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愛 知 、 平 6 不 2 、 平 7.12.11 命 令 申立人 愛知県医療労働組合連合会 申立人 愛治病院労働組合 被申立人 愛正病院ことY1 主 1 書 文 被申立人は申立人愛治病院労働組合の組合員であるX1及びX2に対する 懲戒解雇並びにX3、X4及びX5に対する普通解雇がなかったものとして 取り扱い、同人らを原職に復帰させなければならない。 2 被申立人は、上記X1ら5名に対し、平成6年3月1日以後原職に復帰さ せるまでの間に同人らが受けるはずであった賃金相当額(一時金相当額も含 む 。) 及 び こ れ に 年 5 分 を 乗 じ た 金 額 を 支 払 わ な け れ ば な ら な い 。 3 被申立人は、申立人愛治病院労働組合の組合員に対して同組合からの脱退 勧奨を行うことにより、組合運営に支配介入してはならない。 4 被申立人は、申立人愛知県医療労働組合連合会及び申立人愛治病院労働組 合に対して、下記の内容の文書をそれぞれ1通本命令書交付の日から7日以 内に手交しなければならない。 記 愛 治 病 院 労 働 組 合 組 合 員 であるX1氏 及 びX2氏 に対 する懲 戒 解 雇 並 びに X 3 氏 、X 4 氏 及 び X 5 氏 に 対 す る 普 通 解 雇 並 び に 同 組 合 の 組 合 員 に 対 す る 脱 退 勧 奨 は 、労 働 組 合 法 第 7 条 に 該 当 す る 不 当 労 働 行 為 で あ る と 愛 知 県 地 方 労働委員会によって認定されました。 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 平成 年 月 日 愛知県医療労働組合連合会 執行委員長 X6殿 愛治病院労働組合 執行委員長 X1殿 愛正病院 院長 5 申立人のその余の申立ては棄却する。 理 第1 1 由 認定した事実 当事者 (1) 被 申 立 人 - 1 - Y1 被 申 立 人 Y 1 ( 以 下 「 被 申 立 人 」 と い う 。) は 、 昭 和 48年 9 月 に 愛 治 病 院 ( 以 下 「 病 院 」 と い う 。) と 称 す る 個 人 病 院 を 設 立 し 、 病 院 長 と し て そ の 経 営 に 当 た っ て き た 。病 院 の 主 た る 診 療 科 目 は 精 神 科 で あ り 、入 院 可 能 な ベ ッ ド 数 は 200床 で あ る 。 そ の 他 、 外 来 診 療 に の み 応 じ る 診 療 科目として、神経科、内科、神経内科、眼科、理学診療科及び外科があ る。 平 成 6年 3月 31日 現 在 の病 院 の 常 勤 職 員 は 、医 師 6名 のほか、薬 剤 師 、 看 護 婦 、 看 護 補 助 職 員 、 事 務 担 当 職 員 等 約 50名 で あ る 。 病院の名称は、平成6年4月1日付けで愛正病院に変更された。 (2) 申 立 人 ア 申 立 人 愛 知 県 医 療 労 働 組 合 連 合 会 ( 以 下 「 医 労 連 」 と い う 。) は 、 愛 知 県 内 の医 療 労 働 者 で組 織 される労 働 組 合 により構 成 される連 合 団 体 で あ り 、 申 立 時 の 傘 下 組 合 員 数 は 約 1 万 700名 で あ る 。 イ 申 立 人 愛 治 病 院 労 働 組 合 ( 以 下 「 病 院 労 組 」 と い う 。) は 、 愛 正 病 院 の 職 員 で 組 織 さ れ る 労 働 組 合 で あ り 、申 立 時 の 組 合 員 数 は 35名 で あ る。 病 院 労 組 は 、 平 成 5 年 10月 4 日 の 結 成 と 同 時 に 医 労 連 に 加 入 し た 。 2 病院労組の結成 平成5年9月頃、被申立人から年俸制移行等が提示されたことを契機と し て 、 同 年 10月 4 日 、 X 1 ( 以 下 「 X 1 」 と い う 。) ら が 中 心 に な っ て 、 病 院 労 組 を 結 成 し た 。同 労 組 の 主 な 役 員 の 構 成 は 、執 行 委 員 長 の X 1 、副 執 行 委 員 長 の X 7 ( 以 下 「 X 7 」 と い う 。)、 書 記 長 の X 3 ( 以 下 「 X 3 」 と い う 。) の ほ か 、 執 行 委 員 5 名 と な っ て い た 。 同 労 組 は 、被 申 立 人 に 対 し て 同 月 5 日 に 組 合 結 成 を 通 告 し 、翌 6 日 に 要 求の説明を行った。 3 被申立人らの言動 (1) X 1 は 、 病 院 労 組 結 成 後 の 平 成 5 年 10月 5 日 頃 か ら 団 体 交 渉 申 入 書 や 会議室使用許可願い等の様々な書面を被申立人に持っていくようになっ たが、同人は、受け取らない場合が多かった。その際、同人は「ダニの ようにつきまとうな、気持ち悪い」と発言することがあった。 また、被申立人は、病院労組結成前は、X1を「X1先生」と呼んで いたが、結成後は、同人をその出身地が沖縄であるところから「沖縄、 沖縄」と呼ぶことがあった。 (2) 被 申 立 人 は 、 平 成 5 年 10月 7 日 の 午 前 1 時 か ら 3 時 の 間 に 当 直 勤 務 に 就 い て い た 組 合 員 の X 8 ( 以 下 「 X 8 」 と い う 。) に 電 話 を か け て 、「 な ぜ 組 合 に 入 っ た の か 」「 誰 が 中 心 な の だ 」 な ど と 発 言 し た 。 また、被申立人は、翌8日の午前2時から3時の間に当直勤務に就い て い た 組 合 員 の X 9( 以 下「 X 9 」と い う 。)に 電 話 を か け て 、「 天 照 大 神 が 隠 れ る と 暗 闇 に な る 」「 労 組 組 合 は 良 い こ と だ が 、 こ の よ う な こ と ば か り し て い る と 疲 れ る 、 嫌 に な る 」「 別 の 病 院 を 作 る 」 な ど と 発 言 し - 2 - た。 X 9 は 、 上 記 電 話 を 受 け た 旨 を X 1 に 報 告 し た 際 、 200名 の 患 者 を 2 名の当直者で見るのは大変なことであるのに、深夜の時間帯に電話をか け ら れ る と 仮 眠 も と れ な い こ と に な り 、組 合 員 と し て 、こ ん な 攻 撃 を 受 けてはとても耐えられないという趣旨のことを発言した。 (3) 平 成 5 年 10月 14日 、 医 労 連 及 び 病 院 労 組 は 、 被 申 立 人 に 対 し 、 組 合 結 成通告以後組合員に対して不当労働行為に当たる発言が続いていると文 書で抗議した。 (4) 平 成 5 年 10月 15日 の 深 夜 、 被 申 立 人 は 、 当 直 勤 務 に 就 い て い た 組 合 員 の X 10( 以 下「 X 10」と い う 。)を 自 宅 に 呼 び 出 し て 、マ ッ サ ー ジ を さ せ な が ら 、「 誰 が 中 心 な の だ 」「 ど う し て 組 合 を 作 る 前 に 私 に 話 を し な か っ た」などと発言した。 (5) 平 成 5 年 10月 20日 の 朝 礼 に お い て 、 被 申 立 人 は 、 外 向 け の 事 務 長 で あ る と 言 っ て Y 2 ( 以 下 「 Y 2 事 務 長 」 と い う 。) を 職 員 に 紹 介 し た 。 同 日 及 び 翌 21日 、 Y 2 事 務 長 と 職 員 と の 個 別 面 接 が 行 わ れ た が 、 そ の 中 で 同 事 務 長 は 、「 組 合 が あ る と 、 医 療 法 人 に な れ な い 。 医 療 法 人 を 取 る た め に 組 合 を や め て ほ し い 」「 老 人 ホ ー ム 等 を 建 設 す る の で 、 そ れ ま で 組 合 は や め て ほ し い 」「 組 合 費 も ば か に な ら な い 。 そ の 金 で 子 供 に オ モチャでも買ってやったら」などと発言した。 (6) Y 3 総 婦 長 及 び Y 4 婦 長( 以 下「 Y 4 婦 長 」と い う 。)は 、平 成 5 年 10 月 18日 付 け の 「 院 長 先 生 に は 無 知 か ら き た 事 で 組 合 に 入 り ま し た 事 を お 詫び致します。院長先生には御心労をおかけして申訳御座居ませんでし た。尚今後共組合脱退後も以前通りお願い致します」という内容の書面 に署名して、被申立人に提出した。 同 月 21日 頃 、被 申 立 人 と Y 4 婦 長 は 、外 科 外 来 診 察 室 に 組 合 員 を 一 人 ひ と り 呼 び 入 れ 、「 書 け ば 給 料 を 上 げ て や る 」「 み ん な 脱 退 し て い る 。脱 退 し な け れ ば 大 変 な こ と に な る 」な ど と 発 言 し て 、次 々 に 上 記 文 書 と 同 内 容 の 書 面( 以 下「 詫 び 状 」と い う 。)に 署 名 を 求 め た 。被 申 立 人 と Y 4 婦 長 は 、 他 の 機 会 に 集 め た 署 名 を 含 め 、 同 日 ま で に 18名 分 の 署 名 を と り まとめた。 