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JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
(57)【 要 約 】
ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス SD-212株 か ら 得 ら れ 、 β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有
するペプチド、及びそれをコードする遺伝子を提供し、自然界に微量しか存在しないβイ オ ノ ン 環 の 2(2')位 の 炭 素 に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド の 大 量 製 造 を 可 能 に す る
。
ま た 、 β -イ オ ノ ン 環 を 有 す る カ ロ テ ノ イ ド の 3位 ( 3’ 位 ) の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 す る
酵素をコードする新規な遺伝子及びゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼをコードする
新規な遺伝子も提供する。
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JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)、(b)、(c)、又は(d)に示すペプチド:
(a)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号4記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失
も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性
を有するペプチド、
( c ) 配 列 番 号 4 記 載 の ア ミ ノ 酸 配 列 と 50% 以 上 の 同 一 性 を 有 す る ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り
、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 、
( d ) 配 列 番 号 3 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン ト
10
な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ ノ
ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
【請求項2】
以下の(a)、(b)、(c)、又は(d)に示すペプチドをコードする遺伝子:
(a)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号4記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失
も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性
を有するペプチド、
( c ) 配 列 番 号 4 記 載 の ア ミ ノ 酸 配 列 と 50% 以 上 の 同 一 性 を 有 す る ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り
、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 、
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( d ) 配 列 番 号 3 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン ト
な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ ノ
ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
【請求項3】
請 求 項 2 に 記 載 の 遺 伝 子 を 導 入 し て 得 ら れ る 微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の 炭
素に水酸基を導入できる微生物。
【請求項4】
請求項2に記載の遺伝子を、他のカロテノイド生合成遺伝子とともに導入して得られる
微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 で き る 微 生 物 。
【請求項5】
30
他 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 が 、 フ ァ ル ネ シ ル ピ ロ リ ン 酸 か ら β -イ オ ノ ン 環 を 有 す
るカロテノイドを合成するのに必要とされる遺伝子群の全部又は一部であることを特徴と
する請求項4に記載の微生物。
【請求項6】
微生物が大腸菌であることを特徴とする請求項3乃至5に記載の微生物。
【請求項7】
請 求 項 3 乃 至 6 に 記 載 の 微 生 物 を 、 培 地 で 培 養 し て 培 養 物 又 は 菌 体 か ら β -イ オ ノ ン 環
の 2位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 得 る こ と を 特 徴 と す る 、 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ
ノイドの製造法。
【請求項8】
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β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド が 、 β ,β -カ ロ テ ン -2-オ ー ル
( 2-ヒ ド ロ キ シ -β -カ ロ テ ン ) 、 β ,β -カ ロ テ ン -2,2’ -ジ オ ー ル ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ β -カ ロ テ ン ) 、 カ ロ キ サ ン チ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 ノ ス ト キ サ ン チ ン ( 2
,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 、 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,
2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン 、 2,3,2’ ,3’ -テ
ト ラ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン )
であることを特徴とする請求項7に記載の水酸化されたカロテノイドの製造法。
【請求項9】
下 記 の 化 学 構 造 式 ( I) で 示 さ れ る 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン
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( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 。
【化1】
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【請求項10】
2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン
チ ン ) 又 は 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン
)を有効成分として含有する抗酸化剤。
【請求項11】
以下の(e)、(f)、又は(g)に示すペプチドをコードする遺伝子:
(e)配列番号30記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(f)配列番号30記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠
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失 も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活
性を有するペプチド、
( g ) 配 列 番 号 2 9 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン
ト な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ
ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
【請求項12】
請 求 項 1 1 に 記 載 の 遺 伝 子 を 導 入 し て 得 ら れ る 微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3位 の
炭素に水酸基を導入できる微生物。
【請求項13】
請求項11に記載の遺伝子を、他のカロテノイド生合成遺伝子とともに導入して得られ
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る 微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3位 の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 で き る 微 生 物 。
【請求項14】
他 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 が 、 フ ァ ル ネ シ ル ピ ロ リ ン 酸 か ら β -イ オ ノ ン 環 を 有 す
るカロテノイドを合成するのに必要とされる遺伝子群の全部又は一部であることを特徴と
する請求項13に記載の微生物。
【請求項15】
微生物が大腸菌であることを特徴とする請求項12乃至14に記載の微生物。
【請求項16】
請 求 項 1 2 乃 至 1 5 に 記 載 の 微 生 物 を 、 培 地 で 培 養 し て 培 養 物 又 は 菌 体 か ら β -イ オ ノ
ン 環 の 3位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 得 る こ と を 特 徴 と す る 、 水 酸 化 さ れ た カ
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ロテノイドの製造法。
【請求項17】
以下の(h)、(i)、又は(j)に示すペプチドをコードする遺伝子:
(h)配列番号32記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(i)配列番号32記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠
失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつゲラニルゲラニルピロリン酸シンター
ゼ活性を有するペプチド、
( j ) 配 列 番 号 3 1 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン
ト な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 ゲ ラ ニ
ルゲラニルピロリン酸シンターゼ活性を有するペプチド。
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【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本 発 明 は 、 β -イ オ ノ ン 環 を 有 す る カ ロ テ ノ イ ド の 2位 ( 2’ 位 ) の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入
する新規な酵素、それをコードする遺伝子、この遺伝子を導入した微生物に関するもので
あ る 。 ま た 、 こ の 遺 伝 子 が 導 入 さ れ た 微 生 物 を 利 用 し た 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の 炭 素 が 水
酸化されたカロテノイドの製造法に関するものである。
【0002】
本 発 明 は ま た 、 β -イ オ ノ ン 環 を 有 す る カ ロ テ ノ イ ド の 3位 ( 3’ 位 ) の 炭 素 に 水 酸 基 を
導入する新規な酵素をコードする遺伝子、この遺伝子を導入した微生物に関するものであ
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る 。 ま た 、 こ の 遺 伝 子 が 導 入 さ れ た 微 生 物 を 利 用 し た 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3位 の 炭 素 が 水 酸
化されたカロテノイドの製造法に関するものである。
【0003】
本 発 明 は ま た 、 新 規 な ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ リ ン 酸 ( GGPP) シ ン タ ー ゼ を コ ー ド す る 遺
伝子に関するものである。
【背景技術】
【0004】
カ ロ テ ノ イ ド ( carotenoid、 カ ロ チ ノ イ ド と も 呼 ば れ る ) は 、 炭 素 鎖 が 40の イ ソ プ レ ン
骨 格 か ら な る 自 然 界 に 豊 富 に 存 在 す る 色 素 の 総 称 で あ る 。 現 在 ま で に 700種 以 上 の カ ロ テ
ノ イ ド が 単 離 さ れ て い る ( Britton, G., Liaaen-Jensen, S., and Pfander, H., Caroten
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oids Handbook, Birkhauser Verlag, Basel, 2004) 。 最 近 で は カ ロ テ ノ イ ド の 持 つ 種 々
の癌(がん)等の慢性病に対する予防効果が注目されており、数多くの報告がなされてい
る ( た と え ば 、 西 野 輔 翼 , 村 越 倫 明 , 矢 野 昌 充 , Food Style 21, 4, 53-55, 2000;
Nish
ino, H. et al, Carotenoids in cancer chemoprevention. Cancer Metastasis Rev. 21,
257-264, 2002;
Mayne, S.T., β -Carotene, carotenoids, and disease prevention i
n humans. FASEB J., 10, 690-701, 1996参 照 ) 。
【0005】
カロテノイドは多様な種類からなるにもかかわらず、現在までに癌の予防試験(ヒト疫
学・臨床試験、動物投与試験等)に使われてきたカロテノイドの種類はごく限られたもの
で あ っ た 。 そ れ ら の カ ロ テ ノ イ ド は 、 β -カ ロ テ ン ( β -carotene、 β -カ ロ チ ン と も 呼 ば
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れ る : 化 学 合 成 品 ) 、 リ コ ペ ン ( lycopene、 リ コ ピ ン と も 呼 ば れ る : ト マ ト か ら 抽 出 ) 、
α -カ ロ テ ン ( α -carotene、 α -カ ロ チ ン と も 呼 ば れ る : パ ー ム 油 か ら 抽 出 ) 、 ル テ イ ン
( lutein: マ リ ー ゴ ー ル ド か ら 抽 出 ) 、 ア ス タ キ サ ン チ ン ( astaxanthin: オ キ ア ミ 、 Hae
matococcus属 藻 類 か ら 抽 出 、 ま た は 化 学 合 成 品 ) 、 フ コ キ サ ン チ ン ( fucoxanthin: 食 用
海 藻 か ら 抽 出 ) 、 β -ク リ プ ト キ サ ン チ ン ( β -cryptoxanthin: 温 州 ミ カ ン よ り 抽 出 ) 等
である。これらの色素を用いた癌予防試験の結果、カロテノイドの癌予防効果は、カロテ
ノイドの種類によって異なることが明らかとなってきた。一例として、国立がんセンター
研 究 所 の 高 須 賀 伸 夫 ら が 行 っ た マ ウ ス を 用 い た 実 験 結 果 ( 1996年 カ ロ テ ノ イ ド 研 究 談 話 会
報 告 ) を 示 し た い 。 肺 癌 ( ddyマ ウ ス 肺 二 段 階 発 癌 モ デ ル ) の 発 生 率 は 、 カ ロ テ ノ イ ド を
投 与 し な い コ ン ト ロ ー ル マ ウ ス を 100% と す る と 、 リ コ ペ ン ま た は α -カ ロ テ ン 投 与 マ ウ ス
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が 40% 、 ル テ イ ン ま た は ア ス タ キ サ ン チ ン 投 与 マ ウ ス が 70% 、 β -カ ロ テ ン 投 与 マ ウ ス が 1
39% の 癌 発 生 率 で あ っ た 。 肝 臓 癌 ( マ ウ ス 自 然 肝 臓 癌 発 癌 モ デ ル ) の 発 生 率 は 、 同 じ く カ
ロ テ ノ イ ド を 投 与 し な い コ ン ト ロ ー ル マ ウ ス を 100% と す る と 、 ア ス タ キ サ ン チ ン ま た は
フ コ キ サ ン チ ン 投 与 マ ウ ス が 30% 、 α -カ ロ テ ン ま た は ル テ イ ン 投 与 マ ウ ス が 50% 、 β -カ
ロ テ ン 投 与 マ ウ ス が 70% 、 リ コ ペ ン 投 与 マ ウ ス が 100% の 癌 発 生 率 で あ っ た 。 皮 膚 癌 ( マ
ウス皮膚癌発癌モデル)の発生率は、同じくカロテノイドを投与しないコントロールマウ
ス を 100% と す る と 、 フ コ キ サ ン チ ン ま た は リ コ ペ ン 投 与 マ ウ ス が 10% 、 ア ス タ キ サ ン チ
ン 投 与 マ ウ ス が 100% の 癌 発 生 率 で あ っ た 。 こ れ ら 3 つ の 発 癌 モ デ ル の 結 果 を 比 較 す る と
、肺癌や皮膚癌の抑制で効果が高かったリコペンの効果が肝臓癌の抑制には効果が無いこ
と、肝臓癌の抑制で効果が高かったアスタキサンチンの効果が皮膚癌の抑制には効果が無
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いこと等がわかる。さらに、疫学試験や臨床試験の結果、前立腺癌を予防するカロテノイ
ドとして、食事で摂取するカロテノイドの中で、リコペンのみが確認できたという結果が
報 告 さ れ て い る ( Giovannucci, E., Ascherio, A., Rimm, E. B., Stampfer, M. J., Col
ditz, G. A., Willet, W. C., Intake of carotenids and retinol in relation to risk
of prostate cancer. J. National Cancer Institute 87, 1767-1776, 1995;
Vogt, T.
M. et al, Serum lycopene, other serum carotenoids, and risk of prostate cancer i
n US Blacks and Whites. Am. J. Epidemiol. 155, 1023-1032, 2002参 照 ) 。 ま た 最 近 、
β -ク リ プ ト キ サ ン チ ン の 肺 癌 予 防 効 果 が 高 い こ と が 明 ら か に さ れ つ つ あ る ( Yuan, J.M.,
Stram, D.O., Arakawa, K., Lee, H.P. and Yu M.C., Dietary cryptoxanthin and redu
ced risk of lung cancer: the Singapore Chinese Health Study. Cancer Epidemiol. B
iomarkers Prev. 12, 890-898, 2003;
10
Mannisto, S. et al, Dietary carotenoids and
risk of lung cancer in a pooled analysis of seven cohort studies. Cancer Epidemi
ol. Biomarkers Prev. 13, 40-48, 2004参 照 ) 。 さ ら に 癌 の 予 防 効 果 以 外 に も 、 循 環 器 系
の慢性病、白内障や他の眼の慢性病、骨粗鬆症等の慢性病の予防に効果がある可能性が高
い こ と が 報 告 さ れ て い る 。 た と え ば 、 眼 の 慢 性 病 ( 黄 斑 変 性 症 (age-related macular deg
eneration)や 白 内 障 な ど ) に 効 果 が 期 待 で き る カ ロ テ ノ イ ド は 、 食 事 で 摂 取 す る カ ロ テ ノ
イ ド の 中 で 、 ル テ イ ン と ゼ ア キ サ ン チ ン の み と い う 結 果 が 報 告 さ れ て い る ( Semba, R.D.
and Dagnelie, G., Are lutein and zeaxanthin conditionally essential nutrients fo
r eye health?
Med. Hypotheses 61, 465-472, 2003; Mazaffarieh, M., Sacu, S. and
Wedrich, A., The role of the carotenoids, lutein and zeaxanthin, in protecting a
20
gainst age-related macular degeneration: A review based on controversial evidenc
e. Nutr. J., 2, 20, 2003参 照 ) 。
【0006】
以 上 の 結 果 は 、 700種 類 以 上 あ る カ ロ テ ノ イ ド の 中 で 、 実 際 に 動 物 個 体 を 用 い た レ ベ ル
以 上 の 研 究 で 、 癌 等 の 慢 性 病 の 予 防 効 果 が 検 討 さ れ て い る も の は 、 高 々 10種 類 に 満 た な い
ということ、それにもかかわらず、カロテノイドの癌等の慢性病に対する予防効果にはカ
ロテノイドの個性が認められるということを示している。実際に検討されてきたカロテノ
イドの種類が少ないことの最大の原因は、多量に抽出、精製、または化学合成できるカロ
テノイドの種類が上記のものに限られているということであると考えられる。
【0007】
30
上記の問題を解決するための有力な手段として、カロテノイド生合成遺伝子を組み込ん
だ酵母や大腸菌等で目的とするカロテノイドを多量生産する方法が考えられる。たとえば
、キリンビールの島田らは、本来カロテノイドを生合成できない食用酵母キャンディダ・
ユ ー テ ィ リ ス ( Candida utilis) に 、 カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 群 を 導 入 ・ 発 現 さ せ て 、
リ コ ペ ン を 7.8 mg/g( 乾 重 量 ) 合 成 さ せ る の に 成 功 し た ( Shimada, H., Kondo, K., Fras
er, P. D., Miura, Y., Saito, T., and Misawa, N., Increased carotenoid production
by the foood yeast Candida utilis through metabolic engineering of the isopreno
id pathway. Appl. Environ. Microbiol., 64, 2676-2680, 1998) 。 こ の 遺 伝 子 組 換 え 法
によれば、種々の生合成遺伝子の組み合わせにより、これまで自然界に存在が認められて
いなかったか、ごく微量しか存在していなかったようなカロテノイドをも多量生産するこ
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とが可能となる。たとえば、日本医科大学の高市らは、これまでナマズに微量存在してい
る と い う 報 告 し か な か っ た パ ラ シ ロ キ サ ン チ ン ( parasiloxanthin) を 組 換 え 大 腸 菌 で 主
要 カ ロ テ ノ イ ド 産 物 と し て 生 産 し た ( Takaichi, S., Sandmann, G., Schnurr, G., Satom
i, Y., Suzuki, A., and Misawa, N. The carotenoid 7,8-dihydro-Ψ end group can be
cyclized by the lycopene cyclases from the bacterium Erwinia uredovora and the
higher plant Capsicum annuum. Eur. J. Biochem., 241, 291-296, 1996) 。 ま た 、 今 ま
で 自 然 界 に 報 告 が 無 か っ た “ 非 天 然 型 ” の カ ロ テ ノ イ ド で あ る ア ス タ キ サ ン チ ン -β -ジ グ
ル コ シ ド ( astaxanthin-β -diglucoside) を 組 換 え 大 腸 菌 で 合 成 さ せ た と い う 報 告 も あ る
( Yokoyama, A., Shizuri, Y.,and Misawa, N., Production of new carotenoids, astax
anthin glucosides, by Escherichia coli transformants carrying carotenoid biosynt
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hetic genes. Tetrahed. Lett., 39, 3709-3712, 1998) 。
【0008】
各種のカロテノイド生産用組換え微生物の作製に最も広く利用されてきたカロテノイド
生 合 成 遺 伝 子 は 、 エ ル ウ ィ ニ ア (Erwinia)属 細 菌 [ エ ル ウ ィ ニ ア ・ ウ レ ド ボ ラ ( Erwinia u
redovora) 等 ; 最 近 、 本 細 菌 は パ ン ト エ ア ・ ア ナ ナ チ ス ( Pantoea ananatis) と 呼 ば れ て
い る ] 由 来 の も の で あ る 。 エ ル ウ ィ ニ ア 属 細 菌 か ら 取 得 さ れ た 遺 伝 子 は 、 crtE、 crtB、 cr
tI、 crtY、 crtZ、 crtX の 6遺 伝 子 で あ り 、 こ れ ら の 遺 伝 子 が コ ー ド す る 生 合 成 酵 素 ( CrtE
、 CrtB、 CrtI、 CrtY、 CrtZ、 CrtX) の 機 能 は 図 1 に 示 さ れ て い る ( 非 特 許 文 献 1 参 照 ) 。
ア ス タ キ サ ン チ ン を 生 合 成 さ せ た い 場 合 は 、 さ ら に 、 海 洋 細 菌 で あ る パ ラ コ ッ カ ス ( Para
coccus) 属 細 菌 [ Paracoccus sp. MBIC 01143( Agrobacterium aurantiacum) 等 ] 由 来 の
10
crtW 遺 伝 子 が 必 要 で あ る ( 図 1 ) 。 パ ラ コ ッ カ ス 属 細 菌 か ら は 、 crtB、 crtI、 crtY、 crt
Z、 crtW の 5遺 伝 子 が 単 離 さ れ て い る ( 非 特 許 文 献 1 参 照 ) 。 crtB、 crtI、 crtY、 crtZ遺
伝 子 の 機 能 は 両 細 菌 で 共 通 で あ る 。 エ ル ウ ィ ニ ア 属 細 菌 ま た は パ ラ コ ッ カ ス 属 細 菌 の crtE
、 crtB、 crtI、 crtY遺 伝 子 を 導 入 ・ 発 現 さ せ た 大 腸 菌 は β -カ ロ テ ン を 合 成 す る が 、 こ れ
に さ ら に 海 洋 細 菌 由 来 の crtW遺 伝 子 と 、 エ ル ウ ィ ニ ア 属 細 菌 ま た は パ ラ コ ッ カ ス 属 細 菌 由
来 の crtZ遺 伝 子 を 導 入 ・ 発 現 さ せ る と 、 そ の 組 換 え 大 腸 菌 は ア ス タ キ サ ン チ ン を 合 成 す る
よ う に な る 。 さ ら に 、 こ の ア ス タ キ サ ン チ ン を 合 成 す る 大 腸 菌 に エ ル ウ ィ ニ ア 属 細 菌 の cr
tX遺 伝 子 を 導 入 ・ 発 現 さ せ る と 、 そ の 組 換 え 大 腸 菌 は “ 非 天 然 型 ” の ア ス タ キ サ ン チ ン β -ジ グ ル コ シ ド を 合 成 す る よ う に な る ( 図 1 ) 。
【0009】
20
以上述べてきたように、自然界に微量しか存在しない“レア”カロテノイドや存在が確
認されていなかった“非天然型”のカロテノイドを大腸菌等の微生物に多量生産させるた
めに、カロテノイド生合成遺伝子を利用することが可能であることが示されつつある。一
方、現在までにクローニングされ機能解析された、この目的のために使用できるカロテノ
イ ド 生 合 成 遺 伝 子 の 種 類 は 25種 類 と 限 ら れ て い る 。 そ れ ら の 遺 伝 子 は 、 crtM( デ ヒ ド ロ ス
ク ア レ ン シ ン タ ー ゼ ) 、 crtE (gps, al-3)( ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ リ ン 酸 シ ン タ ー ゼ ) 、
crtB (psy, al-2)( フ ィ ト エ ン シ ン タ ー ゼ ) 、 crtN( デ ヒ ド ロ ス ク ア レ ン デ サ チ ュ ラ ー
ゼ ) 、 crtP (pds1)( フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ : 2 つ の 二 重 結 合 付 加 ) 、 crtQ (zds)(
ζ -カ ロ テ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ : 2 つ の 二 重 結 合 付 加 反 応 ) 、 crtI( Rhodobacter属 細 菌 由 来
の も の ) ( フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ : 3 つ の 二 重 結 合 付 加 反 応 と cis-trans異 性 化 反 応
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) 、 crtI( フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ : 4 つ の 二 重 結 合 付 加 反 応 と cis-trans異 性 化 反 応
) 、 al-1( フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ : 5 つ の 二 重 結 合 付 加 反 応 と cis-trans異 性 化 反 応
) 、 crtY (crtL-β )( リ コ ペ ン β -シ ク ラ ー ゼ ) 、 crtL-ε ( リ コ ペ ン ε -シ ク ラ ー ゼ )
、 crtYm( リ コ ペ ン β -モ ノ シ ク ラ ー ゼ ) 、 crtU( β -カ ロ テ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ ) 、 crtZ(
β -カ ロ テ ン ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ; β -C3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ) 、 crtW (bkt)( β -カ ロ テ ン ケ
ト ラ ー ゼ ; β -C4-オ キ シ ゲ ナ ー ゼ ) 、 crtO (Synechocystis sp. PCC6803由 来 の も の )( β
-カ ロ テ ン モ ノ ケ ト ラ ー ゼ ) 、 crtX( ゼ ア キ サ ン チ ン グ ル コ シ ル ト ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ ) 、 c
rtC( ヒ ド ロ キ シ ノ イ ロ ス ポ レ ン シ ン タ ー ゼ ) 、 crtD( メ ト キ シ ノ イ ロ ス ポ レ ン デ サ チ ュ
ラ ー ゼ ) 、 crtF( ヒ ド ロ キ シ ノ イ ロ ス ポ レ ン o-メ チ ル ト ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ ) 、 crtA( ス
フ ェ ロ イ デ ン モ ノ オ キ シ ゲ ナ ー ゼ ) 、 crtEb( リ コ ペ ン エ ロ ン ガ ー ゼ ) 、 crtYe/Yf( デ カ
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プ レ ノ キ サ ン チ ン シ ン タ ー ゼ ) 、 zep1( ゼ ア キ サ ン チ ン エ ポ キ シ ダ ー ゼ ) 、 及 び 、 ccs(
カ プ サ ン チ ン /カ プ ソ ル ビ ン シ ン タ ー ゼ ) で あ る ( Lee, P.C. and Schmidt-Dannert, C.,
Metabolic engineering towards biotechnological production of carotenoids in micr
oorganisms. Appl. Microbiol. Biotechnol. 60, 1-11, 2002;
Teramoto, M., Takaichi
, S., Inomata, Y., Ikenaga, H. and Misawa, N. Structural and functional analysis
of a lycopene β -monocyclase gene isolated from a unique marine bacterium that
produces myxol. FEBS Lett. 545, 120-126, 2003参 照 ) 。 多 様 な カ ロ テ ノ イ ド を 大 腸 菌
等の微生物に生産させるためには、新規のカロテノイド生合成遺伝子を単離する必要があ
る。しかしながら、新規のカロテノイド生合成遺伝子のクローニングは遅々として進まな
い の が 現 状 で あ っ た 。 た と え ば 、 自 然 界 に 最 も 豊 富 に 存 在 す る カ ロ テ ノ イ ド は β -イ オ ノ
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ン 環 ( β 環 ) を 有 す る カ ロ テ ノ イ ド ( 図 1で は 、 β -カ ロ テ ン 、 ゼ ア キ サ ン チ ン 、 カ ン タ キ
サ ン チ ン 、 ア ス タ キ サ ン チ ン 等 ) で あ る が 、 β -イ オ ノ ン 環 を 水 酸 化 ま た は 酸 素 添 加 す る
酵 素 遺 伝 子 は 、 β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ( β -C3-hydroxylase) ( CrtZ) と β イ オ ノ ン 環 -4-ケ ト ラ ー ゼ ( β -C4-ketolase; β -C4-oxygenase) ( CrtW) を コ ー ド す る 遺
伝 子 し か 得 ら れ て い な い 。 こ れ ら の 酵 素 遺 伝 子 は 、 crtZが 1990年 に 、 crtWが 1995年 に 早 々
と 取 得 さ れ 機 能 解 析 さ れ て い る 。 β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 遺 伝 子 は 、 ノ ス ト
キ サ ン チ ン ( nostoxanthin) 等 の 、 β -イ オ ノ ン 環 に お け る 2位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ
テノイドの合成に必要であると考えられるが、そのようなカロテノイドの産生微生物はい
く つ か 存 在 す る に も か か わ ら ず ( 非 特 許 文 献 2参 照 ) 、 酵 素 や 遺 伝 子 に 関 す る 知 見 は 全 く
無いのが現状であった。新規のカロテノイド生合成遺伝子のクローニングが難しい理由は
10
、大腸菌における発現クローニング法や既存のカロテノイド遺伝子との相同性(ホモロジ
ー ; homology) を 利 用 し た ク ロ ー ニ ン グ 法 に よ り 得 ら れ る カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 は す
でに取得されてしまっており、残りの遺伝子は、これらのクローニング法によっては得ら
れないものばかりであるからと考えられる。
【0010】
炭素と水素からのみなるカロテノイドはカロテンと、それに水酸基やケト基などの酸素
を含む官能基が導入されたカロテノイドはキサントフィルと呼ばれる。カロテンとキサン
トフィルとは物性が大きく異なっており、生体内における生理活性もかなり異なっている
。 た と え ば 、 β -カ ロ テ ン の 3位 の 炭 素 に 水 酸 基 が 1つ 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド は β -ク リ プ
ト キ サ ン チ ン で あ る が 、 こ れ ら を 摂 取 し た 時 の 生 体 内 の 取 り 込 み 率 は 、 後 者 の 方 が 10倍 高
20
い こ と が 知 ら れ て い る 。 ま た 、 β -ク リ プ ト キ サ ン チ ン は 最 近 、 日 本 で 特 に 注 目 を 集 め て
いるカロテノイドであり、前述の肺癌予防効果以外にも、大腸癌、子宮頸部癌、食道癌、
前立腺癌、リウマチ、骨粗鬆症の予防に効果があるというデータが得られつつある(矢野
昌 充 、 2003年 カ ロ テ ノ イ ド 研 究 談 話 会 報 告 、 及 び 、 前 述 の Yuan, J.M., Stram, D.O., Ar
akawa, K., Lee, H.P. and Yu M.C., Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev. 12, 890-898
, 2003及 び Mannisto, S. et al, Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev. 13, 40-48, 2004
) 。 そ の よ う な 効 果 は β -カ ロ テ ン で は 認 め ら れ て い な い 。 ま た 、 β -カ ロ テ ン の 3( 3’ )
位 の 両 方 の 炭 素 に 水 酸 基 が 2つ 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド は ゼ ア キ サ ン チ ン ( 図 1参 照 ) で あ
る が 、 一 部 前 述 し た よ う に 、 ゼ ア キ サ ン チ ン の 生 理 活 性 は β -ク リ プ ト キ サ ン チ ン と は 異
な る こ と も 知 ら れ て い る 。 ま た 、 ゼ ア キ サ ン チ ン の 4( 4’ ) 位 の 両 方 の メ チ レ ン 基 が 2つ
30
と も ケ ト 基 に 変 換 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド は ア ス タ キ サ ン チ ン ( 図 1参 照 ) で あ る が 、 ア ス タ
キ サ ン チ ン の 癌 予 防 に お け る 生 理 活 性 も β -カ ロ テ ン と 大 き く 異 な る こ と は 一 部 前 述 し た
と お り で あ り 、 β -ク リ プ ト キ サ ン チ ン や ゼ ア キ サ ン チ ン と も 異 な っ て い る 。 一 方 、 ゼ ア
キ サ ン チ ン の 2( 2’ ) 位 の 両 方 の 炭 素 に 水 酸 基 が さ ら に 2つ 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド は ノ
ス ト キ サ ン チ ン で あ る 。 一 般 的 に 、 ノ ス ト キ サ ン チ ン の よ う に 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2( 2’
)位の炭素に水酸基が導入されたカロテノイドは、自然界に微量しか存在しなく、多量生
産することが不可能であり、したがって、種々の癌等の慢性病予防試験の実施もできなか
っ た 。 ま た 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3( 3’ ) 位 の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 す る 酵 素 は CrtZで あ る が
、 1990年 に 初 め て 論 文 発 表 さ れ た エ ル ウ ィ ニ ア ・ ウ レ ド ボ ラ の CrtZ( Misawa, N., Nakaga
wa, M., Kobayashi, K., Yamano, S., Izawa, Y., Nakamura, K., and Harashima, K., J
40
. Bacteriol. 172, 6704-6712, 1990) と 、 49% 以 下 の 同 一 性 ( identity) を 有 す る も の
は現在までに得られていないのが現状であった。現在までに機能が同一であることが確認
さ れ て い る CrtZの 中 で 、 最 も エ ル ウ ィ ニ ア ・ ウ レ ド ボ ラ の CrtZと ホ モ ロ ジ ー が 高 い も の は
、 パ ラ コ ッ カ ス ・ ゼ ア キ サ ン チ ニ フ ァ シ エ ン ス ( Paracoccus zeaxanthinifaciens; 旧 名
は Flavobacterium sp. R1534) 由 来 の CrtZ( Pasamontes, L., Hug, D., Tessier, M., Ho
hmann, H. P., Schierle, J., and van Loon, A. P., Gene 185, 35-41, 1997) で あ り 、
50% の 同 一 性 で あ っ た 。
【0011】
【 非 特 許 文 献 1 】 Misawa, N., Satomi, Y., Kondo, K., Yokoyama, A., Kajiwara, S., S
aito, T., Ohtani, T., and Miki, W., Structure and functional analysis of a marin
50
(8)
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e bacterial carotenoid biosynthesis gene cluster and astaxanthin biosynthetic pa
thway proposed at the gene level.
J. Bacteriol., 177, 6575-6584, 1995)
【 非 特 許 文 献 2 】 Yokoyama, A., Miki, W., Izumida, H., and Shizuri, Y., New trihyd
roxy-keto-carotenoids isolated from an astaxanthin-producing marine bacterium.
