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KIIS Vol. 122 目 次
● 特集テーマ「IT革命による経済の再生」
●
ITサービス市場における課題と対応
((財)関西情報・産業活性化センター 記念講演会 講演録)
経済産業省情報処理振興課 課長
●
木村 雅昭………… 1
真のIT経営を目指す ーKIIS/教育普及事業のご紹介ー
財団法人 関西情報・産業活性化センター 教育普及事業部………………………………………… 11
◇KIIS事業活動◇
●
先進的iDC研究会
●
自治体の情報化と情報通信インフラの整備に関するアンケート調査
●
大阪府のIT戦略について 大阪府 知事
財団法人 関西情報・産業活性化センター 調査事業部……………………………………………… 14
財団法人 関西情報・産業活性化センター 調査事業部……………………………………………… 15
太田 房江………… 18
(行政・地域情報化フォーラム「e-Kansai戦略」シンポジウム 特別講演録)
●「関西グリーン電力基金」について
財団法人 関西情報・産業活性化センター 地域振興事業部
原 吉平………… 22
◇シリーズ賛助会員紹介コーナー◇
●
ニッセイ情報テクノロジー株式会社………………………………………………………………………… 24
◇シリーズ研究員コーナー◇
●
小さなサロンで共創による温故創新を
財団法人 関西情報・産業活性化センター 地域振興事業部 主席研究員
平塚 伸治………… 26
特集テーマ「IT革命による経済の再生」
多くの企業経営者が抱える経営課題といえば、新規顧客開拓や販路拡大といった営業力強化や、調達
コスト削減、納期短縮等による生産性向上であり、その実現に最も有効な手段がITの活用であるとい
うことも、ITブームの頃からしばしば語られてきました。
ところが、ITバブルがはじけ、IT投資に見合う効果が得られるのかとか、IT化によるメリット
がよくわからなくて懐疑的になっている経営者が、特に関西では増えているようです。
一方で、積極的なIT投資をして、期待通りの効果を上げた企業も着実に増えているのも事実で、成
功した企業は、商品企画・開発/設計・生産/営業・販売等様々なビジネスプロセスでの改善/改革を
積み重ねた結果であろうと思われますが、トップの強力なリーダーシップや、社内のキーマンの情報リ
テラシー向上が成功のポイントであるという場合が多いようです。
今回の特集は、情報サービス産業からの視点や政策的な対応だけではなく、ユーザー側の視点で、
様々な業種のIT投資の成功事例に対して、ビジネスプロセスのどの部分に重点的にIT投資をしたか
を明らかにして、わかりやすくご紹介していただいた経済産業省、木村課長さまのご講演の詳報と、社
内でキーマンとなっていただく方々に対して、ITの話題の最新技術/先行事例を詳しくご紹介するこ
となどにより、単なるITスキル向上ではなく、真の情報リテラシー向上を支援することを目指した、
幣財団の教育普及事業部で実施している各種セミナー等の事業をご紹介します。
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6月7日に、弊財団の新たなスタートを記念した講演会及び祝賀会を実施いたしました。第一部の講演会では、経
済産業省の木村課長様に、景気の低迷状態が続いている今こそITを活用すべきだというような、様々な示唆に富ん
だご講演をいただきましたので、詳しくご紹介いたします。
(財)関西情報・産業活性化センター記念講演会より
「ITサービス市場における課題と対応
−IT革命による経済の再生」
経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課長 木村 雅昭
“ITブーム”の後、“IT不況”という言葉が登
場しましたが、今こそ製造業をはじめとする日本の産
2.戦略的IT投資による日本経済再生・産業 競争力強化
業競争力、中国の追い上げ等もありますが、教育にせ
このようにこの1年、ブロードバンド化ということ
よ行政にせよITで経済システム全体の効率性を上げ
と並行してITの利用というものが個人でも産業分野
ていくことが重要ではないかと考えます。
でも進んできているということがわかります。ところ
さらに、日本のIT産業、特にソフトサービス産業
が日本経済全体を見ると景気の回復というのが遅れて
の現状と、どういう脆弱性があってどのような政策的
おりまして、5月に月例経済報告で景気の底入れ宣言
な対応が必要なのかというあたりについて、触れてみ
というものがありましたがなかなか本格的に回復しな
たいと思います。
い。そういう中でインターネットの普及あるいは先ほ
ど申し上げたブロードバンド化というある意味でIT
1.IT化の進展
化のインフラが順に整ってきているわけであり、これ
IT化の進展ということでいくつかの指標を紹介さ
からまさに産業分野で戦略的なIT投資ということを
せていただきます。“IT不況”という言葉で、IT
行うべきではないか。その点、特にまだまだアメリカ
の熱が冷めるような感じがありますが、実体は個人の
に比べてその余地があるのではないか。その意味でIT
生活あるいは企業、行政における、ITの利用という
を使って産業競争力ができる余地があるということを
ことは着実にこの1年で進んできていると思います。
紹介したいと思います。
まず、インターネットの普及率は、3年前には20%
これは今申し上げたことですが、私はこの表(図1)
そこそこでありまして、倍くらいになっております。
の左側のIT供給産業の中のコンテンツというのが一
次はブロードバンドの加入者数なんですが、DSL
部入っていてソフト担当でありますが、むしろIT利
とCATVがこの2年くらいに急速に増えたというこ
用産業、これは日本の産業の95%にあたり、製造業だ
とで世界のトップクラスに躍り出ているということに
けでなくエネルギーとか色々とありますが、ここをIT
なります。通信料金で見ても、個人利用の場合世界で
を使ってもっともっと競争力を強化する。それが景気
一番安いと言えると思います。
回復につながるし、しいてはリーディング・インダス
また電子商取引の市場規模でありますが、BtoBで
見ると2006年に125兆円と、全体の取引の中で電子商
取引率というものが現在の5∼6%から17∼18%にな
トリーであるIT供給産業の活性化につながるのでは
ないかと思っております。
次に、アメリカのIT投資の状況ですが、実は90、
ると言われております。それくらい電子商取引は成長
91、92年のアメリカの経済というのが非常に今の日本
してきているし、今後成長するだろうということです。
の状況に似ています。景気は非常に悪く、失業率はど
ここで申し上げたかったのは2000∼2001年の間も50%
んどん上がって、個別の産業競争力に色々な懸念が出
の伸びを示しているということでございます。
てきた。そのような中で、IT投資だけはプラスで、
1
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ITサービス市場における課題と対応−IT革命による経済の再生
ー経済システムの効率化
日本経済活性化
ー企業収益増
(景気浮揚/産業競争力強化)ー雇用変化(新規増-既存減)
・生産増=収益増
IT供給産業
・生産性向上=収益増
・新しいビジネス(各種ソリューションサービス、e-Learning等)
戦略的IT投資による
一石三鳥の効果
IT利用産業(製造業/サービス業等)
(ハード/ソフト/コンテンツ)
産業競争力強化
産業競争力強化
ー受発注取引コストの削減
ースピードの向上(迅速な製品投入、
短納期、在庫減)
ー顧客満足度の向上
−BtoB、BtoC
ー半導体R&D
ー政府調達制度改革
ー高度なIT人材育成
電電
子子
自政
治府
体・
教
育
アジア(含中国)の追い上げ
経済産業省 情報処理振興課
図1 戦略的IT投資による日本経済活性化・産業競争力強化
そのIT投資に引っ張られた形で非IT投資が盛り上
がってきて、それで90年代を通してアメリカの未曾有
IT投資の中身ですが、アメリカのIT投資ではE
の経済成長、経済発展というものが実現されたという
RPとかCRMとか、そういう戦略的な企業経営を合
ことです。
理化するようなIT投資というものが多く、パッケー
さらに、民間設備投資に占めるIT比率について、
ジソフトの導入率で見ると日本はアメリカのまだ半分
アメリカと日本で比較してみました。産業平均でアメ
くらいであります。ただ、この1年くらいで日本全国
リカはだいたい4割がIT投資で、日本は2割になり
で中堅、中小の色々な業種でERPとかCRMという
ます。平均自体は違うのですが、もっと特徴的なこと
IT投資は着実に増えてきていると思います。
は、色々な多くの業種でIT投資が活発であったとい
資本ストックに占めるIT資本の比率を比較しまし
うのがアメリカであります。日本の場合は平均の20%
た。アメリカが資本ストック全体の14%がIT資本で、
を超えているのがエレクトロニクス以外であると金
日本の場合は8%です。これは9∼10年くらい遅れて
融、保険、通信だけで、それ以外の産業のIT投資率
おります。これは実は麻生政調会長と話をした時に、
は非常に低い、逆に言えば日本の色々な製造業、ある
2005年に世界最高水準のIT社会を作るというのは
いはサービス業においてIT投資の余地があるという
e-Japan戦略で書いてあるが、そのためにはどのくら
ことになります。
いのペースでIT投資をしなければいけないのかとい
90年代アメリカの労働生産性を上げた原因の3分の
うご下問がありまして、今のアメリカの14%という比
2がITであったというアメリカ総務省のレポートが
率に2005年に追いつこうとすると、少なくとも毎年1割
あります。もう一つ特徴的なものはアメリカのIT投
くらい増やしていかないと今のアメリカの水準に追い
資というものはステディに、着実に伸びているのに対
つかないということになります。
して日本の場合は景気が良くなると上がるし、悪くな
2
ると下がるということです。
経済財政諮問会議とか色々な所で景気対策あるいは
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ITサービス市場における課題と対応−IT革命による経済の再生
産業競争力をどうするかという議論が半年くらい前か
るところのIT化、生産段階で資材調達のIT化と、
らありまして、研究開発税制、増加試験研究税制とい
色々なIT化がございます。いくつかの業種で先行事
うものがありますが、そこをもっと抜本的に拡充しよ
例というものを、要するに今申し上げた6つくらいの
うというのが産業界の方からも言われています。コスト
分類で特徴的なものを上げました。
を下げたりあるいはスピードの問題とか、あるいは販
(2)自動車:A社(図3)
売顧客の関係など、ITでもっと製造業が競争力を強
化しなければいけないのではないか、R&DとIT投
自動車A社は、ものすごく立派なIT化をされてい
資で企業革新をすることが大事ではないかということ
て今後数年間でトータル1兆円というような話が色々
で税制の提案もしております。
とありますが、有名なのは“看板方式”というもので、
こういう部品がこれだけ足りないということを看板に
3.主要産業別IT投資の先行事例
書いて、それを仕入れ先に持っていくということを昔
(1)IT投資の全体像
はトラックでやっていたようなのですが、それを電子
これは釈迦に説法になりますが、IT投資というの
化することで平均在庫日数というものを減らしたり、
にどういう先行事例があるのかをいくつかご紹介して
納期を削減したりしました。また、全世界の工場の状
おきます。IT投資と申しましても、(図2に)①②
況がリアルタイムで分かり、新しい商品、車の開発で
③とありますが人事、会計、販売、生産といった本社
すが、これをバーチャルでやることで開発期間が短縮
の基幹業務のIT化、それから商品の設計とか研究開
されています。このような方式を日本中が導入すると、
発段階のIT化、生産段階のIT化、受発注のIT化、
東京大学の藤本先生のおっしゃったことなんですが3割
実際にものを配送したり顧客情報をフィードバックす
は効率化するのではないかということです。
・収益率、顧客満足度向上のため、業務内容や工程を見直し、最適になるよう再設計した
うえで、組織や組織運営の原則を再構築すること。(BPR=Business Process Reengineering)
企業活動
企業活動
インプット
アウトプット
バックオフィス
人
I
T投資
I
T投資
本社
②
研究開発
①
金
物
・基幹業務
経理・販売・生産・人
事等の企業内の経営
資源を一元的にリアル
タイムで管理
効率化
・単純業務
I
T投資
・受発注
④
I
T投資
(ERP=Enterprise Resource Planning)
・原材料等の調達指示
⑥
販売
③
生産
I
T投資
流通(卸)
⑤
I
T投資
・顧客情報と応対履歴
等を共有、統合管理
物流
サービスの向上
(CRM=Customer Relationship Management)
・製造、販売、顧客に至るまでの全プロセスをネットワーク化、効率的に管理。
販売機会損失、不良在庫を解決、キャッシュフロー効率を向上。(SCM=Supply Chain Management)
経済産業省 情報処理振興課
図2 IT投資の全体図
3
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ITサービス市場における課題と対応−IT革命による経済の再生
(3)電気メーカー:B社(図4)
て、情報が行って、企画本社の企画と設計と研究開発
電気メーカーB社は、色々な取引先とデータを共有
の3つが同時並行的に新しい製品開発に取り組むとい
するなどして在庫調達コストを3割以上削減したりし
うことで、新製品の開発期間が14ヶ月から6ヶ月に短
ています。いわゆるCRMですね、顧客の情報を例え
縮されたということです。
ば携帯にカメラを付けるというニーズをITで踏まえ
企業
企業
インプット
IT投資
IT投資
本社
人
金
IT投資
②
研究開発
①
$
④
アウトプット
③
生産
販売
流通((卸
卸)
⑤
IT投資
IT投資
物流
物
⑥
IT投資
I
Tによる「電子かんばん」
I
Tによる経営情報の
リアルタイム化
・
I
Tによる設計情報の共有化
・バーチャル組立
従来のカンバン
取り付け
在庫不足の予想
仕入先
・人手が介在することによる非効率を排除
・持ち帰りデータ照合不必要&100%間違いなし
・遠距離の仕入先からの納入時間を短縮
アンドンとは、工場内のある部署に
問題があった時に知らせるシステム
電子カンバン
I
Tによりアンドン方式を経営に活用
!社長
!
