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危機管理主任4 危機管理主任4級 2012 2012年・2013 2013年用 教育テキスト 教育テキスト 写真提供:陸上幕僚監部(福岡県篠栗町における救援活動) 試験運営 試験運営委員会 運営委員会 はじめに 日本列島は、地理的、地形的及び気象条件等から地震や火山活動が非常に活発であり、世 界の0.25%という国土面積に比較して地震の発生や活火山の分布の割合が極めて高くな っています。また、台風、豪雨、豪雪等の自然災害も発生し易い国土であるということを忘 れてはいけません。つまり、日本では地震や災害は、いつでも、どこでも起こり得る、また、 忘れた頃にやってくるということを肝に銘じておく必要があります。平成5年の北海道奥尻 島の津波、平成7年の阪神淡路大震災、平成18年豪雪等は、記憶に新しいところです。 一方、首都圏では、大正13年の関東大震災以降、大規模な地震はありませんが、昨今「首 都直下で震度6弱以上の地震発生は、ある程度の切迫性を有している」と指摘もされていま す。このような大地震が発生した際、皆さん一人一人が「自分の身を守る」ためには日頃か ら地震に対する意識を持ち、いざという時のための準備をしておくことが大切になります。 また、地震発生時には、行政による災害対策の「公助」はもとより、皆さん一人一人が取り 組む「自助」 、町内や事業所、団体等で力を合わせる「共助」の 3 つが不可欠となります。 さらには、みんなで助け合って救助に当たり、災害からの復旧や早期の復興を進めていくこ とも必要になります。 本テキストでは、先ず危機管理主任制度の説明、次に地震、津波、台風、大雨、火山噴火 などの異常な自然現象等の基本的な事項について記述、さらに国を始めとする各組織の防災 や災害に対する取り組みを紹介しています。その後に、法的な根拠として災害救助法、災害 対策基本法及び国民保護法を挙げています。これらの法律による国民の生命、身体及び財産 を保護する仕組みを理解し、地震及び台風などに対する具体的な対処、救出・救護、避難す る際の注意事項、避難所での生活、各家庭での防災対策及び備蓄等、また、それらの訓練や 応急処置方法などを紹介し、最後に防災に関する法律の抜粋を添付しております。 災害対策基本法によれば、災害が発生する恐れがある異常な現象を発見した者は、遅滞な くその旨を市町村長又は警察官若しくは海上保安官に通報しなければなりません。さらに、 通報が最も迅速に到達するように協力しなければなりません(災害対策基本法第 54条) 。 同じように消防法によれば、火災を発見した者は、遅滞なくその旨を消防署または市町村長 の指定した場所に通報しなければなりません。さらに、通報者は消防が最も迅速に到達でき るように協力しなければならないと規定しています(消防法第 24条) 。また、消防隊員又 は消防団員は緊急の必要がある時は、現場付近に居る者を消火業務に従事させることができ ます(消防法第 29 条第 5 項) 。加えて、救急隊員は緊急の必要があるときは現場付近に居 る者に救急業務に協力するよう求めることができると規定しています (消防法第 35 条の 7) 。 このように、当然と思っていたことが、実は法律で規定されているのです。危機管理主任 4級は、これらの事態において市民としての義務を果たすだけでなく、家族等の安全を守る ために必要な知識の普及を図り、いざという時にその知識を基に適切に行動出来る人作りを 目指しております。 公益社団法人 危機管理協会 テキスト・試験作成委員会 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 目 第1章 次 危機管理主任 7-6 避難時のポイント 48 1-1 何故、リーダーが必要か 7-7 避難時の服装とル-ル 49 1-2 危機管理主任の役割 7-8 地域の協力 49 1-3 危機管理主任に期待されるもの 第2章 第8章 1 災害を 災害を知る 避難所 8-1 避難所での活動 49 2-1 火災 2 8-2 避難所の整備 50 2-2 風水害災害 3 8-3 避難所の設備 50 2-3 地震災害 7 8-4 避難所の生活 51 2-4 津波災害 11 8-5 災害後のストレス 51 2-5 火山災害 11 第9章 2-6 雪災害 12 9-1 自助・共助・公助 52 2-7 大規模事故災害 13 9-2 家庭の防災会議 52 2-8 テロ災害 13 9-3 我が家の耐震チェック 53 9-4 備蓄食料等 54 9-5 非常用持ち出し品 55 第 3 章 国 ・地方公共団体、 地方公共団体、その他 その他の 関連団体 家庭での 家庭での防災対策 での防災対策 3-1 国・地方公共団体などの体制 15 9-6 安否確認 56 3-2 住民の体制 16 9-7 近所との連携 57 第 4 章 関連法律 第 10章 訓練、 訓練、その他 その他 4-1 消防法 17 10-1 訓練 59 4-2 災害救助法 17 10-2 自主防災組織への参加 59 4-3 災害対策基本法 17 10-3 ボランティアへの参加 60 4-4 国民保護法 18 10-4 その他 60 4-5 その他の関連法律 24 第 11章 第 5 章 各種対策・ 各種対策・行動 救命及び 救命及び応急措置 11-1 人が倒れている場合 61 5-1 火災対策 24 11-2 止血法 62 5-2 風水害対策 28 11-3 火傷 62 5-3 前兆現象(土砂災害) 31 11-4 骨折 63 5-4 地震対策 33 11-5 ねんざ 63 5-5 津波対策 43 11-6 皮膚の異常 63 5-6 火山対策 43 11-7 身体に火がついた場合 63 5-7 災害の種類 44 11-8 精神的ショック 63 11-9 傷の手当ての参考 63 第6章 救出・ 救出・救護 6-1 救出 44 11-10 AEDの使用 64 6-2 負傷者の運び方、注意点 45 11-11 トリア-ジ 65 6-3 要救護者への補助 45 第7 章 避難( 避難(一般災害、 一般災害、武力攻撃災害共通) 武力攻撃災害共通) 7-1 避難勧告と避難指示 46 7-2 避難圏域の設定 46 7-3 避難方法・経路 46 7-4 避難 47 7-5 帰宅 47 参考文献 2 67 第1章 危機管理主任(CMA: Crisis Management Authority) 1-1 何故、リーダーが必要か。 「船頭多くして、船山に上る」 、 「一人の愚将は、二人の 名将に勝る」などの名言があります。これは、人が多く 集まるところでは、その人の数が力になるのではなく、 どれだけ統制の取れた組織かどうかで、その組織力に大 きな差が出てくることを意味しています。異状な環境下 では、人々はパニック常態になり、個別の行動をとるこ とで生命の危険は増大します。その際に必要なのは、冷 静に状況を判断できるリ-ダ-と指示系統です。 私ども危機管理協会は、日頃から危険を察知して、その 危険からのリスクを排除していく事ができる人材を育 てることを目的にしています。 そして、いざという時に日頃の知識や訓練などを基に秩序正しく整斉と行動できる危機管理主 任(リーダー)を養成しています。 この危機管理主任は、次項で紹介するような力を大いに発揮してくれることでしょう。 もちろん、大勢でなく一人だけでも救えれば又は一つの危険から回避できれば、状況によって はそれだけでも成功なのです。 1-2 危機管理主任の役割り 米国で起きた「9・11 同時多発テロ」では、邦人を含む多くの方が犠牲になりました。その 標的となった世界貿易センタ-ビル内に事務所があったモルガン・スタンレー・ディーン・ウ ィッター社には、セキュリティー責任者としてリック・レスコラ氏が勤務していました。そし て、彼の働きにより、テロの犠牲者を奇跡的とも言えるほど極限することができました。 彼は、常日頃から、世界貿易センターのツイン・タワーはテロ攻撃には非常に弱いと考えてい ました。そのため、従業員に対して定期的にタワービルからの避難訓練を行っていました。 彼の予測が的中してしまったその日、レスコラ氏はいつものよう に、 午前4時 30 分に起きて、 妻にさよならのキスをして家を出、 マンハッタン行きの電車に乗りました。午前 7 時 30 分には、世 界貿易センターのサウス・タワー44階にある事務所で仕事に就 いていました。 最初の飛行機がノース・タワーに激突した時、当局のじっとして いるようにとの指示に反して、彼は自社の全ての従業員にサウ ス・タワーから避難するよう指示しました。ヴェトナムでの戦闘 経験を持つ退役軍人の彼は、手元のメガホンで指示を出して、世 界貿易センターから出るように命じたのです。専門的な能力と勇 気で、彼は吹き抜けの階段の下に居て従業員を二人ずつ避難させ ました。 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) その後、実行犯に乗っ取られた 2 番目の大型旅 客機が午前 9 時 07 分にサウス・タワーに衝突 する頃には、大部分の自社従業員はすでに避難 を完了し、一握りの行方不明者を残すのみでし た。そこで、レスコラ氏と 2 人の助手は、残り の者を探すためにビル内に戻ったのでした。し かし、燃え盛るタワーの 10 階で最後に目撃さ れて以降、彼は再び戻ることはありませんでし た。彼は、自分の命を代償にして何千もの命を 救ったのです。 いくつかの報告書では、彼は避難する従業員た ちを落ち着かせる為に、ヴェトナムで部隊士気 を高揚させたように愛国的な唄を歌いました。 「今日は、 アメリカ人であることを誇る日です」 と、彼は同僚らに言ったと言われています。 このことによってモルガン・スタンレー社は、大きな社会的信頼と人員の損失を免れるととも に経済的な恩恵を得ることができたのです。 生前、彼は港湾管理委員会官僚にツイン・タワーがテロ攻撃に弱いという先見性のある警告を したと報告されています。R.ジェームズ・ウールジー(CIA の元責任者)は、レスコラ氏を米 国の諜報活動に早急に必要な人材とみなしていました。また、彼はレスコラ氏を慣例打破主義 者、システムに対抗することを躊躇わない戦略的思想家であるとし、 「上級情報部門の一員に加 わっていれば、きっと素晴らしい働きをしたことでしょう。しかし、彼は組織上の地位といっ た事に関わらず、少なくとも 3,700 人もの尊い命を救いました。 」と語っていた。 ある程度の人数がいる地域、会社等においては、レスコラ氏のような人材が必要とされます。 彼のような勇気ある行動をとることはとても難しいのかもしれませんが、必要な知識と訓練を 積んでいれば、誰にでも出来る可能性はあります。 危機管理主任は、そうした志を持つ方のために公益社団法人危機管理協会が認定する、日本で 唯一の資格です。 1-3 危機管理主任に期待されるもの 危機管理主任は、日常から緊急時まで、危機を回避する能力とリーダーシップを発揮して一人 でも多くの生命、身体及び財産を守ったり、危険から回避する手助けを期待されています。 危機管理協会は、危機管理主任4級の上位の級として3級、2級及び1級も用意しています。 1級は、防火、防災、国民保護に関する最上位のスペシャリストであり、指導者です。 2級は、防火、防災、国民保護に関するスペシャリストであり、上級リーダーです。 3級は、防火、防災、国民保護に関する中級リーダーです。 4級は、防火、防災、国民保護に関する初級リーダーです。 なお、危機管理主任4級では危機管理全般の基礎的な能力の取得を求めており、上位級を目指 す方も全てこの4級の取得を必須要件としております。 1 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) コラム 平成 16 年新潟県中越地震(平成 16 年 10 月) 小千谷市50代男性 地震のショックで思考停止 ~声出す人がリーダーシップ~ 自衛隊のヘリが来るまでは、みんなで廃校になった 小学校のグランドに避難したんですけど、やっぱり ショックが大きくて、そこに行くにもだれかが先導 しないと動けないという状態でした。 声を出す人が 2 人くらいいないと絶対動けないんですね。何をどう 考えていいかわからないという感じ。だから、自分 と友達 2 人で、いったん村を捨てようという決断を皆にさせようと相談してから、「ここで寝 てくれ」とか指示をすると、全員いい子になってついてくるんです。人の思考回路というもの がなくなってしまったかのように。「それは結構怖いことだな」、「もし自分たちの判断が間 違っていたらとんでもない方向にいったかもしれないな」と、後で友達と話をしました。 その後 3 日目くらいからやっと個々に文句を言うようになってきました。「これは意識が戻っ てきたね」と。自分たちもしっかりしていたつもりなんだけど、相当変にはなっていたと思う んです。5 日目ぐらいになると皆さん自分の意思表示ができるようになったというか、「おま えらみたいなのに指図される筋合いはない」という声がいっぱい出てきて、これはもう大丈夫 だということで、村の区長さんたちにバトンタッチしました。 <内閣府(防災担当)> 第2章 災害を知る 2-1 火災 (具体的な対応は、第 5 章で説明します。 ) 地震の時、身の安全と同じくらいに大切なのが火の始 末です。普段ならば、火災が発生すると消防車が通報 によりすぐに来てくれますが、大地震の時にはそうは 行きません。地震の時こそ、家庭から火災を出さない ことが鉄則です。もし、出火したとしても慌てずに小 さな火のうちに消し止めること、つまり初期消火が重 要なポイントになります。そのためにも、消火器の備 え付け、使い方などを身につけておくべきです。ただし、初期消火がかなわずに炎が天井に達 するまでになってしまったならば、自分の身を守るためにも避難することが大切です。 2-1-1 本当に怖いのは火より「煙」 火災において、火が恐ろしいのは言うまでもありません。しか し、本当に恐ろしいのは「煙」です。火災での死者の多くは、 煙で亡くなっています。 ・ 精神的な影響 火炎の中では視界がさえぎられ、真っ暗やみの中にい るのと同じ状態になります。そして、火災という日常 とは違う恐怖も重なり、精神的なパニックを起こす危 険性があります。 2 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) ・ 身体的な影響 煙の成分でもある、不完全燃焼によって発生する一酸化炭素等により中毒を起こしま す。この煙を吸い込むことで呼吸困難を起こし、身体の自由が利かなくなることがあ ります。また、熱せられている煙を吸い込むと、気道や肺が熱傷を受けて、呼吸困難 になります。 このため、万一火事に遭遇した場合には、先ずは初期消火を行ってください。そして 避難する場合には、慌てずに、煙を吸い込まないよう、ハンカチやタオルなどで口元 を覆って行動することが大切です。また、火災現場付近に在る者は、延焼の防止又は 人命の救助に協力しなけれ ばならないと消防法で定められています(消 防法第 25 条第 2 項) 。 2-1-2 消火方法 消火の3要素は、次のとおりです。 ① 酸素の遮断 ② 燃える物の除去 ③ 燃焼物の冷却です。 2-2 風水害災害 (具体的な対応は、5-2 で説明します。 ) わが国は地形が急峻であり、梅雨前線や台風による豪雨も多く、流域面積の割に大きな流量の 洪水が短時間のうちに発生するという特徴を持っています。 災害をもたらす雨の降り方として、 ① 狭い地域に短時間に強く降る ② 何日も降り続く ③ 降り続いて、集中豪雨となる この 3 つのパタ-ンがあります。 過去の大災害の多くは、③の時に発生しています。このパ ターンは、梅雨前線、秋雨前線が停滞している6月から 10月頃、特に、前線が停滞している時に台風が接近する と集中豪雨が発生しやすくなります。2000年の東海水 害、2004年の台風23号による水害などが、まさにこ れにあたります。 一般的に、熱帯や亜熱帯の海洋上で発生する低気圧を「熱 帯低気圧」と呼びます。また、北西太平洋で発生した熱 帯低気圧が発達し、最大風速が毎秒17.2m以上になった ものを「台風」と言います。台風は、上空の風に流され て動き、また地球の自転の影響で北へ向かう性質を持っています。そのため、通常、台風は東 風(貿易風)が吹いている赤道付近の低緯度地方では西へ移動しながら次第に北上し、上空で 強い西風(偏西風)が吹いている中・高緯度地方に来ると、今度は速い速度で北東へ進みます。 そして、日本へ接近または上陸するのです。 台風は、大雨に加え強風をもたらします。北半球では、進行方向に対して右半円において、台 風の風の回転速度と台風の進行速度が相俟って、特に強い風が発生するため危険半円と呼ばれ 3 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) ています。ただし、左半円でも暴風が吹いていることには変わりがないので注意が必要です。 また、海面の水温が上昇すると台風の中心気圧が低下する、いわゆる台風が発達して勢力が大 きく強くなります。この台風や強い低気圧の接近と満潮が重なると、高潮が発生します。この 高潮では、満潮で海面の水位が高くなっているところに低い気圧により海面が吸い上げられ、 さらに強風によって海水が吹き寄せられて海水面が異常に上昇し、 防波堤を越えて海水が流入 る場合があります。特に、南に開いた湾の西側を台風が通過すると、危険半円(台風の進行方 向の右側)の風が湾の奥に向かって海水を吹き寄せるような効果が大きくなるため、より高 い高潮が発生することになるので注意が必要です。 2-2-1 大雨 ① 集中豪雨は、この様な時に発生します。 ・ 日本付近に前線が停滞している時 (特に梅雨期の終わり頃) 。 ・ 台風が日本へ近づいたり上陸した時 ・ 大気が不安定な状態が続き、次々と雷 雲がしている時。 ② 集中豪雨が起こると、 ・ 川の水かさが急に増えたり、氾濫した りする。 ・ 床下、床上浸水が起こる道路が冠水する。 ・ 排水溝や下水管で処理が出来ない水が、地下街や地下室へ流れ込む。 ・ 地盤がゆるみ、土石流やがけ崩れが発生する場合があります。 <1 時間の雨量と降り方> 1 時間の雨量 雨の降り方 10~20 ミリ ザーザーと降り:雨音で話し声が良く聞こえない 20~30 ミリ どしゃ降り:側溝や下水、小さな川があふれる 30~50 ミリ バケツをひっくり返したように降り:道路が川のようになる 50~80 ミリ 滝のように降る:土石流が起こり易い、車の運転は危険。 80 ミリ以上 雨による大規模な災害発生の危険があり、厳重な警戒が必要 気象庁資料から 2-2-2 台風 日本列島は、毎年多数の台風が接近又は上陸し、大 雨により度々大きな被害にあっています。台風情報 に注意して被害が出ないように備えましょう。 台風の大きさは「風速 15m/s(メートル/毎秒)以 上の半径」 、強さは「最大風速」で表されます。 気象庁資料から 4 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) <風と被害> 風速 10~15m/s 風速 15~20m/s 風速 20~25m/s 風速 25~30m/s 風速 30m/s~ 傘がさせない 風に向かって歩けない しっかり身体を確保しないと転ぶ 立っていられない。ブロック塀が倒れる 屋根が飛ばされたり、木造住宅が壊れる 気象庁資料から <台風の大きさと階級分け> 階 級 風速 15m/s 以上の半径 大型(大きい) 500km以上 800km未満 超大型(非常に大きい) 800km以上 気象庁資料から <台風の強さと階級分け> 階 級 最大風速 強い 33m/s 以上~44m/s 未満 非常に強い 44m/s 以上~54m/s 未満 猛烈な 54m/s 以上 気象庁資料から 2-2-3 竜巻 2-2-3-1 竜巻とは 竜巻とは、積乱雲の下で地上から雲へと細長く延びる、 上昇気流を伴った高速の渦巻きをいいます。地上で強い 竜巻が発生すると、暴風によって森林や建物などに甚大 な被害をもたらすことがあり、災害をもたらす典型的な 気象現象の一つとされています。突風の一種ですが、規 模が小さく寿命が短い割に猛烈な風を伴うのが特徴です。 2-2-3-2 竜巻注意情報 竜巻注意情報は、積乱雲の下で発生する竜巻で、ダウンバースト等による激しい突風に 対して注意を呼びかける情報で、雷注意報を補足する情報として、各地の気象台等が担当 地域(概ね一つの県)を対象に発表します。有効期間を発表から 1 時間としていますが、 注意すべき状況が続く場合には、竜巻注意情報を再度発表します。 この情報は、 防災機関や報道機関に伝達されるとともに気象庁ホームページの 「気象情報」 ページでも通報され ます。 