Biosci. Biotech. Bioche., 60, 200-203, 1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本 発 明 の 課 題 は 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 を 水 酸 化 す る 酵 素 ( β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ
ラーゼ)をコードする遺伝子を取得することである。そして更に、この遺伝子を導入・発
10
現 さ せ た 組 換 え 微 生 物 を 利 用 し た 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド ( 2ヒドロキシアスタキサンチンやノストキサンチン等)の製造法を提供することである。
【0013】
本 発 明 の 課 題 は ま た 、 既 存 の も の と は 相 同 性 ( ホ モ ロ ジ ー ) が 低 い 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3
位 を 水 酸 化 す る 酵 素 ( β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ) 等 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 関 連
酵 素 を コ ー ド す る 遺 伝 子 を 取 得 す る こ と で あ る 。 そ し て 更 に 、 β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ
シ ラ ー ゼ 遺 伝 子 を 導 入 ・ 発 現 さ せ た 組 換 え 微 生 物 を 利 用 し た 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3位 が 水 酸
化されたカロテノイド(アスタキサンチンやゼアキサンチン等)の製造法を提供すること
である。
【課題を解決するための手段】
20
【0014】
本 発 明 者 ら は 、 海 洋 細 菌 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 ( Brevundimonas sp.) SD-212株 ( MBIC
03018) が 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン や 2-ヒ ド ロ キ シ ア ド ニ キ サ ン チ ン 等 の 、 β -イ
オ ノ ン 環 に お け る 2位 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 作 る こ と が で き る こ と に 着 目 し た 。
鋭 意 研 究 を 重 ね た 結 果 、 本 海 洋 細 菌 よ り 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 を 水 酸 化 す る 酵 素 ( β -イ
オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ) を コ ー ド す る 遺 伝 子 を 世 界 で 初 め て 取 得 す る こ と に 成 功
した。さらに、上記酵素をコードするカロテノイド生合成遺伝子群の中に、既存のものと
は 相 同 性 が き わ め て 低 い 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3位 を 水 酸 化 す る 酵 素 ( β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド
ロ キ シ ラ ー ゼ ) 、 及 び ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ リ ン 酸 ( GGPP) シ ン タ ー ゼ を コ ー ド す る 遺 伝
子を発見し、それらの酵素の触媒機能を確認することができた。
30
【0015】
ま ず 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の 染 色 体 DNAを 用 い て 、 大 腸 菌 に お け る コ ス ミ ド
ラ イ ブ ラ リ ー を 作 製 し た 。 カ ロ テ ノ イ ド を 産 生 す る エ ル ウ ィ ニ ア (Erwinia)属 細 菌 [ エ ル
ウ ィ ニ ア ・ ウ レ ド ボ ラ ( Erwinia uredovora) 等 ] の 染 色 体 DNAを 用 い て 、 大 腸 菌 に お け る
コスミドライブラリーを作製する場合は、この段階で、プレート上で黄色のコロニー(カ
ロテノイド産生大腸菌)が得られるので、簡単にカロテノイド生合成遺伝子群を取得する
こ と が で き る 。 し か し な が ら 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ リ ー か
らは、色の変化した大腸菌は全く得られなかった。そこで次に、エルウィニア・ウレドボ
ラ 由 来 の crtE、 crtB、 crtI、 crtY、 crtZ遺 伝 子 ( 図 1 参 照 ) が 導 入 さ れ て ゼ ア キ サ ン チ ン
を作る大腸菌(黄色コロニー)を宿主として用いて、この組換え大腸菌においてブレバン
40
デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ リ ー を 作 製 し た 。 こ の コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ リ ー に
お い て 外 見 上 、 色 が 変 化 し た も の は 得 ら れ な か っ た の で 、 700株 培 養 し 、 HPLC-PDA( フ ォ
トダイオードアレィ検出器)を用いて、コントロールのゼアキサンチンに加えて、新たな
カロテノイドが生成していないかどうかの検討を行った。その結果、新たなカロテノイド
を 合 成 す る も の は 全 く 得 ら れ な か っ た 。 し た が っ て 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の カ
ロテノイド生合成遺伝子の発現クローニングは不可能であると結論した。
【0016】
次 に 、 フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ ( crtI) 遺 伝 子 が カ ロ テ ノ イ ド 産 生 細 菌 間 で 2つ の 保
存 領 域 を 有 し て い る こ と を 見 出 し 、 PCR用 プ ラ イ マ ー を 設 計 し た 。 こ の プ ラ イ マ ー を 用 い
て 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の 染 色 体 DNAを 鋳 型 と し た PCRを 行 っ た と こ ろ 、 1.1 kb
50
(9)
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の DNA断 片 が 増 幅 さ れ た 。 こ の 配 列 の 塩 基 配 列 を 決 定 し た と こ ろ 、 crtIの 部 分 配 列 で あ る
こ と が わ か っ た 。 こ の crtI部 分 配 列 断 片 を プ ロ ー ブ と し て 、 SD-212株 の コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ
リ ー を 用 い た コ ロ ニ ー ハ イ ブ リ ダ ィ ゼ ー シ ョ ン ( colony hybridization) 法 を 行 っ た と こ
ろ 、 数 個 の 陽 性 コ ロ ニ ー が 得 ら れ た 。 陽 性 コ ロ ニ ー か ら プ ラ ス ミ ド DNAを 調 製 し 、 サ ザ ン
ハ イ ブ リ ダ ィ ゼ ー シ ョ ン ( Southern hybridization) 法 を 行 い 、 陽 性 の 12 kbの EcoRIの DN
A断 片 を 得 た 。 こ の 12 kbの EcoRI断 片 の 塩 基 配 列 を 決 定 し た と こ ろ 、 幸 運 な こ と に 、 こ の
断 片 内 に カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 群 [ 既 存 の crt遺 伝 子 ( 6個 ) 又 は idi遺 伝 子 ( 1つ ) と
ホ モ ロ ジ ー が あ る ORF( オ ー プ ン リ ー デ ィ ン グ フ レ ー ム 、 open reading frame) が 7 つ ]
が 存 在 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 ま た 、 こ の 12 kbの EcoRI断 片 内 に は 、 未 知 の ORFが 5つ
存 在 し て い た 。 こ れ ら 12個 の ORFす べ て を 、 大 腸 菌 ベ ク タ -pUC18に お け る lac遺 伝 子 の プ ロ
10
モ ー タ の 利 用 と LacZの リ ー ダ 配 列 を 利 用 し た 融 合 タ ン パ ク 質 法 に よ り 大 腸 菌 で 強 制 発 現 さ
せるためのコンストラクトを作製した。そして、エルウィニア属細菌またはパラコッカス
属 細 菌 の crt遺 伝 子 の 利 用 に よ り 各 種 カ ロ テ ノ イ ド を 産 生 す る 大 腸 菌 を 宿 主 と し て 、 こ れ
ら の 12個 の ORFの 機 能 解 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 既 存 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 ( crt) 遺 伝 子
と ホ モ ロ ジ ー が あ っ た 6個 の ORFは 、 相 同 性 の あ っ た 既 存 の 生 合 成 遺 伝 子 と 同 様 の 機 能 を 有
す る カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 ( crt) 遺 伝 子 で あ る こ と が わ か っ た 。 し か し な が ら 驚 く べ き こ
と に 、 こ れ ら の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 の う ち の 1 つ で あ る crtZ遺 伝 子 は 、 既 存 の CrtZ
酵 素 の ど れ と も 、 ア ミ ノ 酸 配 列 レ ベ ル で 46% 以 下 の 同 一 性 し か 有 さ な い β -イ オ ノ ン 環 -3ヒドロキシラーゼをコードする遺伝子であることを見出した。さらに、これらのうちの1
つ で あ る crtE遺 伝 子 は 、 既 存 の CrtE酵 素 の ど れ と も 、 ア ミ ノ 酸 配 列 レ ベ ル で 39% 以 下 の 同
20
一 性 し か 有 さ な い ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ リ ン 酸 ( GGPP) シ ン タ ー ゼ を コ ー ド す る 遺 伝 子 で
あ る こ と を 見 出 し た 。 そ し て さ ら に 、 未 知 の ORFの う ち の 1つ ( ORF11) が β -イ オ ノ ン 環 -2
-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ を コ ー ド す る 遺 伝 子 で あ る こ と を つ い に 突 き 止 め 、 本 発 明 を 完 成 す る
に至ったのである。
【0017】
本発明は以上のような知見を基に完成されたものである。
【0018】
即ち、本発明は、以下の(1)∼(17)を提供するものである。
【0019】
(1)以下の(a)、(b)、(c)、又は(d)に示すペプチド:
30
(a)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号4記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失
も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性
を有するペプチド、
( c ) 配 列 番 号 4 記 載 の ア ミ ノ 酸 配 列 と 50% 以 上 の 同 一 性 を 有 す る ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り
、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 、
( d ) 配 列 番 号 3 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン ト
な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ ノ
ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
【0020】
40
(2)以下の(a)、(b)、(c)、又は(d)に示すペプチドをコードする遺伝子:
(a)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号4記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失
も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性
を有するペプチド、
( c ) 配 列 番 号 4 記 載 の ア ミ ノ 酸 配 列 と 50% 以 上 の 同 一 性 を 有 す る ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り
、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 、
( d ) 配 列 番 号 3 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン ト
な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ ノ
ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
50
(10)
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【0021】
( 3 ) ( 2 ) に 記 載 の 遺 伝 子 を 導 入 し て 得 ら れ る 微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の
炭素に水酸基を導入できる微生物。
【0022】
(4)(2)に記載の遺伝子を、他のカロテノイド生合成遺伝子とともに導入して得られ
る 微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 で き る 微 生 物 。
【0023】
( 5 ) 他 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 が 、 フ ァ ル ネ シ ル ピ ロ リ ン 酸 か ら β -イ オ ノ ン 環 を
有するカロテノイドを合成するのに必要とされる遺伝子群の全部又は一部であることを特
徴とする(4)に記載の微生物。
10
【0024】
(6)微生物が大腸菌であることを特徴とする(3)乃至(5)に記載の微生物。
【0025】
( 7 ) ( 3 ) 乃 至 ( 6 ) に 記 載 の 微 生 物 を 、 培 地 で 培 養 し て 培 養 物 又 は 菌 体 か ら β -イ オ
ノ ン 環 の 2位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 得 る こ と を 特 徴 と す る 、 水 酸 化 さ れ た
カロテノイドの製造法。
【0026】
( 8 ) β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド が 、 β ,β -カ ロ テ ン -2-オ
ー ル ( 2-ヒ ド ロ キ シ -β -カ ロ テ ン ) 、 β ,β -カ ロ テ ン -2,2’ -ジ オ ー ル ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ
キ シ -β -カ ロ テ ン ) 、 カ ロ キ サ ン チ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 ノ ス ト キ サ ン チ
20
ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン
( 2-ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 、 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン
( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン 、 2,3,2’ ,3
’ -テ ト ラ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン
チン)であることを特徴とする(7)に記載の水酸化されたカロテノイドの製造法。
【0027】
( 9 ) 下 記 の 化 学 構 造 式 ( I) で 示 さ れ る 新 規 化 合 物 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン
-4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 。
【0028】
【化1】
30
40
【0029】
( 1 0 ) 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ
キ サ ン チ ン ) 又 は 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ
ンチン)を有効成分として含有する抗酸化剤。
【0030】
(11)以下の(e)、(f)、又は(g)に示すペプチドをコードする遺伝子:
(e)配列番号30記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(f)配列番号30記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠
失 も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活
性を有するペプチド、
50
(11)
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( g ) 配 列 番 号 2 9 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン
ト な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ
ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
【0031】
( 1 2 ) ( 1 1 ) に 記 載 の 遺 伝 子 を 導 入 し て 得 ら れ る 微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3
位の炭素に水酸基を導入できる微生物。
【0032】
(13)(11)に記載の遺伝子を、他のカロテノイド生合成遺伝子とともに導入して得
ら れ る 微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3位 の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 で き る 微 生 物 。
【0033】
10
( 1 4 ) 他 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 が 、 フ ァ ル ネ シ ル ピ ロ リ ン 酸 か ら β -イ オ ノ ン 環
を有するカロテノイドを合成するのに必要とされる遺伝子群の全部又は一部であることを
特徴とする(13)に記載の微生物。
【0034】
(15)微生物が大腸菌であることを特徴とする(12)乃至(14)に記載の微生物。
【0035】
(16)(12)乃至(15)に記載の微生物を、培地で培養して培養物又は菌体からβ
-イ オ ノ ン 環 の 3位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 得 る こ と を 特 徴 と す る 、 水 酸 化 さ
れたカロテノイドの製造法。
【0036】
20
(17)以下の(h)、(i)、又は(j)に示すペプチドをコードする遺伝子:
(h)配列番号32記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(i)配列番号32記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠
失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつゲラニルゲラニルピロリン酸シンター
ゼ活性を有するペプチド、
( j ) 配 列 番 号 3 1 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン
ト な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 ゲ ラ ニ
ルゲラニルピロリン酸シンターゼ活性を有するペプチド。
【0037】
以下、本発明を詳細に説明する。
30
【0038】
1 . 遺 伝 子 源 の 海 洋 細 菌 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212 株 ( MBIC 03018)
目 的 と す る 遺 伝 子 の 供 給 源 と な っ た 海 洋 細 菌 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 ( Brevundimonas sp
.) SD-212 株 ( SD212; MBIC 03018) は 、 火 山 列 島 の 海 水 中 よ り 単 離 さ れ た α -プ ロ テ オ バ
ク テ リ ア で あ る 。 GC含 量 は 67.1( mol) %で あ る 。 本 海 洋 細 菌 が 作 る カ ロ テ ノ イ ド は 、 2-ヒ
ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン ( 2-hydroxyastaxanthin) や 2-ヒ ド ロ キ シ ア ド ニ キ サ ン チ ン (
2-hydroxyadonixanthin) 等 の 2位 ( 2’ 位 ) に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド で あ る こ
とが(株)海洋バイオテクノロジー研究所の横山らにより報告されている(非特許文献2
参 照 ) 。 な お 、 本 細 菌 は 、 MBIC 03018と し て ( 株 ) 海 洋 バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー 研 究 所 よ り 公
開 ・ 分 譲 さ れ て い る 。 ま た 、 本 細 菌 の 16S rDNA配 列 と gyrB遺 伝 子 配 列 は そ れ ぞ れ 、 ア ク セ
40
ッ シ ョ ン 番 号 AB016849、 AB014993と し て GenBank/DDBJに 登 録 さ れ て い る 。
【0039】
2 . 海 洋 細 菌 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212 株 に お け る カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 経 路 の 推 定
海 洋 細 菌 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 ( Brevundimonas sp.) SD-212 株 ( MBIC 03018) が 生 産
す る 、 2位 ( 2’ 位 ) に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド は 、 横 山 ら に よ っ て 詳 し く 分 析 さ
れ て い る ( 非 特 許 文 献 2参 照 ) 。 そ れ ら は 、 2,3,2’ ,3’ -テ ト ラ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ
ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,3,2’ ,3’ -tetrahydroxy-β ,β -carotene-4,4’ -dione) 、 2,3,2’ ,
3’ -テ ト ラ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4-オ ン ( 2,3,2’ ,3’ -tetrahydroxy-β ,β -carot
en-4-one) 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン ( 2-hydroxyastaxanthin; 2,3, 3’ -trihydr
oxy-β ,β -carotene-4,4’ -dione) 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ド ニ キ サ ン チ ン ( 2-hydroxyadonixa
50
(12)
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nthin; 2,3, 3’ -trihydroxy-β ,β -caroten-4-one) 、 エ リ ス ロ キ サ ン チ ン ( erythroxan
thin; 3,2’ ,3’ -trihydroxy-β ,β -caroten-4-one) で あ る ( 図 2参 照 ) 。 ま た 、 SD-212
株 に は 、 前 駆 体 と し て 、 ア ス タ キ サ ン チ ン や ア ド ニ キ サ ン チ ン ( 4-ケ ト ゼ ア キ サ ン チ ン )
が 存 在 す る こ と も 確 認 さ れ て い る 。 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 に 水 酸 基 を 導 入 す る 新 規 な 酵 素 (
β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ; CrtVと 記 載 ) の 存 在 を 想 定 す る と 、 こ れ 以 外 は す べ
て 既 存 の Crt酵 素 と の 組 合 せ に よ り 、 上 記 の す べ て の カ ロ テ ノ イ ド の 生 合 成 経 路 を 図 2の よ
うに推定することができる。
【0040】
3 . β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ を コ ー ド す る 遺 伝 子 ( 本 発 明 の 第 一 の 遺 伝 子 )
本発明には、以下の(a)、(b)、(c)、又は(d)に示すペプチドが含まれる。
10
【0041】
(a)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号4記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失
も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性
を有するペプチド、
( c ) 配 列 番 号 4 記 載 の ア ミ ノ 酸 配 列 と 50% 以 上 の 同 一 性 を 有 す る ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り
、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 、
( d ) 配 列 番 号 3 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン ト
な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ ノ
ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
20
【0042】
また、本発明には、以下の(a)、(b)、(c)、又は(d)に示すペプチドをコー
ドする遺伝子も含まれる。
【0043】
(a)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号4記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失
も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性
を有するペプチド、
( c ) 配 列 番 号 4 記 載 の ア ミ ノ 酸 配 列 と 50% 以 上 の 同 一 性 を 有 す る ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り
、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 、
30
( d ) 配 列 番 号 3 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン ト
な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ ノ
ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
【0044】
( a ) の ペ プ チ ド は 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 か ら 得 ら れ た β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ
ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る 257個 の ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な る ペ プ チ ド ( CrtVと も 呼 ぶ ) で
ある。
【0045】
( b ) の ペ プ チ ド は 、 ( a ) の ペ プ チ ド に 、 β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を
失わせない程度の変異が導入されたペプチドである。このような変異は、自然界において
40
生じる変異のほかに、人為的な変異をも含む。人為的変異を生じさせる手段としては、部
位 特 異 的 変 異 誘 発 法 ( Nucleic Acids Res. 10, 6487-6500, 1982) な ど を 挙 げ る こ と が で
き る が 、 こ れ に 限 定 さ れ る わ け で は な い 。 変 異 し た ア ミ ノ 酸 の 数 は 、 β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ
ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 失 わ せ な い 限 り 、 そ の 個 数 は 制 限 さ れ な い が 、 通 常 は 、 30ア ミ ノ 酸
以 内 で あ り 、 好 ま し く は 20ア ミ ノ 酸 以 内 で あ り 、 更 に 好 ま し く は 10ア ミ ノ 酸 以 内 で あ り 、
最 も 好 ま し く は 5ア ミ ノ 酸 以 内 で あ る 。
【0046】
( c ) の ペ プ チ ド は 、 ( a ) の ペ プ チ ド と 全 領 域 間 に お い て 50% 以 上 の 同 一 性 ( identi
ty; 同 一 の ア ミ ノ 酸 配 列 の 比 率 ) を 有 す る ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 し て い る ペ プ チ ド で あ る 。 「 50% 以 上 の 同 一 性 」 の 根 拠 は 以 下
50
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の 理 由 に よ る 。 す な わ ち 、 「 背 景 技 術 」 の 最 後 で も 述 べ た よ う に 、 14年 前 に エ ル ウ ィ ニ ア
・ ウ レ ド ボ ラ の β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ( CrtZ) を コ ー ド す る 遺 伝 子 が 初 め て
明 ら か に さ れ て 以 来 、 種 々 の CrtZの 構 造 が 明 ら か に さ れ た が 、 現 在 ま で に 酵 素 の 触 媒 機 能
が 同 一 で あ る こ と が 確 認 さ れ て い る CrtZの 中 で 、 最 も こ の CrtZと ホ モ ロ ジ ー が 低 い も の は
、 パ ラ コ ッ カ ス ・ ゼ ア キ サ ン チ ニ フ ァ シ エ ン ス ( Paracoccus zeaxanthinifaciens; 旧 名
は Flavobacterium sp. R1534) 由 来 の CrtZと の 50% の 同 一 性 で あ る 。 ま た 、 後 述 す る よ う
に 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 か ら 得 ら れ た β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性
を 有 す る 161個 の ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な る ペ プ チ ド ( CrtZ) は 、 DDBJや GenBank等 の デ ー タ ベ
ー ス を 検 索 し て も 、 50% 以 上 の 同 一 性 を 有 す る も の は な く 、 最 も 高 い も の で も 、 エ ル ウ ィ
ニ ア ・ ハ ー ビ コ ラ [ Erwinia herbicola; 最 近 は 、 パ ン ト エ ア ・ ア グ ロ メ ラ ン ス ( Pantoea
10
agglomerans) と 呼 ば れ て い る ] 由 来 の CrtZ( JJBJ/GenBank accession no. M87280) と
の 46%の 同 一 性 で あ り 、 し か も 両 者 の 酵 素 の 触 媒 機 能 は 同 じ で あ る こ と が 本 発 明 に よ り 明
ら か に さ れ た 。 β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ( CrtV) と β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ
シ ラ ー ゼ ( CrtZ) は 互 い に よ く 似 た 性 質 の 酵 素 で あ る と い う こ と を 考 え 合 わ せ る と 、 ( a
) の ペ プ チ ド と 50% 以 上 の 同 一 性 を 有 す る ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 ( 同 一 の 触 媒 機 能 ) を 有 し て い る 酵 素 が 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 が 水
酸化されたカロテノイドを産生する微生物から今後、見つかることは確実であると言って
よ い 。 た と え ば 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 産 生 す る 細 菌 [た と
え ば 、 エ リ ス ロ バ ク タ ー ( Erthrobacter) 属 細 菌 PC6株 ( MBIC 02351) ]の ゲ ノ ム 解 析 を 行
うことにより見つかるであろう。さらには、このようにして自然界から見つかった同酵素
20
のアミノ酸配列を前述の方法により、変異させることも可能である。
【0047】
( d ) の ペ プ チ ド は 、 DNA同 士 の ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン を 利 用 す る こ と に よ り 得 ら れ
る 細 菌 由 来 の β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド で あ る 。 ( c ) の
ペプチドにおける「ストリンジェントな条件」とは、特異的なハイブリダイゼーションの
みが起き、非特異的なハイブリダイゼーションが起きないような条件をいう。このような
条 件 は 、 通 常 、 「 1× SSC、 0.1% SDS、 37℃ 」 程 度 で あ り 、 好 ま し く は 「 0.5× SSC、 0.1% S
DS、 42℃ 」 程 度 で あ り 、 更 に 好 ま し く は 「 0.2× SSC、 0.1% SDS、 65℃ 」 程 度 で あ る 。 ハ イ
ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン に よ り 得 ら れ る DNAは 、 配 列 番 号 3 記 載 の 塩 基 配 列 に よ り 表 さ れ る DNA
と 通 常 高 い 相 同 性 を 有 す る 。 高 い 相 同 性 と は 、 60% 以 上 の 相 同 性 、 好 ま し く は 75% 以 上 の
30
相 同 性 、 更 に 好 ま し く は 90% 以 上 の 相 同 性 を 指 す 。
【0048】
本発明の遺伝子は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、海洋細菌ブレ
バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ リ ー を 大 腸 菌 に お い て 作 製 す る 。 次 に 、 実
施例7に示したようなカロテノイド生合成遺伝子の相同配列を利用したコロニーハイブリ
ダ イ ゼ ー シ ョ ン 法 や PCRク ロ ー ニ ン グ 法 に よ り 得 る こ と が で き る 。
【0049】
な お 、 本 発 明 の 遺 伝 子 で あ る β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ( crtV) 遺 伝 子 を 含 む
ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 群 を 含 む 12 kb EcoRI DNA断
片 が 大 腸 菌 ベ ク タ ー pBluescript II KS-に 挿 入 さ れ た プ ラ ス ミ ド p5Bre2-15を 有 す る 大 腸
40
菌 は 受 託 番 号 P-19580と し て 独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 特 許 生 物 寄 託 セ ン タ ー に 寄
託されている。
【0050】
4 . β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ を コ ー ド す る 遺 伝 子 ( 本 発 明 の 第 二 の 遺 伝 子 )
本発明には、以下の(e)、(f)、又は(g)に示すペプチドをコードする遺伝子も
含まれる。
【0051】
(e)配列番号30記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(f)配列番号30記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠
失 も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活
50
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性を有するペプチド、
( g ) 配 列 番 号 2 9 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン
ト な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ
ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
【0052】
( e ) の ペ プ チ ド は 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 か ら 得 ら れ た β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド
ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る 161個 の ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な る ペ プ チ ド ( CrtZと も 呼 ぶ ) で あ
る。
【0053】
( f ) の ペ プ チ ド は 、 ( e ) の ペ プ チ ド に 、 β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 失
10
わせない程度の変異が導入されたペプチドである。このような変異は、自然界において生
じる変異のほかに、人為的な変異をも含む。人為的変異を生じさせる手段は前述したとお
りである。
【0054】
( g ) の ペ プ チ ド は 、 DNA同 士 の ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン を 利 用 す る こ と に よ り 得 ら れ る
細 菌 由 来 の β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド で あ る 。 ( g ) の ペ
プチドにおける「ストリンジェントな条件」は前述した通りである。
【0055】
5.ゲラニルゲルニルピロリン酸シンターゼをコードする遺伝子(本発明の第三の遺伝子
)
20
本発明には、以下の(h)、(i)、又は(j)に示すペプチドをコードする遺伝子も
含まれる。
【0056】
(h)配列番号32記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(i)配列番号32記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠
失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつゲラニルゲラニルピロリン酸シンター
ゼ活性を有するペプチド、
( j ) 配 列 番 号 3 1 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン
ト な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 ゲ ラ ニ
ルゲラニルピロリン酸シンターゼ活性を有するペプチド。
30
【0057】
( h ) の ペ プ チ ド は 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 か ら 得 ら れ た ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ
リ ン 酸 活 性 を 有 す る 298個 の ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な る ペ プ チ ド ( CrtEと も 呼 ぶ ) で あ る 。
【0058】
(i)のペプチドは、(h)のペプチドに、ゲラニルゲラニルピロリン酸活性を失わせな
い程度の変異が導入されたペプチドである。このような変異は、自然界において生じる変
異のほかに、人為的な変異をも含む。人為的変異を生じさせる手段は前述したとおりであ
る。
【0059】
( j ) の ペ プ チ ド は 、 DNA同 士 の ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン を 利 用 す る こ と に よ り 得 ら れ る
40
細菌由来のゲラニルゲラニルピロリン酸活性を有するペプチドである。(j)のペプチド
における「ストリンジェントな条件」は前述した通りである。
【0060】
6 . β イ オ ノ ン 環 の 2位 ( 2’ 位 ) ま た は 3位 ( 3’ 位 ) の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 で き る 微 生 物
本 発 明 に は 、 3 に 記 載 の β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 遺 伝 子 を 導 入 し て 得 ら れ る
微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 で き る 微 生 物 も 含 ま れ る 。
【0061】
本 発 明 に は ま た 、 4 に 記 載 の β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 遺 伝 子 を 導 入 し て 得 ら れ
る 微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3位 の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 で き る 微 生 物 も 含 ま れ る 。
【0062】
50
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微生物には、本発明の遺伝子だけでなく、他のカロテノイド生合成遺伝子も導入する場
合が多いが、微生物がもともと他のカロテノイド生合成遺伝子を含むものである場合には
、他のカロテノイド生合成遺伝子を導入する必要はないか、或いは一部のみ導入すればよ
い。
【0063】
宿主とする微生物は、大腸菌を例示できるが、これ以外の微生物であってもよい。
【0064】
他 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 は 、 フ ァ ル ネ シ ル ピ ロ リ ン 酸 ( FPP) か ら β -イ オ ノ ン 環
を有するカロテノイドを合成するのに必要とされる遺伝子群の全部または一部を含む。こ
の よ う な 遺 伝 子 群 の 具 体 例 と し て は 、 FPPか ら ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ リ ン 酸 ( GGPP) を 合
10
成 す る 酵 素 遺 伝 子 crtE、 2分 子 の GGPPか ら フ ィ ト エ ン ( phytoene) を 合 成 す る 遺 伝 子 crtB
、 フ ィ ト エ ン か ら リ コ ペ ン ( lycopene) を 合 成 す る 遺 伝 子 crtI、 リ コ ペ ン か ら β -カ ロ テ
ン ( β -carotene) を 合 成 す る 遺 伝 子 crtY( 通 常 、 エ ル ウ ィ ニ ア 属 細 菌 由 来 の も の ) 、 β イ オ ノ ン 環 -4-ケ ト ラ ー ゼ を コ ー ド す る 遺 伝 子 crtW( 通 常 、 パ ラ コ ッ カ ス 属 細 菌 由 来 の も
の)等を例示できる。
【0065】
これらの遺伝子群のすべて又は一部を適当な発現ベクターに導入し、発現させたい微生
物 に 導 入 す れ ば 、 そ の 組 換 え 微 生 物 は β -イ オ ノ ン 環 を 有 す る カ ロ テ ノ イ ド を 作 る よ う に
な る ( 基 質 の FPPは す べ て の 微 生 物 が 作 る こ と が で き る 。 GGPPも 微 生 物 に よ っ て は 合 成 量
が 少 な い も の も あ る が 、 す べ て の 微 生 物 が 作 る こ と が で き る ) 。 そ の β -イ オ ノ ン 環 を 有
20
す る カ ロ テ ノ イ ド 産 生 微 生 物 に 、 本 発 明 の 第 一 の 遺 伝 子 ( β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ
ー ゼ を コ ー ド す る 遺 伝 子 、 crtV) を さ ら に 導 入 ・ 発 現 さ せ れ ば 、 そ の 微 生 物 は 2位 ( 2’ 位
) に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 作 る よ う に な る 。 ま た 、 β -イ オ ノ ン 環 を 有 す る
カ ロ テ ノ イ ド 産 生 微 生 物 に 、 本 発 明 の 第 二 の 遺 伝 子 ( β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ
を コ ー ド す る 遺 伝 子 、 crtZ) を さ ら に 導 入 ・ 発 現 さ せ れ ば 、 そ の 微 生 物 は 3位 ( 3’ 位 ) に
水酸基が導入されたカロテノイドを作るようになる。
【0066】
大腸菌や酵母等の種々の微生物のベクターの情報や外来遺伝子の導入・発現法は、多く
の 実 験 書 に 記 載 さ れ て い る の で ( た と え ば 、 Sambrook, J., Russel,D. W., Molecular Cl
oning
A Laboratory Manual, 3
r d
Edition, CSHL Press, 2001) 、 そ れ ら に 従 っ て ベ ク
30
ターの選択、遺伝子の導入、発現を行うことができる。
【0067】
7 . 2位 ( 2’ 位 ) ま た は 3位 ( 3’ 位 ) に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド の 製 造 法
本 発 明 に は 、 上 記 に 記 載 の 微 生 物 を 、 培 地 で 培 養 し て 培 養 物 又 は 菌 体 か ら β -イ オ ノ ン
環 の 2位 ま た は 3位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 得 る こ と を 特 徴 と す る 、 水 酸 化 さ
れたカロテノイドの製造法も含まれる。
【0068】
β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド と し て は 、 β ,β -カ ロ テ ン -2オ ー ル ( 2-ヒ ド ロ キ シ -β -カ ロ テ ン ) 、 β ,β -カ ロ テ ン -2,2’ -ジ オ ー ル ( 2,2’ -ジ ヒ ド
ロ キ シ -β -カ ロ テ ン ) 、 カ ロ キ サ ン チ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 ノ ス ト キ サ ン
40
チ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ
ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 、 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ
ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン 、 2,3,2’ ,
3’ -テ ト ラ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン
チ ン ) な ど を 例 示 で き る が 、 こ れ ら に 限 定 さ れ る わ け で は な い 。 上 記 の 中 で 、 2-ヒ ド ロ キ
シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 及 び 2,2’ -ジ ヒ ド ロ
キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) ( 特 に 後 者
) は 、 脂 質 の 過 酸 化 に 対 し て 強 い 抑 制 効 果 を 持 つ こ と が in vitro実 験 の 結 果 、 示 さ れ た 。
【0069】
β -イ オ ノ ン 環 の 3位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド と し て は 、 β -ク リ プ ト キ サ ン
50
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チ ン 、 ゼ ア キ サ ン チ ン 、 カ ロ キ サ ン チ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 ノ ス ト キ サ ン
チ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン 、 2,3,2’ ,
3’ -テ ト ラ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン
チン)などを例示できるが、これらに限定されるわけではない。
【0070】
8.抗酸化剤
2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン 及 び 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン 4,4’ -ジ オ ン は 、 上 述 の よ う に 脂 質 の 過 酸 化 に 対 し て 強 い 抑 制 効 果 を 持 つ の で 、 脂 質 の 抗
過酸化剤、更には、脂質に限定されない物質一般に対する抗酸化剤として利用できる。
【0071】
10
本発明の抗酸化剤は、有効成分となる前記2種のカロテノイドを単に水で希釈すること
によっても調製できるが、乳液状製剤として調製することが好ましい。乳液状製剤の調製
は、水溶性成分と油溶性成分とを常法により混合乳化すればよい。ここで用いる水溶性成
分としては、没食子酸、アスコルビン酸、ガム質、ビタミンP(フラボノイド類)等を挙
げることができ、油溶成分としては、グリセリン脂肪酸エステルや菜種油、大豆油、コー
ン油等の油脂等を挙げることができる。抗酸化剤中に含まれる前記2種のカロテノイドの
含 量 は 、 添 加 対 象 と す る 商 品 に 応 じ て 任 意 に 設 定 す る こ と が で き る が 、 0.05∼ 5 % と す る
のが好ましい。
【0072】
本発明の抗酸化剤は、その安全性や酸化抑制能力により主に食品、化粧品、及び医薬品
20
における抗酸化成分として有用である。前記2種のカロテノイドの抗酸化剤としての使用
量 は 、 添 加 す る 対 象 商 品 に よ り 異 な る が 、 例 え ば 、 食 品 、 化 粧 品 に 対 し て は そ れ ぞ れ 0.1g
/ 食 品 kg、 0.05g/ 化 粧 品 kg程 度 で あ る 。
【0073】
本発明の抗酸化剤は、対象商品に単独で使用する場合でも十分な効果を得られるが、従
来の天然抗酸化剤、例えば、トコフェールを有効成分とする抗酸化剤等と併用することも
可能である。
【0074】
本明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を表す。
配 列 番 号 1 : ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の crtI遺 伝 子 の 部 分 配 列 。
30
配 列 番 号 2 : EcoRIで pCos5-2か ら 切 り 出 さ れ た 12 kbの 断 片 の 配 列 。
配 列 番 号 3 : 上 記 EcoRI断 片 に 含 ま れ る ORF11( β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 遺 伝
子と推定される)の配列。
配 列 番 号 4 : ORF11が コ ー ド す る ア ミ ノ 酸 配 列 。
配 列 番 号 5 : ORF1の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 6 : ORF1の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 7 : crtWの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 8 : crtWの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 9 : crtYの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 1 0 : crtYの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
40
配 列 番 号 1 1 : crtIの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 1 2 : crtIの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 1 3 : crtBの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 1 4 : crtBの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 1 5 : ORF6の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 1 6 : ORF6の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 1 7 : ORF7の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 1 8 : ORF7の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 1 9 : crtEの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 2 0 : crtEの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
50
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配 列 番 号 2 1 : idiの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 2 2 : idiの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 2 3 : crtZの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 2 4 : crtZの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 2 5 : ORF11の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 2 6 : ORF11の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 2 7 : ORF12の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 2 8 : ORF12の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 2 9 : 上 記 EcoRI断 片 に 含 ま れ る crtZ( β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 遺
伝子と推定される)の配列
10
配 列 番 号 3 0 : crtZが コ ー ド す る ア ミ ノ 酸 配 列 。
配 列 番 号 3 1 : 上 記 EcoRI断 片 に 含 ま れ る crtE( ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ リ ン 酸 シ ン タ ー
ゼ遺伝子と推定される)の配列。
配 列 番 号 3 2 : crtEが コ ー ド す る ア ミ ノ 酸 配 列 。
【発明の効果】
【0075】
β -イ オ ノ ン 環 の 2(2')位 の 炭 素 に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド は 、 自 然 界 に 微 量 し
か存在しないものが多いが、なかには未だ発見されていないものもある。本発明により、
こ の よ う な カ ロ テ ノ イ ド を 大 量 に 製 造 で き る よ う に な る 。 さ ら に 本 発 明 は 、 β -イ オ ノ ン
環 の 3(3')位 の 炭 素 に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 製 造 で き る 遺 伝 子 や 、 カ ロ テ ノ
20
イドの前駆体であるゲラニルゲラニルピロリン酸を合成する遺伝子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】既存のカロテノイド生合成遺伝子(酵素)の機能と生合成経路を表す図。
【 図 2 】 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 が 生 産 す る カ ロ テ ノ イ ド の 種 類 と そ れ ら の カ ロ テ
ノイドの推定合成経路を表す図。
【 図 3 】 crtI断 片 を プ ロ ー ブ と し て 用 い た サ ザ ン ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン ( EcoRI消 化 )
の 結 果 を 表 す 図 〔 M: サ イ ズ マ ー カ ー ( λ /Hind III-φ X174/HaeIII digest) 、 5-1∼ 10-1
: コ ス ミ ド ク ロ ー ン 、 SCS: コ ス ミ ド ベ ク タ ー SuperCos1、 SD212: SD-212染 色 体 DNA〕 。
【 図 4 】 crtI断 片 を プ ロ ー ブ と し て 用 い た サ ザ ン ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン ( BamHI及 び Bam
30
HI/EcoRI消 化 ) の 結 果 を 表 す 図 。 〔 M: サ イ ズ マ ー カ ー ( λ /Hind III-φ X174/HaeIII dig
est) 、 5-2∼ 9-1: コ ス ミ ド ク ロ ー ン 、 SD212: SD-212染 色 体 DNA、 SCS: コ ス ミ ド ベ ク タ ー
SuperCos1の BamHI/EcoRI消 化 物 〕
【 図 5 】 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 群 ( 12kb-EcoRI断 片
)の構造を表す図。
【 図 6 】 pACCAR16Δ crtX( β -カ ロ テ ン 生 産 用 プ ラ ス ミ ド ) 導 入 大 腸 菌 を 宿 主 と し て 利 用
し た HPLC-PDA分 析 結 果 を 表 す 図 。 a)pACCAR16Δ crtX導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLCク ロ マ ト
グ ラ ム ( 470 nm) 。 b) pUCBre-O11及 び pACCAR16Δ crtX導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLCク ロ
マ ト グ ラ ム ( 470 nm) 。 新 規 な 色 素 の ピ ー ク は 矢 印 で 示 さ れ て い る 。 c) b)に ゼ ア キ サ ン
チ ン を 添 加 し た HPLCク ロ マ ト グ ラ ム ( 470 nm) 。
40
【 図 7 】 pACCAR25Δ crtX( ゼ ア キ サ ン チ ン 生 産 用 プ ラ ス ミ ド ) 導 入 大 腸 菌 を 宿 主 と し て 利
用 し た HPLC-PDA分 析 結 果 を 表 す 図 。 a) pACCAR25Δ crtX導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLCク ロ
マ ト グ ラ ム ( 470 nm) 。 b) pUCBre-O11及 び pACCAR25Δ crtX導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLC
ク ロ マ ト グ ラ ム ( 470 nm) 。 新 規 な 色 素 の ピ ー ク は 矢 印 で 示 さ れ て い る 。 c) b)に ゼ ア キ
サ ン チ ン を 添 加 し た HPLCク ロ マ ト グ ラ ム ( 470 nm) 。 1、 2 は そ れ ぞ れ 、 ノ ス ト キ サ ン チ
ン、カロキサンチンと同定された。
【 図 8 】 pAC-Cantha( カ ン タ キ サ ン チ ン 生 産 用 プ ラ ス ミ ド ) 導 入 大 腸 菌 を 宿 主 と し て 利 用
し た HPLC-PDA分 析 結 果 を 表 す 図 。 a) pAC-Cantha導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLCク ロ マ ト グ
ラ ム ( 470 nm) 。 b) pUCBre-O11及 び pAC-Cantha導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLCク ロ マ ト グ
ラ ム ( 470 nm) 。 新 規 な 色 素 の ピ ー ク は 矢 印 で 示 さ れ て い る 。 c) b)に ア ス タ キ サ ン チ ン
50
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を 添 加 し た HPLCク ロ マ ト グ ラ ム ( 470 nm) 。 3、 4は そ れ ぞ れ 、 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β
-カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン 、 及 び 、 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン で あ る と 同
定された。
【 図 9 】 pAC-Asta( ア ス タ キ サ ン チ ン 生 産 用 プ ラ ス ミ ド ) 導 入 大 腸 菌 を 宿 主 と し て 利 用 し
た HPLC-PDA分 析 結 果 を 表 す 図 。 a) pAC-Asta導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLCク ロ マ ト グ ラ ム
( 470 nm) 。 b) pUCBre-O11及 び pAC-Asta導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLCク ロ マ ト グ ラ ム ( 4
70 nm) 新 規 な 色 素 の ピ ー ク は 矢 印 で 示 さ れ て い る 。 2は 2,3,2’ ,3’ -テ ト ラ ヒ ド ロ キ シ β ,β -カ ロ テ ン -4-オ ン と 同 定 さ れ た 。 c) b)に ア ス タ キ サ ン チ ン を 添 加 し た HPLCク ロ マ ト
グ ラ ム ( 470 nm) 。 5は 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン と 同 定 さ れ た 。
【図10】組換え大腸菌が生産するカロテノイドの種類とそれらのカロテノイドの推定合
10
成経路を表す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下、実施例により本発明について具体的に説明する。もっとも、本発明はこれにより
限定されるものではない。
【実施例】
【0078】
〔 実 施 例 1〕 菌 株 、 プ ラ ス ミ ド 、 生 育 条 件
本 発 明 に 用 い ら れ た 菌 株 と プ ラ ス ミ ド を 表 1 に 示 す 。 菌 株 の 培 養 は 30℃ で LB( Luria-Be
rtani) 培 地 ま た は 、 2× YT培 地 ( Sambrook et al., 1989) を 用 い て 行 っ た 。 必 要 に 応 じ
20
て 、 ア ン ピ シ リ ン ( ampicillin; Ap , 100μ g/ml) ま た は 、 ク ロ ラ ム フ ェ ニ コ ー ル ( chlo
ramphenicol; Cm, 20 μ g/ml) を 培 地 に 添 加 し た 。
カ ン タ キ サ ン チ ン 産 生 用 プ ラ ス ミ ド pAC-Cantha、 及 び ア ス タ キ サ ン チ ン 、 ア ド ニ キ サ ン
チ ン ( 4-ケ ト ゼ ア キ サ ン チ ン ) 産 生 用 プ ラ ス ミ ド pAC-Astaは 以 下 の よ う に し て 作 製 し た 。
パ ラ コ ッ カ ス 属 MBIC 01143( Agrobacterium aurantiacum) 由 来 の crtW 遺 伝 子 を 、 酵 母
キ ャ ン デ ィ ダ ・ ユ ー テ ィ リ ス ( Candida utilis) の GAP遺 伝 子 の コ ド ン 使 用 に 合 わ せ て 全
合 成 し た 。 コ ー ド さ れ る ア ミ ノ 酸 配 列 は 元 の CrtWと 同 じ に し て あ る 。 こ の 作 製 法 は 文 献 (
Miura et al., 1998) に 示 さ れ て い る 。 こ の 全 合 成 さ れ た crtW配 列 を 鋳 型 に し て 、 H1437
[ AvaI部 位 ( 下 線 ) 、 SD配 列 ( H1437の 10-15番 目 の 配 列 ) を 含 む ] と H1438[ NotI部 位 (
下 線 ) を 含 む ] プ ラ イ マ ー を 用 い て PCRを 行 い 、 得 ら れ た PCR産 物 を AvaIと NotIで 切 断 し て
30
、 0.76 kb AvaI-crtW-NotI断 片 を 得 た 。
H1437: 5'-GTCCCGAGAAGGAGGCTAGATATGTCCGCTCACGCTTTGC-3'
H1438: 5'-CGGCGGCCGCCCGGGACTAAGCGGTGTCACCCTTGGTTCT-3’
プ ラ ス ミ ド pCAR16( Misawa et al., 1990) を 鋳 型 に し て 、 H1431 [ NotI部 位 ( 下 線 )
、 SD配 列 ( H1431の 16-21番 目 の 配 列 ) を 含 む ] と H1432[ SalI部 位 ( 下 線 ) を 含 む ] プ ラ
イ マ ー を 用 い て PCRを 行 い 、 得 ら れ た PCR産 物 を NotIと SalIで 切 断 し て 、 1.1 kb NotI-crtE
-SalI断 片 を 得 た 。
H1431: 5'-ATGCGGCCGCTTATAAGGACAGCCCGAATG-3'
H1432: 5'-CAGTCGACATCCTTAACTGACGGCAGCGAG-3'
上 記 の 0.76 kb AvaI-crtW-NotI断 片 と 1.1 kb NotI-crtE-SalI断 片 を NotI部 位 を 介 し て
転 結 し 、 pACCAR16Δ crtXを AvaI/SalI消 化 し て 得 ら れ た 、 crtY、 crtI、 crtBを 有 す る 大 断
片 と 連 結 す る こ と に よ り 、 プ ラ ス ミ ド pAC-Canthaを 得 た 。
さ ら に 、 同 様 に 上 記 の 0.76 kb AvaI-crtW-NotI断 片 と 1.1 kb NotI-crtE-SalI断 片 を Not
I部 位 を 介 し て 転 結 し 、 pACCAR25Δ crtXを AvaI/SalI消 化 し て 得 ら れ た 、 crtY、 crtI、 crtB
、 crtZを 有 す る 大 断 片 と 連 結 す る こ と に よ り 、 プ ラ ス ミ ド pAC-Astaを 得 た 。
【0079】
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【表1】
10
20
Miura, Y., Kondo, K., Saito, T., Shimada, H., Fraser, P. D., Misawa, Production
of the carotenoids lycopene, β -carotene, and astaxanthin in the food yeast Cand
30
ida utilis. N., Appl. Environ. Microbiol., 64, 1226-1229, 1998
Misawa, N., Nakagawa, M., Kobayashi, K., Yamano, S., Izawa, Y. Nakamura, K., and
Harashima, K., Elucidation of the Erwinia uredovora carotenoid biosynthetic pat
hway by the functional analysis of gene products expressed in Escherichia coli.
