
品 の 開 発 段 階 に 応 用 す る 、 意 味 的 価 値 創 造 の 重 要 性 を 指 摘 し て い る 。 更 に 長 内 (2010)
は、意味的価値創造が機能的価値よりも重要な局面では、意味的価値創造に開発資源
を振り向け、その結果、機能・性能が劣っていても総合的な製品価値は高まる可能性
を示唆している。
ただし、こうした機能的価値と意味的価値のトレードオフは、分析対象となる製品
カ テ ゴ リ ー が 一 般 消 費 財 で あ り 、 最 終 的 に は 「 商 品 企 画 の 問 題 (延 岡 , 2011)」 に 帰 結
するためであり、製品の機能や性能の進歩が顧客にとってクリティカルな製品差別化
となっている場合には、機能的価値の重要性は相対的に高いはずである。その意味
で、医療機器などの技術開発、製品開発は未だに機能的価値の重要性が高い産業とい
える。それは、医療機器の機能や性能が最終的に製品の恩恵を得る疾病患者の生命や
健康に直結する問題であり、より優れた技術がより高度な医療サービスを可能にして
いるためである。
1819 年 ラ エ ネ ッ ク に よ る 聴 診 器 の 発 明 以 降 、 現 代 医 学 は 、「 高 級 な 診 察 技 術 を 駆 使
し 、」「 特 定 の 病 変 を 検 出 す る の に 適 合 し た 特 殊 な 診 察 器 械 を 巧 み に あ や つ 」 る こ と で
専 門 医 が 優 れ た 診 療 を 行 う 極 め て 科 学 的 な プ ロ セ ス と な っ て い る (柴 田 , 1987)。 い わ
ゆる「胃カメラ」と呼ばれる上部内視鏡も後述の通り、科学的、技術的成果による機
能・性能が製品の付加価値となり、医療従事者に提供されてきた。こうした、機能・
性 能 に よ る 製 品 価 値 の 創 造 を 延 岡 (2006; 2011)は 機 能 的 価 値 と 呼 び 、 一 方 、 顧 客 の 感
性や情緒に訴えかけるような形式知化しにくい価値のことを意味的価値と呼んでい
る。医療機器メーカーと医療従事者との間の製品売買においては専ら機能的価値が重
要 な 価 値 で あ る が 、 延 岡 (2011)が 指 摘 す る よ う に 、 メ ー カ ー に 対 す る 信 頼 性 や ア フ タ
ー サ ー ビ ス な ど B2B 間 の 取 引 で も 意 味 的 価 値 は 存 在 す る と も 指 摘 し て い る 。
他 方 で 、 延 岡 (2011)や 長 内 (2012)は B2C 市 場 に お い て は 、 個 々 の 顧 客 の 感 性 や 文 化
的背景の違い、供給側との情報の非対称性などにより、顧客の製品に対する質的な評
価は多様であり、予測困難であり、突き詰めれば商品企画担当者のセンスによって価
値が決まる要素が大きいとしている。よって、意味的価値のマネジメントは産業財
( B2B 市 場 ) の 方 が よ り マ ネ ジ リ ア ル で あ る と し て い る (延 岡 , 2011)
し か し 、 現 実 の 社 会 で は 、 直 接 的 な 顧 客 が 企 業 ・ 法 人 で あ り 、 B2B 市 場 の 体 を な し
ているとしても、その先に実際のエンドユーザーが一般消費財と同じ一般顧客である
場 合 、 す な わ ち 、 B2B2C 市 場 に お い て は 、 B2B 市 場 の 価 値 創 造 の 側 面 と 同 時 に B2C 市
場的な価値創造の側面を有しているのではないか、ということが本稿の仮説的な命題
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で あ る 。 よ り 踏 み 込 ん だ 議 論 と し て 、 本 稿 で は 延 岡 (2011)や 長 内 (2012)に お い て 示 さ
れ て い る よ う な B2B 市 場 に お け る ア フ タ ー サ ー ビ ス や 信 頼 性 に よ る 意 味 的 価 値 創 造 に
加 え て 、 そ の 先 に あ る B2C 的 な 意 味 的 価 値 創 造 を 「 合 わ せ 技 」 と し て 提 供 す る こ と が
できれば、より製品価値が高まり、競争優位を構築する一つの手段となり得るかもし
れない。これらの命題を検討するため、本稿では富士フイルムが開発した「経鼻内視
鏡 ( 鼻 か ら 入 れ る 胃 カ メ ラ )」 の 事 例 を 検 討 し 、 業 界 ト ッ プ の オ リ ン パ ス が 、 経 口 内
視鏡を医療従事者にとって合理的な手法であると訴求したのに対し、富士フイルム
が、医療従事者ではなく、患者や検診の受診者に直接、経鼻内視鏡の意味的価値を訴
求することで、エンドユーザーを巻き込み、医療従事者の合理的意思決定に影響を与
え、自社製品の販売を有利に導いたことを示す。
2. 先行研究レビューと本稿の論点
2-1.
B2B2C ビ ジ ネ ス と し て の 医 療
医療機器メーカーの顧客は第一義的には医師や病院である。医師や病院の先には最
終 的 に 医 療 サ ー ビ ス を 教 授 す る エ ン ド ユ ー ザ ー( 患 者 )が い る が 、一 般 的 に 医 療 機 器 の
選 定 に 患 者 が 加 わ る こ と は な く 、 医 療 機 器 ビ ジ ネ ス は B2B と し て 捉 え ら れ る 。
し か し な が ら 、医 療 サ ー ビ ス の 向 上 、イ ン フ ォ ー ム ド コ ン セ ン ト な ど 、エ ン ド ユ ー ザ
ー で あ る 患 者 に と っ て の 医 療 の 質 に 対 す る 議 論 が 高 ま る 中 で 、 現 実 で は B2B2C つ ま り
顧 客 C で あ る 患 者 や そ の 家 族 が お り 、顧 客 B( 医 師 )の 便 益 は 顧 客 C( 患 者 ま た そ の 家
族)の便益と直結していることが望ましい。但し、顧客 C は顧客 B のような専門性を
持ちえない。その摺合せを行う者が顧客 B また企業 B となるが、どのような価値判断
基 準 を 持 ち 、市 場 を 形 成 し て い る か を 明 ら か に す る と と も に 、な に を も っ て「 医 学 的 意
義 が 大 き い 」 と 考 え る の か ( P.Pisano,2008) を 検 討 す る 必 要 が あ る 。
優 れ た 産 業 財 プ レ イ ヤ ー は 、顧 客 企 業 の 事 業 上 の ニ ー ズ を く ま な く 理 解 し て い る 。顧
客 企 業 の 立 場 に な り 代 わ り 、ど う す れ ば「 顧 客 企 業 の 顧 客 」を 満 足 さ せ る こ と が で き る
か ― ひ い て は 、顧 客 企 業 の 企 業 価 値 に 貢 献 す る 事 を 考 え て( 小 森 ,2000)お り 、企 業 は
消 費 者 を 巻 き 込 ん だ「 B2B2C」
( 顧 客 企 業 の 最 終 消 費 者 向 け )型 の ビ ジ ネ ス モ デ ル 構 築 に
新 た な 生 き 残 り の カ ギ を 見 出 す 時 代 に な っ た と い う 認 識 が 広 ま っ て (星 野 , 2000)き て
い る 。「 B2B2C( Business to Business to Consumer) 型 モ デ ル 」 に つ い て は 、 鴨 志 田
(2000)で 次 の よ う に 述 べ て い る 。 エ ン ド ユ ー ザ ー を 起 点 に バ リ ュ ー チ ェ ー ン を 組 み 替
え て 、製 品 と サ ー ビ ス を 深 く 結 び つ け た モ デ ル で あ り 、最 重 要 課 題 は 、い か に エ ン ド ユ
ー ザ ー の ニ ー ズ を 捉 え る か 、 そ し て B2C で の 優 位 性 を B2B で も 活 か す 好 循 環 を 形 成 で
き る か ど う か が 本 質 で あ る と 。ま た「 エ ン ド ユ ー ザ ー と 顧 客 企 業 の 価 値 を 同 時 に 向 上 さ
せ る 」と い う コ ン セ プ ト が 不 可 欠 で あ り 、こ れ な く し て は 、期 待 し た 効 果 は 得 ら れ な い
と 。顧 客 企 業 の み な ら ず 、そ の 先 に い る エ ン ド ユ ー ザ ー の 価 値 を そ の 射 程 に 入 れ る 必 要
が あ る 。 顧 客 企 業 の 顧 客 企 業 価 値 の 大 半 は 、 エ ン ド ユ ー ザ ー に よ っ て 創 造 さ れ る (鴨
志 田 , 2000)た め で あ る 。
医 療 で 提 供 す べ き 製 品 は 、 Micheal E.Porter (2009)に あ る よ う に 、 ケ ア ・ サ イ ク ル
全体で評価した際に、患者にとって独自の価値を生み出せるような戦略を基本にする
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ことにある。
顧客 B への価値提供が顧客 C の得る価値が有用であるか懐疑的であるように、顧客
C へ の 価 値 提 供 で 顧 客 B が 得 る 価 値 が 常 に 同 一 の も の で あ る と は 限 ら な い 。そ の 中 で も
顧客 C への価値創造と適切な訴求を行う事で、市場は形成されるといえる。
2-2.
医療マーケティングと顧客価値としての患者満足
医 療 は 厚 生 労 働 省 に 1995 年 に サ ー ビ ス 業 と し て 位 置 づ け ら れ 1 、 無 形 性 サ ー ビ ス と
し て ホ ス ピ タ リ テ ィ ・ マ ネ ジ メ ン ト と の 分 野 な ど で 議 論 が な さ れ る こ と が 多 い 。 B2B
の世界は、技術・開発などエンジニアリングを中心に回っており、一部の例外を除く
と マ ー ケ テ ィ ン グ の 概 念 そ の も の が 不 在 で あ っ た と い う の が 実 態 (小 森 , 2000)で あ
ると考えられるが、医療は特殊ではなく、組織管理の面では一般産業・企業と共通す
る 部 分 の 方 が 多 い と 考 え る こ と が 必 要 で あ る と 主 張 す る 2。 但 し 、 特 徴 と し て は 、 侵 襲
性、緊急性、即時性、個別性、不確実性、複雑性、非定型性、リスク性、地域性が挙
げ ら れ て 34お り 、 そ の 特 徴 を 十 分 に 加 味 す る 必 要 は あ る 。
情報の非対称性がある分野に於いて、顧客 B は顧客 C に対し、プロフェッショナル
サービスを提供し、またそうすることが顧客 C よりも期待される。しかしながら、企
業 B は、プロフェッショナルそのものではなく、どちらかと言えば効率性の観点から
個別対応をし難い向きにある。殊、医療機器に於いては薬事法等の規制もあり、容易
にカスタマイズが容認されない製品を提供することで質の担保を行っている。これま
でのノウハウやエビデンスの積み上げから標準化された安全な機器こそが、医療現場
で提供を求められている製品であるからである。
また従来マーケティングでは、価値には製品の機能に由来する価値だけでなく、消
費者の感性や情緒によってもたらされる価値があるとして経験価値や感性価値といっ
た 議 論 が 行 わ れ て き た (鳥 居 1996、 若 林 2000、 Schmit 2000、 長 沢 2005、 長 内 ・ 榊
原 2012)。 マ ー ケ テ ィ ン グ に お け る 価 値 は 、 製 品 開 発 段 階 以 後 の マ ー ケ テ ィ ン グ 活 動
によって創造されるものであるとの指摘も散見される。宣伝や売り方、商品の陳列の
仕方、ブランドなどによって、いかに顧客の近くに影響を与えるかという点を重視し
て い る と 、 延 岡 ( 2011) で も 指 摘 さ れ て い る 。
B2B に し ろ 、 B2B2C に し ろ 、 最 終 的 に 物 を 言 う の は 、 マ ー ケ テ ィ ン グ 力 で あ り 、 価
値 提 案 力 で あ る ( 鴨 志 田 , 2000) と の 指 摘 も あ る よ う に 、 マ ー ケ テ ィ ン グ 論 に お け る
価値について、畢竟は、立ち位置の違いこそあれ、製品の機能・性能による客観的・
定量的な価値と、顧客の感覚や情緒によって認められる主観的・定性的な価値の両方
が 価 値 創 造 に は 不 可 欠 で あ る と い う 認 識 で は 一 致 し て い る (長 内 ・ 榊 原 , 2012)。 す な
わち、医療サービスのリスク性や高度な技術、治療者個人の技量によるサービスレベ
1
厚 生 白 書 〈 平 成 7 年 版 〉 医 療 ‐ 「 質 」「 情 報 」「 選 択 」 そ し て 「 納 得 」 平 成 6 年 度 厚 生 行 政 年 次 報
告
2
医 療 の 質 用 語 辞 典 「 医 療 経 営 の 質 」 日 本 規 格 協 会 2005
医 療 の 質 用 語 辞 典 「 医 療 」 日 本 規 格 協 会 2005
4
「病院のあり方に関する報告書」社団法人全日本病院協会
http://www.ajha.or.jp/voiCe/arikata/2011/07.html ( 閲 覧 : 2012 年 11 月 30 日 )
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ルの違いなど、医療独自の産業特性はあるものの、顧客の主観的な価値をどう捉える
かについては、顧客価値を患者満足と読み替え、患者満足も単に医学的な合理性だけ
で得られるものではなく、より感性や情緒に訴えかけるマーケティング手法が求めら
れるのではないか、ということが、本稿の大きな論点である。
3. 事例研究
B2B2C に お け る 意 味 的 価 値 が ど の よ う な イ ン パ ク ト を 市 場 に も た ら す か を 明 ら か
にするため、富士フイルムの経鼻内視鏡の開発事例を中心に検討する。
富 士 フ イ ル ム は 、内 視 鏡 市 場 で は フ ォ ロ ワ ー で あ る と 言 え る 。内 視 鏡 で は オ リ ン パ ス
の 70% に 次 ぐ 15% の 世 界 シ ェ ア を 握 5 6 7 る 。同 様 に 、内 視 鏡 に 関 す る 特 許 出 願 人 リ ス ト
を 見 て も 、オ リ ン パ ス 11,494 件 に 次 い で 特 許 件 数 を 前 身 の フ ジ ノ ン 3,091 件 で 上 げ て
い る 。 内 視 鏡 事 業 に つ い て 、 富 士 フ イ ル ム は 1971 年 か ら 展 開 し て お り 40 年 以 上 の 歴
史 を 持 つ が 、オ リ ン パ ス は 1950 年 よ り 事 業 展 開 を 行 っ て お り 、業 界 標 準 と な っ て い る
事は周知の事実である。
事例研究として富士フイルムに焦点を当てるが、それがこれまでの業界標準とどの
ように異なるのかを分かり易くするために、対比可能な部分については補足としてオ
リンパスについての記述を行っている。
な お 本 稿 で は 、日 本 市 場 を 限 定 と し て 述 べ る 。無 論 、学 問 と し て の 医 学 や 薬 学 に は 国
の 違 い を 超 え て 共 通 な 部 分 が 多 い 、し か し 医 療 の 供 給 は 単 な る 技 術 の 問 題 で は な く 、政
治的経済的文化的条件が媒介項として介在する事によって、現実の医療供給システム
は 国 に よ り 時 代 に よ っ て 著 し く 多 様 化 す る (杉 , 1981)た め で あ る 。
また、オリンパスは内視鏡で世界シェアが約7割に達し、富士フイルムと合わせる
と 9 割近くになるとされ8 、消化器内視鏡(軟性)は富士フイルムグループとオリン
パ ス ,ペ ン タ ッ ク ス が 世 界 市 場 を 独 占 し て い る 9 事 も 理 由 と し て 挙 げ る 。 日 本 に 開 発
拠点があり,即ち日本から世界へ向けて発信している製品と言っても過言ではない分
野である為である。
富 士 フ イ ル ム や オ リ ン パ ス , PMDA 1 0 等 の 公 開 デ ー タ よ り 、 上 部 消 化 器 内 視 鏡 の 製 品
スペックの変遷と用途によるマトリックスに整理し,上部消化器内視鏡の価値観とし
て優先されていたものを明確にする。
3-1.