そ の 後 、詫 び 状 に 署 名 し た 組 合 員 の 内 10数 名 が 脱 退 届 を 病 院 労 組 に 提 出した。 (7) 平 成 5 年 10月 23日 、被 申 立 人 は 、組 合 員 の X 4( 以 下「 X 4 」と い う 。) を自宅に呼び、 「みんなが脱退することに署名した書面を見せてやる」 「な ぜ お 前 は 署 名 し な い 」と 発 言 し て 、看 護 婦 等 数 名 の 署 名 の あ る 書 面 を X 4 に見せた。 (8) 平 成 5 年 11月 15日 、被 申 立 人 は 、組 合 員 の X 5( 以 下「 X 5 」と い う 。) に対して「あんたはあの二人(X1、X3)に影響されちゃいかんよ。 看護婦さんに話してもらわないといかん」と発言してY4婦長を呼び、 「この子に話してあげなさい」と同婦長に言った。 - 3 - 同婦長は、X5に対して「ここの組合は本当の組合じゃないよ。私が 組合からどんなひどいことをされたか知ってる。聞いていないんでしょ う。あんなもの何が組合なの。上司二人が組合に入っているからやめら れないんでしょう。院長はX5さんに期待しているんだよ。仕事もやり や す く な る し 色 々 と 教 え て も ら え る よ 。X 5 さ ん は 頭 が い い か ら 私 の 言 っ て い る こ と わ か る で し ょ う 」と 発 言 し た 。ま た 、被 申 立 人 も X 5 に 対 し て「 仕 事 は ボ ラ ン テ ィ ア で や っ て い る ん じ ゃ な い よ 。こ の ま ま だ と 病 院はつぶれるよ。誰の病院だと思っているの。あの二人にも言っておき なさい」と発言した。 (9) 平 成 5 年 11月 29日 、 被 申 立 人 、 Y 5 事 務 長 ( 以 下 「 Y 5 事 務 長 」 と い う 。)、 X 1 及 び X 3 が 話 し 合 っ た 席 に お い て 、 被 申 立 人 は 、 X 1 に 対 し て「 あ な た は こ こ の 気 風 に 合 わ な い か ら 沖 縄 に 帰 っ て 仕 事 を し た ら 」 「紹 介 し て あ げ る 」 と 発 言 し た 。 ま た 、 同 年 12月 3 日 に は 被 申 立 人 は 、 X 1 の 恩 師 に 電 話 を か け 、「 と て も 大 変 な 人 を 紹 介 し て く れ た 」「 あ の 人 の せ い で 病 院 が 大 変 だ 」「 あ な た か ら 彼 に 意 見 し て ほ し い 」「 私 の 知 っ て い る 沖縄の医者に会って、X1の再就職の世話をしてもらえないか」などと 発言した。 (10) 平 成 5 年 12月 4 日 、 被 申 立 人 は 、 X 3 を 外 科 外 来 診 察 室 に 呼 び 出 し 、 同人に対して「組合を7月頃から作っていたと聞いた。組合をなぜ作っ たの」と発言した。 (11) 平 成 5 年 12月 中 旬 、被 申 立 人 は 、Y 5 事 務 長 の 机 の 前 で 、X 7 に 対 し て「組合をやめなさい」と発言した。 (12) 平 成 5 年 12月 25日 、被 申 立 人 は 、X 5 に 冬 季 賞 与 の 明 細 書 を 手 渡 し た 際 、「 こ の 賞 与 は 誰 か ら 出 て い る の 。 こ の 病 院 は 誰 の も の な の 」「 お 金 は 天 か ら 降 っ て こ な い よ 。お 父 さ ん 、お 母 さ ん に 聞 い て み な さ い 」 「思想を 持 つ の は い い が 、 20年 早 い よ 」 な ど と 発 言 し た 。 (13) 平 成 6 年 1 月 7 日 、被 申 立 人 は 、X 3 と 外 出 し た 際 、車 中 で X 3 に 対 して「あんたは、子供のために組合をやっているの。個人病院では組合 はできないよ」と発言した。 (14) 平 成 6 年 1 月 7 日 、外 科 外 来 診 察 室 で 被 申 立 人 は X 7 と 筆 談 し た 。被 申立人はメモ紙に「愛治病院ヤメルネ」と書き、X7は「ヤメマセン」 と 書 い た 。 そ し て 、 被 申 立 人 は 、「 ア レ カ ラ デ ナ サ イ 」「 一 ケ 月 の 予 告 カ イコ」などとも書いた。 同 月 18日 、 X 7 は 、 病 院 労 組 に 脱 退 届 を 出 し 、 そ の 後 、 病 院 を 退 職 し た。 (15) 平 成 6 年 1 月 8 日 、 被 申 立 人 は 、 X 1 を 自 宅 に 呼 び 出 し 、「 や め て く ださい」 「 病 院 を お や め な さ い 」と 発 言 し 、X 1 が 辞 職 を 拒 否 す る と 、被 申 立 人 は「 な ぜ や め な い の 、理 由 は 」 「やめないと言っても解雇予告でき るでしょう」と発言した。そこで、X1が解雇の理由を聞いたところ、 被申立人は「これから適当な理由を見繕います」と返答した。 - 4 - (16) 平 成 6 年 1 月 11日 の 朝 礼 に お い て 、被 申 立 人 が X 1 に 対 し て「 最 後 の 警告だよ」 「 こ れ 以 上 問 題 が あ れ ば 懲 戒 解 雇 す る 」と 発 言 し た 。こ れ に 対 し て X 1 が「 1 月 8 日 の 解 雇 に 関 す る 話 は 一 体 何 な の だ 」と 質 問 す る と 、 被申立人は「そんな無責任な発言はしていない」と否定した。 (17) 平 成 6 年 1 月 16日 、被 申 立 人 は 、X 3 を 自 宅 に 呼 び 出 し 、同 月 8 日 に X1に解雇を予告した旨述べた後、 「あなた何で組合をやっているの」 「つ まらんからやめなさい」と発言した。これに対してX3が「組合は院長 先生に話合いをお願いしているだけですから、病院のために話合いをお 願いします」と言ったところ、被申立人は「私は組合ができてから気分 が 悪 く な っ た 。組 合 は つ ぶ す こ と に し た 」 「仕事はできるからやめてほし くないが、仕方がない。解雇を予告します」と発言した。 4 X1ら5名の解雇 (1) X 1 に つ い て ア X 1 は 、大 学 院 の 修 士 課 程 を 修 了 後 、昭 和 62年 5 月 6 日 、臨 床 心 理 の 担 当 者 と し て 病 院 に 就 職 し 、性 格 検 査 、知 能 検 査 な ど の 臨 床 心 理 検 査 を 行 い 、そ の 結 果 を 医 師 に 報 告 す る こ と を 主 な 業 務 と し 、併 せ て 精 神病患者の心理面接を担当した。 同 人 は 、病 院 労 組 結 成 と 同 時 に 同 労 組 に 加 入 し 、執 行 委 員 長 に な っ た。 イ 被 申 立 人 は 、X 1 あ て に 平 成 6 年 1 月 17日 付 け の 内 容 証 明 郵 便 で 懲 戒 解 雇 す る 旨 の 通 知 書 を 送 付 し た 。そ の 通 知 書 の 内 容 は 、同 月 8 日 に 口 頭 で懲 戒 解 雇 を言 い渡 したにもかかわらず、出 勤 を重 ねているので、 同 月 17日 、改 め て 通 知 す る と い う も の で あ り 、解 雇 理 由 と し て 、就 業 規 則 第 50条 第 2 号 、第 3 号 及 び 第 6 号 、第 52条 第 4 号 及 び 第 11号 並 び に 第 54条 が 挙 げ ら れ て い た 。 ウ X1の勤務に関しては、次のような状況が認められる。 (ア) X1 は 、患 者 Aに 関 し て、心 理 検 査 の際 に何 回 か 相 談 に 応 じ た り、 助言を行ったりした。 ま た 、患 者 B に 関 し て は 、平 成 5 年 10月 か ら 12月 に か け て 、電 話 による相談があった際や来院した際に面談して、助言を行った。 更 に 、患 者 C に 関 し て は 、同 人 の 妻 か ら「 夫 が 昼 間 ぼ う っ と し て い る こ と が 多 く 、物 忘 れ も あ る 」と い う 相 談 が あ っ た 際 、X 1 は「 自 分 の 父 親 が M R I 撮 影 を 受 け 、脳 の 萎 縮 が あ る こ と が わ か り 、本 人 も 写 真 を 見 て 、納 得 し 、現 在 自 ら 酒 を や め て 投 薬 治 療 を 受 け て い る 」 などと話 して、病 院 待 合 室 にあった断 酒 会 のパンフレットを渡 した。 (イ) X 1 は 、採 用 さ れ て 間 も な く 、ど ん な 検 査 で も い い か ら 患 者 1 名 につき毎月1件程度の心理検査を行うよう被申立人から指示を受け た。 指 示 ど お り の 検 査 量 が 処 理 で き る よ う に な っ た 平 成 2 年 頃 、今 度 は 、患 者 1 名 に つ き 毎 月 2 件 の 心 理 検 査 を 行 う よ う 被 申 立 人 か ら 指 - 5 - 示を受けた。 X 1 は 、月 2 件 の 検 査 を 実 施 す る た め に 心 理 検 査 実 施 予 定 表( 以 下 「 予 定 表 」 と い う 。) を 作 成 し た が 、 同 人 一 人 で 検 査 を 実 施 す る こ と は 無 理 な の で 看 護 婦 や 付 添 婦 に も 手 伝 っ て も ら っ て 、検 査 を 実 施していた。 