J. Bacteriol., 172, 6704-6712, 1990
Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis T. 1989. Molecular cloning: a laborat
ory manual. 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y
.
Yokoyama, A., Miki, W., Izumida, H., Shizuri, Y. 1996. New Trihydroxy-keto- caro
tenoids isolated from an astaxanthin-producing marine bacterium. Biosci. Biotech
40
nol. Biochem. 60, 200-203, 1996 (非 特 許 文 献 2)
Misawa, N., Satomi, Y., Kondo, K., Yokoyama, A., Kajiwara, S., Saito, T., Ohtani
, T., and Miki, W., Structure and functional analysis of a marine bacterial caro
tenoid biosynthesis gene cluster and astaxanthin biosynthetic pathway proposed a
t the gene level. J. Bacteriol. 177, 6575-6585, 1995 (非 特 許 文 献 1)
〔 実 施 例 2〕 遺 伝 子 操 作 実 験
プラスミドの調製、制限酵素処理、ライゲーション反応、形質転換などの通常の遺伝子
操 作 実 験 は 、 前 述 の Sambrookら ( 1989) の Molecular Cloning( 前 述 の 文 献 ) に 示 さ れ た
方法により行った。
〔 実 施 例 3〕 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 か ら の 染 色 体 DNAの 調 製
50
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ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 ( Brevundimonas sp.) SD-212 株 ( SD212; MBIC 03018) を 300 m
lの Marine Broth (MB)培 地 ( Difco) で 25℃ 、 3日 間 培 養 し た 。 菌 体 を 集 菌 後 、 STE緩 衝 液
( 100 mM NaCl, 10 mM Tris・ HCl, 1 mM EDTA, pH 8.0) で 二 回 洗 浄 し 、 68℃ で 15分 間 熱
処 理 を し た 後 、 5 mg/ml の リ ゾ チ ー ム ( Sigma) と 100 μ g/mlの RNase A (Sigma)を 含 む I
液 (50 mM グ ル コ ー ス 、 25 mM Tris・ HCl, 10 mM EDTA, pH 8.0)に 懸 濁 し た 。 37℃ で 一 時
間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 後 、 250 μ g/mlに な る よ う に Protenase K (Sigma)を 加 え 、 37℃ で 1
0分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 さ ら に 最 終 濃 度 が 1% に な る よ う に N-Lauroylsarcosin・ Naを
添 加 し 、 転 倒 混 和 に よ り 穏 や か に 完 全 に 混 合 し た 後 37℃ で 3時 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 さ
ら に フ ェ ノ ー ル /ク ロ ロ ホ ル ム 抽 出 を 数 回 行 っ た 後 、 2倍 量 の エ タ ノ ー ル を ゆ っ く り と 添 加
し な が ら 、 析 出 し て き た 染 色 体 DNAを ガ ラ ス 棒 で 巻 き つ け 、 70% エ タ ノ ー ル で リ ン ス し た
10
後 、 2 mlの TE緩 衝 液 ( 10 mM Tris・ HCl, 1 mM EDTA, pH 8.0) に 溶 解 し て 、 染 色 体 DNA溶
液とした。
〔 実 施 例 4〕 PCR法 に よ る フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ 遺 伝 子 (crtI)の 部 分 断 片 の 増 幅
カ ロ テ ノ イ ド 産 生 細 菌 間 の フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ ( phytoene desaturase; フ ィ ト
エ ン 脱 水 素 酵 素 ) 遺 伝 子 (crtI)の 相 同 性 を 利 用 し て 得 ら れ た crtI-Foプ ラ イ マ ー ( 5’ -TTY
GAY GCI GGI CCI ACI GT -3’ ) 、 crtI-Reプ ラ イ マ ー ( 5’ -CCI GGR TGI GTI CCI GCI C
C-3’ ) を 合 成 し 、 前 出 し た 方 法 に よ り 得 ら れ た 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の 染 色
体 DNAを 鋳 型 と し て 用 い 、 PCR法 に よ り 増 幅 し た 。 耐 熱 性 DNAポ リ メ ラ ー ゼ は La-Taq (TaKaR
a)を 用 い 、 96℃ で 5分 間 熱 変 性 後 、 98℃ で 20秒 、 58℃ で 30秒 、 72℃ で 1分 の 条 件 で 35サ イ ク
ル の 増 幅 を 行 っ た 。 増 幅 産 物 は 、 1% ア ガ ロ ー ス ゲ ル 電 気 泳 動 で 確 認 後 、 1.1 kbの 長 さ の D
20
NAを ア ガ ロ ー ス ゲ ル か ら 切 り 出 し 、 精 製 ( Qiagene Gel Extraction kit、 QIAGENE、 も し
く は Gene Clean II Kit、 BIO101) を 行 っ た 。 精 製 さ れ た DNA断 片 は 、 pGEM-T Easyに 連 結
し 、 大 腸 菌 ( DH5α ) を 形 質 転 換 し た 。 こ の プ ラ ス ミ ド を pCRTI-SD212と 名 づ け 、 ア ン ピ シ
リ ン を 添 加 し た 2 mlの LB液 体 培 地 で 37℃ 、 一 晩 培 養 後 、 プ ラ ス ミ ド を 抽 出 し た 。 抽 出 さ れ
た プ ラ ス ミ ド は Big Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit ver.2 (Per
kin-Elmer)と model 3700 DNA sequencer (Perkin-Elmer)を 用 い 付 属 の プ ロ ト コ ー ル に 従
っ て 塩 基 配 列 ( 部 分 配 列 ) の 決 定 を 行 っ た 。 決 定 さ れ た DNA配 列 ( 配 列 番 号 1) は Blast (A
ltschul and Lipman, 1990)を 用 い ホ モ ロ ジ ー 検 索 を 行 い フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ ( phy
toene desaturase) 遺 伝 子 (crtI)と ホ モ ロ ジ ー を 持 つ DNA断 片 で あ る こ と を 確 認 し た 。 ま
た 、 PCR後 、 精 製 さ れ た DNA断 片 の 一 部 は 実 施 例 7、 8に 示 す コ ロ ニ ー ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ
30
ン、サザンハイブリダイゼーションのプローブとして用いた。
Altschul, S. F. and Lipman, D. J., Protein database search for multiple alignmen
ts. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 5509-5513, 1990.
〔 実 施 例 5〕 コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ リ ー の 作 製
ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の 染 色 体 DNAの 調 製 液 か ら フ ァ ー ジ 粒 子 を 得 る と こ ろ ま
で の 実 験 方 法 は Stratagene社 の SuperCos 1 Cosmid Vector Kitの 取 扱 説 明 書 に 従 っ て 行 っ
た 。 す な わ ち ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 か ら 得 ら れ た 染 色 体 DNAを Sau3AIで 部 分 消 化
を 行 い コ ス ミ ド ベ ク タ ー の BamHI部 位 に 連 結 し 、 LAMBDA INN (Nippon Gene)を 用 い て フ ァ
ー ジ 粒 子 に パ ッ ケ ー ジ ン グ し た 。 そ し て 、 大 腸 菌 ( Escherichia coli) XL1-Blue MR株 、
及 び 、 プ ラ ス ミ ド pACCAR25Δ crtXを 含 み ゼ ア キ サ ン チ ン を 作 る 大 腸 菌 XL1-Blue MR株 に 、
40
そ の フ ァ ー ジ を 感 染 さ せ 、 抗 生 物 質 Ap耐 性 、 及 び Ap、 Cm耐 性 の コ ロ ニ ー を 、 Ap、 及 び Ap、
Cmを 含 む LBプ レ ー ト 上 に 各 々 、 約 1,000個 ず つ 得 た 。 得 ら れ た コ ロ ニ ー は 滅 菌 し た 楊 枝 を
用 い て 、 新 た に 抗 生 物 質 を 含 む LBプ レ ー ト 上 に 植 え 継 い だ 。 な お 、 こ の 段 階 で 色 の 変 化 し
たコロニーは全く得られなかった。
こ の コ ス ミ ド ベ ク タ ー SuperCos 1( Stratagene) は 7.9 kbの ベ ク タ ー で 30∼ 45 kbの DNA
断 片 を 挿 入 す る こ と が で き る 。 ま た 、 cos領 域 が 二 つ あ る の で 、 パ ッ ケ ー ジ ン グ の 効 率 が
よく、コスミドコンカテマーのパッケージングを防ぐための脱リン酸化操作が不要であり
、 挿 入 し た い 染 色 体 DNAの 方 を 脱 リ ン 酸 化 で き る た め に 、 染 色 体 DNA断 片 の 再 結 合 断 片 の 混
入の心配が無く、サイズ分画も不要であるという利点がある。
〔 実 施 例 6〕 発 現 ク ロ ー ニ ン グ の 試 み
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実 施 例 5で 作 製 し た プ ラ ス ミ ド pACCAR25Δ crtXを 含 み ゼ ア キ サ ン チ ン を 作 る 大 腸 菌 を 宿
主 と し て 作 製 し た コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ リ ー 700コ ロ ニ ー を 用 い て 、 各 々 2 mlず つ 培 養 し 、 ア
セ ト ン で カ ロ テ ノ イ ド 色 素 を 抽 出 し た 後 、 HPLC-PDA( フ ォ ト ダ イ オ ー ド ア レ ィ 検 出 器 ) 分
析 に よ り 、 カ ロ テ ノ イ ド の 分 析 を 行 っ た 。 方 法 は 、 実 施 例 11に 示 さ れ て い る 。 コ ン ト ロ ー
ルのゼアキサンチンに加えて、新たなカロテノイドが生成していないかどうかの検討を行
った。その結果、新たなカロテノイドを合成するものは全く得られなかった。したがって
、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 の 発 現 ク ロ ー ニ ン グ は 不 可
能であると結論した。
〔 実 施 例 7〕 コ ロ ニ ー ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン
実 施 例 5で 作 製 し た 大 腸 菌 XL1-Blue MRを 宿 主 と し て 作 製 し た コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ リ ー 500
10
コ ロ ニ ー を 用 い て 、 実 施 例 4で 示 し た PCR法 に よ り 増 幅 し た フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ 遺 伝
子 ( crtI) の 部 分 断 片 を プ ロ ー ブ と し て 、 コ ロ ニ ー ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン ( colony hyb
ridization) 法 を 行 い 、 crtI遺 伝 子 を 含 む ク ロ ー ン の ス ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た 。 ま ず 、 大
腸 菌 を プ レ ー ト に 植 え 37℃ で 培 養 し た 。 こ の と き 、 大 腸 菌 は 一 枚 の プ レ ー ト あ た り 、 48コ
ロ ニ ー ず つ 植 え 付 け た 。 一 晩 培 養 後 、 直 径 82 mmの Hybond-N+メ ン ブ レ ン ( Amersham Pharm
acia) を プ レ ー ト に 乗 せ 、 注 射 針 で 目 印 を つ け た 。 メ ン ブ レ ン を は が し 、 菌 体 が 付 着 し た
面 を 上 に 向 け 、 10% SDS溶 液 を 含 ん だ 3 mmろ 紙 ( Whattman) で 5分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト 後 、
さ ら に 変 性 溶 液 ( 1.5 M NaCl, 0.5 M NaOH) を 含 ん だ 3 mmろ 紙 で 5分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト を
行 い 、 そ の 後 メ ン ブ レ ン を 中 和 液 ( 1.5 M NaCl, 0.5M Tris・ HCl) に 5分 間 つ け た ( 2回 )
。 さ ら に 2× SSCで 2回 洗 浄 し た 。 こ の と き 、 細 胞 の 破 片 を 残 さ な い よ う に キ ム タ オ ル で メ
20
ン ブ レ ン を 強 く こ す っ た 。 処 理 後 、 メ ン ブ レ ン は 、 キ ム タ オ ル 、 キ ム ワ イ プ 上 で 30分 間 風
乾 後 、 80℃ で 2時 間 ベ ー キ ン グ ( baking) を 行 い 、 メ ン ブ レ ン に DNAを 固 定 し た 。 プ ロ ー ブ
DNAは 、 Alkphos Direct Labeling and Detection System (Amersham Pharmacia)を 用 い 、
添付のプロトコールに従って作製し、コロニーハイブリダイゼーションを行った。その結
果 、 500株 の ク ロ ー ン か ら 、 フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ 遺 伝 子 ( crtI) の 部 分 断 片 を プ ロ
ー ブ DNAと し て 用 い た コ ロ ニ ー ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン 法 に よ り 6個 の ポ ジ テ ィ ブ ク ロ ー ン
が 得 ら れ た 。 6個 の ポ ジ テ ィ ブ ク ロ ー ン に 存 在 す る プ ラ ス ミ ド を 、 pCos5-1、 pCos5-2、 pCo
s7-1、 pCos8-1、 pCos9-1、 pCos10-1と 名 づ け た 。
〔 実 施 例 8〕 サ ザ ン ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン
実 施 例 7で 選 抜 さ れ た 、 6つ の ポ ジ テ ィ ブ ク ロ ー ン を 、 Apを 添 加 し た 2 mlの LB液 体 培 地 で
30
37℃ 、 一 晩 培 養 し た 後 、 プ ラ ス ミ ド DNAを 抽 出 し た 。 抽 出 後 の プ ラ ス ミ ド DNAは 、 EcoRIで 3
7℃ 、 数 時 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し 、 完 全 消 化 し た 後 、 電 気 泳 動 を 行 っ た 。 コ ン ト ロ ー ル と し
て 、 ベ ク タ ー の SuperCos 1、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212の 染 色 体 DNAを 同 様 に 消 化 し た
も の を 用 い た 。 電 気 泳 動 に は 、 小 型 の サ ブ マ リ ン 型 の 電 気 泳 動 漕 Mupid( コ ス モ バ イ オ )
を 用 い 1%ア ガ ロ ー ス ゲ ル を 用 い て 50 Vで 約 70分 電 気 泳 動 を 行 っ た 。 な お 、 電 気 泳 動 バ ッ フ
ァ ー に は 1× TBEバ ッ フ ァ ー を 用 い た 。 ゲ ル は 電 気 泳 動 後 、 エ チ ジ ウ ム ブ ロ マ イ ド で 染 色 し
、 超 純 水 で 脱 色 後 、 UV照 射 下 で 写 真 撮 影 を し た ( 図 3) 。 そ の 後 0.4M NaOH溶 液 を 用 い て キ
ャ ピ ラ リ ー ブ ロ ッ テ ィ ン グ を 行 う こ と に よ り ナ イ ロ ン メ ン ブ レ ン ( Hybond N+) に ト ラ ン
ス フ ァ ー し た 。 処 理 後 、 メ ン ブ レ ン を 80℃ で 2時 間 、 ベ ー キ ン グ ( baking) を 行 い 、 メ ン
ブ レ ン に DNAを 固 定 し た 。 そ の 後 、 Alkphos Direct Labeling and Detection System (Ame
40
rsham Pharmacia)を 用 い 、 添 付 の プ ロ ト コ ー ル に 従 っ て 、 サ ザ ン ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン
を 行 っ た 。 ま た 、 プ ロ ー ブ DNAに は 、 前 述 し た フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ 遺 伝 子 ( crtI)
の 部 分 断 片 を 用 い た 。 そ の 結 果 、 6つ の ポ ジ テ ィ ブ ク ロ ー ン の う ち pCos5-2、 pCos7-1、 pCo
s9-1の 3つ の ク ロ ー ン に お い て 、 12 kbの EcoRI断 片 に ポ ジ テ ィ ブ シ グ ナ ル が 認 め ら れ た (
図 3) 。 コ ン ト ロ ー ル の SD-212染 色 体 DNAは 、 電 気 泳 動 で 確 認 し た と こ ろ 、 高 分 子 側 で ス ミ
アなバンドが認められ、ほとんど消化されていなかった。僅かながらも、高分子側で陽性
の シ グ ナ ル が 認 め ら れ た 。 ほ と ん ど 消 化 さ れ な い 原 因 と し て は 、 染 色 体 DNAが 部 分 的 に メ
チ ル 化 さ れ EcoRIに よ る 分 解 が 阻 害 さ れ た こ と な ど が 考 え ら れ る 。 さ ら に 、 3つ の ポ ジ テ ィ
ブ ク ロ ー ン の プ ラ ス ミ ド と SuperCos 1、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の 染 色 体 DNAを Bam
HIも し く は BamHI-EcoRIで 消 化 し 、 同 様 の 実 験 を 行 っ た ( 図 4) 。 そ の 結 果 BamHIに よ る 消
50
(22)
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化 を 行 っ た も の で は 、 9 kbの DNA断 片 に ポ ジ テ ィ ブ シ グ ナ ル が 認 め ら れ 、 BamHI-EcoRIに よ
る 消 化 を 行 っ た も の で は 、 8.2 kbの ポ ジ テ ィ ブ シ グ ナ ル が 認 め ら れ た 。 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ
ス 属 SD-212株 の 染 色 体 DNAの 消 化 物 に も 、 同 様 の サ イ ズ の バ ン ド で ポ ジ テ ィ ブ シ グ ナ ル が
薄いながらも認められた。
〔 実 施 例 9〕 カ ロ テ ノ イ ド 遺 伝 子 ク ラ ス タ ー の 解 析
実 施 例 8で 選 抜 さ れ た 3つ の 陽 性 ク ロ ー ン ( pCos5-2、 pCos7-1、 pCos9-1) の う ち pCos5-2
を 用 い 、 12 kbの 挿 入 断 片 を EcoRIで 切 り 出 し 、 プ ラ ス ミ ド ベ ク タ ー pBluescript II KS-の
EcoRI部 位 に 連 結 し 、 大 腸 菌 ( E. coli) DH5α 株 を 形 質 転 換 し た 。 こ の プ ラ ス ミ ド を p5Bre
2-15と 名 づ け た 。 こ の 大 腸 菌 を 、 Apを 添 加 し た 2 mlの LB液 体 培 地 で 37℃ 、 一 晩 培 養 後 、 プ
ラ ス ミ ド を 抽 出 し た 。 抽 出 さ れ た プ ラ ス ミ ド は Big Dye Terminator Cycle Sequencing Re
10
ady Reaction Kit ver.2 (Perkin-Elmer)と model 3700 DNA sequencer (Perkin-Elmer)を
用 い 付 属 の プ ロ ト コ ー ル に 従 っ て 塩 基 配 列 の 決 定 を 行 っ た 。 決 定 さ れ た DNA配 列 ( 配 列 番
号 2) は GeneMark.hmm( Lukashin A. and Borodovsky M.) 用 い 遺 伝 子 コ ー ド 領 域 を 推 定 し
、 SD様 配 列 の 確 認 な ど を 行 い 、 12 kbの 断 片 中 に 12個 の ORF( open reading frame) を 発 見
し た ( 図 5) 。 Blast を 用 い 、 各 ORFの ア ミ ノ 酸 配 列 レ ベ ル で の ホ モ ロ ジ ー 検 索 を 行 い 、 12
個 の う ち 7個 は 、 既 知 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 ( crtW, crtY, crtI, crtB, crtE, crt
Z, idi) と 相 同 性 を 示 す こ と が わ か っ た ( 表 2) 。 残 り の 5個 の 遺 伝 子 ( ORF) は 、 既 存 の
どんな遺伝子とも全体的な相同性は有さない未知遺伝子であった。ブレバンディモナス属
SD-212株 由 来 の 既 知 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 酵 素 と ホ モ ロ ジ ー が あ っ た 7個 の Crt酵 素 ( 1個
の Idiを 含 む ) と 、 他 生 物 由 来 の 相 当 酵 素 と の 同 一 性 ( identity; 同 一 の ア ミ ノ 酸 配 列 の
20
比 率 ) の 検 索 は 、 正 確 を 期 す た め に 以 下 の よ う に し て 行 っ た 。 す な わ ち 、 Blastプ ロ グ ラ
ム ( ver. 2) ( Altschul, S. F., Madden, T. L., Schaffer, A. A., Zhang, J., Zhang,
Z., Miller, W., and Lipmann, D. J., Nucleic Acids Res. 25, 3389-3402, 1997) を
用 い 、 GenBank/DDBJの デ ー タ ベ ー ス か ら ホ モ ロ ジ ー 検 索 ( tBlastn) を 行 っ た 。 次 に 、 ヒ
ッ ト し た ア ミ ノ 酸 配 列 を 用 い 、 各 Crtタ ン パ ク 質 に つ い て 、 Clustal Wプ ロ グ ラ ム ( ver. 1
.8) ( Higgins, D. G., Thompson, J. D., and Gibson, T. J., Methods Enzymol. 266,
383-402, 1996) 、 及 び 、 GeneDocプ ロ グ ラ ム ( Nicholas, K. B., Nicholas H. B. Jr., a
nd Deerfield, D. W. II., Embnew. News 4, 14, 1997) に よ る 解 析 を 行 い 、 各 タ ン パ ク
質 に お け る 全 領 域 間 の 同 一 性 ( identity) を 求 め た 。 表 2に は 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD212株 由 来 の 各 Crtタ ン パ ク 質 ( 1個 の Idiを 含 む ) と 最 も ホ モ ロ ジ ー が 高 か っ た 他 細 菌 由 来
30
の Crtタ ン パ ク 質 と の 同 一 性 が 示 さ れ て い る 。 本 解 析 の 結 果 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-21
2株 由 来 の 7個 の Crtタ ン パ ク 質 ( 1個 の Idiを 含 む ) は 、 既 知 の 他 生 物 由 来 の 相 当 タ ン パ ク
質 と は 中 程 度 以 下 の ホ モ ロ ジ ー し か 示 さ な い こ と が 明 ら か と な っ た 。 表 2か ら わ か る よ う
に 、 最 も 高 い ホ モ ロ ジ ー を 示 し た SD-212株 由 来 の CrtIで も 72% の 同 一 性 で あ っ た 。 さ ら に
驚 く べ き こ と に は 、 SD-212株 由 来 の CrtZと CrtEの 場 合 は 、 50% を 超 え る 同 一 性 を 示 す 既 知
の 他 生 物 由 来 の 相 当 タ ン パ ク 質 は 見 出 さ れ な く 、 最 も 高 い も の で も 、 そ れ ぞ れ 、 46% 及 び
39% の 同 一 性 で あ っ た 。 SD-212株 の crtZ遺 伝 子 は 、 配 列 番 号 2に 示 さ れ た 12 kb( 11,991 k
b) の EcoRI断 片 の 相 補 鎖 に お け る 塩 基 番 号 1,319か ら 1,804に コ ー ド さ れ る 遺 伝 子 で 、 そ の
塩 基 配 列 は 配 列 番 号 2 9 に 、 コ ー ド さ れ る ア ミ ノ 酸 配 列 ( CrtZ) は 配 列 番 号 3 0 に 示 さ れ
て い る 。 SD-212株 の crtE遺 伝 子 は 、 配 列 番 号 2に 示 さ れ た 12 kb( 11,991 kb) の EcoRI断 片
40
の 相 補 鎖 に お け る 塩 基 番 号 2,963か ら 3,859に コ ー ド さ れ る 遺 伝 子 で 、 そ の 塩 基 配 列 は 配 列
番 号 3 1 に 、 コ ー ド さ れ る ア ミ ノ 酸 配 列 ( CrtE) は 配 列 番 号 3 2 に 示 さ れ て い る 。
ま た 、 各 crt遺 伝 子 の 配 置 を 調 べ て み る と 、 crtW、 crtZ遺 伝 子 の 位 置 や そ の 他 の 遺 伝 子 の
向 き な ど 、 か つ て 報 告 さ れ た 水 酸 基 を β -イ オ ノ ン ( β -ionone) 環 に 有 す る カ ロ テ ノ イ ド
類 を 生 産 す る 細 菌 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 群 ( Misawa et al., 1990 &1995;
Hannib
al et al., 2000) と 大 き く 異 な る 構 造 を 有 す る こ と が わ か っ た ( 図 5) 。 IPPイ ソ メ ラ ー
ゼ 遺 伝 子 ( idi) が 、 カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 群 内 に 存 在 す る と い う の も 初 め て で あ る
。 な お 、 上 記 の 12個 の ORF( 7個 の crt遺 伝 子 を 含 む ) す べ て を 含 む プ ラ ス ミ ド p5Bre2-15を
有する大腸菌は、カロテノイドを全く生産できなかった。したがって、ブレバンディモナ
ス 属 ( Brevundimonas sp.) SD-212 株 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 群 は 、 こ の ま ま の 状 態
50
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では大腸菌で機能発現しないことが明らかとなった。
【0080】
【表2】
10
20
Lukashin A. and Borodovsky M., 1998, GeneMark.hmm: new solutions for gene findin
g, NAR, Vol. 26, No. 4, pp. 1107-1115.