かんばんデータ送信
在庫不足の発生
経営陣
受信機、印刷機
取り付け
!
新車開発期間の短縮
障害発生!
仕入先
障害発生!
24ヶ月→19ヶ月
納期(目標)
29日→19日
平均在庫日数
0.
7日→0.
5日
(参考)日本中の工場がA社方式を導入すれば、
3割は効率化する。
(藤本隆宏東京大学教授)
経済産業省 情報処理振興課
図3 自動車:A社
企業
企業
インプット
IT投資
IT投資
①
本社
人
金
IT投資
②
研究開発
$
④
アウトプット
③
生産
⑤
IT投資
販売
流通((卸
卸)
IT投資
物流
物
⑥
・
I
Tによる設計デザイン情報の共有化
研究・開発部門
新製品
IT投資
・取引先との情報データ
ベース共有及び迅速な指示
企業や
消費者
B社
顧客動向調査
・携帯にカメラをつけ差別化する
・デジカメはMP3との複合化
設計部門
本社企画部門
部品メーカー
反映させる
・
I
Tによる顧客
データの活用
新製品開発期間の短縮
(デジタルカメラ)
14ヶ月→6ヶ月
計測メーカー
新サービス
・消費者は若者が多いので信販
業務やファイナンスで販売促進
99年以降
○CDMA携帯
日本No.1
シェア19%
○デジタルカメラ
世界No.1
シェア30%
在庫及び調達コスト
30%以上削減
経済産業省 情報処理振興課
4
図4 電機メーカー:B社
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ITサービス市場における課題と対応−IT革命による経済の再生
(4)鉄鋼メーカー:C社(図5)
上しているということです。その結果、粗鋼の生産世
鉄鋼メーカーC社は、経営組織自身をフラット化さ
界一など、企業価値が増えたということです。
れたり、あるいは工場ごとの鉄の製品管理ではなくむ
(5)繊維:D社(図6)
しろ製品部門ごとに全体の最適化をITで管理するこ
とによって納期の短縮あるいは標準化して生産性の向
企業
企業
インプット
これは東大阪の中小企業D社は、100人くらいの会
IT投資
IT投資
②
研究開発
①
本社
人
金
$
④
IT投資
アウトプット
③
生産
販売
流通((卸
卸)
⑤
IT投資
IT投資
物流
物
⑥
IT投資
・
I
Tにより全体最適解を抽出
・
I
Tによる経営情報のリアルタイム化
(経営陣が直接生産現場データを管理)
C社
POSCO
A工場
B工場
2001年
C工場
工場毎の最適解→製品毎等の管理出来ず無駄が多い
○粗鋼の生産
世界1位
POSCO本社
C社
現場の生データ
現場の生データ
パ
イ
プ
3
ト
ン
I
Tにより調達等標準化→全体の最適解
H
鋼
2
ト
ン
○企業価値
5200億円増
粗
鋼
1
ト
ン
製品・部門毎の状況把握
経営のスピード化(フラット)
納 期 60日→15日
生産性の向上
標準化 193千項目→46千項目
7層構造→3層構造
経済産業省 情報処理振興課
図5 鉄鋼メーカー:C社
企業
企業
インプット
本社
人
IT投資
IT投資
①
金
IT投資
②
研究開発
$
④
アウトプット
③
生産
販売
⑤
IT投資
流通((卸
卸)
IT投資
物流
物
⑥
前:仮需に基づく生産→後:実需に基づく生産
・展示会で見込みで発注
・営業マンのサンプルで
追加で見込み発注
IT投資
小売店を直営・FC化、川下企業の情報共有化
D
社
ダン本社
D社
出入荷、在庫
受発注情報
販売情報等
協同組合
生産情報
在庫情報
受発注情報
導入前
・在庫が大量発生
→大量返品
・展示会を開催
・商品サンプルを持って
各小売店を訪問し、受注をとる
店頭POS情報等
小売店
・1足からの発注。
導入後 (1日2回発注する小売も)
・POSシステムで把握した
単品別の販売動向を見て
販売予測を行う。
・返品制度の廃止
小売り
(直営・FC店)
D社
入荷
糸商
受発注情報
在庫情報
染色工場・紡績工場
受発注情報、在庫情報、仕掛かり情報
ダン本社
本社
・展示会での注文廃止
・週次で発注・商品を売る人
でなく店が正しく運営されて
いるか指導する人に。
小売店
靴下製造工場
生産情報
POS情報
小売
製造工 場、糸商
品揃えの絞り込み
700品番→350品番
小売店への納品率UP
40%→60%→85%
残糸、残品の激減
50%→80%減
シーズン末の不良在庫の激減
発注から納品までの日数
90%減
不定→3日→1∼2日
納品までの日数短縮
14日→3日
経済産業省 情報処理振興課
図6 繊維:D社
5
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ITサービス市場における課題と対応−IT革命による経済の再生
社で、靴下の製造工場、あるいは糸とか染色など全部
午後で変えるなどメーカーに直接発注してそれがある
の取引先とコンピュータ化して受発注とか生産情報を
ところにメーカーから集められてE社のトラックが各
全部リアルタイムで把握し、今までは小売店で見込み
店舗を回るようになっています。また、小売店とメー
発注で大量の在庫を抱えながらやっていて、売れなけ
カーによるオリジナル商品を開発するなどしています。
れば返品するというやり方だったのをやめて1日に何
回か発注したり、1足ごとに発注したりすることで返
4.我が国情報サービス産業について
品制度を無くしました。したがって本社ベースでシー
(1)現状と課題
ズン末の不良在庫の削減は90%以上とか、納品までの
以上が先行的なIT投資の例ですが、このように
日数が14から3日に短縮されるなど非常に成果を上げ
色々なITユーザーがIT投資を活性化させるという
ております。
ことが一つ重要で、それと合わせてITの質を高める
必要がある。それを支えるのが情報サービス産業だろ
(6)小売り:E社(図7)
うと思います。本来、ここの部分が私の担当なんです
小売りE社は、9000店舗のうちの6割がもと酒屋さ
が、日本の情報サービス産業、ソフトウェア産業も含
んで、パートの方が多いので、パートの方が簡単に使
みますが、その現状とどのような課題があるのかをご
える情報端末を作って、店の中でこのパンが足りない
紹介させていただきます。
とか、アルバイトやパートの方が発注できるようにし
日本の情報サービス産業の売上高は増加している
ました。昔は例えばパン屋がトラックで運んできたも
が、ハードは、パソコンもそうですが価格がどんどん
のを置いていくというものでしたが、そうではなく各
下がっているので、ほとんど伸びておりません。物作
店舗から1品ごとに、例えばおでんの種類も午前中と
りは大事ではありますが、物からソフトサービスに付
企業
企業
インプット
IT投資
②
研究開発
①
本社
人
IT投資
IT投資
金
$
④
アウトプット
③
生産
⑤
IT投資
販売
流通((卸
卸)
IT投資
物
⑥
IT投資
・小売店舗主導のpu
l
l型システム
・小売店とメーカーによる
オリジナル商品の開発
メーカー
味
食品メーカーC社
麺
オリジナル
ラーメン
スープ
2800品目/1店
2億件の発注/1日
・248円/1個なのに2800万
食の販売(69億円の売上げ)
・焼きたてパンや弁当を中心に
オリジナル商品が4割。
大規模点に対抗できる
中小小売店の実現
約9000店舗
I T
6 割が元酒屋
・パート18万人が支える
・誰もが使える情報端末
店舗
I T
メール等で
情報共有
アイスクリームの工場
・冬に一括して一年分を生産
過去 ・大量の在庫を保有・
現在 ・店舗からの情報で受注生産。
・通年体制で効率性向上
ラーメンの事例
食品メーカーb社
・大規模店に対抗できる
中小小売店の実現
<生産ロスがない>
小規模店舗主導のpu
l
l型システム
小売店とメーカーによるオリジナル商品の開発
ラーメン
a店
物流
<品切れがない>
物流
<流通在庫がない>
おでん
・朝の仕入れは大根。
・夕方の仕入れはロールキャベツ。
アイスクリーム
・今日は20℃を越えるので、アイスクリームを多く発注。
・12月になったので、高級アイスクリームを多く発注。
飲み物
・明日は25℃を越えるのでジュースよりもお茶を多く発注。
I T
飲み物の事例
過去
・メーカー毎に別のトラックが配送
・1ケース単位(1ダース等)で配送
→ 一日70回が6回に
現在 ・一個単位で配送
・いろいろなメーカーの商品を一つの
トラックで配送
経済産業省 情報処理振興課
図7 小売り:E社
6
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ITサービス市場における課題と対応−IT革命による経済の再生
加価値が移ってきているということです。日本の企業
もう一つはITというのが、昔はコンピュータとい
もソフトサービス化の企業に変身していくんだという
うものは学術とか軍需とか企業の計算ということに使
方向性を明らかにしています。全体としてもそのよう
われていましたが、ITのフロンティアが色々な産業
な流れになっています。
分野で広がっていき、政府とか医療とか教育、そして
日本の情報サービス産業はちょっと変わったところ
個人の方に進んでいく。ITが使われる用途も経理人
がありまして、ソフトウェアの開発というのがだいた
事といったバックヤードからむしろフロントエンドの
い6割くらいです。アメリカなどは逆で、8割がパッ
報告とか決済の分野に出てきています。それに合わせ
ケージソフトになります。IT化がどんどん進行して
て技術的なパラダイムシフトが90年代後半から起き
いく中で、より安く、より早くということになると、
て、パソコン、インターネットというものが出てきて
パッケージソフトがもっと日本でも普及しなければい
います。このようなIT投資をいかに効果的にするか
けないし、そうなると思います。
がまさしく企業なり国の経済システムの競争力に関係
情報化投資の規模、マーケットで言うと、日本は世
してくるのではないかと思います。結局、どのような
界第2位17∼18%でアメリカはだいたい3割強だった
分野であろうが良質なIT投資がなされるような好循
と思います。次はドイツで数%で圧倒的にマーケット
環を作っていく必要があると思います。
は大きいのですが、90年以降は日本はIT投資が株価
この図(図8)は、IT投資のライフサイクルとあ
に反映されていません。何が言いたいかというと、結
りますが、ユーザーがBPR(ビジネス・プロセス・
局日本のIT投資というものは効果的に成されていな
リエンジニアリング)で経営を変える、あるいは業務
いのではないかという疑問が出てくるということなん
改革をすることがあって、それをどのようにITでや
です。
るか。ITの企画、調達の時にRFP(リクエスト・
BPRの欠如
経営戦略策定
よいRFPの欠如
曖昧な発注
戦略的情報化企画
情報化資源調達
曖昧な発注
システム開発
IT投資の
IT投資の
ライフサイクル
戦略のモニタリング
リソース(人、金)は
ここに集中
システム運用
顧客
経済産業省 情報処理振興課
図8 ITを巡る曖昧な受発注と市場構造
7
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ITサービス市場における課題と対応−IT革命による経済の再生
フォー・プロポーザル)を本来はユーザーがちゃんと
ITのオープン化。これはハードに依らないオープン
作って、それに合わせてベンダーがシステム開発をす
な技術が普及するという意味でのオープン化です。先
る。システム開発があって、システム運用があってそ
ほど見たようにITがどんどんフロントへ拡大してい