また、これまで提供しているレーダー・降水ナウキャストに加え、雷ナウキャスト及び竜 巻発生確度ナウキャストの提供を開始しています。ナウキャストは、気象レーダーなどを 利用して最新の観測データを処理し、1 時間先までのきめの細かい予報を発表するもの です。このような手法は、竜巻・雷・局地的な大雨のように、突然発生する局地的な現象 を予測するのに適したためです。 5 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 発生確度2 発生確度1 予測の適中率は 5~10%程度、捕捉率は 20~30%程度です 発生確度 2 となっている地方(県など)には、竜巻注意情報が発表されま す。 予測の適中率は 1~5%程度と発生確度 2 の地域よりは低いですが、捕 捉率は 60~70%程度と見逃しが少ない特徴があります。 気象庁資料から 2-2-4 雷 2-2-4-1 雷とは 雷とは、帯電した雲の中、雲と雲の間、又は雲と地面と の間に起きる光と音を伴う大規模な放電現象を言います。 2-2-4-2 雷情報 これまで提供しているレーダー・降水ナウキャストに加 え、雷ナウキャスト及び竜巻発生確度ナウキャストの提供を開始します。ナウキャスト は、気象レーダーなどを利用して最新の観測データを処理し、1 時間先までのきめの細 かい予報を発表するものです。このような手法は、竜巻・雷・局地的な大雨のように、 突然発生する局地的な現象を予測するのに適したためです。 活動度4 活動度3 活動度2 激しい雷 やや激しい雷 雷あり 活動度1 雷可能性あり 落雷が多数発生 落雷がある。 電光が見えたり雷鳴が聞こえる。落雷の可能性が高くな っている。 現在は雷は発生していないが、今後落雷の可能性があ る。 気象庁資料から 2-2-5 山崩れ・がけ崩れ (具体的な対応は、5-1-2-5 で説明します。 ) 台風や大雨が続くと、山崩れ・がけ崩れが起き やすくなります。がけ崩れは、地面にしみ込ん だ水分が土の抵抗力を弱め、斜面が突然崩れ落 ちる現象を言います。これらの斜面は一瞬で崩 れるため、逃げ遅れる人も出て被害が大きくな ります。がけ崩れの恐れのある危険地帯では、 普段からの避難の心構えとがけ崩れに対する 警戒が必要です。また、山間部の渓流や沢では、 土石流が起こりやすくなります。土石流は、谷 や斜面にたまった土、石、砂、時には山崩れの 土砂などが大雨による水と一緒に一気に下流 へ流れ出す現象です。昔から「鉄砲水」とか「山津波」などと言われています。その破壊力 は大きく、流れる速度も速いため、渓流などの出口に人家などがある場合は大きな被害をも たらします。 6 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 2-2-6 土砂災害 (具体的な対応は、5-3で説明します。 ) 土砂災害には、崖崩れ、土石流、地すべりの3 つの形態があります。いずれも、大雨、融雪、 地震などをきっかけとして多く発生します。そ の発生の時期、 規模は、個々の斜面の地質、 地形、植生、降雨条件、水理条件、地震動など に大きく依存しており、どの程度の降雨、地震 等で土砂災害が発生するかは、斜面ごとに検討 する必要があります。土砂災害の危険がある区 域は、国土交通省によってそれぞれ「急傾斜地 崩壊危険箇所」、「土石流危険渓流」、「地す べり危険箇所」として指定され、注意が促されています。これらの危険箇所を総称して「土 砂災害危険箇所」と呼び、現在、日本全国に数十万箇所も存在しています。 自然現象に起因する災害の危険度を示した地図をハザードマップ言います。また、被災地域 への財政援助や被災者への助成が特に必要となる大きな災害を、激甚災害と言います。 その激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律により適用される制度を激 甚災害制度と言います。さらに、災害直後の応急的な生活の救済などについて若しくは被災 者の保護と社会の秩序の保全を図るための法律が災害救助法です。 都道府県知事及びその職員は、救援を要する者及びその近隣の者に救援する業務の協力を依 頼することができます(災害救助法第 25 条、国民保護法第 80 条) 。 2-3 地震災害 (具体的な対応は、5-4-1 で説明します。 ) 2-3-1 地震の仕組み 私たちが住む地球全体の表層は、 10 数枚のプレート (板 状の硬い岩石)で覆われています。ちょうど、殻にひび が入った「ゆで卵」のような 状態です。 それらのプレー トは、その下にある マントル内の流動しやすい層の上 を、一年に数センチずつ移動しています。このプレート は、互いにぶつかり合ったり、一方がもう一方の下に沈 み込んだりしています。この沈み込む時に出来たが海溝 で、地震はその周辺で多発しています。日本列島は、大 陸のプレート(ユーラシア・プレート、北米プレート) と、海洋のプレート(太平洋プレート、フィリピン海プ レート)が押し合う、いわゆる、地震の巣の上に位置し ています。そのため、これまでも数多くの地震災害に見 舞われて来ました。地震は、その発生のしくみによって、 「プレート境界型地震」と「プレート内地震」とに分け られます。 プレート境界型地震は、大陸のプレートの下に海洋のプ レートが沈み込む際に、海洋側のプレートに引きずられて沈下していた大陸側のプレート が耐えきれず反発し、プレート境界面上の断層が破壊することによって発生します。 まさに、今世紀前半で発生が危惧されている、南海・東南海・東海地震、宮城県沖地震が、 7 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) こ れに当たります。巨大地震が発生することが多く、被害が広域にわたる。歴史的にも大 きな被害をもたらしたことが記録に 残っており、東海 ・東南海 ・東海地震は 100~150 年周期で、宮城県沖地震は約40 年周期で発生することがわ かっています。 一方、プレート内地震は、互いに押し合い大きな力がかかっているプレート内部の弱い部分 (断層)が破壊(断層運動)することによって発生します。兵庫県南部地震(1995年)、 新 潟県中越地震(2004年)がこれに当たります。地震そのものの規模はプレート境界型地震と 比べて小さいですが、都市の直下で起こった際には、局地的に激震を起こし、非常に大きな 被害をもたらします。 なお、日本全国には、陸地部分で約 2,000 か所の活断層が確認されています。活断層とは、 将来、これが活動して地震を引き起こす可能性のある断層のことですが、これらプレート内 地震の周期は 1,000 年を超えると見られることから、歴史的に記録が残り難いため、次に いつ起こるかの見通しを持つことは難しいとされています。 2-3-2 マグニチュードと震度の関係 マグニチュードと震度の関係は、電球の明るさと机の上の明るさとの関係に例えられます。 同じ電球からの光でも、机からどのくらい離れているかで、机の上の明るさは変わってきま す。つまり、マグニチュード(電球の明るさ)とは、地震そのもののエネルギーの大きさを表 す数字であり、震度(机の上の明るさ)とは、地震による各地の揺れの程度を表す数字です。 また、地盤の質の違いにより、震度の大きさは左右されます。 さらに、マグニチュードの値が同じ地震であっても、震源が近ければ震度は大きく、震源が 遠ければ震度は小さくなります。 震度 0 震度1 震度 2 震度 3 震度 4 震度 5 弱 震度 5 強 震度 6 弱 震度 6 強 震度 7 人は揺れを感じない。 屋内にいる人の一部が和すかな揺れを感じる。 屋内にいる人の多くが揺れを感じる。つり下がっている電灯などが和すかに 揺れる。 屋内にいるほとんどの人が揺れを感じ、棚の食器が音をたてることがある。 眠っている人の殆どが目を覚ます。部屋の不安定な置物が倒れる。歩行中の 人も揺れを感じる。 家具の移動や、食器や本が落ちたり、窓ガラスが割れることがある。 タンスなど重い家具や、外では自動販売機が倒れることがある。自動車の運 転は困難。 立っていることが難しい。壁のタイルや窓ガラスが壊れ、ドアが開かなる。 立っていられず、はわないと動くことができない。重い家具のほとんどが倒 れ、戸が外れて飛ぶ。 自分の意思で行動できない。大きな地割れや地すべり、山崩れが発生する。 気象庁震度階級関連解説表より作成 2-3-3 液状化現象 液状化現象とは、地震の発生などが原因で、土壌の砂質地盤が水で飽和して液体のようにな る現象です。砂混じりの水が地下から噴き出して軟弱地盤になったり、地面が沈んだりして 大きな被害をもたらします。 8 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) この液状化現象は ・ 地盤の軟らかい場所 ・ 昔河川であった場所 ・ 海岸の埋立地 などの、地下水位が高く、土粒子が細かくて均一、土砂の締め固め不足という3条件が整う 場所などで発生します。 2-3-4 地震に関する情報―1 ① 震度速報・津波予報 地震発生から約 2 分以内に震度 3 以上を観測した地域名がテレビ等で「震度速報」とし て発表されます。津波が予想される時は、震度速報に続いて発表されます。 ② 地震情報 震源位置、規模、震度 3 以上の地点を発表します。 ③ 各地の震度に関する情報 震源、規模及び各地の震度 1 以上の震度観測点を発表します。 2-3-5 地震に関する情報―2:緊急地震速報 最大震度 5 弱以上と推定された地震の際に、強い揺れ(震度 4 以上)の地域の名前を、強 い揺れがくる前に知らせる情報です。 地震が発生すると、震源付近から周囲に向かって初期微動(P 波:カタカタ揺れる波、)に 続いて、遅れて主要動(S 波:ユサユサと揺れる波)が広がっていきます。緊急地震速報は、 P 波(秒速およそ 7km)と S 波(秒速およそ 4km)の速度差を利用して地震の規模をす ばやく予測し、最大震度 5 弱以上の揺れが予測される場合に発表されます。強い揺れが始 まる数秒~数十秒前にそれを知らせる、新しい情報です。想定されている「東海地震」では、 速報からS波到達までに静岡で約10 秒、 東京で約40 秒の余裕時間があるとされています。 気象庁は、平成 19 年 10 月から「緊急地震速報」の一般への配信を行っています。一般向 けの速報はテレビ、ラジオ、一部の自治体では防災行政無線などを通じて配信されます。 また、携帯電話のサービスや電話回線などを通した専用の端末を設置して受信することもで きます。鉄道や地下街をはじめとした公共施設や学校、会社や工場などの事業所でも、緊急 地震速報を受信し、地震に備える体勢が進められています。源に近い地域では、緊急地震速 報が間に合わない場合があります。しかし、たとえ数秒前であっても地震の揺れが来ること を知り、正しい対応をとることができれば、被害を大幅に軽減することができます。 ※ 地震警報装置と連動したシステムを「Jアラート」と言います。 9 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 2-3-5-1 緊急地震速報が出たら 緊急地震速報は、見聞きしてから強い揺れが来るまで数秒から数十秒しかありません。 その短い時間に、すばやく身を守るための行動をとりましょう。 ① 自宅では ・頭を保護し丈夫な机の下などに隠れます。 ・ あわてて外に飛び出さない。 ② 外出先では ・ 係り員や上司・先生などの指示に従います。 ・ 落ち着いて行動し、あわてて出口に走り出さない。 ③ 歩いている時は ・ ブロック塀などの倒壊に注意します。 ・ 看板や割れたガラスの落下に注意し、ビルの側から離れま す。 ④ 自動車に乗っている時は ・ あわててブレーキをかけない。 ・ ハザートランフを点灯させ、揺れを感じたらゆっくり停止 します。 ⑤ 余裕があれば ・ 火の始末はすばやく。 ・ ドアや窓を開けて、逃げ道を確保します。 10 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 2-3-5-2 緊急地震速報はどうすれば聞けます ① テレビやラジオによる放送 平成 19 年 10 月 1 日より放送しています。 ② 携帯電話による受信 一部の携帯電話各社により配信されます。詳しくは携帯会社へお問合せ下さい。 2-4 津波災害(具体的な対応は、5-5で説明します。 ) 海底の下の浅い所で大きな地震が起こると、断層の運動により海底の地盤が隆起したり沈降 したりします。この 海底の変形に伴って海面が変動し、あたかも、池に石を投げ入れた時の ように「波」となって 四方に広がって行きます。これ が津波です。 この津波の伝わる速さは、海の深さにより異なり、海が 深いほど速くなります。その速さは、沖合ではジェット 機並み、陸に近づいてからも新幹線並みの速さで伝わっ て行きます。ですから、海岸などで津波を見てからでは とても逃げ切れません。海岸付近で強い揺れを感じた場 合や、揺れは小さくとも長い時間ゆっくりした揺れを感 じた場合には、直ちに海岸付近から離れなくてはなりま せん。 さらに、津波の高さは海岸付近の地形でも大きく変化し ます。津波が河川を速いスピードで逆流し、V 字や U 字湾のような特殊な地形の場所では、その高さは局地的 に高くなることがありますので、特に注意が必要です。 また、プレート境界型地震が発生する際には、多くの場 合、大規模な海底の変形が伴いますの で津波が発生し、 大きな被害をもたらします。日本近海以外の海で発生し た地震による津波で も、チリ地震(1960年)のように、 津波が日本まで伝播し、大きな被害をもたらした例もあ ります。「ゆっくり地震」と呼ばれる断層運動がゆっく り発生する地震では、地震による揺れがそれほど大きく ないにもかかわらず、大規模な津波を発生させる場合が あります。地震発生に伴って避難する場合、避難勧告に 基づき、予め指定された避難所に避難します。 2-5 火山災害(具体的な対応は、5-6で説明します。 ) 2-5-1 火山の仕組み 日本列島は、プレートとプレートの境界付近に位置しているため、火山活動も活発です。火 山噴火とは、火口から高温のマグマ物質や、既存の火山体とその基盤を構成していた岩石の 破片、火山ガスを放出する現象を言います。気象庁火山噴火予知連絡会は、「概ね過去1万 年以内に噴火した火山および現在活発な噴火活動のある火山」を活火山と定義しています。 現在、わが国には、108個 の活火山があります。そのうち、13個の活火山については、特 に重点的に観測研究を行うべき火山として、また、24個 の活火山が「活動的火山および潜 11 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 在的爆発活力を有する火山」に指定されています。火山には、その噴火 の周期性がはっきりしているものもあります。例えば、北海道の有珠山 は概ね30年周期で、伊豆大島は概ね33~38年周期で、三宅島は概ね 20年周期でそれぞれ噴火していると言われています。 これら火山の噴火活動に伴って、次のような現象が発生します。 火 砕 流:高温のガスと火山灰・軽石等が山腹をなだれ下る現象 火山泥流:噴火による火口湖の決壊や融雪などにより発生した泥水が流 れ下る現象 津波 :噴火に伴う山腹の崩壊で生じた土石が海に流入し、海底火山 で大規模な噴火が発生した時に発生する現象 2-5-2 火山災害の種類 ① 噴石 爆発的な噴火によって岩石が吹き飛ばされることがあります。小さな噴石でも、体に直 接当たると大怪我をする危険性があるため、噴火口から 2km以上離れるか、頑丈な建 物の中に避難しましょう。 ② 溶岩流 溶岩流とは高温の溶岩(マグマ)が斜面を流れて下る現象です。溶岩流が沼地や川に流 れ込むと激しい二次爆発を引起すこともあります。 ③ 火砕流 火砕流とは数百度の岩石やその破片が、斜面を高速で流れ下る現象です。火砕流の特徴 は、極めてスピードが速いことで、遅いものでも時速 100km~200kmに達します。 ④ 火山・火山泥流 噴火によってマグマや溶岩が細かく砕けたものが、火山灰として風に運ばれて飛んでき ます。降り積もった火山灰は、雨が降ると土石流のようになって流木などを巻き込みな がら下流に流れることがあります。 ⑤ 火山ガス 火口や麓では、地面から有毒な「火山ガス」が噴出すことがあります。火山ガスの中に は臭いがないものも あるため、火山ガスが溜まり易い低地などには、注意看板などが設 置されています。そのような看板を見か けたら、近づかないようにしましょう。 2-6 雪災害 (具体的な対応は、5-2-7で説明します。 ) 2-6-1 なだれの仕組み 雪害は、豪雪地域、特に山間部で過す際に注意すべき災害 で、雪崩の発生するおそれのあ る箇所は「雪崩危険箇所」に指定されています。雪崩は時速 100~200kmものス ピ ードで斜面を下ってくるため、危険を感じたら直ぐに避難しくなければなりません。降雪や 降雨の後、天気が良く気温が 上がったときや、 気温が低く古い雪の上に多量の新雪が積もっ た時などに発生し易くなります。 「雪崩危険箇所」付近に住んでいる場合、レジャーでスキ ー場や観光施設、冬山登山などに出かける際は十分に注意しましょう。 12 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 2-6-2 除雪時の事故 記録的な大雪に見舞われた「平成 18 年豪雪」の際には、152 名もの方が亡くなりました。 その約 4 分 3 は除雪作業中の事故が原因でした。降雪量がそれほどでない時でも、除雪作 業中の事故で多くの死者・負傷者が発生しており、除雪作業の際には安全への十分な注意が 必要です。 2-7 大規模事故災害(石油コンビナート、原子力発電所、高速鉄道など) 大規模な工場、石油コンビナート、原子力発電所、高速交通機関などは、高度な科学技術を用 いて現代の日本社会に必要不可欠なものとなっています。しかし、それらの生産過程では、高 エネルギー、有害物質が扱われており、ひとたび事故が発生すると社会に多大な被害をもたら すことになります。1985年の日本航空機の御巣鷹山墜落事故、1999年の東海村JOC臨界事 故、2005年のJR福知山線脱線衝突事故などがこれに当たります。 また、これらの産業は、社会に与えるインパクトの大きさからテロの対象となる可能性も高い と考えられています。わが国の社会・経済 活動は、これらの産業に大きく依存してお り、この種の災害誘因のリスクを完全に回 避することはできません(国民保護法第 8 章:緊急対処事態に対するための措置)。 2-8 テロ災害・武力攻撃災害など 2-8-1 緊急対処事態(テロ事案) 武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて 多数の人を殺傷する行為が発生した事 態又は当該行為が発生する明白な危険 が切迫していると認められるに至った 事態で、国家として緊急に対処することが必要な事態を言います。なお、緊急対処事態は、 後日、武力攻撃事態であると 認定される事態を含んでいます(国民保護法第 8 章:緊急対 処事態に対するための措置) 。オウムサリン事件は、記憶に新しいところです。 2-8-2 武力攻撃事態の類型ごとの特徴 武力攻撃事態の想定は、武力攻撃の手段、その規模の大小、攻 撃パターンなどにより異なることから、どのようなものとなる かについて一概には言えません。国民の保護に関する基本 指 針においては、国民の保護のための措置の実施に当たって留意すべ き事項を明らかにするため、以下の 4 つの類型を想定しています (国民の保護に関する基本指針) 。 ① 着上陸侵攻の場合 ② 弾道ミサイル攻撃の場合 ③ ゲリラ、特殊部隊による攻撃の場合 ④ 航空攻撃の場合 13 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 2-8-3 攻撃対象施設等による分類 ① 危険性を内在する物質を有する施設等に対する攻撃が行われる事態の例 ・ 原子力事業所などの破壊大量の放射性物質などが放出され、周辺住民が被ばくし、 また汚染された飲食物を摂取した住民が被ばくします。 ・ 石油コンビナート、可燃性ガス貯蔵施設などの爆破、爆発、火災の発生により住民 に被害が発生するとともに、建物やライフラインなどの被災により、社会経済活動 に支障が生じます。 ② 多数の人が集合する施設及び大量輸送機関等 に対する攻撃が行われる事態の例 ・ 危険物積載船などへの攻撃 危険物の拡散により沿岸住民への被害が 発生するとともに、港湾や航路の閉塞、海 洋資源の汚染等、社会経済活動に支障が生 じます。 ・ 大規模集客施設、ターミナル駅などの爆破 による人的被害が発生し、施設が崩壊した 場合は被害が多大なものとなります。 