Misawa,N., Nakagawa,M., Kobayashi,K., Yamano,S., Izawa,Y.,Nakamura,K. and Harash
ima,K., Elucidation of the Erwinia uredovora carotenoid biosynthetic pathway by
functional analysis of gene products expressed in Escherichia coli. J. Bacteriol
. 172, 6704-6712, 1990
Misawa, N., Satomi, Y., Kondo, K., Yokoyama, A., Kajiwara, S., Saito, T., Ohtani
, T., and Miki, W., Structure and functional analysis of a marine bacterial caro
tenoid biosynthesis gene cluster and astaxanthin biosynthetic pathway proposed a
30
t the gene level. J. Bacteriol. 177, 6575-6585, 1995 (非 特 許 文 献 1)
Hannibal, L., Lorquin, J., D'Ortoli, N.A., Garcia, N., Chaintreuil, C., Masson-B
oivin, C., Dreyfus, B. and Giraud, E., Isolation and characterization of canthax
anthin biosynthesis genes from the photosynthetic bacterium Bradyrhizobium sp. s
train ORS278. J. Bacteriol. 182, 3850-3853, 2000
Larsen, R.A., Wilson, M.M., Guss, A.M. and Metcalf, W.W., Genetic analysis of pi
gment biosynthesis in Xanthobacter autotrophicus Py2 using a new, highly efficie
nt transposon mutagenesis system that is functional in a wide variety of bacteri
a Arch. Microbiol. 178, 193-201, 2002
〔 実 施 例 10〕 β -ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ 融 合 タ ン パ ク 質 発 現 用 プ ラ ス ミ ド の 構 築
40
各 種 ORFの 機 能 を 明 ら か に す る た め 、 大 腸 菌 ベ ク タ ー pUC18( TOYOBO) の コ ー ド す る β ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ 遺 伝 子 ( lacZ) の リ ー ド 配 列 と の 融 合 タ ン パ ク 質 と な る よ う に 各 ORFを
、 プ ラ ス ミ ド p5Bre2-15の DNAを 鋳 型 と し て PCRで 増 幅 し 、 β -ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ 融 合 タ ン パ
ク質発現用の各種プラスミドの構築を行った。この方法により大腸菌で機能発現されるこ
と を 期 待 し た か ら で あ る 。 具 体 的 に は 、 各 ORFを 5’ 末 端 側 に EcoRI部 位 を 、 3’ 末 端 側 に Ba
mHIも し く は XbaI部 位 を 持 つ 増 幅 産 物 が 得 ら れ る よ う に 設 計 し た 配 列 番 号 ( 5∼ 28) の プ ラ
イ マ ー を 用 い て PCRに て 増 幅 し た 。 耐 熱 性 DNAポ リ メ ラ ー ゼ は La-Taq (TaKaRa)を 用 い 、 各
々 96℃ で 5分 間 熱 変 性 後 、 98℃ で 20秒 、 56℃ で 30秒 、 72℃ で 1分 の 条 件 で 35サ イ ク ル の 増 幅
を 行 っ た 。 増 幅 産 物 の 一 部 は 、 1%ア ガ ロ ー ス ゲ ル 電 気 泳 動 で 確 認 し た 。 残 り の 増 幅 産 物 は
エ タ ノ ー ル 沈 殿 後 、 EcoRIに よ る 消 化 と 、 BamHIも し く は XbaIに よ る 消 化 を 行 い 。 1%ア ガ ロ
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ー ス ゲ ル 電 気 泳 動 を 行 っ た 。 次 に 目 的 の 長 さ の DNAを ア ガ ロ ー ス ゲ ル か ら 切 り 出 し 、 精 製
( Qiagene Gel Extraction kit、 QIAGENE、 も し く は Gene Clean II Kit、 BIO101) を 行 っ
た 。 切 り 出 さ れ た DNAは pUC18の EcoRIと 、 BamHIも し く は XbaI部 位 に 連 結 し 、 大 腸 菌 DH5α
に 形 質 転 換 し た 。 こ の β -ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ 融 合 タ ン パ ク 質 発 現 用 プ ラ ス ミ ド で は 、 各 ORF
の 本 来 の 開 始 の ア ミ ノ 酸 配 列 Metの 前 に 、 β -ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ の 7個 の ア ミ ノ 酸 か ら な る
リ ー ダ 配 列 MetThrMetIleThrAsnSerが 付 加 さ れ る よ う に デ ザ イ ン さ れ て い る 。
〔 実 施 例 11〕 β -ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ -各 種 Crt融 合 タ ン パ ク 質 遺 伝 子 の 発 現 と 色 素 生 産 の
解析
実 施 例 10で 示 し た プ ラ ス ミ ド の う ち 、 crtE, crtB, crtI, crtY, crtZ, crtW遺 伝 子 を 含
む プ ラ ス ミ ド を 有 す る 大 腸 菌 を 、 Apを 添 加 し た 2 mlの LB液 体 培 地 で 37℃ 、 一 晩 培 養 後 、 プ
10
ラ ス ミ ド を 抽 出 し た 。 抽 出 さ れ た プ ラ ス ミ ド は Big Dye Terminator Cycle Sequencing Re
ady Reaction Kit ver.2 (Perkin-Elmer)と model 3700 DNA sequencer (Perkin-Elmer)を
用い付属のプロトコールに従って塩基配列の確認を行った。各プラスミドの名前をそれぞ
れ pUCBre-E (lacZ::crtE)、 pUCBre-B (lacZ::crtB)、 pUCBre-I
(lacZ::crtI)、 pUCBre-
Y (lacZ ::crtY)、 pUCBre-Z (lacZ::crtZ)、 pUCBre-W (lacZ ::crtW)と 名 づ け た 。
そ の 後 、 表 3の 左 に 示 す 各 種 カ ロ テ ノ イ ド 生 産 性 プ ラ ス ミ ド ( chloramphenicol、 Cm耐 性
) を 有 す る 大 腸 菌 に こ れ ら の プ ラ ス ミ ド を 導 入 し 、 Ap、 Cmを 添 加 し た 2 mlの LB液 体 培 地 で
1 mMの IPTG添 加 に よ る 誘 導 下 で 30℃ 、 48培 養 後 、 遠 心 分 離 に よ り 集 菌 し 、 菌 体 を STEで 二
回 洗 浄 後 、 200 μ lの ア セ ト ン を 添 加 し 、 ボ ル テ ッ ク す る こ と に よ り 色 素 を 菌 体 か ら ア セ
ト ン へ 移 し た 。 そ の 後 、 遠 心 分 離 を 行 い 、 上 清 を ろ 過 し 、 HPLC-PDAシ ス テ ム ( Waters All
20
iance 2695お よ び 2996フ ォ ト ダ イ オ ー ド ア レ ィ 検 出 器 ) で 色 素 の 分 析 を 行 っ た 。 カ ラ ム に
は TSK gel ODS-80Ts (TOSOH)を 用 い 、 送 液 条 件 は 、 A液 ( 95%メ タ ノ ー ル ) 、 B液 [ メ タ ノ
ー ル : テ ト ラ ヒ ド ロ フ ラ ン (tetrahydrofuran; THF), 7 : 3] で 5分 間 A液 100%を 送 液 し 、
5分 か ら 10分 の 間 で A液 100 %か ら を B液 100 % に 直 線 グ ラ ジ エ ン ト を 行 い 、 そ の 後 B液 を 8
分 間 送 液 し た 。 な お 、 検 出 は フ ォ ト ダ イ オ ー ド ア レ ィ 検 出 器 で 行 い 、 付 属 の Empowerソ フ
トウェアで解析を行った。標品としては、各種カロテノイド合成能を有する大腸菌(表3
左 ) か ら 抽 出 し た 色 素 ま た は 合 成 品 を 標 品 と し て 用 い 、 470 nmで の 保 持 時 間 と 吸 収 波 形 の
比 較 に よ り 予 想 通 り の 各 種 カ ロ テ ノ イ ド が 生 産 さ れ る こ と を 確 認 し た ( 表 3右 ) 。 こ れ ら
の 結 果 よ り 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の 各 種 融 合 crt遺 伝 子 が 大 腸 菌 内 で 機 能 し 、
既 存 の crt遺 伝 子 ( crtE, crtB, crtI, crtY, crtZ, crtW) と 同 様 の 機 能 を 有 す る こ と が
明 ら か と な っ た 。 た だ し 、 pUCBre-I
30
(lacZ::crtI)と pUCBre-Y (lacZ ::crtY)の 発 現 は 、
大 腸 菌 で は か な り 弱 か っ た 。 既 知 の 他 生 物 由 来 の Crtタ ン パ ク 質 と 50% 以 下 の 同 一 性 し か
示 さ な い 、 SD-212株 由 来 の CrtEと CrtZに つ い て は 、 本 実 験 に よ り 、 大 腸 菌 内 で 強 い 触 媒 活
性 が あ る こ と が 確 認 さ れ た 。 CrtEの 場 合 は 、 エ ル ウ ィ ニ ア ・ ウ レ ド ボ ラ ( Erwinia uredov
ora; Pantoea ananatis) 由 来 の CrtEと 同 じ 触 媒 活 性 を 有 す る こ と 、 す な わ ち 、 フ ァ ル ネ
シ ル ピ ロ リ ン 酸 ( FPP) か ら ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ リ ン 酸 ( GGPP) を 作 る GGPPシ ン タ ー ゼ
で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 CrtZの 場 合 は 、 β -カ ロ テ ン か ら ゼ ア キ サ ン チ ン を 、 カ ン
タ キ サ ン チ ン か ら ア ス タ キ サ ン チ ン を 作 る 活 性 を 有 す る β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー
ゼ ( β -C3-hydroxylase; 3,3’ -β -hydroxylase) で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 な お 、
図 2は ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 が 生 産 す る カ ロ テ ノ イ ド で あ る が 、 図 2中 に お け る β
-イ オ ノ ン 環 の 3位 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド の す べ て ( た と え ば 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ
キ サ ン チ ン や 2-ヒ ド ロ キ シ ア ド ニ キ サ ン チ ン 等 ) の 合 成 に 、 SD-212株 由 来 の CrtZが 関 与 し
ていることは明らかである。
【0081】
40
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【表3】
10
20
〔 実 施 例 12〕 β -ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ - ORF11融 合 タ ン パ ク 質 の 発 現 と 色 素 生 産 の 解 析
実 施 例 10で 示 し た プ ラ ス ミ ド の う ち 、 機 能 の 推 定 が で き な い ORF1, ORF6, ORF7, ORF11,
ORF12を 含 む プ ラ ス ミ ド を 有 す る 大 腸 菌 を 、 Apを 添 加 し た 2 mlの LB液 体 培 地 で 37℃ 、 一 晩
培 養 後 、 プ ラ ス ミ ド を 抽 出 し た 。 抽 出 さ れ た プ ラ ス ミ ド は Big Dye Terminator Cycle Seq
uencing Ready Reaction Kit ver.2 (Perkin-Elmer)と model 3700 DNA sequencer (Perki
n-Elmer)を 用 い 付 属 の プ ロ ト コ ー ル に 従 っ て 塩 基 配 列 の 確 認 を 行 っ た 。 各 プ ラ ス ミ ド の 名
前 を そ れ ぞ れ pUCBre-O1( lacZ::SD212-ORF1) 、 pUCBre-O6( lacZ::SD212-ORF6) 、 pUCBre
30
-O7( lacZ::SD212-ORF7) 、 pUCBre-O11( lacZ::SD212-ORF11) 、 pUCBre-O12( lacZ::SD21
2-ORF12) と 名 づ け た 。 そ の 後 、 表 3の 左 に 示 す 各 種 カ ロ テ ノ イ ド 生 産 性 プ ラ ス ミ ド ( Cm耐
性 ) を 有 す る 大 腸 菌 に こ れ ら の プ ラ ス ミ ド を 導 入 し 、 Ap、 Cmを 添 加 し た 2 mlの LB液 体 培 地
で 1 mMの IPTG添 加 に よ る 誘 導 下 で 30℃ 、 48培 養 後 、 遠 心 分 離 に よ り 集 菌 し 、 菌 体 を STEで
二 回 洗 浄 後 、 200 μ lの ア セ ト ン を 添 加 し 、 ボ ル テ ッ ク す る こ と に よ り 色 素 を 菌 体 か ら ア
セ ト ン へ 移 し た 。 そ の 後 、 遠 心 分 離 を 行 い 、 上 清 を ろ 過 し 、 HPLC-PDAシ ス テ ム に よ り 、 実
施 例 11と 同 様 方 法 に よ り 色 素 の 分 析 を 行 っ た 。
上 記 の 実 験 を 行 っ た 結 果 と し て 、 プ ラ ス ミ ド pUCBre-O11を 導 入 し た 大 腸 菌 の み が ポ ジ テ
ィ ブ な 結 果 が 得 ら れ た ( ORF11の 塩 基 配 列 は 配 列 番 号 3 に 、 コ ー ド さ れ る ア ミ ノ 酸 配 列 は
配 列 番 号 4 に 示 さ れ て い る ) 。 す な わ ち 、 ORF11の 融 合 発 現 用 プ ラ ス ミ ド pUCBre-O11( lac
40
Z::SD212-ORF11) を 、 pACCAR16Δ crtXを 有 す る β -カ ロ テ ン 産 生 大 腸 菌 ( DH5α ) に 導 入 し
た 株 の 色 素 抽 出 液 で は 、 保 持 時 間 16分 の と こ ろ に β -カ ロ テ ン ( 451 nm、 478 nm) の 存 在
が 認 め ら れ 、 高 極 性 側 の 11分 の と こ ろ に 451.0 nm、 478.8 nmの 吸 収 極 大 を 持 つ 物 質 が 認 め
ら れ 、 さ ら に 、 13分 の と こ ろ に 452.2 nm、 477.6 nmの 吸 収 極 大 を 持 つ 物 質 が 認 め ら れ た (
図 6、 矢 印 で 示 さ れ て い る ) 。 た だ し 、 変 換 産 物 の 量 は 少 な か っ た 。 こ れ ら は ゼ ア キ サ ン
チ ン で あ る 可 能 性 も あ る た め 、 pACCRT25Δ crtX由 来 の ゼ ア キ サ ン チ ン を 主 成 分 と す る ア セ
ト ン 抽 出 物 と 混 合 し 、 co-HPLCを 行 っ た 。 そ の 結 果 、 こ れ ら 2 つ の ピ ー ク は ゼ ア キ サ ン チ
ン ( 保 持 時 間 : 10.6分 ) の ピ ー ク と は 重 な ら な か っ た の で ( 図 6c) 、 こ れ ら の 2つ の 変 換
産 物 は 、 ゼ ア キ サ ン チ ン と 異 な る 物 質 で あ る こ と が わ か っ た 。 保 持 時 間 11分 と 13分 の カ ロ
テ ノ イ ド は 、 そ れ ぞ れ 、 β ,β -カ ロ テ ン -2,2’ -ジ オ ー ル ( β ,β -carotene-2,2’ -diol;
50
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2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β -カ ロ テ ン ) 、 及 び 、 β ,β -カ ロ テ ン -2-オ ー ル ( β ,β -caroten-2
-ol; 2-ヒ ド ロ キ シ -β -カ ロ テ ン ) で あ る と 考 察 さ れ た ( 図 10参 照 ) 。
ORF11の 融 合 発 現 用 プ ラ ス ミ ド pUCBre-O11( lacZ::SD212-ORF11) を 、 pACCAR25Δ crtXを
有 す る ゼ ア キ サ ン チ ン 産 生 大 腸 菌 ( DH5α ) に 導 入 し た 株 の 色 素 抽 出 液 で は 、 10.6分 の 保
持 時 間 に ゼ ア キ サ ン チ ン (451 nm、 480 nm)の 存 在 が 認 め ら れ 、 そ れ 以 外 に 新 た な ピ ー ク
と し て 、 9.1分 の と こ ろ に 451.0 nm、 478.8 nmの 吸 収 極 大 を 持 つ 物 質 1が 認 め ら れ 、 ま た 、
9.9分 に 452.2 nm、 477.6 nmの 吸 収 を 持 つ 物 質 2の ピ ー ク が 観 察 さ れ た ( 図 7、 矢 印 で 示 さ
れ て い る ) 。 カ ロ テ ノ イ ド 1 及 び 2 は そ れ ぞ れ 、 ノ ス ト キ サ ン チ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ
ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 及 び 、 カ ロ キ サ ン チ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) で あ る と 同 定
さ れ た ( 図 10、 実 施 例 13参 照 ) 。 以 上 の 結 果 は 、 ORF11が コ ー ド す る 遺 伝 子 産 物 は β -イ オ
10
ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ( β -C2-hydroxylase; 2,2’ -β - hydroxylase) で あ り 、 β カ ロ テ ン や ゼ ア キ サ ン チ ン に お け る β -イ オ ノ ン 環 上 の 2位 の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 で き る 酵
素であることを示している。
次 に 、 β -イ オ ノ ン 環 の 4位 に ケ ト 基 を 導 入 す る 酵 素 遺 伝 子 を 保 持 す る プ ラ ス ミ ド pAC-Ca
ntha を 有 す る カ ン タ キ サ ン チ ン 産 生 大 腸 菌 ( DH5α ) に プ ラ ス ミ ド pUCBre-O11( lacZ::SD
212-ORF11) を 導 入 し 、 実 施 例 11で 示 し た 方 法 で 色 素 分 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 保 持 時 間 1
0.7分 に カ ン タ キ サ ン チ ン の ピ ー ク が 認 め ら れ 、 高 極 性 側 に 保 持 時 間 4.7分 の 物 質 3、 保 持
時 間 8.7分 の 物 質 4の 2 つ の ピ ー ク が 認 め ら れ た ( 図 8、 矢 印 で 示 さ れ て い る ) 。 そ れ ぞ れ
の 極 大 吸 収 波 長 は そ れ ぞ れ 、 478 nm、 474 nmで あ り 、 そ れ ら の 波 形 は β -イ オ ノ ン 環 の 共
役系にケト基を有するカロテノイドに見られる典型的な一山形の波形を示す物質の存在が
20
示 さ れ た 。 ま た 、 ア ス タ キ サ ン チ ン ( 保 持 時 間 6.6分 前 後 ) と の co-HPLCの 結 果 に よ り こ れ
ら の ピ ー ク は ア ス タ キ サ ン チ ン で な い こ と が 確 認 さ れ た ( 図 8c) 。 カ ロ テ ノ イ ド 3及 び 4は
そ れ ぞ れ 、 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン
タ キ サ ン チ ン ) 、 及 び 、 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ カ ン
タ キ サ ン チ ン ) で あ る と 同 定 さ れ た ( 図 10、 実 施 例 13参 照 ) 。
最 後 に 、 プ ラ ス ミ ド pAC-Asta を 有 す る ア ス タ キ サ ン チ ン や ア ド ニ キ サ ン チ ン 産 生 大 腸
菌 ( DH5α ) に プ ラ ス ミ ド pUCBre-O11( lacZ::SD212-ORF11) を 導 入 し 、 実 施 例 11で 示 し た
方 法 で 色 素 分 析 を 行 っ た ( 図 9) 。 そ の 結 果 、 保 持 時 間 6.4∼ 6.7分 に ア ス タ キ サ ン チ ン の
ピ ー ク が ま た 、 保 持 時 間 8.4∼ 8.6分 の と こ ろ に ア ド ニ キ サ ン チ ン の ピ ー ク が 観 察 さ れ た 。
ま た 、 保 持 時 間 5.1∼ 5.2分 の ア ス タ キ サ ン チ ン よ り 高 極 性 側 に 475 nmの 吸 収 極 大 を 示 す 、
30
β -イ オ ノ ン 環 の 共 役 系 に ケ ト 基 を 有 す る カ ロ テ ノ イ ド に 見 ら れ る 典 型 的 な 一 山 形 の 波 形
を 示 す 物 質 5の 存 在 が 示 さ れ た ( 図 9、 矢 印 で 示 さ れ て い る ) 。 カ ロ テ ノ イ ド 5は 、 2-ヒ ド
ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン で あ る と 同 定 さ れ た ( 図 2、 実 施 例 13参 照 ) 。 ま た 、 以 上 の 結 果
よ り 、 ORF11の コ ー ド す る 遺 伝 子 産 物 β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ は 、 他 の カ ロ テ
ノイド生合成酵素のように基質特異性が低い(広い)ことが明らかとなった。
〔 実 施 例 13〕 ORF11に よ る 変 換 さ れ た 色 素 の 同 定 ( 既 知 物 質 )
pUCBre-O11及 び pACCAR25Δ crtXを 導 入 し た 大 腸 菌 を 2 L( リ ッ ト ル ) の 2xYT培 地 で 培 養
し 、 8,000 rpmで 10分 間 遠 心 す る こ と に よ り 、 菌 体 を 集 め た 。 菌 体 を STE緩 衝 液 ( 実 施 例 3
参 照 ) で 懸 濁 し 、 8,000 rpmで 10分 間 遠 心 す る こ と に よ り 、 再 度 、 菌 体 を 集 め た 。 菌 体 に
ア セ ト ン − メ タ ノ ー ル ( 1: 1) 400 mlを 加 え て 1 時 間 撹 拌 し た 。 濾 過 後 、 濾 液 を 減 圧 濃 縮
40
し 、 267 mgの 抽 出 物 を 得 た 。 こ れ を シ リ カ ゲ ル -60( 15 g ) カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー で
分 離 し た 。 溶 媒 は ヘ キ サ ン − 酢 酸 エ チ ル ( 8: 2) ( 7: 3) ( 6: 4) お よ び ( 1: 1) 各 100
mlで 順 次 溶 出 し 、 着 色 し た 3 フ ラ ク シ ョ ン を 得 た 。 1 つ は ゼ ア キ サ ン チ ン で あ っ た の で 、
1
残 り の 2フ ラ ク シ ョ ン の 同 定 を 行 っ た 。 同 定 は HPLC-PDA-MS分 析 、 H-NMR分 析 に よ り 行 っ た
。 HPLC-PDA-MS分 析 は 、 PDA( フ ォ ト ダ イ オ ー ド ア レ ィ ) 検 出 器 付 き セ ミ ミ ク ロ HPLCシ ス テ
ム と し て 資 生 堂 製 Nano Space SI-2を 用 い 、 こ れ に サ ー モ ク エ ス ト ( ThermoQuest) 社 製 イ
オ ン ト ラ ッ プ 型 質 量 分 析 装 置 LCQ advantageシ ス テ ム を 接 続 し た 機 器 を 用 い て 行 っ た 。 カ
ラ ム は C30 カ ラ ム で あ る 野 村 化 学 社 製 Deverosil C30-UG-3( 1.0 mm i.d. × 150 mm) を
用 い 、 プ レ カ ラ ム と し て Deverosil C30-UG-Sを 用 い た 。 溶 出 条 件 と し て 、 0.1 ml/min の
流 速 で 、 96% メ タ ノ ー ル ( A) で 12分 、 Aか ら tert-メ チ ル ブ チ ル エ ー テ ル ( TMBE) ( B) へ
50
(27)
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の グ ラ ジ エ ン ト ( B: 0-60%、 12∼ 72分 ) 、 そ の ま ま の 状 態 で 72∼ 82分 溶 出 し た 。 MSは 大 気
1
圧 化 学 イ オ ン 化 法 ( APCI) に よ り 検 出 し た 。 H-NMRは バ リ ア ン 社 製 INOVA750シ ス テ ム を 用
いて重クロロホルム中で測定した。
+
HPLC-PDA-MS分 析 ( 保 持 時 間 ( RT) 13.48分 、 λ max 449, 475 nm、 m/z 601 [M+H] 、 583
[M+H-H2 O]
+
、 565[M+H-2H2 O]
、 567[M+H-H2 O]
+
+
、 及 び 、 RT 17.75分 、 λ max 450, 476 nm、 m/z 585[M+H]
+
1
) 、 H-NMR分 析 の 結 果 、 上 記 の 2 つ の フ ラ ク シ ョ ン に 存 在 す る カ ロ テ ノ
イ ド は そ れ ぞ れ 、 ノ ス ト キ サ ン チ ン ( nostoxanthin;2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン
) 、 及 び 、 カ ロ キ サ ン チ ン ( caloxanthin; 2-ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) で あ る と 同 定
さ れ た ( Buchecker, R., Liaaen-Jensen, S., Borch, G., Siegelman, H. W., Carotenoi
ds of blue-green algae. Part 9. Carotenoids of Anacystis nidulans, structures of
10
caloxanthin and nostoxanthin. Phytochemistry 15, 1015-1018, 1976) ( 図 10参 照 )
。
1
以 下 に 、 H-NMRデ ー タ ( δ ppm、 か っ こ 内 は 水 素 数 、 多 重 度 、 結 合 定 数 ) を 示 す 。 ノ ス
ト キ サ ン チ ン : 1.01(6H, s), 1.14(6H, s), 1.72(6H, s), 1.98-1.99(12H, s), 2.15(2H,
dd, J=17.4, 10.0Hz), 2.49(2H, dd, J=17.4, 6.7Hz), 3.33(2H, d, J=10.0Hz), 3.84(2
H, dt, J=6.7, 10.0Hz,), 6.0-6.7(14H, m)、 カ ロ キ サ ン チ ン : 1.01(3H, s), 1.08(6H, s
), 1.14(3H, s), 1.49(1H, t, J=12.0Hz), 1.72(3H, s),
1.75(3H, s), 1.80(1H, m), 1
.98-1.99(12H, s), 2.05(1H, dd, J=17.4, 10.5Hz), 2.15(1H, dd, J=17.4, 10.0Hz), 2.
40(1H, dd, J=17.4, 6.3 Hz), 2.49(1H, dd, J=17.4, 6.7Hz), 3.33(1H, d, J=10.0 Hz),
3.84(1H, dt, J=6.7, 10.0 Hz), 4.01(1H, m), 6.0-6.7(14H, m)。
20
pUCBre-O11及 び pAC-Astaを 導 入 し た 大 腸 菌 を 2 Lの 2xYT培 地 で 培 養 し 、 8,000 rpmで 10分
間 遠 心 す る こ と に よ り 、 菌 体 を 集 め た 。 菌 体 を STE緩 衝 液 ( 実 施 例 3参 照 ) で 懸 濁 し 、 8,00
0 rpmで 10分 間 遠 心 す る こ と に よ り 、 再 度 、 菌 体 を 集 め た 。 菌 体 に ア セ ト ン − メ タ ノ ー ル
( 1: 1) 400 mlを 加 え て 1 時 間 撹 拌 し た 。 濾 過 後 、 濾 液 を 減 圧 濃 縮 し 、 27 mgの 抽 出 物 を
得 た 。 こ れ を シ リ カ ゲ ル − 60( 15 g) カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー で 分 離 。 溶 媒 は ヘ キ サ ン
− 酢 酸 エ チ ル ( 7: 3) ( 6: 4) お よ び ( 1: 1) 各 100 mlで 順 次 溶 出 し 、 着 色 し た 3フ ラ ク
ションを得た。2つはアスタキサンチン及びアドニキサンチンであったので、残り1フラ
ク シ ョ ン の 同 定 を 行 っ た 。 HPLC-PDA-MS分 析 ( RT 11.98 分 、 λ max 473 nm、 m/z 613 [M+H
+
1
] ) 、 H-NMR分 析 に よ り 、 こ れ は 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン ( 2-hydroxyastaxanth
1
in) で あ る と 同 定 さ れ た ( 非 特 許 文 献 2) ( 図 2参 照 ) 。 以 下 に H-NMRデ ー タ を 示 す 。 1.22
30
(3H, s), 1.27(3H, s), 1.30(3H, s), 1.33(3H, s), 1.82(1H, m ), 1.96(6H, s), 1.982.01(12H, s), 2.17(1H, bm), 3.53(1H, m), 4.19(1H, m), 4.33(1H, m), 6.2-6.7(14H,
m)。 今 回 は 2,3,2’ ,3’ -テ ト ラ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,3,2’ ,3’ tetrahydroxy-β ,β -carotene-4,4’ -dione; 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン ) の
確認には至らなかったが、培養条件の工夫等により、これを得ることも可能であるはずで
ある。
〔 実 施 例 14〕 ORF11に よ る 変 換 さ れ た 色 素 の 同 定 ( 新 規 物 質 )
pUCBre-O11及 び pAC-Canthaを 導 入 し た 大 腸 菌 を 2リ ッ ト ル の 2xYT培 地 で 培 養 し 、 8,000 r
pmで 10分 間 遠 心 す る こ と に よ り 、 菌 体 を 集 め た 。 菌 体 を STE緩 衝 液 ( 実 施 例 3参 照 ) で 懸 濁
し 、 8,000 rpmで 10分 間 遠 心 す る こ と に よ り 、 再 度 、 菌 体 を 集 め た 。 菌 体 に ア セ ト ン -メ タ
40
ノ ー ル ( 1: 1) 400 mlを 加 え て 1 時 間 撹 拌 し た 。 濾 過 後 、 濾 液 を 減 圧 濃 縮 し 、 85 mgの 抽
出 物 を 得 た 。 こ れ を シ リ カ ゲ ル -60( 15 g ) カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー で 分 離 し た 。 溶 媒
は ヘ キ サ ン − 酢 酸 エ チ ル ( 8: 2) ( 7: 3) お よ び ( 1: 1) 各 100 mlで 順 次 溶 出 し 、 着 色 し
た 3フ ラ ク シ ョ ン を 得 た 。 1 つ は カ ン タ キ サ ン チ ン で あ っ た の で 、 残 り の 2フ ラ ク シ ョ ン の
+
同 定 を 行 っ た 。 HPLC-PDA-MS分 析 ( RT 9.30分 、 λ max 472 nm、 m/z 597.2 [M+H] 、 及 び 、
+
1
RT 17.62 分 、 λ max 474 nm、 m/z 581.2 [M+H] ) 、 高 分 解 ( HR) FABMS分 析 、 Hな ら び に
各 種 二 次 元 NMR分 析 に よ り 、 こ れ ら は 、 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ
ン ( 2,2’ -dihydroxy-β ,β -carotene-4,4’ -dione; 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ
ン 、 新 規 化 合 物 ( I) ) 、 及 び 、 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2-hydroxy
-β ,β -carotene-4,4’ -dione; 2-ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) で あ る と 同 定 さ れ た (
50
(28)
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図 10参 照 ) 。
【0082】
【化2】
10
1
以 下 に 、 HRFABMS分 析 デ ー タ と H-NMRデ ー タ を 示 す 。 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン
+
-4,4’ -ジ オ ン : HRFABMS (m/z, [M] )、 計 算 値 596.3866(C4 0 H3 2 O4 )、 実 測 値 596.3863
1
、 H NMR(750MHz、 重 ク ロ ロ ホ ル ム 中 、 δ ppm)、 1.22(6H, s), 1.26(6H, s), 1.89(6H, s
), 2.00-2.02(12H, s), 2.62(2H, dd, J=17.4, 9.0Hz), 2.80(2H, dd, J=17.4, 4.5Hz),
3.90(2H, dd, J=9.0, 4.5Hz), 6.2-6.7(14H, m)。 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ +
ジ オ ン : HRFABMS(m/z, [M] )、 計 算 値 580.3916(C4 0 H3 2 O3 ), 実 測 値 580.3900、
1
H NMR
、 1.21(6H, s), 1.22(3H, s), 1.26(3H, s), 1.85(2H, t, J=7.0Hz), 1.89(3H, s), 1.90
20
(3H, s), 2.00-2.02(12H, s), 2.51(2H, t), 2.62(1H, dd, J=17.4, 9.0Hz), 2.8(1H, dd
, J=17.4, 4.5Hz), 3.90(1H, dd, J=9.0, 4.5Hz), 6.2-6.7(14H, m)。
カ ン タ キ サ ン チ ン の 2( 2’ ) 位 の 両 方 の 炭 素 に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ
-β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン は 上 述 の と お り 自 然 界 で 未 だ 発 見 さ れ て い な い 新 規 化 合 物
で あ る が 、 片 方 に の み 水 酸 基 が 導 入 さ れ た 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン も
甲 殻 類 の 一 種 で あ る Daphinia magnaか ら 単 離 さ れ た と い う 報 告 が あ る の み で 、 微 生 物 に よ
り 生 産 さ れ た も の は こ れ が 初 め て で あ る ( Partali, V., Olsen, Y., Foss, P., Liaaen-J
ensen, L., Carotenoids in food chain studies-I. Zooplankton (Daphnia magna) resp
onse to a unialgal (Scenedesmus acutus) carotenoid diet, to spinach, and to yeas
t diets supplemented with individual carotenoids. Comp. Biochem. Physiol., 82B(4
), 767-772, 1985;
30
Foss, P., Partali, V., Olsen, Y., Borch, G., Liaaen-Jensen, S
., Animal carotnoids 29. New (2R)-2-hydroxy-4-keto-β -type carotenoids from Daph
nia magna (Crustaceae). Acta Chemica Scandinavica B40,157-162, 1986) 。
〔 実 施 例 15〕 in vitro抗 過 酸 化 活 性 の 測 定
各種カロテノイドにおける種々の生理活性作用は多様であるが、活性酸素による生体内
脂 質 の 過 酸 化 を 抑 制 す る 活 性 が そ の 基 本 で あ る と 考 え ら れ る 。 し た が っ て 、 実 施 例 14で 合
成された2つのカロテノイドを用いて、フリーラジカルにより引き起こされる脂質過酸化
の in vitro抑 制 効 果 を 、 ラ ッ ト 脳 ホ モ ジ ネ ー ト を 用 い て 調 べ た 。 こ の ア ッ セ イ は 、 基 本 的
に K uboら の 方 法 に 準 拠 し て 行 っ た (Kubo, K., Yoshitake, Y., Kumada, K., Shuto K.,
Nakamizo, N. Radical scavenging action of flunarizine in rat brain in vitro. Arc
40
h. Int. Pharmacodyn. Ther. 272, 283-295, 1984)。 100 m Mリ ン 酸 緩 衝 液 ( pH7.4) 0.6
ml中 に 、 被 検 試 料 の メ タ ノ ー ル 溶 液 0.05 ml、 1 m Mア ス コ ル ビ ン 酸 0.1 ml( 最 終 濃 度 100
μ M) 、 及 び H2 O 0.05 mlを 添 加 し 、 37℃ で 5分 間 の プ レ イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン を 行 っ た 後 、
2.5% ( w/v) ラ ッ ト 脳 ホ モ ジ ネ ー ト を 0.2 ml添 加 す る こ と で 反 応 を 開 始 さ せ 、 37℃ で 1時
間 、 振 盪 し な が ら イ ン キ ュ ベ ー ト を 行 っ た 。 20% ( w/v) ト リ ク ロ ロ 酢 酸 、 0.5% ( w/v) 2
-チ オ バ ル ビ ツ ー ル 酸 、 及 び 0.2 N塩 酸 を 含 む 混 合 液 1 mlを 上 記 反 応 液 に 添 加 す る こ と で 反
応 を 停 止 し た 。 こ れ を 100℃ で 30分 間 煮 沸 処 理 し て 発 色 さ せ 、 冷 却 後 、 3000 rpmで 5分 間 遠
心 分 離 し た 。 遠 心 分 離 上 清 の 532 nmで の 吸 光 度 ( A5 3 2 ) を 測 定 し た 。 被 検 試 料 添 加 群 の A5
3 2
が 、 被 検 試 料 無 添 加 群 の A5 3 2 と 比 べ 半 分 低 下 す る の に 必 要 な 被 検 試 料 濃 度 を IC5 0 と し て
算出し、これをラット脳ホモジネートにおける脂質過酸化抑制作用とした。本実験結果を
50
(29)
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表 4に 示 す 。 表 4か ら 明 ら か な よ う に 、 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2-ヒ
ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 及 び 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,
2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) は 、 脂 質 の 過 酸 化 に 対 し て 強 い 抑 制 効 果 を 持 つ こ と
が示された。特に後者の新規物質は、強力な脂質の過酸化の抑制作用を示した。
【0083】
【表4】
10
20
本 明 細 書 は 、 本 願 の 優 先 権 の 基 礎 で あ る 日 本 国 特 許 出 願 ( 特 願 2003-388165号 及 び 特 願 2
004-165919号 ) の 明 細 書 お よ び / ま た は 図 面 に 記 載 さ れ て い る 内 容 を 包 含 す る 。 ま た 、 本
発明で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり
入れるものとする。
【図1】
【図2】
(30)
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
(31)
【図9】
【図3】
【図10】
JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
(32)
JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
【図4】
【配列表】
2005049643000001.app
【手続補正書】
【 提 出 日 】 平 成 18年 4月 11日 (2006.4.11)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本 発 明 は 、 β -イ オ ノ ン 環 を 有 す る カ ロ テ ノ イ ド の 2位 ( 2’ 位 ) の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入
する新規な酵素、それをコードする遺伝子、この遺伝子を導入した微生物に関するもので
あ る 。 ま た 、 こ の 遺 伝 子 が 導 入 さ れ た 微 生 物 を 利 用 し た 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の 炭 素 が 水
酸化されたカロテノイドの製造法に関するものである。
【0002】
本 発 明 は ま た 、 β -イ オ ノ ン 環 を 有 す る カ ロ テ ノ イ ド の 3位 ( 3’ 位 ) の 炭 素 に 水 酸 基 を
導入する新規な酵素をコードする遺伝子、この遺伝子を導入した微生物に関するものであ
る 。 ま た 、 こ の 遺 伝 子 が 導 入 さ れ た 微 生 物 を 利 用 し た 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3位 の 炭 素 が 水 酸
化されたカロテノイドの製造法に関するものである。
【0003】
本 発 明 は ま た 、 新 規 な ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ リ ン 酸 ( GGPP) シ ン タ ー ゼ を コ ー ド す る 遺
(33)
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伝子に関するものである。
【背景技術】
【0004】
カ ロ テ ノ イ ド ( carotenoid、 カ ロ チ ノ イ ド と も 呼 ば れ る ) は 、 炭 素 鎖 が 40の イ ソ プ レ ン
骨 格 か ら な る 自 然 界 に 豊 富 に 存 在 す る 色 素 の 総 称 で あ る 。 現 在 ま で に 700種 以 上 の カ ロ テ
ノ イ ド が 単 離 さ れ て い る ( Britton, G., Liaaen-Jensen, S., and Pfander, H., Caroten
oids Handbook, Birkhauser Verlag, Basel, 2004) 。 最 近 で は カ ロ テ ノ イ ド の 持 つ 種 々
の癌(がん)等の慢性病に対する予防効果が注目されており、数多くの報告がなされてい
る ( た と え ば 、 西 野 輔 翼 , 村 越 倫 明 , 矢 野 昌 充 , Food Style 21, 4, 53-55, 2000;
Nish
ino, H. et al, Carotenoids in cancer chemoprevention. Cancer Metastasis Rev. 21,
257-264, 2002; Mayne, S.T., β -Carotene, carotenoids, and disease prevention in
humans. FASEB J., 10, 690-701, 1996参 照 ) 。
【0005】
カロテノイドは多様な種類からなるにもかかわらず、現在までに癌の予防試験(ヒト疫
学・臨床試験、動物投与試験等)に使われてきたカロテノイドの種類はごく限られたもの
で あ っ た 。 そ れ ら の カ ロ テ ノ イ ド は 、 β -カ ロ テ ン ( β -carotene、 β -カ ロ チ ン と も 呼 ば
れ る : 化 学 合 成 品 ) 、 リ コ ペ ン ( lycopene、 リ コ ピ ン と も 呼 ば れ る : ト マ ト か ら 抽 出 ) 、
α -カ ロ テ ン ( α -carotene、 α -カ ロ チ ン と も 呼 ば れ る : パ ー ム 油 か ら 抽 出 ) 、 ル テ イ ン
( lutein: マ リ ー ゴ ー ル ド か ら 抽 出 ) 、 ア ス タ キ サ ン チ ン ( astaxanthin: オ キ ア ミ 、 Hae
matococcus属 藻 類 か ら 抽 出 、 ま た は 化 学 合 成 品 ) 、 フ コ キ サ ン チ ン ( fucoxanthin: 食 用
海 藻 か ら 抽 出 ) 、 β -ク リ プ ト キ サ ン チ ン ( β -cryptoxanthin: 温 州 ミ カ ン よ り 抽 出 ) 等
である。これらの色素を用いた癌予防試験の結果、カロテノイドの癌予防効果は、カロテ
ノイドの種類によって異なることが明らかとなってきた。一例として、国立がんセンター
研 究 所 の 高 須 賀 伸 夫 ら が 行 っ た マ ウ ス を 用 い た 実 験 結 果 ( 1996年 カ ロ テ ノ イ ド 研 究 談 話 会
報 告 ) を 示 し た い 。 肺 癌 ( ddyマ ウ ス 肺 二 段 階 発 癌 モ デ ル ) の 発 生 率 は 、 カ ロ テ ノ イ ド を
投 与 し な い コ ン ト ロ ー ル マ ウ ス を 100% と す る と 、 リ コ ペ ン ま た は α -カ ロ テ ン 投 与 マ ウ ス
が 40% 、 ル テ イ ン ま た は ア ス タ キ サ ン チ ン 投 与 マ ウ ス が 70% 、 β -カ ロ テ ン 投 与 マ ウ ス が 1
39% の 癌 発 生 率 で あ っ た 。 肝 臓 癌 ( マ ウ ス 自 然 肝 臓 癌 発 癌 モ デ ル ) の 発 生 率 は 、 同 じ く カ
ロ テ ノ イ ド を 投 与 し な い コ ン ト ロ ー ル マ ウ ス を 100% と す る と 、 ア ス タ キ サ ン チ ン ま た は
フ コ キ サ ン チ ン 投 与 マ ウ ス が 30% 、 α -カ ロ テ ン ま た は ル テ イ ン 投 与 マ ウ ス が 50% 、 β -カ
ロ テ ン 投 与 マ ウ ス が 70% 、 リ コ ペ ン 投 与 マ ウ ス が 100% の 癌 発 生 率 で あ っ た 。 皮 膚 癌 ( マ
ウス皮膚癌発癌モデル)の発生率は、同じくカロテノイドを投与しないコントロールマウ
ス を 100% と す る と 、 フ コ キ サ ン チ ン ま た は リ コ ペ ン 投 与 マ ウ ス が 10% 、 ア ス タ キ サ ン チ
ン 投 与 マ ウ ス が 100% の 癌 発 生 率 で あ っ た 。 こ れ ら 3 つ の 発 癌 モ デ ル の 結 果 を 比 較 す る と
、肺癌や皮膚癌の抑制で効果が高かったリコペンの効果が肝臓癌の抑制には効果が無いこ
と、肝臓癌の抑制で効果が高かったアスタキサンチンの効果が皮膚癌の抑制には効果が無
いこと等がわかる。さらに、疫学試験や臨床試験の結果、前立腺癌を予防するカロテノイ
ドとして、食事で摂取するカロテノイドの中で、リコペンのみが確認できたという結果が
報 告 さ れ て い る ( Giovannucci, E., Ascherio, A., Rimm, E. B., Stampfer, M. J., Col
ditz, G. A., Willet, W. C., Intake of carotenids and retinol in relation to risk
of prostate cancer. J. National Cancer Institute 87, 1767-1776, 1995;
Vogt, T.