れを運用しながらフィードバックするのがライフサイ
く。さらにITの国際化です。そういう環境の中で従
クルなんですが、日本の場合は何が問題かと言うと、
来、大手ベンダーを中心に構成されていた市場が大き
BPRの経営とITのブリッジの認識が不十分で人手
く変化せざるを得ないのではないか。この変革期を乗
もない。結局ベンダー任せになっているということで
り越えるために、一つは先ほど申し上げましたがベン
す。ソフトエンジニア、IT技術者はどこにたまって
ダーもそうですしユーザーの方でも高度なIT人材が
いるかと言うと、下請け構造の中にIT技術者がいて、
必要になってくるということです。では人材が良けれ
それをもっと散らばらさなければいけないんです。ユ
ばいいのかと言うと、開発プロセスにおいても、これ
ーザーの経営とITがつながるところなど、そういう
は後ほど申し上げますが、原始的なやり方では良い成
意味では高度なIT人材をいかに育成していくかが本
果というものは、むしろ安全性とか信頼性ということ
当は重要になってきていると思います。
になると問題が出てくるのではないか。では人が良く
てプロセスが良ければそれで良いのかと言うと、やは
(2)政策的対応について
り技術が無ければ次の飯の種が出てこないということ
そういうことで、どのような視点で日ごろ政策を考
えているのか、展開しているのかを1枚のパワーポイ
で、人材とプロセスと技術が三位一体で取り組む必要
があるのではないかと思われます。
ント(図9)に示してみました。下の方から見ていた
ではどのような政策的な対応をしているかと言う
だくと、IT市場を取り巻く環境ということで一つは
と、一つは人材です。KIISにも色々ご指導していただ
社会を支えるソフトウエア基盤の確立
個人の生活の質の向上
企業収益の向上
効率的なIT投資と生産性の向上
人材育成
プロセス改善
技術開発
ソフトウエアプロセス改善を軸に総合的な取組み
ITのOpen化
ITサービスの国際化
ITフロンティアの拡大
経済産業省 情報処理振興課
図9 ITサービス業変革に向けたイニシアチブ
8
Vol.122 02.8.20 0:20 PM ページ 10
ITサービス市場における課題と対応−IT革命による経済の再生
いておりますが、特に中堅、中小企業ですね。これは
ーケティングに使っているのではないかと思うのです
日本産業の90数%に当たるわけですが、そこのIT化
が、中国やベトナムでもCMMを取ろうということに
をどうするかということが日本の産業競争力の源泉に
なっています。CMMは品質だけでなく生産性も向上
あるものです。色々な中堅、中小企業の方々が新しい
してきたということが実証されています。日本の場合
技術変化の中で経営をどうITで変えていくかという
は非常に少なく、ようやくこの1年くらい、実は去年
時に、なかなか大手のように情報システム部門を持っ
くらいから私どもはCMMを含めてソフトウェアプロ
たりできません。では相談相手は、やはりニュートラ
セスのインプルーブメントをすべきであるということ
ルな立場でアドバイスをして欲しいということと、経
を色々と申し上げて、今、態勢整備をしているところ
営者の意識改革も含めてやらなければいけないという
なんです。ということで、CMMに取り組んでいる会
ことで、3年前から戦略的情報化投資活性化推進事業
社も出てきております。
ということで全国で色々なセミナーとか啓蒙普及と
ユーザーサイドの改革もやはり必要で、競争力のあ
か、先ほどご紹介した事例のようなこをやっておりま
るベンダーが育つためには質の高いユーザーがいない
す。平成13年度までの事業実績ということで、約1万
といけないというのは別にソフトだけではないのです
人以上が参加したということもありますが、もう一つ
が、ソフトにおいては特にそうであります。問題は日
はITの経営の橋渡しをするようなエキスパートを育
本の政府調達、これは自治体も含めて中央政府もそう
成しようということです。これはもちろん大手ベンダ
なんですけど、市場規模で申し上げると全体の2割近
ーのSEの方がなってもいいし、そうでなくてもいい
くを占めております。昨年くらいからも安値落札が問
のですが、今1600人くらいの方になっていただいてお
題になっています。これはマーケット戦略としては別
ります。これを2005年までに1万人育成しようという
にあってもおかしくないのですが、ユーザーとしてち
目標を持っておりますが、このような方々がニュート
ゃんとチェックする能力がないので足元を見られてい
ラルな立場で企業の経営とITの結びつけをやる、あ
るということがあります。評価の仕組みがおかしい点
るいは電子自治体のアドバイスをするというところで
があるということで、これは10年くらい色々と問題点
あります。
が指摘されながら手を付けられなかったものなんです
ソフトウェアプロセスの改善なんですが、日本のソ
が、去年着手し、ここにあるような調達制度の見直し
フトウェアは品質が高く、インドなどに比べるとバグ
をやりました。ただ、まだ残っているのが一番最後の
の数が一桁違うんです。しかし、個人の経験と勘によ
政府調達管理の適正化ということでそれぞれの省庁で
るところが大きいようで、そうこうしているうちにア
の調達能力を高めていかなければいけないという点が
メリカを中心にもっと工学的なアプローチで、ベスト
課題としてまだ残っております。
プラクティスでモデルを作っていくというやり方が普
技術ですが、やはり新しい飯の種を日本の産業全体
及してまいりました。それがCMMという一つのモデ
の競争力を日本のITあるいはソフトウェア産業が支
ルです。インドで最近、評価が高いのはCMMのレベ
えていくのであれば、そこの競争力を持たなければ結
ルを5つに分けて品質管理をどれだけきっちりやって
局は高いものを買うことになると思います。ITとい
いるかということで、それをしっかりやっているとこ
うものもパソコンからパソコンでないところまで全て
ろのソフトウェアは信用できるというもので、そもそ
の機械にコンピュータが入る時代ですので、今のマー
もアメリカの国防総省の調達の時に、ミッションクリ
ケットの状況もおそらく変わってきます。我々は今、
ティカルなシステムなりソフトの調達の時にこれを開
ソフトウェアの技術開発と言いますか、次世代のソフ
発して調達したというものです。レベル4と言うのは
トウェア産業をどうするかということで頭の整理をし
一番高く、これを取っている会社は世界で80数社あり
ておりまして、ここに書いてあるようなものを重点的
ます。そのうちインドが50数社になります。それをマ
にやっていきたい。(図10)世界の中でも中国にしろ
9
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ITサービス市場における課題と対応−IT革命による経済の再生
重点Ⅰ[高信頼・高安全ソフトウエア]
大
ビジネス
ソフトウェア分野
産
業
界
へ
の
イ
ン
パ
ク
ト
オープン系
基盤ソフト分野
重点Ⅱ
[モバイル系基盤ソフトウエア]
モ バイル・
情報家電分野
セキュリティ
分野
重点Ⅲ
[デジタル情報流通]
ソフトウエア
開発技術分野
日本の現状競争力
デジタル情報
流通分野
強い
デジタルデバイド
解消分野
並
小
弱い
小
日本が5年後
にあるべき姿
国民・社会へのインパクト
経済産業省 情報処理振興課
大
図10 政策的対応 ーソフトウエアの技術開発
台湾、フランス、韓国でもオープンソースを政府調達
西でもっと情報サービス業が発展していただきたいと
に使うなどの議論が出ております。そのような流れの
思っております。関西にもっと元気を出していただき
中で日本としてもソフトウェア産業の競争力をどう考
たいということで、是非ITで大阪再生、関西再生し
えるのか、あるいはいかに競争市場を確保するのかと
ていただきたいと思います。また、その中で新KIISが大
いったことを考えております。
きな役割を果たしていただくということを祈念して私
の説明を終わらせていただきます。どうもありがとう
5.おわりに
最後にもうひとつだけ申し上げますと、日本の情報
サービス産業は東京一極集中であります。売上高で言
うと10兆円のうち東京と神奈川で6割を超えておりま
す。大阪は9.3%で、神奈川県が10%で、売上高ベー
スでは神奈川にも負けております。私の故郷である奈
良県は1%にもいっておりません。事業者数は8000あ
りますが、東京が34%で、大阪は10%、神奈川は
6.3%と、これも東京と神奈川で4割を超えていて、
大阪はちょっと元気がありません。いずれにしても地
域経済の発展を考えると情報サービス業、大学、自治
体が連携を持ってそれぞれがイニシアティブを発揮し
ていくというようなことで地域経済全体が発展してい
くのではないかと思っております。そういう意味で関
10
ございました。
(文責:総務企画部)
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「 真 の I T 経 営 を 目 指 す 」
ーKIIS/教育普及事業のご紹介ー
財団法人 関西情報・産業活性化センター
教育普及事業部
1.はじめに(教育普及事業の概要)
財団法人関西情報・産業活性化センターの、主な教
育普及事業としては、以下のものがあります。
2.企業や行政等の実務担当者を対象とする研修 修事業
教育普及事業部では、特に、企業や行政等の実務担
当者を対象とした研修事業を数多く実施しておりま
(1)企業や行政等の実務担当者を対象とする研修事業
す。研修会/研究会の内容の概要は以下の通りです。
企業や、行政等の情報化を推進するために必要な
(1)情報管理技術研修(日本自転車振興会補助事業)
技術やノウハウ等について、実務担当者を中心とし
情報リテラシーの向上やSPI(ソフトウェアプ
た方々のための各種の研修・セミナー等を実施して
ロセスインプルブメント)、CMM(能力成熟度モ
います。
デル)など、新しい情報管理手法の普及を目的にセ
(2)中堅・中小企業の企業経営者・経営幹部を対象と
ミナーや講習会を開催しております。
する事業
本年度も、この研修会は、7月から実施しており
経済産業省が行う「戦略的情報化投資活性化事業
ますが、残念ながら、応募者多数により、募集を締
(ITSSP)
」は、中堅・中小企業の経営者層等へ
め切らざるを得なくなりました。今後も同種の研修
の情報化支援を目的としておりますが、KIISは、近
を検討してまいりますので、ご期待ください。
畿地区における中核的な実施機関として、その役割
(2)マルチメディア・情報通信ネットワーク研究会
を果たしております。
(3)「インフォテック2001」
、
「e−Kansai戦略」等の
マルチメディア・情報通信ネットワークを中心と
する最新の技術動向や利用事例を紹介する場を提供
シンポジウム
して参ります。
ITに関する最新技術や先進的活用事例の紹介等
(3)ワイヤレス高度情報通信研究会
を目的としており、賛助会員はじめ、産官学あらゆ
ワイヤレス(無線)通信分野の最新の技術動向や
る方々にご参加いただけるシンポジウムです。
利用事例を紹介する場を提供して参ります。
(4)情報系ベンチャー支援事業
(4)GIS/電子地図の会
本年度からは、経済産業省の重点事業である地域
GIS(地理情報システム)の産・官・学・市民
再生・産業集積(産業クラスター)計画のプロジェ
における利用促進を目的に研究会を設け、GISに
クトのひとつである情報系ベンチャー振興事業につ