消化器内視鏡市場の問題点
5
平 成 17 年 度 特 許 技 術 出 願 動 向 調 査 報 告 内 視 鏡 ( 要 約 版 )「 第 2 節 研 究 開 発 プ レ イ ヤ ー
( 1 ) 上 位 出 願 人 」 特 許 庁 平 成 18 年 3 月 p9
6
「 オ リ ン パ ス へ の 出 資 富 士 フ イ ル ム も 提 案 」 日 本 経 済 新 聞 朝 刊 2012 年 1 月 26 日 p9
7
「 オ リ ン パ ス 提 携 3 社 争 奪 」 日 本 経 済 新 聞 朝 刊 2012 年 1 月 31 日 p3
8
「 ソ ニ ー 、 オ リ ン パ ス と 月 内 に 合 意 へ 500 億 円 出 資 」 日 本 経 済 新 聞 2012 年 9 月 15 日
9
「 鼻 か ら 入 れ る 内 視 鏡 検 診 車 」 朝 日 新 聞 2007 年 10 月 12 日 朝 刊 p11
10
PMDA と は 、 独 立 行 政 法 人 医 薬 品 医 療 機 器 総 合 機 構 の 略 称 を 指 す 。 医 薬 品 副 作 用 被 害 救 済 や 稀 少 病
認定薬の研究振興調査などの業務を行っている。その中で医療機器の取扱説明書を公開しており、こ
こ で は そ の 利 用 を し て い る 。 医 療 機 器 関 連 情 報 に つ い て は 右 記 HP 参 照 の こ と
http://www.info.pmda.go.jp/iryo.html
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こ こ で は 消 化 器 内 視 鏡 ( 軟 性 )、 上 部 消 化 管 内 視 鏡 の 市 場 に つ い て の 俯 瞰 を 行
う。
「 消 化 器 と は 口 か ら 肛 門 ま で 続 く 長 い 管 状 の 器 官 で 、 (1)食 物 を 摂 取 す る 、 (2)摂 取
し た 食 物 を 栄 養 素 に 分 解 す る ( 消 化 )、 (3)栄 養 素 を 血 液 中 に 吸 収 す る 、 (4)消 化 で き
な い 残 り の 部 分 を 体 か ら 排 泄 す る と い う 働 き を し て い ま す 。 消 化 管 は 口 (口 の し く み
と 働 き を 参 照 )、 の ど 、 食 道 、 胃 、 小 腸 、 大 腸 、 直 腸 、 肛 門 で 構 成 さ れ て い ま す 。 ま
た 、 消 化 器 系 に は 膵 臓 ( す い ぞ う )、 肝 臓 、 胆 嚢 ( た ん の う ) も 含 ま れ ま す 。 1 1 ま た 、
上 部 消 化 管 と は 食 道 ・ 胃 ・ 十 二 指 腸 を 指 し 1 2 ま す 。」 上 部 消 化 管 内 視 鏡 と は 、 食 道 ・
胃・十二指腸に使用する内視鏡、また内視鏡検査を指す。
医用内視鏡は様々な部位・臓器で使用されている。その中で消化器の内視鏡検査
は、上述した上部消化管内視鏡検査、下部消化管内視鏡検査、胆・膵内視鏡検査とに
大別される。下部消化管内視鏡は大腸そして小腸の検査に使用され、胆・膵内視鏡検
査は胆嚢や胆管膵管などの検査に使用される。
本稿の対象市場は、上部消化管内視鏡であり、国家戦略(政策)とも関わりの深い
(胃)がん市場がそれに当たる。新聞や雑誌などの記事は基より、消化器の専門誌
「 消 化 器 内 視 鏡 」「 臨 牀 消 化 器 内 科 」 等 の 論 文 、 ま た 叙 述 的 資 料 「 光 る 壁 画 」「 胃 カ メ
ラ の 技 術 物 語 」「 消 化 管 内 視 鏡 の 歴 史 」 な ど よ り 、 成 功 し て い る 優 良 企 業 ( オ リ ン パ
ス)独占市場である内視鏡の歴史を踏まえ、市場の抱える問題点を明らかにする。
3-1-1.市場の成熟
内 視 鏡 は 2010 年 に 誕 生 60 周 年 を 迎 え た 、 そ し て 電 子 内 視 鏡 に つ い て は 開 発 さ れ て
か ら お よ そ 30 年 を 経 て い る 。 内 視 鏡 の 開 発 の 歴 史 は 、 東 大 の 医 師 と 共 オ リ ン パ ス が
開 発 し て 以 来 , 顧 客 B( 医 師 ) と 共 に 歩 ん で き た 歴 史 と 重 な る も の で 、 専 門 医 と 技 師
たちとの緊密な協力による成果で、医師は次から次へ要求をだし、技師たちはそれに
こ た え て 、 よ り 性 能 の 高 い も の を う み 出 し て い っ た 13も の で あ る 。
内 視 鏡 は 挿 入 部 分 の 違 い に よ る 種 別 で 14、 硬 性 と 軟 性 に 大 別 さ れ る 。 図 表 1 か ら も
見て取れるように、軟性内視鏡の起源は硬性内視鏡にある。そのため歴史的に、硬性
内 視 鏡 の 分 野 で 診 断 治 療 の 技 術 が 蓄 積 さ れ 15、 軟 性 内 視 鏡 に 応 用 さ れ て き た 。 軟 性 内
視鏡はガストロカメラもしくは一般的に胃カメラという「胃の中に入れて胃内を撮影
す る カ メ ラ 」 16か ら 産 業 化 が 成 功 し た と さ れ 、 現 代 の 胃 が ん の 早 期 発 見 ・ 早 期 治 療 に
貢献している。
11
メ ル ク マ ニ ュ ア ル 医 学 百 科 http://merCkmanual.jp/mmhe2j/seC09/Ch118/Ch118a.html
2012 年 12 月 27 日 )
12
日 本 消 化 器 内 視 鏡 学 会 http://www.jges.net/simin/ ( 閲 覧 2012 年 12 月 27 日 )
13
あ と が き 「 光 る 壁 画 」 新 潮 社 p305
14
「内視鏡とは」オリンパスメディカルシステムズ株式会社
http://www.オ リ ン パ ス
mediCal.jp/produCts/ ( 閲 覧 2012 年 12 月 28 日 )
15
「 内 視 鏡 テ ク ノ ロ ジ ー ― 狭 い 入 口 か ら 深 奥 を 探 る ― 」 裳 華 房 1999.諸 隈 肇
16
「 50 年 の 歩 み 」 オ リ ン パ ス 光 学 工 業 株 式 会 社 昭 和 44 p139
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図表 1
内視鏡の歴史
( 出 所 : 各 種 資 料 171819よ り 筆 者 作 成 )
ガストロカメラから始まった内視鏡の歴史の中で、大きな変革が存在していた事を
図表 2 に示した。転機は大きく 2 つ、ガストロカメラからファイバースコープになっ
た事、ファイバースコープから電子内視鏡になった事が挙げられる。前者は同時性
を、後者は共有性を高めた。一例として前者では、静止画での観察から、リアルタイ
ムでの観察が可能になった事が挙げられる。また後者では、これまで術者一人のみの
観察を、モニターを介する事により他の医療従事者との情報共有・客観的記録が可能
となった。現在は電子内視鏡の時代であり、日々持続的イノベーションが行われてい
る 。「 高 付 加 価 値 」 と し て 付 加 さ れ る 機 能 で 例 え ば 、 拡 大 機 能 や ハ イ ビ ジ ョ ン 方 式 、
特殊光といった機能の出現が挙げられる。拡大機能は高解像度化をもたらし、走査線
数 を NTSC 信 号 方 式 の 2 倍 以 上 の 1,125 本 に し た ハ イ ビ ジ ョ ン 方 式 は 、 高 画 素 化 を も
たらした。その中でまた新しいパラダイムとしては「特殊光」診断の機能である。自
然光では「見えないものを見る」機能であり、波長の違いによる生体情報の違いを取
得する機能である。
17
「オリンパスの医療事業」オリンパス株式会社
http://www.オ リ ン パ ス .Co.jp/jp/CorC/ir/data/faCtBook/pdf/faCtBook_mediCal.pdf ( 閲 覧 2012
年 12 月 28 日 )
18
内 視 鏡 の 歴 史 http://www.オ リ ン パ ス .Co.jp/jp/CorC/his2ry/endo/ ( 閲 覧 2012 年 12 月 28 日 )
19
「 ベ ー シ ッ ク 電 子 内 視 鏡 テ キ ス ト ① 上 部 消 化 管 」 秀 潤 社 .2005.内 視 鏡 の 歴 史 pp14-15
早稲田大学
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ワーキングペーパー
6
小沼・長内「B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-」
(2015.8)
図表 2
内視鏡の歴史と S 字カーブ
( 出 所 : 各 種 資 料 202122よ り 筆 者 作 成 )
現 在 で は 消 化 器 用 内 視 鏡 の 世 界 シ ェ ア 約 70%が オ リ ン パ ス 製 品 2 3 2 4 で あ り 、 先 行 優
位性を持つオリンパスの内視鏡を利用した検査がスタンダードであり続けている。消
化管がんの早期発見や低侵襲治療の手段として内視鏡は普及が進んでいる。医療技術
の 進 歩 も さ る こ と な が ら 、 内 視 鏡 自 体 の 技 術 革 新 に よ る と こ ろ も 大 き い 。 25こ れ は 、
医療という信頼材の中で、安心・安全などのブランドを築き上げているからこそ、市
場ニーズ具現化の実現可能性がさらに高まっているといえる。いったん、ブランド・
ネームを確立し、安定した顧客基盤を構築した企業は、それを活かして、顧客ニーズ
に合致した新しいアプリケーションを開発できる。つまり、次なる製品・サービスの
「 ネ タ 」 が 容 易 に 生 ま れ て く る よ う に な る (小 森 , 2000)た め で あ る 。
競合企業がオリンパスの市場優位を切り崩すためには、単に技術的に高画質、高ス
20
「 オ リ ン パ ス の 医 療 事 業 」 オ リ ン パ ス 株 式 会 社 http://www.オ リ ン パ
ス .Co.jp/jp/CorC/ir/data/faCtBook/pdf/faCtBook_mediCal.pdf ( 閲 覧 2012 年 12 月 28 日 )
21
内 視 鏡 の 歴 史 http://www.オ リ ン パ ス .Co.jp/jp/CorC/his2ry/endo/ ( 閲 覧 2012 年 12 月 28 日 )
22
「 ベ ー シ ッ ク 電 子 内 視 鏡 テ キ ス ト ① 上 部 消 化 管 」 秀 潤 社 .2005.内 視 鏡 の 歴 史 pp14-15
23
白河オリンパス
http://www.shirakawa.オ リ ン パ ス .Co.jp/Company/Business/index.html ( 閲 覧 : 2012 年 11 月 30
日)
24
「 オ リ ン パ ス 巡 り 、 3 社 が 争 奪 戦 」 日 経 ビ ジ ネ ス オ ン ラ イ ン 、 2012 年 2 月 16 日
http://Business.nikkeiBp.Co.jp/artiCle/2piCs/20120210/227070/?rt=noCnt ( 閲 覧 2012 年 11 月
30 日 )
25
特 集 COVERS2RY ProduCt By Japan 30Leading ManufaCtures 精 密 「 オ リ ン パ ス 見 え な い 分 子 も
見 る 内 視 鏡 光 学 と 医 学 の 最 先 端 を 融 合 」 日 経 も の づ く り 2006.11 pp70-71
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小沼・長内「B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-」
(2015.8)
ペ ッ ク の 新 製 品 を 投 入 す る だ け で は 十 分 で は な い 26と 想 定 さ れ る 。 医 療 現 場 で 必 要 と
さ れ る の は 、 医 師 か ら 見 て 「 診 断 し や す い 画 像 」 に あ る か ら 27、 画 像 こ そ が 競 争 優 位
に立つ方策と業界全体として考えられていた。それが現在では、高画質化という競争
領 域 に 於 い て は 、 ひ と ま ず 頂 点 を 極 め 28た と 言 え る 状 況 に あ る 。
そして時代の先端を担うオリンパスの社員を代表し、一開発本部画像機器開発部の
方が今後の消化器内視鏡またかねてよりの想いを、以下のように述べている。より容
易な早期発見と診断の追求は、従来の電子内視鏡が求めていた、より自然な画像を得
るための自然光の限界に迫り、特殊光領域による新たなる光診断システムとしての内
視 鏡 機 器 開 発 の 原 動 力 と な っ て い る (中 村 , 2005)。
オリンパスが日本市場のみならず、世界の消化器内視鏡シェア 7 割を占める中で、
その他のプレイヤーがどのフィールドで戦う余地があるのかを探し、そこに見合った
商品設計を行う事は戦略として重要な点である。消化器内視鏡市場に於いて、ブルー
オーシャンとなる市場はどこに存在するのかを検討する必要がある。
厚 生 労 働 省 の 平 成 17 年 医 療 施 設 (静 態 ・ 動 態 )調 査 ・ 病 院 報 告 の 概 況 ( 表 20 検 査
等の実施状況)により、上部消化管内視鏡検査の実施率、つまり内視鏡が稼働してい
る 医 療 機 関 は 一 般 病 院 で は 74.3% 、 一 般 診 療 所 に つ い て は 16.9% と 乖 離 が あ る 事 が
理解できる。この事から、一般診療所について普及率を上げられる可能性がある。
この一般診療所の多くは、出血のリスクを冒せない為、検査では純粋な観察に主眼
が置かれる。但し、現在の内視鏡診断に必要不可欠な生検法という診断方法は多くの
施 設 で 行 わ れ て い る 。「 生 検 は 病 変 を 組 織 レ ベ ル で 診 断 す る 方 法 で 、 生 身 の 臓 器 を 一
部採取する方法である為、施行後は多かれ少なかれ必ず出血をします、また、あまり
に 日 常 的 に 行 わ れ る た め 、 そ の 危 険 性 に つ い て は 見 落 と さ れ が ち 」 (藤 澤 , 2006)で
あり、生検の次のステップについて合併症や出血リスクを一般診療所の医師は管理を
しにくい。したがって「診る」行為にフォーカスした製品が求められる。
なお先の調査・病院報告に於いて医療機関を「一般診療所」と「一般病院」とに大
別 し て い る 為 、 以 後 医 療 機 関 に つ い て は そ の よ う に 記 載 、 分 類 す る 。「 病 院 」「 診 療
所」については医療法第一章 総則の第一条の五で「二十人以上の患者を入院させる
た め の 施 設 を 有 す る も の 」 を 病 院 、「 患 者 を 入 院 さ せ る た め の 施 設 を 有 し な い も の 又
は十九人以下の患者を入院させるための施設を有するもの」を診療所としている。ま
た 日 本 標 準 産 業 分 類 ( 平 成 19 年 11 月 改 定 ) 2 9 で 病 院 は 一 般 病 院 、 精 神 科 病 院 に 大 別
さ れ て お り 、 病 院 は 「 20 人 以 上 の 患 者 を 入 院 さ せ る た め の 施 設 を 有 し て 医 師 又 は 歯
科 医 師 が 医 業 を 行 う 事 業 所 を い う 。 た だ し , 精 神 病 床 の み を 有 す る も の は 細 分 類 8312
に 分 類 さ れ る 。」
上部消化器内視鏡は胃がんの発見・治療に使用される。厚生労働省が定めている胃
がん検診の流れ(図表 3 を参照)の中で内視鏡は「検査」では「死亡率減少の効果の
26
「 日 経 ビ ジ ネ ス 」 1993 年 10 月 4 日 、「 日 経 産 業 新 聞 」 2003 年 9 月 3 日
「 [ビ ジ ネ ス ケ ー ス ]オ リ ン パ ス 内 視 鏡 分 野 で の 挑 戦 と 革 新 」 一 橋 ビ ジ ネ ス レ ビ ュ ー 2005 年 SPR
28
特 集 COVERS2RY ProduCt By Japan 30Leading ManufaCtures 精 密 「 オ リ ン パ ス 見 え な い 分 子 も 見
る 内 視 鏡 光 学 と 医 学 の 最 先 端 を 融 合 」 日 経 も の づ く り 2006.11 pp70-71
27
29
統計局の分類に関する統計基準
( 閲 覧 2012 年 12 月 30 日 )
http://www.stat.go.jp/index/seido/sangyo/pdf/19san3p.pdf
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(2015.8)
証拠」が「判断する証拠が不十分」として推奨グレードは「胃 X 線検査」よりも低い
30
。 内 視 鏡 は 「 ペ プ シ ノ ゲ ン 検 査 」「 ヘ リ コ バ ク タ ー ピ ロ リ 抗 体 検 査 」 と 同 様 に 「 検
査」のフェーズでは推奨されておらず、その後の「精密検査」のフェーズで標準的方
法として用いられる。胃がんのケアサイクルを考えてみると、検査による発見、精密
検査、治療(内科的治療、外科的治療、化学療法、免疫療法、放射線療法その他を組
み 合 わ せ た 集 学 的 治 療 な ど ) と な っ て お り 、 上 部 消 化 器 内 視 鏡 は 「 検 査 」「 精 密 検
査」また内科的治療の中で「内視鏡的治療」のフェーズで選択される事が多い(図表
3 中 、 二 重 線 内 の フ ェ ー ズ )。
この中で一般診療所はケアサイクルのスタート地点に位置し「検査」を行う顧客 B
であるため、治療が必要な場合は一般病院へ連携を行っている。つまり内視鏡におけ
る「治療」の機能は選択肢としては省ける事となる。病態を事細かに検討するという
よりも、平たく言えば良性か悪性、もしくは疑いが陽性か陰性かを峻別する事が求め
られるため、画質について、術者の嗜好や希望はさて置き、精密検査同等それ以上の
画質である必要はないと考えられる。
以上の事より、新規市場としてチャレンジャーが開拓できる可能性がある市場は一
般診療所であり、彼らの求めるスペックに合う製品を提供する事で存在感を強められ
る可能性を持つと考えられる。
30
推 奨 グ レ ー ド に つ い て は 「 有 効 性 評 価 に 基 づ く 胃 が ん 検 診 ガ イ ド ラ イ ン 」 平 成 17 年 度 厚 生 労 働 省 が
ん研究助成金 「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班 主任研究者 祖父江友孝
参照のこと
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図表 3
ケアサイクルによる内視鏡利用シーンと対象医療機関
( 出 所 :「 が ん 情 報 サ ー ビ ス 」 3 1 を 基 に 筆 者 作 成 )
3-1-2.市場の持つ課題
内視鏡は胃がんの早期発見のみならず、近年は早期治療についても興隆を見せて
いるが,基本的には体内部を観察することを目的として開発された医療機器であり,
厚生労働省での分類では、軟性胃内視鏡は管理医療機器のクラス分類はⅡ(不具合が
生じた場合でも、人体へのリスクが比較的低いと考えられるもの)となっている。
検査が目的となっている為、腫瘍の表面構造を詳細に観察し、早期発見および深達
度診断行う等,それらの正診率の向上が追求されている。内視鏡的診断は肉眼的な診
断 と な る 為 、 鮮 明 な 画 質 ま た そ れ を 補 助 す る 明 る さ が 求 め ら れ る 。 さ ら に は 5~ 125
倍といった倍率を上げられる拡大内視鏡という機能を搭載(近年では標準装備に近
い)している内視鏡も存在する。
俗 に 、 内 視 鏡 操 作 は 「 片 手 で リ ン ゴ の 皮 を む く よ う な 」 難 し さ と も さ れ 32、 ま た そ
れらの診断には、経験と熟練を要する事は言及するに及ばない。例えば消化器内視鏡
学 会 の 日 本 消 化 器 内 視 鏡 学 会 専 門 医 制 度 規 則 3 3 を 見 て も 、 5 年 以 上 の 研 修 や 200 回 以
31
独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報サービス「がん検診につい
て 」 http://ganjoho.jp/puBliC/pre_sCr/sCreening/aBout_sCr.html ( 閲 覧 : 2012 年 12 月 23 日 )
32
「 は が し て 治 す 早 期 が ん 」 日 本 経 済 新 聞 2006 年 12 月 3 日 p11
33
一般社団法人日本消化器内視鏡学会「日本消化器内視鏡学会専門医制度総則」
http://www.jges.net/gseido/index.html ( 閲 覧 2012 年 11 月 30 日 )
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上 の 検 査 経 験 な ど を 要 す る 。 な お 詳 細 は 消 化 器 内 視 鏡 学 会 HP に て 公 開 さ れ て い る
為、ここでは割愛する。
オ リ ン パ ス が 行 っ た ア ン ケ ー ト 調 査 で は 、「 上 部 消 化 管 内 視 鏡 検 査 」 の 未 受 診 率 が
63% に 達 し 、 そ の 7 割 強 が 「 検 査 を 受 け よ う と は 思 わ な い 」 と 回 答 ,「 自 覚 症 状 が な
い 」 こ と が 回 答 の ト ッ プ だ が 、 早 期 が ん は 自 覚 症 状 を 伴 わ な い 。「 自 覚 症 状 が な い 」
は 42% 、「 苦 し そ う で 抵 抗 感 が あ る 」 は 25% と の こ と で あ る 3 4 。
内 視 鏡 検 査 は 、「 つ ら い 検 査 」 の 代 表 と さ れ る 3 5 が 、 早 期 胃 癌 の 診 療 は 内 視 鏡 を 抜 き
に は 語 れ な い 3 6 。 70 年 代 ま で は 胃 癌 の 検 査 は X 線 件 が 主 流 で 、 内 視 鏡 は X 線 検 査 で 異
常 が あ っ た 場 合 の 精 査 目 的 で 使 う と い っ た 位 置 付 け 37で あ っ た 。 当 時 の 内 視 鏡 は 検 査
時 の 肉 体 的 苦 痛 は 大 き く 、 患 者 が 嫌 が っ た た め に 普 及 し な か っ た 3 8 。 そ れ が 80 年 代 か
ら、より細径の内視鏡が開発され「患者が X 線検査よりも内視鏡検査を望むようにな
っ て き た 」 39。
厚生労働省のがん対策推進協議会や、がん検診企業アクションなどの啓発活動に於
いて、一次検診の中で「胃内視鏡検査」などが取り上げられ、近年ではより身近にな
りつつある。東大病院でも、胃の検査ではバリウム検査をせずに、最初から内視鏡検
査 を 実 施 40し て い る 。 ま た テ レ ビ な ど で も 最 先 端 の 治 療 や 例 え ば カ プ セ ル 内 視 鏡 な ど
の特集が組まれ、がんの早期発見・早期治療に非常に低侵襲で安全・安心なイメージ
がついている。
しかしながら、内視鏡治療は基より、検査に於いてもそれは医療行為であり、決し
て完全なものではなく、危険やリスクを伴うものである。
内 視 鏡 室 に は 必 ず 一 冊 は あ る 教 本 (鈴 木 , 2005)の 中 に も 、 内 視 鏡 検 査 に 臨 む 際 に
は、以下など留意するよう触れられている。
・患者にとって内視鏡検査というものは、決して、楽な気持ちの良い検査ではない。
多くの場合、できれば受けたくない検査である
・内視鏡検査は苦痛を伴う検査、つまり侵襲性のある検査である。場合によっては偶
発症が起こる可能性のある検査である。
以上の内視鏡検査の長所、欠点をよく理解して内視鏡検査に臨む必要がある。
それらを遵守するように、内視鏡医は懸命に挿入手技を研鑽してきたし、鎮静剤
を 用 い て 打 開 す る 方 法 を 考 案 し て き た 41。 口 か ら 入 れ る 内 視 鏡 検 査 は 、 入 れ る 際 、 の
どの部分麻酔だけか、意識がもうろうとするけれど、より痛みを抑える効果の強い鎮
静 剤 を 打 つ か 選 ぶ こ と が で き る 42。 後 者 を セ デ ー シ ョ ン と い い 、 麻 酔 利 用 に な る た
34
35
36
37
38
39
40
41
42
食 道 と 胃 の 内 視 鏡 「 未 受 診 率 63% に 」 日 経 産 業 新 聞 2006 年 9 月 25 日 p17
「 胃 カ メ ラ 鼻 か ら 静 岡 赤 十 字 病 院 全 国 専 門 部 局 開 設 」 朝 日 新 聞 2007 年 4 月 27 日 朝 刊 p29
「 2 つ の ノ ー ベ ル 賞 技 術 が 消 化 性 潰 瘍 と 早 期 胃 癌 を 克 服 」 日 経 メ デ ィ カ ル Summer2009 p16
「 2 つ の ノ ー ベ ル 賞 技 術 が 消 化 性 潰 瘍 と 早 期 胃 癌 を 克 服 」 日 経 メ デ ィ カ ル Summer2009 p16
「 2 つ の ノ ー ベ ル 賞 技 術 が 消 化 性 潰 瘍 と 早 期 胃 癌 を 克 服 」 日 経 メ デ ィ カ ル Summer2009 p16
「 2 つ の ノ ー ベ ル 賞 技 術 が 消 化 性 潰 瘍 と 早 期 胃 癌 を 克 服 」 日 経 メ デ ィ カ ル Summer2009 p16
「 東 大 病 院 、 人 間 ド ッ ク 開 設 」 日 経 産 業 新 聞 2007 年 7 月 25 日 p14
巻 頭 言 「 奥 深 い 「 優 し い 内 視 鏡 」 の 意 味 」 臨 牀 消 化 器 内 科 Vol.27 No.6 2012
「 時 に は 内 視 鏡 検 査 も 費 用 か か る が 高 い 精 度 」 朝 日 新 聞 2011 年 7 月 28 日 朝 刊 p32
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(2015.8)
め、禁忌など個体差を勘案し、デメリットがある場合には前者の検査方法を推奨する
医 師 が 多 い 。 一 般 的 に 、 消 化 器 内 視 鏡 で 使 用 さ れ る 鎮 静 剤 ( ド ル ミ カ ム ) は 1988 年 7
月 に 発 売 開 始 4 3 さ れ て お り 、 そ の 使 用 経 験 は 20 年 以 上 に も 亘 る 。 実 績 が あ る 中 で 、 普
及 し な い 理 由 は 、 医 師 の 治 療 方 針 に 拠 る 部 分 が 大 き い 。 後 者 を 体 験 し た 記 者 は 、「 す
ぐにボーっとし、内視鏡が入ったのも気付かず、検査が終わって内視鏡を抜く際、の
ど に 少 し 違 和 感 を 覚 え た だ け で 、 検 査 後 、 鎮 静 剤 が 覚 め る ま で 30 分 間 横 に な っ て 休
む 。 寝 不 足 だ っ た の で 爆 睡 し 、 目 覚 め た ら 爽 快 だ っ た 。 44」 と 掲 載 し て い る よ う に 、
このような感想を持たれる顧客 C は少なくない。セデーションが広まっていた場合に
は、経口内視鏡も「楽な」検査として認知される可能性は高い。
内視鏡検査は、間接的にではあるが、病変を肉眼観察している。医師の眼となり
手となる機器であろうとし、より精度の高さを追求してきた。その御蔭で近年の胃が
んの死亡率についてのエビデンスも変化しつつある。
なお現在、厚生労働省が推奨する対策型胃がん検診は造影剤(バリウム)と胃を膨
らませる薬を飲んで実施する X 線検査である。国立がん研究センターは、X 線検査は
死亡率を下げる根拠が相応にあると評価。内視鏡は不十分とする。しかし最近、内視
鏡検査で死亡率が下がるとの報告が出ている。検査を受けない場合との比較だけでは
な く 、 X 線 検 査 と 比 べ て も 死 亡 率 が 下 が る と い う 45 事 が 、 明 ら か に な っ て き て い
る。
X 線 読 影 に つ い て は 、 平 成 14 年 度 卒 業 ・ 入 局 の 消 化 器 内 科 医 ( 匿 名 ) に イ ン タ ビ ュ
ー を 行 っ た と こ ろ 、「 自 身 の 研 修 医 時 代 に は 読 影 を 教 育 さ れ た 記 憶 は な い 」 と の こ と
であり、現在、大学医学部の消化器科、放射線科では消化管の造影検査に携わる医師
は 少 な く 、 教 育 シ ス テ ム の な か で の 研 修 は 限 ら れ た 施 設 に な っ て い く 傾 向 が 強 い 46。
読影医の高齢化と減少が危惧されているため、X 線検査に取って代わる内視鏡検査の
普及と共に、安全性やエビデンスの他に、操作性の向上や、洗浄・消毒の容易なオペ
レーションの改善に寄与する内視鏡製品も課題として上がるであろう。
但 し 、 内 視 鏡 を 対 策 型 検 診 に 導 入 す る 課 題 が あ る 。「 内 視 鏡 を 対 策 型 検 診 で 実 施 す
るには、費用や人手がかかりすぎ、現実的ではありません」と国立国際医療センター
後 藤 田 卓 志 ・ 内 視 鏡 科 長 は 指 摘 す る 。 X 線 検 査 は 半 日 で 40~ 50 人 で き る が 内 視 鏡 は
20 人 が 限 度 。 内 視 鏡 の 消 毒 の た め に は 約 15 分 か か る た め 、 大 勢 に 実 施 す る に は 高 価
な 内 視 鏡 が 何 本 も い る 47た め で あ る 。
医療は常に個別対応が求められ、また不安全行為であり、検査・処置・治療行為は
疼 痛 ・ 苦 痛 や 外 的 傷 害 を と も な う 場 合 48が あ る の で あ る 。
一 方 で 、「 患 者 に 優 し い 内 視 鏡 」 と は 、 単 に 苦 痛 が 少 な い と い う だ け に と ど ま ら
43
添 付 文 書 「 ド ル ミ カ ム 注 射 液 10mg」 医 薬 品 医 療 機 器 情 報 提 供
http://www.info.pmda.go.jp/go/paCk/1124401A1052_1_06/ ( 閲 覧 2012 年 11 月 30 日 )
44
「 時 に は 内 視 鏡 検 査 も 費 用 か か る が 高 い 精 度 」 朝 日 新 聞 2011 年 7 月 28 日 朝 刊 p32
45
「 時 に は 内 視 鏡 検 査 も 費 用 か か る が 高 い 精 度 」 朝 日 新 聞 2011 年 7 月 28 日 朝 刊 p32
46
特集 胃癌スクリーニングの現状とハイリスクストラテジー「X 線による胃癌スクリーニングの現
状 と 問 題 点 」 臨 牀 消 化 器 内 科 Vol.23 No.3 2008 pp319-325
47
「 時 に は 内 視 鏡 検 査 も 費 用 か か る が 高 い 精 度 」 朝 日 新 聞 2011 年 7 月 28 日 p32
48
医 療 の 質 用 語 辞 典 「 医 療 」 日 本 規 格 協 会 2005
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小沼・長内「B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-」
(2015.8)
ず 、「 正 し い 診 断 ・ 治 療 法 」 で も な け れ ば 4 9 な ら ず 、 鼻 腔 も し く は 口 、 消 化 管 と い う あ
る程度制約された径の中で高機能を実現した製品提案は非常に難しい課題である。
3-1-3.