2-8-4 攻撃手段による分類 ① 多数の人を殺傷する特性を有する物質等による攻撃が行われる事態の例 ・ ダーティボムなどの爆発爆弾の破片や飛び散った物体による被害、熱や炎による被 害などが発生し、放射線によって正常な細胞機能が攪乱されると、後年、ガンを発 症することもあります。 ※ダーティボム:放射性物質を散布することにより、放射能汚染を引き起こすことを意図した爆弾 ・ 生物剤の大量散布 人に知られることなく散布することが可能です。ま た、発症するまでの潜伏期間に、感染した人々が移 動し、後に生物剤が散布 されたと判明した場合 には、既に広域的に被害が発生している可能性があ ります。ヒトを媒体とする生物剤による攻撃が行わ れた場合には、二次感染により被害が拡大すること が考えられます。 ・ 化学剤の大量散布 地形・気象などの影響を受けて、風下方向に拡散し、空気より重いサリンなどの神 経剤は下をはうように広がります。化学剤が用いられた場合、口と鼻をハンカチ等 で覆い、その場から直ちに離れることです。 シャワーを浴びることが可能な環境の 場合、流水 で体を洗ってください。感染方法は、 □ 呼吸器系 □ 粘膜系 □ 皮膚系に分かれます。 14 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) ② 破壊の手段として交通機関を用いた攻撃等が行われる事態の例 航空機などによる自爆テロ爆発、火災などの発生により住民に被害が発生するととも に、建物やライフラインなどが被災し、社会経済活動に支障が生じます。 ※ 身の回りで爆発が起こった場合、警報の有無にかかわらず、姿勢を低くして、身の安全を確保することが大事です。 第3章 国・地方公共団体、その他の関連団体 3-1 国・地方公共団体などの体制 消防法、災害救助法、災害対策基本法及び国民保護 法により、 国、 地方公共団体が法律の定めに従って、 それぞれ役目を果すよう義務付けています。 3-1-1 内閣 内閣総理大臣は、それぞれの大規模な災害及び武 力攻撃災害に応じて対策本部を設置し、その長となり指定行政機関及び地方公共団体の長と の調整を実施しながら、災害のあらゆる対応に対処します。また、必要に応じて内閣総理大 臣として是正措置をとります。 3-1-2 指定行政機関 指定行政機関とは、中央省庁(内閣府、総務省等) 、外局の一部を指します。 具体的には、内閣府、国家公安委員会、警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、消防庁、法 務省、外務省、財務省、文化科学省、文化庁、厚生労働省、経済産業省、資源エネルギー庁、 原子力安全・保安院、中小企業庁、国土交通省、国土地理院、気象庁、海上保安庁、環境省、 防衛省です。 3-1-3 指定地方行政機関 指定地方行政機関とは、地方支部局(管区警察局、地方整備局等)と指します。 具体的には、沖縄総合事務所、管区警察局、総合通信局、沖縄総合通信事務所、財務局、水 戸原子力事務所、地方厚生局、都道府県労働局、地方農政局、北海道農政事務所、森林管理 局、経済産業局、産業保安監督部、沖縄産業保安監督事務所、地方整備局、北海道開発局、 地方運輸局、地方航空局、管区気象台、沖縄気象台、管区海上保安本部、地方環境事務所、 地方防衛局です。 3-1-4 地方公共団体 都道府県、区市町村を指します。 3-1-5 指定公共機関 指定公共機関とは、独立行政法人、日本赤十字社、放送、道路、電気、ガス会社、輸送会社 等を指します。 (事態対処法第 2 条第 6 項、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立 並びに国及び国民の安全の確保に関する法律施行令第 1 条、第 2 条、第 3 条) 国や地方公共団体と協力して、国民保護措置を実施する機関のことをいいます。日本赤十字 社や日本放送協会(NHK)等の公共的機関や、電気、ガス、輸送、通信などの公益的事業 を営む法人が指定されています。これらの機関は警報の放送、避難住民の運送や緊急物資の 15 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 運送などの役割を果たします(事態対処法第 2 条第 6 項、武力攻撃事態等における我が国 の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律施行令第 3 条)。 3-1-6 指定地方公共機関 各都道府県にある公共機関(一般会社を含む)に対して、各都道府県が指定する業者を指し ます。したがって、それぞれの各都道府県毎に異なります。 3-2 住民の体制 消防法、災害救助法、災害対策基本法及び国民保護法により、近くに居合わせた者、市民、国 民或は住民によって構成される自主防災組織やボランティアに対して協力するよう要請してい ます。 3-2-1 自主防災組織 (具体的な活動内容については第 6 章、第 10 章参照) 大規模災害発生時には、消防などの防災機関だけでは対応できないことが予期されます が、このような場合に必要とされる地域の市民の組織力が、自分たちの町は自分たちで 守るための自主防災組織です。消防等が到着する前に、自主防災組織が優先して行うべ きことは瓦礫の下に埋もれた人を助け出す「人命救助」です。同様に、市町村が自主防 災組織等に対して事前に行うべき訓練にはどのようなものがあるでしょうか。そうです、 瓦礫の下から人を助け出す、救出訓練があります。このような自主防災組織活動におい て、閉じ込められている人、孤立している人の救助に有効な道具は、スコップやバール、 ハンマーなどです。特に、倒壊した家の下敷きになった人を救助するのに有効な道具は、 ハンマー・かなづち、 斧、のこぎり、スコッ プ等です。 ちなみに、 公益社団法人 危機管理協会は、全国 の災害の発生等に際し て積極的に市民が 対処するための人を育 て物を準備等するため に日本で初めて承認さ れた公益法人です。 したがって、自主防災 組織の方々に危機管理 主任を取得して頂くこ とは、各活動を更にレ ベルアップして備える ことができると考えています。 3-2-2 ボランティア活動 日本赤十字社、公益社団法人危機管理協会をはじめ数々の NPO で災害に対する支援を 行っています。物資を援助するところから、医師を始めとする医療援助、自らできるこ 16 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) とを積極的に奉仕しようとするボランティア活動などがあります。危機管理主任は、自 ら奉仕するボランティアを効率的に活動してもらうためにリーダーシップを発揮して、 ボランティアをまとめる日本で唯一の資格です。 第4章 関連法律(抜粋は、練習問題編を参照してください。 ) 4-1 消防法 消防法(昭和 23 年 7 月 24 日法律第 186 号)は、 「火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の 生命、 身体及び財産を火災から保護するとともに、 火災又は地震等の災害に因る被害を軽減し、 もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資すること」 (1 条)を 目的とした法律 です。消防本部における消防吏員及び消防団の消防団員の職務についても定めています。 4-2 災害救助法 災害救助法は、災害直後の応急的な生活の救済などを定めた法律です。本法は、災害に際して、 国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、応急的に必要な救助を 行い、災害にかかつた者(罹災者)の保護と社会の秩序の保全を図ることを目的としています。 4-3 災害対策基本法 この法律は、1959 年に紀伊半島一体に大きな災害をもたらした伊勢湾台風を契機に制定され ました。災害から国土、国民、身体及び財産を保護するため、国、地方公共団体及びその他の 公共機関に責任の所在を明確にし、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧及び 防災に関する財政金融措置などの災害対策の基本を定めました。 4-3-1 災害対策基本法の適用 住民は、自ら災害に備えるための手段を講ずるとともに、自発的な防災活動に参加する等防 災に寄与するように努めなければなりません(災害対策基本法第 7 条第 2 項) 。 この法律の規定によって内閣総理大臣が指定した機関(指定行政機関、指定地方行政機関、 指定公共機関)は、災害発生時にそれぞれの職域の責任を果たす義務が課せられました。 災害対策本部が救援活動を効率的に行うためには、災害対策本部内を各部・班に細分化し、 権限の分散化を図るのが良い方法です。 また、被災時に各都道府県が複数指定する災害医療の中核となる病院を、災害拠点病院と言 います。さらに、市町村は、災害時に医療支援者を指定し、医薬品の確保など必要な援助を 行います。 ※ 指定行政機関とは、中央省庁(内閣府、総務省等) 、外局の一部を指します。 ※ 指定地方行政機関とは、地方支部局(管区警察局、地方整備局等)と指します。 ※ 指定公共機関とは、独立行政法人、日本赤十字社、放送、道路、電気、ガス会社、輸送会社等を指します。 (事態対処法第 2 条第 6 項、武 力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律施行令第 1 条、第 2 条、第 3 条) 被害状況に基いて、被災者である住民の生活再建や地域の復旧、復興計画が決定されます。 被災地に設けられる対策本部が、復興に必要なこれらの見積もり等も行います。また、これ らの復興には長期間必要となることから、復興を効率的に行うために対策本部は復興に際し ては地域外の外部の協力を活用することが大切であり、対策本部が収集した情報に基づき、 必要な機能の確認及び人員の差出計画が立案されます。 さらに、市町村から受けた被害報告により、都道府県が基準に照らした上で被災地の被害状 況により、災害救助法の適用が検討されます。 17 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) なお、災害時の救助費用の援助は清算方式なので、領収書を始め、活動中の細かい記録をと っておくことが大事です。また、災害で死亡した場合には災害弔慰金が支給され、災害で負 傷等した場合には、その程度によって災害障害見舞金が支給されます。行政機関は、効率的 な復興のため被災住民に被害に応じた支援制度の紹介と活用等を示唆することです。 ちなみに、住宅が持つ居住のための基本的機能を喪失したものを「全壊」 、その一部を喪失 したものを「半壊」としていますが、これを規定している法律は、被災者生活再建支援法で す。そして、住居の被害調査の結果に基づき、固定資産の課税台帳や住民基本台帳と照合し ながら整理し作成されるのは「り災台帳」として整理記録されます。 4-3-2 防災計画 国は、中央防災会議により作成された防災基礎 計画を指定行政機関、指定地方行政機関、地方 公共団体に公表します。これに基づいて、それ ぞれの組織は、各担当区域毎の防災計画を作成 します。 ※ 地方公共団体とは、都道府県及び区市町村を指します。 4-3-3 災害対策基本法と国民保護との相違点 災害対策基本法は、主に自然、大規模災害を想定して法制化されました。一方、国民保護法 は、武力攻撃事態等を想定して法制化されています。対象となる範囲として、災害対策基本 法は同一都道府県内又隣接都道府県内を想定しているのに対して、国民保護法では複数又は 同時に広範囲にわたる都道府県を想定しています。また、災害対策の主体は当該都道府県で すが、武力攻撃事態等の主体は、一元的に国が管理するようになっています。対象が根本的 に異なる対応に関する法律ですが、相互に関連する事項が数多くありますので、ここでは良 く知られていない国民保護に重点をおいて話を進めていきます。また、条項の表示について は、必要最小限度に留め、理解して頂く事に重点を置くこととします。 ※ 武力攻撃事態等とは、我が国に対する組織的、計画的な武力の行使又はその予測事態を指します。 ※ 気象庁配下の自治体危機対策課と、国土交通省配下の地域振興局を統合した部署を、自 治体毎に設置される本部を「災害対策本部」と言 います。 ※ 防災に関する計画の作成、災害応急対策等の基本若しくは災害から国民の生命等を保護するための基本的な事項について規定する日本の法 律が災害対策基本法です。 ※ 災害救助法施行令により国や地方公共団体の要請に協力した者又は遺族には、療養扶助金、休業扶助金、障害扶助金、障害扶助金、遺 族扶助金、葬祭扶助金及び打切扶助金が得られます(災害救助法第 29 条及び災 害救助法施行令第 13 条) 。 4-4 国民保護法 4-4-1 国民保護法の概要 武力攻撃から、国民を保護するために設けられた法 律が国民保護法です。 我が国を取り巻く安全保障環境については、東西冷 戦終結後 10 年以上が経過し、我が国に対する本格 的な侵略事態生起の可能性は低下しているものの、 大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散、国際テロ組織 18 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 等の活動を含む新たな脅威や平和と安全に影響を与える多様な事態への対応が差し迫った 課題となっています。こうした状況も踏まえ、我が国に対する外部からの武力攻撃に際し、 我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な法制を整備することは国 としての当然の責務であるとの観点から、平成 15 年 6 月に、 「武力攻撃事態等における我 が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(武力攻撃事態 対処法) 」が 成立しました。 さらに、この法律を受けて、平成 16 年 6 月には、 「武力攻撃事態等における国民の保護の ための措置に関する法律(国民保護法) 」が成立し、正式には武力攻撃事態等における国民 の保護のための武力攻撃事態対処法と相まって、国全体として万全の態勢を整備し、国民の 保護のための措置を的確かつ迅速に実施するための基本的な法制が整備されました。一方、 「平成 17 年度以降に係る防衛計画の大綱」が平成 16 年 12 月に閣議決定され、我が国の 安全保障の目標として ・ 我が国に直接脅威が及ぶことを防止、排除すること ・ 国際的な安全保障環境を改善して我国に脅威が及ばないようにすること の2つを掲げ、これらの目標を達成するため、国際の平和と安全の維持に係る国際連合の活 動を支持し、諸外国との良好な協調関係を確立するなどの外交努力を推進するとともに、日 米安全保障体制を基調とする米国との緊密な協力関係を一層充実させるなど、我が国自身の 努力、同盟国との協力及び国際社会との協力を統合的に組み合わせることとしています。 このうち我が国自身の努力としては、国として総力を挙げた取り組みにより、我が国に直接 脅威が及ぶことを防止すべく最大限努めるとともに、我が国に脅威が及んだ場合には、政府 が一体となって統合的に対応すること、このため、平素から国民の保護のための各種体制を 整備するとともに国と地方公共団体とが緊密に連携し、万全の態勢を整えることとの考え方 が示されています。このように、我が国に対する外部からの武力攻撃やテロなどが万が一発 生した場合には、国や都道府県、市町村などが連携して対応することとしていますが、こう した事態が、いつ、どこで、どのように発生するのかを事前に予測することは極めて困難で す。また、こうした事態が万が一発生した場合に、皆さんがどのように行動すればよいか、 あるいは普段から何を備えておけばよいか等の心構えを持つ必要があります。 4-4-2 国民保護法の目的 国民保護法には、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護 し、国民生活等に及ぼす影響を最小にするための、国・地方公共団体等の責務、避難・救援・ 武力攻撃災害への対処等の措置が規定されています。 国は、武力攻撃から国民を保護するために基本方針と対処基本方針に基づいて警報の発 令、救援の指示、武力攻撃災害対処の措置及び復旧、国民生活の安定に関する措置等を行い ます。 都道府県知事は、住民の避難指示、救援の実施、武力攻撃災害の防除及び復旧、国民生活の 安定に関する措置等をおこなわねばなりません。 国民保護措置における消防機関の主な活動は「武力攻撃災害への対処」と「市町村長による 避難住民の誘導」の二つがあります。 なお、武力攻撃災害が発生し、又は発生しようとしている場合は、都道府県知事が緊急通報 を発令することになっています。 (国民保護法第 99 条) 19 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 4-4-3 国民保護法のポイント ① 武力攻撃事態等において、国民の生命、身体及び財産の保護を図ることを目的とし ています(国民保護法第 1 条) 。 ② 武力攻撃事態等における国、地方公共団体、指定公共機関等の責務や役割分担を明 確にし、国の方針の下で国全体として万全の措置を講ずることができるようにしてい ます(国民保護法第 3 条) 。 ③ 住民の避難に関する措置、避難住民等の救援に関する措置、武力攻撃災害への対処 に関する措置について、その具体的な内容を定めています(国民保護法第2章:住民 の避難に関する措置、第3章:避難住民等の救援に関する措置、第4章:武力攻撃災 害への対処に関する措置) 。 ④ 緊急対処事態においても、武力攻撃事態 等における国民保護措置に準じた措置(緊 急対処保護措置)を実施することとしてい ます。また、緊急対策事態とは、テロへの 対応などを指します(国民保護法第 8 章: 緊急対処事態に対処するための措置) 。 ⑤ 国民保護法では、国民は協力を要請され た場合は協力するよう努めなければなりま せん。と記載されています。警察官が住民 を避難させているとき、誘導の協力を要請してきた場合、協力は、本人の自主性に委 ねられていますので協力するか否かは本人の自由です。 (国民保護法第 4 条 3 項) ⑥ 国民の保護のための措置を実施するにあたっては、国民の基本的人権の尊重に十分 な配慮がなされます。武力攻撃事態等の状況にあっても、国民の自由と権利が尊重さ れなければなりません。国民保護法での基本的人権の制限について必要最小限度とさ れています。 (国民保護法第 5 条) 4-4-4 国民保護計画 これは、政府が定める国民の保護に関す る基本指針に基づいて、地方公共団体及 び指定行政機関が作成する計画です。国 民の保護のための措置を行う実施体制、 住民の避難や救援などに関する事項、平 素において備えておくべき物資や訓練等 に関する事項などを定めます。地方公共 団体の計画の作成や変更に当たっては、 関係機関の代表者等で構成される国民保護協議会に諮問するとともに、都道府県と指定 行政機関は内閣総理大臣に、市町村は都道府県知事にそれぞれ協議することになってい ます。都道府県、市町村が事 態想定による装備品の確保を事前に計画する計画書を、国 民保護計画と言います。武力攻撃やテロなどが起きた場合の対応と自然災害時の対応と 大きく異なる点は、自然災害 は一過性ですが、武力攻撃等による対応は期間が予測でき ず、かつ長期間となる可能性があることです。 ※ 地方公共団体とは、都道府県及び市町村を指します。 20 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 4-4-5 国民の協力 国民保護法第 4 条では、「国民は、国民の保護のための措置の実施に関し協力を要請さ れたときは、必要な協力をするよう努めるものとする」「国民の協力は国民の自発的な 意思にゆだねられるものであって、その要請に当たって強制にわたることがあってはな らない」とされています。 国や地方公共団体は、協力の要請を行う場合は、安全の確保に十分配慮を行い、もし、 武力攻撃事態等において要請に基づく協力により国民が死亡・負傷等した場合は、その 損害を補償いたします(国民保護法第 160 条第 1 項、国民保護法施行令第 4 条)。ま た、住民の自主的な防災組織やボランティアによる国民の保護のための活動に対し、必 要な支援を行います。 ただし、国民保護法では、 「国民は協力を要請された場合は協力するよう努めなければな りません」と記載されています。また、災害対策基本法第 7 条においても、住民等の責 務として国民保護法と同じような協力を必要としています。 