関する基礎知識や応用技術の提供、先進的にGIS
いて、新たに取り組みを開始すべく準備を進めてお
の導入に取り組む自治体・企業等の具体的な事例の
ります。
紹介をして参ります。
(5)発展途上国の管理者を対象とした情報化教育
(5)テクニカルライターの会
今回は、この内、
「
(1)実務担当者を対象とする研
テクニカルライターが日常の業務の中で修得しに
修事業」、「(2)企業経営者等を対象とする事業」及
くい製品マニュアルの製作に関する技術やテキニカ
び「(5)発展途上国の管理者を対象とした情報化教
ルライターがその業務を実践する上で必要とされる
育」について、ご紹介いたします。
周辺関連情報を提供して参ります。
各研修会の詳細につきましては、別表をご覧ください。
11
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真のIT経営を目指す ーKIIS/教育普及事業のご紹介ー
教育普及事業部において現在事業を開始または会員募集を行っている事業一覧
研究会主査、企画・運営体制
事業(研究会)の内容 具体的な活動項目、開催期間
募 集 対 象
「情報管理技術研修」 http://www.kiis.or.jp/trn/pm/spics.html
・テーマ別に18名の講師を招聘
・後援団体
近畿経済産業局
・協力団体
(社)情報サービス産業協会関西支部
【 募 集 満 了 】 プロジェクトマネ
ージメントに関連す
る企業の実践例を通
じ業界の動向を紹介
する。更に分科会を
設け、ソフトウェア
プロセスアセスメン
トに関する検討を行
う。
・ケーススタディ
6回実施(有識者を
招聘)
・分科会を設置し、ソ
フトウェア プロセ
スアセスメントに関
する
検討会を開催
・開催期間
平成14年7/9∼平成
15年2月
企業や行政におけるソフト開発を指導する管理
者やプロジェクト管理者、ソフト調達担当者等
<定 員> 100名
<参加費>(1名の価格、消費税込)
会 員:3.5万円、自治体:1.2万円
非会員:4.0万円
注:会員とは、主催・協力団体の会員
「マルチメディア・情報通信ネットワーク研究会」 http://www.kiis.or.jp/trn/mm/main.html
・研究会主査
大阪大学大学院 工学研究科 教授
(工学博士) 森永 規彦氏
・後援団体
近畿テレコム懇談会
・協力団体
大阪商工会議所、
(社)大阪工業会
(社)大阪科学技術センター
情報家電、EC、
衛星放送、インタ−
ネット、DSL、有
線ブロードバンド、
ディジタル放送、マ
ルチメディア通信・
マルチメディア情報
処理、光通信、衛星
通信、CATV等を
中心に最新の技術動
向や利用事例を紹介
する。
・定例会
5回実施(有識者を
招聘)
・開催期間
平成14年9月∼平成
15年3月
情報・通信関連企業、放送関連企業等
<定 員> 30名
<参加費>(消費税込)
会 員:1名につき、5万円
非会員:1名につき、7万円
注:会員とは、主催・後援・協力団体の会員
「ワイヤレス高度情報通信研究会」 http://www.kiis.or.jp/trn/wl/main.html
・研究会主査
大阪大学大学院 工学研究科 教授
(工学博士) 森永 規彦氏
・後援団体
近畿テレコム懇談会
・協力団体
大阪商工会議所、
(社)大阪工業会
(社)大阪科学技術センター
無線ブロードバン
ド、無線LAN、ブル
ートゥース、モバイ
ル・インターネッ
ト、モバイル・コン
ピューテイング、I
TS、次世代移動体
通信システム等を中
心に最新の技術動向
や利用事例を紹介す
る。
・定例会
5回実施(有識者を
招聘)
・開催期間
平成14年9月∼平成
15年3月
情報・通信関連企業等
<定 員> 30名
<参加費>(消費税込)
会 員:1名につき、5万円
非会員:1名につき、7万円
注:会員とは、主催・後援・協力団体の会員
「GIS/電子地図の会」 http://www.kiis.or.jp/trn/dm-gis/
・研究会主査
京都大学大学院 情報学研究科 教授
田中 克己氏
・企画・運営幹事会
大学8名、行政3名、企業13名
・協力団体
地理情報システム学会
情報処理学会データベースシステム研究会
「実用化時代のG
ISとデジタル地
図」をメインテーマ
としてGISの導
入・利用を試みるユ
ーザー(行政、民
間)、その普及を図
るベンダー企業に有
益な各種情報の提供
を行う。
・定例会
5回実施、フォーラ
ム2回実施
(有識者を招聘)
・開催期間
平成14年8/2∼平成
15年2月
企業、自治体、教育・研究機関でGISの導入
に携わられている方・運営されている方、地図
会社、測量会社、情報通信映像情報システム部
門の方、GISシステムベンダー等
<定 員> 制限なし
<参加費>(消費税別)
会 員:1名会員、6万円、3名会員、9万円
非会員:1名会員、
12万円、3名会員、
18万円
注:会員とは、主催・協力団体の会員
「テクニカルライターの会」 http://www.kiis.or.jp/trn/tw/
・企画・運営委員長
三菱電機エンジニアリング㈱ 新田 淳一氏
・企画・運営委員
大学1名、企業10名
・協力団体
テクニカルコミュニケーター協会
大阪商工会議所、
(社)大阪工業会
大阪府産業デザインセンター
12
製造業における製
品マニュアル、取り
扱い説明書、施工説
明書等の制作に関す
る技術の修得と参加
者間の交流を図る。
テクニカルコミュニ
ケーションを取り巻
く最新動向を探る。
・定例会
5回実施、フォーラ
ム1回実施
(有識者を招聘)
・開催期間
平成14年7/12∼平成
15年2月
メーカーにおける製品マニュアル、取扱説明書、
施工説明書等の制作に携われる方、制作会社、
印刷会社の方、編集者など、テクニカルライタ
ー等
<定 員> 制限なし
<参加費>(消費税別)
会 員:1名会員、3万円、3名会員、6万円
非会員:1名会員、4万円、3名会員、8万円
注:会員とは、主催・協力団体の会員
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真のIT経営を目指す ーKIIS/教育普及事業のご紹介ー
3.中堅・中小企業の企業経営者・経営幹部を対
5.より詳しい内容をお知りになりたい方へ
象とする事業
より詳しい内容については、弊財団のホームページ
・ITSSP事業
(http://www.kiis.or.jp)に、詳しいお知らせを随時掲
経済産業省が日本企業、特に中堅・中小企業を対
載しております。
象に産業競争力の強化を目的として、平成11年度か
多くの方々がKIISの研修事業にご参加いただくこと
ら実施している「戦略的情報化投資活性化(ITSSP)
こそ、ITを上手に使いこなす近道になり、それが、
事業」については、今年度も近畿地域の中核的実施
地域の活性化に、しいては日本経済の再生に繋がると
機関として、中堅・中小企業とITコーディネータ及
確信しつつ、今後も事業を実施してまいります。KIIS
びITベンダーとのマッチング等に注力した活動を
の研修事業に大いにご期待ください。
展開して参ります。
・ITコーディネータケース研修
中堅・中小企業の産業競争力強化のため、中堅・
中小企業の経営幹部等を補佐し、経営戦略の立案か
らITの導入までを支援する人材(ITコーディネ
お問い合わせ先
(財)関西情報・産業活性化センター
教育普及事業部
TEL:06-6346-2541
ータ)に関する資格制度がスタートしました。本人
材を育成するための重要なカリキュラムであるケー
ス研修の実施に当たり、近畿地域における支援機関
として貢献して参ります。
・関西IT百選アドバイザー派遣事業
関西の経済団体が中心となり、平成13年度に設立
された関西IT戦略会議(IT活用・普及部会)の
取り組みを支援し、関西地域の中堅・中小企業の情
報化のため、関西IT百撰アドバイザーを中堅・中
小企業へ派遣する支援活動等を実施して参ります。
4.発展途上国の管理者を対象とした情報化教育
(国際協力事業団受託)
その他、KIISで実施している特徴的な普及事業とし
ては、発展途上国の管理者を対象とした情報化教育が
あります。
これは、発展途上国の政府関係者を対象に、日本の
情報化の考え方から最新情報技術の動向まで体系的に
日本の情報化の推進について習得するコースを従来か
ら実施しておりましたが、平成13年度からは新たなニ
ーズに応えて、「電子政府」に係わる行政の情報化に
焦点を絞り、システム導入のノウハウを習得するコー
スを開始いたしました。今年度も、この2コースを行
って参る計画です。
13
Vol.122 02.8.20 0:20 PM ページ 15
先 進 的 i D C 研 究 会
財団法人 関西情報・産業活性化センター
調査事業部
iDC(インターネットデータセンター)の整備は、
えたエスクローサービス等の高機能な先進的iDCを構
国の電子政府「e-Japan構想」や地方自治体による電
築し、さらなるITの活用を推進することによって、産
子自治体推進の主体となる電子申請、総合行政ネット
業の活性化を計ることを目指している。
ワーク、電子公共調達等のASP(アプリケーション・
このような背景を受け、当財団では、平成14年4月
サービス・プロバイダ)サービスを始めとする情報イ
に「先進的iDC研究会」(主査:神戸市外国語大学
ンフラの基盤として重要な事項である。
芝助教授、副主査:奈良先端技術大学院大学 山口教
当財団でも、平成13年度に「関西地域の行政情報化
授)を立ち上げ、関係する自治体、団体を始めとして、
グランドデザイン」を策定し、その中で、関西におけ
iDCに関係する建設事業者、通信事業者、通信サービ
る新しい行政システムの方向性の一つとしてデータセ
ス事業者、データセンター事業者、ソリューションベ
ンターの重要性、連携の必要性について提言したとこ
ンダーさん等多数の企業さんにご参加いただき、先進
ろである。
的iDCの概念や持つべき機能など、大阪都市圏の中核
さらに、大阪府では、平成13年度第2次補正予算事
的な情報基盤としてふさわしいイメージについて検討
業である「地域IT拠点施設整備事業」を活用し、ブ
をしています。結果についてとりまとめ、7月に大阪
ロードバンド時代に対応した大阪都市圏の情報基盤を
府に対し提言すると共に、今後そのポイントをまとめ
目指したiDC等の施設整備が進められている。この事
て、別途報告書として公開することを予定しておりま
業は、特に、次世代のインターネット・プロトコルで
すので、ご期待ください。
あるIPv6やデータを保護する強固なセキュリティを備
施策
ブロードバンド時代に対応した大阪都市
圏の情報基盤、大阪にふさわしい先進的
iDCのあり方を検討
・行政職員のネットワーク技術者、情報技術者の育成
・関西のネットワーク体系の検討と整備
・広域公共情報ポータルサイトの構築
・民間サービスとのシステム的インターフェースの構築
・ICカードの広域利用
・広域コールセンターの設置
・コンビニサービスの実施
関西の活性化
・先進的iDCとして具備すべき
機能要件
ファシリティ面
セキュリティ面 ・望ましい運営方法 等 2010年の行政の姿
自 治 体
行政情報化における課題
新しい産業の育成
大阪府
ネットワーク社会の安定性確保
総務省
地域IT拠点施設整備事業
「自治体ネットワーク施設整
電子自治体の構築
(平成13年度2次補正)
申請・採択 備事業」
(財)関西情報・産業活性化センター(KIIS)
自治体としてどのようなiDCを
構築するのが望ましいか?