M. et al, Serum lycopene, other serum carotenoids, and risk of prostate cancer i
n US Blacks and Whites. Am. J. Epidemiol. 155, 1023-1032, 2002参 照 ) 。 ま た 最 近 、
β -ク リ プ ト キ サ ン チ ン の 肺 癌 予 防 効 果 が 高 い こ と が 明 ら か に さ れ つ つ あ る ( Yuan, J.M.,
Stram, D.O., Arakawa, K., Lee, H.P. and Yu M.C., Dietary cryptoxanthin and redu
ced risk of lung cancer: the Singapore Chinese Health Study. Cancer Epidemiol. B
iomarkers Prev. 12, 890-898, 2003;
Mannisto, S. et al, Dietary carotenoids and
risk of lung cancer in a pooled analysis of seven cohort studies. Cancer Epidemi
ol. Biomarkers Prev. 13, 40-48, 2004参 照 ) 。 さ ら に 癌 の 予 防 効 果 以 外 に も 、 循 環 器 系
の慢性病、白内障や他の眼の慢性病、骨粗鬆症等の慢性病の予防に効果がある可能性が高
(34)
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い こ と が 報 告 さ れ て い る 。 た と え ば 、 眼 の 慢 性 病 ( 黄 斑 変 性 症 (age-related macular deg
eneration)や 白 内 障 な ど ) に 効 果 が 期 待 で き る カ ロ テ ノ イ ド は 、 食 事 で 摂 取 す る カ ロ テ ノ
イ ド の 中 で 、 ル テ イ ン と ゼ ア キ サ ン チ ン の み と い う 結 果 が 報 告 さ れ て い る ( Semba, R.D.
and Dagnelie, G., Are lutein and zeaxanthin conditionally essential nutrients fo
r eye health?
Med. Hypotheses 61, 465-472, 2003; Mazaffarieh, M., Sacu, S. and
Wedrich, A., The role of the carotenoids, lutein and zeaxanthin, in protecting a
gainst age-related macular degeneration: A review based on controversial evidenc
e. Nutr. J., 2, 20, 2003参 照 ) 。
【0006】
以 上 の 結 果 は 、 700種 類 以 上 あ る カ ロ テ ノ イ ド の 中 で 、 実 際 に 動 物 個 体 を 用 い た レ ベ ル
以 上 の 研 究 で 、 癌 等 の 慢 性 病 の 予 防 効 果 が 検 討 さ れ て い る も の は 、 高 々 10種 類 に 満 た な い
ということ、それにもかかわらず、カロテノイドの癌等の慢性病に対する予防効果にはカ
ロテノイドの個性が認められるということを示している。実際に検討されてきたカロテノ
イドの種類が少ないことの最大の原因は、多量に抽出、精製、または化学合成できるカロ
テノイドの種類が上記のものに限られているということであると考えられる。
【0007】
上記の問題を解決するための有力な手段として、カロテノイド生合成遺伝子を組み込ん
だ酵母や大腸菌等で目的とするカロテノイドを多量生産する方法が考えられる。たとえば
、キリンビールの島田らは、本来カロテノイドを生合成できない食用酵母キャンディダ・
ユ ー テ ィ リ ス ( Candida utilis) に 、 カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 群 を 導 入 ・ 発 現 さ せ て 、
リ コ ペ ン を 7.8 mg/g( 乾 重 量 ) 合 成 さ せ る の に 成 功 し た ( Shimada, H., Kondo, K., Fras
er, P. D., Miura, Y., Saito, T., and Misawa, N., Increased carotenoid production
by the foood yeast Candida utilis through metabolic engineering of the isopreno
id pathway. Appl. Environ. Microbiol., 64, 2676-2680, 1998) 。 こ の 遺 伝 子 組 換 え 法
によれば、種々の生合成遺伝子の組み合わせにより、これまで自然界に存在が認められて
いなかったか、ごく微量しか存在していなかったようなカロテノイドをも多量生産するこ
とが可能となる。たとえば、日本医科大学の高市らは、これまでナマズに微量存在してい
る と い う 報 告 し か な か っ た パ ラ シ ロ キ サ ン チ ン ( parasiloxanthin) を 組 換 え 大 腸 菌 で 主
要 カ ロ テ ノ イ ド 産 物 と し て 生 産 し た ( Takaichi, S., Sandmann, G., Schnurr, G., Satom
i, Y., Suzuki, A., and Misawa, N. The carotenoid 7,8-dihydro-Ψ end group can be
cyclized by the lycopene cyclases from the bacterium Erwinia uredovora and the
higher plant Capsicum annuum. Eur. J. Biochem., 241, 291-296, 1996) 。 ま た 、 今 ま
で 自 然 界 に 報 告 が 無 か っ た “ 非 天 然 型 ” の カ ロ テ ノ イ ド で あ る ア ス タ キ サ ン チ ン -β -ジ グ
ル コ シ ド ( astaxanthin-β -diglucoside) を 組 換 え 大 腸 菌 で 合 成 さ せ た と い う 報 告 も あ る
( Yokoyama, A., Shizuri, Y.,and Misawa, N., Production of new carotenoids, astax
anthin glucosides, by Escherichia coli transformants carrying carotenoid biosynt
hetic genes. Tetrahed. Lett., 39, 3709-3712, 1998) 。
【0008】
各種のカロテノイド生産用組換え微生物の作製に最も広く利用されてきたカロテノイド
生 合 成 遺 伝 子 は 、 エ ル ウ ィ ニ ア (Erwinia)属 細 菌 [ エ ル ウ ィ ニ ア ・ ウ レ ド ボ ラ ( Erwinia u
redovora) 等 ; 最 近 、 本 細 菌 は パ ン ト エ ア ・ ア ナ ナ チ ス ( Pantoea ananatis) と 呼 ば れ て
い る ] 由 来 の も の で あ る 。 エ ル ウ ィ ニ ア 属 細 菌 か ら 取 得 さ れ た 遺 伝 子 は 、 crtE、 crtB、 cr
tI、 crtY、 crtZ、 crtX の 6遺 伝 子 で あ り 、 こ れ ら の 遺 伝 子 が コ ー ド す る 生 合 成 酵 素 ( CrtE
、 CrtB、 CrtI、 CrtY、 CrtZ、 CrtX) の 機 能 は 図 1 に 示 さ れ て い る ( 非 特 許 文 献 1 参 照 ) 。
ア ス タ キ サ ン チ ン を 生 合 成 さ せ た い 場 合 は 、 さ ら に 、 海 洋 細 菌 で あ る パ ラ コ ッ カ ス ( Para
coccus) 属 細 菌 [ Paracoccus sp. MBIC 01143( Agrobacterium aurantiacum) 等 ] 由 来 の
crtW 遺 伝 子 が 必 要 で あ る ( 図 1 ) 。 パ ラ コ ッ カ ス 属 細 菌 か ら は 、 crtB、 crtI、 crtY、 crt
Z、 crtW の 5遺 伝 子 が 単 離 さ れ て い る ( 非 特 許 文 献 1 参 照 ) 。 crtB、 crtI、 crtY、 crtZ遺
伝 子 の 機 能 は 両 細 菌 で 共 通 で あ る 。 エ ル ウ ィ ニ ア 属 細 菌 ま た は パ ラ コ ッ カ ス 属 細 菌 の crtE
、 crtB、 crtI、 crtY遺 伝 子 を 導 入 ・ 発 現 さ せ た 大 腸 菌 は β -カ ロ テ ン を 合 成 す る が 、 こ れ
(35)
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に さ ら に 海 洋 細 菌 由 来 の crtW遺 伝 子 と 、 エ ル ウ ィ ニ ア 属 細 菌 ま た は パ ラ コ ッ カ ス 属 細 菌 由
来 の crtZ遺 伝 子 を 導 入 ・ 発 現 さ せ る と 、 そ の 組 換 え 大 腸 菌 は ア ス タ キ サ ン チ ン を 合 成 す る
よ う に な る 。 さ ら に 、 こ の ア ス タ キ サ ン チ ン を 合 成 す る 大 腸 菌 に エ ル ウ ィ ニ ア 属 細 菌 の cr
tX遺 伝 子 を 導 入 ・ 発 現 さ せ る と 、 そ の 組 換 え 大 腸 菌 は “ 非 天 然 型 ” の ア ス タ キ サ ン チ ン β -ジ グ ル コ シ ド を 合 成 す る よ う に な る ( 図 1 ) 。
【0009】
以上述べてきたように、自然界に微量しか存在しない“レア”カロテノイドや存在が確
認されていなかった“非天然型”のカロテノイドを大腸菌等の微生物に多量生産させるた
めに、カロテノイド生合成遺伝子を利用することが可能であることが示されつつある。一
方、現在までにクローニングされ機能解析された、この目的のために使用できるカロテノ
イ ド 生 合 成 遺 伝 子 の 種 類 は 25種 類 と 限 ら れ て い る 。 そ れ ら の 遺 伝 子 は 、 crtM( デ ヒ ド ロ ス
ク ア レ ン シ ン タ ー ゼ ) 、 crtE (gps, al-3)( ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ リ ン 酸 シ ン タ ー ゼ ) 、
crtB (psy, al-2)( フ ィ ト エ ン シ ン タ ー ゼ ) 、 crtN( デ ヒ ド ロ ス ク ア レ ン デ サ チ ュ ラ ー
ゼ ) 、 crtP (pds1)( フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ : 2 つ の 二 重 結 合 付 加 ) 、 crtQ (zds)(
ζ -カ ロ テ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ : 2 つ の 二 重 結 合 付 加 反 応 ) 、 crtI( Rhodobacter属 細 菌 由 来
の も の ) ( フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ : 3 つ の 二 重 結 合 付 加 反 応 と cis-trans異 性 化 反 応
) 、 crtI( フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ : 4 つ の 二 重 結 合 付 加 反 応 と cis-trans異 性 化 反 応
) 、 al-1( フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ : 5 つ の 二 重 結 合 付 加 反 応 と cis-trans異 性 化 反 応
) 、 crtY (crtL-β )( リ コ ペ ン β -シ ク ラ ー ゼ ) 、 crtL-ε ( リ コ ペ ン ε -シ ク ラ ー ゼ )
、 crtYm( リ コ ペ ン β -モ ノ シ ク ラ ー ゼ ) 、 crtU( β -カ ロ テ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ ) 、 crtZ(
β -カ ロ テ ン ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ; β -C3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ) 、 crtW (bkt)( β -カ ロ テ ン ケ
ト ラ ー ゼ ; β -C4-オ キ シ ゲ ナ ー ゼ ) 、 crtO (Synechocystis sp. PCC6803由 来 の も の )( β
-カ ロ テ ン モ ノ ケ ト ラ ー ゼ ) 、 crtX( ゼ ア キ サ ン チ ン グ ル コ シ ル ト ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ ) 、 c
rtC( ヒ ド ロ キ シ ノ イ ロ ス ポ レ ン シ ン タ ー ゼ ) 、 crtD( メ ト キ シ ノ イ ロ ス ポ レ ン デ サ チ ュ
ラ ー ゼ ) 、 crtF( ヒ ド ロ キ シ ノ イ ロ ス ポ レ ン o-メ チ ル ト ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ ) 、 crtA( ス
フ ェ ロ イ デ ン モ ノ オ キ シ ゲ ナ ー ゼ ) 、 crtEb( リ コ ペ ン エ ロ ン ガ ー ゼ ) 、 crtYe/Yf( デ カ
プ レ ノ キ サ ン チ ン シ ン タ ー ゼ ) 、 zep1( ゼ ア キ サ ン チ ン エ ポ キ シ ダ ー ゼ ) 、 及 び 、 ccs(
カ プ サ ン チ ン /カ プ ソ ル ビ ン シ ン タ ー ゼ ) で あ る ( Lee, P.C. and Schmidt-Dannert, C.,
Metabolic engineering towards biotechnological production of carotenoids in micr
oorganisms. Appl. Microbiol. Biotechnol. 60, 1-11, 2002;
Teramoto, M., Takaichi
, S., Inomata, Y., Ikenaga, H. and Misawa, N. Structural and functional analysis
of a lycopene β -monocyclase gene isolated from a unique marine bacterium that
produces myxol. FEBS Lett. 545, 120-126, 2003参 照 ) 。 多 様 な カ ロ テ ノ イ ド を 大 腸 菌
等の微生物に生産させるためには、新規のカロテノイド生合成遺伝子を単離する必要があ
る。しかしながら、新規のカロテノイド生合成遺伝子のクローニングは遅々として進まな
い の が 現 状 で あ っ た 。 た と え ば 、 自 然 界 に 最 も 豊 富 に 存 在 す る カ ロ テ ノ イ ド は β -イ オ ノ
ン 環 ( β 環 ) を 有 す る カ ロ テ ノ イ ド ( 図 1で は 、 β -カ ロ テ ン 、 ゼ ア キ サ ン チ ン 、 カ ン タ キ
サ ン チ ン 、 ア ス タ キ サ ン チ ン 等 ) で あ る が 、 β -イ オ ノ ン 環 を 水 酸 化 ま た は 酸 素 添 加 す る
酵 素 遺 伝 子 は 、 β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ( β -C3-hydroxylase) ( CrtZ) と β イ オ ノ ン 環 -4-ケ ト ラ ー ゼ ( β -C4-ketolase; β -C4-oxygenase) ( CrtW) を コ ー ド す る 遺
伝 子 し か 得 ら れ て い な い 。 こ れ ら の 酵 素 遺 伝 子 は 、 crtZが 1990年 に 、 crtWが 1995年 に 早 々
と 取 得 さ れ 機 能 解 析 さ れ て い る 。 β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 遺 伝 子 は 、 ノ ス ト
キ サ ン チ ン ( nostoxanthin) 等 の 、 β -イ オ ノ ン 環 に お け る 2位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ
テノイドの合成に必要であると考えられるが、そのようなカロテノイドの産生微生物はい
く つ か 存 在 す る に も か か わ ら ず ( 非 特 許 文 献 2参 照 ) 、 酵 素 や 遺 伝 子 に 関 す る 知 見 は 全 く
無いのが現状であった。新規のカロテノイド生合成遺伝子のクローニングが難しい理由は
、大腸菌における発現クローニング法や既存のカロテノイド遺伝子との相同性(ホモロジ
ー ; homology) を 利 用 し た ク ロ ー ニ ン グ 法 に よ り 得 ら れ る カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 は す
でに取得されてしまっており、残りの遺伝子は、これらのクローニング法によっては得ら
れないものばかりであるからと考えられる。
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【0010】
炭素と水素からのみなるカロテノイドはカロテンと、それに水酸基やケト基などの酸素
を含む官能基が導入されたカロテノイドはキサントフィルと呼ばれる。カロテンとキサン
トフィルとは物性が大きく異なっており、生体内における生理活性もかなり異なっている
。 た と え ば 、 β -カ ロ テ ン の 3位 の 炭 素 に 水 酸 基 が 1つ 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド は β -ク リ プ
ト キ サ ン チ ン で あ る が 、 こ れ ら を 摂 取 し た 時 の 生 体 内 の 取 り 込 み 率 は 、 後 者 の 方 が 10倍 高
い こ と が 知 ら れ て い る 。 ま た 、 β -ク リ プ ト キ サ ン チ ン は 最 近 、 日 本 で 特 に 注 目 を 集 め て
いるカロテノイドであり、前述の肺癌予防効果以外にも、大腸癌、子宮頸部癌、食道癌、
前立腺癌、リウマチ、骨粗鬆症の予防に効果があるというデータが得られつつある(矢野
昌 充 、 2003年 カ ロ テ ノ イ ド 研 究 談 話 会 報 告 、 及 び 、 前 述 の Yuan, J.M., Stram, D.O., Ar
akawa, K., Lee, H.P. and Yu M.C., Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev. 12, 890-898
, 2003及 び Mannisto, S. et al, Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev. 13, 40-48, 2004
) 。 そ の よ う な 効 果 は β -カ ロ テ ン で は 認 め ら れ て い な い 。 ま た 、 β -カ ロ テ ン の 3( 3’ )
位 の 両 方 の 炭 素 に 水 酸 基 が 2つ 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド は ゼ ア キ サ ン チ ン ( 図 1参 照 ) で あ
る が 、 一 部 前 述 し た よ う に 、 ゼ ア キ サ ン チ ン の 生 理 活 性 は β -ク リ プ ト キ サ ン チ ン と は 異
な る こ と も 知 ら れ て い る 。 ま た 、 ゼ ア キ サ ン チ ン の 4( 4’ ) 位 の 両 方 の メ チ レ ン 基 が 2つ
と も ケ ト 基 に 変 換 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド は ア ス タ キ サ ン チ ン ( 図 1参 照 ) で あ る が 、 ア ス タ
キ サ ン チ ン の 癌 予 防 に お け る 生 理 活 性 も β -カ ロ テ ン と 大 き く 異 な る こ と は 一 部 前 述 し た
と お り で あ り 、 β -ク リ プ ト キ サ ン チ ン や ゼ ア キ サ ン チ ン と も 異 な っ て い る 。 一 方 、 ゼ ア
キ サ ン チ ン の 2( 2’ ) 位 の 両 方 の 炭 素 に 水 酸 基 が さ ら に 2つ 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド は ノ
ス ト キ サ ン チ ン で あ る 。 一 般 的 に 、 ノ ス ト キ サ ン チ ン の よ う に 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2( 2’
)位の炭素に水酸基が導入されたカロテノイドは、自然界に微量しか存在しなく、多量生
産することが不可能であり、したがって、種々の癌等の慢性病予防試験の実施もできなか
っ た 。 ま た 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3( 3’ ) 位 の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 す る 酵 素 は CrtZで あ る が
、 1990年 に 初 め て 論 文 発 表 さ れ た エ ル ウ ィ ニ ア ・ ウ レ ド ボ ラ の CrtZ( Misawa, N., Nakaga
wa, M., Kobayashi, K., Yamano, S., Izawa, Y., Nakamura, K., and Harashima, K., J
. Bacteriol. 172, 6704-6712, 1990) と 、 49% 以 下 の 同 一 性 ( identity) を 有 す る も の
は現在までに得られていないのが現状であった。現在までに機能が同一であることが確認
さ れ て い る CrtZの 中 で 、 最 も エ ル ウ ィ ニ ア ・ ウ レ ド ボ ラ の CrtZと ホ モ ロ ジ ー が 高 い も の は
、 パ ラ コ ッ カ ス ・ ゼ ア キ サ ン チ ニ フ ァ シ エ ン ス ( Paracoccus zeaxanthinifaciens; 旧 名
は Flavobacterium sp. R1534) 由 来 の CrtZ( Pasamontes, L., Hug, D., Tessier, M., Ho
hmann, H. P., Schierle, J., and van Loon, A. P., Gene 185, 35-41, 1997) で あ り 、
50% の 同 一 性 で あ っ た 。
【0011】
【 非 特 許 文 献 1 】 Misawa, N., Satomi, Y., Kondo, K., Yokoyama, A., Kajiwara, S., S
aito, T., Ohtani, T., and Miki, W., Structure and functional analysis of a marin
e bacterial carotenoid biosynthesis gene cluster and astaxanthin biosynthetic pa
thway proposed at the gene level.
J. Bacteriol., 177, 6575-6584, 1995)
【 非 特 許 文 献 2 】 Yokoyama, A., Miki, W., Izumida, H., and Shizuri, Y., New trihyd
roxy-keto-carotenoids isolated from an astaxanthin-producing marine bacterium.