X1が実 施 した心 理 検 査 については、検 査 名 が診 療 録 に記 載 され、 同 人 が作 成 した心 理 検 査 結 果 報 告 書 は担 当 医 師 が押 捺 して診 療 録 に 添 付 さ れ て い た 。ま た 、被 申 立 人 は 、予 定 表 に 基 づ い て 実 施 さ れ た 心理検査すべてについて診療報酬を請求していた。 予 定 表 に 基 づ く 心 理 検 査 の 実 施 は 、平 成 5 年 11月 30日 に 保 険 請 求 の審 査 医 師 から不 必 要 な心 理 検 査 がなされている旨 の指 導 が被 申 立 人 に 対 し て 行 わ れ る ま で 、4 年 近 く 続 い た が 、そ の 間 、被 申 立 人 が X1に注意したことはなかった。 (ウ) X 1 は 、 平 成 5 年 5 月 に 、 同 人 の 出 身 大 学 の 卒 業 生 が 中 心 に な っ て 作 っ た 学 会 の 場 で 、「 心 理 検 査 の 自 動 化 」 と 題 す る 発 表 を 行 っ た が 、こ の こ と に つ い て 被 申 立 人 は 、同 年 6 月 頃 の 朝 礼 に お い て 、学 術を通して病院の評判が高くなると褒めたことがあった。 (エ) 病 院 で は 、患 者 又 は そ の 付 添 者 か ら 入 院 歴 、入 院 ま で の 経 過 、既 往 症 、家 庭 環 境 、生 活 史 等 を 聴 取 し 、聴 取 者 の 氏 名 、陳 述 者 の 氏 名 、 陳述者と患者との関係とともに、診療録に記載することとされてい た が 、X 1 の 扱 っ た 診 療 録 に は 、聴 取 者 の 氏 名 、陳 述 者 の 氏 名 、陳 述者と患者との関係の記載が漏れているものがあった。 (オ) 平 成 5 年 11月 2 日 、 被 申 立 人 は 、 病 院 事 務 室 の 奥 に 位 置 し て い た 心 理 検 査 室 を Y 5 事 務 長 の 部 屋 ( 以 下 「 事 務 長 室 」 と い う 。) に す るため、X1及びX3に執務場所の移動を命じ、心理検査室にあっ た同人らの机を患者を使って、他の部屋(以下「X1らの執務室」 と い う 。) に 移 動 さ せ た 。 そ の 際 、 同 人 ら は 、「 理 由 を 聞 か せ て く だ さい」と抗議したものの、机が運ばれてしまったため、結局、その 部屋へ移動し、執務するようになった。 (2) X 3 に つ い て ア X 3 は 、大 学 の 社 会 福 祉 学 部 を 卒 業 後 、昭 和 57年 4 月 16日 、ケ ー ス ワ ー カ ー と し て 病 院 に 就 職 し 、以 後 精 神 保 健 法 関 係 の 書 類 手 続 、入 退 院 の 受 付 ・相 談 ・援 助 、 社 会 福 祉 事 務 所 等 と の 連 絡 ・調 整 、 コ ン ピ ュ ー タによる患者のデータ管理等の業務に従事した。 同人は、病院労組結成と同時に同労組に加入し、書記長になった。 イ 被 申 立 人 は 、X 3 あ て に 平 成 6 年 1 月 17日 付 け の 内 容 証 明 郵 便 で 解 雇 を 予 告 す る 旨 の 通 知 書 を 送 付 し た 。そ の 通 知 書 の 内 容 は 、同 月 16日 に 口 頭 で 解 雇 予 告 を し た が 、改 め て 通 知 す る と い う も の で あ り 、解 雇 理 由 と し て 、就 業 規 則 第 50条 第 3 号 、第 6 号 及 び 第 11号 並 び に 第 54条 が挙げられていた。 - 6 - ウ X3の勤務に関しては、次のような状況が認められる。 (ア) X 3 が 病 院 で 使 用 し て い た パ ソ コ ン に は 、 病 院 が 購 入 し て い な い パ ソ コ ン ソ フ ト が 17本 程 組 み 込 ま れ て い た 。 これらの内、数本のパソコンソフトについては、X3の解雇後、 同 人 の コ ン ピ ュ ー タ 業 務 を 引 き 継 い だ 担 当 者 が 調 査 し た と こ ろ 、原 本に当たるフロッピーディスクやその取扱説明書がなかった。 ま た 、X 3 は 、解 雇 後 に 二・三 度 病 院 を 訪 れ 、業 務 の 引 継 ぎ を 行 っ た が 、そ の 際 、病 院 に あ る フ ロ ッ ピ ー デ ィ ス ク だ け で は た り な か ったため、同 人 の車 にあったフロッピー ディスク40枚 程 を持 ち込 み、 使用し、それらを病院に置き忘れた。 (イ) 病 院 で は 、患 者 又 は そ の 付 添 者 か ら 入 院 歴 、入 院 ま で の 経 過 、既 往 症 、家 庭 環 境 、生 活 史 等 を 聴 取 し 、聴 取 者 の 氏 名 、陳 述 者 の 氏 名 、 陳述者と患者との関係とともに、診療録に記載することとされてい たが、X3の扱った診療録には、陳述者の氏名、陳述者と患者との 関係の記載が漏れているものがあった。 (ウ) X 3 は 、介 助 が 必 要 な 患 者 に 付 く 家 政 婦 に 対 す る 代 金 の 支 払 業 務 を 担 当 し て い た が 、そ の 支 払 は 、家 政 婦 会 の 了 承 を 得 て 、申 請 手 続 をしてから約2か月後に社会保険等から支給される給付金を持って なされていた。 (3) X 4 に つ い て ア X 4 は 、平 成 5 年 4 月 21日 、看 護 補 助 職 員 と し て 病 院 に 就 職 し 、以 後看護業務の補助及び運転業務に従事した。 同人は、病院労組結成と同時に同労組に加入した。 イ 被 申 立 人 は 、X 4 あ て に 平 成 6 年 1 月 11日 付 け の 内 容 証 明 郵 便 で 解 雇 す る 旨 の 通 知 書 を 送 付 し た 。そ の 通 知 書 に は 、同 人 が 病 院 の 従 業 員 として不適格であるので、同日付けで解雇すると記載されていた。 ウ X4の勤務に関しては、次のような状況が認められる。 (ア) X 4 は 、 当 直 中 の 平 成 5 年 12月 9 日 午 後 7 時 30分 頃 、 同 僚 の X 9 と と も に 、保 護 室 に 収 容 中 の 精 神 病 患 者 D の 定 時 の 検 温・血 圧 測 定 を 実 施 し た 。検 査 を 終 え て 、X 4 、X 9 の 順 で 退 室 し よ う と し た 際 、 Dが隙を見て同室から出ようとしたので、X4はとっさに扉を閉め た。その結果、X9がDとともに一時的に保護室に残される状態に なったが、X4はすぐに扉を開けてX9を退室させた。 こ の よ う な こ と が あ っ た た め 、被 申 立 人 は 婦 長 ら に 対 し て 今 後 は X 4 を 当 直 か ら 外 す よ う 指 示 し た が 、そ れ で は 当 直 業 務 の 実 施 に 支 障 が 生 ず る の で 、同 月 13日 、被 申 立 人 、Y 5 事 務 長 、X 4 等 が 出 席 して、X4の今後の当直業務について協議が行われた。その結果、 同 人 は 、同 日 の 当 直 の み 外 さ れ る こ と と さ れ 、今 後 、気 を つ け る よ うにとの注意を受けた。 (イ) X 4 は 、 平 成 5 年 12月 30日 午 後 1 時 30分 頃 、 看 護 婦 か ら 患 者 E が - 7 - 外 泊 す る の で 病 棟 か ら 連 れ て く る よ う 指 示 さ れ 、病 院 1 階 玄 関 へ 同 人を連れていった。X4が当該看護婦の指示でEの荷物を調べてい る 間 に 、E は 小 遣 い を 受 け 取 る た め に 受 付 窓 口 へ 行 っ た 。X 4 が 調 べ終えて受付窓口へ行くと、出金担当者が出金伝票を作成している 最中であった。その後、当該出金担当者は、Eの預り金から出した 現金5万円を、同人を迎えに来ていた付添者に手渡すことなく、E 本人に手渡した。 (ウ) X 4 は 、平 成 6 年 1 月 2 日 、被 申 立 人 か ら 始 末 書 を 書 く よ う 要 求 された。 X4が始末書を書く理由を聞いても、被申立人が答えないので、 X 4 は「 書 け ま せ ん 」と 言 っ た が 、被 申 立 人 は「 書 け 、書 け 」と 言 うだけであった。このようなやりとりが1時間程続いたが、結局、 X4は、被 申 立 人 に 言 わ れ る ま ま の 文 言 を 始 末 書 に 書 い た 。そして 、 X4は、同月3日から7日間の出勤停止を命じられた。 始 末 書 の 内 容 は 、就 業 規 則 の 懲 戒 規 定 に 該 当 す る 行 為 と し て 平 成 5年 12月 30日 の Eの 外 泊 の 際 無 断 で5 万 円 を 渡 し たこ と 及 び 同 年 9 月 か ら12月 にわ た り同 規 定 に該 当 する 行 為 を 数 回 繰 り 返 した こ と を 自 白 す る と い う も の で あ っ た 。X 4 は 、始 末 書 を 書 く 際 、就 業 規 則 を見せてほしいと言ったが、被申立人は見せなかった。 (4) X 2 に つ い て ア X 2 ( 以 下 「 X 2 」 と い う 。) は 、 昭 和 58年 7 月 18日 、 運 転 手 と し て 病 院 に 就 職 し 、以 後 バ ス や 乗 用 車 の 運 転 業 務 及 び 入 院 患 者 の 診 療 報 酬請求業務に従事した。 同人は、病院労組結成と同時に同労組に加入した。 イ 被 申 立 人 は 、X 2 あ て に 平 成 6 年 1 月 17日 付 け の 内 容 証 明 郵 便 で 懲 戒 解 雇 す る 旨 の 通 知 書 を 送 付 し た 。そ の 通 知 書 の 内 容 は 、同 日 、口 頭 で 懲 戒 解 雇 し た が 、改 め て 通 知 を す る と い う も の で あ り 、解 雇 理 由 と し て 、就 業 規 則 第 50条 第 3 号 及 び 第 6 号 、第 52条 第 7 号 、第 10号 及 び 第 12号 並 び に 第 54条 が 挙 げ ら れ て い た 。 ウ X2の勤務に関しては、次のような状況が認められる。 (ア) X 2 は 、 昭 和 63年 に 当 時 の Y 6 事 務 長 ( 以 下 「 Y 6 事 務 長 」 と い う 。) か ら 口 頭 で 車 輌 課 長 を 命 ず る 旨 の 辞 令 を 受 け 、 発 令 さ れ た 月 から課長手当として月額3万円を支給されるようになった。 X 2 は 、平 成 元 年 頃 に 車 輌 課 長 を 命 ず る 旨 の 辞 令 を Y 6 事 務 長 か ら 交 付 さ れ た 。交 付 の 際 、発 令 日 が 昭 和 59年 7 月 21日 に な っ て い た の で 、X 2 が 日 付 に つ い て Y 6 事 務 長 に 尋 ね た と こ ろ 、同 人 か ら「 大 勢 に は 影 響 が な い か ら 」と い う 返 答 が あ り 、そ の ま ま の 辞 令 が 渡 さ れた。 (イ) 病 院 で は 、 職 員 は 鍵 を 院 外 に 持 ち 出 す こ と を 禁 じ ら れ 、 帰 宅 時 に 鍵保管箱に返還することになっていたが、X2は鍵を何度か自宅に - 8 - 持ち帰ったことがあった。これは、同人が、以前職員の送迎のため の 早 朝 出 勤 や 残 業 を し た 際 、玄 関 の 錠 の 開 け 閉 め の た め に 呼 ん だ 当 直者から苦情を言われたことがあったからである。 病 院 で は 、鍵 の 返 還 状 況 に つ い て 、当 直 者 が 毎 日 点 検 す る こ と に なっていたが、X2は、鍵を自宅に持ち帰っていたことについて、 当事者や被申立人から注意を受けたことはなかった。 (ウ) X 2 は 、従 来 、事 務 室 で コ ン ピ ュ ー タ を 使 用 し て 入 院 患 者 の 診 療 報 酬 請 求 業 務 を 行 っ て い た が 、医 師・看 護 婦 に 必 要 な 診 療 録 を 病 棟 か ら 持 ち 出 さ な い で 同 業 務 が で き る よ う に す る た め 、平 成 5 年 10月 末 頃 に 病 棟 に コ ン ピ ュ ー タ が 設 置 さ れ た こ と に よ り 、 同 年 12月 頃 、 同業務を病棟で行うようY7事務次長(以下「Y7事務次長」とい う 。) か ら 指 示 を 受 け た 。 し か し 、 X 2 は 、 当 初 の 2 日 間 だ け 病 棟 で 同 業 務 を 行 っ た も の の 、病 棟 は 照 明 が 暗 い こ と と 外 光 の 反 射 の 関 係でコンピュータによる作業には不適切であるとして、その後は、 従 前 どおり診 療 録 を持 ち出 して事 務 室 で同 業 務 を行 うようになった。 こ の 診 療 録 の 持 ち 出 し に つ い て 、同 人 は 、医 師・看 護 婦 か ら 注 意 を受けたことはなかった。 (5) X 5 に つ い て ア X 5 は 、大 学 の 文 学 部 を 卒 業 後 、平 成 5 年 3 月 21日 、ケ ー ス ワ ー カ ー 兼 臨 床 心 理 の 担 当 者 と し て 病 院 に 就 職 し 、以 後 入 院 手 続 、行 政 関 係 の書類作成、患者からの相談への応対等の業務に従事した。 同人は、病院労組結成と同時に加入した。 イ 被 申 立 人 は 、X 5 あ て に 平 成 6 年 1 月 17日 付 け の 内 容 証 明 郵 便 で 解 雇 を 予 告 す る 旨 の 通 知 書 を 送 付 し た 。そ の 通 知 書 の 内 容 は 、同 日 、口 頭 で 解 雇 予 告 を し た が 、改 め て 通 知 す る と い う も の で あ り 、解 雇 理 由 として、就 業 規 則 第 50条 第 3号 、第 6号 及 び 第 11号 が 挙 げられていた。 ウ X5の勤務に関しては、次のような状況が認められる。 (ア) X 5 は 、 平 成 5 年 7 月 中 旬 に 開 催 さ れ る 愛 知 県 内 の 精 神 障 害 者 の 卓 球 大 会 に 患 者 10数 名 が 出 場 す る こ と と な っ た た め 、同 年 6 月 中 旬 頃 よ り 、午 後 5 時 か ら 7 時 ま で の 間 、X 1 と と も に 玄 関 ホ ー ル で 卓 球の指導を始めた。X5及びX1は、患者の要望が強かったので、 大会終了後も引き続き、一週間に一度、同様に卓球の指導を行い、 これ は同 年 10月 22日 の 団 交 にお い て被 申 立 人 が中 止 を 求 める ま で続 いた。このように卓球の指導をしていたことは被申立人も承知して いたが、同日の団交までの間に被申立人が中止を求めることはなか った。また、当直者が苦情を述べることもなかった。 (イ) 平 成 5 年 11月 2 日 、 被 申 立 人 が X 1 及 び X 3 に 対 し て 執 務 場 所 の 移動を命じた際、同じ心理検査室で執務していたX5に対しても、 X1及びX3とともに移動するよう命じた。X5がこれを拒否した ところ、被申立人は、移動先は男性ばかりで女性一人では気の毒で - 9 - あ り 、ま た 、就 職 し た ば か り の Y 5 事 務 長 の 補 助 も 必 要 で あ る と 考 え、X5に同事務長の机の隣で執務するよう改めて命じた。 そ の 後 、被 申 立 人 は 、X 1 、X 3 及 び X 5 の 仕 事 に 必 要 な コ ン ピ ュー タや書 棚 をX1らの執 務 室 に移 すよう命 じた。これに対 してX5 が 仕 事 が や り に く く な る と 言 っ た と こ ろ 、被 申 立 人 は「 あ ん た も 行 き た か っ た ら あ ち ら( X 1 ら の 執 務 室 )へ 行 っ て い い よ 」と 言 っ た の で 、 X 5 は 、 同 月 10日 頃 、 事 務 長 室 か ら 移 動 し た 。 (ウ) X 5 は 、平 成 5 年 12月 27日 頃 、自 治 体 の 福 祉 担 当 者 か ら 患 者 2 名 分各々夏期と冬期の慰問金が入っている封筒計4通を受け取り、こ れらの封筒に患者の名前と金額を記入し、そのまま患者の小遣いを 入れておく金庫に納めた。病院では、患者に慰問金が来た場合は、 現金を事務室で預かり、患者には空の封筒のみを看護婦等を通じて 手渡すこととされていたので、X5はその処遇を事務室の担当者に 依頼した。 翌 日 頃 、X 5 が 受 け 取 っ た 封 筒 の 内 の 2 通 が 空 で ナ ー ス セ ン タ ー の 机 の 上 に 置 い て あ っ た の で 、こ れ を 見 た Y 4 婦 長 は 、X 5 を ナ ー ス セ ン タ ー に 呼 び 、「 封 筒 が 2 通 あ る け れ ど 、 こ れ は 一 体 ど う い う も の な の 」と 尋 ね た 。こ れ に 対 し て X 5 は 、こ れ ら の 封 筒 に は 自 治 体からの夏季と冬期の慰問金が入っていた旨を説明した。 (6) 病 院 の 就 業 規 則 に つ い て 病院の就業規則の内、本件解雇に関係する規定は次のとおりである。 (解雇) 第 20条 職員が次の各号に該当する場合は解雇とする。 但 し 、 臨 時 職 員 で 引 続 き 14日 を 越 え て 使 用 さ れ て い な い も の は即時解雇ができる。 (1)~ (3) ( 略 ) (4) 職 員 と し て 不 適 格 と 認 め ら れ た と き (5) ( 略 ) 2以下 (略) (戒告、譴責) 第 50条 次の各号に該当するときは譴責に処する。但し本人の改悛の 情が顕著であり情状酌量の余地があると認められる場合は戒 告にとどめることがある。 (1) ( 略 ) (2) 勤 務 時 間 中 勤 務 と 関 係 の な い 外 来 者 と み だ り に 面 談 し た とき (3) 勤 務 状 況 不 良 と 認 め ら れ る と き (4)及 び (5) ( 略 ) (6) 病 院 の 信 用 を 傷 つ け ま た は 職 員 と し て の 体 面 を 汚 し た と き - 10 - (7)~ (10) ( 略 ) (11) み だ り に 職 場 を 離 れ も し く は 他 の 職 場 、 禁 止 さ れ た 場 所に出入りしたとき (12) 以 下 ( 略 ) (懲戒解雇) 第 52条 次の各号の一に該当するときは懲戒解雇に処する。 