図 本研究会の位置付け
14
Vol.122 02.8.20 0:20 PM ページ 16
自治体の情報化と情報通信インフラの整備に関するアンケート調査
財団法人 関西情報・産業活性化センター
調査事業部
当財団では、近畿の自治体を対象に平成10年度から
行政の情報化を推進するにあたっての施策展開の現状
Ⅱ.集計結果
1. 地域情報化計画の策定状況
や課題等について、毎年「行政の情報化に関するアン
ケート調査」を実施している。
地域情報化計画を策定済みと答えた自治体は全体
の19.2%であり、全体として「来年度以降策定予定」
これからの地域情報化を考える際には、ブロードバ
ンド化の動きを受けて、高速の情報通信インフラを整
備することが大きな課題となっている。
このような認識から、自治体の情報通信インフラの
の割合が最も高い。また、策定予定なしと答えた自
治体はも23.6%ある。
0%
全体
20%
12.6%
6.6%
福井県 7.7% 0.0% 15.4%
滋賀県 5.6%
整備状況に焦点を当てたアンケート調査を昨年の秋に
実施し、その結果を簡単にご紹介する。
大阪府
31.0%
兵庫県
9.3% 3.7% 7.4%
奈良県 4.5%
53.8%
26.1%
6.9% 6.9%
・ 地域情報化計画の策定状況
17.4%
13.8%
17.2%
38.9%
24.1%
18.2%
54.5%
8.7%
56.5%
総合的な地域情報化計画を独自に策定済み
総合計画の一部に地域情報化計画の指針
来年度以降策定予定
1.調査内容
7.7%
22.2%
26.1%
16.7%
4.5%
100%
23.6%
44.4%
24.1%
13.6%
80%
34.6%
11.1%
0.0% 8.7%
21.7%
京都府
60%
13.2%
15.4%
5.6%
和歌山県 4.3% 0.0% 13.0%
Ⅰ.アンケートの概要
40%
9.3%
17.4%
国の構想に基づく地域情報化計画を策定済み
現在策定中
策定予定なし
図2 地域情報化計画の策定状況
・情報通信インフラの整備状況
・住民向け情報通信サービスの提供状況
2. 情報通信インフラの整備状況
・行政の情報通信インフラの整備状況
庁内LANについては、
「かなり進んでいる」
「進ん
・今後の情報通信インフラの整備方策
でいる」が過半数であったが、広域情報ネットワー
2.対象
クや住民向け情報通信サービスについては「遅れて
となった。
0%
の情報政策担当部署
庁内LAN
20%
40%
13.1%
60%
42.9%
80%
25.1%
100%
5.7%
12.6%
0.6%
兵庫県、奈良県、和歌山県)の全市町村(367団体)
いる」
「かなり遅れている」が7割以上を占める結果
10.9%
1.1%
近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、
郵送による調査票の配布・回収
周辺市町村間の広
域情報ネットワーク
6.9%
住民向け情報通信
サービス
5.回収率
調査票の回収率は48.9%(175件/358件)
。
和歌山県
13.
1%
奈良県
12.
6%
福井県
7.
4%
33.1%
33.3%
42.5%
10.3%
18.3%
32.6%
29.1%
42.9%
かなり進んでいる
進んでいる
遅れている
かなり遅れている
どちらとも言えない
分からない
12.6%
12.6%
3.4%
4.調査方法
1.7%
出先機関・公共施設 4.0%
間の情報ネットワーク
平成13年9月∼10月
4.6%
3.アンケート期間
図3 情報通信インフラの整備状況
3. 行政の情報通信インフラの整備状況について
滋賀県
10.
3%
京都府
13.
1%
(1)出先機関や公共施設間の情報ネットワークの整
備状況
出先機関や公共施設間の情報ネットワークの整備
状況は図4、5のとおりである。基幹系ネットワーク
兵庫県
30.
9%
大阪府
12.
6%
(財務会計・電子決裁等の行政事務や住民票等の住
民の個人情報を扱うような閉じた情報ネットワー
ク)の整備を追いかける形で情報系ネットワーク
図1 回答市町村の所在地
15
Vol.122 02.8.20 0:20 PM ページ 17
KIISの事業活動
(2)周辺市町村間の広域ネットワークの整備状況
(図書館蔵書検索等の住民サービスに利用される情
報ネットワークで、インターネットに接続するなど
広域ネットワークの整備状況については、多くの
外部に開かれたもの)の整備が進んでいる様子が窺
市町村では「未定」であったが、36市町村が「構築
える。
済」
「構築中」
「計画中」であった。
20%
40%
60%
78.0
支所等出先機関
7.0 4.0
30.0
スポー ツ施設
9.0
13
計画中
5
4.0
51.0
21.0
7.0 7.0
18
構築済
構築中
10.0
66.0
23.0
42.0
文化施設(文化センター)
23.0 1.0
48.0
24.0
10.0 10.0
100%
27.0
17.0 10.0
50.0
図書館
80%
13
検討中
幼稚園・保育園
36.0
12.0 13.0
小中学校
36.0
3.0
13.0 10.0
6.0
41.0
31.0
13.0 13.0
52.0
公民館
5.0
45.0
38.0
6.0
53.0
29.0
61.0
高等学校 5.0 1.0 8.0
1.0
大学 1.04.0
17
無回答
0
11.0
58.0
113
未定
20
周辺市町村庁舎 3.03.07.0
府・県庁
7.0
1.0
その他
64.0
7.0
57.0
11.0
45.0
6.0
整備済
検討中
整備中
予定なし
20%
40%
60%
検討中
未定
光ファイバーやCATV、ADSLのサービスは
「全く提供されていない」がいずれも5∼6割を占め
光ファイバーによるインターネット
接続サービス
20%
40%
5.1%
12.0%
0.6%
60%
スポー ツ施設
100%
2.0
26.0
ADSLサービス
携帯電話・PHSのサービスエリア
19.0
38.0
2.0
高等学校 3.01.0 9.0
2.9%
62.3%
7.4%
2.9%
13.7% 12.6%
50.9%
6.9% 9.1%
29.1%
40.6%
5.1% 11.4% 9.1%
2.3% 2.3%
13.0 7.0
29.0
16.0
5.04.0
消防署・防災施設
17.0
10.0
22.0
広域行政担当事務所 5.0 6.0
周辺市町村庁舎 4.04.0 9.0
その他
15.0
77.0
26.0
14.0
3.0
整備済
検討中
52.0
29.0
14.0
30.0
13.0
48.0
6.0
2.0
整備中
予定なし
計画中
必要性を感じない
図5 情報ネットワークの整備状況(情報系)
16
2.0
が進んでいるのは「財務会計システム」であり、
「給与管理システム」
「土木積算システム」の順とな
1.0
っている。
1.0
(2)行政サービスに関する情報システムの整備状況
3.0
79.0
図7 住民向け情報通信サービスの提供状況について
行政事務に関する情報システムのうち、最も整備
4.0
56.0
28.0
一部の地域で提供されている
分からない
(1)行政事務に関する情報システムの整備状況
9.0
44.0
ある程度提供されている
全く提供されていない
91.4%
5.自治体の情報システムの整備状況について
9.0
40.0
充分提供されている
ほとんど提供されていない
無回答
1.7%
1.0
36.0
60.0
病院等医療機関
府・県庁
43.0
62.0
大学 1.05.0
3.0
28.0
37.0
12.0
1.0
41.0
45.0
その他
2.0
6.0
49.0
16.0
12.0
22.0
小中学校
福祉施設
36.0
15.0
19.0
37.0
公民館
31.0
52.0
13.0 10.0
26.0
35.0
14.0
100%
4.6%
80%
36.0
11.0 7.0
21.0
文化施設(文化センター)
幼稚園・保育園
15.0
44.0
80%
8.0% 12.0%
62.3%
2.3%
図書館
無回答
図6 広域ネットワークの整備状況
CATVによるインターネット 6.9%12.6% 5.1%
接続サービス
40.0
18.0
22.0
42.0
支所等出先機関
計画中
0%
計画中
必要性を感じない
図4 情報ネットワークの整備状況(基幹系)
0%
構築中
ている。
7.0
2.0
1.0
120
7.0
32.0
15.0
100
4.住民向け情報通信サービスの提供状況について
5.0
79.0
19.0
14.0
80
6.0
76.0
20.0
8.0
広域行政担当事務所
18.0
4.0 7.0
31.0
4.0
消防署・防災施設
18.0
7.0 4.0
24.0
病院等医療機関
47.0
31.0
6.0 7.0
60
13.0
構築済
45.0
福祉施設
40
2.3%
0%
2.0
行政サービスに関連する情報システムについて
は、行政事務に関する情報システムと比較すると、
全体的に整備されていない。比較的整備が進んでい
るのは「行政情報提供システム」「公共施設案内予
約システム」
「防災関連システム」である。
Vol.122 02.8.20 0:20 PM ページ 18
KIISの事業活動
0%
20%
電子文書管理システム 9.7%
9.7%
40%
60%
12.6%
80%
100%
47.4%
17.7%
2.9%
1.1%
電子決裁システム
52.0%
6.3%
0.6%
12.6%
23.4%
例規集情報システム
36.0%
32.0%
11.4%
26.9%
図面管理システム 4.0% 4.6% 5.7%
16.6%
42.3%
人事管理システム
5.7%
16.6%
少し感じる
21.
0%
4.6%
21.1%
1.7%
5.1% 4.0%
2.9% 1.1%
85.1%
0.6%
56.6%
34.3%
電子調達システム
無回答0.
6%
あまり感じない
2.
3%
1.7%
8.0% 4.0% 6.3%
4.0%
10.9% 4.6%
財務会計システム
全く感じない
0.
0%
4.0%
53.1%
76.0%
給与管理システム
4.0%
どちらとも言えない
3.
4%
分からない0.
6%
5.1%
強く感じる
72.