Biosci. Biotech. Bioche., 60, 200-203, 1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本 発 明 の 課 題 は 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 を 水 酸 化 す る 酵 素 ( β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ
ラーゼ)をコードする遺伝子を取得することである。そして更に、この遺伝子を導入・発
現 さ せ た 組 換 え 微 生 物 を 利 用 し た 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド ( 2ヒドロキシアスタキサンチンやノストキサンチン等)の製造法を提供することである。
【0013】
本 発 明 の 課 題 は ま た 、 既 存 の も の と は 相 同 性 ( ホ モ ロ ジ ー ) が 低 い 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3
(37)
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位 を 水 酸 化 す る 酵 素 ( β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ) 等 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 関 連
酵 素 を コ ー ド す る 遺 伝 子 を 取 得 す る こ と で あ る 。 そ し て 更 に 、 β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ
シ ラ ー ゼ 遺 伝 子 を 導 入 ・ 発 現 さ せ た 組 換 え 微 生 物 を 利 用 し た 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3位 が 水 酸
化されたカロテノイド(アスタキサンチンやゼアキサンチン等)の製造法を提供すること
である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本 発 明 者 ら は 、 海 洋 細 菌 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 ( Brevundimonas sp.) SD-212株 ( MBIC
03018) が 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン や 2-ヒ ド ロ キ シ ア ド ニ キ サ ン チ ン 等 の 、 β -イ
オ ノ ン 環 に お け る 2位 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 作 る こ と が で き る こ と に 着 目 し た 。
鋭 意 研 究 を 重 ね た 結 果 、 本 海 洋 細 菌 よ り 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 を 水 酸 化 す る 酵 素 ( β -イ
オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ) を コ ー ド す る 遺 伝 子 を 世 界 で 初 め て 取 得 す る こ と に 成 功
した。さらに、上記酵素をコードするカロテノイド生合成遺伝子群の中に、既存のものと
は 相 同 性 が き わ め て 低 い 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3位 を 水 酸 化 す る 酵 素 ( β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド
ロ キ シ ラ ー ゼ ) 、 及 び ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ リ ン 酸 ( GGPP) シ ン タ ー ゼ を コ ー ド す る 遺 伝
子を発見し、それらの酵素の触媒機能を確認することができた。
【0015】
ま ず 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の 染 色 体 DNAを 用 い て 、 大 腸 菌 に お け る コ ス ミ ド
ラ イ ブ ラ リ ー を 作 製 し た 。 カ ロ テ ノ イ ド を 産 生 す る エ ル ウ ィ ニ ア (Erwinia)属 細 菌 [ エ ル
ウ ィ ニ ア ・ ウ レ ド ボ ラ ( Erwinia uredovora) 等 ] の 染 色 体 DNAを 用 い て 、 大 腸 菌 に お け る
コスミドライブラリーを作製する場合は、この段階で、プレート上で黄色のコロニー(カ
ロテノイド産生大腸菌)が得られるので、簡単にカロテノイド生合成遺伝子群を取得する
こ と が で き る 。 し か し な が ら 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ リ ー か
らは、色の変化した大腸菌は全く得られなかった。そこで次に、エルウィニア・ウレドボ
ラ 由 来 の crtE、 crtB、 crtI、 crtY、 crtZ遺 伝 子 ( 図 1 参 照 ) が 導 入 さ れ て ゼ ア キ サ ン チ ン
を作る大腸菌(黄色コロニー)を宿主として用いて、この組換え大腸菌においてブレバン
デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ リ ー を 作 製 し た 。 こ の コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ リ ー に
お い て 外 見 上 、 色 が 変 化 し た も の は 得 ら れ な か っ た の で 、 700株 培 養 し 、 HPLC-PDA( フ ォ
トダイオードアレィ検出器)を用いて、コントロールのゼアキサンチンに加えて、新たな
カロテノイドが生成していないかどうかの検討を行った。その結果、新たなカロテノイド
を 合 成 す る も の は 全 く 得 ら れ な か っ た 。 し た が っ て 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の カ
ロテノイド生合成遺伝子の発現クローニングは不可能であると結論した。
【0016】
次 に 、 フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ ( crtI) 遺 伝 子 が カ ロ テ ノ イ ド 産 生 細 菌 間 で 2つ の 保
存 領 域 を 有 し て い る こ と を 見 出 し 、 PCR用 プ ラ イ マ ー を 設 計 し た 。 こ の プ ラ イ マ ー を 用 い
て 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の 染 色 体 DNAを 鋳 型 と し た PCRを 行 っ た と こ ろ 、 1.1 kb
の DNA断 片 が 増 幅 さ れ た 。 こ の 配 列 の 塩 基 配 列 を 決 定 し た と こ ろ 、 crtIの 部 分 配 列 で あ る
こ と が わ か っ た 。 こ の crtI部 分 配 列 断 片 を プ ロ ー ブ と し て 、 SD-212株 の コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ
リ ー を 用 い た コ ロ ニ ー ハ イ ブ リ ダ ィ ゼ ー シ ョ ン ( colony hybridization) 法 を 行 っ た と こ
ろ 、 数 個 の 陽 性 コ ロ ニ ー が 得 ら れ た 。 陽 性 コ ロ ニ ー か ら プ ラ ス ミ ド DNAを 調 製 し 、 サ ザ ン
ハ イ ブ リ ダ ィ ゼ ー シ ョ ン ( Southern hybridization) 法 を 行 い 、 陽 性 の 12 kbの EcoRIの DN
A断 片 を 得 た 。 こ の 12 kbの EcoRI断 片 の 塩 基 配 列 を 決 定 し た と こ ろ 、 幸 運 な こ と に 、 こ の
断 片 内 に カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 群 [ 既 存 の crt遺 伝 子 ( 6個 ) 又 は idi遺 伝 子 ( 1つ ) と
ホ モ ロ ジ ー が あ る ORF( オ ー プ ン リ ー デ ィ ン グ フ レ ー ム 、 open reading frame) が 7 つ ]
が 存 在 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 ま た 、 こ の 12 kbの EcoRI断 片 内 に は 、 未 知 の ORFが 5つ
存 在 し て い た 。 こ れ ら 12個 の ORFす べ て を 、 大 腸 菌 ベ ク タ -pUC18に お け る lac遺 伝 子 の プ ロ
モ ー タ の 利 用 と LacZの リ ー ダ 配 列 を 利 用 し た 融 合 タ ン パ ク 質 法 に よ り 大 腸 菌 で 強 制 発 現 さ
せるためのコンストラクトを作製した。そして、エルウィニア属細菌またはパラコッカス
属 細 菌 の crt遺 伝 子 の 利 用 に よ り 各 種 カ ロ テ ノ イ ド を 産 生 す る 大 腸 菌 を 宿 主 と し て 、 こ れ
ら の 12個 の ORFの 機 能 解 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 既 存 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 ( crt) 遺 伝 子
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と ホ モ ロ ジ ー が あ っ た 6個 の ORFは 、 相 同 性 の あ っ た 既 存 の 生 合 成 遺 伝 子 と 同 様 の 機 能 を 有
す る カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 ( crt) 遺 伝 子 で あ る こ と が わ か っ た 。 し か し な が ら 驚 く べ き こ
と に 、 こ れ ら の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 の う ち の 1 つ で あ る crtZ遺 伝 子 は 、 既 存 の CrtZ
酵 素 の ど れ と も 、 ア ミ ノ 酸 配 列 レ ベ ル で 46% 以 下 の 同 一 性 し か 有 さ な い β -イ オ ノ ン 環 -3ヒドロキシラーゼをコードする遺伝子であることを見出した。さらに、これらのうちの1
つ で あ る crtE遺 伝 子 は 、 既 存 の CrtE酵 素 の ど れ と も 、 ア ミ ノ 酸 配 列 レ ベ ル で 39% 以 下 の 同
一 性 し か 有 さ な い ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ リ ン 酸 ( GGPP) シ ン タ ー ゼ を コ ー ド す る 遺 伝 子 で
あ る こ と を 見 出 し た 。 そ し て さ ら に 、 未 知 の ORFの う ち の 1つ ( ORF11) が β -イ オ ノ ン 環 -2
-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ を コ ー ド す る 遺 伝 子 で あ る こ と を つ い に 突 き 止 め 、 本 発 明 を 完 成 す る
に至ったのである。
【0017】
本発明は以上のような知見を基に完成されたものである。
【0018】
即ち、本発明は、以下の(1)∼(17)を提供するものである。
【0019】
(1)以下の(a)、(b)、(c)、又は(d)に示すペプチド:
(a)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号4記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失
も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性
を有するペプチド、
( c ) 配 列 番 号 4 記 載 の ア ミ ノ 酸 配 列 と 50% 以 上 の 同 一 性 を 有 す る ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り
、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 、
( d ) 配 列 番 号 3 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン ト
な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ ノ
ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
【0020】
(2)以下の(a)、(b)、(c)、又は(d)に示すペプチドをコードする遺伝子:
(a)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号4記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失
も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性
を有するペプチド、
( c ) 配 列 番 号 4 記 載 の ア ミ ノ 酸 配 列 と 50% 以 上 の 同 一 性 を 有 す る ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り
、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 、
( d ) 配 列 番 号 3 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン ト
な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ ノ
ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
【0021】
( 3 ) ( 2 ) に 記 載 の 遺 伝 子 を 導 入 し て 得 ら れ る 微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の
炭素に水酸基を導入できる微生物。
【0022】
(4)(2)に記載の遺伝子を、他のカロテノイド生合成遺伝子とともに導入して得られ
る 微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 で き る 微 生 物 。
【0023】
( 5 ) 他 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 が 、 フ ァ ル ネ シ ル ピ ロ リ ン 酸 か ら β -イ オ ノ ン 環 を
有するカロテノイドを合成するのに必要とされる遺伝子群の全部又は一部であることを特
徴とする(4)に記載の微生物。
【0024】
(6)微生物が大腸菌であることを特徴とする(3)乃至(5)に記載の微生物。
【0025】
( 7 ) ( 3 ) 乃 至 ( 6 ) に 記 載 の 微 生 物 を 、 培 地 で 培 養 し て 培 養 物 又 は 菌 体 か ら β -イ オ
(39)
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ノ ン 環 の 2位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 得 る こ と を 特 徴 と す る 、 水 酸 化 さ れ た
カロテノイドの製造法。
【0026】
( 8 ) β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド が 、 β ,β -カ ロ テ ン -2-オ
ー ル ( 2-ヒ ド ロ キ シ -β -カ ロ テ ン ) 、 β ,β -カ ロ テ ン -2,2’ -ジ オ ー ル ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ
キ シ -β -カ ロ テ ン ) 、 カ ロ キ サ ン チ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 ノ ス ト キ サ ン チ
ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン
( 2-ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 、 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン
( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン 、 2,3,2’ ,3
’ -テ ト ラ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン
チン)であることを特徴とする(7)に記載の水酸化されたカロテノイドの製造法。
【0027】
( 9 ) 下 記 の 化 学 構 造 式 ( I) で 示 さ れ る 新 規 化 合 物 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン
-4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 。
【0028】
【化1】
【0029】
( 1 0 ) 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ
キ サ ン チ ン ) 又 は 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ
ンチン)を有効成分として含有する抗酸化剤。
【0030】
(11)以下の(e)、(f)、又は(g)に示すペプチドをコードする遺伝子:
(e)配列番号30記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(f)配列番号30記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠
失 も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活
性を有するペプチド、
( g ) 配 列 番 号 2 9 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン
ト な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ
ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
【0031】
( 1 2 ) ( 1 1 ) に 記 載 の 遺 伝 子 を 導 入 し て 得 ら れ る 微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3
位の炭素に水酸基を導入できる微生物。
【0032】
(13)(11)に記載の遺伝子を、他のカロテノイド生合成遺伝子とともに導入して得
ら れ る 微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3位 の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 で き る 微 生 物 。
【0033】
( 1 4 ) 他 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 が 、 フ ァ ル ネ シ ル ピ ロ リ ン 酸 か ら β -イ オ ノ ン 環
を有するカロテノイドを合成するのに必要とされる遺伝子群の全部又は一部であることを
特徴とする(13)に記載の微生物。
【0034】
(40)
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(15)微生物が大腸菌であることを特徴とする(12)乃至(14)に記載の微生物。
【0035】
(16)(12)乃至(15)に記載の微生物を、培地で培養して培養物又は菌体からβ
-イ オ ノ ン 環 の 3位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 得 る こ と を 特 徴 と す る 、 水 酸 化 さ
れたカロテノイドの製造法。
【0036】
(17)以下の(h)、(i)、又は(j)に示すペプチドをコードする遺伝子:
(h)配列番号32記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(i)配列番号32記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠
失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつゲラニルゲラニルピロリン酸シンター
ゼ活性を有するペプチド、
( j ) 配 列 番 号 3 1 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン
ト な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 ゲ ラ ニ
ルゲラニルピロリン酸シンターゼ活性を有するペプチド。
【0037】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0038】
1 . 遺 伝 子 源 の 海 洋 細 菌 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212 株 ( MBIC 03018)
目 的 と す る 遺 伝 子 の 供 給 源 と な っ た 海 洋 細 菌 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 ( Brevundimonas sp
.) SD-212 株 ( SD212; MBIC 03018) は 、 火 山 列 島 の 海 水 中 よ り 単 離 さ れ た α -プ ロ テ オ バ
ク テ リ ア で あ る 。 GC含 量 は 67.1( mol) %で あ る 。 本 海 洋 細 菌 が 作 る カ ロ テ ノ イ ド は 、 2-ヒ
ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン ( 2-hydroxyastaxanthin) や 2-ヒ ド ロ キ シ ア ド ニ キ サ ン チ ン (
2-hydroxyadonixanthin) 等 の 2位 ( 2’ 位 ) に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド で あ る こ
とが(株)海洋バイオテクノロジー研究所の横山らにより報告されている(非特許文献2
参 照 ) 。 な お 、 本 細 菌 は 、 MBIC 03018と し て ( 株 ) 海 洋 バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー 研 究 所 よ り 公
開 ・ 分 譲 さ れ て い る 。 ま た 、 本 細 菌 の 16S rDNA配 列 と gyrB遺 伝 子 配 列 は そ れ ぞ れ 、 ア ク セ
ッ シ ョ ン 番 号 AB016849、 AB014993と し て GenBank/DDBJに 登 録 さ れ て い る 。
【0039】
2 . 海 洋 細 菌 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212 株 に お け る カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 経 路 の 推 定
海 洋 細 菌 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 ( Brevundimonas sp.) SD-212 株 ( MBIC 03018) が 生 産
す る 、 2位 ( 2’ 位 ) に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド は 、 横 山 ら に よ っ て 詳 し く 分 析 さ
れ て い る ( 非 特 許 文 献 2参 照 ) 。 そ れ ら は 、 2,3,2’ ,3’ -テ ト ラ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ
ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,3,2’ ,3’ -tetrahydroxy-β ,β -carotene-4,4’ -dione) 、 2,3,2’ ,
3’ -テ ト ラ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4-オ ン ( 2,3,2’ ,3’ -tetrahydroxy-β ,β -carot
en-4-one) 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン ( 2-hydroxyastaxanthin; 2,3, 3’ -trihydr
oxy-β ,β -carotene-4,4’ -dione) 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ド ニ キ サ ン チ ン ( 2-hydroxyadonixa
nthin; 2,3, 3’ -trihydroxy-β ,β -caroten-4-one) 、 エ リ ス ロ キ サ ン チ ン ( erythroxan
thin; 3,2’ ,3’ -trihydroxy-β ,β -caroten-4-one) で あ る ( 図 2参 照 ) 。 ま た 、 SD-212
株 に は 、 前 駆 体 と し て 、 ア ス タ キ サ ン チ ン や ア ド ニ キ サ ン チ ン ( 4-ケ ト ゼ ア キ サ ン チ ン )
が 存 在 す る こ と も 確 認 さ れ て い る 。 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 に 水 酸 基 を 導 入 す る 新 規 な 酵 素 (
β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ; CrtVと 記 載 ) の 存 在 を 想 定 す る と 、 こ れ 以 外 は す べ
て 既 存 の Crt酵 素 と の 組 合 せ に よ り 、 上 記 の す べ て の カ ロ テ ノ イ ド の 生 合 成 経 路 を 図 2の よ
うに推定することができる。
【0040】
3 . β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ を コ ー ド す る 遺 伝 子 ( 本 発 明 の 第 一 の 遺 伝 子 )
本発明には、以下の(a)、(b)、(c)、又は(d)に示すペプチドが含まれる。
【0041】
(a)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号4記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失
も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性
(41)
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を有するペプチド、
( c ) 配 列 番 号 4 記 載 の ア ミ ノ 酸 配 列 と 50% 以 上 の 同 一 性 を 有 す る ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り
、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 、
( d ) 配 列 番 号 3 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン ト
な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ ノ
ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
【0042】
また、本発明には、以下の(a)、(b)、(c)、又は(d)に示すペプチドをコー
ドする遺伝子も含まれる。
【0043】
(a)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号4記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠失
も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性
を有するペプチド、
( c ) 配 列 番 号 4 記 載 の ア ミ ノ 酸 配 列 と 50% 以 上 の 同 一 性 を 有 す る ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り
、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 、
( d ) 配 列 番 号 3 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン ト
な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ ノ
ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
【0044】
( a ) の ペ プ チ ド は 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 か ら 得 ら れ た β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ
ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る 257個 の ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な る ペ プ チ ド ( CrtVと も 呼 ぶ ) で
ある。
【0045】
( b ) の ペ プ チ ド は 、 ( a ) の ペ プ チ ド に 、 β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を
失わせない程度の変異が導入されたペプチドである。このような変異は、自然界において
生じる変異のほかに、人為的な変異をも含む。人為的変異を生じさせる手段としては、部
位 特 異 的 変 異 誘 発 法 ( Nucleic Acids Res. 10, 6487-6500, 1982) な ど を 挙 げ る こ と が で
き る が 、 こ れ に 限 定 さ れ る わ け で は な い 。 変 異 し た ア ミ ノ 酸 の 数 は 、 β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ
ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 失 わ せ な い 限 り 、 そ の 個 数 は 制 限 さ れ な い が 、 通 常 は 、 30ア ミ ノ 酸
以 内 で あ り 、 好 ま し く は 20ア ミ ノ 酸 以 内 で あ り 、 更 に 好 ま し く は 10ア ミ ノ 酸 以 内 で あ り 、
最 も 好 ま し く は 5ア ミ ノ 酸 以 内 で あ る 。
【0046】
( c ) の ペ プ チ ド は 、 ( a ) の ペ プ チ ド と 全 領 域 間 に お い て 50% 以 上 の 同 一 性 ( identi
ty; 同 一 の ア ミ ノ 酸 配 列 の 比 率 ) を 有 す る ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 し て い る ペ プ チ ド で あ る 。 「 50% 以 上 の 同 一 性 」 の 根 拠 は 以 下
の 理 由 に よ る 。 す な わ ち 、 「 背 景 技 術 」 の 最 後 で も 述 べ た よ う に 、 14年 前 に エ ル ウ ィ ニ ア
・ ウ レ ド ボ ラ の β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ( CrtZ) を コ ー ド す る 遺 伝 子 が 初 め て
明 ら か に さ れ て 以 来 、 種 々 の CrtZの 構 造 が 明 ら か に さ れ た が 、 現 在 ま で に 酵 素 の 触 媒 機 能
が 同 一 で あ る こ と が 確 認 さ れ て い る CrtZの 中 で 、 最 も こ の CrtZと ホ モ ロ ジ ー が 低 い も の は
、 パ ラ コ ッ カ ス ・ ゼ ア キ サ ン チ ニ フ ァ シ エ ン ス ( Paracoccus zeaxanthinifaciens; 旧 名
は Flavobacterium sp. R1534) 由 来 の CrtZと の 50% の 同 一 性 で あ る 。 ま た 、 後 述 す る よ う
に 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 か ら 得 ら れ た β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性
を 有 す る 161個 の ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な る ペ プ チ ド ( CrtZ) は 、 DDBJや GenBank等 の デ ー タ ベ
ー ス を 検 索 し て も 、 50% 以 上 の 同 一 性 を 有 す る も の は な く 、 最 も 高 い も の で も 、 エ ル ウ ィ
ニ ア ・ ハ ー ビ コ ラ [ Erwinia herbicola; 最 近 は 、 パ ン ト エ ア ・ ア グ ロ メ ラ ン ス ( Pantoea
agglomerans) と 呼 ば れ て い る ] 由 来 の CrtZ( JJBJ/GenBank accession no. M87280) と
の 46%の 同 一 性 で あ り 、 し か も 両 者 の 酵 素 の 触 媒 機 能 は 同 じ で あ る こ と が 本 発 明 に よ り 明
ら か に さ れ た 。 β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ( CrtV) と β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ
シ ラ ー ゼ ( CrtZ) は 互 い に よ く 似 た 性 質 の 酵 素 で あ る と い う こ と を 考 え 合 わ せ る と 、 ( a
(42)
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) の ペ プ チ ド と 50% 以 上 の 同 一 性 を 有 す る ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -2ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 ( 同 一 の 触 媒 機 能 ) を 有 し て い る 酵 素 が 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 が 水
酸化されたカロテノイドを産生する微生物から今後、見つかることは確実であると言って
よ い 。 た と え ば 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 産 生 す る 細 菌 [た と
え ば 、 エ リ ス ロ バ ク タ ー ( Erthrobacter) 属 細 菌 PC6株 ( MBIC 02351) ]の ゲ ノ ム 解 析 を 行
うことにより見つかるであろう。さらには、このようにして自然界から見つかった同酵素
のアミノ酸配列を前述の方法により、変異させることも可能である。
【0047】
( d ) の ペ プ チ ド は 、 DNA同 士 の ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン を 利 用 す る こ と に よ り 得 ら れ
る 細 菌 由 来 の β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド で あ る 。 ( c ) の
ペプチドにおける「ストリンジェントな条件」とは、特異的なハイブリダイゼーションの
みが起き、非特異的なハイブリダイゼーションが起きないような条件をいう。このような
条 件 は 、 通 常 、 「 1× SSC、 0.1% SDS、 37℃ 」 程 度 で あ り 、 好 ま し く は 「 0.5× SSC、 0.1% S
DS、 42℃ 」 程 度 で あ り 、 更 に 好 ま し く は 「 0.2× SSC、 0.1% SDS、 65℃ 」 程 度 で あ る 。 ハ イ
ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン に よ り 得 ら れ る DNAは 、 配 列 番 号 3 記 載 の 塩 基 配 列 に よ り 表 さ れ る DNA
と 通 常 高 い 相 同 性 を 有 す る 。 高 い 相 同 性 と は 、 60% 以 上 の 相 同 性 、 好 ま し く は 75% 以 上 の
相 同 性 、 更 に 好 ま し く は 90% 以 上 の 相 同 性 を 指 す 。
【0048】
本発明の遺伝子は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、海洋細菌ブレ
バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ リ ー を 大 腸 菌 に お い て 作 製 す る 。 次 に 、 実
施例7に示したようなカロテノイド生合成遺伝子の相同配列を利用したコロニーハイブリ
ダ イ ゼ ー シ ョ ン 法 や PCRク ロ ー ニ ン グ 法 に よ り 得 る こ と が で き る 。
【0049】
な お 、 本 発 明 の 遺 伝 子 で あ る β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ( crtV) 遺 伝 子 を 含 む
ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 群 を 含 む 12 kb EcoRI DNA断
片 が 大 腸 菌 ベ ク タ ー pBluescript II KS-に 挿 入 さ れ た プ ラ ス ミ ド p5Bre2-15を 有 す る 大 腸
菌 は 受 託 番 号 P-19580と し て 独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 特 許 生 物 寄 託 セ ン タ ー に 寄
託されている。
【0050】
4 . β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ を コ ー ド す る 遺 伝 子 ( 本 発 明 の 第 二 の 遺 伝 子 )
本発明には、以下の(e)、(f)、又は(g)に示すペプチドをコードする遺伝子も
含まれる。
【0051】
(e)配列番号30記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(f)配列番号30記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠
失 も し く は 置 換 さ れ た ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な り 、 か つ β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活
性を有するペプチド、
( g ) 配 列 番 号 2 9 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン
ト な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 β -イ オ
ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド 。
【0052】
( e ) の ペ プ チ ド は 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 か ら 得 ら れ た β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド
ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る 161個 の ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な る ペ プ チ ド ( CrtZと も 呼 ぶ ) で あ
る。
【0053】
( f ) の ペ プ チ ド は 、 ( e ) の ペ プ チ ド に 、 β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 失
わせない程度の変異が導入されたペプチドである。このような変異は、自然界において生
じる変異のほかに、人為的な変異をも含む。人為的変異を生じさせる手段は前述したとお
りである。
【0054】
(43)
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( g ) の ペ プ チ ド は 、 DNA同 士 の ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン を 利 用 す る こ と に よ り 得 ら れ る
細 菌 由 来 の β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 活 性 を 有 す る ペ プ チ ド で あ る 。 ( g ) の ペ
プチドにおける「ストリンジェントな条件」は前述した通りである。
【0055】
5.ゲラニルゲルニルピロリン酸シンターゼをコードする遺伝子(本発明の第三の遺伝子
)
本発明には、以下の(h)、(i)、又は(j)に示すペプチドをコードする遺伝子も
含まれる。
【0056】
(h)配列番号32記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(i)配列番号32記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が付加、欠
失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつゲラニルゲラニルピロリン酸シンター
ゼ活性を有するペプチド、
( j ) 配 列 番 号 3 1 記 載 の 塩 基 配 列 か ら な る DNA又 は そ れ と 相 補 的 な DNAと ス ト リ ン ジ ェ ン
ト な 条 件 下 で ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る DNAが コ ー ド す る 細 菌 由 来 の ペ プ チ ド で あ っ て 、 ゲ ラ ニ
ルゲラニルピロリン酸シンターゼ活性を有するペプチド。
【0057】
( h ) の ペ プ チ ド は 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 か ら 得 ら れ た ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ
リ ン 酸 活 性 を 有 す る 298個 の ア ミ ノ 酸 配 列 か ら な る ペ プ チ ド ( CrtEと も 呼 ぶ ) で あ る 。
【0058】
(i)のペプチドは、(h)のペプチドに、ゲラニルゲラニルピロリン酸活性を失わせな
い程度の変異が導入されたペプチドである。このような変異は、自然界において生じる変
異のほかに、人為的な変異をも含む。人為的変異を生じさせる手段は前述したとおりであ
る。
【0059】
( j ) の ペ プ チ ド は 、 DNA同 士 の ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン を 利 用 す る こ と に よ り 得 ら れ る
細菌由来のゲラニルゲラニルピロリン酸活性を有するペプチドである。(j)のペプチド
における「ストリンジェントな条件」は前述した通りである。
【0060】
6 . β イ オ ノ ン 環 の 2位 ( 2’ 位 ) ま た は 3位 ( 3’ 位 ) の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 で き る 微 生 物
本 発 明 に は 、 3 に 記 載 の β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 遺 伝 子 を 導 入 し て 得 ら れ る
微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 で き る 微 生 物 も 含 ま れ る 。
【0061】
本 発 明 に は ま た 、 4 に 記 載 の β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 遺 伝 子 を 導 入 し て 得 ら れ
る 微 生 物 で あ っ て 、 β -イ オ ノ ン 環 の 3位 の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 で き る 微 生 物 も 含 ま れ る 。
【0062】
微生物には、本発明の遺伝子だけでなく、他のカロテノイド生合成遺伝子も導入する場
合が多いが、微生物がもともと他のカロテノイド生合成遺伝子を含むものである場合には
、他のカロテノイド生合成遺伝子を導入する必要はないか、或いは一部のみ導入すればよ
い。
【0063】
宿主とする微生物は、大腸菌を例示できるが、これ以外の微生物であってもよい。
【0064】
他 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 は 、 フ ァ ル ネ シ ル ピ ロ リ ン 酸 ( FPP) か ら β -イ オ ノ ン 環
を有するカロテノイドを合成するのに必要とされる遺伝子群の全部または一部を含む。こ
の よ う な 遺 伝 子 群 の 具 体 例 と し て は 、 FPPか ら ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ リ ン 酸 ( GGPP) を 合
成 す る 酵 素 遺 伝 子 crtE、 2分 子 の GGPPか ら フ ィ ト エ ン ( phytoene) を 合 成 す る 遺 伝 子 crtB
、 フ ィ ト エ ン か ら リ コ ペ ン ( lycopene) を 合 成 す る 遺 伝 子 crtI、 リ コ ペ ン か ら β -カ ロ テ
ン ( β -carotene) を 合 成 す る 遺 伝 子 crtY( 通 常 、 エ ル ウ ィ ニ ア 属 細 菌 由 来 の も の ) 、 β イ オ ノ ン 環 -4-ケ ト ラ ー ゼ を コ ー ド す る 遺 伝 子 crtW( 通 常 、 パ ラ コ ッ カ ス 属 細 菌 由 来 の も
(44)
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の)等を例示できる。
【0065】
これらの遺伝子群のすべて又は一部を適当な発現ベクターに導入し、発現させたい微生
物 に 導 入 す れ ば 、 そ の 組 換 え 微 生 物 は β -イ オ ノ ン 環 を 有 す る カ ロ テ ノ イ ド を 作 る よ う に
な る ( 基 質 の FPPは す べ て の 微 生 物 が 作 る こ と が で き る 。 GGPPも 微 生 物 に よ っ て は 合 成 量
が 少 な い も の も あ る が 、 す べ て の 微 生 物 が 作 る こ と が で き る ) 。 そ の β -イ オ ノ ン 環 を 有
す る カ ロ テ ノ イ ド 産 生 微 生 物 に 、 本 発 明 の 第 一 の 遺 伝 子 ( β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ
ー ゼ を コ ー ド す る 遺 伝 子 、 crtV) を さ ら に 導 入 ・ 発 現 さ せ れ ば 、 そ の 微 生 物 は 2位 ( 2’ 位
) に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 作 る よ う に な る 。 ま た 、 β -イ オ ノ ン 環 を 有 す る
カ ロ テ ノ イ ド 産 生 微 生 物 に 、 本 発 明 の 第 二 の 遺 伝 子 ( β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ
を コ ー ド す る 遺 伝 子 、 crtZ) を さ ら に 導 入 ・ 発 現 さ せ れ ば 、 そ の 微 生 物 は 3位 ( 3’ 位 ) に
水酸基が導入されたカロテノイドを作るようになる。
【0066】
大腸菌や酵母等の種々の微生物のベクターの情報や外来遺伝子の導入・発現法は、多く
の 実 験 書 に 記 載 さ れ て い る の で ( た と え ば 、 Sambrook, J., Russel,D. W., Molecular Cl
oning
A Laboratory Manual, 3
r d
Edition, CSHL Press, 2001) 、 そ れ ら に 従 っ て ベ ク
ターの選択、遺伝子の導入、発現を行うことができる。
【0067】
7 . 2位 ( 2’ 位 ) ま た は 3位 ( 3’ 位 ) に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド の 製 造 法
本 発 明 に は 、 上 記 に 記 載 の 微 生 物 を 、 培 地 で 培 養 し て 培 養 物 又 は 菌 体 か ら β -イ オ ノ ン
環 の 2位 ま た は 3位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 得 る こ と を 特 徴 と す る 、 水 酸 化 さ
れたカロテノイドの製造法も含まれる。
【0068】
β -イ オ ノ ン 環 の 2位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド と し て は 、 β ,β -カ ロ テ ン -2オ ー ル ( 2-ヒ ド ロ キ シ -β -カ ロ テ ン ) 、 β ,β -カ ロ テ ン -2,2’ -ジ オ ー ル ( 2,2’ -ジ ヒ ド
ロ キ シ -β -カ ロ テ ン ) 、 カ ロ キ サ ン チ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 ノ ス ト キ サ ン
チ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ
ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 、 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ
ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン 、 2,3,2’ ,
3’ -テ ト ラ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン
チ ン ) な ど を 例 示 で き る が 、 こ れ ら に 限 定 さ れ る わ け で は な い 。 上 記 の 中 で 、 2-ヒ ド ロ キ
シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 及 び 2,2’ -ジ ヒ ド ロ
キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) ( 特 に 後 者
) は 、 脂 質 の 過 酸 化 に 対 し て 強 い 抑 制 効 果 を 持 つ こ と が in vitro実 験 の 結 果 、 示 さ れ た 。
【0069】
β -イ オ ノ ン 環 の 3位 の 炭 素 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド と し て は 、 β -ク リ プ ト キ サ ン
チ ン 、 ゼ ア キ サ ン チ ン 、 カ ロ キ サ ン チ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 ノ ス ト キ サ ン
チ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン 、 2,3,2’ ,
3’ -テ ト ラ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン
チン)などを例示できるが、これらに限定されるわけではない。
【0070】
8.抗酸化剤
2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン 及 び 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン 4,4’ -ジ オ ン は 、 上 述 の よ う に 脂 質 の 過 酸 化 に 対 し て 強 い 抑 制 効 果 を 持 つ の で 、 脂 質 の 抗
過酸化剤、更には、脂質に限定されない物質一般に対する抗酸化剤として利用できる。
【0071】
本発明の抗酸化剤は、有効成分となる前記2種のカロテノイドを単に水で希釈すること
によっても調製できるが、乳液状製剤として調製することが好ましい。乳液状製剤の調製
は、水溶性成分と油溶性成分とを常法により混合乳化すればよい。ここで用いる水溶性成
分としては、没食子酸、アスコルビン酸、ガム質、ビタミンP(フラボノイド類)等を挙
(45)
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げることができ、油溶成分としては、グリセリン脂肪酸エステルや菜種油、大豆油、コー
ン油等の油脂等を挙げることができる。抗酸化剤中に含まれる前記2種のカロテノイドの
含 量 は 、 添 加 対 象 と す る 商 品 に 応 じ て 任 意 に 設 定 す る こ と が で き る が 、 0.05∼ 5 % と す る
のが好ましい。
【0072】
本発明の抗酸化剤は、その安全性や酸化抑制能力により主に食品、化粧品、及び医薬品
における抗酸化成分として有用である。前記2種のカロテノイドの抗酸化剤としての使用
量 は 、 添 加 す る 対 象 商 品 に よ り 異 な る が 、 例 え ば 、 食 品 、 化 粧 品 に 対 し て は そ れ ぞ れ 0.1g
/ 食 品 kg、 0.05g/ 化 粧 品 kg程 度 で あ る 。
【0073】
本発明の抗酸化剤は、対象商品に単独で使用する場合でも十分な効果を得られるが、従
来の天然抗酸化剤、例えば、トコフェールを有効成分とする抗酸化剤等と併用することも
可能である。
【0074】
本明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を表す。
配 列 番 号 1 : ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の crtI遺 伝 子 の 部 分 配 列 。
配 列 番 号 2 : EcoRIで pCos5-2か ら 切 り 出 さ れ た 12 kbの 断 片 の 配 列 。
配 列 番 号 3 : 上 記 EcoRI断 片 に 含 ま れ る ORF11( β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 遺 伝
子と推定される)の配列。
配 列 番 号 4 : ORF11が コ ー ド す る ア ミ ノ 酸 配 列 。
配 列 番 号 5 : ORF1の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 6 : ORF1の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 7 : crtWの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 8 : crtWの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 9 : crtYの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 1 0 : crtYの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 1 1 : crtIの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 1 2 : crtIの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 1 3 : crtBの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 1 4 : crtBの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 1 5 : ORF6の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 1 6 : ORF6の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 1 7 : ORF7の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 1 8 : ORF7の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 1 9 : crtEの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 2 0 : crtEの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 2 1 : idiの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 2 2 : idiの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 2 3 : crtZの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 2 4 : crtZの 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 2 5 : ORF11の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 2 6 : ORF11の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 2 7 : ORF12の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( フ ォ ワ ー ド )
配 列 番 号 2 8 : ORF12の 増 幅 用 の プ ラ イ マ ー ( リ バ ー ス )
配 列 番 号 2 9 : 上 記 EcoRI断 片 に 含 ま れ る crtZ( β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ 遺
伝子と推定される)の配列
配 列 番 号 3 0 : crtZが コ ー ド す る ア ミ ノ 酸 配 列 。
配 列 番 号 3 1 : 上 記 EcoRI断 片 に 含 ま れ る crtE( ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ リ ン 酸 シ ン タ ー
ゼ遺伝子と推定される)の配列。
配 列 番 号 3 2 : crtEが コ ー ド す る ア ミ ノ 酸 配 列 。
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【発明の効果】
【0075】
β -イ オ ノ ン 環 の 2(2')位 の 炭 素 に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド は 、 自 然 界 に 微 量 し
か存在しないものが多いが、なかには未だ発見されていないものもある。本発明により、
こ の よ う な カ ロ テ ノ イ ド を 大 量 に 製 造 で き る よ う に な る 。 さ ら に 本 発 明 は 、 β -イ オ ノ ン
環 の 3(3')位 の 炭 素 に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド を 製 造 で き る 遺 伝 子 や 、 カ ロ テ ノ
イドの前駆体であるゲラニルゲラニルピロリン酸を合成する遺伝子を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
以下、実施例により本発明について具体的に説明する。もっとも、本発明はこれにより
限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
〔 実 施 例 1〕 菌 株 、 プ ラ ス ミ ド 、 生 育 条 件
本 発 明 に 用 い ら れ た 菌 株 と プ ラ ス ミ ド を 表 1 に 示 す 。 菌 株 の 培 養 は 30℃ で LB( Luria-Be
rtani) 培 地 ま た は 、 2× YT培 地 ( Sambrook et al., 1989) を 用 い て 行 っ た 。 必 要 に 応 じ
て 、 ア ン ピ シ リ ン ( ampicillin; Ap , 100μ g/ml) ま た は 、 ク ロ ラ ム フ ェ ニ コ ー ル ( chlo
ramphenicol; Cm, 20 μ g/ml) を 培 地 に 添 加 し た 。
【0078】
カ ン タ キ サ ン チ ン 産 生 用 プ ラ ス ミ ド pAC-Cantha、 及 び ア ス タ キ サ ン チ ン 、 ア ド ニ キ サ ン
チ ン ( 4-ケ ト ゼ ア キ サ ン チ ン ) 産 生 用 プ ラ ス ミ ド pAC-Astaは 以 下 の よ う に し て 作 製 し た 。
【0079】
パ ラ コ ッ カ ス 属 MBIC 01143( Agrobacterium aurantiacum) 由 来 の crtW 遺 伝 子 を 、 酵 母
キ ャ ン デ ィ ダ ・ ユ ー テ ィ リ ス ( Candida utilis) の GAP遺 伝 子 の コ ド ン 使 用 に 合 わ せ て 全
合 成 し た 。 コ ー ド さ れ る ア ミ ノ 酸 配 列 は 元 の CrtWと 同 じ に し て あ る 。 こ の 作 製 法 は 文 献 (
Miura et al., 1998) に 示 さ れ て い る 。 こ の 全 合 成 さ れ た crtW配 列 を 鋳 型 に し て 、 H1437
[ AvaI部 位 ( 下 線 ) 、 SD配 列 ( H1437の 10-15番 目 の 配 列 ) を 含 む ] と H1438[ NotI部 位 (
下 線 ) を 含 む ] プ ラ イ マ ー を 用 い て PCRを 行 い 、 得 ら れ た PCR産 物 を AvaIと NotIで 切 断 し て
、 0.76 kb AvaI-crtW-NotI断 片 を 得 た 。
【0080】
H1437: 5'-GTCCCGAGAAGGAGGCTAGATATGTCCGCTCACGCTTTGC-3'
H1438: 5'-CGGCGGCCGCCCGGGACTAAGCGGTGTCACCCTTGGTTCT-3’
プ ラ ス ミ ド pCAR16( Misawa et al., 1990) を 鋳 型 に し て 、 H1431 [ NotI部 位 ( 下 線 )
、 SD配 列 ( H1431の 16-21番 目 の 配 列 ) を 含 む ] と H1432[ SalI部 位 ( 下 線 ) を 含 む ] プ ラ
イ マ ー を 用 い て PCRを 行 い 、 得 ら れ た PCR産 物 を NotIと SalIで 切 断 し て 、 1.1 kb NotI-crtE
-SalI断 片 を 得 た 。
【0081】
H1431: 5'-ATGCGGCCGCTTATAAGGACAGCCCGAATG-3'
H1432: 5'-CAGTCGACATCCTTAACTGACGGCAGCGAG-3'
上 記 の 0.76 kb AvaI-crtW-NotI断 片 と 1.1 kb NotI-crtE-SalI断 片 を NotI部 位 を 介 し て
転 結 し 、 pACCAR16Δ crtXを AvaI/SalI消 化 し て 得 ら れ た 、 crtY、 crtI、 crtBを 有 す る 大 断
片 と 連 結 す る こ と に よ り 、 プ ラ ス ミ ド pAC-Canthaを 得 た 。
【0082】
さ ら に 、 同 様 に 上 記 の 0.76 kb AvaI-crtW-NotI断 片 と 1.1 kb NotI-crtE-SalI断 片 を Not
I部 位 を 介 し て 転 結 し 、 pACCAR25Δ crtXを AvaI/SalI消 化 し て 得 ら れ た 、 crtY、 crtI、 crtB
、 crtZを 有 す る 大 断 片 と 連 結 す る こ と に よ り 、 プ ラ ス ミ ド pAC-Astaを 得 た 。
【0083】
(47)
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【表1】
【0084】
Miura, Y., Kondo, K., Saito, T., Shimada, H., Fraser, P. D., Misawa, Production
of the carotenoids lycopene, β -carotene, and astaxanthin in the food yeast Cand
ida utilis. N., Appl. Environ. Microbiol., 64, 1226-1229, 1998
Misawa, N., Nakagawa, M., Kobayashi, K., Yamano, S., Izawa, Y. Nakamura, K., and
Harashima, K., Elucidation of the Erwinia uredovora carotenoid biosynthetic pat
hway by the functional analysis of gene products expressed in Escherichia coli.