トレードオフになる機構
あらゆる製品はシステムであり、複数の構成要素から成り立っている
(RosenBerg, 1976)。 ま さ に 内 視 鏡 は 「 内 視 鏡 シ ス テ ム 」 と し て シ ス テ ム 製 品 と し て
組まれる。内視鏡を構成する主な製品は、光源、ビデオシステムセンター、スコー
プ 、 モ ニ タ ー の 4 製 品 で あ る ( 図 表 4 参 照 )。 ケ ー ス で 取 り 扱 う 経 鼻 内 視 鏡 は ス コ ー
プの一種であり、以後「内視鏡」と記す。
システムの改変に当たっては、それぞれの互換性がある場合とない場合がある。つ
まりスコープが機能を果たすためには、内視鏡のシステムを新規にて導入いただく
か,互換性のある製品の中で更新・追加導入を要とする。
なお内視鏡システムには、検査や治療で使用する処置具や、病変を焼灼する高周波
装置、周辺機器として録画や静止画プリンターなどの記録機器装置や、視野を妨げる
粘液を吸引する吸引装置、なども構成する。
内 視 鏡 シ ス テ ム は 自 社 内 で あ っ て も 、 10 年 に 一 度 程 度 で 、 外 部 性 が 時 に 無 く な る 事
も あ る 。医 療 機 関 で の 安 全 性・信 頼 性 を 獲 得 す る た め に 、技 術 革 新 に よ る モ ジ ュ ー ル 変
更や特殊機能の追加などによるものと説得が成されるが、更新需要も見越す製品戦略
である事は想像に易い。
世代交代の際の期待感また技術革新の影響力は凄まじいものがある。ファイバース
コープから電子内視鏡へのパラダイムシフトは、これまで術者一人が確認していた画
像 を 、モ ニ タ ー を 介 し て 医 療 を 支 え る 人 間 と の 共 有 を 図 れ る こ と と な っ た 。こ の こ と に
よ り 術 者 以 外 の 、例 え ば 指 導 医 の 介 入 が 可 能 に な り 、診 断 の 精 度 向 上 、検 査 後 に 再 確 認
が 成 さ れ る 事 や 、教 育 の リ ア ル タ イ ム 性 が 実 現 可 能 と な っ た 。医 学 的 有 用 性 そ の も の だ
けではなく、組織的に内視鏡医学の発展を支えていくシステムとなったのである。
49
巻 頭 言 「 奥 深 い 「 優 し い 内 視 鏡 」 の 意 味 」 臨 牀 消 化 器 内 科 Vol.27 No.6 2012 p635-636
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図表 4
内視鏡システム構成、内視鏡の先端部
( 出 所 : オ リ ン パ ス メ デ ィ カ ル シ ス テ ム ズ 株 式 会 社 HP 5 0 よ り )
内 視 鏡 の 画 質 で 重 要 に な る の は CCD が 持 つ 解 像 度 で あ る が 、 色 の 再 現 性 も 重 要 な 要
素である。色の再現方法を撮像方式といい、内視鏡に使用されているのは、同時方式
と 面 順 次 方 式 で あ る 。 51
50
「 内 視 鏡 と は 」 オ リ ン パ ス メ デ ィ カ ル シ ス テ ム ズ 株 式 会 社 http://www.オ リ ン パ ス
mediCal.jp/produCts/ ( 閲 覧 2012 年 12 月 23 日 )
51
ナースのための消化器内視鏡マニュアル 「第Ⅰ章消化器内視鏡の基礎知識 スコープ・超音波内
視 鏡 ・ 色 素 内 視 鏡 検 査 」 学 習 研 究 社 2003 p17
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図 表 5【 形 状 ・ 構 造 及 び 原 理 等 】 各 部 の 名 称
図表 6
(オリンパス取扱説明書より抜粋)
【形状・構造及び原
理 等 】 <作 動 ・ 動 作
原理>
(富士フイルム
取扱説明書よ
り)
CCD を い か に し て 内 視 鏡 の 太 さ と 先 端 軟 性 部 の 中 に 封 入 す る か が 初 期 の 電 子 内 視 鏡
開 発 の 最 大 難 点 で 細 径 化 の た め の 各 社 の 開 発 競 争 52が 未 だ 競 争 要 因 と し て あ り 、 各 社
の 特 徴 は 、 内 視 鏡 の 先 端 部 軟 性 部 に 封 入 さ れ た カ ラ ー カ メ ラ 機 構 に あ る 53と さ れ る 。
内 視 鏡 ( ラ イ ト ガ イ ド ( 以 後 LG と 記 す ), CCD, 鉗 子 孔 , 操 作 ワ イ ヤ ー と い っ た 要 素
が 組 み 合 わ さ っ て 構 成 さ れ て い る 精 密 機 器 ) の 構 造 ( 図 表 5, 6 参 照 ) 上 、 そ の 径 の
太さと搭載できる機能はトレードオフされる。特に、高精細とトレードオフの関係に
52
「消化管内視鏡検査法の進歩 光学系内視鏡から電子内視鏡への歩みと応用」勝健一『金芳堂』
2007 1 部 内 視 鏡 光 学 [総 論 ]pp15
53
「消化管内視鏡検査法の進歩 光学系内視鏡から電子内視鏡への歩みと応用」勝健一『金芳堂』
2007 1 部 内 視 鏡 光 学 [総 論 ]pp15
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あ る 高 輝 度 と い う 要 求 5 4 が あ り 、「 き れ い に 」「 小 さ く 」 と い う 、 最 近 の 医 療 機 器 の ニ
ー ズ を 実 現 す る 技 術 5 5 が 必 要 と さ れ る 。「 き れ い に 」 は 、 主 に こ こ 最 近 の 画 像 診 断 装 置
で顕著になっているニーズである。患者の画像をより忠実に表示させることで診断精
度 を 高 め 、 誤 診 の 恐 れ を 少 な く し た り 、 病 気 の 早 期 発 見 に 繋 げ た り す る の が 目 的 56で
あり、一方の「小さく」は、装置の小型化はもちろんのこと、患者に負担をかけない
( 低 侵 襲 ) 医 療 の 実 現 に 向 け た ニ ー ズ で あ る 57。 こ の 両 立 を 実 現 す る 製 品 が 所 望 さ れ
る 。 製 品 技 術 が 必 ず し も 機 能 的 価 値 実 現 の た め だ け に う み 出 さ れ た も の で は な い (長
内 ・ 榊 原 , 2012)の で あ る 。
上 部 消 化 管 内 視 鏡 ( 電 子 内 視 鏡 ) に つ い て 、「 き れ い に 」 を 実 現 す る 画 素 も し く は
輝 度 と 、「 小 さ く 」 を 実 現 す る 細 さ ( こ こ で は 先 端 部 外 形 で 比 較 ) を 軸 と し た 際 、 内
視鏡がどのようにラインアップされているかを図表 7 に示した。
各 種 機 能 に つ い て は EVIS LUCERA 上 部 消 化 管 汎 用 ビ デ オ ス コ ー プ オ リ ン パ ス GIF
TYPE 260 シ リ ー ズ で 代 表 的 な 内 視 鏡 か ら 比 較 を 行 っ て い る 。 な お 同 260 シ リ ー ズ の
内 、 こ こ で 議 論 し て い る 上 部 消 化 管 内 視 鏡 で は 、 顧 客 B の 最 た る 要 求 に 応 え る べ く 13
本ものラインアップがある。検査で活躍するバランスのとれた汎用機、他に特徴的な
機能が付加されている機種がある。検査時に非常に有用な機能としては、精査する際
に見落としなく行うための、クリアで鮮明な「ハイビジョン」機能、光学的拡大を行
い病変の精査には欠かせない「ズーム」機能、特殊な波長の光で粘膜を見ることで、
極 め て 早 期 の が ん を 識 別 す る こ と に 役 立 て ら れ る 「 NBI( 特 殊 光 診 断 )」 機 能 が 挙 げ ら
れる。また症例に拠っては、湾曲部が 2 つ存在し、通常操作では見えにくい部位を見
やすくする「マルチベンディング」機能があると便利である。治療で有効な機種に
は、専用の鉗子孔から勢いよく水を出し、内視鏡下粘膜切除術などの内視鏡治療をす
る際には欠かせない「ウォータージェット」機能、複雑な内視鏡治療を 2 つの鉗子孔
から行える、両手使いのイメージの「2 チャンネル」機構、などがある。
カプセル内視鏡は、従来の内視鏡そのものとは違い咽頭通過時には単体で飲み込む
ため反射が起こらない。但し上部消化器内視鏡とは、適応範囲が違う為、ここでの消
化器内視鏡とは一線を画す。しかしながら顧客 C の待望の「苦痛の少な」そうで近未
来的なイメージの製品であり、顧客 C は上部消化器内視鏡として適応可能であると誤
認している場合が多いため、記載する。
54
Cover Story 第 二 部 <実 用 段 階 へ >こ れ が 最 新 の 電 子 技 術 目 指 す は き れ い に 小 さ く 「 細 さ を 追 求 す
る 実 装 技 術 細 径 リ ベ ッ ト の か し め が カ ギ 」 日 経 エ レ ク ト ロ ニ ク ス 2005.9. 12 pp94-102
55
Cover Story 第 二 部 <実 用 段 階 へ >「 こ れ が 最 新 の 電 子 技 術 目 指 す は き れ い に 小 さ く 」 日 経 エ レ ク
ト ロ ニ ク ス 2005.9. 12 pp94-102
56
Cover Story 第 二 部 <実 用 段 階 へ >「 こ れ が 最 新 の 電 子 技 術 目 指 す は き れ い に 小 さ く 」 日 経 エ レ ク
ト ロ ニ ク ス 2005.9. 12 pp94-102
57
Cover Story 第 二 部 <実 用 段 階 へ >「 こ れ が 最 新 の 電 子 技 術 目 指 す は き れ い に 小 さ く 」 日 経 エ レ ク
ト ロ ニ ク ス 2005.9. 12 pp94-102
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図表 7
上部消化管内視鏡市場の製品ポジショニングマップ
( 出 所 : 各 取 扱 説 明 書 58よ り 筆 者 作 成 )
こ の 様 な 軸 に 於 い て 経 鼻 内 視 鏡 は 、経 口 内 視 鏡 の 10 ㎜ に 対 し お よ そ 半 分 の 5 ㎜ を 基
準とした径の細さ、つまり顧客 C への侵襲を減らす部分で勝負をしている。細径にな
った分、特殊機能は基より各種基本の機構や画質をある程度の所で容認せざるを得な
く な っ て き て し ま う 。機 能 で い え ば 、経 鼻 内 視 鏡 は 低 機 能 で あ り 、こ れ ま で の 経 口 内 視
鏡 で の 要 件 を 満 た さ な い 可 能 性 も 出 て く る 。経 口 内 視 鏡 に 比 べ 、輝 度・画 質 と い う 犠 牲
を払ってでも顧客 C にとって侵襲の少ない「小さく」の実現を行った製品であると考
えられる。
そ の 甲 斐 あ っ て 、競 合 他 社 品 の オ リ ン パ ス XP-260N で は あ る が 、記 事 の 中 で 、市 場 で
主 流 の サ イ ズ の 半 分 の 細 さ で 飲 み 込 む 際 の 違 和 感 も な い 5 9 と 報 じ ら れ て い る 。但 し こ の
際 の 比 較 が「 主 流 」の 経 口 内 視 鏡 で あ り 、細 さ の み の 強 調 で「 鼻 」か ら 飲 む と い う 記 述
が抜け落ちていた。訴求が不十分であるのは、顧客 C との情報の非対称性を明白にし
て い る 。市 場 は 混 迷 し て お り 、比 較 対 象 や 解 決 す べ き 問 題 を 正 確 に 把 握 で き て い な い 状
況であったことが窺い知ることができる。
細径のメリットとしては、電子内視鏡のカメラ内蔵ケーブルを小型化すれば、受診
者 の ス ト レ ス を 減 ら せ る ば か り か 、 用 途 を 拡 大 で き る 60点 に も あ る 。 そ の た め 医 師 の
責任の下で、細径内視鏡を術中内視鏡や小児,また他臓器への使用等の活用のされ方
もしている。消化器内視鏡ほどの市場性を持たない分野でも、ペンタックスが耳鼻科
や泌尿器科でイニシアチブを握っていた技術力などを活かし、消化器内科でもそのよ
58
カ プ セ ル 内 視 鏡 に つ い て は ギ ブ ン イ メ ー ジ ン グ http://www.nomudake.Com/ ( 閲 覧 : 2012 年 12 月
23 日 )、 上 部 消 化 管 に 各 種 機 能 に つ い て は EVIS LUCERA 上 部 消 化 管 汎 用 ビ デ オ ス コ ー プ オ リ ン パ ス
GIF TYPE 260 シ リ ー ズ 取 扱 説 明 書 よ り
59
「 診 断 装 置 、 患 者 に 優 し く 」 日 本 経 済 新 聞 2003 年 10 月 7 日 p20
60
Cover Story 第 二 部 <実 用 段 階 へ >こ れ が 最 新 の 電 子 技 術 目 指 す は き れ い に 小 さ く 「 細 さ を 追 求 す
る 実 装 技 術 細 径 リ ベ ッ ト の か し め が カ ギ 」 日 経 エ レ ク ト ロ ニ ク ス 2005.9. 12 pp94-102
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うなニッチの鼻腔や胃瘻専用等の方向で市場を開拓しようとしている。
3-2.
富士フイルムの戦略
以下に、富士フイルムがどのような戦略で経鼻内視鏡というソリューションを提
供したのかを紐解く。
3-2-1.
ターゲティング
タ ー ゲ ッ ト を こ れ ま で の 「 治 療 」 で は な く 「 検 査 」( を 中 心 に 行 う 施 設 ) に 絞 っ た
ことは、明白であると言える。富士フイルムが運営する一般啓発用の経鼻内視鏡専用
サ イ ト 「 鼻 か ら .jp ~ 胃 が ん の 予 防 と 早 期 発 見 ~ 」 に 於 い て 検 索 で き る 導 入 施 設 数 を
見 る と 、 一 般 病 院 ま た 一 般 診 療 所 数 ま た 割 合 は 、 一 般 病 院 16.7%, 一 般 診 療 所 83.3%
で あ っ た ( 下 記 図 表 8 参 照 )。 先 に 第 1 項 で 述 べ た 内 視 鏡 検 査 ( 導 入 ) を し て い る 医
療機関の割合とは対照的である事が見て取れる。
な お 販 売 本 数 も し く は 導 入 施 設 数 は 順 調 な 伸 び を 見 せ て い る と 考 え ら れ る 。 2004 年
単 年 で は 500 台 6 1 、 2005 年 は 国 内 1500 施 設 6 2 、 2006 年 時 点 で は 導 入 施 設 数 は 各 社 合 わ
せ て 1 千 以 上 の 施 設 6 3 、 2007 年 度 の 経 鼻 内 視 鏡 ス コ ー プ の 売 り 上 げ を 2006 年 度 比 7
割 増 の 7000 本 に 引 き 上 げ る 6 4 と し て い た 。 つ ま り 2006 年 度 は 4,118 本 程 度 を 売 り 上
げ て お り 、 導 入 施 設 数 を 鑑 み る と 、 複 数 本 購 入 ( 2~ 3 本 ) が さ れ て い た と 考 え ら れ
る 。 08 年 は 約 3,000 施 設 6 5 さ ら に 、 2011 年 に 発 売 し た 内 視 鏡 に つ い て は 初 年 度 1000
本 の 販 売 を 目 指 6 6 し 、 2012 年 現 在 で は 3200 施 設 と い う 広 が り を 見 せ て い る 。 そ し て
市 場 全 体 と し て は 、 08 年 1 月 現 在 で 導 入 施 設 は お よ そ 総 計 8,000 施 設 に の ぼ る と 推 測
さ れ 67て い る 。
この事よりも、富士フイルムが一般病院層で使用目的を検査に合った商品設計をし
ていたと考えられる。検査という用事を片付けたいが、市販製品が高すぎたり、複雑
すぎるため、自力でできずにおり、望ましい解決策がこれまで手の届かないところに
あ っ た 状 況 (Christensen,2003)で あ っ た 。 自 院 で は 検 査 を し な い , 他 院 へ 紹 介 す る
といった、無消費に対抗したのである。
61
鼻 か ら 胃 カ メ ラ 、 浸 透 着 々 ― ― フ ジ ノ ン 「 苦 痛 緩 和 」 掲 げ 首 位 を 追 う 。『 日 経 産 業 新 聞 』 2005/01/19
p21
62
フ ジ ノ ン 、 内 視 鏡 で 存 在 感 、 鼻 か ら 挿 入 ・ 小 腸 す べ て 検 査 ― ― 画 質 高 め て 販 売 攻 勢 。『 日 経 産 業 新
聞 』 2005 年 11 月 17 日 pp14
63
「 広 ま る 鼻 か ら 内 視 鏡 」 朝 日 新 聞 2006 年 4 月 24 日 朝 刊 pp28
64
「 経 鼻 内 視 鏡 の 営 業 強 化 オ リ ッ ク ス 子 会 社 な ど 提 携 」 日 経 産 業 新 聞 2007 年 2 月 16 日 p10
65
特集:経鼻内視鏡は本当に楽なのか?「経鼻内視鏡を楽に受けるうえでスコープによる差はあるの
か ? - ス コ ー プ の 現 状 と 将 来 像 - 」 消 化 器 内 視 鏡 Vol.20 No.4 2008 pp476- 481
66
「 高 画 質 の 経 鼻 内 視 鏡 富 士 フ イ ル ム が 開 発 」 日 経 産 業 新 聞 2011 年 10 月 27 日 p12
67
特集:経鼻内視鏡は本当に楽なのか?「経鼻内視鏡を楽に受けるうえでスコープによる差はあるの
か ? - ス コ ー プ の 現 状 と 将 来 像 - 」 消 化 器 内 視 鏡 Vol.20 No.4 2008 pp476- 481
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図表 8
上部消化管内視鏡検査実施施設数と富士フイルム経鼻内視鏡の導入施設数
施設数
上部消化管内視鏡検査の実
施
一般病院
経鼻内視鏡の導入
7,952 施 設 中
5,910
547
施 設 数 に 対 す る 割 合 (%)
74.3%
16.7% *
16,467
2,727
16.9%
83.3% *
一般診療所
97,442 施 設
中
施 設 数 に 対 す る 割 合 (%)
(出所:厚生労働省
平 成 17 年 医 療 施 設 (静 態 ・ 動 態 )調 査 ・ 病 院 報 告 の 概 況 ( 表 20
検査等の実施状
況 、 富 士 フ イ ル ム 経 鼻 内 視 鏡 専 用 HP「 鼻 か ら .JP」 掲 載 施 設 よ り 筆 者 作 成 、 * 富 士 フ イ ル ム 内 の シ ェ ア
で計算)
経 鼻 内 視 鏡 に よ る 市 場 の 拡 大 は 、導 入 施 設 数 の 増 加 の み な ら ず 、導 入 施 設 の 内 視 鏡 検
査 数 の 増 加 に も 表 れ て い る 。 経 鼻 内 視 鏡 の オ ピ ニ オ ン リ ー ダ ー で あ る 宮 脇 医 師 は 、 02
年 に 経 鼻 内 視 鏡 を 導 入 し て か ら 、 上 部 消 化 管 の 内 視 鏡 検 査 件 数 は 毎 年 約 30% ず つ 増 加
し 、 こ の 5 年 間 の 増 加 率 は 約 130% 6 8 で あ る と 報 告 し て い る 。 ま た 一 番 の 盛 り 上 が り を
見 せ た 2005 年 当 時 、 国 内 の 胃 ・ 食 道 の 内 視 鏡 検 査 件 数 は 約 1800 万 件 ( 2005 年 推 計 )。
こ の う ち 経 鼻 は 50 万 件 で 、 前 年 比 7 割 増 6 9 と さ れ て い る 。 04 年 10 月 に 導 入 し 、 05 年
より経口内視鏡検査の 2 倍の検査数となった静岡赤十字病院でも経鼻内視鏡を採用し
て か ら 、ド ッ ク や 一 般 検 診 で 内 視 鏡 検 査 を 選 択 す る 受 診 者 が 急 激 に 増 え て 7 0 い る と い う 。
経鼻内視鏡は内視鏡市場内のパイの奪い合いを齎したのではなく、潜在需要を喚起
し 、ま た 毎 年 の 定 期 健 診 も し く は 定 期 フ ォ ロ ー の 検 査 リ ピ ー タ ー を 増 や し た 。内 視 鏡 検
査市場そのものの興隆をさせたと言える。
3-2-2.