2%
3.4%
2.3% 6.3%
75.4%
土木積算システム
12.6%
2.3%
1.1%
2.3%
建設CALS/EC
1.1% 25.1%
1.1%
住民基本台帳 20.0%
ネットワークシステム
61.7%
8.6%
2.3%
13.7%
62.3%
1.7%
整備済
検討中
整備中
予定なし
計画中
無回答
図10 今後の情報通信インフラ整備の必要性
図8 行政事務に関する情報システムの整備状況
(2)自治体の情報化や情報通信インフラ整備に関す
0%
20%
0.6%
電子申請関連システム 7.4%
1.7%
行政情報提供システム
26.3%
公共施設案内予約システム
16.0%
1.1%
地域カードシステム
2.3%
40%
60%
80%
100%
29.1%
57.1%
13.1% 7.4%
7.4% 8.0%
4.0%
16.6% 2.9%
33.7%
24.0%
42.3%
2.3%
る課題
150
設備投資・運用経費の高さ
76
運用するシステムの不足
17
2.3%
地理情報システム 5.1% 5.7% 6.9%
教育・文化システム 8.0% 4.6% 4.6%
36.0%
42.3%
4.0%
5.7%
45.7%
31.4%
118
48
112
人材不足
15
知識不足
14.9% 5.7%6.9%
1.1%
環境関連システム
4.0%
32.6%
0.6%
交通関連システム 0.6%22.9%
0.6%
産業振興関連システム 3.4%
26.9%
4.0%
1.7%
コミュニイティ支援システム 3.4%
29.7%
5.1%
1.7%
防災関連システム
整備中
37.7%
37.7%
計画中
30.3%
40.0%
56.6%
6.3%
2.3%
58.9%
56.0%
34
20
相談窓口の不足
4
2
その他
0
14
20
40
60
80
100
120
140
160
(
件)
5.1%
5.7%
69.1%
67
44
6
4
伝票・書類の様式が不統一
予算や役割分担の調整が困難
医療・福祉関連関連システム 9.1%1.7%7.4%
整備済み
41
安全性・セキュリティ
5.7%
55.4%
33.1%
図11 自治体の情報化推進の課題
5.1%
4.0%
最も多かったのは「設備投資・運営経費の高さ」
検討中
予定なし
無回答
図9 行政サービスに関する情報システムの整備状況
であり、次いで「安全性・セキュリティ」「人材不
足」の回答が多かった。
6.今後の情報通信インフラの整備方策について
(1)今後の情報通信インフラ整備の必要性
今後の情報通信インフラ整備の必要性について
は、
「強く感じる」が最も多く、
「少し感じる」と合
わせて93.2%に達し、ほとんどの自治体が必要性を
感じている。
17
Vol.122 02.8.20 0:20 PM ページ 19
−行政・地域情報化フォーラム−
「e−Kansai戦略」シンポジウム 特別講演録
『大阪府のIT戦略について』
大阪府知事 太田 房江
はじめに
捉えたいと思っております。私は都市再生戦略の中で
本日は『大阪府のIT戦略』についてお話をさせて
バイオ、ナノテク、環境そしてITということを申し
いただきますが、私は就任以来の一番大きなテーマで
て参りました。バイオとITは合い並んで関西の再生
ある大阪再生の中でのIT戦略について、皆様方に聞
の鍵を握る産業であり、戦略であると思っております。
いていただきたいと思っております。つまり、大阪再
なぜかと言うと、今このかたまりは境目無く融合しつ
生のためにITをどう活用しようとしているか。一歩、
つありバイオとIT、ナノテクとIT、あるいは環境
一歩階段を昇っておりますので、まだ緒に就いたばか
とバイオというものが融合しながら新しい産業として
りかもしれませんが、ここまで来たということで、そ
伸びていき、また融合し合うことで新産業となりうる
の途上の話としてお聞きいただければ幸いです。
ところがございます。ですからITも一つの産業のみ
大阪再生にITをどう使うかということについて、
ならず、新産業としてこれから大いに期待されるバイ
知事就任直後から色々なことを考えて参りましたが、
オやナノテク、環境関連の血液と言えばよいのでしょ
本格的にこれをやろうとしましたのは、昨年の6月、
うか、そういうものになりうる産業として捉え、だか
小泉内閣で都市再生本部が政府部内にスタートし、東
らこそ、この関西において根付かせ、オリジナリティ
京圏、大阪圏を中心とする都市を一つの活力にして国
をもって“オンリーワン・IT”として関西で伸ばし
の再生を目指していこうという動きが始まって以降で
ていかなければいけないと思っております。
ございます。私は常々申しているのですが、今、都市
このITの分野は、皆様にご案内の通り圧倒的に東
間競争が世界中で繰り広げられている中、圏域という
京一極集中であります。しかし、ITというのは、だ
のもクローズドな感じです。広がりのある都市圏とし
いたい経済力に比して蓄積されるのが普通ですから、
て私は関西を見ていきたいと思っておりますし、IT
東京に次いでポテンシャルを持っている大阪圏、関西
戦略につきましても圏域として見ていきたいと思って
圏は、それだけ世界に互していけるだけのポテンシャ
おりますので、今日の話を一つのきっかけとして関西
ルがあるということであります。ですから、このポテ
をITで再生していくということについて、是非、手
ンシャルを最大限に活用しながら、日本の中で他に例
を結ばせていただきたいと思っております。
のない強み、言い換えれば東京にはない強みを発揮さ
せていくことが、ITを活用した大阪再生にとっては
都市再生のカギ「オンリーワン・IT」
大変重要だと私は思っております。
都市再生について私が最初に申し上げたのが「経済
の再生なくして大阪の再生なし。経済の再生なくして
シームレスなブロードバンド社会を目指して
関西の再生なし」ということでございます。やはり関
IT分野においてインフラ面での基盤は、世界に互
西に元気がない今、一番の問題は何と言っても経済的
するだけの整備は出来ていると言って過言ではないと
な停滞であり、ここで東京だけを相手にするのではな
思います。そういう意味で大阪圏、あるいは関西圏は
く世界に互する大都市圏、大阪、関西としてどう伸び
既に本格的なブロードバンド時代に突入していると言
ていくのか、どういう戦略を作っていくのかというと
ってもよいのではないでしょうか。ADSLやCATV
ころが大変重要なことであります。ITもその一環と
の普及率に触れるまでもなく、この新しいブロードバ
18
Vol.122 02.8.20 0:20 PM ページ 20
大阪府のIT戦略について
ンド時代に突入した様々なサービスが、今この大阪圏
その意味で私どもがまず最初にやりましたことは、
において展開されつつあります。光ファイバーによる
商用IXを関西につくることでした。誘致運動を行い
インターネットのサービスも始まりました。
商用IXが平成14年1月に1つ、そして4月にそれぞ
どのようなブロードバンドの絵姿を関西圏が目指し
れオープンしました。しかし、それをうまく作動させ
ていくかということですが、一言で言うと “シーム
ていくためには、広がりを作っていかなければいけな
レスなブロードバンド社会”を目指そうということで
いと思っております。
す。こういうことを皆さんとの合い言葉にしたいと思
それからもう一つ、東京一極集中とはいえ、IT企
います。“シームレス”境目がないということです。
業、ベンチャーの集積も進みつつあります。今、ソフ
これはもう既にポテンシャルがきっちり整っていて、
ト系のIT産業の事業者数は、2001年9月で3338件あ
しかもインフラ面での整備が進んでいる関西圏。これ
り、新大阪、南森町、南堀江・船場のエリアに3分の
から目指すべきは、民を前に立てて、民間の智恵やノ
1位づつに拠点が出来るようになってきました。これ
ウハウを大いに活用することをベースにしながらそれ
をもっと伸ばしていかなければいけないのですが、昨
に官が連なる、市町村が連なる。連携という意図した
年の5月に開設した大阪府のITインキュベーション
言葉ではなく、もっと自然体なシームレス、このよう
“インキュイット”もお陰様で大変うまくいっており
なブロードバンド社会を目指していくことが、関西圏
ます。もちろん大阪市や、他の市町村にもございます
に与えられた一つの方向性であり、東京一極集中を是
から、このインキュイットをはじめとしたインキュベ
正する一つの力、あるいは世界に互していく一つの力
ーターを活用したベンチャー企業、ITベンチャーも
になっていくのではないでしょうか。シームレスなブ
今後益々増えていくと思います。
ロードバンド社会を築いていくことを目標に、私は大
こういう段階でシームレス・ブロードバンド社会を
阪再生に向けての階段を、一歩一歩つくっていきたい
目指して大阪府が行いました3つの条件整備をご紹介
と思っています。
申し上げたいと思います。これはあくまで個別の事業
ではなく、それぞれのプロジェクトが、有機的に連携
大阪府のインフラ整備
ここでインフラが整っていることの証左として、2
つのことを申し上げておきたいと思います。
シームレスなブロードバンド社会を目指すに当たっ
て、行政の成すべきことは何でしょうか。民に前を走
をして相乗効果を発揮し始めるためのキックオフ・プ
ロジェクトだと思って下さい。これから広がりをもっ
て行っていかなくては意味のない事業ではあります
が、先ほど申し上げた理念に沿って商用IXとは別に
行っております。
っていただかないといけないわけですから、そのため
に何をやるのか。東京は放っておいても、民がブロー
大阪府データセンター
ドバンド社会を築いていくでしょう。しかし、私は関
まず1つは、オンリーワン、ユニークさを目指して
西においては、行政が果たすべき役割がIT都市形成
大阪府データセンターを、平成13年度の第二次補正予
においてもあると思っております。それはシームレス
算で措置をし、これを整備することにいたしました。
ですから境目は無いのですが、自然な形でつなぐ結節
日本でただ一つしかない施設です。なぜ、日本でただ
点をつくることが、一つの仕事ではないでしょうか。
一つしかない施設を東京ではなく大阪で整備すること
もう一つは放っておいたら、市場メカニズムに乗って
になったかと言うと、セキュリティが大変大きな要素
東京に流れる市場を、一つ大阪につくる意味でのキッ
であったと思います。皆様方の記憶に新しい昨年9月
クオフを行政がやるべきだと考えます。後は民間にお
のアメリカでの同時多発テロ事件ですが、あの後、さ
任せする。これが関西における、インフラの整った地
すがニューヨークで、恐らくバックアップがそれぞれ
域における自治体の成すべき役割ではないでしょうか。
の企業でしっかりしていたのだと思いますが、すぐに
19
Vol.122 02.8.20 0:20 PM ページ 21
大阪府のIT戦略について
作動しました。それに対して日本は、東京でひとたび
さわしい、あるいは通信、放送融合時代にふさわしい
何かが起こった時に、特に日本の公共分野におけるデ
コンテンツ産業の拠点にしていけば良いのです。です
ータセンターは東京に集中しておりますので、少なく
から、そういうことを一つの核にして、新たなサービ
とも機能は、次の日からストップすると言っても過言
スの開発や情報発信を行う拠点に、ここを伸ばしてい
ではないと思っております。ですから、このデータセ
きたいと思っております。
ンターが大阪にできたのだろうと思いますが、このセ
ンターはデータの保存、修復、セキュリティを世界の
地方公共団体間の広域連携の新しいモデルづくり
第一級レベルで実現しようというものであります。高
3つ目は、地方公共団体間の広域連携の新しいモデ
度強化のデータ保存と、瞬時の再起動が可能なエスク
ルを作っていきたいということです。都市再生の一つ
ローサービスが提供でき、またIPv6に対応したイ
のプロジェクトとして認められたライフサイエンスの
ンターネットデータセンターであります。これを府で
国際拠点形成は、少なくとも府県の境なく進めたいと
整備したいと考えておりまして、更に電子自治体全体
思っておりますし、京都府、兵庫県、奈良県の各知事
に共同で利用できるものに広げていきたいと考えてお
さんのご理解もいただいていると思っております。関
ります。
西には、ライフサイエンスの拠点として大変有望ない
くつかの施設や研究所、あるいは頭脳があります。私
コンテンツの育成、振興
どものライフサイエンスの国際拠点というものは、別