ただし情状により前条の処分もしくは諭旨退職とすることが ある。 (1)~ (3) ( 略 ) (4) 病 院 の 秩 序 を み だ し た と き (5)及 び (6) ( 略 ) (7) 患 者 の 個 人 的 秘 密 を他 に も ら し ま た患 者 に対 し 重 大 な不 都合行為をしたとき (8)及 び (9) ( 略 ) (10) 正 当 な 理 由 な く 業 務 命 令 に 従 わ な い と き (11) 他 人 の 業 務 遂 行 を 妨 げ た と き (12) 許 可 な く 病 院 の 物 品 を 持 ち 出 し た り 、 持 ち 出 そ う と し たとき (13) 以 下 ( 略 ) (教唆援助幇助) 第 54条 他を教唆、援助もしくは幇助して懲戒に該当する行為をさせ た者 及 びそれを企 画 した者 には懲 戒 者 と同 程 度 の処 分 にする。 5 名古屋地方裁判所への仮処分の申立て等 (1) X 1 、 X 3 、 X 4 、 X 2 及 び X 5 ( 以 下 「 X 1 ら 5 名 」 と い う 。) は 、 被申立人が供託した平成6年1月分の賃金及び解雇予告手当としての1 か月分の平均賃金を同年1月分及び2月分の賃金として受領した。 (2) X 1 ら 5 名 は 、 被 申 立 人 を 相 手 に 名 古 屋 地 方 裁 判 所 に 対 し て 地 位 保 全 及 び 賃 金 の 仮 払 い を 求 め る 申 立 て を 行 っ て い た が 、 平 成 6 年 5 月 30日 、 同裁判所は、その一部を認容する旨の決定を行った。 (3) (2)の 賃 金 の 仮 払 い の 決 定 後 、X 1 ら 5 名 は 、被 申 立 人 を 相 手 に 名 古 屋 地方裁判所に対して平成6年4月1日以後の定期昇給差額相当額及び同 年 夏 期 賞 与 相 当 額 の 仮 払 い を 求 め る 申 立 て を 行 っ て い た が 、 7 年 2 月 24 日、同裁判所は、その一部を認容する旨の決定を行った。 第2 1 判断及び法律上の根拠 被申立人らの言動について (1) 当 事 者 の 主 張 要 旨 ア 申立人 被 申 立 人 は 、病 院 労 組 の 組 合 員 に 対 し て 、自 ら 電 話 を か け た り 、呼 びつけたりして、組合からの脱退を強要した。 ま た 、被 申 立 人 は 、Y 4 婦 長 と と も に 組 合 員 を 呼 び つ け て 詫 び 状 に - 11 - 署名・爪印させ、組合からの脱退を強要した。 更 に 、被 申 立 人 は 、 Y 2 事 務 員 を 通 し て 、 組 合 か ら の 脱 退 を 強 要 し た。 イ 被申立人 被申立人は、組合員名簿すら病院労組から交付されていないので、 組 合 員 に 対 し て 脱 退 勧 奨 な ど で き よ う は ず は な い し 、現 に 行 っ た こ と もない。 (2) 判 断 ア 被 申 立 人 が 、平 成 5 年 10月 7 日 の 深 夜 、当 直 勤 務 に 就 い て い た X 8 に 対 し て 電 話 を か け て「 な ぜ 組 合 に 入 っ た の か 」と 発 言 し た こ と 、翌 8 日 の 深 夜 、当 直 勤 務 に 就 い て い た X 9 に 対 し て 電 話 を か け て「 労 働 組 合 は 良 い こ と だ が 、こ の よ う な こ と ば か り し て い る と 疲 れ る 、嫌 に な る 」「 別 の 病 院 を 作 る 」 と 発 言 し た こ と 、 同 月 15日 の 深 夜 、 当 直 勤 務 に 就 い て い た X 10を 自 宅 に 呼 び 出 し て 、「 ど う し て 組 合 を 作 る 前 に 私 に 話 を し な か っ た 」と 発 言 し た こ と は 、第 1 、3 、(2)及 び (4)で 認 定 し た と お り で あ る 。こ れ ら の 発 言 は 、病 院 労 組 の 結 成 あ る い は 同 労 組 へ の 加 入 を 非 難 し 、も っ て X 8 ら に 対 し て 暗 に 脱 退 を 勧 奨 し た も の と認めるのが相当である。 イ 被 申 立 人 が 、平 成 5 年 10月 23日 、X 4 に 対 し て「 み ん な が 脱 退 す る こ と に 署 名 し た 書 面 を 見 せ て や る 」「 な ぜ お 前 は 署 名 し な い 」 と 発 言 し て 、看 護 婦 等 数 名 の 署 名 の あ る 書 面 を 見 せ た こ と は 、第 1 、3 、(7) で 認 定 し た と お り で あ る 。こ れ ら の 言 動 は 、X 4 に 対 す る 明 ら か な 脱 退勧奨行為である。 ウ 被 申 立 人 が 、平 成 5 年 11月 15日 、X 5 に 対 し て「 あ ん た は あ の 二 人 ( X 1 、X 3 )に 影 響 さ れ ち ゃ い か ん よ 。看 護 婦 さ ん に 話 し て も ら わ な い と い か ん 」と 発 言 し て Y 4 婦 長 を 呼 び 、同 婦 長 が「 上 司 二 人 が 組 合 に 入 っ て い る か ら や め ら れ な い ん で し ょ う 」「 X 5 さ ん は 頭 が い い から私の言っていることわかるでしょう」と発言したことは、第1、 3 、 (8)で 認 定 し た と お り で あ る 。 こ れ ら の 発 言 は 、 被 申 立 人 と Y 4 婦 長 の二 人 によるX5に対 する脱 退 勧 奨 行 為 と認 めるのが相 当 である。 ま た 、 被 申 立 人 が 、 同 年 12月 25日 、 X 5 に 対 し て 「 思 想 を 持 つ の は い い が 、20年 早 い よ 」 と 発 言 し た こ と は 、 第 1 、 3 、(12)で 認 定 し た と お り で あ る 。こ の 発 言 も 、同 年 11月 15日 の 脱 退 勧 奨 の 発 言 に 続 い て な さ れ て い る こ と か ら み て 、X 5 に 対 す る 脱 退 勧 奨 行 為 と 認 め る の が 相当である。 エ 被 申 立 人 が 、X 3 に 対 し て 、平 成 5 年 12月 4 日 に「 組 合 を な ぜ 作 っ た の 」と 、 6 年 1 月 7 日 に「 あ ん た は 、子 供 の た め に 組 合 を や っ て い る の 。個 人 病 院 で は 組 合 は で き な い よ 」と 発 言 し た こ と は 、第 1 、3 、 (10)及 び (13)で 認 定 し た と お り で あ る 。こ れ ら の 発 言 は 、病 院 労 組 の 結 成 を 非 難 し 、も っ て X 3 に 対 し て 暗 に 脱 退 を 勧 奨 し た も の と 認 め る - 12 - のが相当である。 ま た 、 被 申 立 人 が 、 同 月 16日 、 X 3 に 対 し て「 あ な た 何 で 組 合 を や っ て い る の 」「 つ ま ら ん か ら や め な さ い 」 と 発 言 し た こ と は 、 第 1 、 3 、(17)で 認 定 し た と お り で あ る 。こ れ ら の 発 言 は 、X 3 に 対 す る 明 らかな脱退勧奨行為である。 オ 被 申 立 人 が 、X 7 に 対 し て 、平 成 5 年 12月 中 旬 に「 組 合 を や め な さ い 」と 発 言 し 、6 年 1 月 7 日「 ア レ カ ラ デ ナ サ イ 」と メ モ 紙 に 書 い た こ と は 、 第 1 、3 、(11)及 び (14)で 認 定 し た と お り で あ る 。こ れ ら の 言動は、X7に対する明らかな脱退勧奨行為である。 カ 被 申 立 人 及 び Y 4 婦 長 が 、平 成 5 年 10月 21日 ま で に 、組 合 に 入 っ た こ と を 詫 び 、組 合 脱 退 後 も 以 前 ど お り 扱 っ て ほ し い 旨 の 詫 び 状 に 組 合 員 18名 分 の 署 名 を と り ま と め た こ と は 、 第 1 、 3 、 (6)で 認 定 し た と お り で あ る 。こ れ は 、被 申 立 人 と Y 4 婦 長 の 二 人 に よ る 組 合 員 に 対 す る明らかな脱退勧奨行為である。 キ Y 2 事 務 長 が 、平 成 5 年 10月 20日 及 び 21日 、職 員 と の 個 別 面 接 の 際 、 「 組 合 が あ る と 、医 療 法 人 に な れ な い 。医 療 法 人 を 取 る た め に 組 合 を や め て ほ し い 」「 老 人 ホ ー ム 等 を 建 設 す る の で 、 そ れ ま で 組 合 は や め て ほ し い 」「 組 合 費 も ば か に な ら な い 。 そ の 金 で 子 供 に オ モ チ ャ で も 買 っ て や っ た ら 」 と 発 言 し た こ と は 、 第 1 、 3 、 (5)で 認 定 し た と お り で あ る 。