J. Bacteriol., 172, 6704-6712, 1990
Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis T. 1989. Molecular cloning: a laborat
ory manual. 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y
.
Yokoyama, A., Miki, W., Izumida, H., Shizuri, Y. 1996. New Trihydroxy-keto- caro
tenoids isolated from an astaxanthin-producing marine bacterium. Biosci. Biotech
nol. Biochem. 60, 200-203, 1996 (非 特 許 文 献 2)
Misawa, N., Satomi, Y., Kondo, K., Yokoyama, A., Kajiwara, S., Saito, T., Ohtani
, T., and Miki, W., Structure and functional analysis of a marine bacterial caro
tenoid biosynthesis gene cluster and astaxanthin biosynthetic pathway proposed a
t the gene level. J. Bacteriol. 177, 6575-6585, 1995 (非 特 許 文 献 1)
【0085】
〔 実 施 例 2〕 遺 伝 子 操 作 実 験
プラスミドの調製、制限酵素処理、ライゲーション反応、形質転換などの通常の遺伝子
操 作 実 験 は 、 前 述 の Sambrookら ( 1989) の Molecular Cloning( 前 述 の 文 献 ) に 示 さ れ た
(48)
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方法により行った。
【0086】
〔 実 施 例 3〕 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 か ら の 染 色 体 DNAの 調 製
ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 ( Brevundimonas sp.) SD-212 株 ( SD212; MBIC 03018) を 300 m
lの Marine Broth (MB)培 地 ( Difco) で 25℃ 、 3日 間 培 養 し た 。 菌 体 を 集 菌 後 、 STE緩 衝 液
( 100 mM NaCl, 10 mM Tris・ HCl, 1 mM EDTA, pH 8.0) で 二 回 洗 浄 し 、 68℃ で 15分 間 熱
処 理 を し た 後 、 5 mg/ml の リ ゾ チ ー ム ( Sigma) と 100 μ g/mlの RNase A (Sigma)を 含 む I
液 (50 mM グ ル コ ー ス 、 25 mM Tris・ HCl, 10 mM EDTA, pH 8.0)に 懸 濁 し た 。 37℃ で 一 時
間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 後 、 250 μ g/mlに な る よ う に Protenase K (Sigma)を 加 え 、 37℃ で 1
0分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 さ ら に 最 終 濃 度 が 1% に な る よ う に N-Lauroylsarcosin・ Naを
添 加 し 、 転 倒 混 和 に よ り 穏 や か に 完 全 に 混 合 し た 後 37℃ で 3時 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 さ
ら に フ ェ ノ ー ル /ク ロ ロ ホ ル ム 抽 出 を 数 回 行 っ た 後 、 2倍 量 の エ タ ノ ー ル を ゆ っ く り と 添 加
し な が ら 、 析 出 し て き た 染 色 体 DNAを ガ ラ ス 棒 で 巻 き つ け 、 70% エ タ ノ ー ル で リ ン ス し た
後 、 2 mlの TE緩 衝 液 ( 10 mM Tris・ HCl, 1 mM EDTA, pH 8.0) に 溶 解 し て 、 染 色 体 DNA溶
液とした。
【0087】
〔 実 施 例 4〕 PCR法 に よ る フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ 遺 伝 子 (crtI)の 部 分 断 片 の 増 幅
カ ロ テ ノ イ ド 産 生 細 菌 間 の フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ ( phytoene desaturase; フ ィ ト
エ ン 脱 水 素 酵 素 ) 遺 伝 子 (crtI)の 相 同 性 を 利 用 し て 得 ら れ た crtI-Foプ ラ イ マ ー ( 5’ -TTY
GAY GCI GGI CCI ACI GT -3’ ) 、 crtI-Reプ ラ イ マ ー ( 5’ -CCI GGR TGI GTI CCI GCI C
C-3’ ) を 合 成 し 、 前 出 し た 方 法 に よ り 得 ら れ た 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の 染 色
体 DNAを 鋳 型 と し て 用 い 、 PCR法 に よ り 増 幅 し た 。 耐 熱 性 DNAポ リ メ ラ ー ゼ は La-Taq (TaKaR
a)を 用 い 、 96℃ で 5分 間 熱 変 性 後 、 98℃ で 20秒 、 58℃ で 30秒 、 72℃ で 1分 の 条 件 で 35サ イ ク
ル の 増 幅 を 行 っ た 。 増 幅 産 物 は 、 1% ア ガ ロ ー ス ゲ ル 電 気 泳 動 で 確 認 後 、 1.1 kbの 長 さ の D
NAを ア ガ ロ ー ス ゲ ル か ら 切 り 出 し 、 精 製 ( Qiagene Gel Extraction kit、 QIAGENE、 も し
く は Gene Clean II Kit、 BIO101) を 行 っ た 。 精 製 さ れ た DNA断 片 は 、 pGEM-T Easyに 連 結
し 、 大 腸 菌 ( DH5α ) を 形 質 転 換 し た 。 こ の プ ラ ス ミ ド を pCRTI-SD212と 名 づ け 、 ア ン ピ シ
リ ン を 添 加 し た 2 mlの LB液 体 培 地 で 37℃ 、 一 晩 培 養 後 、 プ ラ ス ミ ド を 抽 出 し た 。 抽 出 さ れ
た プ ラ ス ミ ド は Big Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit ver.2 (Per
kin-Elmer)と model 3700 DNA sequencer (Perkin-Elmer)を 用 い 付 属 の プ ロ ト コ ー ル に 従
っ て 塩 基 配 列 ( 部 分 配 列 ) の 決 定 を 行 っ た 。 決 定 さ れ た DNA配 列 ( 配 列 番 号 1) は Blast (A
ltschul and Lipman, 1990)を 用 い ホ モ ロ ジ ー 検 索 を 行 い フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ ( phy
toene desaturase) 遺 伝 子 (crtI)と ホ モ ロ ジ ー を 持 つ DNA断 片 で あ る こ と を 確 認 し た 。 ま
た 、 PCR後 、 精 製 さ れ た DNA断 片 の 一 部 は 実 施 例 7、 8に 示 す コ ロ ニ ー ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ
ン、サザンハイブリダイゼーションのプローブとして用いた。
【0088】
Altschul, S. F. and Lipman, D. J., Protein database search for multiple alignmen
ts. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 5509-5513, 1990.
【0089】
〔 実 施 例 5〕 コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ リ ー の 作 製
ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の 染 色 体 DNAの 調 製 液 か ら フ ァ ー ジ 粒 子 を 得 る と こ ろ ま
で の 実 験 方 法 は Stratagene社 の SuperCos 1 Cosmid Vector Kitの 取 扱 説 明 書 に 従 っ て 行 っ
た 。 す な わ ち ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 か ら 得 ら れ た 染 色 体 DNAを Sau3AIで 部 分 消 化
を 行 い コ ス ミ ド ベ ク タ ー の BamHI部 位 に 連 結 し 、 LAMBDA INN (Nippon Gene)を 用 い て フ ァ
ー ジ 粒 子 に パ ッ ケ ー ジ ン グ し た 。 そ し て 、 大 腸 菌 ( Escherichia coli) XL1-Blue MR株 、
及 び 、 プ ラ ス ミ ド pACCAR25Δ crtXを 含 み ゼ ア キ サ ン チ ン を 作 る 大 腸 菌 XL1-Blue MR株 に 、
そ の フ ァ ー ジ を 感 染 さ せ 、 抗 生 物 質 Ap耐 性 、 及 び Ap、 Cm耐 性 の コ ロ ニ ー を 、 Ap、 及 び Ap、
Cmを 含 む LBプ レ ー ト 上 に 各 々 、 約 1,000個 ず つ 得 た 。 得 ら れ た コ ロ ニ ー は 滅 菌 し た 楊 枝 を
用 い て 、 新 た に 抗 生 物 質 を 含 む LBプ レ ー ト 上 に 植 え 継 い だ 。 な お 、 こ の 段 階 で 色 の 変 化 し
たコロニーは全く得られなかった。
(49)
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【0090】
こ の コ ス ミ ド ベ ク タ ー SuperCos 1( Stratagene) は 7.9 kbの ベ ク タ ー で 30∼ 45 kbの DNA
断 片 を 挿 入 す る こ と が で き る 。 ま た 、 cos領 域 が 二 つ あ る の で 、 パ ッ ケ ー ジ ン グ の 効 率 が
よく、コスミドコンカテマーのパッケージングを防ぐための脱リン酸化操作が不要であり
、 挿 入 し た い 染 色 体 DNAの 方 を 脱 リ ン 酸 化 で き る た め に 、 染 色 体 DNA断 片 の 再 結 合 断 片 の 混
入の心配が無く、サイズ分画も不要であるという利点がある。
【0091】
〔 実 施 例 6〕 発 現 ク ロ ー ニ ン グ の 試 み
実 施 例 5で 作 製 し た プ ラ ス ミ ド pACCAR25Δ crtXを 含 み ゼ ア キ サ ン チ ン を 作 る 大 腸 菌 を 宿
主 と し て 作 製 し た コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ リ ー 700コ ロ ニ ー を 用 い て 、 各 々 2 mlず つ 培 養 し 、 ア
セ ト ン で カ ロ テ ノ イ ド 色 素 を 抽 出 し た 後 、 HPLC-PDA( フ ォ ト ダ イ オ ー ド ア レ ィ 検 出 器 ) 分
析 に よ り 、 カ ロ テ ノ イ ド の 分 析 を 行 っ た 。 方 法 は 、 実 施 例 11に 示 さ れ て い る 。 コ ン ト ロ ー
ルのゼアキサンチンに加えて、新たなカロテノイドが生成していないかどうかの検討を行
った。その結果、新たなカロテノイドを合成するものは全く得られなかった。したがって
、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 の 発 現 ク ロ ー ニ ン グ は 不 可
能であると結論した。
【0092】
〔 実 施 例 7〕 コ ロ ニ ー ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン
実 施 例 5で 作 製 し た 大 腸 菌 XL1-Blue MRを 宿 主 と し て 作 製 し た コ ス ミ ド ラ イ ブ ラ リ ー 500
コ ロ ニ ー を 用 い て 、 実 施 例 4で 示 し た PCR法 に よ り 増 幅 し た フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ 遺 伝
子 ( crtI) の 部 分 断 片 を プ ロ ー ブ と し て 、 コ ロ ニ ー ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン ( colony hyb
ridization) 法 を 行 い 、 crtI遺 伝 子 を 含 む ク ロ ー ン の ス ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た 。 ま ず 、 大
腸 菌 を プ レ ー ト に 植 え 37℃ で 培 養 し た 。 こ の と き 、 大 腸 菌 は 一 枚 の プ レ ー ト あ た り 、 48コ
ロ ニ ー ず つ 植 え 付 け た 。 一 晩 培 養 後 、 直 径 82 mmの Hybond-N+メ ン ブ レ ン ( Amersham Pharm
acia) を プ レ ー ト に 乗 せ 、 注 射 針 で 目 印 を つ け た 。 メ ン ブ レ ン を は が し 、 菌 体 が 付 着 し た
面 を 上 に 向 け 、 10% SDS溶 液 を 含 ん だ 3 mmろ 紙 ( Whattman) で 5分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト 後 、
さ ら に 変 性 溶 液 ( 1.5 M NaCl, 0.5 M NaOH) を 含 ん だ 3 mmろ 紙 で 5分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト を
行 い 、 そ の 後 メ ン ブ レ ン を 中 和 液 ( 1.5 M NaCl, 0.5M Tris・ HCl) に 5分 間 つ け た ( 2回 )
。 さ ら に 2× SSCで 2回 洗 浄 し た 。 こ の と き 、 細 胞 の 破 片 を 残 さ な い よ う に キ ム タ オ ル で メ
ン ブ レ ン を 強 く こ す っ た 。 処 理 後 、 メ ン ブ レ ン は 、 キ ム タ オ ル 、 キ ム ワ イ プ 上 で 30分 間 風
乾 後 、 80℃ で 2時 間 ベ ー キ ン グ ( baking) を 行 い 、 メ ン ブ レ ン に DNAを 固 定 し た 。 プ ロ ー ブ
DNAは 、 Alkphos Direct Labeling and Detection System (Amersham Pharmacia)を 用 い 、
添付のプロトコールに従って作製し、コロニーハイブリダイゼーションを行った。その結
果 、 500株 の ク ロ ー ン か ら 、 フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ 遺 伝 子 ( crtI) の 部 分 断 片 を プ ロ
ー ブ DNAと し て 用 い た コ ロ ニ ー ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン 法 に よ り 6個 の ポ ジ テ ィ ブ ク ロ ー ン
が 得 ら れ た 。 6個 の ポ ジ テ ィ ブ ク ロ ー ン に 存 在 す る プ ラ ス ミ ド を 、 pCos5-1、 pCos5-2、 pCo
s7-1、 pCos8-1、 pCos9-1、 pCos10-1と 名 づ け た 。
【0093】
〔 実 施 例 8〕 サ ザ ン ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン
実 施 例 7で 選 抜 さ れ た 、 6つ の ポ ジ テ ィ ブ ク ロ ー ン を 、 Apを 添 加 し た 2 mlの LB液 体 培 地 で
37℃ 、 一 晩 培 養 し た 後 、 プ ラ ス ミ ド DNAを 抽 出 し た 。 抽 出 後 の プ ラ ス ミ ド DNAは 、 EcoRIで 3
7℃ 、 数 時 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し 、 完 全 消 化 し た 後 、 電 気 泳 動 を 行 っ た 。 コ ン ト ロ ー ル と し
て 、 ベ ク タ ー の SuperCos 1、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212の 染 色 体 DNAを 同 様 に 消 化 し た
も の を 用 い た 。 電 気 泳 動 に は 、 小 型 の サ ブ マ リ ン 型 の 電 気 泳 動 漕 Mupid( コ ス モ バ イ オ )
を 用 い 1%ア ガ ロ ー ス ゲ ル を 用 い て 50 Vで 約 70分 電 気 泳 動 を 行 っ た 。 な お 、 電 気 泳 動 バ ッ フ
ァ ー に は 1× TBEバ ッ フ ァ ー を 用 い た 。 ゲ ル は 電 気 泳 動 後 、 エ チ ジ ウ ム ブ ロ マ イ ド で 染 色 し
、 超 純 水 で 脱 色 後 、 UV照 射 下 で 写 真 撮 影 を し た ( 図 3) 。 そ の 後 0.4M NaOH溶 液 を 用 い て キ
ャ ピ ラ リ ー ブ ロ ッ テ ィ ン グ を 行 う こ と に よ り ナ イ ロ ン メ ン ブ レ ン ( Hybond N+) に ト ラ ン
ス フ ァ ー し た 。 処 理 後 、 メ ン ブ レ ン を 80℃ で 2時 間 、 ベ ー キ ン グ ( baking) を 行 い 、 メ ン
ブ レ ン に DNAを 固 定 し た 。 そ の 後 、 Alkphos Direct Labeling and Detection System (Ame
(50)
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rsham Pharmacia)を 用 い 、 添 付 の プ ロ ト コ ー ル に 従 っ て 、 サ ザ ン ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン
を 行 っ た 。 ま た 、 プ ロ ー ブ DNAに は 、 前 述 し た フ ィ ト エ ン デ サ チ ュ ラ ー ゼ 遺 伝 子 ( crtI)
の 部 分 断 片 を 用 い た 。 そ の 結 果 、 6つ の ポ ジ テ ィ ブ ク ロ ー ン の う ち pCos5-2、 pCos7-1、 pCo
s9-1の 3つ の ク ロ ー ン に お い て 、 12 kbの EcoRI断 片 に ポ ジ テ ィ ブ シ グ ナ ル が 認 め ら れ た (
図 3) 。 コ ン ト ロ ー ル の SD-212染 色 体 DNAは 、 電 気 泳 動 で 確 認 し た と こ ろ 、 高 分 子 側 で ス ミ
アなバンドが認められ、ほとんど消化されていなかった。僅かながらも、高分子側で陽性
の シ グ ナ ル が 認 め ら れ た 。 ほ と ん ど 消 化 さ れ な い 原 因 と し て は 、 染 色 体 DNAが 部 分 的 に メ
チ ル 化 さ れ EcoRIに よ る 分 解 が 阻 害 さ れ た こ と な ど が 考 え ら れ る 。 さ ら に 、 3つ の ポ ジ テ ィ
ブ ク ロ ー ン の プ ラ ス ミ ド と SuperCos 1、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の 染 色 体 DNAを Bam
HIも し く は BamHI-EcoRIで 消 化 し 、 同 様 の 実 験 を 行 っ た ( 図 4) 。 そ の 結 果 BamHIに よ る 消
化 を 行 っ た も の で は 、 9 kbの DNA断 片 に ポ ジ テ ィ ブ シ グ ナ ル が 認 め ら れ 、 BamHI-EcoRIに よ
る 消 化 を 行 っ た も の で は 、 8.2 kbの ポ ジ テ ィ ブ シ グ ナ ル が 認 め ら れ た 。 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ
ス 属 SD-212株 の 染 色 体 DNAの 消 化 物 に も 、 同 様 の サ イ ズ の バ ン ド で ポ ジ テ ィ ブ シ グ ナ ル が
薄いながらも認められた。
【0094】
〔 実 施 例 9〕 カ ロ テ ノ イ ド 遺 伝 子 ク ラ ス タ ー の 解 析
実 施 例 8で 選 抜 さ れ た 3つ の 陽 性 ク ロ ー ン ( pCos5-2、 pCos7-1、 pCos9-1) の う ち pCos5-2
を 用 い 、 12 kbの 挿 入 断 片 を EcoRIで 切 り 出 し 、 プ ラ ス ミ ド ベ ク タ ー pBluescript II KS-の
EcoRI部 位 に 連 結 し 、 大 腸 菌 ( E. coli) DH5α 株 を 形 質 転 換 し た 。 こ の プ ラ ス ミ ド を p5Bre
2-15と 名 づ け た 。 こ の 大 腸 菌 を 、 Apを 添 加 し た 2 mlの LB液 体 培 地 で 37℃ 、 一 晩 培 養 後 、 プ
ラ ス ミ ド を 抽 出 し た 。 抽 出 さ れ た プ ラ ス ミ ド は Big Dye Terminator Cycle Sequencing Re
ady Reaction Kit ver.2 (Perkin-Elmer)と model 3700 DNA sequencer (Perkin-Elmer)を
用 い 付 属 の プ ロ ト コ ー ル に 従 っ て 塩 基 配 列 の 決 定 を 行 っ た 。 決 定 さ れ た DNA配 列 ( 配 列 番
号 2) は GeneMark.hmm( Lukashin A. and Borodovsky M.) 用 い 遺 伝 子 コ ー ド 領 域 を 推 定 し
、 SD様 配 列 の 確 認 な ど を 行 い 、 12 kbの 断 片 中 に 12個 の ORF( open reading frame) を 発 見
し た ( 図 5) 。 Blast を 用 い 、 各 ORFの ア ミ ノ 酸 配 列 レ ベ ル で の ホ モ ロ ジ ー 検 索 を 行 い 、 12
個 の う ち 7個 は 、 既 知 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 ( crtW, crtY, crtI, crtB, crtE, crt
Z, idi) と 相 同 性 を 示 す こ と が わ か っ た ( 表 2) 。 残 り の 5個 の 遺 伝 子 ( ORF) は 、 既 存 の
どんな遺伝子とも全体的な相同性は有さない未知遺伝子であった。ブレバンディモナス属
SD-212株 由 来 の 既 知 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 酵 素 と ホ モ ロ ジ ー が あ っ た 7個 の Crt酵 素 ( 1個
の Idiを 含 む ) と 、 他 生 物 由 来 の 相 当 酵 素 と の 同 一 性 ( identity; 同 一 の ア ミ ノ 酸 配 列 の
比 率 ) の 検 索 は 、 正 確 を 期 す た め に 以 下 の よ う に し て 行 っ た 。 す な わ ち 、 Blastプ ロ グ ラ
ム ( ver. 2) ( Altschul, S. F., Madden, T. L., Schaffer, A. A., Zhang, J., Zhang,
Z., Miller, W., and Lipmann, D. J., Nucleic Acids Res. 25, 3389-3402, 1997) を
用 い 、 GenBank/DDBJの デ ー タ ベ ー ス か ら ホ モ ロ ジ ー 検 索 ( tBlastn) を 行 っ た 。 次 に 、 ヒ
ッ ト し た ア ミ ノ 酸 配 列 を 用 い 、 各 Crtタ ン パ ク 質 に つ い て 、 Clustal Wプ ロ グ ラ ム ( ver. 1
.8) ( Higgins, D. G., Thompson, J. D., and Gibson, T. J., Methods Enzymol. 266,
383-402, 1996) 、 及 び 、 GeneDocプ ロ グ ラ ム ( Nicholas, K. B., Nicholas H. B. Jr., a
nd Deerfield, D. W. II., Embnew. News 4, 14, 1997) に よ る 解 析 を 行 い 、 各 タ ン パ ク
質 に お け る 全 領 域 間 の 同 一 性 ( identity) を 求 め た 。 表 2に は 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD212株 由 来 の 各 Crtタ ン パ ク 質 ( 1個 の Idiを 含 む ) と 最 も ホ モ ロ ジ ー が 高 か っ た 他 細 菌 由 来
の Crtタ ン パ ク 質 と の 同 一 性 が 示 さ れ て い る 。 本 解 析 の 結 果 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-21
2株 由 来 の 7個 の Crtタ ン パ ク 質 ( 1個 の Idiを 含 む ) は 、 既 知 の 他 生 物 由 来 の 相 当 タ ン パ ク
質 と は 中 程 度 以 下 の ホ モ ロ ジ ー し か 示 さ な い こ と が 明 ら か と な っ た 。 表 2か ら わ か る よ う
に 、 最 も 高 い ホ モ ロ ジ ー を 示 し た SD-212株 由 来 の CrtIで も 72% の 同 一 性 で あ っ た 。 さ ら に
驚 く べ き こ と に は 、 SD-212株 由 来 の CrtZと CrtEの 場 合 は 、 50% を 超 え る 同 一 性 を 示 す 既 知
の 他 生 物 由 来 の 相 当 タ ン パ ク 質 は 見 出 さ れ な く 、 最 も 高 い も の で も 、 そ れ ぞ れ 、 46% 及 び
39% の 同 一 性 で あ っ た 。 SD-212株 の crtZ遺 伝 子 は 、 配 列 番 号 2に 示 さ れ た 12 kb( 11,991 k
b) の EcoRI断 片 の 相 補 鎖 に お け る 塩 基 番 号 1,319か ら 1,804に コ ー ド さ れ る 遺 伝 子 で 、 そ の
塩 基 配 列 は 配 列 番 号 2 9 に 、 コ ー ド さ れ る ア ミ ノ 酸 配 列 ( CrtZ) は 配 列 番 号 3 0 に 示 さ れ
(51)
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て い る 。 SD-212株 の crtE遺 伝 子 は 、 配 列 番 号 2に 示 さ れ た 12 kb( 11,991 kb) の EcoRI断 片
の 相 補 鎖 に お け る 塩 基 番 号 2,963か ら 3,859に コ ー ド さ れ る 遺 伝 子 で 、 そ の 塩 基 配 列 は 配 列
番 号 3 1 に 、 コ ー ド さ れ る ア ミ ノ 酸 配 列 ( CrtE) は 配 列 番 号 3 2 に 示 さ れ て い る 。
【0095】
ま た 、 各 crt遺 伝 子 の 配 置 を 調 べ て み る と 、 crtW、 crtZ遺 伝 子 の 位 置 や そ の 他 の 遺 伝 子 の
向 き な ど 、 か つ て 報 告 さ れ た 水 酸 基 を β -イ オ ノ ン ( β -ionone) 環 に 有 す る カ ロ テ ノ イ ド
類 を 生 産 す る 細 菌 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 群 ( Misawa et al., 1990 & 1995;
Hanni
bal et al., 2000) と 大 き く 異 な る 構 造 を 有 す る こ と が わ か っ た ( 図 5) 。 IPPイ ソ メ ラ ー
ゼ 遺 伝 子 ( idi) が 、 カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 群 内 に 存 在 す る と い う の も 初 め て で あ る
。 な お 、 上 記 の 12個 の ORF( 7個 の crt遺 伝 子 を 含 む ) す べ て を 含 む プ ラ ス ミ ド p5Bre2-15を
有する大腸菌は、カロテノイドを全く生産できなかった。したがって、ブレバンディモナ
ス 属 ( Brevundimonas sp.) SD-212 株 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 群 は 、 こ の ま ま の 状 態
では大腸菌で機能発現しないことが明らかとなった。
【0096】
【表2】
【0097】
Lukashin A. and Borodovsky M., 1998, GeneMark.hmm: new solutions for gene findin
g, NAR, Vol. 26, No. 4, pp. 1107-1115.