製品戦略
本項では、製品開発に於いてどのような保有技術を利用していたかを各社ニュース
リ リ ー ス 、取 扱 説 明 書 や 記 事・雑 誌 、ま た 発 表 論 文 な ど の 公 開 デ ー タ か ら 明 ら か に す る 。
第 3 章第 3 項で述べたように、各社、制限のある中で最適な製品の実現に挑んでい
る。一見すると、スペックでは大きな差はないように見受けられるが、経鼻内視鏡で
は「小さく」することの貢献に対し、各社が何の機能をそぎ落としたのか、各社の経
鼻内視鏡の比較表を掲載する(図表 9 参照、各社比較して機構ごとに優れている部分
68
Transnasal EndosCopy.2007 経 鼻 内 視 鏡 が 拓 く 新 し い ス ク リ ー ニ ン グ の 世 界 「 宮 脇 哲 丸 氏 に 聞 く
出雲中央クリニック院長 経鼻内視鏡は胃内視鏡検査をより身近なものにした」日経メディカルオン
ラ イ ン http://mediCal.nikkeiBp.Co.jp/all/nmk/keiBi/management070926.html ( 閲 覧 2012 年
12 月 23 日 )
69
「 経 鼻 内 視 鏡 の 営 業 強 化 オ リ ッ ク ス 子 会 社 な ど 提 携 」 日 経 産 業 新 聞 2007 年 2 月 16 日 p10
70 Transnasal EndosCopy.2007
経鼻内視鏡が拓く新しいスクリーニングの世界「川田和昭氏に聞く
静岡赤十字病院 経鼻内視鏡センター長 経鼻内視鏡は、内視鏡検査のハードルを下げてくれた」
http://mediCal.nikkeiBp.Co.jp/all/nmk/keiBi/management070731.html ( 閲 覧 2012 年 12 月 23
日)
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に つ い て 網 掛 け し て い る )。 そ の 機 能 の 取 捨 選 択 に 、 企 業 B の コ ア 技 術 な ど が 関 連 し
てきている事が推察される。
各 社 経 鼻 内 視 鏡 の 特 徴 を 一 言 で ま と め る と 、 富 士 フ イ ル ム は LG を 2 つ 確 保 す る 事
で光量の確保をした点、またアングルをこれまで通り 4 方向に保つ事で操作性を確保
している点にあると言える。オリンパスは撮像方式を面順次方式の採用にした事で、
画 質 を 確 保 す る 事 に 重 き を 置 き 、 そ の 上 で 5.0 ㎜ を 上 回 ら な い と 極 限 の 細 さ に 挑 戦 を
したと言える。
図表 9
発売年
富士フイルム、オリンパス、ペンタックスの経鼻内視鏡
型番
先端部
視野角
撮像方式
径
操作
L
鉗子
高周
方向
G
口
波
FUJIFIL
2002
EG-470N
5.9 ㎜
120 度
同時
4 方向
2
2㎜
対応
M
2005
EG-530N
5.9 ㎜
120 度
同時
4 方向
2
2㎜
対応
2007
EG-270N5
5.9 ㎜
120 度
同時
4 方向
2
2㎜
対応
2007
EG-530N2
5.9 ㎜
120 度
同時
4 方向
2
2㎜
対応
2007
EG-3000N
5.9 ㎜
120 度
同時
4 方向
2
2㎜
対応
2010
EG-530NW
5.9 ㎜
140 度
同時
4 方向
2
2㎜
対応
2011
EG-580NW
5.9 ㎜
140 度
同時
4 方向
2
2㎜
対応
2005
GIF-N260
4.9 ㎜
120 度
面順次
2 方向
1
2㎜
非対
オリン
パス
応
2006
GIF-
5.0 ㎜
120 度
面順次
4 方向
1
2㎜
XP260N
2012
GIF-
応
5.4 ㎜
140 度
面順次
4 方向
2
XP290N
PENTAX
非対
2.2
対応
㎜
2005
EG-1540
5.3 ㎜
140 度
面順次
2 方向
2
2㎜
対応
―
EG-1580K
5.5 ㎜
140 度
同時
2 方向
2
2㎜
対応
―
EG-1690K
6.15 ㎜
120 度
同時
4 方向
2
2㎜
―
( 出 典 : PMDA 添 付 文 書 , 日 経 ヘ ル ス ケ ア 21( 2005. 10,2009.8),「 経 鼻 内 視 鏡 を 用 い た 上 部 消 化 管 ス
ク リ ー ニ ン グ 検 査 の 要 点 」「 第 1 , 2, 3 世 代 経 鼻 内 視 鏡 の 胃 癌 診 断 能 に 関 す る 検 討 - 経 鼻 用 ス コ ー プ
の 改 良 と 診 断 能 と の 関 係 に つ い て - 」「 経 鼻 内 視 鏡 を 楽 に 受 け る う え で ス コ ー プ に よ る 差 は あ る の か ?
- ス コ ー プ の 現 状 と 将 来 像 - 」 等 よ り 筆 者 作 成 、「 ― 」 に つ い て は 詳 細 不 明 )
富 士 フ イ ル ム は 、内 視 鏡 開 発 に 触 れ 、こ の 製 品 実 現 の 技 術 的 ポ イ ン ト は 、デ ジ タ ル カ
メラ開発部門/生産技術部門/光学デバイス開発部門などと協力、グループの技術を
結 集 し て キ ー 部 品 で あ る CCD カ メ ラ を 内 視 鏡 専 用 に 設 計・開 発 し 小 型 化 を 実 現 し た こ と 、
患者さんに違和感や苦痛を与えない柔軟性を実現する構造設計や材料検討、また細径化と
耐久性を両立するレイアウト設計技術や解析シミュレーション技術などにある。開発者が
自ら多くの医師たちの意見を聞き、独自技術を開発していくことにより、従来の口から入
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れ る 内 視 鏡 の 優 れ た 機 能 を 踏 襲 し な が ら 細 径 化 を 実 現 し た 71と し て い る 。
富 士 フ イ ル ム は 、内 視 鏡 先 端 部 に 付 く CCD に つ い て 、独 自 の 画 像 セ ン サ ー「 ス ー パ ー
CCD ハ ニ カ ム ™」を 搭 載 し て い る 。社 の 技 術 マ ッ プ 中 7 2 で は 1999 年 に 光 学 技 術 の 分 野 で
発 表 が さ れ て い る 技 術 で あ る 。そ れ ま で は フ ジ ノ ン と し て 富 士 フ イ ル ム の 子 会 社 の 一 つ
として経営が成されてきたが、提供をしていなかったことが推察される。これは銀塩カメ
ラからデジタルカメラ事業への移行に伴うフィルム事業の蒸発を医療分野へ集中すると発
表をし、医療分野への人員資源の配分を行った成果であると捉えることが出来る。
経 鼻 内 視 鏡 の 細 系 化 に つ い て は 、2005 年 9 月 か ら 富 士 フ イ ル ム の 高 画 質 ハ ニ カ ム CCD
を 搭 載 す る 事 で 解 決 し た 7 3 。 ニ ュ ー ス リ リ ー ス よ り も 、「 カ メ ラ レ ン ズ の 設 計 で 培 っ た
光 学 技 術 を 駆 使 し て 内 視 鏡 用 に 新 開 発 し た レ ン ズ 」で あ り 、ま た「 新 開 発 の 画 像 セ ン サ
ーとレンズに長年蓄積してきた画像処理技術を組み合わせること」で実現している技
術である事を謳っている。
ま た CCD を レ ン ズ や 画 像 解 析 等 と 併 せ 自 社 製 品 で 最 適 な 統 合 を 行 っ て い る と 考 え ら
れ る 。 2008 年 10 月 に は 、富 士 フ イ ル ム 機 器 シ ス テ ム 開 発 セ ン タ ー に 所 属 す る 内 視 鏡
研 究 員 の 40 人 が さ い た ま 市 に あ る 旧 フ ジ ノ ン の 開 発 部 署 に 異 動 。レ ン ズ 製 造 や 画 像 解
析 な ど 双 方 の 技 術 を 融 合 し て 開 発 速 度 を 引 き 上 げ 7 4 た 。巻 き 返 し に は 技 術 面 で の 優 位 性
を 持 つ 製 品 が 不 可 欠 と 判 断 し た 7 5 と の 報 道 や 、 2011 年 に は EG-580NW を 発 売 、 従 来 よ り
高 画 質 で 病 変 部 位 を 観 察 で き る 7 6 点 を 売 り と し て い る が 、こ の 際 も 同 様 に 、カ メ ラ 用 レ
ンズで培った光学技術を駆使し内視鏡用に新開発したレンズを搭載との発表をしてい
る。
一 方 、 王 者 オ リ ン パ ス は 、 CCD チ ッ プ と そ の 出 力 回 路 を 組 み 合 わ せ た ユ ニ ッ ト 全 体 を 新
技術によって大幅に小型化することに成功し、その解像度は消化管用のスコープ並みにな
ってきた。そして、このような高画質は、微小光学レンズ、信号ケーブル、照明ファイ
バ ー 束 な ど の 新 し い 設 計 に よ っ て 、 超 細 系 化 を 支 え て い る 7 7 事 は 確 か で あ る が 、「 自 社
で開発を行っている」旨の報告はされていない。また同時に、ニュースリリース「超小
型 ・ 高 解 像 CCDの 採 用 」 と の 記 載 は あ る が 、「 自 社 開 発 」 に つ い て は 特 筆 さ れ て い な い 。 さ
ら に 2012年 10月 に 行 わ れ た 第 三 者 割 当 増 資 の 相 手 先 ソ ニ ー に つ い て は 「 映 像 ・ 医 療 事 業
の 両 分 野 に お い て キ ー デ バ イ ス で あ る イ メ ー ジ セ ン サ ー や 画 像 処 理 技 術 に 強 み 」 78を
活 か し た い と 発 表 さ れ て い る よ う に 、 CCD開 発 に つ い て 増 強 し た い 意 思 を 汲 ん で 取 れ
る。
71
「内視鏡システム開発」富士フイルム
http://www.fujifilm.Co.jp/Corporate/joBs/aBoutus/teChnology/03/review12.html.
( 閲 覧 2012 年 11 月 30 日 )
72 富 士 フ イ ル ム グ ル ー プ の 技 術 力 「 技 術 の 発 展 と 商 品 の 変 遷 」 富 士 フ イ ル ム 株 式 会 社
http://www.fujifilmholdings.Com/ja/rd/pdf/fh_rdteCh_001.pdf ( 閲 覧 2012 年 11 月 30 日 )
73
「 フ ジ ノ ン 、 内 視 鏡 で 存 在 感 」 日 経 産 業 新 聞 2005 年 11 月 17 日 p14
74
「 内 視 鏡 技 術 で シ ェ ア 競 う 」 日 経 産 業 新 聞 2008 年 10 月 8 日 p12
75
「 内 視 鏡 技 術 で シ ェ ア 競 う 」 日 経 産 業 新 聞 2008 年 10 月 8 日 p12
76
「 高 画 質 の 経 鼻 内 視 鏡 富 士 フ イ ル ム が 開 発 」 日 経 産 業 新 聞 2011 年 10 月 27 日 p12
77
竹 本 忠 良 (2005)「 特 集 : 内 視 鏡 ハ イ テ ク 機 器 ・ 先 端 技 術 <現 代 の プ ロ メ テ ウ ス >ハ イ テ ク 内 視 鏡 へ の
期 待 」『 消 化 器 内 視 鏡 』 Vol.17 No.6 2005
78
適 時 開 示 情 報 「 ソ ニ ー と の 業 務 ・ 資 本 提 携 に つ い て 」 2012 年 10 月 1 日 http://www.オ リ ン パ
ス .Co.jp/jp/CorC/ir/data/tes/2012/pdf/nr20121001.pdf ( 閲 覧 2012 年 11 月 30 日 )
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小沼・長内「B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-」
(2015.8)
但し、オリンパスが内視鏡の細系化のノウハウを元来より持ち合わせている事は言及に
及ばない。それは、消化器内視鏡の他に,軟性内視鏡として耳鼻,泌尿器,胆道等の製
造・販売を行っている実績があるためである。先述した管腔は消化管よりも径が細い。ま
たユニットが近い部分では、超極細径ビデオスコープという経口的胆管・膵管内視鏡が作
ら れ て お り 、「 最 細 径 内 視 鏡 」 は 1999年 に 日 経 BP技 術 省 賞 の 大 賞 を 受 賞 し て い る 7 9 。 経 鼻
内視鏡の開発についても、そのような技術の刷り合わせを活かしている事が類推される。
様 々 な 要 素 の 多 年 に わ た っ た 改 良 が よ う や く 実 を 結 ん だ (竹 本 , 2005)と 考 え ら れ る 。 経
鼻内視鏡については温存的ながら技術革新が活きたと考えられる。
販 売 に つ い て は 「 経 鼻 内 視 鏡 は 10年 の 販 売 実 績 が あ り 、 メ リ ッ ト は 熟 知 し て お り こ
ち ら が 本 家 」 と 対 抗 意 識 を の ぞ か せ る 8 0 。 確 か に オ リ ン パ ス は 、「 経 鼻 内 視 鏡 」 は 1980
~ 90年 代 に 発 売 し た 「 細 径 内 視 鏡 」 の 経 鼻 へ の 転 用 と 、 1995年 に 「 EVIS上 部 消 化 管 汎
用 ビ デ オ ス コ ー プ オ リ ン パ ス GIF TYPE N230」 を 業 界 に 先 駆 け て 発 売 8 1 し て い る 。
1998年 に は 、 経 鼻 挿 入 に よ る 上 部 消 化 管 の 内 視 鏡 検 査 が 試 み ら れ て い る 8 2 事 に つ い て
触れられている。だが、その後継続的に新機種の発売がされている事は見受けられな
い。実現可能な性能が、医療側の期待するレベルより、はるかに下であったこと、性
能を現実的なものにするためには、信号処理、取り付け、制御方法、耐環境性などの
点 で 、 予 想 外 の 問 題 が 多 く 、 現 実 的 に は 直 ち に 解 決 で き な い こ と が 分 か っ た 83の で は
ないだろうか。
3-2-3.
全社戦略
本項では、これまでの顧客アカウントの利用も有益に活用されている事を明らかに
する。
富 士 フ イ ル ム は 、医 療 分 野 の 開 拓 の 歴 史 の 中 で 、1936 年 の 医 療 用 X 線 フ ィ ル ム 発 売 、
そ れ を 電 子 化 し た デ ジ タ ル X 線 画 像 診 断 シ ス テ ム を 83 年 に 世 界 で 初 め て 産 業 化 に 成 功
し て い る 8 4 。 ま た そ れ は 、 世 界 シ ェ ア ト ッ プ ( 2009 年 3 月 末 現 在 ) を 保 持 し て 8 5 い る 。
一 般 診 療 所 に お け る 単 純 X 線 は 平 成 17 年 時 点 で の 厚 生 労 働 省 の 調 査 で は 45,525 施 設
79
「 日 経 BP 技 術 省 「 最 細 径 内 視 鏡 」」 日 本 経 済 新 聞 1999 年 3 月 23 日 p11
「 フ ジ ノ ン 、 内 視 鏡 で 存 在 感 」 日 経 産 業 新 聞 2005 年 11 月 17 日 p14
81 ニ ュ ー ス リ リ ー ス 2010 年 2 月 9 日 「
「 EVIS LUCERA( イ ー ヴ ィ ス ル セ ラ ) 上 部 消 化 管 汎 用 ビ デ オ ス
コ ー プ オ リ ン パ ス GIF TYPE XP260NS」 発 売 」 http://www.オ リ ン パ
ス .Co.jp/jp/news/2010a/nr100209xp260nsj.Cfm ( 閲 覧 2012 年 12 月 25 日 )
82
「( 未 来 医 学 事 典 ) 電 子 内 視 鏡 の 最 近 の 展 開 」『 東 京 女 子 医 科 大 学 学 術 リ ポ ジ ト リ 』 1998 年 2 月 7 日
松 井 頼 夫 http://ir.twmu.ac.jp/dspace/items-byauthor?author=%E6%9D%BE%E4%BA%95%2C%E3%80%80%E9%A0%BC%E5%A4%AB ( 閲 覧 2012 年 11 月 30 日 )
80
83
斎 藤 正 男 (1987)「 講 座
21 世 紀 へ 向 け て の 医 学 と 医 療
第六巻
医 療 と 工 学 技 術 」『 日 本 評 論 社 』
84
世 界 初 / 国 産 初 の 技 術 「 デ ジ タ ル X 線 画 像 診 断 装 置 “ FCR”( 世 界 初 )」 富 士 フ イ ル ム
http://www.fujifilm.Co.jp/Corporate/joBs/teChnology/first/index.html( 閲 覧 2012 年 11 月
30 日 )
85
メ デ ィ カ ル シ ス テ ム ・ ラ イ フ サ イ エ ン ス 事 業 「 X 線 診 断 の デ ジ タ ル 化 の 先 陣 を 切 り 、 シ ェ ア No.1 で
あり続ける富士フイルムのデジタル X 線画像診断」富士フイルム
http://www.fujifilmholdings.Com/ja/inves2rs/individual/guidanCe/Category/ms_and_ls01/index.
html ( 閲 覧 2012 年 11 月 30 日 )
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(2015.8)
( 施 設 数 に 対 す る 割 合 の 46.7% )に て 施 行 8 6 さ れ て お り 、一 般 診 療 所 で は そ の 他 多 々 あ
る 検 査 の 中 で 一 番 実 施 状 況 が 多 く 、身 近 な 機 器 と な っ て い る 事 が 伺 え る 。そ の 次 に 実 施
件 数 が 多 い 項 目 は 「 超 音 波 診 断 法 検 査 」 の 31.1% で あ り 、 侵 襲 性 の 低 い 機 器 が 検 査 で
よく用いられることが類推される。
つまり、検査機器としての一般診療所へのアカウントは既に保有していたことが考
えられる。顧客 C に対する価格弾力性の学習や、最適な修理や保守の体制の構築など
がなされていたと考えられる。また医療機器のみならず民生品でもフィルムといった
消耗品ビジネスを行っており、顧客 B に近い視点を得意とするところがあるのではな
いかと考えられる。侵襲性の少ない検査や治療、また顧客 B の認知度を高める啓発活
動についての応用が考えられる。
富 士 フ イ ル ム は 2008 年 に は フ ジ ノ ン の 内 視 鏡 を 吸 収 し て い る 。理 由 と し て 、技 術 力
には定評があるものの営業力が課題で、大学病院や大規模病院などへの販路が弱かっ
た 87、 と し て お り 、 一 般 診 療 所 な ど へ の 販 路 は 確 た る も の で あ っ た と 類 推 さ れ よ う 。
医療事業の拡大に取り組んでいる富士フイルムにとって、内視鏡は戦略製品であ
り、内視鏡を手始めにしているとも報じられている通り、点から面への変化が見られ
る 。 06 年 に は 超 音 波 診 断 装 置 に 参 入 、 ま た 12 年 に は 携 帯 型 超 音 波 診 断 装 置 の 米 国 大
手 企 業 SonoSite, InC を 買 収 8 8 し て い る 。 超 音 波 内 視 鏡 は 一 般 病 院 で 先 の 大 学 病 院 や
大規模病院で使用される機器であり、そのような層でのシェア拡大を目論んでいる事
は 明 白 で あ る 。 面 白 い こ と に 、 こ の ソ ノ サ イ ト と い う 企 業 は 、 2004 年 に オ リ ン パ ス が
国 内 販 売 提 携 を 解 消 し て い る 8 9 企 業 で あ る 。 ま た 2006 年 に 内 視 鏡 の 画 像 診 断 ソ フ ト を
発 売 、 こ れ ま で 1999 年 か ら 発 売 し て い る 医 療 画 像 情 報 シ ス テ ム SYNAPSE と も 連 携 で
き る 内 視 鏡 部 門 診 療 シ ス テ ム NeXUS を 2007 年 よ り 販 売 し て い る 。 2010 年 に は 内 視 鏡
洗浄消毒システムを発売しており、これに使用する薬液についてはパテントの切れた
過 酢 酸 を 富 士 フ イ ル ム RI フ ァ ー マ と 共 同 開 発 9 0 し て い る 。 検 査 ・ 治 療 で 必 要 と な る 上
部 消 化 管 向 け の 処 置 具 の 発 売 も 、 2008 年 よ り 順 次 行 っ て い る 。 こ れ ま で 内 視 鏡 の 一 点
突破であったが、内視鏡室の運営全体を包括的に、そして低価格で提案できるように
進化している。
対 す る オ リ ン パ ス の 経 鼻 内 視 鏡 に つ い て は 、 発 売 時 点 で 、 1990 年 以 降 に 発 売 さ れ
たオリンパスの経口内視鏡をすでに導入していれば、スコープ部分をシステム本体に
付 け 替 え る こ と が で き る 。9 1 た め 、こ れ ま で の シ ェ ア を 活 か し た 販 売 戦 略 を 取 っ て い た
と考えられる。
86
「 平 成 17 年 (2005) 医 療 施 設 (静 態 ・ 動 態 )調 査 ・ 病 院 報 告 の 概 況 」 厚 生 労 働 省
http://www.mhlw.go.jp/2ukei/saikin/hw/iryosd/05/index.html ( 閲 覧 : 2012 年 7 月 11 日 )
87
「 フ ジ ノ ン 内 視 鏡 吸 収 富 士 フ イ ル ム 、 事 業 を 拡 大 」 日 経 産 業 新 聞 2008 年 7 月 31 日 p14
88
ニ ュ ー ス リ リ ー ス 「 超 音 波 診 断 装 置 大 手 SonoSite, InC.の 買 収 完 了 に 関 す る お 知 ら せ 」 富 士 フ イ ル
ム http://www.fujifilmholdings.Com/ja/news/2012/0330_01_01.html ( 閲 覧 2012 年 11 月 30 日 )
89
ニュースリリース「ソノサイト社製品の販売取扱い終了のお知らせ」オリンパス株式会社
http://www.オ リ ン パ ス .Co.jp/jp/info/2004a/if040401sonosj.Cfm ( 閲 覧 2012 年 11 月 30 日 )
90
ニ ュ ー ス リ リ ー ス 「 内 視 鏡 洗 浄 消 毒 シ ス テ ム 「 ENDOSTREAM ( エ ン ド ス ト リ ー ム )」 新 発 売 」 2010
年 8 月 11 日 http://www.fujifilm.Co.jp/Corporate/news/artiCleffnr_0425.html ( 閲 覧 2012 年
11 月 30 日 )
91
REPORT 病 医 院 「 コ ス ト パ フ ォ ー マ ン ス に 優 れ た 集 患 に “ 効 く ” 最 新 医 療 機 器 」 日 経 ヘ ル ス ケ ア
SeptemBer2007 p55
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3-2-4.