例:都道府県の職員に避難地で炊き出しの協力をお願いされ場合の協力は、本人の自主 性に委ねられています(協力するか否かは本人の自由) 。 (国民保護法第4条3項) 4-4-6 国民の協力の具体的内容 ① 住民の避難や被災者の救援の援助(国民保護法第 70 条及び第 80 条) ② 消火活動、負傷者の搬送、被災者の救助などの援助(国民保護法第 115 条) ③ 保険衛生の確保に関する措置の援助(衛生広報等のために保健所等が作成してパンフレ ットの配布等)(国民保護法第 123 条) ④ 避難に関する訓練への参加(国民保護法第 42 条第 3 項) 国民保護法第115条 国民保護法第70条 災害救助法第25条 国民保護法第80条 国民保護法123条 災害救助法第25条 また、消防法では、消防隊員や救急隊員が火災や救急の現場に居合わせた者への協力を要請 できるとしています。(消防法第25条第 2 項及び第35条の7) 4-4-7 国民の権利及び義務に関する措置 「国民の保護のための措置を実施するに当たっては、日本国憲法の保障する国民の自由と権 利が尊重されなければならない」(国民保護法第 5 条第 1 項)、「国民の自由と権利に制限 が加えられるときであっても、その制限は当該国民の保護のための措置を実施するため必要 最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手段の下に行われるものとし、いやしくも国 21 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 民を差別的に取り扱い、並びに思想及び良心の自由並びに表現の自由を侵すものであっては ならない」(国民保護法第 5 条第 2 項)とされています。この原則に基づいて、国民の権利及 び義務に関する措置については、限定的に規定されています 4-4-8 国民の権利及び義務に関する措置の具体的内容 国民の権利及び義務に関する措置の具体的内容は、次のとおりです。 ① 原子炉や危険物質などによる危険防止のため必要な措置を講ずることを命令(指定行政 機関の長などから原子炉の事業者などに、国民保護法第 104 条及び同 105 条)。 ② 医療の提供を要請し、正当な理由なく拒否したときは医療の提供を指示(都道府県知事 から医療関係者に、国民保護法第 85 条)。 ③ 医薬品、食品などの物資について保管を命令し、売渡しを要請し、正当な理由なく拒否 したときは収用(都道府県知事から物資を取り扱う者に、国民保護法第 81 条)。 ④ 収容施設又は医療施設を確保するため、土地、家屋などの使用の同意を得る。正当な理 由なく拒否したときは同意を得ないで使用(都道府県知事から土地所有者、施設 管理者などに、国民保護法第 82 条)。 ⑤ 武力攻撃災害への応急措置として、土地、建物などを一時使用し、物件を使用又は収用 (市町村長及び都道府県知事から土地所有者、施設管理者などに、国民保護法第 82 条)。 ⑥ 国民保護法では、武力攻撃災害の兆候を発見した者は、遅滞なくその旨を市町村長又は 消防吏員、 警察官若しくは海上保安官に通報しなければなりません。 (国民保護法98条) 4-4-9 国民保護のための情報伝達の手段 国は、武力攻撃から国民の生命、身体又は財産を保護するため、緊急の必要があるときは、 警報を発令し(国民保護法第 44 条) 、直ちに都道府県知事等に通知します(国民保護法第 45 条) 。また、住民の避難が必要なときは都道府県知事に対し、住民の避難措置を講ずる よう指示します。 22 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) これを受け、都道府県知事は警報の通知や避難の指示を行い(国民保護法第 46 条) 、市町 村の住民広報を通じて住民に情報が伝達されます(国民保護法第 47 条第 1 項、避難の仕 組みを参照) 。武力攻撃事態等においては、このような情報が迅速かつ確実に伝達されるこ とが大変重要となります。このため、国民保護のための情報伝達の手段については、防災無 線、衛星通信など複数の経路を確保することとしています。 ※ 弾道ミサイル発射情報が流された場合、近隣の堅牢な建物や地下街に避難するのが良いでしょう。 4-4-10 国民保護に係る警報のサイレン音(国民保護法第 47 条第 2 項) 警報が市町村から住民に伝達される際には、武力攻撃が迫り、又は現に武力攻撃が発生した と認められる地域に当該市町村が含まれる場合には、 原則としてサイレンを使用して注意喚 起が図られることとなっています。政府は、平成 17 年 7 月、国民保護に係る 警報のサイ レン音を決定しました。 ※ 近隣及び自宅で武力攻撃あるいはテロ行為などが行われた場合に、第一次避難場所として想定される退避場所は自宅内の外壁から離れ た部屋や地下室に退避することが望ましいとされています。また、これらの武力攻撃災害が発生した場合の活動に当たり、警察、自衛隊等 との情報共有や活動内容に関する調整を行うために設置される部署は現地調整所と言います。 4-4-11 避難の仕組み (避難に関することは、第 7 章でも説明しています) 国は、武力攻撃から国民の生命、身体又は財産を保護するため緊急の必要があると認めると きは警報を発令して、直ちに都道府県知事に通知します。国や地方公共団体は、国民の保護 に関する正確な情報を適時適切に知らせなければなりません。 (国民保護法第 8 条) さらに住民の避難が必要な時は、都道府県知事に対して、住民の避難措置を講ずるよう指示 します。その後、都道府県知事は警報の通知や避難の指示を行い、また、放送や市町村の防 災行政無線を通じて国民に情報が伝達されます。また、指定行政機関からは、駅、病院など に警報が通知されます。国民保護発動時に自治体等から発せられる情報で、第一に取得すべ きは、 「事態発生場所の確認」が大事です。 高齢者や障害者に対しては特別な保護を必要としている場合は、保護に留保しなければなり ません(国民保護法 9 条) 。武力攻撃災害及び武力攻撃災害等の状況を適時適切に公表する 責任は対策本部長にあります(国民保護法第 23 条) 。 23 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 4-4-12 救援の仕組み (救援に関することは、第8章でも説明しています。 ) 救援は、都道府県知事が中心となって市町村や日本赤十字社等と協力して実施します。 具体的には、避難してきた人々に宿泊場所や食品、医薬品などを提供したり、行方不明にな ったり家族と離れ離れになった人たちのために安否情報の収集や提供を行います。 また、国民の保護のための自衛隊派遣要請は、都道府県知事が行います(国民保護法第 15 条、自衛隊法第 77 条の4、同第 81 条、同 83 条、同 83 条の 2、同 83 条の 3) 。 4-4-13 武力攻撃災害への対処 武力攻撃に伴う被害をできるだけ小さくするために、国や地方公共団体が一体となって対処 します。 具体的には、 ① ダムや発電所などの施設の警備 ② 化学物質などによる汚染の拡大を防止 ③ 住民が危険な場所に入らないよう警戒 区域を設定 ④ 消火や被災者の救助などの消防活動 などが挙げられます。 4-5 その他の関連法律 関連した法律としては、警察法、海上保安庁法、 自衛隊法などがあります。 第5章 各種対策・行動 5-1 火災対策 5-1-1 初期消火 火災が発生したら、初期消火が重要です。そのため、各家庭には、住宅用消火器の備えつけ が大切となります。 初期消火の原則は、3つです。また、それと同時に 119 番へ通報しましょう。 24 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) ① 早く知らせる ・「火事だ」と大声を出し、隣近所に援助を求めます。声が出 せなければ、やかんなどを叩いて異変を知らせます。 ・小さな火でも 119 番に通報します。当事者は消火にあたり、 近くの人に通報を頼みます。 ② 早く消火する ・出火から 3 分以内が消火できる限度です。 ・水や消火器だけで消そう思わないで、座布団で火を 叩き、毛布で覆うなど、手近 のものを活用します。 ③ 早く逃げる ・天井に火が燃え移ったら、い さぎよく避難します。 ・避難するときは、燃えている 部屋の窓やドアを閉めて空 気を絶つ。 5-1-2 水のかけ方 水の威力は、 消火器なみです。 コップ一杯の水でストーブの 火が消えた実験結果 が あ り ます。水の消火能力はとても 大きいのです。消火器ととも に、くみ置き水の用意を忘れずに。 ① ふすまや障子、カーテンなどの立 ち上がり面にかけるときは、上から半円を描くようにし ます。 ② ストーブや畳みなどへは一気にかけます。ただし、油なべや感電の恐れあるものには直接 水をかけないで、他の方法で消火をします。 5-1-3 三角消火バケツ 従来からある「三角消火バケツ」は、部屋の中で邪魔にならず、また倒れにくいように開発 された消火用のバケツです。普通のバケツだと、一 回かけると水は無くなってしまいま すが、この三角消火バケツは5~6回かけられるよう工夫されています。 いざという時”のために、消火器や消火用水の他、消火に役立つものを普段から用意し、備 えておきましょう。 5-1-4 消火器の使い方(粉末・強化液消火器) 5-1-4-1 使い方 ① 安全ピンに指をかけ上に引き抜く。 ② ホースをはずして火元に向ける。 ③ レバーを強く握って噴射する。 25 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 5-1-4-2 かまえかた ① 風上に回り風上から消す。火災にはまともに正対しないようにします。 ② やや腰を落として姿勢をなるべく低く。熱や煙を避けるように構えます。 ③ 燃え上がる炎や煙を避けます。 5-1-4-3 点検のポイント ① 安全ピンの外し方は、メーカーに 係らず 共通です。外し方を確認しましょう。 ② 火災の種類によってラベルが異なります。 どの火災に適した消火器か 確認します。 ③ 使い方を読むだけでなく、実際に動作 してみることが肝心です。 ④ 高温多湿を避けて設置します。さび付いたり変形しているものは専門業者に点検を 依頼、また一度安全ピンを抜いた場合(噴射していなくても)も同様にします。 5-1-5 火の元別初期消火のコツ ① 油なべ あわてて水をかけるのは禁物。消火器がなければ、濡らした大き目のタオルやシーツ を手前からかけ、空気を遮断して消火をします。 ② 石 油 ス ト ー ブ 真上から一気に水をかけて消火(斜めにかけると石油が飛び散って危険) 。油が流れて 広がっているようなら毛布などで覆い、その上から水をかけて消火します。 ③ 衣類 衣類、着衣に火がついたら転げ回って消すのも方法。髪の毛の場合なら、衣類(化繊 は 避ける)やタオルなどを頭からかぶります。 ④ 風呂場 風呂場からの出火に気づいても、いきなり戸を開けるのは禁物。空気が室内に供給され て 火勢が強まる危険があります。ガスの元栓を締め、徐々に戸を開けて一気に消火しま す。 ⑤ 電気製品 26 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) いきなり水をかけると感電の危険が。まずコンセントから抜いて(出来ればブレーカ ーも切る)消火をします。 ⑥ カーテン・ふすま カーテンやふすまなどの立ち上がり面に火が燃え広がったら、もう余裕はない。引き ち ぎり蹴り倒して火の元を天井から遠ざけ、その上で消火をします。 5-1-6 火災からの避難 火災で怖いのは炎と同時に煙です。煙の成分には有毒ガス(一酸化炭素、塩化水素など)が 多くふくまれているため、吸込むことで中毒死に至ったり、まひ等で避難行動が出来なくな ってしましまうことがあります。また、煙は想像以上の速さで広がりますが、上方に上がる 性質があるため、下の方が煙は薄く空気が残っている可能性があります。濡らしたタオルや ハンカチなどで口や鼻をおおい、姿勢を出来るだけ低くして避難しましょう。 ① 天井に火が燃え移ったときが避難の目安。 ② 避難は高齢者、子供、病人を優先。 ③ 服装や持ち物にこだわらず、出来るだけ早く避難します。 ④ ちゅうちょは禁物。炎の中は一気に走りぬけます。 ⑤ 煙の中を逃げる時は、出来るだけ姿勢を低くして。 ⑥ 一旦逃げたら、再び中に戻らない。 ⑦ 逃げ遅れた人がいる時は、近くの消防隊に直ぐ知らせます。 5-1-7 防火の 10 のポイント 火災は人災そのもの。火に対する油断をなくし、 「念には念を」の慎重さで火と付き合う。 ① 天ぷらを揚げるときは、その場を離れない。 ② 寝たばこ・たばこの投げ捨ては厳禁。 ③ 風の強い時に、焚き火をしない。 ④ 家の周りに燃え易いものを置かない。 ⑤ 子供をマッチやライターで遊ばせない。 ⑥ 電気器具は正しく使い、タコ足配線はしない。 ⑦ ストーブには燃え易いものを近づけない。 ⑧ 寝る前に必ず火の元を確かめる。 ⑨ 高齢者の部屋は一階に。 ⑩ 消火器の備えを万全に 5-1-8 119 番への通報(公衆電話から) ① 緊急通報用ボタン付き<緑・黄・青>電話 受話器を上げて緊急通報用ボタンをおして 119 番へ通報。 10 円、100 円、カードを入れて、119 番をダイヤルしても通話で きます。 ② デジタル<灰色>電話 受話器を上げて、119 番へ通報。 10 円、100 円、カードを入れて、119 番をダイヤルしても通話できます。 ③ 緊急通報装置のない<赤・ピンク>電話 27 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 店の人に申し出て鍵で切替えて、119 番へ通報。 鍵を替えずに 10 円を入れても、119 番への通報はできません。 5-2 風水害対策 5-2-1 防災気象情報 ラジオやテレビなどで最近の防災 気象情報を入手し、早めの対策を行 うことで、風水害による被害を減ら すことができます。 台風が通過している最中や、雨が強 く降っている時に、外の様子を確認 しに外出することは控えましょう。 水の状況は急変することがあるの で、河川や用水路、田んぼの状況を 確認しに行くことは非常に危険で す。 <気象注意報・警報・情報の種類> 発表される状況・内容 注意報 災害が起こるおそれがあるとき 16種類(風雪、強風、大雨、大雪、濃霧、雷、乾燥、なだれ、着氷、 着雪、霜、低温、融雪、高潮、津波、洪水など) 警報 重大な災害が起こるおそれがあるとき 7種類(暴風、暴風雨、大雨、大雪、高潮、波浪、洪水など) 気象情報 警報・注意報に先立つ注意喚起や警報・注意報の補完など (台風、低気圧、大雨、大雪、少雨、長雨、黄砂など) 台風情報 台風の実況(中心位置、進行方向と速度、中心気圧、最大風速(10 分間平均) 、最大瞬間風速、暴風域、強風域と予報(72 時間先まで) ) 土砂災害警報情報 大雨による土砂災害発生の危険度が高まったとき、市町村長が避難勧 告等を発令する際の判断や住民の自主避難の参考となるよう、都道府 県と気象庁が共同で発表する 気象庁資料から <大雨警報の基準値の例>(平成 20 年 7 月現在) 雨量基準(㎜) 札幌市 平坦地 3 時間雨量 80 ㎜以上、平坦地以外 1 時間雨量 50 ㎜以上 東京 23 区 千代田区:3時間雨量 100 ㎜以上、台東区:1 時間雨量 60 ㎜以上 新潟市 平坦地 1 時間雨量 40 ㎜以上、平坦地以外 1 時間 50 ㎜以上 大阪市 1 時間雨量 40 ㎜以上、或は 3 時間雨量 70 ㎜以上 鹿児島市 平坦地 1 時間雨量 70 ㎜以上、平坦地以外 1 時間雨量 80 ㎜以上 ※ 気象庁では、防災機関の防災活動が円滑にできるように、警報や注意報をきめ細かく発表するため、全国を 373 の区域に細分してい ます。 28 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 集中豪雨や長雨などで地盤がゆるむと、土砂災害(土石流や地すべり、がけ崩れなど)が発 生し易くなります。自分の住む地域で土砂災害が発生する可能性がないか、自治体が作成し ているハザードマップで確認しておきましょう。ハザードマップは自治体の配布物やホーム ページなどで確認できます。土砂災害に巻きこもれないようにするためには、気象情報や各 自治体から発表される土砂災害警報情報に注意しましょう。また、土砂災害の前ぶれのよう な異変を感じた場合は、直ぐに周りの人や自治体などに知らせ、安全な場所へ避難しましょ う。 台風が接近してから屋外に出るのは 危険です。台風情報を利用して、台風 がくる前に対策をとってください。ふ だんから、家の周りを確認し、モルタ ルに亀裂はないか、板壁に腐りや浮き はないかチェックします。また、テレ ビアンテナの設置状態や瓦のひび・割 れ・ずれ・はがれがないかもチェック します。 次に、台風が近づいてきたら、風で飛 ばされそうな物は室内に取り込みま す。また、倒れたり、流されそうなものはしっかりと固定します。さらに、窓ガラスのひび 割れ、窓枠のガタつきはないかチェックします。 さらには、強風などによる飛来物に備え、雨戸を閉め、テープや飛散防止フィルムなどで 窓ガラスを補強しましょう。 風水害は、普段からの防災の準備によって、被害を最小限に抑える ことができます。 しっかりと対策をとりましょう。 5-2-2 避難についての情報 (避難についは、第 7 章でも説明します) 台風や集中豪雨などにより、災害が発生するおそれが高まったとき、市区町村から、避難に ついての情報が発表されます。発表の方法は、ケーブルテレビやラジオ番組、ホームページ、 携帯電話へのメール、防災無線など、自治体によってそれぞれ違うため、ハザードマップな どで確認しておきましょう。 区 分 発表される状況・内容 避難準備情報 災害時要援護者、特に避難行動に時間を要する人が避難行動を開始し なければならない段階であり、人的被害の発生する可能性が高まった 状況のとき 避難勧告 通常の避難行動ができる人が避難行動を開始しなければならない段 階であり、人的被害の発生する可能性が明らかに高まった状況のとき 避難指示 ・ 前兆現象の発生や、現在の切迫した状況から、人的被害の発生す る危険性が非常に高いと判断される状況になったとき ・ 堤防の隣接地域等、地域の特性等から人的被害の発生する危険性 が非常に高いと判断された状態のとき ・ 人的被害の発生した状況のとき 気象庁資料から 29 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 5-2-3 避難するときには ① 危険が迫る前に避難しましょう。 ② 避難することを必ず誰かに伝えましょう。 ③ 必ず靴を履きましょう。サンダルや長靴はかえって危険なこともあります。 ④ 持ち物はリュックに入れるなど、いざという時に両手が使えるようにしましょう。 ⑤ ロープでつないで歩きましょう。 ⑥ 歩ける深さ(男性 70cm、女性 50cm)までにしましょう。腰までつかるようなとき、 無理は禁物。 ⑦ 水の中を歩く時は、側溝やマンホールなどにはまらないよう、長い棒で確認するなど、 足元に十分注意しましょう。 ⑧ 強風の時、水の深さがひざ上まであるときは、無理して避難所へ行くよりも、2階など 高いところに留まる方が安全な場合もあります。 5-2-4 地下室は注意 豪雨の時の地下室は危険です。 平成 11 年 6 月には、梅雨前線豪雨により、福岡市においてビル地下室や地下鉄、地下街 などの地下施設が浸水し、都市機能が停止し、また死者もでるという痛ましい災害が発生し ました。 ① 地上が冠水すると、一気に水が流れ込んできます。 ② 浸水すると電灯が消えます。エレベーターは使えません。 ③ 地下室では外の様子が分かりません。 ④ 水圧でドアが開かなくなります。 5-2-5 危険な土地では早めの避難態勢を ① 造成地 地質、地形が不安定なので、豪雨によって地盤がゆるみ崩れる危険性があります。 水抜き穴から濁り水が出始めたら要注意。 ② 扇状地 豪雨によって山崩れが起きると土石流が扇状地を直撃します。避難の準備は早めに。 ③ 山岳地 山崩れは集中豪雨ばかりでなく地震によっても発生するので、日頃から災害対策を怠 らないようにします。特に樹木の少ない山間部では土石流に要注意。 30 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) ④ ゼロメートル地域 海岸近くのゼロメートル地域(平均満潮以下の土地)は要注意です。高潮によって浸 水の被害を被る危険性が大きいです。 ⑤ 海岸地域 満潮の頃台風が接近すると高潮は猛威をふるいます。特に低い土地では厳重な警戒が 必要です。 ⑥ 河川敷 昔、河川敷だったところや河川流域は豪雨によって洪水の危険があります。