こ れ ら の 発 言 の う ち 、医 療 法 人 取 得 と 老 人 ホ ー ム 等 の 建 設 に 関 す る 発 言 は 、病 院 労 組 が 病 院 の 経 営 上 好 ま し く な い 存 在 で あ る こ と を 組 合 員 に 伝 え 、も っ て 暗 に 脱 退 を 勧 奨 し た も の と 認 め る の が 相 当 で あ る 。ま た 、組 合 費 に 関 す る 発 言 も 、そ の 内 容 か ら し て 、暗 に 脱 退 を勧奨したものと認めるのが相当である。 そ し て 、こ れ ら の Y 2 事 務 長 の 発 言 は 、被 申 立 人 が 多 く の 脱 退 勧 奨 の 言 動 を し て い る こ と と 事 務 長 と い う 職 位 か ら 考 え て 、被 申 立 人 の 意 を体してなされたものと認めるのが相当である。 以 上 の 脱 退 勧 奨 に 当 た る 被 申 立 人 ら の 言 動 は 、申 立 人 組 合 の 運 営 に 対 し て 支 配 介 入 す る も の で あ り 、労 働 組 合 法 第 7 条 第 3 号 に 該 当 す る 不 当 労 働 行為である。 な お 、申 立 人 は 、ほ か に も 被 申 立 人 に よ る 脱 退 勧 奨 行 為 が あ っ た と 主 張 するが、これを認めるにたる疎明がないので、採用することはできない。 2 X1ら5名の解雇について (1) 当 事 者 の 主 張 要 旨 ア 申立人 X1ら5名の解雇は、組合つぶしのための不当労働行為である。 被 申 立 人 の 主 張 す る 解 雇 理 由 は 、全 く 事 実 に 反 す る か 、本 件 解 雇 に 至 る ま で は 特 に 問 題 と さ れ た こ と も な い も の か 、そ れ 自 体 何 の 問 題 も ないものかのいずれかである。被申立人は、それらを歪曲・誇張し、 あ え て 解 雇 理 由 と 主 張 し て い る に す ぎ ず 、正 当 な 解 雇 理 由 た り 得 な い - 13 - こ と は 明 ら か で あ る 。こ の こ と は 、逆 に 、解 雇 の 真 の 理 由 が 被 申 立 人 の不当労働行為意思にあることを裏付けるものである。 イ 被申立人 被 申 立 人 の 行 っ た X 1 ら 5 名 に 対 す る 懲 戒 解 雇 又 は 普 通 解 雇 は 、そ れぞれ正当な理由が存するので、不当労働行為には該当しない。 (2) 判 断 ア X1ら5名の解雇理由について (ア) X 1 に つ い て 被 申 立 人 は 、X 1 に は 次 の よ う な 行 為 が あ り 、懲 戒 解 雇 に 相 当 す るとしている。 ① 医 師 の 資 格 が な い の に 次 の よ う な 代 診 類 似 行 為 を 行 い 、患 者 の 症 状 を 悪 化 さ せ て し ま う こ と も あ っ た 。そ の 結 果 、病 院 の 信 用は傷つけられ、損害を受けた。 患 者 A に 関 し て は 、医 師 で あ る か の よ う に 問 診 等 を 行 い 、同 人及びその母親に対して「こうすれば治癒する」などの医師の ような指示を繰り返した。また、患者Bに関しては、医師のご と く 振 る 舞 っ て 、毎 日 5 回 か ら 10回 電 話 を か け て く る よ う に 指 示 し 、来 院 し た 際 は 、 必 ず 個 室 で 長 時 間 面 談 し 、い ろ い ろ と 治 療 ま が い の 指 示 を 与 え て い た 。 更 に 、患 者 C に 関 し て は 、医 師 の指示を受けることなく、勝手にCT撮影を担当者に指示し、 また、断酒会のパンフレットをCの妻に渡して参加を指示し、 更に、服薬しないよう指示した。 ② 「 ミ ニ 学 会 」で の 発 表 な ど の た め に 、 個 人 的 趣 味 で 医 師 の 指 示のない心理検査を患者に強制した。 ③ 診 療 録 に 記 載 す べ き 事 項 の 内 、聴 取 者 、陳 述 者 、陳 述 者 と 患 者との関係などの事項の記載を故意に怠った。 ④ 執務場所の移動を命じられたにもかかわらず、正当な理由も なく拒否し、扉の前に座り込んで机や椅子の移動ができないよ う妨害行為を行った。 ⑤ 平 成 5 年 10月 4 日 か ら 同 年 12月 末 日 頃 ま で の 間 、 被 申 立 人 に つ き ま と っ て 、同 人 の 業 務 遂 行 を 妨 げ 、恐 怖 心 を 与 え 、し か も 、 その際、業務を怠った。 ⑥ 医 師 た ち の 指 示 に 係 る 業 務 を 拒 否 し 、勤 務 時 間 中 に 組 合 活 動 を行い、職場離脱をした。 よって、以下これらについて検討する。 a ①について 被申立人が、患者A及びBに対するX1の行為として挙げてい る点については、これを認めるにたる疎明がない。患者Cに関し ては、X1が、患者Cの妻から相談を受け、同人に待合室にあっ た 断 酒 会 の パ ン フ レ ッ ト を 渡 し た こ と は 、 第 1 、 4 、 (1)、 ウ 、 - 14 - (ア)で 認 定 し た と お り で あ る が 、 そ の 際 、 断 酒 会 へ の 参 加 を 指 示 した事実は認められない。また、医師の指示を受けることなく、 勝手にCT撮影を担当者に指示したとの点及びCの妻に服薬しな いよう指示したとの点については、これを認めるにたる疎明がな い。 患者の症状を悪化させたこともあり、その結果、病院の信用が 傷つけられ、損害を受けたとの点についても、これを認めるにた る疎明がない。 b ②について X1は、採用されて間もなく、患者1名につき毎月1件程度、 また、平成2年頃には、患者1名につき毎月2件の心理検査を行 うよう被申立人から指示を受けたこと、X1が実施した心理検査 については、検査名が診療録に記載され、同人が作成した心理検 査 結 果 報 告 書 は担 当 医 師 が押 捺 して診 療 録 に添 付 されていたこと、 被申立人は予定表に基づいて実施された心理検査すべてについて 診療報酬を請求していたこと、更に、予定表に基づく心理検査の 実 施 は 、 平 成 5 年 11月 30日 に 保 険 請 求 の 審 査 医 師 か ら 不 必 要 な 心 理 検 査 がなされている旨 の指 導 が被 申 立 人 に対 して行 われるまで、 4年近く続いたが、その間、被申立人がX1に注意したことがな か っ た こ と は 、第 1 、4 、(1)、ウ 、(イ)で 認 定 し た と お り で あ る 。 以上の事実から、この心理検査は、被申立人を含めた医師の明 示又は黙示の指示により行われたと認めることができ、被申立人 が挙げるところは事実に反する。 c ③について X1が扱った診療録には聴取者の氏名、陳述者の氏名、陳述者 と患者との関係の記載が漏れているものがあったことは、第1、 4 、 (1)、 ウ 、 (エ)で 認 定 し た と お り で あ る が 、 こ の 記 載 漏 れ が 故 意になされたという点については、これを認めるにたる疎明がな い。 d ④について 平 成 5 年 11月 2 日 、 被 申 立 人 が X 1 及 び X 3 に 執 務 場 所 の 移 動 を 命 じ た 際 、X 1 ら が 口 頭 で 抗 議 を し た こ と は 、第 1 、4 、(1)、 ウ 、 (オ)で 認 定 し た と お り で あ る が 、 同 人 ら が 扉 の 前 に 座 り 込 ん で机や椅子の移動ができないよう妨害行為を行ったとの点につい ては、これを認めるにたる疎明がない。 e ⑤について X 1 が 病 院 労 組 結 成 後 の 同 年 10月 5 日 頃 か ら 、 被 申 立 人 に 団 体 交渉申入書や会議室使用許可願い等の様々な書面を提出するよう に な り 、そ の 際 、被 申 立 人 が 受 け 取 ら な い 場 合 が 多 か っ た こ と は 、 第 1 、 3 、 (1)で 認 定 し た と お り で あ る 。 - 15 - 被申立人は、このX1の行為について、被申立人につきまとっ て、業務遂行を妨げ、恐怖心を与え、その際、X1は業務を怠っ たとしているが、被申立人及びX1の業務への具体的な支障につ いての疎明はなく、また、恐怖心を与えたとの点についても、こ れを認めるにたる疎明がない。 f ⑥について 被申立人が挙げる点については、これを認めるにたる疎明がな い。 以上のとおり、被申立人がX1の懲戒解雇の理由として挙げてい る行為は、いずれも事実を認めることができないか、事実に反する ものであり、したがって、X1の懲戒解雇に正当な理由があったと 言うことはできない。 (イ) X 3 に つ い て 被 申 立 人 は 、X 3 に は 次 の よ う な 行 為 が あ り 、普 通 解 雇 に 相 当 す るとしている。 ① 著 作 権 侵 害 の 違 法 コ ピ ー の パ ソ コ ン ソ フ ト を 使 用 し て 、病 院 の 業 務 を 行 っ て い た 。 ま た 、病 院 の パ ソ コ ン を 使 用 し て 、勤 務 時間中にゲームを楽しんでいた。 ② 付添家政婦に対する代金の支払に係る事務を怠ったため、そ の支払は毎月のように遅延し、長い時には2か月余り放置され たままであった。 ③ 入院患者の私物保管の業務を行っていたが、その管理がずさ んであった。 ④ 診 療 録 に 記 載 す べ き 事 項 の 内 、聴 取 者 、 陳 述 者 、 陳 述 者 と 患 者との関係などの事項の記載を故意に怠った。 ⑤ 被申立人や総婦長の命令を拒否し、職場離脱をした。 よって、以下これらについて検討する。 a ①について X3が病院で使用していたパソコンには、病院が購入していな いパソコンソフトが17本 程 組 み込 まれていたこと及 びこれらの内 、 数本については、原本に当たるフロッピーディスクやその取扱説 明 書 が な か っ た こ と は 、 第 1 、 4 、 (2)、 ウ 、 (ア)で 認 定 し た と お りである。 しかしながら、これだけの認定事実から組み込まれたパソコン ソフトが違法にコピーされたものであると直ちに言うことはでき ない。 また、病院のパソコンに組み込まれたパソコンソフトの内、数 本について原本に当たるフロッピーディスクやその取扱説明書が なかったことが判明したのは、同人の解雇後の調査によるもので あ る こ と は 、 同 じ く 第 1 、 4 、 (2)、 ウ 、 (ア)で 認 定 し た と お り で - 16 - ある。仮に、同人が著作権侵害の違法コピーのパソコンソフトを 組み込んでいたとしても、同人の解雇時点において、その事情を 被申立人は知り得なかったのであるから、解雇の理由とはなり得 ないものと考える。 更に、被申立人は、病院のパソコンに組み込まれたもの以外に も X 3 が 違 法 コ ピ ー の パ ソ コ ン ソ フ ト を 使 用 し て い た と し て 、 40 枚程のフロッピーディスクのラベルの写しを書証として提出して い る が 、こ の フ ロ ッ ピ ー デ ィ ス ク は 、同 じ く 第 1 、4 、(2)、ウ 、 (ア)で 認 定 し た と お り 、 同 人 が 解 雇 後 に 病 院 に 持 参 し 、 引 継 ぎ に 使用して、置き忘れたものであり、したがって、同人が解雇前に 病院で使用していたとの点については、これを認めるにたる疎明 がない。 そのほか、X3が病院のパソコンを使用して、勤務時間中にゲ ームを楽しんでいたとの点については、これを認めるにたる疎明 がない。 b ②について 付添家政婦に対する代金の支払が、家政婦会の了承を得て、申 請手続をしてから約2か月後に社会保険等から支給される給付金 を 持 っ て な さ れ て い た こ と は 、 第 1 、 4 、 (2)、 ウ 、 (ウ)で 認 定 し たとおりであるが、X3が支払事務を怠ったために支払が遅延し たと認めるにたる疎明はない。 c ③について 被申立人が挙げる点については、これを認めるにたる疎明がな い。 d ④について X3の扱った診療録には、陳述者の氏名、陳述者と患者との関 係 の 記 載 が 漏 れ て い る も の が あ っ た こ と は 、第 1 、4 、(2)、ウ 、 (イ)で 認 定 し た と お り で あ る が 、 こ の 記 載 漏 れ が 故 意 に な さ れ た との点については、これを認めるにたる疎明がない。 e ⑤について 被申立人が挙げる点については、これを認めるにたる疎明がな い。 以 上 の と お り 、被 申 立 人 が X 3 の 普 通 解 雇 の 理 由 と し て 挙 げ て い る 行 為 は 、い ず れ も 事 実 を 認 め る こ と が で き ず 、し た が っ て 、X 3 の普通解雇に正当な理由があったと言うことはできない。 (ウ) X 4 に つ い て 被 申 立 人 は 、X 4 に は 次 の よ う な 行 為 が あ り 、普 通 解 雇 に 相 当 す るとしている ① 平 成 5 年 12月 9 日 午 後 7 時 頃 、 同 僚 の 看 護 補 助 職 員 と と も に 保 護 室 に 収 容 中 の 精 神 病 患 者 に 面 接 す る た め に 入 室 し た 際 、患 - 17 - 者が同僚に飛びかかり、首を絞め始めたにもかかわらず、これ を放置して保護室から逃げて外に出て、同僚と患者が外に出ら れないように鍵をかけた。 ② 平 成 5 年 12月 30日 、 患 者 が 外 泊 す る 際 に 、 病 院 規 則 に 違 反 し て、上司の承諾を得ず、しかも、外泊のための交通費などより は る か に 多 額 の 5 万 円 も の 現 金 を 患 者 の 請 求 す る ま ま 、付 添 者 ではなく、患者本人に渡してしまった。 患者本人に直接5万円を渡したことについては、それを認め る同人の始末書もある。 ③ 保護室の便器の掃除がずさんで、同僚がやり直しをしなけれ ば な ら な い と い う こ と が あ っ た 。ま た 、給 食 業 者 に 対 し て 患 者 の食事につけるのりや卵を要求した。 よって、以下これらについて検討する。 a ①について 平 成 5 年 12月 9 日 午 後 7 時 30分 頃 、 X 4 が X 9 と と も に 保 護 室 に収容中の精神病患者Dの検査を実施して、X4、X9の順で退 室 し よ う と し た 際 、D が 隙 を 見 て 同 室 か ら 出 よ う と し た の で 、X 4 がとっさに扉を閉めたこと、その結果、X9がDとともに一時的 に保 護 室 に残 される状 態 になったが、X4がすぐに扉 を開 けてX9 を 退 室 さ せ た こ と は 、 第 1 、 4 、 (3)、 ウ 、 (ア)で 認 定 し た と お り である。 しかしながら、DがX9に飛びかかって、首を絞め始めたにも か か わ ら ず 、X 4 が 、こ れ を 放 置 し て 保 護 室 か ら 逃 げ て 外 に 出 て 、 X9と患 者 が外 に出 られないように鍵 をかけたとの点 については、 これを認めるにたる疎明がない。 b ②について 平 成 5 年 12月 30日 、 患 者 E が 外 泊 す る 際 、 出 金 伝 票 を 作 成 し 、 現 金 5万 円 をE本 人 に手 渡 したのが、出 金 担 当 者 であったことは、 第 1 、 4 、 (3)、 ウ 、 (イ)で 認 定 し た と お り で あ り 、 被 申 立 人 が 挙 げるところは事実に反する。 ま た 、 X 4 の 始 末 書 に つ い て は 、 第 1 、 4 、 (3)、 ウ 、 (ウ)で 認 定した状況からすると、同人が納得して、本意から書いたものと は考えられない。 c ③について 被申立人が挙げる点については、これを認めるにたる疎明がな い。 以 上 の と お り 、被 申 立 人 が X 4 の 普 通 解 雇 の 理 由 と し て 挙 げ て い る 行 為 は 、い ず れ も 事 実 を 認 め る こ と が で き な い か 、事 実 に 反 す る も の で あ り 、し た が っ て 、X 4 の 普 通 解 雇 に 正 当 な 理 由 が あ っ た と 言うことはできない。 - 18 - (エ) X 2 に つ い て 被 申 立 人 は 、X 2 に は 次 の よ う な 行 為 が あ り 、懲 戒 解 雇 に 相 当 す るとしている。 ① 自己を車輌課長に任命する旨の被申立人名の辞令を偽造し、 所持していた。 ② 病院の持ち出し厳禁の鍵を数回にわたって無断で自宅に持ち 帰った。 ③ 担当業務であった診療報酬請求業務を病棟で行うよう義務付 けられ、そうするように医師・看護婦から再三再四注意を受け たにもかかわらず、診療録を事務室に持ち込んで同業務を行っ たため、医師等の業務に多大の迷惑をかけることがしばしばあ った。 ④ 被申立人等に対して横柄な態度をとったり、担当者に対して 圧 力 をかけて勤 務 予 定 表 を自 己 に有 利 なように作 らせたりした。 また、給食業者に対して患者の食事につけるのりや卵を要求し た。 ⑤ 職場離脱をし、外来患者の病名を外部へ漏らした。 よって、以下これらについて検討する。 a ①について X 2 が 、 昭 和 63年 に Y 6 事 務 長 か ら 口 頭 で 車 輌 課 長 を 命 ず る 旨 の辞令を受け、発令された月から課長手当を支給されていたこと 及び平成元年頃に同課長を命ずる旨の辞令をY6事務長から交付 さ れ た こ と は 、第 1 、4 、(4)、ウ 、(ア)で 認 定 し た と お り で あ り 、 被申立人が挙げるところは事実に反する。 b ②について X 2 が 鍵 を 何 度 か 自 宅 に 持 ち 帰 っ て い た こ と は 、第 1 、4 、(4)、 ウ 、 (イ)、 で 認 定 し た と お り で あ る 。 しかしながら、その理由は職員の送迎のための早朝出勤や残業 をした際に玄関の錠の開け閉めのために呼んだ当直者から苦情を 言われたことがあったからであること、及び当直者が鍵の返還状 況について毎日点検することになっていたにもかかわらず、X2 は鍵の持ち帰りについて当直者や被申立人から注意を受けたこと が な か っ た こ と も 同 じ く 第 1 、 4 、 (4)、 ウ 、 (イ)で 認 定 し た と お りである。これらからみれば、X2が鍵を持ち帰ったことについ てはやむを得ない事情があったと言うことができ、また、被申立 人の暗黙の了解があったと言うこともできる。 このことからすれば、X2の行為が解雇の理由となるような行 為であったとみることはできない。 