市場の反応
市場で経鼻内視鏡が価値を獲得できたか否かについては、経鼻内視鏡単体の売上高
や営業利益が増加傾向である事を明らかにすることが望まれるが、その点について公
開 さ れ て い る デ ー タ は 現 状 見 当 た ら な い 。従 っ て 、① 顧 客 B、② 顧 客 C そ れ ぞ れ の 反 応
について以下より鑑みる。
①顧客 B の反応については論文数また学会における発表演題数から,また②顧客 C
の反応については各種雑誌やパブリックコメントや記事等,また前述の①中の内容よ
り つ ま び ら か に す る 。な お ① 顧 客 B に と っ て 、投 稿 論 文 は 学 術 的 価 値 を 持 つ 。論 文 の 価
値 は 投 稿 先 の ジ ャ ー ナ ル の IF 9 2 に よ り 、 世 界 で 客 観 的 に 評 価 さ れ る 性 質 を 持 っ て い る
為 で あ る 。一 方 で 、学 会 の 演 題 発 表 に 至 っ て は 、定 例 の 学 術 集 会 に て 広 く 募 集・応 募 が
な さ れ 、学 会 の テ ー マ に 沿 っ た 演 題 が 選 ば れ る 。学 会 は 旬 の ト ピ ッ ク 、最 新 の 動 向 に つ
い て 情 報 収 集・交 換 を 行 う 場 と し て 捉 え ら れ て い る た め 、医 療 技 術 の 進 歩 を つ ぶ さ に 見
て 取 れ る と 考 え ら れ る 。無 論 、学 術 的 価 値 や そ の 他 の 意 義 は あ る 。① に つ い て は 以 上 2
つの軸で、極力客観的に経鼻内視鏡のトレンドを捉える事を目的としている。
①顧客 B の注目度
顧客 B の注目度については、発表論文数を一つの指標として見た。論文及び発表演
題 数 を そ れ ぞ れ CiiNi ま た 医 中 誌 Web に て 検 索 し た 。 こ れ ま で 市 場 に 存 在 し な か っ た
「 経 鼻 内 視 鏡 」が 登 場 か ら 一 つ の 市 場 と し て 確 立 さ れ た と い う 事 の 参 考 と 、似 て 非 な る
「 細 径 内 視 鏡 」の 市 場 の 立 ち 上 が り と は 異 な っ て い た と い う 参 考 に な れ ば と 考 え る( 図
表 10 参 照 )。
なおこれらは論文名からの判断、それに拠れない場合には著者の診療科また投稿雑
誌から判断している為、精度の向上はまたの機会に託したい。
・ CiiNi で の 結 果
2012 年 4 月 現 在 、CiiNi で の「 経 鼻 内 視 鏡 」検 索 数 は 112 件( 内 、消 化 器 内 科 に 関 連
す る 論 文 は 107 件:上 部 消 化 管 の 検 査 82 件 ,治 療 25 件 ),ま た「 細 径 内 視 鏡 」は 48 件
( 内 、 消 化 器 内 科 に 関 連 す る 論 文 は 17 件 : 上 部 消 化 管 の 検 査 6 件 , 治 療 11 件 ) で あ
っ た 。年 次 で の 推 移 を み る と 、05 年 よ り 盛 り 上 が り を 見 せ る が 、3 年 後 の 08 年 に ピ ー
クを見せ、以降論文数は下がり続けている。
経 鼻 内 視 鏡 は 、大 よ そ 消 化 器 内 科 の 分 野 で 検 査 も し く は 治 療 に 使 用 さ れ て い る 。こ れ
は 取 扱 説 明 書 の 記 載 に あ る「 胃・十 二 指 腸 軟 性 鏡 」の 適 応 を 遵 守 し た 使 用 の さ れ 方 で あ
っ た 。こ れ に 対 し 、細 径 内 視 鏡 は 消 化 器 内 科 以 外 で の 使 用 が 目 立 つ( 経 鼻 内 視 鏡 の 0.2%
に 対 し 、35% が 消 化 器 内 科 以 外 の 著 者 も し く は そ の よ う に 判 断 さ れ る 論 文 名 )。そ れ ら
は実験的な比較であったり、医師の判断に基づく術中内視鏡への応用などに使用され
92
IF:イ ン パ ク ト フ ァ ク タ ー の 事 を 指 す 。 イ ン パ ク ト フ ァ ク タ ー は 、 自 然 科 学 176 分 野 8,281 誌 、 社 会
科 学 56 分 野 2,943 誌 以 上 の Web of Science 収 録 の 雑 誌 を 対 象 に し た 評 価 指 標 の 一 つ で 、 世 界 の 主 要
学 術 雑 誌 を 客 観 的 に 評 価 す る こ と が で き る と さ れ て い る 。 出 典 : ト ム ソ ン ロ イ タ ー http://ipscience.thomsonreuters.jp/media/support/jcr/ImpactFactor_QRC.pdf( 閲 覧 2012 年 11 月 30 日 ))
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ている。
・ 医 中 誌 Web で の 結 果
2012 年 9 月 現 在 の 時 点 で の 、 医 学 中 央 雑 誌 刊 行 会 に 収 載 さ れ て い る 会 議 録 ( 様 々 な
学 会 、研 究 会 に 於 け る 発 表 演 題 )数 を カ ウ ン ト し た 。演 題 の 規 模 は 大 小 様 々 あ り 、雑 誌
掲載論文よりもより広く応募されている為、その数量も多い。
医 中 誌 で の 「 経 鼻 内 視 鏡 」 検 索 数 は 769 件 ( 内 、 消 化 器 内 科 に 関 連 す る 論 文 は 736
件 : 上 部 消 化 管 の 検 査 559 件 、 治 療 120 件 ) で あ っ た 。 年 次 で の 推 移 を 見 る と 、 05 年
よ り 盛 り 上 が り を 見 せ る が 、 09 年 の 194 件 を ピ ー ク に 、 以 降 発 表 数 は 下 が り 続 け て い
る 。ま た「 細 径 内 視 鏡 」は 216 件( 内 、消 化 器 内 科 に 関 連 す る 論 文 は 177 件:上 部 消 化
管 の 検 査 87 件 , 治 療 57 件 ) で あ っ た 。
図 表 10
細径内視鏡と経鼻内視鏡の演題数
( 出 典 : CiNii, 医 中 誌 WeB 検 索 結 果 を 基 に 筆 者 作 成 )
( 出 所 : CiNii、 医 中 誌 Web よ り 筆 者 作 成 )
CiNii で の 検 索 結 果 と 同 様 に 、 経 鼻 内 視 鏡 は 、 75%が 検 査 に つ い て の 演 題 で あ り 、 消
化器内科の分野の検査で主に使用され、様々検討・工夫されている事が理解できる。
こ れ に 対 し 、 細 径 内 視 鏡 は 消 化 器 内 科 分 野 で の 治 療 で の 使 用 が 66%あ っ た 。 な お 消 化
器 内 科 分 野 以 外 で の 使 用 は 19%と な っ て い た 。
これは経鼻内視鏡の関心が低くなったことも意味するが、むしろ機能的価値が一般化
し ,経 鼻 内 視 鏡 の 使 用 の さ れ 方 や 運 用 に つ い て 等 が 検 査 市 場 に 定 着 し ,医 師 の ル ー チ ン
検査に取り込まれたことを意味していると考えられる。
発 表 の 盛 り 上 が り を 見 せ た 2005 年 当 時 、 径 の 細 い 製 品 の 機 能 を 径 の 太 い 製 品 以 上
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に 高 め 93 る と 社 長 が コ メ ン ト を 寄 せ た よ う に 、 現 在 富 士 フ イ ル ム の 経 鼻 内 視 鏡 は 第
五世代,オリンパスでは第三世代に突入しており、ここでは既にインクリメンタルな
イノベーションに移行していると考えられる。経鼻内視鏡の性能向上については例えば
第 1 世 代 か ら 第 3 世 代 に つ い て は ― EG-470N か ら 530N で は 搭 載 の CCD が FUJIFILM の 「 ス
ー パ ー ハ ニ カ ム CCD」 と な っ た こ と 、 530N か ら 530N2 で は 光 量 、 水 切 れ の 向 上 、 ま た
FICE と い う 診 断 補 助 機 能 の 搭 載 が な さ れ 、 530N2 か ら 530NW で は 画 質 の 向 上 ま た 視 野 角 の
改 善 が 見 ら れ た と い う 報 告 が あ る 94。 こ れ ま で 問 題 と さ れ て き た 、 画 像 の 質 , 明 る さ , 操
作
等は確実に向上してきていると考えられる。医療機器の評価は、市販後も含めた改
善・改良を伴う機器のライフサイクル全体から行うべきであり、リスクとベネフィットの
バ ラ ン ス を 念 頭 に 置 き な が ら 問 題 の 芽 は 迅 速 に 摘 み 取 る と い う 姿 勢 が 必 要 で 95あ り 、 ま さ
に富士フイルムは市場の要望に積極的に対応してきた軌跡が見られる。
やや話題先行で普及した面もあり、精度を重視する内視鏡専門医の中には導入に否
定 的 な 人 も 少 な く な い 。 96 経 鼻 内 視 鏡 推 進 派 と 、 慎 重 も し く は 経 口 推 進 派 の 意 見 の
ぶ つ か り 合 い に つ い て の 具 体 的 な 内 容 は 、 日 経 メ デ ィ カ ル 9 7 の TREND VIEW に お い て
2007 年 3 月 号 か ら 2009 年 4 月 号 の 間 、 5 回 に 亘 っ て 経 鼻 内 視 鏡 が 特 集 や 寄 稿 な ど で
取り上げられていた。学術集会の縮図を垣間見るような、白熱した応酬を繰り広げて
いた。
経鼻内視鏡のメリットは、経口内視鏡と違って舌に接触せず嘔吐感もなく、静脈麻
酔 や 鎮 静 剤 を 使 わ な い た め 、 検 査 後 は 仕 事 に 早 期 復 帰 で き る 98点 で あ り 、 受 診 者 の 負
担 が 少 な い た め 99で あ る 。
ま た 、 が ん 検 診 の ハ ー ド ル 「 怖 い 」「 苦 し い 」「 つ ら い 」 で 1 0 0 あ り 、 内 視 鏡 検 査 は 代
表 格 と さ れ て い る 。「 問 題 は 、 検 診 の 苦 痛 が ト ラ ウ マ と し て 残 る 事 。 た と え ば 40~ 50
代のころに最初の内視鏡検査で苦しい思いをすると『もう二度と嫌だ』とそれ以降、
検 診 を 受 け な く な る 。 結 果 、 が ん の リ ス ク が 最 も 高 ま る 60 代 以 降 、 つ ま り 最 も き ち
93
「 フ ジ ノ ン 、 内 視 鏡 で 存 在 感 」 日 経 産 業 新 聞 2005 年 11 月 17 日 p14
「 第 1 , 2, 3 世 代 経 鼻 内 視 鏡 の 胃 癌 診 断 能 に 関 す る 検 討 ― 経 鼻 用 ス コ ー プ の 改 良 と 診 断 能 と の 関 係
について-」日本消化器がん検診学会雑誌
95
「 医 療 機 器 の 開 発 及 び 審 査 を め ぐ る 諸 問 題 」 児 玉 順 子 医 療 と 社 会 Vol.19 No.1 2009
96
REPORT 病 医 院 「 コ ス ト パ フ ォ ー マ ン ス に 優 れ た 集 患 に “ 効 く ” 最 新 医 療 機 器 」 日 経 ヘ ル ス ケ ア
SeptemBer2009 pp53-57
97
日経メディカルとは「日経メディカルは、第一線で診療に携わる臨床医のための医学・医療情報誌
です。最新の臨床情報・医学研究情報や医療行政情報など、医療界の動向をいち早く掲載。激動する
医 療 界 の 動 き を 的 確 に お 伝 え す る の と 同 時 に 、 臨 床 知 識 を 整 理 し 、 日 々 の 診 療 に 役 立 つ CM E 情 報 を タ
イ ム リ ー に お 届 け し ま す 。」 と い う コ ン セ プ ト の 雑 誌 で あ る 。
http://www.nikkeiBpm.Co.jp/puBliCation/mag/Cs/nm/index.shtml ( 閲 覧 2012 年 12 月 16 日 )
5 回 の 特 集 の 題 名 を 右 に そ れ ぞ れ 付 記 す る 。「 ブ レ イ ク す る 経 鼻 内 視 鏡 つ ら く な い 検 査 が 内 視 鏡 の
需 要 を 掘 り 起 こ す 」 日 経 メ デ ィ カ ル 2007.3 pp26-27/ 「 経 鼻 内 視 鏡 に 死 角 あ り 楽 な 検 査 と 普 及 進 む
が 、 見 落 と し と の 報 告 も 」 日 経 メ デ ィ カ ル 2008.12 pp24- 25/ 「 経 鼻 内 視 鏡 を ど う 使 う 長 所 と 短 所
を 十 分 に 理 解 し て 施 行 す べ き 」 日 経 メ デ ィ カ ル 2009.2 p52/ 「 経 鼻 内 視 鏡 は 見 落 と し が 多 い と は 言 え
な い ( 上 )」 日 経 メ デ ィ カ ル 2009.3 pp48‐ 49/ 経 鼻 内 視 鏡 は 見 落 と し が 多 い と は 言 え な い ( 下 )」 日
経 メ デ ィ カ ル 2009.4 pp43‐ 44
94
98
「 は が し て 治 す 早 期 胃 が ん 」 日 本 経 済 新 聞 2006 年 12 月 3 日 p11
「 東 大 病 院 、 人 間 ド ッ ク 開 設 」 日 経 産 業 新 聞 2007 年 7 月 25 日 p14
100
特 集 が ん 完 全 解 明 2012 Part3 日 本 の が ん 対 策 「 が ん 検 診 の 不 安 を 取 り 除 く 最 先 端 技 術
の 少 な い が ん 検 査 で 早 期 発 見 」 週 刊 東 洋 経 済 20124.28-5.5 pp84-86
99
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苦痛
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んと検診すべき時期に早期発見の機会を逃すことになる」と国立がん研究センターの
が ん 予 防 ・ 検 診 研 究 セ ン タ ー 、 遠 心 開 発 研 究 部 の 角 川 康 夫 室 長 は 言 う 。 101つ ま り 、 検
査 が 楽 な ら 毎 年 受 け て も ら え 、 早 期 が ん が 見 つ か る 可 能 性 が 上 が る は ず 102で あ る 所 に
メリットがある。
デメリットとしては、特に画質の不鮮明さによる誤診であるが、現在では「経口と
比べてそん色がない」と判断されている。次に挙げられる「精査のための検査が再度
必要」という点がある。経鼻で何らかの異常を見つけた場合、その後の精査・治療の
た め に は 、 経 口 内 視 鏡 を 再 度 試 み る 必 要 が あ る 103た め 、 細 径 ス コ ー プ の 診 断 能 の 限 界
を 謙 虚 に 知 っ て お か ね ば な ら な い 104の で あ る 。 た だ 、 こ の 際 の 経 口 内 視 鏡 受 診 に つ
いて、経鼻内視鏡派は、顧客 C はある程度の納得性を持ち受診行動を起こすため、問
題としていないことが多い。なんらかの症状があって病院を受診をする患者であれ
ば、内視鏡に伴う多少の苦痛は忍耐してもらえるであろうが、無症状の人間ドック受
診 者 を ス ク リ ー ニ ン グ す る 時 に は 、 検 査 時 の 苦 痛 は あ っ て は な ら な い 105、 と 。
しかし、再度の受診による、顧客 C の時間の消費と費用負担をさせることにもな
る。この場合、胃がんが発見され治療を行う経済性との比較ではなく、経口内視鏡を
最初の段階で行う場合と比べることが妥当で、その際には医療経済性はコスト増と言
える。
痛みが本当になく楽か、という議論については、 検査をする術者の力量の差が、
患 者 の 痛 み に 反 映 さ れ や す い 1 0 6 点 も あ り 、「 経 鼻 内 視 鏡 だ か ら 痛 く な い 」 わ け で は な
い こ と は 覚 え て 107お く 必 要 が あ る の で あ る 。
経鼻内視鏡また経口内視鏡の有用性についての議論は多く為され、端的には以下の
図 表 11 の よ う に ま と め ら れ る 。
図 表 11
機能的価値
意味的価値
経口と経鼻内視鏡のメリット比較
比較項目
経口内視鏡
経鼻内視鏡
明度
◎
○
解像度
◎
○
鎮静
△
○
設備・人員
△
○
咽頭反射が少ない
×
◎
101
特 集 が ん 完 全 解 明 2012 Part3 日 本 の が ん 対 策 「 が ん 検 診 の 不 安 を 取 り 除 く 最 先 端 技 術 苦 痛
の 少 な い が ん 検 査 で 早 期 発 見 」 週 刊 東 洋 経 済 20124.28-5.5 pp84-86
102
「 広 ま る 鼻 か ら 内 視 鏡 胃 ・ 食 道 の 検 査 に 苦 痛 少 な く 好 評 」 朝 日 新 聞 2006 年 4 月 24 日 朝 刊
p28
103
効 く NEWS1 鼻 か ら 入 れ る 内 視 鏡 検 査 「 導 入 機 関 増 え る 経 鼻 内 視 鏡 「 オ エ ー ッ 」 と な ら ず 、 苦 痛
も 減 少 」 日 経 ヘ ル ス 2007-7 p146
104
巻 頭 言 「 奥 深 い 「 優 し い 内 視 鏡 」 の 意 味 」 多 田 正 大 臨 牀 消 化 器 内 科 Vol.27 No.6 2012
105
巻 頭 言 「 奥 深 い 「 優 し い 内 視 鏡 」 の 意 味 」 臨 牀 消 化 器 内 科 Vol.27 No.6 2012 pp635-636
106
特 集 が ん 完 全 解 明 2012 Part3 日 本 の が ん 対 策 「 が ん 検 診 の 不 安 を 取 り 除 く 最 先 端 技 術 苦 痛
の 少 な い が ん 検 査 で 早 期 発 見 」 週 刊 東 洋 経 済 20124.28-5.5 pp84-86
107
特 集 が ん 完 全 解 明 2012 Part3 日 本 の が ん 対 策 「 が ん 検 診 の 不 安 を 取 り 除 く 最 先 端 技 術 苦 痛 の
少 な い が ん 検 査 で 早 期 発 見 」 週 刊 東 洋 経 済 20124.28-5.5 pp84-86
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( 出 所 : 記 事 108、 消 化 器 内 視 鏡 よ り 筆 者 作 成 、 評 価 は 概 ね 右 記 の 通 り 「 ◎ … 極 め て 良 い 、 ○ … 良 い 、
△ … 普 通 … 、 ×… 極 め て 悪 い 」)
②顧客 C の注目度
富 士 フ イ ル ム で は 、 2006 年 当 時 の CSR 報 告 の 中 で , 社 会 性 報 告 と い う セ ク シ ョ ン
で 、 経 鼻 内 視 鏡 の 社 会 に 齎 し た 便 益 に つ い て 触 れ て い る 。 ラ ジ オ 広 告 や 地 道 な PR 活
動 に よ り 認 知 が 高 ま っ た こ と ― 73% も の 医 師 が 患 者 さ ん よ り 問 い 合 わ せ を 受 け て い る
事 、 経 鼻 内 視 鏡 を 希 望 受 信 で き る の で あ れ ば 経 鼻 内 視 鏡 を 希 望 す る 方 が 95% 、 経 口 内
視 鏡 で は な く 経 鼻 内 視 鏡 の 受 診 希 望 者 が 63% に な る 1 0 9 事 を 報 告 し て い る 。
医 療 と い う も の は 、 遠 藤 周 作 が 患 者 の 立 場 か ら 、「 ど う か 患 者 本 位 の 医 療 で あ っ て
ほ し い 」 1 1 0 と し て 読 売 新 聞 紙 上 に 連 載 を し た 時 代 か ら は 変 化 を 遂 げ て お り 、 QOL の 向
上は医療で一般的な概念となっている。患者の立場に立って、苦痛や障害の緩和とい
っ た 生 活 の 質 ( QOL) の 側 面 に 焦 点 を あ て る こ と の 重 要 性 が 認 識 さ れ る よ う に な っ た
111
。 但 し 、 QOL は 定 性 的 な 側 面 の 強 い も の で あ り な が ら 、 患 者 満 足 度 も 患 者 自 身 が 感
じ 報 告 す る 評 価 尺 度 で あ る が 、 QOL と は 区 別 し て 考 え ら れ る の が 一 般 的 、 と も 記 載 さ
れている。
経鼻内視鏡の第一人者、出雲クリニックの宮脇院長は「経口内視鏡が嫌で検査を避
けていた人が積極的に受診するようになった。患者の苦痛が少ないので時間をかけて
検 査 で き 、 発 見 率 向 上 に つ な が っ た 」 と 説 明 す る 112。 ま た 、 東 京 医 大 病 院 内 視 鏡 セ ン
ターの河合隆部長は「今後は治療が必要な患者は経口、検査だけなら経鼻という棲み
分 け が 進 む だ ろ う 」 と 指 摘 す る 113。
製品の棲み分けが進むことで、製品特性と見合う医療機関の棲み分けの促進もなさ
れることも示唆する。各機関は医療資源の効果的かつ効率的な活用ができ、患者を確
保して安定した収益を上げることが可能になる。同時に、患者も質の高い医療サービ
ス を 効 率 的 に 享 受 で き 、 QOL( Quality of life) の 向 上 と い っ た メ リ ッ ト を 得 ら れ る
(井 上 ・ 冨 田 , 2002)と 考 え ら れ る 。 一 般 病 院 は 急 性 期 に 、 一 般 診 療 所 は 慢 性 期 に 特 化
する事で、其々必要な役割と、役割に必要な医師や資源確保・配分が可能となり、ひ
い て は 患 者 の QOL に 寄 与 す る 事 が 考 え ら れ る 。
但し「時間を掛けて」とあるのは「画質が劣る為」必然的に「時間がかかる」との
指摘もある。
3-2-5.