洪水注意 報、警報が出たらいつでも避難できる対策をして下さい。 5-2-6 除雪中の事故防止のためのチェックリスト □ 作業は家族、隣近所にも声を掛けて二人以上で! □ 低い屋根でも油断は禁物! □ 建物の周りに雪を残して雪下ろし! □ 作業開始直後と疲れたことろには特に慎重に! □ 晴れの日ほど要注意、屋根の雪がゆるんでる! □ 忘れずに、命綱とヘルメット! □ はしごの固定を忘れずに! □ 除雪道具はこまめに手入れ、点検を! □ エンジンを切ってから、除雪機の雪詰りの取り除き! □ 携帯電話の携行を忘れずに! 5-3 前兆現象(土砂災害) 31 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) ① 土石流の前兆現象 ・川の流れがにごり、流木が混じりはじめます。 ・雨の降り続いているのに川の水位が下がります。 ・山鳴りがします。 ② 地すべりの前兆現象 ・沢や井戸の水がにごります。 ・地割れができます。 ・斜面から水が噴出します。 ③ がけ崩れの前兆現象 ・掛けから小石がバラバラと落ちて来ます。 ・がけから水が湧き出てきます。 ・がけに割れ目が見えます。 5-3-1 風水害チェックリスト ① 情報収集 □ 洪水の時の避難場所と避難経路をバザードマップで確認しています。 □ 停電しても気象情報を確認できるよう、ラジオなどを準備しています。 □ 川遊びに行く時は、遊ぶ場所の上流の天気予報も確認しています。 ② 自宅での備え □ 台風などの強風に飛ばされないか、屋根瓦や雨どいなどの固定状況を定期的に確認 しています。 □ 停電に備え、懐中電灯は直ぐに使えるよう、部屋毎に置いています。 □ 避難に備え、必要最低限の非常持ち出し品を決めます。 □ 非常持ち出し品を入れるリュックを用意します。 32 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) コラム 平成17年台風第14号(平成17年9月) 杉並区30代男性 駅前はいつもと同じ、川の氾濫想像できず ~局地的豪雨の恐ろしさを感じた~ 駅の近くで食事をしていました。確かにもの すごい降り方でしたが、川が危険な状態にな っているなんて全く想像もしていませんで した。 「ちょっとこの雨ひどいね」、「傘がないか らもう少し待とう」と店に居続けたのです が、いっこうに止む気配がありません。 「もういいかげんに帰らなくちゃ」と思っていたときに、携帯電話が鳴って、「今、川 がすごいことになっている」という連絡が入りました。「どこが?」と。まさか自分た ちの街の川があふれ出しているなんて想像もできませんでした。 普通に電車も走っているし、駅のまわりの店には明々と電気がついていて、街の生活の どこかが不自由になった印象は全くありませんでした。 川の近くに住んでいた人たちはすごい大変な思いをしているけれども、ちょっと離れた ところでは、「えっ、川があふれていたの?」という、のんきな声が次の日でも聞こえ ました。 都市部特有の局地的豪雨の恐ろしさを思い知らされた気がしました。 <内閣府(防災担当)> 5-4 地震対策 昭和 56 年(1981)年に、住宅を 建てる時に建物の強さを定める基準 が大きく変わりました。この年以降 に建てられているかどうかが、自分 の家の強さを知る一つの目安になり ます。それ以前に建てられた家に住 んでいる場合は、必ず専門家の耐震 診断を受けましょう。 また、昭和 56 年以降に建てられた 建物でも、建物が全く壊れないとい うことではありません。年月の経過 とともに住宅も変化します。点検・ 整備をこまめに行うように心がけましょう。 耐震改修工事の費用負担が大きいと感じて、工事を先送りにする家庭もあるようですが、耐震 改修は家の全体でなく一部だけ(寝室やリビングなど)でも実施しておくと、その空間の安全 を守ることができ、費用も低く抑えらます。 33 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 5-4-1 地震への備えと行動 5-4-1-1 地震に対する備え(共通) ① 家具類の転倒・落下防止 ・ 家具やテレビ、パソコンなどを固定し、転倒や落下防止をしておきます。 ‥ポール式器具を使用する場合は、家具の下前面に入れるストッパー式器具と 併用します。 ‥壁に固定する場合は、強度のある 部分(壁裏の間中のある位置)で L型金具を使用します。 ‥二段重ねの家具類は、上下を平型 金具などで連結してうえで固定す る。 ‥吊り戸棚などの開き扉は、扉開放 防止器具などで、収容物が飛び出 さないようにします。 ‥ガラス扉のある家具には、ガラス飛散防止フィルムを貼ります。 ‥重いものは下に収納しましょう。 ・ けがの防止や避難に支障のないように家具を配置しておき ます。 ‥家具の配置に気をつけましょう。 ・ 家庭用チェックリスト □ テレビを壁又はテレビ台に固定すると共に、テレビ台も固定します。 □ テレビが転倒・落下しても、人に当たったり、避難障害にならない所に置き ます。出来るだけ低い位置に設置。また、水槽などを上に置かない。 □ 冷蔵庫を、ベルトなどで壁と連結します。 □ 冷蔵庫が移動しても、避難障害にならない所に設置します。 □ 冷蔵庫や家具類の上に、落下しやすい物を置かない。 □ 電子レンジをレンジ台などに固定すると共に、レンジ台も固定します。 □ 窓ガラスの近くに、大型の家電製品や家具を置かない。 □ 家電製品は、付属している取扱説明書に従って転倒・落下防止対策を行いま す。 □ L型金具を使用する場合は、壁の下地材(間柱など)や柱など、強度がある 部分に固定します。 □ ポール式を使用する場合は、ストッパー式やマット式を併用します。 □ ポール式を使用する際は、天井に強度がない場合は、あて板で補強します。 □ ポール式は、できるだけ奥に取り付けます。 □ ストッパー式は、家具の端から端まで敷きます。 □ 石膏ボードに接着されているだけの付け鴨居の場合は、補強したうえで、転 倒防止器具を取り付けます。 □ 上下に分かれている家具は、上下を連結します。 □ ガラスにはフィルムを貼るなど、飛散防止をします。 □ 収納物が飛び出さないよう、扉に開放防止器具を付けます。 34 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ □ 重いものを、できるだけ下に収納します。 □ 固定に用いる器具は、家具類の重さや形状に応じて選びます。 □ 家具が転倒しても、避難路を塞がない置き方をします。 ・ オフィス用チェックリスト □ 背の高い家具を単独で置かない。 □ 安定の悪い家具は背合わせに連結させます。 □ 壁面収納は壁・床に固定します。 □ 二段重ね家具は上下連結させます。 □ パーテーションは転倒しにくい「コの字型」 「H型」にレイアウトします。 □ OA機器は落下防止しておきます。 □ 引き出し、扉の開き防止対策をしておきます。 □ 時計、額縁、掲示板等は落下しないように固定します。 □ ガラスには飛散防止フィルムを貼ります。 □ 床につまずき易い障害物や凹凸がない。避難路に物を置かない。 □ 避難路に倒れ易いものがない。 □ 避難出口が見えやすい。 □ 非常用進入口に障害物はない □ 家具類の天板上に物を置いていない。 □ 収納物がはみ出したり、重心が高くなっていない。 □ 引出し、扉は必ず閉めます。 □ ガラス窓の前に倒れやすいものを置いていない。 けがの防止対策をしておこう ・ 避難に備えてスリッパやスニーカーなどを準備します。 ・ 停電に備えて懐中電灯をすぐに使える場所に置きます。 ・ 食器棚や窓ガラスなどには、ガラスの飛散防止装置をします。 家屋や塀の強度を確認しましょう ・ 家屋の耐震診断を受け、必要な補強をします。 ・ ブロックやコンクリートなどの塀は、倒れないように補強します。 消火の備えをしましょう ・ 火災の発生に備えて消火器の準備や風呂の水のくみ置きをします。 火災発生の早期発見と防止対策をしましょう ・ 火災の早期発見のために、住宅用火災報知機を設置します。 ・ 普段使用しない電気器具は、差込みプラグをコンセントから抜きます。 ・ 電気やガスに起因する火災発生防止のため感震ブレーカー、感震コンセントなど の防災機器を設置します。 ・ カーテンは、防炎加工のものを設置します。 非常用品を備えましょう ・ 非常持ち出し品は、置く場所を決めて準備します。 ・ 車載ジャッキやカーラジオなど、身の周りのあるものの活用を考えます。 家庭で話し合いましょう ・ 地震が発生した場合の出火防止や初期消火など、家庭の役割分担を決めます。 ・ 家庭が離れ離れになった場合の安否確認の方法や集合場所などを決めます。 35 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) ・ 家庭で避難場所や避難経路を確認します。 ・ 普段のつきあいを大切にするなど、隣り近所との協力体制を話し合います。 ⑧ 地域の危険性を把握しましょう ・ 地域の防災マップに加えて、我が家の防災マップを作ります。 ・ 自分の住む地域の地域危険度を確認します。 ⑨ 防災知識を身に付けましょう ・ 新聞、テレビ、ラジオやインターネットなどから、防災に関する情報を収集し知 識を身に付けます。 ・ 消防署などが実施する講演会や座談会に参加し、過去の地震の教訓を学びます。 ⑩ 防災行動力を高めましょう ・ 日頃から防災訓練に参加して、身体防護、出火防止、初期消火、救出、応急救護、 通報連絡、避難要領などを身に付けます。 コラム 宮城県北部を震源とする地震(平成 15 年 7 月) 東松島市 70 代女性 家具は倒れず ~役立った転倒防止グッズ~ ご飯をよそって出して、みそ汁を持ってこようと 思って立ち上がったときに「ドン」と来たんです ね。アッと思って、とっさに私は食器棚を押さえ、 お父さんがあっちから、テレビを押さえました。 食器棚は、観音扉※を少し太めのゴムでとめてい ました。そのゴムが伸びて、中のものが少し飛び 出しましたが、たいしたことはありませんでし た。 それから、今度は仏壇の花が心配になって走って いったのですが、ふっと庭を見ると、道路に面したうちの岩塀が倒れていました。 たんすとか本棚とかは全部、前々からゴムみたいな転倒防止用のやつを買って、下 に入れてあったんです。だからぜんぜん倒れなくて、助かりました。 <内閣府(防災担当)> 36 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 5-4-1-2 戸建て住宅での備え ① ベランダ 植木鉢などの整理整頓を。落ちる危険がある場所には何も置かない。 ② 窓ガラス 飛散防止フィルムを貼ります。 ③ 屋根 不安定な屋根のアンテナや、屋根瓦は補強しておきます。 ④ プロパンガス ボンベを鎖でしっかり固定します。 ⑤ ブロック塀・門柱 土中にしっかりとした基礎部分がないもの、鉄筋が入っていないものは危険なので補 強します。ひび割れや鉄筋のさびも修理します。 ・ 安全なブロック塀の目安 □ 傾きやヒビわれ、破損箇所はないか。 □ 高さが高すぎないか(2.2m以下に) 。 □ 鉄筋は縦筋と横筋がきちんと固定されているか。 □ 基礎コンクリート(地下 40cm以上埋め込む)はしっかりしているか。 □ 支えとなる控え壁は設置されているか(3.4m以下の間隔で設け、40~60 cmの長さを確保) 。 □ すかしブロックや面とりブロックなどの化粧ブロックはできるだけ使用し ない。 □ 既存のブロック塀では帯鋼を取り付けて鋼柱を立てて、柱にはL型アングル を使用するなどで補強を。 □ 新たに作る時はより安全な生垣やネットフェンスに。 5-4-1-3 集合住宅(マンションも含む)での備え マンションなどの集合住宅では、多くの人たちが暮らして います。そのため、日頃からみなさんの防火対策が求めら れています。いざというときに備えて点検しましょう。 37 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) ① 玄関 玄関は、 脱出口、 避難経路として重要。 ふさがれていては逃げ出すこともできません。 開かなくなった扉をこじ開けるために、バールなどの用意をしましょう。 ② 通路 いざというとき安全に避難できるように、通行の 妨げにならないように、自転車など物を置かない。 また、類焼防止のために、古新聞や布切れなど、 燃え易いものを置かないようにしましょう。 ③ 非常階段 物を置くのは厳禁。特に非常扉の前は要注意。 ④ ベランダの避難ハッチ(非常脱出口)日頃から使用 方法を良く確認しておく。避難器具の回りに物を置く のは厳禁。落下する危険のあるものは置かないように しましょう。 ⑤ 防災施設・消火施設 通路などの共用部分に置いてある消火器や火災報知 機などの消火施設の場所を、日頃から良く確認してお きます。 ⑥ 管理組合からの連絡に注意 防災設備の点検や防災訓練のお知らせ等、組合から の連絡には日頃から注意します。 5-4-1-4 高層住宅での備え 一般的に高層住宅では耐震性が高く、地震に強いと言わ れていますが、その建物の高さゆえの弱点もあります。居住者は高層住宅の防災上の特 徴をよく知り、備えることが大切です。 ① 「長周波地震動」に注意 大地震で発生する長周波時震動は、数秒から 10 秒周期のゆっくりとした揺れが遠方 まで伝わります。特に超高層ビルなどは地震動と共振して揺れが大きくなり、2008 年 7 月の岩手・宮城内陸地震では、震源地から 300km以上も離れた東京都内の 高層ビルで揺れを感知し、エレベーターが停止しました。高層住宅の上層階では、 観測された震度以上の揺れに襲われることがあるので、低・中層住宅以上の備えが 必要です。 ② 高層住宅で想定される被害とは 高層住宅の上層階は,、大地震により 1~数メートルを往復するような大きな揺れに 襲われることが予想されます。上層階ほど家具類が激しく散乱・転倒するので、高い 確率で怪我を負い易くなります。 また、揺れによるエレベーターの停止も予想されます。最近のエレベーターは地震時 管制運転システムにより揺れを感知すると自動的に最寄の階に停止して扉を開放す る仕組みになっています。しかし、感知した揺れが大きかった場合には、技術者によ る点検がすむまでエレベーターは動きません。直ぐに点検ができるようならばいいの ですが、大きな地震が発生した場合には、数日間停止することも考えられます。 38 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) ③ 自主防災組織の平素の備え ・ 防災マニュアルの整備 安否の確認方法や、避難計画・災害時の体制等を示した、防災マニュアルを作成 しておきましょう。 また、通常整備している名簿とは別に、家族の人数や災害時要援護者の有無、緊 急連絡先や携帯電話の番号等を記載した防災用の名簿を作成しておくと、いざと いうときに役立ちます。ただし、保管場所などプライバシーの保護には十分考慮 して下さい。 ・ 防災訓練 せっかくマンションに防災設備が整っていても、いざという時使えなければ意味 がありません。防災資機材の使用方法の確認、避難経路の確認など、定期的に訓 練をしましょう。 ・ 備蓄品 閉じ込められた人の救出に使用するバールなどの工具類、 安否確認や集合で便利 なハンディマイクなど防災資機材を備えておきましょう。 また家庭の備蓄品とは 別に簡易トイレや水を備蓄しておくのもよいでしょう。 資機材や備蓄品は、1 階や地下にまとめておくのではなく、5~10 階毎に保管 場所を作っておくと良いでしょう。 ④ マンションの地震直後の対策 □ 集会室などに災害対策本部、救護所を設置し、予め定めてあった災害時の体制を とります。火災が発生した場合は速やかに初期消火活動を行います。 □ 被害状況を確認し、管理会社に連絡して派遣を要請します。 □ 各階の代表者などから被害状況を収集し、救出・救護活動を実施する。災害時要 援護者がいる住戸は特に重点的に声をかけるなどして確認します。 □ 近隣の町会などと連絡を取り合い、必要であれば指定の避難場所に避難するため の誘導を行います。 ⑤ 被災生活から復興までの対策 □ 備蓄品や受水層の水を住居者に配付する。災害時要援護者がいる住戸には、協力 して物資を配付します。 □ 管理会社に建物や設備の被害状況を点検する専門家の派遣を要請します。 □ 避難所等の防災拠点と連携をとり、住民への情報伝達や救援物資の入手・配付を 行います。 □ 仮設トイレの設置や仮設のゴミ置き場を決めるなど、良好な衛生状態の確保に努 めます。 5-4-2 地震時の対応(1)共通 5-4-2-1 地震時の行動(最初の大きな揺れは約 1 分間) グラットきたら身の安全 ・ 地震の時は、まず身の安全を図り、揺れがおさまるま で様子をみます。 39 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 5-4-2-2 地震直後の行動(揺れがおさまった、発生後 1~2 分) ① 落ち着いて、火の元確認、初期消火 ・ 火を使っている時は、揺れがおさまってから、あわてずに火の始末をします。 ・ 出火した時は、落ち着いて消火します。 ② 家族の安全を確認 倒れた家具の下敷きになっていないかを確認します。 ③ あわてた行動、けがのもと(靴やスリッパを履く) 屋内で転倒・落下した家具類やガラスの破片などに注 意します。 ④ 窓や戸を開けて、出口を確保 揺れがおさまった時に、避難できるよう出口を確保し ます。 ⑤ 落下物、あわてて外に飛び出さない 瓦、窓ガラス、看板などが落ちてくるので注意します。 ⑥ 門や塀には、近寄らない 屋外で揺れを感じたら、プロック塀などには近寄らない。 ※津波、山、がけ崩れなどの危険が予想される地域は直ぐ避難 5-4-2-3 地震後の行動(発生後 3~5 分後) ① 正しい情報、確かな行動 ラジオやテレビ、消防署、行政などから正しい情報 を得ます。 ② 確かめ合おう、我が家の安全、隣の安否 我が家の安全を確認後、近隣の安否を確認します。 ③ 協力し合って救出、救護 倒壊家屋や転倒家具などの下敷きになった人を近隣 で協力し、救出・救護します。 ④ 避難の前に安全確認、電気・ガス 避難が必要な時には、ブレーカーを切り、ガスの元栓を締めて避難します。 ⑤ 余震に注意します。 ⑥ 大声で知らせます。 ⑦ 消火器を使います。 ⑧ バケツリレーだ。風呂の水はため置きにします。 ⑨ 搬出・救護。 ⑩ 防災機関、自主防災組織の情報を確認します。 ⑪ デマにまどわされないように。 ⑫ 避難時に車は絶対に使用しない。 ⑬ 電話は緊急連絡を優先します。 5-4-2-4 地震後の行動(発生後 10 分~数時間~3日) 協力して消火活動、救出、救護活動をします。 ① 水、食糧は蓄えているものでまかないます。 40 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 3 日間の飲料水と食糧の備蓄をしておきます。 ② 災害情報・被害情報の収集をします。 ③ 無理は止めましょう。 ④ 助け合いの心が大切です。 ⑤ 壊れた家に入らない。 5-4-3 地震発生時の行動(特殊な場所) 5-4-3-1 高層階 ① ドアや窓を開けて避難口を保護します。 ② エレベーターでは、全ての階のスイッチを押し、止まった階で直ぐに降ります。 5-4-3-2 デパート、スーパーマーケットなど ① 鞄などで頭を保護する。 ② ショーウィンドウや背の高い陳列棚から、素早く 離れましょう。 ③ 柱や壁際に身を寄せます。 ④ あわてて出口に走り出さない。 ⑤ 係員の指示に従い、冷静に行動しましょう。 ⑥ 頑丈なビルのそばにいる場合は、ビルの中に入ります。 5-4-3-3 劇場・ホール ① 鞄などで頭を保護します。 ② 座席の間に身を隠します。 ③ あわてて出口に走り出さない。 ④ 係り員の指示に従って行動しましょう。 5-4-3-4 市街地 ① その場に立ち止まらない。 ② 鞄などで落下物から頭を保護します。 ③ 近くの公園や空き地へ避難します。 ④ 落下物に注意しながら公園、空き地な どの安全な場所へ避難しましょう。 ⑤ 近くに公園や空き地がない場合、周囲 の状況を判断して、建物から離れた安 全性の高い場所へ移動します。 ⑥ 狭い道路、ブロック塀や自動販売機、電柱や垂れ下がった電線には近づかないよう にしましょう。 5-4-3-5 地下街 ① 係り員の指示に従います。 ② 地下街で火災が発生した場合、ハンカチなどで鼻を覆い低い姿勢で壁づたいに避難 しましょう。 41 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 5-4-3-6 運転中 ① しっかりハンドルを握り、あわててスピードを落とさない。 ② ハザードランプを点灯し、周りの車に注意を促します。 ③ 急ブレーキをかけず、緩やかに速度を落とし、道路の左側に停車します。 ④ 揺れがおさまるまで周囲の状況を確認し、カーラジオで情報を集めましょう。 ⑤ 避難するときは、エンジンを切って窓を閉め、キーを つけたままで避難しましょう。ドアーロックはしない。 5-4-3-7 輸送機関 ① つり革、手すりを両手でしっかりつかまる。 ② 窓から飛び降りたりしない。 ③ 途中で止まっても、非常コックを開けて勝手に車外にでない。 ④ 乗務員の指示に従って落ち着いて行動します。 ⑤ シートベルトがある場合は、しっかり締める。外し方も併せて確認しておきます。 5-4-3-8 海岸や河川 ① 地震を感じたら、津波に備えてただちに高台などに避難し ましょう。 ② 正しい情報をラジオや広報車などを通じて入手しましょう。 ③ 警報が解除されるまで海岸に近づかない。 ※ 情報:最近では、自動販売機に地震速報機能を有したものがあります。周りにそのような機能を有し た自動販売機が設置されていない場合、設置してもらうように運動することも重要です。 コラム 阪神・淡路大震災(平成 7 年 1 月) 淡路市 60 代女性 2 階で寝ていたら助かった ~逃げ出す時に切った足、入浴後に気づく~ たまたま私たちは 2 階で寝ていたから助かったけど、 下 で寝ていたら完全にやられていたと思います。1 階の天 井が完全に落ちて、2 階部分が 1 階のようになってい ましたから。 主人が、枕元でライターをつけてくれてね。ライターで 照らしながら、「入り口が開いとるから、先に出ろ」っ て言ったけど、2 階の窓の桟やガラスが全部飛んでしま って、入り口に見えたのだろうと思います。ちょうど私たちの寝ている枕元にコタツが あって、こっち側にあんま器があって、反対側に大きなテレビ。そのテレビとこたつと あんま器に天井が支えられていたので、私は主人が引っ張り出してくれたガウンをパジ ャマの上にはおり、スリッパをはいて、はって出ました。背の高いタンスは山側に倒れ てくれたので、運良く、下敷きにならずにすみました。 その夜、難を逃れた妹の家でお風呂に入ろうとしたら、服がくっついて脱げないのです。お かしいなと思ってみると、太もものあたりが切れて血が固まっていました。地震で落ちた人 形ケースのガラスがふとんに突き刺さり、中の羽毛が空中に舞い上がって前が良く見えない ほどでしたので、それで切ったのでしょう。割れたガラスは本当に怖いものだと思います。 42 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 5-5 津波対策 5-5-1 津波警報・津波注意報がでたら 津波注意報は、高いところで 0.5m程度の津波が予想される場合に発表されます。津波警報 は、高いところで 1m~2m程度の津波が予想される場合に発表されます。大津波警報は、 高いところで 3m程度の津波が予想される場合に発表されます。陸上に駆け上がった津波に は、高さ 50cm程度でも人が立っていられなくなるほどの強い力があります。また、津波 は地形により、警報で示された高さ以上になることがあります。 津波注意報を聞いた時には、居住地などからの避難は不要ですが、海岸に近づかないように して下さい。津波警報や大津波警報を聞いたら、直ぐに高い所に避難して下さい。 5-5-2 津波の第一波、第二波・・ 津波の第一波が最も高いわけではありません。 津波は繰り返し押し寄せ、第2波、第3波が 最大となることもあります。また、引き波で始 まるだけではなく、押し波でくることもあり ます。第1波が小さがったからといって、津波 警報が解除される前に、避難先から帰宅する のは危険です。 平成 22 年 2 月に、チリで発生した大規模な地震により、日本の沿岸まで到達した津波で は、数時間後に押し寄せた第2波が最大になっていました。 5-5-3 津波避難所マーク 海岸近くにいる時には、近くに津波注意のマークがないかどうか確認しましょう。 また、津波警報を聞いたり、強い揺れを感じたりしたら直ぐに海岸から離れましょう。よく 知らない土地でも、津波避難場所や津波避難ビルを目印に避難して下さい。 5-6 火山対策(火山情報) 火山情報には、噴火警報と噴火予報がありま す。噴火警報は、居住地域や火口周辺に影響 が及ぶ噴火が予想された場合に、影響範囲を 付した名称で発表されます。また、噴火警戒 レベルを導入した火山では、噴火警報及び噴 火予報で噴火警報レベルを発表します。 噴火予報は、噴火警報を解除する場合や、火 山活動が静穏(平常)な状態が続く場合に発表されます。 警報・予報区分 警報の呼び方 警報レベル(キーワード) 噴火警報 レベル5(避難) 正式:噴火警報(居住地域) レベル4(避難準備) 噴火警報 火口周辺警報 レベル3(入山規制) 正式:噴火警報(火口周辺) レベル2(火口周辺規制) 噴火予報 レベル1(平常) 気象庁資料から 43 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) コラム 雲仙普賢岳(平成 2 年 11 月~平成 8 年 6 月)長崎市 40 代女性 必要だった火山の知識 ~噴火後からでも学習を~ 記者としてほんとうに悔しいのは、記者としてほん とうに悔しいのは、平成 3 年の 6 月 3 日に大火砕 流※が発生して、多くの方が犠牲になるまで、私自 身、恐いと思ったこともないし、危機感が全然なか ったということなんですね。 実は、その数日前に、大学の先生に、「記者さん、 マスコミが今いるあの場所は、もうほんとうに危ないよ」と言われたんです。そんなに きつい調子ではないけれど、「ほんとうに危ないから、下がりなさい」と。 その「危ない」という言葉を、「そこにいたら死ぬんだ」というふうに置きかえて理解 できなかったのは、火山に関する基礎的な知識が不足していたからだと思います。平成 2 年の噴火以来、あれだけ時間があったのに、私たちは火山のことを勉強していなかっ たのです。 今なら、噴火前の煙があがっているだけの状態であっても、先生の忠告に耳をかたむけ ることができる、そんな気がします。 ※ 火砕流は、高温の火山岩塊、火山灰、軽石などが高温の火山ガスとともに山の斜面を流れる現象で、流下速度は時速 100 キロメートルを こえることもあります。 <内閣府(防災担当)> 5-7 災害の種類 ① 災害 - 日本における災害の定義は、学術分野等に置いて様々ですが、前述のように災害対 策基本法第 2 条においては「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火、その 他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発、その他その及ぼす被害の程度にお いてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害」と定義されています。 ② 原子力災害 - 原子力災害対策特別措置法第 2 条では「原子力災害 原子力緊急事態によ り国民の生命、身体又は財産に生ずる被害をいう」と定義されています。 ③ 武力攻撃災害 - 災害対策基本法における災害の概念には、いわゆる武力攻撃やテロによる 被害は概念の中に含まれないことから、有事法制の整備に際して設けられた定義です。 国民保護法第 2 条第 4 号において「武力攻撃により直接又は間接に生ずる人の死亡又は 負傷、火事、爆発、放射性物質の放出その他の人的又は物的災害」として定義されてい ます。 ④ 武力攻撃原子力災害 - 国民保護法第 105 条第 7 号の一において「武力攻撃に伴って原 子力事業所外へ放出される放射性物質又は放射線による被害」として定義されています。 ⑤ 大規模災害及び非常災害 ⑥ NBC 災害 - 核兵器、生物兵器、化学兵器による攻撃をいいます。 ⑦ テロ災害 - テロにより引き起こされる災害を言います。 第6章 救出・救護 6-1 救出 大災害が起こった場合、消防や警察などの公的機関による救護活動が直ぐに行われない可能性 44 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) があります。そんなときのために、地域のみなさんが力を合わせた救出、救護活動が大切にな ります。 ① 低い階のベランダからの脱出 ・ 避難ハッチを活用します。 ・ 避難ハッチが使用不能の場合も考えて、ロープや縄はし ごを用意します。 ・ シーツや大ぶりの風呂敷きなどを結びロープの代わりに します。 ② 重い家具の下敷きからの救出 タンスの裏側はベニヤ張りの場合が多いのでそこを解体 し、引き出しを抜いて軽くします。 ③ ガレキからの救出 壁、柱、タイルなどの障害物を取り除くには、少しでも多 くの人たちと力を合わ せて取り組むようにし ます。 6-2 負傷者の運び方、注意点 ① 抱きかかえて移動 一人は負傷者を背中から 抱えて、もう一人は負傷者 の足を持ち、同時に持ち上 げ足の方から移動します。 ② 数人の素手で移動 体の下に手を差し入れて、 できるだけ水平に上げ抱 え込みます。 ③ 簡易担架の作り方 毛布と棒を利用して作り ます。 6-3 要救護者への補助 6-3-1 高齢者・負傷者 ① 援助が必要なときは、複数の人で対応します。 ② 急を要するときは、おぶいひもでおぶさって安全な場所まで避難します。 6-3-2 耳が不自由な人 ① 話をするときは真っ直ぐ顔を向け、口をなるべく大きく 動かして話ます。 ② 筆談(筆記法)は手のひらに指先で字を書くやり方でも よいです。 45 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 6-3-3 目の不自由な人 ① 杖を持った方の手はとらない。 ② 手先や手首を持たないで、ひじのあたりに軽く触れて、ゆっくり歩きます。 ③ 方向や目の前の位置などは、時計の文字盤の位置を想定して伝えます。 6-3-4 肢体の不自由な人 ① 車椅子は、階段では必ず 2 人以上、できれば 3~4 人で援助します。 ② 上がる時は前向きに、下がる時は後ろ向きにして恐怖感を与えないようにします。 ③ とっさの脱出、避難の際に救護者が 2 人以上いるとは限りません。おぶいひもなどで 背負い、救援者の両手は自由がきくようにします。 6-3-5 外国人・旅行者 ① とっさの時は、身振り手振りで話しかけ孤立させな いようにします。 ② 旅先では、非常口の確認をして下さい。 第7章 避難(一般災害及び武力攻撃災害共通) 7-1 避難勧告と避難指示 避難勧告とは、災害が発生する恐れのある場所に市町村長が発令、その地域の住民に対し て避難を勧めたり、促したりすることを言います(災害対策基本法第 6 条) 。武力攻撃事態等 では、都道府県知事から発せられます。 避難指示とは、災害による危険が目前にせまっている場合に市町村長が発令し、居住者な どを立ち退かせることをいいます。避難勧告よりも避難指示の方が、拘束力は強いものです。 7-2 避難圏域の設定 避難所等は、徒歩約15(災害時要援護者を基準に避難距離約700m)を安全な避難距離 のひとつの目安として考慮し、どの地域の住民がどの場所に避難すべきかを明確にし、避難圏 域を設定することが必要です。なお、避難距離は直線距離ではなく、道のりです。避難所等ま で歩いて15分以上を要する地域については、できるだけ15分以内に避難できる場所に避難場 所等を確保することに努めましょう。 また、市町村の行政界付近に住む被災者は、行政界を越えて最寄の避難所等に避難する場合も 考えられます。避難圏域の設定に当たっては、隣接市町村と相互の受入れ等を含めた協力体制 について十分協議しておきましょう。 7-3 避難方法・経路 市町村における避難誘導体制については、市町村地域防災計画により定められていますが、特 に大地震発生時、市町村等の職員、警察官、消防職員、自衛隊員等は住民の避難誘導に当たる ことが難しいと考えられます。 そのため、自主防災組織を中心とした住民らで近隣に声を掛け合って集団で安全に避難できる よう、日頃から訓練に心がけましょう。特に、高齢者や障害者等の災害時要援護者には、周囲 で気を配り安全な避難を手助けする必要があります。 また、避難経路の選定に当たっては、地震により損壊の恐れのある道路、鉄道の高架、橋 梁、トンネル、河川をはじめ、老朽木造住宅の密集地、急な斜面に形成された住宅密集地など、 46 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 通行上支障となるような箇所が避難途中にないかどうかを点検し、可能な限りこれらの場所を 避けて設定する必要があります。 7-4 避難 住み慣れた家でも、いざ避難しようとすると慌ててしまいがちです。そうならないためにも、 避難方法を考えておきましょう。また、各家庭により避難の方法が違ってきますので、それぞ れの家庭に応じた独自の避難方法を考えておくことが大切です。 ・ 二つ以上の別な方向への逃げ道を決めておく。 ・ 廊下や出入り口、階段などには避難の妨げになるような物を置かない。 ・ いざという時のために避難方法などを家族で話し合い、確認しておく。 ・ 服装や持ち物にこだわらず出来るだけ早く避難する。 ・ いったん避難したら再び中に戻らない。 ・ 消火する事が無理だと思ったらすばやく避難する。 ・ 姿勢を低くしてハンカチやタオルで口と鼻に当て煙を吸わないようにする。 ・ 避難するとき、慌てずに落ち着いて。 ・ 近隣の人達との助け合いが重要です。 災害対策基本法では、警察官等は避難のために指示することが出来るとしている一方、国民保 護法では、警察官等以外で避難誘導を要請できる者は、 ① 市町村の職員 ② 市町村長が指揮した消防長、消防団長 ③ 消防組合が指揮した消防長、消防団長 ④ 都道府県知事が指揮した職員とされています。 また、警察官等は避難誘導する際に避難住民に協力を要請することができますが、警察官等と は、警察官、海上保安官、自衛官のことです(災害対策基本法第 61 条、国民保護法第 63 条) 。 避難に際しては安全の確保に十分配慮しなければなりません。 7-5 帰宅 災害発生時に公共交通機関や私有車両での帰宅が困難な場合、どのようにして帰宅するかを事 前に決めておきます。 みんながむやみに移動すると、歩道が「満員電車状態」になります。また、途中での情報、食 料、水、トイレが無くて困惑することになります。そして、避難所はスペースが無くて大混乱 です。 7-5-1 事前にできること ① まず、家族で帰宅できないこともあることを確認しておきます。 ② 安否確認手段を決めておきます。 ③ 職場・学校に一泊以上留まるための準備をしておきます。 7-5-2 災害発生時 ① 先ず身の安全の確保、そして正確な情報の入手に努めます。 ② 家族に安否の確認を行います。 ③ 駅周辺には立ち寄らない。 ④ 滞在地域の助け合いに参加します。 47 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 7-5-3 徒歩帰宅する場合の備え 十分な情報が無いままの避難は、非常に危険です。したがって、次のような心構えでゆ ったりした気持ちで徒歩帰宅してください。 ① 耐震補強、家具の固定で、家族は安全、職場も安全。 ② 171そして携帯メールの伝言板、複数の安否確認、一安心。 ③ 職場にも、一日分の水、食料。 ④ 正確な情報を収集して、落ち着いて。 ⑤ 慌てず騒がず、時差帰宅。 ⑥ 日頃から、帰宅経路をシミュレーション。 ⑦ 携帯も、ラジオも、必ず予備電池。 ⑧ 助け合い、励まし合って徒歩帰宅。 ⑨ スニーカー、小さなリュックに傘入れて。 ⑩ 途中での、支援に感謝、無事帰宅。 7-5-4 チェックリスト ① 先ずは □ むやみに移動を開始しない ② 日頃の備え □ 安否確認手段を家族で話し合って決めておく。 □ 災害時帰宅できないことを、家族で話し合っておく。 □ 職場や学校に 2 泊以上宿泊できる準備(備蓄)がある。 □ 外出時に携帯電話のバッテリー又は充電器、ペットボトルを持ち歩く。 □ 自宅や事務所の家具の転倒防止対策を実施しておく。 □ 都道府県の自治体が行う帰宅困難者対応の訓練に参加しておく。 ③ いざという時には □ できるだけ安全な場所に留まる。 □ 落ち着いて正確な情報の把握。 □ 家族の安否を連絡。 □ 駅周辺には行かない(混雑を避ける) 。 7-6 避難時のポイント 強い地震又は弱い地震で長い時間ゆっくりとした揺れを感じたときは、直ちに海浜から離れ、 高台などの安全な場所へ避難し、ラジオなどで津波情報を確認します。山ぎわや急傾斜地域で は、山崩れ、がけ崩れが起こりやすいので、直ちに避難します。狭い路地や塀ぎわは、瓦など が落ちてきたり、ブロック塀やコンクリート塀が倒れてきたり、また、崖や川べりは地盤のゆ るみで崩れやすくなっている場合があるので、これらの場所から遠ざかりましょう。 ① 避難する前に、もう一度火の元を確かめてブレーカーも切る。 ② 各自が防災カードを身に付けます。 ③ ヘルメットや防災ずきんで頭を保護。服装は活動し易いもの。 ④ 荷物は最小限の物に。両手が使えるように背負うもので。 ⑤ 外出中の家族には連絡メモを。 ⑥ 避難は徒歩で。車やオートバイは厳禁。 48 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ お年寄りや子供の手はしっかり握って。 近所の人たちと集団で、先ず決められた集合場所へ。 避難場所へ移動するとき、狭い道、堀ぎわ、川すべりなどは避けます。 避難は指定された避難場所へ。 7-7 避難時の服装とルール 避難するときは、混乱防止のため決められたルールと秩序を守り、お互いに協力し合うことが 大切です。特に乳幼児、高齢者、病人、身体の不自由な人を安全に避難させるために日頃から 十分な対策を立てておきましょう。また、災害時に車で避難すると、避難場所やその周辺が車 で混雑し、かえって避難が遅れます。救護活動もできなくなってしまいますので、自分の都合 だけを考えた車での避難は絶対に止めましょう。 ① ヘルメットや防災ずきんで頭を保護。 ② 非常持ち出し品はリュックで。 ③ 軍手を着用。 ④ 長袖、長ズボンで。 ⑤ お年寄りや子供には「防災カード」をもたせ ます。 ⑥ 化繊より木綿製品を着用。 ⑦ 靴の底の厚い履きなれたもの。 7-8 地域の協力 阪神・淡路大震災時の防災活動に大きく影響したと言われる人間関係は何でしょうか。それは 町内会員等、いわゆる普段の顔見知りの関係でした。普段のご近所付き合いで防災の話題も必 要です。また、救護活動をより迅速に行うため及びけが人の収容先等の情報を得るため、対策 本部との連携が必要です。 ※ けが人、要介護者、高齢者、幼児等、避難時に援助が必要な人たちを「災害時要援護者」と呼び、特に連携と協力が必要です。 第8章 避難所 8-1 避難所での活動 避難所に移動する前にラジオ、テレビ、携帯電話、防災行政無線等から得られる災害情報が大 事です。そして、各避難所では集まっている人たちについて、早い段階でやるべきことは各個 人の情報収集及び安否確認等、必要な情報を収集することです。この時、各危機管理主任は積 極的にその地域の被災状況、情報を消防団員等と協力して収集します。また、それらに基づい て、対策本部は速やかに避難者名簿を作成し、家族や近所等の住人の有無を確認します。 被害状況の集積のために、自分自身の情報(被災状況・健康状態等)や被害状況の収集、 、近隣 の人達の情報(被災状況・健康状態等)収集等をすべき担当者が危機管理主任です。 一方、災害対策本部は、より効率的な救援活動を行うために必要な情報収集を行うため、各部・ 班への権限の分散化して活動するのが望ましい。また、市町村の連絡調整員なった人は、ボラ ンティアセンター等と対策本部間の連携のため情報収集と提供を適宜行います。 さらに、市町村は災害事故の犠牲者のため、遺体安置所の設置を行う必要があります。 ※ 都道府県知事は日本赤十字社に対して救援実施を委託できます(国民保護法77条)。 49 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) コラム 平成18年梅雨前線による豪雨(平成18年7月) 下諏訪町 20 代男性 軽トラックの「おせっかい隊」が出前ボランティア 地域の川があふれて浸水被害が出ましたので、僕た ちは日ごろから災害時のボランティア活動に備え ていましたので、すぐにボランティアセンターを立 ち上げました。 ところが、2 日間ぐらいほとんど依頼が来なかった んです。被災した地域を見ると、まだ片づけが終わっていないところがありました。で、 「自分たちから声をかけていけばいいんじゃないか」ということになり、「おせっかい隊」 というのをつくって、仲間と 2 人で軽トラックに乗って、町を回りました。 