c ③について X 2 が 、 平 成 5 年 12月 頃 、 診 療 報 酬 請 求 業 務 を 病 棟 で 行 う よ う - 19 - Y7事務次長から指示を受けたこと、同業務に従事したのは当初 の2日間だけで、その後は、従前どおり診療録を持ち出して事務 室で同業務を行うようになったこと及び診療録の持ち出しについ て同人は医師・看護婦から注意を受けたことがなかったことは、 第 1 、 4 、 (4)、 ウ 、 (ウ)で 認 定 し た と お り で あ る 。 確かに、X2の行為は指示に反するものと言えるが、診療録の 持ち出しについて医師・看護婦から注意を受けたことがなかった ことからすると、業務上の支障はなかったものと考える。 このことからすれば、X2の行為が解雇の理由となるような行 為であったとみることはできない。 d ④について 被申立人が挙げる点については、これを認めるにたる疎明がな い。 e ⑤について 被申立人が挙げる点については、これを認めるにたる疎明がな い。 以 上 の と お り 、被 申 立 人 が X 2 の 懲 戒 解 雇 の 理 由 と し て 挙 げ て い る 行 為 の 内 、① 、④ 及 び ⑤ に つ い て は 、い ず れ も 事 実 を 認 め る こ と が で き な い か 、事 実 に 反 す る も の で あ り 、② 及 び ③ に つ い て は 、X 2 の 一 定 の 行 為 を 認 め る こ と が で き る が 、そ の 行 為 は 解 雇 の 理 由 と な るようなものではない。 し た が っ て 、X 2 の 懲 戒 解 雇 に 正 当 な 理 由 が あ っ た と 言 う こ と は できない。 (オ) X 5 に つ い て 被 申 立 人 は 、X 5 に は 次 の よ う な 行 為 が あ り 、普 通 解 雇 に 相 当 す るとしている。 ① 執務場所の移動を命じられたにもかかわらず、それを拒否し た 。そ こ で 、事 務 長 室 の Y 5 事 務 長 の 机 の 隣 で 執 務 す る よ う 命 じたが、その後、X1、X3と同室である方が仕事がしやすい などと言って、勝手にX1らの執務室へ移動した。 ② 病 院 で は 、 常 に 午 後 6 時 30分 頃 に は 部 外 者 の 立 入 り が で き な いよう施錠をし、安心して当直業務ができるようにしているに も か か わ ら ず 、そ の 時 間 を 過 ぎ て も 卓 球 を し て 、当 直 者 に 迷 惑 をかけた。 ③ 社会福祉団体からの慰問金を白紙封筒に入れたまま看護婦長 の 机 の 上 に 放 置 す る な ど 仕 事 上 の ミ ス が 多 く 、ま た 、勤 務 態 度 も悪かった。 ④ 真 っ 赤 な 口 紅 を つ け 、不 気 味 な 笑 顔 で 病 院 内 を 徘 徊 し て 入 院 患 者 や 職 員 を 不 安 に さ せ る な ど 、病 院 の 秩 序 を 乱 し 、不 穏 な 状 態にした。 - 20 - ⑤ 診 療 録 に 記 載 す べ き 事 項 の 内 、聴 取 者 、 陳 述 者 、 陳 述 者 と 患 者との関係などの事項の記載を故意に怠った。 よって、以下これらについて検討する。 a ①について 平 成 5 年 11月 2 日 、 被 申 立 人 が 、 X 1 及 び X 3 に 対 し て 執 務 場 所の移動を命じた際、X1らと同じ心理検査室にいたX5に対し ても移動を命じたが、同人が拒否したのでY5事務長の机の隣で 執務するよう改めて命じたこと及びX5は移動を許す旨の被申立 人 の 発 言 を 受 け て 、 同 月 10日 頃 、 事 務 長 室 か ら X 1 ら の 執 務 室 へ 移 動 し た こ と は 、 第 1 、 4 、 (5)、 ウ 、 (イ)で 認 定 し た と お り で あ る。 確 かにX5は11月 2日 の執 務 場 所 の移 動 命 令 を拒 否 しているが、 被申立人はこれを受けて直ちに命令を撤回しており、また、その 後X5がX1らの執務室へ移動したことについても被申立人の許 諾を得ているのであるから、X5の行為が解雇の理由となるよう な行為であったとみることはできない。 b ②について X5が、精神障害者の卓球大会のために、午後5時から7時ま で卓球の指導をしていたこと、患者の要望が強かったので大会終 了後も引き続いて一週間に一度同様に卓球の指導をしていたこと 及 び 平 成 5 年 10月 22日 に 開 催 さ れ た 団 交 で の 被 申 立 人 の 中 止 の 求 め に 応 じ て 卓 球 の 指 導 を 中 止 し た こ と は 、 第 1 、 4 、 (5)、 ウ 、 (ア)で 認 定 し た と お り で あ る 。 し か し な が ら 、 被 申 立 人 は 、 X 5 が卓球の指導をしていることを承知していたにもかかわらず、同 日の団交までの間に中止を求めていないこと及び当直者が苦情を 述 べ る こ と も な か っ た こ と は 、 同 じ く 第 1 、 4 、 (5)、 ウ 、 (ア)で 認定したとおりである。 このことからすれば、X5の行為が解雇の理由となるような行 為であったとみることはできない。 c ③について X 5 が 、 平 成 5 年 12月 27日 頃 、 自 治 体 の 福 祉 担 当 者 か ら 慰 問 金 が入っている封筒4通を受け取り、それらの封筒に患者の名前と 金額を記入し、そのまま患者の小遣いを入れておく金庫に納め、 その後の処理を事務室の担当者に依頼したこと及び翌日頃X5が 受け取った封筒の内の2通が空でナースセンターの机の上に置い て あ っ た こ と は 、 第 1 、 4 、 (5)、 ウ 、 (ウ)で 認 定 し た と お り で あ る。 したがって、封筒をナースセンターの机の上に置いたのはX5 ではなく、また、その封筒は空であったことから、被申立人が挙 げるところは事実に反する。 - 21 - そのほか、X5は、仕事上のミスが多く、また、勤務態度も悪 かったとの点については、これを認めるにたる疎明がない。 d ④について 被申立人が挙げる点については、これを認めるにたる疎明がな い。 e ⑤について 被 申 立 人 が挙 げる点 につては、これを認 めるにたる疎 明 がない。 以 上 の と お り 、被 申 立 人 が X 5 の 普 通 解 雇 の 理 由 と し て 挙 げ て い る 行 為 の 内 、③ か ら ⑤ に つ い て は 、い ず れ も 事 実 を 認 め る こ と が で き な い か 、事 実 に 反 す る も の で あ り 、① 及 び ② に つ い て は 、X 5 の 一 定 の 行 為 を 認 め る こ と が で き る が 、そ の 行 為 は 解 雇 の 理 由 と な る ようなものではない。 し た が っ て 、X 5 の 普 通 解 雇 に 正 当 な 理 由 が あ っ た と 言 う こ と は できない。 イ 不当労働行為の成否 X 1 ら 5 名 の 解 雇 に つ い て 正 当 な 理 由 が 認 め ら れ な い こ と は 、前 記 ア で 判 断 し た と お り で あ る 。 こ の こ と と 前 記 1 、 (2)で 判 断 し た と お り被 申 立 人 が病 院 労 組 組 合 員 に対 して脱 退 勧 奨 を行 ったこと及 び第 1、 3 、(17)で 認 定 し た と お り 被 申 立 人 は X 3 に 対 し て「 私 は 組 合 が で き て か ら 気 分 が 悪 く な っ た 。組 合 は つ ぶ す こ と に し た 」と 発 言 し て い る こ と を 併 せ 考 え る と 、X 1 ら 5 名 の 解 雇 は 病 院 労 組 を 嫌 悪 し て 行 っ た も の と 認 め る の が 相 当 で あ り 、こ れ は 労 働 組 合 法 第 7 条 第 1 号 に 該 当 する不当労働行為である。 3 救済方法について (1) 申 立 人 は 、 申 立 人 及 び 組 合 活 動 を 誹 膀 ・ 中 傷 す る 広 報 宣 伝 を 行 う こ と や職員に病院労組へ加入しないよう働きかけることの禁止並びに陳謝文 の掲示及び朝礼での読み上げを被申立人に対して命ずるよう求めている が、本件救済としては、主文第1項ないし第4項のとおり命ずることを もって相当と判断する。 (2) 主 文 第 2 項 の 賃 金 相 当 額 の 支 払 に つ い て 平 成 6 年 3 月 1 日 以 後 と な っ て い る の は 、第 1 、5 、(1)で 認 定 し た と お り 、X 1 ら 5 名 が 供 託 さ れ た 同年1月分の賃金及び解雇予告手当としての1か月分の平均賃金を同年 1月分及び2月分の賃金として受領していることによるものである。 な お 、賃 金 相 当 額 の 支 払 の 履 行 に 当 た っ て は 、こ れ に 対 応 す る 名 古 屋 地方裁判所の仮処分の決定に従い既に支払った金額があれば、それをこ の支払に充当することができる。 よ っ て 、 当 委 員 会 は 、 労 働 組 合 法 第 27条 及 び 労 働 委 員 会 規 則 第 43条 に よ り 主 文のとおり命令する。 平 成 7 年 12月 11日 - 22 - 愛知県地方労働委員会 会長 - 23 - 大塚仁 ㊞