プロモーション戦略(広告・販売促進
1 0 8 TREND VIEW「 ブ レ イ ク す る 経 鼻 内 視 鏡
カ ル 2008.12 p25
109
等)
つらくない検査が内視鏡の需要を掘り起こす」日経メディ
富 士 フ イ ル ム 会 性 報 告 (2006)
http://www.fujifilm.Co.jp/Corporate/environment/pdf/report/ff_env_2006_005j.pdf
(閲 覧 : 2012 年 11 月 30 日 )
110
111
112
113
医 の 原 点 第 6 集 良 い 医 療 の 条 件 「 心 穏 や か な 医 療 を 求 め て 」 金 原 出 版 株 式 会 社 2005
医 療 の 質 用 語 辞 典 「 QOL」 日 本 規 格 協 会 2005
「 患 者 に 優 し い 検 査 続 々 」 日 本 経 済 新 聞 朝 刊 2006 年 7 月 3 日 p11
「 患 者 に 優 し い 検 査 続 々 」 日 本 経 済 新 聞 朝 刊 2006 年 7 月 3 日 p11
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pp23
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前提として、医業の広告規制は医療法によって広告できる項目が厳しく制限されて
い る 。 医 師 広 告 に 関 し て は 、 日 経 広 告 研 究 所 報 187 号 に あ る 研 究 論 文 「 医 師 広 告 規 制
と 広 告 活 動 の 自 由 」 や 日 経 広 告 研 究 所 報 203 号 で 「 日 本 の 医 療 広 告 の 今 後 」「 日 本 の
医療機関の広告とマーケティング」などでも触れられているように、虚偽の広告や誇
大 広 告 か ら 患 者 が 被 害 を 被 る ケ ー ス が 生 じ る 114事 を 危 惧 し て い る 。
富 士 フ イ ル ム は 、 例 え ば 図 表 12 の よ う な 、 医 療 機 器 と し て は 異 例 の 広 告 を 展 開 し
ている。口から入れる既存の内視鏡より検査時の吐き気などが軽く済むなどのメリッ
トを広く一般に訴え、被験者らの声を原動力としに病院へ導入を働き掛ける「からめ
手 」 戦 略 1 1 5 1 1 6 を 取 っ た 。 し か し な が ら 東 芝 ES シ ス テ ム の 宇 田 川 社 長 は 「 製 品 で は な
く経鼻内視鏡『技術』の広告」と主張する。
ま た 企 業 CM と し て 、 経 鼻 内 視 鏡 を 皮 切 り に イ メ ー ジ 広 告 を TV 放 映 し て い る 。 山 下
宣伝部長は「写真フィルム以外にも当社が技術を通じ社会に貢献している姿を知って
も ら い た い 」「 先 進 ・ 独 自 の 技 術 で 人 々 の ク オ リ テ ィ ー ・ オ ブ ・ ラ イ フ に 貢 献 す る 企
業 理 念 と 社 員 の 想 い を 代 弁 し た 」 と 話 す 1 1 7 。「 ク オ リ テ ィ ー ・ オ ブ ・ ラ イ フ 」 と い う
医療に慣れ親しんだ言葉を用いながらも、あくまでも技術広告であり、企業のイメー
ジ 広 告 で あ る と 主 張 し て い る 。 こ の 浸 透 は 、 04 年 の 中 期 経 営 計 画 1 1 8 で 新 事 業 創 生 を ラ
イフサイエンス分野などより行うと発表して以来、医薬など様々な取組みを行った改
革の成果とも言えるであろう。
図 表 12
フジノン広告デザイン
(出典:特集:経鼻内視鏡は本当に楽なのか?「序として
視 鏡 Vol.20 No.4 2008
経鼻内視鏡で新しい可能性を」消化器内
pp394‐ 402 よ り )
114
研 究 論 文 「 医 師 広 告 規 制 と 広 告 活 動 の 自 由 」 日 経 広 告 研 究 所 報 187 号 DeCemBer 1999/January
2000
115
「 苦 痛 軽 減 、 患 者 側 に も 訴 え 」 日 本 経 済 新 聞 2006 年 2 月 23 日 p5
116
「 内 視 鏡 製 品 戦 略 で 明 暗 」 日 経 産 業 新 聞 2007 年 1 月 4 日 p14
117
「 富 士 フ イ ル ム 、 CM で 多 角 化 訴 求 独 自 技 術 の 認 知 度 高 め る (広 告 戦 略 )」 日 経 産 業 新 聞 2009 年 12
月 3 日 p7
118
VISION75「 中 期 経 営 計 画 」 富 士 フ イ ル ム
http://www.fujifilmholdings.Com/ja/inves2rs/pdf/other/ff_vision75_001j.pdf ( 閲 覧 2012
年 11 月 30 日 )
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し か し な が ら 、 図 表 13 に 纏 め た よ う な メ デ ィ ア ミ ッ ク ス 戦 略 が 功 を 奏 し 、 コ ー ル
セ ン タ ー へ の 問 い 合 わ せ は 月 平 均 150 件 に 達 し た 。 約 7 割 が 導 入 施 設 の 照 会 で 、 掛 か
りつけの病院に導入を進めたいと、営業マンの申し出もあり,また社長は「医療機関
か ら も 『 患 者 の 要 望 で 』 と 導 入 を 検 討 す る 問 い 合 わ せ が 増 え て い る 」 119と も 明 か し て
いる。不満を解消してくれたことが満足を優に超え、顧客ロイヤルティが発生してい
る。企業の行う消費者教育によって、その企業に対する消費者の信頼度が高まり、好
意的な口コミの波及効果が期待されるばかりか、商品購入意図が高まり、かつ市場拡
大 に 貢 献 す る (佐 藤 , 2000)事 は グ ッ ド マ ン の 法 則 と し て 広 く 知 ら れ て い る 。
経鼻内視鏡は顧客 C が直接的に購入する財ではないが、医療機関の選定に於いて
は 、 井 上 ・ 冨 田 (2000)で 、 患 者 サ イ ド の 視 点 に 立 つ 重 要 性 と 医 療 機 関 の 選 定 に 於 け る
クチコミの重要性が指摘されている。生活者にとって、通院経験のない医療機関の情
報を収集する場合、その主要な情報源はクチコミである。伝播されたクチコミ情報
は、生活者が医療機関を選択したり好意を形成する際に大きな影響をもたらす。十分
満 足 し た 患 者 は 好 意 的 な 情 報 を 周 囲 の 人 々 に 伝 え る 伝 道 者 と な る (井 上 ・ 冨 田 ,
2000)。 ま た 同 様 の 研 究 で も 、 消 費 者 の 医 療 機 器 選 択 に 最 も 貢 献 す る 情 報 源 は 口 コ ミ
で あ る と の 実 証 結 果 が 多 い 120こ と は 周 知 の 事 実 で あ り 、 富 士 フ イ ル ム は そ の 有 効 性 を
巧みに使用している。
その傾向を「投書箱」を目安として捉えると、一般病院よりも一般診療所に高い事
が 見 て 取 れ る こ と が 判 明 し て い る 。「 患 者 苦 情 収 集 」 と し て 投 書 箱 は ほ と ん ど の 病 院
に設置されており、積極度を経営母体ごとに見てみると、学校法人立病院,都道府
県 ・ 市 町 村 立 病 院 , 日 本 赤 十 字 社 系 病 院 が あ ま り 積 極 的 で は な か っ た (真 野 ・ 水 野 ・
山 内 , 2002)と 指 摘 さ れ て い る 。 こ こ で 着 目 し た い の は 対 し て 積 極 的 で あ っ た の が 個
人,医療法人といった一般診療所また法人格ながら恐らくそれに近いような意味を持
つ施設であったことである。患者の日常により近く、声がより届きやすい施設では、
積 極 的 に 患 者 の 声 を 聞 き 入 れ QOL 向 上 を 図 ろ う と 模 索 を し て い る と 考 え ら れ る 。
経鼻内視鏡の保有が、顧客 C の医療機関の選定に影響を与えていると言える。専門
サ ー ビ ス の 消 費 者 行 動 に つ い て 、 藤 村 ( 1995) で 指 摘 の あ る よ う に 、 専 門 的 知 識 ・ 技
能品質は直接的には評価されるのではなく、ほかの部分品質の評価を通じて間接的に
推 測 さ れ る (藤 村 和 宏 , 1995)。 つ ま り 、 医 師 の 技 能 や 受 診 者 個 体 に 適 切 な 検 査 か は
別としても「楽な内視鏡検査が可能」な機材を保有している事が、受診の動機となり
手 掛 か り と な っ て い る 。 ま た 、 顧 客 の 参 加 を 様 態 の 側 面 か ら 見 る と 、「 行 動 的 参 加 」
「 知 的 ・ 情 報 的 参 加 」「 感 情 的 参 加 」 に 区 別 す る 事 が で き (Normann, 1991)、 患 者 は
感 情 的 に も 参 加 し て い る と 言 え る (藤 村 , 1995)。
119
「 苦 痛 軽 減 、 患 者 側 に も 訴 え 」 日 経 産 業 新 聞 2006 年 2 月 23 日 p5
「 医 療 機 関 の 広 告 ・ 後 方 が 消 費 者 ( 患 者 ) の 意 思 決 定 過 程 に 与 え る 効 果 の 継 時 的 比 較 ~医 療 法 改 正
前 ・ 後 の 母 親 の 産 科 選 択 行 動 を 中 心 に ~」 広 告 科 学 .43.2003.pp179- 200、「 医 療 市 場 に お け る 消 費 者 の
外部情報探索―事前知識が情報取得行動に与える影響についての実証研究―」伊藤朱子、長瀬啓介
医 療 と 社 会 Vol.21 No.2 2009
120
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図 表 13
年
F 経鼻内視鏡変遷(広告・販売促進)
概要
備考
企業
2002 年
経鼻内視鏡発売
フ ジ ノ ン 東 芝 ES
システム
( FTS)
2004 年 年
末
全国紙夕刊に広告を
掲載
「フジノンの内視鏡
で検査がとても楽に
なりました」
2005 年 4
月
ラ ジ オ CM
経鼻内視鏡の被験者
が医師に向かって検
査が楽だと報告する
パターンなど
対象地域を順次拡大
2005 年 年
末
車内広告
JR 東 日 本 、 JR 西 日 本 を
皮切りに展開
2006 年 1
月
ラ ジ オ CM
全国展開
車内広告
丸ノ内線、横浜市営地
下鉄で展開
2007 年 2
月
オリックス子会社な
ど提携
経鼻内視鏡の営業体制
の強化
2007 年 9
月
T V CM
「世界は、ひとつず
つ変えることができ
る」
企業イメージ広告
2007 年 10
月
楽診車
検 診 車 、 5800 万 円
2008 年 10
月
フジノンを吸収
2009 年 5
月
経 鼻 内 視 鏡 新 製 品 EG530NW
富士フイルムホー
ルディングス
視 野 角 が 140 度 に 向 上
(出所:記事などより筆者作成)
な お 、 こ の 後 に FUJIFLIM は 専 用 サ イ ト 「 鼻 か ら . jp」 に お い て 経 鼻 内 視 鏡 の 導 入
施設を公開している。これは先に述べたような医療法における広告規制には当たらな
い 。「 医 療 法 の い う 広 告 と は 、 特 定 多 数 の 人 に 表 示 す る 看 板 や 新 聞 広 告 な ど を 指 し 、
利用者が自分の意志で検索して開くインターネットのホームページは該当しない」と
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い う の が 見 解 で あ る 121。 122た め で あ る 。
この富士フイルムの広告事例は、ソーシャルマーケティングの分野で指摘があるよ
う に 、予 防 医 療 サ ー ビ ス は 、病 院 や 診 療 所 に と っ て 最 大 の 関 心 事 で あ る 。予 防 医 療 は エ
ビ デ ン ス( 医 学 的 根 拠 )に 基 づ い て 、生 活 者 の 健 康 を 守 る と い う 本 来 の 使 命 を 果 た し つ
つ 、 新 需 要 創 生 に つ な が る も の で あ る 。 1 2 3 予 防 医 療 の 筆 頭 、 健 診 向 け に 2007 年 に は 、
出張検診をする病院や検診センター向けに検診車をも発売している。胃がん検診の受
診 率 を 高 め て 、内 視 鏡 の 販 売 増 に つ な げ る 1 2 4 た め で あ る 。直 接 的 あ る い は 間 接 的 に 予 防
医 学 的 根 拠( エ ビ デ ン ス )が 関 連 付 け ら れ る 商 品 の 消 費 行 動 の ベ ネ フ ィ ッ ト が 、社 会 的
課題の解決に寄与すると同時に、消費者が具体的に健康を享受する関係が成立するソ
ー シ ャ ル・マ ー ケ テ ィ ン グ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 、意 識 的 消 費 行 動 の イ ン セ ン テ ィ ブ
と し て 効 果 125を 発 揮 し た 例 と 捉 え て 問 題 な い だ ろ う 。
また販売体制の強化として、リース事業大手のオリックスの子会社と提携し、弱み
を急速に補完した。産業財に於いては、人的販売が売り手にとっての最も有効性の高
い プ ロ モ ー シ ョ ン 手 段 で あ る と さ れ る 126た め 、 買 い 手 で あ る 医 師 に 対 し て 提 案 が で き
る売り手となる教育に多少の時間がかかる事が考えられても、なによりマンパワーが
必 要 に な る た め 、 こ の 決 断 は 適 切 な 資 源 配 分 で あ る と 考 え ら れ る 。 2009 年 10 月 に は
子 会 社 フ ジ ノ ン か ら 内 視 鏡 事 業 を 移 管 し 、 国 内 販 売 体 制 も 一 元 化 し た 127。
現在は富士フイルムホールディングスとして、販売を行っている。
イ ン タ ー ナ ル マ ー ケ テ ィ ン グ の 活 用 も 盛 ん で 、 2010 年 に は 、 自 社 内 で の が ん 検 診 受
診率向上で受診者や医療機関のニーズを蓄積し、事業の柱である医療機器の開発に役
立 て る 128と 目 標 設 定 を し て い る 。
デ ジ タ ル B2B 広 告 の 例 で は 低 価 格 化 す る こ と に よ る 、 ビ ジ ネ ス 市 場 と パ ー ソ ナ ル 市
場 が 融 合 化 さ れ て き て い る 。 つ ま り B2B 広 告 と 同 時 に B2C 広 告 ( ビ ジ ネ ス to コ ン シ
ュ ー マ ー 広 告 ) の 二 つ の 側 面 を 持 つ よ う に な っ て き て い る 。 129こ と が 指 摘 さ れ て い
る。これは健康志向やテレビ番組などのマスコミュニケーションの広がりにより、自
分事として医療を捉えることになってきている「賢い患者」にも同様で、自ら選定基
準を持つようになっていると考えられるため、これまで訴求されていなかった顧客 C
へも広告展開を行うことによる効果を狙ったものと推察される。
3-2-6.
価格戦略
121
「 進 む 広 告 の 規 制 緩 和 収 取 か ら 選 択 の 時 代 ( 医 で の 触 れ 合 い も っ と 医 療 情 報 を ⑧ )」 読 売 新 聞
1997 年 1 月 22 日 朝 刊 p21
122
「 日 本 の 広 告 規 制 の 変 化 と 影 響 要 因 に つ い て 」 嶋 村 和 恵 、 早 稲 田 大 学 商 学 第 385 号 200 年 6 月
123
「ソーシャル・マーケティング・コミュニケーション―予防医療サービス市場における意識的消費
と 社 会 的 責 任 投 資 ― 」 吉 長 成 恭 日 経 広 告 研 究 所 報 209 号 June/July2003 pp36- 41
124
「 鼻 か ら 入 れ る 経 鼻 内 視 鏡 搭 載 し た 検 診 車 発 売 」 日 経 産 業 新 聞 2007 年 10 月 12 日 p10
125
「ソーシャル・マーケティング・コミュニケーション―予防医療サービス市場における意識的消費
と 社 会 的 責 任 投 資 ― 」 吉 長 成 恭 日 経 広 告 研 究 所 報 209 号 June/July2003 pp36- 41
126
「 産 業 財 広 告 の 今 日 的 捉 え 方 」 大 友 純 日 経 広 告 研 究 所 報 188 号
127
富 士 フ イ ル ム ホ ー ル デ ィ ン グ ス 「 戻 り 相 場 を 迎 え 撃 つ ! 業 績 上 振 れ 期 待 の 19 銘 柄 」 オ ー ル 投 資
2010.10.1 p29
128
「 富 士 フ イ ル ム が ん 検 診 受 診 率 90% 以 上 に 引 き 上 げ 」 日 本 経 済 新 聞 2010 年 6 月 14 日 朝 刊 p13
129
ビ ジ ネ ス マ ー ケ テ ィ ン グ 特 集 「 B2B 広 告 の 一 考 察 」 宮 元 徹 日 経 広 告 研 究 所 報 185 号 J u n e /
J u l y / 1999
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日本は国民皆保険制度があるため、自費診療を行わない限り、顧客 C について価格
が影響する要因は少ないと考える。がん検診の中で X 線等ではなく内視鏡検査を選定
す る 場 合 の 費 用 負 担 は 、自 治 体 に よ っ て 異 な る が 発 生 す る 事 が 少 な く な い 。が 、こ こ で
は 、「 上 部 内 視 鏡 検 査 」内 で の 議 論 で あ る 為 、経 口 で も 経 鼻 で も 等 し く「 上 部 内 視 鏡 検
査」として等しく保険料で賄われ、顧客 C へ請求される。つまり顧客 C については機
器 お よ び 医 療 機 関 の 選 定 に つ い て 、価 格 は 低 関 与 で あ り 、無 関 心 で あ る と 予 想 さ れ る 。
顧客 B については、製造販売元としては当初、経口内視鏡に対してローコスト型イ
ノ ベ ー シ ョ ン も 試 み た の で は な い か と 考 え ら れ る 。2008 年 発 売 の EG-3000N に つ い て は
「 お 求 め や す い 価 格 を 実 現 」1 3 0 と 銘 打 っ て あ り 、便 益 と し て 訴 求 が な さ れ て い る 。し か
し 経 鼻 内 視 鏡 市 場 で は 各 社 の 価 格 差 は そ れ ほ ど 明 白 で は な い (図 表 14 参 照 )。
こ の 点 に つ い て 、一 般 診 療 所 へ の 導 入 は 効 果 が あ っ た と 考 え ら れ る が 、購 買 意 思 決 定
に お い て 絶 対 的 な 要 素 で は な い 事 と 考 え ら れ る 。稀 で は あ る が 、医 師 数 名 が 寄 付 と い う
形態を取り、新規機材の導入を行っていた事を目の当たりにした事のある筆者の営業
時代の経験から察しても、
「大学病院の若い先生の間ではポケットマネーで費用を負担
し て も い い か ら 新 し い 機 器 を 使 い た い と い う ニ ー ズ が あ る 」1 3 1 事 は 確 か で あ る 。医 師 に
と っ て 、医 療 機 器 の 価 格 弾 力 性 は 低 く 、よ り 良 い 治 療 を 顧 客 へ 提 供 で き る 姿 を 第 一 優 先
としている事が殆どである。
図 表 14
各社発売機種の価格
製造・販売元
年月
型番
価格
FTS
(フジノン東芝シ
ステム)
2002
EG-470N
245 万 円 ( 税
抜)
2005
EG-530N
330 万 円 ( 税
込 ) 132
2007
EG-530N2
―
2008
EG-3000N
―
2010
EG-530NW
320 万 円
2011
EG-580NW
346 万 円
2006
GIF-XP260N
273 万 円 ( 税
込)
2005
GIF-N260
265 万
2012
GIF-XP290N
―
2005
EG-1540
―
―
EG-1580K
―
FUJIFILM
オリンパス
PENTAX
( 出 所 : 各 社 ニ ュ ー ス リ リ ー ス 、 記 事 よ り 筆 者 作 成 、「 ― 」 に つ い て は 詳 細 不 明 )
130
ニ ュ ー ス リ リ ー ス 「 FTS 電 子 内 視 鏡 シ ス テ ム 「 ジ ャ ス テ ィ ア ( Justia)」 新 発 売 」 富 士 フ イ ル ム 株 式
会社
http://www.fujifilm.Co.jp/Corporate/news/artiCle/ffnr0205.html ( 閲 覧 2012 年 12 月
28 日 )
131
異業種参入 オリックス・レンテック 戦略と勝機「最新の機器を安価・短期で 医療機器レンタ
ル 」 日 経 産 業 新 聞 2012 年 2 月 15 日 p10
132
新 製 品 『 日 経 ヘ ル ス ケ ア 21』 2005 年 10 月 号 p116
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小沼・長内「B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-」
(2015.8)
一国一城の主で経営者でもある一般診療所の医師は、コストパフォーマンスを検討
し導入する事も考えられるが、それはあくまでも一般病院の医師と比較しての話であ
り 、減 価 償 却 な ど を 常 に 頭 に 入 れ て 導 入 し て い る 場 合 は 多 く は な い 。
「性能に奪われて、
何人診ればペイするかまで頭が回らなかった」
「病院でいい機械に触ってしまった経験
133
が あ だ に な っ た 」と 高 性 能 な 内 視 鏡 を 一 般 診 療 所 に 導 入 し 、宝 の 持 ち 腐 れ に す る 医 師
を 見 た こ と が あ る 。ま た「 前 勤 務 先 の 病 院 で 使 っ て い た の で 、あ ま り 深 く 考 え ず に リ ー
ス で 導 入 す る こ と に 決 め た 。内 視 鏡 の 専 門 医 と し て 、優 れ た 機 材 を 使 い た い と い う 強 い
思 い も あ っ た 」1 3 4 と い う 、こ れ ま で の メ ー カ ー の 拠 点 病 院 、地 域 中 核 病 院 や 教 育 施 設 等
での囲い込み戦略の成果が現れているとも受け取れる。
3-3.