「ボランティアセンターっていうのがあるんですよ」と言うと、「そんなのがあるんです か?知らなかったです」と言われました。行くところ行くところ、「こんなのあるんです か?」って感じで、庭の清掃やらいろいろ頼まれるようになって、2 人では手が回らなく なるほどでした。 「ボランティアやります」のチラシを回覧で回してもらったのですが、なかなか届かなか ったからでした。中には、ボランティアセンターが閉鎖した後に届いたという家もありま した。「情報を早く正確に伝えるのは難しいな」と痛感しました。 <内閣府(防災担当)> 8-2 避難所の整備 避難所では、避難者の居住スペース、運営委員会の事務、物資の集積、情報の掲示、応急医療 の提供等に使用されるスペースのほか、避難住民の動線確保のためのスペースも必要となりま す。また、避難者 1 人当たりの有効建物面積 4 ㎡として計算し、想定される避難者数を収容で きるだけのスペースを確保しておくことが望ましいといえます。以上のほか、避難所自体が被 災し、使用できなくなる可能性についても、あらかじめ検討しておく必要があります。避難所 は、通常7日間程度設置されます。プライバーの問題も基本は、家族や親戚等を単位として必 要な「区画」を指定します。また、被災後、ライフラインの復旧や仮設住宅の建設などにより、 災害対策本部等が再考すべき事項としては避難所を離れた住人の空きスペ-スに対する再割り 当てが必要です。 ※ 有効建物面積 建築基準法上の床面積ではなく、階段や柱などの居住スペースとして使用できない面積を差し引いた面積を言います。通常、避難者一人当 たりの必要な占有面積は、2 ㎡程度になります。ただし、避難所の開設が長期化するにつれ、炊き出し、更衣や洗濯、談話等のためのスペ ースが必要となり、 避難者の空間占有率が50%近くにまで低下することが想定されます。 最終的には避難者1人当たりの有効建物面積では、 8㎡程度確保するのが望ましい。また、敷地内には情報の掲示やゴミの集積のためのスペースを確保することも考慮する必要があります。 8-3 避難所の設備 避難所に整備すべき設備については、基礎的な居住環境の確保はもとより、高齢者や障害者等 の災害時要援護者への対応を考慮のうえ、整備することが必要です。 ① 事前対策 水害や大地震により停電がおこった場合に備え、避難所施設には非常用電源を確保してお 50 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) く必要があります。発電機及び最低限の燃料となる重油等の備蓄が望まれるところです。 また、断水時には避難所においても飲料水をはじめ、トイレの洗浄や洗濯、入浴等のため の生活用水の確保が問題となります。避難所に井戸、プール、飲料用水兼用の耐震性貯水 槽、浄水装置等の貯水施設を設置することが望ましいと言えます。 ② 通信手段の確保 発災直後は電話が使えないことも考えられます。避難所と市町村の災害対策本部との間の 連絡手段を確保するため、あらかじめ防災行政無線やパソコン通信機器等を設置し、緊急 時の情報連絡体制を確保しておきたいところです。 ③ 施設の整備 施設面では、災害時要援護者が避難所を利用しやすいように、段差の解消や障害者用のト イレの設置等バリアフリー化について、配慮が必要です。また、高齢者や障害者、妊産婦、 乳幼児、病弱者などが対象となる避難所を「福祉避難所」と言います。 さらに、車椅子やポータブルトイレ、簡易ベッドなど、災害時要援護者が避難生活を送る ために必要となる資機材についても、 速やかに調達できる体制を整備しておくと安心です。 ④ 健康面 長期間の避難所生活における水分の摂取は、飲料水やスポ-ツドリンクで行います。 8-4 避難所の生活 避難所では、集団生活が基本であり、当然のことながら自宅とは異なり各種の制約等が必要と なります。例えば、自分勝手な判断や行動をしたり、指導者の指示に従わなかったりする等は、 他の人達への大きな迷惑となります。そのため、避難所生活では「毛布は毎日畳むこと」等必 要なル-ルの制定が求められます。 避難所での生活は、運営組織や活動班を中心に、福祉避難所や医療機関との連携、災害時要援 護者や女性への配慮、さらにはペット対策などを講じながら、可能な限りみんなが過ごしやす いような環境が作れるよう心がける事が大切です。 精神的なショックを受けた被災住民の心的ケアは、保健所の窓口開設の他、家庭訪問して潜在 的な患者を見つけるべきですが、日頃から活動している民生委員、保健師がこの役割を担いま す。これを「アウトリ-チング」といいます。 阪神・淡路大震災で、県が長期的に「心のケア」活動を行うために立ち上げた組織が、地元で 心の「ケアセンター」と称して活動しています。災害時要援護者にとってストレスは命にも関 わる問題となりますが、それを回避するためには、避難所生活そのものがストレスになる ことから、社会福祉施設への緊急入所が必要です。被災地における災害時要援護者の、生活上 のストレスを迅速に解決するために必要な事は、最低限、安心して生活できるよう、避難所に 来ていない要援護者の把握が大切です。心のケアについて市町村は関連機関と連携して開設し た相談窓口を、市民に知らせる広報等が重要です。 8-5 災害後のストレス 阪神・淡路大震災のような大震災の後では、地震の揺れへの恐怖、何もかも失ってしまった無 力感、何日もの避難所生活などにより疲労感がたまり、自分でも気がつかないうちにストレス がたまり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの心の病気になっている場合があります。 心の病気は年齢を問わず起こり、特にダメージを受け易いのは子供や高齢者です。話し相手に なってあげたり、 子供には作文や絵をかかせたりしてストレスを外に放出させてあげましょう。 51 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) コラム 福岡県西方沖を震源とする地震(平成17年3月) 福岡市60代男性 最初はみんな「お殿様かお姫様」の避難所 避難所に来た皆さんは、最初はお殿様かお姫様みたいに、じ っと座っているだけなんですよ。私たち小学校区の役員が対 応に追われているときも。同じ被災者なのにね。 そこで、「元気な方はどうぞ、一緒におにぎりを握ってくだ さい」、「お米を研ぐのを手伝ってください」とお願いした ら、若い人もお年寄りも我に返ったように、「それなら」と 気持ちよく炊き出しの手伝いをしてくれました。 あれから、避難所にいる人たちの気持ちがひとつになったような気がします。だから、避難 されてきた方々をお客様みたいにさせない方策、例えば必要な役割ごとにあらかじめチーム を作っておいて、どこに何人配置するかを決めておく。避難者にも作業をお願いするという ことも考えておくことが必要じゃないかと思います。 <内閣府(防災担当)> 第9章 家庭での防災対策 9-1 自助・共助・公助 災害の被害を軽減するためには、 「自助・共助・公助」が不可欠です。 ① 「自助」は、一人ひとりが自ら取り組むこと。 ② 「共助」は、地域や身近にいる人同士が一緒に取り組むこと。 ③ 「公助」は、国や地方公共団体などが取り組むこと。 9-2 家庭の防災会議 大地震の時、家族があわてずに行動できるように、普 段から次のようなことを話し合い、それぞれの分担な どを決めておきましょう。 ① 家の中でどこが一番安全な場所か。 ② 救急医薬品や火気などの点検要領 。 ③ 消火器、救急箱、非常用持ち出し品の置き場所の 確認。 ④ 幼児や老人の避難はだれが責任をもつか。 ⑤ 避難場所はどこにあるか。 ⑥ 避難経路はどうするのか。 ⑦ 避難する時、だれが何を持ち出すか、非常持出袋はどこに置くか。 ⑧ 家族間の連絡方法と最終的な集合場所はどこにするか。 ⑨ 地域の防災訓練に参加する。 ※ 子供達にも、留守番をしている時や外で遊んでいる時はどうすればよいかなどを話しておきます。また、日頃から避難先や避難先までの経路 、 避難先での集合場所などについてご家族で話し合って決めておきましょう。さらには、昼の場合と夜の場合など、家族みんなの分担をはっきり 決めておくことも大事です。 52 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 9-3 我が家の耐震チェック 地震に対する強度がどれほどか、問診で我が家を自己診断してください。 合計が 10 点 :ひとまず安心ですが、念のため専門家に診てもらいましょう。 合計が 8 点~9 点 :専門家に診てもらいましょう。 合計が 7 点以下 :心配ですので、早めに専門家に診てもらいましょう。 問診1 建てたのはいつですか? A. 1981 年 6 月以降 得点 1 点 B. 1981 年 5 月以前 得点 0 点 C. 分からない 得点 0 点 問診2 いままでに大きな災害に見舞われたことがありますか? A. 見舞われたことがない。 得点 1 点 B. 床下浸水、床上浸水、火災、車の突入事故、 大地震、崖上隣地の崩落など災害に遭遇した。 得点 0 点 C. 分からない。 得点 0 点 問診3 増築について? A. 増築していない。 得点 1 点 B. 必要な手続きをしないで増築した。 得点 0 点 C. 分からない。 得点 0 点 問診4 痛み具合や補修・改修について? A. 痛んだところはない 得点 1 点 B. 老朽化している。不具合が生じている。 得点 0 点 C. 分からない。 得点 0 点 問診5 建物の平面はどのような形ですか? A. どちらかというと長方形に近い。 得点 1 点 B. とちらかというとL,T字型の複雑な形。 得点 0 点 C. 分からない。 得点 0 点 問診6 大きな吹き抜けがありますか? A. 一辺が 4m以上の大きさの吹き抜けはない。 得点 1 点 B. 一辺が 4m以上の大きさの吹き抜けがある。 得点 0 点 C. 分からない。 得点 0 点 問診7 1階と2階の壁面が一致しますか? A. はい。 得点 1 点 B. いいえ。 得点 0 点 C. 分からない。 得点 0 点 問診8 壁の配置はバランスが取れていますか? A. 1階外壁の東西南北どの面にも壁がある。 得点 1 点 B. 1階外壁の東西南北の何れかの面に壁がない。 得点 0 点 C. 分からない。 得点 0 点 問診9 屋根葺材と壁の多さは? A. 瓦など比較的重い屋根葺材であるが 1 階に壁が多い。又は、鉄骨葺・鋼板葺である。 得点 1 点 B. 和瓦、洋瓦など比較的重い屋根葺材で1 階に壁が少ない。 得点 0 点 53 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) C. 分からない。 問診 10 どのような基礎ですか? A. 鉄筋コンクリートの布基礎又はベタ基礎。 B. その他の基礎。 C. 分からない。 得点 0 点 得点 1 点 得点 0 点 得点 0 点 9-4 備蓄食料等 大災害が発生すると、水、電気、ガス、通信などのライフラインの停止する可能性があります。 復旧までの間、自宅で生活できるように水や食料、生活用品を備蓄しておきましょう。自宅が 被災したり、自宅周辺が危険と判断された場合は、安全な場所に避難しなければなりませ ん 。 急いで自宅を出なければならないこともありますので、非常持ち出し品は前もってリュックに 詰めるなどの準備をしておきましょう。 当協会では、5 年間常温保存が可能な食料や水の備蓄を推奨 しています。詳しくは、危機管理協会ホームページをご覧く ださい。(www.cma-j.org) 9-4-1 日頃から 防災のために特別なものを用意するのではなく、できるだ け、普段の生活の中に組み込んで、平時に無意識に更新されるものでまかないましょう。 9-4-2 国・地方公共団体の備蓄 災害対策基本法及び国民保護法では、指定行政機関、指定地方行政機関及び地方公共団体等 は、必要な量を備蓄するように規定しています(国民保護法第 142 条)。また、都道府県 相互、市町村相互等の供給の相互協力をするよう定めています(国民保護法第 147 条)。 ※ 災害時における医薬品の提供等について、医薬品の卸売業者などと協定を締結しておくこととしています。 9-4-3 いざという時 国や地方公共団体ができる限りの備蓄をしていますが、公共機関 の援助が実施されるまでの間の対応として、各家庭でも最低限必 要な備蓄をするように推奨しています。 家庭における災害用備蓄は、次を基準に行いましょう。 ① 最低限一人3日間程度の水(一人一日3リットルが目安) 。 ② 食料品(主食、おかず、菓子類等) 。 ③ 家族構成、住居や地域特性によって異なります。 ④ 家族、地域の状況、消費期限等と照らし合わせ定 期的に。 ⑤ チェックし備蓄品の入れ替え等をしましょう。 ⑥ 毛布、ビニールシート(敷物、雨除け)。 ⑦ 卓上コンロ、ボンベ、使い捨てカイロ、紙、ポリ 容器。 ⑧ その他 54 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) コラム 平成19年新潟中越沖地震(平成19年7月) 柏崎市30代女性 食料や物資はふだんから備蓄していないと ちょうどコンビニに停めて、車のサイドブ レーキをかけた瞬間に揺れ始めて、そのう ちジェットコースターに乗っているよう な感じになりました。 直後でしたので、運良くコンビニに寄れて 水とかおにぎりとかパンとか、当面必要な 食料を買うことができました。コンビニは、お酒とかが割れて床が水浸しで、お酒の臭い が混じったすごい臭いがしました。家に帰ったら既に停電していました。で、「ああ、ポ リタンクを買ってくるのを忘れたね」と言って、慌ててまた買いに出たんですけど、「も う全部売り切れました」と言われてしまいました。 もう水もすぐにとまっちゃうような感じでしたから、ペットボトルの空いたのを一生懸命 探して、買ってきた水と冷蔵庫にあったお茶とかで、復旧まで足りるのかなとすごく心配 しました。3 年前の新潟県中越地震のときは水もガスも止まらなかったので、「何とかな るだろう」と、容器とかも全然そろえていなかったんですね。それが、ガスも、水道も、 電気も全部とまってしまったので、「私たちはどうなるんだろう」という感じでした。 やはり、食料や必要な容器などは、ふだんから備蓄しておかないといけないなと思いまし た。 <内閣府(防災担当)> 9-5 非常用持ち出し品(チェックリスト) 直ぐに必要になるもの、なければ困るものは何かを考えて、用意しましょう。 地震の被害によっては、避難を余儀なくされることもあります。避難する時に持ち出す『非 常持出品』を準備しておきましょう。非常持出品は、先ずは物の購入に必要な現金です。 カード類は停電で使用できないことがあります。備蓄品の中から避難生活に必要なものを選 び、備蓄品にない場合は、必要に応じて準備しましょう。 また、玄関や寝室など持ち出しやすい所で保管し、すぐに持ち出せるようにしておきます。 バッグ形式の背負える袋などにいれておけば、持ち出す時に両手が使えて便利です。 非常持ち出し袋には、最低これだけは準備したいものです。 ※ 阪神・淡路大震災の時は、布製ガムテ-プは荷物の整理、止血、ガラスの飛散防止に、また、キッチン用ラップは止血や汚れた皿を覆 って使用することで節水にと、大いに役立ったとの記録があります。冬季は防寒具を忘れないことです。避難所の暖房等環境は不明な ことが多いためです。さらに、いざという時のために浴槽に水を溜めておいて、枕元に懐中電灯と底の厚い靴を用意する等、普段の心 構えも大事です。 ① 非常持ち出し品 □ 携帯用飲料水(1 人 1 日 3 リットル) □ 食料(保存食料、カップ麺、缶詰、ビスケット、チョコレートなど) 保存食 4~5 食分、ビスケット 1~2 箱、板チョコ 2~3 枚、缶詰 2~3 缶 □ 貴重品(現金、預金通帳、印鑑、権利証書、健康保険証など) □ パスポートや運転免許証 55 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) □ 緊急用品(小さな子供がいる家庭は、ミルク、紙おむつ、哺乳瓶など) 傷薬、包帯、胃腸薬、鎮痛剤、解熱剤、目薬、消毒薬、持病の方は常備薬も □ ヘルメット、防災ずきん □ 軍手(厚手の手袋) □ 懐中電灯 □ 衣類(セーター、ジャンパー類) □ 下着 □ 毛布(軽いもの) □ 携帯ラジオ、予備電池 □ マッチ、ろうそく(火をつけるもの:ビニールで包む) □ 使い捨てカイロ □ ウェットティッシュ □ 筆記用具(ノート、鉛筆) □ 個人的に必要なもの(常備薬、入れ歯、補聴器など) ② 外出時に携帯したいもの □ 身元や連絡先の分かるカードなど □ 病院の診察券など □ 携帯ラジオ □ メモ帳・筆記用具 □ 笛 □ 水 □ チョコレートなど □ 口を覆うハンカチなど □ 個人的に必要なもの ③ 避難・安否確認 □ 避難場所(自宅からの) □ 会社や学校など外出先からの避難場所 □ 避難場所までの経路 □ 家庭の安否確認方法 9-6 安否確認 9-6-1 家族の安否確認方法 NTT「災害用伝言ダイヤル 171」の活用や地震時に落ち合う場所をあらかじめ定めておき ましょう。また、地震時に安否情報の取次ぎをしてもらえる親戚、知人等(遠方に住んでい る人であることが必要)を決めておきましょう。秘匿には暗証番号を使用しましょう。 ※ 災害用伝言ダイヤル171を使用する場合利用地域を特定するために市外局番付の被災地の電話番号を通知します。秘匿性を求める時 は暗証番号を利用しましょう。また、日頃から避難先や避難先までの経路、避難先での集合場所などご家族で話し合って決めておきま しょう。 9-6-2 非常用伝言ダイヤル等「171」 9-6-2-1 非常用伝言ダイヤル 地震や大雨等による災害が発生し、被災地等への安否確認等の電話が殺到して 56 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 電話がかかりにくい状態(輻輳状態)になった場合でも、電話番号をキーにして安否確認 の伝言の録音や再生により、被災地内の家族や親類、友人等と連絡が取れるようにする ものです。仕様については、次のようにします。 ・ メッセージを残す 被災地から □ 171 をダイヤル。次に「1」 (録音)を選ぶ □ 自分(被災地)の電話番号をダイヤルして、メッセージを録音。 ・ メッセージを聞く □ 171 をダイヤル。次に「2」 (再生)を選ぶ □ 被災地の方の電話番号をダイヤルして、メッセージの再生。 ① 災害の規模により決定されますが、伝言蓄積数には限りがあります。 ② 一般加入電話・公衆電話・携帯電話・PHS(一部事業者を除く)から使用で きます。 ③ 使用の際、通話料がかかります。 9-6-2-2 災害用ブロードバンド伝言板「Web171」 インターネット上で、安否情報を登録・確認するサービスです。 9-6-2-3 携帯電話を利用した災害用伝言板サービス(携帯電話各社提供) 携帯電話で安否情報を登録・確認するサービスです。 9-7 近所との連携 9-7-1 ご近所の助け合いが大切 阪神・淡路大震災で、家の下敷きになった人の多くを助け 出したのは、家族や近所の人たちでした。大災害が発生し た時には、都道府県や市町村、消防、警察などの防災関係 機関の対応が追いつかない場合も予想されます。いつどん な時に、助ける側、助けられる側になるか分かりません。 普段から近所付合いを大切にすることが地域防災力の向上に繋がります。 9-7-2 防災訓練への参加 近年は、防災訓練も工夫がされていて、いざという時に訓練したことが本当に役立つよう、 参加型の訓練が増加しています。町内会や自治会が中心となって開催する防災行事に積極的 に参加して、避難や安否確認、救出、救護、炊き出しや避難訓練、避難所生活などを体験し てみましょう。 ① 見学 先ずは、訓練を見学してください。 ② 参加型の防災訓練 体験することにより、何が必要か、何が足りないのかが具体的に分かってきます。 ・ みんなで歩いて避難訓練 ・ 身近なものを使って救護訓練 57 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) ・ ご近所で楽しく炊き出し ・ 体験してみる避難所生活 9-7-3 得意分野を生かして 自治体や自治会・町内会、学校、企業、自主防災組織、ボランティア団体など、地域の様々 な組織・団体が連携する体制を作り、維持することで、その地域の防災力は向上し ま す 。 ご近所に、災害の時に協力し合えたらいいなという団体があったら、積極的にコミュニケー ションを図りましょう。また、おまつりなどの参加した人が楽しめるイベントに、防災教育 の紙芝居やゲーム、炊き出しなどを組み入れるのも、防災の輪を広げるポイントです。 