2つ目は、コンテンツの育成、振興です。また、コ
名“バイオ情報ハイウェイ”と申しておりますが、こ
ンテンツというと東京一極集中の一番はなはだしいと
れらの研究開発拠点を1つのブロードバンドで結んで
ころで、8割、9割といった数字もあります。しかし、
バーチャルな研究を可能にしようというものです。こ
一方で関西にも民放キー局をはじめNHKも集中して
れは、地方公共団体間の広域連携の新しいモデルの最
いるわけですから、コンテンツの育成、振興をもう一
たるものだと思っておりますが、これに限らず地方公
方の極として、大阪が是非やっていかなければいけな
共団体の間の、とりあえずは、府と市、そして市町村
い分野であります。コンテンツはオリジナリティが命
間の境目をなくすような地方公共団体ネットワークを
ですから、関西は関西らしいコンテンツをつくる、そ
作っていこうと思っておりますが、これを広域で進め
のベースは歴史・文化、で東京にはないものもたくさ
たいと思っております。
んあります。その他、恐らく東京では生まれないコン
今、大阪府では、オーパス協議会を中核にしてスポ
テンツの下地を大阪はたくさん持っているはずです。
ーツ施設の予約システムを共同で行っております。こ
しかし重要なことは、放送と通信が融合するこの時代
れは府と市町村が対等の立場でシステムを共同開発
にふさわしいコンテンツでなければいけないというこ
し、運営しておりますから、既にネットワークはある
とではないでしょうか。そういうことを考え、私ども
わけです。今後はこのネットワークを活用して、ネッ
は平成14年4月、国の事業として通信、放送の融合時
トワーク社会のパスポートと言われるICカードの実
代にふさわしいコンテンツ制作の実証実験“通信放送
証実験を、民間のご協力も得てやっていきたいと思っ
融合技術開発テストベッド事業”を行う拠点が大阪市
ております。既に池田市、羽曳野市、枚方市では平成
北区にできました。今や通信のブロードバンド化が進
13年度にICカードを活用した実証実験を行っており
み、放送のデジタル化が進んでいるわけですが、放送
ますが、これを更にオーパス協議会のインフラを活用
番組やインターネットの各種情報が相互利用できるよ
した府域全体のICカードの実証実験 “大阪スマー
うな実証実験を行います。もちろん、実証実験だけで
トICカード”に広げていきたいと思っております。
なく、これが市場の核になっていくと私は思っており
このように、大阪はあくまでも地方公共団体間の広
ます。民間がこれを活用してブロードバンド時代にふ
域連携の新しいモデルを提示したいと考えております。
20
Vol.122 02.8.20 0:20 PM ページ 22
大阪府のIT戦略について
最初に、今はステップを一つずつ上がっている最中
たが、 “GOOD連合”を組んでいる岡山県で電子
であると言いましたが、ご紹介しました3つの事業は、
入札が始まりました。大阪府庁でも簡易な電子申請は、
まだまだステップの途中であると思っておりますが、
全体で3400様式あるうち、110件は受け付けを開始し
こういうことを有機的に連携させる中で相乗効果を目
ております。今では職員の採用試験の申し込みや府営
指し、その中でまた新たに行政がやるべき呼び水、あ
住宅の入居申し込み、あるいは自動車税、住所変更の
るいは結節点づくりやその他があればやっていこうと
届け出など本格的な電子申請も開始しております。大
考えております。どうか今日、関西全域からお集まり
阪府は組織が大きいですから、全部を一度に電子申請
の地方公共団体の皆様、あるいは企業の皆様、ぜひ府
へというわけにはいきませんが、ITベンチャーを育
県の境目のないシームレスなブロードバンド社会をこ
てる意味で府内に育っている、新しいITベンチャー
の関西に築いていきましょう。首都圏は市場メカニズ
から、まず、公的なITについての調達を可能であれ
ムでドンドン進むという仕組みが出来上がりつつあり
ばやりたいと思っております。
ますが、関西はおそらく意図して、私どもが縦割りの
クローズドな頭を持つことなくシームレスな社会を目
最後に
指さなければ、私は理想的なブロードバンド社会をこ
あくまで最終的な目標は大阪の再生、関西の再生で
の関西に築くことは難しいだろうと思っております。
あります。ITは大阪再生、関西再生の道具であり、
是非、自治体間でそのような境目をなくす努力を、こ
これが目的であってはいけません。今はヒト、モノ、
れから皆様方と共にしたいと思っておりますので、よ
カネが世界レベルで、地球レベルで交流する時代です。
ろしくお願い申し上げます。
私は今、ステップを3つ申し上げましたが、これはヒ
ト、モノ、カネを求めて情報が大阪に、関西に集まっ
電子府庁の取り組み
最後に大阪府自身のIT化の取り組みについて、少
しだけ触れておきたいと思います。
てくるための道具立てであります。そして、それを通
じて大阪ブランド、関西ブランドというものを作って
いきたい、オンリーワンを発信するということの1つ
電子府庁を目指して既に2年くらいが経っておりま
のステップ、道具であります。そこのところは決して
すが、私が知事に就任にした時に職員へのパソコン配
誤解しないでいただきたいと思います。少し大阪の例
備率が4.6台に1人で全国ワースト2でした。今はお
を引きながら、新しいシームレスなブロードバンド社
陰様で1人1台体制で、職員も府庁に出てきたら、ま
会の形成についてビジョンを申し上げましたインター
ずパソコンを立ち上げるというのが当たり前の世界に
ネットに国境はありません。県境はありません。府境
なってきております。これはあくまでプロセスであり
もありません。是非とも関西の明日を目指して、シー
ます。大事なことは電子府庁をつくって、そして府民
ムレスということを皆さんと共に目指していきたいと
の皆様により高いサービスを提供することであり、ま
いうことを最後に申し上げまして、私の話は終えたい
た府庁の職員の意識改革をドンドン進めて仕事のやり
と思います。ご静聴ありがとうございました。
方を変え、ITにワークシェアリングをしてもらうこ
とを進めることになります。BPRという意味では
本講演録は、平成14年4月24日 大阪国際会議場で
“eふちょうアクション・プラン”を策定し、職員1人
開催しました「e−Kansai戦略」シンポジウムの特別
当たり年間200時間の可処分時間をITによって創出
講演において、ご講演いただきました内容を事務局で
するということを、今進めております。最終的には
要約したものです。
2003年に完全な“eふちょう”をつくり上げたいと思
っております。
先ほど、府民により高いサービスをと申し上げまし
〔
〕
文責:
(財)関西情報・産業活性化センター 調査事業部内
「行政・地域情報化フォーラム」事務局
21
Vol.122 02.8.20 0:20 PM ページ 23
「関西グリーン電力基金運営事業」について
関西グリーン電力基金は、風力発電や太陽光発電といっ
た、新エネルギーのより一層の普及促進を図るための制度
として、平成12年10月、財団法人関西産業活性化センター
内に設立されました。
このたび、関係団体の再編統合によりまして、これまで
本基金の運営主体でありました、財団法人関西産業活性化
センターは解散し、平成14年4月1日から、KIISにおきまし
て本基金の運営事業を継承実施させていただいています。
今回は、財団法人関西産業活性化センターから継承しま
した「関西グリーン電力基金運営事業」について、ご紹介
します。
⑤関西電力㈱も、新エネルギーの普及促進に資するた
め、基本的に需要家からの寄付金総額と同額を、
KIISに寄付します。
(4)助成の実施
①KIISは、集まった寄付金を、風力および太陽光発電
設備への助成に活用します。
②風力への助成については、大規模風力(出力2,000kW
以上)への助成を基本とします。また、太陽光につ
いては、公共用設備への助成を基本とします。
③関西地域への助成を基本とするが、関西地域および
1.関西グリーン電力基金制度の概要
全国における助成希望者の動向を勘案し、関西地域
における助成希望者が少ないと見込まれる場合に
(1)目 的
電力需要家、電力会社、新エネルギー発電事業者が
一体となった社会的システムを創設し、新エネルギー
のより一層の普及促進を図ることを目的とします。
(2)趣 旨
近年、環境問題に対する市民の意識が変化し、新エ
ネルギーの普及促進に対する積極的な貢献を希望され
る方が増加してきています。
新エネルギーに対しては、これまで国と電力会社に
よる支援がなされてきたが、昨今の市民の新エネルギ
は、寄付金のうちの一定額(1∼2割目途)を、全
国運用として、多数の助成希望者が見込まれる他地
域(東北等)に配分することを検討します。
④KIISは、寄付金総額から、上記全国運用分および事
務経費を除いた金額をもとに、風力・太陽光毎に、
助成総額および助成単価を決定します。
⑤風力の助成先は、発電コストの低い者を優先します。
太陽光の助成先は応募件数等に応じて検討します。
(5)寄付金運用結果の報告
KIISは、寄付金の活用結果について適宜公表してい
ーに対する導入意欲に呼応した、新たなスキームの創
ます。
設が望まれています。
(6)グリーン電力基金特別会計の創設
こうした状況に鑑み、電力需要家、電力会社、新エ
独立した会計とするため、「グリーン電力基金特別
ネルギー発電事業者という関係者全員が一体となっ
会計」を設置しています。
て、新エネルギーのより一層の普及促進に向けて取組
(7)グリーン電力基金運営委員会の設置
むための社会的システムの創設を目指し、今般、関西
理事会、評議員会を補佐して、本事業の円滑な推進
グリーン電力基金制度を実施しています。
を図るための審議機関として、「グリーン電力基金運
(3)寄付金の収納
営委員会」を設置しています。
①新エネルギー導入に支援を希望する電力需要家か
ら、寄付金を徴収します。
<関西グリーン電力基金のしくみ>
②寄付金は、関西電力㈱が、電力需要家から電気料金
参加認定証の送付、
運用結果報告
を収納する際、併せて預かります。(関西電力㈱が
事務代行)
③関西電力㈱は、預かった寄付金を、助成運営主体で
あるKIISに渡します。
④拠出金額は1口月額100円とし、口数は需要家の希
望に応じます。
なお、申込みは、事務手続に係る費用を抑制するた
め、原則、関西電力㈱の電気料金を口座振替により
支払っている需要家で、同一口座から寄付金を振り
替えることに同意する需要家に限り受け付けます。
申込みをした需要家には、参加認定証を発行します。
22
参
(1口月額
100 円∼)
加
者
︵
財
︶
関
関
西 寄付 西
情
電
報
・
力
産
業
株
活
式
性
化
会
セ
寄
付
ン
社
タ
ー
*関西地域分
○風力発電設備
関 助成
西
グ
リ
ー
ン
電
力
基
金
事務 委 託
(参加申込み受付・寄付金収納等)
○太陽光発電設備
(公共用)
*全国運用分(一部)
助成
○風力発電設備
*本基金は営利を目的としたものではありません。
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KIISの事業活動
2.第2回(平成14年度)「関西グリーン電力基金」助成先が決定
平成14年6月19日、KIISにおきまして、第5回グリー
3.平成14年度 おおさか環境賞奨励賞を受賞
平成14年6月11日、テイジンホール(大阪市中央区南
ン電力基金運営委員会を開催し、第2回(平成14年度)
本町1丁目6番7号)にて、平成14年度おおさか環境賞
助成先について、次のとおり決定しました。
表彰式(事務局:豊かな環境づくり大阪府民会議会長 太
なお、平成14年度は、大規模風力発電(事業用)の助
田房江 大阪府知事)が行われ、KIISが実施していま
成対象者がなかったため、太陽光発電のみを対象に、
す「関西グリーン電力基金運営事業」が、団体の部で、
1,600万円を原資として、助成を行うこととしました。
奨励賞を受賞しました。
この表彰は、自主的・積極的に他の模範となる環境の
【第2回(平成14年度)
「関西グリーン電力基金」助成先】
個人、団体、事業者に対し、その活動を賞し、奨励する
○太陽光発電設備(応募総数6件全てを助成先としました)
助成先
設 備 設 置 場 所
(所 在 地)
設備出力
助成金額
900円/kW)
(kW) (227,
水口町
水口町立伴谷東小学校
(滋賀県甲賀郡水口町大字山774)
20kW 4,
558,
000円
日高町
ふるさと農道 進美寺トンネル
16.