インタビュー
医師は自ら行う診断や治療方針の決定に対しては、自らのプロフェッションとして
の全責任をかける。そして、結果が間違っている場合には、全面的に責任を取らなけ
れ ば な ら な い (石 原 , 1981)中 で 、 顧 客 B 各 人 の 意 向 と 日 々 個 別 に 下 す 決 断 の 中 で 、
顧客 C への新たな価値提供の難しさや、往時から現在に至るまでの反応を明らかにす
るために有識者へのインタビューを行った。
当時東京医科大学にて経鼻内視鏡の研究を富士フイルムまたオリンパスと行ってい
た 医 師 ( 阿 部 公 紀 、 現 ; 北 澤 ニ ュ ー タ ウ ン ク リ ニ ッ ク 副 院 長 ), ま た 当 時 東 京 慈 恵 会
医科大学柏病院にて内視鏡部部長に就いていた医師(角谷宏、現:東京医科大学付属
病院)にインタビューを行った。
東 京 医 科 大 学 で は 「 経 鼻 内 視 鏡 」 に 関 す る 演 題 数 66 件 ( 分 院 の 八 王 子 医 療 セ ン タ
ー で は 11 件 ) で あ り 全 体 演 題 数 の 1 割 を 担 う 教 育 施 設 で あ る , そ の 、 内 , 阿 部 医 師
は筆頭著者数 4 件(共同著者 4 件)の実績を持つ。
3-3-1. 経鼻内視鏡推進派
2012 年 10 月 に 1 度 、 北 澤 ニ ュ ー タ ウ ン ク リ ニ ッ ク に て 1 時 間 半 イ ン タ ビ ュ ー を 行
った。阿部医師は開発者の一人であると同時に、当時は一般病院勤務、現在は一般診
療所勤務という経験を持つため、両側面から変化を捉えている事が考えられる。
こ れ ま で 医 療 担 当 者 は 、 ま ず 技 術 水 準 を 高 め る 事 に よ り 医 療 の 質 を 高 め る 努 力 を 135
行ってきた。現場の人間としても、企業の技術や医師の技術を上げることで、内視鏡
検査の苦痛を減らせる事が可能になるという考えであった。その中で自身で体験をし
てみたこと、顧客 C の立場に立って考えると有益な可能性があると考えたという。医
療の質が顧客 B と顧客 C で相違がある事が伺える。
正 診 率 、 死 亡 率 の 減 少 と い っ た 学 術 的 貢 献 が 医 学 界 の 中 で 重 視 さ れ る 中 で 、「 楽 で
あ る 事 」「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 取 れ る こ と な ど 」 の 定 性 的 な デ ー タ は 取 り に く く 評
133
コンサルタント・機器選び「珍しくない差益狙いのコンサル 使わない光学機器が経営を圧迫」日
経 ヘ ル ス ケ ア July 2008 pp56-61
134
コンサルタント・機器選び「珍しくない差益狙いのコンサル 使わない光学機器が経営を圧迫」日
経 ヘ ル ス ケ ア July 2008 pp56-61
135
「 医 療 の 質 を 高 め る た め に 」 紀 伊 國 献 三 医 療 と 社 会 Vol.5 No.4 1996
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小沼・長内「B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-」
(2015.8)
価しづらい事を理解している。わが国では疾病構造が変化し、感染症に代わって生活
習慣病が大部分を占めるようになり、それに伴い医療者と患者の関係も症状があると
きだけの一時的なものから、若年からの健康教育や継続的な生活指導など対象がより
広 範 囲 と な り 、 医 療 の 場 に お け る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 重 要 性 が 高 ま っ て い る 136が 、
術前術後のインフォームドコンセントを促すもので、術中のコミュニケーションに於
いては見受けられない。その中にあって経鼻内視鏡では、検査中のコミュニケーショ
ンは「その場で抱いた疑問点を聞き、即時解決できる」ため心理的負荷を軽くすると
考えられるという。従来までの単なるパターなリズムの医療ではなく、より今日的な
インフォームド・コンセントを基盤とする医療を展開する事で、格差を解消していく
努 力 が 行 わ な け れ ば な ら な い 137の で あ る 。
発 表 時 、初 期 は「 不 具 合 が な い か 」「 出 血 が ど れ ほ ど 出 る の か 」と い っ た 負 の 要 素 の
質 問 を 多 く あ っ た が 、学 会 で シ ン ポ ジ ウ ム が 組 ま れ る な ど 次 第 に 注 目 を 集 め 、検 査 の 見
学も週 2 組くらい来院するようになったという。見落としが1つでもあってはならな
い事を目的として発見率を上げるのか、検診をどのようにか勧めて早期がん発見率を
上 げ る の か 、ど ち ら も 必 要 で ど ち ら も 大 目 的 は 同 じ で あ る の で 、選 択 者 、医 療 機 関 の 役
割 と そ こ で 働 く 医 療 従 事 者 の 考 え 方 次 第 で あ る と 。た だ 学 会 な ど で 製 品・検 査 の 短 所 に
ついて議論が為されることについて、企業や其々の推進派も問題解決をしようとして
お 互 い が 切 磋 琢 磨 を し 、技 術 向 上 や 技 術 革 新 が 期 待 さ れ る の で 歓 迎 で あ る と い う 。企 業
の 体 質 と し て 、開 発 危 険 の 大 き い も の や 採 算 性 の 悪 い も の 、長 期 に わ た り 努 力 が 必 要 な
モ ノ や 統 合 的 技 術 力 が 必 要 な も の な ど は 、 開 発 計 画 に 上 ら な い (斎 藤 , 1987)の が 常 で
あ る が 、経 鼻 内 視 鏡 は 前 者 の 開 発 危 険 の 大 き さ を 産 学 連 携 で 乗 り 越 え た と い え る 。医 療
が 日 進 月 歩 で あ り 、有 効 な 医 療 技 術 で あ っ て も 、適 正 な 対 象 に 利 用 が 行 わ れ て い る か <
監 視 >( monitoring)の 評 価 を 継 続 し て 行 う 事 が 重 要 な 課 題 で あ り 1 3 8 、学 会 な ど 権 威 あ
る集団はその役目を果たしていると考えられる。
また第一世代の経鼻内視鏡は、業界二番手である富士フイルムであること、経口内
視鏡に比べ画像が劣ることが許容されていた。その要因として、低価格で相応のコス
トパフォーマンスで対応している為かどうかという点については「医師にとって価格
よりは使い勝手を優先する」として、実績ある企業にとって最も魅力の薄い顧客を摘
み 取 る 事 で 成 長 し た 、 単 な る 低 コ ス ト の ビ ジ ネ ス モ デ ル (Christensen, 2003) で は な
い。
前 述 の 、 2002 年 か ら 経 鼻 内 視 鏡 に 取 り 組 ん で き た 出 雲 中 央 ク リ ニ ッ ク の 宮 脇 哲 丸 院
長は性能についての評価を「現行の経口内視鏡と比べて画像は多少落ちるが、がんを
見つけるスクリーニングの目的ならば十分な性能」と述べ、またこれは内視鏡を使い
慣 れ た 医 師 た ち の 一 般 的 な 評 価 で あ る 139。
但し、問題点としては、経鼻で何らかの異常を見つけた場合、その後の処置のため
136
「医療コミュニケーションを妨げるあいまいな言語表現について:用語の理解に関する調査」梅津
和 子 、 荻 原 明 人 、 信 友 浩 一 医 療 と 社 会 Vol.13 No.3 2003
137
巻 頭 言 「 医 療 経 済 と 医 学 教 育 」 岩 崎 榮 医 療 と 社 会 Vol.5 NO.1 1995
138
「 医 療 の テ ク ノ ロ ジ ー ・ ア セ ス メ ン ト 」 久 繁 哲 徳 、 医 療 と 社 会 Vol.4 No.2 1995
139
効 く NEWS1 鼻 か ら 入 れ る 内 視 鏡 検 査 『 日 経 ヘ ル ス 』 2007- 7 pp146
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に は 、 経 口 内 視 鏡 を 再 度 試 み る 必 要 が あ る 140 事 が 挙 げ ら れ る 。 そ の た め 、 経 口 内 視
鏡の導入に慎重な医師は少なくない。医療経済性に鑑みても、合理的ではないからで
ある。
3-3-2. 経口内視鏡推進派
2012 年 10 月 に 1 度 、 東 京 医 科 大 学 八 王 子 医 療 セ ン タ ー に て 1 時 間 イ ン タ ビ ュ ー を
行った。角谷医師は入局以来大学病院勤務であり、セデーション下で行う経口内視鏡
検査を日常的に行っている。経鼻内視鏡を使用した理由としては、患者からの問い合
わせがあったこと、そしてそれに対し専門家として回答を持つ必要があるという部分
に 起 因 す る と い う 。 販 売 促 進 資 材 の DVD や 論 文 を 読 む な ど 勉 強 を し て 、 実 際 取 り 組 む
ことになったという。
導入後に経口か経鼻内視鏡かの希望は聞くが、経鼻内視鏡に消極的な理由として
は、2 つある。1つ目は、やはり操作性が悪く、また使い勝手が経口の方が圧倒的に
優れていること。2 つ目は、そもそも地域に根差しているので「ここに来院すれば、
(セデーション下で)楽な内視鏡が受診できる」と顧客 C は知っている事にある。従
来 の 主 流 の 経 口 内 視 鏡 は 「 つ ら い 検 査 」 の 代 表 141で は あ る が 、 セ デ ー シ ョ ン を 行 う 医
師からはそれこそが「楽」な内視鏡検査だと結論付けている。なお内視鏡受診する年
齢には、健康は関心事として高い位置を占めると考えられ、病院の評判は口コミで広
まっていると認識している。
但しセデーション下の内視鏡は、リスクもあるが、そり以外にリカバリールームや
係りの看護師の設置をする必要のある検査であるので、一般病院での実施が最適であ
ると考えている。
また興味深い話としては、新規導入が内科以外でもあるという件である。一般診療
所の中では、内科標榜しているが内視鏡専門医ではなかった人も導入していると聞く
という。研修医などで内視鏡に親しんではいるものの、新規に保有することにしたと
いう医師もいるという。これまで自身の経験から内視鏡の有用性は理解しているもの
の「つらい」ため X 線検査を勧めていたが、「楽な」内視鏡検査があるのであれば、
と導入するケースもあるようだ。これは内視鏡市場そのものではなく X 線の市場にも
アプローチしており、富士フイルムは X 線導入施設について、連続的に提案が出来る
商材を手に入れたと考えられる。市場を面で捉える事で、消費拡大していると言え
る。
3-3-3. 小括
顧客 B は専門性から鑑みて、顧客 C にとっての便益を十二分に考慮した上で手段を
選択しているが、顧客 C からの要望に応える姿勢を持ち合わせている。企業 B からの
顧客 B のみならず顧 C へのアプローチが作用し、また有用である事が理解できた。
当時、消化器内視鏡で内視鏡ハイテク機器・先端技術として特集が組まれた際に、
山口大学名誉教授の竹本医師が内視鏡の歴史や現状・課題について書かれていた。そ
140
141
効 く NEWS1 鼻 か ら 入 れ る 内 視 鏡 検 査 『 日 経 ヘ ル ス 』 2007- 7 pp146
「 胃 カ メ ラ 鼻 か ら 静 岡 赤 十 字 病 院 」 朝 日 新 聞 2007 年 4 月 27 日 朝 刊 pp29
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こで「極細径内視鏡技術の革新」としては以下のようにあった。
きわめて地味なスコープであるが、極細径で鼻腔から挿入する経鼻内視鏡がオリン
パスとフジノンの両社で作られている。一見単純そうに見えるこの製造技術でさえ、
高 性 能 CCD の 小 型 化 や マ イ ク ロ レ ン ズ な ど の 各 部 品 の 微 細 技 術 が 発 達 し た 結 果 で あ
る。
内視鏡操作では、いつも術者と患者との意思疎通が可能なように工夫する必要があ
るが、舌根や咽頭感覚が特に鋭敏と思われる人や、かなり神経質な人に対しては、コ
ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 上 の 不 安 が 少 な い 経 鼻 内 視 鏡 の 良 さ を 十 分 に 考 慮 し た い (竹 本 ,
2005)。「 地 味 な ス コ ー プ 」 か ら 察 す る に 、 そ の よ う に 言 わ せ し め た 事 も 、 決 し て 単 調
な道ではなかったと想像に易い。
内視鏡市場での経鼻内視鏡の貢献は、検診市場において母集団を増やしていくに
留まらない。これまで耳鼻科の診療領域である咽喉頭分野を経由する事に伴い、内視
鏡医が検査の一部として見る部位となった点である。これまでは耳鼻科で、異常を検
知した際に意識的に行う検査であったものを、無意識的に検査する事で早期発見を促
している点にもある。
4. 考察
4-1.
顧 客 が 多 様 な 状 況 下 で の 分 断 型 ( Disruptive) イ ノ ベ ー シ ョ ン
経鼻内視鏡は、上部消化管内視鏡検査の市場に於いて分断型イノベーションであっ
た。
こ れ ま で の 消 化 器 内 視 鏡 の 市 場 で は Abernathy and Clark (1985)の イ ノ ベ ー シ ョ
ン4つの分類の内の 2 つ目,技術では温存的だが、市場面では破壊的なイノベーショ
ン に あ た る と 考 え ら れ る 。富 士 フ イ ル ム が 定 義 し た 新 市 場 は Christensen(2003)で 指 摘
されているように、顧客が購買決定を下す際に置かれている状況に即した市場分野で
あると考えられる。顧客 B また顧客 C 双方の置かれている状況・目的が,胃がんの発
見 と い う 大 き な 目 的 で あ る 事 は 変 え 難 い 中 で 、図 表 15 の よ う に 、こ れ ま で の 市 場 の 定
義を覆したといえる。
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図 表 15
Christensen の 分 断 型 イ ノ ベ ー シ ョ ン と 顧 客 の 価 値 に よ る 市 場 分 断
( 出 所 : 持 続 的 イ ノ ベ ー シ ョ ン と 破 壊 的 イ ノ ベ ー シ ョ ン の 影 響 142を 基 に 、 筆 者 作 成 )
既存でどの企業よりも実績ある企業であったオリンパスに対し、フォロワーであっ
た富士フイルムがチャレンジャーとなり、これまでの内視鏡検査の概念を覆すことに
成功した。
Christensen( 1997)に あ る よ う に 、こ の よ う な B2C に 向 け た 新 し い 価 値 次 元( 基 準 )
の 価 値 創 造 は 、顧 客 に 束 縛 さ れ て い た た め 、破 壊 的 技 術 が 現 れ る た び に 、新 規 参 入 企 業
が既存のリーダーを追い落とすこととなった点とも整合性を持つ。
そ し て 仮 に( B2)B2C の 意 味 的 価 値 が 短 期 的 な も の で あ っ た と し て も 、シ ス テ ム 製 品
である特長を活かし、参入障壁の高い既存市場―大学病院や大規模病院へのドアオー
プナーとなる事が考えられる。つまり、新規参入企業が上位市場で移行する
( Christensen, 1997) こ と を 実 現 し よ う と し て い る 。 そ う す る 事 で 遂 に は B2B( 2C)
の顧客を囲い込める可能性が高まると考えられる。
ま た 、B2B2C の 場 合 に 顧 客 B で は な く 、顧 客 C に と っ て 有 用 な「 性 能 」に 焦 点 を 当 て
た 時 、そ こ に は 新 た な 価 値 が 生 ま れ 、ま た 同 時 に 分 断 型 イ ノ ベ ー シ ョ ン と な る 可 能 性 が
あ る 。そ う す る 事 に よ り 、新 規 市 場 を 創 出 す る 機 会 が 生 ま れ 、フ ォ ロ ワ ー で も 王 者 へ 挑
戦し勝てる領域となる。その可能性が高まると考察される。
4-2.
医療における意味的価値の実現
Theodore Levitt(1981)が 、 顧 客 は 得 て い る も の が 得 ら れ な く な る ま で 、 得 て い る
ものを知らない、と指摘したように、顧客 C は「内視鏡検査」という普段遭遇しない
ものに遭遇して初めて「健康ではない状態」を認知する。消費者は健康の不確実性を
考慮して受診行動を決定している事が明らかに なっているように、健康だと思って
いる場合は受診行動を取ろうとはしない。健康だとわかっている場合には健康診断の
142
ク リ ス テ ン セ ン (1997)『 イ ノ ベ ー シ ョ ン の ジ レ ン マ 』 p10
図 0.1
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情 報 と し て の 価 値 は な く な る 143の で あ る 。
但 し 、「 内 視 鏡 検 査 」 で 得 た い 情 報 に つ い て の 乖 離 が 生 じ て い る 事 が 考 え ら れ る 。
顧客 C としては健康かどうかを確認する作業であり、顧客 B にとっての関心事は万が
一「健康ではない」場合に、その上のステップとして良性か悪性かを見極める作業で
ある。顧客 C にとって受診によって得られる情報が、価値ある情報かどうかは定かで
はないため、医師との共通課題(胃がんであるかそうでない)の情報取得は補足的で
あり、一先ず目先の検査をこなし「健康」であると太鼓判を押される事に意識が集中
しているのではないだろうか。
長 内 ・ 榊 原 (2012)で は 価 値 の 実 現 に つ い て 以 下 の よ う に 指 摘 し て い る 。 競 合 企 業 よ
り技術的優位であるからといって必ず顧客価値が生み出されるわけではなく、機能・
性 能 の 向 上 が 顧 客 価 値 に 結 び つ い て い な い こ と が 多 い 。 (長 内 ・ 榊 原 , 2012)
経鼻内視鏡は「楽」という主観的・感覚角的な価値を差異化可能な技術によって実
現し、製品の競争力を上げている。技術を機能的価値創造の手段としてではなく、意
味 的 価 値 創 造 の 手 段 と し て 用 い て い る (長 内 ・ 榊 原 , 2012)と い え る 。
医療の質についての議論でも、医療提供者が良質の医療であると評価したものが、
果 た し て 利 用 者 に と っ て は ど の よ う に 評 価 さ れ る の か は 別 個 の 問 題 144で あ る と 指 摘 さ
れ て い る 。 医 療 の 質 の 要 素 と し て Donabedian(1996)が 挙 げ て い る の は 、( 1 ) ス ト ラ
ク チ ャ ー ( 2) プ ロ セ ス ( 3 ) ア ウ ト カ ム で あ り 、 現 在 の と こ ろ 、 医 療 の 質 を 知 る た
めにはプロセスの評価が最も望ましいと考えられている。つまり医療施設、機器施
設 、 医 療 従 事 者 数 、 従 事 者 資 格 な ど <構 造 >( structure) が 中 心 と な っ て い た も の か
ら 、 <過 程 >( process) に , 検 査 や 診 断 、 治 療 の 内 容 が 、 時 代 の 要 求 す る 適 切 な 基 準
に 合 致 し て い る か 否 か を 評 価 す る 1 4 5 こ と で あ り 、「 医 療 の 質 」 を 再 定 義 す る こ と が 求
め ら れ て い る の で は な い だ ろ う か 。 近 年 で は 患 者 の <満 足 度 >( satisfaction) が 注 目
されており、医療に対する満足感、生活の質、患者―医療者関係などがその指標とし
て 挙 げ ら れ る 146。 医 療 の 関 心 も 変 化 し 続 け て お り 、 そ れ に 対 応 し た 製 品 を 開 発 し て い
くことが時代に要求されている。
例えば、ほぼ全ての病院に設置が為されている、意見投書箱に占める苦情の多くは
「接遇」に関するもので、その中でも患者さんとのコミュニケーション不足による内
容 が 多 く な っ て い る 1 4 7 。 QOL や イ ン フ ォ ー ム ド コ ン セ ン ト と い う 言 葉 が 明 示 す る の
は、技術優先から苦痛軽減の価値や費用効果比を考える時代に医療が変化か進化しな
け れ ば な ら な い (古 川 , 1998)事 を 指 し て い る 。 田 村 (1996)の 中 で は 、 メ デ ィ カ ル エ
シックスの権威ビーチの言葉を借り、インフォームドコンセントについて、また患者
の 意 向 が 反 映 さ れ る と い う ご く 当 然 の 医 療 に 148期 待 を 述 べ て い る 。 医 療 者 と 患 者 で そ
143
特集論文「健康診断の受診と情報としての健康診断の価値」山田武 財団法人医療科学研究所『医
療 と 社 会 』 Vol.13 No.1 2003 pp39- 52
144
「 医 療 の 質 を 高 め る た め に 」 紀 伊 國 献 三 医 療 と 社 会 Vol.5 No.4 1996
145
「 医 療 の テ ク ノ ロ ジ ー ・ ア セ ス メ ン ト 」 久 繁 哲 徳 、 医 療 と 社 会 Vol.4 No.2 1995
146
「 看 護 の 質 と ク ウ ォ リ ー 」 久 繁 哲 徳 .教 育 と 医 学 .40( 5 ): 461-470.1992
147
第 14 章 経 営 / 教 育 / 患 者 満 足 、 85 意 見 投 書 箱 に 占 め る 「 感 謝 」 の 割 合 、 [医 療 の 質 ]を 測 る
聖 路 加 国 際 病 院 の 先 端 的 試 み Vol2、 株 式 会 社 イ ン タ ー メ デ ィ カ ( 2008) pp162
148
「「 自 己 決 定 型 の 医 療 」 の 問 題 点 と 実 現 に 向 け て の 提 案 」」 田 村 誠 財 団 法 人 医 療 科 学 研 究 所 『 医 療
と 社 会 』 Vol.6 No.3 1996
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(2015.8)
の基本的な価値観が異なっている場合、医療者の提示する「選択肢」は患者が本来選
択 し た か っ た も の ( た と え ば 「 自 殺 」) が 含 ま れ て い な い 可 能 性 が あ り 、 そ の 選 択 肢
が医療者と患者間で出来る限り同じものにするためには、医療機関が同種の人生観・
価値観を有している人を集め、その医療機関はそれを明示することにより、その価値
観にあった患者だけが来院するような仕組みが必要であると述べている。
インフォームドコンセントは来院後の行為であるが、これは来院前にも通ずると考
えられる。専門は専門家へ、つまり「医師」という専門サービスの中でも「認定内科
医 」 で あ る の か , 次 の ス テ ッ プ と し て の 「 消 化 器 内 視 鏡 専 門 医 149」 な の か 、 あ る い は
「指導医」クラスであるのかが明示されているように、医療機関にも必要な要件を明
示する事が求められる。また同時に患者側もそれらを認識して受診行動をする事が要
求される。受診機関を選択する患者にも、その責任が発生する。しかし自由な選択の
た め に は そ の た め の 責 任 を 避 け て 通 る 事 は で き な い 150。 医 療 と い う 財 自 体 が 、 消 費 者
に と っ て は 従 来 の 信 頼 材 か ら 経 験 財 や 探 索 財 へ 変 化 し て い る (真 野 , 2003)。 顧 客 C に
とって身近になりつつある「医療」も、選択する権利の発生と共に、義務を負う責務
が発生する事を忘れてはならないであろう。
顧 客 価 値 の 最 大 化 を 行 う 技 術 が 、 新 市 場 の 創 造 を 可 能 に し た 。 こ れ ま で 顧 客 B( 企
業 )( 医 師 ) の 中 で 判 明 し て い な が ら も 実 現 で き な か っ た 医 療 機 関 の 役 割 分 担 を 実 現
した。また同時に、顧客 C の中で一般診療所も一般病院も同一価値であった認識と行
動を変容させた。
日本の医療機関の問題点の1つとしてしばしば指摘されるのが、病院、とりわけ大
病院の外来患者の集中であるが、日本では、医療サービスの価格や医療サービスの供
給に於いて規制が存在するために、ミスマッチが解消されにくい。さらに、医療サー
ビスの需要者である患者は二つの不確実性に直面している。1つは、個々の医療機関
がどのような種類の、どのような質の医療サービスを提供するかに関する不確実性で
もあり、もう1つ、自分の病気を治療するのに最も適切な医療サービスとは何かに関
す る 不 確 実 性 で あ る 1 5 1 。 こ の 2 つ の 不 確 実 性 に つ い て 、 図 表 16 の よ う に 内 視 鏡 検 査
に於いては、経鼻内視鏡の登場で解決されたといえる。各種広告や口コミによる医療
情報の取得、検診のためであれば一般診療所で経鼻内視鏡受診が最適であるというか
かりつけ医からの勧め,もしくは口コミからの情報取得によって不確実性は解消され
てきていると考える。
149