9-7-4 要援護者の確認 一般的に高齢者、障害者、外国人、乳幼児、妊婦等、災害に際して必要な情報を得て、自ら の安全を守るために避難するなどの災害時の一連の行動をとるのに手助けが必要な方の事 を、災害時要援護者と呼びます。 被害を減らすためには、災害時要援護者の方と地域の方との協力が不可欠です。自分が災害 時に助けを必要とすると分かっている場合は、日頃から出来る限りの防災訓練などに参加し て、どんな助けが必要なのかを地域の方に伝えておきましょう。 また、災害が発生した際に自分が無事であればご近所に進んで声をかけるようにし、地域に 住む災害時要援護者の方は勿論何か助けを必要としている人はいないか確認しましょう。 コラム 阪神・淡路大震災(平成 7 年 1 月) 神戸市 60 代男性 ご近所で「あげます」 「いります」 ~玄関前にボードで貼り出し~ 地震後、家の中を片づけるのに大変だった時期に、 近所の十数家族で避難所になった近くの小学校に、 交代でみんなの朝とお昼の菓子パンを取りに行っ ていました。初めから決めていたわけじゃなくて、 奥さん方が「今日は私が手伝います」、「じゃ、次 の日は私が手伝います」って自主的に言ってくれた のが始まりでした。 しばらくたってから、家の前に厚いベニヤ板を出して「こんなものが役立つよ」とか、 「こんなものが余っているから使わない?」とか書いた紙を張り出すようにしたら、お 互いにないものをスムーズに供給しあうことができました。 うちは、きれいな水の入ったポリタンクを外に出しておいたのですが、どこからか情報 を聞いて、「うちのおばあちゃんが薬飲む水がないんですけど、いただいていいですか」 とかいって来られるんです。煙やらで、のどがむせたりするとやっぱり水が欲しくなる でしょ、みなさん寄ってきて、最後は犬まできましたよ。 私は、引っ越してきて 1 年 2 カ月ぐらいで、近所とは顔見知りになっていましたが、も うちょっと広い範囲に住む、初めて家の名前も知った人たちと一緒に力を合わせること ができて、とてもうれしかったです。 <内閣府(防災担当)> 58 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 第10章 訓練、その他 10-1 訓練 いざと言う時のために日ごろから訓練を行うことは効果的なことです。地方公共団体の長は避 難に関する訓練への参加を要請できます。 (災害対策基本法第 48 条及び国民保護法第 42 条 第 3 項)公益社団法人危機管理協会は日常の啓発、計画立案及び訓練のお手伝いすることを目 的のひとつとしています(危機管理協会定款) 。 10-2 自主防災組織への参加 現実に大災害が発生した場合には、消防、警察、地方公共団体(都道府県市町村等) 、政府、防 災機関などが全力で災害救助活動が実施されますが、電話、道路、水道などが破壊されたり、 同時に多数の火災が発生した場合などは、活動に限界が出てきます。 こうした場合には、何よりも地域の皆さんの協力が必ず必要です。災害を大災害にするかしな いかは、地域の皆さん一人ひとりの行動と、自主的な防災住民組織の積極的な活動にかかって います。 「自分たちの町は自分たちで守る」ために、皆さんの町でも、いざという時に協力して素早く 行動できるような体制づくりをする必要があります。 10-2-1 自主防災組織の主な活動 ① 防災知識の普及 ・ 地域防災訓練や防災座談会の実施、参加の呼びかけ ・ ミニコミ紙やちらしの発行 ・ 防災マップの作成 ・ 地域内危険要因や危険箇所の調査 ② 防災巡視・防災点検 ・ 地域の消火器や防火水槽、防火用品などの設備や装備 ・ 違法駐車や放置自転車の状況チェック ・ ブロック塀や石垣、崖などの安全確認 ・ 看板や自動販売機の安全確認 ③ 防災訓練 ・ 情報連絡訓練 ・ 初期消火訓練 ・ 小型消防ポンプ取扱訓練 ・ 応急救護訓練 ・ 救出・救護訓練 ・ 避難誘導訓練 ・ 給水・給食訓練 ④ 非常時の活動 ・ 初期消火 ・ 負傷者の救出・救護 ・ 住民の避難誘導 ・ 情報収集と伝達 ・ 給水・給食 59 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 10-2-2 要援護者への支援 高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、児童、傷病者、外国人など、災害時に大きなハンディを 持った人たちが多くいます。いわゆる「防災時要援護者」の方たちは、災害が発生した場合、 情報把握、避難、生活の確保などの活動を、的確から迅速に行いにくい立場に置かれてしま います。地域が一丸となって支援が行えるよう心がけましょう。 ① 災害時要援助者の身になって防災環境の点検をしましょう。 放置自転車などの障害物はないか、耳や目の不自由な人への警報や避難勧告の伝達方 法はあるかなど、災害時要援護者に対応した環境づくりを心がけましょう。 また、システム上の問題だけでなく、災害発生時の心構えや過去の災害から得た教訓 を子供たちに日頃から語り伝えるなど、防災の「ソフト」面での充実を図りましょ う。 ② 避難するときはしっかり誘導します。 高齢者や乳幼児などは手をつなぎ、背負うなどしてしっかり保護、非常時には一人の 障害者に対して複数の住民による救援体制をとり、また、災害時要援護者に対して地 域で具体的な救援態勢を決めておきます。支援を必要とする方やその家族に声をかけ、 避難の準備を手伝い、隣近所で助け合いながら避難するようにしましょう。 ③ 困ったときこそ暖かい気持ちで助け合いましょう。 災害時の混乱や被害が大きいほど、誰もが殺伐とした気持ちになりがち。しかし、そ んな非常時にこそ不安な状況に置かれた人の立場に立ち、支援していく心構えが大切 です。困っている人や災害時要援護者に対して温かい思いやりと真心を持って接しま しょう。 ④ 復旧活動にも積極的に参加してもらいましょう。 被災後の復旧活動の際に、高齢者や子供たちにも積極的に参加してもらいましょう。 何もしないでいることがかえってストレスや体調を崩す原因になります。活動の目標 を決めて毎日適度に身体を動かせるように配慮しましょう。 10-3 ボランティアへの参加 ボランティアというと、何か特別なことをしなければならないと身構えてしまう人が少なく ないでしょう。 しかし、ボランティアとはそもそも「自ら意志をもって行動する」という意味ですから、要は あなたの意思でやりたいことをやればいい訳です。災害などの特別な場所だけでなく、普通の 暮らしの中でもボランティア精神は発揮できます。 あなたも自分に適した無理のないボランティア活動に踏み出してみては如何ですか。そのボラ ンティア活動の力を十二分に発揮するためにも、危機管理主任はリーダーとして欠かせない存 在になります。 10-4 その他(罰則など) ① 「交付された赤十字標章や特殊標章」をみだりに使用してはいけません。特殊標章等をみ だりに使用した場合、6 月以下の懲役又は 30 万円の罰金となります。 (国民保護法 189 条) ② 避難住民を誘導する際に必要な警告又は指示をすることができるのは警察官、海上保安官 とされており、警察及び海上保安官がいない場合に限り、自衛官及び消防吏員は、危険な 60 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 場所への立入禁止、退去、物件の除去の措置を講ずることができるとされています(国民 保護法第 66 条) 。 ③ 交通規制に従わない者に対する罰則は、 3 ヶ月以下の懲役又は 30 万円以下の罰金です (国 民保護法第 190 条) 。 ④ 避難住民の復帰の措置を講ずるのは市町村長とされています。 (国民保護法 69 条) 第11章 救命及び応急措置 災害が発生すると、普段のように救急車がかけつけられないことも考えられます。怪我をしてし まった場合、自分は無事でも家族や周りの人が怪我をしている場合や応急措置が必要な場合など に備えて、知識を身に付けましょう。 また、病院は重傷者の治療で手一杯です。開業医は救護所を受け持ちますが、医師一人当たり、 数 十人から百人を超す負傷者に対応しなければなりません。 医療資機材も大量に不足していることが 考えられます。 この状態で通常の医療と同じことはできないので、自らの応急措置を身に付けて医療機関への交 通整理にも心がけましょう。 なお、この章での応急処置は特記を除いて、内閣官房の国民保護ポータルサイトに基づいて記載 されています。 11-1 人が倒れている場合(共通) ① 周囲の安全を確認し、安全でないと判断した場合は、安全 な場所に移動させましょう。 ② 以下に基づいて、意識があるかを調べましょう。 ・ 「大丈夫ですか?」と呼びかけ、軽く患者の肩を叩いて、 返事はするか。 ・ 話はできるか。 ・ 手足を動かしているか。 ・ 痛みに対して反応はあるか。 ③ 意識に障害があることが分かった場合は、救急車を呼びましょう。 ・ 直ちに医師の診療が必要ですので、可能な 限り救急車を呼ぶため「誰か救急車を呼ん で」と助けを求めましょう。 ・ むやみにゆすったり起こしたりしてはいけ ません。 ・ 意識がない場合は気道の確保が重要です。 額に手を置きあご先を引き上げて、呼吸が しやすいように空気の通り道を確保します。 口の中に物が詰まっていたら取り除きましょう。 ④ 呼吸が止まっていたら、直ぐに人工呼吸を行いま す。 ・ 親指と人差し指で鼻をつまみ、鼻の孔をふさぎ ます。 ・ 大きく口を開けて静かに1回2秒かけて息を吹 61 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) き込みます。 ・ 抵抗なく息が入れば、もう1回息を吹きかけます。 ・ 2回吹き込んだら循環のサイン(呼吸運動、せき、その他対動)を10秒以内で観察し ます。 ⑤ 人工呼吸を行っても循環のサインがない場合、心臓マッサージを行います。 ・ 手を重ね、垂直に体重をかけ、胸の骨が3cmから5c m下方に圧縮されるように1分間に 100 回の速さで 15 回圧迫します。 ・ 15 回圧迫後、人口呼吸(上記)を 2 回行います。この 操作を一定の間隔で繰り返します。 ※ ④と⑤の方法は、8 歳以上の方に実施してください。 11-2 止血法 11-2-1 切り傷などにより出血している場合 ① 出血しているところを清潔なガーゼや布でやや強く押さ え、止血しましょう。 ② 骨折がないことを確認した上で、傷口は心臓よりも高くしましょう。 ③ 包帯を巻く時は患部を清潔に保ちましょう。 ④ じかに血液に触れないよう、 ビニール・ゴム手袋やスーパーの袋などを利用しましょう。 11-2-2 止血法:直接圧迫止血法(NPO 法人災害・医療・町づくり(静岡県)による) 中枢の動脈を圧迫する方法は医療者でも、この方法で出血を止めるのは難しく、動脈の位置 を知らない市民には不可能である。 中枢で縛る方法は市民でもできる緊縛手段は紐、ゴムなどであるが動脈の拍動を止めるのは 難しい。 中途半端な緊縛は、静脈を止めるが動脈は止まら ず、うっ血状態を作り余計に出血する。 外科医は先ず直接圧迫を試みるのが普 通で、殆ど の出血は直接圧迫で止血できる。 具体的方法: きれいなタオルなどで「面として」押さえる。 この際血に触れないために買い物用ビニール袋や ラップを手袋代わりに止血できたら、傷の手当て に準じます。 11-3 火傷 ① 流水で患部を冷やして下さい。 ② 水ぶくれはやぶらないように注意しましょう。 ③ 消毒ガーゼかきれいな布を当て包帯をしましょう。 ④ やたらと医療品を使うのはやめましょう。 62 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 11-4 骨折(固定法) ① 出血している場所はその手当てをしましょう。 ② 負傷した箇所はあまり動かさないで下さい。 ③ 氷或は冷湿布などを利用してハレや痛みを和らげて下さい。 ④ 可能であれば、添え木を当て、骨折部分の上下を固定します。 添え木が硬い場合には、タオルで回りを巻いて下さい。 ⑤ さらに腕の場合は三角巾などで固定します。 ※ 添え木は、棒や板、傘やダンボールなどで代用できます。 11-5 ねんざ ① 氷或は冷湿布などを利用してハレや痛みを和らげて下さい。 ② 靴は添え木の代わりになるので脱がずに、その上から三角巾を布で固定します。 ③ 三角巾を棒状にし、中央を足の裏にあて、足首に引き上げて交差させます(手順1参照) 。 ④ 三角巾の両端を足の甲に回して交差させ、両端をかかとの三角巾の内側に通します(手順 2参照) 。 ⑤ 三角巾の両端を足の甲に回して結びます(手順3参照) 。 11-6 皮膚の異常(かゆみや発疹など) ① 汚染された衣類は汚染物質が目や鼻と接触しないように切り取り、ビニール袋に密閉しま しょう。 ② 水と石鹸で手、顔、体を洗いましょう。 11-7 体に火がついた場合 ① 水や消火器により体についた火をけしましょう。 ② これらがない場合は、決して走ったりせず、手をついて地面に転がりましょう。 11-8 精神的ショック ① 子供やお年寄りの近くには付き添うようにしましょう。 ② 無理をせず、休息や睡眠、家族を過すよう時間をきちんと取りましょう。 11-9 傷の手当の参考:湿潤療法、ラップ療法 (NPO 法人災害・医療・町づくり(静岡県)による) 市民の周りには、消毒液もガーゼもありません。そもそも湿潤療法では、消毒もガーゼもして はいけない治療で、水とラップがあればよいのです。ワセリンがあれば有ったほうがよいので すが、無くても良いです。 具体的方法と、医療機関にかかったほうが良い場合を記載します。 63 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 考え方 : 傷の汚れを取るため水で洗う。傷を乾かさないためラップでおおいます。 傷から浸出液がでるので、それが外に出るように出口を開けるため絆創膏等は 全周に貼らない。 毎日洗って、ラップを張り替えます。 具体的方法 : ① 出血していなければタオルで圧迫し止血し ます。 少量の出血であれば、傷の手当をした後、ラ ップの上から圧迫します。 ② 水で洗う。 (傷の汚れを洗い流すため。 ) ③ 水をふき取ります。 ④ ラップを貼ります。 ⑤ ワセリンがあればラップに塗ります。 (痛み が取れます) ⑥ 絆創膏でとめます(水分が出るように全部は 塞がない) 。 絆創膏がない場合、電気工事用のビニールテープは肌に刺激が少ないので使えます。 ⑦ 包帯があれば巻きます。 ⑧ 毎日洗ってラップを張り替えます。 医療機関にかかったほうがよい傷 筋肉が裂けていたり、骨が見えているような深い傷。 傷の奥に砂やガラスなどが残っている傷(洗い流すだけではとれないから) 。 動物に咬まれた傷。 11-10 AED を使用(心肺蘇生法) AED とは、心停止の負傷者を救う装置です。 「自動体外式 除細動器」(Aoutomated External Defibrillator) は 負 傷者の心室細動を電気ショックによって除去し(除細動) 、 心臓を正常な状態に戻します。AED は救急現場で一般市 民が使用できるよう設計されています。 ① AED の準備 AED を負傷者の胸部の左側に置きます。AED は、音 声メッセージと点滅するランプで救 助者がやるべきことを指示してくれますので、落ち着いて指示に従います。 ② 電源を入れる。 ケースのふたを開け、電源スイッチを押します。 ※AED は、小児(1 歳以上 8 歳未満)にも使用できます。その場合、小児用パッドがあれば、それを使います。1 歳未満の乳児に対しては AED を使用しないで下さい。 ③ 電極パッドを装着する。 袋から 2 個の電極パッドを取り出し、右前胸部(右鎖骨の下で肋骨の右)と左側胸部(わ きの 5~8cm下)に貼り付けます。詳しい位置は、電極パッドそのものや入っていた袋 に表示されています。パッドのケーブルを AED 本体に差し込みます。 64 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) ④ 心電図を解析する。 電極パッドを貼り付けると、負傷者から離れるように指示する音声メッセージが流れ、除 細動が必要かどうか判断するため自動的に心電図の解析が始まります(解析ボタンを押す 必要がある機種もあります) 。 ⑤ AED の指示があれば電気ショックを実施する。 自動解析で電気ショックが必要と判断されたら、音声メッセージ、除細動ボタン(ショッ クボタン)の点滅、充電完了の連続音などで除細動を実施するよう指示が出ます。負傷者 に誰も触れないことを再度確認してから除細動ボタンを押します。実施後、電気ショック による除細動の成功、失敗にかかわらず、直ちに心肺蘇生を開始します。 ⑥ 心肺蘇生と AED の手順を繰り返します。 ・ 電気ショック⑤の後、 ・ 心電図解析④の結果、 「電気ショックは必要ありません」などの音声メッセージが出た 場合 上のいずれの場合も、直ちに心肺蘇生を実施します。心肺蘇生を再開して 2 分経つと、 AED が自動的に心電図の解析を始め、再度「ショックの要・不要」を指示します。 以後、この手順を救急隊員や医師に負傷者を引き継ぐまで繰り返します。 ※ あくまでも AED の説明書又は音声指示に従って処置して下さい。 11-11 トリアージ 11-11-1 トリアージとは トリアージは、人材・資源の制約の著しい災害医療において、最善の救命効果を得るために、 多数の傷病者を重症度と緊急性によって分別し、治療の優先度を決定することです。語源は フランス語の「triage(選別) 」から来ています。適した和訳は知られていませんが、 「症度 判定」というような意味で、一般病院の救急外来での優先度決定も広義のトリアージであり、 識別救急とも称します。 11-11-2 医師が到着するまでのトリアージのためのチェックリスト 医師が現場に到着するまでの間、市民にも何かができると考えます。しかしながら、この方 法 がベストではなくベターであるということは言うまでもないと考えています。ひとりで も多くの命や身体を守ることに重点を置いた方法です。 11-11-3 病院に搬送すれば、患者は助かりますか 阪神・淡路大震災では、混雑した病院、そうでなかった病院に大きく分かれます。何の情報 も無く、病院に搬送すれば助かると信じて病院に運んでも、病院及び医師の能力を超えてし まうと死者造成所になってしまします。助かる命も助からないのです。したがって、先ず病 院に関する情報を得るよう心がけましょう。また、軽症な怪我や病気での受診をなるべくさ けるようにする協力が必要です。そのためには、災害だからこそ、病気や怪我をしないよう に被災後の避難や避難所での生活では、細心の注意をしましょう。 65 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) -使用には特に注意が必要です- 以上の方法があります。また、医師が到着後、このトリアージ方法は医師によるトリアージに 優先することはありません(NPO 法人災害・医療・町づくり(静岡県)による) 。 66 危機管理主任4級用教育資料(平成24年&25年度版) 参考文献 □ 内閣府 日本の災害対策、ホームページ、その他冊子資料 □ 内閣官房 国民保護ポータルサイト、その他の冊子資料 □ 防衛省 ホームページ、その他冊子資料 □ 地方自治体(東京都、港区、静岡県など)の各ホームページ、その他冊子資料 □ 警察庁 ホームページ、その他冊子資料 □ 消防庁 eカレッジ、ホームページ、その他冊子資料 □ 東京消防庁 ホームページ、その他冊子資料 □ 気象庁 ホームページ、その他冊子、航空気象入門 □ 日本消火協会、その他冊子資料 □ ウィキベディア □ レスコラ財団 ホームページ □ 法律: 災害対策基本法、災害対策基本法施行令、災害基本法施行規則 大規模地震対策特別措置法、大規模地震対策措置法施行令 原子力災害対策特別措置法、原子力災害対策特別措置法施行令 石油コンビナート等災害防止法、石油コンビナート等災害防止法施行令 災害救助法、災害救助法施行令、災害救助法施行規則 消防法、消防法施行令、消防法施行規則 事態対処法、事態対処法施行令、 国民保護法、国民保護法施行令 消防法、消防法施行令、消防法施行規則、警察法、警察官職務執行法、 消防組織法、自衛隊法、海上保安庁法、水害予防組合法、日本赤十字社法 国民生活安定緊急措置法、物価統制令、建築基準法、医療法、医師法 67 このシンボルマークは、政府組織と市民の間で活動する 公益社団法人危機管理協会のイメージを表したものです。 公益社団法人 〒101-0054 危機管理協会 東京都千代田区神田錦町2-9 岡田ビル201 Tel 03-5217-2011 Fax 03-5217-2012 URL: URL:http://www.cmahttp://www.cma-j.org/ j.org/