Misawa,N., Nakagawa,M., Kobayashi,K., Yamano,S., Izawa,Y.,Nakamura,K. and Harash
ima,K., Elucidation of the Erwinia uredovora carotenoid biosynthetic pathway by
functional analysis of gene products expressed in Escherichia coli. J. Bacteriol
. 172, 6704-6712, 1990
Misawa, N., Satomi, Y., Kondo, K., Yokoyama, A., Kajiwara, S., Saito, T., Ohtani
, T., and Miki, W., Structure and functional analysis of a marine bacterial caro
tenoid biosynthesis gene cluster and astaxanthin biosynthetic pathway proposed a
t the gene level. J. Bacteriol. 177, 6575-6585, 1995 (非 特 許 文 献 1)
Hannibal, L., Lorquin, J., D'Ortoli, N.A., Garcia, N., Chaintreuil, C., Masson-B
oivin, C., Dreyfus, B. and Giraud, E., Isolation and characterization of canthax
anthin biosynthesis genes from the photosynthetic bacterium Bradyrhizobium sp. s
train ORS278. J. Bacteriol. 182, 3850-3853, 2000
Larsen, R.A., Wilson, M.M., Guss, A.M. and Metcalf, W.W., Genetic analysis of pi
(52)
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gment biosynthesis in Xanthobacter autotrophicus Py2 using a new, highly efficie
nt transposon mutagenesis system that is functional in a wide variety of bacteri
a Arch. Microbiol. 178, 193-201, 2002
【0098】
〔 実 施 例 10〕 β -ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ 融 合 タ ン パ ク 質 発 現 用 プ ラ ス ミ ド の 構 築
各 種 ORFの 機 能 を 明 ら か に す る た め 、 大 腸 菌 ベ ク タ ー pUC18( TOYOBO) の コ ー ド す る β ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ 遺 伝 子 ( lacZ) の リ ー ド 配 列 と の 融 合 タ ン パ ク 質 と な る よ う に 各 ORFを
、 プ ラ ス ミ ド p5Bre2-15の DNAを 鋳 型 と し て PCRで 増 幅 し 、 β -ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ 融 合 タ ン パ
ク質発現用の各種プラスミドの構築を行った。この方法により大腸菌で機能発現されるこ
と を 期 待 し た か ら で あ る 。 具 体 的 に は 、 各 ORFを 5’ 末 端 側 に EcoRI部 位 を 、 3’ 末 端 側 に Ba
mHIも し く は XbaI部 位 を 持 つ 増 幅 産 物 が 得 ら れ る よ う に 設 計 し た 配 列 番 号 ( 5∼ 28) の プ ラ
イ マ ー を 用 い て PCRに て 増 幅 し た 。 耐 熱 性 DNAポ リ メ ラ ー ゼ は La-Taq (TaKaRa)を 用 い 、 各
々 96℃ で 5分 間 熱 変 性 後 、 98℃ で 20秒 、 56℃ で 30秒 、 72℃ で 1分 の 条 件 で 35サ イ ク ル の 増 幅
を 行 っ た 。 増 幅 産 物 の 一 部 は 、 1%ア ガ ロ ー ス ゲ ル 電 気 泳 動 で 確 認 し た 。 残 り の 増 幅 産 物 は
エ タ ノ ー ル 沈 殿 後 、 EcoRIに よ る 消 化 と 、 BamHIも し く は XbaIに よ る 消 化 を 行 い 。 1%ア ガ ロ
ー ス ゲ ル 電 気 泳 動 を 行 っ た 。 次 に 目 的 の 長 さ の DNAを ア ガ ロ ー ス ゲ ル か ら 切 り 出 し 、 精 製
( Qiagene Gel Extraction kit、 QIAGENE、 も し く は Gene Clean II Kit、 BIO101) を 行 っ
た 。 切 り 出 さ れ た DNAは pUC18の EcoRIと 、 BamHIも し く は XbaI部 位 に 連 結 し 、 大 腸 菌 DH5α
に 形 質 転 換 し た 。 こ の β -ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ 融 合 タ ン パ ク 質 発 現 用 プ ラ ス ミ ド で は 、 各 ORF
の 本 来 の 開 始 の ア ミ ノ 酸 配 列 Metの 前 に 、 β -ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ の 7個 の ア ミ ノ 酸 か ら な る
リ ー ダ 配 列 MetThrMetIleThrAsnSerが 付 加 さ れ る よ う に デ ザ イ ン さ れ て い る 。
【0099】
〔 実 施 例 11〕 β -ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ -各 種 Crt融 合 タ ン パ ク 質 遺 伝 子 の 発 現 と 色 素 生 産 の
解析
実 施 例 10で 示 し た プ ラ ス ミ ド の う ち 、 crtE, crtB, crtI, crtY, crtZ, crtW遺 伝 子 を 含
む プ ラ ス ミ ド を 有 す る 大 腸 菌 を 、 Apを 添 加 し た 2 mlの LB液 体 培 地 で 37℃ 、 一 晩 培 養 後 、 プ
ラ ス ミ ド を 抽 出 し た 。 抽 出 さ れ た プ ラ ス ミ ド は Big Dye Terminator Cycle Sequencing Re
ady Reaction Kit ver.2 (Perkin-Elmer)と model 3700 DNA sequencer (Perkin-Elmer)を
用い付属のプロトコールに従って塩基配列の確認を行った。各プラスミドの名前をそれぞ
れ pUCBre-E (lacZ::crtE)、 pUCBre-B (lacZ::crtB)、 pUCBre-I (lacZ::crtI)、 pUCBre-Y
(lacZ ::crtY)、 pUCBre-Z (lacZ::crtZ)、 pUCBre-W (lacZ ::crtW)と 名 づ け た 。
【0100】
そ の 後 、 表 3の 左 に 示 す 各 種 カ ロ テ ノ イ ド 生 産 性 プ ラ ス ミ ド ( chloramphenicol、 Cm耐 性
) を 有 す る 大 腸 菌 に こ れ ら の プ ラ ス ミ ド を 導 入 し 、 Ap、 Cmを 添 加 し た 2 mlの LB液 体 培 地 で
1 mMの IPTG添 加 に よ る 誘 導 下 で 30℃ 、 48培 養 後 、 遠 心 分 離 に よ り 集 菌 し 、 菌 体 を STEで 二
回 洗 浄 後 、 200 μ lの ア セ ト ン を 添 加 し 、 ボ ル テ ッ ク す る こ と に よ り 色 素 を 菌 体 か ら ア セ
ト ン へ 移 し た 。 そ の 後 、 遠 心 分 離 を 行 い 、 上 清 を ろ 過 し 、 HPLC-PDAシ ス テ ム ( Waters All
iance 2695お よ び 2996フ ォ ト ダ イ オ ー ド ア レ ィ 検 出 器 ) で 色 素 の 分 析 を 行 っ た 。 カ ラ ム に
は TSK gel ODS-80Ts (TOSOH)を 用 い 、 送 液 条 件 は 、 A液 ( 95%メ タ ノ ー ル ) 、 B液 [ メ タ ノ
ー ル : テ ト ラ ヒ ド ロ フ ラ ン (tetrahydrofuran; THF), 7 : 3] で 5分 間 A液 100%を 送 液 し 、
5分 か ら 10分 の 間 で A液 100 %か ら を B液 100 % に 直 線 グ ラ ジ エ ン ト を 行 い 、 そ の 後 B液 を 8
分 間 送 液 し た 。 な お 、 検 出 は フ ォ ト ダ イ オ ー ド ア レ ィ 検 出 器 で 行 い 、 付 属 の Empowerソ フ
トウェアで解析を行った。標品としては、各種カロテノイド合成能を有する大腸菌(表3
左 ) か ら 抽 出 し た 色 素 ま た は 合 成 品 を 標 品 と し て 用 い 、 470 nmで の 保 持 時 間 と 吸 収 波 形 の
比 較 に よ り 予 想 通 り の 各 種 カ ロ テ ノ イ ド が 生 産 さ れ る こ と を 確 認 し た ( 表 3右 ) 。 こ れ ら
の 結 果 よ り 、 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の 各 種 融 合 crt遺 伝 子 が 大 腸 菌 内 で 機 能 し 、
既 存 の crt遺 伝 子 ( crtE, crtB, crtI, crtY, crtZ, crtW) と 同 様 の 機 能 を 有 す る こ と が
明 ら か と な っ た 。 た だ し 、 pUCBre-I (lacZ::crtI)と pUCBre-Y (lacZ ::crtY)の 発 現 は 、
大 腸 菌 で は か な り 弱 か っ た 。 既 知 の 他 生 物 由 来 の Crtタ ン パ ク 質 と 50% 以 下 の 同 一 性 し か
示 さ な い 、 SD-212株 由 来 の CrtEと CrtZに つ い て は 、 本 実 験 に よ り 、 大 腸 菌 内 で 強 い 触 媒 活
(53)
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性 が あ る こ と が 確 認 さ れ た 。 CrtEの 場 合 は 、 エ ル ウ ィ ニ ア ・ ウ レ ド ボ ラ ( Erwinia uredov
ora; Pantoea ananatis) 由 来 の CrtEと 同 じ 触 媒 活 性 を 有 す る こ と 、 す な わ ち 、 フ ァ ル ネ
シ ル ピ ロ リ ン 酸 ( FPP) か ら ゲ ラ ニ ル ゲ ラ ニ ル ピ ロ リ ン 酸 ( GGPP) を 作 る GGPPシ ン タ ー ゼ
で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 CrtZの 場 合 は 、 β -カ ロ テ ン か ら ゼ ア キ サ ン チ ン を 、 カ ン
タ キ サ ン チ ン か ら ア ス タ キ サ ン チ ン を 作 る 活 性 を 有 す る β -イ オ ノ ン 環 -3-ヒ ド ロ キ シ ラ ー
ゼ ( β -C3-hydroxylase; 3,3’ -β -hydroxylase) で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 な お 、
図 2は ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 が 生 産 す る カ ロ テ ノ イ ド で あ る が 、 図 2中 に お け る β
-イ オ ノ ン 環 の 3位 が 水 酸 化 さ れ た カ ロ テ ノ イ ド の す べ て ( た と え ば 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ
キ サ ン チ ン や 2-ヒ ド ロ キ シ ア ド ニ キ サ ン チ ン 等 ) の 合 成 に 、 SD-212株 由 来 の CrtZが 関 与 し
ていることは明らかである。
【表3】
【0101】
〔 実 施 例 12〕 β -ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ - ORF11融 合 タ ン パ ク 質 の 発 現 と 色 素 生 産 の 解 析
実 施 例 10で 示 し た プ ラ ス ミ ド の う ち 、 機 能 の 推 定 が で き な い ORF1, ORF6, ORF7, ORF11,
ORF12を 含 む プ ラ ス ミ ド を 有 す る 大 腸 菌 を 、 Apを 添 加 し た 2 mlの LB液 体 培 地 で 37℃ 、 一 晩
培 養 後 、 プ ラ ス ミ ド を 抽 出 し た 。 抽 出 さ れ た プ ラ ス ミ ド は Big Dye Terminator Cycle Seq
uencing Ready Reaction Kit ver.2 (Perkin-Elmer)と model 3700 DNA sequencer (Perki
n-Elmer)を 用 い 付 属 の プ ロ ト コ ー ル に 従 っ て 塩 基 配 列 の 確 認 を 行 っ た 。 各 プ ラ ス ミ ド の 名
前 を そ れ ぞ れ pUCBre-O1( lacZ::SD212-ORF1) 、 pUCBre-O6( lacZ::SD212-ORF6) 、 pUCBre
-O7( lacZ::SD212-ORF7) 、 pUCBre-O11( lacZ::SD212-ORF11) 、 pUCBre-O12( lacZ::SD21
2-ORF12) と 名 づ け た 。 そ の 後 、 表 3の 左 に 示 す 各 種 カ ロ テ ノ イ ド 生 産 性 プ ラ ス ミ ド ( Cm耐
性 ) を 有 す る 大 腸 菌 に こ れ ら の プ ラ ス ミ ド を 導 入 し 、 Ap、 Cmを 添 加 し た 2 mlの LB液 体 培 地
で 1 mMの IPTG添 加 に よ る 誘 導 下 で 30℃ 、 48培 養 後 、 遠 心 分 離 に よ り 集 菌 し 、 菌 体 を STEで
二 回 洗 浄 後 、 200 μ lの ア セ ト ン を 添 加 し 、 ボ ル テ ッ ク す る こ と に よ り 色 素 を 菌 体 か ら ア
セ ト ン へ 移 し た 。 そ の 後 、 遠 心 分 離 を 行 い 、 上 清 を ろ 過 し 、 HPLC-PDAシ ス テ ム に よ り 、 実
施 例 11と 同 様 方 法 に よ り 色 素 の 分 析 を 行 っ た 。
【0102】
上 記 の 実 験 を 行 っ た 結 果 と し て 、 プ ラ ス ミ ド pUCBre-O11を 導 入 し た 大 腸 菌 の み が ポ ジ テ
(54)
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ィ ブ な 結 果 が 得 ら れ た ( ORF11の 塩 基 配 列 は 配 列 番 号 3 に 、 コ ー ド さ れ る ア ミ ノ 酸 配 列 は
配 列 番 号 4 に 示 さ れ て い る ) 。 す な わ ち 、 ORF11の 融 合 発 現 用 プ ラ ス ミ ド pUCBre-O11( lac
Z::SD212-ORF11) を 、 pACCAR16Δ crtXを 有 す る β -カ ロ テ ン 産 生 大 腸 菌 ( DH5α ) に 導 入 し
た 株 の 色 素 抽 出 液 で は 、 保 持 時 間 16分 の と こ ろ に β -カ ロ テ ン ( 451 nm、 478 nm) の 存 在
が 認 め ら れ 、 高 極 性 側 の 11分 の と こ ろ に 451.0 nm、 478.8 nmの 吸 収 極 大 を 持 つ 物 質 が 認 め
ら れ 、 さ ら に 、 13分 の と こ ろ に 452.2 nm、 477.6 nmの 吸 収 極 大 を 持 つ 物 質 が 認 め ら れ た (
図 6、 矢 印 で 示 さ れ て い る ) 。 た だ し 、 変 換 産 物 の 量 は 少 な か っ た 。 こ れ ら は ゼ ア キ サ ン
チ ン で あ る 可 能 性 も あ る た め 、 pACCRT25Δ crtX由 来 の ゼ ア キ サ ン チ ン を 主 成 分 と す る ア セ
ト ン 抽 出 物 と 混 合 し 、 co-HPLCを 行 っ た 。 そ の 結 果 、 こ れ ら 2 つ の ピ ー ク は ゼ ア キ サ ン チ
ン ( 保 持 時 間 : 10.6分 ) の ピ ー ク と は 重 な ら な か っ た の で ( 図 6c) 、 こ れ ら の 2つ の 変 換
産 物 は 、 ゼ ア キ サ ン チ ン と 異 な る 物 質 で あ る こ と が わ か っ た 。 保 持 時 間 11分 と 13分 の カ ロ
テ ノ イ ド は 、 そ れ ぞ れ 、 β ,β -カ ロ テ ン -2,2’ -ジ オ ー ル ( β ,β -carotene-2,2’ -diol;
2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β -カ ロ テ ン ) 、 及 び 、 β ,β -カ ロ テ ン -2-オ ー ル ( β ,β -caroten-2
-ol; 2-ヒ ド ロ キ シ -β -カ ロ テ ン ) で あ る と 考 察 さ れ た ( 図 10参 照 ) 。
【0103】
ORF11の 融 合 発 現 用 プ ラ ス ミ ド pUCBre-O11( lacZ::SD212-ORF11) を 、 pACCAR25Δ crtXを
有 す る ゼ ア キ サ ン チ ン 産 生 大 腸 菌 ( DH5α ) に 導 入 し た 株 の 色 素 抽 出 液 で は 、 10.6分 の 保
持 時 間 に ゼ ア キ サ ン チ ン (451 nm、 480 nm)の 存 在 が 認 め ら れ 、 そ れ 以 外 に 新 た な ピ ー ク
と し て 、 9.1分 の と こ ろ に 451.0 nm、 478.8 nmの 吸 収 極 大 を 持 つ 物 質 1が 認 め ら れ 、 ま た 、
9.9分 に 452.2 nm、 477.6 nmの 吸 収 を 持 つ 物 質 2の ピ ー ク が 観 察 さ れ た ( 図 7、 矢 印 で 示 さ
れ て い る ) 。 カ ロ テ ノ イ ド 1 及 び 2 は そ れ ぞ れ 、 ノ ス ト キ サ ン チ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ
ゼ ア キ サ ン チ ン ) 、 及 び 、 カ ロ キ サ ン チ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) で あ る と 同 定
さ れ た ( 図 10、 実 施 例 13参 照 ) 。 以 上 の 結 果 は 、 ORF11が コ ー ド す る 遺 伝 子 産 物 は β -イ オ
ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ ( β -C2-hydroxylase; 2,2’ -β - hydroxylase) で あ り 、 β カ ロ テ ン や ゼ ア キ サ ン チ ン に お け る β -イ オ ノ ン 環 上 の 2位 の 炭 素 に 水 酸 基 を 導 入 で き る 酵
素であることを示している。
【0104】
次 に 、 β -イ オ ノ ン 環 の 4位 に ケ ト 基 を 導 入 す る 酵 素 遺 伝 子 を 保 持 す る プ ラ ス ミ ド pAC-Ca
ntha を 有 す る カ ン タ キ サ ン チ ン 産 生 大 腸 菌 ( DH5α ) に プ ラ ス ミ ド pUCBre-O11( lacZ::SD
212-ORF11) を 導 入 し 、 実 施 例 11で 示 し た 方 法 で 色 素 分 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 保 持 時 間 1
0.7分 に カ ン タ キ サ ン チ ン の ピ ー ク が 認 め ら れ 、 高 極 性 側 に 保 持 時 間 4.7分 の 物 質 3、 保 持
時 間 8.7分 の 物 質 4の 2 つ の ピ ー ク が 認 め ら れ た ( 図 8、 矢 印 で 示 さ れ て い る ) 。 そ れ ぞ れ
の 極 大 吸 収 波 長 は そ れ ぞ れ 、 478 nm、 474 nmで あ り 、 そ れ ら の 波 形 は β -イ オ ノ ン 環 の 共
役系にケト基を有するカロテノイドに見られる典型的な一山形の波形を示す物質の存在が
示 さ れ た 。 ま た 、 ア ス タ キ サ ン チ ン ( 保 持 時 間 6.6分 前 後 ) と の co-HPLCの 結 果 に よ り こ れ
ら の ピ ー ク は ア ス タ キ サ ン チ ン で な い こ と が 確 認 さ れ た ( 図 8c) 。 カ ロ テ ノ イ ド 3及 び 4は
そ れ ぞ れ 、 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン
タ キ サ ン チ ン ) 、 及 び 、 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2-ヒ ド ロ キ シ カ ン
タ キ サ ン チ ン ) で あ る と 同 定 さ れ た ( 図 10、 実 施 例 13参 照 ) 。
【0105】
最 後 に 、 プ ラ ス ミ ド pAC-Asta を 有 す る ア ス タ キ サ ン チ ン や ア ド ニ キ サ ン チ ン 産 生 大 腸
菌 ( DH5α ) に プ ラ ス ミ ド pUCBre-O11( lacZ::SD212-ORF11) を 導 入 し 、 実 施 例 11で 示 し た
方 法 で 色 素 分 析 を 行 っ た ( 図 9) 。 そ の 結 果 、 保 持 時 間 6.4∼ 6.7分 に ア ス タ キ サ ン チ ン の
ピ ー ク が ま た 、 保 持 時 間 8.4∼ 8.6分 の と こ ろ に ア ド ニ キ サ ン チ ン の ピ ー ク が 観 察 さ れ た 。
ま た 、 保 持 時 間 5.1∼ 5.2分 の ア ス タ キ サ ン チ ン よ り 高 極 性 側 に 475 nmの 吸 収 極 大 を 示 す 、
β -イ オ ノ ン 環 の 共 役 系 に ケ ト 基 を 有 す る カ ロ テ ノ イ ド に 見 ら れ る 典 型 的 な 一 山 形 の 波 形
を 示 す 物 質 5の 存 在 が 示 さ れ た ( 図 9、 矢 印 で 示 さ れ て い る ) 。 カ ロ テ ノ イ ド 5は 、 2-ヒ ド
ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン で あ る と 同 定 さ れ た ( 図 2、 実 施 例 13参 照 ) 。 ま た 、 以 上 の 結 果
よ り 、 ORF11の コ ー ド す る 遺 伝 子 産 物 β -イ オ ノ ン 環 -2-ヒ ド ロ キ シ ラ ー ゼ は 、 他 の カ ロ テ
ノイド生合成酵素のように基質特異性が低い(広い)ことが明らかとなった。
(55)
JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
【0106】
〔 実 施 例 13〕 ORF11に よ る 変 換 さ れ た 色 素 の 同 定 ( 既 知 物 質 )
pUCBre-O11及 び pACCAR25Δ crtXを 導 入 し た 大 腸 菌 を 2 L( リ ッ ト ル ) の 2xYT培 地 で 培 養
し 、 8,000 rpmで 10分 間 遠 心 す る こ と に よ り 、 菌 体 を 集 め た 。 菌 体 を STE緩 衝 液 ( 実 施 例 3
参 照 ) で 懸 濁 し 、 8,000 rpmで 10分 間 遠 心 す る こ と に よ り 、 再 度 、 菌 体 を 集 め た 。 菌 体 に
ア セ ト ン − メ タ ノ ー ル ( 1: 1) 400 mlを 加 え て 1 時 間 撹 拌 し た 。 濾 過 後 、 濾 液 を 減 圧 濃 縮
し 、 267 mgの 抽 出 物 を 得 た 。 こ れ を シ リ カ ゲ ル -60( 15 g ) カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー で
分 離 し た 。 溶 媒 は ヘ キ サ ン − 酢 酸 エ チ ル ( 8: 2) ( 7: 3) ( 6: 4) お よ び ( 1: 1) 各 100
mlで 順 次 溶 出 し 、 着 色 し た 3 フ ラ ク シ ョ ン を 得 た 。 1 つ は ゼ ア キ サ ン チ ン で あ っ た の で 、
1
残 り の 2フ ラ ク シ ョ ン の 同 定 を 行 っ た 。 同 定 は HPLC-PDA-MS分 析 、 H-NMR分 析 に よ り 行 っ た
。 HPLC-PDA-MS分 析 は 、 PDA( フ ォ ト ダ イ オ ー ド ア レ ィ ) 検 出 器 付 き セ ミ ミ ク ロ HPLCシ ス テ
ム と し て 資 生 堂 製 Nano Space SI-2を 用 い 、 こ れ に サ ー モ ク エ ス ト ( ThermoQuest) 社 製 イ
オ ン ト ラ ッ プ 型 質 量 分 析 装 置 LCQ advantageシ ス テ ム を 接 続 し た 機 器 を 用 い て 行 っ た 。 カ
ラ ム は C30 カ ラ ム で あ る 野 村 化 学 社 製 Deverosil C30-UG-3( 1.0 mm i.d. × 150 mm) を
用 い 、 プ レ カ ラ ム と し て Deverosil C30-UG-Sを 用 い た 。 溶 出 条 件 と し て 、 0.1 ml/min の
流 速 で 、 96% メ タ ノ ー ル ( A) で 12分 、 Aか ら tert-メ チ ル ブ チ ル エ ー テ ル ( TMBE) ( B) へ
の グ ラ ジ エ ン ト ( B: 0-60%、 12∼ 72分 ) 、 そ の ま ま の 状 態 で 72∼ 82分 溶 出 し た 。 MSは 大 気
1
圧 化 学 イ オ ン 化 法 ( APCI) に よ り 検 出 し た 。 H-NMRは バ リ ア ン 社 製 INOVA750シ ス テ ム を 用
いて重クロロホルム中で測定した。
【0107】
+
HPLC-PDA-MS分 析 ( 保 持 時 間 ( RT) 13.48分 、 λ max 449, 475 nm、 m/z 601 [M+H] 、 583
[M+H-H2 O]
+
、 565[M+H-2H2 O]
、 567[M+H-H2 O]
+
+
、 及 び 、 RT 17.75分 、 λ max 450, 476 nm、 m/z 585[M+H]
+
1
) 、 H-NMR分 析 の 結 果 、 上 記 の 2 つ の フ ラ ク シ ョ ン に 存 在 す る カ ロ テ ノ
イ ド は そ れ ぞ れ 、 ノ ス ト キ サ ン チ ン ( nostoxanthin;2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン
) 、 及 び 、 カ ロ キ サ ン チ ン ( caloxanthin; 2-ヒ ド ロ キ シ ゼ ア キ サ ン チ ン ) で あ る と 同 定
さ れ た ( Buchecker, R., Liaaen-Jensen, S., Borch, G., Siegelman, H. W., Carotenoi
ds of blue-green algae. Part 9. Carotenoids of Anacystis nidulans, structures of
caloxanthin and nostoxanthin. Phytochemistry 15, 1015-1018, 1976) ( 図 10参 照 )
。
【0108】
1
以 下 に 、 H-NMRデ ー タ ( δ ppm、 か っ こ 内 は 水 素 数 、 多 重 度 、 結 合 定 数 ) を 示 す 。 ノ ス
ト キ サ ン チ ン : 1.01(6H, s), 1.14(6H, s), 1.72(6H, s), 1.98-1.99(12H, s), 2.15(2H,
dd, J=17.4, 10.0Hz), 2.49(2H, dd, J=17.4, 6.7Hz), 3.33(2H, d, J=10.0Hz), 3.84(2
H, dt, J=6.7, 10.0Hz,), 6.0-6.7(14H, m)、 カ ロ キ サ ン チ ン : 1.01(3H, s), 1.08(6H, s
), 1.14(3H, s), 1.49(1H, t, J=12.0Hz), 1.72(3H, s),
1.75(3H, s), 1.80(1H, m), 1
.98-1.99(12H, s), 2.05(1H, dd, J=17.4, 10.5Hz), 2.15(1H, dd, J=17.4, 10.0Hz), 2.
40(1H, dd, J=17.4, 6.3 Hz), 2.49(1H, dd, J=17.4, 6.7Hz), 3.33(1H, d, J=10.0 Hz),
3.84(1H, dt, J=6.7, 10.0 Hz), 4.01(1H, m), 6.0-6.7(14H, m)。
【0109】
pUCBre-O11及 び pAC-Astaを 導 入 し た 大 腸 菌 を 2 Lの 2xYT培 地 で 培 養 し 、 8,000 rpmで 10分
間 遠 心 す る こ と に よ り 、 菌 体 を 集 め た 。 菌 体 を STE緩 衝 液 ( 実 施 例 3参 照 ) で 懸 濁 し 、 8,00
0 rpmで 10分 間 遠 心 す る こ と に よ り 、 再 度 、 菌 体 を 集 め た 。 菌 体 に ア セ ト ン − メ タ ノ ー ル
( 1: 1) 400 mlを 加 え て 1 時 間 撹 拌 し た 。 濾 過 後 、 濾 液 を 減 圧 濃 縮 し 、 27 mgの 抽 出 物 を
得 た 。 こ れ を シ リ カ ゲ ル − 60( 15 g) カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー で 分 離 。 溶 媒 は ヘ キ サ ン
− 酢 酸 エ チ ル ( 7: 3) ( 6: 4) お よ び ( 1: 1) 各 100 mlで 順 次 溶 出 し 、 着 色 し た 3フ ラ ク
ションを得た。2つはアスタキサンチン及びアドニキサンチンであったので、残り1フラ
ク シ ョ ン の 同 定 を 行 っ た 。 HPLC-PDA-MS分 析 ( RT 11.98 分 、 λ max 473 nm、 m/z 613 [M+H
+
1
] ) 、 H-NMR分 析 に よ り 、 こ れ は 、 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン ( 2-hydroxyastaxanth
1
in) で あ る と 同 定 さ れ た ( 非 特 許 文 献 2) ( 図 2参 照 ) 。 以 下 に H-NMRデ ー タ を 示 す 。 1.22
(3H, s), 1.27(3H, s), 1.30(3H, s), 1.33(3H, s), 1.82(1H, m ), 1.96(6H, s), 1.98-
(56)
JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
2.01(12H, s), 2.17(1H, bm), 3.53(1H, m), 4.19(1H, m), 4.33(1H, m), 6.2-6.7(14H,
m)。 今 回 は 2,3,2’ ,3’ -テ ト ラ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,3,2’ ,3’ tetrahydroxy-β ,β -carotene-4,4’ -dione; 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン ) の
確認には至らなかったが、培養条件の工夫等により、これを得ることも可能であるはずで
ある。
【0110】
〔 実 施 例 14〕 ORF11に よ る 変 換 さ れ た 色 素 の 同 定 ( 新 規 物 質 )
pUCBre-O11及 び pAC-Canthaを 導 入 し た 大 腸 菌 を 2リ ッ ト ル の 2xYT培 地 で 培 養 し 、 8,000 r
pmで 10分 間 遠 心 す る こ と に よ り 、 菌 体 を 集 め た 。 菌 体 を STE緩 衝 液 ( 実 施 例 3参 照 ) で 懸 濁
し 、 8,000 rpmで 10分 間 遠 心 す る こ と に よ り 、 再 度 、 菌 体 を 集 め た 。 菌 体 に ア セ ト ン -メ タ
ノ ー ル ( 1: 1) 400 mlを 加 え て 1 時 間 撹 拌 し た 。 濾 過 後 、 濾 液 を 減 圧 濃 縮 し 、 85 mgの 抽
出 物 を 得 た 。 こ れ を シ リ カ ゲ ル -60( 15 g ) カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー で 分 離 し た 。 溶 媒
は ヘ キ サ ン − 酢 酸 エ チ ル ( 8: 2) ( 7: 3) お よ び ( 1: 1) 各 100 mlで 順 次 溶 出 し 、 着 色 し
た 3フ ラ ク シ ョ ン を 得 た 。 1 つ は カ ン タ キ サ ン チ ン で あ っ た の で 、 残 り の 2フ ラ ク シ ョ ン の
+
同 定 を 行 っ た 。 HPLC-PDA-MS分 析 ( RT 9.30分 、 λ max 472 nm、 m/z 597.2 [M+H] 、 及 び 、
+
1
RT 17.62 分 、 λ max 474 nm、 m/z 581.2 [M+H] ) 、 高 分 解 ( HR) FABMS分 析 、 Hな ら び に
各 種 二 次 元 NMR分 析 に よ り 、 こ れ ら は 、 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ
ン ( 2,2’ -dihydroxy-β ,β -carotene-4,4’ -dione; 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ
ン 、 新 規 化 合 物 ( I) ) 、 及 び 、 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2-hydroxy
-β ,β -carotene-4,4’ -dione; 2-ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) で あ る と 同 定 さ れ た (
図 10参 照 ) 。
【0111】
【化2】
【0112】
1
以 下 に 、 HRFABMS分 析 デ ー タ と H-NMRデ ー タ を 示 す 。 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン
+
-4,4’ -ジ オ ン : HRFABMS (m/z, [M] )、 計 算 値 596.3866(C4 0 H3 2 O4 )、 実 測 値 596.3863
1
、 H NMR(750MHz、 重 ク ロ ロ ホ ル ム 中 、 δ ppm)、 1.22(6H, s), 1.26(6H, s), 1.89(6H, s
), 2.00-2.02(12H, s), 2.62(2H, dd, J=17.4, 9.0Hz), 2.80(2H, dd, J=17.4, 4.5Hz),
3.90(2H, dd, J=9.0, 4.5Hz), 6.2-6.7(14H, m)。 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ +
ジ オ ン : HRFABMS(m/z, [M] )、 計 算 値 580.3916(C4 0 H3 2 O3 ), 実 測 値 580.3900、
1
H NMR
、 1.21(6H, s), 1.22(3H, s), 1.26(3H, s), 1.85(2H, t, J=7.0Hz), 1.89(3H, s), 1.90
(3H, s), 2.00-2.02(12H, s), 2.51(2H, t), 2.62(1H, dd, J=17.4, 9.0Hz), 2.8(1H, dd
, J=17.4, 4.5Hz), 3.90(1H, dd, J=9.0, 4.5Hz), 6.2-6.7(14H, m)。
【0113】
カ ン タ キ サ ン チ ン の 2( 2’ ) 位 の 両 方 の 炭 素 に 水 酸 基 が 導 入 さ れ た 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ
-β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン は 上 述 の と お り 自 然 界 で 未 だ 発 見 さ れ て い な い 新 規 化 合 物
で あ る が 、 片 方 に の み 水 酸 基 が 導 入 さ れ た 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン も
甲 殻 類 の 一 種 で あ る Daphinia magnaか ら 単 離 さ れ た と い う 報 告 が あ る の み で 、 微 生 物 に よ
り 生 産 さ れ た も の は こ れ が 初 め て で あ る ( Partali, V., Olsen, Y., Foss, P., Liaaen-J
ensen, L., Carotenoids in food chain studies-I. Zooplankton (Daphnia magna) resp
(57)
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onse to a unialgal (Scenedesmus acutus) carotenoid diet, to spinach, and to yeas
t diets supplemented with individual carotenoids. Comp. Biochem. Physiol., 82B(4
), 767-772, 1985;
Foss, P., Partali, V., Olsen, Y., Borch, G., Liaaen-Jensen, S
., Animal carotnoids 29. New (2R)-2-hydroxy-4-keto-β -type carotenoids from Daph
nia magna (Crustaceae). Acta Chemica Scandinavica B40,157-162, 1986) 。
【0114】
〔 実 施 例 15〕 in vitro抗 過 酸 化 活 性 の 測 定
各種カロテノイドにおける種々の生理活性作用は多様であるが、活性酸素による生体内
脂 質 の 過 酸 化 を 抑 制 す る 活 性 が そ の 基 本 で あ る と 考 え ら れ る 。 し た が っ て 、 実 施 例 14で 合
成された2つのカロテノイドを用いて、フリーラジカルにより引き起こされる脂質過酸化
の in vitro抑 制 効 果 を 、 ラ ッ ト 脳 ホ モ ジ ネ ー ト を 用 い て 調 べ た 。 こ の ア ッ セ イ は 、 基 本 的
に K uboら の 方 法 に 準 拠 し て 行 っ た (Kubo, K., Yoshitake, Y., Kumada, K., Shuto K.,
Nakamizo, N. Radical scavenging action of flunarizine in rat brain in vitro. Arc
h. Int. Pharmacodyn. Ther. 272, 283-295, 1984)。 100 m Mリ ン 酸 緩 衝 液 ( pH7.4) 0.6
ml中 に 、 被 検 試 料 の メ タ ノ ー ル 溶 液 0.05 ml、 1 m Mア ス コ ル ビ ン 酸 0.1 ml( 最 終 濃 度 100
μ M) 、 及 び H2 O 0.05 mlを 添 加 し 、 37℃ で 5分 間 の プ レ イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン を 行 っ た 後 、
2.5% ( w/v) ラ ッ ト 脳 ホ モ ジ ネ ー ト を 0.2 ml添 加 す る こ と で 反 応 を 開 始 さ せ 、 37℃ で 1時
間 、 振 盪 し な が ら イ ン キ ュ ベ ー ト を 行 っ た 。 20% ( w/v) ト リ ク ロ ロ 酢 酸 、 0.5% ( w/v) 2
-チ オ バ ル ビ ツ ー ル 酸 、 及 び 0.2 N塩 酸 を 含 む 混 合 液 1 mlを 上 記 反 応 液 に 添 加 す る こ と で 反
応 を 停 止 し た 。 こ れ を 100℃ で 30分 間 煮 沸 処 理 し て 発 色 さ せ 、 冷 却 後 、 3000 rpmで 5分 間 遠
心 分 離 し た 。 遠 心 分 離 上 清 の 532 nmで の 吸 光 度 ( A5 3 2 ) を 測 定 し た 。 被 検 試 料 添 加 群 の A5
3 2
が 、 被 検 試 料 無 添 加 群 の A5 3 2 と 比 べ 半 分 低 下 す る の に 必 要 な 被 検 試 料 濃 度 を IC5 0 と し て
算出し、これをラット脳ホモジネートにおける脂質過酸化抑制作用とした。本実験結果を
表 4に 示 す 。 表 4か ら 明 ら か な よ う に 、 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2-ヒ
ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) 及 び 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン ( 2,
2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ カ ン タ キ サ ン チ ン ) は 、 脂 質 の 過 酸 化 に 対 し て 強 い 抑 制 効 果 を 持 つ こ と
が示された。特に後者の新規物質は、強力な脂質の過酸化の抑制作用を示した。
【0115】
【表4】
【0116】
本 明 細 書 は 、 本 願 の 優 先 権 の 基 礎 で あ る 日 本 国 特 許 出 願 ( 特 願 2003-388165号 及 び 特 願 2
004-165919号 ) の 明 細 書 お よ び / ま た は 図 面 に 記 載 さ れ て い る 内 容 を 包 含 す る 。 ま た 、 本
発明で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり
入れるものとする。
【図面の簡単な説明】
(58)
JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
【0117】
【図1】既存のカロテノイド生合成遺伝子(酵素)の機能と生合成経路を表す図。
【 図 2 】 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 が 生 産 す る カ ロ テ ノ イ ド の 種 類 と そ れ ら の カ ロ テ
ノイドの推定合成経路を表す図。
【 図 3 】 crtI断 片 を プ ロ ー ブ と し て 用 い た サ ザ ン ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン ( EcoRI消 化 )
の 結 果 を 表 す 図 〔 M: サ イ ズ マ ー カ ー ( λ /Hind III-φ X174/HaeIII digest) 、 5-1∼ 10-1
: コ ス ミ ド ク ロ ー ン 、 SCS: コ ス ミ ド ベ ク タ ー SuperCos1、 SD212: SD-212染 色 体 DNA〕 。
【 図 4 】 crtI断 片 を プ ロ ー ブ と し て 用 い た サ ザ ン ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン ( BamHI及 び Bam
HI/EcoRI消 化 ) の 結 果 を 表 す 図 。 〔 M: サ イ ズ マ ー カ ー ( λ /Hind III-φ X174/HaeIII dig
est) 、 5-2∼ 9-1: コ ス ミ ド ク ロ ー ン 、 SD212: SD-212染 色 体 DNA、 SCS: コ ス ミ ド ベ ク タ ー
SuperCos1の BamHI/EcoRI消 化 物 〕
【 図 5 】 ブ レ バ ン デ ィ モ ナ ス 属 SD-212株 の カ ロ テ ノ イ ド 生 合 成 遺 伝 子 群 ( 12kb-EcoRI断 片
)の構造を表す図。
【 図 6 】 pACCAR16Δ crtX( β -カ ロ テ ン 生 産 用 プ ラ ス ミ ド ) 導 入 大 腸 菌 を 宿 主 と し て 利 用
し た HPLC-PDA分 析 結 果 を 表 す 図 。 a)pACCAR16Δ crtX導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLCク ロ マ ト
グ ラ ム ( 470 nm) 。 b) pUCBre-O11及 び pACCAR16Δ crtX導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLCク ロ
マ ト グ ラ ム ( 470 nm) 。 新 規 な 色 素 の ピ ー ク は 矢 印 で 示 さ れ て い る 。 c) b)に ゼ ア キ サ ン
チ ン を 添 加 し た HPLCク ロ マ ト グ ラ ム ( 470 nm) 。
【 図 7 】 pACCAR25Δ crtX( ゼ ア キ サ ン チ ン 生 産 用 プ ラ ス ミ ド ) 導 入 大 腸 菌 を 宿 主 と し て 利
用 し た HPLC-PDA分 析 結 果 を 表 す 図 。 a) pACCAR25Δ crtX導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLCク ロ
マ ト グ ラ ム ( 470 nm) 。 b) pUCBre-O11及 び pACCAR25Δ crtX導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLC
ク ロ マ ト グ ラ ム ( 470 nm) 。 新 規 な 色 素 の ピ ー ク は 矢 印 で 示 さ れ て い る 。 c) b)に ゼ ア キ
サ ン チ ン を 添 加 し た HPLCク ロ マ ト グ ラ ム ( 470 nm) 。 1、 2 は そ れ ぞ れ 、 ノ ス ト キ サ ン チ
ン、カロキサンチンと同定された。
【 図 8 】 pAC-Cantha( カ ン タ キ サ ン チ ン 生 産 用 プ ラ ス ミ ド ) 導 入 大 腸 菌 を 宿 主 と し て 利 用
し た HPLC-PDA分 析 結 果 を 表 す 図 。 a) pAC-Cantha導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLCク ロ マ ト グ
ラ ム ( 470 nm) 。 b) pUCBre-O11及 び pAC-Cantha導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLCク ロ マ ト グ
ラ ム ( 470 nm) 。 新 規 な 色 素 の ピ ー ク は 矢 印 で 示 さ れ て い る 。 c) b)に ア ス タ キ サ ン チ ン
を 添 加 し た HPLCク ロ マ ト グ ラ ム ( 470 nm) 。 3、 4は そ れ ぞ れ 、 2,2’ -ジ ヒ ド ロ キ シ -β ,β
-カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン 、 及 び 、 2-ヒ ド ロ キ シ -β ,β -カ ロ テ ン -4,4’ -ジ オ ン で あ る と 同
定された。
【 図 9 】 pAC-Asta( ア ス タ キ サ ン チ ン 生 産 用 プ ラ ス ミ ド ) 導 入 大 腸 菌 を 宿 主 と し て 利 用 し
た HPLC-PDA分 析 結 果 を 表 す 図 。 a) pAC-Asta導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLCク ロ マ ト グ ラ ム
( 470 nm) 。 b) pUCBre-O11及 び pAC-Asta導 入 大 腸 菌 の 産 生 色 素 の HPLCク ロ マ ト グ ラ ム ( 4
70 nm) 新 規 な 色 素 の ピ ー ク は 矢 印 で 示 さ れ て い る 。 2は 2,3,2’ ,3’ -テ ト ラ ヒ ド ロ キ シ β ,β -カ ロ テ ン -4-オ ン と 同 定 さ れ た 。 c) b)に ア ス タ キ サ ン チ ン を 添 加 し た HPLCク ロ マ ト
グ ラ ム ( 470 nm) 。 5は 2-ヒ ド ロ キ シ ア ス タ キ サ ン チ ン と 同 定 さ れ た 。
【図10】組換え大腸菌が生産するカロテノイドの種類とそれらのカロテノイドの推定合
成経路を表す図。
(59)
【国際調査報告】
JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
(60)
JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
(61)
JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
(62)
JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
(63)
JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
(64)
JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
(65)
JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
(66)
JP WO2005/049643 A1 2005.6.2
フロントページの続き
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
C07C 403/24
A61K 31/122
(2006.01)
(2006.01)
C07C 403/24
4H006
A61K 31/122
A61P 35/00
(2006.01)
A61P 35/00
A61P 29/00
(2006.01)
A61P 29/00
101 A61P 19/10
(2006.01)
A61P 19/10
(81)指定国 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),
EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,
CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,
CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,L
V,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW
(72)発明者 志津里 芳一
岩手県釜石市平田第3地割75番地1 株式会社海洋バイオテクノロジー研究所内
(72)発明者 米虫 節夫
大阪府大阪市東淀川区東淡路4−27−2
(72)発明者 三沢 典彦
岩手県釜石市平田第3地割75番地1 株式会社海洋バイオテクノロジー研究所内
Fターム(参考) 4B024 AA03 BA08 BA10 CA03 CA05 DA06 EA03
4B050 CC03 DD02 LL05
4B064 AH01 CA19 CC24 DA16
4B065 AA01Y AA26X AB01 BA02 CA28 CA29 CA52
4C206 AA01 AA04 CB25 MA01 MA04 NA20 ZA97 ZB15 ZB26
4H006 UC12 UC21 UC22
(注)この公表は、国際事務局(WIPO)により国際公開された公報を基に作成したものである。なおこの公表に
係る日本語特許出願(日本語実用新案登録出願)の国際公開の効果は、特許法第184条の10第1項(実用新案法
第48条の13第2項)により生ずるものであり、本掲載とは関係ありません。