消化器内視鏡学会専門医の認定基準・申請資格において、日本内科学会の認定医であることが記載
されている。
http://www.jges.net/gseido/index.html ( 閲 覧 2012 年 12 月 20 日 )
150
「 市 民 が 望 む 医 療 の あ り 方 」 島 田 晴 雄 、 山 田 武 医 療 と 社 会 Vol.5 No.4 1996
151
「外来患者による大病院選択の規定要因―「国民生活基礎調査」の個票データを用いた実証分析
― 」 塚 原 康 博 . 医 療 経 済 研 究 Vol.14 2004
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ワーキングペーパー 40
小沼・長内「B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-」
(2015.8)
図 表 16
がん検診の流れと内視鏡による市場の分断
( 出 所 :「 が ん 情 報 サ ー ビ ス 」 1 5 2 を 基 に 筆 者 作 成 )
5. おわりに
5-1.実務的インプリケーションと今後の課題
実 務 的 イ ン プ リ ケ ー シ ョ ン と し て は 先 ず 、 延 岡 (2011)で は 、 消 費 財 と 生 産 財 で 意 味
的 価 値 は 異 な る と 指 摘 さ れ て い る が 、 B2B2C で は 異 な る 2 種 類 の 意 味 的 価 値 創 造 を 行
うことで、破壊的イノベーションを起こすことが可能になると考えられる。顧客 B
( 生 産 財 ), 顧 客 C( 消 費 財 ) が 共 に 「 胃 が ん の 早 期 発 見 」 と い う 目 的 , な お 、 こ の 後
に FUJIFLIM は 専 用 サ イ ト 「 鼻 か ら . jp」 に お い て 経 鼻 内 視 鏡 の 導 入 施 設 を 公 開 し て
い る 。 こ れ は 先 に 述 べ た よ う な 医 療 法 に お け る 広 告 規 制 に は 当 た ら な い 。「 医 療 法 の
いう広告とは、特定多数の人に表示する看板や新聞広告などを指し、利用者が自分の
意志で検索して開くインターネットのホームページは該当しない」というのが見解で
あ る 153。 154た め で あ る 。
その為の内視鏡受診という手段を選択することは同一であるが、その選択の動機は
一義的ではない。そして企業 B が価値提供を行うフェーズもまた同時ではない。
もしくは消費財の側面を持つ生産財として位置づけをされた製品として捉えると、
専 門 性 , 判 断 基 準 の 違 う 顧 客 B( 生 産 財 )と 顧 客 C( 消 費 財 ) に 対 し て は 、意 味 的 価 値
を同時多発的にマネジメントする必要があると考えられる。つまり各々の状況に即し
152
独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報サービス「がん検診につい
て 」 http://ganjoho.jp/puBliC/pre_sCr/sCreening/aBout_sCr.html ( 閲 覧 : 2012 年 12 月 23 日 )
153
「 進 む 広 告 の 規 制 緩 和 収 取 か ら 選 択 の 時 代 ( 医 で の 触 れ 合 い も っ と 医 療 情 報 を ⑧ )」 読 売 新 聞
1997 年 1 月 22 日 朝 刊 p21
154
「 日 本 の 広 告 規 制 の 変 化 と 影 響 要 因 に つ い て 」 嶋 村 和 恵 、 早 稲 田 大 学 商 学 第 385 号 200 年 6 月
早稲田大学
IT 戦略研究所
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(2015.8)
た意味的価値を擁する事が、医療機器に於ける新市場の開拓には不可欠であると想定
される。
ま た 、「 イ ノ ベ ー シ ョ ン 」 と い う の は 、 新 し い 製 品 ま た は 技 術 を 企 業 の 事 業 活 動 に
組 み 込 ん で ゆ く 一 連 の 活 動 を さ す (榊 原 , 1984)際 に は 、 企 業 の 保 有 す る 技 術 , ま た
顧客アカウント,企業文化も十二分に統合させ発揮する事が重要であることが理解で
きよう。
延 岡 (2006b)で 述 べ ら れ て い る よ う に 、 顧 客 価 値 の 実 現 に は 、 補 完 的 資 源 に よ る 差
別化が必要である。補完的資源は市場的資源と技術的資源という 2 つの視点から考え
ら れ 、 市 場 的 資 源 と し て は 、 EMI の CT ス キ ャ ナ の 事 例 と 類 似 し て い る 。 そ れ は 販 売 後
のサービス体制や、病院との信頼関係などの補完的資源が鍵を握っていた例であり、
本 邦 に つ い て そ れ は 、 光 学 メ ー カ ー と し て 培 っ た 撮 像 技 術 、 業 界 初 の デ ジ タ ル X-Ray
による一般診療所への顧客アカウント、デジタルカメラや化粧品など個人顧客向けの
事業に於けるマスコミやパブリシティの利用方法などが類推される。
ま た 沼 上 (1992)で 指 摘 の あ る 「 競 合 他 社 と の 相 互 作 用 を 通 し て 自 社 の 戦 略 構 築 能 力
を高める学習プロセス」についての検討も可能である。つまり富士フイルムの経鼻内
視鏡の発売が各社を誘発し、競争を行っている。エビデンスや学会という有力なコン
テキストが存在し、産学連携が開発の土台としてある中にあっても、顧客の反応によ
り企業間の競争が促進される事が明示できた。持続的イノベーションが行われる事
も、飛躍的に業界水準や市場の発展を押し上げる。薬事法などの制度面は別の議論と
して、全般的に海外製品に頼っている部分が大きい医療業界(医薬品のみならず医療
機器)として、今後は日本企業間の競争だけではなく一丸となり世界への発信をして
いけるような競争の源泉をうみ出せるのではないだろうか。
ま た 品 質 が 妥 当 か ど う か と い う 点 で も 一 考 が 可 能 で あ る 。 狩 野 紀 昭 ら ( 1984) は 、
客観的(充足度)と主観的(満足度)の二次元的見方で当たり前品質があるという魅
力品質理論を提案した。当たり前品質とは、それが充足されれば当たり前と受け止め
られるが、不充足ならば不満と受け止められる質要素である。魅力品質とは、それが
充足されれば満足を与えるが、不充足であってもしかたないと受け止められる質要素
で あ る (狩 野 他 , 1984)、 と し た 。 こ れ を 医 療 で の 適 応 に 於 い て 考 え る と 、 ラ イ フ サ
イクルのどの段階の質かを重視するかが問題ではなく、提供するサービスがどの段階
に 位 置 す る か を 認 識 す る 事 が 重 要 で あ る 155と し て い る 。 経 鼻 内 視 鏡 は 「 当 た り 前 品
質」に該当すると言えるが、これまでの経口内視鏡及びそれらによる検査は真逆のカ
ー ブ を 描 い て い た も の と 考 え ら れ る 。「 当 た り 前 な 」 製 品 の 開 発 を 行 う 事 が 、 今 後 の
製品開発の一助になると考えられる。
今後の課題としては、演題でも取り上げられていたような、顧客 B の新製品導入に
伴うオペレーション(検査前に必要となる処置や、顧客 C の管理方法の変化について
組 織 と し て 新 た な 対 応 を 行 う た め 運 営 方 法 が 最 適 化 さ れ る ) や 、 企 業 B で の PR 活 動
や販売促進方法についての取り組みについて組織能力をどのように発揮する事が可能
か , も し く は 最 適 か も 含 め た 検 討 が な さ れ な か っ た 事 に あ る 。 延 岡 ( 2006b) に あ る
ように、価値創造プロセスまた価値獲得に当たる議論を一連として行えることが考え
155
医 療 の 質 用 語 集 「 当 た り 前 品 質 ・ 魅 力 品 質 」 日 本 規 格 協 会 2005
早稲田大学
pp30
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られる。
また医療経済学にも「国籍」がある。あるいは国により医療経済学の概念・範囲が
異 な る 156た め 、 こ こ で は 日 本 市 場 を 限 定 し て 取 り 上 げ た 。 海 外 か ら の 経 鼻 内 視 鏡 の 見
学などについての報告も見受けられるように、今後の課題として、社会制度の異なる
中で日本の誇る医療技術を世界へどのように発信するかが最適であるのかも検討した
い。
5-2.
医療産業の発展のために
2012 年 7 月 に 内 閣 官 房 府 か ら 日 本 再 生 戦 略 が 発 表 さ れ た 。 そ の 中 で 医 療 は ラ イ フ 戦
略に組み込まれ、革新的医薬品・医療機器創出のためのオールジャパンの支援体制等
(創薬支援ネッワーク),医療機器・再生医療の特性を踏まえた規制・制度等の確
立、先端医療の推進等(薬事法改正)が掲げられた。
国際医療福祉大学 開原成允の指摘にもあるように、一昔前の日本であれば、医療
は社会保障制度であって産業ではないという考え方が支配的であった。最近の「医療
は産業である」という主張は、病院や診療上などで行われる行為そのものが産業であ
る と い う 考 え 方 で あ る (開 原 , 2011)。
そのような成長産業として位置づけされた事はこれまで、日本での医療倫理が「医
は仁術なり」として、起源は定かではないが江戸時代より盛んに唱えられてきている
思 想 か ら な っ て い る こ と ― 1982年 に ハ ド ソ ン よ り 発 売 さ れ た シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ソ フ ト
のような「医は算術なり」であってはならぬとされてきていた思想,が崩壊しつつあ
ることを意味すると考えられる。同様に、関連の周辺産業―医薬・医療・福祉等での
適切な利益追求について語られる事は禁忌とされてきた部分も否めない。法規制や医
薬に見られる開発費用対効果の低さや事業リスクの高さ等により,参入障壁が高く、
新規参入が敬遠されてきた業界である。それは医療機器業界について書かれている事
例が非常に少ないことの要因でもあると考えられる。
ま た 医 療 イ ノ ベ ー シ ョ ン 5か 年 計 画 に も 触 れ ら れ て い る 通 り 、 医 薬 品 ・ 医 療 機 器
は、実際に使用する医療従事者にとって安心して使えるもの、使いやすいものである
必 要 が あ る 。 157こ の 事 は 、 安 全 性 や 信 頼 性 の 面 か ら も 先 行 者 優 位 の 市 場 を 意 味 し て い
る。共に歩む医療従事者との関係構築が成されておらず,またそこから得られるもの
を蓄積できていない企業にとっては、参入障壁が高いと言える。
逆説的にそれはまた、成功した優良企業の牙城とも取れる業界構造であるというこ
とである。一度市場で成功を収めた場合、業界での地位を覆すことが非常に難しい事
が予想される。本稿では、その中にあって、どのように新市場を創出してゆく事が望
ましいかを議論した。今後も、イノベーションの手法を広く公開することにより、医
156
「「 世 界 一 」 の 医 療 費 抑 制 政 策 を 見 直 す 時 期 」 二 木 立
視 点 と 方 法 」 医 療 と 社 会 Vol.16 No.2 2006
157
頸 草 書 房 1994
p192、「 医 療 経 済 ・ 政 策 学 の
医 療 イ ノ ベ ー シ ョ ン 5 か 年 計 画( 平 成 24 年 6 月 6 日 )」医 療 イ ノ ベ ー シ ョ ン 会 議 、内 閣 官 房 医 療 イ ノ
ベ ー シ ョ ン 推 推 進 室 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/iryou/5senryaku/siryou01.pdf
(閲覧
2012 年 7 月 28 日 )
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(2015.8)
療 を 大 衆 化 し よ う と す る (マ ッ カ ー シ ー , 2012) 事 を 試 み た い 。 日 本 が 「 超 高 齢 社
会」に世界に最初で突入する「課題先進国」であり、未曽有の課題に世界で最初に取
り 組 め る チ ャ ン ス を 与 え ら れ て い る 。 こ れ ら の 課 題 を 見 事 に 解 決 す れ ば 、「 ソ リ ュ ー
シ ョ ン 先 進 国 」 と し て そ の 知 見 を 世 界 に 発 信 で き る (川 上 , 2011)の で あ る 。
謝辞
本稿の執筆にあたり、早稲田大学大学院ビジネススクールの吉川智教教授、長沢伸
也教授の各先生には貴重なコメントをいただいた。またインタビューにあたっては、
東京医科大学 角谷宏先生・阿部公紀先生にご協力いただいた。ここに記すとともに
謝意を表したい。
なお、本稿の記載事実に関してありうるべき誤謬は全て筆者個人の責めに帰するも
のであり、調査先関係各位及び筆者が所属するいかなる団体も責任を負うものではな
い。
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ワーキングペーパー 46
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No.1
ワーキングペーパー一覧
インターネット接続ビジネスの競争優位の変遷:産業モジュール化に着目した分析
根 来 龍 之 ・ 堤 満 (2003 年 3 月 )
No.2
企 業 変 革 に お け る ERP パ ッ ケ ー ジ 導 入 と BPR と の 関 係 分 析
武 田 友 美 ・ 根 来 龍 之 (2003 年 6 月 )
No.3
戦 略 的 提 携 に お け る ネ ッ ト ワ ー ク 視 点 か ら の 研 究 課 題 : Gulati の 問 題 提 起
森 岡 孝 文 (2003 年 11 月 )
No.4
業界プラットフォーム型企業の発展可能性―提供機能の収斂化仮説の検討
足 代 訓 史 ・ 根 来 龍 之 (2004 年 3 月 )
No.5
ユーザー参加型商品評価コミュニティにおける評判管理システムの設計と効果
根 来 龍 之 ・ 柏 陽 平 (2004 年 3 月 )
No.6
戦略計画と因果モデル―活動システム,戦略マップ,差別化システム
根 来 龍 之 (2004 年 8 月 )
No.7
競争優位のアウトソーシング:<資源―活動―差別化>モデルに基づく考察
根 来 龍 之 (2004 年 12 月 )
No.8
「コンテクスト」把握型情報提供サービスの分類:ユビキタス時代のビジネスモデル
の探索
No.9
根 来 龍 之 ・ 平 林 正 宜 ( 2005 年 3 月 )
「 コ ン テ ク ス ト 」 を 活 用 し た B to C 型 情 報 提 供 サ ー ビ ス の 事 例 研 究
平 林 正 宜 (2005 年 3 月 )
No.10
Collis & Montgomery の 資 源 ベ ー ス 戦 略 論 の 特 徴
根 来 龍 之 ・ 森 岡 孝 文 (2005 年 3 月 )
No.11
競争優位のシステム分析:㈱スタッフサービスの組織型営業の事例
井 上 達 彦 (2005 年 4 月 )
No.12
病院組織変革と情報技術の導入:洛和会ヘルスケアシステムにおける電子カルテの
導入事例
No.13
具 承 桓・久 保 亮 一・山 下 麻 衣 (2005 年 4 月 )
半導体ビジネスの製品アーキテクチャと収入性に関する研究
井 上 達 彦 ・ 和 泉 茂 一 (2005 年 5 月 )
No.14
モ バ イ ル コ マ ー ス に 特 徴 的 な 消 費 者 心 理:メ デ ィ ア の 補 完 性 と 商 品 知 覚 リ ス ク に 着 目
した研究
根 来 龍 之 ・ 頼 定 誠 ( 2005 年 6 月 )
No.15
<模倣困難性>概念の再吟味
No.16
技術革新をきっかけとしないオーバーテーク戦略:㈱スタッフ・サービスの
事例研究
No.17
根 来 龍 之 ( 2005 年 3 月 )
根 来 龍 之 ・ 山 路 嘉 一 ( 2005 年 12 月 )
Cyber “ Lemons” Problem and Quality-Intermediary Based on Trust in the E-
Market:
A Case Study from AUCNET (Japan)
No.18
Yong Pan( 2005 年 12 月 )
クスマノ&ガワーのプラットフォーム・リーダーシップ「4つのレバー」論の
早稲田大学
IT 戦略研究所
ワーキングペーパー 48
小沼・長内「B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-」
(2015.8)
批判的発展
No.19
根 来 龍 之 ・ 加 藤 和 彦 ( 2006 年 1 月 )
Apples and Oranges: Meta-analysis as a Research Method within the Realm of
IT-related Organizational Innovation
Ryoji Ito( 2006 年 4
月)
No.20
コンタクトセンター「クレーム発生率」の影響要因分析
-ビ ジ ネ ス シ ス テ ム と 顧 客 満 足 の 相 関 -
No.21
来 龍 之 ・ 森 一 惠 ( 2006 年 9 月 )
模倣困難なIT活用は存在するか?
:ウ ォ ル マ ー ト の 事 例 分 析 を 通 じ た 検 討
No.22
根 来 龍 之・吉 川 徹( 2007 年 3 月 )
情 報 シ ス テ ム の 経 路 依 存 性 に 関 す る 研 究 : セ ブ ン -イ レ ブ ン の ビ ジ ネ ス シ ス テ ム を
通じた検討
No.23
根 来 龍 之 ・ 向 正 道 ( 2007 年 8 月 )
事業形態と収益率:データによる事業形態の影響力の検証
根 来 龍 之 ・ 稲 葉 由 貴 子 ( 2008 年 4 月 )
No.24
因果連鎖と意図せざる結果:因果連鎖の網の目構造論
根 来 龍 之 ( 2008 年 5 月 )
No.25
顧客ステージ別目的変数の総合化に基づく顧客獲得広告選択の提案
根 来 龍 之 ・ 浅 井 尚 ( 2008 年 6 月 )
No.26
顧客コンテンツが存在する製品」の予想余命期間の主観的決定モデルの構築
根 来 龍 之 ・ 荒 川 真 紀 子 ( 2008 年 7 月 )
No.27
差 別 化 シ ス テ ム の 維 持 ・革 新 の 仕 組 に 関 す る 研 究
-ダイナミックビジネスシステム論への展開-
No.28
根 来 龍 之 ・ 角 田 仁 ( 2009 年 6 月 )
変革期のビジネスシステムの発展プロセス
-松下電気産業の創生 21、躍進 21 中期計画の考察 -
向 正 道 ( 2009 年 10 月 )
No.29
インフォミディアリと消費者の満足
新 堂 精 士 ( 2009 年 12 月 )
No.30
成 長 戦 略 と し て の プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 間 連 携 - Salesforce.com と Google の 事 例 分 析
を通じた研究-
No.31
龍 之 ・ 伊 藤 祐 樹 ( 2010 年 2 月 )
ロジスティクスの情報化における競争優位の実現とその維持・強化・革新
メタシステム -差別化システム-競争優位理論の実証分析
木村達也・根来龍之・峰滝和典(2010 年 3 月)
No.32
イ ン タ ー ネ ッ ト に お け る メ デ ィ ア 型 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム サ ー ビ ス の WTA( Winner Take
All) 状 況
根来龍之・大竹慎太郎(2010 年 4 月)
No.33
IT と 企 業 パ フ ォ ー マ ン ス - RBV ア プ ロ ー チ の 限 界 と 今 後 の 研 究 課 題 に つ い て -
向 正 道 (2010 年 5 月)
No.34
ソフトウェア製品のパラレルプラットフォーム市場固有の競争戦略
根来龍之・釜 池 聡 太 (2010 年 7 月)
No.35
製品戦略論における出発点の吟味-理念型としての「機能とニーズの融合」視点
( C V P 重 視 型 ア プ ロ ー チ )の 必 要 性 -
No.36
根来龍之・髙 田 晴 彦(2010 年 10 月)
デ ー タ ベ ー ス 市 場 に お け る 新 規 参 入 の 成 否 を 分 け た 要 因 -「 ス タ ッ ク の 破 壊 」 と 既 存
事 業 者 と 異 な る「 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 優 先 度 」-
根来龍之・佐々木盛朗(2010 年 11 月)
早稲田大学
IT 戦略研究所
ワーキングペーパー 49
小沼・長内「B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-」
(2015.8)
No.37
規格間ブリッジ‐標準化におけるネットワーク外部性のコントロール‐
長 内 厚 ・ 伊 吹 勇 亮 ・ 中 本 龍 市 ( 2011 年 3 月 )
No.38
ゲーム産業における「ゲームモデル」の変化‐革新的ゲームの成功要因の分析‐
根来龍之・亀田直樹(2011 年 5 月)
No.39
経営学におけるプラットフォーム論の系譜と今後の展望
根来龍之・足代訓史(2011 年 5 月)
No.40
地上波放送局における動画配信ビジネスのチャネル・マネジメントに関する研究
根来龍之・亀田年保(2011 年 6 月)
No.41
ロバストな技術経営とコモディティ化
長 内 厚・榊 原 清 則 (2011 年 8 月 )
No.42
袋小路状態の業界の経営戦略:やるも地獄やらぬも地獄の研究
根 来 龍 之 ・河 原 塚 広 樹 (2011 年 9 月 )
No.43
国 内 の コ ン シ ュ ー マ 向 け ISP 事 業 の 顧 客 獲 得 競 争 に 関 す る 経 営 者 の 認 識 と 事 業 行 動
宮 元 万 菜 美 (2012 年 1 月 )
―記述的ケーススタディー
No.44 ゲ ー ム ユ ー ザ ー の 継 続 期 間 に 関 す る 研 究 : 満 足 感 ・ 機 会 損 失 感 ・ プ レ イ 時 間 か ら 探 る
根 来 龍 之 ・工 敬 一 郎 (2012 年 4 月 )
No.45 グ ー グ ル 、 マ イ ク ロ ソ フ ト 、 フ ェ イ ス ブ ッ ク の サ ー ビ ス 追 加 の 相 互 作 用
根 来 龍 之 ・ 吉 村 直 記 (2012 年 5 月 )
No.46 ソ ー シ ャ ル メ デ ィ ア に お け る 、 相 互 共 有 性 と 相 互 関 係 性 に つ い て の 研 究
- ツイッターのメディア特性の分析 -
根来龍之・村上建治郎(2012 年 6 月)
No.47 コンピュータ・ソフトウェアの階層戦術の考察
―VMware の仮想化ソフトの事例を通じて―
加藤和彦(2012 年 8 月)
No.48「 コ ミ ュ ニ テ ィ サ イ ト に お け る 金 銭 イ ン セ ン テ ィ ブ 施 策 等 の 効 果 に 関 す る 研 究
~クックパッドと楽天レシピの比較研究~」
太田遼平・根来龍之(2013 年 4 月)
No.49 Cisco Systems 買収戦略の目的と貢献に関する研究
~内容分析による考察~
大田幸嗣・根来龍之(2013 年 6 月)
No.50 検証 ケータイ業界の神話 ~業績向上のための各種施策は本当に効果があったのか~
大熊裕子・根来龍之(2013 年 10 月)
No.51 コンテンツビジネスリーダーの破壊的イノベーションへの対応
~音楽、新聞、書籍、テレビに共通するメカニズムの抽出~
鈴木修太・根来龍之(2014 年 3 月)
No.52 デザイン価値の創造:デザインとエンジニアリングの統合に向けて
延岡健太郎・木村めぐみ・長内厚(2015 年 1 月)
No.53 外科手術の術式開発における意味的価値の創造
-高齢者重度大動脈弁狭窄症に対する Antegrade-PTAV 術式開発の事例-
長内厚(2015 年8月)
No.54 B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略
-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-
小 沼 麻 理 ・長内厚(2015 年8月)
早稲田大学
IT 戦略研究所
ワーキングペーパー 50
小沼・長内「B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-」
(2015.8)
入手ご希望の方は下記までご連絡下さい.
連 絡 先 : [email protected]
www.waseda.ac.jp/projects/riim/
早稲田大学
IT 戦略研究所
ワーキングペーパー 51
小沼・長内「B2B2C ビジネスにおける機能的価値と意味的価値の使い分け戦略-富士フイルムの経鼻内視鏡の事例-」
(2015.8)
事務局:早稲田大学大学院商学研究科 気付
169-8050 東 京 都 新 宿 区 西 早 稲 田 1 - 6 - 1
連 絡 先 : [email protected]
http://www.waseda.jp/prj-riim/
早稲田大学
IT 戦略研究所
ワーキングペーパー 52