2kW 3,
691,
980円
(兵庫県城崎郡日高町赤崎865-2)
京田辺市
京田辺市立中部住民センター
(仮称)
10kW 2,
279,
000円
(京都府京田辺市草内美泥22-2)
龍野市
龍野市総合保健福祉センター(仮称)
10kW 2,
279,
000円
(兵庫県龍野市龍野町富永410-2)
豊岡市
豊岡市立城南保育園
(兵庫県豊岡市弥栄町420-3)
猪名川町
保全及び創造に資する活動に取り組んでいる大阪府内の
ことを通して、豊かな環境づくりに向けた行動の輪が広
がることを目的とするもので、平成9年度より実施され
ています。
本年2月に、(社)関西経済連合会よりご推薦をいた
だき、今回の受賞に至りました。
KIISとしましては、この賞を励みとして、新エネルギ
ーのより一層の普及促進に向け、本基金の運営事業を推
進していきたいと考えています。
279,
000円
10kW 2,
猪名川町北部診療所
4kW
911,
600円
(兵庫県川辺郡猪名川町鎌倉字横大道10-1)
998,
580円*
合 計
70.
2kW 15,
*太陽光発電助成原資1,
600万円のうち、残金1,
420円については、次年度の助成原資として繰り越します。
【参考:第1回(平成13年度)「関西グリーン電力基金」助成実績】
○太陽光発電設備(応募総数5件全てを助成先としました)
設 備 設 置 場 所
設備出力
助成金額
助成先
(所 在 地)
(kW) (1万円/kW)
京都府営水道宇治浄水場
京都府
40kW
40万円
(京都府宇治市宇治下居)
滋賀県立彦根工業高等学校
滋賀県
20kW
20万円
(滋賀県彦根市南川瀬町1310)
芦屋市立岩園小学校
芦屋市
20kW
20万円
(兵庫県芦屋市岩園町23番41号)
八尾市立北山本小学校
八尾市
10kW
10万円
(大阪府八尾市福万寺町2―1)
豊岡市東デイサービスセンター
豊岡市
10kW
10万円
(兵庫県豊岡市大篠岡962番2)
合 計
100kW
100万円
○大規模風力発電設備(応募総数1件を助成先としました)
助成先
京都府
設 備 設 置 場 所
設備出力
助成金額
(所 在 地)
(kW) (600円/kW)
太鼓山風力発電所
4,
500kW
270万円
(京都府与謝郡伊根町字野村小字太鼓山)
4,
500kW
合 計
270万円
▲関西グリーン電力基金 事務局
(最後に)
おかげさまで、皆さまからの寄付金と、関西電力㈱か
らの寄付金をもとに、昨年度、第1回目の助成を実施す
ることができました。
また、基金への参加者も着実に増加しており、平成14
年6月末日現在で、3,432件、13,907口(単位:1口100
円)に達しております。
なお、本年度につきましても、太陽光発電6件の助成
先を決定し、助成を行うこととなりました。
KIISとしましては、運営主体として、本基金をより普
及・充実させ、有効に活用していくよう努力していく所
存であります。
新エネルギーのより一層の普及促進に向け、今後も引
き続き、皆さまのご理解とご支援を賜りますようお願い
致します。
(担当:地域振興事業部 原)
▲太鼓山風力発電所 4,
500kW(京都府)
▲芦屋市立岩園小学校 20kW(兵庫県)
23
Vol.122 02.8.20 0:20 PM ページ 25
シリーズ賛助会員紹介コーナー
シリーズ
賛助会員紹介コーナー
ッセイグループのIT戦略を支えるため開発効率や技術
力を主眼とした基盤の構築を図ってきました。これか
ニッセイ情報
テクノロジー株式会社
らはそれらのノウハウを活かし、①保険関連ソリュー
ション分野でのビジネス基盤構築②ニッセイグループ
外での事業拡大と営業力の強化③既存ビジネスの開発
力・効率向上を重点課題として取組み、「保険関連ソ
リューション分野での共同利用・協業を前提とするス
http://www.nissay-it.co.jp
タンダード化を図る」「既存領域も含めたビジネスパ
フォーマンスを飛躍的に向上させる」ことに取り組ん
1.設立背景
で参ります。
ニッセイ情報テクノロジーはニッセイグループ全体
こうしたなかで当社は<i-Win>の名前のもとに多
のIT戦略を推進させるという使命を担って1999年に
彩なソリューションの提供を開始しました。<i-
日本生命保険相互会社のシステム部門と株式会社ニッ
Win>は、世界標準と整合しつつ日本の特殊性にも適
セイコンピュータのシステム開発部門が統合して設立
合した各種生命保険業務ソリューションシリーズであ
されました。設立に際しましては当社がニッセイグル
り、まず今年度i-Win/LIFEを発売しました。i-
ープの枠を超えて、新たな取り組みをおこなって行く
Win/LIFEは第三分野商品や銀行窓販を念頭に代理店
ことを企図し、日本IBM様、日立製作所様、インテッ
システムや共同ゲートウェイなどの対外接続インター
ク様などのIT分野でご活躍の企業様にも出資いただき
フェイスを豊富に備え、基幹システムを変更せずに独
優れた技術や人材を投入していただいております。
立した対応が可能な保険契約管理システムです。今後
も順次こうした共同化・共通インフラ化をコンセプト
2.企業ビジョン
ニッセイグループのIT戦略を推進する最良のパー
にソリューションを企画・開発しご提供してまいりま
す。
トナーとして「新たなサービスの創造」と「最適なソ
リューションの提供」を通じIT業界(保険・金融・
5.KIISとの関わり 介護分野)のリーディングカンパニーをめざしていま
KIIS様との関わりは古く、大阪の事業所で昭和61
す。最適なソリューションを提供するプロフェッショ
年から健保事業について、機器販売・システム開発・
ナル集団として一人ひとりが新しい領域・技術に、果
健保組合のサポート等で協力させていただいておりま
敢にチャレンジしてまいります。
す。
3.沿革
6.事業内容
設 立 1999年7月
資本金 40億円
●保険・金融サービス
ニッセイグループの保険・金融ノウハウをもと
売上高 364億円(平成13年度)
に、情報サービスの高度化や顧客データサービスの
社員数 1219名(2002年4月)
構築等、高品質で多様なサービスを提供しています。
本 社 東京都大田区
・ニッセイ保険口座を軸としたシステムインフラの 事業所 東京都文京区 大阪市中央区
構築
・401k年金システムの開発
4.今後の方向
1999年から2002年まではいわば創業期としてニ
24
・損害保険・投資信託関連の情報サービス提供
・コールセンターのシステム構築
Vol.122 02.8.20 0:21 PM ページ 26
シリーズ賛助会員紹介コーナー
●介護・健康サービス
(ホスティング、ISPサービス、セキュリティ関
介護関連パッケージの販売サービスや健康保険組
合向け業務システム、福祉情報の提供など介護健康
分野での高品質なサービスを行います。
●システムインテグレーション
連ソフトウェアの販売)
●コンサルティング
これまでニッセイグループで培ったノウハウをベ
ースにシステム開発から事務・財務・コスト削減ま
国内外のハード・ソフトメーカーと提携しつつ、
で幅広い分野でコンサルテーションいたします。
グローバル・ネットを活かした幅広い情報からお客
・事務効率化と業務改革
様のニーズに最適なシステム構築を行います。
・開発手順の標準化・効率化
●ネットワークサービス
・ERP
全国規模のネットワーク構築のノウハウを活かし
・印刷調達コスト削減
金融新時代や新技術に対応したトータルなシステム
構築、サービス提供を支援しています。
・大規模ネットワーク構築・運用
◆この件に関するお問合せ先
・大規模オンライン/データベースシステムの構
築・運用
・東京
企画開発本部(東京ブロック)
・インターネットを利用したさまざまなサービスの
TEL:03ー5714ー4386
提供
<i−Winのソリューションマップの図>
25
Vol.122 02.8.20 0:21 PM ページ 27
シリーズ研究員コーナー
研 究 員 コ ー ナ ー
財団法人関西情報・産業活性化センター
地域振興事業部 主席研究員 小さなサロンで
共創による温故創新を
平塚 伸治
知の冒険者たちが研究活動の合間
山(なかい・ちくざん)・履軒(りけん)兄弟・山片
に集まり、自由闊達に議論する小さ
蟠桃(やまがた・ばんとう)ら、日本の江戸期を代表
なサロンでの談論風発的な知的交流
する学者を輩出した。学風はひたすら最先端の知識を
は、新しい発想や活動、文化を生み
習得しながら、社会的通念で形成された枠を取っ払い
だし、まちの活力源になっていくだ
視野を広げていく、自由で清新なものだ。このサロン
ろう。
では、日本全国から集った俊英たちが自由闊達に議論
し、知の地平を切り拓く知的創造空間となっていた。
京大岡田研で話題提供
だから、懐徳堂は、近世大坂の自由な学問空間の象徴
先日、京都大学防災研究所の岡田憲夫教授のゼミナ
になりえたのである。(詳細は宮川康子氏の労作『自
ールに招かれて話題提供を行なった。テーマは、「小
由学問都市大坂』講談社メチエ、2002年2月をぜひ参
布施流文化価値の創造とまちの再生」(詳細は、大阪
照。
)
ガス機関誌『CEl』61号所収の同名拙稿を参照)で
ある。
次代の担い手ネットワークづくり
長野県小布施町(おぶせまち)で、セーラ・マリ・
私はこうした問題意識から、きわめて小さな試みで
カミングス(桝一市村酒造場・小布施堂取締役で廃業
はあるが、「IT革命時代におけるコミュニティ・ソ
寸前の造り酒屋を再興した、小布施のまちおこし仕掛
リューション研究会」
(座長村橋正武立命館大学教授)
け人)が主宰するオブセッション(obusession)
を2000年12月に発足させた。大阪を代表する企業9社
が小布施発の文化価値創造のための交流サロンになっ
の若手を構成員としたこの研究会の目的は、文字通り
ていてじつにおもしろい、と話した。
次代を担う異業種交流ネットワークづくり。団塊世代
と団塊ジュニア世代の都市・生活コミュニティ像を解
IIASAのサロン=学問の創造空間
明し、展望することを研究テーマとし、これからの家
岡田教授はゼミナール終了後の宴席で、アフターゼ
族、住まい、都市はどうなるのかなどを共創によるコ
ミナールのサロンがたいへん重要であると話された。
ラボレーションで議論した。
(詳細は『
「住まい・暮ら
ウィーンにある国際応用科学分析研究所(略称:
し・都市が変わる」提言』を参照。)本年4月からは
IIASA)のサロンでは、M・ミッチェル・ワールドロ
研究テーマを「価値観コミュニティの研究」として続
ップ(「複雑系」の大御所)などと激論を戦わせ、新
けている。
しい学問や理論などが誕生していく場に居合わせたと
いう。サロンは学問や新しいことを創造していく発想
や着想を生む場として、きわめて重要な役割を果たし
ているのである。
小さなサロンで温故創新
元気を失い閉塞感が強まる大阪が活力をとりもど
し、元気になるためには、もはや起死回生の特効薬な
どありはしない。ひたすら地道に、自由闊達に、既成
懐徳堂=自由学問空間
概念にとらわれることなく、懐徳堂やobusession
岡田先生の話を聞きながら、近世大坂でうまれた町
などのような小さなサロンで、知の冒険者たちが温故
人の学問所「懐徳堂
(かいとくどう)
」のことを考えた。
創新的な知的活動をラディカルに着実に積み重ねるこ
懐徳堂は1724年に設立された学校で、適塾からわず
と以外に手はないのではないか。本質的な問題とは、
か100m西方、日本生命本社ビルに位置していた。こ
無関係と思われるような小さな試みから、案外道は開
の学校は、富永仲基(とみなが・なかもと)、中井竹
けてくるのかもしれない。
26